JP5504732B2 - 表示体及びラベル付き物品 - Google Patents
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Description
この種の表示体では、複数の溝を形成してなるレリーフ型の回折格子を使用することが一般的である。レリーフ型回折格子は、通常、フォトリソグラフィを利用して製造した原版を母型として、そこから複製することにより得られる。例えば、特許文献1及び2には、回折格子を形成するために、一方の主面に感光性レジストを塗布した平板状の基板をXYステージ上に載置し、コンピュータ制御のもとでステージを移動させながら感光性レジストに電子ビームを照射することにより、感光性レジストをパターン露光することが記載されている。また、非特許文献1には、二光束干渉を利用して回折格子を形成することが記載されている。
次いで、この金属製スタンパを母型として用いて、レリーフ型の回折格子を複製する。即ち、まず、例えば、ポリカーボネート又はポリエステルからなる透明基材上に、熱可塑性樹脂又は光硬化性樹脂を塗布する。次に、塗膜に金属製スタンパを密着させ、この状態で樹脂層に熱又は光を与える。樹脂が硬化した後、硬化した樹脂から金属製スタンパを剥離することにより、レリーフ型回折格子を得る。
一般に、このレリーフ型回折格子は透明である。従って、通常、レリーフ構造を設けた樹脂層上には、蒸着法を用いてアルミニウムなどの金属又は誘電体を単層又は多層に堆積させることにより反射層を形成する。その後、このようにして得られた表示体を、例えば紙又はプラスチックフィルムからなる基材上に接着層又は粘着層を介して貼り付ける。以上のようにして、偽造防止対策を施した印刷物を得る。
しかしながら、偽造防止対策が必要な物品の多くでレリーフ型回折格子を含んだ表示体が用いられるようになった結果、この技術が広く認知され、これに伴い、偽造品の発生も増加する傾向にある。そのため、回折光によって虹色の光を呈することのみを特徴とした表示体を用いて十分な偽造防止効果を達成することが難しくなってきている。
マイクロ文字の大きさとしては、表示体が貼付されている印刷物等の使用者が真偽判定できるように、肉眼での認識がかろうじて可能な300μmから1000μm程度の大きさのものから、ルーペや光学顕微鏡等での拡大観察によって真偽判定を行うことを想定した、肉眼では認識が不可能な300μm以下の大きさのものまで様々である。
また、マイクロ文字の構造としては、文字の内部と外部で構造の高さが異なっているのもの(特許文献3参照)や、文字の内部にレリーフ型回折格子を構成したもの等がある。
文字の内外で構造の高さが異なっているものは、加工が比較的容易であり、光学的な作用もほとんど生じないため、肉眼で観察した際の隠蔽効果は高いが、顕微鏡などで拡大観察した際にも文字の内部と外部の境界が鮮明ではないので、文字情報の読み取りが困難であったり、真偽判定が難しくなる場合がある。
また、偽造防止対策が必要な物品の多くでマイクロ文字を含む表示体が用いられるようになった結果、この技術が広く認知され、これに伴い、偽造品の発生も増加する傾向にある。そのため、このような表示体では十分な偽造防止効果を達成することが難しくなってきている。
請求項3の発明は、請求項1または2記載の表示体において、前記凹部の深さまたは前記凸部の高さが0.5μm以上2μm以下であることを特徴とする。
レリーフ構造形成層11の低反射性の第1界面部IF1は、レリーフ構造形成層11の一方の面に、複数の凸部PRを可視光の最短波長未満の平均中心間距離でマトリクス状に配列することで形成される。さらに、レリーフ構造形成層11は、第1界面部IF1と異なる構造または反射特性の第2界面部IF2を含む。
レリーフ構造形成層11の材料としては、例えば、ポリカーボネート及びポリエステルなどの光透過性を有する樹脂を使用することができる。例えば、熱可塑性樹脂又は光硬化性樹脂を使用すると、原版を用いた転写により、一方の面に凸部が設けられたレリーフ構造形成層11を形成することができる。
