JP4277185B2 - 浮体式免震構造物の付加減衰機構 - Google Patents

浮体式免震構造物の付加減衰機構 Download PDF

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Description

本発明は、浮体式免震構造物の付加減衰機構に関する。
従来より、構造物本体を液体中に浮かべることで、固有周期の長周期化を図る完全浮体構造の浮体式免震構造物は、水平地震動に対して高い免震効果を得ることのできる構造として、一般に広く知られている(非特許文献1参照)。
大山 巧他、「浮体式免震工法に関する研究−水平免震性能と風外力に対する安定性−」、日本建築学会大会学術講演概集、p765-766、1999年9月
また、これら完全浮体構造の浮体式免震構造物と同等の免震性能を確保しながら、構造物本体の変動荷重による水平軸から見た傾きや、液体の液面変動に追随する鉛直方向の挙動を抑制でき、固定構造物と同等の居住性及び使用性を確保できるものとして、構造物本体を完全に液体中に浮揚させることなく、構造物本体自身の固定荷重の一部を、免震装置等の低せん断構造体を介して地盤で支持する、部分浮体式構造の浮体式免震構造物も提案されている(特願平2002−188430号)。
このような浮体式免震構造物は、完全浮体構造及び部分浮体式構造の何れにおいても、構造物本体の固有周期を地震動の卓越周期帯域から長周期側にずらすことにより、地震に対してほぼ揺れない、応答加速度の小さい構造を実現するものである。
しかし、実際の地震動は、加速度が小さいものの、変位の大きい長周期成分を含む場合が考えられる。地震動にこのような長周期成分が含まれる場合、例えば、部分浮体式構造の浮体式免震構造物では、構造物本体を支持する低せん断構造体が水平方向の変形限界を上回る可能性がありうる。このため、低せん断構造体の安全性を確保するべく、構造物本体の固有周期に近い周期帯域の外力に対しても、構造物本体の水平方向の変動を低減できるような機能が求められている。
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、浮体の固有周期に近い周期帯域の、浮体に作用する水平外力に対しても、浮体の水平挙動を抑制することのできる浮体式免震構造物の付加減衰機構を提供することを目的としている。
請求項1記載の発明は、地盤を掘削して構築する免震ピットと、該免震ピットの内方に満たされる液体と、該液体中に少なくとも固定荷重より大きい浮力を生じない深さまで挿入される浮体構造物本体と、地盤に支持され、前記浮体構造物本体に生じる鉛直下方向の変動荷重と浮力で相殺しない固定荷重を支持し、前記浮体構造物本体と地盤との水平挙動を絶縁する低せん断剛性構造体を備える浮体式免震構造物の付加減衰機構であって、液体中に配置することにより、液体粒子との相対速度に応じた液体の粘性に起因して、液体の上下方向の運動エネルギーの逸散を生じさせる減衰構造体を、前記浮体構造物本体の側壁と前記免震ピットの側壁に挟まれかつ少なくとも前記液体の液面上限高さとピット底面との間の高さ範囲内において、少なくとも前記免震ピットの側壁に配置することにより構成されることを特徴としている。
請求項2記載の発明は、前記低せん断剛性構造体が、前記免震ピットの底面を介して地盤に支持されて該免震ピットの底面と前記浮体構造物本体の底面との間に設置されることを特徴としている。
請求項3記載の発明は、前記減衰構造体が、透水性能を有する部材を、立体構造体に成形してなることを特徴としている。
請求項4記載の発明は、前記減衰構造体が、鉛直方向に所定の離間間隔をもって水平に配置され、前記液体の流動に伴う液圧を受けても変形することがなく、貫通孔を複数備えた複数の板材により構成されることを特徴としている。
