<電池の充電方法および充電装置>
以下に、本実施形態に係る二次電池の充電方法、充電装置および二次電池の構成の一例を説明する。
本実施形態に係る充電方法は、二次電池の満充電状態の開放電圧Vfより高い充電電圧Vcを電池に印加して充電を行う工程を含む。ここで、充電電圧Vcが高いほど充電電流を大きくすることができ、充電時間を短くすることができる。そのため、印加する充電電圧Vcと満充電状態の開放電圧Vfとの電圧差Vaは大きい方が望ましい。Vaは一般には0.1Vより大きく、好ましくは0.2V以上であり、より好ましくは0.3V以上、さらに好ましくは0.4V以上、さらに好ましくは0.5V以上、特に好ましくは0.6V以上である。また、Vaは、一般には1.5V以下であり、1.1V以下であることが好ましく、1.0V以下であることがより好ましい。また、印加される充電電圧Vcとしては、一般には5.5V以下、好ましくは5.2V以下、より好ましくは5.1V以下であると、二次電池の充放電サイクルにおける電解質の分解、電極活物質の不動態化、ガス発生などを抑制することができるため好ましい。また、特に限定されるものではないが、充電電圧Vcが4.2Vより大きく、好ましくは4.3V以上であると、充電時間を短縮する効果が大きい。
本実施形態に係る充電方法によって充電される二次電池は、単一のリチウム二次電池であってもよく、または、この二次電池が複数並列に接続された組電池、複数直列に接続された組電池、またはそれらの組み合わせであってもよい。
本実施形態に係る充電方法によって充電される二次電池が、複数の二次電池が直列に接続された直列の組電池である場合、組電池全体での満充電状態の開放電圧は、各二次電池の満充電状態の開放電圧の値Vfに直列接続されている電池の数nを乗じた値、すなわちVf×nとなる。従って、本実施形態に係る充電方法においては、組電池全体に対して充電電圧(Vf+Va)×nを印加して充電を行う工程を含むことが好ましい。この時、組電池を構成する各二次電池に印加される電圧の値がVf+Vaを超えないように電圧が印加されることが好ましい。従って、本実施形態に係る充電装置は、後述のとおり、各二次電池の正極負極間に印加される電圧を制御する手段を備えていることが好ましい。
本実施形態に係る充電方法においては、定電圧充電を行う工程のみで充電工程を構成してもよく、あるいは、定電圧充電を行う工程と定電流充電を行う工程を組み合わせて充電工程を構成してもよい。定電圧充電を行う工程のみで充電を行う場合、充電装置の構成を簡単にすることできる。一方、定電圧充電を行う工程と定電流充電を行う工程を組み合わせることにより、高電圧を印加することにより充電時間を短縮し、かつ、充電電流を抑制することができる。
以下に、定電圧充電と定電流充電を行う工程を含む実施形態について説明する。上記のとおり、本発明に係る充電方法に依れば、従来に比べ高い電圧を用いて充電できることから、充電電流が従来より大きな値となる。これは組電池に充電する場合により顕著となる。従って、特に大きな電流が流れる可能性がある充電初期に、直列に接続された電池群を所望の定電流で充電する工程を含むことが望ましい。このようにすることで、充電電流を複数の電池で共有でき、充電電流の増大を抑制することができる。
この定電流で充電する工程は、各二次電池に印加される充電電圧が上述のVf+Vaに到達するまで行ってもよく、到達する前に終了してもよく、定電流で充電する工程の後に、充電電圧Vf+Vaの定電圧で充電する工程を含む定電圧充電の工程を所望の条件まで行っても良い。
また、二次電池が複数接続されている実施形態においては、二次電池の接続方法を変更する回路を付帯させてもよい。これにより、例えば、並列に接続された複数の電池を充電する場合、充電初期に直列接続に切り替えて前述の定電流充電を行うことが可能である。また、直列接続に切り替えて定電流充電を実施後、直列接続電池数を減らしてさらに定電流充電を行う工程を含んでも良い。また、このような定電流充電工程を行った後に、さらに接続を切り替え、単一の電池に対してさらに定電圧充電を行ってもよい。このように充電することで、充電電流を抑制しながら、かつ、高電圧印加による充電時間の短縮を図ることができる。
本実施形態に係る充電装置は、電力供給部と、二次電池の満充電状態の開放電圧を記憶する記憶部とを備える。
一実施形態において、充電装置は、さらに、各二次電池に印加される電圧を測定する手段および印加される電圧を制御する手段を備えることが好ましい。これらの手段は、二次電池が組電池である場合に特に有効であり、例えば、組電池を構成する一部の電池にショートが発生しても、組電池を構成する各電池に印加される電圧がVf+Vaを超えることのないようにすることができる。具体的には、本実施形態に係る充電装置は、常時または定期的に各電池の正極・負極間電圧を測定する電圧測定部、さらには、印加電圧がVf+Vaを超えた場合または超えないように、印加電圧を低くする機能または電圧印加を中断する機能を有する充電電圧制御部を備えることが好ましい。また、充電電圧制御部は、各二次電池に印加される電圧が均等になるように充電電圧を調整する機能を有していてもよい。
充電装置は、さらに、過充電を防ぐ手段を備えることが好ましい。
一実施形態において、充電装置は、さらに、二次電池の開放電圧を測定する開放電圧測定部、および、その測定結果と予め設定した電圧とを比較する電圧値比較部を備えることが好ましい。この実施形態に係る充電方法としては、充電工程に、予め設定された時間電圧印加を行う工程と、開放電圧を測定および評価する工程とを含み、測定された開放電圧が予め設定した電圧値より低い場合は再度充電(電圧印加)を行い、測定された開放電圧が予め設定した電圧値以上の場合は充電(電圧印加)を休止(開放したまま放置)し、再度開放電圧の測定を行う工程を含む方法が挙げられる。この時、開放電圧が、予め設定した目標電圧(例えば、充電終止電圧)に達するまで上記の工程を繰り返すとよい。上記工程において、再度充電(電圧印加)を行う時間および充電(電圧印加)を休止(開放したまま放置)する時間を、直前に測定した開放電圧の値に基づいて過充電にならない値に設定すると、安全であるとともに、開放電圧測定の回数を最適化し充電時間を短縮することができるため好ましい。直前に測定された開放電圧に基づき再度電圧印加を行う時間および電圧印加を休止する時間を設定する方法としては、事前に同様の特性を持つ複数の電池を評価したデータを用いて、電池の開放電圧値と、電圧印加時間または電圧印加休止時間と、の間の関係をもとめ、利用する方法等が挙げられる。また、複数の電池を同時に充電する実施形態において、充電工程に、開放電圧を評価する工程を含む場合、この開放電圧を測定する工程を行っていて充電電流が流れていない電池と、充電中の(すなわち、電圧が印加されている)電池とを入れ替えていく工程を含むことにより、充電電流を小さくすることができる。
また、一実施形態において、充電装置は、さらに、二次電池に供給される充電電流の電流値を測定する測定部、および測定結果と予め設定した値とを比較する比較部とを備えることが好ましい。この実施形態に係る充電方法としては、充電工程に、充電電流の電流を測定する工程を含み、測定された電流値またはその電流値の変化速度が予め設定した値より小さくなった時点で充電を終了する方法が挙げられる。この実施形態では、前述の開放電圧を測定する方法のように充電を中断する必要がないため、充電にかかる時間をさらに短くできるという利点がある。
<二次電池の構成>
本実施形態において、上記の充電方法によって充電される二次電池は、リチウムの吸蔵放出が可能な正極および負極と、非水電解溶媒および支持塩を含む電解液と、を有し、非水電解溶媒は、式(1)で表されるフッ素化リン酸エステルおよびフッ素化エーテルから選ばれる1種以上を含む、リチウム二次電池である。
