JP4258227B2 - フェニルアラニン誘導体の製法およびその合成中間体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規フェニルアラニン誘導体の新規製法に関する。また本発明は当該製法の中間体として有用な新規化合物に関する。
【0002】
【従来の技術】
インテグリンは、免疫グロブリンスーパーファミリーやシアロムチンファミリーなどに分類される接着分子と結合することにより、生体内の種々の機能に関与している。インテグリンはアルファ(α)およびベータ(β)と称されるサブユニットから構成され、これまでのところ16個のαサブユニットと8個のβサブユニットが同定されている。α4サブユニットはβ1サブユニットまたはβ7サブユニットと結合して、α4β1インテグリンおよびα4β7インテグリン(以下、両者を総称してα4インテグリンと称する)を形成する。
【0003】
α4インテグリンは粘膜アドレシン細胞接着分子−1(MAdCAM−1)、血管細胞接着分子−1(VCAM−1)、フィブロネクチン上の結合セグメント−1(CS-1)と接着し、様々な疾患に関与していることがわかっている。また、α4インテグリンの接着を抗α4インテグリン抗体で阻害することにより、アレルギー気管支炎、炎症性腸疾患、リュウマチ関節炎、実験的自己免疫型脳脊髄炎等の疾患における症状を抑制することが知られている。
【0004】
また、α4インテグリンの接着を阻害する化合物も知られており、α4インテグリン介在細胞接着に基づく疾患に有用であるとされている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。しかし、これら文献にはビフェニルアラニン骨格の4’位に低級アルコキシC1-2アルキル基を有する化合物およびそのような化合物を製造する方法は記載されていない。
【0005】
【特許文献1】
国際公開第 01/12183号パンフレット
【特許文献2】
国際公開第 99/36393号パンフレット
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、優れたα4インテグリン介在細胞接着阻害作用を有する、一般式(I)
【0007】
【化16】
【0008】
(ただし、X1はハロゲン原子、X2はハロゲン原子、Qは−CH2−または−(CH2)2−で示される基、Yは低級アルキル基を表す。)
で示される新規フェニルアラニン誘導体またはその薬理的に許容しうる塩の新規製法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、
(1)一般式(VI)
【0010】
【化17】
【0011】
(ただし、Zは脱離基、R1NHは保護されたアミノ基、CO2Rは保護されたカルボキシル基を表す。)
で示される化合物と、一般式(V)
【0012】
【化18】
【0013】
(ただし、記号は前記と同一意味を有する。)
で示される化合物をカップリングした後、アミノ基の保護基を除去し、さらに所望により塩に変換して、一般式(IV)
【0014】
【化19】
【0015】
(ただし、記号は前記と同一意味を有する。)
で示される化合物またはその塩を製し、
(2)次いで化合物(IV)またはその塩と一般式(III)
【0016】
【化20】
【0017】
(ただし、記号は前記と同一意味を有する。)
で示される化合物、その塩またはその反応性誘導体を縮合させ、一般式(II)
【0018】
【化21】
【0019】
(ただし、記号は前記と同一意味を有する。)
で示される化合物を製し、
(3)さらに化合物(II)におけるカルボキシル基の保護基を除去し、さらに所望により薬理的に許容しうる塩に変換することによる、一般式(I)
【0020】
【化22】
【0021】
(ただし、記号は前記と同一意味を有する。)
で示される化合物またはその薬理的に許容しうる塩を製造する方法に関する。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の製法についてさらに詳細に説明する。
【0023】
なお、本発明の製造方法において、反応に用いる化合物は反応に支障のない限り、たとえば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩などの無機酸塩、たとえば酢酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩などの有機酸塩、たとえばナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩などの金属塩、たとえばエチルアミン塩、グアニジン塩、アンモニウム塩、ヒドラジン塩、キニーネ塩、シンコニン塩などの塩基との塩などの塩の形で用いられてもよい。反応に用いる化合物が遊離体で得られた場合は常法によりその塩に変換し、又反応に用いる化合物が塩で得られた場合はその塩を常法により遊離体に変換することができる。
1.工程(1)
化合物(VI)と化合物(V)のカップリングは、触媒と塩基の存在下、適当な溶媒中で実施する。
【0024】
化合物(VI)において、保護されたアミノ基における保護基は、通常の条件で容易に除去できるアミノ基の保護基から選択され、例えば、置換または非置換アリール低級アルコキシカルボニル基(例えばベンジルオキシカルボニル基、p−ニトロベンジルオキシカルボニル基)、低級アルコキシカルボニル基(例えば、t−ブトキシカルボニル基)、9−フルオレニルメトキシカルボニル基等から選択される基を好適に用いることができる。なかでも、低級アルコキシカルボニル基が好ましく、t−ブトキシカルボニル基が最も好ましい。
【0025】
