図1は、本発明の1実施例のハイブリッド駆動装置10を説明する図である。図1において、このハイブリッド駆動装置10では、車両において、主駆動源である第1駆動源12のトルクが出力部材として機能する車輪側出力軸(以下、出力軸という)14に伝達され、その出力軸14から差動歯車装置16を介して左右一対の駆動輪18にトルクが伝達されるようになっている。このハイブリッド駆動装置10には、走行のための駆動力を出力する力行制御あるいはエネルギを回収するための回生制御を実行可能な副動力源としての第2駆動源20が設けられており、この第2駆動源20は有段式自動変速機としての変速機22を介して上記出力軸14に連結されている。したがって、第2駆動源20から出力軸14へ伝達されるトルク容量がその変速機22で設定される変速比γs(=MG2の回転速度/出力軸14の回転速度)に応じて増減されるようになっている。
上記変速機22の変速比γsは「1」以上の複数段に設定されるように構成されており、第2駆動源20からトルクを出力する力行時にはそのトルクを増大させて出力軸14へ伝達することができるので、第2駆動源20が一層低容量もしくは小型に構成される。これにより、例えば高車速に伴って出力軸14の回転数が増大した場合には、第2駆動源20の運転効率を良好な状態に維持するために、変速比γsを低下させて第2駆動源20の回転数が低下させられ、また、出力軸14の回転数が低下した場合には、変速比γsが増大させられたりする。
上記第1駆動源12は、主動力源としてのエンジン24と、第1モータ・ジェネレータ(以下、MG1という)と、これらエンジン24とMG1との間でトルクを合成もしくは分配するための動力分配機構としての遊星歯車装置26とから主体的に構成されている。上記エンジン24は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの燃料を燃焼させて動力を出力する公知の内燃機関であって、マイクロコンピュータを主体とするエンジン制御用の電子制御装置(E−ECU)28によって、スロットル開度或いは吸入空気量、燃料供給量、点火時期などの運転状態が電気的に制御されるように構成されている。上記電子制御装置28には、アクセルペダル27の操作量を検出するアクセル開度センサAS、ブレーキペダル29の操作を検出するためのブレーキセンサBS等からの検出信号が供給されている。
上記MG1は、たとえば同期電動機であって、駆動トルクを発生させる電動機としての機能と発電機としての機能とを選択的に生じるように構成され、インバータ30を介してバッテリー、コンデンサなどの蓄電装置32に接続されている。そして、マイクロコンピュータを主体とするモータジェネレータ制御用の電子制御装置(MG−ECU)34によってそのインバータ30が制御されることにより、MG1の出力トルクあるいは回生トルクが調節或いは設定されるようになっている。上記電子制御装置34には、シフトレバー35の操作位置を検出する操作位置センサSS等からの検出信号が供給されている。
前記遊星歯車装置26は、サンギヤS0と、そのサンギヤS0に対して同心円上に配置されたリングギヤR0と、これらサンギヤS0およびリングギヤR0に噛み合うピニオンギヤP0を自転かつ公転自在に支持するキャリヤC0とを三つの回転要素として備えて公知の差動作用を生じるシングルピニオン型の遊星歯車機構である。遊星歯車装置26はエンジン24および変速機22と同心に設けられている。遊星歯車装置26および変速機22は中心線に対して対称的に構成されているため、図1ではそれらの下半分が省略されている。
本実施例では、エンジン24のクランク軸36はダンパー38を介して遊星歯車装置26のキャリヤC0に連結されている。これに対してサンギヤS0にはMG1が連結され、リングギヤR0には出力軸14が連結されている。このキャリヤC0は入力要素として機能し、サンギヤS0は反力要素として機能し、リングギヤR0は出力要素として機能している。
前記トルク合成分配機構として機能するシングルピニオン型の遊星歯車装置26の各回転要素の回転速度の相対的関係は、図2の共線図により示される。この共線図において、縦軸S、縦軸C、および縦軸Rは、サンギヤS0の回転速度、キャリヤC0の回転速度、およびリングギヤR0の回転速度をそれぞれ表す軸であり、縦軸S、縦軸C、および縦軸Rの相互の間隔は、縦軸Sと縦軸Cとの間隔を1としたとき、縦軸Cと縦軸Rとの間隔がρ(サンギヤS0の歯数Zs/リングギヤR0の歯数Zr)となるように設定されたものである。
上記遊星歯車装置26において、キャリヤC0に入力されるエンジン24の出力トルクに対して、MG1による反力トルクがサンギヤS0に入力されると、出力要素となっているリングギヤR0には、エンジン24から入力されたトルクより大きいトルクが現れるので、MG1は発電機として機能する。また、リングギヤR0の回転速度(出力軸回転速度)NOが一定であるとき、MG1の回転速度を上下に変化させることにより、エンジン24の回転速度NEを連続的に(無段階に)変化させることができる。図2の破線はMG1の回転速度を実線に示す値から下げたときにエンジン24の回転速度NEが低下する状態を示している。すなわち、エンジン24の回転速度NEを例えば燃費が最もよい回転速度に設定する制御を、MG1を制御することによって実行されることができる。この種のハイブリッド形式は、機械分配式あるいはスプリットタイプと称される。