[式(1)において、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立に、置換又は無置換のアルキル基であって、R
1、R
2及びR
3の少なくとも1つはフッ素含有アルキル基である。]。
(電解液)
電解液は、非水電解溶媒および支持塩を含み、非水電解溶媒は上記式(1)で表されるフッ素化リン酸エステルおよびフッ素化エーテルから選択される1種以上を含む。
非水電解溶媒に含まれるフッ素化リン酸エステルおよびフッ素化エーテルの含有率の合計は、特に制限されるものではないが、非水電解溶媒中10体積%以上80体積%以下が好ましい。フッ素化リン酸エステルおよびフッ素化エーテルの非水電解溶媒中の含有率が10体積%以上であると、非水電解溶媒の耐酸化性を高め、電圧印加による分解を抑制する効果がより向上する。また、フッ素化リン酸エステルおよびフッ素化エーテルの非水電解溶媒中の含有率が80体積%以下であると、一般的にフッ素化リン酸エステルやフッ素化エーテルの比誘電率が低い事によるリチウムイオンの電離の低下を抑制することができる。フッ素化リン酸エステルおよびフッ素化エーテルの含有率の合計は、より好ましくは、非水電解溶媒中20体積%以上80体積%以下である。
フッ素化リン酸エステルとしては、例えば、リン酸トリス(トリフルオロメチル)、リン酸トリス(トリフルオロエチル)、リン酸トリス(テトラフルオロプロピル)、リン酸トリス(ペンタフルオロプロピル)、リン酸トリス(ヘプタフルオロブチル)、リン酸トリス(オクタフルオロペンチル)等が挙げられる。また、フッ素化リン酸エステルとしては、例えば、リン酸トリフルオロエチルジメチル、リン酸ビス(トリフルオロエチル)メチル、リン酸ビストリフルオロエチルエチル、リン酸ペンタフルオロプロピルジメチル、リン酸ヘプタフルオロブチルジメチル、リン酸トリフルオロエチルメチルエチル、リン酸ペンタフルオロプロピルメチルエチル、リン酸ヘプタフルオロブチルメチルエチル、リン酸トリフルオロエチルメチルプロピル、リン酸ペンタフルオロプロピルメチルプロピル、リン酸ヘプタフルオロブチルメチルプロピル、リン酸トリフルオロエチルメチルブチル、リン酸ペンタフルオロプロピルメチルブチル、リン酸ヘプタフルオロブチルメチルブチル、リン酸トリフルオロエチルジエチル、リン酸ペンタフルオロプロピルジエチル、リン酸ヘプタフルオロブチルジエチル、リン酸トリフルオロエチルエチルプロピル、リン酸ペンタフルオロプロピルエチルプロピル、リン酸ヘプタフルオロブチルエチルプロピル、リン酸トリフルオロエチルエチルブチル、リン酸ペンタフルオロプロピルエチルブチル、リン酸ヘプタフルオロブチルエチルブチル、リン酸トリフルオロエチルジプロピル、リン酸ペンタフルオロプロピルジプロピル、リン酸ヘプタフルオロブチルジプロピル、リン酸トリフルオロエチルプロピルブチル、リン酸ペンタフルオロプロピルプロピルブチル、リン酸ヘプタフルオロブチルプロピルブチル、リン酸トリフルオロエチルジブチル、リン酸ペンタフルオロプロピルジブチル、リン酸ヘプタフルオロブチルジブチル等が挙げられる。リン酸トリス(テトラフルオロプロピル)としては、例えば、リン酸トリス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)が挙げられる。リン酸トリス(ペンタフルオロプロピル)としては、例えば、リン酸トリス(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)が挙げられる。リン酸トリス(トリフルオロエチル)としては、例えば、リン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)(以下、PTTFEとも略す)などが挙げられる。リン酸トリス(ヘプタフルオロブチル)としては、例えば、リン酸トリス(1H,1H−ヘプタフルオロブチル)等が挙げられる。リン酸トリス(オクタフルオロペンチル)としては、例えば、リン酸トリス(1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル)等が挙げられる。これらの中でも、高電位における電解液分解の抑制効果が高いことから、下記式(2)で表されるリン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)(PTTFE)が好ましい。フッ素化リン酸エステルは、一種を単独でまたは二種以上を併用して用いることができる。
フッ素化エーテルとしては、具体的には、例えば、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル1,1,2,2−テトラフルオロエチルエーテル、1,1,2,2−テトラフルオロエチル2,2,2−トリフルオロエチルエーテル、1H,1H,2’H,3H−デカフルオロジプロピルエーテル、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロピル−2,2−ジフルオロエチルエーテル、イソプロピル1,1,2,2−テトラフルオロエチルエーテル、プロピル1,1,2,2−テトラフルオロエチルエーテル、1,1,2,2−テトラフルオロエチル2,2,3,3−テトラフルオロプロピルエーテル、1H,1H,5H−パーフルオロペンチル−1,1,2,2−テトラフルオロエチルエーテル、1H,1H,2’H−パーフルオロジプロピルエーテル、1H−パーフルオロブチル−1H−パーフルオロエチルエーテル、メチルパーフルオロペンチルエーテル、メチルパーフルオロへキシルエーテル、メチル1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(トリフルオロメチル)プロピルエーテル、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル2,2,2−トリフルオロエチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル、エチル1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピルエーテル、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル1,1,2,2−テトラフルオロエチルエーテル、1H,1H,2’H−パーフルオロジプロピルエーテル、ヘプタフルオロプロピル1,2,2,2−テトラフルオロエチルエーテル、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,3,3−テトラフルオロプロピルエーテル、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル−1,1,2,2−テトラフルオロエチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフルオロブチルエーテルなどが挙げられる。これらの中でも、耐電圧と沸点などの観点から、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,3,3−テトラフルオロプロピルエーテル(以下、TFETFPEとも略す)、1H,1H,2’H,3H−デカフルオロジプロピルエーテル、1H,1H,2’H−パーフルオロジプロピルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテルなどが好ましい。
鎖状エーテルは、電解液の粘度を低減する効果がある。したがって、鎖状エーテルは、例えば、鎖状カーボネート、カルボン酸エステルの代わりに使用されてもよく、また、鎖状カーボネート、カルボン酸エステルと併用してもよい。
