JP4258378B2 - 位置検出装置、露光装置、および露光方法 - Google Patents
位置検出装置、露光装置、および露光方法 Download PDFInfo
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Description
本発明は、位置検出装置、露光装置、および露光方法に関し、特に半導体素子、撮像素子、液晶表示素子、薄膜磁気ヘッド等のマイクロデバイスを製造するリソグラフィ工程で用いる露光装置に搭載される位置検出装置に関するものである。
背景技術
一般に、半導体素子等のデバイスの製造に際して、感光材料の塗布されたウェハ(またはガラスプレート等の基板)上に複数層の回路パターンを重ねて形成する。このため、回路パターンをウェハ上に露光するための露光装置には、マスクのパターンと既に回路パターンの形成されているウェハの各露光領域との相対位置合わせ(アライメント)を行うためのアライメント装置が備えられている。近年、回路パターンの線幅の微細化に伴い、高精度のアライメントが必要とされるようになってきている。
従来、この種のアライメント装置として、特開平4−65603号公報、特開平4−273246号公報等に開示されているように、オフ・アクシス方式で且つ撮像方式のアライメント装置が知られている。この撮像方式のアライメント装置の位置検出系は、FIA(Field Image Alignment)系の位置検出装置とも呼ばれている。FIA系の位置検出装置では、ハロゲンランプ等の光源から射出される波長帯域幅の広い光で、ウェハ上のアライメントマーク(ウェハマーク)を照明する。そして、結像光学系を介してウェハマークの拡大像を撮像素子上に形成し、得られた撮像信号を画像処理することによりウェハマークの位置検出を行う。
一般に、低段差パターンのアライメントマークの場合、ベストフォーカス状態で得られるアライメントマーク像のコントラストは低くなる。そこで、特開平7−183186号公報、特開平9−6017号公報、特開平10−50592号公報等には、デフォーカス状態において低段差パターンのアライメントマークを検出することによりアライメントマーク像のコントラストを向上させる技術が開示されている。なお、近年の半導体素子に関する製造技術の進展に伴って、非対称な低段差パターンのアライメントマークであっても位置検出を高精度に行うことが求められるようになってきている。
上述のように、従来技術では、ベストフォーカス状態よりもデフォーカス状態の方が低段差パターン像のコントラストが向上することを考慮し、像のコントラストが最大になるデフォーカス位置で位置検出を行うことにより精度の向上を図っている。しかしながら、像のコントラストが最大になるデフォーカス位置で位置検出を行う従来技術では、アライメントマークが非対称な低段差パターンである場合にアライメントマーク像も非対称に歪むので、デフォーカスに伴って位置検出結果にかなりの誤差成分が含まれるようになり、結果として位置検出精度が悪化する可能性がある。
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたものであり、非対称な低段差パターンのマークを高精度に位置検出することのできる位置検出装置を提供することを目的とする。さらに、本発明の高精度な位置検出装置を用いて、たとえば投影光学系に対してマスクと感光性基板とを高精度に位置合わせして良好な露光を行うことのできる露光装置および露光方法を提供することを目的とする。
発明の開示
前記課題を解決するために、本発明の第1発明では、位置検出すべき物体に設けられたマークからの光を導く光学系と、前記マークからの光を光電検出する光電検出器と、該光電検出器の出力信号に基づいて前記マークの位置を検出する検出系とを備えた位置検出装置において、
前記検出系は、前記光電検出器に達する前記マークからの回折光のうちの特定次数の1つの回折光と0次回折光との位相差がほぼ90度になるように位相差を付与した所定の光学状態において、前記光電検出器の出力信号に基づいて前記マークの位置を検出することを特徴とする位置検出装置を提供する。この場合、前記特定次数の1つの回折光は、前記光電検出器に達する前記マークからの回折光のうちの最高次数の回折光であることが好ましい。また、前記特定次数の1つの回折光は、前記光電検出器に達する前記マークからの回折光のうち、像の非対称性に影響する次数の回折光であることが好ましい。
第1発明の好ましい態様によれば、前記所定の光学状態はデフォーカス状態であり、前記マークからの光の中心波長をλとし、前記マークのピッチをPとし、前記特定次数の回折光の次数をNとすると、前記デフォーカス状態におけるデフォーカス量の大きさΔZ0は、ΔZ0≒(1/λ)×(P/N)2×1/2で表される。この場合、前記光電検出器は、前記光学系の像面に対して光電検出面が+ΔZ0だけデフォーカスして配置された第1光電検出器と、前記光学系の像面に対して光電検出面が−ΔZ0だけデフォーカスして配置された第2光電検出器との少なくとも一方を有することが好ましい。そして、前記第1光電検出器と前記第2光電検出器との双方を有することがさらに好ましい。
また、第1発明の好ましい態様によれば、光電検出器は、前記光学系の像面と光電検出面とがほぼ一致するように配置された第3光電検出器をさらに有する。この場合、前記検出系は、前記第1光電検出器、前記第2光電検出器および前記第3光電検出器のうち、前記マークの構造形態に基づいて選択された光電検出器の出力信号を用いて前記マークの位置を検出することが好ましい。
さらに、第1発明の好ましい態様によれば、前記検出系は、前記光学系の物体面に対して前記マークを+ΔZ0だけデフォーカスさせた第1デフォーカス状態、前記光学系の物体面に対して前記マークを−ΔZ0だけデフォーカスさせた第2デフォーカス状態、および前記光学系の物体面に対して前記マークをほぼ一致させたフォーカス状態のうち、前記マークの構造形態に基づいて選択された状態における前記光電検出器の出力信号を用いて前記マークの位置を検出する。
本発明の第2発明では、位置検出すべき物体に設けられたマークからの光を導く光学系と、前記マークからの光を光電検出する光電検出器と、該光電検出器の出力信号に基づいて前記マークの位置を検出する検出系とを備えた位置検出装置において、
前記検出系は、所定のデフォーカス範囲に対する前記マークの検出位置の変動がほぼ最小になる所定のデフォーカス状態において、前記光電検出器の出力信号に基づいて前記マークの位置を検出することを特徴とする位置検出装置を提供する。
第2発明の好ましい態様によれば、前記所定のデフォーカス状態は、前記物体のほぼ中央に設けられた中央マークの検出位置の変動が前記所定のデフォーカス範囲に対してほぼ最小になるデフォーカス状態である。あるいは、前記物体に間隔を隔てて設けられた複数のマークの検出位置の変動の平均値が前記所定のデフォーカス範囲に対してほぼ最小になるデフォーカス状態であることが好ましい。
