JP4269292B2 - 3軸加速度センサー - Google Patents

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Description

本願発明は、自動車や航空機、携帯端末機器、玩具等に用いられる加速度検出用の半導
体加速度センサーに関するものである。
加速度センサーは、自動車のエアーバッグ作動用の大きな衝撃力を検出する用途や、ブ
レーキ制御システムなどの車両制御用途向けの小さな加速度の検出に使用されてきた。こ
れらの自動車用途ではX軸、Y軸の加速度を測定するため1軸もしくは2軸機能で充分で
あった。最近は、携帯端末機器やロボット、人体動作の検出による各種制御等の新しい用
途向けに実用化が進んできている。このような新用途では3次元での動きを検出するため
X、Y、Z軸の加速度を測定できる3軸加速度センサーが要求されている。また、微小な
加速度を検出するために高分解能で、小型・薄型であることも要求されている。
加速度センサーは梁部の動きを電気信号に変換する方法で、ピエゾ抵抗型、静電容量型
、圧電型に大別される。用途によって使い分けられるが、静止加速度の検出用途ではピエ
ゾ抵抗型と静電容量型に絞られ、これら2つのタイプはシリコン基板に半導体技術やマイ
クロマシン技術により、立体的な構造を形成することにより小型で高感度の加速度センサ
ーを一度に大量に製造できる。特に、ピエゾ抵抗型は構造および製造プロセスが単純であ
り小型・薄型で低価格化に向いた加速度センサーである。
特許文献1に、ピエゾ抵抗型3軸加速度センサーが開示されており、その構造を図6に
示す。図6a)に、ピエゾ抵抗型3軸加速度センサーの断面図、図6b)に、加速度セン
サー素子の平面概略図を示す。加速度センサーは、セラミック等で作られたケース83の
内底に加速度センサー素子10の支持枠部7が、接着剤74で接着されている。梁部6側
の支持枠部7には、規制板85が接着剤73で接着されている。ケース83は接着剤76
でケース蓋84と接合されている。加速度センサー素子10の電気信号を取出すワイヤー
等の図示は省略している。加速度センサーの概略寸法は、3〜8mm角×1〜3mm厚と
小さなものである。規制板85や空隙g3,g4に付いては、次項以降で詳細に説明する
図6b)に、加速度センサー素子の平面構造を示す。加速度センサー素子10は、シリ
コン単結晶基板の周縁部に形成された支持枠部7と、中央部に形成された錘部5と、錘部
5と支持枠部7を接続する梁部6からなっている。梁部6にはピエゾ抵抗素子8が形成さ
れている。図6b)で、X方向の梁部にはX軸とZ軸のピエゾ抵抗素子、Y方向の梁部に
はY軸のピエゾ抵抗素子が設けられている。ピエゾ抵抗素子を繋ぐ配線等の図示は省略し
た。錘部5が外力を受けて動くと梁部は変形する。梁部の変形度合いをピエゾ抵抗素子の
抵抗値変化として得ることで、外力がどの方向からどの程度の大きさで加速度センサーに
加わったかを知ることができる。しかし、ピエゾ抵抗素子の抵抗変化は微小であるため、
梁部上に各軸当たり4個のピエゾ抵抗素子を配してフルブリッジ回路を構成し、微小な抵
抗変化を電圧変化として検出している。この構造の加速度センサー素子の加速度検出感度
は梁部6の変形量で決まるため、梁部の長さは長く、幅は狭く、厚みは薄くすることが求
められる。例えば高感度な加速度センサーでは梁部6の長さは500〜700μm、幅は
80〜120μm、厚みは5〜10μmとなっている。このため、衝撃の様な大きな加速
度が加わり、錘部5が多く動いた時に強度的に弱い梁部6が破損してしまう。
衝撃が加わっても梁部が破損しないように錘部の動きを規制する構造が、特許文献2に
示されている。衝撃が加わったとき、錘部の上面や下面がストッパーに接触し、過度の動
きを規制するものである。図7に示す様に錘部5の上方向は上部ストッパー基板88で規
制され、錘部5が上方向に動ける距離は空隙g1となる。同様に、錘部の下方向は下部ス
トッパー基板87で規制され、錘部5が下方向に動ける距離は空隙g2となる。空隙g1
とg2が小さ過ぎると、検出できる加速度の範囲が制限されることになり、大き過ぎると
