JP4257719B2 - 非水二次電池およびそのシステム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非水二次電池およびその使用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、二次電池は、パソコンや携帯電話などの電源として、あるいは電気自動車や電力貯蔵用の電源として、なくてはならない重要な構成要素の一つとなっている。
【0003】
携帯型コンピュータ(ペンタンコンピュータと呼ばれるものも含む)や携帯情報端末(Personal Digital Assistant、あるいはPersonal Intelligent Communicator、あるいはハンドヘルド・コミュニケータ)といった移動体通信(モービル・コンピューティング)に必要とされる要求として、小型化、軽量化が挙げられる。しかし、液晶表示パネルのバックライトや描画制御によって消費される電力が高いことや、二次電池の容量が現状ではまだ不充分であることなどから、システムのコンパクト化、軽量化が難しい状況にある。特にパソコンにおいては、DVD(デジタルビデオディスク)搭載などによる多機能化が進み、消費電力が増加する傾向にある。そのため、電力容量、特に単電池の電圧が3.3V以上における定電力放電容量の増大が急務となっている。
【0004】
さらに、地球環境問題の高まりとともに、排ガスや騒音を出さない電気自動車が関心を集めている。最近ではブレーキ時の回生エネルギーを電池に蓄えて有効利用したり、あるいはスタート時に電池に蓄えた電気エネルギーを使用して効率を挙げるなどのシステムを採用したパラレルハイブリッド電気自動車に人気が集まっている。しかし、現状の電池では電力容量が低いために、電池の本数を多くして電圧を稼がなければならず、そのため、車内のスペースが狭くなったり、車体の安定性が悪くなるなどの問題が生じている。
【0005】
二次電池の中でも、特に非水電解液を用いたリチウム二次電池は、電圧が高く、かつ軽量で、高エネルギー密度が期待できることから注目を集めている。特に特開昭55−136131号公報で開示されているLix CoO2 などの二次電池正極活物質は、金属リチウムを負極活物質として用いた場合、4V以上の起電力を有することから高エネルギー密度が期待できる。
【0006】
また、サイクル特性を改善するものとして、化学式Lix MoO2 (MはCo、Ni、Fe、Mnのうちから選択される1種又は2種以上の元素を表す)で示されるリチウム含有複合酸化物(特開平2−306022号公報)、化学式Lix Co1-y My O2 (MはW、Mn、Ta、Nbのうちから選択される少なくとも1種、0.85≦x≦1.3、0.05≦y≦0.35)で示されるリチウム含有複合酸化物(特開平3−201368号公報)、化学式Lix My Gez Op (MはCo、Ni、Mnのうちから選ばれる1種以上の遷移金属元素、0.9≦x≦1.3、0.8≦y≦2.0、0.01≦z≦0.2、2.0≦p≦4.5)で示されるリチウム含有複合酸化物(特開平7−29603号公報)、Lix M1-y Ay O2 (Mは遷移金属であり、Aは遷移金属Mよりも小さいイオン半径を有し、かつそのカチオンが6配位する金属、x≦1.0、0.1≦y≦0.4)で表されるリチウム含有複合酸化物(特開平5−283075号公報)、容量、サイクル特性を改善するものとして、Lia Nib M1c M2d O2 (M1はCo、M2はSi、P、Ga、Sb、Tl、Pb、Biの群から選ばれる1種以上の元素)で示される層状構造を有するリチウム含有複合酸化物(特開平8−78005号公報)、Lia Nib M1c M2d O2 (M1はMn、Ti、Cr、Fe、V、Cu、M2はAl、In、Snの群から選ばれる1種以上の元素)で示される層状構造を有するリチウム含有複合酸化物(特開平8−78007号公報)、Lia Nib M1c M2d O2 (M1はTi、V、Cr、Cuであり、M2はB、Si、P、Ga、Ge、Sb、Tl、Pb、Biの群から選ばれる1種以上の元素)で示される層状構造を有するリチウム含有複合酸化物(特開平8−78008号公報)、Lia Mb Nic Cod Oe (MはAl、Mn、Sn、In、Fe、V、Cu、Mg、Ti、Zn、Moから選ばれる1種以上の金属、0<a<1.3、0.02≦b≦0.5、0.02≦b≦0.5、0.02≦d/c+d≦0.9、1.8<e<2.2、b+c+d=1)で示されるリチウム含有複合酸化物(特開平5−242891号公報)などが提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
今後、二次電池に対しては、これまで以上の高電力容量化が要求されるが、特開昭55−136131号公報に開示されているLix CoO2 では限界に達しており、Lix CoO2 よりも高い起電力を有する材料が求められている。すなわち、Lix CoO2 系単電池の充電終止電圧は4.2V以下であり、この充電条件ではLix CoO2 の理論容量の約6割の充電量に留まっている。それゆえ、単電池の充電終止電圧を4.2Vよりも高くすることにより、電力容量の増加を図ることは可能であるが、充電量の増加に伴い、Lix CoO2 の結晶構造が崩壊してサイクル寿命が短くなる。また、上記のように充電量を増加させた場合、Lix CoO2 の結晶構造が安定性を欠くようになるため熱的安定性が低下するなどの問題を生じることになる。したがって、高電力容量化の要求に応えるためには、従来よりも高い電圧領域で安全にかつ可逆性良く充放電を行うことができる結晶構造の安定な材料が必要である。
