上述した動力出力装置では、バッテリに故障が生じたときにはリレーをオフしてバッテリを用いずに駆動軸に動力を出力することができるが、装置が備える補機の電力消費や指令値に対して発電機や電動機から出力されるトルクのズレなどから発電機と電動機との電力バランスが崩れると、発電機や電動機のインバータの電力母線間に接続されたコンデンサなどの蓄電回路に高電圧が作用したり蓄電回路の電圧が低下し過ぎて発電機や電動機を駆動することができなくなる場合が生じる。
本発明の動力出力装置およびこれを搭載する車両並びに動力出力装置の制御方法は、二次電池などの蓄電手段が遮断されたときでも駆動回路の電力母線間に接続された蓄電回路の電圧を適正な電圧に保持して電力動力入出力手段や電動機を適正に駆動できるようにすることを目的の一つとする。また、本発明の動力出力装置およびこれを搭載する車両並びに動力出力装置の制御方法は、二次電池などの蓄電手段が遮断されたときでも運転者の駆動要求に対応することを目的の一つとする。
本発明の動力出力装置およびこれを搭載する車両並びに動力出力装置の制御方法は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
本発明の動力出力装置は、
駆動軸に動力を出力する動力出力装置であって、
内燃機関と、
該内燃機関の出力軸と前記駆動軸とに接続され、電力と動力の入出力により該内燃機関からの動力の少なくとも一部を該駆動軸に出力可能な電力動力入出力手段と、
前記駆動軸に動力を入出力可能な電動機と、
充放電可能な蓄電手段と、
電力母線を共通とした前記電力動力入出力手段を駆動する駆動回路と前記電動機を駆動する駆動回路とに前記蓄電手段を遮断可能に接続する接続遮断手段と、
前記電力母線間に接続された蓄電回路と、
前記接続遮断手段により前記駆動回路から前記蓄電手段が遮断されたとき、前記蓄電回路の電圧が所定の目標電圧に近づくと共に運転者による駆動要求に基づく駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記電力動力入出力手段と前記電動機とを駆動制御する接続遮断時制御手段と
を備えることを要旨とする。
この本発明の動力出力装置では、電力母線を共通とした電力動力入出力手段(内燃機関の出力軸と駆動軸とに接続され、電力と動力の入出力により内燃機関からの動力の少なくとも一部を駆動軸に出力可能な電力動力入出力手段)を駆動する駆動回路と電動機(駆動軸に動力を入出力可能な電動機)を駆動する駆動回路から蓄電手段が遮断されたとき、電力母線間に接続された蓄電回路の電圧が所定の目標電圧に近づくと共に運転者による駆動要求に基づく駆動力が駆動軸に出力されるよう内燃機関と電力動力入出力手段と電動機とを駆動制御する。したがって、蓄電手段が遮断されたときでも駆動回路の電力母線間に接続された蓄電回路の電圧を適正な電圧に保持するから、電力動力入出力手段と電動機とを適正に駆動することができる。この結果、運転者による駆動要求に対応することができる。
こうした本発明の動力出力装置において、前記蓄電回路の電圧を検出する電圧検出手段を備え、前記接続遮断時制御手段は、前記電圧検出手段により検出された電圧に基づいて前記電力動力入出力手段および前記電動機から駆動力の入出力が許容される駆動力許容範囲を設定し、該設定した駆動力許容範囲内で前記駆動要求に基づく駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記電力動力入出力手段と前記電動機とを駆動制御する手段であるものとすることもできる。この態様の本発明の動力出力装置において、前記接続遮断時制御手段は、前記電圧検出手段により検出された電圧と前記目標電圧との偏差が打ち消される方向に前記駆動力許容範囲を設定して制御する手段であるものとすることもできるし、前記接続遮断時制御手段は、前記目標電圧に向けて時間の経過と共に徐々に変化するよう制御用目標電圧を設定し、該設定した制御用目標電圧と前記電圧検出手段により検出された電圧との偏差が打ち消されるよう前記駆動力許容範囲を設定して制御する手段であるものとすることもできる。後者の場合、前記接続遮断時制御手段は、所定時間毎に所定値ずつ前記制御用目標電圧を変更して制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、電力動力入出力手段や電動機から出力される駆動力の急変を抑制することができる。更にこの場合、前記接続遮断時制御手段は、前記制御用目標電圧を増加させる際には所定時間毎に第1所定値ずつ増加させ、前記制御用目標電圧を減少させる際には所定時間毎に前記第1所定値よりも小さい第2所定値ずつ減少させて制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、蓄電回路の電圧を上昇させる際にはその上昇を迅速に行なうことができると共に蓄電回路の電圧を下降させる際にはその下降を緩やかに行なうことができる。