図2に示すレリーフ構造形成層11は、例えば、光透過性基材111上に熱可塑性樹脂または光硬化性樹脂を塗布し、この塗膜に原版を押し当てながら樹脂を硬化させることにより得ることができる。
図3は、図1及び図2に示す表示体10の低反射性の第1界面部IF1に採用可能な構造の一例を示すもので、第1界面部IF1は、凸部PRが格子状に配置されている低反射界面部を表している。また、図4は、図3に示す第1界面部IF1を平面視した状態を表している。
また、図3に示す低反射性の第1界面部IF1において、凸部PRは格子状に配列されていることから、周期性を伴うことで所謂回折格子と同様の機能を有する。低反射性の第1界面部IF1は凸部PRが形成している周期構造によって、溝(即ち、格子線)を破線で示すように配置してなる回折格子とほぼ同様に機能する(図4参照)。
回折格子に照明光源を用いて照明光を照射すると、回折格子は、入射光である照明光の進行方向に対して特定の方向に強い回折光を射出する。
m次回折光(m=0、±1、±2、・・・)の射出角βは、回折格子の格子線に垂直な面内で光が進行する場合、下記等式(1)から算出することができる。
d=mλ/(sinα−sinβ)・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
この等式(1)において、dは回折格子の格子定数を表し、mは回折次数を表し、λは入射光及び回折光の波長を表している。また、αは、0次回折光、即ち、透過光又は正反射光の射出角を表している。換言すれば、αの絶対値は照明光の入射角と等しく、反射型回折格子の場合には、照明光の入射方向と正反射光の射出方向とは、回折格子が設けられた界面の法線に関して対称である。
また、法線方向から回折格子を観察する場合、表示に寄与する回折光は射出角βが0°の回折光のみである。
従って、格子定数dが波長λと比較してより大きい場合、上記等式を満足する波長λ及び入射角αが存在する。即ち、この場合、観察者は、上記等式を満足する波長λを有する回折光を観察することができる。
これに対し、格子定数dが波長λと比較してより小さい場合、上記等式を満足する入射角αは存在しない。従って、この場合、観察者は、回折光を観察することができない。
可視光の最短波長未満とは具体的には、例えば460nm未満程度の長さであるが、それを超える長さ、例えば500nm程度の平均中心間距離で構成された凸部から成る低反射性の第1界面部IF1であっても、法線方向に射出される回折光は極めて限定的であり、その光量はわずかである。
また、各凸部PRは、微細な構造でありながら、テーパ形状を有している。そのため、このような構造を採用した場合、凸部PRの中心間距離が可視光の最短波長と比較してより短ければ、低反射性の第1界面部IF1の領域は、表示体10の厚さ方向に連続的に変化した屈折率を有していると見なすことができる。そのため、どの角度から観察しても、第1界面部IF1の正反射光の反射率は小さい。さらに、図3に示すような複数の凹部が格子状に配置されている格子状の低反射性の第1界面部IF1を用いた場合であっても、法線方向に回折光を射出することはほとんどない。
また、本実施の形態における低反射性の第1界面部IF1では、複数の凸部の高さが大きい方がより黒い表示が可能となり、高さが小さくなるのに伴って輝度が上昇し、暗灰色に知覚されるようになる。典型的には高さは中心間距離の1/2以上とすることが望ましい。具体的には、例えば中心間距離が380nmであった場合、高さを190nm以上とすることで暗灰色の表示が可能となり、380nm以上の高さとすることでより黒い表示が可能となる。中心間距離と比較してはるかに高い構造にすると十分な黒さが得られ、且つ、高精度な製造技術が必要となることから、より一層偽造防止効果を向上させることができる。
なお、ここで、本実施の形態における凸部の高さとは、レリーフ構造形成層11と反射層13との界面から凸部の頂部までの高低差を意味する。
図5に示す例では、凸部PRの中心間距離を400nmと仮定すると、「GENUINE」の文字高さは2μm程度であり、非常に小さな文字を形成できることになる。