本発明の第3発明では、位置検出すべき物体に設けられたマークからの光を導く光学系と、前記マークからの光を光電検出する光電検出器と、該光電検出器の出力信号に基づいて前記マークの位置を検出する検出系とを備えた位置検出装置において、
前記検出系は、前記光電検出器に達する前記マークからの回折光のうちの最高次回折光と0次回折光との位相差がほぼ90度になる第1デフォーカス量と、所定のデフォーカス範囲に対する前記マークの検出位置の変動がほぼ最小になる第2デフォーカス量とに前記マークの構造形態に基づく重みをつけて決定された所定のデフォーカス量に対応する所定のデフォーカス状態において、前記光電検出器の出力信号を用いて前記マークの位置を検出することを特徴とする位置検出装置を提供する。
本発明の第4発明では、位置検出すべき物体に設けられたマークから光学系を介して導かれた光を光電検出器で光電検出し、前記光電検出器の出力信号に基づいて前記マークの位置を検出する位置検出方法において、
前記光電検出器に達する前記マークからの回折光のうちの特定次数の1つの回折光と0次回折光との位相差がほぼ90度になるように位相差を付与した所定の光学状態に設定する設定工程と、
前記所定の光学状態において前記光電検出器の出力信号に基づいて前記マークの位置を検出する検出工程とを含むことを特徴とする位置検出方法を提供する。
第4発明の好ましい態様によれば、前記設定工程は、前記マークのパターン特性と前記光学系の光学特性とに基づいて、前記所定の光学状態としてのデフォーカス状態を規定するデフォーカス量を算出する算出工程を含む。また、所定の条件に基づいて前記設定工程および前記検出工程を実施するか否かを判断する判断工程をさらに含むことが好ましい。この場合、前記判断工程では、前記マークの位置検出に要求される精度に基づいて前記設定工程および前記検出工程を実施するか否かを判断することが好ましい。
また、第4発明の好ましい態様によれば、前記判断工程では、前記マークのパターン情報に基づいて前記設定工程および前記検出工程を実施するか否かを判断する。この場合、前記判断工程では、前記マークのパターンを構成するライン部のピッチ方向の寸法が1μm以下の場合に前記設定工程および前記検出工程の実施を決定することが好ましい。また、前記判断工程では、ベストフォーカス状態において前記マークから得られた前記出力信号の波形情報に基づいて前記設定工程および前記検出工程を実施するか否かを判断することが好ましい。
本発明の第5発明では、所定のパターンが形成されたマスクを照明するための照明系と、前記マスクのパターン像を感光性基板上に形成するための投影光学系と、前記感光性基板の位置を検出するための第1発明〜第3発明の位置検出装置とを備えていることを特徴とする露光装置を提供する。
本発明の第6発明では、所定のパターンが形成されたマスクを照明し、照明された前記マスクのパターン像を感光性基板上に露光する露光方法において、第1発明〜第3発明の位置検出装置または第4発明の位置検出方法を用いて前記感光性基板の位置を検出することを特徴とする露光方法を提供する。
発明を実施するための最良の形態
本発明の位置検出装置においてデフォーカスさせると、光軸に対称な波面収差(位相ずれ)が発生する。ここで、デフォーカス量の大きさをΔZとし、マークからの光の中心波長をλとし、マークのピッチをPとし、回折光の次数をN(N=0,±1,±2,・・・)とすると、発生する位相ずれの大きさΔW(ラジアン)は次の式(1)で表される。
ところで、非対称なパターンのマークの場合、光学系が集光して光電検出器に達する回折光においてプラスの次数の回折光と対応するマイナスの次数の回折光とが光軸に関して非対称になり、結果としてマーク像が非対称に歪む。同様に、製造誤差などにより光学系の光軸に対して結像開口絞りが位置ずれ(以下「光軸ずれ」という)している場合にも、光電検出器に達する回折光においてプラスの次数の回折光と対応するマイナスの次数の回折光とが光軸に関して非対称になり、マーク像が非対称に歪む。
上述したように、一般的に光電検出器に達する回折光が光軸に関して非対称になると、マーク像も非対称に歪むことになる。しかしながら、光電検出器に達する回折光が0次回折光と1次回折光とに限定される場合、0次回折光と1次回折光との位相差が90度であれば、マーク像が対称になる。つまり、0次回折光と1次回折光との位相差が90度になるようなデフォーカス状態に設定すれば、マークのパターンが非対称であっても、また結像開口絞りの光軸ずれが存在していても、対称なマーク像を得ることができる。以下、この点について簡単に説明する。
パターンの非対称性や結像開口絞りの光軸ずれにより、0次回折光および+1次回折光のみが光電検出器に達し−1次回折光が光電検出器に達しない場合、光電検出面に形成されるパターン像の強度分布Iは、パターンの凸部と凹部との段差をdとし、パターンのピッチ方向の位置座標をXとし、0次回折光のフーリエ振幅をC0とし、±1次回折光のフーリエ振幅をC1とすると、次の式(2)で表される。
ここで、
したがって、デフォーカス量がΔZ=0のベストフォーカス状態では、0次回折光と1次回折光との位相差が△W=0となり、パターン像の強度分布Iは次の式(3)で表される。
すなわち、デフォーカス量がΔZ=0のベストフォーカス状態では、パターン像の強度分布Iを表す式(3)にXの奇関数sinの項が現れることにより、パターン像に非対称性が生じる。これに対し、0次回折光と1次回折光との位相差が△W=π/2になるように、所定のデフォーカス量ΔZ0だけデフォーカスさせると、パターン像の強度分布Iは次の式(4)で表される。また、0次回折光と1次回折光との位相差が△W=π/2になるデフォーカス量ΔZ0は、次の式(5)で表される。
すなわち、0次回折光と1次回折光との位相差が△W=π/2になるような所定のデフォーカス状態では、パターン像の強度分布Iを表す式(4)にXの奇関数sinの項がなくなりXの偶関数cosの項が現れることにより、パターン像の非対称性がなくなり対称なパターン像が得られることになる。また、この場合には、得られるパターン像のコントラストも最良になる。
以上のように、マークからの0次回折光と1次回折光とに基づいて非対称な低段差パターンのマークを検出する場合、0次回折光と1次回折光との位相差が90度(π/2)になる所定のデフォーカス状態に設定すると、完全に対称でコントラストの最良なマーク像を得ることができる。
