JP4270438B2 - 光回折構造による隠しパターンを内包する表示体 - Google Patents

光回折構造による隠しパターンを内包する表示体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光回折構造による隠しパターンを内包する表示体に関し、特に、通常の視認状態では判別が困難な光回折構造による隠しパターンを内包する表示体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、カラーコピー機による高額紙幣や商品券の偽造事件が頻発している。そのために、高額紙幣や商品券は、デザインの一部にカラーコピー機のセンサーでは読み取ることができない小さな網点や細線を、同じ反射濃度でデザインされた絵柄の中に組み込んでいる。その結果、これらの高額紙幣や商品券をカラーコピー機によって複写しようとすると、コピー機のスキャナーが小さな網点や細線を読み落とし、その部分が白く抜けることでコピー品であると判別している。
【0003】
また、印刷物のデザインの一部に光り輝く金属部分を設けることによりコピー品を判別する方法も実施されている。
【0004】
このような金属部分は、入射光を100%反射するためにコピー機はこの部分を黒に再現する。実施例として、例えば、紙の表層に金糸を縫い付け、コピー牽制を行っている。
【0005】
その他、透明な樹脂で複製した光回折構造体の凹凸面に金属蒸着処理をして、印刷エリアの一部に熱転写し、複写機によるコピーを牽制している。この光回折構造体は、金属表面の反射効果でコピーによる不正を牽制しようとする一方で、熱転写された印刷物あるいは製品そのものの偽造を防止する手段として利用されている。光回折構造体は、高度な製造技術を必要とするために、金券類等の偽造防止手段としてしばしば使用される。
【0006】
しかし、製造技術の向上によって、一見して本物に近い光回折構造体を製造することができるようになってきた。
【0007】
このような偽造品をチェックするために、光回折構造体の中に判別困難な隠しパターンを組み込んで真偽判別の手段として使用する技術が提案されているが、見る角度によって隠しパターンが微かに判別されてしまうという問題があり、また、隠しパターンを形成した部分に他の絵柄が形成されていないために、隠しパターンがあり得ると推測される結果になり、偽造防止効果を低減させる問題があった。
【0008】
【発明が解決しょうとする課題】
本発明は従来技術のこのような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、目視による判別が極めて困難で偽造防止効果が大な光回折構造による隠しパターンを内包する表示体を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明の光回折構造による隠しパターンを内包する表示体は、光回折構造を含む表示体であって、その表示面は、回折特性が異なり、表示パターンに応じた任意の外形及び内形を持つ複数のパターン領域が並列配置されてなり、各パターン領域は、相互に隣接していて平行で、回折特性の異なる第1直線縞と第2直線縞の縞対の繰り返しにより埋めつくされてなり、前記第1直線縞は第1直線回折格子によって、また、前記第2直線縞は第2直線回折格子によってそれぞれ構成されており、前記表示面に対して設定された基準線に対して、前記第1直線縞と第2直線縞の傾き角を縞対の傾き角α、前記第1直線回折格子の傾き角を第1直線回折格子の傾き角β1 、前記第2直線回折格子の傾き角を第2直線回折格子の傾き角β2 とするとき、前記複数のパターン領域の中の少なくとも1つの隠しパターンを構成するパターン領域の縞対の傾き角αは、それ以外のパターン領域の縞対の傾き角αとは異なるように設定されており、かつ、隠しパターンを構成するパターン領域の第1直線回折格子の傾き角β1 と第2直線回折格子の傾き角β2 とは、そのパターン領域に隣接する隠しパターンを構成するパターン領域以外のパターン領域の第1直線回折格子の傾き角β1 と第2直線回折格子の傾き角β2 とにそれぞれ等しく設定されていることを特徴とするものである。
【0010】
この場合に、隠しパターンを構成するパターン領域が孤立した1つ以上のパターン領域からなり、その隠しパターンを構成するパターン領域の第1直線回折格子の傾き角β1 と第2直線回折格子の傾き角β2 とは、それ以外のパターン領域の第1直線回折格子の傾き角β1 と第2直線回折格子の傾き角β2 とにそれぞれ等しく設定されているものとすることができる。
【0011】
あるいは、隠しパターンを構成するパターン領域が相互に隣接する複数のパターン領域を含み、前記隠しパターンを構成する相互に隣接する複数のパターン領域の縞対の傾き角αは同じに設定されていて、前記隠しパターンを構成する相互に隣接する複数のパターン領域に隣接するそれ以外のパターン領域の縞対の傾き角αとは異なるように設定されており、かつ、前記隠しパターンを構成する相互に隣接する複数のパターン領域のそれぞれのパターン領域の第1直線回折格子の傾き角β1 と第2直線回折格子の傾き角β2 とは、そのパターン領域に隣接する前記隠しパターンを構成する相互に隣接する複数のパターン領域以外のパターン領域の第1直線回折格子の傾き角β1 と第2直線回折格子の傾き角β2 とにそれぞれ等しく設定されているものとすることができる。
【0012】
また、相互に隣接して並列配置された複数のパターン領域各々における前記第1直線回折格子と前記第2直線回折格子とは、傾き角が異なるか格子ピッチが異なるかの少なくとも一方を満たすように設定されていることが望ましい。
【0013】
また、相互に隣接して並列配置された複数のパターン領域各々における前記縞対の繰り返しピッチをdとするとき、d≦1/5mmに設定されていることが望ましい。
【0014】
また、隠しパターンを構成するパターン領域の前記縞対の傾き角αとそれ以外のパターン領域の縞対の傾き角αとの差が90°±10°の範囲内に設定されていることが望ましい。
