JP4254142B2 - 酸化キチンの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、天然物由来のキチン又はキトサンの酸化物に関するものであり、特に生体適合性、加工適性、生分解性の良い酸化キチン又は酸化キトサンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、セルロースやデンプンなどの多糖類材料は、生体適合性、生分解特性が高く、医療、食用など様々な分野で用いられてきた。しかし、一般的に多糖類材料、特にセルロースやキトサンは水不溶性であり、加工適性が良くないものもあった。水溶性の多糖類材料でもその水溶液は、一般に粘度が高い。特に分子量が10000以上になると、高濃度に溶解させることは困難であり、溶解するものでも高濃度域ではかなり高粘度になってしまう。そのため、食品の増粘剤などに用いるのには向いているが、高い粘度が障害となり、素材として利用する際の操作性が悪く、またさらに加工して用いたりするのにも適していなかった。かなりの低濃度域では粘度が低くなるものもあるが、含まれる多糖類も少ないため適用範囲が限定される。
【0003】
多糖類の中でも、キチン又はキトサンは、創傷治癒促進効果、抗凝血作用、免疫賦活活性、静菌・抗菌活性などさまざまな生物活性効果が期待されている。
キチンはカニやエビなどの甲殻類、カブトムシやコオロギなどの昆虫類の骨格物質として、また菌類や細胞壁にも存在し、N−アセチルD−グルコサミン残基が多数、β−(1、4)−結合した多糖類である。そして地球上でもっとも豊富な有機化合物であるセルロ−スと類似の構造を有し、2位の炭素に結合している水酸基の代わりにアセトアミド基が付加したアミノ多糖類(ムコ多糖類)である。
【0004】
また、キチンは一般的に水には不溶であり、キトサンはキチンの脱アセチル化合物でグルコサミンのβ−(1、4)−結合した多糖類であり、中性域の水には不溶であるが、酸性の水には塩を形成し溶解することが知られている。しかし、中性からアルカリ性では沈殿してしまう。
そのため、天然のキチン、キトサンは、そのままで用いることは難しく、またさらに加工するのにも向いておらず、用途が限られていた。
【0005】
キチン又はキトサンの水溶化の方法として、カルボキシメチル化など、様々な誘導体化が知られているが、そのほとんどは置換基分布もばらばらで、得られた化合物の構造が均一ではなく、その後の加工適性や様々な用途への応用にも限定がある。また、誘導化の方法が、環境汚染、危険を伴うものであったり、誘導体化により導入した官能基が、生体に悪い影響を及ぼす可能性もある。
【0006】
また、キチンなどの多糖類の水溶化の手法として、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシルを用いた酸化法が知られているが、用途などを想定した実用性ある材料としての記載はない。
【0007】
このように、多糖類の中でも幅広い用途が期待されるキチン、キトサンにおいて、安全で簡便な手法により、生体適合性、生分解性、加工適性の良いキチン、キトサン材料が望まれていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高い親水性や幅広いpH領域での水溶性が付与され、かつ高い濃度域でも粘度が低く、取り扱い性、加工適性が良く、生体適合性、生分解性に優れ、簡便で安全な方法により製造できる、高純度の酸化キチン又は酸化キトサンを得ることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、キチンをアルカリ水溶液に湿潤または浸漬、懸濁させることによりアルカリ処理する工程と、アルカリ処理されたキチンを乾燥することなく、水に溶解又は分散させ、N−オキシル化合物の存在下で水系で処理し、キチンの構成単糖であるN−アセチルグルコサミンのピラノース環中の6位炭素を選択的に酸化し、該6位炭素がカルボキシル基又はその塩に変換された酸化キチンとする工程を順に備え、且つ、該酸化キチンを25℃の水に溶かし、水溶液にしたときの濃度X(wt%)と粘度Y(mPas)の関係が下記式(1)を満たすことを特徴とする酸化キチンの製造方法である。
