JP4267748B2 - ケーブル端末の固定部品及び固定構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラスチック又はゴム絶縁電力ケーブルの端末を固定する固定部品とそれを用いたケーブル端末の固定構造に関し、主に33kV以下の電力ケーブル端末に好適な固定部品及び固定構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近、ケーブル付属品の分野では、常温収縮型の端末部材が普及してきている。図10にその一例を示す。常温収縮型の端末部材10は、ケーブル外径の数倍の内径をもつ拡径保持材12によって拡径状態に保持されている。端末部材10は、拡径前の内径がケーブル外径より小さく、拡径保持材12が除去されると、拡径前の内径まで縮径することが可能である。拡径保持材12は、全長にわたりらせん溝14が切ってあり、一端側から延びる帯状体12aを引っ張ると、らせん溝14に沿って切り裂き可能である。図10の状態のものをケーブルの所定位置に被せた後、帯状体12aを引っ張ることにより拡径保持材12を解体すると、端末部材10は拡径状態から開放されて収縮し、ケーブルの所定位置に密着するようになる。
【0003】
図11は上記のような常温収縮型の端末部材10を使用したケーブル端末16を示す。図において、18は電力ケーブル、20は電力ケーブル18の端部を段剥ぎして露出させた導体、22は同じく絶縁体、24は遮蔽層、26はシースである。また28は導体20に圧着した端子、30は遮蔽層24に接続された接地金具、32は接地金具30に接続された接地導体、34はシース26の端部付近の外周に巻かれた防水用のシーリング材である。端末部材10は端子28の基部からシーリング材34にかけての外周を覆うように収縮させてある。接地導体32はシーリング材34の中を通って端末部材10の外部に引き出されている。
【0004】
図12は上記のようなケーブル端末16の固定構造を示す。この種のケーブル端末16は、端末部材10の下端より下の電力ケーブル18の部分を固定金具36により把持した状態で、支持体38(電柱の腕金等)に固定されている。図12で使用した固定金具36は、図13に示す二つ割クランプ型の固定金具36であるが、このほか図14に示すサドル型の固定金具37を使用する場合もある。この固定金具37の場合は図15に示すゴム台座39と組み合わせて使用され、図16のように端末部材40を直接固定する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、常温収縮型の端末部材を使用したケーブル端末の従来の固定構造では、固定金具36から端子28の先端までの長さL(図12参照)が長く、また端末部材10の剛性も小さいことから、ケーブル端末が曲がりやすく(ケーブルが細い場合は特にこの傾向が顕著)、不安定であるという問題がある。
【0006】
因みに図16は、差し込み型の端末部材40を使用したケーブル端末16の固定構造であるが、この場合は、端末部材40の基部を固定金具37で固定してしているため、固定金具37から端子28の先端までの長さLが短く、また端末部材40の肉厚が厚く剛性も大きいことから、ケーブル端末16は安定した状態となる。
【0007】
常温収縮型の端末部材を使用したケーブル端末の場合も、端末部材10の基部を把持するようにすれば、Lが短くなり、安定性は向上する。しかし端末部材10の基部は、軟質のシーリング材34を内包する部分であるため、この部分を固定金具で締め付けるとシーリング材34が逃げてしまい、防水性が損なわれてしまうという問題がある。また端末部材10の基部とシース18との間には接地導体32があり、端末部材10の基部の断面は図11(b)に示すように円形にはならないため、従来の固定金具でこの部分を締め付けると、端末部材10の接地導体32による出っ張り部10bに局部的な負担がかかり、信頼性が低下するという問題もある。
【0008】
本発明の目的は、以上のような問題点に鑑み、シース上に設けたシーリング材を端末部材で覆って防水構造としたケーブル端末を、防水性を損なうことなく、安定して固定できる固定部品と、それを用いたケーブル端末の固定構造を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため本発明は、シース上に設けたシーリング材を筒状の端末部材で覆って防水構造としたケーブル端末を支持体に固定するための部品であって、前記端末部材のシーリング材を覆う部分の外周にあてがわれるゴム成形体と、前記支持体に固定されて、前記ゴム成形体を端末部材の外周に押し付ける固定金具とからなり、前記ゴム成形体は内周面に、端末部材のシーリング材による膨らみ部を収容する凹部が形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明に使用するゴム成形体は、端末部材の接地導体による出っ張り部に対応する位置に、欠落部又は切欠き部を有している構成とすることが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