【0008】
また、従来のLix CoO2 系単電池の放電終止電圧は3.2V以下であるが、これまで以上に二次電池の高電力容量化が求められている今日、放電終止電圧もできるだけ高くする必要があり、特に放電末期における電位低下が少なく、従来よりも高い電圧で放電を止めてもサイクル可逆性の良好な材料が必要である。しかるに、Lix CoO2 系単電池の放電終止電圧を3.2Vよりも高くすると、放電末期における電位低下が大きいため完全放電をすることができず、充電に対する放電の電気量効率が著しく低下する。また、完全放電ができないために、Lix CoO2 の結晶構造が崩壊しやすくなり、サイクル寿命が短くなる。
【0009】
さらに、上記のように終止電圧を4.2V以上にする充電条件では、正極活物質の結晶構造の崩壊によるサイクル寿命の低下以外にも、正極活物質の活性点の存在により、電解液(液状電解質)が酸化分解して正極表面に皮膜を形成し、内部抵抗が増加してサイクル寿命が短くなる場合がある。
【0010】
また、これまで提案されている化学式Lix MO2 (MはCo、Ni、Fe、Mnのうちから選択される1種又は2種以上の元素を表す)で示されるリチウム含有複合酸化物(特開平2−306022号公報)は、従来の作動電圧、すなわち、単電池で4.2V以下の充電電圧および3.2V以下の放電電圧領域においては、サイクル寿命の改善に効果が見られるが、単電池で4.2Vよりも高い電圧まで充電したり、単電池で3.2Vよりも高い電圧で放電を終了すると、正極活物質の結晶構造が崩壊したり、電解液が分解して正極表面に皮膜を形成し、内部抵抗を増加させたり、電気量効率を低下させるなどの支障が生じ、電池寿命を短くさせるという問題がある。
【0011】
また、化学式Lix Co1-y My O2 (MはW、Mn、Ta、Nbのうちから選択される少なくとも1種、0.85≦x≦1.3、0.05≦y≦0.35)で示されるリチウム含有複合酸化物(特開平3−201368号公報)や、Lix M1-y Ay O2 (Mは遷移金属であり、Aは遷移金属Mよりも小さいイオン半径を有し、かつそのカチオンが6配位する金属、x≦1.0、0.1≦y≦0.4)で表されるリチウム含有複合酸化物(特開平5−283075号公報)、Lia Nib M1c M2d O2 (M1はCo、M2はSi、P、Ga、Ge、Sb、Tl、Pb、Biの群から選ばれる1種以上の元素)で示される層状構造を有するリチウム含有複合酸化物(特開平8−78005号公報)、Lia Nib M1c M2d O2 (M1はMn、Ti、Cr、Fe、V、Cu、M2はAl、In、Snの群から選ばれる1種以上の元素)で示される層状構造を有するリチウム含有複合酸化物(特開平8−78007号公報)、Lia Nib M1c M2d O2 (M1はTi、V、Cr、Cuであり、M2はB、Si、P、Ga、Ge、Sb、Tl、Pb、Biの群から選ばれる1種以上の元素)で示される層状構造を有するリチウム含有複合酸化物(特開平8−78008号公報)、Lia Mb Nic Cod Oe (MはAl、Mn、Sn、In、Fe、V、Cu、Mg、Ti、Zn、Moから選ばれる1種以上の金属、0<a<1.3、0.02≦b≦0.5、0.02≦b≦0.5、0.02≦d/c+d≦0.9、1.8<e<2.2、b+c+d=1)で示されるリチウム含有複合酸化物(特開平5−242891号公報)なども、前記Lix MO2 で示されるリチウム含有複合酸化物の場合と同様である。
【0012】
一方、化学式Lix My Gez Op (MはCo、Ni、Mnのうちから選ばれる1種以上の遷移金属元素、0.9≦x≦1.3、0.8≦y≦2.0、0.01≦z≦0.2、2.0≦p≦4.5)で示されるリチウム含有複合酸化物(特開平7−29603号公報)では、上限電圧が4.5Vの条件下で充放電を行った時のサイクル特性の改善を図っており、50サイクル後の容量維持率が70〜75%まで向上している。しかし、実際の電池では500サイクル後でも80%以上の容量維持率が必要であり、サイクル寿命の面でまだ不充分である。さらに安全性試験において発火しやすく、熱安定性の改善が必要である。
【0013】
このように、従来よりも高い電圧領域で結晶構造の安定な正極活物質はいまだ提供されておらず、そのため高電圧下でも安全で可逆的な充放電が可能な非水二次電池はいまだ得られていない。
【0014】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決し、高電圧、高容量で、かつ安全性の高い非水二次電池を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、正極集電体の少なくとも一方の面に正極合剤層を形成してなる正極、負極および非水系の電解質を有する非水二次電池であって、有機フッ素系溶媒、有機イオウ系溶媒、含フッ素有機リチウム塩より選ばれる少なくとも1種を添加した電解質を用い、前記正極の活物質が、一般式Ay+eCo1−fMfOg(Aはアルカリ金属元素またはアルカリ土類金属元素の少なくとも1種の元素を表し、MはAおよびCoを除く金属元素であって、少なくともGeを含む1種以上の元素を表し、y、e、f、gは、それぞれ、0<y≦1、0≦e≦0.2、0.0001≦f≦0.2、2≦g≦2.5である)で表される複合酸化物であり、その放電電位曲線がLi基準電位で4.0V以上4.2V以下の領域に変曲点を有し、かつ、前記正極活物質の表面に、C、N、S、P、Si、F、Cl、IおよびBrより選ばれる少なくとも1種の元素を含む皮膜が形成されることにより、正極合剤層表面のXPS分析で291eV付近、530eV付近および532eV付近にピークを有していることを特徴とするものであり、高電圧、高容量で、かつ安全性の高い非水二次電池を提供するものである。