【0010】
Y≦ 7.92×e 0.145X (Y>0) (1)
【0011】
請求項2の発明は、前記酸化キチンの重量平均分子量(Mw)が10000以上であることを特徴とする請求項1記載の酸化キチンの製造方法である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細を説明する。
キチンは、下記化学式(3)で表わされるように、構成単糖であるN−アセチルグルコサミンがβ−1、4グリコシド結合した多糖のことをいう。また、キトサンは、キチンの脱アセチル化物と定義されている。一般的には、キチンの80%以上を脱アセチル化したものをキトサンと称する場合もあるが、自然界では下記化学式(3)のYで示される官能基の全てが、NHCOCH3又はNH2になっているわけではなく、純粋な意味でキチン、キトサンは存在しないといわれている。こうした意味から、キチンとその脱アセチル化物をすべてキチン・キトサンと表現されることが多い。本発明では、キチンは基本的にN−アセチルグルコサミンがβ−1、4グリコシド結合した多糖のことをいうが、多少脱アセチル化していても構わない。また本発明ではキトサンは大部分がキチンを脱アセチル化したものであり、脱アセチル化されていない部分が混在していても構わない。また、無水酢酸などによるキトサンのアミノ基のN−アセチル化反応によりN−アセチルグルコサミンを構成単糖に持つキチン、キトサンを用いることもできる。
【0013】
【化1】
Figure 0004254142
【0014】
(Y:NHCOCH3又はNH2、nは自然数)
【0015】
本発明の酸化キチン、酸化キトサンは、下記化学式(4)に示されるように、キチン又はキトサンの構成単糖であるN−アセチルグルコサミン、またはグルコサミンのピラノース環中2位や3位の炭素を酸化することなく、6位炭素を選択的に酸化しカルボキシル基に変換した構造を有し、25℃の水に溶かし、水溶液にしたときの濃度X(wt%)と粘度Y(mPas)の関係が下記式(1)を満たすことを特徴とする。
【0016】
【化2】
Figure 0004254142
【0017】
(R:COOX、X:H又はアルカリ金属又はアルカリ土類金属、Y:NHCOCH3又はNH2、nは自然数)
【0018】
Y≦ 7.92×e 0.145X (Y>0) (1)
【0019】
この範囲内であると、1wt%、さらには2wt%を超える高濃度域であっても低粘度を保つことができ、工業材料として用いる際の操作性、取り扱い性が良く、また他の材料と組み合わせて複合材料化する際にも、水系で簡便で均一に合成できる。また濃度を高くしても粘度が低いため、多くのキチン、キトサンを含んだ材料を調製することができる。
実測値では、本発明の酸化キチン、酸化キトサンの水溶液の粘度と濃度の関係式において、濃度が0に近いところでは、水の粘度1に近い値を示すが、本発明の酸化キチン、酸化キトサンは特に高濃度に溶解することができ、水溶液の粘度が低い。なお、大抵の水溶性多糖類は、およそ濃度1wt%以下の低粘度においては、低い粘度となるものもあるが、本発明の酸化キチン、酸化キトサンは高濃度域でも下記式(1)を満たすため、中、高濃度域でも加工適性、取り扱い性などに優れている。
また、式(1)の範囲内であり、かつ式(2)の範囲内であると、さらに高濃度域でも低粘度を保つことができ、好ましい。
【0020】
Y≦1.35×e0.20X (Y>0) (2)
【0021】
前記式(1)、式(2)をグラフ化したものを図2に示す。
【0022】
この範囲であれば、特にキチン、キトサンユニットをたくさん含んでおり、使用可能性の高い、濃度X(wt%)が2以上の領域での取り扱い性、加工適性が良いものである。濃度が2wt%のときの粘度が10、好ましくは5mPas以下、濃度が5wt%のときの粘度が16.5、好ましくは5mPas以下であると、好適である。
また、本発明の酸化キチン、酸化キトサンは、25℃の水100gに対して、10g以上、さらには30g以上溶解することができる。
【0023】