請求項1に記載の浮体式免震構造物の付加減衰機構によれば、減衰構造体が、浮体構造物本体の側壁と免震ピットの側壁との間に挟まれる位置において少なくとも免震ピットの側壁に配置されることから、地震等が発生して浮体構造物本体が免震ピット内において水平振動することにより生じる鉛直流体運動、つまり浮体構造物本体の両側の水位差が上下方向に交互に変動する周期的な上下方向の運動に減衰力を付与することができる。
これにより、浮体構造物本体の両側で交互に生じる、流体の鉛直流体運動に伴って発生し、浮体構造物本体に作用する流体力が、浮体構造物本体の水平方向の復元力に加え、減衰力としても機能することとなる。
したがって、減衰構造体は、浮体構造物本体の共振現象を抑える効果的な付加減衰機構として機能するとともに、付加減衰機構を備えた浮体式免震構造物は、地震動の卓越周期帯域より長周期側に位置する浮体構造物本体の固有周期に近い成分を多く含む地震波に対しても、浮体構造物本体の水平変位を低く抑えることが可能となる。
また、減衰構造体は、浮体構造物本体の側壁と免震ピットの側壁との間において少なくとも免震ピットの側壁に設置していることから、視覚で捉えることができる状況もあり得る。このような場合には、意匠上の課題は検討の余地があるものの、減衰構造体の点検やメンテナンスといった観点からは、作業を容易に行うことが可能となる。
さらに、減衰構造体は、地震時に浮体構造物本体が水平方向に挙動した際にも免震ピットと接触することのないようあらかじめ設けられており、浮体構造物本体の側壁と免震ピットの側壁との間のクリアランスを利用して配置できることから、減衰構造体を浮体式免震構造物に付加するに際し、免震ピットの構築に影響を及ぼすことがないため、新たに発生する建設コストを増大させることはない。
請求項2に記載の浮体式免震構造物の付加減衰機構によれば、水中使用可能な低せん断剛性構造体を免震ピットの底面を介して地盤に支持することにより、該低せん断剛性構造体を免震ピットの底面と浮体構造物本体の底面との間に設置することにより、浮体構造物本体の上部構造を免震ピットより張り出す程度の大きさの平面視形状に形成する必要はない。
請求項3に記載の浮体式免震構造物の付加減衰機構によれば、前記減衰構造体が、透水性能を有する部材を、立体構造体に成形してなることから、透水性能を有する部材の空隙率や透水性能の調整により、減衰性能を制御できるとともに、減衰構造体の体積でも減衰性能を制御することができ、その取り扱いを容易に行うことが可能となる。
請求項4に記載の浮体式免震構造物の付加減衰機構によれば、前記減衰構造体が、鉛直方向に所定の離間間隔をもって水平に配置され、表面に複数の突起物を備えた複数の板材により構成される。もしくは、貫通孔を複数備えた複数の板材により構成される。これにより、一般の免震構造に減衰装置として用いられているダンパーと比較して、その構成が簡略化できるとともに安価で、メンテナンスを不要とすることも可能である。
以下、本発明に係る浮体式免震構造物の付加減衰機構について、図1から図7に基いて説明する。本発明の浮体式免震構造物の付加減衰機構は、液体粒子との相対速度に応じた液体の粘性に起因して、液体に運動エネルギーの逸散を生じさせる減衰構造体を、前記浮体構造物本体の側壁と免震ピットの側壁に挟まれる位置に配置し、地震等が発生して浮体構造物本体が免震ピット内を水平方向に移動することにより生じる、浮体構造物本体の側壁と免震ピットの側壁に挟まれる領域の水位差が上下方向に交互に変動する周期的な運動、つまり鉛直流体運動に減衰力を付与する。これにより、浮体構造物本体に作用する流体力を、水平方向に挙動する浮体構造物本体の復元力のみならず減衰力に変換し、浮体式免震構造物の固有周期に近い長周期成分を含む地震動に対しても、高い免震性能を維持するものである。