鎖状エーテルは、炭素数が小さい場合、沸点が低くなる傾向があるため、電池の高温動作時に気化してしまう場合がある。一方、炭素数が大きすぎると、鎖状エーテルの粘度が高くなって、電解液の導電性が下がる場合がある。したがって、炭素数は4以上10以下であることが好ましい。このような理由から、本実施形態においてフッ素化エーテルは、下記式(3)で表されるフッ素化鎖状エーテルであることが好ましい。
CnH2n+1−lFl−O−CmH2m+1−kFk (3)
[式(3)中、nは1,2,3,4,5又は6であり、mは1,2,3又は4であり、lは0から2n+1までのいずれかの整数であり、kは0から2m+1までのいずれかの整数であり、l及びkのうち少なくともいずれかは1以上の整数である。]
式(3)で示されるフッ素化エーテルにおいて、フッ素置換量が少ないと、フッ素化エーテルが高電位の正極と反応することにより電池の容量維持率が低下したり、ガスが発生したりする場合がある。一方、フッ素置換量が多すぎると、フッ素化鎖状エーテルの他の溶媒との相溶性が低下したり、フッ素化鎖状エーテルの沸点が下がったりする場合がある。このような理由から、フッ素置換量は、10%以上90%以下であることが好ましく、20%以上85%以下であることがさらに好ましく、30%以上80%以上であることがさらに好ましい。つまり、式(3)のl、m、nが以下の関係式を満たすことが好ましい。
0.1≦(l+k)/(2n+2m+2)≦0.9
電解液は、フッ素化リン酸エステルおよびフッ素化エーテルに加えて、引火性が低く、反応性も低い、式(4)で表されるフッ素化ジエーテル化合物を含んでも良い。
R4O−(R5O)n−R6 (4)
式(4)で表されるフッ素化ジエーテル化合物において、R4およびR6は、独立してフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基であり、R5はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキレン基であり、ただしR4、R5およびR6の内少なくとも一つはフッ素原子で置換されている基である。
R4およびR6の炭素数は、1以上3以下がより好ましい。好ましい実施形態において、R4およびR6はフッ素置換アルキル基であり、例えばトリフルオロメチル、トリフルオロエチル、テトラフルオロプロピル、ペンタフルオロプロピルおよびヘプタフルオロブチル等を挙げることができる。フッ素の置換位置は任意であり、例えば2,2,2−トリフルオロエチル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル等を挙げることができるがこれらに限定されない。
R5の炭素数は、1以上3以下がより好ましい。例えばメチレン、エチレン、1,2−プロピレン、1,3−プロピレン、ブチレンおよびそれらのフッ素置換基を挙げることができる。特に、エチレン、1,2−プロピレンおよび1,3−プロピレンが好ましい。また、好ましい実施形態において、R5は無置換のアルキレン基である。nは、好ましくは1または2であり、さらに好ましくは1である。
フッ素化ジエーテル化合物の好ましい化合物は、下記式(5):
CF3CH2OCH2CH2OCH2CF3 (5)
で表される。
フッ素化ジエーテル化合物の非水電解溶媒中の含有率は、10体積%以上が好ましく、20体積%以上がより好ましく、また、80体積%以下であることが好ましい。
電解液は、フッ素化リン酸エステルおよびフッ素化エーテルに加えて、環状カーボネートまたは鎖状カーボネートをさらに含むことが好ましい。
環状カーボネートは比誘電率が大きいため、添加により、支持塩の解離性が向上し、十分な導電性を付与しやすくなる。また、鎖状カーボネートは、粘度が小さいため、添加により電解液の粘度が下がるので、電解液におけるイオン移動度が向上するという利点がある。また、環状カーボネートおよび鎖状カーボネートは、耐電圧性および導電率が高いことから、フッ素化リン酸エステルとの混合に適している。
環状カーボネートとしては、特に制限されるものではないが、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、またはビニレンカーボネート(VC)等を挙げることができる。また、環状カーボネートは、フッ素化環状カーボネートを含む。フッ素化環状カーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、またはビニレンカーボネート(VC)等の一部または全部の水素原子をフッ素原子に置換した化合物等を挙げることができる。フッ素化環状カーボネートとしては、より具体的には、例えば、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、(cisまたはtrans)4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−フルオロ−5−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン等を用いることができる。環状カーボネートとしては、上で列記した中でも、耐電圧性や、導電率の観点から、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、またはこれらの一部をフッ素化した化合物等が好ましく、エチレンカーボネートがより好ましい。環状カーボネートは、一種を単独でまたは二種以上を併用して用いることができる。
環状カーボネートの非水電解溶媒中の含有率は、支持塩の解離度を高める効果と電解液の導電性を高める効果の観点から、0.1体積%以上が好ましく、5体積%以上がより好ましく、10体積%以上がさらに好ましく、15体積%以上が特に好ましい。また、環状カーボネートの非水電解溶媒中の含有率は、同様の観点から、70体積%以下が好ましく、50体積%以下がより好ましく、40体積%以下がさらに好ましい。
鎖状カーボネートとしては、特に制限されるものではないが、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)等を挙げることができる。また、鎖状カーボネートは、フッ素化鎖状カーボネートを含む。フッ素化鎖状カーボネートとしては、例えば、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)等の一部または全部の水素原子をフッ素原子に置換した構造を有する化合物等を挙げることができる。フッ素化鎖状カーボネートとしては、より具体的には、例えば、ビス(フルオロエチル)カーボネート、3−フルオロプロピルメチルカーボネート、3,3,3−トリフルオロプロピルメチルカーボネート、2,2,2−トリフルオロエチルメチルカーボネート、2,2,2−トリフルオロエチルエチルカーボネート、モノフルオロメチルメチルカーボネート、メチル2,2,3,3,テトラフルオロプロピルカーボネート、エチル2,2,3,3,テトラフルオロプロピルカーボネート、ビス(2,2,3,3,テトラフルオロプロピル)カーボネート、ビス(2,2,2トリフルオロエチル)カーボネート、1−モノフルオロエチルエチルカーボネート、1−モノフルオロエチルメチルカーボネート、2−モノフルオロエチルメチルカーボネート、ビス(1−モノフルオロエチル)カーボネート、ビス(2−モノフルオロエチル)カーボネート、ビス(モノフルオロメチル)カーボネート等が挙げられる。これらの中でも、ジメチルカーボネート、2,2,2−トリフルオロエチルメチルカーボネート、モノフルオロメチルメチルカーボネート、メチル2,2,3,3,テトラフルオロプロピルカーボネートなどが耐電圧性と導電率の観点から好ましい。鎖状カーボネートは、一種を単独でまたは二種以上を併用して用いることができる。
