JP2010196839A - 減衰装置 - Google Patents

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巧 大山
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フック ファム
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Abstract

【課題】地震などにより振動が生じた際に、効率よく振動を減衰させることができる。
【解決手段】免震構造物1の免震ピット2の底部2aに形成された凹部2cがなす貯液槽11と、貯水槽11に収容された水などの液体12と、液体12中に配設された透水構造体13と、構造物本体4に固定されて、透水構造体13を所定範囲の水平方向に移動可能に保持する保持部材14と、貯液槽11の底部11aに設置され、透水構造体13の底面13aと接するベアリング15とから構成される減衰装置5を免震構造物1に設置する。保持部材14は、複数の水平バネ21と、水平バネ21の一方の端部を構造物本体4に固定する水平バネ固定部材22と、水平バネ21の他方の端部と透水構造体13とを連結する透水構造体連結部材23とから構成される。
【選択図】図1

Description

本発明は、免震構造物や制震構造物、または構造物内に設置された免震床や免震構造の什器や機器類に設置され、地震などによる振動を減衰させる減衰装置に関する。
従来、地震などによる構造物の揺れを吸収し、低減するための様々な形態の減衰装置(ダンパー)を備えた免震構造物及び制震構造物が普及している。地震などによる構造物の揺れを減衰させる一般的な方法として、構造物の鉛直荷重を支える支承材の機能を併せ持つ高減衰積層ゴム支承や、オイルダンパーなどの減衰装置などを、地盤と構造物との間に設置する方法がある。
例えば、図8(a)に示す従来の免震構造物51は、例えば居住空間を有する構造物本体52と、地盤G上に設置されて、構造物本体52の鉛直荷重を支えると共に、水平変形可能でその水平変位を復元する免震装置53と、構造物本体52と地盤Gに連結し、構造物本体52の水平力による揺れのエネルギーを吸収する減衰装置54とから構成されている。
ここで、構造物本体52の質量をm、免震装置53の水平剛性をk、減衰装置54の減衰係数をc とし、地震などによる地盤Gの振動変位、振動速度、振動加速度をx00、x01、x02、構造物本体52の振動変位、振動速度、振動加速度をx、x、xとして、免震構造物51に対応した振動方程式を表すと下記のような式(1)となる。
mx+c (x−x01)+k(x−x00)=0 ・・・(1)
なお、免震装置53や減衰装置54の条件によって振動方程式は非線形特性を有し、水平剛性kや減衰係数c の値は構造物本体52の振動変位x00や振動速度x01の関数となる場合もあるが、ここでは線形な振動方程式として表す。
そして、地盤Gの角振動数をω、構造物本体52の固有角振動数をω 、構造物本体52の振動加速度xと地盤Gの振動加速度x02との比|x /|x02|をA1、減衰装置54の減衰定数をh (=c /2mω)とし、式(1)を解くことで得られる加速度の応答関数を図8(b)に示す。
図8(b)に示すように、減衰定数h =0の場合、地盤Gの角振動数と構造物本体52の固有角振動数が一致するω/ω=1では、構造物本体52の振動加速度xと地盤Gの振動加速度x02との比A1は無限大となり、構造物本体52の加速度は無限大となるが、減衰定数h の値を大きくするにしたがって構造物本体52の加速度のピーク値は小さくなる。しかし、ω/ω の値が大きい高振動数領域では、減衰定数hの値を大きくするにしたがって構造物本体52の振動加速度xと地盤Gの振動加速度x02との比A1が大きくなることがわかる。これは、減衰装置54を通して地盤Gの振動が構造物本体52に伝わるためである。
そこで、特許文献1では、地盤の振動を構造物本体へほとんど伝達しない減衰装置が提案されている。
