JP4260716B2 - ポリアルキレングリコールを含有する蓄熱材組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリアルキレングリコールに対して不溶で、かつ水溶性の塩類の少なくとも1種の水溶液、及びポリアルキレングリコールを含有してなる蓄熱材組成物、並びにそれを用いた蓄熱装置に関する。
熱エネルギーは産業や生活にとって極めて重要なエネルギーであり、その多くは燃料物質の燃焼や電気エネルギーから得てきている。近年、地球資源を有効に活用するということから、太陽熱や廃熱などの利用が注目されてきているが、熱エネルギーは、発生時期や発生量が不安定なために、これを有効に利用することが限られていた。このような熱エネルギーを一時的に貯蔵することができれば、熱エネルギーの有効な利用が可能となる。このために、熱エネルギーの一時的な貯蔵手段として各種の蓄熱材料が開発されてきている。蓄熱材料としては、大きく分けて顕熱材料を用いた顕熱型蓄熱材料と、潜熱材料を用いた潜熱型蓄熱材料がある。
また、従来、マイナスの温度領域での蓄熱は、水と水に溶解性のある物質を混合するだけで成し遂げられることから、水などを用いて比較的容易に行うことができたが、プラス温度領域の蓄熱材に関しては安全性、コスト等の課題が発生し、比較的困難であった。
顕熱型蓄熱材料は、湯タンポのように物質(湯タンポでは、水)の熱容量を利用するものであり、古くから人類が利用してきたものであれが、温度制御が困難である、とりわけプラス領域での温度制御が困難であることや、大きな熱容量を確保するためには大きな装置が必要となるといった欠点がある。
また、潜熱型蓄熱材料は、物質の融解などの相転位を利用したものであり、顕熱型蓄熱材料に比べて相転位温度付近の狭い温度領域に大量の熱エネルギーを貯蔵できることから、温度制御が比較的容易であることや、小容量でコンパクトな装置とすることが可能となる。このために潜熱型蓄熱材料の開発が注目されてきている。例えば、硫酸ナトリウム・10水塩(融点32℃)、酢酸ナトリウム・3水塩(融点58℃)、4級アンモニウム塩水和物蓄熱材料、有機化合物パラフィン系蓄熱材料などを用いた蓄熱材料が開発されてきている。さらに、脂肪族炭化水素、またはエステル等を用いたものも開発されてきており、床暖房や人体接触暖房用として実用化されてきているものもある。水和塩型蓄熱材料は、他の有機系蓄熱材料に比べて高い蓄熱密度を有し、かつ不燃性という特長を有するが、一方で融解・凝固の繰り返しによる相分離や過冷却現象を生じやすく、そのために、相分離防止剤や、過冷却防止剤を添加しなければ実用的でないという欠点がある。さらに、金属に対する腐食性が大きいため、収納容器材質には十分な配慮が必要であるという欠点もある。
一方、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコールは、パラフィンなどの他の有機材料とは異なり、分子量分布が多彩で、分子量により特有の凝固点を有し温度制御が容易であり、化学的に安定であり、毒性や刺激性が殆どないという特徴を有する。このために、ポリエチレングリコールを、温熱治療用あんかに利用する方法(特許文献1及び2参照)、ペット用保温マットの蓄熱材料に利用する方法(特許文献3参照)、動物の保温剤として使用方法(特許文献4参照)などが報告されている。しかしながら、平均分子量が1000を下回るポリエチレングリコールは0℃から20℃程度の凝固融解点を有する蓄熱材を提供可能な点で優位であるが、引火点が低いため消防法における危険物であり、蓄熱材として用いるには危険性が高いばかりでなく、高温で流動化し保形性が悪いために、可逆架橋性ポリマーで被覆したり(特許文献5参照)、単量体成分を重合させる方法(特許文献6参照)などが報告されている。また、反対に凝固して固体状になったときの流動性を改善するためにポリエチレングリコールなどの蓄熱材料をカプセルに封入する方法も提案されている(特許文献7参照)。さらに、ポリエチレングリコールを蓄熱材料として繰り返し使用していると、短期間のうちに蓄熱量の低下などの劣化が起こるために、これを防止する方法として、ポリエチレングリコールにフェノール類やアミンを添加する方法が提案されている(特許文献8参照)。また、ポリエチレングリコールは吸湿性であるために、使用中に水分を含み凝固点や潜熱が低下するだけでなく過冷却を起こすことになる。これを防止するために、ポリエチレングリコールに無水炭酸塩やゼオライトを添加する方法が報告されている(特許文献9参照)。
このようにポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコールは蓄熱材料として優れた性質を有しているが、実用的な蓄熱材料としては多くの問題点も有している。しかしながら、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコールは、水と任意の割合で混合し、その混合割合に応じて凝固融解点を変化させることができ、かつ比重が水に近く水との相分離を起こしにくいことが知られている。このために、水を混合した水−ポリアルキレングリコール系の蓄熱材料も提案されている。例えば、水との混合割合を変化させて、水−ポリエチレングリコール系の蓄熱材料を冷暖房の両方の蓄熱材料として使用する方法も提案されている(特許文献10参照)。さらに、水や無機化合物や有機化合物を添加することによりポリエチレングリコールの蓄熱量が増加することも報告されている(特許文献11参照)。しかし、その添加量が20%以上では、毒性や過冷却現象が生じるとされている。同様に、ポリエチレングリコールに平衡吸湿量の水分を添加することにより、見掛けの融解熱を増加させることが報告されているが、水の添加量が大きくなるにつれて過冷却度が大きくなるという欠点も示されている(特許文献12参照)。
水は安価で安全であるために、水−ポリエチレングリコール系などの水−ポリアルキレングリコール系の蓄熱材料は、価格だけでなく安全性の点からも好ましいが、本発明者らの実験によれば、ポリエチレングリコールに水を添加することによってポリエチレングリコール蓄熱材の潜熱量が低下してしまうとことが見出さている。この潜熱量の低下は、水だけではなく他の蓄熱材にも当てはまることである。水−ポリアルキレングリコール系の蓄熱材料の実用化のためには、この欠点を克服することが不可欠であるが、未だこの欠点を克服する技術は存在していない。
特開平8−280730号 特開平7−328054号 特開2004−215560号 特開2004−16091号 特開2002−114973号 特開平11−80723号 特開平7−289579号 特開昭61−64782号 特開昭62−199680号 特開昭63−161333号 特開昭59−140283号 特開昭59−174683号公報
前記のように、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコールは優れた蓄熱材であるが、様々な潜熱利用温度帯を有する蓄熱材を提供する場合、安価で安全な水を加えるのが好ましい。しかし、水を添加すると過冷却度が高くなるだけでなく、潜熱量も変化してしまう。水の添加により、融解熱が増加すると報告されているが(特許文献11及び12参照)、これは異なる蓄熱材の混合を行っており、結果的に全温度領域における潜熱量は高くなるが、特定の温度領域においての潜熱量は低下してしまう。即ち、蓄熱材として用いられたポリエチレングリコール自体の潜熱量は低下するという欠点を持っている。具体的には、分子量2700−3400のポリエチレングリコールは融解点が53‐57℃であり、融解熱は180J/gであるが、これに水を全体の20重量%加えると、融解点40.5℃、融解熱61.8J/gとなってしまう。この時、水の融解凝固温度は0℃ではなく、凝固点降下している。つまり、通常の使用領域を逸脱した蓄熱材となってしまう。本発明者らは、ポリエチレングリコールなどに水を添加すると潜熱量が低下することを見出し、この問題を解決しなければ実用化が困難であることから、本発明は、水−ポリアルキレングリコール系の蓄熱材料における潜熱量の低下を改善することを目的としている。
