JP4269068B2 - 患者用敷布 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、介護用品の一つとして使用される患者用敷布に関し、特に老人若しくは医療介護用の寝具であり、抗菌若しくは殺菌機能を付加して衛生面と介護労力の軽減を図った患者用敷布に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、少子高齢化社会への移行と福祉の向上要求により、寝たきり老人若しくは疾病者等(以下、被介護者)の介護を必要とする人々が増加しつつある。特に、身体的運動能力、若しくは、筋力等の衰えにより、仰臥姿勢を変えることが困難な被介護者の方もおられる。このような被介護者の場合、寝具に圧迫される皮膚表面が床ずれなどにより、褥瘡が発生し、やがては壊疽、潰瘍を起こす場合がある。そこで、被介護者の皮膚が直接若しくは間接に触れる寝具は、常に清潔性を維持することが強く求められている。この寝具の清潔性を満足するには、第1に、寝具などの洗濯若しくは天日干しが好ましい。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、シーツの交換や、寝具の洗濯等の作業は手間のかかるものである。特に、寝具の交換にあっては、被介護者の体下に敷かれた寝具を交換するのであるから、被介護者の体を動かさねばならず、多大な労力が要求される作業となっている。特に、養護老人施設、病院等の被介護者が多い施設にあっては、被介護者一人一人に対する作業時間と労力の多さから、施設運営上、大きな負担となる傾向がある。
【0004】
また、日本の気候特徴である梅雨時にあっては、シーツの洗濯及び乾燥は、乾燥機を備える専門業者に委託できるが、寝具そのものは天日干しによる乾燥と日光殺菌が十分に行えない場合がある。特に家庭内介護の場合、それらの不都合度合いは、被介護者の健康に重大な影響を与える場合もありうる。また、従来の蒲団では、寝具とシーツが別物であり、シーツは洗濯及び乾燥を、寝具は天日干しといった2種類の作業が必要であった。そこで、被介護者の使用する寝具の天日干しといった作業の軽減と、細菌の増加を極力低下させうる寝具が求められている。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、細菌の増殖を抑えつつ、しかも、寝具のメンテナンス作業を低減できると共に、被介護者の移動労力を低減できる患者用敷布を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の患者用敷布は、タオル生地などの肌触りの良い上側辺縁布を上側中央抗菌布の周囲に縫いつける。この上側辺縁布は、O−157などの大腸菌の発生を抑制する抗菌処理が施してある。この上側辺縁布の裏側にも、この上側辺縁布と同様のタオル生地で作られた下側辺縁布がある。同様に、上側中央抗菌布の裏側にも、抗菌処理が施された下側中央抗菌布がある。そして、上側中央抗菌布と、裏側の下側中央抗菌布とで、遠赤外線を射出すると共に吸湿、抗菌作用のある充填物を内部に挟んだ。縫製された上側中央抗菌布及び下側中央抗菌布にキルティング処理により表面に凹凸を形成して通気性を良くすると共に、上側中央抗菌布に抗菌処理と表面を摩擦係数が小さく滑性のあるものとした。また、上側辺縁布の四隅には、スリットが形成させ、被介護者が患者用敷布上に仰臥した状態で搬送可能とした。
【0007】
【発明の実施の形態】
本明細書で使用される文言「抗菌」には、細菌を死滅させる殺菌や、細菌の数を減らす減菌や、細菌の増殖を抑制する意味があるものとする。つまり、「抗菌」という文言は、「殺菌」や「減菌」と同義に用いられている。同様に、文言「消臭」には、臭気を吸着したり、臭気を発生させる菌を殺したりすることによる防臭、臭気(アンモニア等の不快臭)そのものを分解したりする意味などがあるものとする。文言「保温」には、冷気の進入や、体熱が外気に奪われることを防止するなどの防寒その他、体温の低下を直接、間接に防ぐ意味があるものとする。また、文言「吸湿」には、乾燥、防湿、除湿などの作用が含まれるものとする。
【0008】
(1)患者用敷布の構造
図1は、本発明に係る患者用敷布1の上観図を示している。図2は、本発明に係る患者用敷布1の下面を観た図である。図3は、患者用敷布1の長手方向に切断した垂直断面図を示している。図4は、本発明に係る患者用敷布1の組み立て図である。本発明の患者用敷布は、寝具上で、O−157(病原性大腸菌)、院内感染で知られるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、腸内細菌、ブドウ球菌、緑膿菌、カンシダのような真菌(真菌感染症)その他の細菌などの発生若しくは増殖を抑えることと、保温性の向上などを目的とする。よって、本発明の患者用敷布1には、様々な効果を持つ布が複合的に用いられている。
【0009】
本発明の患者用敷布1は、2枚の大きな布で内部に中綿を封入して綴じ込んだ構造に作られている。すなわち、患者用敷布1の上側は、外形が長方形で、1枚布の上側中央抗菌布2と、中央部に長方形の穴を備える上側辺縁布3とから構成されている。上側中央抗菌布2には、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)や緑膿菌、大腸菌の増殖防止処理が施された布が使用されている。
【0010】
上側辺縁布3には、O−157(病原性大腸菌)などの口腔感染する菌を抑制する抗菌処理が施されたタオル生地が使用される。大腸菌を抑制する抗菌処理としては、カテキンなどの天然物質が練り込まれた繊維で作られた布が該当する。
【0011】
また、上側中央抗菌布2と上側辺縁布3とは、ミシン縫いなどの手段により、1枚の布に縫製されているが、その境界部近傍で、かつ上側中央抗菌布2の四隅のあたる上側辺縁布3には、4箇所のスリット4、5、6、7が設けられている。このスリット4、5、6、7は、患者用敷布1を上下に完全に貫通された穴であり、その大きさは、人体の手が差し込める大きさとされている。つまり、スリット4、5、6、7の長手方向のサイズは、約10〜15センチ前後とされている。
【0012】
図2には、患者用敷布1の下面の様子が示されているが、この患者用敷布1の下側も、外形が長方形で、1枚布の下側中央抗菌布8と、中央部に長方形の穴を備える下側辺縁布9とから構成されている。下側中央抗菌布8は、上記の上側中央抗菌布2と同じ外形と大きさに作られており、上側中央抗菌布2と下側中央抗菌布8とによって、中綿が上下方向から挟まれている。
【0013】
下側辺縁布9も、上記上側辺縁布3と同じ外形と大きさに作られている。しかも、下側辺縁布9は、抗菌処理が施されたタオル生地で作られている。そして、下側中央抗菌布8の四隅に位置する下側辺縁布9部分に上記されたスリット4、5、6、7が開けられている。下側中央抗菌布8と、上記上側中央抗菌布2との間には、綿又は羊毛又は羽毛などの充填物10が挟まれている。
【0014】
図5には、上側中央抗菌布2を上観した様子が示されている。上側中央抗菌布2と下側中央抗菌布8とが合わせられる際、内部に長尺状の充填物10が多数挟み込まれる。そして、上側中央抗菌布2の短手方向に、ミシン縫いで作られる平坦部11が複数箇所施されている。つまり、充填物10が上側中央抗菌布2と下側中央抗菌布8とで上下方向より挟まれた後、複数の平坦部11が作られて、キルティングに似た形状の蒲団に上側中央抗菌布2及び下側中央抗菌布8で作られる。
【0015】