以上の説明は簡単のためにマークからの0次回折光と1次回折光とに基づいてマークを検出する場合を想定しているが、実際の位置検出装置では1次よりもさらに高次の回折光も光電検出する構成になっている場合が多い。この場合にも、後述するように、光電検出器に達するマークからの回折光のうち、最高次回折光と0次回折光との位相差が90度になる所定のデフォーカス状態において非対称な低段差パターンのマークを検出すると、ほぼ対称で且つコントラストのほぼ良好なマーク像を得ることができる。さらに、一般的には、光電検出器に達するマークからの回折光のうち、特定次数の1つの回折光または複数の特定次数の回折光と0次回折光との位相差がほぼ90度になるように位相差を付与した所定の光学状態において、非対称な低段差パターンのマークを検出すると、ほぼ対称で且つコントラストのほぼ良好なマーク像を得ることができる。
本発明の典型的な形態にしたがう位置検出装置では、光電検出器がマークからの光を光電検出し、検出系が光電検出器の出力信号に基づいてマークの位置を検出する。そして、検出系は、光電検出器に達するマークからの回折光のうちの最高次回折光と0次回折光との位相差がほぼ90度になる所定のデフォーカス状態において、光電検出器の出力信号に基づいてマークの位置を検出することを特徴としている。その結果、本発明では、非対称な低段差パターンのマークであっても、ほぼ対称で且つコントラストのほぼ良好なマーク像を得ることができ、ひいてはマークの位置を高精度に位置検出することができる。
本発明の実施形態を、添付図面に基づいて説明する。
第1図は、本発明の実施形態にかかる位置検出装置を備えた露光装置の構成を概略的に示す図である。また、第2A図および第2B図は、本実施形態の位置検出装置により位置検出すべき物体であるウェハに形成された段差パターンからなるウェハマークの構成を模式的に示す図である。
本実施形態では、半導体素子を製造するための露光装置において感光性基板の位置を検出するためのFIA系の位置検出装置に本発明を適用している。なお、第1図では、露光装置の投影光学系PLの光軸AX0に対して平行にZ軸が、Z軸に垂直な平面内において第1図の紙面に平行な方向にX軸が、Z軸に垂直な平面内において第1図の紙面に垂直な方向にY軸がそれぞれ設定されている。
図示の露光装置は、適当な露光光でマスク(投影原版)としてのレチクルRを照明するための露光用照明系ILを備えている。レチクルRはレチクルステージ30上においてXY平面とほぼ平行に支持されており、そのパターン領域PAには転写すべき回路パターンが形成されている。レチクルRを透過した光は、投影光学系PLを介して、感光性基板としてのウェハWに達し、ウェハW上にはレチクルRのパターン像が形成される。
なお、ウェハWは、ウェハホルダ31を介して、Zステージ32上においてXY平面とほぼ平行に支持されている。Zステージ32は、ステージ制御系34によって、投影光学系PLの光軸AX0に沿ってZ方向に駆動されるように構成されている。Zステージ32はさらに、XYステージ33上に支持されている。XYステージ33は、同じくステージ制御系34によって、投影光学系PLの光軸AX0に対して垂直なXY平面内において二次元的に駆動されるように構成されている。
前述したように、露光装置では、投影露光に先立って、レチクルR上のパターン領域PAとウェハW上の各露光領域とを光学的に位置合わせ(アライメント)する必要がある。そこで、位置検出すべき物体であるウェハWには、第2A図および第2B図に模式的に示すような段差パターンからなるウェハマーク(ウェハアライメントマーク)WMが形成されている。ウェハマークWMの位置を検出し、ひいてはウェハWの位置を検出するのに、本実施形態の位置検出装置が使用される。
具体的には、ウェハマークWMとして、X方向に周期性を有する一次元マークとしてのX方向ウェハマークWMXと、Y方向に周期性を有する一次元マークとしてのY方向ウェハマークWMY(不図示)とが、ウェハW上に形成されている。なお、本実施形態では、ウェハマークWMとして、X方向およびY方向にそれぞれ周期性を有する互いに独立した2つの一次元マークを採用しているが、X方向およびY方向に周期性を有する二次元マークを採用することもできる。
本実施形態にかかる位置検出装置は、波長帯域幅の広い照明光(たとえば530nm〜800nm)を供給するための光源1を備えている。光源1として、ハロゲンランプのような光源を使用することができる。光源1から供給された照明光は、リレー光学系(不図示)を介して、光ファイバーのようなライトガイド2の入射端に入射する。ライトガイド2の内部を伝搬してその射出端から射出された照明光は、たとえば円形状の開口部(光透過部)を有する照明開口絞り3を介して制限された後、コンデンサーレンズ4に入射する。
コンデンサーレンズ4を介した照明光は、照明すべき物体であるウェハWの露光面と光学的に共役に配置された照明視野絞り5を介して、照明リレーレンズ6に入射する。照明リレーレンズ6を介した照明光は、ハーフプリズム7を透過した後、第1対物レンズ8に入射する。第1対物レンズ8を介した照明光は、反射プリズム9の反射面で図中下方に(−Z方向に)反射された後、ウェハW上に形成されたウェハマークWMを照明する。
このように、光源1、ライトガイド2、照明開口絞り3、コンデンサーレンズ4、照明視野絞り5、照明リレーレンズ6、ハーフプリズム7、第1対物レンズ8および反射プリズム9は、ウェハマークWMを照明するための照明系を構成している。照明光に対するウェハマークWMからの反射光(回折光を含む)は、反射プリズム9および第1対物レンズ8を介して、ハーフプリズム7に入射する。ハーフプリズム7で図中上方に(+Z方向に)反射された光は、第2対物レンズ10を介して、指標板11上にウェハマークWMの像を形成する。
指標板11を介した光は、リレーレンズ系(12,13)を介して、XY分岐ハーフプリズム14に入射する。そして、XY分岐ハーフプリズム14で反射された光はY方向用CCD15に、XY分岐ハーフプリズム14を透過した光はX方向用CCD16に入射する。なお、リレーレンズ系(12,13)の平行光路中には、結像開口絞り17が配置されている。
このように、反射プリズム9、第1対物レンズ8、ハーフプリズム7、第2対物レンズ10、指標板11、リレーレンズ系(12,13)、結像開口絞り17およびハーフプリズム14は、照明光に対するウェハマークWMからの反射光に基づいてマーク像を形成するための結像光学系を構成している。また、Y方向用CCD15およびX方向用CCD16は、結像光学系を介して形成されたマーク像を光電検出するための光電検出器を構成している。
こうして、Y方向用CCD15およびX方向用CCD16の撮像面には、マーク像が指標板11の指標パターン像とともに形成される。Y方向用CCD15およびX方向用CCD16からの出力信号は、信号処理系18に供給される。さらに、信号処理系18において信号処理(波形処理)により得られたウェハマークWMの位置情報は、主制御系35に供給される。主制御系35は、信号処理系18からのウェハマークWMの位置情報に基づいて、ステージ制御信号をステージ制御系34に出力する。