図9(a)に示すように、特許文献1による免震構造物61は、地盤Gを掘削して構築された免震ピット65と、免震ピット65内に収容された液体66と、免震ピット65の底部65aに設置された免震装置63と、免震装置63の上方に設置されると共に、液体66中に配設される構造物本体62と、構造物本体62の底面に固定されて、透水性能を有する、例えば立体不織布などの透水構造体を板状に形成した減衰装置64と、から構成されている。減衰装置64は、地盤Gに固定されていない構造である。
減衰装置64は、地震などにより構造物本体62が振動すると透水構造体も液体66中を振動する。そして、透水構造体に液体66が透過して、透水構造体と液体66との間に生じる摩擦抵抗を利用して構造物本体62の振動を減衰させている。
このとき、免震ピット65内の液体66には、地盤Gの振動に伴うスロッシングにより共振を起こす振動数が存在するが、免震ピット65の水平面積を広くすることで、地盤Gと液体66との共振振動数を構造物本体62の固有振動数や地震の卓越振動数よりも大幅に低く設定することができる。そして、地盤Gと液体66との共振振動数よりも高い振動数で地盤Gが振動しても、液体66は絶対座標系でほぼ静止した状態とすることができる。
このように、地震などにより地盤Gが振動しても、液体66はほぼ静止した状態とすることができるので、地盤Gの振動は構造物本体62へほとんど伝達しない。
そこで、液体66が不動状態であると仮定し、液体66による構造物本体62にかかる浮力を相殺した構造物本体62の質量をm、免震装置63の水平剛性をk、減衰装置64の減衰係数をc とし、地震などによる地盤Gの振動変位、振動速度、振動加速度をx00、x01、x02、構造物本体62の振動変位、振動速度、振動加速度をx、x、xとして、免震構造物61に対応した振動方程式を表すと下記のような式(2)となる。
mx+c+k(x−x00)=0 ・・・(2)
そして、式(1)と同様に式(2)を解くことで得られる加速度の応答関数を図9(b)に示す(h =C /2mω )。
図9(b)に示すように、構造物本体62の加速度の応答関数では、図8(b)に示す構造物本体52の加速度の応答関数と同様に、減衰定数h の値を大きくするに従い、構造物本体62の加速度のピーク値は小さくなるが、図8(b)に示す構造物本体52の加速度の応答関数のように、高振動数で加速度が大きくなるという悪影響は現れず、減衰定数h を増加するにしたがって全振動数帯域で加速度を低減することができる。図9(a)に示す減衰装置64は、地盤Gに固定されず、地盤Gの振動を構造物本体62へ伝えないので、図8(a)に示す減衰装置54に比べて高性能な減衰効果を得ることがわかる。
特開2004−353257号公報
最近では、図10に示すような、液体中に配設されない免震構造物71に設置されて、透水構造体74に液体75が透過することで生じる摩擦抵抗を利用した減衰装置76が開発されている。
減衰装置76は、地盤Gに設けられた貯液槽77と、貯液槽77に収容された液体75と、免震構造物71の構造物本体72に固定されると共に、液体75中に配設された透水構造体74とから構成されている。
図9および10に示すような透水構造体が液体中を透過し、透水構造体と液体との間に生じる摩擦抵抗を利用した減衰装置64、76において、振動の減衰効果を高める (透水構造体と液体との間の摩擦抵抗を増大させる) ためには、透水構造体が液体からより大きな流体力を得る必要がある。そのためには、例えば、透水構造体の体積と液体量を増大させたり、透水構造体の振動速度を上げたりすることが考えられる。
しかしながら、透水構造体の体積と液体量を増大させることは、貯液槽の建造や透水構造体にコストがかかるという問題があった。