図6には、平坦部11の部分拡大図が示されている。一つの平坦部11は、2〜5列のミシン縫い12(図6では、5列のミシン目)が等間隔に集まって形成されている。これにより、上側辺縁布3(及び下側中央抗菌布8)の平坦部11部分に、所定幅の平坦(凹み)部分ができると共に、平坦部11のない上側辺縁布3部分は、内部の充填物10によってもりあがった膨らみ部13が形成される。これにより、上側辺縁布3の表面は、平坦部11と膨らみ部13とが交互に並んで波打った形状に作られる(図3参照)。
【0016】
平坦部11のミシン縫い12は、上側中央抗菌布2と下側中央抗菌布8とを合わせて行われているので、平坦部11において、上側中央抗菌布2と下側中央抗菌布8とが密着した形状となる。このような形の下側中央抗菌布8がベッド又は敷き蒲団上に敷かれると、複数の平坦部11により、下側中央抗菌布8の短手方向への空気の流れができやすく、換気の役目を果たすことができる。つまり、上側中央抗菌布2又は下側中央抗菌布8表面の換気を平坦部11部分でより良好に行わせることができる(図3参照)。
【0017】
なお、平坦部11がミシン縫いで形成されるとき、その部分の充填物10が除去されて行われても良い(図4参照)。つまり、平坦部11部分の上側中央抗菌布2と下側中央抗菌布8との間に、充填物10が完全に無くても良い。この場合、充填物10は、細長い充填物10の集まりを、膨らみ部13にのみ満たすことになる。これにより、充填物10の膨らみをより大きく保持させた状態で、上側中央抗菌布2と下側中央抗菌布8とを縫い合わせることができる。
【0018】
しかし、その平坦部11部分に充填物10があっても良い。つまり、一枚布のように均一に広げられた充填物10を上下方向から上側中央抗菌布2と下側中央抗菌布8とで挟んだ後、平坦部11部分をミシン縫いして、充填物10を上側中央抗菌布2及び下側中央抗菌布8と一体に縫いつけても良い。これにより、上側中央抗菌布2と下側中央抗菌布8との間で充填物10が、洗濯や被介護者の体圧力などの理由により、移動することが極力防止できる。
【0019】
このように、上側中央抗菌布2と下側中央抗菌布8とで充填物10を上下方向より挟んだ後、ミシン縫いが行われて上下各表面が波打ち形状に作られた物の周りに、上側辺縁布3及び下側辺縁布9が縁側のように縫いつけられて患者用敷布1となる(図4参照)。患者用敷布1全体の大きさは、長手方向が約1メートル30センチで、短手方向の幅が約80センチとされている。しかし、これ以上の大きさでも良いし、これ以下の大きさでもよい。
【0020】
ところで、スリット4、5、6、7は、上下一体に縫い合わされた上側辺縁布3及び下側辺縁布9を上下方向に貫通する穴として形成されているが、その穴の周りは、布のほつれを防止すべく、チェーンステッチなどの処理が施されている。
【0021】
ところで、被介護者は、一般にベッド上で食事をする場合が多い。特に、骨折等の重大な怪我を負った傷病者にあっては、ベッド上で、食事を取らざるを得ない。また、就寝時においては、被介護者の手、顔(特に、口)が患者用敷布1の周辺部分に位置する。よって、患者用敷布1の縁周りにおいてO−157等の口腔感染の虞のある菌の発生を抑制させれば、手や顔や口にO−157の菌が付着することを効果的に防止でき、体内にそのO−157等の菌の進入を効率よく防止できる。
【0022】
また、被介護者は、一般に寝間着その他の下着等を体部分に着るのが一般的であるが、手や足、顔は表出しているのが一般的であり、その部分に上側中央抗菌布2が用いられると、肌触りの悪さなど、被介護者の使用感が悪い、しかし、被介護者の寝返り、褥瘡の防止には、摩擦係数が小さく滑性の高い布が求められる。そこで、本発明は、被介護者と接触するそれぞれの部位に好ましい布を用いて組み合わせることで、使用感と、菌の増殖と、介護者の労力軽減といった3つの課題を同時に解決させるようにしたものである。
【0023】
(2)上側辺縁布3及び下側辺縁布9の布材質の説明
上側辺縁布3及び下側辺縁布9には、O−157などの細菌やウィルスの発生や増殖抑制の目的で、消臭・抗菌処理が施されたタオル生地が用いられる。消臭・抗菌処理とは、消臭・抗菌剤を繊維に付着させたり、繊維の原料中に練り込んだりする処理その他を意味する。例えば、抗菌剤を繊維表面に蒸着させたり、繊維作成時に、繊維原料に抗菌剤を練り込んだりなどの処理がある。消臭・抗菌剤としては、二酸化チタン、銀、カテキン等が知られている。二酸化チタンは、光触媒作用により抗菌作用を発揮する。
【0024】
また、上側辺縁布3及び下側辺縁布9は、スリット4、5、6、7に介護者が手を差し込んで持ち上げられて、患者用敷布1上の被介護者の搬送や寝返り作業が行われる。このため、介護者の手の滑り止め及び介護者の握りやすさと、被介護者の肌感触の改善とを目的としてタオル生地が用いられている。
【0025】
さらに、床よりやや浮いた位置に被介護者が寝かせられるベッドなどで、被介護者と共にそのベッドから患者用敷布1がズレ落ちることを防止するためタオル生地が用いられている。つまり、上側辺縁布3及び下側辺縁布9部分は、表面抵抗の比較的大きくかつ肌触りの柔らかい起毛処理が施された生地が用いられている。また、上側辺縁布3部分には、被介護者の頭部や手、足が位置するので、その上側辺縁布3に施される抗菌剤としては、カテキンなどの天然素材の抗菌剤がより、心理的な安心感を使用者(介護者及び被介護者)に与える。
【0026】
なお、上側辺縁布3及び下側辺縁布9に使用される布地の繊維密度は、縦方向が3.8センチ中に2.0単子が32.5本で、横方向が2.0センチ中に2.0単子が38本であった。高密度リップ糸(上側中央抗菌布2や下側中央抗菌布8に使用される場合もある)は、縦糸が1インチ当たり174本で、横糸が1インチ当たり120本の密度である。また、上側辺縁布3及び下側辺縁布9の堅牢度(荷重をかけて擦った場合の劣化度合いのJIS基準値)は、乾燥時が3級で、湿潤時が3〜4級である。
【0027】
(3)上側中央抗菌布2の布材質の説明
他方、上側中央抗菌布2及び下側中央抗菌布8にも、抗菌処理が施された生地が用いられるが、下側中央抗菌布8には、消臭作用の処理が施される。上側中央抗菌布2は、ポリアミド系合成繊維やレーヨンやポリエステルなどの化学繊維や、絹などの表面に摩擦係数が小さく滑性が比較的ある天然繊維又は綿その他の繊維や、これら複数の繊維の混合物が用いられるが、用いられる繊維には抗菌防臭処理が施されている。この上側中央抗菌布2には、吸湿作用または透湿作用の処理が施され、この吸湿作用または透湿作用の処理によって通気性を有することになる。上側中央抗菌布2の上には、被介護者が仰臥するので、寝具との褥瘡(床ずれ)が発生しやすい。
【0028】
そこで、院内感染菌であるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)や、患者の褥瘡部位に検出される緑膿菌、大腸菌などの増殖を抑制して褥瘡の悪化若しくは発生を防止すべく、特殊銀系セラミックスなどの抗菌剤が、繊維中に練り込まれるか、又は繊維表面に堅牢に付着されたもので作られた生地が上側中央抗菌布2に用いられる。しかも、上側中央抗菌布2に用いられる生地の表面は、比較的、滑らか(肌触りや風合いが良好)なので、人体皮膚との摩擦が低減でき、褥瘡の発生若しくは悪化を防止できる。
【0029】