ステージ制御系34は、ステージ制御信号にしたがってXYステージ33を適宜駆動し、ウェハWのアライメントを行う。なお、主制御系35には、たとえばキーボードのような入力手段36を介して、照明開口絞り3に対する指令や結像開口絞り17に対する指令が供給される。主制御系35は、これらの指令に基づき、駆動系19を介して照明開口絞り3を駆動したり、駆動系20を介して結像開口絞り17を駆動したりする。
第3図は、本実施形態においてウェハマークとして用いられる非対称な低段差パターンの構成例を概略的に示す図である。第3図を参照すると、たとえばシリコンからなるウェハW上にSiO2(酸化シリコン)からなる絶縁層40が形成され、この絶縁層40においてW(タングステン)からなる複数のライン部41が形成されている。ここで、複数のライン部41は、Y方向に沿って細長く直線状に延びた形態を有し、X方向に沿って所定のピッチにしたがって配置されている。また、絶縁層40および複数のライン部41の表面はCMP(Chemical Mechanical Polishing)手法により平坦化され、その表面上にアルミニウム層42が形成されている。
一般に、CMP手法を用いて絶縁層40および複数のライン部41の表面を平坦化すると、ライン部41の表面が非対称に窪んだ形態になり、ライン部41の表面部分に対応するアルミニウム層42の表面部分も非対称に窪んだ形態になる。本実施形態では、この反射層としてのアルミニウム層42をX方向のウェハマークWMXとして用いる。その結果、ウェハマークWMXは、凹部(ライン部41の表面部分に対応するアルミニウム層42の表面部分)および凸部(絶縁層40の表面部分に対応するアルミニウム層42の表面部分)がピッチ方向(X方向)に関してそれぞれ非対称に形成された非対称低段差パターンで構成されることになる。このことは、Y方向のウェハマークWMYについても同様である。
第4A図および第4B図は、対称な段差パターンをベストフォーカス状態で検出したときに得られる信号波形を示す図である。デフォーカス量がΔZ=0のベストフォーカス状態(すなわち結像光学系の物体面に対してウェハマークWMを一致させたフォーカス状態)において、ウェハマークWMからの0次回折光と1次回折光とに基づいて対称な段差パターンを検出すると、対称なパターン像が、ひいては第4A図に示すように対称な信号波形が得られる。実際には、後述するように、たとえばウェハマークWMからの0次回折光〜7次回折光に基づいてパターン検出することが多い。この場合にも、第4B図に示すように対称な信号波形が得られる。
第5A図および第5B図は、第4A図および第4B図と同じパターンを光軸に対して結像開口絞りがずれた状態でガウス像面において検出したときに得られる信号波形を示す図である。一般に、ガウス像面において、ウェハマークWMからの0次回折光と1次回折光とに基づいて低段差パターンを結像開口絞りがずれた状態で検出すると、第5A図に示すように非対称な信号波形が得られる。
実際に、ウェハマークWMからの0次回折光〜7次回折光に基づいてパターン検出する場合、パターン像も非対称に歪むので、第5B図に示すように非対称な信号波形が得られる。その結果、非対称な信号波形に基づいて得られた位置検出結果にはかなりの誤差成分が含まれるようになり、位置検出精度が悪化し易い。同様に、非対称な低段差パターンであっても、非対称な信号波形が得られることになり位置検出精度が悪化し易い。
そこで、本実施形態では、結像開口絞りがずれている場合やウェハマークWMが非対称な低段差パターンの場合、光電検出器(15,16)に達するウェハマークWMからの回折光のうちの最高次回折光と0次回折光との位相差が90度になる所定のデフォーカス状態において、光電検出器(15,16)の出力信号に基づいてウェハマークWMの位置を検出する。以下、本実施形態の作用効果を最も簡潔に示すために、ウェハマークWMからの回折光のうち、0次回折光および1次回折光だけが光電検出器(15,16)に達するように結像開口絞り17が設定されている場合について説明する。
この場合、0次回折光と1次回折光との位相差が90度になる(△W=π/2になる)ように、結像光学系の物体面に対してウェハマークWMを式(5)に示すΔZ0だけデフォーカスさせた所定のデフォーカス状態において位置検出すると、対称なパターン像が、ひいては第6A図に示すように完全に対称な信号波形が得られる。また、得られるパターン像のコントラストも最良になる。
本実施形態の位置検出装置では、1次よりもさらに高次の回折光が光電検出器(15,16)に達するように結像開口絞り17が設定されている場合が一般的である。そこで、本実施形態では、光電検出器(15,16)に達するウェハマークWMからの回折光のうち、たとえば最高次回折光である7次回折光と0次回折光との位相差が90度になる所定のデフォーカス状態において、光電検出器(15,16)の出力信号に基づいてウェハマークWMの位置を検出する。
その結果、本実施形態では、ほぼ対称なパターン像が、ひいては第6B図に示すようにほぼ対称な信号波形が得られる。また、得られるパターン像のコントラストも良好になる。なお、光電検出器(15,16)に達する回折光のうち、最高次回折光に対応する信号波形は、最高周波数を有し、ひいては立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジが最も大きな傾きを有する波形である。このため、最高次回折光と0次回折光との位相差を90度に設定することにより、第6B図に示すようにエッジが最も急峻になる良好な信号波形が得られる。
こうして、本実施形態では、ウェハマークWMが非対称な低段差パターンの場合、結像光学系の物体面に対してウェハマークWMを+ΔZ0だけデフォーカスさせた第1デフォーカス状態、または結像光学系の物体面に対してウェハマークWMを−ΔZ0だけデフォーカスさせた第2デフォーカス状態において、光電検出器(15,16)の出力信号を用いてウェハマークWMの位置を、ひいてはウェハWの位置を検出する。その結果、ウェハマークWMが非対称な低段差パターンであっても、ほぼ対称で且つほぼ最良なパターン像に基づいて、ウェハマークWMを高精度に位置検出することができる。また、結像開口絞り17の光軸ずれが存在したとしても、ほぼ対称で且つほぼ最良なパターン像に基づいて、ウェハマークWMを高精度に位置検出することができる。
あるいは、第1デフォーカス状態および第2デフォーカス状態の双方においてウェハマークWMの位置を検出し、その検出結果の平均値に基づいてその平均化効果によりウェハWの位置をさらに高精度に検出することもできる。一方、ウェハマークWMが非対称な低段差パターンとは構造形態の異なるパターン、たとえば対称な高段差パターンである場合、結像光学系の物体面に対してウェハマークWMをほぼ一致させたフォーカス状態において、光電検出器(15,16)の出力信号を用いてウェハマークWMの位置(ひいてはウェハWの位置)を検出すればよい。
