JP4275470B2 - 皮革様シート状物およびその製造方法 - Google Patents

皮革様シート状物およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、皮革様シート状物およびその製造方法に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、透湿、耐水、及び風合いに同時に優れた銀付き調の皮革様シート状物およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
天然皮革の代替物として、繊維と高分子弾性体を用いた人工皮革が皮革様シート状物として広く用いられている。だが、特に銀面を有する銀付き調人工皮革においては、強度的には優れるものの、天然皮革に比べて透湿及び風合いの面では不充分な点が多かった。
【0003】
例えば銀付き調人工皮革としては、極細繊維と高分子弾性体とからなる基体上に、通常の充実高分子弾性体をラミネート法やグラビア法によって表皮として塗布した人工皮革や、湿式凝固法による多孔ポリウレタン層を表皮として付与した人工皮革がある。
【0004】
しかし、通常の充実高分子弾性体を、ラミネート法やグラビア法を用いて繊維を含む基体上に直接塗布した場合には、開口部の存在しない密度の高い充実層となり、透湿性が悪く、風合いに劣るという問題があった。
【0005】
また、湿式凝固法による多孔ポリウレタン層を用いた場合でも、風合いこそ向上するものの、その表面には、湿式凝固特有の皮膜層が形成され、透湿が得られにくいという問題があった。そのため、例えば特許文献1には、湿式多孔層表面を形成する高分子弾性体の良溶剤を含む高分子弾性体溶液を表面に塗布して、人工皮革の表面に開放孔を有する充実層を形成させる方法が開示されている。しかしこのようにして人工皮革表面に開孔部を形成させることはできるものの、その開孔部は比較的大きく充実層も薄いために、耐水圧について劣っているという問題があった。
【0006】
【特許文献1】
特開平6−820665号公報
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、これら従来の皮革様シート状物では持ち得なかった透湿、耐水圧、及び風合いに優れた皮革様シート状物およびその製造方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の皮革様シート状物は、高分子弾性体と極細繊維とからなる基体上に、高分子弾性体からなる表皮層が存在するシート状物であって、表皮層が表面側から充実層、多孔層、バインダー層の3層構造を有し、充実層の厚さが1〜50μmであり、充実層の表面に直径が5μm未満の微小開口部が存在し、充実層では基本的に断面の電子顕微鏡写真を撮ったときに空隙が観察されず、多孔層では空隙が観察され、多孔層の断面に存在する空隙の平均直径が5〜200μmであり、バインダー層内には基体を構成する極細繊維が繊維束状態で侵入し、バインダー層を構成する高分子弾性体が該繊維束の外周を包囲しているが、繊維束の内部には高分子弾性体が存在していないことを特徴とする。さらには、透湿度が2000g/m2・24hr以上であり、耐水圧が1.9kPa以上であることが好ましい。
【0008】
また、本発明の皮革様シート状物の製造方法は、溶剤(1)に対する溶解性の異なる2つ以上の成分からなる極細繊維形成性の複合繊維と高分子弾性体からなる基体上に、溶剤(2)に対する膨潤率が10〜300%である高分子弾性体(A)層と、溶剤(2)で溶解される微粒子を含有する高分子弾性体(B)層と、架橋タイプの高分子弾性体から構成されており基体中に浸透しているバインダー層とからなる表皮層を形成し、次いで溶剤(1)を用いて複合繊維を極細繊維化し、溶剤(2)を用いて微粒子を溶解除去することを特徴とする。さらには、溶剤(1)と溶剤(2)が同一溶剤であることや、溶剤で溶解される微粒子の直径が200μm以下であることが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられる基体は、高分子弾性体と極細繊維からなるものである。ここで用いられる繊維は、織編物でも良いが、風合を向上させるためには不織布が主体であり、織編物は補強用として一部に含むか、全く含まないことが好ましい。
【0010】
さらに本発明で用いられる極細繊維としては、0.2dtex以下、好ましくは0.1dtex以下、特に好ましくは0.0001〜0.05dtexの繊度のものが挙げられる。また、そのような極細繊維の例としては、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12などのポリアミド繊維を挙げることができる。高分子弾性体/繊維の比率は、30〜80%であることが好ましく、最も好ましくは40〜60%の範囲である。
【0011】
さらに本発明では、極細繊維の存在形態として繊維束状態を含むものである。例えばこのような繊維としては、多成分繊維の少なくとも一成分を除去し極細化した極細収束繊維等が挙げられる。一つの束に極細繊維が好ましくは、10本から5000本、更に好ましくは、100本から2000本含まれていることが好ましい。
【0012】
基体に好ましく用いられる高分子弾性体としては、特に制限するものではないが、なかでもポリウレタンエラストマー、ポリウレアエラストマー、ポリウレタン・ポリウレアエラストマー等のポリウレタン系高分子が好ましい。このときの高分子は、後に述べる表皮層の高分子弾性体と同じであっても、異なっていても構わないが、好ましくは湿式凝固性の多孔質高分子弾性体であることが好ましい。高分子弾性体の100%伸長モジュラスとしては、390〜3000N/cm2であることが好ましい。