なお、抗菌剤として二酸化チタンその他の光触媒物質が用いられた場合、布表面に照射される太陽光又は蛍光灯などの室内光により、光触媒反応が発生され、消臭と抗菌効果が発揮される。このように、上側中央抗菌布2は、被介護者の人体に間接又は直接に接する布なので、摩擦係数が小さい生地表面の滑性と、殺菌若しくは抗菌機能のある布が用いられる。この上側中央抗菌布2に用いられる生地の一例には、サニター30(クラレ株式会社の製品)などがある。サニター30は、特殊銀系セラミックスがポリエステル繊維の溶融紡糸の際に練り込まれた抗菌防臭繊維である。
【0030】
サニター30の特殊銀系セラミックスは、抗菌剤であり、抗菌効果のある金属、例えば、銀、亜鉛その他の金属を含有したセラミックスである。この特殊銀系セラミックスによる増殖を抑える効果のある細菌は、枯草菌、緑膿菌(褥瘡の原因菌)、肺炎枯菌、大腸菌、サルモネラ菌、腸炎ビブリオ菌、白癬菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などである。
【0031】
また、クラレ株式会社により販売されている商品名、シャインアップ(商標)EXの布でもよい。このシャインアップEXは、ポリエステル繊維とポリアミド系合成繊維繊維とからなる複合繊維に金属含有セラミックス系の特殊消臭剤(二酸化チタンが含まれている)が練り込まれており、二酸化チタンの光触媒反応により消臭と抗菌効果が発揮される。株式会社信州セラミックスから販売されている布などでも同様のものがある。
【0032】
(4)充填物10の説明
充填物10には、上述されたように、綿若しくは羽毛、その他人工繊維、天然繊維、活性炭やセラミックスなどの吸臭物質、木炭その他の吸湿物質などの一つ又は2つ以上が組み合わされて用いられても良い。本実施例では、遠赤外線を放射すると共に吸湿性のある第1内蔵物(繊維又は中綿)と、抗菌処理(殺菌能力)が施された第2内蔵物(繊維又は中綿)とが用いられる。
【0033】
(5)充填物10の第1内蔵物の説明
第1内蔵物としては、天然ゼオライトを原料としたセラミックスが、天然繊維又は人工繊維に練り込み又は付着された羊毛タイプの詰め物が用いられる。ゼオライトとは、水分子を結晶水の形で分子構造中に含む含水アルミノ珪酸塩鉱物である。より詳しくは、ゼオライトの化学組成は、ケイ酸塩のケイ素の一部がアルミニウムに置換された形の縮合酸塩であり、SiO4―AlO4の連結四面体における三次元網目構造によるため、空洞を含む構造が形成されている。
【0034】
その空洞、あるいはその空洞が連結してできる孔路の中に、そのアニオン(陰イオン)と対応すべくカチオン(陽イオン)、さらには、結晶水が金属イオンの静電気的引力により存在している。骨格のケイ素とアルミニウムの比、又は陽イオンの種類、数等によって各種構造のゼオライトが存在する。ゼオライトの一般的性質としては、陽イオン交換能、分子フルイ作用、極性物質の吸着、触媒作用、遠赤外線の放射等がある。
【0035】
ゼオライトの結晶水はゼオライトの立体網目構造の中に水分子として存在するため特に沸石水とも呼ばれ、加熱などにより脱水しても、ゼオライトの構造は破壊されず、結晶水が有った箇所はそのまま空洞として残り、ちょうどスポンジ状の構造になる。この空洞に再びガスや水分が強力に吸着される特性がある。つまり、吸湿性若しくは乾燥性または細菌の吸着性能がある。
【0036】
もう一つのゼオライトの大きな特性に塩基置換容量がある。これは陽イオン交換容量「C.E.C:Cation Exchange Capacity」とも呼ばれ、ちょうど磁石のように陽イオン(NH4+・カリウム・ナトリウム・カルシウムなど)を保持したり離したりする力がある。特にゼオライトの塩基置換容量は永久荷電と言い、周囲の環境(PHなど)に左右されず、長期間その力を持続する特性がある。さらに、ゼオライトには、遠赤外線を効率よく放射する性質がある。
【0037】
このように、ゼオライトには、遠赤外線放射機能と吸着機能とがあり、このような吸着材料と、光半導体セラミックス等(光半導体セラミックス及び/又は銀などの金属粉末の混合物)とが同時に使用されると、細菌、ウィルス、かび又は悪臭物質、有害物質等が、まず吸着材料に吸着保持される。その後か又は同時に、光照射を受けた光半導体セラミックス等の光触媒作用により、細菌、ウィルス、かび等が死滅または減少させられ、悪臭物質等が分解される。また、吸着されないような細菌その他の物の場合でも、光半導体セラミックスの光触媒作用により、発育(増殖)防止や忌避効果等が期待できる。
【0038】
第1内蔵物は、遠赤外線の放射により、患者用敷布1上に仰臥する被介護者の血流改善による褥瘡の悪化防止と、吸湿または乾燥による湿度の低下による菌の増殖若しくは悪臭物質の吸着による消臭などを防ぐ目的がある。特に、第1内蔵物に用いられる羊毛タイプの繊維は、微細繊維がある程度空気を含んで絡み合っているので、繊維全体としても、アンモニアなどの悪臭成分の吸収をより良く図ることができる。
【0039】
ところで、遠赤外線による人体に対する効果は、加温の効果がある。つまり、遠赤外線が皮膚表面に照射されると、その皮膚表面で熱に変わり、人が暖かみを感ずることになる。さらに、40℃付近つまり人間の体温付近まで高くなると、第1内蔵物からの遠赤外線(中赤外線/超遠赤外線も含む)発生量が最も多くなる。遠赤外線が人体に多量に照射されても、人体に対する加温の効果が出てくるまでには時間がかかるが、持続性が長い。このような赤外線の発生によって第1内蔵物は乾燥作用も有することになる。
【0040】
また、上記ゼオライトから発せられる特定波長域(3〜16μ)の遠赤外線が、人体に照射されると、人間の60%の体液(水)に吸収される。遠赤外線が吸収された体液中では、水クラスターが小さくなり、体液のバランスが調整されることになる。この結果、血液の流れが改善されると考えられている。
【0041】
加えて、遠赤外線の波長は長いものに対して短いものは、人体(足及び脚または下腿若しくは上腿、胴体などの人体組織)の表皮近傍の内部/深部を迅速に暖め(加温し)、発汗を促すと共に、細胞の活性化により血液の循環も良くなると共に、血液の粘度を下げてサラサラにする効果が期待できる(本願では、これらの効果を遠赤効果と呼称する)。なお、人体組織に対して非常に良い効果を与える遠赤外線の波長は、8〜14μm(ミクロンメートル)であり、普通に良い効果を与える遠赤外線の波長は、4〜20μm(ミクロンメートル)であり、何らかの良い効果を与える遠赤外線の波長は、1.5μm(ミクロンメートル)以上であり、中赤外線、遠赤外線、超遠赤外線が何らかの良い効果を与える。
【0042】
赤外線は、波長0.76〜1.5μmを近赤外線、波長1.5〜5.6μmを中赤外線、波長5.6〜400μmを遠赤外線、波長400〜1000μmを超遠赤外線という。しかし、本明細書及び特許請求の範囲では、この中赤外線又は超遠赤外線も含めて遠赤外線として説明する。遠赤外線の波長が長いほど、人体組織のより深い所まで浸透してより深部から人体を暖める(保温させる)。
【0043】
したがって、遠赤外線の波長が長いほど、上記遠赤効果が出るまで時間が掛かるが、いったん遠赤効果が発生すると、その遠赤効果が持続され、仮に、患者用敷布1が被介護者から外されても、遠赤効果が継続される。また、遠赤外線の波長が短いほど、人体組織の比較的表面を暖める効果がある(保温させる)。したがって、遠赤外線の波長が短いほど、上記遠赤効果が即座に早く出て、即効性があり、患者用敷布1により人体がすぐに暖まる(加温される)ことが期待できる。そこで、第1内蔵物としては、波長の長い遠赤外線を出す繊維物が用いられ、上側中央抗菌布2に波長の短い遠赤外線を放射させる物質が用いられてもよい。
【0044】