前記の問題点を解決するために、本発明者らは、鋭意検討してきた結果、このような潜熱量の低下が起こるのは、ポリアルキレングリコールが水に対して非常に溶け易い性質を有しているからであり、水に溶解しているポリアルキレングリコールの大半が凝固しないために、水に溶解しているポリアルキレングリコールの割合に対しての潜熱量が低くなってしまうという知見を得、この知見に基づいて、ポリアルキレングリコールに対して不溶であり、かつ水に対して易溶な塩類をあらかじめ水に添加して、混合溶解させておくことにより、ポリアルキレングリコールの水への溶解度を低下させて、結果として融解凝固点を十分に変化させると同時に、潜熱量の低下を防止することができることを見出した。
即ち、本発明は、ポリアルキレングリコールに対して不溶で、かつ水溶性の塩類の少なくとも1種の水溶液、及びポリアルキレングリコールを含有してなる蓄熱材組成物に関する。
また、本発明は、前記した本発明の蓄熱材組成物を蓄熱材料として用いた蓄熱装置に関する。
さらに、本発明は、前記した本発明の蓄熱材組成物を蓄熱材料として用いた蓄熱方法を提供するものである。
特許文献11(特開昭59−140283号)では、ポリエチレングリコールに水、無機化合物又は有機化合物を添加して、ポリエチレングリコールに溶解・混合することにより、融解熱が増加する旨が開示されている。しかしながら、本発明者らの実験によればポリエチレングリコールに溶解する物質を添加した場合には、融解熱は低下することが判明した。例えば、ポリエチレングリコール1540(第一工業製薬社製)(平均分子量1300−1600)の融解熱は、第一工業製薬社の製品カタログによれば155J/g(約37cal/g)であるが、これに17重量%の水を添加すると、70.93J/g(約17cal/g)となるだけでなく、過冷却現象も生じてくることが判明した。同様に、ポリエチレングリコール4000(第一工業製薬社製)(平均分子量2700−3400)の融解熱は、第一工業製薬社の製品カタログによれば180J/g(約43cal/g)であるが、これに20重量%の水を添加すると、76.44J/g(約18cal/g)となるだけでなく、過冷却現象も生じてくることが判明した。
本発明者らは、このような結果になる原因を検討したところ、ポリアルキレングリコールの融解点(例えば、100%ポリエチレングリコール400では約4〜8℃、ポリエチレングリコール10000では56〜61℃)では、水は通常液体の水として存在する温度であり、水の融解熱は水−ポリアルキレングリコール系の融解点における融解熱に大きな寄与はしていないと考えられ、水に溶解しているポリアルキレングリコールの量だけ、ポリアルキレングリコールの融解熱が減少したのではないかと考えられた。仮にそうであるならば、ポリアルキレングリコールの水に対する溶解度を減少させておけば、水に溶解しているポリアルキレングリコールの量が減少し、その分だけ融解熱が回復するはずである。
そこで、本発明者らは、ポリアルキレングリコールとして、ポリエチレングリコール4000(第一工業製薬社製)について、各種の塩類の水溶液を調製し、当該ポリエチレングリコール4000との混合物を調製して、それらの融解点と融解熱を測定した。その結果を次の表1に示す。
Figure 0004260716
ポリエチレングリコール4000に水を20質量%添加した場合(表1の2番目)には、融解点は約16℃低下し、融解熱は約100J/g減少する。水の代わりに飽和食塩水を30質量%添加した場合(表1の3番目)には、融解点はさらに低下したが、驚くべきことに融解熱の減少量は、約70J/gとすることができることが明らかになった。食塩の溶解度は、40℃で約26gであるから、飽和食塩水が30質量%添加されたポリエチレングリコールの組成物中の食塩の量は約7.8質量%であり、水が約22.2質量%となり、水の量自体は余り変わっていないが、食塩の存在により、融解熱は約40%(106.48/76.44×100)も回復していることがわかった。