鎖状カーボネートは、「−OCOO−」構造に付加する置換基の炭素数が小さい場合、粘度が低いという利点がある。一方、炭素数が大きすぎると、電解液の粘度が高くなってLiイオンの導電性が下がる場合がある。このような理由から、鎖状カーボネートの「−OCOO−」構造に付加する2つの置換基の総炭素数は2以上6以下であることが好ましい。また、「−OCOO−」構造に付加する置換基がフッ素原子を含有する場合、電解液の耐酸化性が向上する。このような理由から、鎖状カーボネートは下記式(6)で表されるフッ素化鎖状カーボネートであることが好ましい。
CnH2n+1−lFl−OCOO−CmH2m+1−kFk (6)
[式(6)中、nは1,2または3であり、mは1,2または3であり、lは0から2n+1までのいずれかの整数であり、kは0から2m+1までのいずれかの整数であり、lおよびkのうち少なくともいずれかは1以上の整数である。]
式(6)で示されるフッ素化鎖状カーボネートにおいて、フッ素置換量が少ないと、フッ素化鎖状カーボネートが高電位の正極と反応することにより電池の容量維持率が低下したり、ガスが発生したりする場合がある。一方、フッ素置換量が多すぎると、鎖状カーボネートの他の溶媒との相溶性が低下したり、鎖状カーボネートの沸点が下がったりする場合がある。このような理由から、フッ素置換量は、1%以上90%以下であることが好ましく、5%以上85%以下であることがより好ましく、10%以上80%以下であることがさらに好ましい。つまり、式(6)のl、m、nが以下の関係式を満たすことが好ましい。
0.01≦(l+k)/(2n+2m+2)≦0.9
鎖状カーボネートは、電解液の粘度を下げる効果があり、電解液の導電率を高めることができる。これらの観点から、鎖状カーボネートの非水電解溶媒中の含有量は、5体積%以上が好ましく、10体積%以上がより好ましく、15体積%以上がさらに好ましい。また、鎖状カーボネートの非水電解溶媒中の含有率は、90体積%以下が好ましく、80体積%以下がより好ましく、70体積%以下がさらに好ましい。
また、フッ素化鎖状カーボネートの含有率は、特に制限されるものではないが、非水電解溶媒中0.1体積%以上70体積%以下が好ましい。フッ素化鎖状カーボネートの非水電解溶媒中の含有率が0.1体積%以上であると、電解液の粘度を下げることができ、導電性を高めることができる。また、耐酸化性を高める効果が得られる。また、フッ素化鎖状カーボネートの非水電解溶媒中の含有率が70体積%以下であると、電解液の導電性を高く保つことが可能である。また、フッ素化鎖状カーボネートの非水電解溶媒中の含有率は、1体積%以上がより好ましく、5体積%以上がさらに好ましく、10体積%以上が特に好ましい。また、フッ素化鎖状カーボネートの非水電解溶媒中の含有率は、65体積%以下がより好ましく、60体積%以下がさらに好ましく、55体積%以下が特に好ましい。
電解液は、フッ素化リン酸エステルおよびフッ素化エーテルに加えて、カルボン酸エステルを含んでもよい。
カルボン酸エステルとしては、特に制限されるものではないが、例えば、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、ギ酸エチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酢酸メチル、ギ酸メチル等が挙げられる。また、カルボン酸エステルは、フッ素化カルボン酸エステルも含み、フッ素化カルボン酸エステルとしては、例えば、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、ギ酸エチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酢酸メチル、またはギ酸メチルの一部または全部の水素原子をフッ素原子で置換した構造を有する化合物等が挙げられる。また、フッ素化カルボン酸エステルとしては、具体的には、例えば、ペンタフルオロプロピオン酸エチル、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸エチル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピオン酸メチル、酢酸2,2−ジフルオロエチル、ヘプタフルオロイソ酪酸メチル、2,3,3,3−テトラフルオロプロピオン酸メチル、ペンタフルオロプロピオン酸メチル、2−(トリフルオロメチル)−3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチル、ヘプタフルオロ酪酸エチル、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチル、酢酸2,2,2−トリフルオロエチル、トリフルオロ酢酸イソプロピル、トリフルオロ酢酸tert−ブチル、4,4,4−トリフルオロ酪酸エチル、4,4,4−トリフルオロ酪酸メチル、2,2−ジフルオロ酢酸ブチル、ジフルオロ酢酸エチル、トリフルオロ酢酸n−ブチル、酢酸2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、3−(トリフルオロメチル)酪酸エチル、テトラフルオロ−2−(メトキシ)プロピオン酸メチル、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸3,3,3トリフルオロプロピル、ジフルオロ酢酸メチル、トリフルオロ酢酸2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、酢酸1H,1H−ヘプタフルオロブチル、ヘプタフルオロ酪酸メチル、トリフルオロ酢酸エチルなどが挙げられる。これらの中でも、耐電圧と沸点などの観点から、カルボン酸エステルとしては、プロピオン酸エチル、酢酸メチル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピオン酸メチル、トリフルオロ酢酸2,2,3,3−テトラフルオロプロピルが好ましい。カルボン酸エステルは、鎖状カーボネートと同様に電解液の粘度を低減する効果がある。したがって、例えば、カルボン酸エステルは、鎖状カーボネートの代わりに使用することが可能であり、また、鎖状カーボネートと併用することも可能である。
鎖状カルボン酸エステルは、「−COO−」構造に付加する置換基の炭素数が小さい場合、粘度が低いという特徴があるが、沸点も低くなる傾向がある。沸点が低い鎖状カルボン酸エステルは電池の高温動作時に気化してしまう場合がある。一方、炭素数が大きすぎると、電解液の粘度が高くなって導電性が下がる場合がある。このような理由から、鎖状カルボン酸エステルの「−COO−」構造に付加する2つの置換基の総炭素数は3以上8以下であることが好ましい。また、「−COO−」構造に付加する置換基がフッ素原子を含有する場合、電解液の耐酸化性を向上することができる。このような理由から、鎖状カルボン酸エステルは下記式(7)で表されるフッ素化鎖状カルボン酸エステルであることが好ましい。
CnH2n+1−lFl−COO−CmH2m+1−kFk (7)
[式(7)中、nは1,2,3または4であり、mは1,2,3または4であり、lは0から2n+1までのいずれかの整数であり、kは0から2m+1までのいずれかの整数であり、lおよびkのうち少なくともいずれかは1以上の整数である。]
式(7)で示されるフッ素化鎖状カルボン酸エステルにおいて、フッ素置換量が少ないと、フッ素化鎖状カルボン酸エステルが高電位の正極と反応することにより電池の容量維持率が低下したり、ガスが発生したりする場合がある。一方、フッ素置換量が多すぎると、鎖状カルボン酸エステルの他溶媒との相溶性が低下したり、フッ素化鎖状カルボン酸エステルの沸点が下がったりする場合がある。このような理由から、フッ素置換量は、1%以上90%以下であることが好ましく、10%以上85%以下であることがより好ましく、20%以上80%以下であることがさらに好ましい。つまり、式(7)のl、m、nが以下の関係式を満たすことが好ましい。