(6)第1内蔵物の応用例
第1内蔵物として、起興株式会社より販売されている商品名「バイオネスト(登録商標)セラ」(特開2000−17568号公報参照)の布が用いられてもよい。「バイオネストセラ」は、天然鉱石であるゼオライトを加工したセラミックスとその微粒子を天然繊維の表面に堅牢に付着させたものである。このセラミックスとその微粒子の働きによって、体温より低温でも遠赤外線が十分に外部へ放射されて、人体への加温効果が発揮される。その他に、この「バイオネストセラ」が上側辺縁布3、下側辺縁布9、上側中央抗菌布2又は下側中央抗菌布8に用いられても良い。
【0045】
その他、第1内蔵物として、東洋紡績株式会社より販売されている商品名「セラム(登録商標)A」の布が用いられてもよい。セラムAは、アクリル繊維に超微粒子セラミックスが内蔵され/練り込まれている。このセラミックスの働きにより、体温近くの摂氏40度前後において、遠赤外線が外部へと放射されて、人体への加温効果が発揮される。摂氏40度前後において、遠赤外線の発生量が最も多い。また、遠赤外線は、上記されたように、様々な波長があるので、射出する遠赤外線の波長が異なる繊維(遠赤外線を放射するように処理が施されたもの)を2種類以上積層して第1内蔵物とされてもよい。
【0046】
(7)充填物10の第2内蔵物の説明
充填物10の第2内蔵物には、第1内蔵物に付着した細菌若しくは有機物を分解すべく、抗菌剤が付着された綿若しくは繊維が用いられる。例えば、第4級アンモニウム塩系の抗菌剤が繊維に結合されたものが用いられる。この第4級アンモニウム塩系の抗菌剤は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の細胞壁を破壊し、増殖を抑制する働きと、人体表皮から排出される汗や皮脂などを栄養源とする細菌の増殖を抑える効果がある。具体的には、エピコドモ綿(東洋紡より販売されている)などが用いられる。
【0047】
(8)第2内蔵物の応用例
第2内蔵物としては、その他に、東洋紡績株式会社の商品名「ディスメル」(又はアンノン、登録商標)と呼称される布が使用されてもよい。この布については、有限会社高研他が権利者となっている実用新案権第3056573号、又は第3061324号の公報内に記載されており、これらのものが購入されて本願の上側辺縁布3、上側中央抗菌布2、下側辺縁布9、下側中央抗菌布8又は充填物10として使用されてもよい。
【0048】
このディスメルは、アクリレート系繊維のアンモニア消臭及び抗菌素材である。すなわち、pH緩衝能(pH変化を緩和する能力)を有する架橋アクリル系繊維が配合されている不織布にカルボン基が付着されており、このカルボン基(COOH)にアンモニア(NH3)が作用するとイオン結合により無臭のカルボン酸アンモニウム塩(COOHNH4)が生成されることで、アンモニア臭が除去され、アンモニアによる雑菌繁殖を押さえる。これにより、ディスメルは、消臭作用及び抗菌作用を発揮する。このディスメルはふんわりとした綿状の繊維で、保温作用がある。その他には、アパタイト(人工骨、リン酸カルシウム)でコーティングされた二酸化チタンが繊維内に練り込まれたレーヨン綿などがある。二酸化チタンは、光触媒作用によって抗菌、消臭効果を発揮する。
【0049】
(9)下側中央抗菌布8の生地の説明
下側中央抗菌布8には、水分を吸収すると共に、脱臭・抗菌作用のある布が用いられる。例えば、ポリエステル100%の繊維で作られた生地にシレー加工と、撥水加工とが施されると共に、片面に銀及び/又は二酸化チタンがスパッタリング法などで付着(固着)された布などである。なお、付着される銀の量は、全体の3〜4質量%とされている。このような布は、上記撥水加工によって防水性が良好である。ところで、銀は、金属中でも殺菌力が比較的高い物質で、低温度でもカビや細菌を死滅させる能力があると共に、静電気を発生しにくく、埃が付きにくいと共に、紫外線のカット能力がある。また、使用される銀の量が少ないので、布全体の重さにも大きな影響を与えることがない。この様な特性の布には、リップストップ(商品名)がある。
【0050】
このほかに、抗菌処理剤として、光触媒シリカゲルがある。これは、吸湿力の強いシリカゲルに二酸化チタンが約10質量%担持されたものである。シリカゲルは、紫外線を透過させるので、十分に光が二酸化チタンに照射され、二酸化チタンの光触媒機能が良好に発揮される。また、アパタイト(人工骨、リン酸カルシウム)でコーティングされた二酸化チタンが繊維内に練り込まれたレーヨン綿などもある。
【0051】
二酸化チタンは、紫外光が照射されると、価電子帯から伝導体に電子が励起され、電子と正孔が生成される。この電子による還元反応により空気中の酸素が還元されて、スーパオキサイドイオン(O2-)が生成される。このスーパオキサイドイオンは、過酸化水素を経てOHラジカルを生成したり、水と酸素になったりする。
【0052】
さらにまた、正孔により、空気中の水分子が酸化されて強い酸化力を持つOHラジカルが生成される。このOHラジカルなどの酸化力により布近傍にある菌や有機物が酸化され、二酸化炭素や水に分解されると考えられる。この結果、消臭と抗菌作用が発揮される。しかも、シリカゲル又はアパタイトには、有機物を吸着する作用があるので、このシリカゲル又はアパタイトに吸着された有機物が、二酸化チタンの光触媒作用によって分解される。臭気を発する有機物が分解されることで、消臭作用が発揮されることになる。
【0053】
このように、下側中央抗菌布8にも抗菌作用のある布が用いられるが、この下側中央抗菌布8は、特に、吸湿と消臭作用の働きを期待している。また、下側中央抗菌布8には、布表面が極力滑らかなものが使用されており、下側中央抗菌布8と下側中央抗菌布8直下の布その他の物との滑りを確保させてある。これは、患者用敷布1上に被介護者が仰臥された状態で、患者用敷布1により被介護者の移動等が円滑にできるようにするためである。ただし、下側中央抗菌布8の周囲に用いられる下側辺縁布9は、タオル生地などの比較的表面抵抗の大きな布であるので、患者用敷布1が必要以上に滑ることは防止できる。
【0054】
(10)患者用敷布1の使用による作用・効果
図7は、患者用敷布1上に被介護者14が仰臥している状態を示す図である。患者用敷布1は、通常、ベッドのマットの上又は敷き布団の上などに敷かれて使用される。なお、図7では、被介護者14の身長が患者用敷布1の大きさに一致するように描かれているが、患者用敷布1が被介護者14の身長より大きく作られていても良いし、小さく作られていても良く、本発明では特に限定しない。少なくとも、被介護者14の胴体部分が患者用敷布1上に適合する大きさに作られている必要はある。
【0055】
患者用敷布1上に被介護者14が仰臥した状態で、二人の介護者が被介護者14の両脇からスリット4、6及び、スリット5、7をそれぞれの介護者が持ち上げることで、被介護者14を移動させることができる。また、一人の介護者がスリット4、6か、又はスリット5、7を持ち上げることで、被介護者14の寝返りなど、体位の変更を助けることができる。この場合、下側中央抗菌布8が比較的、摩擦係数が小さい滑性のある布なので、被介護者14を乗せたまま患者用敷布1で被介護者14を楽に移動させることができる。
【0056】
また、患者用敷布1を被介護者の体の直下に間接又は直接に敷くと以下のような効果が得られる。患者用敷布1の上側辺縁布3は、上述されたように、O−157などの口腔感染する菌の発生若しくは増殖を抑える抗菌処理が施されているので、被介護者14の口からそれらの菌が進入することを極力防止できる。
