JP4275218B2 - プライマー施行方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、土木・建築分野における建築物や構築物のコンクリートやセメントモルタルなど無機質表面にライニングあるいはコーティングなどを行う際に使用するプライマーの施工方法に関するものであり、プライマー層が無機質表面と良好な接着性を有し、かつプライマー層がその上に設けられるコーティング層またはライニング層に悪影響をもたらさない上良好な接着性のあるプライマー施工方法及びそのためのベースプライマー組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンクリートなどの無機質表面に、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂などを用いてライニング施工あるいはコーティングをする場合、ライニング材などの施工前にプライマーを塗布し、これらの接着性の向上を図るという技術が広く行われている。そしてこのプライマーとして不飽和ポリエステル樹脂系プライマー、ビニルエステル樹脂系プライマー、一液ウレタン樹脂系プライマー、エポキシ樹脂系プライマーが使用される。
【0003】
不飽和ポリエステル樹脂系やビニルエステル樹脂系のプライマーは、通常低粘度の組成物にしてコンクリートへの浸透性を高めているが、過酸化物触媒による常温硬化物系では完全硬化するまでには長時間を必要とするため、ライニング材などの表面材の施工ができず作業性が低下するだけでなく、このように硬化に時間がかかり過ぎると、コンクリート層内へ樹脂組成物が浸透し過ぎて、塗膜が薄くなりライニング材などとの界面の接着性が低下したり、含水率の高いコンクリートでの界面部の硬化不良など、プライマーとしての性能が低下する。
また揮発性を有する反応性モノマー(スチレンモノマーなど)が揮発するため、作業現場の大気汚染を招き、あるいは樹脂組成物の配合比率の変化によるプライマー性能の低下、樹脂量の損失と引火などの危険を招くなどの問題があった。
【0004】
ウレタン樹脂系プライマーも一般的には溶剤タイプであることから、作業環境汚染や引火などの危険性がある。また施工面が高温になるとプライマーの発泡現象などにより十分な接着強度が得られなかったり、プライマーとライニング材などとの塗り重ねタイミングが難しいなどの問題がある。
常温硬化型二液タイプのエポキシ樹脂プライマーは、一般にコンクリートなど無機質下地に対して高い接着性を有し、含水率の高い施工下地の時にも高い接着性を有することが知られている。特に常温硬化型では環境温度、下地温度に大きく影響を受け、完全硬化するまで長時間を要するため作業効率が低下する。またライニング材またはコーティング材に不飽和ポリエステル樹脂系、ビニルエステル樹脂系等を使用し、過酸化物触媒により常温硬化する場合、エポキシプライマーの常温硬化剤として汎用されているアミン系硬化剤によりライニング層が硬化阻害を受け、プライマー層とライニング層との界面が硬化不良となり、十分な接着性が得られない等の問題がある。
【0005】
これらの欠点のうち、反応性モノマー等の揮発による環境汚染を解決する一つの手段として、不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂系の過酸化物触媒による常温硬化系では、樹脂中の揮発性のモノマーをスチレンなどから他の高沸点化合物に置き換えるなどにより現場の環境汚染や臭気対策をする試みもなされているが完全硬化するまでの時間が長時間要するという問題点、現場で過酸化物触媒を取り扱うことによる危険や可使時間のトラブルといった問題点は解決できないでいる。
【0006】
またエポキシ樹脂系アミン硬化型プライマーと不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂系ライニング材との組み合わせによるプライマーとライニング材の界面部の硬化不良を解決するために、エポキシ樹脂プライマーとライニング材などとの間にウレタン系樹脂層を設ける方法が特開平5−163803号公報に提案されているが、プライマーの完全硬化には長時間要するという問題は解決されていなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこうした現状にかんがみ、コンクリートなどの無機質下地のライニングなどの施工方法において、含水率の高い場合でもエポキシ樹脂プライマー並みの高い接着性を有し、揮発性が小さく、短時間施工が可能なプライマー施工方法及びそれに使用するプライマー組成物の開発を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
[1] コンクリート構造物に、下記の組成のベースプライマー
(A)ラジカル重合性不飽和化合物5〜95重量部、エポキシ化合物95〜5重量部(合計100重量部)からなる重合性組成物・・・・・・100重量部、
(B)可視光重合開始剤 ・・・・・・0.01〜10重量部及び
(C)エポキシ硬化剤 ・・・・・0.01〜300重量部
を塗布し、次いで可視光を照射して半硬化状態にまで硬化が進行したところでラジカル重合性不飽和化合物及び可視光重合開始剤を含む仕上げプライマーを塗布し、更に可視光を照射して仕上げプライマーを硬化させることを特徴とするコンクリート構造物に対するプライマー施工方法。
[2] コンクリート構造物に、下記の組成のベースプライマー
(A)エポキシ化合物中に含まれるエポキシ基の5〜95%を(メタ)アクリロイル化した重合性組成物 ・・・・・・・・・・100重量部、
(B)可視光重合開始剤 ・・・・・・0.01〜10重量部及び
(C)エポキシ硬化剤 ・・・・・0.01〜300重量部、