0.01≦(l+k)/(2n+2m+2)≦0.9
カルボン酸エステルの非水電解溶媒中の含有率は、0.1体積以上が好ましく、0.2体積%以上がより好ましく、0.5体積%以上がさらに好ましく、1体積%以上が特に好ましい。カルボン酸エステルの非水電解溶媒中の含有率は、50体積%以下が好ましく、20体積%以下がより好ましく、15体積%以下がさらに好ましく、10体積%以下が特に好ましい。カルボン酸エステルの含有率を0.1体積%以上とすることにより、低温特性をより向上でき、また導電率をより向上できる。また、カルボン酸エステルの含有率を50体積%以下とすることにより、電池を高温放置した場合に蒸気圧が高くなりすぎることを低減することができる。
また、フッ素化鎖状カルボン酸エステルの含有率は、特に制限されるものではないが、非水電解溶媒中0.1体積%以上50体積%以下が好ましい。フッ素化鎖状カルボン酸エステルの非水電解溶媒中の含有率が0.1体積%以上であると、電解液の粘度を下げることができ、導電性を高めることができる。また、耐酸化性を高める効果が得られる。また、フッ素化鎖状カルボン酸エステルの非水電解溶媒中の含有率が50体積%以下であると、電解液の導電性を高く保つことが可能であり、電解液の相溶性を確保することができる。また、フッ素化鎖状カルボン酸エステルの非水電解溶媒中の含有率は、1体積%以上がより好ましく、5体積%以上がさらに好ましく、10体積%以上が特に好ましい。また、フッ素化鎖状カルボン酸エステルの非水電解溶媒中の含有率は、45体積%以下がより好ましく、40体積%以下がさらに好ましく、35体積%以下が特に好ましい。
さらに、電解液は、フッ素化リン酸エステルおよびフッ素化エーテルに加えて、下記式(8)で表されるアルキレンビスカーボネートを含んでもよい。アルキレンビスカーボネートの耐酸化性は、鎖状カーボネートと同等かやや高いことから、電解液の耐電圧性を向上することができる。
[式(8)中、R
4およびR
6は、それぞれ独立に、置換または無置換のアルキル基を表し、R
5は、置換または無置換のアルキレン基を表す。]
式(8)において、アルキル基は、直鎖状または分岐鎖状のものを含み、炭素数が1〜6であることが好ましく、炭素数が1〜4であることがより好ましい。アルキレン基は、二価の飽和炭化水素基であり、直鎖状または分岐鎖状のものを含み、炭素数が1〜4であることが好ましく、炭素数が1〜3であることがより好ましい。
式(8)で表されるアルキレンビスカーボネートとしては、例えば、1,2−ビス(メトキシカルボニルオキシ)エタン、1,2−ビス(エトキシカルボニルオキシ)エタン、1,2−ビス(メトキシカルボニルオキシ)プロパン、または1−エトキシカルボニルオキシ−2−メトキシカルボニルオキシエタン等が挙げられる。これらの中でも、1,2−ビス(メトキシカルボニルオキシ)エタンが好ましい。
アルキレンビスカーボネートの非水電解溶媒中の含有率は、0.1体積%以上が好ましく、0.5体積%以上がより好ましく、1体積%以上がさらに好ましく、1.5体積%以上が特に好ましい。アルキレンビスカーボネートの非水電解溶媒中の含有率は、70体積%以下が好ましく、60体積%以下がより好ましく、50体積%以下がさらに好ましく、40体積%以下が特に好ましい。
アルキレンビスカーボネートは誘電率が低い材料である。そのため、例えば、鎖状カーボネートの代わりに使用することが可能であり、または鎖状カーボネートと併用することが可能である。
電解液は、上記化合物以外に以下のものを含んでいても良い。電解液は、例えば、γ−ブチロラクトン等のγ−ラクトン類、1,2−エトキシエタン(DEE)若しくはエトキシメトキシエタン(EME)等の鎖状エーテル類、テトラヒドロフラン若しくは2−メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル類等を含むことができる。また、これらの材料の水素原子の一部をフッ素原子で置換したものを含んでも良い。また、その他にも、ジメチルスルホキシド、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン(例えば、1,3−ジオキソラン)、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エチルエーテル、1,3−プロパンスルトン、アニソール、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性有機溶媒を含んでも良い。
電解液に含まれる支持塩としては、例えば、LiPF6、LiAsF6、LiAlCl4、LiClO4、LiBF4、LiSbF6、LiCF3SO3、LiC4F9CO3、LiC(CF3SO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiB10Cl10等のリチウム塩が挙げられる。また、支持塩としては、他にも、低級脂肪族カルボン酸カルボン酸リチウム、クロロボランリチウム、四フェニルホウ酸リチウム、LiBr、LiI、LiSCN、LiCl等が挙げられる。支持塩は、一種を単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。
また、非水電解溶媒にイオン伝導性ポリマーを添加することができる。イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン等を挙げることができる。また、イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリビニリデンフルオライド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルフルオライド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリメタクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンアシパミド、ポリカプロラクタム、ポリウレタン、ポリエチレンイミン、ポリブタジエン、ポリスチレン、若しくはポリイソプレン、またはこれらの誘導体を挙げることができる。イオン伝導性ポリマーは、一種を単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記ポリマーを構成する各種モノマーを含むポリマーを用いてもよい。
さらに、電解液は、必要に応じて、上記化合物以外の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、被膜形成添加剤(例えば、環状ジスルホン酸エステル)、過充電防止剤、界面活性剤等が挙げられるがこれらに限定されない。
(正極)
本実施形態によるリチウム二次電池の正極活物質としては、リチウム二次電池の正極活物質として用いることができるものであれば特に制限なく用いることができ、その中でも、リチウム金属に対して、3.6〜4.2V程度の平均動作電位を有するいわゆる4V級の正極活物質が好ましい。また、さらに、リチウム金属に対して、4.5V以上等の高電位で動作する正極活物質を含んでもよい。