〔実施形態1〕
図1ないし図3は本発明の一実施形態を示す。図1及び図2において、先に説明した図11と同一部分には同一符号を付してある。この固定部品は、常温収縮型の端末部材10を使用したケーブル端末16を支持体(図示省略)に固定するために、端末部材10のシーリング材34を覆う部分の外周にあてがわれるゴム成形体42と、このゴム成形体42を端末部材10の外周に押し付ける固定金具37とから構成されている。
【0012】
固定金具37は図14に示したサドル型のものである。ゴム成形体42は図3に示すように、ほぼ直方体状で、上面に端末部材10を収容するU字形部44を形成し、このU字形部44のケーブル方向中間部に端末部材10のシーリング材34による膨らみ部10aを収容する凹部46を形成し、両側面に固定金具37の立ち上がり部内面と接する当接面48を有し、この当接面48のケーブル方向両端側に固定金具37のズレを防止する突条50を形成したものである。ゴム成形体42のU字形部44は、その内周長が、端末部材10の外周長より短いが、その外周長の半分よりは長くなるように形成されている。
【0013】
したがってゴム成形体42のU字形部44を、凹部46に端末部材10のシーリング材34による膨らみ部10aが入るように、端末部材10の外周に装着し、固定金具37を図2のように被せて支持体に固定すると、ゴム成形体42が端末部材10の半周以上を覆う状態で、ゴム成形体42のケーブル方向両端部が端末部材10の膨らみ10aの両端側を締め付けるようになる。
【0014】
このためシーリング材34の逃げを防止した状態で防水性を損なうことなく、端末部材10の基部を強固に把持することができる。また固定金具37から端子28の先端までの長さLが従来より短くなるので、ケーブル端末16が曲がり難く、安定性が向上する。一方、U字形部44の先端部の間には欠落部52ができるので、端末部材10は、接地導体32による出っ張り部10bがこの欠落部52内に位置するように配置する(図2参照)。これにより端末部材10の出っ張り部10bが局部的に強く圧迫されて損傷するおそれがなく、信頼性を確保することができる。
なおゴム成形体42の材料には、クロロプレンゴム又はシリコーンゴム等が使用される。塩害地区で耐トラッキング性が要求される場合は、シリコーンゴムを使用することが好ましい。
【0015】
〔実施形態2〕
図4及び図5は本発明の他の実施形態を示す。この実施形態は、固定金具としてサドル型の固定金具37を使用する点では実施形態1と同じであるが、ゴム成形体42が、押さえ側部材42Aと受け側部材42Bとに分割されている点が実施形態1と異なっている。ケーブル端末は図示を省略してあるが、実施形態1と同じである。
【0016】
ゴム成形体42の押さえ側部材42Aは図5に示すように、肉厚の帯状で、その片面の幅方向中間部に全長にわたって凹部46を形成し、長さ方向中間部に切欠き部54を形成したものである。凹部46は端末部材10のシーリング材34による膨らみ部10a(図1参照)を収容する部分であり、切欠き部54は端末部材10の接地導体32による出っ張り部10b(図2参照)を収容する部分である。押さえ側部材42Aの長さは端末部材10の外周長の約半分である。この押さえ側部材42Aは図4に示すように凹部46と反対側の面を接着剤等により固定金具37の内面に固定しておくことが好ましい。
なお押さえ側部材42Aを固定金具37の内面に固定するときは、押さえ側部材42Aを切欠き部54の長さに相当する部分を除いた2つの部材で構成し、この2つの部材の間に図2に示すような欠落部52を設けるようにしてもよい。
【0017】
ゴム成形体42の受け側部材42Bは、図3に示すゴム成形体42のU字形部44を半円形部56としたものである。それ以外は図3のゴム成形体42と同じであるので、同一部分には同一符号を付してある。
以上のような固定部品を用いても実施形態1と同様にケーブル端末を固定することができる。
【0018】
〔実施形態3〕
