JP4277473B2 - 酸化キトサンの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、天然物由来のキトサンの酸化物及びその製造方法に関するものである。特に、水系で簡便な手法にて、キトサンの分子内にカルボキシル基とアミノ基の両方の官能基を有し容易に幅広いpH領域において水に容易に膨潤または溶解する構造を有する酸化キトサンの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
キチンはカニやエビなどの甲殻類、カブトムシやコオロギなどの昆虫類の骨格物質として、また菌類や細胞壁にも存在し、N−アセチルD−グルコサミン残基が多数、β−(1,4)−結合した多糖類である。そして地球上でもっとも豊富な有機化合物であるセルロ−スと類似の構造を有し、2位の炭素に結合している水酸基の代わりにアセトアミド基が付加したアミノ多糖類(ムコ多糖類)である。キトサンはキチンを脱アセチル化して得られる多糖類で、グルコサミン残基またはN−アセチルグルコサミン残基がβ−(1,4)−結合した多糖類であり、グルコサミン残基に由来するカチオン性のアミノ基をもつ。
キチン・キトサンはセルロースと構造が類似しておるが、一般に水不溶性である上、適正な溶媒が少ないことにより有効な利用がなされていない。
【0003】
一方、近年これらの天然多糖類は、新しいタイプの生分解性高分子材料として、また生体親和性材料として注目され、その利用について多くの研究がなされ、数々の知見が得られてきている。特にキチン・キトサンは、この分野においての研究が盛んで、創傷治癒促進効果、抗凝血作用、免疫賦活活性、静菌・抗菌活性などさまざまな生物活性効果が報告されている。更にまた、細胞認識やそれに伴う情報伝達機構など生体機能発現において、糖鎖が鍵物質として重要な役割を演じていることも明らかになりつつある。
【0004】
このような医用材料として利用する場合も、取扱い上の利便性、各種化学薬品、薬剤との相溶性、薬効の均一性、加工性等の観点から、広範なpH領域に於いて水溶性であることが望ましい。
【0005】
キトサンは、酸性の水には塩を形成し、溶解する事が知られている。しかし、アルカリ性では沈殿してしまう。一方、キトサンの水溶化の方法として、様々な誘導体化を形成することが知られているが、その殆どは置換基分布もばらばらで、構造が均一ではなく、また誘導体化により導入した官能基が、生体に影響を及ぼす可能性は高いという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、医薬分野あるいは化粧品分野等様々な分野において有用な、高い親水性や幅広いpH領域での水溶性が付与された高純度の酸化キトサンおよび、これらの酸化キトサンを簡便な精製工程で容易かつ安価に得ることのできる製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、キトサンの構成単糖であるグルコサミンまたはN−アセチルグルコサミン残基の1級水酸基が選択的に酸化されたウロン酸残基を有する酸化キトサンおよびその製造方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、より安全な試薬を用いて、温和な反応条件下で、前記の如くキトサンを均一かつ効率よく酸化でき、高い水溶性を付与できる方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、キチンをN−オキシル化合物の触媒の存在下で水系で処理し、キチンの構成単糖であるN−アセチルDグルコサミンのピラノース環中のC6位の1級水酸基選択的に酸化、カルボキシル基又はその塩類導入し酸化キチンとする工程と、該酸化キチンを酸またはアルカリにより加水分解することにより脱アセチル化し酸化キトサンとする工程とを順に備えることを特徴とする酸化キトサンの製造方法である。
【0009】
請求項記載の発明は、前記N−オキシル化合物が、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンN−オキシルであり、水中で臭化アルカリ金属またはヨウ化アルカリ金属の存在下、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸およびそれらの塩のうち少なくとも1種の酸化剤を用いて、アルカリを添加してpHを一定に保ちながら酸化することを特徴とする請求項記載の酸化キトサンの製造方法である。
