JP4267759B2 - 改質型燃料電池電源システムにおける余剰水素の処理方法 - Google Patents

改質型燃料電池電源システムにおける余剰水素の処理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、過渡応答対応電気エネルギバッファと、改質器を含む燃料電池システムとを組み合わせた燃料電池電源システムを搭載する燃料電池電気自動車の負荷変動時に発生する余剰水素を処理する燃料電池電源システムにおける余剰水素の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池システムの一つとして、従来、いわゆる改質型燃料電池システムが知られている。この改質型燃料電池システムは、水メタノール混合液などの液体燃料を蒸発器によって蒸発させて得られる蒸発ガスを改質器に供給し、この改質器によって燃料ガスを生成し、この燃料ガスを燃料電池に供給するものである。そして近年においては、燃料電池システムを備えたいわゆる燃料電池電気自動車の開発が盛んになってきており、改質器を備えた改質型燃料電池システムを用いたものの開発も行われている。
【0003】
この改質型燃料電池システムを備える燃料電池電気自動車においては、減速、停止時に過渡状態が発生し、負荷が急減すると、この負荷の急減に改質器が追いつかずに、必要以上の燃料ガスである余剰水素を生成してしまうことがある。このような余剰水素を残しておくと、余剰水素が燃料電池内に溜まり、燃料電池における燃料ガスの吸入口を塞いでしまうおそれなどの問題があるため、余剰水素は何らかの手段で処理する必要がある。
【0004】
このような余剰水素を除去するため、従来においては、たとえば、余剰水素をそのまま燃料電池に供給して余剰電力を発生させ、この余剰電力をバッテリなどの過渡応答対応電気エネルギバッファに充電する方法が採られていた。
また、過渡応答対応電気エネルギバッファで余剰電力を充電しきれない場合には、別途設けられた抵抗負荷によって、この余剰電力を処理するようにしていた。
他方、余剰水素を液体燃料を気化させる蒸発器を加熱する燃焼器の熱源として利用する方法もあった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記従来技術においては、それぞれに不都合な部分がある。
まず、余剰電力を過渡応答対応電気エネルギバッファに充電する方法においては、過渡応答対応電気エネルギバッファの充電領域がいっぱいであった場合には、過渡応答対応電気エネルギバッファに充電することができない。このため、充電しきれなかった余剰電力は抵抗負荷によって消費しなければならず、電力を無駄に消費することになるものであった。また、抵抗負荷で電力を消費する方法でも、同様に、電力を無駄に消費するものである。
【0006】
他方、余剰水素を蒸発器の熱源として燃焼器に供給する方法では、余剰水素が多すぎた場合には、この余剰水素を消費するために、燃料電池に大量の空気を供給しなければならない。したがって、大量の空気を燃料電池に供給するために、補機を駆動するための電力を過渡応答対応電気エネルギバッファから持ち出さなければならないという不具合が生じる。また、蒸発させる液体燃料の量に対しての余剰水素の量が多すぎると、蒸発器の温度が上がりすぎて蒸発器を破損させる原因となりかねない。
【0007】
そこで、本発明の課題は、前記の不都合を生じることなく、改質型燃料電池システムを備える燃料電池電気自動車において、過渡時に発生する余剰水素を確実にしかも効率的に処理できるようにすることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決した本発明に係る改質型燃料電池電源システムにおける余剰水素の処理方法は、過渡応答対応電気エネルギバッファと、水素を発生する改質器を含む燃料電池システムとを組み合わせた燃料電池電源システムを搭載する燃料電池電気自動車の負荷変動時に発生する余剰水素を処理する方法であって、
前記燃料電池電気自動車における負荷安定時には、前記過渡応答対応電気エネルギバッファにおける充電領域の一部に充電許容領域を確保しておき、
前記燃料電池電気自動車における過渡時に発生する余剰水素によって発電される余剰電力を、前記充電許容領域に充電し、
前記充電許容領域に充電しきれない余剰電力によって、前記燃料電池電気自動車における補機を駆動することを特徴とするものである。
【0009】
本発明においては、燃料電池電気自動車における負荷安定時には、過渡応答対応電気エネルギバッファにおける充電領域の一部に充電許容領域を確保している。したがって、燃料電池電気自動車の減速、停止時といった過渡時に生じる余剰水素を利用して余剰電力を発電し、この充電許容領域に余剰電力を充電できるので、電力を無駄に消費することが少なくなる。
