JP4277549B2 - インクジェット記録ヘッド及びインクジェット記録装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録ヘッド及びインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録装置はインクジェット記録ヘッドを主走査方向に往復させ、また記録紙等を複走査方向に搬送させて、複数のノズルから選択的にインク滴を吐出させることで記録紙等に文字や画像を印刷する。インクジェット記録ヘッドは圧力室内のインクをアクチュエータ、例えば、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する圧電素子を用いて振動板を介して加圧することで、各イジェクタの圧力室に連通するノズルからインク滴を吐出する方法が知られている。また、このようなインクジェット記録ヘッドにおいては、インク供給口から導入されたインクが共通インク流路に充填され、この共通インク流路から各イジェクタのインク供給路を通って圧力室に充填される。
【0003】
さて、近年、インクジェット記録装置は高速化の傾向が強まっている。このためインクジェット記録ヘッドを長尺化し、インクジェット記録ヘッド1つあたりのノズル数を増やしてマトリックス状に行列配置することで、より短時間に広い領域に画像形成することが可能なインクジェット記録ヘッドが作られている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0004】
しかし、各ノズルの配置間隔を狭くして高密度に配置する為には、インク供給路にインクを供給する共通インク流路の幅を狭くする必要がある。しかし、共通インク流路の幅を狭くすると音響容量が小さくなり、イジェクタ間のクロストーク(圧力干渉)が発生し、インク滴の吐出が不安定になることによって、印字品位が低下するという問題があった。
【0005】
そこで本出願人は、共通インク流路にくびれ部を設け、このくびれ部に隣接してノズルを配置することで、共通インク流路の音響容量を十分に確保しつつ、各イジェクタの配置間を狭くし、高密度に配置することを実現した。
【0006】
しかし、共通インク流路にくびれ部を設けることで、共通インク流路のインクの流れに澱みができ、その澱みに気泡が残留する恐れがある。この気泡は、振動などで移動し、圧力室に進入するとインク滴の吐出特性を悪化させたり、不吐出を引き起こす。
【0007】
従って、本出願人は澱みが発生しないように、特願2001−328765号に記載されているように、くびれ部の形状を滑らかな曲線とすることで解消した。
【0008】
【特許文献1】
特表平10−508808号公報
【特許文献2】
特開平09−150511号公報
【特許文献3】
特開平09−156095号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
このように、くびれ部の形状を滑らかにすることでインクの流れの澱みを解消することは可能である。しかし、インクの流れの澱みは、共通インク流路内のインクの流速、共通インク流路の壁の材質、インク材料等の各種条件に影響を受けるため、これらの条件によっては、くびれ部を滑らかにしても澱みが発生し、気泡が残留してしまうこともあった。
【0010】
従って、本発明は、上記問題を解決すべく成されたもので、インク供給路に設けられたくびれ部よって発生する澱みを解消し、気泡の排出性を向上させ、気泡の残留を防止することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明に係るインクジェット記録ヘッドは、ノズルと、該ノズルに連通した圧力室と、該圧力室と前記ノズルとを連通するノズル連通室と、前記圧力室に接し、該圧力室内のインクを加圧し前記ノズルからインク滴を吐出させるアクチュエータと、前記圧力室に連通し、該圧力室にインクを供給するインク供給路と、を有するイジェクタを備え、複数のイジェクタの前記インク供給路が接続され該イジェクタの前記インク供給路の開口部から前記インク供給路にインクを供給する共通インク流路を備えたインクジェット記録ヘッドにおいて、前記イジェクタがマトリックス状に行列配置されると共に前記共通インク流路が行又は列方向に沿って複数配設され、平面視において、前記共通インク流路が、幅方向内側に向けて凹んだ滑らかな凹状のくびれ部を有し、前記開口部が前記くびれ部によってインクの流れに澱みが発生する前記くびれ部の下流側の近傍に配置され、更に、前記ノズル連通室が、前記共通インク流路の前記くびれ部に隣接して配置されていることを特徴としている。
【0012】