【0013】
本発明は、基体上に、高分子弾性体からなる表皮層が存在するシート状物、すなわち銀付調の皮革様シート状物に関するものであり、この高分子弾性体からなる表皮層は表面側から充実層、多孔層、バインダー層の3層構造を有するものである。
【0014】
この3層で形成される表皮層に用いられる高分子弾性体は、共通でもよく、異なっていても良い。このような高分子弾性体としては、ポリウレタンエラストマー、ポリウレアエラストマー、ポリウレタン・ポリウレアエラストマー、ポリアクリル酸樹脂、アクリロニトリル・ブタジエンエラストマー、スチレン・ブタジエンエラストマー等が挙げられるが、なかでもポリウレタンエラストマー、ポリウレアエラストマー、ポリウレタン・ポリウレアエラストマー等のポリウレタン系が好ましい。100%伸長モジュラスは300〜1500N/cm2であることが好ましい。100%伸長モジュラスが、300N/cm2未満の場合には得られた皮革様シート状物は柔軟性に富むが、耐磨耗性、耐熱性、耐溶剤性等が減少する傾向にある。逆に、1500N/cm2を越える場合には得られた皮革様シート状物の風合いが硬くなる傾向や、耐屈曲性、低温時硬さ等の性質が低下する傾向にある。
【0015】
また、表皮層に用いる高分子弾性体は耐溶剤性が高いことが好ましい。より具体的な例を挙げると、80℃の熱トルエン中に3分間浸漬した後の重量減少率が0〜25重量%の範囲であることが、さらには3〜10重量%の範囲であることが好ましい。
【0016】
本発明のシート状物の表皮層のうち、最も表面に存在する充実層は、その表面に直径が5μm未満の微小開口部が存在するものである。さらに好ましくは4μm未満の微小開口部が存在するものであり、下限としては0.1μm以上、さらには0.3μm以上の微小開口部が存在するものであることが好ましい。開口部が5μm以上の場合には大きくなればなるほど通気・透湿性能は良好になっていくが、防水機能の特性値になる耐水圧が低くなるという問題点が出てくる。また、開口部が小さい場合には皮革様シート状物における透湿性能が不十分となり目的の機能を発現することが困難となる傾向にある。
【0017】
また、その表面に存在する開口部の数は1mm2あたり10〜1000個の範囲であることが好ましく、より好ましくは25〜750個の範囲であり、もっとも好ましくは50〜500個の範囲である。数が少ない場合、表面において均一な透湿性能がとれにくく、数が多い場合にはその透湿性能は良好になっていくが、表皮層の強度が弱くなり表面の耐摩耗性能が低くなってしまう。
【0018】
このような充実層と次に述べる多孔層とは、断面の電子顕微鏡写真を撮ったときに空隙が観察されるかどうかで区別することができる。充実層では基本的に空隙は存在せず、おそらく多孔層から表面に抜ける開口部が存在するだけである。この開口部は微小であるために表面観察では見つかるものの、断面観察ではほとんど見つからない。
【0019】
さらに本発明では表皮層中の多孔層の断面に平均直径が5〜200μmの空隙が存在することが必要である。さらには空隙の平均直径は100μm未満であることが好ましく、特に10〜50μmであることが好ましい。この空隙の平均直径が小さいとき、その基材の通気性能が低下する傾向にある。一方この空隙の平均直径が大きくなると表皮層の強度が弱くなり、耐摩耗性能や剥離性能が低くなるなどの問題を発生しやすい傾向にある。ただし、ここでの直径は、表面層に垂直な断面を観察した場合の空隙を測定したものであり、必ずしも空隙の最大径を測定したものではない。また空隙が楕円状の場合には、その空隙の最大径を直径とする。本発明のシート状物は柔軟なために変形しやすく、張力がかかって開孔部が楕円となることが多く、このような場合、その最大径が品質に大きく影響するためである。
【0020】
また、多孔層の多孔を構成する各空隙の断面において、外接円の直径の内接円の直径に対する比が2以下であることが好ましい。さらにはその直径の外接円/内接円は1.5以下であることが好ましい。また本発明では、その多孔を構成する各空隙の形状がおおおよそ球形であることが好ましく、ここで各空隙の形状が球形とは、その空隙の形状が球形に近ければ足り、さらには湿式凝固法による空隙と異なり、空隙の壁面に凹凸が存在しない孔であることが好ましい。本発明ではさらに比較的均一な大きさの空隙が多く存在していることが好ましく、本発明における多孔構造は、高分子弾性体の湿式凝固法における三角形状の多孔構造を持ったものとは明らかに異なっており、独立多孔構造ではあるが、その一部の孔において部分的にそれぞれつながっていることが好ましい。
【0021】
本発明の皮革様シート状物では、表皮層の表面と反対側の基体側にはバインダー層が存在する。このバインダー層内には、基体を構成する極細繊維が繊維束状態で侵入し、バインダー層を構成する高分子弾性体が該繊維束の外周を包囲してはいるが、繊維束の内部には高分子弾性体が存在していないことが特徴である。さらに表皮層の中間層である多孔層と異なり、バインダー層が最表面層と同じく充実層であることが好ましく、接着力を高くすることができる。このようにバインダー層が充実層であり高密度である場合には、繊維束間の空隙の存在が本発明の通気、透湿に大きく寄与している。またこのように極細繊維が繊維束で存在する場合には、繊維目付に比して繊維間空隙が大きいので高分子弾性体は大きな塊で存在し、弾性体としての性質が強く引き出され変形しやすい。それに比して逆にバインダー層内に極細繊維が繊維束ではなくそのまま極細単繊維の状態で侵入している場合には、極細単繊維が高分子弾性体間に密に存在し、極細単繊維に補強された高分子弾性体が硬く変形しにくいものとなりやすい。極細繊維と高分子弾性体の距離が短く繊維の自由度が低くなり、どうしても固い構造物である層が形成される傾向にあるのである。また、本発明では高分子弾性体は繊維束を包囲して、繊維束内部に高分子弾性体が存在しないので、極細繊維と高分子弾性体間の距離が大きく、繊維の自由度が大きくより柔軟な構造物となり、柔軟な風合を実現できる。