しかも、余剰電力を無駄に消費する必要が少ないので、別途負荷抵抗を設ける必要がなくなるか、あるいは負荷抵抗を設ける必要があったとしても、その負荷抵抗を小さなものとすることができる。
なお、本発明にいう「負荷安定時」とは、燃料電池電気自動車における負荷が安定していて余剰水素を発生しない状態をいい、「過渡時」とは、燃料電池電気自動車の急減速時や停止時など、余剰水素を発生しうる状態をいう。
【0010】
このとき、前記補機の駆動によって消費しきれない余剰水素を、前記改質器に蒸発した液体燃料を供給する蒸発器の処理能力の範囲内で、前記蒸発器を加熱する燃焼器の燃料として用いるのが好適である。
【0011】
過渡応答対応電気エネルギバッファに充電し、さらに補機を駆動するための電力を消費してもなお余剰水素が生じる場合には、この余剰水素を燃焼器の燃料として用いる。したがって、過渡時に生じる余剰水素をさらに有効的に活用することができる。ただし、蒸発器の処理能力を超える場合には、蒸発器を破損させるおそれがあるので、蒸発器の処理能力の範囲内で利用する必要がある。
【0012】
さらには、前記蒸発器の処理能力の範囲を超えてさらに前記余剰水素がある場合には、その余剰水素を燃料電池のエアパージ用として用いるのが望ましい。燃焼器の燃料として用いた場合において、蒸発器の処理能力の範囲を超えて発生する余剰水素については、燃料電池のエアパージ用として用いることにより、さらに余剰水素の有効活用を図ることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら、具体的に説明する。
図1は、本発明に係る余剰水素処理が行われる改質型燃料電池電源システムの構成を示すブロック図である。
【0014】
図1に示すように、本発明に係る余剰水素処理が行われる改質型燃料電池電源システム(以下、「燃料電池電源システム」という。)Mは、液体燃料である水メタノール混合液F1が供給される蒸発器1を備えている。蒸発器1においては、燃焼器2から熱源を得て、水メタノール混合液F1を蒸発させて蒸発ガスとする図示しない熱交換部を備えている。蒸発器1の下流側には、蒸発器1から蒸発ガスが供給される改質器3が設けられている。また、蒸発器1および燃焼器2にはそれぞれその温度を検出する温度検出器1A,2Aが取り付けられている。
【0015】
改質器3には、第1熱交換器4A、CO除去器5、および第2熱交換器4Bを介して燃料電池6が接続されており、改質器3によって生成される燃料ガスが燃料電池6に供給される。ここで、CO除去器5では、燃料ガス中に含まれる余分な一酸化炭素を除去している。
【0016】
また、燃料電池6には、エアコンプレッサ7が接続されており、エアコンプレッサ7によって酸素リッチである空気を燃料電池6に供給している。そして、燃料電池6においては、燃料ガス中における水素と空気中における酸素とを電気化学的に反応させ、その反応によって電気を生じさせる。エアコンプレッサ7によって燃料電池6に供給される空気は、レゾネータ8、フィルタ9Aを介して大気中から吸引され、さらにインタークーラ10およびフィルタ9Bを経て燃料電池6に供給される。
【0017】
燃料電池6は電気的に高圧分配器11に接続されており、燃料電池6により発生した電力は高圧分配器11に供給される。この高圧分配器11は、電気的に、DC/DCコンバータ12を介して過渡応答対応電気エネルギバッファであるバッテリ13に接続されるとともに、PCU(power control unit)14を介して主モータ15に接続されている。このように、燃料電池電源システムMは、改質器3を含む燃料電池システムと、過渡応答対応電気エネルギバッファであるバッテリ13を組み合わせて構成されている。
高圧分配器11は、さらには、バッテリの一部などに設定されるエネルギストレージ(充電許容領域)16に接続されている。また、PCU14は、エアコンプレッサ用モータ17に接続されている。なお、燃料電池電源システムMを起動する際には、液体燃料であるメタノールF2が始動燃焼器18に供給されるようになっている。また、燃料電池6から排出される水素を含有する排出ガスは、燃焼器2に供給される。
【0018】
さらに、燃料電池電源システムMは、ECU(electronic control unit)20を備えている。このECU20には、アクセル21、主モータ15、およびエネルギストレージ16からの制御信号が入力される。また、温度検出器1A,2Aからの温度信号も入力される。一方、PCU14、エアコンプレッサ用モータ17、ポンプP1、P2およびバルブV1,V2に対してそれぞれ制御信号が出力される。
【0019】