請求項1に記載のインクジェット記録ヘッドによれば、共通インク流路はくびれ部を有しているが、共通インク流路とイジェクタのインク供給路とをつなぐ開口部が、くびれ部によってインクの流れに澱みが発生する位置に配置されているので、インクの流れに澱みが発生しない。従って、共通インク流路の気泡の排出性が向上し、気泡の残留が防止される。
【0013】
尚、共通インク流路に気泡が残留しても、気泡が移動せず、そこに留まっていれば吐出特性に影響を及ぼすことは無い。しかし、振動や衝撃等、何らかの要因で残留していた気泡が移動し、インク供給路を通り圧力室に流入すると、気泡によって圧力室にかかる圧力が吸収され、そのイジェクタではインク滴の吐出特性が悪化したり、最悪の場合は不吐出となる。つまり、共通インク流路内の気泡の残留は、インクジェット記録ヘッドの信頼性を大きく損なう原因となる。
【0014】
しかし、上述したように、開口部がくびれ部によってインクの流れに澱みが発生する位置に配置されており、気泡の残留が防止されているので、共通インク流路に残留した気泡が圧力室に侵入することに起因する、インク滴の吐出特性の悪化や不吐出が防止される。
【0016】
また、くびれ部の下流側の近傍、すなわちインクの流れが最も澱んでいる部分に開口部が位置しているため、共通インク流路の気泡の排出性が最も向上する。したがって、気泡の残留がより防止され、気泡が圧力室に侵入することに起因する、インク滴の吐出特性の悪化や不吐出が防止される。
【0018】
また、イジェクタがマトリックス状に行列配置され、くびれ部の凹みにノズル連通室が配置されているため、特願2001−328765に記載されているように共通インク流路の音響容量を十分に確保しつつ、各イジェクタの配置間を狭くし、イジェクタを高密度に行列配置することができる。
【0019】
請求項2に記載の発明に係るインクジェット記録ヘッドは、請求項1に記載の構成において、前記アクチュエータが、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する圧電素子であることを特徴としている。
【0020】
請求項3に記載の発明に係るインクジェット記録ヘッドは、請求項1に記載の構成において、前記アクチュエータが、前記圧力室内のインクを加熱し発泡させることで加圧する発熱抵抗体であることを特徴としている。
【0021】
請求項4に記載の発明に係るインクジェット記録装置は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッドを使用することを特徴としている。
【0022】
請求項4に記載のインクジェット記録装置によれば、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッドを使用しているので、共通インク流路に澱みが生じない。したがって、共通インク流路の気泡の排出性が向上し、気泡の残留が防止される。このため、気泡が圧力室に侵入することに起因する、インク滴の吐出特性の悪化や不吐出が防止される。
【0023】
インク滴の吐出特性が悪化したり、不吐出が発生したりした場合等、インクジェット記録ヘッドのノズル面にキャップ部材を当接させ、ノズルからインクを吸引することで吐出特性を回復する吸引回復動作を行う必要がある。このような吸引回復動作をしばしば行うことは、ユーザーの信頼性を損なうだけでなく、吸引によってインクを浪費するためランニングコストも増加することになる。
【0024】
しかし、本発明のインクジェット記録装置は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッドを使用しているので、共通インク流路に残留した気泡に起因する吐出特性の悪化や不吐出を回復する為の吸引回復動作を行うことはない。このためユーザーの信頼性を損なったり、吸引によりインクを浪費しランニングコストも増加することもない。
【0025】
更に、共通インク流路がくびれ部を有しているため、共通インク流路の音響容量を十分確保しつつ、各イジェクタの配置間を狭くすることが可能となっている。従って、多数のイジェクタが高密度に配置されている。このため高速に印字できるインクジェット記録装置となっている。尚、共通インク流路の音響容量は十分確保されているので、イジェクタ間のクロストーク(圧力干渉)による吐出特性の悪化を招くことは無く、良好な画像品質となっている。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るインクジェット記録ヘッドの一の実施形態を図1〜図6に基づき説明する。尚、各図の矢印Fはインクの流れを表す矢印である。
【0027】