を塗布し、次いで可視光を照射して半硬化状態にまで硬化が進行したところでラジカル重合性不飽和化合物及び可視光重合開始剤からなる仕上げプライマーを塗布し、更に可視光を照射して仕上げプライマーを硬化させることを特徴とするコンクリート構造物に対するプライマー施工方法。
【0009】
[3] エポキシ硬化剤がアミン系硬化剤である前記[1]または[2]に記載のコンクリート構築物に対するプライマー施工方法。
[4] 可視光重合開始剤がアシルホスフィンオキサイド系化合物である前記[1]〜[3]のいずれか1項に記載のコンクリート構築物に対するプライマー施行方法。
[5] ラジカル重合性不飽和化合物が不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂及びウレタンアクリレート樹脂のうちの少なくとも1種である前記[1]〜[4]のいずれかに記載のコンクリート構築物に対するプライマー施工方法、を開発することにより上記の課題を解決した。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、エポキシ系プライマー(エポキシ基を含むエポキシ成分とエポキシ硬化剤からなるプライマー組成物)がコンクリートとの接着性が優れているにもかかわらず、硬化が遅くコーティング層あるいはライニング層(以下この両者を仕上げ層ということもある。)の早急な施工が不可能な欠点を改善するために、エポキシ系プライマーをベースプライマー(コンクリート構造物に直接塗布するプライマー)とし、これが半硬化状態(本発明においては塗布層がある程度硬化が進行し、その上層に他のプライマーあるいはライニング等を塗布できるような状態のものを指す。)の時に短時間で硬化が可能であり、ベースプライマーのエポキシプライマーとの接着性にも優れ、かつ仕上げ層の硬化を妨害するアミン系硬化剤を含まないラジカル重合性不飽和化合物及び光重合開始剤からなる仕上げプライマー(ベースプライマーの上に塗布し、その上の仕上げ層を塗布するためのプライマー。)として使用することにより短時間にかつ効果的なプライマー層を形成する方法である。
【0013】
本発明では、ベースプライマー組成物として使用されるエポキシ系ベースプライマーとしては、▲1▼エポキシ樹脂とエポキシ硬化剤からなるエポキシ系プライマー、▲2▼ラジカル重合性不飽和化合物、エポキシ樹脂、光重合開始剤及びエポキシ硬化剤からなるエポキシ系プライマー、▲3▼エポキシ化合物中に含まれるエポキシ樹脂の一部を(メタ)アクリロイル化した重合性組成物、光重合開始剤及びエポキシ硬化剤からなるエポキシ系プライマーがある。
【0014】
エポキシ樹脂は、通常の公知の方法により製造されたもので良く、1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有する熱硬化性エポキシ樹脂である。
エポキシ樹脂としては、例えばエーテル型のビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族型エポキシ樹脂、エステル系の芳香族エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、エーテル・エステル型エポキシ樹脂などの公知のものがあり、これらのエポキシ樹脂単独使用でもあるいは2種以上を併用したものであってもよい。
エポキシ系プライマー組成物に配合するエポキシ樹脂硬化剤としては、一般的にアミン系硬化剤が用いられ、例えば脂肪族アミン、芳香族アミン、ポリアミド、複素環状アミンなどが挙げられ、またこれら変性アミンなど公知のものの組み合わせでも使用できる。
【0015】
これらのエポキシ樹脂は、施工面への含浸性を高めるために溶剤や反応性希釈剤などで希釈することもできる。使用可能な反応性希釈剤としては公知のもので良く、例えばブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等のアルコール類グリシジルエーテルやアルキル(C12〜C14)グリシジルエーテル等のポリグリコール類グリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル等のフェノール類グリシジルエーテル、カルボン酸グリシジルエステル、脂環式等の非グリシジルエポキシ等が挙げられる。
また必要に応じて湿潤面への接着性を高め、弾き防止などの目的でエポキシシラン、アミノシランなどのシランカップリング剤などを添加し、接着付与剤として添加することもできる。
【0016】
本発明においてベースプライマー組成物の構成成分として、また仕上げプライマー組成物として使用するラジカル重合性不飽和化合物としては、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂(以下両樹脂を合わせて「樹脂等」と呼ぶこともある。)あるいはウレタンアクリレート樹脂のうち、少なくともその一つを使用する。
本発明に使用する不飽和ポリエステル樹脂は多価アルコールと不飽和多塩基酸(及び必要に応じて飽和多塩基酸も使用する。)とのエステル化反応による縮合生成物(不飽和ポリエステル)をスチレンのような重合性モノマーに溶解したもので、「ポリエステル樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社、1988年発行)または「塗料用語辞典」(色材協会編、1993年発行)などに記載されている樹脂である。
【0017】
またビニルエステル樹脂は、エポキシアクリレート樹脂とも呼ばれ、一般にグリシジル基(エポキシ基)を有する化合物と、アクリル酸などの重合性不飽和結合を有するカルボキシル化合物のカルボキシル基との開環反応により生成する重合性不飽和結合を持った化合物(ビニルエステル)を、スチレンのような重合性モノマーに溶解したもので、「ポリエステルハンドブック」(日刊工業新聞社、1988年発行)または「塗料用語辞典」(色材協会編、1993年発行)などに記載されている樹脂である。