また、本発明の動力出力装置において、前記接続遮断時制御手段は、前記内燃機関が所定回転数で運転されるようフィードバック制御すると共に前記電力動力入出力手段から入出力する駆動力の制限を伴って前記駆動要求に基づく駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記電力動力入出力手段と前記電動機とを制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、内燃機関の応答遅れに起因して電力動力入出力手段からの駆動力の入出力により内燃機関の運転が不安定な状態となるのを抑制することができる。この態様の本発明の動力出力装置において、前記接続遮断時制御手段は、前記電力動力入出力手段から入出力する駆動力を所定の上下限駆動力で制限して該電力動力入出力手段を制御する手段であるものとすることもできる。これらの態様の本発明の動力出力装置において、前記接続遮断時制御手段は、なまし処理を用いて前記電力動力入出力手段から入出力する駆動力を設定して該電力動力入出力手段を制御する手段であるものとすることもできる。
さらに、本発明の動力出力装置において、前記蓄電回路の電圧を検出する電圧検出手段を備え、前記接続遮断時制御手段は、前記電圧検出手段により検出された電圧が閾値未満のときには前記駆動軸への動力の出力を禁止する手段であるものとすることもできる。こうすれば、蓄電回路の電圧が低下したときに電力動力入出力手段や電動機が駆動されるのを回避することができる。この態様の本発明の動力出力装置において、前記電力動力入出力手段は、回転軸を有し、該回転軸の回転に伴って逆起電力が発生する手段であり、前記接続遮断時制御手段は、前記電力動力入出力手段の回転軸の回転数に基づいて前記閾値を変更する手段であるものとすることもできる。この場合、前記接続遮断時制御手段は、前記電力動力入出力手段の回転軸の回転数が小さいほど小さくなる傾向に前記閾値を変更する手段であるものとすることもできる。こうすれば、電力動力入出力手段や電動機を駆動することができなくなる蓄電回路の電圧をより正確に判定することができる。
本発明の動力出力装置において、前記電力動力入出力手段は、前記内燃機関の出力軸と前記車軸と回転軸との3軸に接続され、該3軸のうちのいずれか2軸に入出力された動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、前記回転軸に動力を入出力可能な発電機と、を備える手段であるものとすることもできるし、前記電力動力入出力手段は、前記内燃機関の出力軸に連結された第1の回転子と前記車軸に連結された第2の回転子とを有し、該第1の回転子と該第2の回転子との相対的な回転により回転する対回転子電動機であるものとすることもできる。
本発明の車両は、
上述した各態様のいずれかの本発明の動力出力装置、即ち、基本的には、駆動軸に動力を出力する動力出力装置であって、内燃機関と、該内燃機関の出力軸と前記駆動軸とに接続され電力と動力の入出力により該内燃機関からの動力の少なくとも一部を該駆動軸に出力可能な電力動力入出力手段と、前記駆動軸に動力を入出力可能な電動機と、充放電可能な蓄電手段と、電力母線を共通とした前記電力動力入出力手段を駆動する駆動回路と前記電動機を駆動する駆動回路とに前記蓄電手段を遮断可能に接続する接続遮断手段と、前記電力母線間に接続された蓄電回路と、前記接続遮断手段により前記駆動回路から前記蓄電手段が遮断されたとき前記蓄電回路の電圧が所定の目標電圧に近づくと共に運転者による駆動要求に基づく駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記電力動力入出力手段と前記電動機とを駆動制御する接続遮断時制御手段とを備える
ことを要旨とする。
この本発明の車両では、上述した各態様のいずれかの本発明の動力出力装置を搭載するから、本発明の動力出力装置が奏する効果と同様の効果、例えば、蓄電手段が遮断されたときでも駆動回路の電力母線間に接続された蓄電回路の電圧を適正な電圧に保持して電力動力入出力手段と電動機とを適正に駆動することができる効果や運転者による駆動要求に対応することができる効果などを奏することができる。
本発明の動力出力装置の制御方法は、
内燃機関と、該内燃機関の出力軸と駆動軸とに接続され電力と動力の入出力により該内燃機関からの動力の少なくとも一部を該駆動軸に出力可能な電力動力入出力手段と、前記駆動軸に動力を入出力可能な電動機と、充放電可能な蓄電手段と、電力母線を共通とした前記電力動力入出力手段を駆動する駆動回路と前記電動機を駆動する駆動回路とに前記蓄電手段を遮断可能に接続する接続遮断手段と、前記電力母線間に接続された蓄電回路と、を備える動力出力装置の制御方法であって、
前記接続遮断手段により前記駆動回路から前記蓄電手段が遮断されたとき、前記蓄電回路の電圧が所定の目標電圧に近づくと共に運転者による駆動要求に基づく駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記電力動力入出力手段と前記電動機とを駆動制御することを特徴とする。
この本発明の動力出力装置の制御方法によれば、電力母線を共通とした電力動力入出力手段(内燃機関の出力軸と駆動軸とに接続され、電力と動力の入出力により内燃機関からの動力の少なくとも一部を駆動軸に出力可能な電力動力入出力手段)を駆動する駆動回路と電動機(駆動軸に動力を入出力可能な電動機)を駆動する駆動回路から蓄電手段が遮断されたとき、電力母線間に接続された蓄電回路の電圧が所定の目標電圧に近づくと共に運転者による駆動要求に基づく駆動力が駆動軸に出力されるよう内燃機関と電力動力入出力手段と電動機とを駆動制御する。したがって、蓄電手段が遮断されたときでも駆動回路の電力母線間に接続された蓄電回路の電圧を適正な電圧に保持するから、電力動力入出力手段と電動機とを適正に駆動することができる。この結果、運転者による駆動要求に対応することができる。
