(第1の実施形態)
図1、図2は、本発明に係る車両用空調装置の第1の実施形態を示したもので、本実施形態は、車室内1のうち前席側の左右、および後席側の左右に位置する空調ゾーン1a、1b、1c、1dをそれぞれ独立して空調制御する車両用空調装置に、本発明を適用したものである。
図1は、空調ゾーン1a、1b、1c、1dの配置を示す模式図であり、空調ゾーン1aは、前席空調ゾーンのうち右側に位置し、空調ゾーン1bは、前席空調ゾーンのうち左側に位置する。空調ゾーン1cは、後席空調ゾーンのうち右側に位置し、空調ゾーン1dは、後席空調ゾーンのうち左側に位置する。なお、図1中の矢印は、自動車の前後左右の方向を示すものである。
図2は、本実施形態の車両用空調装置の全体構成を示す全体構成図であり、この車両用空調装置は、空調ゾーン1a、1bをそれぞれ独立に空調するための前席用空調ユニット5と、空調ゾーン1c、1dとをそれぞれ独立に空調するための後席用空調ユニット6とから構成されている。前席用空調ユニット5は、計器盤7内側に配置されており、後席用空調ユニット6は、車室内1の最後方に配置されている。
前席用空調ユニット5は、車室内1に送風するためのダクト50を備えており、このダクト50には、車室内1から内気を導入するための内気導入口50a、および、車室外から外気を導入するための外気導入口50bが設けられている。 さらに、ダクト50には、外気導入口50bおよび内気導入口50aを選択的に開閉する内外気切替ドア51が設けられており、この内外気切替ドア51には、駆動手段としてのサーボモータ51aが連結されている。
また、ダクト50内のうち外気導入口50bおよび内気導入口50aの空気下流側には、車室内1に向けて吹き出される空気流を発生させる遠心式送風機52が設けられており、遠心式送風機52は、羽根車およびこの羽根車を回転させるブロアモータ52aを有して構成されている。
さらに、ダクト50内にて遠心式送風機52の空気下流側には、空気を冷却する空気冷却手段としてのエバポレータ53が設けられており、さらに、このエバポレータ53の空気下流側には、空気加熱手段としてのヒータコア54が設けられている。
そして、ダクト50内のうちエバポレータ53の空気下流側には仕切り板57が設けられており、この仕切り板57は、ダクト50内を運転席側通路50cおよび助手席側通路50dに仕切っている。
ここで、運転席側通路50cのうちヒータコア54の側方には、バイパス通路51aが設けられ、このバイパス通路51aは、ヒータコア54に対してエバポレータ53により冷却された冷風をバイパスさせる。
そして、助手席側通路50dのうちヒータコア54の側方には、バイパス通路51bが設けられ、このバイパス通路51bは、ヒータコア54に対してエバポレータ53により冷却された冷風をバイパスさせる。
ヒータコア54の空気上流側には、エアミックスドア55a、55bが設けられており、エアミックスドア55aは、その開度により、運転席側通路50cを流通する冷風のうちヒータコア54を通る量とバイパス通路51aとを通る量との比を調整する。そして、ヒータコア54の空気下流側には、ヒータコア54を通る空気とバイパス通路51aとを通る空気とを混合する運転席側混合室が設けられている。
ここで、ヒータコア54を通る空気とバイパス通路51aとを通る空気とが混合されることにより、後述するように、混合室から運転席に着座する運転者に向けて吹き出される空気温度が制御されることになる。
また、エアミックスドア55bは、その開度により、助手席側通路50dを流通する冷風のうちヒータコア54を通る量とバイパス通路51bを通る量との比を調整する。そして、ヒータコア54の空気下流側には、ヒータコア54を通る空気とバイパス通路51bとを通る空気とを混合する助手席側混合室が設けられている。
ここで、ヒータコア54を通る空気とバイパス通路51bとを通る空気とが混合されることにより、後述するように、混合室から助手席に着座する乗員に向けて吹き出される空気温度が制御されることになる。
一方、エアミックスドア55a、55bには、駆動手段としてのサーボモータ550a、550bが、それぞれ連結されており、エアミックスドア55a、55bの開度は、サーボモータ550a、550bによって、それぞれ、調整される。
また、エバポレータ53は、図示しないコンプレッサ、凝縮器、受液器、減圧器とともに、周知の冷凍サイクルを構成している熱交換器であり、このエバポレータ53は、ダクト50内を流れる空気を冷却する。
ここで、コンプレッサは、当該自動車のエンジンに電磁クラッチ(図示しない)を介して連結されるものであり、このコンプレッサは、電磁クラッチを断続制御することによって駆動停止制御される。
ヒータコア54は、当該自動車のエンジン冷却水(温水)を熱源とする熱交換機であり、このヒータコア54は、エバポレータ53によって冷却された冷風を加熱する。
また、ダクト50のうちヒータコア54の空気下流側には、運転席側フェイス吹出口1FrDrが開口されており、この運転席側フェイス吹出口1FrDrは、運転席側混合室からの空気を運転席2に着座する運転者の上半身に向けて吹き出す。
ここで、ダクト50のうちフェイス吹出口1FrDrの空気上流部には、フェイス吹出口1FrDrを開閉する吹出口切換ドア56aが設けられており、この吹出口切換ドア56aは、駆動手段としてのサーボモータ560aによって、開閉駆動される。