【0016】
また、本発明は、上記非水二次電池を備え、該電池に対してその正極電位の上限値が、Li基準電位で4.4V以上4.6V以下となるように充電を行うことを特徴とする非水二次電池のシステムも提供するものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の非水二次電池においては、高電圧領域での安全性を確保するために、その放電電位曲線において、Li基準電位で4.0V以上4.2V以下の領域に変曲点を有し、かつ、正極合剤層表面のXPS分析で291eV付近、530eV付近および532eV付近にピークを有していることが必要であるが、そのためには、正極合剤中の正極活物質を母材とする主剤の組成が一般式Ax+a Co1-b Mb Xc Od (Aはアルカリ金属元素またはアルカリ土類金属元素の少なくとも1種の元素を表し、MはGe、Ti、Ta、Nb、Al、Fe、NiなどのAおよびCoを除く金属元素の少なくとも1種の元素を表し、XはC、N、S、P、Si、F、Cl、IおよびBrより選ばれる少なくとも1種の元素を表し、x、a、b、c、dはそれぞれ、0<x≦1、0≦a≦0.2、0.0001≦b≦0.2、0.0001≦c≦20、1≦d≦5である)で表されるものであることが好ましい。この組成が一般式Ax+a Co1-b Mb Xc Od で表される主剤とは、正極活物質を母材として電池内で電解質中の成分や正極合剤中の導電助剤やバインダー(ただし、フッ素バインダーを除く)などから形成されるものである。また、A、Co、MについてはICP分析で分析を行うが、X、Oについては、けい光X線にて分析するので、このX、Oの量は、前記主剤の正極表面の組成を反映したものとなり、正極表面での電解液との反応を抑制できるか否かを表す重要な要素となる。
【0018】
前記主剤の母材となる正極活物質は、一般式Ay+eCo1−fMfOg(Aはアルカリ金属元素またはアルカリ土類金属元素の少なくとも1種の元素を表し、MはGe、Ti、Ta、Nb、Al、Fe、Niなどの、AおよびCoを除く金属元素であって、少なくともGeを含む1種以上の元素を表し、y、e、f、gは、それぞれ、0<y≦1、0≦e≦0.2、0.0001≦f≦0.2、2≦g≦2.5である)で表されるLixCoO2構造を有する複合酸化物であり、そのMに関してはそれに属するいずれの元素でも効果があるが、特にGeを含む。MがGeの場合を例にとると、少なくとも0.001≦f≦0.03、特に0.001≦f≦0.009の範囲において、特異な電子構造を採ることができる。
【0019】
また、本発明の非水二次電池は、前記のように、その0.2C放電電位曲線においてLi基準電位で4.0V以上4.2V以下の領域に変曲点を有し、かつ正極合剤層表面のXPS分析で291eV付近、530eV付近および532eV付近にピークを有するが、ピーク分離した場合のそれぞれのピークの原子比はそれぞれ2原子%以上、2原子%以上、0.1原子%以上であり、2.5kV、20mAでアルゴンエッチングを60秒間行った場合に532eVと530eVのピーク原子%比(I532eV/I530eV)が表面の値より50%以下であることが好ましい。
【0020】
上記正極活物質を母材とする主剤の組成を表す一般式Ax+aCo1−bMbXcOdにおいて、例えば、AがLiの場合、Li量を表すxの値は、充電、放電により変動する。すなわち、充電によりLiイオンのディインターカレーションが起こりxの値は小さくなる。つまり、xの値は、0<x≦1で変動し、充電によりxは0に近付き、aの値は0≦a≦0.2である。aが0.2より大きい場合は、焼成の過程で生成する炭酸リチウム、酸化リチウム、水酸化リチウムなどの副生成物量が多くなりすぎるため、それらの物質が正極を作製する際に使用するバインダーと反応して、正極の作製を困難にする。正極の作製を容易にするためには、副生成物が少ないほど好ましく、aの値は0.2以下である。また、金属元素のMの量を表すbの値は、充放電により変動しないが、0.0001≦b≦0.2の範囲である。bの値が0.0001より小さい場合、Mの効果が充分に発現しないため、平均電圧の低下が著しく、高電圧で充電したときのサイクル特性も悪い。また、bの値が0.2より大きい場合には、電池特性の低下が大きくなる傾向があり好ましくない。金属元素Mを添加することによって0.2C放電電位曲線においてLi基準電位で4.0V以上4.2V以下の領域に変曲点を有するようになり、4.0Vから4.2Vの間で結晶構造が変化して高電圧下においても劣化しにくくなる。この変曲点は特に4.1V以上が好ましい。
【0021】
