(第1実施形態)
図1に、本発明に係る電子制御装置が適用された車両用空調装置の概略構成を示す。
車両用空調装置は、インストルメントパネル内に収納されて車室内の空気調和を行う空調ユニット10を備えており、この空調ユニット10は空調ケース11を備えている。空調ケース11内において、内外気ドア11bが、空調ケース11に回転可能に支持されて、アクチュエータ100aによる駆動のもとに、外気導入モード時にて、第1切換位置(図に実線で示す位置)に切り替えられて、空調ケース11内にその外気導入口15bから外気を流入させる。
一方、内外気ドア11bが、アクチュエータ100aによる駆動のもとに、内気循環モード時にて、第2切換位置(図に破線で示す位置)に切り替えられて、空調ケース11内にその内気導入口15aから車室内の空気(内気)を流入させる。
ブロワ19は、ブロワモータ19aの回転速度に応じて、外気導入口15bからの外気または内気導入口15aからの内気を空気流としてエバポレータ14に送風する。エバポレータ14は、そのブロワ19から吹き出される空気流を、公知の冷凍サイクルの作動によって循環する冷媒により冷却して冷却空気流として運転席側通路22aおよび助手席側通路22bに流入させる。
ここで、運転席側通路22aおよび助手席側通路22bは、空調ケース11内を仕切板13により仕切られている。そして、運転席側通路22a内において、エアミックスドア(A/Mドア)12aは、アクチュエータ100cにより駆動されて、エバポレータ14から吹き出される気流をヒータコア16に流入される気流とヒータコア16をバイパスする気流(以下、バイパス冷却気流と呼ぶ。)と、に分流する。
ヒータコア16に流入される気流は、ヒータコア16内のエンジン冷却水(温水)により加熱されるので、ヒータコア16から温風が吹き出されることになる。これに伴い、ヒータコア16から吹き出される温風とバイパス冷却気流とは混合されて、開口部200a、201a、202aに向けて流動されることになる。
ここで、温風とバイパス冷却気流との混合比SWは、エアミックスドア1aの開度により決められるものであり、温風とバイパス冷却気流とが混合されて、開口部200a、201a、202aから吹き出される空気の温度が調整されることになる。
吹出口ドア210aは、アクチュエータ100bによる駆動のもとに、フェイスモード時に、第1切換位置(図に実線で示す位置)から第2切換位置(図に破線で示す位置)に切り換えられて、開口部200aを開けて、この開口部200aから運転席側フェイス吹出口を通して運転者の上半身に向けて空気を吹き出させる。
吹出口ドア211aは、アクチュエータ100bによる駆動のもとに、デフモード時にて第1切換位置(図に実線で示す位置)から第2切換位置(図に破線で示す位置)に切り換えられて、開口部201aを開けて開口部201aから運転席側デフ吹出口を通してフロントウインドシールドの運転席側の内表面に向けて空気を吹き出させる。
吹出口ドア212aは、アクチュエータ100bによる駆動のもとに、フットモード時(或いは、バイレベルモード時)にて第1切換位置(図に実線で示す位置)から第2切換位置(図に破線で示す位置)に切り換えられて、開口部202aを開けて開口部202aから運転席側フット吹出口を通して運転者の下半身に向けて空気を吹き出させる。
なお、以下、吹出口ドア210a、211a、212aを区別するために、それぞれ、フェイス吹出口ドア210a、デフ吹出口ドア211a、フット吹出口ドア212aともいう。
また、空調ケース11には、運転席側通路22aに対してエバポレータ14から吹き出される冷風を迂回させて運転席側フェイス吹出口に向けて流通させる冷風バイパス通路23aが設けられている。冷風バイパス通路23aの空気上流側には、冷風バイパス通路23aの流入口を開閉する冷風バイパスドア24aが設けられており、冷風バイパスドア24aは、アクチュエータ100eにより駆動される。
ここで、冷風バイパスドア24aは、バイレベル時にて、アクチュエータ100eにより駆動されて、第1切換位置(図中実線で示す位置)から第2切換位置(図中波線で示す位置)に切り換えられて流入口を開口して、冷風を運転席側フェイス吹出口を通して運転者の上半身に向けて吹き出させる。
一方、助手席側通路22b内において、エアミックスドア(A/Mドア)12bは、アクチュエータ100dにより駆動されて、エバポレータ14から吹き出される気流を、ヒータコア16に流入される気流とバイパス冷却気流と、に分流する。
