JP4271355B2 - 高周波線路の変換器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、導波管回路と誘電体基板に形成された平面回路との間で高周波電波の伝送形態を変換する高周波線路の変換器に関する。
【0002】
【従来の技術】
図6には、従来から用いられている高周波線路の変換器の構成が示されており、この変換器は、プローブ等を別途設けることなく構成でき、製造コストが低く抑えられるために広く用いられている。図6(A)に示されるように、高周波伝送路である導波管1と短絡導波管2との間には誘電体基板3が挟まれており、この誘電体基板3に平面回路の一部となるマイクロストリップ線路が形成される。
【0003】
即ち、図6(B),(C)にも示されるように、上記誘電体基板3の表面(短絡導波管2側)にストリップ導体4、裏面(導波管1側)に接地面(導体)5がパターニングされており、図6(C)に示されるように、この接地面5は導波管1内の伝送空間Sの部分を残して形成される。また、図6(B)に示されるように、上記ストリップ導体4の先端はプローブ6として短絡導波管2内の伝送空間Sへ突き出るように形成される。更に、このプローブ6が設けられた誘電体基板3表面には、短絡導波管2が接触する部分に接地導体7がパターニングされ、この接地導体7の部分には、図示のように裏面側接地面5と導通するための多数のスルーホール8が形成される。
【0004】
このような構成によれば、上記スルーホール8によって接地面5と接地導体7が短絡され、導波管1と短絡導波管2が一体として導波管として機能し、この導波管中の電波は、誘電体基板3から外部に漏れることなくプローブ6及びストリップ導体4からなるマイクロストリップ線路へ伝送される。また、上記短絡導波管2はその先端が導体板で閉じられており、この導体板とプローブ6との間隔を適当に設定することで変換損失の小さい変換器が構成できる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記高周波線路の変換器では、上述のように誘電体基板3からの電波の漏洩を防ぐために上記スルーホール8を形成する必要があることから、製造コストの低減が図れないという問題があった。
【0006】
一方、スルーホール8を形成しない変換器として、従来では、特開平2−223201号に開示されるものがあり、この変換器の構成を図7に示す。この図7の変換器では、円形導波管R1の端部に誘電体基体R2が挿入され、この誘電体基体R2の短絡端末R3側の面にアース面R4が形成され、この誘電体基体R2の反対側には、中心部にパッチR5が設けられると共に、2箇所にストリップ状部R6及びプローブR7が形成される。そして、上記導波管R1の壁厚tを動作周波数の1/4波長にすることにより、導波管R1の壁の内縁部R8が実効的な短絡となるように構成される。
【0007】
しかし、この図7の構成では、上記内縁部R8が実効的な短絡となるように導波管R1の厚さtを1/4波長の寸法に設定すると、この導波管R1と上記ストリップ状部R6との接触を避けるために浮き上がらせている部分R9の直下において、そこに配置されるストリップ状部R6の1/4波長部分の上端と下端ではインピーダンスが大きく変化し、変換器としてのマッチングをとることが困難となる。また、誘電体の材質によっては導波管R1を誘電体基体R2に直接接着することが難しいものも存在する。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、誘電体基板にスルーホールを形成する必要がなく製造コストの低減を図ることができ、またマッチングを良好にとることが可能となる高周波線路の変換器を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、誘電体基板に電気伝導性材質でプローブをパターニングし、このプローブを導波管中に挿入して平面回路と導波管回路とを接続する高周波線路の変換器において、上記誘電体基板の短絡導波管接触部分に、この短絡導波管の壁の厚さよりも大きな幅で、導波管形状に沿った接地領域が設定されるように、電気伝導性材質の接地導体をパターニングし、かつこの接地導体とこれに接触させた上記短絡導波管とで占める全体の幅を、上記誘電体基板中における高周波の実効波長をλとすると、n・λ/4(n:奇数)近傍(n・λ/4±λ/8の範囲)の幅にしたことを特徴とする。
