JP4258198B2 - 4輪駆動車のトルク配分装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、4輪駆動車のトルク配分装置に関し、詳しくは遊星歯車機構で構成されたトルク配分装置の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
4輪駆動車には、走行状態等に応じて前後輪のトルク配分を変化させるトルク配分装置が設けられることがある。
【0003】
このトルク配分装置として、センターデフ装置が遊星歯車機構を用いて構成され、該遊星歯車機構を介して前輪側及び後輪側に動力を伝達するものにおいて、前輪側の動力伝達系と遊星歯車機構との間にクラッチを設けて前輪側への動力の伝達を断接可能とし、またその締結力を連続的に変化させることにより前後輪へのトルク配分を連続的に変更できるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、センターデフ装置が遊星歯車機構を用いて構成され、該遊星歯車機構を介して異なるトルク配分比で前輪側及び後輪側に動力を伝達するものにおいて、前輪側の動力伝達系と後輪側の動力伝達系との間にクラッチを設け、その締結力を連続的に変化させることにより前後輪へのトルク配分を連続的に変更できるようにしたものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、センターデフ装置が、変速機出力が入力される第1遊星歯車機構と、該第1遊星歯車機構の出力が入力される第2遊星歯車機構との2つの遊星歯車機構とを有し、かつ、後輪側には、第2遊星歯車機構の所定の伝達要素から動力を伝達し、前輪側には、第1の遊星歯車機構の所定の伝達要素から動力を伝達するものにおいて、第2遊星歯車機構の上記所定の伝達要素と他の伝達要素との結合状態を制御する第1クラッチと、第2遊星歯車機構の上記所定の伝達要素と第1遊星歯車機構の上記他の伝達要素との結合状態を制御する第2クラッチとを設け、上記第1、第2クラッチの締結状態を制御することにより後輪側偏重、前輪側偏重、前後輪ほぼ均等のトルク配分に変更できるようにし、さらに、これら第1、第2クラッチの締結力を連続的に変化させることにより連続的にトルク配分を変更できるようにしたものがある(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平4−297336号公報(第2−3頁、第2図)
【特許文献2】
特開平3−54030号公報(第4−8頁、第1図)
【特許文献3】
特開昭62−203827号公報(第2−4頁、第1図)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、クラッチの締結力を調節してトルク配分を調整することは、クラッチをすべらせることを意味するから、クラッチが発熱し、動力のロスが生じる。また、クラッチの摩耗が生じやすく耐久性が低下する。
【0008】
また、クラッチの締結力を連続的に変化させるには油圧や電磁力の制御を行う複雑な制御装置等が必要となり、高コストとなる。
【0009】
そこで、これらの問題への対処方法として、上記特許文献1から3に記載のトルク配分装置において、クラッチの締結力を連続的に変化させる代わりに、単に一定の締結力での締結と、開放とを行わせるようにすることが考えられるが、その場合、特許文献1及び2のトルク配分装置については、前後輪へのトルク配分比が固定となって、トルク配分比を変更できなくなる。
【0010】
一方、特許文献3のトルク配分装置については、後輪偏重、前輪偏重、前後輪ほぼ均等の3段階のトルク配分比となるが、以下の問題がある。すなわち、上記特許文献3に記載のトルク配分装置においては、第1、第2遊星歯車機構の構成はほぼ同一であり、単にこれらの遊星歯車機構を連結した構成であるから、装置が軸方向に長くなり、大型化する。そして、トルク配分比をさらに多段階に増加させて無段階に近づけるには、例えば第3、第4の遊星歯車機構を直列に増設しなければならず、さらに装置が軸方向に長くなって、大型化する。
【0011】
そこで、本発明は、大型化させることなく、かつコストを上昇させることなく、しかも動力エネルギーのロスを極力生じさせることなく、多段階のトルク配分比を達成することができる4輪駆動車のトルク配分装置を提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、次のように構成したことを特徴とする。
【0013】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、遊星歯車機構で変速機出力を前輪側動力伝達系及び後輪側動力伝達系に分割して伝達し、そのトルク配分比を上記遊星歯車機構で変化させるようにした4輪駆動車のトルク配分装置であって、上記遊星歯車機構は、直列に配置されて互いに軸方向に結合された2個のプラネタリギヤを支持しかつ変速機出力が入力される単一のプラネタリキャリヤと、上記2個のプラネタリギヤにそれぞれ噛合する第1、第2のサンギヤと、第2のサンギヤに対応するプラネタリギヤに噛合する単一のリングギヤと、いずれか一方の動力伝達系と上記リングギヤとの間に設けられた第1クラッチと、上記一方の動力伝達系と上記第2のサンギヤとの間に設けられた第2クラッチとを有し、他方の動力伝達系と上記第1のサンギヤとが連結されていると共に、上記第1クラッチと上記第2クラッチとを選択的に連結するように構成したことを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、プラネタリキャリヤに入力された動力は、一方の動力伝達系には、第2のサンギヤとリングギヤとのうちのいずれか1つを介して伝達され、他方の動力伝達系には第1のサンギヤを介して伝達される。すなわち、第1クラッチと上記第2クラッチとを選択的に連結することにより、2段階のトルク配分比が達成される。