ヒータコア16に流入される気流は、ヒータコア16内のエンジン冷却水(温水)により加熱されるので、ヒータコア16から温風が吹き出されることになる。これに伴い、ヒータコア16から吹き出される温風とバイパス冷却気流とは混合されて、開口部200b、201b、202bに向けて流動されることになる。
ここで、温風とバイパス冷却気流との混合比SWは、エアミックスドア1bの開度により決められるものであり、温風とバイパス冷却気流とが混合されて、開口部200b、201b、202bから吹き出される空気の温度が調整されることになる。
吹出口ドア210bは、アクチュエータ100bによる駆動のもとに、フェイスモード時に、第1切換位置(図に実線で示す位置)から第2切換位置(図に破線で示す位置)に切り換えられて、開口部200bを開けて、この開口部200bから助手席側フェイス吹出口を通して車室内の助手席に着座する乗員(以下、助手席者と呼ぶ。)の上半身に向けて空気を吹き出させる。
吹出口ドア211bは、アクチュエータ100bによる駆動のもとに、デフモード時にて第1切換位置(図に実線で示す位置)から第2切換位置(図に破線で示す位置)に切り換えられて、開口部201bを開けて開口部201bから助手席側デフ吹出口を通してフロントウインドシールドの助手席側の内表面に向けて空気を吹き出させる。
吹出口ドア212bは、アクチュエータ100bによる駆動のもとに、フットモード時(或いは、バイレベルモード時)にて第1切換位置(図に実線で示す位置)から第2切換位置(図に破線で示す位置)に切り換えられて、開口部202bを開けて開口部202bから助手席側フット吹出口を通して助手席者の下半身に向けて空気を吹き出させる。
なお、以下、吹出口ドア210b、211b、212bを区別するために、それぞれ、フェイス吹出口ドア210b、デフ吹出口ドア211b、フット吹出口ドア212bともいう。
また、空調ケース11には、助手席側通路22bに対してエバポレータ14から吹き出される気流を迂回させて助手席側フェイス吹出口に向けて流通させる冷風バイパス通路23bが設けられている。冷風バイパス通路23bの空気上流側には、冷風バイパス通路23bの流入口を開閉する冷風バイパスドア24bが設けられている。
ここで、冷風バイパスドア24bは、バイレベル時にて、アクチュエータ100eにより駆動されて、第1切換位置(図中実線で示す位置)から第2切換位置(図中波線で示す位置)に切り換えられて流入口を開口して、冷風を助手席側フェイス吹出口を通して助手席者の上半身に向けて冷風を吹き出させる。
なお、本実施形態では、ドア12a、12b、24a、24b、210a、211a、212a、210b、211b、212bとしては、例えば、樹脂製の板状ドアが採用されている。
電子制御装置400には、図1に示すように、車室内の運転席側の空気温度を検出する内気温センサS1、助手席側の空気温度を検出する内気温センサS2、車室内の運転席側日射量及び助手席側日射量を検出する日射センサS3、車室外の空気(外気)の温度を検出する外気温センサS4、空調ユニット10内に導入される導入空気に含まれる排気ガス成分(例えば、CO、HC、NOx)を検出するガスセンサS5、エバポレータ14から吹き出される空気温度(以下、蒸発器吹出温度と呼ぶ。)を検出する温度センサS6、ヒータコア16内を流れるエンジン冷却水の温度(以下、エンジン冷却水温と呼ぶ。)を検出する温度センサS7、および、運転席側の希望温度、助手席側の希望温度、各種のモードが乗員の操作で設定される設定器R1、R2が設定される。
また、電子制御装置400は、センサS1〜S5及び設定器R1、R2の出力信号に基づき、アクチュエータ100a〜100eを制御するとともに、ブロア駆動回路25を制御する処理を実行する。ブロア駆動回路25は、ブロワモータ19aを駆動させるものである。
ここで、電子制御装置400は、コンピュータプログラムなどが記憶されるメモリ420、各種制御処理を実行するマイクロコンピュータ410、制御回路200a〜200dとの間でシリアル通信する通信回路440、及び、バッテリBからの出力電圧を一定電圧に変換して回路410、420、440に出力する定電圧回路430から構成される周知のものである。
ここで、制御回路200a〜200dは、アクチュエータ毎にそのコネクタ210内に内蔵されており、制御回路200a〜200dは、アクチュエータ毎に後述する直流モータ110を制御する。なお、電子制御装置400とアクチュエータ100a〜100eとの間では、一本の通信ラインR1、一本の電源ラインR2、一本のグランドラインR3によって繋がっている。