図6及び図7は本発明のさらに他の実施形態を示す。この実施形態は、固定金具として図13に示すような二つ割クランプ型の固定金具36を用い、この固定金具36の蓋体36Aの内面に図5に示すようなゴム成形体の押さえ側部材42Aを張り付け、基体36Bの内面に図7に示すようなゴム成形体の受け側部材42Bを張り付けたものである。図7に示すゴム成形体の受け側部材42Bは、肉厚の帯状で、その片面の幅方向中間部に全長にわたって凹部46を形成したものである。凹部46は端末部材10のシーリング材34による膨らみ部10a(図1参照)を収容する部分である。
【0019】
なおゴム成形体の押さえ側部材42A及び受け側部材42Bはそれぞれ固定金具36の蓋体36A及び基体36Bと別体であってもよい。
以上のような固定部品を用いても実施形態1と同様にケーブル端末を固定することができる。
【0020】
〔実施形態4〕
図8は本発明のさらに他の実施形態を示す。この実施形態は、固定金具として図13に示すような二つ割クランプ型の固定金具36を用い、この固定金具36の内面に、端末部材10の外周長より短く、その外周長の半分より長いゴム成形体42を配置したものである。ゴム成形体42の形状は図7に示したものと同様、肉厚の帯状で、その片面の幅方向中間部に全長にわたって凹部46を形成したものである。ゴム成形体42の両端の間には欠落部52ができる。この欠落部52は、端末部材10の接地導体32による出っ張り部10b(図2参照)を収容する部分である。ゴム成形体42は長さ方向の中間部を固定金具36の基体36B側に張り付けておくことが好ましい。
以上のような固定部品を用いても実施形態1と同様にケーブル端末を固定することができる。
【0021】
〔その他の実施形態〕
図9(a)は本発明の好ましい実施形態を示す。この実施形態は、固定金具36の幅とゴム成形体42の幅を同じにした例である(固定金具36の幅をゴム成形体42の幅より大きくしてもよい)。このようにすると、ゴム成形体42の外周面全面を固定金具36で押さえることができるので、ゴム成形体42が変形しにくく、シーリング材34の逃げを確実に防止した状態で、端末部材10を確実に把持することができる。
【0022】
図9(b)に示すように固定金具36の幅がゴム成形体42の幅より狭いと、固定金具36を締め付けたときに、ゴム成形体42が変形してしまい、シーリング材34がはみ出して防水性が損なわれる場合がある。
ゴム成形体42の過度の変形を防止し、良好な締め付け状態を得るためには、試作の結果によると、ゴム成形体42の硬度を30〜90の範囲に選定することが好ましい。
【0023】
なお以上の実施形態では常温収縮型の端末部材を用いた場合について説明したが、本発明の固定部品は、これに限らず、同様な防水構造を有するケーブル端末、さらには内部に何らかの介在物が設けてあり、その部分を固定しなければならない全ての製品に対して適用可能である。例えば、差し込み型のケーブル端末では、端末部材の裾部が予めめくられた状態にあり、ケーブルシースにシーリング材を巻き付け、端末部材を差し込んだ後に、端末部材の裾部を元に戻してシーリング材上に被せる方式のものがあり、本発明の固定部品はこのようなケーブル端末の固定にも適用できる。また必要に応じ、常温収縮型の筒状部材を用いたケーブル接続部の固定にも適用可能である。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、端末部材でシース上のシーリング材を覆って防水構造としたケーブル端末を、シーリング部で、防水性を損なうことなく固定することができる。したがって固定金具から端子までの長さLを短くすることができ、ケーブル端末が曲がり難くなるので、ケーブル端末を安定して支持体に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るケーブル端末固定部品の一実施形態を使用状態で示す半分切開正面図。
【図2】 図1のA−A線における断面図。
【図3】 図1の固定部品に使用したゴム成形体の、(a)は平面図、(b)は半分切開正面図、(c)は半分切開側面図。
【図4】 本発明の他の実施形態を示す正面図。
【図5】 図4の固定部品に使用したゴム成形体の押さえ側部材を示す斜視図。
【図6】 本発明のさらに他の実施形態を示す正面図。
【図7】 図6の固定部品に使用したゴム成形体の受け側部材を示す斜視図。
【図8】 本発明のさらに他の実施形態を示す正面図。
【図9】 (a)は本発明のさらに他の実施形態を示す断面図、(b)はケーブル端末固定部品の好ましくない形態を示す断面図。
【図10】 常温収縮型端末部材の使用前の状態を示す半分切開正面図。
【図11】 常温収縮型端末部材を使用したケーブル端末を示す、(a)は半分切開正面図、(b)は(a)のB−B線における断面図。