浮体式免震構造物1は、図1(a)に示すように、浮体構造物本体2と、免震ピット3と、液体6と、低せん断剛性構造体7と、減衰構造体8を備えている。浮体構造物本体2は、居住空間やオフィス空間等の居室機能を有するものであり、免震ピット3は、地盤9を所望の深さまで掘削することにより形成され、内回りには内壁を構成するように、土圧を受けるための免震ピット側壁5を備えている。
また、前記免震ピット3は、浮体構造物本体2が免震ピット3の内方に配置された際に、浮体構造物本体2の側壁と免震ピット側壁5との間に所定幅のクリアランスが確保できる大きさの平面視形状に構築されており、地震等により浮体構造物本体2が水平方向に移動した場合にも、免震ピット側壁5に浮体構造物本体2が接触することはない。このような免震ピット3は、その内方に液体6が配されることを目的として設けられるスペースである。
つまり、前記浮体式免震構造物1は、免震ピット3に液体6を配し、該液体6に浮揚するように浮体構造物本体2を配置することにより構成されている。ここで、浮体構造物本体2の浮体荷重Wは、浮体構造物本体2の固定荷重Wと、内装等による積載荷重及び利用者の移動等により生じる活荷重を含む鉛直下方向に作用する正値の変動荷重Wとを足しあわせたもの(W=W+W)である。
しかし、本実施の形態では、前記浮体構造物本体2の浮体荷重W全てを浮力により相殺することなく、浮体構造物本体2の固定荷重Wの一部(ΔW)を除いた荷重(W−ΔW)を浮力Bにより相殺する深さまで、浮体構造物本体2を液体6中に挿入する構成としている。このため、該浮体構造物本体2は、変動荷重W及び固定荷重Wの一部(ΔW)が鉛直下方向に生じることとなるが、この荷重W+ΔW は、せん断弾性係数の小さいゴム等により構成される低せん断剛性構造体7を介して、地盤9に支持する構成としている。
該低せん断剛性構造体7は、免震ピット3の外周縁近傍の地盤9上に、所定の距離を持って複数配置されており、該低せん断剛性構造体7に、平面視形状を免震ピット3より張り出す程度の大きさに形成した、前記浮体構造物本体2の上部構造2aが、軟着底するものである。なお、水中使用可能な低せん断剛性構造体7を用いる場合には、浮体構造物本体2の底面と免震ピット3のピット底面4の間に低せん断剛性構造体7を設置しても良く、その場合には、浮体構造物本体2の上部構造2aを免震ピット3より張り出す程度の大きさの平面視形状に形成する必要はない。
このように配置される該低せん断剛性構造体7は、前記浮体構造物本体2に生じる変動荷重W及び固定荷重Wの一部(ΔW)を支持する機能と、浮体構造物本体2と地盤9中に位置している免震ピット3との水平挙動を絶縁し、長周期化する機能とを有するアイソレーターとして機能するものである。
これにより、浮体式免震構造物1は、浮体構造物本体2に対して、高い免震効果を付与できるとともに、変動荷重Wによる浮体構造物本体2の傾きをも抑制して、固定構造物の同じ居住性・使用性を確保できるものである。
なお、低せん断剛性構造体7で、変動荷重Wだけでなく固定荷重Wの一部(ΔW)を支持させる構成は、免震ピット3に配される液体6が、いずれかの原因で液面変位を生じる場合に備えるものである。つまり、免震ピット3に配される液体6の液面が、何らかの現象により上昇し浮力Bが増大した場合にも、固定荷重Wの一部(ΔW)で相殺することにより、浮体構造物本体2の浮き上がりを防止するものである。
このため、前記免震ピット3に配された液体6の液面が上昇し、最上液面に達した際にも、固定荷重Wの一部(ΔW)が0以上となるように、常時において、浮体構造物本体2の液体6中への挿入深さを調整しておく、もしくは、液深の最大値もしくは液面の最上レベルも調整しておくことが必要である。これにより、液体6が最上液面に達した際にも、浮体構造物本体2が完全に浮揚することなく、低せん断剛性構造体7に支持される状態を維持できるものである。