また、メモリ420は、ROM、および、マイクロコンピュータ410の処理に伴うデータなどを記憶するRAMなどから構成されている。定電圧回路430は、バッテリBから出力される電圧を一定電圧に変換してマイクロコンピュータ410などに出力する。
次に、アクチュエータ100a〜100eについて説明する。
先ず、アクチュエータ100aは、リンク機構(図示しない)を介して、内外気ドア11bを開閉させる。また、アクチュエータ100bは、リンク機構(以下、吹出口用リンク機構と呼ぶ。)を介して、フェイス吹出口ドア210a、デフ吹出口ドア211a、及び、フット吹出口ドア212aを独立して開閉させる。そして、吹出口用リンク機構は、フェイス吹出口ドア210a、210bを連動して開閉させるとともに、デフ吹出口ドア211a、211bを連動して開閉させる。そして、吹出口用リンク機構は、フット吹出口ドア212a、212を連動して開閉させる。
一方、アクチュエータ100cは、リンク機構を介して、エアミックスドア12aを開閉させるものであり、アクチュエータ100dは、リンク機構を介して、エアミックスドア12bを開閉させるものである。そして、アクチュエータ100eは、リンク機構(以下、冷風バイパス用リンク機構と呼ぶ。)を介して、エアミックスドア24a、24bを開閉させるものである。冷風バイパス用リンク機構は、エアミックスドア24a、24bを連動して開閉させる。
ここで、アクチュエータ100a〜100eは、その駆動対象となるドアやそのドアの可動範囲が個々に異なるだけで、個々に実質的構成が同様であるため、アクチュエータ100a〜100eの一例としてアクチュエータ100aの構成について図3〜図7を用いて説明する。
図3はアクチュエータ100aの外観図であり、図4はアクチュエータ100aの構成図である。そして、図4中、直流モータ110は、バッテリBからの電力が供給されて、出力軸111を回転させるものであり、減速機構120は直流モータ110から入力された回転力を減速して内外気ドア11bに向けて出力する変速機構である。なお、以下、直流モータ110及び減速機構120等の回転駆動する機構部を駆動部130と呼ぶ。
ここで、減速機構120は、直流モータ110の出力軸111に圧入されたウォーム121、このウォーム121と噛み合うウォームホィール122、及び複数枚の平歯車123、124、125からなる歯車列であり、出力側に位置する最終段歯車(出力側歯車)126には、出力軸127が設けられている。
なお、ケーシング140は駆動部130を収納するととともに、後述するブラシ(電気接点)155〜157が固定されたケーシングである。
また、減速機構120のうち、直流モータ110により直接駆動される入力歯車(ウォーム121)より出力側(出力軸127)には、図5〜7(特に、図7参照)に示すように、パルスパターンプレート(以下、パターンプレートと呼ぶ。)153が設けられており、このパターンプレート153は、円周方向に交互に並んだ導電部151a、152a及び非導電部1511b、152bからなる第1、2パルスパターン151、152が設けられたもので、出力軸127と一体的に回転する。
このとき、導電部151a、152aの円周角α1、α2及び非導電部151b、152bの円周角β1、β2を互いに等しくするとともに、第1パルスパターン151の位相を第2パルスパターン152の位相に対して円周角α1、α2(=円周角β1、β2)の略1/2ずらしている。
なお、第1、2パルスパターン151、152は電気的に繋がっており、第1、2パルスパターン151、152は、両パルスパターン151、152より内周側に設けられたコモンパターン(共通導電部パターン)154と電気的に繋がって、後述するブラシ157を介してバッテリ(図示せず。)の負極側に電気的に繋がっている。
一方、ケーシング140側には、バッテリの正極側に接続された銅系導電材料製の第1〜3ブラシ(電気接点)155〜157が樹脂一体成形により固定されており、第1ブラシ155は第1パルスパターン151に接触し、第2ブラシ156は第2パルスパターン152に接触し、第3ブラシ157はコモンパターン154に接触するように構成されている。
なお、本実施形態では、第1〜3ブラシ155〜157とパターンプレート153との接点を2点以上(本実施形態では、4点)とすることにより、第1〜3ブラシ155〜157と導電部151a、152a(コモンパターン154を含む。)との電気接続を確実なものとしている。
また、出力軸127には、図3に示すように、リンクレバー160が圧入固定されており、リンクレバー160は、出力軸127の回転に伴って、ストッパ35a、35b間を回転する。このリンクレバー160はその回転を内外気切換用リンク機構に出力するものである。また、ストッパ35a、35bは、リンクレバー160を衝突させてリンクレバー160の可動範囲を設定するものであって、空調ケース11からそれぞれ突起するように設けられている。