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、透水性能を有し液体中に配設された透水構造体が液体から受ける流体力を利用すると共に、その流体力の調整ができ、地震などによる構造物本体の振動を効果的に減衰させることができる減衰装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る減衰装置は、免震構造物または制震構造物に設置され、地震などによる振動を減衰させる減衰装置であって、地盤に設けられた貯液槽と、貯液槽に収容された液体と、液体中に配設されて、透水性能を有し、液体中を相対移動して液体との間で振動を減衰させる透水構造体と、を備えて、透水構造体は免震構造物または制震構造物の構造物本体に弾性部材を介して水平方向に移動可能に保持されていることを特徴とする。
本発明では、透水構造体が弾性部材を介して水平方向に移動可能に構造物本体に保持されているので、構造物本体と透水構造体とは異なる振動速度で振動することができる。そして、透水構造体の振動速度を上げることで透水構造体が液体から受ける流体力を増大させて、構造物本体の振動を効果的に減衰させることができる。
また、減衰装置の減衰力を高めるために、透水構造体の体積や、液体量を増やして流体力を増大させる方法と比べて、貯液槽や透水構造体の設置に広いスペースが必要なく、また、コストを抑えることもできる。
また、本発明に係る減衰装置では、構造物内に設置された免震床または免震構造の什器や機器類に設置され、地震などによる振動を減衰させる減衰装置であって、構造物に設けられた貯液槽と、貯液槽に収容された液体と、液体中に配設されて、透水性能を有し、液体中を相対移動して液体との間で振動を減衰させる透水構造体とを備えて、透水構造体は免震床の床部材または免震構造の什器や機器類の什器本体や機器類本体に弾性部材を介して水平方向に移動可能に保持されていることを特徴とする。
本発明では、透水構造体が弾性部材を介して水平方向に移動可能に、床部材また什器本体や機器類本体に保持されているので、床部材また什器本体や機器類本体と透水構造体とは異なる振動速度で振動することができる。そして、透水構造体の振動速度を上げることで透水構造体が液体から受ける流体力を増大させて、床部材また什器本体や機器類本体の振動を効果的に減衰させることができる。
また、減衰装置の減衰力を高めるために、透水構造体の体積や、液体量を増やして流体力を増大させる方法と比べて、貯液槽や透水構造体の設置に広いスペースが必要なく、また、コストを抑えることもできる。
また、本発明に係る減衰装置では、弾性部材は、バネ部材であることを特徴とする。
本発明では、弾性部材はバネ部材とすることにより、バネ部材の剛性の調整によって、透水構造体の振動速度を調整することができる。
また、本発明に係る減衰装置では、弾性部材は、積層ゴム支承としてもよい。
本発明では、弾性部材は積層ゴム支承とすることにより、積層ゴム支承の剛性の調整によって、透水構造体の振動速度を調整することができる。
また、本発明に係る減衰装置では、貯液槽は、底部に透水構造体に接するすべり支承を備えていることが好ましい。
本発明では、貯液槽の底部に透水構造体に接するすべり支承を備えることにより、すべり支承に透水構造体の荷重を負担させることができる。また、すべり支承なので透水構造体の振動を妨げることがない。
本発明によれば、減衰装置は透水構造体が構造物本体に水平方向に移動可能に保持されているので、構造物本体とは別に透水構造体の振動速度を高めることができて、地震などによる構造物本体の振動を効果的に減衰させることができる。
本発明の第一の実施の形態による減衰装置を備える免震構造物の一例を示す図である。 図1に示す免震構造物に備える減衰装置の保持部材を示す斜視図である。 図1に示す免震構造物に従来の減衰装置を併設した免震構造物を示す図である。 図8(a)に示す従来の免震構造物の減衰定数と最大応答加速度の関係を示す図である。 (a)はケース1の構造物本体と透水構造体とをつなぐ弾性部材のバネ定数k と最大応答加速度との関係を示す図、(b)はケース2の構造物本体と透水構造体とをつなぐ弾性部材のバネ定数k と最大応答加速度との関係を示す図である。 本発明の第二の実施の形態による減衰装置を備える免震構造物の一例を示す図である。 本発明の第三の実施の形態による減衰装置を備える免震床の一例を示す図である。 (a)は従来の免震構造物の一例を示す模式図であり、(b)は(a)に示す免震構造物の地盤及び構造物本体の角振動数の比と地盤及び構造物本体の加速度の比の関係を示す図である。 (a)は従来の他の免震構造物の一例を示す模式図であり、(b)は(a)に示す免震構造物の地盤及び構造物本体の角振動数の比と地盤及び構造物本体の加速度の比の関係を示す図である。 更に他の従来の免震構造物の一例を示す模式図である。