【0022】
本発明では、高分子弾性体が繊維束を包囲しているので、シート状物の小変形時には高分子弾性体のみが変形し小さな応力だけが発生するが、大変形時には補強繊維である高分子弾性体に包囲されている繊維束に変形が伝達され、大きな応力が発生する。このような現象が発生するためには、繊維束が高分子弾性体に充分に囲まれていることが必要であり、できればその断面がほぼ円形であることが好ましい。例えば繊維束の周辺の高分子弾性体に割れ目が存在していたり、その繊維束周囲の空間に、繊維束への応力が伝わりにくい部分、方向が存在すると、高分子弾性体が大変形した時のみ繊維の複合効果が発生するので好ましくない。さらには繊維束を包囲している高分子弾性体の空隙空間を、極細繊維が体積にして20〜80%占めていることが好ましく、さらには30〜70%、最も好ましくは40〜60%を占めている状態が好ましい。繊維束周辺の空隙空間が大きすぎると繊維束への応力が伝わりにくく、伸び止め感の低いものとなる傾向にあり、逆に空隙空間が小さすぎると硬くなる傾向にある。
【0023】
さらに本発明のシート状物における表皮層では、充実層、多孔層の内部に繊維が侵入していないことが好ましい。繊維束が侵入していない充実層、多孔層が表面側に存在することで、表皮層全体が薄層であっても表面への極細繊維の毛羽発生を防ぐことができ、また繊維束が侵入しているバインダー層が強いアンカー効果を発揮するため、物理的な接着力を向上させることができる。
【0024】
さらには、表皮層の全体、あるいは特にバインダー層が架橋タイプの高分子弾性体から構成されていることも好ましい。架橋タイプを用いることによりその表面強度や耐溶剤性を高めることが可能である。
【0025】
さらに本発明では、透湿度が2000g/m2・24hr以上であることが好ましい。上限は一般には8000g/m2・24hrであり、さらには2000〜5000g/m2・24hrの範囲であることが好ましい。またこのように高い透湿度を有しながら、耐水圧が1.9kPa以上であることが好ましい。上限としては500kPa程度であるが、さらには5〜100kPaであることが好ましい。本発明では皮革様シート状物の表面に微小開口部が存在し、かつバインダー層に極細繊維が繊維束状態で存在することによって、このような相反する特性を高レベルで維持することが可能である。
【0026】
また、本発明の皮革様シート状物の多孔構造を有する表皮層では、充実層が1〜50μmであることが好ましく、より好ましくは3〜20μmであり、さらには5〜20μmであることが最も好ましい。厚すぎると微小な開口部が存在している本発明のシート状物でも、透湿度が低下する傾向にあり、薄すぎると耐水圧が低下する傾向にある。また多孔層の厚さが10〜200μm、密度は0.20〜0.90g/cm3であることが好ましい。さらには0.3〜0.7g/cm3であることが好ましい。密度が低すぎる場合には高分子弾性体の強度が弱くなり、耐摩耗性能や剥離強力が低いものとなる傾向にあり、密度が高すぎると透湿性能が低下する傾向にある。さらには多孔層の厚さが、10〜200μmであることが好ましく、さらには20〜50μmであることが最も好ましい。密度や厚さが小さいと密度が低すぎる時と同様に表面物性が低下する傾向にあり、逆に大きいと折り曲げ時の小皺外観等の高級外観が低下する傾向にある。
【0027】
このような本発明の皮革様シート状物は、例えばもう一つの本発明である皮革様シート状物の製造方法によって得ることができる。
【0028】
本発明の皮革様シート状物の製造方法とは、溶剤(1)に対する溶解性の異なる2つ以上の成分からなる極細繊維形成性の複合繊維と高分子弾性体からなる基体上に、溶剤(2)に対する膨潤率が10〜300%である高分子弾性体(A)層と、溶剤(2)で溶解される微粒子を含有する高分子弾性体(B)層と、基体中に浸透しているバインダー層とからなる表皮層を形成し、次いで溶剤(1)を用いて複合繊維を極細繊維化し、溶剤(2)を用いて微粒子を溶解除去する方法である。このとき溶剤(1)と溶剤(2)とは異なっていても良いが、生産効率の点から共通であることが好ましい。また、高分子弾性体(A)と高分子弾性体(B)とは異なっていても良いが、溶剤(2)に対する膨潤率が同程度である方が、風合いや接着の面から好ましい。
【0029】
本発明で用いられる、溶剤(1)に対する溶解性の異なる2つ以上の成分からなる極細繊維形成性の複合繊維としては、例えば具体的には、溶剤溶解性の異なる2成分以上の重合体組成物から複合紡糸法、混合紡糸法などにより紡糸し、海島型繊維としたものである。極細繊維化する際には、海島繊維の海成分が易溶解成分であることが好ましい。このとき島成分の繊度は0.2dtex以下、好ましくは0.1dtex以下、特に好ましくは0.0001〜0.5dtexの繊度であることが好ましい。
【0030】