また化合物(VI)において、保護されたカルボキシル基としては、エステル化されたカルボキシル基を挙げることができる。その具体例として、例えば、低級アルキルエステル化、低級アルケニルエステル化、低級アルキニルエステル化、アリール低級アルキルエステル化(例えば、ベンジルエステル化)、またはアリールエステル化(例えば、フェニルエステル化)されたカルボキシル基を挙げることができ、CO2Rとして低級アルコキシカルボニル基、低級アルケニルオキシカルボニル基、低級アルキニルオキシカルボニル基、アリール低級アルコキシカルボニル基(例えば、ベンジルオキシカルボニル基)、またはアリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基)を好適に用いることができる。なかでも低級アルコキシカルボニル基が好ましく、エトキシカルボニル基またはメトキシカルボニル基が最も好ましい。
【0026】
脱離基としては、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルカンスルホニルオキシ基(例えば、メタンスルホニルオキシ基)、ハロゲノアルカンスルホニルオキシ基(例えば、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基)、アリールスルホニルオキシ基(例えば、p−トルエンスルホニルオキシ基)を用いることができる。なかでも臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、またはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基などのハロゲノアルカンスルホニルオキシ基が好ましく、臭素原子、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基が最も好ましい。
【0027】
カップリングは、鈴木カップリング反応の条件に従って実施することができ、例えば(a)シンセティック・コミュニケーションズ(Synth. Commun.)、11巻、513頁、1981年、(b)ピュア・アンド・アプライド・ケミストリー(Pure and Appl. Chem.)、57巻、1749頁、1985年、(c) ケミカル・レビューズ(Chem. Rev.)、95巻、2457頁、1995年、(d)ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(J. Org. Chem.)、57巻、379頁、1992年、(e)アクタ・ケミカ・スカンジナビカ(Acta Chemica Scandinavica)、47巻、221頁、1993年、(f)ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(J. Org. Chem.)、60巻、1060頁、1995年、(g)オーガニック・レターズ、3巻、3049頁、2001年などを参照して実施することができる。
【0028】
触媒としては、鈴木カップリング反応に使用される触媒(例えば、パラジウム触媒、ニッケル触媒)を使用することができ、パラジウム触媒(酢酸パラジウム、塩化パラジウム、塩化ビストリフェニルホスフィンパラジウムなどの2価のパラジウム触媒、およびテトラキストリフェニルホスフィンパラジウムなどの0価のパラジウム触媒)を好適に用いることができる。パラジウム触媒は触媒量、具体的には0.01〜0.1モル当量、好ましくは0.04〜0.06モル当量使用する。
【0029】
またその際、酢酸パラジウム、塩化パラジウムなどの配位子のない2価のパラジウム触媒を使用する場合には、トリトリルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィンなどのホスフィン類、または、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリ(n−ブチル)ホスファイトなどのホスファイト類を0.03〜0.5モル当量、好ましくは0.1〜0.3モル当量添加するとより好適に反応が進行する。
【0030】
上記パラジウム触媒の中でも、安定な酢酸パラジウムや塩化パラジウムが工業的に好ましく、酢酸パラジウムがより好ましい。
【0031】
塩基としては、慣用の塩基を用いることができ、例えば、炭酸アルカリ金属(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなど)、炭酸水素アルカリ金属(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなど)、水酸化アルカリ金属(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)などの無機塩基のほか、アルキルアミン類(例えば、ジイソプロピルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなど)、ピリジン類(例えば、ピリジン、ジメチルアミノピリジンなど)、環状アミン類(例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、モルホリン、4−メチルモルホリンなど)などの有機塩基を好適に用いることができる。なかでも、アルキルアミン類(とりわけジイソプロピルアミン)や環状アミン類(とりわけモルホリン)が好ましい。これら塩基は1.0〜3.0モル当量、好ましくは1.5〜2モル当量使用するのが良い。
【0032】
溶媒としては、カップリング反応を阻害しないものであればいずれのものでも良く、有機溶媒、水、またはこれらの混合溶媒を使用することができる。有機溶媒としてはアミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン)、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン)、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジオキサン)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール)、またはこれらの混合物を好適に使用することができる。なかでもアミド類、とりわけN-メチルピロリドンが好ましい。