また、図には省略されているが、ダクト50には、運転席側混合室から運転者の下半身に空気を吹き出す運転席側フット吹出口、および、運転席側混合室からフロントガラスの内表面のうち運転席側領域に空気を吹き出す運転席側デフロスタ吹出口が設けられている。
そして、運転席側フット吹出口および運転席側デフロスタ吹出口の空気上流部には、それぞれの吹出口を開閉する吹出口切換ドアが設けられており、それぞれの吹出口切換ドアは、サーボモータによって、開閉駆動される。
また、後席用空調ユニット6は、車室内1に送風するためのダクト60を備えており、このダクト60内には、車室内1から内気導入口60aを通して内気のみが導入される。
ここで、内気導入口60aの空気下流側には、車室内1に向けて吹き出される空気流を発生させる遠心式送風機62が設けられており、遠心式送風機62は、羽根車およびこの羽根車を回転させるブロアモータ62aを有して構成されている。
さらに、ダクト60内において遠心式送風機62の空気下流側には、空気を冷却する空気冷却手段としてのエバポレータ63が設けられており、このエバポレータ63の空気下流側には、空気を加熱する空気加熱手段としてのヒータコア64が設けられている。
そして、ダクト60内のうちエバポレータ63の下流部分には仕切り板67が設けられており、この仕切り板67は、ダクト60内を運転席側通路60cおよび助手席側通路60dに仕切っている。
ここで、運転席側通路60cのうちヒータコア64の側方には、バイパス通路61aが設けられており、バイパス通路61aは、ヒータコア64に対してエバポレータ63により冷却された冷風をバイパスさせる。
そして、助手席側通路60dのうちヒータコア64の側方には、バイパス通路61bが設けられており、このバイパス通路61bは、ヒータコア64に対してエバポレータ63により冷却された冷風をバイパスさせる。
ヒータコア64の空気下流側には、エアミックスドア65a、65bが設けられており、エアミックスドア65aは、その開度により、運転席側通路60cを流通する冷風のうちヒータコア64を通る量とバイパス通路61aとを通る量との比を調整する。そして、ヒータコア64の空気下流側には、ヒータコア64を通る空気とバイパス通路61aとを通る空気とを混合する後部右側混合室が設けられている。
ここで、ヒータコア64を通る空気とバイパス通路61aとを通る空気とが混合されることにより、後述するように、後部右側混合室から後部右側座席に着座する乗員にに向けて吹き出される空気温度が制御されることになる。
また、エアミックスドア65bは、その開度により、助手席側通路60dを通過する冷風のうちヒータコア64を通る量と、バイパス通路61bを通る量との比を調整する。そして、ヒータコア64の空気下流側には、ヒータコア64を通る空気とバイパス通路61bとを通る空気とを混合する後部左側混合室が設けられている。
ここで、ヒータコア64を通る空気とバイパス通路61bとを通る空気とが混合されることにより、後述するように、後部左側混合室から後部左側座席に着座する乗員に向けて吹き出される空気温度が制御されることになる。
一方、エアミックスドア65a、65bには、駆動手段としてのサーボモータ650a、650bがそれぞれ連結されており、これらエアミックスドア65a、65bの開度は、サーボモータ650a、650bによって、それぞれ、調整される。
ここで、エバポレータ63は、上述のエバポレータ63に対して並列的に配管結合されるものであって、上述した周知の冷凍サイクルの一構成要素をなす熱交換器である。
ヒータコア64は、当該自動車のエンジン冷却水(温水)を熱源とする熱交換機であり、ヒータコア64は、上述のヒータコア54に対し並列的に接続されて、エバポレータ63によって冷却される冷風を加熱する。
また、ダクト60のうちヒータコア64の空気下流側には、運転席側フェイス吹出口1RrDrが開口されており、運転席側フェイス吹出口1RrDrは、後部右側混合室から後席右側座席(すなわち、運転席の後側の座席)に着座する乗員の上半身に向けて空気を吹き出す。
ここで、フェイス吹出口1RrDrの空気上流部には、フェイス吹出口1RrDrを開閉する吹出口切換ドア66aが設けられており、この吹出口切換ドア66aは、駆動手段としてのサーボモータ660aによって、開閉駆動される。
そして、図には、省略されているが、ダクト60には、後部右側混合室から後部右側乗員の下半身に空気を吹き出す運転席側フット吹出口が設けられている。
また、当該運転席側フット吹出口の空気上流部には、吹出口を開閉する吹出口切換ドアが設けられており、この吹出口切換ドアは、サーボモータによって、開閉駆動される。
また、ダクト60のうちヒータコア64の空気下流側には、フェイス吹出口1RrPaが開口されており、このフェイス吹出口1RrPaは、後部左側混合室から後席左側座席(すなわち、助手席の後側の座席)に着座する乗員の上半身に向けて空気を吹き出す。
ここで、フェイス吹出口1RrPaの空気上流部には、フェイス吹出口1RrPaを開閉する吹出口切換ドア66bが設けられており、この吹出口切換ドア66bは、駆動手段としてのサーボモータ660bによって、開閉駆動される。
また、図には省略されているが、ダクト60には、助手席側通路60dから後部左側混合室から後部左側乗員の下半身に空気を吹き出すフット吹出口が設けられている。このフット吹出口の空気上流部には、吹出口を開閉する吹出口切換ドアが設けられており、この吹出口切換ドアは、サーボモータによって、開閉駆動される。
また、車両用空調装置には、前席用空調ユニット5および後席用空調ユニット6をそれぞれ制御するための電子制御装置(以下、エアコンECU8という)が設けられている。