【0018】
不飽和ポリエステル樹脂の原料として用いる不飽和ポリエステルとしては、公知の方法により製造されるものでよく、具体的にはフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、アジピン酸、セバチン酸等の重合性不飽和結合を有していない多塩基酸またはその無水物と、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等の重合性不飽和多塩基酸またはその無水物を酸成分とし、これとエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等の多価アルコールをアルコール成分として反応させて製造されるものである。
【0019】
またビニルエステル樹脂(エポキシアクリレート系樹脂)の原料としてのビニルエステルとしては、公知の方法により製造されるものであり、エポキシ樹脂に不飽和一塩基酸、例えばアクリル酸またはメタクリル酸を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート、あるいは飽和ジカルボン酸及び/または不飽和ジカルボン酸と多価アルコールから得られる末端カルボキシル基を有する飽和ポリエステルまたは不飽和ポリエステルに、エポキシ基を有するα、β−不飽和カルボン酸エステルを反応させて得られる飽和ポリエステルまたは不飽和ポリエステルのポリエステル(メタ)アクリレートである。
原料としてのエポキシ樹脂としては、ビスフェノールAグリシジルエーテル及びその高分子量同族体、ノボラック型ポリグリシジルエーテル類などが挙げられる。
【0020】
前記末端カルボキシル基を有するポリエステルに用いる飽和ジカルボン酸としては、活性不飽和基を有していないジカルボン酸、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、アジピン酸、セバチン酸などが挙げられる。不飽和ジカルボン酸としては、活性不飽和基を有しているジカルボン酸、例えばフマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸などが挙げられる。
多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付可物などの多価アルコールなどが挙げられる。
ポリエステル(メタ)アクリレートの製造に用いるエポキシ基を有するα,β−不飽和カルボン酸エステルとしては、グリシジルメタクリレートが代表例として挙げられる。
【0021】
樹脂等に用いられる不飽和ポリエステルあるいはビニルエステルは、不飽和度の比較的高いものが好ましく、不飽和基当量(不飽和基1個当たりの分子量)が100〜800程度のものを用いる。不飽和基当量100未満のものは合成できない。しかし不飽和基当量が800を越えると高硬度の硬化物が得られない。
【0022】
本発明において使用される不飽和ポリエステル樹脂あるいはビニルエステル樹脂は、通常、前記の不飽和ポリエステルあるいはビニルエステルにスチレンモノマーなどの反応性モノマーを配合したものである。本発明の樹脂等に配合される反応性モノマーは、樹脂等の粘度を下げ、コンクリート等への浸透性を高め、かつ硬化皮膜の硬度、強度、耐薬品性、耐水性等を向上させるために重要であり、不飽和ポリエステルまたはビニルエステル100重量部に対して10〜250重量部、好ましくは20〜100重量部配合される。配合量が10重量部未満では、高粘度のため作業性、含浸性が悪化し、250重量部を超える量では、十分な塗膜硬度が得られず、耐薬品性、耐水性等が不足し、プライマーとして好ましくない。
この場合、スチレンモノマーの一部または全部を、クロルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなどのスチレン系モノマーや、メチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジメタクリレート等の他の重合性モノマーを本発明の主旨を損なわぬ範囲で代替し、使用することも可能である。
【0023】
更にラジカル重合性成分として用いられるウレタンアクリレートとは、ポリイソシアネートを、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアクリルポリオール及びヒドロキシアルキルアクリレート等のポリオールと反応させて得られる公知のオリゴマー樹脂である。
【0024】
本発明において使用されるラジカル重合性不飽和化合物及びエポキシ化合物からなる樹脂組成物としては、公知の方法により製造される1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有する熱硬化性エポキシ樹脂と常温硬化用エポキシ硬化剤を組み合わせた樹脂組成物と公知の方法により製造される不飽和ポリエステル樹脂あるいはビニルエステル樹脂とを混合した樹脂組成物であり、その混合比は10/90〜90/10重量部。好ましくは20/80〜70/30重量部が良い。また使用されるエポキシ樹脂は1種または2種以上併用してもよく、不飽和ポリエステル樹脂あるいはビニルエステル樹脂も同様にどちらか一方あるいは併用してもよく、どちらも2種以上の併用であってもよい。
またこの場合に使用される反応性希釈剤は、エポキシ樹脂に使用されるエポキシ基を有する希釈剤でも良いし、ラジカル重合性不飽和基を有する希釈剤でも良い。またグリシジルメタクリレートやアリルグリシジルエーテル等の分子中にエポキシ基とラジカル重合性不飽和基の両方を持った構造の希釈剤でも良い。
