JP4268277B2 - 一方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

一方向性電磁鋼板の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、変圧器などの電気機器の鉄心材料に用いる、結晶方位(ゴス方位)が一方向に揃った一方向性電磁鋼板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一方向性電磁鋼板は、鋼板面が{110}面で圧延方向が〈100〉軸を有する、いわゆる、ゴス方位(ミラー指数で{110}〈001〉方位を表す)を持つ結晶粒から構成されており、軟磁性材料として、変圧器・発電機の鉄心に使用される。この鋼板は、磁気特性として磁化・鉄損特性が良好でなければならないが、磁化特性の良否は、かけられた一定の磁場中で、鉄心(鋼板)内に誘起される磁束密度の高低で決まり、磁束密度の高い電磁鋼板は、鉄心を小型化できるという利点を有する。高い磁束密度は、鋼板における結晶粒の方位を、{110}〈001〉に、高度に揃えることによって達成できる。なお、通常、磁束密度は800A/mの磁場の強さでの値B8で示される。
【0003】
一方、鉄損は、鉄心に所定の交流磁場を与えた場合に、熱エネルギーとして消費される電力損失であり、その良否に対しては、磁束密度、板厚、被膜張力、不純物量、比抵抗、結晶粒の大きさ等が影響する。それらの中でも、磁束密度が高く、比抵抗が大きいことが、鉄損を小さくするうえで重要であり、できる限り鉄損が低い製品を安いコストで製造する技術の開発が課題となる。
【0004】
一方向性電磁鋼板は、微細析出物によるインヒビターと、冷間圧延ないし一次再結晶による集合組織制御を利用し、二次再結晶させて製造されるもので、磁束密度の高さは、インヒビターと集合組織に依存する。そして、一方向性電磁鋼板においては、Si含有量が多いほど比抵抗が大きくなり、鉄損が小さくなるが、Si含有量を増加させると集合組織が劣化するという問題がある。なお、鉄損は50Hzで磁束密度1.7Tまで磁化したときの損失W17/50で代表される。
【0005】
ところで、これまで工業化された代表的な一方向性電磁鋼板の製造方法として、以下の四つの技術が知られている。
第一の技術は、M.F.Littmannが、特公昭30−3651号公報で開示した、MnSを用いる二回冷間圧延法である。しかし、この方法で製造された一方向性電磁鋼は磁束密度が高くなく、B8は1.86T程度で、飽和磁束密度Bsに対する比で0.92〜0.93程度のゴス方位集積度のものである。
【0006】
第二の技術は、田口等が、特公昭40−15644号公報で開示した、AlN+MnSを用い最終冷間圧延率を80%以上の強圧下率とする技術である。この技術においては、高い磁束密度は得られるが、工業生産に際し、製造条件の厳密なコントロールが要求される。この技術で製造された一方向性電磁鋼板において、磁束密度B8は1.93T程度で、飽和磁束密度Bsに対して0.95〜0.96程度のゴス方位集積度ものが得られている。
【0007】
第三の技術は、今中等が、特公昭51−13469号公報で開示した、MnS(および/またはMnSe)+Sbを用いる二回冷間圧延法に係る技術である。この技術で得られる電磁鋼板においては、磁束密度が第二の技術のものより劣り、磁束密度B8は1.90T程度で、ゴス方位集積度は、飽和磁束密度Bsに対し0.94〜0.95程度である。
【0008】
上記3種の技術には、共通して次のような問題がある。これらの技術は、いずれも、インヒビターの造り込みを冷間圧延前でおこなっている。すなわち、熱間圧延に先立つスラブ加熱温度を1250℃超、実際には、1300℃以上と極めて高くすることによって、粗大な析出物を一旦固溶させ、その後の熱間圧延あるいは熱処理中において、析出物を微細・均一に析出させている。ところが、スラブ加熱温度を上げること(高温スラブ加熱法)は、スラブ加熱時の使用エネルギーの増大、設備損傷率の増大等の他、材質的には、スケールロス・耳割れによる歩留まり低下、スラブの結晶組織粗大化に起因する線状の二次再結晶不良の発生等の問題を抱えていて、特に、薄手材、高Si材において、この問題は顕著になってくる。