【0057】
特に、被介護者14が完全に寝たきり状態などにあると、食物は、介護者が扱うスプーンなどで被介護者14の口に直接運ばれる。その際、汁物などの食物が上側辺縁布3部分に落下して、上側辺縁布3が汚れても、上側辺縁布3の抗菌作用により、食物を餌とする菌の増殖を抑えることができるので、より被介護者14の頭部周りの衛生状態をより快適に保つことができる。
【0058】
また、上側中央抗菌布2の表面には、平坦部11が複数箇所作られているので、被介護者14の皮膚との間により多くの隙間が形成されやすいので、換気、すなわち、より多くの空気の流出入による被介護者14の皮膚面の蒸れをより少なくできる。この結果、湿度の上昇による細菌の増殖を抑えることもできる。
【0059】
しかも、上側中央抗菌布2の表面に形成された複数の膨らみ部13により、被介護者14の体が支えられるので、体への圧力の一点集中をより少なくでき、被介護者14の皮膚の鬱血など血流の阻害などをより良く回避できる。加えて、上側中央抗菌布2に抗菌処理が施されているので、被介護者14の皮膚にできる褥瘡その他、細菌若しくは血流阻害による疾病の発生若しくは悪化を極力防止できる。
【0060】
患者用敷布1内の充填物10の第1内蔵物より発せられる遠赤外線による遠赤効果を得ることができる。遠赤外線は人体に対して(60%以上の水分子組織を持つ動植物)、最も吸収性と深達力が発揮され、水分子を励起して細胞を活性化する。成長健康に良い波長は、8〜14ミクロンの遠赤外線であるとされており、この遠赤外線は人体組織の深部にまで達する深達作用によって、体の内部から暖め発汗を促す。これによって、血液の循環を良くすると共に新陳代謝が活発になり美容効果や疲労回復、内蔵機能促進やコレステロールの減少などの効果が期待できる。
【0061】
その他、遠赤効果により、人体または足及び脚または下腿若しくは上腿などの人体組織の内部/深部を暖め(加温し)、発汗を促すと共に血液の循環も良くし、血液の粘度を下げてサラサラにする。このサラサラの血液では、赤血球が互いに付着しあう連鎖が解消され、1つ1つの赤血球がバラバラにされ、血栓の発生などが抑制若しくは減少される。この遠赤効果による血流の改善により、褥瘡など被介護者14の皮膚面に発生する疾病の悪化若しくは発生を抑制することができる。
【0062】
また、充填物10の第1内蔵物は、吸湿又は臭気成分を吸着する働きがあるので、湿度調整が可能であると共に、脱臭効果がある。しかも、第1内蔵物に吸着された臭い成分その他の細菌は、充填物10の第2内蔵物に具備された抗菌作用により分解されるので、菌の増殖と悪臭の発生防止を図ることができる。
【0063】
さらに、患者用敷布1の下面にある下側中央抗菌布8は織り目の細かい布でしかも吸湿効果があるので、被介護者14から出る汗、尿その他の水分を吸湿又は下側中央抗菌布8全体で受け止めて、患者用敷布1より下に浸透することを極力防止できる。しかも、下側中央抗菌布8の脱臭・抗菌作用により、菌の増殖その他による臭いの拡散等を防ぐことができる。なお、患者用敷布1が使用される際、スリット4、5、6、7それぞれに紐が通されて、ベッド等に患者用敷布1が結びつけられても良い。
【0064】
(11)スリット4、5、6、7の応用例
図8には、スリット4、5、6、7の応用例として、取手15が示されている。この取手15は、布又は牛革(その他の動物の革)などで作られており、下側辺縁布9のスリット4、5、6、7(図1参照)と同じ位置に縫いつけその他の方法で取り付けられる。取手15は、介護者によって患者用敷布1を引き上げるのに用いるので、比較的堅牢な布が好ましい。また、取手15が上側辺縁布3の四隅(患者用敷布1の表側)にも取り付けられても良い。
手のひら側を上向きにして、この取手15を下から握ると、同時に下側辺縁布9も握ることができ、しっかりと患者用敷布1をつかむことができる。これにより、患者用敷布1の上に患者を乗せたまま、患者用敷布1を動かしたり、患者を移動させたり、患者に寝返りをうたせたりすることができる。なお、手のひら側を下向きにして取手15と下側辺縁布9との間に手を入れて取手15をしっかりと握ってもよい。
【0065】
なお、本明細書及び特許請求の範囲で使用される文言「抗菌」は、抗菌のほか、細菌/微害虫を死滅させる「殺菌」「殺虫」「消毒」、細菌/微害虫の数を減らす「減菌」、細菌/微害虫の増殖を抑制する意味も含む。また本明細書及び特許請求の範囲で使用される文言「消臭」は、消臭のほか、臭気の吸着、臭気(アンモニア等の不快臭)そのものの分解、臭気を中和させる物質または成分の発生、臭気を発生させる菌を殺すなどによる「防臭」を含む。つまり、消臭とは、「防臭」の意味も含むものとする。さらに本明細書及び特許請求の範囲で使用される文言「加温」は、どのような手段によるも、人体または人体の一部を直接または間接に暖めることの全てを含む。
【0066】
さらに、本明細書及び特許請求の範囲で使用される文言「保温」は、冷気の進入防止/体熱が外気に奪われることの防止などの防寒その他、人間の体温の低下を直接または間接に防ぐ意味を含む。また本明細書及び特許請求の範囲で使用される文言「吸湿」は、吸湿のほか、乾燥、防湿、除湿などを含む。本明細書及び特許請求の範囲で使用される文言「防汚」は、汚れにくい、汚れの付着の防止、付着した汚れの分解、付着した汚れを洗浄で除去しやすくするなどの意味を含む。
【0067】
(12)他の実施例
本発明は、上記実施例に限定されず、種々変更可能である。上側中央抗菌布2、下側中央抗菌布8、上側辺縁布3、下側辺縁布9又は充填物10として用いられる繊維材質は、ポリエステル繊維、ポリアミド系合成繊維繊維、アクリル繊維などの人工繊維、絹、木綿などの天然繊維、ガラス繊維、炭素繊維、ゴムその他の合成繊維の何れが用いられても良く、本発明では、その繊維素材そのものの材質を限定するものではない。
【0068】
加えて、上側中央抗菌布2又は/及び下側中央抗菌布8にも、遠赤外線による加温/保温効果を発揮するように施された布が用いられても良い。しかも、抗菌処理と遠赤外線を放射する処理が同時に施された布でもよいし、太陽光(紫外線)を遮断する処理や、導電性を有するように処理が施されていても良い。導電性があれば、生地同士による擦れによる静電気の発生を抑制でき、乾燥時に発生しやすい静電気の放電による使用者の不快感を回避できる効果が期待できる。
【0069】
ただし、被介護者の身体に触れる、上側辺縁布3及び上側中央抗菌布2は、できうる限り肌触りの滑らかな又は/及び触感のよい布が用いられるのが好ましい。また、下側中央抗菌布8に水分を完全に遮断する、例えば、テントシート、ビニール、ゴムなどの素材が用いられても良い。
【0070】
その他には、織り目の荒いメッシュ状、ニット状の布(通気性、透光性のよい布)が用いられも良いし、リネンなどのように織り目の細かい布(通気性のやや悪い布)が用いられても良い。上側中央抗菌布2及び/又は下側中央抗菌布8は、場合によって、フッ素加工、防水加工などにより汚れが付着しにくくされてもよい。これにより、患者用敷布1の汚れ付着をより低減できる。上側辺縁布3及び/又は下側辺縁布9にも同様なフッ素加工、防水加工又は撥水加工等の汚れ防止が施されていても良い。
【0071】