【0033】
本反応は、冷却下から加熱下、好ましくは−20℃〜180℃、より好ましくは室温から120℃、さらに好ましくは50℃から100℃の間で実施する。
【0034】
アミノ基の保護基の除去は、除かれる保護基の種類により選択され、例えば、(1)触媒(例えば、パラジウム炭素)を水素雰囲気下で用いた接触還元、(2)塩化水素、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸などの酸処理、(3)ピペリジンなどのアミン処理、(4)ウィルキンソン触媒などの触媒処理、等から選択される方法によって、冷却下から加熱下の温度範囲で、適当な溶媒中〔たとえば、ハロゲン化炭化水素類(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム)、エーテル類(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン)、アルコール類(メタノール、エタノール)、アセトニトリルなどの有機溶媒、もしくは水、またはこれら溶媒の混合溶媒中〕で、あるいは無溶媒で行うことができる。例えば、t−ブトキシカルボニル基を保護基として用いた場合は酸処理にてこれを除去することができ、具体的には塩酸やp−トルエンスルホン酸を用いて、適当な溶媒中(例えば酢酸エチルなどのエステル類や、エタノールなどのアルコール類中)で、室温〜加熱下(好ましくは50℃〜溶媒の沸点)で処理して保護基を除去する。
2.工程(2)
化合物(III)またはその塩と化合物(IV)またはその塩との縮合反応は、縮合剤を用い、塩基の存在下または非存在下で、適当な溶媒中または無溶媒で実施することができる。
【0035】
縮合剤は、ペプチド合成に慣用の縮合剤から選択され、そのような縮合剤としては例えば、塩化ビス(2−オキソ−3−オキサゾリジニル)ホスフィン(BOP−Cl)、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP試薬)、ジシクロヘキシルカルボジイミド、塩酸1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド(EDC)またはカルボニルジイミダゾ−ルを挙げることができる。縮合剤を使用するに際しては、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)のような活性化剤を併用することが好ましい。
【0036】
塩基としては、慣用の塩基を用いることができ、例えば、アルキルアミン類(例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなど)、ピリジン類(例えば、ピリジン、ジメチルアミノピリジンなど)、環状アミン類(例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、4−メチルモルホリンなど)などの有機塩基、または水酸化アルカリ金属(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、炭酸アルカリ金属(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなど)、炭酸水素アルカリ金属(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなど)などの無機塩基を用いることができる。
【0037】
溶媒としては、縮合反応に影響を与えないものであればいずれのものでも使用することができ、例えば、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル)、ハロゲン化炭化水素類(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、四塩化炭素など)、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエンなど)、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトンなど)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン)、またはこれらの混合溶媒が好適に用いられる。
【0038】
反応は冷却下から加熱下、例えば、−50℃から50℃、好ましくは0℃から室温下で行われる。
【0039】
化合物(III)の反応性誘導体と化合物(II)またはその塩との縮合反応は塩基の存在下または非存在下で、適当な溶媒中または無溶媒で行われる。
【0040】
反応性誘導体としては、酸ハライド(酸塩化物など)、反応性エステル(例えば、p−ニトロフェノールとのエステルなど)、他のカルボン酸との混合酸無水物(例えば、イソ酪酸との混合酸無水物など)を例として挙げることができる。
【0041】
塩基としては、慣用の塩基を用いることができ、例えば、アルキルアミン類(例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなど)、ピリジン類(例えば、ピリジン、ジメチルアミノピリジンなど)、環状アミン類(例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、4−メチルモルホリンなど)などの有機塩基、または水酸化アルカリ金属(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、炭酸アルカリ金属(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなど)、炭酸水素アルカリ金属(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなど)などの無機塩基を用いることができる。
