JP4271748B2 - 反射防止物品及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶ディスプレー、プラズマディスプレー、フィールドエミッション型ディスプレー、CRT等の各種ディスプレーや、ショウウインドウ、眼鏡レンズ等における表面反射を減じる目的で用いられ、より具体的にはフィルム状もしくはシート状もしくはレンズ状等の成形物の形態で用いられる反射防止物品に関する。
【0002】
【従来の技術】
前記の各種ディスプレー、ショウウインドウ等においては、太陽光や室内照明光等による表面での反射により視認性が低下するという問題がある。こうした表面反射を減じる方法としては、一般に屈折率の相異なる厚みが10〜200nm程度の光干渉膜を単層もしくは数層積層してなる反射防止膜を表面に積層する方法が広く用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらこうした反射防止膜に於いては、主に使用者の指紋付着による表面外観の悪化の問題がある。すなわち指紋とは指が接触した表面上に、指先の皮膚に分泌保持された汗や皮脂液等の一部が転写されたパターン模様である。これらの液に含まれる水分(主に汗)については通常すぐに大気中に揮発するため特に問題にならないが、皮脂液については揮発性が低いため表面に長く残存してしまう。これらの皮脂液は表面に付着後、表面と液との界面張力のバランスに応じた最も安定な形態に変化しようとして液膜の形態変化を引き起こすのが一般的である。たとえば接触角が小さい時には一般に付着液は連続膜状に薄く広がる傾向にあるが、この液膜が新たな光干渉膜として光学的に無視できない膜厚(およそ約10nm以上の膜厚)を有する場合には干渉色(反射色)の顕著な変化を引き起こし、その結果として指紋模様が外観において非常に目立つ事になる。
【0004】
これに対し接触角が大きい場合には一般に、液膜はいくつかの部分に分裂しながら半球状、球状あるいは楕円球状等の液滴形態に変化するため、前記の場合ほど顕著な干渉色(反射色)の変化は観られない。このような観点から、近年では反射防止膜の表面が一様に高撥水性もしくは高撥油性になるように表面に極薄の防汚染層を設ける方法が用いられるようになってきている。
【0005】
しかしながらこれらの防汚染層が形成された場合でも、液滴が肉眼で明確に判別できるような大きな径(およそ100μm以上)に成長すると、液滴のある部分のみ干渉色(反射色)が無彩色化して目立つという問題を有している。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の反射防止物品は、反射防止膜表面のオレイン酸に対する接触角が一様ではなく、相対的に接触角が高い表面領域の中に相対的に接触角が低い表面領域が島状に分布し、該島の大きさが平均径1〜100μmである事を特徴としている。
【0007】
すなわち、本発明は、透明基体の少なくとも一方の面に反射防止膜が積層された反射防止物品において、該反射防止膜は、その表面においてオレイン酸に対する接触角が相対的に高い表面領域の中に接触角が相対的に低い表面領域が海島状に分布しており、該島の大きさは平均径が1〜100μmであることを特徴とする反射防止物品である。
【0008】
また本発明は、熱可塑性高分子フィルム上に反射防止膜を積層し、さらに反射防止膜に適当な表面処理を行うことにより、上記反射防止物品を製造する方法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
前述のように従来の防汚染層は反射防止膜表面の接触角の値が一様に高くなるように形成されているが、液滴の自由な成長が可能な事から前記のように肉眼で判別できるような大きなサイズの液滴に成長してしまう場合がある。
【0010】
この事から、本発明者らはこれらの液滴の成長サイズを適切に制御する方法として、反射防止膜の表面の油脂成分に対する接触角の値が一様でなく、相対的に接触角の大きい表面領域(以下高接触角領域と記す)の中に接触角が相対的に小さい表面領域(以下低接触角領域と記す)が島状に分布しているような表面を形成する事が非常に有効であり、これらの低接触角領域に成長過程の液滴がトラップされてサイズが抑制される結果として、指紋が非常に目立ちにくくなる事を見出した。