【0010】
請求項記載の発明は、前記キチンの酸化が、アルカリ添加量により酸化度を制御できることを特徴とする請求項記載の酸化キトサンの製造方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明はキチンの構成単糖である構成単糖であるN−アセチルDグルコサミンのピラノース環中のC6位の1級水酸基が選択的に酸化され、カルボキシル基又はその塩類を導入されている酸化キチンを脱アセチル化することにより、容易にキトサンのピラノース環中のC6位の1級水酸基が選択的に酸化された酸化キトサンを得ることを特徴としている。
以下、本発明の詳細を説明する。
【0012】
本発明の原料となるキチンは、N−アセチルD−グルコサミンがβ−(1,4)−結合した多糖類で、蟹やエビ、昆虫、さらには菌類などのキチンを含む共存物質から、脱灰、除タンパク、脂質および色素の除去などの工程を経て精製される。
また、一般的にキチンは下記化学式(1)(Y:NHCOCH3)で表されるものを構成単糖として含む化合物のことを言う。通常、天然ではYが100%NHCOCH3である状態で存在することは少ない。ここで、本発明の原料となるキチンは、下記化学式(1)中のYが必ずしも100%,NHCOCH3である必要はなく。NH2等が混在していても良い。
【0013】
【化1】
Figure 0004277473
【0014】
ここで、キチンの精製方法、重合度等については特に限定されるものではない。しかし、キチンを原料とする場合、キチンが高い結晶性を有すると酸化反応を阻害し、グリコシド結合の分解等の副反応を起こす可能性が高く、酸化生成物の収率や、生成物の化学的構造の均一さは低くなってしまうおそれがある。そこで、均一な構造を持ち、水溶性またはそれに近い酸化キチンを得たい場合、前記副反応を抑えるためにも、予め前処理により結晶性を下げた後、酸化反応を行うのが好ましい。
【0015】
前処理の方法については、キチンを様々な溶媒に溶解した後、再生させる方法、キチンを水に膨潤させ、凍結、解凍を繰り返す方法、爆砕等が挙げられるが、最も簡便かつ確実な方法として、アルカリにより膨潤または溶解処理したキチンを用いる方法が挙げられる。
【0016】
アルカリ処理には、例えば、キチンに対してアルカリ水溶液を散布したり湿潤させる方法、アルカリ水溶液にキチンを浸漬又は懸濁する方法により行なうことができる。なお、浸漬物や懸濁液を撹拌又は振盪することにより処理効率を高めることもできる。アルカリとしては、通常、アルカリ金属成分、例えば、アルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,水酸化リチウムなど)、アルカリ金属炭酸塩(炭酸ナトリウム,炭酸カリウムなど)、アルカリ金属炭酸水素塩(炭酸水素ナトリウム,炭酸水素カリウムなど)などが使用できる。これらのアルカリ金属化合物は単独で又は二種以上混合して使用してもよい。
【0017】
生成物の医療・医薬分野への利用など、その後の利用も考え、試薬も安全で、かつ安価で、処理の簡便な水酸化ナトリウムによるアルカリ処理がより好ましい。
このアルカリ処理において、キチンのアセチル基は濃アルカリにより脱離する性質があるので、この脱アセチル化を防ぐ為には低温で速やかに処理する事が望ましい。
【0018】
アルカリ水溶液の濃度は、特に制限されず、広い範囲(例えば、5〜45重量%程度)から選択できる。
アルカリの使用量は、キチンのN−アセチルグルコサミン単位に対して、例えば、1〜200倍モル(例えば、1.2〜170倍モル)、好ましくは1.5〜150倍モル、さらに好ましくは2〜100倍モル程度の範囲から選択できる。
【0019】
アルカリ処理の温度は、特に限定されず、例えば、−5〜50℃程度の範囲である場合が多いが、キチンの場合、脱アセチル化反応を抑える為や、結晶構造を緩める効率の為から、系の周りを氷冷するなどして、できるだけ低温で反応させた方がよい。