第7図は、第1図の実施形態の変形例にかかる位置検出装置の要部構成を概略的に示す図である。第7図の変形例は、第1図の実施形態と類似の構成を有する。しかしながら、第1図の実施形態では結像光学系の物体面に対してウェハマークWMをデフォーカスさせているが、第7図の変形例では結像光学系の像面に対して光電検出面をデフォーカスさせている点だけが基本的に相違している。以下、第1図の実施形態との相違点に着目して、第7図の変形例を説明する。
第7図を参照すると、変形例では、XY分岐ハーフプリズム14とY方向用CCD15c(第1図のCCD15に対応)との間の光路中に配置された一対のハーフミラー22および23と、第1ハーフミラー22で反射された光が入射するY方向用CCD15aと、第2ハーフミラー23で反射された光が入射するY方向用CCD15bとが付設されている。したがって、XY分岐ハーフプリズム14で反射されたウェハマークWMからの光は第1ハーフミラー22に入射し、第1ハーフミラー22で反射された光はCCD15aへ導かれ、第1ハーフミラー22を透過した光は第2ハーフミラー23へ導かれる。
また、第2ハーフミラー23で反射された光はCCD15bへ導かれ、第2ハーフミラー23を透過した光はCCD15cへ導かれる。CCD15a〜15cの出力信号は、信号処理系18に供給される。ここで、第1光電検出器としてのCCD15aでは、結像光学系の像面に対して光電検出面(撮像面)が+ΔZ0だけデフォーカスして配置されている。また、第2光電検出器としてのCCD15bでは、結像光学系の像面に対して光電検出面が−ΔZ0だけデフォーカスして配置されている。
さらに、第3光電検出器としてのCCD15cでは、第1図のCCD15と同様に、結像光学系の像面と光電検出面とがほぼ一致するように配置されている。また、XY分岐ハーフプリズム14とX方向用CCD16c(第1図のCCD16に対応)との間の光路中にも同様に、一対のハーフミラー24および25が配置されている。そして、XY分岐ハーフプリズム14を透過したウェハマークWMからの光は、+ΔZ0だけデフォーカスして配置された第1光電検出器としてのCCD16a、−ΔZ0だけデフォーカスして配置された第2光電検出器としてのCCD16b、および像面と光電検出面とがほぼ一致するように配置された第3光電検出器としてのCCD16cへ導かれる。
こうして、変形例では、ウェハマークWMが非対称な低段差パターンの場合、結像光学系の像面に対して+ΔZ0だけデフォーカスして配置された第1光電検出器(15a,16a)の出力信号、または結像光学系の像面に対して−ΔZ0だけデフォーカスして配置された第2光電検出器(15b,16b)の出力信号を用いて、ウェハマークWMの位置を、ひいてはウェハWの位置を検出する。その結果、ほぼ対称で且つほぼ最良なパターン像に基づいて、非対称な低段差パターンのウェハマークWMを高精度に位置検出することができる。
あるいは、第1光電検出器(15a,16a)の出力信号および第2光電検出器(15b,16b)の双方を用いて、その平均値に基づいてその平均化効果によりウェハWの位置をさらに高精度に検出することもできる。一方、ウェハマークWMが非対称な低段差パターンとは構造形態の異なるパターン、たとえば対称な高段差パターンである場合、結像光学系の像面と光電検出面とがほぼ一致するように配置された第3光電検出器(15c,16c)の出力信号を用いてウェハマークWMの位置(ひいてはウェハWの位置)を検出すればよい。
第1変形例の場合、第1光電検出器としてのCCD(15a,16a)および第2光電検出器としてのCCD(15b,16b)のデフォーカス量を変化させるには新たな駆動系の導入が必要であり、実際にはデフォーカス量を変化させない形態が望ましい。ここで、式(5)を参照すると、第1光電検出器および第2光電検出器に設定すべきデフォーカス量を規定するパラメータは、光の中心波長λ、ウェハマークWMのピッチP、および回折光の最高次数Nである。ここで、光の中心波長λは装置に固有であり、回折光の最高次数Nも装置に固有であることが多い。したがって、ウェハマークWMのピッチPが一定であれば、新たな駆動系を導入することなく簡素な構成にしたがって第1変形例を実施することができる。
第8図は、本実施形態の位置検出装置においてデフォーカス量ΔZを変化させながら検出したウェハマークの位置座標Xの変化を模式的に示す図である。第8図において、縦軸は検出したウェハマークWMのピッチ方向の位置座標Xである。また、横軸は、結像光学系の光軸方向に沿ったウェハマークWMの位置座標Zであって、デフォーカス量ΔZ=0に対応するフォーカス位置をZ=0に設定している。
第8図を参照すると、Z=0のベストフォーカス状態では、所定のデフォーカス範囲に対するウェハマークWMの検出位置Xの変動がかなり大きい(換言すればZに対するXの変化曲線の傾きがかなり急峻である)。これは、Z=0のベストフォーカス状態においてウェハマークWMの位置を検出する場合、ウェハマークWMの位置座標Zの変動に起因してその検出位置Xにかなりの誤差成分が含まれるようになり、結果として位置検出精度が悪化し易いことを示している。
これに対し、Z=Z1(デフォーカス量ΔZ1に対応)のデフォーカス状態では、所定のデフォーカス範囲(第8図において横に細長い長方形で示す)に対するウェハマークWMの検出位置Xの変動がほぼ最小になることがわかる。したがって、本実施形態の第2変形例では、所定のデフォーカス範囲に対するウェハマークWMの検出位置Xの変動がほぼ最小になる所定のデフォーカス状態において、光電検出器(15,16)の出力信号に基づいてウェハマークWMの位置を検出すれば、検出位置Xに含まれる誤差成分を小さく抑えることができ、ウェハマークWMの位置を高精度に検出することができる。
なお、第2変形例では、たとえばウェハWのほぼ中央に設けられた中央ウェハマークの検出位置Xの変動が所定のデフォーカス範囲に対してほぼ最小になるデフォーカス状態において、光電検出器(15,16)の出力信号に基づいてウェハマークWMの位置を検出すればよい。あるいは、たとえばウェハWに間隔を隔てて二次元的に設けられた複数のウェハマークWMの検出位置Xの変動の平均値が所定のデフォーカス範囲に対してほぼ最小になるデフォーカス状態において、光電検出器(15,16)の出力信号に基づいてウェハマークWMの位置を平均化効果によりさらに高精度に検出することもできる。
さらに、本実施形態と第2変形例とを組み合わせた手法も可能である。具体的には、光電検出器(15,16)に達するウェハマークWMからの回折光のうちの最高次回折光と0次回折光との位相差が90度になる第1デフォーカス量ΔZ0と、所定のデフォーカス範囲に対するウェハマークWMの検出位置Xの変動がほぼ最小になる第2デフォーカス量ΔZ1とに、ウェハマークWMの構造形態(パターン種別、対称性など)に基づく重みをつけてデフォーカス量ΔZ2を決定する。そして、本実施形態と第2変形例との組み合わせ手法により決定されたデフォーカス量ΔZ2に対応する所定のデフォーカス状態において、光電検出器(15,16)の出力信号に基づいてウェハマークWMの位置をさらに高精度に検出することもできる。