【0015】
また、前記少なくとも1つの隠しパターンを構成するパターン領域は、そのパターン領域を構成する前記縞対の周期に対して半周期ずれた周期の縞対で縁取りされていることが望ましい。
【0016】
また、前記第1直線回折格子と前記第2直線回折格子とは、反射型回折格子からなることが望ましい。
【0017】
また、本発明の光回折構造による隠しパターンを内包する表示体は、転写箔形態、ラベル形態、あるいは、フィルム形態に構成することができる。
【0020】
本発明においては、光回折構造を含む表示体の表示面を、相互に隣接していて平行で、回折特性の異なる第1直線縞と第2直線縞の縞対と、それら直線縞を構成する直線回折格子との二重構造で構成し、隠しパターンを構成する領域とそれ以外の領域では直線回折格子の構成は同じで、縞対の構成を異なるものとすることにより、目視状態では直線回折格子の領域毎の構成の違いによって通常の表示パターンが観察でき、隠しパターンは判別困難であるが、上記の縞対とモアレ現象を生じる判別具を重ね合わせることで、今度は通常の表示パターンではなく隠しパターンが判別可能となる。そのため、目視による判別が極めて困難な隠しパターンを含み、偽造防止効果が大きく、デザイン性の高い表示体を得ることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の光回折構造による隠しパターンを内包する表示体及びそのための判別具について説明する。
【0022】
図1は、本発明の1実施例として、本発明による隠しパターンを有する光回折構造を転写した印刷物の一例について説明するための図である。偽造、又は、コピーを牽制するために隠しパターンを内包する表示体1が印刷物10の所定の位置に形成されている。この場合の表示体1は、凹凸が形成された極めて薄い樹脂が熱によって所定の大きさに溶断されて熱再活性型の接着剤によってラベルとして紙等の印刷物10上に形成されている。
【0023】
あるいは、ベースフィルムの上に光回折構造を形成した状態で所定の大きさに打ち抜かれ、ベースフィルムと一緒に粘着材又は接着剤によって印刷物10上に形成される。
【0024】
このような表示体1が形成された印刷物は、偽造又は複写されては困るものが多く、例えば、紙幣、商品券、入場券、ギフト券、手形、小切手等がその対象になる。また、印刷自体にも特殊な技術を持ち合わせていないと複製できない手法が盛り込まれており、偽造、複写による悪用に対して二重にプロテクトされている。
【0025】
表示面1は、隠しパターンを含む部分表示面2とその他の部分表示面3とからなっており、部分表示面2と部分表示面3は共に光回折構造による表示面であっても、隠しパターンを含む部分表示面2のみが光回折構造による表示面であって、その他の部分表示面3は印刷等光回折構造によらない表示面であってもよい。もちろん、表示面3が光回折構造による隠しパターンを含む部分表示面2のみからなっていてもよい。
【0026】
ここで、本発明において、部分表示面2中の均一な特性及び構成を有する表示単位領域の基本構成について、図2を参照にして説明する。このような表示単位領域が並列集合して部分表示面2を構成している。
【0027】
図2において、表示単位領域5は表示パターンに応じた任意の外形及び内形パターン領域を構成しており、そのパターン領域は、相互に隣接していて平行で、回折特性の異なる第1直線縞61 と第2直線縞62 の縞対6の繰り返しにより埋めつくされてなり、第1直線縞61 は第1直線回折格子71 によって構成され、第2直線縞62 は第2直線回折格子72 によって構成されている。そして、第1直線縞61 、第2直線縞62 の基準線Sに対する傾き角をα、第1直線回折格子71 の基準線Sに対する傾き角をβ1 、第2直線回折格子72 の基準線Sに対する傾き角をβ2 とする。ここで、基準線Sとしては、例えば表示面2の表示パターンに対し水平と認識される方向、例えば表示面2の長辺方向に平行な直線が用いられる。なお、回折格子71 、72 の傾き角は、格子線の基準線Sに対する角度である。
【0028】
ここで、縞対6の繰り返しピッチをdとするとき、d≦1/5mmに設定され、第1直線回折格子71 と第2直線回折格子72 とは、傾き角が異なる(β1 ≠β2 )か、その回折格子の格子ピッチが異なるかの少なくとも一方を満たすように選ばれている。なお、第1直線回折格子71 、第2直線回折格子72 の格子ピッチは、当然ながら縞対6の繰り返しピッチdに比較して十分に小さく設定される。通常、回折格子71 、72 の格子ピッチとしては、0.5μm〜2μmの範囲のものが用いられる。また、第1直線回折格子71 と第2直線回折格子72 との傾き角の差|β1 −β2 |は、限定的ではないが、30°〜90°の範囲に設定するのが望ましい。
【0029】
以上のように、本発明の光回折構造による隠しパターンを含む部分表示面2を並列集合して構成する表示単位領域5は、直線回折格子71 、72 と、それらの直線回折格子によって構成される第1直線縞61 、第2直線縞62 の縞対6との二重構造を持つものであり、その二重構造に特徴があるものである。
【0030】
なお、以後の説明において、第1直線縞61 、第2直線縞62 、第1直線回折格子71 、第2直線回折格子72 は、特に必要のないとき、何れも直線の用語を省いて、第1縞61 、第2縞62 、第1回折格子71 、第2回折格子72 と呼ぶ。
【0031】
図3は、本発明による第1形態の光回折構造による隠しパターンを含む部分表示面2の拡大図であり、図中に、各領域の第1縞61 と第2縞62 を構成する第1回折格子71 と第2回折格子72 の傾き角も引き出して横に示してある。
【0032】
この表示面2においては、表示パターンとしては、中央部の文字“H”の領域112 と、その背景の中央部の文字“H”の部分を除いた領域111 とからなる。ここで、文字“H”が隠しパターンとして構成されるものである。
【0033】