次に、アクチュエータ100aの概略作動について図8〜図10を用いて説明する。図8は、アクチュエータ100aの制御回路200aを示す模式図である。
先ず、制御回路200aは、直流モータ110を駆動するモータ駆動回路210、パターンプレート153で発生するパルス信号を検出する回転角度検出回路220、各種制御情報を記憶するフラッシュメモリ等の入力された情報を電力の供給を受けることなく保持することができる記憶回路230、および、電子制御回路400との間で通信ラインR2を通して通信したり、モータ駆動回路210を通電制御したりするCPU220などを有して構成されている。
ここで、CPU220が、モータ駆動回路210に通電を開始させて直流モータ110が回転すると、出力軸127(パターンプレート153)が回転して、第1、2ブラシ155、156と導電部151a、152aとが接触する通電(ON)状態、及び第1、2ブラシ155、156と非導電部1511b、152bとが接触する非通電(OFF)状態が相互に周期的に発生することになる。
したがって、第1、2ブラシ155、156には、直流モータ110が所定角度回転する毎にパルス信号が発生する。
このことにより、上述の説明から明らかなように、本実施形態では、第1、2ブラシ155、156とパターンプレート153とにより出力軸127が所定角度回転する毎にパルス信号を発するパルス発生器(パルス発生手段)158(図8参照)が構成されることになる。
また、第1パルスパターン151の位相と第2パルスパターン152の位相とがずれているため、パルス発生器158では、第1パルスパターン151と第1ブラシ155とにより発生するパルス信号(以下、このパルス信号をA相パルスと呼ぶ。)と、第2パルスパターン152と第2ブラシ156とにより発生するA相パルス対して位相のずれたパルス信号(以下、このパルス信号をB相パルスと呼ぶ。)が発生する。
このため、本実施形態では、CPU220は、A相パルス及びB相パルスのうちいずれの信号が先に回転角度検出回路220に入力されるかを判定して、その判定結果によって、直流モータ110(出力軸127)の回転方向を検出している。
また、図9に示すように、直流モータ110がプラスカウント方向に回転すると、A相パルスおよびB相パルスの状態が「0、1」→「1、1」→「1、0」→「0、0」→「0、1」→…の順に周期的に切り替わる一方、直流モータ110がマイナスカウント方向に回転すると、A相パルスおよびB相パルスの状態が「1、1」→「0、1」→「0、0」→「1、0」→「1、1」→…の順に周期的に切り替わる。
そこで、CPU220は、A相、B相パルスの状態の切り替わりに基づき、出力軸127の現在位置を更新する。このことにより、A相、B相パルスに基づいて、現在位置を検出する摺動接点方式の位置検出装置が構成されることになる。
具体的には、現在位置は、目標位置とともに、二進数で示されるデータであり、A相パルスおよびB相パルスの状態が「0、1」→「1、1」→「1、0」→「0、0」→「0、1」→…の順に、切り替わる毎に現在位置を1つずつ増加させる一方、A相パルスおよびB相パルスの状態が「1、1」→「0、1」→「0、0」→「1、0」→「1、1」→…の順に切り替わる毎に、現在位置を1つずつ減少させる。そして、CPU220は、現在位置と目標位置とが一致したとき、モータ駆動回路210への通電を停止させて直流モータ110を停止させる。
これに伴い、アクチュエータ100aの出力軸127は、目的位置で停止して、内外気ドア11bが第1、第2切換位置のうち該当する一方の位置で停止することになる。
次に、本実施形態の作動について、図10〜図16を用いて説明する。図10は、電子制御装置400のマイクロコンピュータ410による制御処理を示すフローチャート、図11は通信回路440の処理を示す図である。
マイクロコンピュータ410は、図10のフローチャートに従って、メモリ420に記憶されるコンピュータプログラムを実行する。このコンピュータプログラムは、イグニッションスイッチIGがONされると一定期間毎に繰り返される。イグニッションスイッチIGは、乗員に操作されて、マイクロコンピュータ410にバッテリBからの給電を許可するためのスイッチである。
先ず、メモリ420に記憶されるデータなどをリセット(初期化)すると(S100)、設定器R1、R2から出力される出力信号を読み込むとともに、センサS1〜S6から出力される検出信号をアナログ/デジタル変換してそのデジタル信号を読み込む(S110、S120)。