図1に戻って、本実施例の前記変速機22は、一組のラビニョ型遊星歯車機構によって構成されている。すなわち変速機22では、第1サンギヤS1と第2サンギヤS2とが設けられており、その第1サンギヤS1にショートピニオンP1が噛合するとともに、そのショートピニオンP1がこれより軸長の長いロングピニオンP2に噛合し、そのロングピニオンP2が前記各サンギヤS1,S2と同心円上に配置されたリングギヤR1に噛合している。上記各ピニオンP1,P2は、共通のキャリヤC1によって自転かつ公転自在にそれぞれ保持されている。また、第2サンギヤS2がロングピニオンP2に噛合している。
前記第2駆動源20は、前記モータジェネレータ制御用の電子制御装置(MG−ECU)34によりインバータ40を介して制御されることにより、アシスト用出力トルクあるいは回生トルクが調節或いは設定される電動機または発電機である第2モータ・ジェネレータ(以下、MG2という)から構成されており、第2サンギヤS2にはその前述したMG2が連結され、上記キャリヤC1が出力軸14に連結されている。第1サンギヤS1とリングギヤR1とは、各ピニオンP1,P2と共にタプルピニオン型遊星歯車装置に相当する機構を構成し、また第2サンギヤS2とリングギヤR1とは、ロングピニオンP2と共にシングルピニオン型遊星歯車装置に相当する機構を構成している。
そして、変速機22には、第1サンギヤS1を選択的に固定するためにその第1サンギヤS1と変速機ハウジング42との間に設けられた第1ブレーキB1と、リングギヤR1を選択的に固定するためにそのリングギヤR1と変速機ハウジング42との間に設けられた第2ブレーキB2とが設けられている。これらのブレーキB1、B2は摩擦力によって制動力を生じるいわゆる摩擦係合装置であり、多板形式の係合装置あるいはバンド形式の係合装置を採用することができる。そして、これらのブレーキB1、B2は、油圧アクチュエータ等により発生させられる係合圧に応じてそのトルク容量が連続的に変化するように構成されている。
以上のように構成された変速機22は、第2サンギヤS2が入力要素として機能し、またキャリヤC1が出力要素として機能し、第1ブレーキB1が係合させられると「1」より大きい変速比γshの高速段Hが達成され、第1ブレーキB1に替えて第2ブレーキB2が係合させられるとその高速段Hの変速比γshより大きい変速比γslの低速段Lが設定されるように構成されている。これらの変速段HおよびLの間での変速は、車速や要求駆動力関連値(目標駆動力関連値)などの走行状態に基づいて実行される。より具体的には、変速段領域を予めマップ(変速線図)として定めておき、検出された運転状態に応じていずれかの変速段を設定するように制御される。その制御をおこなうためのマイクロコンピュータを主体とした変速制御用の電子制御装置(T−ECU)44が設けられている。
上記電子制御装置44には、作動油の温度を検出するための油温センサTS、第1ブレーキB1の係合油圧を検出するための油圧スイッチSW1、第2ブレーキB2の係合油圧を検出するための油圧スイッチSW2、ライン圧PLを検出するための油圧スイッチSW3等からの検出信号が供給されている。
また、前記要求駆動力関連値における駆動力関連値とは、車両の駆動力に1対1に対応するものであって、駆動輪18での駆動トルク或いは駆動力のみならず、例えば出力軸14の出力トルク(出力軸トルク)、エンジントルク、車両加速度であってもよい。また、要求駆動力関連値は、例えばアクセル開度(或いはスロットル弁開度、吸入空気量、空燃比、燃料噴射量)に基づいて決定される駆動力関連値の要求値(目標値)であるが、アクセル開度等がそのまま用いられても良い。
図3は、上記変速機22を構成しているラビニョ型遊星歯車機構についての各回転要素の相互関係を表すために4本の縦軸S1、縦軸R1、縦軸C1、および縦軸S2を有する共線図を示している。それら縦軸S1、縦軸R1、縦軸C1、および縦軸S2は、第1サンギヤS1の回転速度、リングギヤR1の回転速度、キャリヤC1の回転速度、および第2サンギヤS2の回転速度をそれぞれ示すためのものである。
以上のように構成された変速機22では、第2ブレーキB2によってリングギヤR1が固定されると、低速段Lが設定され、MG2の出力したアシストトルクがそのときの変速比γslに応じて増幅されて出力軸14に付加される。これに替えて、第1ブレーキB1によって第1サンギヤS1が固定されると、低速段Lの変速比γslよりも小さい変速比γshを有する高速段Hが設定される。この高速段Hにおける変速比も「1」より大きいので、MG2の出力したアシストトルクがその変速比γshに応じて増大させられて出力軸14に付加される。
なお、各変速段L,Hが定常的に設定されている状態では、出力軸14に付加されるトルクは、MG2の出力トルクを各変速比に応じて増大させたトルクとなるが、変速機22の変速過渡状態では各ブレーキB1、B2でのトルク容量や回転数変化に伴う慣性トルクなどの影響を受けたトルクとなる。また、出力軸14に付加されるトルクは、MG2の駆動状態では、正トルクとなり、被駆動状態では負トルクとなる。