そして、上記のような特徴がゆえに、本発明の非水二次電池は正極電位の上限値がLi基準電位で4.4V以上4.6V以下の領域まで充電することが可能になる。Xは高電圧下で上記一般式Ax+a Co1-b Mb Xc Od で表される主剤の母材となる正極活物質の表面を電解液との反応から保護するための成分である。このXとしては、C、N、S、P、Si、F、Cl、I、Brの少なくとも1種以上で、特にF、C、Sを含むことが好ましく、このXが正極活物質の表面を覆うことによって高電圧に耐え得る効果が奏されることになる。そして、このXの割合を示すcの値は、0.0001≦c<20であるが、2.5以上が好ましく、3以下が好ましい。高電圧で正極活物質を保護するためには有機フッ素化合物を皮膜表面または皮膜中に存在させて高電圧安定性を確保するとともに、皮膜のイオン伝導パスを形成して電気特性を確保するためC=O結合を有する化合物を皮膜中に含有させることが好ましく、また、皮膜が厚すぎると電気特性が低下するため薄い皮膜であることが好ましい。
【0022】
本発明において組成が一般式Ax+a Co1-b Mb Xc Od で表される主剤は、母材となる正極活物質に関して特定の合成工程と特定の電池の製造工程を経て形成される。すなわち、組成が一般式Ax+a Co1-b Mb Xc Od で表される主剤を形成するためには正極活物質の合成にあたって特定の混合条件と焼成温度、焼成雰囲気、焼成時間、出発原料と特定の電池製造条件の選択が必要である。正極活物質の合成にあたっての好ましい混合条件は、エタノールまたは水を原料粉末に加えて、遊星ボールミルで0.5時間以上混合することであり、より好ましい混合条件は、エタノールと水を50:50の容積比で原料粉末に加えて、遊星ボールミルで20時間以上混合することである。この混合過程において、原料粉末は充分に粉砕、混合され、均一な分散液ができる。これをスプレードライヤーなどを用いて均一性を保ったまま乾燥させる。好ましい焼成温度は750〜1050℃であり、より好ましい焼成温度は850〜950℃である。また、好ましい焼成雰囲気は空気中であり、より好ましい焼成雰囲気は酸素中である。好ましい焼成時間は10〜60時間であり、より好ましい焼成時間は20〜40時間である。さらに、好ましい出発原料は、Li原料ではLi2 CO3 であり、Al、Fe、Y、Zr、Ti、Niなどの異種金属原料ではそれらの金属の硝酸塩、水酸化物または1μm以下の粒径の酸化物であり、特にGeに関してはその原料としてはGeO2 を用いることが好ましい。また、CoとAl、Fe、Y、Zr、Ti、Ni、Geなどの水酸化物の共沈体を用いてもよい。
【0023】
本発明において組成が一般式Ax+a Co1-b Mb Xc Od で表される主剤の母材となる正極活物質は、一般式Ay+e Co1-f Mf Og で表される複合酸化物であるが、その正極活物質は、Geなどの異種元素を限定された量含有することによって従来とは異なる電子構造を持つことができ、それによって、高電圧下でも安定性を示し得る。
【0024】
一方で、正極活物質の表面保護皮膜形成成分であるXは、例えば、電解質中にフッ素を含む有機炭酸エステルなどを添加することによって、電池の初期充電中に正極活物質の表面に皮膜として形成される。皮膜を形成させるための添加剤としては、含フッ素炭酸エステルなどの有機フッ素系溶媒、有機イオウ系溶媒、含フッ素有機リチウム塩の少なくとも1種を用いることが好ましい。それらの具体例としては、例えば、
【0025】
F−DPC
〔CF3 CF2 CH2 O(C=O)OCH2 CF2 CF3 〕、
F−DEC
〔CF3 CH2 O(C=O)OCH2 CF3 〕、
ブチルサルフェート
(CH3 CH2 CH2 CH2 OSO2 OCH2 CH2 CH2 CH3 )、
ブチルスルフォン
(CH3 CH2 CH2 CH2 SO2 CH2 CH2 CH2 CH3 )、
ポリマーイミド塩
〔−N(Li)SO2 OCH2 (CF2 )4 CH2 OSO2 −〕n
(ただし、式中のnは2〜100)、
その他
(CF3 CF2 SO2 )2 NLi
〔(CF3 )2 CHOSO2 〕2 NLi
などが挙げられる。
【0026】
このような添加剤は、それぞれ単独で用いることができるが、特に有機フッ素系溶媒と含フッ素有機リチウム塩とを併用することが好ましい。添加量は電解質塩と溶媒全体(ポリマー電解質の場合はポリマーを含む)との合計量に対し30重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましく、また、0.1重量%以上が好ましく、2重量%以上がより好ましく、5重量%以上がさらに好ましい。これは、添加量が多すぎると電気特性が低下するおそれがあり、また、少なすぎると良好な被膜形成が難しくなるからである。
【0027】
正極は、例えば、上記一般式Ay+e Co1-f Mf Og で表される複合酸化物からなる正極活物質に、必要に応じて、例えば黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラックなどの導電助剤と例えばポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなどのバインダーを添加して混合し、溶剤を用いてペースト状にし(バインダーはあらかじめ溶剤に溶解させておいてから正極活物質などの混合してもよい)、得られた正極合剤含有ペーストをアルミニウム箔などからなる正極集電体に塗布し、乾燥して正極合剤層を形成し、必要に応じて圧延する工程を経ることによって作製される。ただし、正極の作製方法は、上記例示のものに限られることなく、他の方法によってもよい。
【0028】