【0042】
溶媒としては、縮合反応に影響を与えないものであればいずれのものでも使用することができ、例えば、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチルなど)、ハロゲン化炭化水素類(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、四塩化炭素など)、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエンなど)、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトンなど)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなど)、水、またはこれらの混合溶媒が好適に用いられる。
【0043】
上記条件のなかでも、本縮合反応はいわゆるショッテン・バウマン反応の条件に準じて実施することがより好ましく、化合物(III)の酸ハライド(好ましくは酸塩化物)を用いて、炭酸水素アルカリ金属(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなど)などの無機塩基の存在下、水と適当な有機溶媒(例えば酢酸エチル、トルエン)の二層系で実施するのが好ましい。
【0044】
反応は冷却下から加熱下、例えば、−50℃から50℃、好ましくは0℃から室温下で行われる。
3.工程(3)
化合物(II)のカルボキシル基の保護基の除去は、除かれる保護基の種類により選択され、例えば、接触還元、酸処理、加水分解等の常法に従って実施することができる。特に保護されたカルボキシル基がエステル化されたカルボキシル基である場合、加水分解によりカルボキシル基へ変換することができる。
【0045】
加水分解は除去されるエステル基の種類により適宜選択されるが、酸または塩基を用い、適当な溶媒中または無溶媒で実施される。酸としては、塩酸、硝酸、硫酸などの無機酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸を用いることができる。塩基としては水酸化アルカリ金属(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム)、炭酸アルカリ金属(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム)、炭酸水素アルカリ金属(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム)、水酸化アルカリ土類金属(例えば、水酸化カルシウム)などの無機塩基、アルカリ金属アルコキシド(例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド)、アルカリ土類金属アルコキシド(例えば、カルシウムメトキシド、カルシウムエトキシド)などの有機塩基類が挙げられる。水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどの水酸化アルカリ金属が好ましい。溶媒としては加水分解に悪影響を与えないものであればいずれのものでもよく、水、有機溶媒、またはそれらの混合溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、例えば、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール)、アセトニトリル、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)が挙げられる。中でもメタノール、エタノールなどのアルコール類またはジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類が好ましい。
【0046】
本反応は、冷却下から加熱下、具体的には氷冷下から溶媒の沸点まで、好ましくは室温から50℃で実施する。
【0047】
化合物(I)の薬理的に許容し得る塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩の如き無機塩基塩、アンモニウム塩、メチルアンモニウム塩エチルアンモニウム塩等の低級アルキルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、リジンとの塩等の塩基性アミノ酸との塩の如き有機塩基塩等が挙げられ、これら塩への変換は常法に従って実施することができる。
【0048】
本発明の製法を実施するにあたり、好ましい化合物としてはX1が塩素原子またはフッ素原子、X2が塩素原子またはフッ素原子、Yが炭素数1〜4の低級アルキル基、CO2Rとしては低級アルコキシカルボニル基である化合物があげられる。
【0049】
本発明の製法を実施するにあたり、より好ましい化合物としてはQが-CH2-であり、Yがメチル基、エチル基またはn−プロピル基、CO2Rとしてはメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基またはt−ブトキシカルボニル基である化合物があげられる。
【0050】
また、本発明の製法を実施するにあたりさらに好ましい化合物としてはX1がフッ素原子、Yがメチル基またはエチル基、CO2Rとしてはメトキシカルボニル基またはエトキシカルボニル基である化合物があげられる。
【0051】
本発明の製法を実施するにあたり、とりわけ好ましい化合物としてはX1がフッ素原子、X2がフッ素原子、Yがエチル基、CO2Rとしてはエトキシカルボニル基である化合物、または、X1がフッ素原子、X2が塩素原子、Yがエチル基、CO2Rとしてはメトキシカルボニル基またはエトキシカルボニル基である化合物があげられる。