図4は、上記各ブレーキB1、B2の係合解放によって変速機22の変速を自動的に制御するための変速用油圧制御回路50を示している。この油圧制御回路50には、エンジン24のクランク軸36に作動的に連結されることによりそのエンジン24により回転駆動されるメカニカル式油圧ポンプ46と、電動機48aとそれにより回転駆動されるポンプ48bを備えた電動式油圧ポンプ48とを油圧源として備えており、それらメカニカル式油圧ポンプ46および電動式油圧ポンプ48は、図示しないオイルパンに還流した作動油をストレーナ52を介して吸入し、或いは還流油路53を介して直接還流した作動油を吸入してライン圧油路54へ圧送する。上記還流した作動油温度を検出するための油温センサTSが上記油圧制御回路50を形成するバルブボデー51に設けられているが、他の部位に接続されていてもよい。
ライン圧調圧弁56は、リリーフ形式の調圧弁であって、ライン油路54に接続された供給ポート56aとドレン油路58に接続された排出ポート56bとの間を開閉するスプール弁子60と、そのスプール弁子60の閉弁方向の推力を発生させるスプリング62を収容すると同時にライン圧PLの設定圧を高く変更するときに電磁開閉弁64を介してモジュール圧油路66内のモジュール圧PMを受け入れる制御油室68と、スプール弁子60の開弁方向の推力を発生させる上記ライン圧油路54に接続されたフィードバック油室70とを備え、低圧および高圧の2種類のいずれかの一定のライン圧PLを出力する。上記ライン圧油路54には、ライン圧PLが高圧側の値であるときにオン作動し、低圧側の値以下であるときにオフ作動する油圧スイッチSW3が設けられている。
モジュール圧調圧弁72は、上記ライン圧PLを元圧とし、そのライン圧PLの変動に拘わらず、低圧側のライン圧PLよりも低く設定された一定のモジュール圧PMをモジュール圧油路66に出力する。第1ブレーキB1を制御するための第1リニヤソレノイド弁SLB1および第2ブレーキB2を制御するための第2リニヤソレノイド弁SLB2は、上記モジュール圧PMを元圧として電子制御装置44からの指令値である駆動電流ISOL1およびISOL2に応じた制御圧PC1およびPC2を出力する。
第1リニヤソレノイド弁SLB1は、非通電時において入力ポートと出力ポートとの間が開弁(連通)される常開型の弁特性を備え、図5に示すように、駆動電流ISOL1の増加に伴って出力される制御圧PC1が低下させられる。図5に示すように、第1リニヤソレノイド弁SLB1の弁特性には、駆動電流ISOL1が所定値Iaを超えるまで出力される制御圧PC1が低下しない不感帯Aが設けられている。第2リニヤソレノイド弁SLB2は、非通電時において入力ポートと出力ポートとの間が閉弁(遮断)される常閉型の弁特性を備え、図6に示すように、駆動電流ISOL2の増加に伴って出力される制御圧PC2が増加させられる。図6に示すように、第2リニヤソレノイド弁SLB2の弁特性には、駆動電流ISOL2が所定値Ibを超えるまで出力される制御圧PC2が増加しない不感帯Bが設けられている。
B1コントロール弁76は、ライン圧油路54に接続された入力ポート76aおよびB1係合油圧PB1を出力する出力ポート76bとの間を開閉するスプール弁子78と、そのスプール弁子78を開弁方向に付勢するために上記第1リニヤソレノイド弁SLB1からの制御圧PC1を受け入れる制御油室80と、スプール弁子78を閉弁方向に付勢するスプリング82を収容し、出力圧であるB1係合油圧PB1を受け入れるフィードバック油室84とを備え、ライン圧油路54内のライン圧PLを元圧として、第1リニヤソレノイド弁SLB1からの制御圧PC1に応じた大きさのB1係合油圧PB1を出力し、インターロック弁として機能するB1アプライコントロール弁86を通してブレーキB1に供給する。
B2コントロール弁90は、ライン圧油路54に接続された入力ポート90aおよびB2係合油圧PB2を出力する出力ポート90bとの間を開閉するスプール弁子92と、そのスプール弁子92を開弁方向に付勢するために上記第2リニヤソレノイド弁SLB2からの制御圧PC2を受け入れる制御油室94と、スプール弁子92を閉弁方向に付勢するスプリング96を収容し、出力圧であるB2係合油圧PB2を受け入れるフィードバック油室98とを備え、ライン圧油路54内のライン圧PLを元圧として、第2リニヤソレノイド弁SLB2からの制御圧PC2に応じた大きさのB2係合油圧PB2を出力し、インターロック弁として機能するB2アプライコントロール弁100を通してブレーキB2に供給する。
B1アプライコントロール弁86は、B1コントロール弁76から出力されたB1係合油圧PB1を受け入れる入力ポート86aおよび第1ブレーキB1に接続された出力ポート86bとの間を開閉するスプール弁子102と、そのスプール弁子102を開弁方向に付勢するためにモジュール圧PMを受け入れる油室104と、そのスプール弁子102を閉弁方向に付勢するスプリング106を収容し且つB2コントロール弁90から出力されたB2係合油圧PB2を受け入れる油室108とを備え、第2ブレーキB2を係合させるためのB2係合油圧PB2が供給されるまでは開弁状態とされるが、そのB2係合油圧PB2が供給されると閉弁状態に切換られて、第1ブレーキB1の係合が阻止される。