こうした本発明の動力出力装置の制御方法において、 前記蓄電回路の現在の電圧に基づいて前記電力動力入出力手段および前記電動機から駆動力の入出力が許容される駆動力許容範囲を設定し、該設定した駆動力許容範囲内で前記駆動要求に基づく駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記電力動力入出力手段と前記電動機とを駆動制御するものとすることもできる。この態様の本発明の動力出力装置の制御方法において、前記蓄電回路の現在の電圧と前記目標電圧との偏差が打ち消される方向に前記駆動力許容範囲を設定して制御するものとすることもできる。
図1は本発明の一実施例である動力出力装置を搭載したハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図であり、図2はモータMG1,MG2を含む電機駆動系の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図1に示すように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに減速ギヤ35を介して接続されたモータMG2と、直流電流を交流電流に変換してモータMG1,MG2に供給可能なインバータ41,42と、バッテリ50からの電力をその電圧を変換してインバータ41,42に供給可能な昇圧回路55と、バッテリ50と昇圧回路66とに介在するシステムメインリレー56と、動力出力装置全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。
エンジン22は、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関であり、エンジン22の運転状態を検出する各種センサから信号を入力するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により燃料噴射制御や点火制御,吸入空気量調節制御などの運転制御を受けている。エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構30は、キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されており、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構60およびデファレンシャルギヤ62を介して、最終的には車両の駆動輪63a,63bに出力される。
モータMG1およびモータMG2は、いずれも外表面に永久磁石が貼り付けられたロータと三相コイルが巻回されたステータとを備える周知の同期発電電動機として構成されている。インバータ41,42は、6つのトランジスタT11〜T16,T21〜26とトランジスタT11〜T16,T21〜T26に逆方向に並列接続された6つのダイオードD11〜D16,D21〜D26とにより構成されている。トランジスタT11〜T16,T21〜T26は、それぞれインバータ41,42が電力ライン54として共用する正極母線54aと負極母線54bとに対してソース側とシンク側になるよう2個ずつペアで配置されており、対となるトランジスタ同士の接続点の各々にモータMG1,MG2の三相コイル(U相,V相,W相)の各々が接続されている。したがって、正極母線14aと負極母線14bとの間に電圧が作用している状態で対をなすトランジスタT11〜T16,T21〜T26のオン時間の割合を制御することにより三相コイルに回転磁界を形成でき、モータMG1,MG2を回転駆動することができる。インバータ41,42は、正極母線54aと負極母線54bとを共用しているから、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータに供給することができる。正極母線54aと負極母線54bとには平滑用のコンデンサ57が接続されている。モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
昇圧回路55は、図2に示すように、2つのトランジスタT31,T32とトランジスタT31,T32に逆方向に並列接続された2つのダイオードD31,D32とリアクトルLとにより構成されている。2つのトランジスタT31,T32は、それぞれインバータ41,42の正極母線54aと負極母線54bとに接続されており、その接続点にリアクトルLが接続されている。また、リアクトルLと負極母線54bとにはそれぞれバッテリ50の正極端子と負極端子とが接続されている。したがって、トランジスタT31,T32をオンオフ制御することによりバッテリ50の直流電力をその電圧を昇圧してインバータ41,42に供給したり正極母線54aと負極母線54bとに作用している直流電圧を降圧してバッテリ50を充電したりすることができる。なお、リアクトルLと負極母線54bとには平滑用のコンデンサ57が接続されると共にDC/DCコンバータ66を介して補機68などの低圧系が接続されている。
バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば,バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、バッテリECU52では、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC)も演算している。
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、コンデンサ57の端子間に取り付けられた電圧センサ58からのコンデンサ電圧Vcやイグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。また、ハイブリッド用電子制御ユニット70からは、システムメインリレー56への駆動信号や昇圧回路55のスイッチング素子へのスイッチング制御信号,DC/DCコンバータ66のスイッチング素子へのスイッチング制御信号などが出力ポートを介して出力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特に、バッテリ50に異常が生じるなどしてシステムメインリレー56をオフしてインバータ41,42からバッテリ50を遮断した状態で走行する際の動作について説明する。図3は、ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行されるバッテリ遮断時制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、インバータ41,42からバッテリ50が遮断されたときに所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。
バッテリ遮断時制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2,エンジン22の回転数Ne,入出力制限Win,Wout,電圧センサ58からのコンデンサ電圧Vc,コンデンサ57の制御用目標電圧Vc*などの制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ43,44により検出されるモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいて計算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。入出力制限Win,Woutは、通常はバッテリ50から入出力することができる電力の上下限値を定めるものであるが、バッテリ50が遮断されている状態を考えているから、いずれも値0に設定されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。なお、入出力制限Win,Woutは、コンデンサ57の容量の範囲内で若干の幅を持たせるものとしてもよい。制御用目標電圧Vc*は、制御用目標電圧設定処理により設定されRAM76の所定領域に書き込まれたものを読み込むことにより入力するものとした。制御用目標電圧設定処理については後述する。
こうしてデータを入力すると、入力したアクセル開度Accと車速Vとに基づいて車両に要求されるトルクとして駆動輪63a,63bに連結された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*を設定する(ステップS110)。要求トルクTr*は、実施例では、アクセル開度Accと車速Vと要求トルクTr*との関係を予め定めて要求トルク設定用マップとしてROM74に記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられると記憶したマップから対応する要求トルクTr*を導出して設定するものとした。図4に要求トルク設定用マップの一例を示す。
続いて、エンジン22の目標回転数Ne*と現在の回転数Neとに基づいて次式(1)によりエンジン22の目標トルクTe*を設定する(ステップS120)。ここで、エンジン22の目標回転数Ne*は、バッテリ50を遮断した状態で走行する際にコンデンサ57に作用させるべき電圧などを考慮して例えば2000rpmなどのように定めることができる。式(1)は、エンジン22を目標回転数Ne*で回転させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(1)中、「k1」は比例項のゲインを示し、「k2」は積分項のゲインを示す。
Te*=k1(Ne-Ne*)+k2 ∫(Ne-Ne*)dt (1)
次に、ステップS100で入力したコンデンサ57の制御用目標電圧Vc*と現在のコンデンサ電圧Vcとに基づいて次式(2)により入出力制限Win,Woutの補正値Wsetを設定すると共に(ステップS130)、設定した補正値WsetをステップS100で入力した入出力制限Win,Woutに加えたものをコンデンサ57から入出力してもよい電力としての入出力許容制限Winf,Woutfに設定する(ステップS140)。ここで、式(2)は、コンデンサ電圧Vcを制御用目標電圧Vc*に一致させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(2)中、「k3」は比例項のゲインを示し、「k4」は積分項のゲインを示す。実施例では、入出力制限Win,Woutにいずれも値0を設定しているから、入出力許容制限Winf,Woutfにはいずれも補正値Wsetに相当する同一の値が設定されることになる。