図1乃至は図4に示すようにインクジェット記録ヘッド112は、4箇所のインク供給部52から導入されたインクが充填される4個の第2共通インク流路50を備えている。この各第2共通インク流路50は5箇所の連通部54から、インクジェット記録ヘッド112を平面視したとき略長方形をした第1共通インク流路14がそれぞれ平行に伸びている。
【0028】
各第1共通インク流路14にはイジェクタ60のインク供給路18の開口部20が所定の間隔で接続され、インクジェット記録ヘッド102全体を平面視するとイジェクタ60がマトリックス状に配置されている。
【0029】
図5及び図6に示すようにイジェクタ60は、インク滴を吐出するノズル10と、インクを加圧し連通するノズル10からインク滴を吐出させ、インクの吐出方向に平面視したときの形状が六角形の形状をした圧力室12と、を備えている。更に、ノズル10と圧力室12とを連通するノズル連通室16と、第1共通インク流路14の開口部20と圧力室12とを連通するインク供給路18とを備えている。
【0030】
また、インクの吐出方向を垂直方向としたとき、垂直方向に平面視すると第1共通インク流路14とインク供給路18と圧力室12とが重なるように配置されている。このような配置とすることで、第1共通インク流路14とインク供給路18と圧力室12とが、水平方向に対しては高密度に配置可能となる。
【0031】
更に、圧力室12の上面には振動板34が接着され、振動板34の上面には、圧電素子36が接着され、圧電素子36の上面にはボール半田40を介して配線基板38が接合されている。
【0032】
尚、図3及び図4に示すように第1共通インク流路14は、第1共通インク流路14を挟んで隣接するノズル10間にくびれ部14Aを有し、このくびれ部14Aにノズル連通室16が位置するように配置されている。このような構成とすることで特願2001−328765に記載されているように第1共通インク流路14の音響容量を確保しつつ、イジェクタ60が高密度に配置可能となっている。
【0033】
また、インク供給路18と連通する開口部20はくびれ部14Aの下流側の近傍に位置している。
【0034】
次に本実施形態のインクジェット記録ヘッド112の製造方法について説明する。上述したインクジェット記録ヘッド112の各インク流路や各インク室は、孔が形成された複数のプレートを積層していくことで構成される。
【0035】
具体的には、ノズル10が形成されるノズルプレート22と、ノズル連通室16と第1共通インク流路14とを形成するインクプールプレート24、26と、ノズル連通室16と第1共通インク流路14の開口部20と第2共通インク流路50とを形成するスループレート28と、インク供給路18と第2共通インク流路50が形成されたインク供給路プレート30と、圧力室12と第2共通インク流路50が形成された圧力室プレート32とを順番に積層し接合する。
【0036】
次にノズルプレート22の表面に撥水コート膜を被覆すると共に、エキシマレーザにてノズル10を開ける。
【0037】
そして、ノズル10を形成後に圧力室プレート32に振動板34を接着する。
【0038】
尚、ノズルプレート22の材質はポリイミドであり、インクプールプレート24、26、スループレート28、インク供給路プレート30、圧力室プレート32、振動板34の材質はSUSである。尚、インクプールプレート24、26、スループレート28、インク供給路プレート30、圧力室プレート32、振動板34が接合されたものを流路プレートユニット44と言う。
【0039】
次に別途、剥離可能な接着剤、例えば接着後に所定の温度で加熱すると、発泡して接着力が大幅に低下する性質を有する熱発泡性接着フィルムを介して図示しない固定基板に接着された、図示しない圧電プレートに、例えばサンドブラスト加工を用いて、マトリックス状に配列された圧電素子36を作成する。
【0040】
この固定基板上にマトリックス状に作成された圧電素子の固定基板が接着された逆の面を、前述した流路プレートユニット44の振動板34の面に接着する
尚、圧電プレートの両面には、電極層として第1及び第2電極層がスパッタリングなどで予め形成されており、共通電極として兼用する振動板と導電性接着剤で接着することで、第一電極層、すなわち圧電素子36と振動板とは電気的にも接続される。
【0041】
続いて、固定基板を加熱して熱発泡性接着フィルムの接着力を低減させ、固定基板を剥離する。
【0042】
剥離後、各圧電素子36毎にボール半田40を形成した配線基板38を圧電素子36と接合する。前述したように圧電素子36の両面には第1及び第2電極層が形成されているので、第2電極層、すなわち圧電素子36と配線基板38とは電気的に接続されている。また、配線基板38と振動板34とは導電性材にて接続されている。