【0015】
また、クラッチをすべらせて前後輪のトルク配分を変化させないから、クラッチのすべりによる発熱がなくなり、動力のロスが大きく軽減される。また、クラッチの締結力を連続的に制御する制御装置も不要となり、制御装置等のコストが削減される。
【0016】
加えて、単純に複数の遊星歯車機構を直列に連結せずに、単一のプラネタリキャリヤ上に2個のプラネタリギヤを直列に配設して互いに結合したから、複数の遊星歯車機構を直列に連結する場合よりも、軸方向の寸法が短縮され、当該装置が小型化される。
【0017】
そして、本願の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、 上記他方の動力伝達系を構成する第1出力軸と、該第1出力軸に平行に設けられ、上記一方の動力伝達系を構成する第2出力軸とを有し、上記遊星歯車機構は上記第1出力軸上に設けられ、上記第1クラッチ及び第2クラッチは上記第2出力軸上に設けられていることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、クラッチの設計の自由度が増す。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1の実施の形態について説明する。
【0028】
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る4輪駆動車のトルク配分装置1は、エンジン横置きタイプの車両に搭載される常時4輪駆動タイプのものであり、エンジン2にダンパクラッチ3を介して接続された変速機4に入力側が連結されている。また、該トルク配分装置1は、該装置1から左右に延びる前輪車軸5a,5bを介して左右前輪6a,6bに連結されていると共に、該装置1から車両後方に延びるプロペラシャフト7を介して後輪用差動装置8に連結され、さらに該後輪用差動装置8から左右に延びる後輪車軸9a、9bを介して左右後輪10a,10bに連結されている。
【0029】
図2に示すように、この4輪駆動車のトルク配分装置1は、前輪車軸5aに回転自在に嵌合支持されて動力が入力される入力軸11と、前輪車軸5aに回転自在に嵌合支持され、前輪側に動力を伝達する第1出力軸21と、該第1出力軸21に回転自在に嵌合支持され、後輪側に動力を伝達する第2出力軸22とを有する。
【0030】
入力軸11には入力ギヤ12が設けられており、該入力ギヤ12が変速機4の出力軸4aに設けられた出力ギヤ4bと噛合している。第1出力軸21の一端側には、傘歯車で構成された前輪用差動装置30が連結されており、該前輪用差動装置30に前輪車軸5a,5bが連結されている。第2出力軸22には出力ギヤ40が固設され、伝達ギヤ41、伝達軸42、傘歯車43,44を介してプロペラシャフト7に連結されている。
【0031】
入力軸11から第1,第2出力軸21,22に至る動力伝達経路上には、遊星歯車機構50と、該遊星歯車機構50の構成要素の動力伝達状態を変更する第1、第2クラッチ61,62とが設けられている。
【0032】
遊星歯車機構50は、変速機出力が入力される単一のプラネタリキャリヤ51と、該プラネタリキャリヤ51に回動自在に支持されたプラネタリギヤ52…52とを有する。該プラネタリギヤ52は、直列に複数(この実施の形態では2個)のプラネタリギヤが互いに結合されたものであり、両端側にギヤ部52a,52bを有する。また、遊星歯車機構50は、上記複数のギヤ部52a,52bにそれぞれ噛合する複数のサンギヤ53,54と、プラネタリギヤ52のギヤ部52bに噛合する単一のリングギヤ55とを有する。ここで、図3に示すように、第1サンギヤ53の歯数ZS1は30、第2サンギヤ54の歯数ZS2は30、リングギヤ55の歯数ZRは90とされている。プラネタリギヤ52の歯数は、ギヤ部52a,52bの両方とも30とされている。
【0033】
プラネタリキャリア51は入力軸11に連結され、第1サンギヤ53は第1出力軸21に結合され、第2サンギヤ54は、上記第2出力軸22に回動自在に嵌合支持された第1連結軸71の一端に結合され、リングギヤ55は、第1連結軸71に回動自在に嵌合支持された第2連結軸72の一端に結合されている。
【0034】
第2連結軸72の他端には第1クラッチ61のクラッチディスク61aが固設され、第1連結軸71の他端には第2クラッチ62のクラッチディスク62aが固設されている。第1、第2クラッチ61,62のケース63はクラッチ61,62で共通とされ、第2出力軸22に固設されている。ケース63には、上記クラッチディスク61a,62aにそれぞれ対応するクラッチプレート61b,62bが固設されている。そして、クラッチディスク61aとクラッチプレート61bとが当接することにより第1クラッチ61が締結状態となり、当接状態が解消されたときに非締結状態となる。また同様に、クラッチディスク62aとクラッチプレート62bとが当接することにより第2クラッチ62が締結状態となり、当接状態が解消されたときに非締結状態となる。第1クラッチ61と第2クラッチ62とはそれぞれ独立して作動する。
【0035】
次に、前輪側及び後輪側への動力伝達経路、及びそのトルク配分について説明する。
【0036】
まず、前輪側には、エンジン2の駆動力は、ダンパクラッチ3、変速機4、トルク配分装置1の入力ギヤ12、入力軸11、プラネタリキャリヤ51、プラネタリギヤ52…52、第1サンギヤ53、第1出力軸21、前輪用差動装置30を介して前輪駆動軸5a,5bに伝達される。
【0037】