ところで、負荷安定時におけるバッテリ13の充電量は、最大充電量のおよそ80%程度に維持されており、残りの20%がエネルギストレージ16となっている。また、急減速時あるいは停止時などの過渡時に、この充電許容領域に燃料電池6から電気が供給されて充電が行われる。過渡時における充電量は、バッテリ13の最大充電量の100%の寸前となるまで充電ができるようにしておく。SOC(status of charge)値が100%近くになるまでバッテリ13に電気を供給すると、負荷安定時には充電効率が落ちるものであるが、過渡状態にあるときには、通常、その直後にバッテリ13からの電気の持ち出しがある。このため、SOC値が100%付近である時間はごくわずかであるので、充電効率を大きく低下させることはない。なお、バッテリ13のSOC値は、バッテリ13に設けられた図示しないSOC測定器によって測定されている。
【0020】
この燃料電池電源システムMの作用について説明すると、蒸発器1に水メタノール混合液F1が供給されると、蒸発器1においては、燃焼器2から加えられる熱によって、図示しない熱交換部で水メタノール混合液F1を蒸発して蒸発ガスとする。こうして得られた蒸発ガスは、蒸発器1から改質器3へと供給される。
【0021】
改質器3においては、蒸発ガスを改質触媒に接触させて、水素リッチである燃料ガスを生成する。この燃料ガスの大部分は第1熱交換器4Aで冷却され、CO除去器5でCOを除去された後、さらに第2熱交換器4Bで冷却されて燃料電池6に供給される。燃料ガスのうちの他の一部は燃焼器2に供給されて、蒸発器1の熱源となる。
【0022】
また、燃料電池6には、エアコンプレッサ7によって、酸素リッチである空気が供給される。これら燃料ガスに含まれる水素と、空気に含まれる酸素とを燃料電池6で反応させる過程において、燃料電池6より電気が発生する。燃料電池6で消費しきれない水素や空気などは、オフガスとなって燃焼器2に供給される。
【0023】
燃料電池6によって発生した電気は、高圧分配器11に供給される。そして、高圧分配器11からは、DC/DCコンバータ12を介してバッテリ13に電力が供給されるとともに、PCU14を介して主モータ15に電力が供給される。バッテリ13からは、電動エアコン、電動パワステ、ライト類、ヒータ、各負荷抵抗など各種自動車用補機に電力が供給される。また、主モータ15を回転させることによって車輪Sが駆動する。他方、PCU14からは、エアコンプレッサ用モータ17に対しても電力が供給される。
【0024】
ECU20においては、各種信号に基づいて、高圧分配器11における電力の分配量を算出して、高圧分配器11およびPCU14に出力信号を送信する。すなわち、図示しない運転手がアクセル21を操作することにより、主モータ15の要求負荷が算出され、PCU14に送信される。PCU14においては、高圧分配器11からの電力の供給を受けるとともに、主モータ15およびエアコンプレッサ用モータ17の要求に応じて、それぞれに対して必要な電力を供給する。また、エネルギストレージ16のストレージ量および主モータ15の要求負荷によって、高圧分配器11における電力の分配量を算出して、高圧分配器11に制御信号を送信する。一方、温度検出器1Aの検出温度に基づいて、ポンプP1の操作量およびバルブV1の開度を調節する。また、温度検出器2Aの検出温度に基づいて、ポンプP2の操作量およびバルブV1の開度を調節する。
【0025】
次に、本発明に係る余剰水素の処理手順について、燃料電池電源システムMを燃料電池電気自動車を搭載した場合を例にとって図2を参照して説明する。
図2は、本発明に係る燃料電池電源システムMにおける余剰水素の処理方法のフローチャートである。
【0026】
まず、余剰水素処理を開始し(S1)、燃料電池電気自動車が急減速あるいは停止したか否かを検出して過渡時であるか否かを判断する(S2)。ここで、急減速や停止などが生じていない場合には、過渡時ではない(負荷安定時である)と判断して処理が終了する(S10)。一方、燃料電池電気自動車の急減速あるいは停止が検出され、過渡時であると判断された場合にはECU20によって水メタノール混合液F1の供給が停止されるが、制御遅れに起因して余剰水素が発生する。
【0027】
この余剰水素を処理すべく、過渡時であると判断された場合には、バッテリ13のSOC値を検出し、エネルギストレージ16に充電許容領域が残っているか否かを判断する(S3)。充電許容領域が残っているか否かの判断基準としては、燃料電池電気自動車が減速した場合にはSOC値が80%未満のときに充電許容領域が残っていると判断する。また、燃料電池電気自動車が停止した場合には、後の発進時にバッテリ13からの電力の持ち出しが必要となるので、SOC値が100%未満のときに充電許容領域が残っていると判断する。