次に、このように読み込んだデジタル信号、および空調操作信号を用いて、運転席側の目標吹出温度TAODrおよび助手席側の目標吹出温度TAOPaを、メモリ420に予め記憶される数式1、2に基づいて演算する(S130)。
TAODr=KestDr・TsetDr−KrDr・TrDr
−KamDr・Tam−KsDr・TsDr+CDr……数式1
ここで、TsetDrは運転席側の希望温度、TrDrは運転席側の空気温度(内気温度)、Tamは外気温度、TsDrは運転席側の日射量である。なお、KestDr、KrDr、KamDr、KsDrは、ゲインで、CDrは定数である。
TAOPa=KestPa・TsetPa−KrPa・TrPa
−KamPa・Tam−KsPa・TsPa+CPa……数式2
ここで、TsetPaは助手席側の希望温度、TrPaは助手席側の空気温度(内気温度)、TsPaは助手席側の日射量である。なお、KestPa、KrPa、KamPa、KsPaは、ゲインで、CPaは定数である。
次に、目標吹出温度TAODr、TAOPaの平均値TAOav{=(TAODr+TAOPa)/2}を算出して、平均値TAOavとメモリ420内に予め記憶されている図11の特性図とにより、ブロアモータ19aに印加するブロア電圧(すなわち、目標風量)を算出する(S140)。
次に、吸込口モードとして、内気循環モード、外気導入モードのいずれを実施するかを決定する(S150)。
例えば、先だって外気導入モードが実施されているとき、空調ユニット10に導入される外気に含まれる排気ガス成分を検出するガスセンサS5からの出力信号に応じて、当該外気中に一定量以上の排気ガス成分が含まれているか否かを判定して、当該外気中に一定量以上の排気ガス成分が含まれていると判定したとき、吸込口モードとして、内気循環モードを実施すると決定する。更に、内気を空調ユニット10に導入するようにアクチュエータ100aの出力軸127の目標位置を算出することになる。
一方、当該外気中に一定量以上の排気ガス成分が含まれていないと判定したとき、目標吹出空気温度TAODr、TAOPaの平均値TAOavに基づき、メモリ420内に予め記憶されている図12の特性図によって、吸込口モードとして、内気循環モード、外気導入モードのいずれを実施するかを決定する。
ここで、吸込口モードとアクチュエータ100aの出力軸127の目標位置が1対1で対応しており、内気循環モード、外気導入モードと目標位置との対応関係を示す対照表(図示しない)がメモリ420に予め記憶されている。そして、当該対照表に基づき、上述のように決定された吸込口モードに対応する目標位置が決定されることになる。
次に、吹出口モードとして、フェイスモード(FACE)、バイレベルモード(B/L)、フットモード(FOOT)、およびデフモードのうち、いずれのモードを実施するのかを決定する(S160)。
具体的には、設定器R1により、フェイスモード、バイレベルモード、フットモード、およびデフモードのいずれかがマニュアルで吹出口モードとして設定されているときには、この設定されている吹出口モードを実施すると決定する。
一方、マニュアルで吹出口モードとして設定されていない場合には、平均値TAOavに基づいて、メモリ420に予め記憶されている図13の特性図より、吹出口モードとして、いずれのモードを実施するのかを決定する。
ここで、吹出口モードとアクチュエータ100bの出力軸127の目標位置とが、1対1に対応しており、フェイスモード、バイレベルモード、フットモード、デフモードと、出力軸127の目標位置との対応関係を示す対照表がメモリ420に予め記憶されている。そして、当該対照表に基づき、上述のように決定された吹出口モードに対応する目標位置が決定されることになる。
次に、目標吹出空気温度TAODrとエンジン冷却水温Tw及び蒸発器吹出温度Teとに基づき、メモリ420内に予め記憶されている下記数式3を用いて、エアミックスドア12aの目標開度θDrを算出する(S170)。
θDr={(TAODr−Te)/(Tw−Te)}×100(%)……数3
ここで、ヒータコア16に気流を流す流路を完全に閉じたとき、目標開度θDrを0%とし、ヒータコア16をバイパスする流路を完全に閉じたとき、目標開度θDrを100%とする。また、エアミックスドア12aの目標開度θDrとアクチュエータ100cの出力軸127の目標位置とは、1対1で対応しており、目標開度θDrと目標位置との対応関係示す対照表が予めメモリ420に記憶されている。そして、当該対照表に基づき、目標開度θDrに対応する目標位置を決定されることになる。