【0052】
本発明の製法により、最適に製造される化合物は、(αS)−α−[(2,6−ジフルオロベンゾイル)アミノ]−4'−エトキシメチル−2',6'−ジメトキシ(1,1'−ビフェニル)−4−プロピオン酸である。
【0053】
本発明にかかる製法の目的物である化合物(I)又はその薬理的に許容し得る塩は新規化合物である。化合物(I)又はその薬理的に許容し得る塩は、優れたα4インテグリン介在細胞接着阻害作用を有するとともに、代謝安定性の改善、血漿タンパク結合率の低下、溶解性の改善などの特徴を有し、優れた経口活性を示す。従って、化合物(I)はリューマチ関節炎、アトピー性皮膚炎、乾癬、喘息、気管支炎、多発性硬化症、炎症性腸疾患などのα4インテグリン介在細胞接着に基づく疾患の治療に有用な化合物である。
【0054】
また、一般式(IV)
【0055】
【化23】
【0056】
(ただし、記号は前記と同一意味を有する。)
で示される化合物またはその塩は新規化合物であり、本発明の合成中間体として有用である。特に、Qが−CH2−で示される基、Yがエチル基、CO2Rがエトキシカルボニル基である化合物、すなわちエチル α−アミノ−4'−エトキシメチル−2',6'−ジメトキシ(1,1'−ビフェニル)−4−プロピオン酸またはその塩、とりわけそのS体は本発明の製法に有用である。
【0057】
また一般式(V)
【0058】
【化24】
【0059】
(ただし、記号は前記と同一意味を有する。)
で示される原料化合物も新規化合物であり、本発明の反応に有用な化合物である。とりわけ、Qが−CH2−で示される基、Yがエチル基である化合物は本発明に有用である。
化合物(V)は以下の方法により製造することができる。
【0060】
まず、一般式(VII)
【0061】
【化25】
【0062】
(ただし、記号は前記と同一意味を有する。)
で示される化合物、または一般式(VIII)
【0063】
【化26】
【0064】
(ただし、記号は前記と同一意味を有する。)
で示される化合物の水酸基をアルキル化する。次いで得られた化合物をリチオ化した後、ホウ酸トリ低級アルキルと反応させる。さらに生成した化合物を加水分解することにより、化合物(V)を製することができる。
アルキル化は、アルキル化剤を用いて、適当な溶媒中、塩基の存在下に実施することができる。アルキル化剤としては、例えば、硫酸ジメチル、硫酸ジエチルなどの硫酸ジ低級アルキル、またはヨウ化メチル、ヨウ化エチルなどのハロゲン化低級アルキルをあげることができる。塩基としては、例えば、水酸化アルカリ金属(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、炭酸アルカリ金属(炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなど)、炭酸水素アルカリ金属(炭酸水素ナトリウムなど)等の無機塩基又はアルキルアミン類(トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなど)、ピリジン類(ピリジン、ジメチルアミノピリジンなど)等の有機塩基をあげることができる。溶媒としては反応に影響を与えない溶媒であればいずれのものも用いることができるが、たとえば水、アセトニトリル、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミドなど)、エーテル類(テトラヒドロフランなど)、芳香族炭化水素類(トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素類(塩化メチレンなど)、あるいはこれらの混合溶媒を用いることができる。本反応は、0〜100℃、好ましくは室温〜70℃程度の温度で、適当な溶媒中に実施することができる。本反応には、塩化ベンジルトリエチルアンモニウムの如き相間移動触媒を触媒量添加するとさらに好適に反応が進行する。
【0065】
リチオ化およびホウ酸トリ低級アルキルとの反応は、適当な溶媒中、アルキルリチウムでリチオ化した後、ホウ酸トリ低級アルキルと反応させることにより実施することができる。アルキルリチウムとしては、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、t−ブチルリチウムなどを好適に用いることができる。ホウ酸トリ低級アルキルとしては例えば、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチルなどを好適に用いることができる。溶媒としては、反応に悪影響を与えるものでなければいずれのものでも用いることができるが、例えば、エーテル類 (例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン)等の有機溶媒またはその混合溶媒が好ましい。本反応は、冷却下(例えば、−100℃)から室温の間で実施することができる。加水分解は、適当な溶媒中、酸で加水分解することにより実施することができる。酸としては、例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸などの有機酸、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸を用いることができる。溶媒としては、反応に悪影響を与えるものでなければいずれのものでも用いることができるが、例えば、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなど)の有機溶媒またはその混合溶媒を用いることができる。
【0066】