また、重量平均分子量(Mw)が10000以上で、上記式(1)を満たすことが好ましい。一般的に分子量が大きい物質は、膜や繊維にしたときに強度が強くなることが知られている。しかし分子量が大きくなると、粘度も高くなる。分子量、濃度、粘度がこの範囲内であると、酸化キチン、酸化キトサンをそのまま膜や繊維として用いた場合や、他の材料と複合化して用いる場合に、強度が強く、多くのキチン、キトサンユニットを含んだものとなり、好ましい。
【0024】
次に本発明の酸化キチン、酸化キトサンの製法を説明する。
本発明の原料となるキチンは、N−アセチルD−グルコサミンがβ−(1,4)−結合した多糖類で、蟹やエビ、さらには菌類などのキチンを含む共存物質から、脱灰、除タンパク、脂質および色素の除去などの工程を経て精製される。原料や精製方法、重合度等については特に限定されるものではない。
【0025】
キチンを原料とする場合、キチンの高い結晶性が酸化反応を阻害し、グリコシド結合の分解等の副反応を起こす可能性が高い。この副反応を抑えるためにも、予めアルカリなどにより結晶性を下げた後、酸化反応を行うのが好ましい。
【0026】
前処理の方法については、キチンを様々な溶媒に溶解した後、再生させる方法、キチンを水に膨潤させ、凍結、解凍を繰り返す方法、爆砕等が挙げられるが、最も簡便かつ確実な方法として、アルカリにより膨潤または溶解処理したキチンを用いる方法が挙げられる。
【0027】
アルカリ処理には、例えば、キチンに対してアルカリ水溶液を散布したり湿潤させる方法、アルカリ水溶液にキチンを浸漬又は懸濁する方法により行なうことができる。なお、浸漬物や懸濁液を撹拌又は振盪することにより処理効率を高めることもできる。アルカリとしては、通常、アルカリ金属成分、例えば、アルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,水酸化リチウムなど)、アルカリ金属炭酸塩(炭酸ナトリウム,炭酸カリウムなど)、アルカリ金属炭酸水素塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなど)などが使用できる。これらのアルカリ金属化合物は単独で又は二種以上混合して使用してもよい。
【0028】
生成物の医療・医薬分野への利用など、その後の利用も考え、試薬も安全で、かつ安価で、処理の簡便な水酸化ナトリウムによるアルカリ処理がより好ましい。
しかし、キチンのアセチル基は濃アルカリにより脱離する。この脱アセチル化を防ぐ為には低温で速やかに処理する事が望ましい。
【0029】
アルカリ水溶液の濃度は、特に制限されず、広い範囲(例えば、5〜45重量%程度)から選択できる。
アルカリの使用量は、キチンのN−アセチルグルコサミン単位に対して、例えば、1〜200倍モル(例えば、1.2〜170倍モル)、好ましくは1.5〜150倍モル、さらに好ましくは2〜100倍モル程度の範囲から選択できる。
【0030】
アルカリ処理の温度は、特に限定されず、例えば、−5〜50℃程度の範囲である場合が多いが、キチンの場合、脱アセチル化反応を抑える為や、結晶構造を緩める効率を考慮して、系の周りを氷冷するなど、できるだけ低温で反応させた方がよい。
アルカリ処理時間は、結晶性、重合度、表面積などの原料キチンの性状によって異なり、特に限定されないが、通常、10分〜6時間、好ましくは30分〜3時間、特に1〜2時間程度である。
上記のようなアルカリ処理条件でキチンを湿潤または浸漬、懸濁させるだけで結晶性を下げる目的では充分であるが、よりキチンの結晶内部までアルカリ処理を行う為には、脱気や、凍結、氷を添加しながら攪拌することで溶解まで至らせる方法などを併用すると、なお後の酸化反応がスムーズに進む。
【0031】
アルカリ処理終了後、適当な酸成分(塩酸,硫酸,硝酸など)でアルカリを中和し、キチンを分離し水洗した後、引き続き酸化反応に供される。中和の際は中和熱の影響を少なくする為に冷却しながら中和するのが望ましい。また、アルカリ処理されたキチンは、通常、乾燥することなくそのまま酸化反応に供される。乾燥させる場合は、凍結乾燥やアセトンなどで完全に水を置換した後に乾燥させるなど、再び水素結合を形成するのを抑えた状態で酸化に供するのが望ましい。
【0032】