これに対して、本発明により実現される微小隠蔽情報は数μmを下回る文字高さでの表示が可能であり、従来のマイクロ文字と比較して情報の隠蔽効果が極めて高い。本発明により実現される微小隠蔽情報はあらかじめそれが形成されている位置を把握している正規の製造者でなければ発見、確認が困難であり、また、低反射性の第1界面部IF1を観察するためには高倍率での観察が可能な光学顕微鏡等の専用の機器が必要となる。また、仮に微小隠蔽情報が読み取られたとしても、その偽造は極めて困難である。
このように大きさが異なる凸部SRが微小隠蔽情報を表現するように配置されることでも、低反射性の第1界面部IF1を観察した際にその情報を読み取ることが可能となる。
なお、テーパ形状は、原版からの複製品のレリーフ構造形成層11の取り外しを容易にし、生産性を向上する効果をも有する。
第2界面部IF2は、例えば回折格子や光散乱構造を有する面から構成され、平坦面であってもよい。表示体に複数の第2界面部IF2を設け、それぞれに回折格子形成面や光散乱構造形成面や平坦面等を設けることで、それらを画像構成要素として、表示画像を形成する。第2界面部IF2に回折格子形成面を設けることで回折格子による分光によって虹色に輝く光学効果が得ることができ、また、光散乱構造形成面を設けた場合には、光の散乱効果によって白色または白濁色の表示が可能となる。
平坦面とした場合には特別な光学効果は得ることができないが、他の光学効果を有する他の界面部との差によって画像を構成することができる。これらの構造を設けた第2界面部IF2と、第1界面部IF1を組み合わせることによって肉眼で観察することができる画像や意匠を表示することができる。
このような方法で露光を行った後、現像処理を施した基板は図8のように露光部分が凹部NRとなる構造が得られる。この基板から電鋳等の転写成形手段により、金属製の型を作製することで、複数の凸部PRから成る低反射性の第1界面部IF1を含むレリーフ構造成層を有する原版を得ることができる。
図7及び図9に示した微細凹凸構造を得る方法では、ビームが照射された部分の感光性レジストが現像後に溶解する、所謂ポジ型レジストの特性について例を示したが、ビームが照射されたところのみが現像後に溶解せずに残留する、所謂ネガ型の感光性レジストもある。この場合は図7及び図9でビームを照射しなかった部分にビームを照射することでポジ型レジストとは凹凸が逆転した構造を得ることが可能である。
ここで、このような加工方法で微細凹凸形状を作製する際に、任意にビームの走査の有無を制御することで、図5に示したように前記低反射性界面部内において、凸部PRが部分的に存在していない平坦部を設けることができ、文字や数字、記号、2次元バーコード等の微小隠蔽情報を表現できるようになる。
また、ビームの照射エネルギー量や照射時間を任意に調整することで、凸部PRの平面視形状の大きさや高さ、または凹部NPの平面視形状の大きさや深さを変えることができ、凸部又は凹部の形状の変化によって文字や数字、記号、2次元バーコード等の微小隠蔽情報を表現できるようになる。
また、反射層13は、複数の界面部の一部又は全部に被覆させてもよく、この反射層13の分布を用いて、例えば、反射層の存在する領域の輪郭を用いて、図柄を表現することもできる。さらに、反射層13は、レリーフ構造形成層11全面に被膜させてもよい。
また、本発明における接着剤層は、例えば、反射層を被覆するように設ける。表示体がレリーフ構造形成層及び反射層の双方を含んでいる場合、通常、反射層の表面の形状は、レリーフ構造形成層と反射層との界面の形状とほぼ等しい。接着剤層を設けることで、反射層表面の露出を防止することができるため、先の界面の凸部又は凹部の、偽造を目的とした複製を困難とすることができる。
また、レリーフ構造形成層側を背面側とし且つ反射層側を前面側とする場合、接着層は、レリーフ構造形成層上に形成する。
レリーフ構造形成層側を前面側とし、反射層側を背面側とする場合、複数の界面部が設けられていないレリーフ構造形成層上を樹脂層によって被覆することで、レリーフ構造形成層の損傷を抑制することができる。また、レリーフ構造形成層側を背面側とし、反射層側を前面側とする場合、反射層を樹脂層によって被覆することで、反射層の損傷を抑制できるのに加え、その表面の凸部又は凹部の偽造を目的とした複製を困難とすることができる。