【0011】
ここで本発明の意図する効果を有効に得るためには、高接触角領域は少なくとも皮脂成分たとえば室温で液状の不飽和脂肪酸であるオレイン酸に対する接触角が60度以上の撥油性を有している事が好ましく、低接触角領域の示す接触角との差が10度以上、より好ましくは20度以上ある事が好ましい。また高接触角領域の中に低接触角領域が島状に分布する事が好ましく、島の大きさは平均径が1〜100μm程度で分布割合は全表面に対し表面積比でおよそ1〜30%程度の範囲にある事が好ましい。
【0012】
前記の高接触角領域の形成に用いられる撥油性の高い材料としては、例えば各種の界面活性剤やCF3(CF2)7CH2CH2−SiCl3、CF3(CF2)7CH2CH2−SiCH3Cl2、CF3(CF2)CH2CH2−Si−(OCH3)3等の各種フルオロアルキルシラン、フルオロアルコキシシランおよびこれらを他の高分子材料と共重合体した硬化物等が好適に用いられる。
【0013】
低接触角領域の形成に用いられる材料としては、特に限定なく幅広い材料が使用できる。例えば酸化珪素、アルミナ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化錫、ITO等の金属酸化物層、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、 N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、 N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等の各種アルコキシシランを原料とした硬化物、これらを他の高分子材料と共重合体した硬化物等、各種ポリイミド、エポキシ樹脂等が好適に用いられる。
【0014】
さてこのような二種の接触角領域を有する表面の形成方法としては、後述の反射防止膜の製膜過程での相分離等の性質を利用して形成する方法や、反射防止膜を積層した後に各種の表面処理を施す方法が挙げられる。尚、ここで言う表面処理には後述の反射防止膜の光学設計においてはほとんど無視できるような極薄の層(厚さで10nm以下、好ましくは5nm以下)をコーティングすることをも含めることとする。又、このような表面処理においては製膜した反射防止膜の表面自体を二種の接触角領域のいずれかとして利用する場合と、表面処理によって新たに二種の接触角表面を作り出す場合の二つがある。
【0015】
より具体的には例えば、二種の領域を形成する材料からなる塗液を用い、高接触角領域に低接触角領域が島状に分布するようなパターンにスクリーン印刷する方法や、高接触角領域面に低接触角領域を形成する材料液をスプレーコートもしくはスリットスプレーコートもしくはバブルジェット等の方法で表面に噴霧して島状に付着させる方法や、高接触角領域を形成する材料が低接触角領域を形成する材料をミセル状にとり囲んだエマルジョン液をコーティングし、塗工面上でのミセルの自然崩壊を利用して目的の表面を得る方法や、低接触角領域面に高接触角領域を形成する材料液をバブリングしながらコーティングし、塗工面上での気泡の自然崩壊により低接触角領域を島状に露出させる方法、比較的表面張力の低い表面に材料液をコーティングした際の塗液のはじき現象を利用して目的の表面を得る方法、低接触角領域面に高接触角領域の層をコーティングした後、サンドブラスト処理等により高接触角領域の層の一部分を剥ぎ取って目的の表面を得る方法、二種の材料を混合した塗液をコーティングし両材料の相分離現象を利用し、場合によっては更に薬液による選択的なエッチングを利用して目的の表面を得る方法等が挙げられる。
【0016】