また、上記B1アプライコントロール弁86には、そのスプール弁子102が開弁位置(図4の中心線の右側に示す位置)であるときに閉じられ、逆にそのスプール弁子102が閉弁位置(図4の中心線の左側に示す位置)にあるときに開かれる一対のポート110aおよび110bが設けられている。この一方のポート110aにはB2係合油圧PB2を検出するための油圧スイッチSW2が接続され、他方のポート110bには第2ブレーキB2が直接接続されている。この油圧スイッチSW2は、B2係合油圧PB2が予め設定された高圧状態となるとオン状態となり、B2係合油圧PB2が予め設定された低圧状態以下となるとオフ状態に切り換えられるように構成されている。この油圧スイッチSW2は、B1アプライコントロール弁86を介して第2ブレーキB2に接続されているので、B2係合油圧PB2の異常と同時に、第1ブレーキB1の油圧系を構成する第1リニヤソレノイド弁SLB1、B1コントロール弁76、B1アプライコントロール弁86等の異常も判定可能となっている。
B2アプライコントロール弁100も、B1アプライコントロール弁86と同様に、B2コントロール弁90から出力されたB2係合油圧PB2を受け入れる入力ポート100aおよび第2ブレーキB2に接続された出力ポート100bとの間を開閉するスプール弁子112と、そのスプール弁子112を開弁方向に付勢するためにモジュール圧PMを受け入れる油室114と、そのスプール弁子112を閉弁方向に付勢するスプリング116を収容し且つB1コントロール弁76から出力されたB1係合油圧PB1を受け入れる油室118とを備え、第1ブレーキB1を係合させるためのB1係合油圧PB1が供給されるまでは開弁状態とされるが、そのB1係合油圧PB1が供給されると閉弁状態に切換られて、第2ブレーキB2の係合が阻止される。
上記B2アプライコントロール弁100にも、そのスプール弁子112が開弁位置(図4の中心線の右側に示す位置)であるときに閉じられ、逆にそのスプール弁子112が閉弁位置(図4の中心線の左側に示す位置)にあるときに開かれる一対のポート120aおよび120bが設けられている。この一方のポート120aにはB1係合油圧PB1を検出するための油圧スイッチSW1が接続され、他方のポート120bには第1ブレーキB1が直接接続されている。この油圧スイッチSW1は、B1係合油圧PB1が予め設定された高圧状態となるとオン状態となり、B1係合油圧PB1が予め設定された低圧状態以下となるとオフ状態に切り換えられるように構成されている。この油圧スイッチSW1は、B2アプライコントロール弁100を介して第1ブレーキB1に接続されているので、B1係合油圧PB1の異常と同時に、第2ブレーキB2の油圧系を構成する第2リニヤソレノイド弁SLB2、B2コントロール弁90、B2アプライコントロール弁100等の異常も判定可能となっている。
図7は、以上のように構成された油圧制御回路50の作動を説明する図表である。図7では、○印が励磁状態或いは係合状態を示し、×印が非励磁状態或いは解放状態を示している。すなわち、第1リニヤソレノイド弁SLB1および第2リニヤソレノイド弁SLB2は共に励磁状態とされることによって、第1ブレーキB1が解放状態に、第2ブレーキB2が係合状態とされ、変速機22の低速段Lが達成される。そして、第1リニヤソレノイド弁SLB1および第2リニヤソレノイド弁SLB2は共に非励磁状態とされることによって、第1ブレーキB1が係合状態に、第2ブレーキB2が解放状態とされ、変速機22の高速段Hが達成される。
図8は、電子制御装置28、34および44の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図8において、ハイブリッド駆動制御手段130は、たとえば、キーがキースロットに挿入された後、ブレーキペダルが操作された状態でパワースイッチが操作されることにより制御が起動されると、アクセル操作量に基づいて運転者の要求出力を算出し、低燃費で排ガス量の少ない運転となるようにエンジン24および/またはMG2から要求出力を発生させる。たとえば、エンジン24を停止し専らMG2を駆動源とするモータ走行モード、エンジン24の動力で発電を行いMG2を駆動源として走行する走行モード、エンジン24の動力を機械的に駆動輪18に伝えて走行するエンジン走行モードを、走行状態に応じて切り換える。
上記ハイブリッド駆動制御手段130は、エンジン24を駆動する場合であっても、MG1によって最適燃費曲線上で作動するようにエンジン10の回転速度を制御する。また、MG2を駆動してトルクアシストする場合、車速が遅い状態では変速機22を低速段Lに設定して出力軸14に付加するトルクを大きくし、車速が増大した状態では、変速機22を高速段Hに設定してMG2の回転速度を相対的に低下させて損失を低減し、効率の良いトルクアシストを実行させる。さらに、コースト走行時には車両の有する慣性エネルギーでMG1或いはMG2を回転駆動することにより電力として回生し、蓄電装置32にその電力を蓄える。