梁部の破損を防ぐことができなくなる。そのため、空隙g1とg2は高精度に形成する必
要がある。特許文献2では、接着剤70に球状微粒子(以降、硬質プラスチック球と言う
)71を混練して、接着層の厚さを硬質プラスチック球71の径dで空隙を正確に制御し
ている。特許文献2では彫り込み部a,bを接着剤70の接着領域を制御するために形成
している。空隙g1=硬質プラスチック球径d+彫り込み部a寸法で決められる。
図6のg4が図7のg2、g3がg1に相当する。図7の下部ストッパー基板87は、
図6ではケース83の内底面に当たる。上部ストッパー基板88は規制板85である。図
6の接着剤73,74は、図7の接着剤70と同様に、空隙g3、g4を制御するため硬
質プラスチック球が混練されている。規制板85は、シリコン板やIC回路を有するシリ
コン板、ガラス板等が用いられる。
特開2004−212246号 公報 特開平8−233851 公報
特許文献1に記載されているように、規制板を設けることで耐衝撃性は大幅に向上する
が、規制板の接着による応力で不要な出力(ノイズ)が発生してしまう。ノイズ発生を抑
え耐衝撃性を得るため、特許文献1では、加速度センサー素子10の支持枠部7に塗布す
る接着剤73,74の、接着面積や接着位置、接着剤の種類等を詳細に規定している。接
着位置は偶数で対角線にすること、接着面積は梁部に近い接着剤73を接着剤74に比べ
小さくすること、接着剤は軟らかいシリコンゴム系樹脂が良いこと等々である。接着剤7
3には、規制板と支持枠部の強固な接着を求めるのではなく、ソフトな接着を行うのが良
いとしている。
特許文献1の様に、接着剤73,74に軟らかいシリコンゴム系の樹脂を用い、接着面
積や位置を制御することで、ノイズが小さく耐衝撃性の高い加速度センサーが得られてい
る。数多くの加速度センサーの耐衝撃性評価において、発生頻度は約0.02%非常に低
いが梁部が破損した加速度センサーが発生した。加速度センサーを分解して詳細に破損部
を調査した結果、加速度センサーの下側から上側方向(図6のケース83からケース蓋8
4の方向)に、過度の力が加わって折れたことが判明した。
前述した発生頻度は耐衝撃評価試験の結果で、強制的に一定方向に衝撃を与えたもので
ある。市場で使われている加速度センサーの全てに過度な衝撃が加わることはないし、衝
撃の加わる方向も一定ではなくばらばらである。そのため、衝撃によって梁部が折れる不
具合の市場での発生率は、限りなくゼロに近いと考えられる。しかし、1個でも不具合が
発生することは信頼性に繋がることであり、無くすことが必要である。
梁部が折れると言うことは何らかの原因で規制板の機能が失われた、つまり空隙g3の
値が変化したと考えられる。また梁部が折れる時に加わった力の方向から、図8に示す様
な現象が起こっていると考えた。図8a)は、加速度センサーに過度の力が加わっていな
い状態で、錘部5の下面とケース83の内底面との空隙g4は、硬質プラスチック球71
の径で規制されている。同様に、錘部5の上面と規制板85の下面との空隙g3も、硬質
プラスチック球71の径で規制されている。図8b)に示すように、上側から下側方向(
図6のケース蓋84からケース83の方向)に衝撃が加わったときは、シリコンゴム系の
軟らかい接着剤72を用いているので、空隙g3とg4は小さくなる方向に動くが、硬質
プラスチック71があるため空隙g3、g4の値は変化しない。上側から下側方向に衝撃
が加わったときに、錘部11のストッパーとして働くのはケース83の内底で、必要なの
は空隙g4となる。加速度センサー素子の錘部5や規制板85に比べ、ケース83は十分
大きな体積と重量を持っているので、ケース83の位置は変わらないとして説明している
図8c)に示す様に、下側から上側方向に衝撃が加わったときは、空隙g3とg4は広
がる方向に動く。このとき、錘部5のストッパーとして働くのは規制板85の下面で、必
要なのは空隙g3となる。必要な空隙g3が広がってg3’となり、規制板が機能を果さ
なくなったと考えられる。g4がg4’と広がっても、特に梁部の折れには影響しないと
考えられる。ノイズを減らすために軟らかい接着剤を用い、また接着剤の量も規制したた