Wset=k3(Vc-Vc*)+k4∫(Vc-Vc*)dt (2)
入出力許容制限Winf,Woutfを設定すると、次式(3)および次式(4)を満たすモータMG1から出力してもよいトルクの上下限としての上下限トルクTm1min1,Tm1max1を設定すると共に(ステップS150)、この式(4)と次式(5)とを満たすモータMG1から出力すべき仮モータトルクTm1tmpを設定する(ステップS160)。ここで、式(3)は、モータMG1やモータMG2から駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるトルクの総和が下限トルクTrminから上限トルクTrmaxの範囲内となる関係であり、式(4)は、モータMG1とモータMG2とにより入出力される電力の総和が入出力許容制限Winf,Woutfの範囲内(実施例では、入出力制限Win,Woutを値0としたから補正値Wsetに相当する同一の値)となる関係であり、式(5)は、モータMG1やモータMG2からリングギヤ軸32aに出力されるトルクの総和が要求トルクTr*となる関係である。なお、上下限トルクTrmin,Trmaxは、バッテリ50がインバータ41,42から遮断された状態で走行する際にリングギヤ軸32aに入出力してもよいトルクの上限値および下限値として予め定められている。図5にモータMG1の上下限トルクTm1min1,Tm1max1を示す。図示するように、モータMG1の上下限トルクTm1min1,Tm1max1は、図中矢印で示した範囲内の仮モータトルクTm1tmpの下限値および上限値として求めることができる。また、仮モータトルクTm1tmpは、図示するように、式(4)の関係を満たすラインと式(5)の関係を満たすラインとの交点におけるトルクとして求めることができる。バッテリ50を遮断した状態で走行する際の動力分配統合機構30の各回転要素の回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図を図6に示す。図中、左のS軸はサンギヤ31の回転数を示し、C軸はキャリア34の回転数を示し、R軸はリングギヤ32の回転数を示す。R軸上の二つの太線矢印はエンジン22を目標回転数Ne*でフィードバック制御しているときにモータMG1から出力されるトルクが駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるトルクと、モータMG2から減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに出力されるトルクとを示す。上述した式(3)の関係や式(5)の関係はこの共線図を用いて容易に導き出すことができる。
Trmin≦-Tm1tmp/ρ+Tm2tmp・Gr≦Trmax (3)
Winf≦Tm1tmp・Nm1+Tm2tmp・Nm2≦Woutf (4)
-Tm1tmp/ρ+Tm2tmp・Gr=Tr* (5)
モータMG1の上下限トルクTm1min1,Tm1max1と仮モータトルクTm1tmpとを設定すると、設定した仮モータトルクTm1tmpを上下限トルクTm1min1,Tm1max1と予め定められている上下限トルクTm1min2,Tm1max2とで制限したトルクとしてモータMG1のトルク指令Tm1*を設定し(ステップS170)、設定したモータMG1のトルク指令Tm1*を時定数τをもってなまし処理を施す(ステップS180)。ここで、上下限トルクTm1min2,Tm1max2や時定数τは、モータMG1から出力するトルクが過大となったり急変したりすることによってエンジン22が吹き上がるなどの不安定な運転状態となるのを抑制するためのものであり、モータMG1から出力されるトルクに対してエンジン22を目標回転数Ne*でフィードバック制御する際の応答遅れを考慮して定めるものとした。
モータMG1のトルク指令Tm1*を設定すると、入出力許容制限Winf,WoutfとモータMG1のトルク指令Tm1*に現在の回転数Nm1を乗じて得られるモータMG1の消費電力(発電電力)との偏差をモータMG2の現在の回転数Nm2で割ることによりモータMG2から出力してもよいトルクの上下限としてのトルク制限Tm2min,Tm2maxを次式(6)および式(7)により計算すると共に(ステップS190)、要求トルクTr*とトルク指令Tm1*と動力分配統合機構30のギヤ比ρを用いてモータMG2から出力すべきトルクとしての仮モータトルクTm2tmpを式(8)により計算し(ステップS200)、計算したトルク制限Tm2min,Tm2maxで仮モータトルクTm2tmpを制限した値としてモータMG2のトルク指令Tm2*を設定する(ステップS210)。このようにモータMG2のトルク指令Tm2*を設定することにより、駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力する要求トルクTr*を、バッテリ50の入出力許容制限Winf,Woutfの範囲内で制限したトルクとして設定することができる。実施例では、前述したように入出力許容制限Winf,Woutfにはいずれも補正値Wsetに相当する同一の値が設定されることから、トルク制限Tm2min,Tm2maxは同一のトルクとして計算され、この計算されたトルクがそのままモータMG2のトルク指令Tm2*に設定されることになる。なお、式(8)は、前述した図6の共線図から容易に導き出すことができる。