請求項2に係る発明は、上記接地導体を、上記誘電体基板にn・λ/4近傍の幅でパターニングしたことを特徴とする。
請求項3に係る発明は、矩形の導波管を用いる場合、上記接地導体を上記矩形の長辺部分にのみパターニングしたことを特徴とする。
請求項4に係る発明は、上記接地導体の内側に、n・λ/4近傍の幅の同一パターンの接地導体を複数形成したことを特徴とする。
【0010】
上記の構成によれば、誘電体基板にプローブが形成されると共に、このプローブを伝送空間内に挿入する形で、例えばλ/4の幅で導波管形状に合せて矩形状又は円形状に接地導体がパターニングされ、この接地導体に導波管の端面が接触するように組み付けられる。これにより、導波管が接地導体パターンの内周位置で短絡されることになる。また、導波管壁の厚さをλ/4よりも小さくすることにより、導波管端面の直下に存在するストリップ線路にインピーダンスの大きな変化を生じさせることなく、良好なマッチングをとることが可能となる。なお、上記接地導体の幅をλ/4よりも長くして、(3/4)λ、(5/4)λ等とした場合は、導波管壁の厚さをマイクロストリップ線路中の高周波波長の1/2に設定すれば、インピーダンスの不連続をより良好にキャンセルすることができる。
【0011】
更に、請求項3の発明によれば、矩形の導波管を用いる場合は、短辺方向からの高周波の漏洩がないので、上記接地導体を上記矩形の2つの長辺部分にのみ形成することができ、これによっても同様の効果が得られる。なお、上記接地導体と導波管端面とをその幅及び厚さ方向でずれるように接触・配置させることも可能であるが、この場合は接地導体幅と導波管壁厚の合計の接地領域の幅を、略n・λ/4とすればよいことになる。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1には、本願発明の第1例に係る高周波線路の変換器の構成が示されており、図1(B)は誘電体基板の表面、図1(C)は誘電体基板の裏面である。図1(A)に示されるように、この変換器は、高周波伝送路である導波管11と短絡導波管12との間に、平面回路の一部となる誘電体基板13を挟んで構成される。この誘電体基板13の表面に、ストリップ導体14及びプローブ16がパターニングされると共に、裏面には図1(C)に示されるように、導波管11の伝送空間Sの部分を残して接地面15が形成されており、上記ストリップ導体14の先端のプローブ16は伝送空間Sに突出する位置に配置される。
【0013】
そして、この誘電体基板13の表面に、図1(B)に示されるように、先端にプローブ16を持つストリップ導体14を通すための隙間が空けられて矩形パターンの接地導体17が上記矩形導波管12(11)の断面形状に合せてパターンニングされる。また、この接地導体17の幅W1は、誘電体基板13中を通過する高周波の実効波長λの1/4の長さ(λ/4±λ/8の範囲の長さ)とされる。
【0014】
この実効波長λは、誘電体基板13の誘電率による波長短縮効果を考慮した動作周波数をf、光速をc、誘電体基板13の比誘電率をεr とすると、
【数式1】
で求めることができる。例えば、動作周波数fが60GHzで、誘電体基板13を比誘電率εr =6.2のアルミナで製作した場合、実効波長λは約1.65mmとなる。従って、この場合の幅W1は約0.41mmとなり、この幅で接地導体17をパターニングすればよいことになる。
【0015】
そうして、このような接地導体17に、図1(D)に示されるように、短絡導波管12の端面を接触させるが、この短絡導波管12と導波管11の厚さT1は上記接地導体17の幅W1よりも小さく(T1<W1)設定される。この第1例では、厚さT1を0.25mm程度とし、この短絡導波管12の内壁位置と接地導体17の内周位置P2を一致させて接続する。これにより、短絡導波管12の直下に存在するストリップ導体14のインピーダンスが不連続になるのを防止することができる。
【0016】
以上のような第1例の構成によれば、λ/4幅の接地導体17の導波管から見て外側の端面(外周位置P1)はオープン端であり、ここでのインピーダンスは略無限大となる。一方、このオープン端からλ/4の長さだけ内側の端面(内周位置P2)は上述のインピーダンスの逆数、即ち略零(0)で短絡面となる。従って、導波管11と短絡導波管12が0のインピーダンスで短絡されることになり、これによって電波(高周波)の漏洩が防止される。