また、本発明の患者用敷布1が座布団や膝掛けや、ペットの敷布などとして用いられても良く、本発明は介護用の敷布に限定するものではなく、細菌の増殖抑制と消臭と保温とが必要なところならば、どのようなところで利用されてもよい。充填物10として、各種の布/編み物の他、綿、導電性のある布、スポンジ、ウレタン、クッション、ゴム、蕎麦殻、糸くずの固まり、ポリアミド系合成繊維などの合成繊維又は天然繊維で作られた布、発泡スチロール、積層されたポリエステルフィルムの間に気泡が封入されたクッション材、遠赤外線を反射する金属繊維による布などが用いられてもよい。
【0072】
さらに、上側辺縁布3、上側中央抗菌布2、下側中央抗菌布8及び下側辺縁布9に、導電性のある繊維(炭素繊維又は、炭素、銅、鉄、ニッケルなどの導電性のある金属粉末が繊維内に練り込まれたものなど)が用いられれば、静電気の発生と、静電気による電機部品の破壊を未然に防止できる患者用敷布1とすることができる。この場合、患者用敷布1の表と裏とを電気的に結ぶアース線が必要な場合もありうる。加えて、それら患者用敷布1の表出する各布(上側中央抗菌布2、下側中央抗菌布8その他)に、難燃性(不燃性)の繊維が用いられても良い。
【0073】
上記スリット4、5、6、7の穴の外形は、本発明では特に限定するものでなく、丸形の穴や、四角形、三角形、方形、多角形、星形、スリット形、長円形、扉形など、どのような形状でもでもよい。しかも、スリット4、5、6、7の穴の周りに面状テープ(着脱が自在なテープ)、紐、ゴムなどが付加(縫いつけ)されて、スリット4、5、6、7の穴を閉じることができるように作られても良い。加えて、上側辺縁布3に設けられるこの介護者用のスリットの数は、上記実施例のように、4箇所に限定するものではなく、2箇所でも4箇所以上でもよい。
【0074】
また、上記実施例では、上側中央抗菌布2及び下側中央抗菌布8の外形が長方形に作られたが、本発明は、この形に限定するものではなく、3角形、四角形以上の多角形、円形、楕円形等如何なる形でもよい。したがって、上側中央抗菌布2の周りに縫いつけられる上側辺縁布3の外形についても、3角形や、多角形、円形、楕円等如何なる形でもよい。さらに、上記実施例では、上側中央抗菌布2の周囲に上側辺縁布3が縫いつけられたが、この上側辺縁布3及び下側辺縁布9が省略されてもよいし、上側辺縁布3に開けられるスリット4、5、6、7が省かれても良い。
【0075】
さらにまた、充填物10に遠赤外線の放射と、抗菌作用を発揮させたが、充填物10が省かれ、それら遠赤外線の放射作用を上側中央抗菌布2又は下側中央抗菌布8に付加させてもよい。つまり、上側中央抗菌布2又は下側中央抗菌布8に遠赤外線の放射と、抗菌作用を発揮させるような処理が施されても良い。加えて、上記実施例では、上側中央抗菌布2及び下側中央抗菌布8の表面に、キルティング加工などによって形成される膨らみ部13と平坦部11と複数形成させたが、これら膨らみ部13及び平坦部11が全く形成されない上側中央抗菌布2及び下側中央抗菌布8でもよい。
【0076】
また、上記実施例では、上側中央抗菌布2及び下側中央抗菌布8の表面に形成される平坦部11が、短手方向にミシン縫いされて形成されたが、上側中央抗菌布2の長手方向にもミシン縫いされて形成されてもよい。つまり、本発明では、平坦部11及び膨らみ部13で形成される形状は特に限定しない。
【0077】
なお、上記実施例では、上側辺縁布3及び下側辺縁布9が、上側中央抗菌布2と下側中央抗菌布8の縁に沿って縫いつけられたが、この上側辺縁布3及び下側辺縁布9が、完全に上側中央抗菌布2及び下側中央抗菌布8の縁部分に重ねられていても良い。つまり、上側辺縁布3が上側中央抗菌布2の縁部分の布地に完全に重なっていてもよい。下側辺縁布9も同様である。
【0078】
その他、殺菌・抗菌剤としては、光半導体粉末の光触媒作用によって起こされることが知られている。この光触媒作用は、一方の電極が光半導体粉末である光半導体セラミックスで、他方の電極が金属とされる電気化学セルによって化学的作用として発生される。かかる光半導体粉末として、TiO2、CdS、CdSe、WO3、Fe2O3、SrTiO3、KNbO3等が用いられ、金属粉末としては、金、銀、白金、銅等の種々の金属粉末が用いられる。また、吸着材料として、アパタイト(リン灰石)、ゼオライト又はセピオライト等のセラミックス粉末、活性炭、シリカゲル又は絹繊維含有物等が用いられている。
【0079】
このような吸着材料と光半導体セラミックスとが用いられた布において、細菌、ウィルス、かび又は悪臭物質、有害物質等が、まず吸着材料に吸着保持される。その後又は同時に、光照射を受けた光半導体粉末と金属粉末とによる光触媒作用により、細菌、ウィルス、かび等が死滅または減少させられ、悪臭物質等が分解される。さらに、吸着されないようなものの場合でも、光触媒作用により、発育(増殖)防止や忌避効果等が得られる。
【0080】
また、上側中央抗菌布2等の繊維にも遠赤外線を放射する物質が練り込まれる場合、上側中央抗菌布2の発する遠赤外線の波長と、充填物10の第1内蔵物から発せられる遠赤外線の波長が異なるようにしてもよい。つまり、上側中央抗菌布2からは、波長の短い遠赤外線が発せられ、充填物10からは波長の長い遠赤外線が発せられるように作られても良い。
【0081】
加えて、上記上側中央抗菌布2及び下側中央抗菌布8の布表面の摩擦係数は、布自体の重さと、他の布地(木綿など)と擦り合わせたときの相対方向へ引っ張る力の大きさとの比で測られるが、その値は、常温で0.01〜0.1となるように加工されてもよい。この加工は、布が織られるときに使用される繊維の細さが調整されたり、布の織り目の緻密さ(若しくは粗さ)で調整されたり、織られた上記上側中央抗菌布2又は下側中央抗菌布8の布表面にシリコンなどの滑性を有する物資が固着されて行われる。
【0082】
同じように、上記上側辺縁布3及び/又は下側辺縁布9の摩擦係数の値を調整する加工が施されても良い。その摩擦係数は、常温で0.4〜1.0となるように加工されてもよい。ただし、上側辺縁布3及び/又は下側辺縁布9の摩擦係数は必ずしも必要なものではないので、加工が施されなくても良い。
【0083】
(13)まとめ
本発明の患者用敷布は、抗菌・消臭作用を発揮する性質及び遠赤外線を放射する性質の何れか一方の性質か又は双方の性質を持つ物質が付加された繊維で織られた上側中央布(上側中央抗菌布2)と、抗菌・消臭作用及び吸湿作用の何れか一方の性質か又は双方の性質を持つ物質が付加された繊維で織られた下側中央布(下側中央抗菌布8)とを上下より合わせて1枚の布状にしたことを特徴とする。
【0084】
これにより、上側中央布(上側中央抗菌布2)の抗菌作用により、被介護者の皮膚などに発生する褥瘡の悪化防止や、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などの細菌の増殖を抑制できると共に、湿気の増大や臭い成分の増大をも防止することもできる。
【0085】
上側中央布(上側中央抗菌布2)の表面が、滑性を有すると、被介護者との接触面に大きな摩擦が生ぜず、皮膚の褥瘡その他の傷の発生若しくは悪化を防止できる。
【0086】
また、上記上側中央布(上側中央抗菌布2)と下側中央布(下側中央抗菌布8)との間に、遠赤外線を放射する物質が付加された繊維で構成される充填物が入れられれば、その繊維から発せられる遠赤外線による遠赤効果が期待できる。
【0087】
また、本発明の患者用敷布は、水分吸収の良い厚手の柔らかい綿織物(タオル生地)で作られた辺縁布(上側辺縁布3又は下側辺縁布9)が、上記上側中央布及び/又は下側中央布の周囲に縫製されたことを特徴とする。これにより、患者用敷布の周辺部分の肌触りが良好となる。また、この辺縁布にも抗菌・消臭剤が結合されていれば、O−157などの細菌の増殖を抑制できる。