一方、後輪側には、プラネタリギヤ52…52までは前輪側と同じ経路で伝達されるが、それ以後は異なる経路となる。すなわち、第1クラッチ61のみを締結状態として第2出力軸22と第2連結軸72とを結合すると、プラネタリギヤ52…52から、リングギヤ55、第2連結軸72、第2出力軸22、出力ギヤ40、伝達ギヤ41,伝達軸42、傘歯車43,44、プロペラシャフト7、後輪用差動装置8、後輪車軸9a,9bを介して左右後輪10a,10bに伝達される。
【0038】
一方、第2クラッチ62のみを締結状態として第2出力軸22と第1連結軸71とを結合すると、プラネタリギヤ52…52から、第2サンギヤ54、第1連結軸71、第2出力軸22、出力ギヤ40を介して、クラッチ61の締結時と同様の動力伝達経路に至って後輪側に伝達される。
【0039】
すなわち、前輪側へは、第1、第2クラッチ61,62の作動状態にかかわらず同一経路で動力が伝達されるが、後輪側へは、第1、第2クラッチ61,62のどちらを作動させるかにより、2種類の異なる経路を介して動力が伝達されることとなる。そして、図3に示すように、第2サンギヤ54の歯数ZS2とリングギヤ55の歯数ZRとの相違により、第1クラッチ61を締結状態とした場合には、前輪側25:後輪側75のトルク配分比が達成され、第2クラッチ62を締結状態とした場合には、前輪側50:後輪側50のトルク配分比が達成される。
【0040】
また、遊星歯車機構50によって、前後輪の差動機能も実現される。
【0041】
すなわち、本実施の形態に係る4輪駆動車のトルク配分装置1によれば、第1、第2クラッチ61,62の締結力を連続的に制御しなくても2段階のトルク配分比を実現することができるようになり、クラッチ61,62のすべりによる発熱がなくなって入力された動力のロスが大きく軽減される。また、この結果、クラッチの締結力を連続的に制御する制御装置も不要となり、制御装置等のコストが削減される。
【0042】
加えて、単純に複数の遊星歯車機構を直列に連結せずに、単一のプラネタリキャリヤ51上に2個のプラネタリギヤを結合したものを配設したから、複数の遊星歯車機構を直列に連結する場合よりも、トルク配分装置の軸方向の寸法が短縮され、当該装置が小型化される。
【0043】
そして、このトルク配分の変更を例えばマニュアル操作で行えば、運転者の意図を迅速に反映させることが可能となり、スポーツ車等に好適なトルク配分装置が実現される。
【0044】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態に係る4輪駆動車のトルク配分装置は、第1の実施の形態に係る4輪駆動車のトルク配分装置1において、遊星歯車機構50の第1サンギヤ53及びプラネタリギヤ52の第1ギヤ部52aの歯数を変更したものである。すなわち、図4、図5に示すように、第2の実施の形態に係る4輪駆動車のトルク配分装置101においては、遊星歯車機構150の第1サンギヤ153の歯数ZS1が40、プラネタリギヤ152の第1ギヤ部152aの歯数が20とされている。なお、第2サンギヤ154、プラネタリギヤ152の第2ギヤ部152b、リングギヤ155等、その他のギヤの歯数は同じである。また、動力伝達経路は第1の実施の形態に係るトルク配分装置1と同じである。これによれば、これらのギヤの歯数の相違により、クラッチ161を締結状態とした場合には、前輪側40:後輪側60のトルク配分比が達成され、クラッチ162を締結状態とした場合には、前輪側67:後輪側33のトルク配分比が達成される。
【0045】
すなわち、要求される走行条件に応じてサンギヤ及びプラネタリギヤの歯数等を変更することにより、異なる種類の車両にも幅広く適用することができる。
【0046】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第3の実施の形態から後述する第6の実施の形態では、第1、第2の実施の形態で用いられた遊星歯車機構とほぼ同一のものを用いながらも、前輪側及び後輪側への動力伝達経路を変更したものについて説明する。
【0047】
すなわち、図6に示すように、第3の実施の形態に係る4輪駆動車のトルク配分装置201においては、前輪用差動装置230は、入力ギヤ212と遊星歯車機構250との間に設けられている。
【0048】
トルク配分装置201は、変速機4の出力軸4aに設けられた出力ギヤ4bと噛合する入力ギヤ212に結合された入力部材211と、前輪車軸5bに回転自在に嵌合支持され、前輪側に動力を伝達する第1出力軸221と、車軸5bに平行に設けられた第2出力軸222とを有する。
【0049】
第1出力軸221の一端側には、傘歯車で構成された前輪用差動装置230が連結されており、該前輪用差動装置230に前輪車軸5a,5bが連結されている。第2出力軸222は、傘歯車243,244を介してプロペラシャフト7に連結されている。
【0050】
入力軸211から第1、第2出力軸221,222に至る動力伝達経路上には、遊星歯車機構250と、該遊星歯車機構250の構成要素の動力伝達状態を変更する第1、第2クラッチ261,262とが設けられている。
【0051】
遊星歯車機構250は、変速機出力が入力される単一のプラネタリキャリヤ251と、該プラネタリキャリヤ251に回動自在に支持されたプラネタリギヤ252…252とを有する。該プラネタリギヤ252は、直列に複数(この実施の形態では2個)のプラネタリギヤが互いに結合されたものであり、両端側にギヤ部252a,252bを有する。また、遊星歯車機構250は、上記複数のギヤ部252a,252bにそれぞれ噛合する複数のサンギヤ253,254と、プラネタリギヤ252のギヤ部252bに噛合する単一のリングギヤ255とを有する。ここで、図3に示すように、第1サンギヤ253の歯数ZS1は30、第2サンギヤ254の歯数ZS2は30、リングギヤ255の歯数ZRは90とされている。プラネタリギヤ252の歯数は、ギヤ部252a,252bの両方とも30とされている。