エンジン走行モードにおける制御を一例としてより具体的に説明すると、ハイブリッド駆動制御手段130は、動力性能や燃費向上などのために、エンジン24を効率のよい作動域で作動させる一方で、エンジン24とMG2との駆動力の配分やMG1の発電による反力を最適になるよう制御する。
例えば、ハイブリッド駆動制御手段130は、予め記憶された駆動力マップから運転者の出力要求量としてのアクセル開度や車速などに基づいて目標駆動力関連値例えば要求出力軸トルクTRを決定し、その要求出力軸トルクTRから充電要求値等を考慮して要求出力軸パワーを算出し、その要求出力軸パワーが得られるように伝達損失、補機負荷、MG2のアシストトルクや変速機22の変速段等を考慮して目標エンジンパワーを算出し、例えば図9に示すようなエンジン回転速度とエンジントルクとで構成される二次元座標内において運転性と燃費性とを両立するように予め実験的に求められて記憶されたエンジンの最適燃費率曲線(燃費マップ、関係)に沿ってエンジン24を作動させつつ上記目標エンジンパワーが得られるエンジン回転速度とエンジントルクとなるように、エンジン24を制御すると共にMG1の発電量を制御する。
図9において、破線で示すエンジンの最適燃費率曲線は、等燃費率曲線のうちの最も低い燃費領域をエンジン回転速度の上昇に伴って通過するように形成された予め実験的に求められた最適燃費点を結ぶ曲線である。この最適燃費率曲線は、運転性と燃費性とを両立するように予め実験的に設定されてエンジン24の最低燃費動作点を表す点の連なりでもある。また、図9の実線a、b、cは、目標エンジンパワーを表す一例であって、等しいエンジンパワーとなるエンジン24の運転点を表す点の連なりでもあり、実線a、b、cの順に目標エンジンパワーは大きくなる。
ハイブリッド駆動制御手段130は、MG1により発電された電気エネルギをインバータ30、40を通して蓄電装置32やMG2へ供給するので、エンジン24の動力の主要部は機械的に出力軸14へ伝達されるが、エンジン24の動力の一部はMG1の発電のために消費されてそこで電気エネルギに変換され、インバータ30、40を通してその電気エネルギがMG2へ供給され、そのMG2が駆動されてMG2から出力軸14へ伝達される。この電気エネルギの発生からMG2で消費されるまでに関連する機器により、エンジン24の動力の一部を電気エネルギに変換し、その電気エネルギを機械的エネルギに変換するまでの電気パスが構成される。なお、ハイブリッド駆動制御手段130は、電気パスによる電気エネルギ以外に、蓄電装置32からインバータ40を介して直接的に電気エネルギをMG2へ供給してそのMG2を駆動することが可能である。
また、ハイブリッド駆動制御手段130は、車両の停止中又は走行中に拘わらず、遊星歯車装置26の差動作用によってMG1を制御してエンジン回転速度を略一定に維持したり任意の回転速度に回転制御させられる。言い換えれば、ハイブリッド駆動制御手段130は、エンジン回転速度を略一定に維持したり任意の回転速度に制御しつつMG1を任意の回転速度に回転制御することができる。
また、ハイブリッド駆動制御手段130は、スロットル制御のためにスロットルアクチュエータにより電子スロットル弁を開閉制御させる他、燃料噴射制御のために燃料噴射装置による燃料噴射量や噴射時期を制御させ、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置による点火時期を制御させる指令を単独で或いは組み合わせて図示しないエンジン出力制御装置に出力して、必要なエンジン出力を発生するようにエンジン24の出力制御を実行するエンジン出力制御手段を機能的に備えている。
変速制御手段132は、たとえば図10に示す予め記憶された変速線図から、車両の速度Vおよび駆動力Pに基づいて変速機22の変速段を決定し、決定された変速段に自動的に切り換えられるように第1ブレーキB1および第2ブレーキB2を制御する。
ライン圧制御手段134は、前記算出された運転者の要求出力が予め設定された出力判定値よりも大きい場合、或いは変速機22の変速中すなわち変速過渡時である場合などでは、前記電磁開閉弁64を閉状態から開状態に切り換えてモジュレータ圧PMをライン圧調圧弁56の油室68内に供給してスプール弁子60の閉弁方向に向かう推力を所定値増加させることにより、ライン圧PLの設定圧を低圧状態から高圧状態へ切り換える。
ところで、前記変速制御手段132により変速機22の変速が行われると、その変速過程のトルク相では、すなわち変速時に解放状態へ切り換えられる解放側のブレーキに微小滑りが生じて変速機22でのトルク容量が低下するものの未だMG2に回転変化が生じていない期間では、出力軸トルクに一時的な落ち込みが生じる。このときこのトルク相にて、第1駆動源12やMG2のトルクを増大補正して出力軸トルクの落ち込みを抑制することが考えられる。しかしながら、出力軸トルクの落ち込み量は抑制できるものの、その落ち込み自体を皆無にすることは困難であり、落ち込みショックは依然として現れてしまう。
そこで、目標駆動力徐減手段としての要求出力徐減手段136は、駆動力のつながり感を向上して出力軸トルクの落ち込みショックを抑制するために、変速機22の変速過程のトルク相において生じる出力軸トルク変動の角(図12の矢印Aで指し示す部分参照)を緩やかにするように、すなわちトルク相において生じる出力軸トルクの落ち込み開始の角を緩やかにする(なます)ように、そのトルク相に先立って要求出力軸トルクTRを一時的に低下補正する。