【0009】
このような高温スラブ加熱法の問題を解決するため、第四の技術として、低温スラブ加熱法が開発され、その技術が、特開昭62−40315号公報および特開平5−112827号公報に開示されている。この技術は、二次再結晶に必要なインヒビターを、脱炭焼鈍(一次再結晶)完了以降から仕上焼鈍における二次再結晶発現以前までの間に、鋼中に造り込むことで、スラブ加熱温度を、普通鋼なみの1280℃以下とする技術である。インヒビターは、鋼中にNを侵入させることによって形成する(Al,Si)Nである。そして、析出量は、従来の高温スラブ加熱法における析出量の3倍以上を確保できるため、インヒビターは、強固で熱的安定性が高いものとなる。鋼中にNを侵入させる手段としては、仕上焼鈍の昇温過程で雰囲気ガスからNを侵入させる手段、もしくは、脱炭焼鈍の後段領域または脱炭焼鈍完了後においてストリップを連続ラインで窒化焼鈍する手段がある。窒化源としては、NH3 等を混合した焼鈍雰囲気ガスを用いる。このような低温スラブ加熱法によって、一方向性電磁鋼板の抜本的なコストダウンが達成できた。
【0010】
また、上記方法は、熱的に安定なインヒビターを用いることにより、上記第二の技術と同等の高磁束密度を得ることができる。磁束密度B8は、1.93T程度で、ゴス方位集積度は飽和磁束密度Bsに対する比で0.94〜0.96程度である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上記低温スラブ加熱法による一方向性電磁鋼板の製造においては、高温スラブ加熱法で発生する、結晶異常粒成長に起因する線状の二次再結晶不良の問題がなく、高Si化が容易となる。それ故、本発明者らは、低温スラブ加熱−一回冷間圧延法をベースに、高Si化を推進してきたが、成分組成をはじめとする工程条件をそのままにして、鋼中のSi含有量を増加させると、磁束密度B8が劣化し、所定の低鉄損が得られ難いという問題に直面した。本発明者らはこの原因を鋭意調査したところ、まず、Si含有量が増加すると飽和磁束密度Bsが低下するため、ゴス二次再結晶の方位集積度を現す指標として、飽和磁束密度Bsに対するB8の比率(B8/Bs;以下ゴス方位集積度と記す)が有用であり、かつ、良好な鉄損特性を達成するためには、所要レベルのゴス方位集積度の確保が必要であることを見い出した。ところが、ゴス方位集積度でみても、単にSi含有量を増加させただけでは、ゴス方位集積度が劣化し、所定の鉄損特性が得られなかった。即ち、Si含有量の増大にともなう冶金的な変化を、インヒビターと集合組織の両観点から解明し、高Si材においても、所要レベルのゴス方位集積度を確保するための補償技術の開発が課題となる。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、高Si化にともなう材質的な変化を詳細に調査することにより、ゴス方位集積度劣化の原因を解明するとともに、低温スラブ加熱−窒化法の製造プロセスにおいて、高Si化するための適正プロセス条件を検討した。まず、高Si化にともなうゴス方位集積度の劣化は、焼鈍した熱延板における結晶粒径粗大化が原因であり、結晶粒径を所定の範囲に制御することが重要であることを解明した。また、上記制御の方法を種々検討した結果、C含有量を調整することにより変態相量を調整し、この調整により、ゴス方位集積度を所望のレベルで確保することが可能となり、Si含有量に応じた鉄損特性の改善を達成できることを発見した。
【0013】
即ち、本発明は、上記知見に基づくものであるところ、その要旨とするところは、下記(1)および)に示すとおりである。