ここで、領域111 を構成する第1縞61 、第2縞62 (縞対6)の傾き角αは、例えば45°に選択され、領域112 を構成する第1縞61 、第2縞62 (縞対6)の傾き角αは、例えば135°に選択される。なお、縞対6の繰り返しピッチdにいては、領域111 、領域112 共同じ設定される。
【0034】
しかし、重要な点であるが、領域111 、領域112 何れにおいても、第1縞61 を構成する第1回折格子71 (図2)の傾き角β1 は、図3で横に引き出して示してあるように、例えば0°に選択され、第2縞62 を構成する第2回折格子72 の傾き角β2 は、例えば45°に選択される。
【0035】
すなわち、この形態の表示面2においては、縞対6の幅程度以上の微小部分においては、表示面2の何れの領域においても、傾き角β1 =0°の第1回折格子71 と、傾き角β2 =45°の第2回折格子72 とが同じ割合で含むものであり、領域111 と領域112 では、縞対6の傾き角αが異なるものの、縞対6の繰り返しピッチdはd≦1/5mmを満たすように設定されるので、通常の目視状態では相互に判別できない。したがって、後記する判別具を用いない通常の目視状態では、表示面2全体は均一な明るさの何ら表示パターンのない状態に観察され、隠し文字“H”は判別不可能である。
【0036】
ここで、図4に平面図を示すような、平行な直線透明部91 と直線不透明部92 との繰り返しパターンであって、その繰り返しピッチが表示面2の縞対6の繰り返しピッチと同じdを有し、直線透明部91 、直線透明部92 の基準線Sに対する傾き角が、隠しパターンの領域112 の縞対6の傾き角と同じ135°の判別具8を、図3の部分表示面2に近接あるいは密着して重ね合わせると、領域112 ではモアレ現象により、第1縞61 又は第2縞62 の何れか一方が直線透明部91 に略対応し、他方が直線不透明部92 に略対応することになる結果、略一方の回折格子71 又は72 による回折光がその回折格子の回折方向に回折される。これに対して、領域111 では縞対6の傾き角(45°)が大きく異なるので、何らモアレ現象が起きず、領域112 で直線不透明部92 で隠されなかった回折格子と同じ傾き角の回折格子71 又は72 が直線透明部91 を介して略半分の密度で露出され、略半分の回折強度で同じ方向に回折光を回折する。その結果、図5に示すように、領域112 が相対的により明るく、領域111 が相対的により暗く観察され、この例では隠し文字“H”が判別可能となる。
【0037】
次に、図6に、本発明による第2形態の光回折構造による隠しパターンを含む部分表示面2の拡大図を示す。図6中に、各領域の第1縞61 と第2縞62 を構成する第1回折格子71 と第2回折格子72 の傾き角も引き出して横に示してある。
【0038】
この表示面2においては、表示パターンとしては、中央部の上下に2分割された円パターン(上半円パターン、下半円パターン)と、その背景の長方形から中央部円領域を除いたパターンと、それらに重畳している文字“A”とからなる。ここで、文字“A”が隠しパターンとして構成されるものである。
【0039】
そして、この表示面2において、並列配置される領域は次のようになる。
○長方形から中央部円領域を除いたパターン(X):
領域2111:長方形から中央部円領域と文字“A”の頭頂と2本の足先端とを除いた領域
領域2112:文字“A”の頭頂で中央部円領域から外に出た領域
領域2113、2114:文字“A”の2本の足先端で中央部円領域から外に出た領域
○中央部の下半円パターン(Y):
領域2121、2123、2124、2125:中央部の下半円パターン領域の文字“A”と重ならない領域
領域2122:中央部の下半円パターン領域中の文字“A”の領域
○中央部の上半円パターン領域(Z):
領域2131、2133、2134:中央部の上半円パターン領域の文字“A”と重ならない領域
領域2132:中央部の上半円パターン領域中の文字“A”の領域
である。
【0040】
すなわち、上記X、Y、Zの3つのパターンが並列して、表示面2を構成し、Xのパターンは領域2111、2112、2113、2114の4つの領域が並列して構成され、Yのパターンは領域2121、2122、2123、2124、2125の5つの領域が並列して構成され、Zのパターンは領域2131、2132、2133、2134の4つの領域が並列して構成されている。
【0041】
一方、隠しパターンの文字“A”(文字パターンA)は、上記の領域2111〜2134の中の領域2112、2113、2114、2122、2132が並列して構成されている。これら領域中の、領域2112、2113、2114はXのパターンの領域を兼ね、領域2122はYのパターンの領域を兼ね、領域2132はZのパターンの領域を兼ねている。
【0042】
そして、文字パターンAを構成する領域2112、2113、2114、2122、2132には、第1縞61 、第2縞62 (縞対6)の傾き角αとして、例えば45°に選択され、それ以外の領域2111、2121、2123、2124、2125、2131、2133、2134には、第1縞61 、第2縞62 (縞対6)の傾き角αとして、例えば135°に選択される。なお、縞対6の繰り返しピッチdにいては、全ての領域で同じ設定される。
【0043】
回折格子71 、72 の傾き角β1 、β2 (図2)については、図6で横に引き出して示してあるように、例えばXのパターンの領域2111、2112、2113、2114では、0°と45°、Yのパターンの領域2121、2122、2123、2124、2125では、90°と135°、Zのパターンの領域2131、2132、2133、2134では、22.5°と67.5°にそれぞれ選択される。
【0044】
上記の各領域に対応する縞対6の傾き角αと回折格子71 、72 の傾き角β1 、β2 を表にすると、次の(表)のようになる。
【0045】
Figure 0004270438
【0046】