以下、本発明の実施の形態による減衰装置について、図1および図2に基づいて説明する。
図1に示すように、第一の実施の形態による免震構造物1は、地盤Gを掘削して構築された免震ピット2と、免震ピット2の底部2aに設置された免震装置3と、免震装置3の上方に配設される構造物本体4と、構造物本体4の下方に設置された減衰装置5と、から構成される。
免震ピット2は、地盤Gを所望の深さまで掘削することにより形成され、底部2aには床を備え、側部には土圧を受けるための側壁2bを備えている。
構造物本体4は、例えば居住空間やオフィス空間等の居室機能を有する平面視長方形状の建物である。
免震ピット2は、側壁2bと構造物本体4の側壁4aとの間に、所定幅のクリアランスが全周にわたって確保できる大きさの平面視長方形状に構築されている。免震ピット2の底部2aには、免震装置3と緩衝しない位置に、減衰装置5が設置される凹部2cが形成されている。
免震装置3は、例えば、積層ゴム支承などの免震支承で、構造物本体4の鉛直荷重を支持する機能と、構造物本体4と免震ピット2との水平挙動を絶縁し長周期化する機能とを有するアイソレーターとして機能するものである。免震装置3は、免震ピット2の底部2aに所定の間隔をあけて複数配置される。
このような免震装置3に支持された構造物本体4は、地震などの振動が生じると構造物本体4の固有周期よりも長周期で振動する。そして、免震ピット2の側壁2bと構造物本体4の側壁4aとの間に設けられたクリアランスは、地震などにより構造物本体4が振動しても免震ピット2の側壁2bと構造物本体4の側壁4aとが接触しないために設けられている。
減衰装置5は、免震ピット2の底部2aに形成された凹部2cがなす貯液槽11と、貯液槽11に収容された水などの液体12と、液体12中に配設された透水構造体13と、構造物本体4に固定されて、透水構造体13を所定範囲の水平方向に移動可能に保持する保持部材14と、貯液槽11の底部11aに設置され、透水構造体13の底面13aと接するベアリング15とから概略構成される。
貯液槽11は、底部11aには、床を備え、側部には土圧を受ける側壁11bを備えており、その形状は、液体12および透水構造体13の量や形状に合わせて所定の大きさに形成されている。
なお、構造物本体4が医療施設や、情報施設、生産施設などで、これらの施設で使用する水用の貯水槽を備えている場合には、その貯水槽と貯液槽11とを兼ねてもよい。
透水構造体13は、例えば、立体不織布や、礫材料やモルタル及びセメント系材料からなる透水性を有するマット、スリットが設けられた壁体、軽石などを収容しスリットを設けた収納装置などの空隙率が高く透水性の高い材料を、例えば直方体などの立体構造に形成したものである。このような透水構造体13は、液体12中で振動すると、透水構造体13に液体12が透水して液体12と透水構造体13との間に摩擦が生じ、この摩擦が振動の減衰力となるもので、透水構造体13は形状や体積を調整することで任意の減衰性能を設定できる。
透水構造体13の重量は、ベアリング15を介して貯液槽11の底部11aから地盤Gへ伝達する。
保持部材14は、複数の水平バネ21と、水平バネ21の一方の端部を構造物本体4に固定する水平バネ固定部材22と、水平バネ21の他方の端部と透水構造体13とを連結する透水構造体連結部材23とから構成される。
水平バネ21は、所定の剛性を有する、例えば、コイルバネ、板バネあるいは棒バネなどで、水平方向に伸縮する向きに設置されている。
透水構造体連結部材23は、水平バネ21と連結し、鉛直方向に伸びる棒状の鉛直部材26と、鉛直部材26と連結していて、透水構造体13の周囲を囲って固定する帯状の帯部材27とからなる。なお、帯部材27に代わって、例えば透水構造体13の上面に板状の部材を固定し、透水構造体13に固定された部材と鉛直部材26を連結してもよい。