なお、上述の実施形態および変形例では、ウェハマークを落射照明しているが、これに限定されることなく、ウェハマークを透過照明する位置検出装置に本発明を適用することもできる。また、上述の実施形態および変形例では、X方向マーク検出とY方向マーク検出とにそれぞれ別のCCDを用いているが、1つのCCDでX方向マーク検出とY方向マーク検出との双方を行ってもよい。なお、上述の実施形態および変形例では、0次光と最高次数の回折光との間に90度の位相差を与える場合を説明しているが、像の非対称性をもたらす主原因となっている次数の回折光と0次光との間に90度の位相差を与えてもよい。すなわち、0次光との位相差が90度となるような位相差を与える回折光の次数は最高次数には限定されない。また、上述の実施形態および変形例では、0次光と所定次数の回折光との間の位相差をデフォーカスで与えているが、所定の回折光にのみ位相差を付与することができる位相板を用いても、同等の効果が得られることはいうまでもない。また、最高次数の回折光を含む特定次数の回折光は、単数のみならず複数の特定次数の回折光も含むものである。
また、上述の実施形態および変形例では、ウェハマークからの光に基づいてその像を形成する結像光学系を備えた位置検出装置に対して本発明を適用しているが、これに限定されることなく、一般的にウェハマークからの光を導く光学系を備えた位置検出装置に対しても本発明を適用することもできる。
さらに、上述の実施形態および変形例では、露光装置における感光性基板の位置検出を行っているが、これに限定されることなく、位置検出すべき一般的な物体に形成された物体マークの位置検出、たとえば特開平6−58730号公報、特開平7−71918号公報、特開平10−122814号公報、特開平10−122820号公報、および特開2000−258119号公報などに開示される重ね合わせ精度測定装置やパターン間寸法測定装置に本発明を適用することもできる。
次に、たとえば本実施形態の位置検出装置を用いて実施することのできる位置検出方法を説明する。第9図は、本実施形態の位置検出方法の工程を概略的に示すフローチャートである。第9図を参照すると、本実施形態は、後述するような所定の条件に基づいて本発明のデフォーカス状態における位置検出を実施するか否かを判断する判断工程S1を有する。たとえば、判断工程S1において、ウェハマークWMの位置検出に要求される精度(以下、「要求精度」という)に基づいてデフォーカス状態における位置検出を実施するか否かを判断する。すなわち、要求精度が所定の基準精度よりも高い場合には、本発明のデフォーカス状態における位置検出を実施するために、たとえば最高次数の回折光と0次回折光との位相差がほぼ90度になるように位相差を付与した所定の光学状態としてのデフォーカス状態を規定するデフォーカス量を算出する算出工程S2へ移行する。一方、要求精度が所定の基準精度以下の場合には、本発明のデフォーカス状態における位置検出を実施することなく、たとえば特開2002−324746号公報に開示された従来技術にしたがってベストフォーカス状態における位置検出を実施するフォーカス検出工程S10へ移行する。
また、判断工程S1において、ウェハマークWMのパターン情報に基づいて本発明のデフォーカス状態における位置検出を実施するか否かを判断する。すなわち、たとえばウェハマークWMのパターンを構成するライン部のピッチ方向の寸法が1μm以下の場合には、従来のフォーカス検出工程S10を適用してもパターンが非対称であれば波形が非対称に歪み易いので、本発明のデフォーカス状態における位置検出を実施するために算出工程S2へ移行する。一方、ウェハマークWMのパターンを構成するライン部のピッチ方向の寸法が1μmを越える場合には、本発明のデフォーカス状態における位置検出を実施することなく、従来のフォーカス検出工程S10へ移行する。また、たとえばライン部のピッチ方向寸法よりもスペース部のピッチ方向寸法の方が実質的に大きいパターン(いわゆる細溝パターン)や、各ライン部が複数のセグメントラインを有するパターン(いわゆるセグメントパターン)の場合にも、従来のフォーカス検出工程S10を適用してもパターンが非対称であれば波形が非対称に歪み易いので、これらのパターン情報に基づいて本発明のデフォーカス状態における位置検出を実施することが好ましい。また、たとえばパターンの材質や膜厚(ひいては屈折率や吸収率)に関するパターン情報に基づいてコントラストの比較的低い光学像しか得られないことが予想される場合にも、従来のフォーカス検出工程S10を適用してもパターンが非対称であれば波形が非対称に歪み易いので、本発明のデフォーカス状態における位置検出を実施することが好ましい。
また、判断工程S1において、ベストフォーカス状態でウェハマークWMから得られた光電検出信号の波形情報に基づいて本発明のデフォーカス状態における位置検出を実施するか否かを判断する。すなわち、たとえばベストフォーカス状態で得られた波形のコントラストが比較的低い場合や波形の対称性が比較的低い場合には、従来のフォーカス検出工程S10を適用してもパターンが非対称であれば波形が非対称に歪み易いので、本発明のデフォーカス状態における位置検出を実施するために算出工程S2へ移行する。一方、ベストフォーカス状態で得られた波形のコントラストが比較的高い場合、あるいは波形の対称性が比較的高い場合には、本発明のデフォーカス状態における位置検出を実施することなく、従来のフォーカス検出工程S10へ移行する。
本発明のデフォーカス状態における位置検出では、算出工程S2において、ウェハマークWMのパターン特性と光学系の光学特性とに基づいて、所要のデフォーカス状態を規定するデフォーカス量ΔZ0を算出する。なお、デフォーカス量ΔZ0の算出に際しては、前述の式(1)を用いることができる。式(1)において、所定の回折光の次数Nを、たとえばパターンの非対称性により回折光の振幅分布が非対称になり易い最高次数と設定することができる。回折光の最高次数Nは、光学系の光学特性としての結像光学系のNA(開口数)、照明σおよび使用光の中心波長λに依存して決定される。ちなみに、照明σが小さい場合には、式(1)中の(N・λ/P)は結像光学系のNAに近い値になる。なお、PはウェハマークWMのピッチであって、ウェハマークWMのパターン特性である。こうして、式(1)にΔW=π/2、最高次数N、使用光の中心波長λ、ウェハマークWMのピッチPを代入することにより、デフォーカス量ΔZ0を算出することができる。