さらに、目標吹出空気温度TAOPaとエンジン冷却水温Tw及び蒸発器吹出温度Teとに基づき、メモリ420内に予め記憶されている下記数式4を用いて、エアミックスドア12bの目標開度θPaを算出する。
θPa={(TAOPa−Te)/(Tw−Te)}×100(%)……数4
ここで、ヒータコア16に気流を流す流路を完全に閉じたとき、目標開度θPaを0%とし、ヒータコア16をバイパスする流路を完全に閉じたとき、目標開度θPaを100%とする。
そして、エアミックスドア12bの目標開度θPaと、アクチュエータ100cの出力軸127の目標位置とは、1対1で対応しており、目標開度θPaと目標位置との対応関係を示す対照表がメモリ420に記憶されている。そして、当該対照表に基づいて、目標開度θPaに対応する目標位置が決定されることになる。
次に、以上のようにブロア電圧およびアクチュエータ毎の目標位置が決定されると、この決定されるブロア電圧を示す制御信号をブロア駆動回路25に出力するとともに、アクチュエータ毎の目標位置を示す制御信号を通信回路440に出力する。
その後、S110、S120、S130、S140、S150、S160、S170、S180の各制御処理を、図14(a)に示すように、演算周期T2にて繰り返し実行する。
すなわち、アクチュエータ100a〜100eのそれぞれの各目標位置を演算周期T2にて繰り返し演算する。
一方、通信回路440は、図14(b)に示すごとく、アクチュエータ100a〜100eのそれぞれに各目標位置を時分割で送信することを送信周期T1にて繰り返す。
具体的には、演算周期T2でアクチュエータ100a〜100eのそれぞれの各目標位置が演算された場合、通信回路440は、ある演算周期T2の終了時期tsと同一時期に開始される直後の送信周期T1内にて、各目標位置を送信する。
ここで、マイクロコンピュータ410及び通信回路440は、同一クロック信号を発振回路から受信して同期しているので、図14(a)、(b)に示すように、送信周期T2は、演算周期T1と一致して(T2=T1)、かつ、演算周期T1の終了時期と送信周期T2の終了時期が一致している。
一方、通信回路440は、図15に示すように、送信周期T1内にて、アクチュエータ100a〜100eのそれぞれに対して、時分割で目標位置を送信してから、送信周期T1の終了時期まで待機状態になる。
すなわち、通信回路440は、送信周期T1内の前側(すなわち、送信周期T1内の早い時期)にて、アクチュエータ100a〜100eのそれぞれに対して、アクチュエータ毎の目標位置を送信し、送信周期T1内の後側にて、待機状態になる。
さらに、通信回路440は、アクチュエータ毎に目標位置を送信する度に、アクチュエータ毎の現在位置情報を当該アクチュエータから受信する。当該現在位置情報とは、現在位置以外に、A相、B相パルスの状態(「1」「0」)を含む情報であり、A相、B相パルスの状態は、アクチュエータ毎の異常の発生の判定などに用いられる。
そして、通信回路440によりアクチュエータ毎に通信する順序は、予め決められている。例えば、本実施形態では、アクチュエータ100aの順番を1番とし、アクチュエータ100bの順番を2番とし、アクチュエータ100cの順番を3番とし、アクチュエータ100dの順番を4番とし、アクチュエータ100eの順番を5番とする。
以上説明したように、電子制御装置400において、図14(a)(b)に示すように、マイクロコンピュータ410によりそれぞれの目標位置を演算する演算周期T2が、通信回路440によりそれぞれの目標位置を送信する送信周期T1と一致して、かつ、演算周期T2の終了時期tsが、送信周期T1の開始時期tkと一致している。
ここで、マイクロコンピュータ410が、ある演算周期T2でアクチュエータ100a〜100eのそれぞれの各目標位置が演算すると、通信回路440は、演算周期T2の終了時期tsと同一時期に開始される直後の送信周期T1内にて、それぞれの目標位置を送信する。
このため、演算周期T2とその直後の送信周期T1との間のオフセット時間(Δt:図18参照)が無くなる。したがって、図18に示すように演算周期T2及び送信周期T1の間にオフセット時間(Δt)が生じる場合に比べて、目標位置を演算してから目標位置を送信するまでの遅延時間(te:図14(a)(b)参照)を短くすることが可能になり、アクチュエータの応答遅れを更に抑えることができる。