(1)質量%で、C:0.02〜0.10%、Si:2.5〜4.0%、Mn:0.05〜0.45%、Sおよび/またはSe:0.015%以下、酸可溶性Al:0.020〜0.035%、N:0.0035〜0.012%、残部Fe及び不可避的不純物からなり、Si含有量(%)に応じ、C含有量(%)を、
0.023×Si(%)−0.032≦C(%)≦0.025×Si(%)−0.010
の範囲内に調整した電磁鋼スラブを、1280℃以下の温度に加熱した後、熱間圧延し、熱延板を900〜1170℃の温度で30〜500秒焼鈍し、その後、急冷却し、圧下率80%以上の冷間圧延をし、次いで、脱炭焼鈍、窒化処理、仕上焼鈍をする一方向性電磁鋼板の製造方法において、焼鈍した熱延板における非変態フェライト相の平均結晶粒径を28〜85μmの範囲に制御し、ゴス方位集積度B8/Bs≧0.94とすることを特徴とする一方向性電磁鋼板の製造方法。
(2) 前記非変態フェライト相の平均結晶粒径を35〜65μmの範囲に制御し、ゴス方位集積度B8/Bs≧0.94とすることを特徴とする請求項1記載の一方向性電磁鋼板の製造方法。
【0014】
【発明の実施の形態】
まず、本発明を実験結果に基づき説明する。
質量%で、Mn:0.1%、S:0.007%、Cr:0.12%、酸可溶性Al:0.029%、N:0.0083%、P:0.030%をベース成分含有量とし、Cを0.021〜0.095%、Siを2.5〜4.5%の範囲で変更した電磁鋼スラブを、1150℃で60分間加熱した後に熱間圧延し、2.3mm厚の熱延板を製造した。そして、この熱延板を、1120℃+900℃で焼鈍加熱した後、急冷却した。急冷後の熱延板の断面を光学顕微鏡で観察し、結晶粒径の平均値を測定した。
【0015】
上記熱延板を引き続き酸洗し、0.22mm厚の冷延板に冷間圧延した。この冷延板につき、焼鈍温度を変えて脱炭焼鈍し、一次再結晶粒の粒径を23μmに調整した。この後、窒化焼鈍を、750℃×30秒で水素、窒素、アンモニアの混合ガス中で行い、鋼板の窒素量を、ほぼ220ppmに調整した。次いで、MgO,TiO2 を主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、1200℃まで10℃/hrで加熱し、その後、1200℃で20時間の仕上焼鈍を行った。仕上焼鈍板を歪み取焼鈍した後、SST(Single Sheet Tester)で磁気特性を測定した。なお、磁束密度については、飽和磁束がSi含有量の増加に伴い低下するため、Si含有量の異なる電磁鋼材料では、磁束密度B8をもってゴス二次再結晶の先鋭度を反映できない。そこで、B8/Bsの規格値でゴス方位集積度を評価した。そして、X線回折による結晶方位測定により、B8/Bsの妥当性を確認した。
【0016】
図1に、焼鈍した熱延板における平均結晶粒径(μm)と、二次再結晶のゴス方位集積度(B8/Bs)の関係を示す。B8/Bs≧0.94の高い二次再結晶先鋭度を得るための平均結晶粒径は、28〜85μmの範囲にあることが判明した。これが、本発明における第1の特徴である。ここで、この平均結晶粒径28〜85μmの範囲内において、鉄損は、Si含有量の増大にともない低下しており、高Si化の効果が発揮されていることを確認した。鉄損改善代は、0.1%のSi含有量あたり、W17/50で約0.015W/kgであった。
【0017】
焼鈍した熱延板における結晶粒径が二次再結晶の先鋭度に影響を及ぼすメカニズムは、現在のところ明らかでないが、次のように考えられる。一方向性電磁鋼板におけるゴス方位集積度は、前述したように、インヒビター強度と一次再結晶集合組織に依存すると考えられるが、本発明においては、主に、一次再結晶集合組織による影響が大きいものと考えられる。
【0018】