次いで、設定工程S3において、算出したデフォーカス量ΔZ0にしたがってウェハステージ(32,33)を駆動することにより、ウェハWを(ひいてはウェハマークWMを)所要のデフォーカス状態に設定する。さらに、検出工程S4では、設定工程S3において設定されたデフォーカス状態において光電検出器(15,16)の出力信号に基づいて当該ウェハマークWMの位置を検出する。なお、いわゆるEGA(Enhanced Global Alignment)の手法にしたがって、ウェハW上に配置された複数(たとえば6つまたは8つ)のウェハマークWMの位置を検出するために、ウェハステージ(32,33)をXY平面に沿って二次元的に駆動しながら設定工程S3と検出工程S4とを複数回に亘って繰り返すこともできる。こうして、本実施形態の位置検出方法では、最高次回折光と0次回折光との位相差がほぼ90度になる所定のデフォーカス状態において光電検出器(15,16)の出力信号に基づいてウェハマークWMの位置を検出するので、非対称な低段差パターンのマークであってもほぼ対称で且つコントラストのほぼ最良なパターン像を得ることができ、結果として高精度な位置検出を行うことができる。
ところで、ベストフォーカス状態におけるウェハマークWMからの波形に基づく判断工程S1では、たとえばロット先頭ウェハのEGA第1ショット、ロット先頭ウェハのEGA全ショット、ロットのウェハ毎先頭ショット、あるいはロットのウェハ毎EGA全ショットの波形を用いることができる。
産業上の利用の可能性
以上説明したように、本発明の位置検出装置および位置検出方法では、最高次回折光と0次回折光との位相差がほぼ90度になる所定のデフォーカス状態において光電検出器の出力信号に基づいてマークの位置を検出するので、非対称な低段差パターンのマークであってもほぼ対称で且つコントラストのほぼ最良なパターン像を得ることができ、結果として高精度な位置検出を行うことができる。
また、本発明の位置検出装置が搭載された露光装置および本発明の位置検出装置または位置検出方法を用いる露光方法では、高精度な位置検出装置を用いて感光性基板を高精度に位置検出し、ひいてはマスクと感光性基板とを高精度に位置合わせして、良好な投影露光を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の実施形態にかかる位置検出装置を備えた露光装置の構成を概略的に示す図である。
第2A図および第2B図は、本実施形態の位置検出装置により位置検出すべき物体であるウェハに形成された段差パターンからなるウェハマークの構成を模式的に示す図である。
第3図は、本実施形態においてウェハマークとして用いられる非対称な低段差パターンの構成例を概略的に示す図である。
第4A図および第4B図は、対称な段差パターンをベストフォーカス状態で検出したときに得られる信号波形を示す図である。
第5A図および第5B図は、第4図と同じパターンを光軸に対して結像開口絞りがずれた状態でガウス像面において検出したときに得られる信号波形を示す図である。
第6A図は、1次回折光と0次回折光との位相差が90度になるデフォーカス状態において非対称な低段差パターンを検出したときに得られる信号波形を示す図である。
第6B図は、7次回折光と0次回折光との位相差が90度になるデフォーカス状態において非対称な低段差パターンを検出したときに得られる信号波形を示す図である。
第7図は、第1図の実施形態の変形例にかかる位置検出装置の要部構成を概略的に示す図である。
第8図は、本実施形態の位置検出装置においてデフォーカス量ΔZを変化させながら検出したウェハマークの位置座標Xの変化を模式的に示す図である。
第9図は、本実施形態の位置検出方法の工程を概略的に示すフローチャートである。
Claims (22)
- 位置検出すべき物体に設けられたマークからの光を導く光学系と、前記マークからの光を光電検出する光電検出器と、該光電検出器の出力信号に基づいて前記マークの位置を検出する検出系とを備えた位置検出装置において、
前記検出系は、前記光学系の物体面に対して前記マークを、前記光電検出器に達する前記マークからの回折光のうちの特定次数の回折光と0次回折光との位相差が90度となる所定のデフォーカス量だけプラス側にデフォーカスさせた第1デフォーカス状態と、前記光学系の物体面に対して前記マークを前記所定のデフォーカス量だけマイナス側にデフォーカスさせた第2デフォーカス状態と、前記光学系の物体面に対して前記マークをほぼ一致させたフォーカス状態とのうち、前記マークの構造形態に基づいて選択される状態における前記光電検出器の出力信号に基づいて前記マークの位置を検出することを特徴とする位置検出装置。 - 位置検出すべき物体に設けられたマークからの光を導く光学系と、前記マークからの光を光電検出する光電検出器と、該光電検出器の出力信号に基づいて前記マークの位置を検出する検出系とを備えた位置検出装置において、
前記光電検出器は、前記光学系の像面に対して光電検出面が、当該光電検出器に達する前記マークからの回折光のうちの特定次数の回折光と0次回折光との位相差が90度となる所定のデフォーカス量だけプラス側にデフォーカスして配置された第1光電検出器と、前記光学系の像面に対して光電検出面が前記所定のデフォーカス量だけマイナス側にデフォーカスして配置された第2光電検出器との少なくとも一方と、前記光学系の像面と光電検出面とがほぼ一致するように配置された第3光電検出器とを有することを特徴とする位置検出装置。 - 請求項2に記載の位置検出装置において、
前記検出系は、前記第1光電検出器、前記第2光電検出器および前記第3光電検出器のうち、前記マークの構造形態に基づいて選択された光電検出器の出力信号を用いて前記マークの位置を検出することを特徴とする位置検出装置。 - 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の位置検出装置において、
前記特定次数の回折光は、前記光電検出器に達する前記マークからの回折光のうちの最高次数の回折光、1次回折光、または前記光学系によって形成される像の非対称性をもたらす主原因となる次数の回折光であることを特徴とする位置検出装置。 - 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の位置検出装置において、
前記マークからの光の中心波長をλとし、前記マークのピッチをPとし、前記特定次数の回折光の次数をNとすると、前記所定のデフォーカス量の大きさΔZ 0 は、
ΔZ 0 ≒(1/λ)×(P/N) 2 ×1/2
で表されることを特徴とする位置検出装置。 - 位置検出すべき物体に設けられたマークからの光を導く光学系と、前記マークからの光を光電検出する光電検出器と、該光電検出器の出力信号に基づいて前記マークの位置を検出する検出系とを備えた位置検出装置において、