水平バネ21は、1つの鉛直部材26に対して複数取り付けられており、鉛直部材26は、例えば同一線上に配設された2つの水平バネ21の間に設置されたり、図2に示すように、90°ずつ角度をおいて十字型に配設された4つの水平バネ21の中心に設置されたりしている。
このような鉛直部材26を備える透水構造体連結部材23は、水平バネ21の伸縮によって水平方向に変位可能となる。そして、透水構造体13は、構造物本体4に水平方向に移動可能に保持された構成となる。
上述した構成の減衰装置5は、地震などにより振動が生じると、透水構造体13が液体12中を振動する。そして、液体12と透水構造体13との間の摩擦が生じ、透水構造体13は液体12から流体力を受ける。このとき、地震などによる振動によって、構造物本体4も振動しており、構造物本体4の振動は免震装置3によって長周期化されている。そこで、透水構造体13は、構造物本体4に水平方向に移動可能に保持された構成なので、水平バネ21の剛性を調整することで、構造物本体4と異なる振動速度で振動することができる。
ここで、水平バネ21の剛性を非常に低くすると(k >0)、透水構造体13は構造物本体4の振動速度の影響を受けなくなり、透水構造体13は絶体空間上で動かない。この場合は、液体から受ける減衰力は0となる。
一方、水平バネ21の剛性を非常に高くすると(k →∞)、透水構造体13は構造物本体4と同じ動きとなり、透水構造体13を構造物本体4に剛結合した場合と同じになる。しかし、水平バネ21の剛性を適切に調整することによって、透水構造体13を構造物本体4よりも大きな速度で液体中を振動させることができる。すなわち、水平バネ21の剛性を調整することによって、剛結合(k →∞)の場合よりも大きな減衰力を得ることができる。
そこで、水平バネ21の剛性は、透水構造体13が液体12から受けた流体力を効率よく構造物本体4へ伝達できる値となるように調整する。
なお、水平バネ21によって調整された透水構造体13の固有振動数よりも、かなり高い振動数帯域では、透水構造体13は振動しなくなり減衰力が得られないこととなるが、透水構造体13から地盤Gの振動が伝達しないので、図8(a)に示す減衰装置54が地盤に固定された従来の免震構造物51のような、応答加速度が増大するという悪影響は発生しない。
次に、上述した第一の実施の形態による減衰装置の作用について図面を用いて説明する。
第一の実施の形態による減衰装置5では、透水構造体13が水平バネ21を介して構造物本体4に保持されているので、地震などによる振動が生じた際に、透水構造体13と構造物本体4とは異なる振動速度で振動することができる。
そして、水平バネ21の剛性を調整することで、透水構造体13の振動速度をあげて、透水構造体13が液体12中から受ける流体力を増大させると共に、この流体力を振動に対する減衰力として構造物本体4に伝達することができる。
上述した減衰装置5によれば、透水構造体13が水平バネ21を介して構造物本体4に保持されて、水平バネ21の剛性を調整することで、透水構造体13の振動速度を上げて透水構造体13が液体12から受ける流体力を大きくさせると共に、この流体力を振動に対する減衰力として構造物本体4に伝達することができるので、地震などの振動による構造物本体4の振動を効率的に減衰させる効果を奏する。
また、液体12の量や透水構造体13の体積を増大させずに、水平バネ21の剛性を調整することで、透水構造体13の流体力を大きくすることができるので、減衰装置5の設置スペースや、建造コストを削減することができる。
ここで、本発明による減衰装置の有効性を検証するため、数値計算による減衰性能のケーススタディを行った。これについて図面に基づいて説明する。
本数値計算では、透水構造体が液体中を振動する際の流体力を流体の粘性に起因する力と剥離渦に伴う抗力の和として評価している。計算手法の妥当性については、模型振動実験との比較により確認されている。