特に、上記出力軸トルクの落ち込みショックは、アクセル高開度とされるなどの要求出力軸トルクTRが大きくなる程トルク相における出力軸トルク変動の角が急となって顕著となるので、本実施例ではアクセル高開度のアップシフト(アップ変速)を例にして上記要求出力徐減手段136による要求出力軸トルクTRの一時的な低下補正制御すなわち出力軸トルク変動の緩和制御を以下に説明する。
アップ変速判定手段138は、変速機22の高速段Hへのアップ変速が判断されたか否かを、例えば前記変速制御手段132により図10に示す変速線図から車両の速度Vおよび駆動力Pに基づいて変速機22の高速段Hが決定されたか否かに基づいて判定する。
要求出力判定手段140は、アクセル高開度とされるなどして前記ハイブリッド駆動制御手段130により決定される要求出力軸トルクTRが所定値Aより大きいか否かを判定する。この所定値Aは、要求出力軸トルクTRが大きいことからトルク相における出力軸トルクの落ち込みショックを抑制する必要があり、出力軸トルク変動の緩和制御を開始するための予め実験的に求めて定められた判定値である。
前記要求出力徐減手段136は、前記アップ変速判定手段138により変速機22のアップ変速判断が判定され、且つ前記要求出力判定手段140により要求出力軸トルクTRが所定値Aより大きいと判定された場合には、トルク相における出力軸トルク変動の角を緩やかにするように、そのアップ変速判断時から要求出力軸トルクTRを徐減する指令を前記ハイブリッド駆動制御手段130に出力することで、要求出力軸トルクTRを一時的に低下補正する。
また、前記要求出力徐減手段136は、トルク相において元々生じる出力軸トルクの落ち込みと相俟って必要以上に出力軸トルクが低下することが抑制されるように、トルク相の開始が判定されるまで要求出力軸トルクTRを一時的に低下補正する。
要求出力徐減終了判定手段142は、変速機22の変速過程においてトルク相が開始されたか否かを、例えば前記アップ変速判定手段138により変速機22のアップ変速判断が判定されてから所定時間T経過したか否かに基づいて判定する。この所定時間Tは、変速機22のアップ変速が判断されてからの経過時間がトルク相が開始されたと判定されるための予め実験的に求めて記憶された判定時間である。また、所定時間Tは一律でも良いが、例えば要求出力軸トルクTRなどを考慮して求められても良い。この場合には実際の要求出力軸トルクTRなどに基づいて随時決定された所定時間Tが用いられる。
このように、前記要求出力徐減手段136によりアップ変速判断時からトルク相が開始されるまで要求出力軸トルクTRが一時的に低下補正されるので、駆動力のつながり感が向上して出力軸トルクの落ち込みショックが抑制される。
しかしながら、このように要求出力軸トルクTRを一時的に低下させると、それに伴ってハイブリッド駆動制御手段130により算出される要求出力軸パワーが減少し、目標エンジンパワーも減少する。そして、ハイブリッド駆動制御手段130によりエンジンの最適燃費率曲線に沿ってエンジン24が作動させられつつ減少させた目標エンジンパワーが得られるようにMG1の負トルクが増加させられてMG1の回転速度が下げられることでエンジン回転速度が低下させられることから、遊星歯車装置26を介して出力軸14に機械的に直接伝達される直達トルクが増加させられてしまう。
例えば、目標エンジンパワーが図9に示す実線bから実線aに減少させられると、その実線aの目標エンジンパワーが得られる為にはエンジン24は最適燃費率曲線に沿って点A2から点A1となるように作動させられる必要があり、エンジン回転速度をNE2からNE1へ低下させるようにMG1の回転速度が下げられる。このとき、図2の共線図から明らかなように、イナーシャの大きなエンジン24を支点として見ればてこの原理によってMG1の回転速度が下げられることで出力軸14に機械的に直接伝達される直達トルクが増加させられる。
そうすると、要求出力軸トルクTRを一時的に低下させることにより、出力軸トルクの落ち込みショックが緩和されるものの、反対に、直達トルクの増加に起因するショック(飛び出し感)が発生するという新たな問題が生じる可能性がある。
そこで、直達トルク増加抑制手段144は、前記要求出力徐減手段136により要求出力軸トルクTRが一時的に低下補正されているときは、一時的な低下補正時に新たに生じる直達トルクの増加に起因したショックが抑制されるために、その直達トルクが増加しないようにエンジン24、MG1、およびMG2のうちの少なくとも1つを制御する。
具体的には、前記直達トルク増加抑制手段144は、前記要求出力徐減手段136により要求出力軸トルクTRが一時的に低下補正されているときは、実際のエンジンパワーが低下されても直達トルクが増加しないように、エンジン24の動作点を変更する指令を前記ハイブリッド駆動制御手段130に出力する。