【0052】
プラネタリキャリア251は入力軸211に連結され、第1サンギヤ253は第1出力軸221に結合されている。第2サンギヤ254は、上記第1出力軸221に回動自在に嵌合支持された第1連結軸271の一端に結合され、リングギヤ255は、第1連結軸271に回動自在に嵌合支持された第2連結軸272の一端に結合されている。
【0053】
第2出力軸222に回動自在に嵌合支持された第3連結軸273の一端には第1クラッチ261のクラッチディスク261aが固設され、該第3連結軸273に回動自在に嵌合支持された第4連結軸274の一端には第2クラッチ262のクラッチディスク262aが固設されている。第1、第2クラッチ261,262のケース263は第1、第2クラッチ261,262で共通とされ、第2出力軸222に固設されている。ケース263には、上記クラッチディスク262a,263aにそれぞれ対応するクラッチプレート261b,262bが固設されている。
【0054】
第1連結軸271と第4連結軸274との間には第1連結ギヤ列281が設けられ、第2連結軸272と第3連結軸273との間には第2連結ギヤ列282が設けられている。
【0055】
次に、前輪側及び後輪側への動力伝達経路と、そのトルク配分とについて説明する。
【0056】
まず、前輪側には、エンジン2の駆動力は、ダンパクラッチ3、変速機4、トルク配分装置1の入力ギヤ212、入力部材211、プラネタリキャリヤ251、プラネタリギヤ252…252、第1サンギヤ253、第1出力軸221、前輪用差動装置30を介して前輪駆動軸5a,5bに伝達される。
【0057】
一方、後輪側には、プラネタリギヤ252…252までは前輪側と同じ経路で伝達されるが、それ以後は異なる経路となる。すなわち、第1クラッチ261のみを締結状態として第2出力軸222と第3連結軸273とを結合すると、プラネタリギヤ252…252から、リングギヤ255、第2連結軸272、第2連結ギヤ列282、第3連結軸273、第2出力軸222、傘歯車242,243、プロペラシャフト7を介して左右後輪10a,10bに伝達される。
【0058】
一方、第2クラッチ262のみを締結状態として第2出力軸222と第4連結軸274とを結合すると、プラネタリギヤ252…252から、第2サンギヤ254、第1連結軸271、第1連結ギヤ列281、第4連結軸274、第2出力軸222を介して、第1クラッチ261の締結時と同様の動力伝達経路に至って後輪側に伝達される。
【0059】
ここで、遊星歯車機構250のプラネタリギヤ251、第1、第2サンギヤ253,254、リングギヤ255の歯数は第1の実施の形態に係る遊星歯車機構50のものと同一であり、図3に示すように、トルク配分比も同一となる。
【0060】
また、車軸5a、5b上から第1、第2クラッチ261,262を分離したから、クラッチ261,262のレイアウト設計の自由度が増す。
【0061】
次に、第4の実施の形態について説明する。すなわち、図7に示すように、第4の実施の形態に係る4輪駆動車のトルク配分装置301は、第3の実施の形態に係る4輪駆動車のトルク配分装置201において、第2の実施の形態に係る4輪駆動車のトルク配分装置101同様に、遊星歯車機構350の第1サンギヤ353及びプラネタリギヤ352の第1ギヤ部352aの歯数を変更したものである。これによれば、第3の実施の形態に係る4輪駆動車のトルク配分装置201をベースとしてギヤの歯数を変更するだけで容易にトルク配分を変更することができる。また、この結果、第2の実施の形態に係る4輪駆動車のトルク配分装置101と同様の効果が得られる。
【0062】
次に、第5の実施の形態について説明する。第5の実施の形態に係る4輪駆動車のトルク配分装置は、第1の実施の形態に係る4輪駆動車のトルク配分装置1において、遊星歯車機構50及びクラッチ61,62の配設位置の変更、及びこれに伴う軸構造等の変更を行ったものである。
【0063】
すなわち、図8に示すように、第5の実施の形態に係る4輪駆動車のトルク配分装置401は、前輪車軸5a,5bに平行に配設され、前輪側に動力を伝達する第1出力軸421と、該出力軸421と同一軸心上に配設され、後輪側に動力を伝達する第2出力軸422と、第1出力軸421に回転自在に嵌合支持され、変速機4からの動力が入力される入力軸411とを有する。
【0064】
入力軸411には入力ギヤ412が設けられており、該入力ギヤ412が変速機4の出力軸4aに設けられた出力ギヤ4bと噛合している。第1出力軸421と車軸5aとの間にはギヤ列480が設けられている。該ギヤ列480は傘歯車で構成された前輪用差動装置430に連結され、該前輪用差動装置430に前輪側車軸5a,5bが連結されている。第2出力軸422には出力ギヤ440が固設され、伝動ギヤ441,伝達軸442、傘歯車443,444を介してプロペラシャフト7に連結されている。
【0065】
入力軸411から第1,第2出力軸421,422に至る動力伝達経路上には、遊星歯車機構450と、該遊星歯車機構450の構成要素の動力伝達状態を変更する第1、第2クラッチ461,462とが設けられている。
【0066】
遊星歯車機構450は、変速機出力が入力される単一のプラネタリキャリヤ451と、該プラネタリキャリヤ451に回動自在に支持されたプラネタリギヤ452…452とを有する。該プラネタリギヤ452は、直列に複数(この実施の形態では2個)のプラネタリギヤが互いに結合されたものであり、両端側にギヤ部452a,452bを有する。また、遊星歯車機構450は、上記複数のギヤ部452a,452bにそれぞれ噛合する複数のサンギヤ453,454と、プラネタリギヤ452のギヤ部452bに噛合する単一のリングギヤ455とを有する。ここで、図3に示すように、第1サンギヤ453の歯数ZS1は30、第2サンギヤ454の歯数ZS2は30、リングギヤ455の歯数ZRは90とされている。プラネタリギヤ452の歯数は、ギヤ部452a,452bの両方とも30とされている。