エアコンECU8には、車室外の外気温度Tamを検出する外気温度センサ81、エンジンの冷却水温度Twを検出する冷却水温度センサ82、インストルメントパネルの表面等に取り付けられて、車室内に入射される日射量Tsを1つの検出面で検出する一素子タイプの日射センサ83、空調ゾーン1a、1b(前側空調領域)の空気温度TrFrを検出する温度センサ84、および空調ゾーン1c、1d(後側空調領域)の空気温度TrRrを検出する温度センサ85が接続されている。
また、エアコンECU8には、エバポレータ53から吹き出される冷風空気の温度(以下、蒸発器吹出温度TeFrという)を検出する温度センサ86、エバポレータ63から吹き出される冷風空気の温度(以下、蒸発器吹出温度TeRrという)を検出する温度センサ87、空調ゾーン1a、1b、1c、1dの希望温度TsetFrDr、TsetFrPa、TsetRrDr、TsetRrPaが乗員により設定される温度設定スイッチ9、10、11、12、が接続されている。
また、温度設定スイッチ9、10、11、12のそれぞれ近傍には、希望温度等の設定内容を表示する希望温度表示手段としてのディスプレイ9a、10a、11a、12aが備えられている。
さらに、エアコンECU8には、非接触温度センサ70a、70b、70c、70dが接続されている。非接触温度センサ70a、70b、70c、70dは、被検温体の表面温度を非接触で検出する赤外線センサであり、より具体的には、被検温体の温度変化に伴う赤外線量の変化に対応して、赤外線量に比例した起電力を発生するサーモパイル型検出素子を用いた赤外線センサである。
ここで、非接触温度センサ70a、70b、70c、70dは、車室内天井側にて前部右側座席および前部左側座席の間の1カ所に配置されている。
非接触温度センサ70aは、被検温体から入射される赤外線を熱に変換する熱変換膜、および、この熱変換膜により変換される熱を電力に変換する検出素子71〜78を備えている。検出素子71〜78は、マトリックス状に配置されており、検出素子71〜74は、前側右側サイドウインドウに対応するように配置されて、前側右側サイドウインドウの表面温度を示す電力を出力する。
検出素子75〜78は、前部右側座席に着座する運転者に対応するように配置されて、運転者の表面温度を示す電力を出力する。なお、図3(b)中の符号A1は、検出素子71〜74の検出範囲を示し、符号A2は、検出素子75〜78の検出範囲を示す。
非接触温度センサ70bは、被検温体から入射される赤外線を熱に変換する熱変換膜、および、この熱変換膜により変換される熱を電力に変換する検出素子71〜78を備えている。検出素子71〜78は、マトリックス状に配置されており、検出素子71〜74は、前側左側サイドウインドウに対応するように配置されて、前側左側サイドウインドウの表面温度を示す電力を出力する。検出素子75〜78は、前部左側座席(助手席)に着座する助手席者に対応するように配置されて、助手席者の表面温度を示す電力を出力する。
非接触温度センサ70cは、被検温体から入射される赤外線を熱に変換する熱変換膜、および、この熱変換膜により変換される熱を電力に変換する検出素子71〜78を備えている。検出素子71〜78は、マトリックス状に配置されており、検出素子71〜78は、図4に示すように、後部右側座席に着座する後部右側乗員の上半身に対応するように配置されて、後部右側乗員の上半身の表面温度を示す電力を出力する。なお、図4は、非接触温度センサ70cの検出範囲を示す図である。
非接触温度センサ70dは、被検温体から入射される赤外線を熱に変換する熱変換膜、および、この熱変換膜により変換される熱を電力に変換する検出素子71〜78を備えている。検出素子71〜78は、マトリックス状に配置されており、検出素子71〜78は、後部左側座席に着座する後部左側乗員の上半身に対応するように配置されて、後部左側乗員の上半身の表面温度を示す電力を出力する。
一方、エアコンECU8は、アナログ/デジタル変換器、マイクロコンピュータ等を有して構成される周知のものであり、センサ81、82、83、84、85、86、87およびスイッチ9、10、11、12からそれぞれ出力される出力信号は、アナログ/デジタル変換器によりアナログ/デジタル変換されてデジタル信号としてマイクロコンピュータにそれぞれ入力されるように構成されている。
マイクロコンピュータは、ROM、RAMなどのメモリ、およびCPU(中央演算装置)等から構成される周知のもので、イグニッションスイッチがオンされたときに、図示しないバッテリから電力供給される。
次に、本実施形態の車両用空調装置の作動について図5〜図10を用いて説明する。図5は、エアコンECU8の自動空調制御処理を示すフローチャートである。
エアコンECU8のマイクロコンピュータは、図5に示すフローチャートにしたがって、メモリに記憶されるコンピュータプログラムを実行する。コンピュータプログラムは、イグニッションスイッチがオンされたとき、その実行が開始される。
先ず、RAMに記憶されるデータなどをリセット(初期化)すると(S100)、センサ81、82、83、84、85、86、87の検出信号をアナログ/デジタル変換したデジタル信号を読み込む。これに加えて、温度設定スイッチ9、10、11、12により設定される希望温度を読み込む。