Tm2min=(Winf-Tm1*・Nm1)/Nm2 (6)
Tm2max=(Woutf-Tm1*・Nm1)/Nm2 (7)
Tm2tmp=(Tr*+Tm1*/ρ)/Gr (8)
こうしてエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定すると、エンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*についてはエンジンECU24に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40にそれぞれ送信して(ステップS220)、駆動制御ルーチンを終了する。目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、エンジン22が目標回転数Ne*で運転されるようにエンジン22における燃料噴射制御や点火制御などの制御を行なう。また、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。
次に、図3のバッテリ遮断時制御ルーチンのステップS100で入力される制御用目標電圧Vc*を設定する処理について説明する。図7は、バッテリ50がインバータ41,42が遮断されたときにバッテリ遮断時制御ルーチンと並行してハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される制御用目標電圧設定処理の一例を示すフローチャートである。制御用目標電圧設定処理が実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、コンデンサ57の目標電圧Vtagを設定する処理を実行する(ステップS300)。この目標電圧Vtagは、コンデンサ57の電圧がモータMG1やモータMG2から入出力することができるトルクの領域を定めることから、インバータ41,42からバッテリ50が遮断された状態で走行するために必要なモータMG1やモータMG2のトルクの領域を考慮して定めた所定値(例えば通常時には昇圧回路55によって最大650Vまで昇圧して動作可能なシステムにおいて450V)を設定するものとした。続いて、電圧センサ58からのコンデンサ電圧Vcを入力して(ステップS310)、入力したコンデンサ電圧Vcが設定した目標電圧Vtagを中心とした所定範囲内(値Vtag−αから値Vtag+αまでの範囲内)にあるか否かを判定し(ステップS320)、コンデンサ電圧Vcが目標電圧Vtagを中心とした所定範囲内にあると判定されると、目標電圧Vtagを制御用目標電圧Vc*に設定して(ステップS430)、処理を終了する。制御用目標電圧Vc*が設定されると設定された制御用目標電圧Vc*がRAM76の所定領域に書き込まれ、以降、図3のバッテリ遮断時制御ルーチンの処理に用いられることになる。
ステップS320でコンデンサ電圧Vcが目標電圧Vtagを中心とした所定範囲(値Vtag−α)よりも小さいと判定されると、フラグF1の値を調べる(ステップS330)。ここで、フラグF1は、本処理の実行が開始されたときに図示しない初期化ルーチンにより値0が設定される。いま、バッテリ50がインバータ41,42から遮断された直後を考えると、フラグF1には値0が設定されている。フラグF1が値0と判定されると、入力したコンデンサ電圧Vcに所定値ΔV1を加えたものを制御用目標電圧Vc*に設定して(ステップS340)、フラグF1に値1を設定する(ステップS350)。ここで、所定値ΔV1は、コンデンサ電圧Vcの上昇をモータMG1やモータMG2のトルクの急変を抑制しつつできる限り迅速に行なうことのできる電圧として制御用目標電圧Vc*の設定間隔に基づいて定められるものである。そして、制御用目標電圧Vc*が目標電圧Vtag以上となったか否かを判定し(ステップS360)、制御用目標電圧Vc*が目標電圧Vtag以上でないと判定されると、ステップS330に戻る。ここでは、フラグF1には値1が設定されているから、前回に設定された制御用目標電圧Vc*を所定値ΔV1だけ増加し(ステップS370)、制御用目標電圧Vc*が目標電圧Vtag以上となったときに制御用目標電圧Vc*に目標電圧Vtagを設定して(ステップS430)、処理を終了する。このように、バッテリ50の遮断時のコンデンサ電圧Vcが目標電圧Vtagを中心とした所定範囲よりも小さいときには、制御用目標電圧Vc*を目標電圧Vtagに向けて所定値ΔV1ずつ増加させることにより、モータMG1やモータMG2のトルクの急変を抑制しているのである。なお、制御用目標電圧Vc*に目標電圧Vtagが設定されると、以降は目標電圧Vtagを用いて図3のバッテリ遮断時制御ルーチンが実行されることになる。