また、そのような溶剤溶解性の異なる2成分以上の重合体組成物の好ましい組み合わせとしては、不溶解成分としてポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルを選定したときには易溶解成分としてポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどのポリオレフィン類が、不溶解成分としてナイロン6、ナイロン66、ナイロン12などのポリアミドを選定した時には易溶解成分としてポリエステル類、ポリオレフィン類が好ましく選定される。
【0031】
本発明で用いるこのような極細繊維形成性の複合繊維と高分子弾性体からなる基体としては、シート状であれば特に制限されるものではなく、複合繊維以外の繊維や、その他の成分を含んでも良く、繊維の形態も各種織編物や不織布のいずれでもよいが、最も好ましくは、繊維質基材に高分子弾性体を含浸凝固させたものである。また繊維質基材も不織布をベースとするものであることが好ましい。例えば繊維を不織布化するには、公知のカード、レーヤー、ニードルロッカー、流体絡合装置などを用いることができ、交絡繊維密度の高い緻密に3次元絡合した不織布を得ることができる。また、各種繊維質基材に高分子弾性体を含浸・凝固させるためには、繊維質基材に高分子弾性体の有機溶剤溶液または分散液(水性エマルジョンを含む)を含浸し、加熱乾燥や湿式凝固法により凝固させればよい。このとき含浸させる高分子弾性体液の濃度は、5〜25%であることが好ましい。
【0032】
さらには含浸させる高分子弾性体は多孔を有するものとすることが好ましく、最も好ましくは公知のポリウレタン湿式凝固法で得られるような密度が0.5g/cm3以下となる多孔高分子弾性体であることが好ましい。
【0033】
本発明の製造方法では、このような基体上に高分子弾性体(A)層と、高分子弾性体(B)層と、高分子弾性体のバインダー層とからなる表皮層を形成する。
【0034】
本発明の皮革用シート状物の製造方法に用いられる高分子弾性体は、上記の皮革用シート状物で記述した高分子弾性体と同様なものを用いることができる。
【0035】
特に表皮層の高分子弾性体について述べると、100%伸長モジュラスは300〜1500N/cm2であることが好ましい。100%伸長モジュラスが小さい場合には得られた皮革様シート状物は柔軟性に富むが、耐磨耗性、耐熱性、耐溶剤性等が低下する傾向にあり、逆に大きい場合には得られた皮革様シート状物の風合いが硬くなり、耐屈曲性、低温時硬さ等の性質が低下する傾向にある。
【0036】
また高分子弾性体(A)は溶剤(2)に対する膨潤率が10〜300%であることが必要である。この膨潤率は、より好ましくは15〜250%の範囲であり、もっとも好ましくは20〜200%の範囲である。10%未満の場合、後に述べる高分子弾性体(B)層に溶剤(2)が浸透していきにくく、高分子弾性体(B)層の溶剤(2)で溶解される微粒子を十分に溶解することができず、高分子弾性体(B)層を多孔にすることや、高分子弾性体(A)層に微小開口部を形成させることが困難になる。一方300%より大きい場合は溶剤中での表皮の変形が大きく、皮革様シート状物の外観が損なわれる。さらに、ここで用いる高分子弾性体は、溶剤中で面積膨潤率10〜300%の膨潤現象は起こるが、該溶剤を除去することで面積変化率において5%以下となりほぼ元の形状に戻る物を選定し用いることが好ましい。高分子弾性体(B)も、微粒子を溶解するために高分子弾性体(A)と同じ膨潤率を有することが好ましい。逆にバインダー層を構成する高分子弾性体は、接着力を向上させるために高分子弾性体(A)や(B)よりも膨潤率が低いことが好ましい。基体層を構成する高分子弾性体も、高分子弾性体(A)や(B)よりも膨潤率が低いことが好ましい。
【0037】
さらに、表皮層に用られる高分子弾性体は耐溶剤性が高いことが好ましい。より具体的な例を挙げると、80℃の熱トルエン中に3分間浸漬した後の重量減少率が0〜25重量%の範囲であることが、さらには3〜10重量%の範囲であることが好ましい。重量減少率は小さい方が、処理後の表面外観をより良好とする傾向にある。重量減少率が大きすぎる場合、溶剤中で溶解現象が起こってしまい、その表面外観を維持しにくい傾向になる。
【0038】
ここで、面積膨潤率や重量減少率を求める場合には、高分子弾性体の厚さ200μmのフィルムを作成し、処理を行う該溶剤中に3分間浸漬した後のフィルムで測定する。例えば溶解成分にポリエチレンを用いた場合には、溶剤としてはトルエンなどを用いて測定する。また、測定温度としては処理時の温度を用いればよく、例えば80℃の熱トルエンを用いるなどする。
【0039】
また高分子弾性体(B)層には、溶剤(2)で溶解される微粒子を含有することが必要である。ここで高分子弾性体固形分重量に対して、該微粒子は3〜300%の範囲で含有させることが好ましい。さらには該微粒子の含有量が10〜200%の範囲が好ましく、特には20〜150%の範囲が好ましい。含有量が少ないと、表面の微小開口部や内部の多孔が少なくなり透湿性能などが低下する。一方、含有量が多くなると微小開口や多孔が多くなり、強度が弱くなり剥離性能等が低下する。またその微粒子の直径は200μm以下の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは100μm以下であり、もっとも好ましいのは、50μm以下である。
【0040】
本発明では、高分子弾性体と極細繊維とからなる基体上に、高分子弾性体(A)層と、高分子弾性体(B)層と、バインダー層とからなる表皮層を形成することが必要であるが、溶剤を用いて複合繊維を極細繊維化する前には、一部に気泡などの独立発泡がバインダー層の繊維の周辺に存在することは構わないが、基本的にバインダー層の複合繊維と高分子弾性体には空隙が無いことが好ましい。空隙があった場合には、最終的に高分子弾性体が極細繊維束の外周をうまく包囲することができない。