この表から明らかなように、この形態の表示面2においては、Xのパターンの領域2111、2112、2113、2114では、何れの縞対6の幅程度以上の微小部分において、第1回折格子71 (β1 =0°)と第2回折格子72 (β1 =45°)とが同じ割合で含むものであり、通常の目視状態では同じ明るさで同じ色の一様領域に見える。同様に、Yのパターンの領域2121、2122、2123、2124、2125でも、第1回折格子71 (β1 =90°)と第2回折格子72 (β1 =135°)とが同じ割合で含むものであり、Xのパターンの領域とは異なるが、同じ明るさで同じ色の一様領域に見える。同様に、Zのパターンの領域2131、2132、2133、2134でも、第1回折格子71 (β1 =22.5°)と第2回折格子72 (β1 =67.5°)とが同じ割合で含むものであり、Xのパターンの領域、Yのパターンの領域とは異なるが、同じ明るさで同じ色の一様領域に見える。
【0047】
これに対して、文字パターンAを構成する領域2112、2113、2114それぞれは、縞対6の傾き角αが隣接する領域2111、とは異なり、領域2122は、縞対6の傾き角αが隣接する領域2121、2123、2124とは異なり、領域2132は、縞対6の傾き角αが隣接する領域2131、2133、2134とは異なるものの、縞対6の繰り返しピッチdはd≦1/5mmを満たすように設定されるので、判別具を用いない通常の目視状態では、図8(a)に示すように、中央部の上下に2分割された円パターン(上半円パターンZと下半円パターンYの組み合わせ)が背景の長方形から中央部円領域を除いたパターンX中に存在する表示パターンのみが観察され、隠し文字“A”は判別不可能である。
【0048】
そして、図7に平面図を示すような、平行な直線透明部91 と直線不透明部92 との繰り返しパターンであって、その繰り返しピッチが表示面2の縞対6の繰り返しピッチと同じdを有し、直線透明部91 、直線透明部92 の基準線Sに対する傾き角が、隠し文字パターンAを構成する領域2112、2113、2114、2122、2132の縞対6の傾き角と同じ45°の判別具8を、図6の部分表示面2に近接あるいは密着して重ね合わせると、領域2112、2113、2114、2122、2132ではモアレ現象により、第1縞61 又は第2縞62 の何れか一方が直線透明部91 に略対応し、他方が直線不透明部92 に略対応することになる結果、略一方の回折格子71 又は72 による回折光がその回折格子の回折方向に回折される。これに対して、それ以外の領域2111、2121、2123、2124、2125、2131、2133、2134では、直線透明部91 、直線透明部92 の基傾き角がそれらの領域での縞対6の傾き角(135°)と大きく異なるので、何らモアレ現象が起きず、図3の場合と同様に、それぞれの領域では、領域2112、2113、2114、2122、2132からの回折光の略半分の強度で回折光を回折することになる。その結果、図8(b)に示すように、領域2112、2113、2114、2122、2132がそれ以外の領域に比較して相対的により明るく観察され、この例では隠し文字“A”が判別可能となる。
【0049】
なお、この場合、文字パターンAを構成する領域2112、2113、2114と領域2122と領域2132間では、照明光源の位置により、若干明るさや色が相互に異なって見えるが、通常の目視環境では多くの光源や面光源が存在するので、この文字パターンA内での明るさや色の違いは、隠し文字“A”を判別するのに邪魔となるものではない。
【0050】
ところで、判別具を用いない通常の目視状態で判別可能なパターン(図6のX、Y、Zのパターン)、隠しパターン(図3の文字“H”、図6の文字“A”)共に、それぞれのパターンPの周辺に、図9に示すように、そのパターンPを構成する縞対6の周期に対して半周期ずれた周期の縞対で縁取りP’を形成することもできる。このような縁取りP’を施すことによって、判別困難な隠しパターンを判別具8を用いて判別する際に、判別しやすくし、判別可能なパターンに対してもその境界をより鮮明化する効果がある。
【0051】
以上の説明では、隠しパターンの領域の縞対6の傾き角と、それ以外の領域6の縞対の傾き角との差は、90°(直交)になるように設定していたが、隠し効果が変らない許容角度を含めた場合、90°±10°の範囲内に設定すればよい。
【0052】
また、縞対6を構成する第1回折格子71 と第2回折格子72 は、傾き角が異なる(β1 ≠β2 )か、その回折格子の格子ピッチが異なるかの少なくとも一方を満たすように選ぶものとしたが、その傾き角と格子ピッチの2つの要素を共に異ならせて構成することにより、隠しパターンの効果をより高めることができる。
【0053】
また、以上において、判別具8は、平行な直線透明部91 と直線不透明部92 との繰り返しパターンであって、その繰り返しピッチが表示面2の縞対6の繰り返しピッチと同じdを有し、直線透明部91 、直線透明部92 の基準線Sに対する傾き角が、隠しパターンの領域の縞対6の傾き角と同じであればよいと説明したが、このような判別具8は、印刷物10に対して決められた角度で近づけると、隠しパターンがモアレ現象により、判別具8を介して表示される。判別具8を介して表示された隠しパターンが所定のパターンであった場合に、その印刷物は正しい供給者から供給された正当な製品(真正品)であると判定される。
【0054】
判別具8は、判別具8を透過して印刷物の隠しパターンに照射された光を観察者が目視できなければならないために、透明なベース基材に判別パターンが形成されているものを用いる。ベース基材は透明度が高い方が好ましい。また、判別具8は、頻繁に使用されるために、ベース基材を強固な枠材で固定したものが多く使用される。この枠材には取っ手等を付けることも可能で、そのことによって判別具8の透明なベース基材が指紋や油で汚れることを防止する。
【0055】
隠しパターンの判別に際し、判別具8を、表示体1が形成された印刷物10に密着させる程度に近づけて判別する。その密着の状態から一定の距離までは隠しパターンの判別が可能であるが、モアレ現象を利用しているために、表示体1と判別具8の距離が空きすぎると、判別が困難になる。