次に、このように読み込んだデジタル信号、および、希望温度などを用いて、空調ゾーン1a、1b、1c、1dに吹き出す空気の目標吹出温度TAOFrDr、TAOFrPa、TAORrDr、TAORrPaをそれぞれ演算する(S110)。なお、目標吹出温度TAOFrDr、TAOFrPa、TAORrDr、TAORrPaを演算する具体的な処理については、後述する。
次に、メモリに予め記憶される数式1に基づいて、上述のごとく算出される空調ゾーン毎の目標吹出温度(TAOFrDr、TAORrDr、TAOFrPa、TAORrPa)を用いて、エアミックスドア55a、55b、65a、65bのそれぞれの開度SW_fr、SW_fl、SW_rr、SW_rlを算出する。
SW_i={(TAO_i−Te)/(Tw−Tei)}×100(%)
…(数式1)
ここで、iは添字fr、fl、rr、rlのいずれかを表し、添字frは空調ゾーン1a、添字flは空調ゾーン1c、添字rrは空調ゾーン1b、添字rlは空調ゾーン1dを示す。
そして、目標吹出温度TAOFrDr、TAOFrPaのうち一方を求めるときには、Teiとして蒸発器吹出温度TeFrを用いる一方、目標吹出温度TAORrDr、TAORrPaのうち一方を求めるときには、Teiとして蒸発器吹出温度TeRrを用いる。
ここで、この決定される開度SW_fr、SW_fl、SW_rr、SW_rlに基づき、サーボモータ550a、550b、650a、650bを制御して、エアミックスドア55a、55b、65a、65bの個々を駆動する(S120)。
これに伴って、エアミックスドア55a、55b、65a、65bのそれぞれの開度が、開度SW_fr、SW_fl、SW_rr、SW_rlに近づくようなる。
次に、メモリに予め記憶される図6の特性、および目標吹出温度(TAOFrDr、TAORrDr、TAOFrPa、TAORrPa)を用いて、空調ゾーン1a、1b、1c、1dにそれぞれ必要なブロア電圧(VM_fr、VM_fl、VM_rr、VM_rl)(すなわち、空調ゾーン1a、1b、1c、1dにそれぞれに必要な風量)を算出する。
ここで、メモリに予め記憶される下記の数式2を用いて、空調ゾーン1a、1bのそれぞれに必要なブロア電圧VM_fr、VM_flを平均化して前席空調ゾーンにそれぞれ必要なブロア電圧VMFを算出する。
VMF=(VM_fr+VM_fl)/2……(数式2)
このようにブロア電圧VMFを算出すると、このブロア電圧VMFをブロアモータ52aに印加する(S130)。これに伴い、遠心式送風機52が、空気流を発生させることになる。
また、メモリに予め記憶される下記の数式3を用いて、空調ゾーン1c、1dのそれぞれに必要なブロア電圧VM_rr、VM_rlを平均化して後席空調ゾーンにそれぞれ必要なブロア電圧VMRを算出する。
VMR=(VM_rr+VM_rl)/2……(数式3)
このようにブロア電圧VMRを算出すると、このブロア電圧VMRをブロアモータ62bに印加する。これに伴い、遠心式送風機62が、空気流を発生させることになる。
次に、メモリに予め記憶される図7の特性、および目標吹出温度(TAOFrDr、TAORrDr、TAOFrPa、TAORrPa)を用いて、フットモード(FOOT)、バイレベルモード(B/L)、フェイスモード(FACE)のうち1つのモードを吹出口モードとして空調ゾーン毎に決める(S140)。
ここで、フェイスモードとは、フェイス吹出口だけから空調風を吹き出すモードであり、フットモードとは、フット吹出口だけから空調風を吹き出すモードであり、バイレベルモードとは、フェイス吹出口およびフット吹出口から空調風を吹き出すモードである。
このように空調ゾーン毎に吹出口モードを決定すると、各吹出口切換ドアのそれぞれのサーボモータを空調ゾーン毎に制御して、空調ゾーン毎にこの決定される吹出口モードとなるように各吹出口切換ドアをそれぞれ開閉させる。
次に、メモリに予め記憶される図8の特性、および目標吹出温度(TAOFrDr、TAOFrPa)を用いて、前席用空調ユニット5の内外気切換ドア51の目標開度SW1を求める。
すなわち、目標吹出温度の平均値TAOav{=(TAOFrDr+TAOFrPa)/2}を求めるとともに、メモリに予め記憶される図8の特性に基づき、平均値TAOavに対応する内外気切換ドア51の目標開度SW1を求めることになる。
なお、本実施形態では、内気導入口50aを全閉し、外気導入口50bを全開する場合を目標開度SW1=100%とし、内気導入口50aを全開し、外気導入口50bを全閉する場合を目標開度SW1=0%とする。
このように目標開度SW1を決定すると、この目標開度SW1に基づき、サーボモータ51aを制御して、内外気切換ドア51の開度を目標開度SW1に近づけるようにする(S150)。
次に、蒸発器吹出温度TeFr、TeRrを一定温度に近づけるように自動車のエンジン及びコンプレッサの間に連結される電磁クラッチを断続制御する(S160)。これに伴い、冷凍サイクル内を流れる冷媒の流量が制御されて、エバポレータ53、63の冷却性能が調整されることになる。
その後、一定期間経過すると(S170:YES)、S110に移行して、目標吹出温度算出処理(S110)、エアミックスドア制御処理(S120)、ブロア制御処理(S130)、吹出口モード切替制御処理(S150)、コンプレッサ制御処理(S160)が繰り返されることになる。
以上により、前席用空調ユニット5において、内気導入口50aおよび外気導入口50bの少なくとも一方からダクト50内に空気が導入される。この導入される空気は、エバポレータ53を通過する際に冷媒と熱交換されて冷却されて、運転席側通路50c、助手席側通路50dに流入される。