【0041】
表皮層の形成方法としては、公知のいずれの方法を用いることもでき、高分子弾性体含む溶液や分散液を、基材上にラミネートあるいはコーティングすることにより表皮層とすることができる。最も好ましい方法は、ラミネート法であり、具体的には、例えば、高分子弾性体(A)を含む溶液を離型紙上に流延し、ついで乾燥してフィルム化し第一層を形成した上に、高分子弾性体(B)を含む溶液を離型紙上に流延し、ついで乾燥してフィルム化し第二層を形成し、その後バインダー層となる高分子弾性体の溶液を再塗布し、その溶液が乾燥する前に基材と貼りあわせ、加熱により乾燥、接着を行う方法である。この時バインダー層となる高分子弾性体は架橋剤を含んでいることが好ましい。また表皮層は、複合繊維が侵入したバインダー層と、海島繊維が侵入していない第一層、第二層の3層から形成されており、表皮層が薄い場合にも繊維の毛羽が表面にでない利点がある。
【0042】
次いで本発明の製造方法では溶剤(1)を用いて複合繊維を極細繊維化し、溶剤(2)を用いて微粒子を溶解除去する。このとき極細繊維化と微粒子の溶解除去とはどちらを先に行っても良いし、同時に行っても良い。同時に行う場合には、先に述べたように溶剤(1)と溶剤(2)とが同一であることが好ましい。さらには、繊維の易溶解成分と微粒子とは回収の観点から、同一であることが好ましい。同一成分を用いた場合、溶解した後その溶液から海成分を回収する事が容易となりより環境に優しく好ましい。
【0043】
溶解除去する際の抽出効率を高めるために加熱した溶剤を用いるのも好ましい方法であり、処理温度としては75〜100℃であることが好ましい。温度が高すぎると樹脂の膨潤がおこりやすく、表皮層が劣化する傾向にある。また、微粒子を溶解除去する際には、シートをこのような溶剤中に含浸した後ニップするなどの方法により、表皮層中から微粒子を積極的に追い出す方法であることが好ましい。ニップ回数としては3〜10回繰り返し行うことが、ニップ時のクリアランスとしてはシート全体の厚さの60〜90%であることが好ましい。
【0044】
この時溶剤処理する際に、基材部分を元の面積より収縮させることが好ましい。基材を構成する不織布密度とその不織布に含浸される高分子弾性体のモジュラスおよびその含浸付与量によってその収縮度合いを調整することが出来る。不織布密度を低く、また高分子弾性体のモジュラスを低く、さらにその含浸付与量を少なくすると収縮が大きくなる傾向になり、反対に不織布密度を高く、また高分子弾性体のモジュラスを高く、さらにその含浸付与量を多くすると収縮しにくい傾向となる。そこでこれらの条件を最適化し、基材部分を元の面積から2〜20%収縮させることが好ましい。さらに好ましくは2〜12%の範囲で収縮させることが望ましく、最も好ましくは2〜7%の範囲で収縮させることが望ましい。
【0045】
一方、表皮層を形成する高分子弾性体は、溶剤中で面積の膨潤現象は起こるが、該溶剤を除去することで面積変化率が5%以下、さらに好ましくは2%以下となり、ほぼ元の形状に戻ること好ましい。
【0046】
そして、基材の収縮率から表皮層の収縮率を引いた時の値は、1〜25%であることが好ましい。さらには20%以下、最も好ましくは2〜10%であることが好ましい。このように基材の収縮率の方が表皮層の収縮率よりも大きい場合には、基材は表皮の元の面積に対し収縮しているため表皮層が少しあまり感を持ち、銀面の突っ張り感がないソフトなシート状物を得ることが出来る。表皮の元の面積に対する基材の収縮が少ない場合には、その表皮との面積差が小さく表面層のあまり感がほとんど無く銀面の突っ張り感を感じる傾向にある。一方、表皮の元の面積に対する基材の収縮が大きすぎる場合には、その表皮との面積差が大きすぎ、表面層のあまりからくるシワが多く発生し、外観の悪い表面となる傾向にある。
【0047】
さらに得られた皮革様シート状物は、揉み加工を施すことも好ましい。揉み加工の方法としては、例えばシート状物をクランプに把持し、一方のクランプをシートに揉み変形が加わるように駆動させる方法、あるいは2つの組み合わさった突起を有するステーの間にシート状物を通しシート状物に突起を押し込みながら揉みほぐしを行う方法等が挙げられる。
【0048】
このようにして得られた本発明の皮革様シート状物は、高品位外観を有しながら銀面の突っ張り感がないソフトなものであり、かつ銀面のあまり感と、折り曲げ時の小皺外観を有している。さらに本発明の製造方法で得られた皮革用シート状物の表面には、高分子弾性体(B)層に存在する粒子に由来する孔が表面に存在し、透湿、耐水に優れた銀付き調の皮革様シート状物となる。
【0049】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらにより制限されるものではない。実施例で特段断りのない限りパーセント(%)、比率は重量%、または重量比率を示す。実施例における測定値はそれぞれ以下の方法によったものである。
【0050】
(1)100%モジュラス
樹脂フィルム(厚さ約0.1mm)より採取したテストピースを、恒速伸長試験器で100%/minにて伸長試験し、100%伸長時点の荷重を読み取りN/cm2単位に換算する。テストピースはJIS−K−6301−2号型ダンベル法に準拠する。
【0051】
(2)溶剤膨潤率
樹脂フィルム(厚さ約200μm)より採取した15cm×15cmに切断した試験片に10cm×10cmの正方形の印をつけ、80℃のトルエン中に3分浸漬した後にこの印の部分の面積を求めその増加率を求める。