【0043】
このような製造方法にて本実施の形態のインクジェット記録ヘッド112が完成する。
【0044】
次に本実施形態の作用について説明する。
【0045】
インク供給部52からインクが導入され、第2共通インク流路50に充填される。第2共通インク流路50に充填後、各連通部54から各第1共通インク流路14に充填されていく。
【0046】
第1共通インク流路14に充填された後、図5(B)の矢印Fのように開口部20からインク供給路18を通って各圧力室12とノズル連通室16とにインクが充填され、ノズル10において表面が圧力室12側に僅かに凹んだメニスカスを形成する。
【0047】
インクが充填された状態で、例えばボール半田40から振動板34へと通電することで圧電素子36が歪み、振動板34を介して圧力室12のインクが加圧され、ノズル10からインク滴が吐出する。
【0048】
さて、第1共通インク流路14には、くびれ部14Aが設けられている。このため、第1共通インク流路14にインクが充填されていく過程において、くびれ部14Aの影響でインクの流れが遅くなる澱みが発生する。特に、下流側近傍(図8のY部)に最もインクの流れが遅くなる澱みが生じる。
【0049】
このような澱みには気泡が残留しやすい。第1共通インク流路14に気泡が残留しても、気泡が移動せず、そこに留まっていれば吐出特性に影響を及ぼすことは無い。しかし、振動や衝撃等の何らかの要因で残留していた気泡が移動し、インク供給路18を通り圧力室12に流入すると、気泡によって圧力室12にかかる圧力が吸収され、そのイジェクタ60ではインク滴の吐出特性が悪化したり、最悪の場合は不吐出となる。
【0050】
つまり、第1共通インク流路14内の気泡の残留は、インクジェット記録ヘッド112の信頼性を大きく損なう原因となる。従って、第1共通インク流路14の気泡の残留を防止する必要がある。
【0051】
そこで本実施形態では、図4に示すように各イジェクタ60のインク供給路18の開口部20を、くびれ部14Aの下流側近傍、すなわち、もっともインクの流れが遅いY部(図8参照)に配置することによって、澱みを解消している。従って、第1共通インク流路14の気泡の排出性が向上し、気泡の残留が防止される。このため、第1共通インク流路14に残留した気泡がイジェクタ60に進入することに起因する、インク滴の吐出特性の悪化や不吐出が防止される。
【0052】
従って、第1共通インク流路14に残留した気泡が圧力室12に流入することで、インク滴の吐出特性を悪化させたり、不吐出となることが防止されるため、インクジェット記録ヘッド112の信頼性を損なうことが無い。
【0053】
尚、ある条件においては、第1共通インク流路14のくびれ部14Aの形状を滑らかにすることでインクの澱みの解消は可能である。しかし、インクの澱みは、第1共通インク流路14内のインクの流速、第1共通インク流路14の壁の材質、インク材料等の各種条件に影響を受ける。このため、これらの条件によっては澱みが発生してしまうこともある。しかし、本実施形態では、各イジェクタ60のインク供給路18の開口部20を、この澱みが発生するY部に配置することによって澱みを解消し、気泡の排出性を向上させている為、これらのような条件には影響されないで、気泡の残留が防止される。
【0054】
次に本実施形態のインクジェット記録ヘッド112を使用したインクジェット記録装置について説明する。図7は、インクジェット記録ヘッド112を備えたインクジェット記録装置102の部分断面斜視図である。
【0055】
インクジェット記録装置102はインクジェット記録ヘッド112を搭載するキャリッジ104、キャリッジ104を主走査方向Mに走査する為の主走査機構106、記録媒体としての記録紙Pを副走査方向Sに走査する為の副走査機構108、及びメンテナンスステーション110等を含んで構成されている。
【0056】
インクジェット記録ヘッド112は、ノズル10が形成されたノズルプレート22(図5及び図6参照)が、記録用紙Pと対向するようにキャリッジ104上に搭載されており、主走査機構106によって主走査方向Mに移動されながら記録用紙Pに対してインク滴を吐出することにより、一定のバンド領域BEに対して画像の記録を行う。主走査方向Mへの1回の移動が終了すると、副走査機構108によって記録用紙Pが副走査方向Sに搬送され、再びキャリッジ104を主走査方向Mに移動させながら次のバンド領域BEを記録する。こうした動作を複数回繰り返すことにより、記録用紙Pの全面にわたって画像記録を行うことができる。
【0057】