キトサンを原料とする場合、前記キチンの脱アセチル化したものを用いることができる。また、脱アセチル化の程度は特に限定されるものではない。
また、酸化反応により、導入されるカルボキシル基の分布をより均一なものにするために、予め、酸で膨潤または溶解させ、水素結合などの分子間力が崩壊したキトサンの溶液を中和し、生成した塩を除くか或いはそのままの溶液を用いることが好ましい。この場合、処理されたキトサンは、通常、乾燥することなくそのまま酸化反応に供される。乾燥させる場合は、凍結乾燥やアセトンなどで完全に水を置換した後に乾燥させるなど、再び水素結合を形成するのを抑えた状態で酸化に供するのが望ましい。
【0033】
次に本発明で用いる酸化方法について説明する。
本発明における酸化方法はN−オキシル化合物などの触媒の存在下で、水に溶解又は分散させたキチンやキトサンを水系で処理することができる。またこの方法は、非常に高い収率で酸化キチン、酸化キトサンを得ることができる。
【0034】
本発明の酸化キチン又は酸化キトサンは、N−オキシル化合物(オキソアンモニウム塩)の存在下、酸化剤を用いて、原料のキチン又はキトサンを酸化することにより得ることができる。N−オキシル化合物には、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシル(以下TEMPOと称する)、などが含まれる。この酸化方法では、酸化の程度に応じて、カルボキシル基を均一かつ効率よく導入できる。本酸化反応は、前記N−オキシル化合物と、臭化物又はヨウ化物との共存下で行うのが有利である。臭化物又はヨウ化物としては、水中で解離してイオン化可能な化合物、例えば、臭化アルカリ金属やヨウ化アルカリ金属などが使用できる。酸化剤としては、ハロゲン、次亜ハロゲン酸,亜ハロゲン酸や過ハロゲン酸又はそれらの塩、ハロゲン酸化物、窒素酸化物、過酸化物など、目的の酸化反応を推進し得る酸化剤であれば、いずれの酸化剤も使用できる。
【0035】
本発明の酸化では、グルコサミン骨格中の6位の炭素を選択的に酸化するものである。N−オキシル化合物は触媒量で済み、例えば、キチンやキトサンの構成単糖のモル数に対し、10ppm〜4%あれば充分であるが、0.05%から2%が好ましい。
【0036】
本発明の酸化反応条件などは特に限定されず、原料の性状、使用する設備などによって最適化されるべきであるが、臭化物やヨウ化物との共存下で酸化反応を行うと、温和な条件下でも酸化反応を円滑に進行させることができ、カルボキシル基の導入効率を大きく改善できる。
【0037】
臭化物及び/又はヨウ化物の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択でき、例えば、キチンやキトサンの構成単糖のモル数に対し0〜100%である。しかし、反応効率の点から、1〜50%が好ましい。
【0038】
本発明におけるキチン又はキトサンの酸化反応は、例えばN−オキシル化合物にはTEMPOを用い、臭化ナトリウムの存在下、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムを用いて行うのが好ましい。
【0039】
本発明における酸化キチン又は酸化キトサンの酸化反応では、グルコサミン残基の1級水酸基への酸化の選択性を上げ、副反応を抑える目的で、反応温度は室温以下、より好ましくは系内を5℃以下で反応させることが望ましい。
【0040】
また、本発明の酸化キチン又は酸化キトサンの製造方法では、その反応効率の為に反応中は系内をアルカリ性に保つことが好ましい。この時のpHは9〜13、より好ましくはpH10〜11.5に保つとよい。更に、本発明はこのpHを一定値に保つ際に添加されるアルカリの量により酸化度を制御できることを特徴としている。グルコサミン残基1モルに対し、添加するアルカリが1モルであると、全てのグルコサミン残基が酸化され、ピラノース環中の6位の炭素が、カルボキシル基となる。
【0041】
また、前記酸化度は、60%以上であると生体適合性がよく、水との親和性も高まるので好ましい。また、90%以上であると、高い水溶性を付与でき、粘度もさらに低いものとなるため特に好ましい。
【0042】