また、本発明における表示体は、例えば、偽造防止用ラベルとして粘着材等を介して印刷物や物品に貼り付けて使用することができる。表示体は微細な凹凸構造により光反射防止機能を備えた微小隠蔽画像を有することから偽造又は模造が困難であり、このラベルを物品に支持させた場合、真正品であるこのラベル付き物品の偽造又は模造も困難である。
図11および図12において、ラベル付き物品の一例として、印刷物100を描いている。この印刷物100は、ID(identification)カードであって、基材50を含んでいる。基材50は、例えば、プラスチックからなる。基材50の一方の面には凹部30aが設けられており、この凹部30aにICチップ30が嵌め込まれている。ICチップ30の表面には電極が設けられており、これら電極を介してICへの情報の書き込み及び/又はICに記録された情報の読出しが可能である。
また、基材50上には、印刷層40が形成されている。基材50の印刷層40が形成された面には、上述した表示体10が例えば粘着層を介して固定されている。表示体10は、例えば、粘着ステッカとして又は転写箔として準備しておき、これを印刷層40に貼りつけることにより、基材50に固定する。
また、図11及び図12に示す印刷物100では、表示体10を基材50に貼り付けているが、表示体10は、他の方法で基材に支持させることができる。例えば、基材として紙を使用した場合、表示体10を紙に漉き込み、表示体10に対応した位置で紙を開口させてもよい。或いは、基材として光透過性の材料を使用する場合、その内部に表示体10を埋め込んでもよく、基材の裏面、即ち表示面とは反対側の面に表示体10を固定してもよい。
また、ラベル付き物品は、印刷物でなくてもよい。すなわち、印刷層を含んでいない物品に表示体10を支持させてもよい。例えば、表示体10は、美術品などの高級品に支持させてもよい。
表示体10は、偽造防止以外の目的で使用してもよい。例えば、表示体10は、玩具、学習教材又は装飾品等としても利用することができる。
Claims (5)
- 光透過性のレリーフ構造形成層を備え、
前記レリーフ構造形成層は、光透過性基材と、前記光透過性基材の一方の面に積層された光透過性樹脂層と、前記光透過性樹脂層の前記光透過性基材と反対の面に積層された反射層とからなり、
前記光透過性樹脂層と前記反射層との界面に、低反射性の第1界面部と、該第1界面部と異なる反射特性の第2界面部がそれぞれ設けられ、
前記第1界面部に隠蔽情報表示部が形成され、
前記隠蔽情報表示部は、前記光透過性樹脂層の前記光透過性基材と反対の面に凹部及び凸部の何れか一方または両方を可視光の最短波長未満のピッチで二次元方向に配列して形成することで構成され、かつ前記隠蔽情報表示部に表示される隠蔽情報は、該隠蔽情報パターンに合わせて前記第1界面部内における前記凹部及び凸部の何れか一方または両方を部分的に除去し、もしくは前記第1界面部内における前記凹部及び凸部の何れか一方または両方の大きさを部分的に変えることで形成され、
前記第2界面部は、表示画像を形成する回折格子形成面もしくは光散乱効果を生じさせる光散乱構造形成面の何れかで構成されている、
ことを特徴とする表示体。 - 前記凹部同士または凸部同士または凹部と凸部のピッチが200nm以上460nm未満であることを特徴とする請求項1記載の表示体。
- 前記凹部の深さまたは前記凸部の高さが0.5μm以上2μm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の表示体。
- 前記凹部及び凸部の平面視形状の大きさ及び前記凹部の深さまたは前記凸部の高さの少なくとも1つが異なることを特徴とする請求項1乃至3に何れか1項記載の表示体。
- 基材と、
前記基材の表面の少なくとも一部の領域に設けられた請求項1乃至4に何れか1項記載の表示体を備える、
ことを特徴とするラベル付き物品。
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