また、本実施形態では、空調ユニット10に導入している外気中に一定量以上の排気ガス成分が含まれると判定したときには、空調ユニット10への導入空気として内気を選択するようにアクチュエータ100aの目標位置が演算されてこの目標位置がアクチュエータ100aに送信されることになる。
ここで、通信回路440によりアクチュエータ毎に通信する順序は、アクチュエータ100aの順番が1番となるように決定されているので、アクチュエータ100aに対して最も優先的に目標位置が送信されることになる。したがって、アクチュエータ100aの応答遅れがより一層抑制されて、空調ユニット10への導入空気として外気から内気に素早く切り替えることができる。
なお、以下に、本実施形態における送信周期T1など数値の一例について説明する。
先ず、通信回路400とアクチュエータ100a〜100eとの間の通信速度を例えば、4800bpsとし、通信回路400が1つのアクチュエータに1回、送信(或いは、1つのアクチュエータから1回、受信)するデータ量を90bitとする。
この場合、通信回路400が1つのアクチュエータに対して目標位置を一回送信するのに、90bit/4800bps=18.75msec≒20secが必要となり、通信回路400が1つのアクチュエータから現在位置情報を一回受信するのにも、90bit/4800bps=18.75ms≒20secが必要となる。
ここで、通信回路400がアクチュエータ毎に送受信するので、1つのアクチュエータに対して通信する通信時間として40msec(20msec+20msec)が必要となり、通信回路400が待機状態になる待機時間を50msecとすると、本実施形態では、アクチュエータとしては5つ採用しているので、送信周期T1は、40msec×5+50msec=250msecとなり、演算周期T2も送信周期T1に合わせて250msecとする。
ちなみに、空調装置においてより高機能化を図るため、アクチュエータの数を増やす場合には、通信回路400とアクチュエータ100a〜100eとの間の通信速度を高速化すれば、対応することができる。
(第2実施形態)
上述の第1実施形態では、目標位置の変更の有無に関わらず、各アクチュエータの全てに目標位置を送信する例について説明したが、これに限らず、例えば、電子制御装置400が、アクチュエータ100d、100eについてだけ、先回演算された目標位置と異なる今回の目標位置を演算して、アクチュエータ100a、100b、100cについては、今回演算された目標位置と、先回演算された目標位置と、が同一になる場合には、次のようにしてもよい。
すなわち、電子制御装置400の通信回路440は、アクチュエータ100d、100e(これは、上述の変更アクチュエータに相当する。)にだけ、今回の目標位置を送信する。さらに、先回の目標位置と同一の目標位置が今回演算されたアクチュエータ100a〜100c(これは、上述の非変更アクチュエータに相当する。)には、今回の目標位置を送信しないようにする。
この場合、送信周期T1内にて、アクチュエータ100a〜100cに今回の目標位置を送信するのに要する時間分、通信回路440が待機状態となる時間が生じる。
ここで、通信回路440は、送信周期T1内にて、待機状態となってからアクチュエータ100d、100eに今回の目標位置を送信することも可能だが、次のようにすることが望ましい。
すなわち、図16に示すように、通信回路440が、アクチュエータ100d、100eにそれぞれ今回の目標位置を送信してから、送信周期T1の終了時期まで待機状態になる。
このため、送信周期T1内でアクチュエータ100a〜100eの全てに目標位置を送信する場合(図15参照)に比べて、図16に示すように、アクチュエータ100e、100dに目標位置を送信する時期を送信周期T1内で早い時期に設定することができる。
したがって、目標位置を演算してからアクチュエータ100e、100dに送信するまでの遅延時間を短くすることができるので、変更アクチュエータ100e、100dの応答遅れをより一層抑えることができる。
但し、アクチュエータ100d、100eに対して送信する順序は、上述の第1実施形態で示した順序(100a→100b→100c→100d→100e)にしたがって、アクチュエータ100dを一番とし、アクチュエータ100eを2番とする。
また、上述のごとく、先回の目標位置と同一の目標位置が今回演算されたアクチュエータには、今回の目標位置を送信しないようにするので、上述の第1実施形態のようにアクチュエータ100a〜100eの全てに目標位置を送信する場合に比べて、目標位置の送信個数を減らすことができる。これに伴い、通信回路440により目標位置を送信する処理を簡素化することができる。
(第3実施形態)