め、g3がg3’になるのは避けられないことであったとも言える。
図8c)に示したg3がg3’になる現象が起こっているかを確認するため、梁部の折
れた加速度センサーの接着剤73の量を調べた。梁部が折れた加速度センサー素子の接着
剤の量は接着剤量の分布の下限領域にあるが、下限に偏っていることは無かった。そこで
、接着剤73を意図的に少なくした加速度センサーを50個作製して、10回衝撃を与え
る試験をおこなったところ、梁部が折れた加速度センサーが2個発生した。2個の加速度
センサーを分解して調査したところ、1個は規制板85と支持枠部7を接着している接着
剤73の4ヶ所の内2ヶ所が剥がれており、梁部は支持枠部7と梁部6の境界近傍で折れ
ていた。他の1個は規制板の剥がれは無かったが、同様に支持枠部7と梁部6の境界近傍
で折れていた。衝撃が加わったときに、空隙g3がg3’に変化しているとの推測は、接
着剤73の量を極端に減らした実験で確かめられた。この結果から、耐衝撃性を上げるに
は接着剤の量を多くする必要があることが判るが、接着剤の量を多くするとノイズの発生
に繋がってしまう。このことから、図6に示した従来の加速度センサー構造では、高感度
と耐衝撃性と相反する関係にある両方の要求を同時に満たすことは難しいと思われる。
本願発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、高感度と高耐衝撃
性の両方を同時に満たすことができる、小型で薄型の3軸加速度センサーを提供すること
を目的とする。
本願発明の3軸加速度センサーは、支持枠部と支持枠部に梁部を介して保持される錘部
、梁部に設けられた半導体ピエゾ抵抗素子と配線よりなる加速度センサー素子と、錘部の
動きを規制する平板のIC規制板が、下内底と少なくとも1段以上の上内底からなるケー
ス内底を有するケースに装着され、球形スペーサーを混練したシリコンゴム系樹脂で加速
度センサー素子の支持枠部下面とケース下内底とが接着されて、錘部下面とケース下内底
との間に空隙g4を形成して錘部の動きが規制され、球形スペーサーを混練したシリコン
ゴム系樹脂でIC規制板下面と平坦な加速度センサー素子上面とが接着されて、IC規制
板下面と加速度センサー素子上面との間に空隙g3を形成して錘部の動きが規制され、加
速度センサー素子上面に設けられたセンサー端子とIC規制板上面に設けられたIC端子
、およびIC規制板上面に設けられたIC端子とケース上内底に設けられたケース端子は
それぞれワイヤーで接続され、ケースはケース蓋で封止された加速度センサーである。加
速度センサーのケース上内底上まで延びたIC規制板下面の一部が、ケース上内底に接着
剤で固着されることで、衝撃による空隙g3と空隙g4の広がりが抑制されることが好ま
しい。
ケースは下内底と少なくとも1段以上の上内底からなる内底を有しており、加速度セン
サー素子の支持枠部下面が接着される内底面と内底面の各段は平行であることが好ま
しい。加速度センサー素子の支持枠部下面が接着される内底と内底の各段の、中心は
同じである必要は無い。また、各段は中心線に対し対称形状である必要もない。例えば、
ケースを開口部側から見たとき、右側が2段で左側が3段の内底を有する形状でも良い
ものである。少なくとも、加速度センサー素子の支持枠部が接着されるケース下内底とI
C規制板が接着されるケース上内底の段があり、これらの段が平行であることが必要であ
る。
加速度センサー素子の支持枠部下面が接着されるケース下内底とIC規制板下面が接着
されるケース上内底の間隔は、加速度センサー素子の高さと接着剤に含まれる硬質プラス
チック球の径の2倍(支持枠部とケース下内底間と支持枠部とIC規制板間の2ヶ所)よ
り、数μmから数10μm小さいことが好ましい。この数μmから数10μmがケース上
底面とIC規制板下面を固着する接着剤の厚みとなる。これにより、加速度センサー素子
はケース下内底面とIC規制板下面間に、硬質プラスチック球が混練された接着剤で保持
されることになる。これにより、加速度センサーの下側(ケース側からケース蓋側方向)