本ケーススタディでは、図1に示すような第一の実施の形態による減衰装置5を備える免震構造物1のケース1と、図3に示すような第一の実施の形態による減衰装置5と、構造物本体4と地盤Gとに固定された従来の減衰装置54とを備える免震構造物81のケース2との数値計算による減衰性能とを比較する。ケース1では、従来の減衰装置54を備えていないが、免震装置3などのわずかな減衰を考慮して減衰定数h を0.5%とし、ケース2における従来の減衰装置54の減衰定数h は20%と仮定した。
本ケーススタディによる構造物本体4および減衰装置5、54の主な条件を表1に示す。また、入力地震波は入力地震波A〜Cの3種類とし、入力地震波の名称および地盤最大加速度について表2に示す。液体12は真水を使用する。
Figure 2010196839
Figure 2010196839
ここで、参考として、図8に示すような、構造物本体52と地盤Gとに固定された従来の減衰装置54を設置した免震構造物51において、減衰定数h を変化させた場合の構造物本体52の応答加速度を図4に示す。免震構造物51の条件は、ケース1、ケース2と同じで、構造物本体52と構造物本体4とは同じ条件である。
図4からわかるように、いずれの地震波においても、構造物本体52の応答加速度は、ある減衰定数の時に最小値となり、それ以上に減衰装置54の減衰定数h を大きくしても効果がないことがわかる。これは、減衰定数h を大きくしすぎると、減衰装置54を介して伝わる地盤Gの地震力が悪影響を及ぼすためである。
さらに、免震構造物81の構造物本体82の各地震波に対する応答加速度の最小値を表3に示す。
Figure 2010196839
まず、本ケーススタディでは、ケース1およびケース2において、入力地震波A,B、Cを入力して数値計算を行う。
バネ定数k は、構造物本体4と透水構造体13とをつなぐバネの剛性であり、k =0の場合は構造物本体4に透水構造体13が設置されていない場合に相当し、k =∞の場合は、透水構造体13が構造物本体4に剛結合されている場合に相当する。
図5(a)および(b)によれば、各入力地震波における最大応答加速度は、バネ定数k が約1×10 〜2×10 (kN/m)のときに最小となっている。このことから、ケース1およびケース2では、バネ定数k を約1×10 〜2×10 (kN/m)とすると、効率的に透水構造体が液体から受ける流体力を構造物本体に伝達できて、構造物本体の振動を減衰できることがわかる。
ここで、表4にケース1におけるバネ定数k がk =0の場合と、k =10 (kN/m)の場合と、k =∞の場合の応答加速度を、表5にケース2におけるバネ定数k がk =0の場合と、k =10 (kN/m)の場合と、k =∞の場合の応答加速度を示す。
Figure 2010196839
Figure 2010196839
表4および表5からわかるように、構造物本体4がバネ定数k =10 (kN/m)のバネを介して透水構造体13を保持している場合では、構造物本体4に透水構造体13を剛結合した場合に相当するk =∞よりも応答加速度を低減できることがわかる。更に、表3に示した従来の減衰装置54のみを設置した場合との比較からわかるように、本発明による減衰装置5は従来の減衰装置54では達成し得ない加速度低減効果を得ることがわかる。
次に、他の実施の形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第一の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、実施の形態と異なる構成について説明する。
図6に示すように、第二の実施の形態による減衰装置86では、図1に示す第一の実施の形態による減衰装置5の水平バネ21に代わって、水平方向に変形能力を有する積層ゴム87によって、透水構造体連結部材23が水平方向に移動可能に構造物本体4に保持されている。そして、透水構造体13の荷重は積層ゴム87によって負担し、第一の実施の形態による減衰装置5のように、貯液槽11の底部11aにベアリングを設けない構造である。