また、インクジェット記録ヘッド112は、前述したようにマトリックス状に配置された多数のイジェクタ60を備えている。しかも、インクジェット記録ヘッド112は、第1共通インク流路14がくびれ部14Aを有しているため、イジェクタ60は主走査方向Mに対して高密度に配置されている。このためキャリッジ104の主走査方向Mの一回の移動で、広いバンド領域BEに画像を形成することができ、且つ、その走査時間も短くて済む。つまり、少ないキャリッジ104の移動回数及び時間で記録用紙Pの全面にわたって画像記録を行うことができるので、高速に印字できるインクジェット記録装置102となっている。
【0058】
尚、インクジェット記録ヘッド112は、第1共通インク流路14がくびれ部14Aを有しているため、ノズル10は主走査方向Mに対して高密度に配置可能となっているが、第1共通インク流路14の音響容量は十分確保されているので、イジェクタ60間のクロストーク(圧力干渉)による吐出特性の悪化を招くことは無く、良好な画像品質となっている。
【0059】
また、メンテナンスステーション110は、図示しないキャップ部材、吸引ポンプ、ダミージェット受け、クリーニング機構等を含んで構成されており、吸引回復動作、ダミージェット動作、クリニーニング動作等のメンテナンス動作を行う。
【0060】
吸引回復動作とは、インク滴の吐出特性が悪化したり、不吐出が発生したりした場合等に、インクジェット記録ヘッド112のノズルプレート22面にキャップ部材を当接させ、ノズル10からインクを吸引することで吐出特性を回復する動作のことをいう。尚、このような吸引回復動作をしばしば行うことは、ユーザーの信頼性を損なうだけでなく、吸引によってインクを浪費するためランニングコストも増加することになる。
【0061】
インク滴の吐出特性が悪化したり、不吐出が発生したりする原因は、いくつかあげられるが、前述したように、第1共通インク流路14に残留した気泡が、何らかの原因で圧力室12に進入することでも発生する。しかし、本実施形態のインクジェット記録ヘッド112は、第1共通インク流路14のインクの澱みが発生するY部(図8参照)に各イジェクタ60のインク供給路18の開口部20を配置し、澱みを解消している。従って、第1共通インク流路14の気泡の排出性が向上し、気泡の残留が防止される。このため、第1共通インク流路14に残留した気泡がイジェクタ60に進入することに起因する、インク滴の吐出特性の悪化や不吐出の回復の為の吸引回復動作を行うことはない。従って、ユーザーの信頼性を損なったり、吸引によりインクを浪費しランニングコストも増加することもない。
【0062】
尚、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。
【0063】
例えば、上記形態では第1共通インク流路14の片側のみにあったが、図9のように第1共通インク流路15の両側にくびれ部15Aを設け、開口部20は片側のくびれ部15Aの下流側近傍に設けられていても良い。確かに開口部20が配置されていないくびれ部15Aの下流側近傍には澱みが発生するが、開口部20が配置されているくびれ部15A近傍には澱みは発生しないので、澱みの領域は減少している。従って、気泡の排出性は向上しており、気泡の残留を抑えることができる。
【0064】
また、例えば、くびれ部14Aは、イジェクタ60を高密度に配置する為、第1共通インク流路14を挟んで隣接するノズル10間にくびれ部14Aを有し、このくびれ部14Aにノズル連通室16が配置されていたが、これに限定されない。くびれ部の目的、位置、形状は任意である。その他の目的や設計上の制約の為に設けるくびれ部であっても良い。
【0065】
また、例えば、上記実施の形態では、インクジェット記録ヘッド112をキャリッジ104によって搬送しながら記録を行ったが、これに限定されるものではない。例えば、ノズルを記録媒体の全幅にわたって配置したインクジェット記録ヘッドを用い、インクジェット記録ヘッドは固定して、記録媒体のみを搬送しながら記録を行っても良い。
【0066】
また、例えば、上記実施の形態では圧電素子36は、1枚の圧電素子36のたわみ振動によって圧力室12を加圧したが、これに限定されない。例えば、圧電素子を積層する形態であっても良いし、縦振動タイプの圧電素子であっても良い。或いは、その他形態の圧電素子であっても良い。
【0067】
また、例えば、上記実施の形態では、アクチュエータは圧電素子36からなっているが、これに限定されない。例えば、圧力室内のインクを加熱し発泡させることで加圧する発熱抵抗体であっても良いし、静電力や磁力を利用したものであっても良い。或いは、その他の形態のアクチュエータであっても良い。
【0068】