この結果は、前記した本発明者らの仮定が正しいことを実証するものである。即ち、水−ポリエチレングリコール系の蓄熱材組成物において、ポリエチレングリコールに対して不溶であり、かつ水に対して易溶な塩類の少なくとも1種を添加し、これを水に溶解させることにより、水の添加によって減少させられていたポリエチレングリコールの融解熱の減少を回復することができることが判明した。
前記した表1には他の塩類を使用した場合の結果も同様に記載されている。これらの結果からは、回復の程度に多少の差が見られているが、これは添加した塩類の融解熱量やポリエチレングリコールとの相溶性の程度の相違によるものと考えられる。
なお、塩化マグネシウムの場合(表1の6番目)は、水が20質量%の場合よりも低い値になっているが、これは水溶液の量が45質量%と多くなっているためであり、ポリエチレングリコール55%−水45%の系では測定不能な程度に融解熱は小さくなっており、ポリエチレングリコール4000が70質量%で水が30質量%の場合では融解熱は18.96J/gであり、融解点は16.7℃あり、単に水だけと混合するよりも融解熱は68.99J/gと極めて大きくなっていることが明らかにされている。
同様に、ポリエチレングリコール10000(第一工業製薬社製)(以下の表2参照)、及びポリエチレングリコール1540(第一工業製薬社製)(以下の表3参照)についての結果を次の表2、及び表3にそれぞれ示す。
Figure 0004260716
Figure 0004260716
以上の結果からも明らかなように、水−ポリアルキレングリコール系に塩類を添加することにより、水の混合によるポリアルキレングリコール類の融解熱の減少を防止することができる。
本発明におけるポリアルキレングリコールとしては、水と混合することができるものであれば特に制限はないが、好ましくはポリアルキレングリコールにおけるアルキレン基が、炭素数2〜6、好ましくは2〜3の直鎖状又は分枝状のアルキレン基からなるものが挙げられる。本発明の好ましいポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(メチル−エチレン)グリコール、ポリブチレングリコールなどが挙げられるが、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールがより好ましい。
本発明の蓄熱材組成物における、ポリアルキレングリコール、好ましくはポリエチレングリコールに対して不溶で、かつ水溶性の塩類の少なくとも1種の水溶液としては、当該塩類を水と混合し、溶解させた水溶液が好ましいが、ポリアルキレングリコールと水とを混合溶解させ、これに当該塩類を添加して混合し、溶解させたものであってもよい。即ち、本発明の蓄熱材組成物は、ポリアルキレングリコールに対して不溶であり、かつ水溶性の塩類の少なくとも1種、水、及びポリアルキレングリコールを含有してなる蓄熱材組成物ということができる。
本発明の当該塩類としては、ポリアルキレングリコール、好ましくはポリエチレングリコールに実質的に不溶であって、かつ水に溶解し、水溶液中において当該塩類の少なくとも一部が実質的にイオン化するものであれば特に制限はないが、好ましくは20℃で水100g当たり5g以上、好ましくは10g以上、より好ましくは15g以上の溶解度を有する塩類が挙げられる。
本発明の塩類としては、前記した水に対する溶解度を有するものであれば、有機塩類でも無機塩類であってもよい。本発明の好ましい塩類としてはナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩が挙げられるが、アルカリ金属塩がより好ましい。これらのアルカリ金属塩、又はアルカリ土類金属塩としては、カルボン酸やスルホン酸などの有機酸塩でもってもよいし、ハロゲン化酸、炭酸、硫酸、硝酸などの無機酸塩であってもよい。好ましい塩類としては、ハロゲン化アルカリ金属、ハロゲン化アルカリ土類金属、ハロゲン化アンモニウム、炭酸アルカリ金属、炭酸アルカリ土類金属、及びアルカリ金属カルボン酸塩の群から選ばれる少なくとも1種が挙げられ、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウムなどが挙げられる。安全性や価格の点から、塩化ナトリウムが好ましい。