アルカリ処理時間は、結晶性、重合度、表面積などの原料キチンの性状によって異なり、特に限定されないが、通常、10分〜6時間、好ましくは30分〜3時間、特に1〜2時間程度の範囲が好ましい。
上記のようなアルカリ処理条件で、キチンを湿潤または浸漬、懸濁させることで、結晶性を下げる目的では充分であるが、キチンをより結晶内部までアルカリ処理を行う為には、脱気や、凍結、氷を添加しながらの攪拌を行うことで溶解まで至らせることを併用することと、その後の酸化反応がスムーズに進む。
【0020】
次に酸化キチンの製造方法について述べる。
本発明では、キチンの構成単糖であるN−アセチルDグルコサミンのピラノース環中のC6位の1級水酸基が選択的に酸化されていれば、キチンの酸化方法は特に限定するものではないが、例えば以下の方法が挙げられる。
酸化キチンは、N−オキシル化合物(オキソアンモニウム塩)の存在下、酸化剤を用いて、原料のキチンを酸化することにより得ることができる。N−オキシル化合物には、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシル(以下TEMPOと称する)などが含まれる。この酸化方法では、酸化の程度に応じて、カルボキシル基を均一かつ効率よく導入できる。本酸化反応は、前記N−オキシル化合物と、臭化物又はヨウ化物との共存下で行うのが有利である。臭化物又はヨウ化物としては、水中で解離してイオン化可能な化合物、例えば、臭化アルカリ金属やヨウ化アルカリ金属などが使用できる。酸化剤としては、ハロゲン、次亜ハロゲン酸,亜ハロゲン酸や過ハロゲン酸又はそれらの塩、ハロゲン酸化物、窒素酸化物、過酸化物など、目的の酸化反応を推進し得る酸化剤であれば、いずれの酸化剤も使用できる。
【0021】
ここでの酸化は、グルコサミン骨格中の6位の炭素を選択的に酸化するものである。また、この酸化方法の特徴は、他の部分を酸化せずにピラノース環中の6位の炭素を選択的に酸化することであるが、必ずしもピラノース環の6位の炭素の選択率が100%である必要はなく、優先的にピラノース環中の6位の炭素を選択的に酸化してあれば良い。
【0022】
N−オキシル化合物は触媒量で済み、例えば、キチンの構成単糖のモル数に対し、10ppm〜4%あれば充分であるが、0.05%から2%が好ましい。
【0023】
本発明の酸化反応条件などは特に限定されず、原料の性状、使用する設備などによって最適化されるべきであるが、臭化物やヨウ化物との共存下で酸化反応を行うと、温和な条件下でも酸化反応を円滑に進行させることができ、カルボキシル基の導入効率を大きく改善できる。
【0024】
臭化物及び/又はヨウ化物の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択でき、例えば、キチンの構成単糖のモル数に対し0〜100%である。しかし、反応効率の点から、1〜50%が好ましい。
【0025】
キチンの酸化反応は、例えばN−オキシル化合物にはTEMPOを用い、臭化ナトリウムの存在下、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムを用いて行うのが好ましい。
また、グルコサミン残基の1級水酸基(ピラノース環中6位炭素)への酸化の選択性を上げ、副反応を抑える目的で、反応温度は室温以下、より好ましくは系内を5℃以下で反応させることが望ましい。
【0026】
また、酸化反応中は系内をアルカリ性に保つことが好ましい。この時のpHは9〜13、より好ましくはpH10〜11.5に保つとよい。更に、本発明ではこのpHを一定値に保つ際に添加されるアルカリの量により酸化度を制御できる事を特徴としている。具体例として例えば、グルコサミン残基1モルに対し、添加するアルカリが1モルであると、全てのグルコサミン残基が酸化され、6位の炭素の一級水酸基がカルボキシル基となる。
【0027】
次に、前記したような方法で得られた酸化キチンを脱アセチル化することにより、容易に下記化学式(2)に示す部分を構成単糖とする酸化キトサンが得られる。
これらのTEMPO酸化キチンを脱アセチル化する方法は特に限定されるものではないが、酸やアルカリによる加水分解が好ましい。
【0028】
【化2】
Figure 0004277473
【0029】
(R:CH2OH又はCOOX(X:H又はアルカリ金属又はアルカリ土類金属)、Y:NHCOCH3又はNH2