ここで、運転席側通路50cでは、エアミックスドア55aによって、ヒータコア54を通過する空気量とバイパス通路51aを通過する空気量との割合が調節される。その後、ヒータコア54を通過する空気とバイパス通路51aを通過する空気とが混合される。
このことにより、運転席側通路50c内を流れる空気温度が調節されることになる。その後、この温度調節される空気が、上述のように決定される空調ゾーン1aの吹出口モードに対応して開口されている吹出口から吹き出される。
また、助手席側通路50dでは、エアミックスドア55bによって、ヒータコア54を通過する空気量とバイパス通路51bを通過する空気量との割合が調節される。その後、ヒータコア54を通過する空気とバイパス通路51bを通過する空気とが混合される。
このことにより、助手席側通路50d内を流れる空気温度が調節されることになる。その後、この温度調節される空気が、上述のように決定される空調ゾーン1bの吹出口モードに対応して開口されている吹出口から吹き出される。
また、後席用空調ユニット6においては、内気導入口60aからダクト60内に空気が導入されて、この導入される空気は、エバポレータ63を通過する際に冷媒と熱交換されて冷却されて、運転席側通路60c、助手席側通路60dに流入される。
ここで、運転席側通路60cでは、エアミックスドア65aによって、ヒータコア64を通過する空気量とバイパス通路61aを通過する空気量との割合が調節される。その後、ヒータコア64を通過する空気とバイパス通路61aを通過する空気とが混合される。
このことにより、運転席側通路60c内を流れる空気温度が調節されることになる。その後、この温度調節される空気が、上述のように決定される空調ゾーン1cの吹出口モードに対応して開口されている吹出口から吹き出される。
また、助手席側通路60dでは、エアミックスドア65bによって、ヒータコア64を通過する空気量とバイパス通路61bを通過する空気量との割合が調節される。その後、ヒータコア64を通過する空気とバイパス通路61bを通過する空気とが混合される。
このことにより、助手席側通路60d内を流れる空気温度が調節されることになる。その後、この温度調節される空気が、上述のように決定される空調ゾーン1dの吹出口モードに対応して開口されている吹出口から吹き出される。
次に、前席右側の空調ゾーン1aの目標吹出温度TAOFrDrの演算処理について具体的に説明すると、この目標吹出温度TAOFrDrの算出にあたっては、数式4を用いる。
TAOFrDr=KsetFrDr×TsetFrDr
−Kir×FrDrTir−KrFr×TrFr
−KsFr×TsDr−Kam×Tam+CFrDr…(数式4)
ここで、非接触温度センサ70aの検出素子75〜78の検出温度dir75〜dir78の平均値{=(dir75+dir76+dir77+dir78)/4}を求め、この平均値を前席右側の乗員温度の乗員温度FrDrTirとする。
また、日射量TsDrは、車両右側に入射される右側日射量であって、後述するように、非接触温度センサ70a、70bの検出素子71〜75の検出温度dir71〜dir75を用いて求める。
このように求められる乗員温度TirDr及び右側日射量TsDrとともに、希望温度TsetFrDr、前側空調領域の空気温度TrFr、および外気温度Tamを数式4に代入して目標吹出温度TAOFrDrを求める。
なお、数式1中のKsetFrDr、Kir、KrFr、KsFr、Kamは、係数であり、CFrDrは定数である。
次に、前席左側の空調ゾーン1bの目標吹出温度TAOFrPaを、数式5を用いて算出する。
TAOFrPa=KsetFrPa×TsetFrPa
−Kir×FrPaTir−KrFr×TrFr
−KsFr×TsPa−Kam×Tam+CFrPa…(数式5)
ここで、非接触温度センサ70bの検出素子75〜78の検出温度dir75〜dir78の平均値{=(dir75+dir76+dir77+dir78)/4}を求め、この平均値を前席左側の乗員温度FrPaTirとする。
また、日射量TsPaは、車両左側に入射される左側日射量であって、後述するように、非接触温度センサ70a、70bの検出素子71〜75の検出温度dir71〜dir75を用いて求める。
このように求められる乗員温度FrPaTir及び右側日射量TsPaとともに、希望温度TsetFrPa、前側空調領域の空気温度TrFr、および外気温度Tamを数式5に代入して目標吹出温度TAOFrPaを求める。
なお、数式5中のKsetFrPa、Kir、KrFr、KsFr、Kamは、係数であり、CFrPaは定数である。
次に、後席右側の空調ゾーン1cの目標吹出温度TAORrDrの演算処理について図4、図9を用いて具体的に説明する。図9は、目標吹出温度TAORrDrの演算処理を示す制御フローチャートである。
先ず、日射センサ83の出力をアナログデジタル変換したデジタル信号に基づき、車室内に日射量Tsが一定量(例えば、200W/m2)入射されたか否かを判定する。
そして、車室内に一定量以上の日射量Tsが入射されたとき、S200でYESと判定して、S210に移行する。この場合、後席右側乗員の上半身の着衣領域(すなわち、乗員の着ている服の部分)うち後席右側乗員に隣接する右側サイドウインドウ側の着衣領域は、日射の影響を受けて、温度上昇していると推定される。