前記検出系は、所定のデフォーカス範囲に対する前記マークの検出位置の変動がほぼ最小になる所定のデフォーカス状態において、前記光電検出器の出力信号に基づいて前記マークの位置を検出することを特徴とする位置検出装置。 - 請求項6に記載の位置検出装置において、
前記所定のデフォーカス状態は、前記物体のほぼ中央に設けられた中央マークの検出位置の変動が前記所定のデフォーカス範囲に対してほぼ最小になるデフォーカス状態であることを特徴とする位置検出装置。 - 請求項6に記載の位置検出装置において、
前記所定のデフォーカス状態は、前記物体に間隔を隔てて設けられた複数のマークの検出位置の変動の平均値が前記所定のデフォーカス範囲に対してほぼ最小になるデフォーカス状態であることを特徴とする位置検出装置。 - 位置検出すべき物体に設けられたマークからの光を導く光学系と、前記マー クからの光を光電検出する光電検出器と、該光電検出器の出力信号に基づいて前記マークの位置を検出する検出系とを備えた位置検出装置において、
前記検出系は、前記光電検出器に達する前記マークからの回折光のうちの最高次回折光と0次回折光との位相差がほぼ90度になる第1デフォーカス量と、所定のデフォーカス範囲に対する前記マークの検出位置の変動がほぼ最小になる第2デフォーカス量とに前記マークの構造形態に基づく重みをつけて決定された所定のデフォーカス量に対応する所定のデフォーカス状態において、前記光電検出器の出力信号を用いて前記マークの位置を検出することを特徴とする位置検出装置。 - 位置検出すべき物体に設けられたマークから光学系を介して導かれた光を光電検出器で光電検出し、前記光電検出器の出力信号に基づいて前記マークの位置を検出する位置検出方法において、
前記光学系の物体面に対して前記マークを、前記光電検出器に達する前記マークからの回折光のうちの特定次数の回折光と0次回折光との位相差が90度となる所定のデフォーカス量だけプラス側にデフォーカスさせた第1デフォーカス状態と、前記光学系の物体面に対して前記マークを前記所定のデフォーカス量だけマイナス側にデフォーカスさせた第2デフォーカス状態と、前記光学系の物体面に対して前記マークをほぼ一致させたフォーカス状態とのうち、前記マークの構造形態に基づいて選択される状態における前記光電検出器の出力信号を用いて前記マークの位置を検出する工程を含むことを特徴とする位置検出方法。 - 位置検出すべき物体に設けられたマークから光学系を介して導かれた光を光電検出器で光電検出し、前記光電検出器の出力信号に基づいて前記マークの位置を検出する位置検出方法において、
前記光電検出器のうちの第1光電検出器を前記光学系の像面に対して、当該光電検出器に達する前記マークからの回折光のうちの特定次数の回折光と0次回折光との位相差が90度となる所定のデフォーカス量だけプラス側にデフォーカスして配置する工程と、前記光電検出器のうちの第2光電検出器を前記光学系の像面に対して前記所定のデフォーカス量だけマイナス側にデフォーカスして配置する工程との少なくとも一方と、前記光電検出器のうちの第3光電検出器を前記光学系の像面と光電検出面とがほぼ一致するように配置する工程と、を含むことを特徴とする位置検出方法。 - 請求項11に記載の位置検出方法において、
前記第1光電検出器、前記第2光電検出器および前記第3光電検出器のうち、前記マークの構造形態に基づいて選択される光電検出器の出力信号を用いて前記マークの位置を検出する工程を含むことを特徴とする位置検出方法。 - 請求項10乃至12のいずれか1項に記載の位置検出方法において、
前記特定次数の回折光は、前記光電検出器に達する前記マークからの回折光のうちの最高次数の回折光、1次回折光、または前記光学系によって形成される像の非対称性をもたらす主原因となる次数の回折光であることを特徴とする位置検出方法。 - 請求項10乃至13のいずれか1項に記載の位置検出方法において、
前記マークからの光の中心波長をλとし、前記マークのピッチをPとし、前記特定次数の回折光の次数をNとすると、前記所定のデフォーカス量の大きさΔZ 0 は、
ΔZ 0 ≒(1/λ)×(P/N) 2 ×1/2
で表されることを特徴とする位置検出方法。 - 位置検出すべき物体に設けられたマークから光学系を介して導かれた光を光電検出器で光電検出し、前記光電検出器の出力信号に基づいて前記マークの位置を検出する位置検出方法において、
所定のデフォーカス範囲に対する前記マークの検出位置の変動がほぼ最小になる所定のデフォーカス状態において、前記光電検出器の出力信号に基づいて前記マークの位置を検出する工程を含むことを特徴とする位置検出方法。 - 位置検出すべき物体に設けられたマークから光学系を介して導かれた光を光電検出器で光電検出し、前記光電検出器の出力信号に基づいて前記マークの位置を検出 する位置検出方法において、
前記光電検出器に達する前記マークからの回折光のうちの最高次回折光と0次回折光との位相差がほぼ90度になる第1デフォーカス量と、所定のデフォーカス範囲に対する前記マークの検出位置の変動がほぼ最小になる第2デフォーカス量とに前記マークの構造形態に基づく重みをつけて決定された所定のデフォーカス量に対応する所定のデフォーカス状態において、前記光電検出器の出力信号を用いて前記マークの位置を検出する工程を含むことを特徴とする位置検出方法。 - 請求項10乃至16のいずれか1項に記載の位置検出方法において、
所定の条件に基づいて、前記マークの位置の検出をデフォーカス状態で実施するか否かを判断する判断工程をさらに含むことを特徴とする位置検出方法。 - 請求項17に記載の位置検出方法において、
前記所定の条件は、前記マークの位置検出に要求される精度であることを特徴とする位置検出方法。 - 請求項17に記載の位置検出方法において、
前記所定の条件は、前記マークのパターン情報であることを特徴とする位置検出方法。 - 請求項17に記載の位置検出方法において、
前記所定の条件は、ベストフォーカス状態において前記マークから得られた前記出力信号の波形情報であることを特徴とする位置検出方法。 - 所定のパターンが形成されたマスクを照明するための照明系と、前記マスクのパターン像を感光性基板上に形成するための投影光学系と、前記感光性基板の位置を検出するための請求項1乃至9のいずれか1項に記載の位置検出装置とを備えていることを特徴とする露光装置。
- 所定のパターンが形成されたマスクを照明し、照明された前記マスクのパターン像を感光性基板上に露光する露光方法において、
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の位置検出装置または請求項10乃至20のいずれか1項に記載の位置検出方法を用いて前記感光性基板の位置を検出することを特徴とする露光方法。
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