一般に、一次再結晶においては、二次再結晶核としてのゴス方位と、ゴス核と対応方位関係にある〔111〕<211>方位について考えればよい。また、ゴス方位は、冷間圧延で結晶粒内に形成される変形帯を生成サイトとし、冷間圧延前の結晶粒径が大きい方が、ゴス核が多くなると考えられている。一方、〔111〕<211>は、冷間圧延前の結晶粒界近傍を再結晶生成サイトとし、冷間圧延前の結晶粒径が小さいと、〔111〕<211>は増加すると考えられている。従って、焼鈍した熱延板における結晶粒径が小さすぎる場合、一次再結晶のゴス核が不足することとなり、良好な二次再結晶ゴス方位集積度と粒径は得られない。
【0019】
逆に、焼鈍した熱延板における結晶粒径が大きすぎる場合、一次再結晶のゴス核と対応方位関係にある(111)<211>方位が減少し、そのため、安定して高磁束密度を得るには不利となると考えられる。本発明で基本とする低温スラブ加熱法においては、上記集合組織の兼ね合いより、冷間圧延前の結晶粒径は、28〜5μmが適正であると考えられる。一方、たとえば、特開平9−316537号公報に開示されるように、本発明者らの調査によると、いわゆる、高温スラブ加熱法を前提とする技術では、冷間圧延前の適正な結晶粒径は、10〜25μmと、本発明における適正結晶粒径に比べ著しく小さい。この理由は明確でないが、上記公報開示の方法では、低温スラブ加熱法に比較してインヒビターの熱的安定性が低いため、その分、一次再結晶粒径を小さくして、二次再結晶駆動力を弱めなくてはならないことが関与しているものと考えられる。
【0020】
次に、焼鈍した熱延板における平均結晶粒径を制御する方策について検討した実験結果を述べる。
上記実験結果から整理したB8/Bsに対するSiとCの各量(%)の影響を図2に示す。図中に、平均結晶粒径の測定値を示すが、Si量(%)が多い、または、C量(%)が少ないほうが、結晶粒径が大きいことが判る。図1に示すように、焼鈍した熱延板における平均結晶粒径28〜85μmにおいて、B8/Bs≧0.94が可能であり、この結晶粒径を得るためには、Si量(%)に応じて、
0.023×Si(%)−0.032≦C(%)≦0.025×Si(%)−0.010
の範囲内にC量(%)を調整する必要があることが判る。これが、本発明の第2の特徴である。
【0021】
第2の特徴について冶金的な見解を述べると、次のとおりである。
一般に、Siはオーステナイトループ型元素、Cはオーステナイト拡大元素であることが知られている。従って、Si量(%)を増加させると、スラブ加熱から熱延板焼鈍にいたる熱履歴でのオーステナイト変態率が減少する。そして、オーステナイトは、フェライトの粒成長を抑制するものであるから、Si量(%)の増大にともない、焼鈍した焼鈍板における結晶粒径が大きくなるものと考えられる。従って、C量(%)を高めてオーステナイト変態率を確保するという観点から、Si量(%)の増大にともない、C量(%)の適正範囲も高めにシフトするものと考えられる。
【0022】
次に、本発明における電磁鋼スラブの成分組成の限定理由につき説明する。
Cは、γ変態を利用して熱延組織を改善するために、0.02%以上必要であるが、0.10%を超えると、脱炭焼鈍時間が長くなり、生産性を損なうので、上限を0.10%とする。加えて上述したように、C量(%)は、Si量(%)に応じて、「0.023×Si(%)−0.032」〜「0.025×Si(%)−0.010」の範囲内に調整される。C量(%)が上記範囲未満になると、二次再結晶が不安定になり、二次再結晶した場合でも、ゴス方位集積度(B8/Bs)が0.94以下と低いものとなる。一方、C量(%)が上記範囲を超えると、二次再結晶は安定するが、やはりゴス方位集積度が劣化する。
【0023】
Siは、製品の比抵抗を効果的に上げ低鉄損を得るための重要な元素であり、狙うべき鉄損に応じて含有量が決定される。2.5%未満になると低鉄損の製品が得難く、一方、4.0%を超えて多くなり過ぎると材料の冷延性に問題を生ずるので、Siは2.5〜4.0%とした。