つまり、直達トルク増加抑制手段144は、エンジンの最適燃費率曲線に沿って作動させていたエンジン24の動作点を要求出力軸トルクTRが一時的に低下補正されている間だけ一時的にエンジンの最適燃費率曲線を無視して作動させるように変更して、エンジン回転速度を低下させることなく要求出力軸トルクTRの一時的な低下補正に合わせて減少された目標エンジンパワーが得られるように、電子スロットル弁を絞るスロットル制御、燃料噴射量を減少する燃料噴射制御、点火時期を遅角する点火時期制御等を単独で或いは組み合わせてエンジンパワーを一時的に低下させる指令をハイブリッド駆動制御手段130に出力する。
例えば、目標エンジンパワーが図9に示す実線bから実線aに減少させられたときに、エンジン回転速度NE2を略一定に保ったまま実線aの目標エンジンパワーが得られる為にエンジンの最適燃費率曲線を無視して点A2から点A3となるように作動させる。そしてエンジントルクTE3が得られるようにスロットル制御や燃料噴射制御等が行われる。
これにより、エンジン回転速度を低下させないようにすなわちMG1の回転速度を低下させないようにエンジンパワーが一時的に低下させられることから、直達トルクが増加しないように出力軸トルクが一時的に低下させられて、その直達トルクの増加に起因したショックが抑制される。また、一時的にエンジンの最適燃費率曲線を無視してエンジン24を作動させるだけなので、燃費への影響も可及的に小さくされる。
また、前記直達トルク増加抑制手段144は、エンジン24の動作点を変更することに替えて、前記要求出力徐減手段136により要求出力軸トルクTRが一時的に低下補正されているときは、直達トルクが増加しないように、エンジン24の動作状態を変更することなくMG2の動作状態のみを変更する指令を前記ハイブリッド駆動制御手段130に出力しても良い。
つまり、直達トルク増加抑制手段144は、エンジンパワーを低下させることなく要求出力軸トルクTRの一時的な低下補正に合わせて減少された要求出力軸パワーとなるように、蓄電装置32から直接的にMG2へ供給されている電流を減少させてMG2の出力パワーのみを一時的に低下させる指令をハイブリッド駆動制御手段130に出力する。これにより、エンジン回転速度に影響を与えないようにすなわちMG1の発電電流を変化させないように出力軸パワーが一時的に低下させられることから、直達トルクが増加しないように出力軸トルクが一時的に低下させられて、その直達トルクの増加に起因したショックが抑制される。
図11は、電子制御装置28、34および44の制御機能の要部すなわちアクセル高開度のアップ変速時に出力軸トルク変動の角を緩やかにするための制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。また、図12は図11のフローチャートに示す制御作動の一例であって、アップ変速時に出力軸トルク変動の角を緩やかにしたときの制御作動を説明するタイムチャートである。
先ず、前記アップ変速判定手段138に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S1において、変速機22の高速段Hへのアップ変速が判断されたか否かが、例えば図10に示す変速線図から車両の速度Vおよび駆動力Pに基づいて変速機22の高速段Hが決定されたか否かに基づいて判定される。
図12のt1時点は、アップ変速判断が行われたことを示している。
前記S1の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが肯定される場合は前記要求出力判定手段140に対応するS2において、アクセル高開度とされるなどにより要求出力軸トルクTRが所定値Aより大きくされているか否かが判定される。
前記S2の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが肯定される場合は前記要求出力徐減手段136および直達トルク増加抑制手段144に対応するS3において、トルク相における出力軸トルク変動の角を緩やかにするように前記S1におけるアップ変速判断時から要求出力軸トルクTRを徐減する指令が出力されて要求出力軸トルクTRが一時的に低下補正される。同時に、要求出力軸トルクTRが一時的に低下補正されているときは、直達トルクが増加しないようにエンジン24、MG1、およびMG2のうちの少なくとも1つが制御される。
図12のt1時点乃至t2時点は、t1時点から要求出力軸トルクTRが徐減されたことを示している。この要求出力軸トルクTRの一時的な低下補正時には直達トルクが増加しないようにエンジン24、MG1、およびMG2のうちの少なくとも1つが制御される。例えば、エンジンパワーが低下されても直達トルクが増加しないように、エンジン24の動作点を変更する指令が出力されたり、或いは直達トルクが増加しないように、エンジン24の動作状態を変更することなくMG2の動作状態のみを変更する指令が出力される。
続いて、前記要求出力徐減終了判定手段142に対応するS4において、変速機22の変速過程においてトルク相が開始されたか否かが、例えば前記S1において変速機22のアップ変速判断が判定されてから所定時間T経過したか否かに基づいて判定される。
図12のt2時点は、t1時点から所定時間T経過してトルク相の開始が判断されたことを示している。
前記S4の判断が否定される場合は前記S3が繰り返し実行されるが肯定される場合は前記要求出力徐減手段136に対応するS5において、前記S3にてアップ変速判断時から実行されている要求出力軸トルクTRを徐減する指令出力が終了されて要求出力軸トルクTRの一時的な低下補正が解除される。