【0025】
本発明においてベースプライマーのエポキシ系プライマーの1種として使用されるエポキシ化合物中のエポキシ基の5〜95%を(メタ)アクリロイル化した重合性化合物とは、公知の方法により製造される1分子中少なくとも2個以上のエポキシ基を有する熱硬化性エポキシ樹脂に、公知の方法によりエポキシ基に不飽和一塩基酸、例えばアクリル酸またはメタクリル酸を、エポキシ基の5〜95%、好ましくは10〜90%反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレートであり、エポキシ樹脂は1種または2種以上併用してもよい。
またこの場合に使用される反応性希釈剤は、エポキシ樹脂に使用されるエポキシ基を有する希釈剤でも良いし、ラジカル重合性不飽和基を有する希釈剤でも良い。またグリシジルメタクリレートやアリルグリシジルエーテル等の分子中にエポキシ基とラジカル重合性不飽和基の両方を持った構造の希釈剤でも良い。
該エポキシ系プライマー組成物に配合するエポキシ樹脂硬化剤としては、エポキシ樹脂の場合と同様に一般的なアミン系硬化剤が用いられ、例えば脂肪族アミン、芳香族アミン、ポリアミド、複素環状アミンなどが挙げられ、またこれら変性アミンなど公知のものの組み合わせでも使用できる。また脂肪族アミン以外の化合物でも芳香族アミンとサリチル酸との組み合わせやメルカプタン系化合物等、常温硬化可能な系も使用できる。
【0026】
本発明において可視光とは380〜780nmの波長領域の光線を示し、本発明で使用される可視光重合開始剤とは、可視光領域に感光性を有する化合物を指す。
可視光領域に感光性を有する可視光重合開始剤としては、例えば山岡など、「表面」、27、(7)、548(1989)、佐藤など、「第3回ポリマー材料フォーラム要旨集」、IBP18(1994)に記載のカンファーキノン、ベンジル、トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、メチルチオキサントン、ビスペンタジエニルチタニウム−ジ(ペンタフルオロフェニル)などの単独の可視光重合開始剤の他、有機過酸化物/色素系、ジフェニルヨードニウム塩/色素、ビイミダゾール/ケト化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物/水素供与性化合物、メルカプトベンゾチアゾール/チオピリリウム塩、金属アレーン/シアニン色素の他、特公昭45−37377号公報に記載のヘキサアリールビイミダゾール/ラジカル発生剤などの公知の複合開始剤系などを挙げることができる。
【0027】
本発明で使用されるアシルホスフィンオキサイドは、一般式(1)または(2)で示される。
【化1】
Figure 0004275218
(式中、R 〜R はそれぞれ独立してアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を示す。)
【0028】
【化2】
Figure 0004275218
(式中、R 〜R はそれぞれ独立してアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基または複素環基を示す。)
これらの重合開始剤は、従来用いられているUV開始剤よりも長波長領域に感光性があり(400nm以上の可視光領域)、光の透過性が優れている上、光照射により開裂してアシルラジカルとホスフィノラジカルを発生するので、従来用いられているUV開始剤よりも重合開始効率が高いものである。
【0029】
本発明で用いられる一般式(1)のビスアシルホスフィンオキサイド化合物の具体例としてはビス(2,6−ジクロルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−2,5ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−4−ビフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−2−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−4−クロルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−2,2−ジメトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−ドデシルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−4−オクチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロル−3,4,5−トリメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロル−3,4,5−トリメトキシベンゾイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2,5−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−4−ビフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−4−エトキシビフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2−エトキシビフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−4−メトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド等を挙げることができる。