これらの塩類の使用量には特に制限はなく、一般に多ければ多いほど好ましく、飽和水溶液となる量まで使用することができる。希薄水溶液の状態となる量であっても使用することはできるが、ポリアルキレングリコールの水に対する溶解度を低下させるということからは、多い方が通常は好ましい。
本発明者らの知見によれば、本発明の水溶液についてはイオン強度を考慮した質量モル濃度が潜熱量と融解点に大きく寄与しており、水溶液中に何モルの分子が存在しているかによって、融解熱と融解点がほぼ決定される。例えば、各種の塩類を用いた80質量%のポリエチレングリコール4000の水溶液の融解熱(J/g)と融解点(℃)の測定結果を次の表4に示す。
Figure 0004260716
表4に示されるように、塩化ナトリウムであっても塩化カリウムであっても、その濃度が3.42モル/kgと同じであれば、融解熱も融解点もほぼ同じ値を示すことがわかる。また、炭酸カリウムの場合には、1分子から2個のカリウムイオンと1個の炭酸イオンの3個のイオンが生成することから2.28モル/kgが、塩化ナトリウムなどの2個のイオンを生成する塩類の3.42モル/kg(2.28×1.5=3.42)に相当すると考えられる。そして、炭酸カリウム2.28モル/kgの場合も、前記した塩化ナトリウムなどとほぼ同じ融解熱及び融解点となることが表4で明らかにされいる。このような質量モル濃度と融解熱との関係は特にアルカリ金属塩について顕著に観察することができ、例えば塩化ナトリウムについてさらに詳細なデータを検討すると次の表5ようになるる。
Figure 0004260716
このデータは、ポリエチレングリコール4000(第一工業製薬社製)70質量%、NaCl水溶液30質量%の配合比で一定として、NaCl水溶液のNaClの濃度を表5に示す各々の値に変化させたときの結果を示したものである。
これらの結果をグラフ化したものを図1に示す。図1は表5におけるNaCl濃度(モル/kg)と融解熱(J/g)の関係を示したものである。これらのグラフからも融解熱がNaClのモル濃度に依存しているが明確にされている。
このことは本発明の蓄熱材組成物は、使用される塩類の分子種よりもそのモル濃度に大きく依存しており、より安価な塩類の使用が可能であることが示されていることになる。
本発明の水溶液における塩類の好ましい質量モル濃度としては、2個のイオンを生成する塩類の濃度で、1モル/kg以上、好ましくは2モル/kg以上、3モル/kg以上から各塩類の飽和濃度までの範囲とすることができる。
また、各種の濃度や飽和水溶液とする温度については、通常は本発明の蓄熱材組成物の融解点や凝固点においても、当該塩類の結晶が析出しないことが重要であり、組成物の凝固点を考慮して飽和水溶液の状態となる量を添加することができる。
本発明の蓄熱材組成物における前記した水溶液の配合量としては、特に制限はないが、好ましくは塩類の水溶液が、蓄熱材組成物の全量に対して5〜60重量%、より好ましくは10〜60質量%、10〜45質量%程度である。好ましい水の含有量としては、例えば、3〜50質量%、より好ましくは10〜50質量%、20〜40質量%程度が挙げられる。
本発明の蓄熱組成物におけるポリアルキレングリコールの分子量としては、200以上であれば特に制限はないが、好ましくは200〜20000、200〜10000,1000〜10000程度の分子量のものが挙げられる。例えば、ポリエチレングリコールの分子量としては、分子量が200以上で有れば特に制限はないが、好ましくは900〜20000、900〜10000、より好ましくは1300〜10000程度が挙げられる。