【0052】
(3)表皮層理論厚み
離型紙上に高分子弾性体溶液の目付をあわせて塗布した後、乾燥させた後のフィルムの厚さを測定し求める。
【0053】
(4)孔の直径と個数
本願における表面及び断面に存在する孔の直径の求め方は、基材の表面及び断面を倍率1000倍にて撮影した電顕写真より、単位面積(1mm2)当たりにおける孔の直径と個数を測定し、直径は平均値をもとめる。また、このときの孔が真円でない場合は、その孔の最大径を測定することとする。
また、形状に関しては、断面写真よりその各孔の外接円と内接円の直径を測定し、その比(外接円/内接円)を計算する。
【0054】
(5)厚さ
スプリング式ダイアルゲージ(荷重1.18N/cm2)にて測定する。
【0055】
(6)重量
10cm×10cmに切断した試験片を、精密天秤にて測定する。
【0056】
(7)摩耗
テーバー摩耗試験器にて摩耗輪CS10荷重1kgにて1万回処理した後の状態を5級から1級まで等級で示す。5級が一番磨耗が少ない。
【0057】
(8)外観
表中の「外観」は以下の評価をする。
◎:優れている 〇:良い △:普通 ×:悪い
【0058】
(9)挫掘感
表中の「挫屈感」は以下の評価をする。
◎:優れている 〇:良い △:普通 ×:大シワ
【0059】
(10)ソフト性
表中の「ソフト性」は以下の評価をする。
◎:優れている 〇:良い △:普通 ×:硬い
【0060】
(11)通気量
JIS P−8117の方法に準じて、ガーレのデンソメータを使用して測定した50cm3の空気が通過するのに要した時間から計算により「リットル/cm2・hr」の単位に換算した値である。
【0061】
(12)耐水圧
JIS L−1092 高水圧法に準拠する。
【0062】
(13)透湿度
JIS L−1099 A−1法 塩化カルシュウム法に準拠する。測定は1時間で3回行いその平均値を求める。得られた値を24倍し1日(24時間)あたりの数値(g/m2・24hr)として求める。
【0063】
(14)防汚性
5cm×5cmに切断した試験片の上に直径36mmの丸穴型板をのせ円部分が試験片の中央に来るよう固定する。円の中央試験片の上にタバコの灰を薬さじで3mg置き指で右に25回、左に25回、計50回円を描くようにすり込む。試験片を逆さに向け余分な灰を落とした後、丸穴型板を取り除き、きれいな指で1回ずつ指を変えて3回汚れを拭き取り、さらに軽く水を含ませた脱脂綿で10回ワイピングし汚れの除去度合いを標準見本と比較し級判定を行う。(5級が良、1級が不可)
この試験で使用するタバコの灰は、マイルドセブンの灰を乳鉢ですり潰したものを使用する。
【0064】
[実施例1]
基材の作成
島成分であるナイロン−6と海成分である低密度ポリエチレンとを50/50で混合紡糸し、繊度8.8dtexの海島型の複合繊維を得た。得られた複合繊維を、カット長51mにカットし原綿とした。この原綿をカードとクロスレイヤーを用いウェブとし、ニードルパンチングを1000本/cm2実施し、次いで、150℃の熱風チャンバーで加熱処理し、基体が冷える前に30℃のカレンダーロールでプレスし、目付け約370g/m2、厚さ1.4mm、見かけ密度0.26g/cm3の極細繊維形成性の複合繊維からなる不織布を得た。
【0065】
次に、高分子弾性体クリスボンTF50P(100%伸張応力が1080N/cm2のポリウレタン樹脂、大日本インキ化学工業(株)製、固形分濃度30重量%)のジメチルホルムアミド溶液(濃度15%)を、先に得た不織布に目付け920g/m2で含浸し、12%のDMF水溶液中に浸漬し凝固させた後、40℃の温水中で十分洗浄し、135℃の熱風チャンバーで乾燥して、高分子弾性体と極細繊維形成性の繊維からなる基体を得た。
【0066】
表皮層の成形
充実層用の高分子弾性体(A)の溶液として、Cu9430NL(100%伸張応力が325N/cm2のポリウレタン樹脂、大日精化工業(株)製、固形分濃度30重量%)100部、ジメチルホルムアミド 40部、メチルエチルケトン 60部で配合した配合液(1)を作成した。この溶液から作成したフィルムのトルエンにおける膨潤率は113.2%であり、またそのフィルムの熱トルエン中浸漬後の重量減少率は5.39%であった。
【0067】
また多孔層用の高分子弾性体(B)の溶液として、Cu9430NL 100部、ジメチルホルムアミド 40部、メチルエチルケトン 60部で配合した溶液中にポリエチレンの微粉末(フローセンUF−80 中位粒度20〜30ミクロン)を20部分散させた配合液(2)を作成した。
【0068】
またバインダー層用の配合液として、クリスボンTA265(100%伸張応力が245N/cm2の架橋型ポリウレタン樹脂、大日本インキ化学工業(株)製、固形分濃度65重量%)20部、高分子弾性体クリスボンTA290(100%伸張応力が245N/cm2の架橋型ポリウレタン樹脂、大日本インキ化学工業(株)製、固形分濃度41重量%)80部、コロネートL(イソシアネート系架橋剤、日本ポリウレタン(株)製)15部、クリスボンアクセルT(架橋促進剤、大日本インキ化学工業(株)製)3部、ジメチルホルムアミド 10部 で配合した配合液(3)を作成した。
【0069】