負極に用いる活物質は、リチウムイオンをドープ・脱ドープできるものであればよく、例えば、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭などの炭素材料が挙げられる。また、Si、Sn、Inなどの合金、あるいはLiに近い低電位で充放電できるSi、Snなどの酸化物、Li2.6 Co0.4 NなどのLiとCoの窒化物などの化合物なども負極活物質として用いることができる。
【0029】
負極は、例えば、上記負極活物質に、必要に応じて、正極の場合と同様のバインダーなどを加え、混合して負極合剤を調製し、それを溶剤に分散させてペーストにし(バインダーはあらかじめ溶剤に溶解させておいてから負極活物質などと混合してもよい)、その負極合剤含有ペーストを銅箔などからなる負極集電体に塗布し、乾燥して負極合剤層を形成し、必要に応じて、圧延成形する工程を経ることによって作製される。ただし、負極の作製方法は、上記例示の方法に限られることなく、他の方法によってもよい。
【0030】
本発明の非水二次電池において、非水系の電解質としては、通常、非水系の液状電解質(以下、これを「電解液」という)が用いられる。そして、その電解液としては、例えば、有機溶媒などの非水系溶媒にリチウム塩などの電解質塩を溶解させた非水溶媒系の電解液が用いられる。その電解液の溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピオンカーボネートなどの鎖状エステル、あるいはエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどの誘電率の高い環状エステル、あるいは鎖状エステルと環状エステルの混合溶媒などが挙げられ、特に鎖状エステルを主溶媒とした環状エステルとの混合溶媒が適している。
【0031】
また、溶媒としては、上記エステル以外にも、例えば、リン酸トリメチルなどの鎖状リン酸トリエステル、1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチル−テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなども用いることができる。さらに、アミン系またはイミド系有機溶媒やスルホランなどのイオウ系有機溶媒なども用いることができる。
【0032】
電解液の調製にあたって溶媒に溶解させる電解質塩としては、例えば、LiClO4 、LiPF6 、LiBF4 、LiAsF6 、LiSbF6 、LiCF3 SO3 、LiC4 F9 SO3 、LiCF3 CO2 、Li2 C2 F4 (SO3 )2 、LiN(RfSO2 )(Rf′SO2 )、LiC(RfSO2 )3 、LiCn F2n+1SO3 (n≧2)、LiN(RfOSO2 )2 〔ここでRfとRf′はフルオロアルキル基〕などが挙げられ、これらはそれぞれ単独でまたは2種以上混合して用いることができる。そして、この電解質塩としては、特に炭素数2以上の含フッ素有機リチウム塩が好ましい。つまり、上記含フッ素有機リチウム塩はアニオン性が大きく、かつイオン分離しやすいので上記溶媒に溶解しやすいからである。電解液中における電解質塩の濃度は、特に限定されるものではないが、0.3mol/l以上が好ましく、0.4mol/l以上がより好ましく、また、1.7mol/l以下が好ましく、1.5mol/l以下がより好ましい。
【0033】
本発明において、非水系の電解質としては、上記電解液以外にも、ゲル状ポリマー電解質を用いることができる。そのようなゲル状ポリマー電解質は、上記電解液をゲル化剤によってゲル化したものに相当するが、そのゲル化にあたっては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリロニトリルなどの直鎖状ポリマーまたはそれらのコポリマー、紫外線や電子線などの活性光線の照射によりポリマー化する多官能モノマー(例えば、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどの四官能以上のアクリレートおよび上記アクリレートと同様の四官能以上のメタクリレートなど)などが用いられる。ただし、モノマーの場合、モノマーそのものが電解液をゲル化させるのではなく、上記モノマーをポリマー化したポリマーがゲル化剤として作用する。
【0034】
上記のように多官能モノマーを用いて電解液をゲル化させる場合、必要であれば、重合開始剤として、例えば、ベンゾイル類、ベンゾインアルキルエーテル類、ベンゾフェノン類、ベンゾイルフェニルフォスフィンオキサイド類、アセトフェノン類、チオキサントン類、アントラキノン類などを使用することができ、さらに重合開始剤の増感剤としてアルキルアミン類、アミノエステルなども使用することもできる。
【0035】
また、本発明においては、上記電解液やゲル状ポリマー電解質以外に、固体電解質も用いることができる。その固体電解質としては、無機系固体電解質、有機系固体電解質のいずれも用いることができる。
【0036】
セパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポリマーなどのポリオレフィン系の微孔性フィルムや不織布などが好適に用いられる。
【0037】
本発明の非水二次電池は、高電圧、高容量で、かつ安全性が高いという特徴を有している。すなわち、従来の非水二次電池では、4.2Vよりも高い電圧で充電し、3.2Vよりも低い電圧で放電を行うと、正極活物質の結晶構造が崩壊して容量低下を引き起こしたり、熱安定性が低下して電池が発火するなどの支障が生じ、実用性を欠いていた。しかし、本発明の非水二次電池では、4.2Vよりも高い電圧まで充電し、3.2Vよりも低い電圧で放電を終了しても、正極活物質の結晶構造が崩壊せず、容量低下や熱安定性の低下がほとんど生じない。従って、本発明の非水二次電池は、高電圧、高容量で、かつ安全性が高いという特徴を有している。