本発明の蓄熱材組成物は、蓄熱材料として、さらに他の添加剤を含有することができる。このような添加剤としては、腐食防止剤、酸化防止剤、耐電防止剤、着色剤、防黴剤などが挙げられる。また、保形性や流動性を改善するために、粒状化してその表面を架橋性ポリマーなどで被覆してもよいし、カプセル化して使用することも可能である。
本発明の蓄熱材組成物は、各種の保温用具や冷暖房機器、熱回収システムなどの各種の蓄熱装置における蓄熱材料として使用することができる。従来のポリエチレングリコールを蓄熱材料として装置と同様にして、本発明の蓄熱材組成物を各種装置に適用することができる。適用に当たっては、本発明の蓄熱材組成物は水を含有していることから、装置の金属部分の腐食の防止に留意する必要がある。
ポリエチレンやナイロンなどの合成樹脂を、本発明の蓄熱材組成物の容器とすことが好ましいが、これに限定されるものではない。
本発明は、多量の水との混合物として使用できることから、0℃以上60℃以下の温度範囲において、特定の融解点を有し、かつ高い潜熱量を有し、さらに過冷却が防止された安価で安全な蓄熱材組成物を提供する。前述してきた特許文献などでは、水を多量に加えるほど過冷却が大きくなるとされているが、本発明の蓄熱材組成物は、塩類を含有しているために、水の配合による過冷却を防止できるという予想外の効果を有する。また、本発明の蓄熱材組成物における融解熱や融解点は、使用する塩類の種類ではなく、その含有量に大きく依存しており、より安価な塩類を使用することが可能となる。さらに、本発明の蓄熱材組成物は多量の水を含有することができ、引火性が低く、火災の危険性を極めて小さくすることができ、また、水や食塩などの安全性の高い材料を使用することができ、日常生活の場においても極めて安全に使用することができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
塩化ナトリウムの4.54モル/kgの水溶液を調製し、この水溶液30gとポリエチレングリコール4000(第一工業製薬社製)70gを混合・攪拌して溶解させて蓄熱材組成物を調製した。
この蓄熱材組成物の潜熱量を、DSC SEIKO6200(セイコーインスツルメンツ社製)を用いて測定した。結果を表1に示す。
炭酸カリウムの7.24モル/kgの水溶液を調製し、この水溶液25gとポリエチレングリコール4000(第一工業製薬社製)75gを混合・攪拌して溶解させて蓄熱材組成物を調製した。
この蓄熱材組成物の潜熱量を、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
酢酸カリウムの8.28モル/kgの水溶液を調製し、この水溶液40gとポリエチレングリコール4000(第一工業製薬社製)60gを混合・攪拌して溶解させて蓄熱材組成物を調製した。
この蓄熱材組成物の潜熱量を、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
塩化マグネシウムの3.70モル/kgの水溶液を調製し、この水溶液45gとポリエチレングリコール4000(第一工業製薬社製)55gを混合・攪拌して溶解させて蓄熱材組成物を調製した。
この蓄熱材組成物の潜熱量を、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
塩化ナトリウムの4.54モル/kgの水溶液を調製し、この水溶液30gとポリエチレングリコール10000(第一工業製薬社製:平均分子量9300−12500)70gを混合・攪拌して溶解させて蓄熱材組成物を調製した。
この蓄熱材組成物の潜熱量を、実施例1と同様にして測定した。結果を表2に示す。
塩化マグネシウムの3.7モル/kgの水溶液を調製し、この水溶液30gとポリエチレングリコール10000(第一工業製薬社製)70gを混合・攪拌して溶解させて蓄熱材組成物を調製した。
この蓄熱材組成物の潜熱量を、実施例1と同様にして測定した。結果を表2に示す。
塩化ナトリウムの4.54モル/kgの水溶液を調製し、この水溶液25gとポリエチレングリコール1540(第一工業製薬社製)75gを混合・攪拌して溶解させて蓄熱材組成物を調製した。