から過度の衝撃が加わっても、IC規制板下面と錘部上面との間隔は硬質プラスチック球
により規制されるので、従来の規制板がケースに固定されていない加速度センサーのよう
に空隙が変わることはなく、IC規制板が規制効果を果すものである。
加速度センサー素子とIC規制板は電気的にワイヤーで結合する必要がある。そのため
、IC規制板から見たとき、加速度センサー素子のワイヤー接合部分は、IC規制板から
はみ出していることが好ましい。IC規制板から加速度センサー素子の1辺から3辺がは
み出した状態で、IC規制板の下面と加速度センサー素子の上面間は、硬質プラスチック
球を混練したシリコンゴム系接着剤で接着されることが好ましい。
シリコンゴム系接着剤のヤング率が10×10−4GPa以下であることが、接着時の
応力を緩和しノイズの発生を最小限にすることができる点で好ましい。1wt%の硬質プ
ラスチック球をシリコンゴム系樹脂に入れて、均一に分散するまで良く撹拌したシリコン
ゴム系接着剤は、支持枠部の4隅の対称位置に略同量塗布することが好ましい。支持枠部
の接着剤の塗布量は、ノイズ発生と関係深いIC規制板側はでき得る限り少なくすること
が好ましく、極端な言い方をすると硬質プラスチック球が脱落しない程度の接着強度が好
ましいものである。支持枠部下面とケース下内底間の接着剤は、梁部より離れていること
もあり、ノイズ発生には余り関係がない。そのため、接着剤の量の上限ではなく、加速度
センサー素子がケース内底から衝撃を受けても剥がれない様にするための、下限を決める
ことが好ましい。
規制板をIC回路付きのIC基板(IC規制板)とすることが好ましい。従来のガラス
等の規制板とIC回路を一つに纏め、IC規制板とすることで部品点数を減少することが
でき、加速度センサーの小型化と低価格化に大いに寄与する。また、ピエゾ抵抗素子とI
C回路を接近させることができ、加速度センサーの温度補償精度の向上も図れる。IC規
制板は過度な衝撃が加わっても、変形しない機械的強度を有する厚みとすることが必要で
ある。
ケース上内底上まで延びたIC規制板の下面の一部は、ケース上内底に固着されること
が好ましい。固着とは、過度の衝撃が加わったときでも、接着層の厚みが変化しない接着
を言う。接着層の厚みが変化しなければ、接着材の種類や量の選択は自由にできる。例え
ば、IC規制板と加速度センサー素子を接着する、硬質プラスチック球を混練したシリコ
ンゴム系接着剤をそのまま使用することもできる。但し、接着剤の量を多くすることと、
接着層の厚みが硬質プラスチック球の径より大きいことが条件となる。他には、強固に接
着できるエポキシ系の接着剤を使用することもできる
ケース蓋の材質は、金属やセラミック、ガラス、プラスチック等とすることができる。
外部の湿気やごみが加速度センサー内に入り込まないように、ケース蓋とケースは樹脂や
ロウ付け等で密封接合されていることが好ましい。
IC規制板の端部をケース上内底面に固着し、加速度センサー素子をIC規制板下面と
ケース下内底間に、硬質プラスチック球を混練したシリコンゴム系接着剤で接着する構造
とすることで、加速度センサーのケース側からケース蓋側に過度の衝撃が加わっても、梁
部の損傷を防ぐことができた。IC規制板と支持枠部の接着剤の量を最小限にすることで
、接着応力により発生するノイズを抑えることができ、高感度と高耐衝撃性の両方を同時
に満たすことができる小型で薄型の3軸加速度センサーを提供することができた。
以下本願発明を図面を参照しながら実施例に基づいて詳細に説明する。説明を判り易く
するため、同一の部品、部位には同じ符号を用いている。
図1は本願発明の加速度センサーの分解斜視図である。図2はケース蓋を取り外した状
態の加速度センサーの平面図である。図3は、図1及び図2のk−k’断面図である。加
速度センサー素子10はケース13のケース下内底131面に、Ф10μmの硬質プラス
チック球が混練りされたシリコンゴム系の接着剤74で接着した。加速度センサー素子1
0のセンサー端子18部をIC規制板21からはみ出させて、Ф10μmの硬質プラスチ
ック球が混練りされたシリコンゴム系の接着剤73で接着した。IC規制板21の下面の