【図12】 常温収縮型端末部材を使用したケーブル端末の従来の固定構造を示す正面図。
【図13】 ケーブル端末の固定に使用される従来の固定金具の一例を示す、(a)は正面図、(b)は側面図。
【図14】 従来の固定金具の他の例を示す、(a)は正面図、(b)は側面図。
【図15】 図14の固定金具と組み合わせて使用されるゴム台座を示す、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図。
【図16】 差し込み型端末部材を使用したケーブル端末の従来の固定構造を示す正面図。
【符号の説明】
10:常温収縮型の端末部材
10a:膨らみ部
10b:出っ張り部
16:ケーブル端末
18:電力ケーブル
20:導体
22:絶縁体
24:遮蔽層
26:シース
28:端子
30:接地金具
32:接地導体
34:シーリング材
36、37:固定金具
38:支持体
42:ゴム成形体
44:U字形部
46:凹部
52:欠落部
54:切欠き部
Claims (7)
- プラスチック又はゴム絶縁電力ケーブルの端末を固定するのに使用する固定部品において、端子(28)の基部からケーブル(18)のシース(26)上に設けたシーリング材(34)にかけて外周を覆った筒状の端末部材(10)で覆って、防水構造としたケーブル端末(16)を、支持体(38)に固定するための部品であって、
前記端末部材(10)のシーリング材(34)を覆う部分の外周にあてがわれるゴム成形体(42)と、前記支持体(38)に固定されて、前記ゴム成形体(42)を端末部材(10)の外周に押し付ける固定金具(36又は37)とからなり、
前記ゴム成形体(42)は内周面に、前記端末部材(10)のシーリング材(34)による膨らみ部(10a)を収容する凹部(46)が周方向に形成されていることを特徴とするケーブル端末の固定部品。 - 前記ゴム成形体( 42 )は、端末部材( 10 )の接地導体( 32 )による出っ張り部( 10 b)に対応する位置に、欠落部( 52 )又は切欠き部( 54 )を有していることを特徴とする請求項1記載のケーブル端末の固定部品。
- 前記固定金具( 37 )はサドル形であり、
前記ゴム成形体( 42 )は、端末部材( 10 )側の面に当該端末部材( 10 )を収容するU字形部( 44 )を形成した直方体状であり、前記U字形部( 44 )の内周長は、前記端末部材( 10 )の外周長より短く、当該外周長の半分より長いことを特徴とする請求項1又は2記載のケーブル端末の固定部品。 - 前記固定金具( 37 )はサドル形であり、
前記ゴム成形体( 42 )は、押さえ側部材( 42 A)及び受け側部材( 42 B)からなり、
前記押さえ側部材( 42 A)は、片方の面の幅方向中間部に全長にわたって凹部( 46 )を形成し、長さ方向中間部に切欠き部( 54 )を形成した帯状であり、
前記受け側部材( 42 B)は、端末部材( 10 )側の面に当該端末部材( 10 )を収容する半円形部( 56 )を形成した直方体状であることを特徴とする請求項1又は2記載のケーブル端末の固定部品。 - 前記固定金具( 36 )は二つ割りクランプ型であり、
前記ゴム成形体( 42 )は、押さえ側部材( 42 A)及び受け側部材( 42 B)からなり、
前記押さえ側部材( 42 A)は、片方の面の幅方向中間部に全長にわたって凹部( 46 )を形成し、長さ方向中間部に切欠き部( 54 )を形成した帯状であり、
前記受け側部材( 42 B)は、片方の面の幅方向中間部に全長にわたって凹部( 46 )を形成した帯状であることを特徴とする請求項1又は2記載のケーブル端末の固定部品。 - 前記固定金具( 36 )は二つ割りクランプ型であり、
前記ゴム成形体( 42 )は、片方の面の幅方向中間部に全長にわたって凹部( 46 )を形成した帯状であり、その長さは、端末部材( 10 )の外周長より短く、当該外周長の半分より長いことを特徴とする請求項1又は2記載のケーブル端末の固定部品。 - 請求項1〜6のいずれかに記載のケーブル端末固定部品を使用し、当該固定部品のゴム成形体( 42 )を、その凹部( 46 )に端末部材( 10 )のシーリング材( 34 )による膨らみ部( 10 a)が入るように端末部材( 10 )の外周にあてがい、前記固定部品の固定金具( 36 又は 37 )を支持体に固定することにより、ケーブル端末を支持体に固定したことを特徴とするケーブル端末の固定構造。
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