したがって、前記免震ピット3に配される液体6が液面変位を生じない場合には、固定荷重Wの全部を浮力Bで相殺するように、浮体構造物本体2の液体6中への挿入深さを調整しておき、前記低せん断剛性構造体7には、変動荷重Wのみを支持させる構成としても良い。
また、本実施の形態において、該低せん断剛性構造体7には積層ゴムを用いているが、必ずしもこれにこだわるものではなく、上述する変動荷重W及び固定荷重Wの一部(ΔW)を支持できる鉛直剛性と、浮体構造物本体2と地盤9中に位置する免震ピット3との水平挙動を絶縁し、浮体構造物本体2の固有周波数を長周期化する機能とを有するものであれば、低せん断剛性構造体7に何れを用いてもよい。
ただし、免震ピット3の液体6は、液面変位を生じない場合においてもいずれかの現象により液面下降することが想定されるものである。このような場合には、浮力Bが減少して浮体構造物本体2の固定荷重Wの一部(ΔW)は増大する。したがって、該低せん断剛性構造体7は、液体6が最下液面に達した際の固定荷重Wの一部(ΔW)を支持する場合にも、上述する機能を損なうことなく、浮体構造物本体2を支持できる強度を確保しておくこととする。
上述する構成の浮体式免震構造物1には、図1(a)に示すように、前記免震ピット3に備えられている免震ピット側壁5の側面に、減衰構造体8が設置され、付加減衰機構が構成されている。これら減衰構造体8は、透水性能を有する部材により構成されており、所定の厚さ及び面積を有する立体構造体に形成されている。本実施の形態では、該減衰構造体8の材料に、立体不織布を用いているが、必ずしもこれにこだわるものではなく、アスファルト等のれき性材料やモルタル及びコンクリート等のセメント系材料で構成される透水性を有するマット、ポリエチレンやポリプロピレンなどのプラスチック材料で作られたドレーンマット、あるいは軽石などを収納したスリット状の収納装置等、空隙率が高く、透水係数の高い材料であれば何れを用いても良い。
このような構成の減衰構造体8は、少なくとも、地震等が発生して浮体構造物本体2が水平方向に移動することにより、液体6に、浮体構造物本体2の両側の水位差が上下方向に交互に変動する周期的な運動、つまり鉛直流体運動が生じた際の、前記液体6の液面上限高さとピット底面4との間の高さ範囲に設置されている。
なお、前記減衰構造体8は、必ずしも免震ピット側壁5に対してのみ設置することに限らず、浮体構造物本体2の側壁にも設置しても良い。すなわち、減衰構造体8は、免震ピット側壁5と浮体構造物本体2の側壁との間に挟まれる領域において少なくとも免震ピット側壁5に設置すれば良く、したがって免震ピット側壁5と浮体構造物本体2の側壁の双方に設置しても良い。
また、減衰構造体8は、免震ピット側壁5と浮体構造物本体2の側壁との間に挟まれる領域において少なくとも免震ピット側壁5に設置する限りにおいて、図1(b)に示すように、複数に分割して鉛直方向所定の離間間隔をもって水平に配置する、もしくは、図1(c)に示すように、複数に分割して向かい合う浮体構造物本体2の側壁と免震ピット側壁5の両者で、鉛直方向に所定の離間間隔を設けて交互に千鳥配置となるように設置しても良く、減衰構造体8を単体で、もしくは複数に分割して設置しても良い。
このように該減衰構造体8を、前記免震ピット側壁5と浮体構造物本体2の側壁との間に挟まれる領域に位置するように設置する構成は、減衰構造体8を液体6中に配置することにより、減衰構造体8の内方に侵入して流動する液体粒子と減衰構造体8との相対速度に応じて、液体の粘性に起因して起こるエネルギー逸散を利用するものである。
つまり、減衰構造体8は、地震等が発生して浮体構造物本体2が免震ピット3内を水平方向に移動することにより浮体構造物本体2の両側で交互に生じる、液体6の鉛直流体運動に、減衰力を付与するものである。