【0030】
このように酸化された酸化キトサンは、非常に高い選択性で、1級水酸基と還元末端のみが酸化されており、2級水酸基やアミンの酸化は見られない。酸化キトサンは、キトサンの構成単糖である、グルコサミンまたはN−アセチルグルコサミン残基のC6位が酸化されたウロン酸構造を有する為、1分子内、1ユニット内にアニオン性とカチオン性の両方の官能基をもち、両性高分子としての利用が期待できる。更に、酸化キトサンは天然物由来の高分子で、生成したウロン酸も安全性が高く、食品、化粧品などの分野はもちろん、生体材料などとして、医療・医薬分野での利用も期待できる。
【0031】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
(酸化キチンの調製)
原料となるキチンには蟹ガラから脱灰、除タンパク、脂質および色素の除去などの工程を経て得られた市販のキチンを用いた。
キチンを10g、45%水酸化ナトリウム水溶液150gに浸漬し、室温以下で2時間攪拌した。これに、砕いた氷を850g、周りを氷水などで冷やし、攪拌しながら添加した。このアルカリ処理によりキチンはほぼ溶解する。塩酸で中和し、十分に水洗した後、乾燥させないものを試料とした。
この5%キチン懸濁液100gに、TEMPO0.1g、臭化ナトリウム1.25gを溶解させた水溶液を加え、キトサンの固形重量の全体に対する濃度が約2wt%になるよう調製した。次に、反応系を冷却し、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(Cl=5%)35gを添加し、酸化反応を開始した。反応温度は常に5℃以下に維持した。反応中は系内のpHが低下するが、0.5N−NaOH水溶液を逐次添加し、pH10.75に調整した。そして6位の1級水酸基の全モル数に対し、100%のモル数に対応するアルカリ添加量に達した時点で、エタノールを添加し、反応を停止させ、水:アルコール=2:8よりなる溶液により充分洗浄した後、アセトンで脱水し、40℃で乾燥させ、白い粉末状の酸化度100%の酸化キチンを得た。
この酸化キチンは完全に水溶可能であった。
【0032】
<実施例1>
前記酸化キチンの5%水溶液に濃水酸化ナトリウム水溶液を加え、水酸化ナトリウム濃度10%の水溶液とした。この水溶液を2時間攪拌し、塩酸で中和した後、多量のエタノールで沈殿させ、水:アセトン=1:7溶液で数回脱塩、洗浄し、最後にアセトンで脱水し、40℃で乾燥させ、粉末状の脱アセチル化度30%、酸化度100%の酸化キトサンを得た。
【0033】
得られた酸化キトサンをKBr錠剤法により赤外分光スペクトルを測定し、構造を解析した。その結果、IRスペクトルからは、1620、1420cm-1付近にカルボキシル基(ナトリウム塩)由来のピークが観測された。これらの結果より、キトサンの酸化によりカルボキシル基が導入されていることが確認され、酸化キチンからの脱アセチル化反応によっても酸化キトサンが得られる事が確認できた。
また、得られた酸化キトサンは完全に水に溶解した。この酸化キトサンを重水に溶解し、13C−NMRを測定した。13C−NMRスペクトルから、1級水酸基をもつC6位のピークが減少し、175−178ppmにキトサンの元々持つアセチル基のカルボニルピークの他に、導入されたカルボキシル基(ナトリウム塩)のカルボニルピーク(グルコサミン残基についているものとN−アセチルグルコサミン残基についているもの2本)が観測され、3位の酸化によるケトンの生成などは認められなかった。
【0034】
<実施例2>
前記酸化キチンの5%水溶液に濃水酸化ナトリウム水溶液を加え、水酸化ナトリウム濃度10%の水溶液とした。この水溶液を15時間攪拌し、塩酸で中和した後、多量のエタノールで沈殿させ、水:アセトン=1:7溶液で数回脱塩、洗浄し、最後にアセトンで脱水し、40℃で乾燥させ、粉末状の脱アセチル化度95%、酸化度100%の酸化キトサンを得た。
【0035】
得られた酸化キトサンをKBr錠剤法により赤外分光スペクトルを測定し、構造を解析した。その結果、IRスペクトルからは、1620、1420cm-1付近にカルボキシル基(ナトリウム塩)由来のピークが観測された。これらの結果より、キトサンの酸化によりカルボキシル基が導入されていることが確認され、酸化キチンからの脱アセチル化反応によっても酸化キトサンが得られる事が確認できた。