また、(αS)−α−[[(1,1-ジメチルエトキシ)カルボニル]アミノ]−4−ヒドロキシベンゼンプロピオン酸エチルは、例えば、ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(J. Med. Chem.)、 第33巻、 1620ページ(1990年)に記載されており、(αS)−α−[[(1,1-ジメチルエトキシ)カルボニル]アミノ]−4−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ベンゼンプロピオン酸エチルは、例えば、特開平7−157472号公報に記載されている。さらに4−ブロモ−3,5−ジメトキシベンジルアルコールは、例えば、ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(J. Med. Chem.)、 第20巻、 299ページ(1977年)に記載されており、また、以下の工程により製することもできる。
【0067】
【化27】
【0068】
すなわち、まず、4−ブロモ−3,5−ジヒドロキシ安息香酸をメチル化して4−ブロモ−3,5−ジメトキシ安息香酸メチルを製し、次いで同化合物を還元することにより4−ブロモ−3,5−ジメトキシベンジルアルコールを製する。メチル化は適当な溶媒(例えば、酢酸エチル)中、塩基(例えば、炭酸カリウム)の存在下、硫酸ジメチルと反応させることにより実施することができる。還元は適当な溶媒(例えば、テトラヒドロフラン)中、還元剤(例えば、水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カルシウム)と反応させることにより実施することができる。
【0069】
本明細書において、低級アルキルとは、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル等、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキルを意味し、好ましくは炭素数1〜4のものを意味する。低級アルコキシカルボニルとは、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル等、炭素数2〜7の直鎖または分岐鎖のアルコキシカルボニルを意味し、好ましくは炭素数2〜5のものを意味する。低級アルケニルとは、例えば、ビニル、アリル、イソプロペニル等、炭素数2〜7の直鎖または分岐鎖のアルケニルを意味し、好ましくは炭素数2〜4のものを意味する。低級アルケニルオキシカルボニルとは、例えば、ビニルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、イソプロペニルオキシカルボニル等、炭素数2〜7の直鎖または分岐鎖のアルケニルオキシカルボニルを意味し、好ましくは炭素数2〜4のものを意味する。低級アルキニルとは、エチニル、2−プロピニル等、炭素数2〜7の直鎖または分岐鎖のアルキニルを意味し、好ましくは炭素数2〜4のものを意味する。低級アルキニルオキシカルボニルとは、エチニルオキシカルボニル、2−プロピニルオキシカルボニル等、炭素数2〜7の直鎖または分岐鎖のアルキニルオキシカルボニルを意味し、好ましくは炭素数2〜4のものを意味する。また、t−ブトキシは1,1-ジメチルエトキシを意味する。
【0070】
【実施例】
以下、本発明の製法を実施例により説明する。なお、実施例に記載されている化合物は、命名法の違いにより、異なる化合物名で称されることがある。例として次のものを挙げることができる。
(αS)-α-アミノ-4’-エトキシメチル-2’,6’-ジメトキシ(1,1’-ビフェニル)-4-プロピオン酸エチル
別名:(2S)−2−アミノ−3−[4−(4−エトキシメチル−2,6−ジメトキシフェニル)フェニル]プロパン酸エチル
(αS)-α-[[(1,1-ジメチルエトキシ)カルボニル]アミノ]-4’-エトキシメチル-2’,6’-ジメトキシ(1,1'-ビフェニル)-4-プロピオン酸エチル
別名1:(2S)−2−[(t−ブトキシカルボニル)アミノ]−3−[4−(4−エトキシメチル−2,6−ジメトキシフェニル)フェニル]プロパン酸エチル別名2:N−(t−ブトキシカルボニル)−4−(4−エトキシメチル−2,6−ジメトキシフェニル)−L−フェニルアラニン エチルエステル
(αS)-α−[(2,6−ジフルオロベンゾイル)アミノ]−4'−エトキシメチル−2',6'−ジメトキシ(1,1'−ビフェニル)−4−プロピオン酸エチル別名1:(2S)−2−[(2,6−ジフルオロベンゾイル)アミノ]−3−[4−(4−エトキシメチル−2,6−ジメトキシフェニル)フェニル]プロパン酸エチル
別名2:N−(2,6−ジフルオロベンゾイル)−4−(4−エトキシメチル−2,6−ジメトキシフェニル)−L−フェニルアラニン エチルエステル
(αS)-α−[(2,6−ジフルオロベンゾイル)アミノ]−4'−エトキシメチル−2',6'−ジメトキシ(1,1'−ビフェニル)−4−プロピオン酸
別名1:(2S)−2−[(2,6−ジフルオロベンゾイル)アミノ]−3−[4−(4−エトキシメチル−2,6−ジメトキシフェニル)フェニル]プロパン酸別名2:N−(2,6−ジフルオロベンゾイル)−4−(4−エトキシメチル−2,6−ジメトキシフェニル)−L−フェニルアラニン
実施例1
(1)窒素気流下、(αS)−α−[[(1,1-ジメチルエトキシ)カルボニル]アミノ]−4−ヒドロキシベンゼンプロピオン酸エチル(170.0g)の塩化メチレン(1.7L)溶液に10℃以下でピリジン(130.3g)、無水トリフルオロメタンスルホン酸(170.4g)を滴下した。同温度にて1時間撹拌した後、水(850ml)を滴下し、同温度で2時間撹拌した。有機層を10%クエン酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去して、(αS)−α−[[(1,1-ジメチルエトキシ)カルボニル]アミノ]−4−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ベンゼンプロピオン酸エチル(242.5g)が油状物として得られた。MS (m/z) : 441 (M+)。