ここで、地震等が発生して浮体構造物本体2が免震ピット3内を水平方向に移動することにより浮体構造物本体2の両側で交互に生じる、液体6の鉛直流体運動は、浮体構造物本体2の両側に異なる圧力を有する反作用的な流体力として浮体構造物本体2に伝達される。したがって、浮体構造物本体2の両側で、前記液体6に鉛直流体運動が生じる場合において、減衰がない場合の液体6の流体力は、水平方向に挙動する浮体構造物本体2に対して復元力として作用する。
しかし、前述したように、前記免震ピット側壁5と浮体構造物本体2の側壁との間に挟まれる領域に減衰構造体8を配置し、付加減衰機構を構成することにより、浮体構造物本体2の両側で交互に生じる、前記液体6の鉛直流体運動に減衰力が付与されることとなるため、これに伴い液体6の流体力が、水平方向に挙動する浮体構造物本体2に対して復元力のみでなく、減衰力としても作用するものである。
このような現象は、浮体構造物本体2の変位と浮体構造物本体2に作用する流体力の位相関係にも表現されている。図3に、付加減衰機能を持たない浮体式免震構造物1に係る、浮体構造物本体2の水平変位と、浮体構造物本体2に作用する流体力各々の位相関係を示す。また、図4(a)に、付加減衰機能を有する浮体式免震構造物1に係る浮体構造物本体2の水平変位と、浮体構造物本体2に作用する流体力各々の位相関係を示す。
図3と図4(a)とを比較すると、付加減衰機能を備えない場合と比較して、付加減衰機能を有する浮体構造物本体2には、作用する流体力に位相のずれが生じている様子がわかる。このずれは、図4(b)をみるとわかるように、流体力を分解すると、復元力成分に加えて減衰力成分が作用していることにより生じているものである。
したがって、前記減衰構造体8は、浮体式免震構造物1に備えられることにより、浮体構造物本体2の共振現象を抑える効果的な付加減衰機構として機能するとともに、これら付加減衰機構を備えた浮体式免震構造物1は、地震動の卓越周期帯域より長周期側に位置する、浮体構造物本体2の固有周期に近い成分を多く含む地震波に対しても、浮体構造物本体2の水平変位を低く抑えることが可能となるものである。
なお、該減衰構造体8は、その形状を立体構造体とすることで、運動エネルギーの逸散が顕著となり、より大きい減衰性能を得られるものである。したがって、減衰性能を調整したい場合には、減衰構造体8に用いる材料の空隙率や透水係数はもとより、減衰構造体8の体積を変化させることによっても、所望の減衰性能を確保することができるものである。このとき、部材厚で該減衰構造体8の体積を変化させ、減衰性能を調整したい場合には、前記浮体構造物本体2が水平方向に挙動した際にも、減衰構造体8が、浮体構造物本体2の側壁もしくは免震ピット側壁5に接触することのないクリアランスを確保した上で、部材厚を調整すればよい。
また、前記減衰構造体8は、必ずしも上述する構成にこだわるものではなく、例えば、図2(a)に示すように、鉛直方向に所定の離間間隔をもって水平に配置されており、前記液体6の流動に伴う液圧を受けても変形することがなく、複数の貫通孔を有する板材8aにより構成しても良い。
これら貫通孔を有する板材8aによる運動エネルギーの逸散に係る原理は、前記板材8aの貫通孔周囲で、液体6に渦を発生させることにより運動エネルギーを逸散させて、液体6の鉛直流体運動に減衰力を付与する方法である。
なお、複数の貫通孔を有する複数の板材8aを前記減衰構造体8に用いる場合にも、その板材8aは少なくとも免震ピット側壁5に設置すれば良く、該板材8aを、図2(b)に示すように免震ピット側壁5に対して鉛直方向に所定の離間間隔をもって水平に配置し固定する、もしくは図2(c)に示すように、浮体構造物本体2の側壁及び免震ピット側壁5の双方に対して、鉛直方向に所定の離間間隔を設けて交互に千鳥配置する構成としても良い。
このとき、前述したように、鉛直流体運動に伴う前記液体6の液面上限高さとピット底面4との間の高さ範囲に対して、前記減衰構造体8を配置する。