ここで、後席右側乗員の上半身の着衣領域うち右側サイドウインドウ側の着衣領域の表面温度を検出する非接触温度センサ70cの検出素子72〜74のそれぞれの検出温度dir72〜dir74から、最低温度を示す検出温度を、後席右側の乗員温度RrDrTirとして選択する(S210)。このことにより、日射の影響受けた後席右側の乗員温度RrDrTirを取得することができる。
一方、車室内に入射される日射量Ts一定量未満であるとき、S200でNOと判定して、S250に移行する。この場合、後席右側乗員の上半身の着衣領域の表面温度としては、日射の影響を受けていないと推定される。
この場合、検出素子72〜74、76〜78のそれぞれの検出温度dir72〜dir74、dir76〜dir78から、最低温度を示す検出温度を、後席右側の乗員温度RrDrTirとして選択する(S250)。また、図4に示す例では、乗員温度RrDrTirとして、dir73が選択される例を示している。
なお、図4中の符号B1にて示される検出素子71、75は、着衣領域から外れているので、予め、検出素子71、75から乗員温度RrDrTirを選択しないようになっている。
以上のようにS210、S250のうち一方の処理で求められる乗員温度RrDrTirとともに、右側日射量TsDrとともに、希望温度TsetRrDr、後側空調領域の空気温度TrRr、および外気温度Tamを数式6に代入して目標吹出温度TAORrDrを求める。
TAORrDr=KsetRrDr×TsetRrDr
−Kir×RrDrTir−KrRr×TrRr
−KsRr×TsDr−Kam×Tam+CRrDr…(数式6)
なお、数式6中のKsetRrDr、Kir、KrRr、KsRr、Kamは、係数であり、CRrDrは定数である。
また、後席左側の空調ゾーン1dの目標吹出温度TAORrPaの演算処理では、目標吹出温度TAORrPaと同様、日射量Tsや検出素子毎の検出温度に基づき、非接触温度センサ70dの検出温度dir72〜dir74、dir76〜dir78のうち、最低温度を示す検出温度を後席左側の乗員温度RrPaTirとして選択する。
そして、この乗員温度RrPaTirとともに、左側日射量TsPa、希望温度TsetRrPa、後側空調領域の空気温度TrRr、および外気温度Tamを数式6に代入して目標吹出温度TAORrPaを求める。
TAORrPa=KsetRrPa×TsetRrPa
−Kir×RrPaTir−KrRr×TrRr
−KsRr×TsPa−Kam×Tam+CRrPa…(数式7)
なお、数式7中のKsetRrPa、Kir、KrRr、KsRr、Kamは、係数であり、CRrPaは定数である。
次に、上述の右側日射量TsDr、左側日射量TsPaを求める演算処理について図10を用いて説明すると、非接触温度センサ70aの検出素子71〜74の検出温度dir71〜dir74の平均値{=(dir71+dir72+dir73+dir74)/4}を求め、この平均値を前側右側サイドウインドウの表面温度(以下、前側右側サイドウインドウ温度THRと呼ぶ。)とする。
一方、非接触温度センサ70bの検出素子71〜74の検出温度dir71〜dir74の平均値{=(dir71+dir72+dir73+dir74)/4}を求め、この平均値を前側左側サイドウインドウの表面温度(以下、前側左側サイドウインドウ温度THLと呼ぶ。)とする。
次に、前側右側サイドウインドウ温度THRと前側左側サイドウインドウ温度THLの温度差ΔTH(=THR−THL)を求めるとともに、予めメモリに記憶されている図10の特性図とからDr側日射補正割合及びPa側日射補正割合を算出する。
ここで、図9の特性図は、温度差ΔTHと日射補正割合fDr、fPaとの関係を示す図であり、この図9の特性図では、温度差ΔTHが大きくなるにつれて日射補正割合fDrが大きくなるとともに、日射補正割合fPaが小さくなっている。
そして、日射補正割合fDrは、車室内に照射される日射量Tsのうち車室内右側領域に入射される日射量の割合を示し、日射補正割合fPaは、車室内に照射される日射量Tsのうち車室内左領域に照射される日射量の割合を示す。
次に、日射量Tsに日射補正割合fDrを掛けて右側日射量TsDr(=Ts×fDr)を算出する。また、日射量Tsに日射補正割合fPaを掛けて左側日射量TsPa(=Ts×fPa)を算出する。
次に、本実施形態の作用効果について説明する。本実施形態の車両空調装置では、車室内の後席右側乗員(後席左側乗員)の上半身の着衣領域のうち複数の箇所の表面温度を非接触でそれぞれで検出する検出素子71〜78を有する非接触温度センサ70c(70d)と、車室内の空気温度を座席毎に制御する後席用空調ユニット6と、検出素子72〜74、76〜78により検出されるそれぞれの検出温度dir72〜dir74、dir76〜dir78のうち、最低温度を示す検出温度を乗員温度として選択して、後席用空調ユニット6により乗員温度を用いて車室内の空気温度を座席毎に制御させるエアコンECU制御手段8とを有することを特徴とする。
このように、検出温度dir72〜dir74、dir76〜dir78のうち、最低温度を示す検出温度を乗員温度として選択するので、手の位置に関わらず、手や顔の表面温度を乗員温度として選択することを避けることができるので、乗員温度として着衣温度を精度良く検出できる。これに伴い、この検出された着衣温度を用いて後席用空調ユニット6を制御するので、乗員の温感に合うように空調ゾーン1cを空調できるようになる。
例えば、後席右側乗員が右側サイドウインドウを通して日射を受けると、後席右側乗員の表面のうち右側サイドウインドウ側の温度は、日射の影響を受けて上昇する。