正極活物質としては、上述の特許文献1〜6に開示されているように、LiMn2O4あるいはLiCoO2などの4V級の材料を好ましく用いることができる。具体的には、LiMnO2、LixMn2O4(0<x<2)等の層状構造を持つマンガン酸リチウムまたはスピネル構造を有するマンガン酸リチウム;LiCoO2、LiNiO2またはこれらの遷移金属の一部を他の金属で置き換えたもの;LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2などの特定の遷移金属が半数を超えないリチウム遷移金属酸化物;これらのリチウム遷移金属酸化物において化学量論組成よりもLiを過剰にしたもの等が挙げられる。
このほかにも、NASICON型、リチウム遷移金属シリコン複合酸化物などを使用することができる。
また、高エネルギー密度を得る観点から、リチウム金属に対して4.5V以上の電位でリチウムイオンを吸蔵または放出可能な正極活物質を含むこともできる。この正極活物質は、その充放電曲線の少なくとも充電曲線が、リチウム金属に対して4.5V以上の領域を少なくとも一部に有するものを用いることができる。すなわち、充電曲線のみにリチウム金属に対して4.5V以上の領域を少なくとも一部に有する活物質、または充電曲線および放電曲線の両方にリチウム金属に対して4.5V以上の領域を少なくとも一部に有する活物質を用いることができる。この充放電曲線の測定条件としては、充放電電流を正極活物質の質量あたりで5mA/g、充電終止電圧を4.7V、放電終止電圧を3Vに設定することができる。
このような正極活物質としては、スピネル系材料、層状系材料、オリビン系材料が挙げられる。
スピネル系材料としては、LiNi0.5Mn1.5O4、LiCoMnO4、LiCrMnO4、LiFeMnO4、LiCu0.5Mn1.5O4などのリチウムに対して4.5V以上の高電位で動作する材料;LiMn2O4のMnの一部を他元素で置換して寿命を高めた、LiM1xMn2−x−yM2yO4(M1はNi、Fe、Co、CrおよびCuから選ばれる少なくとも1種であり、0.4<x<1.1であり、M2は、Li、Al、B、Mg、Si、遷移金属から選ばれる少なくとも一種であり、0<y<0.5);およびこれらの材料の酸素の一部をフッ素や塩素で置換したものが挙げられる。
スピネル系材料としては、下記式で示されるものも好ましい。
Lia(MxMn2−x−yYy)(O4−wZw) (9)
(式中、0≦x≦1.2、0≦y、x+y<2、0≦a≦1.2、0≦w≦1であり、MはCo、Ni、Fe、Cr、Cuから選ばれる少なくとも一種であり、YはLi、B、Na、Al、Mg、Ti、Si、K、Caから選ばれる少なくとも一種であり、ZはFおよびClの少なくとも一方である。)
特に0.4≦x≦1.1が好ましい。
層状系材料は一般式LiMO2で表され、具体的には、LiCoO2、LiNi1−xMxO2(Mは少なくともCoまたはAlを含む元素、0.05<x<0.3)で表される材料、Li(NixCoyMn2−x−y)O2(0.1<x<0.7、0<y<0.5)、Li(M1−zMnz)O2(0.7≧z≧0.33、MがLi、CoおよびNiのうちの少なくとも一種である。)で表される材料が挙げられる。
また、式:
Li(LixM1−x−zMnz)O2 (10)
(0≦x<0.3、0.3≦z≦0.7、MはCoおよびNiの少なくとも一種である)
で表される材料も好ましい。この材料の式中のxは0≦x<0.2が好ましい。
オリビン系材料は、一般式:
LiMPO4 (11)
で表され、具体的には、LiFePO4、LiMnPO4、LiCoPO4、LiNiPO4が挙げられる。これらの遷移金属の一部を別の元素で置換したり、酸素部分をフッ素で置き換えられたりしたものも使用できる。高エネルギー密度の観点から、高電位で動作するLiMPO4(MはCoおよびNiの少なくとも一方である)で表される材料が好ましい。
これらの正極活物質は、1種または2種以上を併用して用いてもよい。
これらの正極活物質の比表面積は、例えば0.01〜5m2/gであり、0.05〜4m2/gが好ましく、0.1〜3m2/gがより好ましく、0.2〜2m2/gがさらに好ましい。比表面積をこのような範囲とすることにより、電解液との接触面積を適当な範囲に調整することができる。つまり、比表面積を0.01m2/g以上とすることにより、リチウムイオンの挿入脱離がスムーズに行われ易くなり、抵抗をより低減することができる。また、比表面積を5m2/g以下とすることにより、電解液の分解が促進することや、活物質の構成元素が溶出することをより抑制することができる。比表面積は、通常のBET比表面積測定法により測定できる。
前記正極活物質の中心粒径は、0.01〜50μmであることが好ましく、0.02〜40μmがより好ましい。粒径を0.02μm以上とすることにより、正極活物質の構成元素の溶出をより抑制でき、また、電解液との接触による劣化をより抑制できる。また、粒径を50μm以下とすることにより、リチウムイオンの挿入脱離がスムーズに行われ易くなり、抵抗をより低減することができる。中心粒径は、50%累積径D50(メジアン径)であり、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置によって測定できる。
正極用結着剤としては、特に制限されるものではないが、汎用性や低コストの観点から、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)が好ましく用いられる。使用する正極用結着剤の量は、トレードオフの関係にある結着力とエネルギー密度の観点から、正極活物質100質量部に対して2〜10質量部が好ましい。
ポリフッ化ビニリデン(PVdF)以外の結着剤としては、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミドイミドが挙げられる。
正極活物質を含む正極活物質層には、インピーダンスを低下させる目的で、導電補助材を添加してもよい。導電補助材としては、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック等の炭素質微粒子が挙げられる。
正極集電体としては、特に制限されるものではないが、電気化学的な安定性から、例えば、合うミニ有無、ニッケル、銀、ステンレス鋼、またはそれらの合金等を用いることができ、特にアルミニウム箔を好適に用いることができる。その形状としては、箔、平板状、メッシュ状が挙げられる。
(負極)
負極は、負極活物質としてリチウムを吸蔵および放出し得る材料を含むものであれば特に限定されるものではないが、炭素材料を含むものであることがより好ましい。
負極活物質としては、例えば、リチウムイオンを吸蔵、放出し得る炭素材料(a)、リチウムと合金可能な金属(b)、またはリチウムイオンを吸蔵、放出し得る金属酸化物(c)等が挙げられる。
炭素材料(a)としては、黒鉛、非晶質炭素、ダイヤモンド状炭素、カーボンナノチューブ、またはこれらの複合物を用いることができる。ここで、結晶性の高い黒鉛は、電気伝導性が高く、銅などの金属からなる正極集電体との接着性および電圧平坦性が優れている。一方、結晶性の低い非晶質炭素は、体積膨張が比較的小さいため、負極全体の体積膨張を緩和する効果が高く、かつ結晶粒界や欠陥といった不均一性に起因する劣化が起きにくい。炭素材料(a)は、それ単独でまたはその他の物質と併用して用いることができ、負極活物質中100質量%であってもよく、その他の物質と併用する実施形態では、2質量%以上80質量%以下の範囲であることが好ましく、2質量%以上30質量%以下の範囲であることがより好ましい。
金属(b)としては、Al、Si、Pb、Sn、Zn、Cd、Sb、In、Bi、Ag、Ba、Ca、Hg、Pd、Pt、Te、La等を主体とした金属、またはこれらの2種以上の合金、あるいはこれら金属または合金とリチウムとの合金等を用いることができる。特に、金属(b)としてシリコン(Si)を含むことが好ましい。金属(b)は、それ単独でまたはその他の物質と併用して用いることができるが、負極活物質中5質量%以上90質量%以下の範囲であることが好ましく、20質量%以上50質量%以下の範囲であることがより好ましい。