【0030】
本発明で用いられる一般式(2)のアシルホスフィンオキサイド化合物の具体例としては、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジフェニルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、2,3,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、2−フェニル−6−メチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジブロムベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、2,8−ジメチルナフタリン−1−カルボニル−ジフェニルホスフィンオキサイド、1,3−ジメトキシナフタリン−2−カルボニル−ジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−フェニルホスフィン酸メチルエステル、2,6−ジメチルベンゾイル−フェニルホスフィン酸メチルエステル、2,6−ジクロルベンゾイル−フェニルホスフィン酸メチルエステル等を挙げることができる。
【0031】
具体的には、例えば2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(商品名:Darocur−1173、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製)とビス(2,6−ジメトキシベンゾイル−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド(チバスペシャリティーケミカルズ(株)製)を75%/25%の割合で混合された商品名「イルガキュアー1700」(チバスペシャリティーケミカルズ(株)製)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(商品名:「イルガキュア184」、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製)、とビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド(チバスペシャリティーケミカルズ(株)製)を75%/25%の割合で混合された商品名「イルガキュア1800」(チバスペシャリティーケミカルズ(株)製)、50%/50%の割合で混合された商品名「イルガキュア1850」(チバスペシャリティーケミカルズ(株)製)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(商品名「イルガキュア819、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製)、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド(商品名:Lucirin TPO BASF(株)製)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(商品名:Darocur1173、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製)と2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキオキサイド(商品名:Lucirin TPO BASF(株)製)を50%/50%の割合で混合された商品名:「Darocur4265」などがある。可視光重合開始剤としては380nm〜780nmの波長域に感光性を有する光重合開始剤であれば良く、それらを組み合わせて使用してもよい。
【0032】
可視光領域に感光性を有する光重合開始剤の使用量は、一般に樹脂等100重量部に対して0.01〜20重量部、好ましくは0.05〜15重量部である。可視光重合開始剤組成物の使用量が0.01重量部未満では重合が不十分になり易く、一方20重量部を超える量では経済的に不利な上、硬化物の物性低下等が起こる。
光重合開始剤を添加した樹脂の硬化時間の調節や表面乾燥性の確保のために、キノン類等の公知のラジカル重合禁止剤や3級アミン類を添加してもよい。
【0033】
本発明のプライマー組成物では、必要に応じて親水性・親油性バランス(HLB)を調節してコンクリートへの浸透性を高めるため、非イオン型の界面活性剤を添加してもよい。添加量は100重量部に対して0.1〜5重量部であり、非イオン型界面活性剤としてはアルキルフェニールエーテル型、アルキルエステル型、アルキルアミン型、ソルビタン誘導体などがある。特開昭55−62970号公報などに詳細な記載がある。
【0034】
更に本発明においては、必要に応じて湿潤したコンクリート面での弾き防止、接着性向上のため公知の方法で揺変性を付与してもよく、シランカップリング剤を添加してもよい。揺変性付与については、例えばシリカパウダー(エアロジルタイプ)、マイカパウダー、炭酸カルシウムパウダーなどを樹脂100重量部に対して0.1〜50重量部添加する方法などがあり、シランカップリング剤については、必要に応じてモレキュラーシーブなどの吸湿剤を併用し、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シランなどを100重量部に対して0.1〜20重量部添加する方法がある。
また、本発明では、コンクリート内部の水蒸気の蒸気圧によるプライマーの膨れを解決するため、必要に応じて無機質フィラー、有機質フィラーや数mmの有機、無機の短繊維を硬化に影響のない程度添加してもよい。このような方法は特開平6−271373号公報、特開昭57−10656号公報などに詳細な記載がある。