上述する浮体式免震構造物1の付加減衰機構の効果を把握すべく、図5(a)に示すように、前記浮体構造物本体2の側方に対して付加減衰機構となる構成を何も設置せず、浮体構造物本体2の側壁及び免震ピット側壁5を滑面とする第1のケース、図5(b)に示すように、前記免震ピット側壁5に減衰構造体8を固定することにより、浮体構造物本体2に付加減衰機構を備える第2のケース、の2つのモデルを製作し比較を行った。以下に、浮体式免震構造物1の諸条件を示す。
まず、前記浮体構造物本体2は、幅1m、長さ2m、喫水8cmのアクリル製模型を用いることとし、固定荷重の2/3を浮力で支持、1/3を前記低せん断剛性構造体7を介して地盤9に支持させる構成としている。なお、ここでは、低せん断剛性構造体7を、ベアリング7aと線形バネ7bの組み合わせとしてモデル化している。
また、第2のケースで用いる減衰構造体8は、空隙率96%、透水係数13.7cm/s、厚さ2.5cmの不織布よりなる透水マットより構成し、図5(b)に示すように、免震ピット側壁5全面に固着している。
上述する2ケースの浮体式免震構造物1について、様々な周波数で正弦波加振を行った際の、各ケースの水平振動に対する加速度伝達関数を図6に示す。付加減衰機構を備えていない第1のケースでは、周波数1.1Hzでの加速度応答倍率の最大値は22.6に達し、等価減衰係数はわずか2.2%である。これに対し、免震ピット側壁5に減衰構造体8を固定し、付加減衰機構を備える第2のケースでは、最大応答倍率は4.2に低減され、等価減衰係数は11.9%となっており、高い減衰効果を発揮している様子がわかる。
このように、浮体構造物本体2の側方に減衰構造体8を配置し、浮体式免震構造物1に付加減衰機構を備える構成は、浮体構造物本体2の両側で交互に生じる、液体6の鉛直流体運動に減衰を与えることに伴い、浮体構造物本体2の水平方向の挙動に対する減衰としても非常に有効に作用することがわかる。
また、これら第1のケース及び第2のケースについて、タフト波、八戸波、エルセントロ波の3種類の典型的な地震波を付与した際の、加速度応答倍率、最大相対変位を、それぞれ図7(a)(b)に示す。なお、加速度応答倍率は、地震の最大入力加速度に対する、構造物の最大応答加速度の比であり、最大相対変位は、最大地盤変位に対する、構造物変位と地盤変位の差の最大値の比である。
図7(a)に示すように、加速度応答倍率については各ケースとも良好な免震性能が得られているのに対して、相対変位については減衰を付加する効果が顕著に現れている。
特に、タフト波については、浮体構造物本体2の固有周期に一致する成分が他の地震波よりも相対的に大きな振幅を持つため、付加減衰機構を持たない第1のケースではかなり相対変位が大きくなっている。これに対して、付加減衰機構を有する第2のケースでは、相対変位が大幅に低減され、他の地震波に対する結果と同等の低い値が得られることがわかる。
上記した構成からなる浮体式免震構造物1の付加減衰機構によれば、減衰構造体8が、少なくとも前記免震ピット側壁5に固定されることから、地震等が発生して浮体構造物本体2が免震ピット3内を水平方向に移動することにより浮体構造物本体2の両側で交互に生じる、流体6の鉛直流体運動に、減衰力を付与することができる。
したがって、流体6の鉛直流体運動に伴い生じる、浮体構造物本体2に作用する流体力が、浮体構造物本体2の水平方向の復元力に加え、水平方向の振動を減衰させるための減衰力としても機能することとなり、浮体構造物本体2の共振現象を抑える効果的な付加減衰機構として機能するとともに、浮体免震式構造物1の固有周期に近い成分を多く含む地震波に対しても、浮体構造物本体2の変位を低く抑えることが可能となる。