【0038】
また、従来の正極活物質では、平均電圧が低いため、単電池の充電終止電圧が4.2Vよりも高い条件下で充放電サイクル試験を繰り返すと、正極が多量のLiイオンを出し入れする。これは、電池を過充電条件でサイクル試験することと同じである。従って、このような苛酷な条件では、従来の正極活物質を用いると結晶構造を維持することができず、熱安定性が低下したり、サイクル寿命が短いなどの不都合が生じていた。これに対し、本発明の正極活物質を用いれば、そのような不都合が解消でき、高電圧下でも可逆的に充放電が可能な非水二次電池を提供することができる。
【0039】
本発明の非水二次電池は、上記のような高電圧、高容量で、かつ安全性が高いという特徴を生かして、例えば、ノートパソコン、ペン入力パソコン、ポケットパソコン、ノート型ワープロ、ポケットワープロ、電子ブックプレーヤー、携帯電話、コードレスフォン子機、ページャ、ハンディターミナル、携帯コピー、電子手帳、電卓、液晶テレビ、電気シェーバー、電動工具、電子翻訳機、自動車電話、トランシーバ、音声入力機器、メモリカード、バックアップ電源、テープレコーダー、ラジオ、ヘッドフォンステレオ、携帯プリンタ、ハンディクリーナー、ポータブルCD、ビデオムービー、ナビゲーションシステムなどの機器用の電源や、冷蔵庫、エアコン、テレビ、ステレオ、温水器、オーブン電子レンジ、食器洗い器、洗濯機、乾燥機、ゲーム機器、照明機器、玩具、ロードコンディショナー、医療機器、自動車、電気自動車、ゴルフカート、電動カート、電力貯蔵システムなどの電源として使用することができる。また、民生用の他、宇宙用としても用いることができる。
【0040】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はそれらの実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することができる。
【0041】
実施例1
まず、この実施例1において正極活物質として用いる複合酸化物の合成について説明する。リチウム原料およびコバルト原料としては、Li2 CO3 とCo3 O4 を用い、それらをおおよそ3対2のモル比で混合し、それにGeO2 とAl2 O3 をCoに対して0.005原子比と0.03原子比置換させる量だけ加え、20時間混合した。この混合はエタノールと水とを50:50の容積比で原料粉末に加え、遊星ボールミルで行った。これを酸素雰囲気中で200℃で1時間保持し、さらに600℃で5時間保持した後、850℃で20時間保持して焼成した。得られた複合酸化物の組成をICP分析により調べたところ、LiCo0.965 Ge0.005 Al0.03O2 であり、X線回折により六方晶の回折像を確認した。上記Li1.0 Co0.965 Ge0.005 Al0.03O2 を一般式Ay+e Co1-f Mf Og に適合するように説明すると、AはLiで、y+eは1であり、MはGeとAlで、fは合計で0.035であり、gは2であった。
【0042】
上記LiCo0.965 Ge0.005 Al0.03O2 と、導電助剤としてのカーボンとN−メチル−2−ピロリドンにあらかじめ溶解させておいたバインダーとしてのポリフッ化ビニリデンをそれらの固形分量が重量比で88:7:5となるように、らいかい機で30分混練して正極合剤含有ペーストを調製し、得られた正極合剤含有ペーストを厚さ15μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に塗布した。ただし、Li量を表すy+eの値は充放電によって変化し、その範囲は0以上1.2以下の範囲であることを確認した。このy+eの値が1.05以下の場合には、塗布時の湿度が70%以上の高湿度化においてもまったくゲル化しなかった。そして、上記のように塗布後、乾燥して正極合剤層を形成した後、プレスで圧延し、リード体をスポット溶接した後、150℃で真空乾燥して、正極を得た。
【0043】
負極の作製にあたっては、人造黒鉛とポリフッ化ビニリデンとを重量比93:7で混合した負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンに分散させて負極合剤含有ペーストを調製した。そして、得られた負極合剤含有ペーストを厚さ10μmの銅箔からなる負極集電体の両面に塗布し、乾燥して負極合剤層を形成した後、プレスで圧延し、リード体をスポット溶接した後、150℃で5時間真空乾燥して、負極を得た。
【0044】
電解質としては、LiPF6 と〔(CF3 )2 CHOSO2 〕2 NLiとエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとF−DPC〔CF3 CF2 CH2 O(C=O)OCH2 CF2 CF3 )〕を重量比16:3:30:41:10で混合し、LiPF6 と〔(CF3 )2 CHOSO2 〕2 NLiをエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートに溶解(LiPF6 の濃度は約1.4mol/l)させることによって調製した非水溶媒系の電解液を用いた。
【0045】