反射防止膜は各種の屈折率、膜厚の光干渉膜を、光学設計に基づいて多様に組み合わせることにより構成されるが、一例としては光の波長λに対し光学膜厚(屈折率×膜厚)がλ/4程度の光干渉膜を単層もしくは複数層積層したような構成が好適に用いられる。ここで単層で用いられる光干渉膜には屈折率が透明基体より低い必要があり、NaAlF6、LiF、CaF2、MgF2、SiO2等の材料による低屈折率膜が用いられる。二層の光干渉膜からなる構成としては、例えば基体側からTiO2、ZrO2、 Ta2O5、Nb2O5、 CeO2、SbO2、ZnS、In2O3、SnO2およびITO等の材料による高屈折率膜と前記の低屈折率層を順に積層した構成等が挙げられ、三層の光干渉膜からなる構成としては、例えば前記二層構成における高屈折率膜と透明基体との間に、屈折率が高屈折率膜と透明基体の中間にあるようなAl2O3、CeF3、MgO、ThO2等の材料による中屈折率層を積層した構成等が挙げられ、四層の光干渉膜からなる構成としては、例えば前記中屈折率層の代わりに透明基体側から光学膜厚がλ/30〜λ/10程度の高屈折率膜と低屈折率膜を順に積層した構成等が挙げられる。
【0017】
ここで、たとえば前記高屈折率層にITO等の導電性材料を用いた場合には反射防止膜に電磁波遮蔽能や帯電防止能が付与される。一般に表面が帯電すると大気中のほこりが付着しやすくなり、付着したほこりが汚れの核として働く事が多いので、前記のような反射防止膜への帯電防止性の付与は非常に好ましい。
【0018】
このような光干渉膜は真空蒸着、スパッタリング、CVD、イオンプレーティング等の真空プロセス、もしくは各種ロールコーティング、スピンコーティング等の湿式プロセスを用いて作成される事が好ましい。
【0019】
上記反射防止膜を積層する透明基体としては、各種のガラス材料や、各種の熱可塑性、熱硬化性の高分子の成形体が好ましく用いられる。この中でも特に各種熱可塑性高分子フィルムを基体として使用した場合、反射防止膜をロールトゥロールで連続的に積層することが可能であり、高い生産性が得られるので好ましい。
【0020】
これらの熱可塑性高分子フィルムとしては、例えばトリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。これらのフィルムは取り扱いのしやすさからおよそ30μm程度から400μm程度の厚みのものが好ましく用いられる。
【0021】
熱可塑性高分子を透明基体として用いる場合には、機械的強度の観点からハードコート性を有する層(以下ハードコート層と記す)を積層した後に反射防止層を積層する事が更に好ましい。ここでいうハードコート性とは層の表面を、#0000のスチールウールに100gf/cm2の加重をかけて10回(10往復)こすった後に層の表面に肉眼で傷が認められない状態を意味する。
【0022】
このようなハードコート層としては、通常多数の架橋反応部位を有する架橋性高分子樹脂からなる架橋層が用いられ、たとえばシリコーン系の熱硬化性樹脂や(メタ)アクリル系等の放射線硬化型樹脂が挙げられる。
【0023】
シリコーン系の熱硬化性樹脂としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等の各種アルコキシシランおよびそれらの混合物を酸性水溶液で加水分解して部分縮合体となっているものが用いられ、場合によっては硬化触媒として酢酸ナトリウム、各種三級アミン等が添加される。
【0024】
放射線硬化性樹脂は紫外線や電子線等の照射により架橋が進行する樹脂を指し、その中でも官能基を多く有する高架橋性の(メタ)アクリレートの使用が好ましい。これらの例としてはたとえば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートモノマーや、単位構造内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー等の(メタ)アクリレートオリゴマー、もしくはこれらの混合物等が挙げられる。
【0025】
尚、同樹脂に紫外線照射して架橋を進行させる場合には、光反応開始剤を適量添加する。このような光反応開始剤としては、たとえばジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン系化合物、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸等のベンゾフェノン系化合物、チオキサンソン、2、4ージクロロチオキサンソン等のチオキサンソン系化合物等が挙げられる。
【0026】