充実層用に配合液(1)を離型紙(AR―74M、厚さ0.25mm、旭ロール(株)製)上に、理論上の厚みが12.0μmとなるよう、塗布量目付け100g/m2(wet)で塗布し、70℃で3分間乾燥させた。次いでその上に、多孔層用のトルエンに溶解しないがよく膨潤する高分子弾性体(B)の配合液(2)を理論上の厚みが12.0μmとなるよう、塗布量目付け100g/m2(wet)で塗布し、70℃で3分間乾燥させた。さらにその上にバインダー層用の高分子弾性体からなる接着層用の配合液(3)を、理論上バインダー層の厚みが49.0μmとなるよう、塗布量目付け130g/m2(wet)で塗布し、その上にあらかじめ作成しておいた上記基体を貼り合わせた後、100℃で30秒乾燥し、次いで70℃で48時間エージングを行った後12時間放置冷却を行い離型紙を分離し、表面側から高分子弾性体(A)の第一層、高分子弾性体(B)の第二層、高分子弾性体のバインダー層からなる3層の表皮構造を持った基材を得た。
【0070】
仕上げ
表皮を持った基材を80℃のトルエン中でディップとニップを繰り返して複合繊維の海成分である低密度ポリエチレン成分を溶解除去し、複合繊維の極細化を行うと共に、高分子弾性体の層に分散されているポリエチレンの微粉末成分を溶解除去し、高分子弾性体層の多孔化を行った。その後、90℃の温水中で基材に含まれているトルエンを共沸除去し、120℃の熱風チャンバーで乾燥し、次いで柔軟剤、撥水剤を付与し揉み加工を行い、ソフトで表面挫屈感の良好な銀付き調皮革様シート状物を得た。
【0071】
得られた銀付き調の皮革様シート状物の表面には、平均直径3.2μmの孔が単位面積(1mm2)当たり84個あいていることを基材表面の電顕写真で確認した。また、この基材断面の電顕写真より、表皮層にあいている孔において外接円の直径の内接円の直径に対する比は1.1〜1.7の範囲であることを確認した。このシートの厚みは、1.23mm、重量は、432g/cm2となり、ソフトで表面挫屈感の良好なものとなった。またこのシートにおける通気性能は、0.04l/cm2・hrと低いものの、耐水圧は25.5kPaであり空気も水も通さないシートであることが確認された。一方このシートの透湿性能は、2120g/m2・24hrと良好な結果が得られ、表面からの水が進入しにくく内部の湿気を表面に透す機能を持ったシートであることが確認できた。またこの基材の表面の防汚性を測定すると4−5級と汚れにくい表面であった。ここで得られた銀付き調皮革様シート状物の物性を表1にまとめた。
【0072】
[実施例2]
バインダー層用の配合液として、実施例1の配合液(3)にポリエチレンの微粉末を配合した、クリスボンTA265 20部、高分子弾性体クリスボンTA290 80部、コロネートL 15部、クリスボンアクセルT 3部、ジメチルホルムアミド 10部 の溶液中にポリエチレンの微粉末UF−80を10部分散させた配合液(3’)を用いた以外は、実施例1と同様にして、皮革様シート状物を作成した。
【0073】
得られた銀付き調皮革様シート状物の表面には、平均直径3.6μmの孔が単位面積(1mm2)当たり93個あいていることを基材表面の電顕写真で確認した。また、この基材断面の電顕写真より表皮層にあいている孔において外接円の直径の内接円の直径に対する比は1.1〜1.6の範囲であることを確認した。このシートの厚みは、1.24mm重量は、436g/cm2となり、ソフトで表面挫屈感の良好なものとなった。またこのシートにおける通気性能は、0.05l/m2・hrと低く、耐水圧は26.5kPaであり空気も水も通さないシートであることが確認された。一方このシートの透湿性能は、2430g/m2・24hrと良好な結果が得られ、表面からの水が進入しにくく内部の湿気を表面に透す機能を持ったシートであることが確認できた。またこの基材の表面の防汚性を測定すると4−5級と汚れにくい表面であった。ここで得られた銀付き調皮革様シート状物の物性を表1に併せて示した。
【0074】
[比較例1]
第2層用の配合液として、実施例1の多孔層用の配合液(2)を用いる替わりに、実施例1の充実層用の配合液(1)を用い、第1層と第2層の配合液を同一にした以外は、実施例1と同じく3層の表皮層を有する皮革様シート状物を作成した。
【0075】
得られた銀付き調皮革様シート状物の表面には、平均直径0.1μm以上の孔が存在していないことを基材表面の電顕写真で確認した。また、この基材断面の電顕写真より表皮層には孔があいていないことを確認した。このシートにおける通気性能は、0.00l/cm2・hrと全く通気が無く、耐水圧は27.4kPaではあるものの、空気も水も通さないシートであり、さらにこのシートの透湿性能は、170g/m2・24hrと低く従来の物と変わらない性能であった。ここで得られた銀付き調皮革様シート状物の物性を表1に併せて示す。
【0076】
[比較例2]
第1層用の配合液として、実施例1の充実層用の配合液(1)を用いる替わりに、実施例1の多孔層用の配合液(2)を用い、第2層用の配合液として、実施例1の多孔層用の配合液(2)を用いる替わりに、実施例1の充実層用の配合液(1)を用い、第1層と第2層の配合液を逆にした以外は、実施例1と同じく3層の表皮層を有する皮革様シート状物を作成した。
【0077】
得られた銀付き調皮革様シート状物の表面には、平均直径5μm以上の孔が単位面積(1mm2)当たり1000個以上あいていることを基材表面の電顕写真で確認した。また、この基材断面の電顕写真より表皮層にあいている孔において外接円の直径の内接円の直径に対する比は1.1〜1.8の範囲であることを確認した。またこのシートにおける通気性能は、0.04l/m2・hrと低く、耐水圧は2.16kPaであり空気も水も通さないシートであり、さらにこのシートの透湿性能は、340g/cm2・24hrと低く従来の物と変わらない性能であった。またこの基材の表面の防汚性を測定すると2−3級と汚れやすい表面であった。ここで得られた銀付き調皮革様シート状物の物性を表1に併せて示す。