【0071】
(2)窒素気流下、(αS)−α−[[(1,1-ジメチルエトキシ)カルボニル]アミノ]−4−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ベンゼンプロピオン酸エチル(66.2g)、4−エトキシメチル−2,6−ジメトキシフェニルホウ酸(54.0g)、トリフェニルホスフィン(9.83g)およびN-メチルピロリドン(330ml)の混合物に、酢酸パラジウム(1.68g)およびジイソプロピルアミン(24.9g)を加え、90℃に加熱した。同温度で1時間撹拌後、冷却し、トルエンと水を加えた。有機層を10%クエン酸水溶液、飽和食塩水にて洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去して(αS)-α-[[(1,1-ジメチルエトキシ)カルボニル]アミノ]-4’-エトキシメチル-2’,6’-ジメトキシ(1,1'-ビフェニル)-4-プロピオン酸エチル(90.1g)が油状物として得られた。
本品をエタノール(330ml)に溶解し、p−トルエンスルホン酸・一水和物(28.5g)を加え、75℃にて2時間加熱撹拌した。室温まで冷却した後、活性炭上でろ過した。ろ液を減圧濃縮し、残渣を酢酸エチルに加熱溶解し、冷却後析出した結晶をろ取、乾燥することにより、(αS)-α−アミノ−4'−エトキシメチル−2',6'−ジメトキシ(1,1'−ビフェニル)−4−プロピオン酸エチル p−トルエンスルホン酸塩(63.4g)を得た。MS (m/z) : 387 (M+−p−トルエンスルホン酸)。融点:127-129℃。
【0072】
(3)(αS)-α−アミノ−4'−エトキシメチル−2',6'−ジメトキシ(1,1'−ビフェニル)−4−プロピオン酸エチル p−トルエンスルホン酸塩(29.0g)、炭酸水素ナトリウム(15.2g)、水(290ml)および酢酸エチル(290ml)の混合物に、15℃以下で2,6-ジフルオロベンゾイルクロリド(9.6g)を滴下し、同温度にて30分撹拌した。酢酸エチル層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、残渣をイソプロパノール−水から再結晶することにより、(αS)-α−[(2,6−ジフルオロベンゾイル)アミノ]−4'−エトキシメチル−2',6'−ジメトキシ(1,1'−ビフェニル)−4−プロピオン酸エチル(26.4g)を得た。MS (m/z) : 527 (M+) 融点:87-89℃。
【0073】
(4)水酸化ナトリウム(2.9g)の水−テトラヒドロフラン(317ml−159ml)溶液に、15℃で(αS)-α−[(2,6−ジフルオロベンゾイル)アミノ]−4'−エトキシメチル−2',6'−ジメトキシ(1,1'−ビフェニル)−4−プロピオン酸エチル(31.7g)を加え、同温度で4時間撹拌した。1N塩酸水で中和した後、有機溶媒を減圧留去した。水層を冷却し、析出晶をろ取し、エタノール−水から再結晶することにより(αS)-α−[(2,6−ジフルオロベンゾイル)アミノ]−4'−エトキシメチル−2',6'−ジメトキシ(1,1'−ビフェニル)−4−プロピオン酸(28.8g)を得た。MS (m/z) : 499 (M+)融点:154-155℃。
【0074】
実施例2
(1)窒素気流下、(αS)-α-[[(1,1-ジメチルエトキシ)カルボニル]アミノ]-4-ブロモベンゼンプロパン酸エチル(11.17g)、4−エトキシメチル−2,6−ジメトキシフェニルホウ酸(10.80g)、酢酸パラジウム(0.34g)、トリフェニルホスフィン(1.57g)、無水炭酸カリウム(12.44g)、N-メチルピロリドン(56ml)および水(11ml)の混合物を、80℃で50分撹拌した。反応終了後、室温まで冷却し、酢酸エチルと水を加え抽出した。有機層を10%クエン酸水溶液と飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過した。ろ液を減圧下に濃縮して、(αS)-α-[[(1,1-ジメチルエトキシ)カルボニル]アミノ]-4’-エトキシメチル-2’,6’-ジメトキシ(1,1-ビフェニル)-4-プロピオン酸エチル(20.4g)を油状物として得た。
【0075】
本品をエタノール(100ml)に溶解し、p−トルエンスルホン酸・一水和物(5.7g)を加え、75℃で1.5時間撹拌した。冷却後、活性炭上でろ過し、ろ液を減圧下に濃縮し、残渣をトルエンに加熱懸濁させ、冷却後、析出結晶をろ取すると、(αS)-α-アミノ-4’-エトキシメチル-2’6’-ジメトキシ(1,1’-ビフェニル)-4-プロピオン酸エチル p−トルエンスルホン酸塩(13.80g)が得られた。
【0076】
(2)以下、実施例1(2)〜(4)と同様にして、(αS)-α−[(2,6−ジフルオロベンゾイル)アミノ]−4'−エトキシメチル−2',6'−ジメトキシ(1,1'−ビフェニル)−4−プロピオン酸を得た。物性値は実施例1で得られたものと同一であった。
【0077】
実施例3
(αS)-α−[(2,6−ジフルオロベンゾイル)アミノ]−4'−エトキシメチル−2',6'−ジメトキシ(1,1'−ビフェニル)−4−プロピオン酸エチル(500mg)の水(12.6ml)及び1,4−ジオキサン(50ml)溶液に塩酸(12.4g)を加え、60℃で60時間撹拌した。有機溶媒を減圧留去後、水層を冷却して析出する結晶をろ取し、エタノールと水の混合溶媒から再結晶することにより(αS)-α−[(2,6−ジフルオロベンゾイル)アミノ]−4'−エトキシメチル−2',6'−ジメトキシ(1,1'−ビフェニル)−4−プロピオン酸(426mg)を得た。物性値は実施例1で得られたものと同一であった。
【0078】
参考例1