また、減衰構造体8を、少なくとも免震ピット側壁5(免震ピット側壁5のみ、または免震ピット側壁5と浮体構造物本体2の側壁の双方)に設置していることから、視覚で捉えることができる状況もあり得る。このような場合には、意匠上の課題は検討の余地があるものの、減衰構造体8の点検やメンテナンスといった観点からは、作業を容易に行えるとともに、免震ピット3の構築に影響を及ぼすこともなく、新たに発生する建設コストを増大させることはない。
さらに、前記減衰構造体8が、透水性能を有する部材を、立体構造体に成形してなる、もしくは、鉛直方向に所定の離間間隔をもって水平に配置されており、前記液体6の流動に伴う液圧を受けても変形することがなく、貫通孔を複数備えた複数の板材により構成される。これにより、何れも簡略な構成で浮体式免震構造物1に対して付加減衰機能を付与することが可能となる。
以上、本発明に係る浮体式免震構造物1の付加減衰機構の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
本発明に係る浮体式免震構造物の付加減衰機構の詳細を示す図である。 本発明に係る浮体式免震構造物の付加減衰機構の他の事例を示す図である。 本発明に係る付加減衰機構を持たない浮体構造物本体の水平運動と流体力の位相関係の概念を示す図である。 本発明に係る付加減衰機構を有する浮体構造物本体の水平運動と流体力の位相関係の概念を示す図である。 本発明に係る付加減衰機構を用いることの効果を比較するための浮体式免震構造物のモデルを示す図である。 付加減衰機構を有する場合と有しない場合の浮体式免震構造物における固有周波数付近の伝達関数の比較を示す図である。 付加減衰機構を有する場合と有しない場合の浮体式免震構造物における典型的な地震波に対する応答の比較を示す図である。
符号の説明
1 浮体式免震構造物
2 浮体構造物本体
2a 上部構造
3 免震ピット
4 ピット底面
5 免震ピット側壁
6 液体
7 低せん断剛性構造体
8 減衰構造体
8a 板材
9 地盤

Claims (4)

  1. 地盤を掘削して構築する免震ピットと、
    該免震ピットの内方に満たされる液体と、
    該液体中に少なくとも固定荷重より大きい浮力を生じない深さまで挿入される浮体構造物本体と、
    地盤に支持され、前記浮体構造物本体に生じる鉛直下方向の変動荷重と浮力で相殺しない固定荷重を支持し、前記浮体構造物本体と地盤との水平挙動を絶縁する低せん断剛性構造体を備える浮体式免震構造物の付加減衰機構であって、
    液体中に配置することにより、液体粒子との相対速度に応じた液体の粘性に起因して、液体の上下方向の運動エネルギーの逸散を生じさせる減衰構造体を、前記浮体構造物本体の側壁と前記免震ピットの側壁に挟まれかつ少なくとも前記液体の液面上限高さとピット底面との間の高さ範囲内において、少なくとも前記免震ピットの側壁に配置することにより構成されることを特徴とする浮体式免震構造物の付加減衰機構。
  2. 請求項1に記載の浮体式免震構造物の付加減衰機構において、
    前記低せん断剛性構造体が、前記免震ピットの底面を介して地盤に支持されて該免震ピットの底面と前記浮体構造物本体の底面との間に設置されることを特徴とする浮体式免震構造物の付加減衰機構。
  3. 請求項1または2に記載の浮体式免震構造物の付加減衰機構において、
    前記減衰構造体が、透水性能を有する部材を、立体構造体に成形してなることを特徴とする浮体式免震構造物の付加減衰機構。
  4. 請求項1または2に記載の浮体式免震構造物の付加減衰機構において、
    前記減衰構造体が、鉛直方向に所定の離間間隔をもって水平に配置され、前記液体の流動に伴う液圧を受けても変形することがなく、貫通孔を複数備えた複数の板材により構成されることを特徴とする浮体式免震構造物の付加減衰機構。
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