【0056】
図10を参照して、判別具8に付与する判別パターンの各種の他の形態について説明する。
【0057】
透明基材の表面に形成された図10(a)、(b)、(c),(d)の判別パターンを表示体1の隠しパターンの表面に接近させ、隠しパターンによる判別画像を発生させる。
【0058】
図10(a)の場合は、水平線(基準線)に対して、直線透明部91 と直線着色部92 ’の傾き角が45°の万線による判別パターンである。万線は、直線透明部91 と着色された直線部92 ’が対となった繰り返しパターンであり、透明な直線部91 の幅と、着色された直線部92 ’の幅は、同一でも、異なっていてもよい。ただし、その繰り返しピッチは表示面2の縞対6(特に、隠しパターンの縞対6)の繰り返しピッチと同じにする。
【0059】
図10(b)は、水平線(基準線)に対して、直線透明部91 と直線着色部92 ’の傾き角が135°の万線による判別パターンである。その他は、図10(a)の場合と同様。
【0060】
図10(c)、水平線(基準線)に対して、格子19の角度が45°の回折格子を用いた判別パターンである。モアレ現象をある程度生起させるには、判別具8の判別パターンとして、方向性のあるものを用いればよい。この場合は、回折格子をそのような方向性のあるものとして用いてモアレ現象を起こさせる。
【0061】
図10(d)、水平線(基準線)に対して、網点29の整列方向の角度が135°の網点を用いた判別パターンである。この場合も、方向性のある網点を判別パターンに用いている。網点29は、透明な部分と着色された部分が独立した点、又は、2箇所が鎖状に繋がった点で構成されており、透明な部分を繋ぐ(鎖状の)線と、着色された部分を繋ぐ(鎖状の)線が対になって形成されている。この対になった部分が135°の角度に形成されている。
【0062】
ところで、判別具8として、図4や図7のように、平行な直線透明部91 と直線不透明部92 との繰り返しパターンからなる判別パターンを用いる場合に、図11にその繰り返しパターンの一部を拡大して示すように、直線透明部91 の幅をa、直線不透明部92 の幅をbとするとき、a/b≒1、すなわち、直線透明部91 と直線不透明部92 を略同じ幅としてもよいが、a/bは2/3〜1/4の範囲、すなわち、直線透明部91 の幅を直線不透明部92 の幅より小さく設定することが望ましい。その理由は、2/3≧a/b≧1/4の範囲においては、判別具8を表示面2に近接あるいは密着して重ね合わせると、隠しパターン“H”、“A”がコントラスト良く観察される。これに対して、a/bが2/3を越えると、判別具8を通して見える光量が多すぎて明るくなりすぎてコントラストが低下し、隠しパターンが見え難くなり、逆に、a/bが1/4を下回ると、その光量が少なすぎて暗くなって隠しパターンが見え難くなるためにである。
【0063】
ところで、以上の説明において、表示体1の表示面2の光回折構造を構成する回折格子71 、72 については、詳しく説明しなかった。通常、印刷物等に貼着して用いる表示面2に用いる回折格子としては、凹凸のレリーフ構造の回折格子のレリーフ面あるいは平面に蒸着等で金属反射膜を設けて反射型とした回折格子が用いられるが、それ以外に、振幅が周期的に変化する振幅型回折格子を構成するもの又は屈折率が周期的に変化して位相型回折格子を構成するものの裏面に金属反射膜を設けて反射型とした回折格子、体積型感光材料中に干渉縞で回折格子を構成した体積型回折格子等を用いてもよい。
【0064】
もちろん、表示面2を反射型でなく透過型のもので構成し、回折格子も透過型の回折格子で構成してもよい。
【0065】
さて、本発明による以上のような隠しパターンを含む部分表示面2を有する表示体1(又は、表示面2のみ)は、転写箔、ラベル、フィルム等種々の形態に構成することができる。転写箔形態の場合には、例えば商品券、クレジットカード、パッケージ等に適用でき、ラベル形態の場合には、例えばソフトウエア、カートリッジ、医薬品等のパッケージ等に適用でき、フィルム形態の場合には、例えばそのフィルムを1〜2mm程度の幅にマイクロスリットし、用紙の抄造時に紙中に共に抄き込んで偽造防止を図ることができる。また、ラベル形態の場合には、脆質層を層構成中に介在させて、偽造のためにラベルを剥離しようとしたときにその脆質層から剥がれるようにして偽造のために表示体を剥がすことを困難にすることができる(脆質ラベル)。以下、本発明の光回折構造による隠しパターンを内包する表示体を、転写箔、ラベル、脆質ラベル、フィルムの各形態に構成する場合の、層構成とその作製工程の例を説明する。
【0066】
図12は、本発明の光回折構造による隠しパターンを内包する表示体を転写箔31として構成する場合の層構成を示す断面図であり、その作製方法に従ってその構成を説明すると、PET等の透明樹脂フィルムからなる基材44上に剥離層45を塗布し、その剥離層45上に回折格子形成層41を塗布し、回折格子形成層41に凹凸レリーフ構造の回折格子原版をエンボスしてその凹凸レリーフ構造の回折格子を複製し、その複製されたレリーフ回折格子面上に反射層42を蒸着することにより反射型の回折格子43を形成し、その回折格子43の反射層42側にヒートシール層46を塗布して、図12のような層構成の転写箔31を完成する。
【0067】
ここで、基材44を構成する樹脂フィルムとしては、ポリプロピレン樹脂フィルム、ポリカーボネート樹脂フィルム、若しくは、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム等が好ましく、中でも、これらに加え、機械的強度の優れた2軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムが適している。
【0068】