【0028】
そして、エネルギストレージ16に充電許容領域が残っていると判断された場合には、エネルギストレージ16に余剰電力を充電する(S4)。一方、エネルギストレージ16に充電許容領域がないと判断された場合には、余剰電力をDC/DCコンバータ12を介してバッテリ13に供給してから電動エアコンなどの補機の駆動に利用する(S5)。
【0029】
その後、さらに余剰水素が残っている場合には、蒸発器1が処理能力の範囲内にあるか否かを判断する。蒸発器1が処理能力の範囲内にあるか否かの判断は、温度検出器1Aまたは2Aによって蒸発器1または燃焼器2の温度を検出し、異常高温となっているか否かを判断することによって行われる(S6)。そして、蒸発器1の温度が異常高温に達しておらず、蒸発器1の処理能力の範囲内にある場合には、バルブV3を開いて余剰水素を燃焼器2に供給し、燃焼器2における図示しないバーナで燃焼する(S7)。一方、蒸発器1の温度が異常高温に達していて、蒸発器1の処理能力を超える場合には、バルブV3を閉じて余剰水素の供給を停止して処理を終了する(S10)。
【0030】
蒸発器1が処理能力の範囲内にあり、余剰水素を燃焼器2に供給した場合には、燃料電池電気自動車が停止したか否かを検出する(S8)。そして、燃料電池電気自動車が停止したと判断された場合には、余剰水素によって燃料電池6内をエアパージする(S9)。そして、燃料電池電気自動車が停止していないと判断された場合、すなわち急減速があった場合には、処理はそのまま終了する(S10)
【0031】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明は、過渡応答対応電気エネルギバッファに余剰電力を充電するのが主要な目的であるので、たとえば、余剰水素をエアパージに用いる工程を省略した態様としたり、あるいは、補機用モータに供給することなく、抵抗負荷で消費するような態様とすることができる。
他方、余剰電力で補機を駆動する場合には、エアコンプレッサに対して最初に余剰電力を供給するのが好適である。すなわち、エアコンプレッサは、酸素リッチである空気を燃料電池に供給するものであるため、余剰水素が発生している場合に、余剰水素消費のための酸素リッチである空気を供給するために寄与するものだからである。
【0032】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によれば、改質型燃料電池システムを備える燃料電池電気自動車において、過渡時に発生する余剰水素を確実にしかも効率的に処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る余剰水素処理が行われる改質型燃料電池電源システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る改質型燃料電池電源システムにおける余剰水素の処理方法のフローチャートである。
【符号の説明】
1 蒸発器
2 燃焼器
3 改質器
4A,4B 熱交換器
5 CO除去器
6 燃料電池
7 エアコンプレッサ
11 高圧分配器
13 バッテリ(過渡応答対応電気エネルギバッファ)
16 エネルギストレージ
M 改質型燃料電池電源システム
F1 水メタノール混合液

Claims (3)

  1. 過渡応答対応電気エネルギバッファと、水素を発生する改質器を含む燃料電池システムとを組み合わせた燃料電池電源システムを搭載する燃料電池電気自動車の負荷変動時に発生する余剰水素を処理する方法であって、
    前記燃料電池電気自動車における負荷安定時には、前記過渡応答対応電気エネルギバッファにおける充電領域の一部に充電許容領域を確保しておき、
    前記燃料電池電気自動車における過渡時に発生する余剰水素によって発電される余剰電力を、前記充電許容領域に充電し、
    前記充電許容領域に充電しきれない余剰電力によって、前記燃料電池電気自動車における補機を駆動することを特徴とする改質型燃料電池電源システムにおける余剰水素の処理方法。
  2. 前記補機の駆動によって消費しきれない余剰水素を、前記改質器に蒸発した液体燃料を供給する蒸発器の処理能力の範囲内で、前記蒸発器に熱を加える燃焼器の燃料として用いることを特徴とする請求項1に記載の改質型燃料電池電源システムにおける余剰水素の処理方法。
  3. 前記蒸発器の処理能力の範囲を超えてさらに前記余剰水素がある場合には、その余剰水素を燃料電池のエアパージ用として用いることを特徴とする請求項2に記載の改質型燃料電池電源システムにおける余剰水素の処理方法。
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