また、本発明の酸化キトサンは前記した方法により得られた酸化キチンを脱アセチル化することにより製造しても良い。
【0043】
このように酸化された酸化キチン又は酸化キトサンは、非常に高い選択性でキチン又はキトサンの構成単糖であるN−アセチルグルコサミン、またはグルコサミンのピラノース環中の6位炭素を酸化し、2位や3位の炭素を酸化することがほとんどない。
【0044】
酸化キチンは、構成単糖であるN−アセチルグルコサミン、またはグルコサミンのピラノース環中の6位炭素が、カルボキシル基に変換されたウロン酸構造を有しており、保湿剤をはじめ広く利用されているヒアルロン酸とよく似た構造となる。
酸化キトサンはN−アセチルグルコサミン、またはグルコサミンのピラノース環中の6位炭素が酸化されたウロン酸構造を有する為、1分子内、1ユニット内にアニオン性とカチオン性の両方の官能基をもち、両性高分子としての利用が期待できる。
【0045】
このように得られた酸化キチン、酸化キトサンは、非常に生体親和性が高く、高濃度域でも粘度が低いため、取り扱い性、加工適性が良く、また安全で簡便な方法で製造できる。
更に、酸化キチン又は酸化キトサンは天然物由来の高分子で、生成したウロン酸も安全性が高く、食品、化粧品などの分野ではもちろん、生体材料などとして、医療・医薬分野での利用も期待できる。
【0046】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
<実施例1>
キチン(和光純薬工業(株)製)を10g、45%水酸化ナトリウム水溶液100gに浸漬し、室温以下で2時間攪拌した。これに、砕いた氷を350g、周りを氷水などで冷やし、攪拌しながら添加した。このアルカリ処理によりキチンはほぼ溶解する。塩酸で中和し、十分に水洗した後、乾燥させないものを実施例1のキチンの原料とした。収率は約95%であった。
【0047】
前記前処理したキチン原料の5%キチン懸濁液100gに、TEMPO 0.08g、臭化ナトリウム 1.25gを溶解させた水溶液を加え、キチンの固形重量の全体に対する濃度が約2wt%になるよう調製した。反応系を冷却し、11%次亜塩素酸ナトリウム水溶液40gを添加し、酸化反応を開始する。反応温度は常に5℃以下に維持した。反応中は系内のpHが低下するが、0.5N−NaOH水溶液を逐次添加し、pH10.8付近に調整した。N−アセチルグルコサミン、またはグルコサミンのピラノース環中の6位炭素の全モル数に対し、100%のモル数に対応するアルカリ添加量に達した時点、約2時間後では系内全体が完全に透明になった。エタノールを添加し、反応を停止させ、水:アルコール=2:8により充分洗浄した後、アセトンで脱水し、40℃で乾燥させ、白い粉末状の酸化度100%の酸化キチンを得た。収率は約89%であった。
【0048】
<実施例2>
11%次亜塩素酸ナトリウム水溶液の添加量を24gとする以外は実施例1と同様の処理を繰り返し、反応を開始した。アルカリの添加量が60%に達した時点で反応を停止させ、酸化度60%の酸化キチンを得た。
【0049】
参考例
原料となるキトサンにはフレーク状の市販のキトサン(脱アセチル化度約75%)を用いた。キトサンの2%塩酸塩水溶液を水酸化ナトリウムで中和し、脱塩の為に水洗した後、5%キトサン懸濁液100g(キトサン5g)に、TEMPO 0.08g、臭化ナトリウム 1.25gを溶解させた水溶液を加え、キトサンの固形重量の全体に対する濃度が約2wt%になるよう調製した。反応系を冷却し、11%次亜塩素酸ナトリウム水溶液45gを添加し、酸化反応を開始した。反応温度は常に5℃以下に維持した。反応中は系内のpHが低下するが、0.5N−NaOH水溶液を逐次添加し、pH10.75に調整した。N−アセチルグルコサミン、またはグルコサミンのピラノース環中の6位炭素の全モル数に対し、90%のモル数に対応するアルカリ添加量55.9mLに達した時点で、エタノールを添加し、反応を停止させ、水:アルコール=2:8により充分洗浄した後、アセトンで脱水し、40℃で乾燥させ、酸化度90%の酸化キトサンを得た。
【0050】
<比較例1>
実施例1で原料として用いたキチンを比較例1のキチンとした。なお、酸化などの処理はしていないものである。