また、剥離層45を構成する樹脂は、基材44の素材や、剥離層45と接着する回折格子形成層41の材質にもよるが、ポリエステル樹脂、アクリル骨格樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、酢酸セルロースと熱硬化型アクリル樹脂との2成分のブレンド樹脂、メラミン樹脂、若しくは、ニトロセルロース樹脂を使用することができる。例えば、基材44がポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)フィルムであるときは、剥離層45と基材44との密着力の点で、ポリエステル樹脂が好ましい。これらの樹脂には、さらにポリエチレンワックス等のワックス、若しくは、シリコーン樹脂を添加して剥離性を向上させてもよい。剥離層45は、上記の樹脂を適宜な溶剤若しくは分散剤を用いて溶解若しくは分散させて、塗布若しくは印刷に適した組成物を調製したものを、公知の塗布方法若しくは印刷方法により、基材44に積層形成することができる。
【0069】
また、回折格子形成層41を構成する合成樹脂としては、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂(例、PMMA)、ポリスチレン、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂、不飽和ポリエステル、メラミン、エポキシ、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン系アクリレート等の熱硬化性樹脂をそれぞれ単独、あるいは、上記熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを混合して使用することができ、さらには、ラジカル重合性不飽和基を有する熱成形性物質、あるいは、これらにラジカル重合性不飽和単量体を加え電離放射線硬化性としたもの等を使用することができる。この他、銀塩、重クロム酸ゼラチン、サーモプラスチック、ジアゾ系感光材料、フォトレジスト、強誘電体、フォトクロミックス材料、サーモクロミックス材料、カルコゲンガラスなどの感光材料なども使用できる。
【0070】
上記の合成樹脂からなる層への凹凸レリーフ構造の回折格子の形成は、上記の材料を用いて、従来既知の方法によって形成することができる。例えば、回折格子が凹凸の形で記録された原版をプレス型として用い、上記樹脂層上にその原版を重ねて加熱ロール等の適宜手段により、両者を加熱圧着することにより、原版の凹凸模様を複製することができる。あるいは、紫外線硬化性とした樹脂層上にその原版を重ねて、紫外線を照射してその樹脂層を硬化させて原版の凹凸模様を複製することができる。
【0071】
反射層42を構成する材質としては、Mg、Al、Ti、Cr、Cu、Zn、Ga、Ge、Se、Rb、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、Au、Pb、若しくは、Bi等の金属、又は、それらの酸化物、若しくは、それらの窒化物を単独で、若しくは、組み合わせ、薄膜として形成する。金属薄膜層を反射層42として用いるときには、これらの中でも、Al、Cr、Ni、Ag、若しくは、Au等が特に好ましい。
【0072】
反射層42を形成するには、真空蒸着法、スパッタリング法、若しくは、イオンプレーティング法等の公知の薄膜形成法によって行う。
【0073】
ヒートシール層46を構成する材質としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン−イソブチルアクリレート共重合体樹脂、ブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニル及びその共重合体樹脂、セルロース誘導体、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、エポキシ樹脂、又は、フェノール樹脂が使用できる。あるいは、SBS(スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー)、SIS(スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー)、SEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー)等の熱可塑性エラストマー、又は、反応ホットメルト性樹脂等を使用してもよい。
【0074】
図13は、本発明の光回折構造による隠しパターンを内包する表示体をラベル32として構成する場合の層構成を示す断面図であり、その作製方法に従ってその構成を説明すると、PET等の透明樹脂フィルムからなる基材44上に回折格子形成層41を塗布し、回折格子形成層41に凹凸レリーフ構造の回折格子原版をエンボスしてその凹凸レリーフ構造の回折格子を複製し、その複製されたレリーフ回折格子面上に反射層42を蒸着することにより反射型の回折格子43を形成し、その回折格子43の反射層42側に粘着層47を塗布し、その粘着層47上にその保護用としてセパレータ(剥離紙)48をラミネートして、図12のような層構成のラベル32を完成する。
【0075】
ここで、基材44、回折格子形成層41、反射層42を構成する材質としては、図12の場合と同様である。
【0076】
粘着層47を構成する接着剤としては、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール(ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等)、シアノアクリレート、ポリビニルアルキルエーテル、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリメタクリル酸メチル、ニトロセルロース、酢酸セルロース、熱可塑性エポキシ、ポリスチレン、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−アクリル酸エチルコポリマー等、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンツイミダゾール、ポリベンゾチアゾール等、あるいは、ゴム系の天然ゴム、再生ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ポリスルフィドゴム、シリコーンゴム、ポリウレタンゴム、ステレオゴム(合成天然ゴム)、エチレンプロピレンゴム、ブロックコポリマーゴム(SBS,SIS,SEBS等)が使用できる。