そこで、本実施形態では、エアコンECU制御手段8は、車室内に一定量以上の日射が入射されたと判定したとき、検出素子72〜74、76〜78ではなく、右側サイドウインドウ側に位置する検出素子72〜74より検出されるそれぞれの検出温度dir72〜dir74のうち、最低温度を示す検出温度を着衣温度として選択する。このため、日射の影響を受けた着衣の表面温度を検出することができるので、この着衣の表面温度を用いて、日射補正を行うことが可能になる。
また、本実施形態では、後席用空調ユニット6としては、後部乗員が着座する座席毎に車室内の空調ゾーン1c、1dに吹き出す空気の温度をそれぞれ調節するエアミックスドア65a、65bを有しているものであり、非接触温度センサ70c、70dは、座席毎に対応するように2つ設けられている。そして、エアコンECU8は、非接触温度センサ70c、70dより検出されるそれぞれの検出温度に基づき、乗員の着衣の表面温度を座席毎に選択するので、着衣の表面温度を座席毎に精度良く選択することができる。このため、エアコンECU8が、座席毎に選択された着衣の表面温度に応じて、車室内に吹き出す空気の温度を座席毎に調節させるようにエアミックスドア65a、65bの開度をそれぞれ独立して制御すれば、車室内を座席毎に乗員の温感に合うように空調することができる。
(第2の実施形態)
上述の実施形態では、非接触温度センサ70cの検出温度dir72〜dir74、dir76〜dir78のうち最低温度を示す検出温度を後席右側乗員の着衣温度として選択していので、非接触温度センサ70cの視野内に、例えばアイスクリーム等の異常低温の物体が入った場合には、異常低温の物体の表面温度を着衣温度として選択してしまう。
そこで、本第2実施形態では、次のように、異常低温の物体の表面温度を後席右側乗員の着衣温度として選択することを避けるようにする。ここで、本実施形態では、非接触温度センサ70cとしては、図12に示すように検出素子701〜712から構成されるマトリックス型の赤外線温度センサが用いられる。非接触温度センサ70cは、後席右側乗員の上半身および下半身の表面温度を非接触で検出する。
次に、本実施形態における後席右側の空調ゾーン1cの目標吹出温度TAORrDrの演算処理について図13を用いて具体的に説明する。図13は、目標吹出温度TAORrDrの演算処理を示す制御フローチャートである。
先ず、エアコンECU8は、車室内に一定量(例えば、200W/m2)以上の日射量Tsが入射されたとき、S200でYESと判定して、S300に移行する。この場合、後席右側乗員の着衣領域(上半身及び下半身を含む)うち右側サイドウインドウ側の領域は、日射の影響を受けて温度上昇していると推定される。
ここで、後席右側乗員のうち右側サイドウインドウ側の領域の表面温度を検出する非接触温度センサ70cの検出素子701、703、705、706、709、710のそれぞれの検出温度dir701、dir703、dir705、dir706、dir709、dir710から、最低温度を示す検出温度(最低検出温度と呼ぶ。)および二番目に低い検出温度(以下、二番目の低温検出温度と呼ぶ。)を選択する。
一方、車室内に入射される日射量Tsが一定量(例えば、200W/m2)未満であるとき、S200でNOと判定して、S320に移行して、後席右側乗員のうち右側サイドウインドウ側領域および左右方向中央部側領域を含む範囲の表面温度を検出する非接触温度センサ70cの検出素子701〜712のそれぞれの検出温度dir701〜dir712から、最低温度を示す検出温度(最低検出温度と呼ぶ。)および二番目に低い検出温度(以下、二番目の低温検出温度と呼ぶ。)を選択する。
以上のように、最低検出温度および二番目の低温検出温度の温度差が一定温度(例えば、2℃)以上であれば、最低検出温度は異常低温の物体の検出温度を示していると推定される。そこで、最低検出温度ではなく、二番目の低温検出温度を乗員温度RrDrTirとして設定する(S330)。また、最低検出温度および二番目の低温検出温度の温度差が一定温度未満であれば、最低検出温度は、着衣温度を示していると推定されるので、最低検出温度を乗員温度RrDrTirとして設定する(S340)。このように設定される乗員温度RrDrTirを用いて、上述の実施形態と同様、数式6に示す目標吹出温度TAORrDrを演算する(S240)。
以下、本実施形態の作用効果について説明すると、エアコンECU8は、最低検出温度および二番目の低温検出温度の温度差が、一定温度以上であるとき、最低検出温度が着衣温度ではなく、異常低温の物体の表面温度を示していると推定されるので、最低検出温度ではなく、二番目の低温検出温度を乗員温度RrDrTirとして選択する。したがって、異常低温の物体の表面温度を着衣の表面温度として選択することを避けることができ、着衣の表面温度を、精度良く検出することができる。
(第3実施形態)
ところで、例えば、冬季などでは、乗員の上半身表面温度及び下半身検出温度とが、それぞれ、25℃であって一致していても、乗員は、足下を寒く感じることがある。
そこで、本第3実施形態では、上半身表面温度及び下半身検出温度とが一致していても、上半身に吹き出す空気の温度よりも下半身に吹き出す空気の温度の方を高くして、乗員のとっての快適感を向上させる。この場合の後席用空調ユニット6の構成を図14に示す。図14では、後席用空調ユニット6のうち空調ゾーン1cを空調する構成だけを示しており、その他の構成は、省略している。