金属酸化物(c)としては、酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化リチウム、またはこれらの複合物を用いることができる。特に、金属酸化物(c)として酸化シリコンを含むことが好ましい。これは、酸化シリコンは、比較的安定で他の化合物との反応を引き起こしにくいからである。また、金属酸化物(c)に、窒素、ホウ素およびイオウの中から選ばれる一種または二種以上の元素を、例えば0.1〜5質量%添加することもできる。こうすることで、金属酸化物(c)の電気伝導性を向上させることができる。金属酸化物(c)は、それ単独でまたはその他の物質と併用して用いることができるが、負極活物質中5質量%以上90質量%以下の範囲であることが好ましく、40質量%以上70質量%以下の範囲であることがより好ましい。
金属酸化物(c)の具体例としては、例えば、LiFe2O3、WO2、MoO2、SiO、SiO2、CuO、SnO、SnO2、Nb3O5、LixTi2−xO4(1≦x≦4/3)、PbO2、Pb2O5等が挙げられる。
また、負極活物質としては、他にも、例えば、リチウムイオンを吸蔵、放出し得る金属硫化物(d)が挙げられる。金属硫化物(d)としては、例えば、SnSやFeS2等が挙げられる。また、負極活物質としては、他にも、例えば、金属リチウム若しくはリチウム合金、ポリアセン若しくはポリチオフェン、またはLi5(Li3N)、Li7MnN4、Li3FeN2、Li2.5Co0.5N若しくはLi3CoN等の窒化リチウム等を挙げる事ができる。
以上の負極活物質は、単独でまたは二種以上を混合して用いることができる。
負極活物質は、炭素材料(a)、金属(b)、および金属酸化物(c)を含む構成とすることができる。以下、この負極活物質について説明する。
金属酸化物(c)はその全部または一部がアモルファス構造を有することが好ましい。アモルファス構造の金属酸化物(c)は、炭素材料(a)や金属(b)の体積膨張を抑制することができ、電解液の分解を抑制することができる。このメカニズムは、金属酸化物(c)がアモルファス構造であることにより、炭素材料(a)と電解液の界面への被膜形成に何らかの影響があるものと推定される。また、アモルファス構造は、結晶粒界や欠陥といった不均一性に起因する要素が比較的少ないと考えられる。なお、金属酸化物(c)の全部または一部がアモルファス構造を有することは、エックス線回折測定(一般的なXRD測定)にて確認することができる。具体的には、金属酸化物(c)がアモルファス構造を有しない場合には、金属酸化物(c)に固有のピークが観測されるが、金属酸化物(c)の全部または一部がアモルファス構造を有する場合は、金属酸化物(c)に固有ピークがブロードとなって観測される。
金属酸化物(c)は、金属(b)を構成する金属の酸化物であることが好ましい。また、金属(b)および金属酸化物(c)は、それぞれシリコン(Si)および酸化シリコン(SiO)であることが好ましい。
金属(b)は、その全部または一部が金属酸化物(c)中に分散していることが好ましい。金属(b)の少なくとも一部を金属酸化物(c)中に分散させることで、負極全体としての体積膨張をより抑制することができ、電解液の分解も抑制することができる。なお、金属(b)の全部または一部が金属酸化物(c)中に分散していることは、透過型電子顕微鏡観察(一般的なTEM観察)とエネルギー分散型X線分光法測定(一般的なEDX測定)を併用することで確認することができる。具体的には、金属(b)粒子を含むサンプルの断面を観察し、金属酸化物(c)中に分散している金属(b)粒子の酸素濃度を測定し、金属(b)粒子を構成している金属が酸化物となっていないことを確認することができる。
炭素材料(a)、金属(b)、および金属酸化物(c)の合計に対するそれぞれの炭素材料(a)、金属(b)、および金属酸化物(c)の含有率は、それぞれ、2質量%以上80質量%以下、5質量%以上90質量%以下、および5質量%以上90質量%以下であることが好ましい。また、炭素材料(a)、金属(b)、および金属酸化物(c)の合計に対するそれぞれの炭素材料(a)、金属(b)、および金属酸化物(c)の含有率は、それぞれ、2質量%以上30質量%以下、20質量%以上50質量%以下、および40質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。
金属酸化物(c)の全部または一部がアモルファス構造であり、金属(b)の全部または一部が金属酸化物(c)中に分散しているような負極活物質は、例えば、特開2004−47404号公報で開示されているような方法で作製することができる。すなわち、金属酸化物(c)をメタンガスなどの有機物ガスを含む雰囲気下でCVD処理を行うことで、金属酸化物(c)中の金属(b)がナノクラスター化し、かつ表面が炭素材料(a)で被覆された複合体を得ることができる。また、炭素材料(a)と金属(b)と金属酸化物(c)とをメカニカルミリングで混合することでも、上記負極活物質を作製することができる。
また、炭素材料(a)、金属(b)、および金属酸化物(c)は、特に制限するものではないが、それぞれ粒子状のものを用いることができる。例えば、金属(b)の平均粒子径は、炭素材料(a)の平均粒子径および金属酸化物(c)の平均粒子径よりも小さい構成とすることができる。このようにすれば、充放電時にともなう体積変化の大きい金属(b)が相対的に小粒径となり、体積変化の小さい炭素材料(a)や金属酸化物(c)が相対的に大粒径となるため、デンドライト生成および合金の微粉化がより効果的に抑制される。また、充放電の過程で大粒径の粒子、小粒径の粒子、大粒径の粒子の順にリチウムが吸蔵、放出されることとなり、この点からも、残留応力、残留歪みの発生が抑制される。金属(b)の平均粒子径は、例えば20μm以下とすることができ、15μm以下とすることが好ましい。
また、金属酸化物(c)の平均粒子径が炭素材料(a)の平均粒子径の1/2以下であることが好ましく、金属(b)の平均粒子径が金属酸化物(c)の平均粒子径の1/2以下であることが好ましい。さらに、金属酸化物(c)の平均粒子径が炭素材料(a)の平均粒子径の1/2以下であり、かつ金属(b)の平均粒子径が金属酸化物(c)の平均粒子径の1/2以下であることがより好ましい。平均粒子径をこのような範囲に制御すれば、金属および合金相の体積膨脹の緩和効果がより有効に得ることができ、エネルギー密度、サイクル寿命と効率のバランスに優れた二次電池を得ることができる。より具体的には、シリコン酸化物(c)の平均粒子径を黒鉛(a)の平均粒子径の1/2以下とし、シリコン(b)の平均粒子径をシリコン酸化物(c)の平均粒子径の1/2以下とすることが好ましい。また、より具体的には、シリコン(b)の平均粒子径は、例えば20μm以下とすることができ、15μm以下とすることが好ましい。
負極用結着剤としては、特に制限されるものではないが、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド等が挙げられる。
負極結着剤の含有率は、負極活物質と負極結着剤の総量に対して1〜30質量%の範囲であることが好ましく、2〜25質量%であることがより好ましい。1質量%以上とすることにより、活物質同士あるいは活物質と集電体との密着性が向上し、サイクル特性が良好になる。また、30質量%以下とすることにより、活物質比率が向上し、負極容量を向上することができる。
負極集電体としては、特に制限されるものではないが、電気化学的な安定性から、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、およびそれらの合金が好ましい。その形状としては、箔、平板状、メッシュ状が挙げられる。