【0077】
また、セパレータ(剥離紙)48としては、従来公知の紙やフィルム基材に剥離処理を施したものが使用できる。
【0078】
図14は、本発明の光回折構造による隠しパターンを内包する表示体を脆質ラベル33として構成する場合の層構成を示す断面図であり、その作製方法に従ってその構成を説明すると、PET等の透明樹脂フィルムからなる基材44上に脆質層49を塗布し、その脆質層49上に回折格子形成層41を塗布し、回折格子形成層41に凹凸レリーフ構造の回折格子原版をエンボスしてその凹凸レリーフ構造の回折格子を複製し、その複製されたレリーフ回折格子面上に反射層42を蒸着することにより反射型の回折格子43を形成し、その回折格子43の反射層42側に粘着層47を塗布し、その粘着層47上にセパレータ(剥離紙)48をラミネートして、図12のような層構成の脆質ラベル33を完成する。
【0079】
ここで、基材44、回折格子形成層41、反射層42、粘着層47、セパレータ(剥離紙)48を構成する材質としては、図13の場合と同様である。
【0080】
脆質層49を構成する材料としては、図12の場合の剥離層45を構成する樹脂と同じ系列のものが用いられる。
【0081】
図15は、本発明の光回折構造による隠しパターンを内包する表示体をフィルム34として構成する場合の層構成を示す断面図であり、その作製方法に従ってその構成を説明すると、PET等の透明樹脂フィルムからなる基材44上に回折格子形成層41を塗布し、回折格子形成層41に凹凸レリーフ構造の回折格子原版をエンボスしてその凹凸レリーフ構造の回折格子を複製し、その複製されたレリーフ回折格子面上に反射層42を蒸着することにより反射型の回折格子43を形成して、図14のような層構成のフィルム34が完成する。
【0082】
ここで、基材44、回折格子形成層41、反射層42を構成する材質としては、図12〜図14の場合と同様である。
【0083】
ここで、図12〜図15において、回折格子形成層41に凹凸レリーフ構造の回折格子をエンボスするための回折格子原版の作製方法の例を簡単に説明しておく。そのためには、Crメッキされたガラス板を用意し、その上に電子線レジストを塗布し、電子線描画により、回折格子パターンを描画し、その後に電子線レジストを現像することにより、断面矩形波状の凹凸レリーフ構造が得られる。
【0084】
そのような電子線レジストの凹凸レリーフ構造の回折格子パターン上に紫外線硬化性樹脂あるいは熱硬化性樹脂を塗布して紫外線照射あるいは加熱により、その凹凸レリーフ構造を紫外線硬化性樹脂あるいは熱硬化性樹脂に複製することにより、電子線描画の回折格子パターンのネガ版が得られる。そのネガ版から同様に複製してポジ版を得るか、あるいは、このような複製を偶数回繰り返すことにより得られたポジ版を、上記の回折格子形成層41に凹凸レリーフ構造の回折格子をエンボスするための回折格子原版として用いることができる。
【0085】
以上、本発明の光回折構造による隠しパターンを内包する表示体及びそのための判別具をいくつかの実施例に基づいて説明してきたが、本発明はこれら実施例に限定されず種々の変形が可能である。
【0086】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の光回折構造による隠しパターンを内包する表示体によると、光回折構造を含む表示体の表示面を、相互に隣接していて平行で、回折特性の異なる第1直線縞と第2直線縞の縞対と、それら直線縞を構成する直線回折格子との二重構造で構成し、隠しパターンを構成する領域とそれ以外の領域では直線回折格子の構成は同じで、縞対の構成を異なるものとすることにより、目視状態では直線回折格子の領域毎の構成の違いによって通常の表示パターンが観察でき、隠しパターンは判別困難であるが、上記の縞対とモアレ現象を生じる本発明による判別具を重ね合わせることで、今度は通常の表示パターンではなく隠しパターンが判別可能となる。そのため、目視による判別が極めて困難な隠しパターンを含み、偽造防止効果が大きく、デザイン性の高い表示体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による隠しパターンを有する光回折構造を転写した印刷物の一例について説明するための図である。
【図2】本発明において部分表示面中の均一な特性及び構成を有する表示単位領域の基本構成を説明するための図である。
【図3】本発明による第1形態の光回折構造による隠しパターンを含む部分表示面の拡大図である。
【図4】図3の部分表示面の隠しパターンを判別するための判別具の一例の平面図である。
【図5】図3の部分表示面から判別される隠しパターンを示す図である。
【図6】本発明による第2形態の光回折構造による隠しパターンを含む部分表示面の拡大図である。
【図7】図6の部分表示面の隠しパターンを判別するための判別具の一例の平面図である。
【図8】図3の部分表示面の目視状態で観察される表示パターンと、図7の判別具を用いて判別される隠しパターンとを示す図である。
【図9】本発明に基づいて各パターンの周辺に設ける縁取りを説明するための図である。
【図10】判別具に付与する判別パターンの各種の他の形態について説明するための図である。
【図11】平行な直線透明部と直線不透明部との繰り返しパターンからなる判別パターンの幅関係を説明するための図である。
【図12】本発明の光回折構造による隠しパターンを内包する表示体を転写箔として構成する場合の層構成を示す断面図である。