【0067】
そして、プラネタリキャリア451は入力軸411に連結され、第1サンギヤ453は第1出力軸421に結合され、第2サンギヤ454は上記第1出力軸421と同一軸心上に設けられた第1連結軸471の一端に結合され、リングギヤ455は該第1連結軸471に回動自在に嵌合支持された第2連結軸472の一端に結合されている。
【0068】
第2連結軸472の他端には第1クラッチ461のクラッチディスク461aが固設され、第1連結軸71の他端には第2クラッチ462のクラッチディスク462aが固設されている。また、第1、第2クラッチ461,462のケース463は第1、第2クラッチ461,462で共通とされ、第2出力軸422に固設されている。ケース463には、上記クラッチディスク462a,463aにそれぞれ対応するクラッチプレート461b,462bが固設されている。
【0069】
次に、前輪側及び後輪側への動力伝達経路、及びそのトルク配分について説明する。
【0070】
まず、前輪側には、エンジン2の駆動力は、ダンパクラッチ3、変速機4、トルク配分装置1の入力ギヤ412、入力軸411、プラネタリキャリヤ451、プラネタリギヤ452…452、第1サンギヤ453、第1出力軸421、伝達ギヤ列480、前輪用差動装置430を介して前輪駆動軸5a,5bに伝達される。
【0071】
一方、後輪側には、プラネタリギヤ452…452までは前輪側と同じ経路で伝達されるが、それ以後は異なる経路となる。すなわち、第1クラッチ461のみを締結状態として第2出力軸422と第2連結軸472とを結合すると、プラネタリギヤ452…452から、リングギヤ455、第2連結軸472、第2出力軸422、出力ギヤ440、伝達ギヤ441,伝達軸442、傘歯車443,444、プロペラシャフト7、後輪用差動装置8、後輪車軸9a,9bを介して左右後輪10a,10bに伝達される。
【0072】
一方、第2クラッチ462のみを締結状態として第2出力軸422と第1連結軸471とを結合すると、プラネタリギヤ452…452から、第2サンギヤ454、第1連結軸471、第2出力軸422、出力ギヤ440を介して、クラッチ461の締結時と同様の動力伝達経路に至って後輪側に伝達される。
【0073】
すなわち、前輪側へは、第1、第2クラッチ461,462の作動状態にかかわらず同一経路で動力が伝達されるが、後輪側へは、第1、第2クラッチ461,462のどちらを作動させるかにより、2種類の異なる経路を介して動力が伝達されることとなる。そして、その場合、図3に示すように、第2サンギヤ454の歯数ZS2とリングギヤ455の歯数ZRとの相違により、第1クラッチ461を締結状態とした場合には、前輪側25:後輪側75のトルク配分比が達成され、第2クラッチ462を締結状態とした場合には、前輪側50:後輪側50のトルク配分比が達成される。
【0074】
また、第5の実施の形態に係るトルク配分装置によれば、第1の実施の形態で説明した効果だけでなく、遊星歯車機構450及び第1、第2クラッチ461,462のレイアウト時に車軸5a,5bによる制約がなくなる。また、逆に言えば、車軸5a,5bのレイアウト時に遊星歯車機構450及び第1、第2クラッチ461,462のレイアウトによる制約がなくなる。
【0075】
次に、第6の実施の形態について説明する。すなわち、図9に示すように、第6の実施の形態に係る4輪駆動車のトルク配分装置501は、第5の実施の形態に係る4輪駆動車のトルク配分装置401において、第2の実施の形態に係る4輪駆動車のトルク配分装置101同様に、遊星歯車機構550の第1サンギヤ553及びプラネタリギヤ552の第1ギヤ部552aの歯数を変更したものである。これによれば、第5の実施の形態に係る4輪駆動車のトルク配分装置401をベースとしてギヤの歯数を変更するだけで容易にトルク配分を変更することができる。また、この結果、第2の実施の形態に係る4輪駆動車のトルク配分装置101と同様の効果が得られることとなる。
【0076】
次に、本発明の第1の参考例について説明する。第1〜第6の実施の形態に係る4輪駆動車のトルク配分装置に用いられた遊星歯車機構においては、プラネタリキャリヤのギヤ部及びサンギヤの数が2個であったが、第1の参考例に係る4輪駆動車のトルク配分装置では3個に変更したものである。
【0077】
すなわち、図10に示すように、第1の参考例に係る4輪駆動車のトルク配分装置601は、前輪車軸5a,5bに平行に配設され、変速機4からの動力が入力される入力軸611と、前輪側に動力を伝達する第1出力軸621と、後輪10a,10b側に動力を伝達する第2出力軸622とを有する。
【0078】
入力軸611には入力ギヤ612が設けられており、該入力ギヤ612が変速機4の出力軸4aに設けられた出力ギヤ4bと噛合している。第1出力軸621と車軸5aとの間にギヤ列680が設けられている。該ギヤ列680には傘歯車で構成された前輪用差動装置630が連結され、該前輪用差動装置630に前輪側車軸5a,5bが連結されている。第2出力軸622には出力ギヤ640が固設され、伝動ギヤ641,伝達軸642、傘歯車643,644を介してプロペラシャフト7に連結されている。
【0079】
入力軸611から第1,第2出力軸621,622に至る動力伝達経路上には、遊星歯車機構650と、該遊星歯車機構650の構成要素の動力伝達状態を変更する第1、第2、第3、第4クラッチ661,662,663,664とが設けられている。