一部にエポキシ系樹脂を塗布し、ケース上内底132面に接着した。加速度センサー素子
10のセンサー端子18はIC規制板21のIC端子17に、IC端子17はケース端子
22にワイヤー19と23で接続した。ワイヤー19,23にはФ25μmの金の裸線を
用い、各端子に超音波ボンディングを行った。加速度センサー素子で得られた加速度信号
は、IC規制板21のIC回路を通り外部端子24に出力される。ケース蓋は、エポキシ
系接着剤76でケースの上辺面に固着した。
図2に、硬質プラスチック球が混練されたシリコンゴム系の接着剤73の塗布位置を、
破線の丸で示す。支持枠部の四隅にK−K’線に対称位置に塗布した。硬化した後での接
着剤73の接着径は、50〜150μmとした。IC規制板21とケース上内底132の
接着位置も破線の丸で示す。ケース上内底132は3辺に形成しており、その3辺に4ヶ
所でIC規制板を接着した。接着剤75はエポキシ系樹脂を用い、100〜250μmの
接着径面積とした。接着剤75の接着剤の量や塗布位置の精度は、接着剤73に比べると
一桁粗いものである。支持枠下面とケース下内底131を接着する接着剤74の接着位置
の図示は省略した。接着剤74は梁部に接着応力を殆んど与えないので、接着剤の量や塗
布位置の精度は、接着剤73に比べると一桁粗いものとし作業効率を上げている。
加速度センサー素子10は、図1から図3に示す形状である。外形寸法は縦2.0mm
x横2.3mmで厚さは約0.63mmである。横寸法が縦寸法に対し0.3mm大きい
のは、センサー端子18を設けるためである。センサー端子部の0.3mmを除いた2.
0mm角が加速度センサー素子10の加速度検出部と言える。支持枠部7の幅は200μ
m、梁部6の長さは550μm、錘部5の幅は500μmとした。梁部6の幅は90μm
、厚みは6μmとした。錘部5と支持枠部7の厚みは632μmとした。
実施した加速度センサー素子10の製造方法を簡単に説明する。625μm厚のシリコ
ン板に1μm程度のシリコン酸化層と6μmのシリコン層の積層構造を有するSOI(S
ilicon on Insulator)ウェファーを使用した。フォトレジストでパ
ターニングを行い、シリコン層にボロンを1〜3×1018原子/cmを打ち込みピエ
ゾ抵抗素子8を作製した後、ピエゾ抵抗素子8を外部のイオンから保護するためと、シリ
コンとアルミ配線、電極の絶縁を確保するために、0.2〜0.5μm厚に酸化シリコン
の絶縁膜を形成した。ピエゾ抵抗素子に接続するアルミ配線と電極、可撓部等を、フォト
レジストのパターニングとスパッタリング成膜装置、ドライエッチング装置等を用いて形
成した。シリコン酸化層がエッチングストッパーとなるため、エッチングされるのはシリ
コン層のみである。ピエゾ抵抗素子面側を下にして、熱伝導の高い金属粉末を樹脂に混錬
したものを用いて、ダミー基板に接着した。SOIウェファーのシリコン板部分の625
μmをドライエッチングするには、SFと酸素を導入したプラズマ内で長時間行うため
、被加工物の冷却が重要であるので、熱伝導の良い接着剤で放熱性の高いダミー基板に接
着するものである。ドライエッチングされるのはシリコンのみであるので、シリコン板は
エッチングされるが、シリコン酸化層は残っている。ダミー基板に付けたまま弗酸溶液に
浸け、シリコン酸化層を化学エッチングで除去した。梁部と錘部、支持枠部が形成された
SOIウェファーがダミー基板に接着された状態で、切断砥石を使って加速度センサー素
子のチップに分離した後、溶剤で接着剤を除去し加速度センサー素子単体を得た。
ケース13は、2段の内底を有するアルミナ製である。ケース下内底131は約2.5
×約2.2mmとし、ケース側面と加速度センサー素子側面は約0.1mm離している。
ケース上内底132は、0.2〜0.3mmの幅を持った略コの字型である。ケース上内
底面132とケース下内底面131との間隔は、632μmの加速度センサー高さと10
μm厚の接着剤73と74の合計652μmより、12μm小さい640μmとした。こ
の12μmが接着剤75の厚みとなる。
IC規制板21は2.6mm角×0.13mm厚の大きさで、ケース上内底面に約0.