また、得られた酸化キトサンは完全に水に溶解した。この酸化キトサンを重水に溶解し、13C−NMRを測定した。13C−NMRスペクトルから、1級水酸基をもつC6位のピークが減少し、175−178ppmにキトサンの元々持つアセチル基のカルボニルピークの他に、導入されたカルボキシル基(ナトリウム塩)のカルボニルピーク(グルコサミン残基についているものとN−アセチルグルコサミン残基についているもの2本)が観測され、3位の酸化によるケトンの生成などは認められなかった。
【0036】
<実施例3>
前記酸化キチンを1N−塩酸水溶液に溶解し、1時間煮沸した。この水溶液を3倍量のエタノールに加え沈殿させ、水:アセトン=1:7溶液で数回脱塩、洗浄し、最後にアセトンで脱水し、40℃で乾燥させ、粉末状の脱アセチル化度90%、酸化度100%の酸化キトサンを得た。
【0037】
得られた酸化キトサンをKBr錠剤法により赤外分光スペクトルを測定し、構造を解析した。その結果、IRスペクトルからは、1620、1420cm-1付近にカルボキシル基(ナトリウム塩)由来のピークが観測された。これらの結果より、キチンの酸化によりカルボキシル基が導入されていることが確認され、酸化キチンからの脱アセチル化反応によっても酸化キトサンが得られる事が確認できた。
また、得られた酸化キトサンは完全に水に溶解した。この酸化キトサンを重水に溶解し、13C−NMRを測定した。13C−NMRスペクトルから、1級水酸基をもつC6位のピークが減少し、175−178ppmにキトサンの元々持つアセチル基のカルボニルピークの他に、導入されたカルボキシル基(ナトリウム塩)のカルボニルピーク(グルコサミン残基についているものとN−アセチルグルコサミン残基についているもの2本)が観測され、3位の酸化によるケトンの生成などは認められなかった。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、温和な反応条件下で簡便な方法により、キトサンを均一かつ効率よくその構成単糖であるグルコサミンまたはN−アセチルグルコサミンの2位や3位の炭素を酸化することなく、6位炭素を選択的に酸化し、カルボキシル基に変換でき、医薬分野あるいは化粧品分野など様々な分野において有用な、高い親水性や幅広いpH領域での水溶性が付与された高純度の酸化キトサンを得ることができる。
また、これらの水溶化した酸化キトサンは、含浸、塗工はもちろん、成形性にも優れ、繊維、膜など任意の形状に加工できる。
また、本発明の酸化キトサンは分子内にカチオン性であるアミンとアニオン性であるカルボキシル基の両方の官能基を有するため、両性高分子としての利用が期待できる。更に、酸化キトサンは天然物由来の高分子で、生成したウロン酸も安全性が高く、食品、化粧品などの分野はもちろん、生体材料などとして、医療・医薬分野での利用も期待できる。

Claims (3)

  1. キチンをN−オキシル化合物の触媒の存在下で水系で処理し、キチンの構成単糖であるN−アセチルDグルコサミンのピラノース環中のC6位の1級水酸基選択的に酸化、カルボキシル基又はその塩類導入し酸化キチンとする工程と、
    該酸化キチンを酸またはアルカリにより加水分解することにより脱アセチル化し酸化キトサンとする工程と
    を順に備えることを特徴とする酸化キトサンの製造方法。
  2. 前記N−オキシル化合物が、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンN−オキシルであり、水中で臭化アルカリ金属またはヨウ化アルカリ金属の存在下、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸およびそれらの塩のうち少なくとも1種の酸化剤を用いて、アルカリを添加してpHを一定に保ちながら酸化することを特徴とする請求項記載の酸化キトサンの製造方法。
  3. 前記キチンの酸化が、アルカリ添加量により酸化度を制御できることを特徴とする請求項記載の酸化キトサンの製造方法。
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