【0088】
さらに、本発明の患者用敷布は、上記上側中央布及び/又は下側中央布の表面にキルティング加工が施されて、膨らみ部(膨らみ部13)と平坦部(平坦部11)とが交互に並んだ凹凸が多数形成されていることを特徴とする。これにより、被介護者の皮膚と患者用敷布との間に通気路ができ、湿気の貯留を防止できると共に、被介護者の体の圧力が一点に集中することを防止できる。
【0089】
さらにまた、遠赤外線を放射する性質が上側中央布に付加されれば、遠赤外線の遠赤効果をさらに高めることができる。しかも、上側中央布から発せられる遠赤外線の波長が短く、充填物10から発せられる遠赤外線の波長が長いと、最初に上側中央布からの遠赤外線による遠赤効果が発揮された後で、充填物10からの遠赤外線の遠赤効果が発揮されるという時間差を生じさせることができる。しかも、波長の長い遠赤外線の遠赤効果は、持続性があるので、患者用敷布から被介護者が離れても、その効果を被介護者が継続して感ずることができる。上記中央布の表面にキルティング加工が施されていると、患者用敷布の洗濯が容易である。
【0090】
また、本発明の患者用敷布は、幅の狭い帯布の両端を上記辺縁布に縫いつけて、人手を差し込める取手(取手15)か又は、人手を差し込める持ち穴(スリット4、5、6、7)が、上記辺縁布に少なくとも2箇所形成されている。これにより、介護者が容易に、被介護者の乗った患者用敷布を持ち上げることができる。
【0091】
(14)請求項の解説
本発明の患者用敷布は、抗菌・消臭作用を発揮する性質及び遠赤外線を放射する性質の何れか一方の性質か又は双方の性質を持つ物質(遠赤外線を放射する物質としては、金属酸化物を含むセラミックス、ケイ素又はアルミナのセラミックス、ゼオライト、セピオライトなど)(抗菌・消臭作用のある物質は、ゼオライト、アパタイト、二酸化チタン、銀、銅その他がある)が付加された繊維で、かつ摩擦係数の小さい滑性を有する布表面に織られた上側中央布(上側中央抗菌布2)と、抗菌・消臭作用及び吸湿作用の何れか一方の性質か又は双方の性質を持つ物質(吸湿作用のある物質は、アパタイト、ゼオライト、アルミナなどのセラミックス、シリカゲル、木炭、活性炭などがある)が付加された繊維で、摩擦係数の小さい滑性を有する布表面に織られた下側中央布(下側中央抗菌布8)とを上下より合わせて1枚の布状にしたことを特徴とする。
【0092】
これにより、上側中央布(上側中央抗菌布2)の抗菌作用により、被介護者の皮膚などに発生する褥瘡の悪化防止や、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などの細菌の増殖を抑制できると共に、湿気の増大や臭い成分の増大をも防止することもできる。
【0093】
また、本発明の患者用敷布は、抗菌・消臭作用を発揮する物質が付加された繊維で、かつ滑性を有する布表面に織られた(滑性を有する布にするには、上述されたように、布自体に使用される繊維を細くしたり、織り目を細かくしたり、布表面にシリコン、フッ素樹脂などを付着させるなどの方法がある)上側中央布(上側中央抗菌布2)と、遠赤外線を放射する物質が付加された繊維で構成される充填物(充填物10の第1内蔵物)と、抗菌・消臭作用及び吸湿作用の何れか一方の性質か又は双方の性質を持つ物質が付加された繊維で織られた下側中央布(下側中央抗菌布8)とを備え、この下側中央布と、上記上側中央布とで上記充填物を上下方向より挟んで一枚の蒲団形状にしたことを特徴とする。
【0094】
これにより、患者用敷布上に寝かされた被介護者と患者用敷布との摩擦が小さいので、皮膚のねじれが減少して血管が圧迫される度合いが減る。また、ベッドに対して本発明の患者用敷布が容易にずれて、被介護者へのズレ力をさらに軽減できて、移動などが容易になる。つまり、血流が阻害されにくくなる。しかも充填物から発せられる遠赤外線により遠赤効果が図られる。これらの効果の組み合わせで、皮膚及び内蔵等の細胞の活性化が図られるので、褥瘡その他の疾病の予防又は改善を図ることができる。
【0095】
また、本発明の患者用敷布は、抗菌・消臭作用を発揮する物質が付加された繊維で、かつ滑性を有する布表面に織られた上側中央布(上側中央抗菌布2)と、遠赤外線を放射する物質が付加された繊維(充填物10の第1内蔵物)と共に、抗菌・消臭作用を発揮する物質が付加された繊維(充填物10の第2内蔵物)とで構成される充填物と、抗菌・消臭作用及び吸湿作用の何れか一方の性質か又は双方の性質を持つ物質が付加された繊維で織られた下側中央布とを備え、この下側中央布と、上記上側中央布とで上記充填物を上下方向より挟んで一枚の蒲団形状にしたことを特徴とする。
【0096】
これにより、患者用敷布上に寝かされた被介護者と患者用敷布との摩擦が小さいので、皮膚のねじれが減少して血管が圧迫される度合いが減る。つまり、血流が阻害されにくくなる。しかも充填物から発せられる遠赤外線により遠赤効果が図られる。さらに、充填物10の第2内蔵物の抗菌・消臭作用により、細菌その他の好ましからざる物質が吸着、減菌されるので、被介護者の皮膚環境の悪化を防止できる。これらの効果の組み合わせで、皮膚及び内蔵等の細胞の活性化と、菌の増殖による病巣の悪化を防止できるので、褥瘡その他の疾病の予防又は改善を図ることができる。
【0097】
本発明の患者用敷布は、抗菌・消臭作用を発揮する物質が付加された繊維で、かつ滑性を有する布表面に織られた上側中央布と、遠赤外線を放射する物質が付加された繊維と共に、抗菌・消臭作用を発揮する物質が付加された繊維とで構成される充填物と、抗菌・消臭作用及び吸湿作用の何れか一方の性質か又は双方の性質を持つ物質が付加された繊維で、かつ滑性を有する布表面に織られた下側中央布とを備え、この下側中央布と、上記上側中央布とで上記充填物を上下方向より挟んで一枚の蒲団形状にしたことを特徴とする。
【0098】
これにより、患者用敷布上に寝かされた被介護者と患者用敷布との摩擦が小さいので、皮膚のねじれが減少して血管が圧迫される度合いが減る。つまり、血流が阻害されにくくなる。しかも充填物から発せられる遠赤外線により遠赤効果が図られる。さらに、充填物10の第2内蔵物の抗菌・消臭作用により、細菌その他の好ましからざる物質が吸着、減菌されるので、被介護者の皮膚環境の悪化を防止できる。
【0099】
これらの効果の組み合わせで、皮膚及び内蔵等の細胞の活性化と、菌の増殖による病巣の悪化を防止できるので、褥瘡その他の疾病の予防又は改善を図ることができる。さらに、下側中央布の滑性(摩擦係数が小さい)があるので、ベッドに対して本発明の患者用敷布が容易にずれて、被介護者へのズレ力をさらに軽減できる。つまり、移動などが容易になる。上記上側中央布及び/又は下側中央布の表面の上記キルティング加工により上記摩擦が小さくなること及び上記ずれ力の軽減はさらに向上する。
【0100】
本発明の患者用敷布は、上記特徴に加え、水分吸収の良い厚手の柔らかい綿織物で作られた辺縁布(上側辺縁布3又は下側辺縁布9)が、上記上側中央布及び/又は下側中央布の周囲に縫製されたことを特徴とする。
これにより、辺縁布にて、被介護者の頭部などから漏れる水分を効率良く吸収できるので、環境の悪化を防止できる。
【0101】
本発明の患者用敷布は、上記特徴に加え、上記上側中央布及び/又は下側中央布の表面にキルティング加工が施されて、膨らみ部と平坦部とが交互に並んだ凹凸が多数形成されていることを特徴とする。これにより、被介護者と本発明の患者用敷布との間の通気性をより改善できると共に、摩擦係数の小さい布に凹凸があるので、さらに患者用敷布と被介護者との接触抵抗を小さくでき、皮膚のねじれ等による血流の阻害を防止でき、しかも微小凹凸により、被介護者の体圧の分散を図れるので、鬱血などによる褥瘡その他の病巣の発生若しくは悪化をより良く改善できる。