【0080】
遊星歯車機構650は、変速機出力が入力される単一のプラネタリキャリヤ651と、該プラネタリキャリヤ651に回動自在に支持されたプラネタリギヤ652…652とを有する。該プラネタリギヤ652は、直列に配置された複数(この第1の参考例では3個)のプラネタリギヤが互いに結合されたものであり、両端側及び軸方向中央にギヤ部652a,652b,652cを有する。また、遊星歯車機構650は、上記複数のギヤ部652a,652b,652cにそれぞれ噛合する複数のサンギヤ653,654,655と、プラネタリギヤ652のギヤ部652cに噛合する単一のリングギヤ656とを有する。ここで、図11に示すように、第1サンギヤ653の歯数ZS1は40、第2サンギヤ654の歯数ZS2は30、第3サンギヤ655の歯数ZS3は30、リングギヤ656の歯数ZRは90とされている。プラネタリギヤ652のギヤ部652aの歯数は40,ギヤ部652b,652cの歯数はそれぞれ30とされている。
【0081】
プラネタリキャリア651は入力軸611に連結され、第1サンギヤ453は、第1出力軸621と同一軸心上に設けられた第3連結軸673に結合され、第2サンギヤ654は、第1出力軸621と同一軸心上に設けられた第4連結軸674の一端に結合され、第3サンギヤ655は、第2出力軸622と同一軸心上に設けられた第1連結軸671の一端に結合され、リングギヤ656は、該第1連結軸671に回動自在に嵌合支持された第2連結軸672の一端に結合されている。
【0082】
第2連結軸672の他端には第1クラッチ661のクラッチディスク661aが固設され、第1連結軸671の他端には第2クラッチ662のクラッチディスク662aが固設されている。また、第1、第2クラッチ661,662のケース660は第1、第2クラッチクラッチ661,662で共通とされ、第2出力軸622に固設されている。ケース660には、上記クラッチディスク662a,663aにそれぞれ対応するクラッチプレート661b,662bが固設されている。
【0083】
第3連結軸673の他端には第3クラッチ663のクラッチディスク663aが固設され、第4連結軸674の他端には第4クラッチ664のクラッチディスク664aが固設されている。また、第3、第4クラッチクラッチ663,664のケース666は第3、第4クラッチクラッチ663,664で共通とされ、第2出力軸622に固設されている。ケース666には、上記クラッチディスク663a,664aにそれぞれ対応するクラッチプレート663b,664bが固設されている。
【0084】
次に、前輪側及び後輪側への動力伝達経路、及びそのトルク配分について説明する。
【0085】
まず、前輪側には、エンジン2の駆動力は、ダンパクラッチ3、変速機4、トルク配分装置1の入力ギヤ612、入力軸611、プラネタリキャリヤ651、プラネタリギヤ652…652に伝達され、それ以後は第3、第4クラッチ663,664のどちらが締結されているかにより異なる経路となる。すなわち、第3クラッチ663のみを締結状態として第1出力軸621と第4連結軸674とを結合すると、第1サンギヤ653、第4連結軸674、第1出力軸621、伝達ギヤ列680、前輪用差動装置630を介して前輪駆動軸5a,5bに伝達される。一方、クラッチ664のみを締結状態として第1出力軸621と第3連結軸673とを結合すると、第2サンギヤ654、第3連結軸673、第1出力軸621、伝達ギヤ列680、前輪用差動装置630を介して前輪駆動軸5a,5bに伝達される。
【0086】
また、後輪側には、プラネタリギヤ652…652までは前輪側と同じ経路で伝達されるが、それ以後は異なる経路となる。すなわち、第1クラッチ661のみを締結状態として第2出力軸622と第2連結軸672とを結合すると、プラネタリギヤ652…652から、リングギヤ656、第2連結軸672、第2出力軸622、出力ギヤ640、伝達ギヤ641、伝達軸642、傘歯車643,644、プロペラシャフト7、後輪用差動装置8、後輪車軸9a,9bを介して左右後輪10a,10bに伝達される。
【0087】
一方、第2クラッチ662のみを締結状態として第2出力軸622と第1連結軸671とを結合すると、プラネタリギヤ652…652から、第3サンギヤ655、第1連結軸671、第2出力軸622、出力ギヤ640を介して、クラッチ661の締結時と同様の動力伝達経路に至って後輪側に伝達される。
【0088】
すなわち、前輪側へは、クラッチ663,664のどちらを作動させるかにより、2種類の異なる経路を介して動力が伝達されることとなり、また、後輪10a,10b側へも、クラッチ663,664のどちらを作動させるかにより、2種類の異なる経路を介して動力が伝達されることとなる。すなわち、これらの組合せにより4通りの動力伝達パターンが形成され、この結果、図11に示すように、4通りのトルク配分比が達成される。
【0089】
すなわち、図11に示すように、第1、第3クラッチ661,663を締結状態とした場合には、前輪側25:後輪側75のトルク配分比が達成され、第1、第4クラッチ661,664を締結状態とした場合には、前輪側50:後輪側50のトルク配分比が達成され、第2、第3クラッチ662,663を締結状態とした場合には、前輪側40:後輪側60のトルク配分比が達成され、第2、第4クラッチ662,664を締結状態とした場合には、前輪側67:後輪側33のトルク配分比が達成される。
【0090】