上記正極と負極を微孔性ポリエチレンフィルムからなるセパレータを介して積層し、それを渦巻状に巻回して渦巻状電極体とした後、ステンレス鋼製の電池缶に挿入し、上記電解液を注入後、電池缶の開口部を封口して、直径18mm、高さ65mmで図1に示す構造の円筒形非水二次電池を作製した。
【0046】
ここで、図1に示す電池について説明すると、1は前記の正極で、2は前記の負極である。ただし、図1では、繁雑化を避けるため、正極1や負極2の作製にあたって使用した集電体などは図示していない。そして、それらの正極1と負極2はセパレータ3を介して渦巻状に巻回され、渦巻状電極体として上記特定の電解液からなる電解質4と共に電池ケース5内に収容されている。
【0047】
電池ケース5は鉄製で、その表面にはニッケルメッキが施され、電池ケース5の底部には上記渦巻状電極体の挿入に先立って、ポリプロピレンからなる絶縁体6が配置されている。封口板7は、アルミニウム製で円板状をしていて、その中央部に薄肉部7aが設けられ、かつ上記薄肉部7aの周囲に電池内圧を防爆弁9に作用させるための圧力導入口7bとしての孔が設けられている。そして、この薄肉部7aの上面に防爆弁9の突出部9aが溶接され、溶接部分11を構成している。なお、上記の封口板7に設けた薄肉部7aや防爆弁9の突出部9aなどは、図面上での理解がしやすいように、切断面のみを図示しており、切断面後方の輪郭は図示を省略している。また、封口板7の薄肉部7aと防爆弁9の突出部9aとの溶接部分11も、図面上での理解が容易なように、実際よりは誇張した状態に図示している。
【0048】
端子板8は、圧延鋼製で表面にニッケルメッキが施され、周縁部が鍔状になった帽子状をしており、この端子板8にはガス排出口8aが設けられている。防爆弁9は、アルミニウム製で円板状をしており、その中央部には発電要素側(図1では、下側)に先端部を有する突出部9aが設けられ、かつ薄肉部9bが設けられ、上記突出部9aの下面が、前記したように、封口板7の薄肉部7aの上面に溶接され、溶接部分11を構成している。絶縁パッキング10は、ポリプロピレン製で環状をしており、封口板7の周縁部の上部に配置され、その上部に防爆弁9が配置していて、封口板7と防爆弁9とを絶縁するとともに、両者の間から電解液が漏れないように両者の間隙を封止している。環状ガスケット12はポリプロピレン製で、リード体13はアルミニウム製で、前記封口板7と正極1とを接続し、渦巻状電極体の上部には絶縁体14が配置され、負極2と電池ケース5の底部とはニッケル製のリード体15で接続されている。
【0049】
この電池においては、封口板7の薄肉部7aと防爆弁9の突出部9aとが溶接部分11で接触し、防爆弁9の周縁部と端子板8の周縁部とが接触し、正極1と封口板7とは正極側のリード体13で接続されているので、通常の状態では、正極1と端子板8とはリード体13、封口板7、防爆弁9およびそれらの溶接部分11によって電気的接続が得られ、電路として正常に機能する。
【0050】
そして、電池が高温にさらされるなど、電池に異常事態が起こり、電池内部にガスが発生して電池の内圧が上昇した場合には、その内圧上昇により、防爆弁9の中央部が内圧方向(図1では、上側の方向)に変形し、それに伴って溶接部分11で一体化されている封口板7の薄肉部7aに剪断力が働いて該薄肉部7aが破断するか、または防爆弁9の突出部9aと封口板7の薄肉部7aとの溶接部分11が剥離した後、この防爆弁9に設けられている薄肉部9bが開裂してガスを端子板8のガス排出口8aから電池外部に排出させて電池の破裂を防止することができるように設計されている。
【0051】
この実施例1の電池を0.2Cで4.4Vまで定電流で充電後、4.4Vで8時間定電圧充電し、0.2Cで3.3Vまで放電する定電流放電を行い、体積エネルギー密度を評価したところ、体積エネルギー密度は0.48Wh/cm3 であった。
【0052】
また、上記と同様に4.4Vまで定電流定電圧充電した電池を60℃で10日間貯蔵し、貯蔵後の放電容量(終止電圧:3.3V)を測定し、その60℃で10日間貯蔵後の放電容量の貯蔵前の放電容量に対する容量維持率を求めたところ、容量維持率は91%であった。
【0053】
さらに、上記の実装電池と同じ正極および負極をそれぞれ2cm2 および2.5cm2 に切断して用い、かつ電解液についても上記実装電池と同じ電解液を用い、Liを参照極としてモデルセルを作製し、前記と同じ条件で充放電した。その際の放電に伴う正極活物質のLi基準電位での放電電圧変化を図2に示しているが、図2に示すように、この実施例1の電池は4.0Vから4.2Vの範囲内に電位の変曲点が存在する。なお、図2において、縦軸は電位(V)であるが、この電位(V)を詳細に表示するとLi基準電位(Vvs.Li/Li+ )であり、横軸は正極活物質当たりの放電容量(Ah/g)であって、図中の円で囲んだ部分に変曲点が存在し、変曲点は4.1Vである。
【0054】
この実施例1の電池を0.2Cで2.75Vまで放電した後、ドライボックス中で分解し、正極をジメチルカーボネートで洗浄し、真空乾燥を24時間行った後、正極合剤層の表面をXPS分析で分析したところ、290.3eVと291.9eVにそれぞれ4.5原子%と0.75原子%のピークが観測され、531.6eVに4.73原子%と529.6eVに1.7原子%のピークが観測された。また、532eVと530eVのピーク原子%比(I532eV/I530eV)は表面で2.76であったが、60秒間アルゴンエッチング後は0.90に低下しており、表面での値に対する割合は32%であった。なお、XPS分析は島津/KRATOS社製のAXIS−HSi(商品名)を用い、X線源;Mg−Kα(管電圧15kV、管電流15mA)、レンズ条件;SLOTM(分析面積600μm×1000μm)、分解能;Pass Energy 40、走査速度;20eV/min、またアルゴンエッチング条件は、加速電圧;2.5kV、励起電流;20mA、アルゴンガス圧力;3×10-5Paであった。