図12のt2時点以降は、t2時点にて要求出力軸トルクTRの徐減が終了させられ、t2時点から本来の(低下補正されてない)要求出力軸トルクTRに向かって徐々に戻され始めたことを示している。このように、トルク相に先立ってアップ変速判断されたt1時点からトルク相が開始されるt2時点まで要求出力軸トルクTRが一時的に低下補正されるので、トルク相において生じる破線で示す従来例のような出力軸トルク変動の角(矢印Aで指し示す部分)が緩やかにされる。また、t3時点からイナーシャ相が開始されるとイナーシャトルクにより出力軸トルクは増大する傾向となるが、低下補正された要求出力軸トルクTRが徐々に戻されるので、変速終了時点のオーバーシュートが抑制される効果もある。
上述のように、本実施例によれば、変速機22の変速過程のトルク相において生じる出力軸トルクの落ち込みを緩やかにするようにそのトルク相に先立って要求出力徐減手段(目標駆動力徐減手段)136により要求出力軸トルクTRが一時的に低下補正されているときは、出力軸14への直達トルクが増加しないように直達トルク増加抑制手段144によりエンジン24、MG1、およびMG2のうちの少なくとも1つが制御されるので、トルク相において生じる出力軸トルクの落ち込み開始の角が緩やかにされる(なまされる)ことで駆動力のつながり感が向上して出力軸トルクの落ち込みショックが抑制されると共に、直達トルクの増加に起因したショックも抑制される。
例えば、要求出力徐減手段136により要求出力軸トルクTRが一時的に低下補正されているときは、直達トルク増加抑制手段144によりエンジンパワーが低下されても直達トルクが増加しないようにエンジン24の動作点が変更されるので、エンジン回転速度を低下させることなく要求出力軸トルクTRの一時的な低下補正に合わせてエンジンパワーが一時的に低下させられて、出力軸トルクの落ち込みショックが抑制されると共に直達トルクの増加に起因したショックも抑制される。
或いは、要求出力徐減手段136により要求出力軸トルクTRが一時的に低下補正されているときは、直達トルク増加抑制手段144により直達トルクが増加しないようにエンジン24の動作状態を変更することなくMG2の動作状態のみが変更されるので、エンジンパワーを低下させることなく要求出力軸トルクTRの一時的な低下補正に合わせて蓄電装置32から直接的にMG2へ供給されている電流を減少させることによりMG2の出力パワーのみが一時的に低下させられて、出力軸トルクの落ち込みショックが抑制されると共に直達トルクの増加に起因したショックも抑制される。
また、本実施例によれば、要求出力徐減手段136により変速機22の変速判断時からトルク相開始まで要求出力軸トルクTRが一時的に低下補正されるので、トルク相において生じる出力軸トルクの落ち込みと相俟って必要以上に出力軸トルクが低下することが抑制される。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、アクセル高開度のアップ変速時における要求出力徐減手段136による要求出力軸トルクTRの一時的な低下補正制御を説明したが、アクセル高開度のアップ変速はあくまで一例であり、変速機22の変速時であれば本発明は適用され得る。アクセル高開度のアップ変速以外の変速に適用する場合には、図11のフローチャートにおけるステップS1、S2がその変速に合わせて判断が変更されるか、このステップS1、S2の判断が除かれる。
また、前述の実施例では、要求出力徐減手段136は、変速判断時からトルク相開始まで要求出力軸トルクTRを一時的に低下補正したが、少なくともトルク相開始に先だって要求出力軸トルクTRの低下補正を開始すれば良く、変速判断時から所定時間経過した後に開始したり、トルク相開始時から所定時間経過した後に終了するようにしても本発明は適用され得る。
また、前述の実施例では、要求出力徐減終了判定手段142は、アップ変速判断から所定時間T経過したか否かに基づいてトルク相が開始されたか否かを判定したが、この判定方法に限らず他の判定方法が用いられても良い。例えば、変速過程においてMG2の回転速度が所定値吹き上がったか否かに基づいて、或いはトルク相での落ち込みをMG1を用いてかさ上げするような所謂MG1トルク補償制御が開始されたか否かに基づいてトルク相が開始されたか否かを判定しても良い。
また、前述の実施例では、変速機22はMG2の出力したトルクが増大させられて出力軸14に付加されるように、MG2と出力軸14との間に備えられた低速段Lと高速段Hとを有する2段の自動変速機(減速機)であったが、この変速機22に限らず、MG2の出力したトルクが出力軸14に伝達されるようにMG2と出力軸14との間に備えられた有段式自動変速機であれば本発明は適用され得る。例えば、3段以上の変速段を有する遊星歯車式の多段変速機や一部或いは全部の変速段においてMG2の出力したトルクが減少させられて出力軸14に付加される増速機として機能する有段式自動変速機であっても良い。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。