図14において、後席用空調ユニット6には、運転席側フェイス吹出口1RrDr以外に、更にもう一つの運転席側フェイス吹出口1RrDr2が設けられており、後部右側混合室からダクト702を通して送られる送風空気を後席右側座席の乗員の上半身に向けて吹き出す。
ここで、ダクト702内には、電気ヒータ700および冷却素子(具体的にはペルチェ素子)701が設けられており、電気ヒータ700は、エアコンECU8により制御されて、送風空気を加熱する。冷却素子(ペルチェ素子)701は、エアコンECU8により制御されて、送風空気を冷却する。このことにより、
運転席側フェイス吹出口1RrDr2に向けて送風される空気温度は、後席右側混合室から後席右側フット吹出口に吹き出す空気温度と独立して制御されることになる。
なお、後席右側混合室から後席右側フット吹出口に吹き出す空気温度は、エアミックスドア65aの開度などより決まる。
また、ダクト702の空気上流側にはドア58が設けられおり、ドア58は、空気流入口を開閉するものである。ドア58はサーボモータ580により駆動されるものであり、サーボモータ580は、エアコンECU8により制御されるものである。
また、本実施形態の非接触温度センサ70cは、乗員の着衣表面のうち上半身側の複数の箇所の表面温度を非接触でそれぞれで検出する各上半身側検出素子701〜704と、乗員の着衣表面のうち下半身側の複数の箇所の表面温度を非接触でそれぞれで検出する各下半身側検出素子705〜712とから構成されている(図12参照)。
例えば、スイッチ等により当該制御モードが設定されたとき、エアコンECU8は、サーボモータ580によりドア58を駆動してダクト702の空気流入口を開ける。これに伴い、ダクト702内に送風空気が流入する。
また、エアコンECU8は、上半身側検出素子701〜704により検出されるそれぞれの検出温度のうち、最低温度を示す検出温度を上半身側着衣表面温度として選択するとともに、下半身側検出素子705〜712により検出されるそれぞれの検出温度のうち、最低温度を示す検出温度よりも所定温度(例えば、3℃)低い下半身側補正着衣表面温度として選択する(温度選択手段)。
更に、エアコンECU8は、上半身側着衣表面温度を乗員温度RrDrTirとして数式6に示す目標吹出温度TAORrDr(以下、上半身側目標吹出温度と呼ぶ。)を算出するとともに、下半身側補正着衣表面温度を乗員温度RrDrTirとして数式6に示す目標吹出温度TAORrDr(以下、下半身側目標吹出温度と呼ぶ。)を算出する。
ここで、上半身側目標吹出温度は、上半身に吹き出す空気の目標温度であり、下半身側目標吹出温度は、下半身に吹き出す空気の目標温度である。その後、エアコンECU8は、下半身側目標吹出温度に下半身に吹き出す空気温度を一致させるとともに、上半身側目標吹出温度に上半身に吹き出す空気温度を一致させるように電気ヒータ700および冷却素子701を制御する。これに伴い、ダクト702内に通過して運転席側フェイス吹出口1RrDr2に向けて送風される空気温度は、電気ヒータ700および冷却素子701によって温度調節されることになる。
ここで、下半身側目標吹出温度は、上述のように最低温度を示す検出温度よりも所定温度(3℃)低い下半身側補正着衣表面温度を用いてを算出されるので、例えば、下半身側の最低温度を示す検出温度と、上半身側の最低温度を示す検出温度と一致していても、下半身側目標吹出温度の方が、上半身側目標吹出温度に比べて高くなる。
このため、後席用空調ユニット6が、下半身側目標吹出温度に下半身に吹き出す空気温度を一致させるとともに、上半身側目標吹出温度に上半身に吹き出す空気温度を一致させることにより、下半身に吹き出す温風の空気温度が、上半身に吹き出す温風の空気温度に比べて高くなり、乗員にとっての快適感を向上させることになる。
(その他の実施形態)
上述の上記第1の実施形態では、非接触温度センサ70a、70b、70c、70dとして、サーモパイル型検出素子を用いた赤外線センサを例示したが、温度係数の大きな抵抗で構成されたボロメータ型検出素子を用いた赤外線センサや、他の形式の赤外線センサを用いることもできる。さらに、赤外線センサに限らず、被検温体の表面温度を非接触で検出する他の形式の表面温度センサを用いることもできる。
上述の実施形態では、車室内に入射される日射量Tsを1つの検出素子で検出する一素子タイプの日射センサ83を用いて車室内に一定量以上の日射が入射されたか否かを判定する例について説明したが、これに代えて、次のようにしてもよい。
すなわち、日射が入射されたか否かを判定するには、日射センサ83の検出出力に代えて右側日射量TsDr、左側日射量TsPaを用いてもよい。
ここで、右側日射量TsDrおよび左側日射量TsPaとしては、上述の第1実施形態で説明したように日射量Ts及び図10の特性図に基づき求める場合に限らず、右側日射量TsDrおよび左側日射量TsPaを直接的に検出する2素子タイプの日射センサを用いてもよい。
上述の第3の実施形態では、図14に示すように、運転席側フェイス吹出口1RrDr、1RrDr2といった二つのフェイス吹出口を採用し、さらに、電気ヒータ700および冷却素子701を用いて運転席側フェイス吹出口1RrDr2から乗員の上半身に吹き出す空気温度を温度調節する例について説明したが、これに代えて、1つのフェイス吹出口だけを有して冷風バイパスドア、エアミックスドアなどを用いた構成で、バイレベルモード時にて、上半身に吹き出す空気温度と、下半身に吹き出す空気温度とを独立に制御するようにしてもよい。