【0055】
さらに、前記と同様に洗浄、乾燥した正極をジメチルアセトアミドでバインダーを抽出(この抽出処理によりフッ素系バインダーのポリフッ化ビニリデンが抽出される)した後、洗浄し、ICP分析を行った。ただし、C、O、F、P原子については、けい光X線分析での表面でのCoの原子%とM原子すべての原子%との和を1として求めた換算値である。0.2Cで2.75Vまで放電時のけい光X線分析でのCoの原子%とMの原子%との和を1.0として他の元素の比率を求めたところ、正極合剤中の主剤の組成はLi0.95Co0.965 Ge0.004 Al0.031 P0.001 C1.62F0.9 O2.16であった。上記Li0.95Co0.965 Ge0.004 Al0.031 P0.001 C1.62F0.9 O2.16を一般式Ax+a Co1-b Mb Xc Od に適合するように説明すると、AはLiで、x+aは0.95であり、MはGeとAlで、bは0.035であり、XはP、C、Fで、cは2.52であり、dは2.16であった。
【0056】
比較例1
まず、この比較例1において正極活物質として用いる複合酸化物の合成を次に示すように行った。原料としては、Li2 CO3 とCo3 O4 をおおよそ3対2のモル比となるように秤量し、それらをボールミルを使用して室温で15時間混合した。得られた混合物を空気雰囲気中で850℃で5時間保持して焼成した。得られた複合酸化物の組成をICP分析により調べたところ、組成はLiCoO2 であり、X線回折により六方晶の単相化を確認した。電解液としては、実施例1のようにF−DPCを添加せず、そのぶん、エチルメチルカーボネートを増量したものを用い、実施例1と同様に4.4V充放電試験を行い、かつ、実施例1と同様に貯蔵試験を行ったところ、貯蔵後の容量維持率は82%にすぎなかった。
【0057】
さらに、比較例1の電池についても、前記実施例1の場合と同様に正極合剤層の表面をXPS分析で分析したところ、292eV付近にピークはなく、531.6eVに3.2原子%のピークと、529.6eVに1.3原子%のピークが観測された。また、532eVと530eVのピーク原子%比(I532eV/I530eV)は表面で2.5であったが、60秒間アルゴンエッチング後は1.5であり、表面での値に対する割合は72%であった。また、この比較例1の電池についても、前記実施例1の電池の場合と同様にモデルセルを作製し、その放電に伴うLi基準電位での放電電位変化を図2に示しているが、図2に示すように、この比較例1の電池は4.0V〜4.2Vの範囲に電位の変曲点が存在しなかった。
【0058】
また、前記と同様に洗浄、乾燥した正極をジメチルアセトアミドでバインダーを抽出(この抽出処理によりフッ素系バインダーのポリフッ化ビニリデンが抽出される)した後、洗浄し、ICP分析を行った。ただし、C、O、F、P原子については、けい光X線分析での正極表面のCoの原子%とM原子すべての原子%との和を1として求めた換算値である。放電時のLiの値を1.0として、すべての原子比を求めたところ、Li0.95Co1.0 F0.66P0.002 C1.8 O3.1 であった。
【0059】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、高電圧、高容量で、かつ安全性の高い非水二次電池を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る非水二次電池の一例を示す縦断面図である。
【図2】実施例1の電池と比較例1の電池の放電に伴う放電電位変化を示す図である。
【符号の説明】
1 正極
2 負極
3 セパレータ
Claims (2)
- 正極集電体の少なくとも一方の面に正極合剤層を形成してなる正極、負極および非水系の電解質を有する非水二次電池であって、
有機フッ素系溶媒、有機イオウ系溶媒、含フッ素有機リチウム塩より選ばれる少なくとも1種を添加した電解質を用い、
前記正極の活物質が、一般式A y+e Co 1−f M f O g (Aはアルカリ金属元素またはアルカリ土類金属元素の少なくとも1種の元素を表し、MはAおよびCoを除く金属元素であって、少なくともGeを含む1種以上の元素を表し、y、e、f、gは、それぞれ、0<y≦1、0≦e≦0.2、0.0001≦f≦0.2、2≦g≦2.5である)で表される複合酸化物であり、
その放電電位曲線がLi基準電位で4.0V以上4.2V以下の領域に変曲点を有し、かつ、前記正極活物質の表面に、C、N、S、P、Si、F、Cl、IおよびBrより選ばれる少なくとも1種の元素を含む皮膜が形成されることにより、正極合剤層表面のXPS分析で291eV付近、530eV付近および532eV付近にピークを有していることを特徴とする非水二次電池。 - 請求項1記載の非水二次電池を備え、該電池に対し、その正極電位の上限値が、Li基準電位で4.4V以上4.6V以下となるように充電を行うことを特徴とする非水二次電池のシステム。
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