【0035】
本発明の成形方法に使用される光源としては、380〜780nmの波長領域の光を発生する光源であり、また780nm以上の近赤外光、赤外光等の熱源となる光を合わせ持つ光源でも良く、例えばメタルハライドランプ、キセノンランプ、近赤外光ランプ、ナトリウムランプ、ハロゲンランプ、白熱灯、陽光ランプ、太陽光等を使用することができる。また、各種ランプを組み合わせて使用することもできる。屋外の作業では特に太陽光が有効である。
また、より早い硬化速度を得るためにはエネルギー順位の高い短波長の領域の光が有効であるが、プライマー組成物の厚さが厚い時など完全硬化し難い。エポキシ/アミン系常温硬化プライマーの硬化を促進するためには380nm以上の波長で長波長領域に波長分布が多く、熱の出る光が有効であり、メタルハライドランプ、ハロゲンランプ、近赤外光ランプ、赤外ランプ等が有効である。
【0036】
光照射時間としては、光源の有効波長、出力、照射距離、プライマー組成物の厚さ、充填物の量あるいは重合開始剤の配合量などにより異なるため、一概に規定できないが、0.01時間以上、好ましくは0.05時間以上になるように調整すればよい。
本発明のプライマー施工方法としては、まずコンクリート構築物等の無機質下地に対して高い接着性を有するベースプライマーとしてのエポキシ系プライマー組成物[(エポキシ基を有するエポキシ成分)/アミン系エポキシ硬化剤]を塗布し、これが半硬化状態になった時点において光ラジカル硬化型の仕上げプライマー組成物を塗布し光硬化させる方法である。この光硬化型プライマーは短時間で硬化するので、プライマー施工は短時間で終了する。硬化に長時間を必要とするベースプライマーはプライマー施工後にゆっくりと硬化し、コンクリート構造物にがっちり接着する。
【0037】
なおベースプライマーとして、ラジカル重合性不飽和化合物、エポキシ樹脂、光重合開始剤及びエポキシ硬化剤からなるエポキシ系プライマーあるいはエポキシ化合物中のエポキシ基の一部を(メタ)アクリロイル化した重合性組成物、光重合開始剤及びエポキシ硬化剤からなるエポキシ系プライマーは、光重合開始剤を含んでいるため光照射すると短時間で半硬化状態になる。そしてこの上にアミン系のエポキシ硬化剤を含んでいない光硬化型のプライマー組成物を塗布し、光照射することによりプライマー施工の全工程を大幅に短時間で終了させることが可能となり、かつ仕上げ層の硬化を妨害しない。なおベースプライマーの半硬化状態のものは、仕上げプライマー組成物の下面においてエポキシ基がゆっくりと反応が進行し、数日の後には完全に硬化状態になる。
【0038】
本発明のプライマー施工方法において、ベースプライマー層と仕上げ層の間に光硬化型重合性不飽和化合物層(仕上げプライマー層)を設けることにより、エポキシ化合物/アミン系の常温硬化型エポキシ系プライマーと仕上げ層の不飽和ポリエステル樹脂あるいはビニルエステル樹脂ライニング層との界面の、アミン系エポキシ硬化剤の作用による硬化不良を防ぐことができ、また光源から出る緩やかな熱によりエポキシ化合物/アミン系常温硬化プライマーの硬化が促進されるためトラブルなく安全に作業性をアップすることが可能であり、経済性にも優れ、使用する光も安全である。
【0039】
【実施例】
以下に示す実施例、比較例により、本発明の内容を詳細に説明するが、各例中の「部」、「%」は重量基準を示す。
[プライマー組成物の調製]
(プライマー組成物−1)
エポキシ樹脂[商品名エピコート828(油化シェル(株)製):60部、エピコート834:20部]80部、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル[商品名SR−NGP(坂本薬品(株)製)]:10部、ブチルグリシジルエーテル[反応性希釈剤BGE]:10部を混合したものに、エポキシ硬化剤[商品名エピキュアS−005P(油化シェル(株)製)]:80部を添加して常温硬化型エポキシ樹脂組成物であるプライマー−1を得た。
(プライマー組成物−2)
ビニルエステル樹脂[商品名リポキシR−802(昭和高分子(株)製)]:100部に可視光領域に感光性を有するアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤[商品名イルガキュアー1800(チバスペシャリティーケミカルズ(株)製):以下I−1800という]:2.0部を混合し、光ラジカル重合性ビニルエステル樹脂組成物であるプライマー組成物−2を得た。
【0040】
(プライマー組成物−3)
ウレタンアクリレート樹脂[商品名リポキシFM−1600(昭和高分子(株)製)]:100部にI−1800:2.0部を混合し、光ラジカル重合性ウレタンアクリレート樹脂組成物であるプライマー組成物−3を得た。
(プライマー組成物−4)
不飽和ポリエステル樹脂[商品名リゴラックFK−2000(昭和高分子(株)製)]:100部にI−1800:1.0部を混合し、光ラジカル重合性不飽和ポリエステル樹脂組成物であるプライマー組成物−4を得た。
(プライマー組成物−5)
プライマー組成物−1:50重量部にプライマー組成物−2:50重量部を混合し、常温硬化型エポキシ樹脂成分と光ラジカル重合性ビニルエステル樹脂成分を含むプライマー組成物−5を得た。
【0041】
(プライマー組成物−6)
攪拌機、還流冷却器、ガス導入管、温度計を付した反応装置にエピコート828(エポキシ当量:189):1当量(189g)、エピコート834(エポキシ当量250):1当量(250g)、ナフテン酸クロム:1.57gを仕込み、空気を吹き込みながら110℃で攪拌している中にハイドロキノン:0.026gを溶解したメタクリル酸:1当量(86g)を仕込み、110〜130℃で3〜4時間反応させ酸価が0になった時点で反応を終了し、スチレンモノマー:283部を加えエポキシ基を有するビニルエステル樹脂を得た。