【図13】本発明の光回折構造による隠しパターンを内包する表示体をラベルとして構成する場合の層構成を示す断面図である。
【図14】本発明の光回折構造による隠しパターンを内包する表示体を脆質ラベルとして構成する場合の層構成を示す断面図である。
【図15】本発明の光回折構造による隠しパターンを内包する表示体をフィルムとして構成する場合の層構成を示す断面図である。
【符号の説明】
S…基準線
X、Y、Z…パターン
P…パターン
P’…縁取り
1…隠しパターンを内包する表示体
2…隠しパターンを含む部分表示面
3…その他の部分表示面
5…表示単位領域
6…縞対
1 …第1直線縞
2 …第2直線縞
1 …第1直線回折格子
2 …第2直線回折格子
8…判別具
1 …直線透明部
2 …直線透明部
2 ’…直線着色部
10…印刷物
111 、112 …領域
19…格子
2111、2112、2113、2114…パターンXを構成する領域
2121、2122、2123、2124、2125…パターンYを構成する領域
2131、2132、2133、2134…パターンZを構成する領域
29…網点
31…転写箔
32…ラベル
33…脆質ラベル
34…フィルム
41…回折格子形成層
42…反射層
43…反射型の回折格子
44…基材
45…剥離層
46…ヒートシール層
47…粘着層
48…セパレータ(剥離紙)
49…脆質層

Claims (11)

  1. 光回折構造を含む表示体であって、その表示面は、回折特性が異なり、表示パターンに応じた任意の外形及び内形を持つ複数のパターン領域が並列配置されてなり、各パターン領域は、相互に隣接していて平行で、回折特性の異なる第1直線縞と第2直線縞の縞対の繰り返しにより埋めつくされてなり、前記第1直線縞は第1直線回折格子によって、また、前記第2直線縞は第2直線回折格子によってそれぞれ構成されており、前記表示面に対して設定された基準線に対して、前記第1直線縞と第2直線縞の傾き角を縞対の傾き角α、前記第1直線回折格子の傾き角を第1直線回折格子の傾き角β1 、前記第2直線回折格子の傾き角を第2直線回折格子の傾き角β2 とするとき、前記複数のパターン領域の中の少なくとも1つの隠しパターンを構成するパターン領域の縞対の傾き角αは、それ以外のパターン領域の縞対の傾き角αとは異なるように設定されており、かつ、隠しパターンを構成するパターン領域の第1直線回折格子の傾き角β1 と第2直線回折格子の傾き角β2 とは、そのパターン領域に隣接する隠しパターンを構成するパターン領域以外のパターン領域の第1直線回折格子の傾き角β1 と第2直線回折格子の傾き角β2 とにそれぞれ等しく設定されていることを特徴とする光回折構造による隠しパターンを内包する表示体。
  2. 隠しパターンを構成するパターン領域が孤立した1つ以上のパターン領域からなり、その隠しパターンを構成するパターン領域の第1直線回折格子の傾き角β1 と第2直線回折格子の傾き角β2 とは、それ以外のパターン領域の第1直線回折格子の傾き角β1 と第2直線回折格子の傾き角β2 とにそれぞれ等しく設定されていることを特徴とする請求項1記載の光回折構造による隠しパターンを内包する表示体。
  3. 隠しパターンを構成するパターン領域が相互に隣接する複数のパターン領域を含み、前記隠しパターンを構成する相互に隣接する複数のパターン領域の縞対の傾き角αは同じに設定されていて、前記隠しパターンを構成する相互に隣接する複数のパターン領域に隣接するそれ以外のパターン領域の縞対の傾き角αとは異なるように設定されており、かつ、前記隠しパターンを構成する相互に隣接する複数のパターン領域のそれぞれのパターン領域の第1直線回折格子の傾き角β1 と第2直線回折格子の傾き角β2 とは、そのパターン領域に隣接する前記隠しパターンを構成する相互に隣接する複数のパターン領域以外のパターン領域の第1直線回折格子の傾き角β1 と第2直線回折格子の傾き角β2 とにそれぞれ等しく設定されていることを特徴とする請求項1記載の光回折構造による隠しパターンを内包する表示体。
  4. 相互に隣接して並列配置された複数のパターン領域各々における前記第1直線回折格子と前記第2直線回折格子とは、傾き角が異なるか格子ピッチが異なるかの少なくとも一方を満たすように設定されていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項記載の光回折構造による隠しパターンを内包する表示体。
  5. 相互に隣接して並列配置された複数のパターン領域各々における前記縞対の繰り返しピッチをdとするとき、d≦1/5mmに設定されていることを特徴とする請求項1から4の何れか1項記載の光回折構造による隠しパターンを内包する表示体。
  6. 隠しパターンを構成するパターン領域の前記縞対の傾き角αとそれ以外のパターン領域の縞対の傾き角αとの差が90°±10°の範囲内に設定されていることを特徴とする請求項1から5の何れか1項記載の光回折構造による隠しパターンを内包する表示体。
  7. 前記少なくとも1つの隠しパターンを構成するパターン領域は、そのパターン領域を構成する前記縞対の周期に対して半周期ずれた周期の縞対で縁取りされていることを特徴とする請求項1から6の何れか1項記載の光回折構造による隠しパターンを内包する表示体。
  8. 前記第1直線回折格子と前記第2直線回折格子とは、反射型回折格子からなることを特徴とする請求項1から7の何れか1項記載の光回折構造による隠しパターンを内包する表示体。
  9. 転写箔形態に構成されていることを特徴とする請求項1から8の何れか1項記載の光回折構造による隠しパターンを内包する表示体。
  10. ラベル形態に構成されていることを特徴とする請求項1から8の何れか1項記載の光回折構造による隠しパターンを内包する表示体。
  11. フィルム形態に構成されていることを特徴とする請求項1から8の何れか1項記載の光回折構造による隠しパターンを内包する表示体。
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