この蓄熱材組成物の潜熱量を、実施例1と同様にして測定した。結果を表3に示す。
酢酸カリウムの8.23モル/kgの水溶液を調製し、この水溶液35gとポリエチレングリコール1540(第一工業製薬社製)65gを混合・攪拌して溶解させて蓄熱材組成物を調製した。
この蓄熱材組成物の潜熱量を、実施例1と同様にして測定した。結果を表3に示す。
塩化ナトリウムの3.42モル/kgの水溶液を調製し、この水溶液20gとポリエチレングリコール4000(第一工業製薬社製)80gを混合・攪拌して溶解させて蓄熱材組成物を調製した。
この蓄熱材組成物の潜熱量を、実施例1と同様にして測定した。結果を表4に示す。
塩化カリウムの3.42モル/kgの水溶液を調製し、この水溶液20gとポリエチレングリコール4000(第一工業製薬社製)80gを混合・攪拌して溶解させて蓄熱材組成物を調製した。
この蓄熱材組成物の潜熱量を、実施例1と同様にして測定した。結果を表4に示す。
炭酸カリウムの2.28モル/kgの水溶液を調製し、この水溶液20gとポリエチレングリコール4000(第一工業製薬社製)80gを混合・攪拌して溶解させて蓄熱材組成物を調製した。
この蓄熱材組成物の潜熱量を、実施例1と同様にして測定した。結果を表4に示す。
ポリエチレングリコール4000(第一工業製薬社製)70質量%、NaCl水溶液30質量%と一定おして、NaCl水溶液におけるNaClの濃度をそれぞれ、0モル/kg、1.02モル/kg、1.71モル/kg、2.38モル/kg、3.42モル/kg、又は4.54モル/kgとして、前記実施例1と同様にして蓄熱材組成物を調製した。 この蓄熱材組成物の潜熱量を、実施例1と同様にして測定した。結果を表5に示す。またこれらの結果をグラフ化して図1及び図2に示す。
熱エネルギーの有効な活用は地球温暖化を防止ためにも極めて重要な課題とおり、本発明の蓄熱材組成物は、潜熱量が大きく、安価で、かつ極めて安全性の高いものであり、産業上も極めて有用なものである。
図1は、本発明の蓄熱材組成物の水溶性の塩類としてNaClを用いたときの、NaCl水溶液の質量モル濃度と、本発明の蓄熱材組成物の融解熱(J/g)との関係を示すグラフである。

Claims (10)

  1. ポリアルキレングリコールに対して不溶で、かつ水溶性の塩類の少なくとも1種の水溶液、及びポリアルキレングリコールを含有してなり、当該塩類の水溶液が、水1kg当たり1モルの濃度から塩類の飽和濃度までの塩類を含有している水溶液である蓄熱材組成物。
  2. 塩類の水溶液が、当該塩類の飽和水溶液である請求項1に記載の蓄熱材組成物。
  3. 塩類が、アルカリ金属塩、又はアルカリ土類金属の塩である請求項1又は2に記載の蓄熱材組成物。
  4. 塩類が、無機化合物の塩である請求項1〜3のいずれかに記載の蓄熱材組成物。
  5. 塩類が、有機カルボン酸塩である請求項1〜3のいずれかに記載の蓄熱材組成物。
  6. 塩類が、ハロゲン化アルカリ金属、ハロゲン化アルカリ土類金属、炭酸アルカリ金属、炭酸アルカリ土類金属、及びアルカリ金属カルボン酸塩の群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の蓄熱材組成物。
  7. 塩類の水溶液が、蓄熱材組成物の全量に対して5〜60重量%である請求項1〜6のいずれかに記載の蓄熱材組成物。
  8. ポリアルキレングリコールが、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールである請求項1〜7のいずれかに記載の蓄熱材組成物。
  9. ポリアルキレングリコールの分子量が、1000以上である請求項1〜8のいずれかに記載の蓄熱材組成物。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の蓄熱材組成物を蓄熱材料として用いた蓄熱装置。
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