負極は、負極集電体上に、負極活物質と負極用結着剤を含む負極活物質層を形成することで作製することができる。負極活物質層の形成方法としては、ドクターブレード法、ダイコーター法、CVD法、スパッタリング法などが挙げられる。予め負極活物質層を形成した後に、蒸着、スパッタ等の方法でアルミニウム、ニッケルまたはそれらの合金の薄膜を形成して、負極集電体としてもよい。
(セパレータ)
二次電池は、その構成として正極、負極、セパレータ、および非水電解質との組み合わせから構成することができる。セパレータとしては、例えば、織布、不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系、ポリイミド、多孔性ポリフッ化ビニリデン膜等の多孔性ポリマー膜、またはイオン伝導性ポリマー電解質膜等が挙げられる。これらは単独または組み合わせで使用することができる。
(電池の形状および外装)
電池の形状としては、例えば、円筒形、角形、コイン型、ボタン型、ラミネート型が挙げられる。
ラミネート型の場合、電極およびセパレータが平面形状のまま積層されており、Rの小さい部分(捲回構造の巻き芯に近い領域または扁平型捲回構造の折り返す部位にあたる領域)が存在しない。そのため、充放電に伴う体積変化が大きい活物質を用いた場合、捲回構造を持つ電池に比べて、充放電に伴う電極の体積変化による悪影響を受けにくい。
電池の外装体としては、例えば、ステンレス、鉄、アルミニウム、チタン、またはこれらの合金、あるいはこれらのメッキ加工品が挙げられる。メッキとしては例えばニッケルメッキを用いることができる。電池がラミネート型の場合は、外装体としてラミネートフィルムが好ましい。
ラミネートフィルムの樹脂基材層上の金属箔層としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン箔が挙げられる。ラミネートフィルムの熱溶着層の材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性高分子材料が挙げられる。また、ラミネートフィルムの樹脂基材層や金属箔層はそれぞれ1層に限定されるものではなく2層以上であってもよい。汎用性やコストの観点から、アルミニウムラミネートフィルムが好ましい。
外装体としてラミネートフィルムを用いた場合、外装体として金属缶を用いた場合に比べて、ガスが発生に起因する電池の体積変化や電極の歪みが生じやすい。これは、ラミネートフィルムが金属缶に比べて電池の内圧により変形しやすいためである。さらに、外装体としてラミネートフィルムを用いた二次電池を封止する際には、通常、電池内圧を大気圧より低くし、内部に余分な空間がないため、電池内でガスが発生した場合に直ちに電池の体積変化や電極の変形につながりやすい。また、ラミネート型電池の場合は、捲回構造をもつ電池に比べて電極間にガスが発生した際に電極間に滞留しやすいため電極間の間隔が広がり易い傾向があり、ラミネートフィルム外装体を用いると、この傾向はより顕著になる。本実施形態によれば、このような問題の発生を抑えることができ、ラミネートフィルム外装体を用いたラミネート型電池であっても、長期信頼性に優れた非水電解液二次電池を提供することができる。
(電池の基本構造)
本実施形態によるラミネート型のリチウム二次電池の断面図を図1に示す。図1に示すように、本実施形態によるリチウム二次電池は、アルミニウム箔等の金属からなる正極集電体3と、その上に設けられた正極活物質を含有する正極活物質層1とからなる正極、および銅箔等の金属からなる負極集電体4と、その上に設けられた負極活物質を含有する負極活物質層2とからなる負極を有する。正極および負極は、正極活物質層1と負極活物質層2とが対向するように、不織布やポリプロピレン微多孔膜などからなるセパレータ5を介して積層されている。この電極対は、アルミニウムラミネートフィルム等の外装体6、7で形成された容器内に収容されている。正極集電体3には正極タブ9が接続けられ、負極集電体4には負極タブ8が接続され、これらのタブは容器の外に引き出されている。容器内には電解液が注入され封止される。複数の電極対が積層された電極群が容器内に収容された構造とすることもできる。
また、これらの二次電池を複数個組み合わせて組電池としてもよい。
以下、本発明を適用した具体的な実施例について説明するが、本発明は、本実施例に限定されるものではなく、その主旨を超えない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
[二次電池の作製]
正極活物質としてのMnNi酸化物(LiMnO4とLiNiO2の混合物、混合比 Ni:Mn=25:75)(93質量%)と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)(4質量%)と、導電剤としてカーボンブラック(3質量%)と、を混合して正極合剤とした。この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンに分散させることにより、正極用スラリーを調製した。この正極用スラリーを厚さ20μmのアルミニウム製集電体の片面に均一に塗布した。乾燥させた後、ロールプレスで圧縮成型することにより正極を作製した。
負極活物質としては人造黒鉛を用いた。人造黒鉛を、N−メチルピロリドンにPVdFを溶かしたものに分散させ、負極用スラリーを調製した。負極活物質と結着剤の質量比は90/10とした。この負極用スラリーを厚さ10μmのCu集電体上に均一に塗布した。乾燥させた後、ロールプレスで圧縮成型することにより負極を作製した。
切り出した正極と負極とをセパレータを介して対向するように配置させた。セパレータには、厚さ25μmの微多孔性ポリプロピレンフィルムを用いた。セルとしての容量は、3.5Ahとした。
電解液は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、スルホラン(SL)、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,3,3テトラフルオロプロピルエーテル(TFETFPE)、リン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)(PTTFE)を体積比1/1/1/4/3で構成した溶媒に、リチウム塩LiPF6を0.9mol/lになるよう加えた。さらに、メチレンメタンジスルホン酸エステルを0.04mol/l添加した。
上記の正極、負極、セパレータおよび電解液をラミネート外装体の中に配置し、ラミネートを封止し、リチウム二次電池を作製した。正極と負極は、タブが接続され、ラミネートの外部から電気的に接続された状態とした。
[充電時間の評価]
作製したリチウム二次電池を、45℃で、700mAで充電し、上限電圧が4.2Vに達した後は、全充電時間が10時間になるまで定電圧で充電した。本電池の満充電状態の開放電圧は4.1Vであった。
45℃で、3.5Aで3Vまで放電した後、3.5Aで定電流充電を行い、電圧が表1に記載のVcになった時点で電圧Vcでの定電圧充電に切り替え、充電を行ない、充電容量の80%まで充電するのにかかる時間を、Vcを変えて評価した。
充電電圧が満充電状態の開放電圧より0.1V高い4.2Vでは、容量の80%を充電するのにかかる時間は5250秒であった。これに対し、0.3V高い4.4Vだと1866秒に、0.6V高い4.7Vでは1439秒、さらに、0.8V高い4.9Vの場合は1352秒であり、従来の25.8%にまで充電時間を短縮できることがわかった。
以上に示すように、本実施形態により、高速充電が可能なリチウム二次電池を実現できる。