すなわち、本第1の参考例に係る4輪駆動車のトルク配分装置1によれば、クラッチ661,662,663,664の締結力を連続的に制御しなくても、前輪側重視で2種類、後輪側重視で1種類、前後輪均等で1種類の4段階のトルク配分比を実現することができるようになる。そして、この結果、クラッチ661,662,663,664のすべりによる発熱がなくなって入力された動力のロスが大きく軽減される。また、クラッチの締結力を連続的に制御する制御装置も不要となり、制御装置等のコストが削減される。
【0091】
加えて、単純に遊星歯車機構を直列に連結せずに、プラネタリキャリヤ651上に3個のプラネタリギヤを結合したものを配設したから、複数の遊星歯車機構を直列に連結する場合よりも、トルク配分装置の軸方向の寸法が短縮され、当該装置が小型化される。
【0092】
以上の実施の形態及び第1の参考例においては、エンジン2及び変速機4の軸方向が車両幅方向である例えばFF(フロントエンジン・フロントドライブ)タイプの車両をベースとする車両に適用した場合について説明したが、エンジン2及び変速機4の軸方向が車両前後方向である例えばFR(例えばエンジン横置きのFF(フロントエンジン・フロントドライブ)タイプの車両をベースとする車両に適用した場合について、第7の実施の形態以後で説明する。
【0093】
すなわち、図12に示すように、本発明の第7の実施の形態に係る4輪駆動車のトルク配分装置701は、エンジン及び変速機が車両前後方向とされた車両に搭載される常時4輪駆動タイプのものであり、エンジン702にダンパクラッチ703を介して接続された変速機704に入力側が連結されている。また、前輪側の出力は、該トルク配分装置701から前輪用差動装置730、前輪車軸705a,705bを介して左右前輪706a,706bに連結され、後輪側の出力は、トルク配分装置701から車両後方に延びるプロペラシャフト707、後輪用差動装置708、後輪車軸709a、709bを介して左右後輪710a,710bに連結されている。
【0094】
図13に示すように、この4輪駆動車のトルク配分装置701は、変速機704の出力軸704aに設けられたギヤ704bを介して入力軸711に動力が入力されるが、遊星歯車機構750、クラッチ761,762の構成は基本的に第5の実施の形態に係るトルク配分装置601と同様であり、変速機から入力された動力が、前輪用差動装置730に連結された第1出力軸721,及びプロペラシャフト707に連結された第2出力軸722に伝達される経路も同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0095】
すなわち、第7の実施の形態に係るトルク配分装置701によれば、エンジン及び変速機の軸方向が車両前後方向である車両においても、クラッチをすべらせることなく、2段階のトルク配分を容易に実現することができる等の第1の実施の形態で説明した効果を得ることができる。
【0096】
次に、図14に示すように、第8の実施の形態に係る4輪駆動車のトルク配分装置801は、第7の実施の形態に係る4輪駆動車のトルク配分装置701において、遊星歯車機構850を構成する第1サンギヤ853及び該サンギヤ853に噛合するプラネタリギヤ852の第1ギヤ部852aの歯数を第2の実施の形態同様の図5に示す歯数に変更したものである。これによれば、第7の実施の形態に係るトルク配分装置701とは異なるトルク配分比をFR車において容易に実現することができる。
【0097】
次に、図15に示すように、第2の参考例に係る4輪駆動車のトルク配分装置901は、第7の実施の形態に係る4輪駆動車のトルク配分装置701において、遊星歯車機構950及び第1〜第4クラッチ961,962,963,964の構成を、第1の参考例のものと同様の構成とし、その遊星歯車機構950を構成するギヤの歯数も第1の参考例同様の図11に示す歯数としたものである。これによれば、第1の参考例同様の4段階の異なるトルク配分をFR車において容易に実現することができる。
【0098】
次に、第9の実施の形態に係るトルク配分装置について説明する。図16に示すように、第9の実施の形態に係るトルク配分装置1001においては、遊星歯車機構1050及びクラッチ1061,1062の構成は第7の実施の形態に係るトルク配分装置901のものと同様で、エンジン1002の動力はダンパクラッチ1003、変速機1004を介して入力軸1011に入力されるが、第1出力軸1021から前輪側への動力伝達経路、及び第2出力軸1022から後輪側への動力伝達経路の構成が変更されている。
【0099】
すなわち、第1出力軸1021よりも前輪側には、第1出力軸1021に平行に副軸1090が設けられ、両軸1021,1090間に伝達ギヤ列1091が介設されている。そして、それぞれの下流側には締結力が可変とされた電磁クラッチ1092,1093が設けられており、これらの電磁クラッチ1092,1093の出力が、傘歯車セット1094,1095、前輪車軸1005a,1005bを介して前輪1006a,1006bに伝達される。すなわち、一般に傘歯車等で構成される差動装置に代えて、電磁クラッチ1091,1092の締結力変更で差動機能を実現するようにしており、これによれば、左右車軸1005a,1005bの回転差の吸収だけでなく、左右車軸のトルク配分を制御することもできる。
【0100】
また、第2出力軸よりも後輪側においては、第2出力軸1022からの動力は、プロペラシャフト1007を介して差動装置1008に入力され、該出力の一方が、伝達ギヤ列1096、傘歯車列1097を介して一方の後輪車軸1009aから後輪1010aに伝達され、他方の出力が傘歯車列1098を介して他方の後輪車軸1009bから後輪1010bに伝達される。すなわち、ファイナルギヤと差動装置とを分離したから、差動装置を小型化することができる。
【0101】
また、車軸上に差動装置を設けていないから、もともと差動装置が設けられていたスペースに他の装置類を配置することができるようになり、車両前部や後部のコンパクト化が図れる。