これらの樹脂は無溶剤で、もしくは適当に溶剤希釈をした状態で透明基体にコーティングされる。尚、溶剤希釈を行った放射線硬化型樹脂をコーティングした場合には放射線の照射による層の硬化を行う前に十分熱乾燥させ、含有する溶剤をほぼ揮発させる必要がある。コーティング方法としては、マイクログラビヤコート、マイヤーバーコート、ダイコート等のおもにロールフィルムに好適な連続コーティング方法や、スピンコート、ナイフコート等のおもにフィルム以外の成形体に好適な枚葉コーティング方法等が挙げられる。
【0027】
ハードコート層の膜厚はおよそ2〜8ミクロンの範囲にある事が好ましい。これは2ミクロン以下では、前述のようにハードコート性が不十分になり、8ミクロンを越えると層の硬化収縮の影響でクラックを生じ易くなったり基体のカールが大きくなったり、層の密着性が低下したりするからである。
【0028】
また熱可塑性高分子による基体とハードコート層との密着性を更に向上する必要がある場合には、基体に適当なプライマー層を積層した後にハードコート層を積層する事が好ましい。
【0029】
このようなプライマー層としては、湿式コーティングにより形成したPMMA等の熱可塑性アクリル樹脂やフェノキシ樹脂、各種アルコキシシラン、アルコキシチタン、アルコキシジルコニウム等による層や、スパッタリング、真空蒸着等の真空プロセスにより形成した酸化珪素、酸化チタン、チタン、ITOの層が好適に用いられる。
【0030】
また用途によっては表面での正反射光が適度に光散乱するように表面の形状を制御する事により、反射防止性を更に向上させる事も好ましく行われる。この目的には最表面に光の散乱能の高いミクロンサイズ径の凹凸部を分散形成する事が好ましく、具体的には例えばハードコート層内に平均粒径(もしくは二次凝集径)が数ミクロン前後の微粒子を適量分散させる方法、ハードコート層表面をサンドブラスト処理する方法等の方法を用いれば、ハードコート表面に簡易にこのような凹凸が分散形成され、反射防止膜積層後にもその形状はほとんど変わらないため、反射光を効果的に散乱させる事ができる。又、反射防止膜上に程度な密度で凹凸が形成された場合、指先が反射防止膜表面と接した際の両者の面密着を抑制し、指紋の転写量が抑制される効果が観られる場合がある。
【0031】
【実施例】
以下、実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
【0032】
[実施例]
基体として溶液流延法により形成した厚みが100μmのポリカーボネートフィルム(帝人製ピュアエースC110)を用いた。
【0033】
このフィルム上にハードコート層として、アクリルシリコーン系ハードコート剤(信越化学製X12−2450)を塗液としてマイクログラビヤコーティングを行い、溶剤乾燥後に強度160W/cmの高圧水銀ランプにより積算光量500mJ/cm2の紫外線を照射して、膜厚4.5umの硬化層を設けた。
【0034】
つぎに反射防止膜として、光学膜厚がともに140nm程度になるような膜厚で基体側から高屈折率膜、低屈折率膜の順に積層し、二層の光干渉膜による構成の反射防止膜を形成した。
【0035】
高屈折率膜としては、酸化スズを5重量%含有した酸化インジウム(ITO)を用いた。すなわち前記組成のITOターゲットをつけたスパッタリング装置に前記ハードコート層が形成されたフィルムをセットした後、圧力1.3mPaまで排気を行った。引き続いてAr/O2混合ガス(O2濃度1.4vol%)を100sccmで導入し、圧力が0.27mPaになるように調整し、投入電力密度1W/cm2の条件でDCマグネトロンスパッタリングを行い、蛍光X線測定による膜厚が約70nmのITO膜(n=2.0)を積層した。
【0036】
低屈折率膜としては二酸化珪素を用い、多結晶Siのメタルターゲットを用いて圧力1.3mPaまで排気後に、Ar/O2混合ガス(O2濃度12.0vol%)を100sccmで導入し、圧力が0.27Paになるように調整し、投入電力密度1W/cm2の条件でDCマグネトロンスパッタリングを行い、蛍光X線測定による膜厚が約100nmのSiO2膜(n=1.46)を積層した。
【0037】
つぎに高接触角領域の中に低接触角領域が島状に分布する表面を得る目的で、反射防止膜に以下のような表面処理を行った。
【0038】
まず第一にメチルトリメトキシシランをあらかじめ希塩酸により公知の方法により加水分解した液を固形分濃度が0.02重量%になるようにエタノールで希釈した塗液を用いてマイクログラビヤコーティングを行い、130℃で5分間熱乾燥してメチルトリメトキシシラン縮合物による極薄の層1を形成した。