また、本明細書におけるインクジェット記録とは、記録紙上への文字や画像の記録に限定されるものではない。すなわち、記録媒体は紙に限定されるものでなく、また吐出する液体もインクに限定されるものではない。例えば、高分子フィルムやガラス上にインクを吐出してディスプレイ用カラーフィルターを作成したり、溶接状態の半田を基板上に吐出して部品実装用のバンプを形成したりするなど、工業用的に用いられる液滴噴射装置全般に対して本発明を利用することが可能である。
【0069】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明によれば、共通インク流路に設けられたくびれ部によって発生する澱みが解消され、気泡の排出性が向上し、気泡の残留が防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一の実施形態に係るインクジェット記録ヘッドを示す図である。
【図2】 本発明の一の実施形態に係るインクジェット記録ヘッドの第1共通インク流路と第2共通インク流路との連通部を示す断面斜視図である。
【図3】 本発明の一の実施形態に係るインクジェット記録ヘッドの第1共通インク流路とイジェクタを示す図である。
【図4】 本発明の一の実施形態に係るインクジェット記録ヘッドの第1共通インク流路とイジェクタとを示し、くびれ部と開口部の位置を表す図である。
【図5】 (A)は本発明の一の実施形態に係るインクジェット記録ヘッドの要部を示す断面斜視図である。(B)は(A)のX部分の拡大図である。
【図6】 (A)は本発明の一の実施形態に係るインクジェット記録ヘッドの要部を示す断面図である。(B)は(A)のA−A断面の図である。
【図7】 本発明の一の実施形態に係るインクジェット記録ヘッドを使用したインクジェット記録装置を示す図である。
【図8】 本発明の一の実施形態に係るインクジェット記録ヘッドの第1共通インク流路に設けられたくびれ部によって発生する澱みを説明する説明図である。
【図9】 本発明のその他の実施形態に係るインクジェット記録ヘッドの第1共通インク流路とイジェクタとを示し、くびれ部とくびれ部によって発生する澱みと開口部の位置を表す図である
【符号の説明】
10 ノズル
12 圧力室
14、15 第1共通インク流路(共通インク流路)
14A、15A くびれ部
16 ノズル連通室
38 圧電素子(アクチュエータ)
60 イジェクタ
102 インクジェット記録装置
112 インクジェット記録ヘッド
Claims (4)
- ノズルと、該ノズルに連通した圧力室と、該圧力室と前記ノズルとを連通するノズル連通室と、前記圧力室に接し、該圧力室内のインクを加圧し前記ノズルからインク滴を吐出させるアクチュエータと、前記圧力室に連通し、該圧力室にインクを供給するインク供給路と、を有するイジェクタを備え、
複数のイジェクタの前記インク供給路が接続され、該イジェクタの前記インク供給路の開口部から前記インク供給路にインクを供給する共通インク流路を備えたインクジェット記録ヘッドにおいて、
前記イジェクタがマトリックス状に行列配置されると共に前記共通インク流路が行又は列方向に沿って複数配設され、
平面視において、
前記共通インク流路が、幅方向内側に向けて凹んだ滑らかな凹状のくびれ部を有し、
前記開口部が前記くびれ部によってインクの流れに澱みが発生する前記くびれ部の下流側の近傍に配置され、
更に、前記ノズル連通室が、前記共通インク流路の前記くびれ部に隣接して配置されていることを特徴とするインクジェット記録ヘッド。 - 前記アクチュエータが、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する圧電素子であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録ヘッド。
- 前記アクチュエータが、前記圧力室内のインクを加熱し発泡させることで加圧する発熱抵抗体であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録ヘッド。
- 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッドを使用することを特徴とするインクジェット記録装置。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2003079794A JP4277549B2 (ja) | 2003-03-24 | 2003-03-24 | インクジェット記録ヘッド及びインクジェット記録装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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