(1)氷冷下、4−ブロモ−3,5−ジメトキシベンジルアルコール(44.5g)、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム(2.05g)、20%水酸化ナトリウム水溶液(288g)の混合物に硫酸ジエチル(41.7g)を加え、25-30℃で終夜撹拌した。さらに70℃にて1時間加熱撹拌した後、冷却し、トルエンにて抽出した。トルエン層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧下留去して4−ブロモ−3,5−ジメトキシベンジルエチルエーテル(49.5g)を無色油状物として得た。MS (m/z) : 276 (M++2), 274 (M+)。
【0079】
(2)窒素気流下、4−ブロモ−3,5−ジメトキシベンジルエチルエーテル(440.0g)のテトラヒドロフラン(4.0L)溶液に−60℃にてn-ブチルリチウム(1.6M n-ヘキサン溶液、1.1L)を滴下した。同温度で15分間撹拌後、ホウ酸トリメチル(249.3g)を加えた。徐々に昇温し、氷冷下1時間撹拌した。ここへ10%硫酸水(835g)を滴下した。酢酸エチルで抽出し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウムにて乾燥後、溶媒を減圧下留去した。残渣をイソプロピルエーテルに加熱溶解し、冷却後、析出結晶をろ取、乾燥することにより、4−エトキシメチル−2,6−ジメトキシフェニルホウ酸(312.9g)が得られた。融点:59−61℃。
【0080】
参考例2
(1)4−ブロモ−3,5−ジヒドロキシ安息香酸(95.0kg)の酢酸エチル(950L)懸濁液に無水炭酸カリウム(270.8kg)と硫酸ジメチル(174.7kg)を加えた。50〜80℃で約4時間加熱後、水を加え分液した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄後、減圧濃縮した。残渣をメタノールに懸濁させ、加熱撹拌後冷却し、析出晶をろ取、乾燥することにより、4−ブロモ−3,5−ジメトキシ安息香酸メチル(98.8kg)を得た。MS (m/z) : 277 (M++2), 275 (M+) 融点:120−122℃。
【0081】
(2)塩化カルシウム(46.5kg)のエタノール(336L)溶液にテトラヒドロフラン(672L)、4−ブロモ−3,5−ジメトキシ安息香酸メチル(96.0kg)を加えて懸濁した。ここへ室温で水素化ホウ素ナトリウム(31.7kg)を少しずつ加え、室温〜45℃で約9時間撹拌した。この反応液を塩酸水に滴下し、室温で約16時間撹拌した。有機溶媒を減圧留去した後、水(1440L)を加えて50℃で1時間撹拌した。冷却後、析出晶をろ取し、乾燥することにより、4−ブロモ−3,5−ジメトキシベンジルアルコール(83.3kg)を得た。MS (m/z) : 249 (M++2), 247 (M+)、融点:100−102℃。
【0082】
【発明の効果】
本発明の製法により、一般式(I)で示される化合物またはその薬理的に許容しうる塩を高収率、高純度、かつ安価に製造することができ、本発明の製法は工業的に優れた方法である。
Claims (13)
- 一般式(VI)
で示される化合物と、一般式(V)
で示される化合物を、2価のパラジウム触媒、有機塩基、及び、ホスフィン類若しくはホスファイト類の存在下カップリングした後、アミノ基の保護基を除去し、さらに所望により塩に変換して一般式(IV)
で示される化合物またはその塩を製し、次いで一般式(III)
で示される化合物、その塩またはその反応性誘導体を縮合させ、一般式(II)
で示される化合物を製し、次いでカルボキシル基の保護基を除去し、さらに所望により薬理的に許容しうる塩とすることを特徴とする、一般式(I)
で示されるフェニルアラニン誘導体またはその薬理的に許容しうる塩の製法。 - X1が塩素原子またはフッ素原子、X2が塩素原子またはフッ素原子、YがC1-4アルキル基、CO2Rが低級アルコキシカルボニル基である請求項1記載の製法。
- Qが−CH2−であり、Yがメチル基、エチル基またはn−プロピル基、CO2Rがメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基またはt−ブトキシカルボニル基である請求項2記載の製法。
- X1がフッ素原子、Yがメチル基またはエチル基、CO2Rがメトキシカルボニル基またはエトキシカルボニル基である請求項3記載の製法。
- X1がフッ素原子、X2がフッ素原子、Yがエチル基、CO2Rがエトキシカルボニル基である請求項3記載の製法。
- X1がフッ素原子、X2が塩素原子、Yがエチル基、CO2Rがメトキシカルボニル基またはエトキシカルボニル基である請求項3記載の製法。
- Qが−CH2−で示される基、Yがエチル基、CO2Rがエトキシカルボニル基である請求項7記載の化合物。
- Qが−CH2−で示される基、Yがエチル基、CO2Rがエトキシカルボニル基である請求項9記載の製法。
- Qが−CH2−で示される基、Yがエチル基である請求項11記載の化合物。
- 2価のパラジウム触媒が、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、または塩化ビストリフェニルホスフィンパラジウムであり、有機塩基がジイソプロピルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、モルホリン、または4−メチルモルホリンであり、ホスフィン類若しくはホスファイト類がトリトリルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、またはトリ(n−ブチル)ホスファイトである、請求項1,2,3,4,5,6,9または10記載の製法。
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