【0039】
次にフルオロアルキルアルコキシシランCF3(CF2)7CH2CH2−Si(OCH3)3をあらかじめ希塩酸により公知の方法により加水分解した液を0.02重量%の固形分濃度にエタノールで希釈した塗液を用いて上記層1上にマイクログラビヤコーティングを行い、130℃で5分間熱乾燥して前記フルオロアルキルアルコキシシラン縮合物による極薄の層2を形成した。
【0040】
尚、ここで脱脂洗浄した板ガラス上に形成した、前記メチルトリメトキシシラン縮合物による層のオレイン酸に対する接触角は約47度、フルオロアルキルアルコキシシラン縮合物による層に対しては約70度であった。
【0041】
本実施例の効果を確かめるために、オレイン酸を綿棒に漬して処理表面に薄く塗りつけた後、200倍の光学顕微鏡で表面観察を行った。この結果、表面には径がおよそ20μm以下の多数の液滴が一様に分布しているのが観察され、これ以上の大きさの液滴は非常に少なかった。また、オレイン酸を塗布した表面を肉眼観察しても塗布部分は外観上あまり目立たなかった。
【0042】
尚この結果については、前記フルオロアルキルアルコシキシラン縮合物の層のコーティングにおいて、メチルトリメトキシシラン縮合物の表面張力が比較的低いために塗工液の濡れ性が低く、液膜のはじき現象によって前記径程度の塗工ヌケ部分が生じ、高接触角領域に低接触角領域が分布した表面が形成されたものと推定される。
【0043】
[比較例]
実施例において反射防止膜上にメチルトリメトキシシラン縮合物の層を設けず、いきなりフルオロアルキルアルコキシシラン縮合物の層を設けた以外は実施例と全く同様の積層体を形成した。実施例同様にオレイン酸をこの積層体表面に塗りつけて顕微鏡観察を行ったところ、一つの顕微鏡視野内に50μmを超える径の液滴が数個から十個程度含まれていた。また、オレイン酸の塗布部分は肉眼でも若干周囲より目立って見えた。
【0044】
【発明の効果】
本発明により、従来より更に表面に付着した指紋の模様が目立ちにくい反射防止膜を有する各種物品を簡易に得る事ができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の反射防止物品の具体的な構成の一例を示す断面模式図である。
【図2】本発明の反射防止物品の表面を模式的に示した図である。
【符号の説明】
1 基体
2 ハードコート層
3 高屈折率層
4 低屈折率層
5 処理表面
6 低接触角領域
7 高接触角領域
Claims (6)
- 透明基体の少なくとも一方の面に反射防止膜が積層された反射防止物品において、
該反射防止膜は、その表面においてオレイン酸に対する接触角が相対的に高い表面領域の中に接触角が相対的に低い表面領域が島状に分布しており、
該島の大きさは平均径が1〜100μmであることを特徴とする反射防止物品。 - 前記島の分布割合は、前記反射防止膜の全表面に対する表面積比で、1〜30%の範囲である請求項1記載の反射防止物品。
- 熱可塑性高分子フィルムからなる透明基体上に反射防止膜を積層し、さらに該反射防止膜に表面処理を行うことにより、該反射防止膜の表面においてオレイン酸に対する接触角が相対的に高い表面領域の中に接触角が相対的に低い表面領域が海島状に分布しており、該島の大きさは平均径が1〜100μmであることを特徴とする反射防止物品の製造方法。
- 前記島の分布割合は、前記反射防止膜の全表面に対する表面積比で、1〜30%の範囲である請求項3記載の反射防止物品の製造方法。
- 表面処理方法として、反射防止膜上に接触角が相対的に低い表面領域を形成する材料からなる層をコーティングにより形成した後に、接触角が相対的に大きい表面領域を形成する材料からなる層をコーティングにより形成する請求項4記載の反射防止物品の製造方法。
- 相対的に接触角が低い表面領域を形成する材料として、アルコキシシランの縮合物を用い、相対的に接触角の大きい表面領域を形成する材料として、フルオロアルコキシシランの縮合物を用いることを特徴とする請求項5記載の反射防止物品の製造方法。
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