次に、このエポキシ基を有するビニルエステル樹脂:100部にI−1800:1.0部、エポキシ硬化剤[商品名エピキュアS−002(油化シェル(株)製)]:80重量部を添加して常温硬化型エポキシ基を有する光ラジカル重合性ビニルエステル樹脂組成物であるプライマー組成物−6を得た。
【0042】
(実施例1)
(プライマーの塗布及び硬化条件)
プライマー組成物−5を30cm×30cm×6cmのコンクリート歩道板の上面(30cm×30cm)に0.2Kg/m となるように刷毛で塗布し、5分間放置しプライマー組成物をコンクリート内部に浸透させた後、380〜780nmの可視光領域の波長領域を含む光源である2KWメタルハライドランプ[商品名ダイナビーム2:東芝ライテック(株)製:以下ランプ1と称す]を使用して1mの距離で5分間照射を行うと流動性がなくなった。
次にプライマー組成物−2をその上に0.1Kg/m となるように刷毛で塗布し、ランプ1を使用して1mの距離で5分間光照射を行うと表面タックがなくなり硬化した。
【0043】
(FRPライニング)
次に、硬化したプライマー面の不陸調整のために、ベンゾイルパーオキサイド系過酸化物触媒カドックスB−40E[化薬アクゾ(株)製]:3.0部を添加したリポキシパテFM[昭和高分子(株)製]を0.2Kg/m となるように薄く塗布して一日放置し、硬化後、カーボン繊維クロス[商品名トレカクロス、T−300、CF目付193g/m (東レ(株)製)]2plyに、常温硬化触媒であるパーメック−N[日本油脂(株)製/ナフテン酸コバルト(コバルト:6%)=1.5/0.5を添加したビニルエステル樹脂[商品名リポキシR−804(昭和高分子(株)製)]をカーボンコンテントが約60vol%になるように含浸させ、パテ硬化面上に積層し、一日放置して硬化させた。
【0044】
(接着性テスト)
プライマーの性能を確認するため、ADHESION TESTER elcometerを使用して、接着面積4.9cm で、プライマーを塗布してから3日後の接着強度及びその破壊状況を調べたところ、コンクリート母材破壊でコンクリートを約10mm程度剥離させた。接着性は良好であり、プライマーとしての性能が十分満たされていることを確認した。接着強度は表1に示す。
【0045】
(実施例2)
(プライマーの塗布及び硬化条件)
プライマー組成物−6を30cm×30cm×6cmのコンクリート歩道板の上面(30cm×30cm)に0.2Kg/m となるように刷毛で塗布し、5分間放置してプライマー組成物をコンクリート内部に浸透させた後、ランプ1を使用して1mの距離で5分間光照射を行うと流動性がなくなった。
次にプライマー組成物−3をその上に0.1Kg/m となるように刷毛で塗布してランプ1を使用して1mの距離で5分間光照射を行うと表面タックがなくなり、硬化した。
【0046】
(FRPライニング)
実施例1と同様な操作で、リポキシパテFMで不陸調整を行い“トレカ”クロス2plyをリポキシR−804を使用してパテ硬化面上に積層した。
(接着性テスト)
実施例1と同様な操作でADHESION TESTER elcometerを使用して、プライマー塗布してから3日後の接着強度及びその破壊状況を調べたところ、コンクリート母材破壊でコンクリートを約10mm程度剥離させた。接着性は良好であり、プライマーとしての性能が十分満たされていることを確認した。接着強度は表1に示す。
【0047】
参考例1)
プライマー組成物−1を30cm×30cm×6cmのコンクリート歩道板の上面(30cm×30cm)に0.2Kg/m2 となるように刷毛で塗布し、常温で放置したところ3時間後に流動性がなくなった。
次にプライマー組成物−4をその上に0.1Kg/m2 となるように刷毛で塗布してランプ1を使用して1mの距離で5分間光照射を行うと表面タックがなくなり、硬化した。
【0048】
(FRPライニング)
実施例1と同様な操作で、リポキシパテFMで不陸調整を行い“トレカ”クロス2plyをリポキシR−804を使用してパテ硬化面上に積層した。
(接着性テスト)
実施例1と同様な操作でADHESION TESTER elcometerを使用して、プライマー塗布してから3日後の接着強度及びその破壊状況を調べたところ、コンクリート母材破壊でコンクリートを約10mm程度剥離させた。接着性は良好であり、プライマーとしての性能が十分満たされていることを確認した。接着強度は表1に示す。
【0049】
(実施例4)
(プライマーの塗布及び硬化条件)
直射日光が当たっている状態の30cm×30cm×6cmのコンクリート歩道板の上面(30cm×30cm)にプライマー組成物−6をスプレーアップ成形機、スーパースレイブ(米国:ビンクス社製)を用いてスプレーで0.2Kg/m となるように刷毛で塗布したところ、3分間光照射を行うと流動性がなくなった。
次にプライマー組成物−2をその上にスプレーで0.1Kg/m となるように塗布したところ、太陽光下に3.5分間で表面タックがなくなり硬化した。
【0050】
(FRPライニング)
実施例1と同様な操作で、リポキシパテFMで不陸調整を行い“トレカ”クロス2plyをリポキシR−804を使用してパテ硬化面上に積層した。
(接着性テスト)
実施例1と同様な操作でADHESION TESTER elcometerを使用して、プライマー塗布してから3日後の接着強度及びその破壊状況を調べたところ、コンクリート母材破壊でコンクリートを約10mm程度剥離させた。接着性は良好であり、プライマーとしての性能が十分満たされていることを確認した。接着強度は表1に示す。
【0051】