本発明における電磁鋼スラブの成分組成における特徴の一つは、Sおよび/またはSeを0.015%以下、好ましくは、0.007%以下とする点にある。周知のごとく、SはMnS、SeはMnSeを形成し、粒成長を抑制する作用をする。本発明においては、二次再結晶粒を発現させるのに必要なインヒビターは、脱炭焼鈍以降の工程で造り込むことを特徴としており、冷間圧延以前で微細な析出物が分散することは、一次再結晶粒径を調整して高磁束密度および低鉄損を得ようとする本発明においては、好ましくない。従って、Sおよび/またはSeは0.015%以下としている。また、Sおよび/またはSe量を少なくすることは、熱間圧延時の耳割れの低減にも効果が大きい。
【0024】
Alは、Nと結合してAlNを形成するが、本発明においては、後工程、即ち、一次再結晶完了後に鋼を窒化することにより、(Al,Si)Nを形成せしめることを必須としているから、フリーのAlが一定量以上必要である。そのため、酸可溶性Alとして、0.020〜0.035%添加する。
Nは、0.0035〜0.012%にする必要がある。0.012%を超えると、ブリスターと呼ばれる鋼板表面の脹れが発生する。また、一次再結晶組織の調整が困難になる。下限は0.0035%がよい。この値未満になると、二次再結晶粒を発達させるのが困難になるからである。
【0025】
Mnは、その含有量が少な過ぎると二次再結晶が不安定となり、一方、多過ぎると高い磁束密度を持つ製品を得難くなる。適正な含有量は、0.05〜0.45%である。
この他、微量のCr、Sn、P、Cu、Sb、Ni、Bi等を含むことは本発明の主旨を損なうものではない。
【0026】
次に、本発明の製造プロセスについて説明する。電磁鋼スラブは、転炉または電気炉等の溶解炉で溶製し、必要に応じて真空脱ガス処理し、次いで、連続鋳造によって、または、造塊後分塊圧延することによって得られる。その後、熱間圧延に先立つスラブ加熱がなされる。
本発明の製造プロセスにおいては、スラブ加熱は1280℃以下の低い温度で行なう。この低温スラブ加熱は、加熱エネルギーの消費量を少なくするとともに、鋼中のAlNを完全に固溶させずに不完全固溶状態とする。また、この低温スラブ加熱で当然のことながら、固溶温度が高いMnSも不完全固溶状態となる。スラブ加熱後は直ちに通常の方法により粗熱延と仕上熱延を経て、板厚2〜3mmの熱延板に熱間圧延される。
【0027】
熱延板は通常の方法で焼鈍される。熱延板焼鈍の条件は公知の方法でよいが、通常、900〜1170℃の温度で30〜500秒程度の焼鈍を行ない、その後急冷却をする。
本発明は、上述したように、焼鈍した熱延板における平均結晶粒径を28〜85μm、好ましくは、35〜65μmの範囲内に制御することを特徴とする。平均結晶粒径の測定方法は、鋼板の板厚方向で、熱延方向に平行した断面における一方の表層から他方の表層までにわたる領域において、1000個以上の結晶粒の個数を測定し、一個当たりの面積より、円相当径に換算して算出したものである。個数の測定は、旧オーステナイト相にあたる微細なベーナイトやパーライト組織を除き、旧フェライト組織に対して行う。なお、粒径の測定は、画像解析処理装置等を用いてもかまわない。また、測定する断面は熱延方向に直角であってもかまわないが、結晶粒は熱延方向に延伸しているので平均粒径値は、直角方向の80〜90%とやや小さくなる。
【0028】
続いて、冷間圧延以降の工程条件について言及する。本発明は、低コストを目指す観点から、熱延板焼鈍後は、強圧下の一回冷間圧延を前提とする。冷間圧延は通常の方法で行う。高い磁束密度を得るために、圧下率を高めたり、パス間で時効処理をすることは好ましい。
最終板厚に冷間圧延された冷延板に脱炭焼鈍を施す。脱炭焼鈍には、脱炭を行う他に、一次再結晶組織の調整および被膜形成に必要な酸化層を生成させる役割がある。そして、脱炭焼鈍は、通常、800〜900℃の温度域で湿水素、窒素ガス中で行う。
【0029】
次に、窒化処理を行うが、窒化処理の条件は公知の条件でよく、焼鈍温度を650〜850℃とすることが、窒化にとって有利である。良好な二次再結晶粒を安定して発達させるには、窒素量は120ppm以上、好ましくは、150ppm以上必要である。