【0102】
なお、変速機の軸方向が車両幅方向であるタイプの実施の形態及び参考例(第1〜第6の実施の形態、及び第1の参考例)においては、前輪用差動装置をトルク配分装置に含めて説明したが、変速機の軸方向が車両前後方向であるタイプの実施の形態及び参考例(第7〜第9の実施の形態、及び第2の参考例)のもの同様、分離してももちろんよい。
【0103】
また、上記複数の実施の形態及び参考例で説明した遊星歯車機構を構成するギヤの歯数、及び達成されるトルク配分比は一例であり、ギヤの歯数を変更することによりさらに多様なトルク配分比が達成される。
【0105】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、4輪駆動車のトルク配分装置の遊星歯車機構を、直列に配置されて互いに軸方向に結合された2個のプラネタリギヤを支持しかつ変速機出力が入力される単一のプラネタリキャリヤと、上記2個のプラネタリギヤにそれぞれ噛合する第1、第2のサンギヤと、第2のサンギヤに対応するプラネタリギヤに噛合する単一のリングギヤと、いずれか一方の動力伝達系と上記リングギヤとの間に設けられた第1クラッチと、上記一方の動力伝達系と上記第2のサンギヤとの間に設けられた第2クラッチとを有し、他方の動力伝達系と上記第1のサンギヤとが連結されていると共に、上記第1クラッチと上記第2クラッチとを選択的に連結するように構成したから、プラネタリキャリヤに入力された動力は、一方の動力伝達系には、第2のサンギヤとリングギヤとのうちのいずれか1つを介して伝達され、他方の動力伝達系には第1のサンギヤを介して伝達される。すなわち、第1クラッチと上記第2クラッチとを選択的に連結することにより、2段階のトルク配分比が達成される。
【0106】
また、クラッチをすべらせて前後輪のトルク配分を変化させないから、クラッチのすべりによる発熱がなくなり、動力のロスが大きく軽減される。また、クラッチの締結力を連続的に制御する制御装置も不要となり、制御装置等のコストが削減される。
【0107】
加えて、単純に複数の遊星歯車機構を直列に連結せずに、単一のプラネタリキャリヤ上に2個のプラネタリギヤを直列に配設して互いに結合したから、複数の遊星歯車機構を直列に連結する場合よりも、軸方向の寸法が短縮され、当該装置が小型化される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態に係る4輪駆動車のトルク配分装置が搭載された車両の動力伝達を説明する骨子図である。
【図2】 同第1の実施の形態に係る4輪駆動車のトルク配分装置の骨子図である。
【図3】 同第1の実施の形態に係る4輪駆動車のトルク配分装置において達成されるトルク配分を説明する図である。
【図4】 同第2の実施の形態に係る4輪駆動車のトルク配分装置の骨子図である。
【図5】 同第2の実施の形態に係る4輪駆動車のトルク配分装置において達成されるトルク配分を説明する図である。
【図6】 同第3の実施の形態に係る4輪駆動車のトルク配分装置の骨子図である。
【図7】 同第4の実施の形態に係る4輪駆動車のトルク配分装置の骨子図である。
【図8】 同第5の実施の形態に係る4輪駆動車のトルク配分装置の骨子図である。
【図9】 同第6の実施の形態に係る4輪駆動車のトルク配分装置の骨子図である。
【図10】 同第1の参考例に係る4輪駆動車のトルク配分装置の骨子図である。
【図11】 同第1の参考例に係る4輪駆動車のトルク配分装置において達成されるトルク配分を説明する図である。
【図12】 本発明の第7の実施の形態に係る4輪駆動車のトルク配分装置が搭載された車両の動力伝達を説明する骨子図である。
【図13】 同第7の実施の形態に係る4輪駆動車のトルク配分装置の骨子図である。
【図14】 同第8の実施の形態に係る4輪駆動車のトルク配分装置の骨子図である。
【図15】 同第2の参考例に係る4輪駆動車のトルク配分装置の骨子図である。
【図16】 同第9の実施の形態に係る4輪駆動車のトルク配分装置の骨子図である。
【符号の説明】
1 トルク配分装置
4 変速機
50 遊星歯車機構
51 プラネタリキャリヤ
52 プラネタリギヤ
53,54 サンギヤ
55 リングギヤ
61,62 クラッチ
Claims (2)
- 遊星歯車機構で変速機出力を前輪側動力伝達系及び後輪側動力伝達系に分割して伝達し、そのトルク配分比を上記遊星歯車機構で変化させるようにした4輪駆動車のトルク配分装置であって、
上記遊星歯車機構は、直列に配置されて互いに軸方向に結合された2個のプラネタリギヤを支持しかつ変速機出力が入力される単一のプラネタリキャリヤと、
上記2個のプラネタリギヤにそれぞれ噛合する第1、第2のサンギヤと、
第2のサンギヤに対応するプラネタリギヤに噛合する単一のリングギヤと、
いずれか一方の動力伝達系と上記リングギヤとの間に設けられた第1クラッチと、
上記一方の動力伝達系と上記第2のサンギヤとの間に設けられた第2クラッチとを有し、
他方の動力伝達系と上記第1のサンギヤとが連結されていると共に、
上記第1クラッチと上記第2クラッチとを選択的に連結するように構成したことを特徴とする4輪駆動車のトルク配分装置。 - 上記他方の動力伝達系を構成する第1出力軸と、該第1出力軸に平行に設けられ、上記一方の動力伝達系を構成する第2出力軸とを有し、
上記遊星歯車機構は上記第1出力軸上に設けられ、
上記第1クラッチ及び第2クラッチは上記第2出力軸上に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の4輪駆動車のトルク配分装置。
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