【0051】
<比較例2>
市販の脱アセチル化度100%のキトサン5gを10%酢酸95gに溶解し、メタノール500gで希釈し、攪拌しながら無水酢酸1.59gを加え、室温で15時間攪拌した。2N?NaOH水溶液を加えて中和するとフレークが析出するので、これを濾過し、メタノール及び水:アセトン=1:7よりなる溶液により充分に洗浄した後、アセトンで脱水し、40℃で減圧乾燥させて、フレーク状のN?アセチル化度50%のキトサンを得、比較例2のキトサンとした。
【0052】
<測定>
(NMR)
実施例1のサンプルを重水に溶解させ、13C−NMRを測定し、その結果を図1に示す。
(粘度、分子量)
実施例1、2、参考例、比較例のサンプルの各濃度の水溶液を調整し、B型粘度計により25℃の粘度を測定した。結果を表1、図3に示す。
またそれぞれのサンプルの重量平均分子量(Mw)を、GPC法により測定した。カラムはTSK−gelG6000PWXL、TSK−gelG3000PWXLを用い、0.1M−NaClを溶離液とし、RI検出器を用い測定し、分子量既知の標準プルランから分子量を換算した。結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
Figure 0004254142
【0054】
図1に示した通り、酸化キチン(B)では、酸化前のキチン(A)のピラノース環炭素6位の水酸基をもつ炭素に由来するピークが消え、カルボキシル基に変換していることが分かる。2位、3位の炭素に由来するピークは変化せず、ケトンなどのピークは確認されなかった。即ちNアセチルグルコサミンのピラノース環中、6位炭素のみを酸化し、カルボキシル基に変換したことが確認できた。
【0055】
表1、図3に示した通り、本発明の実施例1〜3の酸化キチン、酸化キトサンは、高濃度域でも低粘度を保つことができる。それに対し、比較例1のキチンは水に不溶で、比較例2のキトサンは粘度が高く、また高濃度域では水に不溶となり、取り扱い性、加工適性があまり良くないものとなった。
【0056】
【発明の効果】
本発明によれば、高い親水性や幅広いpH領域での水溶性が付与され、かつ高い濃度域でも粘度が低く、取り扱い性、加工適性の良い酸化キチン、酸化キトサンが得られる。そのため、そのまま食品、化粧品、医薬品など様々な分野での利用が適しており、かつさらなる加工にも適しているものである。また、本発明の酸化キチン、酸化キトサンは、ウロン酸構造を有し、そのため生体適合性が非常に高い。またキチン・キトサンは生分解適性が高く、得られた本発明の酸化キチン、酸化キトサンも高い生分解性を有する。また本発明によれば、安全で簡便で、かつ高純度の酸化キチン、酸化キトサンを得ることができる。
【0057】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1で合成したサンプルの13C−NMRの測定結果を示すグラフである。
【図2】本発明の酸化キチン、酸化キトサンの濃度−粘度の関係式と実施例1の濃度−粘度を示したグラフである。
【図3】本発明の酸化キチン、酸化キトサンの濃度−粘度の関係式と実施例、比較例の関係を示したグラフである。

Claims (2)

  1. キチンをアルカリ水溶液に湿潤または浸漬、懸濁させることによりアルカリ処理する工程と、
    アルカリ処理されたキチンを乾燥することなく、水に溶解又は分散させ、N−オキシル化合物の存在下で水系で処理し、キチンの構成単糖であるN−アセチルグルコサミンのピラノース環中の6位炭素を選択的に酸化し、該6位炭素がカルボキシル基又はその塩に変換された酸化キチンとする工程を順に備え、且つ、
    該酸化キチンを25℃の水に溶かし、水溶液にしたときの濃度X(wt%)と粘度Y(mPas)の関係が下記式(1)を満たすことを特徴とする酸化キチンの製造方法。
    Y≦7.92×e0.145X (Y>0) (1)
  2. 前記酸化キチンの重量平均分子量(Mw)が10000以上であることを特徴とする請求項1記載の酸化キチンの製造方法
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