ステップS320でコンデンサ電圧Vcが目標電圧Vtagを中心とした所定範囲(値Vtag+α)よりも大きいと判定されると、フラグF2の値を調べる(ステップS380)。ここで、フラグF2も、フラグF1と同様に、本処理の実行が開始されたときに図示しない初期化ルーチンにより値0が設定される。いま、バッテリ50がインバータ41,42から遮断された直後を考えると、フラグF2には値0が設定されている。フラグF2が値0と判定されると、入力したコンデンサ電圧Vcから所定値ΔV2を減じたものを制御用目標電圧Vc*に設定して(ステップS390)、フラグF2に値1を設定する(ステップS400)。ここで、所定値ΔV2は、コンデンサ電圧Vcの下降が緩やかに行なわれるよう上述した所定値ΔV1よりも小さな値として定められている。これは、コンデンサ電圧Vcが目標電圧Vtagを中心とした所定範囲よりも大きいときには既にモータMG1やモータMG2から十分なトルクを出力することができる状態にあるから、コンデンサ電圧Vcの下降を迅速に行なう必要がなく、また、コンデンサ電圧Vcの下降を迅速に行なうことによってその下降のタイミングとDC/DCコンバータ68の作動を開始するタイミングとが重なるとコンデンサ電圧Vcが低下し過ぎてしまう(アンダーシュートする)場合があることに基づく。そして、制御用目標電圧Vc*が目標電圧Vtag以下となったか否かを判定し(ステップS410)、制御用目標電圧Vc*が目標電圧Vtag以下でないと判定されると、ステップS380に戻る。ここでは、フラグF2には値1が設定されているから、前回に設定された制御用目標電圧Vc*を所定値ΔV2だけ減少し(ステップS420)、制御用目標電圧Vc*が目標電圧Vtag以下となったときに制御用目標電圧Vc*に目標電圧Vtagを設定して(ステップS430)、処理を終了する。
次に、バッテリ50をインバータ41,42から遮断している最中にコンデンサ電圧Vcが何らかの原因で低下したときの処理について説明する。図8は、バッテリ50がインバータ41,42から遮断されたときにハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される電圧低下時処理の一例を示すフローチャートである。この電圧低下時処理では、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、電圧センサ58からのコンデンサ電圧VcやモータMG1の回転数Nm1などのデータを入力し(ステップS500)、入力したモータMG1の回転数Nm1に基づいて閾値Vthを設定し(ステップS510)、入力したコンデンサ電圧Vcと設定した閾値Vthとを比較し(ステップS520)、コンデンサ電圧Vcが閾値Vth以上のときには何もせずに処理を終了し、コンデンサ電圧Vcが閾値Vth未満のときには走行が禁止されるようシステムを停止して(ステップS530)、処理を終了する。ここで、閾値Vthは、モータMG1からトルクを出力することができるコンデンサ57の電圧の下限を定めるものであり、実施例では、モータMG1の回転数Nm1と閾値Vthとの関係を予め求めてマップとしてROM74に記憶しておき、回転数Nm1が与えられるとマップから対応する閾値Vthを導出して設定するものとした。このマップの一例を図9に示す。図示するように、モータMG1の回転数Nm1が大きいほど閾値Vthが大きくなるようマップを定めた。図10にコンデンサ電圧VcとモータMG1の回転数Nm1とモータMG1のトルクとの関係の一例を示す。図示するように、モータMG1の回転数Nm1が大きいほど又コンデンサ電圧Vcが小さいほどモータMG1から出力できるトルクの領域が狭くなる。ステップS510〜S530の処理では、走行を継続することができないほどモータMG1から出力することができるトルクの領域が狭くなったときにシステムを停止するのである。
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、インバータ41,42からバッテリ50が遮断されたとき、インバータ41,42の正極母線54aと負極母線54bとに接続されたコンデンサ57の電圧(コンデンサ電圧Vc)が制御用目標電圧Vc*(目標電圧Vtag)に一致するよう入出力許容制限Winf,Woutfを設定すると共に設定した入出力許容制限Winf,Woutfの範囲内でモータMG1やモータMG2から入出力してもよいトルクとしてのトルク制限Tm1min1,Tm1max1,Tm2min,Tm2maxを設定し、このトルク制限Tm1min1,Tm1max1,Tm2min,Tm2maxの範囲内で要求トルクTr*が駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御するから、コンデンサ57の電圧を適正な状態に保持することができ、モータMG1やモータMG2を適正に駆動することができる。この結果、バッテリ50を用いることなく運転者の駆動要求に対応することができる。