【0017】
なお、上記接地導体17の幅W1はλ/4(又はこの奇数倍)で、λ/8の許容範囲に入る値、即ちn(n=1,3,5…)・λ/4±λ/8の長さであればよく、当該例の上記幅W1は0.31mm〜0.51mmの範囲で設定することができる。この範囲を外れると、導波管12の端面で短絡とはみなせず、電波の漏洩が大きくなる。
【0018】
図2には、第1例の変形例が示されている。この例では、接地導体18に短絡導波管19を接触させたときの誘電体基板13の面上接地領域の合計幅がλ/4又はこの奇数倍となるようする。即ち、接地導体18の幅W12と短絡導波管19の幅T12 とで占める全体の幅が上記W 1 となるようにする。これによっても、導波管19を短絡させることができる。
【0019】
図3には、実施形態の第2例に係る高周波線路の変換器の構成が示されており、この第2例は矩形の長辺にのみ接地導体を設けたものである。図3(A)に示されるように、誘電体基板13の表面にはストリップ導体14及びプローブ16、裏面には図3(B)のように接地面15がパターニングされる。そして、上記プローブ16が配置される伝送空間(S)の周囲の上下、即ち短絡導波管12Bの矩形上下の長辺に接触する部分のみに、図示の接地導体20がパターニングされる。
【0020】
即ち、矩形導波管11,12では、その管端面と誘電体基板13との間の隙間が管軸に垂直な方向、ここでは矩形の短辺側に存在する場合は、その隙間から電波が漏れることはない。また、この接地導体20の幅W2は、第1例と同様にλ/4の奇数倍に設定され、導波管12B(11B)の厚さT2も接地導体20の幅W2よりも小さい値とされる。
【0021】
このような第2例の構成でも、矩形導波管の長辺にのみ設けた接地導体20の内周位置で導波管11Bと短絡導波管12Bを短絡することができ、電波の漏洩を防止することが可能となる。
【0022】
図4には、実施形態の第3例の構成が示されており、この第3例は円形導波管に適用したものである。図4(A)に示されるように、第3例の変換器は、円形導波管31と円形短絡導波管32との間に誘電体基板33が挿入されており、この誘電体基板33の表面に、図4(B)に示されるように、ストリップ導体34と伝送空間に突出するプローブ36がパターニングされ、裏面には図4(C)のように導波管31の伝送空間Sの部分を残して接地面35が形成される。
【0023】
また、図4(B)のように、上記誘電体基板33の表面にストリップ導体34及びプローブ36を通すための隙間が空けられて、円形の接地導体37が上記矩形導波管32(31)の形状に合せてパターニングされる。そして、この接地導体37の幅W3は、誘電体基板33中を通過する高周波の実効波長λの略1/4の奇数倍の長さとされる。一方、上記短絡導波管32と導波管31の厚さT3は接地導体37の幅W3よりも小さく(T3<W3)設定され、この短絡導波管32の内壁位置が接地導体37の内周位置に一致する状態で各部材が組み付けられる。
【0024】
このような第3例によっても、円形導波管31,32の外周位置P1がオープン端、内周位置P2が短絡面となり、電波の漏洩を防止でき、また短絡導波管32の直下に存在するストリップ導体34部分のインピーダンスの変化をなくし、マッチングを良好にとることが可能となる。
【0025】
図5には、実施形態の第4例の構成が示されており、この第4例は所定パターンの接地導体を二重に配置したものである。図5に示されるように、誘電体基板13の表面に、ストリップ導体14が設けられると共に、短絡導波管の断面形状に合せた矩形の第1接地導体41と第2接地導体42が二重にパターニングされる。そして、これら接地導体41,42の幅W4,W5を、例えばλ/4(又はこれの奇数倍)とし、また第1接地導体41と第2接地導体42との間隔もλ/4又はこれの奇数倍に設定する。
【0026】
その他の構成は、第1例と同様であり、短絡導波管の端面を第2接地導体42に接触させて変換器が組み立てられる。このような第4例の構成によれば、導波管の短絡の効果が高まり、電波の漏洩防止をより確実に促進することができる。
【0027】