2mm被せエポキシ系の接着剤75で固着した。IC規制板21と加速度センサー素子1
0の上面との空隙は、硬質プラスチック球入りのシリコンゴム系接着剤73で10μmに
規制した。硬質プラスチック球入りのシリコンゴム系接着剤73,74の仕様は、次の通
りである。硬質プラスチック球71は、ジビニルベンゼンを主成分とする架橋共重合体で
、熱膨張係数は98×10−6(deg.−1)である。シリコンゴム系接着剤72は、
熱膨張係数300×10−6(deg.−1)、ヤング率8.8×10−4(GPa)で
ある。シリコンゴム系接着剤72に硬質プラスチック球71を1(wt%)混練し、接着
剤73,74とした。
ケース13に加速度センサー素子10を接着した後、IC規制板21を接着しワイヤー
19,23の超音波ボンディング行ない、ケース蓋14を接着剤76で固着し加速度セン
サー1を得た。ケース蓋14はケース13と同じアルミナで製作した。接着剤76には、
エポキシ系樹脂を使用した。
図4に、ケースとケース蓋変えた実施例を示す。ケース蓋14’にアルミ板を採用し、
軽量化と低価格化を行ったものである。実施例1のアルミナ製のケース蓋に比べ厚みも薄
くできたため、ケース蓋重量を約1/5とすることができた。また、価格も約1/3とす
ることができた。図4a)と図4b)は、アルミナ製のケース13であるが、内底が異な
っている。図4a)は、ケース上内底132が枠状に形成され、ケース上内底132の2
辺にケース端子22が設けられている。ケース上内底132とケース下内底131は同一
の中心線を持っている。中心線に対し左右対称形となっているので、ケース13は左右を
識別する必要がないので、加速度センサーを組立てる装置へのケース13の供給が容易と
なった。
図4b)は、3段の内底を有する構造である。ケース下内底131に加速度センサー素
子を接着、ケース上内底132にIC規制板を接着する。ケース上内底133にケース端
子22を設けており、ケース端子22はケース上内底132に接着されたIC規制板のI
C端子17とワイヤー23で接続した。IC端子17とケース端子22の高さを略同じと
することで、超音波ボンディング作業が非常にやり易くなった。
図5に、加速度センサー素子10とIC規制板21の配置を変えた実施例を示す。図5
は、ケース蓋14を外した状態での平面図である。加速度センサー素子10とIC規制板
21の配置を変えるためには、ケース13のケース下内底131やケース上内底132の
配置や形状を変える必要がある。しかし、本実施例は加速度センサー素子10とIC規制
板21に配置関係が主であるので、ケース13の形状に付いての説明は省略する。図5a
)は、長方形の加速度センサー素子10と長方形のIC規制板21を90度ずらして配置
したものである。IC規制板21の両辺をケース上内底132に接着している。長方形の
IC規制板を使用するときに有効な配置である。図5b)は、方形の加速度センサー素子
10とIC規制板21を、対角線上でずらして配置したものである。IC規制板21は2
辺のケース上内底132に接着している。図5b)は、略正方形の加速度センサー素子1
0を使用した。
実施例1の加速度センサー(試料#1)と実施例2の図4b)の加速度センサー(試料
#2)、実施例3の図5a)、図5b)加速度センサー(試料#3,4)を作製し、耐衝
撃性を測定した。比較のため図6に示す従来品の加速度センサー(試料#5)も作製した
。各々、1000個製作し耐衝撃試験を行った。評価は次の手順で行った。イ)出力測定
、ロ)衝撃印加、ハ)出力測定、ニ)出力NG試料は分解検査へ、出力OK試料は、ロ)
の衝撃印加とハ)の出力測定を繰返した。ロ)ハ)の繰返しを20回行うことで最大21
回の衝撃が加わったことになり、言い換えると約21,000個の試料#1〜#5の加速
度センサーを供試したこととなる。従来品での梁部の折れの発生率は、0.02%程度と
低いため数多くの加速度センサーを供試する必要があるが、供試できる数にも限度がある
ため、前述した試験方法を採用した。0.02%の発生率は5000個の加速度センサー
で1個の梁部折れが発生することになる。実質21,000個の試料#1〜#5の加速度
センサーを供試することで、効果を判定できる結果を得ることができる。
20個の加速度センサーを2mm厚の鉄製治具に固定し、治具を加振器に固定し20G