(比較例1)
(プライマーの塗布及び硬化条件)
プライマー組成物−1を30cm×30cm×6cmのコンクリート歩道板の上面(30cm×30cm)に0.2Kg/m となるように刷毛で塗布し、常温で放置したところ3時間後に流動性がなくなり、8時間後に乾燥した。プライマー塗布工程に8時間費やした。
(FRPライニング)
実施例1と同様な操作で、リポキシパテFMで不陸調整を行い“トレカ”クロス2plyをリポキシR−804を使用してパテ硬化面上に積層した。
(接着性テスト)
実施例1と同様な操作でADHESION TESTER elcometerを使用して、プライマー塗布してから3日後の接着強度及びその破壊状況を調べたところ、エポキシプライマー上でのビニルエステル樹脂系パテの接着性の低さが認められた。接着強度は表1に示す。
【0052】
(比較例2)
(プライマーの塗布及び硬化条件)
ビニルエステル樹脂[商品名、リポキシR−806、昭和高分子(株)製]:100部、リポキシR−803AT:40部、スチレンモノマー:70部からなる混合物の100部に、常温硬化剤パーメックN[日本油脂(株)製]/ナフテン酸コバルト1.2:0.5部を混合したものを常温型プライマーとし、30cm×30cm×6cmのコンクリート歩道板の上面(30cm×30cm)に0.2Kg/m となるように刷毛で塗布し、常温で放置したところ3時間後に乾燥した。プライマー塗布工程に3時間費やした。
(FRPライニング)
実施例1と同様な操作で、リポキシパテFMで不陸調整を行い“トレカ”クロス2plyをリポキシR−804を使用してパテ硬化面上に積層した。
(接着性テスト)
実施例1と同様な操作でADHESION TESTER elcometerを使用して、プライマー塗布してから3日後の接着強度及びその破壊状況を調べたところ、コンクリート母材破壊でコンクリートを約2mm程度剥離した。接着強度もやや低かった。結果は表1に示す。
【0053】
【表1】
Figure 0004275218
【0054】
【発明の効果】
本発明は、建築、土木分野における建築物や構築物のコンクリートやセメントモルタル等無機質表面に、コーティングまたはライニング等を行う際に使用するコンクリート構築物に対するプライマー施工方法及びそのためのベースプライマー用プライマー組成物に関する。
本施工方法によれば、ベースプライマーにはエポキシ系プライマーを使用しているのでコンクリート構造物に対して強固に接着し、また仕上げプライマーとしてはラジカル重合性不飽和化合物と光重合開始剤からなる光硬化性プライマーを使用しているので照射のみで極めて短時間で硬化するだけでなく、該プライマーはベースプライマーとの接着性が強い上、該プライマーにはアミン系のエポキシ硬化剤がまったく含まれていないので仕上げ層に不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂を使用した時においてもその硬化を妨害することはない。このためプライマー塗布開始後次の仕上げ層を塗布することを短時間で開始することができる。
本発明のプライマー施工方法は、ベースプライマーが半硬化になった時点で仕上げプライマーを塗布し、これが光照射により極めて短時間で硬化可能であるので、仕上げ層の塗布工程に移ることが可能である。また半硬化状態のベースプライマー層はその後に徐々に硬化が進行し、数日後には完全硬化するので工程的にはなんら障害にならず、プライマー工程としては性能的には優れているにもかかわらず大幅に時間を短縮することができた。

Claims (5)

  1. コンクリート構造物に、下記の組成のベースプライマー
    (A)ラジカル重合性不飽和化合物5〜95重量部、エポキシ化合物95〜5重量部(合計100重量部)からなる重合性組成物・・・・・・100重量部、
    (B)可視光重合開始剤 ・・・・・・0.01〜10重量部及び
    (C)エポキシ硬化剤 ・・・・・0.01〜300重量部
    を塗布し、次いで可視光を照射して半硬化状態にまで硬化が進行したところでラジカル重合性不飽和化合物及び可視光重合開始剤を含む仕上げプライマーを塗布し、更に可視光を照射して仕上げプライマーを硬化させることを特徴とするコンクリート構造物に対するプライマー施工方法。
  2. コンクリート構造物に、下記の組成のベースプライマー
    (A)エポキシ化合物中に含まれるエポキシ基の5〜95%を(メタ)アクリロイル化した重合性組成物 ・・・・・・・・・・100重量部、
    (B)可視光重合開始剤 ・・・・・・0.01〜10重量部及び
    (C)エポキシ硬化剤 ・・・・・0.01〜300重量部、
    を塗布し、次いで可視光を照射して半硬化状態にまで硬化が進行したところでラジカル重合性不飽和化合物及び可視光重合開始剤からなる仕上げプライマーを塗布し、更に可視光を照射して仕上げプライマーを硬化させることを特徴とするコンクリート構造物に対するプライマー施工方法。
  3. エポキシ硬化剤がアミン系硬化剤である請求項1または2に記載のコンクリート構築物に対するプライマー施工方法。
  4. 可視光重合開始剤がアシルホスフィンオキサイド系化合物である請求項1〜3のいずれか1項に記載のコンクリート構築物に対するプライマー施工方法。
  5. ラジカル重合性不飽和化合物が不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂及びウレタンアクリレート樹脂のうちの少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載のコンクリート構築物に対するプライマー施工方法。
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