上記実施形態例において、接地導体17,18,20,37,41,42(又は接地領域)の幅をλ/4以外の(3/4)・λ、(5/4)・λ…に設定した場合、導波管11,12,11B,12B,31,32の壁厚をマイクロストリップ線路を伝送する高周波の波長の略2分の1に設定することが好ましい。即ち、導波管の壁厚をマイクロストリップ線路中の電波波長の2分の1とすれば、導波管(端面)直下のストリップ導体14,34のインピーダンスの不連続をキャンセルすることができ、マッチングが良好となり、電波が通り易くなる。
【0028】
なお、上記実施形態例では、誘電体基板13の表面(短絡導波管側)にストリップ導体14,34及び接地導体17,18,20,37,41,42を設けたが、表裏の配置を逆にし、これらを裏面側に配置してもよい。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、高周波線路の変換器において誘電体基板の短絡導波管接触部分に、この短絡導波管の壁の厚さよりも大きな幅で、導波管形状に沿った接地領域が設定されるように、電気伝導性材質の接地導体をパターニングし、かつこの接地導体とこれに接触させた上記短絡導波管とで占める全体の幅を、上記誘電体基板中における高周波の実効波長をλとすると、n・λ/4近傍の幅としたので、誘電体基板にスルーホールを形成することなく導波管を短絡することができ、製造コストの低減を図ることが可能となる。また、導波管回路と平面回路のマッチングが良好となり、良好な特性の変換器を得ることができる。
【0030】
また、矩形の導波管を用いる場合には、上記の接地導体を矩形の長辺部分にのみパターニングしてもよく、この場合はパターニングを簡略化することができる。また、所定パターンの接地導体の内側に、n・λ/4近傍の幅で同一パターンの接地導体を複数形成することもでき、これによれば、短絡の効果を高め、電波の漏洩をより確実に防止できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の第1例に係る高周波線路の変換器の構成を示し、図(A)は斜視図、図(B)は誘電体基板の表面(短絡導波管側)の構成図、図(C)は誘電体基板の裏面(導波管側)の構成図、図(D)は接地導体と導波管端面の関係図である。
【図2】実施形態の第1例の接地導体と導波管端面の配置の他の例を示す図である。
【図3】実施形態の第2例の構成を示し、図(A)は誘電体基板の表面の構成図、図(B)は誘電体基板の裏面の構成図である。
【図4】実施形態の第3例の構成を示し、図(A)は斜視図、図(B)は誘電体基板の表面の構成図、図(C)は誘電体基板の裏面の構成図である。
【図5】実施形態の第4例の構成を示す誘電体基板の表面の構成図である。
【図6】従来の高周波線路の変換器の構成を示し、図(A)は斜視図、図(B)は誘電体基板の表面の構成図、図(C)は誘電体基板の裏面の構成図である。
【図7】従来の高周波線路の変換器の他の例を示し、図(A)は誘電体基体を導波管側から見た図、図(B)は図(A)のI−I断面図である。
【符号の説明】
1,11,31 … 導波管、
2,12,19,32 … 短絡導波管、
3,13,33 … 誘電体基板、
4,14,34 … ストリップ導体、
6,16,36 … プローブ、
7,17,18,20,37,41,42 … 接地導体、
8 … スルーホール。
Claims (4)
- 誘電体基板に電気伝導性材質でプローブをパターニングし、このプローブを導波管中に挿入して平面回路と導波管回路とを接続する高周波線路の変換器において、
上記誘電体基板の短絡導波管接触部分に、この短絡導波管の壁の厚さよりも大きな幅で、導波管形状に沿った接地領域が設定されるように、電気伝導性材質の接地導体をパターニングし、かつこの接地導体とこれに接触させた上記短絡導波管とで占める全体の幅を、上記誘電体基板中における高周波の実効波長をλとすると、n・λ/4(n:奇数)近傍の幅にしたことを特徴とする高周波線路の変換器。 - 上記接地導体を、上記誘電体基板にn・λ/4近傍の幅でパターニングしたことを特徴とする請求項1記載の高周波線路の変換器。
- 矩形の導波管を用いる場合、上記接地導体を上記矩形の長辺部分にのみパターニングしたことを特徴とする請求項1又は2記載の高周波線路の変換器。
- 上記接地導体の内側に、n・λ/4近傍の幅の同一パターンの接地導体を複数形成したことを特徴とする請求項1乃至3記載の高周波線路の変換器。
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