の加速度を加えた時のX,Y,Z軸の出力を測定した[評価手順イ]]。出力を測定した
後、治具に取り付けた状態で厚さ100mmの木板の上に、高さ1.5mから自然落下さ
せて衝撃を与えた[評価手順ロ]]。この高さから落下させると約6000から7000
Gの衝撃が加速度センサーに加わる。衝撃の加わる方向は、IC規制板21と梁部6間の
空隙g3がg3’と大きくなる方向である。衝撃を加えた後、再度治具を加振器に固定し
20Gの加速度を加え、X,Y,Z軸の出力を測定した[評価手順ハ]]。出力のない加
速度センサーは梁部が折れたとして分解調査を行った[評価手順ニ]]。出力のある加速
度センサーは、板上に自然落下と出力測定を繰返した[評価手順ロ],ハ]]。
試料#1から試料#4の本願発明品の加速度センサーでは、梁部が折れる不具合は発生
しなかった。比較のために試験した従来の加速度センサーの試料#5では、3個の梁部が
折れる不具合が発生した。発生頻度は約0.014%であった。不具合品を分解して調査
したところ、何れの加速度センサー共、加速度センサー素子の支持枠部と梁部の境界近傍
部で梁が折れていた。折れていた箇所は何れも1ヶ所であった。3個の加速度センサーで
不具合が発生したのは、3回目と9回目、15回目の衝撃を加えたときであった。この結
果から、本願発明の加速度センサーは、十分な耐衝撃性を有することを証明できた。
本願発明の実施例1の加速度センサーの分解斜視図である。 本願発明の実施例1の加速度センサーのケース蓋を取り外した状態での平面図である。 本願発明の実施例1の加速度センサーのk−k’断面図である。 本願発明の実施例2のケースとケース蓋を変えた加速度センサーの断面図である。 本願発明の実施例3の加速度センサー素子とIC規制板21の配置を示す平面図と断面図である。 従来の加速度センサーの断面図である。 従来の加速度センサーの断面模式図である。 空隙g3、g4の変化を説明する図である。
符号の説明
1 加速度センサー、5 錘部、
6 梁部、7 支持枠部、
8 ピエゾ抵抗素子、10 加速度センサー素子、
13 ケース、14,14’ ケース蓋、
17 IC端子、18 センサー端子、
19 ワイヤー、21 IC規制板、
22 ケース端子、23 ワイヤー、
24 外部端子、70 接着剤、
71 硬質プラスチック球、73,74,75,76 接着剤、
83 ケース、84 ケース蓋、
85 規制板、87 下部ストッパー基板、
88 上部ストッパー基板、131 ケース下内底、
132 ケース上内底。

Claims (2)

  1. 支持枠部と支持枠部に梁部を介して保持される錘部、梁部に設けられた半導体ピエゾ抵
    抗素子と配線よりなる加速度センサー素子と錘部の動きを規制する平板のIC規制板が
    下内底と少なくとも1段以上の上内底からなるケース内底を有するケースに装着され、
    球形スペーサーを混練したシリコンゴム系樹脂で加速度センサー素子の支持枠部下面とケ
    ース下内底とが接着されて、錘部下面とケース下内底との間に空隙g4を形成して錘部の
    動きが規制され、
    球形スペーサーを混練したシリコンゴム系樹脂でIC規制板下面と平坦な加速度センサー
    素子上面とが接着されて、IC規制板下面と加速度センサー素子上面との間に空隙g3を
    形成して錘部の動きが規制され、
    加速度センサー素子上面に設けられたセンサー端子とIC規制板上面に設けられたIC端
    子、およびIC規制板上面に設けられたIC端子とケース上内底に設けられたケース端子
    はそれぞれワイヤーで接続され、
    ケースはケース蓋で封止された加速度センサーであって、
    ケース上内底上まで延びたIC規制板下面の一部が、ケース上内底に接着剤で固着される
    ことで、衝撃による空隙g3と空隙g4の広がりが抑制される
    ことを特徴とする3軸加速度センサー。
  2. IC規制板下面の一部とケース上内底とを固着する接着剤が、IC規制板と加速度セン
    サー素子を接着するのと同じ球形スペーサーを混練したシリコンゴム系樹脂であることを
    特徴とする請求項1に記載の加速度センサー。
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