また、実施例のハイブリッド自動車20によれば、バッテリ50の遮断時に制御用目標電圧Vc*を目標電圧Vtagに向けて所定値ΔV1,ΔV2ずつ増減して入出力許容制限Winf,Woutfを設定するから、コンデンサ電圧Vcを目標電圧Vtagに一致させる際にモータMG1やモータMG2から出力するトルクが急変するのを抑制することができる。しかも、制御用目標電圧Vc*を増加する際の所定値ΔV1を大きく制御用目標電圧Vc*を減少する際の所定値ΔV2を小さく定めたから、インバータ41,42からバッテリ50の遮断時のコンデンサ電圧Vcが小さいときにはコンデンサ電圧Vcを迅速に上昇させてモータMG1やモータMG2から十分なトルクを出力することができる状態に迅速に移行することができ、バッテリ50の遮断時のコンデンサ電圧Vcが大きいときにはコンデンサ電圧Vcを急激に下降させることによる不都合たとえばDC/DCコンバータ68の作動を開始するタイミングと重なってコンデンサ電圧Vcがアンダーシュートするおそれ等の不都合を回避することができる。
更に、実施例のハイブリッド自動車20によれば、コンデンサ電圧Vcが閾値Vthよりも小さくなったときにはシステムを停止して走行を禁止するから、モータMG1からトルクを出力することができない状態で走行が継続されるのを回避することができる。
実施例のハイブリッド自動車20では、インバータ41,42からバッテリ50が遮断されたときのコンデンサ57の目標電圧Vtagに所定値を設定するものとしたが、アクセルペダル83の踏み込み量や要求トルクTr*に応じて変更するものとしてもよい。この場合、目標電圧Vtagは、アクセルペダル83の踏み込み量が大きいほど、要求トルクTr*が大きいほど大きくなる傾向に設定するものとすればよい。なお、目標電圧Vtagの設定を変更したときにはその度に図7の制御用目標電圧設定処理を実行して制御用目標電圧Vc*を徐々に目標電圧Vtagに近づけていくことが望ましい。
実施例のハイブリッド自動車20では、図3のバッテリ遮断時制御ルーチンのステップS160,S170でモータMG1の仮モータトルクTm1tmpを上下限トルクTm1min2,Tm1max2で制限すると共になまし処理を施すことによりモータMG1のトルク指令Tm1*を設定するものとしたが、上下限トルクTm1min2,Tm1max2による制限となまし処理のいずれか一方のみを実行するものとしてもよいし、いずれも実行しないものとしても構わない。
実施例のハイブリッド自動車20では、図7の制御用目標電圧設定処理において、制御用目標電圧Vc*を目標電圧Vtagに向けて増減するとき、制御用目標電圧Vc*を増加する際には所定値ΔV1ずつ増加させ、制御用目標電圧Vc*を減少する際には所定値ΔV1よりも小さい値の所定値ΔV2ずつ減少させるものとしたが、所定値ΔV1と所定値ΔV2に同一の値を用いて制御用目標電圧Vc*を徐々に増減するものとしてもよいし、制御用目標電圧Vc*の増減を徐々に行なうことなく一度に目標電圧Vtagに設定するものとしても差し支えない。
実施例のハイブリッド自動車20では、図8の電圧低下時処理において、モータMG1の回転数Nm1に基づいて閾値Vthを設定するものとしたが、閾値Vthとして回転数Nm1に拘わらず所定値を用いるものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2の動力を減速ギヤ35により変速してリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図11の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aが接続された車軸(駆動輪63a,63bが接続された車軸)とは異なる車軸(図11における車輪64a,64bに接続された車軸)に接続するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の動力を動力分配統合機構30を介して駆動輪63a,63bに接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図12の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、エンジン22のクランクシャフト26に接続されたインナーロータ232と駆動輪63a,63bに動力を出力する駆動軸に接続されたアウターロータ234とを有し、エンジン22の動力の一部を駆動軸に伝達すると共に残余の動力を電力に変換する対ロータ電動機230を備えるものとしてもよい。
以上、本発明の実施の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
20,120,220 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35,減速ギヤ、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、54a 正極母線、54b 負極母線、55 昇圧回路、56 システムメインリレー、57 コンデンサ、58 電圧センサ、60 ギヤ機構、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、64a,64b 車輪、66 DC/DCコンバータ、68 補機、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、230 対ロータ電動機、232 インナーロータ 234 アウターロータ、MG1,MG2 モータ。