【0102】
本発明の患者用敷布は、上記特徴に加え、上記上側中央布は通気性を有し、上記下側中央布に防水加工が施されており、これら上側中央布及び下側中央布に挟まれた充填物は、湿度を下げる吸湿作用または乾燥作用を有していることを特徴とする。この乾燥作用は上記赤外線を発することによっても達成される。これにより、被介護者から出る(漏れる)汗、尿(場合によっては糞)、が患者用敷布より下に漏れ落ちたりベットに浸入することを防止して充填物で乾燥でき、ベットを清潔に保ち細菌の繁殖を防ぐことができるので、被介護者の寝所(ベッド等)の環境悪化を未然に防止できる。
【0103】
しかも、患者用敷布の充填物又は下側中央布に抗菌作用があるので、防水性の下側中央布でせき止められた汗、尿などの水分は、完全に無害なものに分解されるし、被介護者の体表の細菌の増加に伴う褥瘡その他疾病の悪化等を防止でき、被介護者の皮膚環境の悪化を防止できる。上記上側中央布及び/又は下側中央布の表面の上記キルティング加工により当該通気性及び吸湿性はさらに向上する。
【0104】
また、本発明の患者用敷布は、抗菌・消臭作用を発揮する性質及び遠赤外線を放射する性質の何れか一方の性質か又は双方の性質を持つ物質が付加された繊維で織られた上側中央布(上側中央抗菌布2)と、水分吸収の良い厚手の柔らかい綿織物で作られた辺縁布(上側辺縁布3)が、上記中央布の周りに縫製されたものでもよい。つまり、必要最小限の布地で構成された患者用敷布でもよい。
【0105】
また、本発明の患者用敷布は、上記特徴に加え、上記辺縁布にも抗菌・消臭剤が結合されていることを特徴とする。これにより、被介護者の頭部周りの細菌の増殖を抑制でき、環境の悪化を未然に防止できる。
【0106】
本発明の患者用敷布は、上記特徴に加え、幅の狭い帯布の両端を上記辺縁布に縫いつけて構成した人手を差し込める把係止部(取手15)が、上記辺縁布の上面及び/又は裏側に少なくとも2箇所形成されていることを特徴とする。これにより、手の平を上向きにして把係止部を握ると共に辺縁布も握ることができる。また、手のひらを下向きにして把係止部と辺縁布の間に入れて患者用敷布の周囲を握ることもできる。被介護者を乗せた患者用敷布を介護者がより持ち上げやすい。
【0107】
同様に、本発明の患者用敷布は、人手を差し込める穴(スリット4、5、6、7)が上記辺縁布部分に少なくとも2箇所形成されていることを特徴とする。
【0108】
本発明の患者用敷布において、上記辺縁布の木綿布に対する摩擦係数が常温で0.4〜1.0となるように加工されており、 上記上側中央布及び/又は下側中央布の木綿布に対する摩擦係数が常温で0.01〜0.1となるように加工されていることを特徴とする。
【0109】
本発明の患者用敷布に用いられる各物質は、抗菌・消臭作用を発揮する性質を持つ物質は、特殊銀系セラミックスであるか又は、第4級アンモニウム塩物質、銀、銅の抗菌剤又は、TiO2、CdS、CdSe、WO3、Fe2O3、SrTiO3、KNbO3のうちの一つを原料とした光半導体粉末のうちの何れかと、アパタイト(リン灰石)、ゼオライト又はセピオライトのセラミックス粉末、活性炭、木炭、シリカゲルのうちの何れかとを結合若しくは混合させた物質である。また、上記遠赤外線を放射する物質がゼオライトであることを特徴とする。
【0110】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の患者用敷布は、タオル生地などの肌触りの良い上側辺縁布を周囲に縫いつけた上側中央抗菌布と、同じく、タオル生地などの肌触りの良い下側辺縁布を周囲に縫いつけた下側中央抗菌布とで、充填物を挟んだ。この充填物は、遠赤外線を放射すると共に、吸湿及び抗菌作用がある。上側中央抗菌布の抗菌作用で、細菌の増殖若しくは発生を抑えるので、被介護者の皮膚の褥瘡の発生若しくは悪化を防止できる。
【0111】
しかも、充填物より発せられる遠赤外線の効果により、被介護者の体液バランスの調整による血流の改善などの健康促進と、保温効果を図ることができる。しかも、被介護者から出される汗その他の液体が患者用敷布内部の充填物で吸湿されると共に、下側中央抗菌でそれらの液体が患者用敷布より下に浸透することを極力防止できるので、衛生環境の改善に寄与できる。
【0112】
また、上側辺縁布に設けたスリットを介護者が持ち上げることで、被介護者の体位の変更や、移動が容易であり、介護労力の軽減に寄与できる。さらに、キルティング加工が施されているので、患者用敷布全体を丸洗いできる。しかも、抗菌(消臭)剤は、スパッタリング法によって繊維に堅牢に固着されたり、繊維内に直接練り込まれたりしているので、洗濯などによってその抗菌効果が消失することがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る患者用敷布1の上観図を示す。
【図2】 本発明に係る患者用敷布1の下面を観た様子を示す。
【図3】 患者用敷布1の長手方向に切断した垂直断面図を示す。
【図4】 本発明に係る患者用敷布1の組み立て図を示す。
【図5】 上側中央抗菌布2を上観した様子が示す。
【図6】 平坦部11の部分拡大図が示す。
【図7】 患者用敷布1上に被介護者14が仰臥している状態を示す。
【図8】 取手15を示す。
【符号の説明】
1…患者用敷布、2…上側中央抗菌布、3…上側辺縁布、4、5、6、7…スリット、8…下側中央抗菌布、9…下側辺縁布、10…充填物、11…平坦部、12…ミシン縫い、13…膨らみ部、14…被介護者、15…取手。
Claims (4)
- 抗菌・消臭作用を発揮する性質及び遠赤外線を放射する性質の双方の性質を持つ物質が付加された繊維で織られ、しかも下記辺縁布より摩擦係数が小さく滑性を有し、通気性を有する上側中央布と、
抗菌・消臭作用及び吸湿作用の双方の性質を持つ物質が付加された繊維で織られ、しかも下記辺縁布より摩擦係数が小さく滑性を有し、防水加工が施された下側中央布であって、この下側中央布と上記上側中央布とは、共に上下より合わせて1枚の布状にされるものであり、
水分吸収の良い厚手の柔らかい綿織物で作られ、上記上側中央布及び下側中央布の周囲に縫製された辺縁布と、
上記上側中央布と下側中央布との間に挟まれ、遠赤外線を放射する物質が付加された繊維と共に、抗菌・消臭作用を発揮する物質が付加された繊維とで構成され、湿度を下げる吸湿作用を有する充填物とを備え、
上記上側中央布と上記下側中央布と上記充填物とは、キルティング加工が施されて、当該上側中央布表面と当該下側中央布表面とに、膨らみ部と平坦部とが交互に並んだ凹凸が多数形成されていることを特徴とする患者用敷布。 - 上記辺縁布にも抗菌・消臭剤が結合されていることを特徴とする請求項1記載の患者用敷布。
- 幅の狭い帯布の両端を上記辺縁布に縫いつけて構成した、人手を差し込める把係止部が、上記辺縁布の上面及び/又は裏側に少なくとも2箇所形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の患者用敷布。
- 人手を差し込める穴が上記辺縁布部分に少なくとも2箇所形成されていることを特徴とする請求項1、2または3記載の患者用敷布。
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