上述の第1実施形態では、ガスセンサS5を採用して、空調ユニット10に導入する導入空気中に一定量以上の排気ガス成分が含まれると判定したときには、導入空気として外気から内気に切り替える排気ガスオート内外気制御の例について説明したが、排気ガスオート内外気制御の機能を有していない車両用空調装置では、次のようにしてもよい。
すなわち、通信回路440によりアクチュエータ毎に通信する順序を、アクチュエータ100bの順番が1番となるように決定し、アクチュエータ100bに対しては目標位置を優先的に送信する。これに伴い、アクチュエータ100bの応答遅れを抑えることができるので、フロントウインドシールドの防曇を素早くに行うことができる。
(その他の実施形態)
上述の第1実施形態では、空調ユニット10に導入している外気中に一定量以上の排気ガス成分が含まれるか否かを判定するために、ガスセンサS5を用いるようにした例について説明したが、これに代えて、次のようにしてもよい。
すなわち、車両の現在地を検出するGPS受信機等を採用するとともに、外気中に一定量以上の排気ガス成分が含まれていると想定される位置情報を予めメモリに記憶しておき、このメモリに記憶される位置情報とGPS受信機により検出される車両の現在地とに基づき、車両の現在地において、空調ユニット10に導入している外気中に一定量以上の排気ガス成分が含まれるか否かを判定するようにしてもよい。
上述の第1実施形態では、アクチュエータ100a〜100eとしては、それぞれに摺動接点方式の位置検出装置を有するものを用いた例について説明したが、これに限らず、アクチュエータ100a〜100eとしては、光学式のエンコーダ等のその他の位置検出装置を有するものを用いるようにしてもよい。
上述の第1実施形態では、アクチュエータ100a〜100eの駆動源として、直流モータ110を採用した例について説明したが、これに代えて、入力パルス信号に基づき一定角度毎に出力軸を回転駆動するステッピングモータを用いるようにしてもよい。
この場合、ステッピングモータの出力軸の位置としては、入力パルス信号の入力数に基づき検出することができるので、光学式の位置検出装置や摺動接点方式の位置検出装置を採用する必要がなくなる。
上述の第1実施形態では、各目標位置を一定周期にて演算するのにマイクロコンピュータ410を用いて、さらに各目標位置を一定周期にて送信するのに通信回路440を用いる例を示したが、これに代えて、マイクロコンピュータ410によって、各目標位置を一定周期にて演算し、かつ、各目標位置を一定周期にて送信するようにしてもよい。
上述の第1実施形態では、空調ユニット10に設けられるドア11b、12a、12b、24a、24b、210a、210b、211a、211b、212a、212bとして、板状ドアを用いた例を示したが、これに限らず、フィルムドア、ロータリドア、スライドドアなどを用いるようにしてもよい。
上述の第1実施形態では、発振回路からのクロック信号をマイクロコンピュータ410及び通信回路440に出力して、マイクロコンピュータ410及び通信回路440を互いに同期させるようにした例について説明したが、これに代えて、マイクロコンピュータ410から通信回路440にクロック信号(同期信号)を出力して、マイクロコンピュータ410及び通信回路440を互いに同期させるようにしてもよい。
上述の第2実施形態では、送信周期T1の開始直後にて、アクチュエータ100d、100eに今回の目標位置を送信し、その後、送信周期T1の終了時期まで待機状態になる例について説明したが、これに代えて、送信周期T1の開始直後にて、非常に短期間待機状態になり、その後、アクチュエータ100d、100eに今回の目標位置を送信してから送信周期T1の終了時期まで待機状態になるようにしてもよい。
以下、上記実施形態と特許請求項の範囲の構成との対応関係について説明すると、第1実施形態においてマイクロコンピュータ410によるS110〜S180のそれぞれ処理機能が、「複数のアクチュエータのそれぞれの目標位置を周期的に演算する演算手段」に相当し、通信回路420が「演算手段により演算されるそれぞれの目標位置を複数のアクチュエータに一定順序で周期的に送信する送信手段」に相当し、第1実施形態におけるアクチュエータ100aが、請求項4の発明に記載の「空調ユニットに導入する空気として内気及び外気のうち一方を選択するドアを駆動する内外気切換用アクチュエータ」に相当し、第3実施形態のアクチュエータ100bが、請求項6の発明に記載の「空調ユニットからフロントウインドシールドの内表面に空調風を吹き出す開口部を開閉するドアを駆動する吹出口用アクチュエータ」に相当する。