この後、公知の方法で、MgO、TiO2 を主成分とするスラリーを塗布し、1100℃以上の温度で仕上焼鈍を行う。仕上焼鈍の条件は公知の条件でよく、ゴス方位集積度を高めるために、雰囲気を調整したり、加熱速度を遅くすることは有効である。
【0030】
【実施例】
質量%で、Mn:0.10%、S:0.007%、Cr:0.12%、酸可溶性Al:0.028%、N:0.0084%、P:0.025%をベースとし、C量(%)とSi量(%)を表1に示すように調整した電磁鋼スラブを、1150℃で加熱後、熱間圧延し、2.0mmの熱延板とした。その後、1120℃+900℃で熱延板焼鈍した後、急冷却した。焼鈍後の平均結晶粒径を表1に示す。次いで、酸洗した後、0.22mm厚の冷延板に冷間圧延した。これを湿水素、窒素雰囲気中で脱炭焼鈍した。この時、一次再結晶粒の粒径が約23μmになるように焼鈍温度を調整した。
【0031】
この後、窒化焼鈍を、750℃×30秒で水素、窒素、アンモニアの混合ガス中で行い、鋼板中の窒素量を、215ppmに調整した。次いで、MgO、TiO2 を主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、1200℃×20時間の仕上焼鈍を行った。仕上焼鈍板を歪み取り焼鈍した後、磁束密度B8を測定した。それから、コロイダルシリカとリン酸アルミニウムを主成分とする張力コーティングを塗布し、焼き付けた後、冷延方向に、5mm間隔でレーザー照射磁区制御を行い、鉄損W17/50を測定した。結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
Figure 0004268277
【0033】
表1から、本発明の条件を満たす条件の下では、良好な鉄損が得られていることが判る。
【0034】
【発明の効果】
本発明により、コストメリットが高い低温スラブ加熱−窒化法を前提とするプロセスにおいて、高Si化が可能となり、ゴス方位集積度が高く、鉄損が良好な一方向性電磁鋼板を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Si量(%)毎における、焼鈍した熱延板における平均結晶粒径と二次再結晶ゴス方位集積度(B8/Bs)の関係を示す図である。
【図2】C量(%)およびSi量(%)と、二次再結晶ゴス方位集積度(B8/Bs)および平均結晶粒径の関係を示す図である。

Claims (2)

  1. 質量%で、
    C:0.02〜0.10%、
    Si:2.5〜4.0%、
    Mn:0.05〜0.45%、
    Sおよび/またはSe:0.015%以下、
    酸可溶性Al:0.020〜0.035%、
    N:0.0035〜0.012%、
    残部Fe及び不可避的不純物からなり、Si含有量(%)に応じ、C含有量(%)を、
    0.023×Si(%)−0.032≦C(%)≦0.025×Si(%)−0.010
    の範囲内に調整した電磁鋼スラブを、1280℃以下の温度に加熱した後、熱間圧延し、熱延板を900〜1170℃の温度で30〜500秒焼鈍し、その後、急冷却し、圧下率80%以上の冷間圧延をし、次いで、脱炭焼鈍、窒化処理、仕上焼鈍をする一方向性電磁鋼板の製造方法において、焼鈍した熱延板における非変態フェライト相の平均結晶粒径を28〜85μmの範囲に制御し、ゴス方位集積度B8/Bs≧0.94とすることを特徴とする一方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 前記非変態フェライト相の平均結晶粒径を35〜65μmの範囲に制御し、ゴス方位集積度B8/Bs≧0.94とすることを特徴とする請求項1記載の一方向性電磁鋼板の製造方法。
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