第二の実施の形態による減衰装置86では、透水構造体13は積層ゴム87によって構造物本体4に水平方向に移動可能に保持されて、積層ゴム87の剛性を調整することによって透水構造体13の振動速度を調整できるので、第一の実施の形態と同様の効果を奏する。
図7に示すように、第三の実施の形態による減衰装置91は、構造物90内に設けられた免震構造の床部材92に設置されている。
床部材92は、構造物10の躯体の床スラブ10aに支持された免震装置93の上に配設されており、地震などにより振動が生じた際には、免震装置93によって床部材92の振動が長周期化する免震床を構成している。
第三の実施の形態による減衰装置91は、図1に示す第一の実施の形態による減衰装置5と同じ構成であるが、液体98を収容する貯液槽94が構造物90の躯体部分の床スラブ10aに固定されて、透水構造体95は保持部材96によって床部材92に保持されている構造である。保持部材96の透水構造体連結部材99は水平バネ97を介して床部材92に保持されている。なお、透水構造体連結部材99は、水平バネ97に代わって積層ゴムを介して床部材92に保持されてもよい。
第三の実施の形態による減衰装置91では、地震などにより振動が生じると、透水構造体95は液体98中を振動し、液体98から受ける流体力を床部材92へ伝達して、床部材92の振動を減衰できる効果を奏する。
以上、本発明による減衰装置の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上述した第一及び第二の実施の形態では、免震構造物に減衰装置5、86が備えられているが、制震構造物に減衰装置5、86を設置してもよい。
また、上記の第一および第二の実施の形態の減衰装置5、86は、免震ピット2内に形成されているが、構造物本体4に近い地盤に形成してもよく、1つの構造物本体4に対し、複数の減衰装置5、86を設置してもよい。
また、上記の第三の実施の形態による減衰装置91は、免震構造の床部材92に設置されているが、免震構造の床部材92に代わって、免震構造の什器や機器類に設置してもよい。
1 免震構造物
4 構造物本体
5、86、91 減衰装置
11、94 貯液槽
12 、98 液体
13、95 透水構造体
15 ベアリング(すべり支承)
21、97 水平バネ(弾性部材)
87 積層ゴム(弾性部材)
90 構造物
92 床部材

Claims (5)

  1. 免震構造物または制震構造物に設置され、地震などによる振動を減衰させる減衰装置であって、
    地盤に設けられた貯液槽と、
    前記貯液槽に収容された液体と、
    前記液体中に配設されて、透水性能を有し、前記液体中を相対移動して前記液体との間で振動を減衰させる透水構造体と、を備えて、前記透水構造体は前記免震構造物または制震構造物の構造物本体に弾性部材を介して水平方向に移動可能に保持されていることを特徴とする減衰装置。
  2. 構造物内に設置された免震床または免震構造の什器や機器類に設置され、地震などによる振動を減衰させる減衰装置であって、
    前記構造物に設けられた貯液槽と、
    前記貯液槽に収容された液体と、
    前記液体中に配設されて、透水性能を有し、前記液体中を相対移動して前記液体との間で振動を減衰させる透水構造体と、を備えて、前記透水構造体は前記免震床の床部材または前記免震構造の什器や機器類の什器本体や機器類本体に弾性部材を介して水平方向に移動可能に保持されていることを特徴とする減衰装置。
  3. 前記弾性部材は、バネ部材であることを特徴とする請求項1または2に記載の減衰装置。
  4. 前記弾性部材は、積層ゴム支承であることを特徴とする請求項1または2に記載の減衰装置。
  5. 前記貯液槽は、底部に前記透水構造体に接するすべり支承を備えていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の減衰装置。
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