【0078】
[比較例3]
第1層用の配合液として、実施例1の充実層用の配合液(1)を用いる替わりに、実施例1の多孔層用の配合液(2)を用いた以外は、実施例1と同じく3層の表皮層を有する皮革様シート状物を作成した。
【0079】
得られた銀付き調皮革様シート状物の表面には、平均直径5μm以上の孔が単位面積(1mm2)当たり1000個以上あいていることを基材表面の電顕写真で確認した。また、この基材断面の電顕写真より表皮層が多孔層であり、あいている孔において外接円の直径の内接円の直径に対する比は1.0〜1.7の範囲であることを確認した。このシートにおける通気性能は、1.50l/cm2・hrと高いものの、耐水圧は8.8kPaしかなく、空気も水も通すシートであった。またこの基材の表面の防汚性を測定すると2−3級と汚れやすい表面であった。ここで得られた銀付き調皮革様シート状物の物性を表1に併せて示す。
【0080】
[比較例4]
第1層用の配合液として、実施例1の充実層用の配合液(1)を用いる替わりに、実施例1の多孔層用の配合液(2)を用い、第3層用の配合液として、実施例2の多孔バインダー層用配合液(3’)を用いた以外は、実施例1、および実施例2と同じく3層の表皮層を有する皮革様シート状物を作成した。
【0081】
得られた銀付き調皮革様シート状物の表面には、平均直径5μm以上の孔が単位面積(1mm2)当たり1000個以上あいていることを基材表面の電顕写真で確認した。また、この基材断面の電顕写真より第1層が多孔層であることを確認した。このシートにおける通気性能は、1.80l/cm2・hrと高いものの、耐水圧は6.9kPaしかなく、空気も水も通すシートであった。またこの基材の表面の防汚性を測定すると2−3級と汚れやすい表面であった。ここで得られた銀付き調皮革様シート状物の物性を表1に併せて示す。
【0082】
[比較例5]
実施例1の充実層用の配合液(1)の替わりに、クリスボンTF500TD(100%伸張応力が2750N/cm2のポリウレタン樹脂、大日本インキ化学工業(株)製、固形分濃度30重量%)100部、コロネートL 15部、クリスボンアクセルT 3部、ジメチルホルムアミド 40部、メチルエチルケトン60部で配合した溶液を用いた。それ以外は実施例1と同様にして銀付き調皮革様シート状物を作成した。
【0083】
得られた銀付き調皮革様シート状物の表面には、孔が存在しないことを基材表面の電顕写真で確認した。またその表皮層の断面電顕写真から第二層目中に分散されているポリエチレンの微粉末が溶剤に溶け残り粒子状で存在していることも確認できた。このシートにおける通気性能は、0.00l/cm2・hrと全く通気が無く、耐水圧は29kPaであり空気も水も通さないシートであり、さらにこのシートの透湿性能は、52g/m2・24hrと低く従来の透湿性能を有しない物と変わらない性能であった。ここで得られた銀付き調皮革様シート状物の物性を表1に併せて示す。
【0084】
【表1】
Figure 0004275470
【0085】
【発明の効果】
本発明によれば、透湿、耐水圧、及び風合いに優れた皮革様シート状物およびその製造方法が提供される。

Claims (9)

  1. 高分子弾性体と極細繊維とからなる基体上に、高分子弾性体からなる表皮層が存在するシート状物であって、表皮層が表面側から充実層、多孔層、バインダー層の3層構造を有し、充実層の厚さが1〜50μmであり、充実層の表面に直径が5μm未満の微小開口部が存在し、充実層では基本的に断面の電子顕微鏡写真を撮ったときに空隙が観察されず、多孔層では空隙が観察され、多孔層の断面に存在する空隙の平均直径が5〜200μmであり、バインダー層内には基体を構成する極細繊維が繊維束状態で侵入し、バインダー層を構成する高分子弾性体が該繊維束の外周を包囲しているが、繊維束の内部には高分子弾性体が存在していないことを特徴とする皮革様シート状物。
  2. バインダー層が架橋タイプの高分子弾性体から構成されている請求項1記載の皮革様シート状物。
  3. 多孔層の空隙の断面において、外接円の直径の内接円の直径に対する比が2以下である請求項1または2記載の皮革様シート状物。
  4. 溶剤(1)に対する溶解性の異なる2つ以上の成分からなる極細繊維形成性の複合繊維と高分子弾性体からなる基体上に、溶剤(2)に対する膨潤率が10〜300%である高分子弾性体(A)層と、溶剤(2)で溶解される微粒子を含有する高分子弾性体(B)層と、架橋タイプの高分子弾性体から構成されており基体中に浸透しているバインダー層とからなる表皮層を形成し、次いで溶剤(1)を用いて複合繊維を極細繊維化し、溶剤(2)を用いて微粒子を溶解除去することを特徴とする皮革様シート状物の製造方法。
  5. 溶剤(1)と溶剤(2)が同一溶剤である請求項記載の皮革様シート状物の製造方法。
  6. 複合繊維が海島繊維であり、海島繊維の海成分が易溶解成分である請求項4または5記載の皮革様シート状物の製造方法。
  7. 溶剤で溶解される微粒子の直径が5〜200μmである請求項4〜6のいずれか1項記載の皮革様シート状物の製造方法。
  8. 溶解除去する際の処理温度が75〜100℃である請求項4〜7のいずれか1項記載の皮革様シート状物の製造方法。
  9. 溶解除去する際に、基材部分を元の面積から2〜20%収縮させる請求項4〜8のいずれか1項記載の皮革様シート状物の製造方法。
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