JP4256962B2 - 賦型シートの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、凹凸差の大きい凹凸樹脂層を有する化粧板の製造に用いる賦型シートの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の化粧板の製造方法としては、先ず、凹凸模様を有する突板、織物又は和紙等から原稿を作製し、この原稿の表面の凹凸模様を転写した親型を作製する。次にこの親型の凹凸模様を転写した、すなわち原稿の凹凸模様を複製した中間型を作製し、さらにこの中間型の凹凸模様を転写した複数の賦型シート(生産型)を製造する。
【0003】
そして、化粧板の基材上に未硬化の硬化型樹脂を載せ、この樹脂上に上記賦型シートを被せて樹脂がゲル化する前に圧延脱泡し、樹脂の硬化後に賦型シートを剥がし、原稿の凹凸模様を複製した凹凸樹脂層を有する化粧板を製造する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前述の従来の技術において、抽象柄、もみ紙柄、貝殻を散りばめた柄等の凹凸差の大きい柄を有する原稿から賦型シートを製造する場合には、中間型の凹凸差が大きいので、中間型の型取りの際に使用する硬化型樹脂(シリコーン樹脂等)を多量に使用しなければならず、コスト高になるという問題があった。また、鏡面化粧板を製造するときは、化粧板の凹凸樹脂層上にクリアー樹脂を塗布して凹凸面を平滑面(鏡面)に仕上げるが、凹凸差が大きいために複数回(例えば3回程度)クリアー樹脂の重ね塗りをしなければならず、コスト高になるという問題があった。
【0005】
また、賦型シートの製造時に、中間型の凹部が深いと、賦型シートの型取り層を形成するためのシリコーン樹脂が深部まで入り込んでしまい、中間型から賦型シートを剥がすときに賦型シートの凸部分がちぎれる場合がある等の剥離不良が生じるという問題があった。さらに、型取り層の凸部が高い賦型シートを用いて化粧板を製造するときに、化粧板の凹部(木目柄の場合には導管部等)が化粧板の基材まで達し、化粧板に下地の透けが発生してしまう場合があるという問題があった。
したがって、本発明が解決しようとする課題は、凹凸差の大きな柄を有する原稿から化粧板を製造するときに、低コストで簡易に賦型シートを製造することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、抽象柄、もみ紙柄、その他の凹凸差の大きい柄を有する原稿から化粧板を製造するときに用いる賦型シートの製造方法であって、
前記原稿の凹凸模様を複製した硬化型樹脂層を表面に有する型の表面上に、未硬化の第1硬化型樹脂をスプレーで塗布し、前記型の前記樹脂層の凹部の底部に該第1硬化型樹脂を流動させて、前記樹脂層の凹凸差を小さくする第1樹脂塗布工程と、
前記型の表面上に、前記賦形シートの型取り層を形成するための未硬化の第2硬化型樹脂を塗布する第2樹脂塗布工程と、
前記第2樹脂塗布工程により形成された前記賦形シートの前記型取り層を前記型から分離する分離工程とを含むことを特徴とする。
【0007】
また、本発明では、請求項1に記載の賦型シートの製造方法において、第1樹脂塗布工程における第1硬化型樹脂の塗布が、硬化剤を含有する樹脂と希釈剤との混合比を1:1とした塗布液をスプレーにより吹き付けしてもよいし、また、第1樹脂塗布工程と第2樹脂塗布工程との間に、型の樹脂層の凸部上に残存した第1硬化型樹脂を研磨により除去する研磨工程を含んでもよい。
【0008】
【作用】
請求項1の発明においては、型の樹脂層の凹凸差は大きいが、この型の樹脂層の凹部の底部を含む一部に第1硬化型樹脂が充填されて、樹脂層の凹凸差が少なくされる。そして、この型を用いて賦型シートの型取り層が形成される。したがって、質感を損なうことなく型の凹凸差を小さくして賦型シートを製造するので、賦型シートの型取り層として使用する第2硬化型樹脂の量を少なくし、また、型から賦型シートの型取り層を剥離しやすくすることができる。
【0009】
請求項2の発明においては、流動性の高い樹脂により型の樹脂層の凹部に樹脂が充填されるので、凹部の底部に樹脂が溜まるようになり、凸部上には樹脂が残らなくなる。
請求項3の発明においては、型の樹脂層の凸部上に第1硬化型樹脂が残存したときは、研磨工程により除去される。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面等を参照して、本発明の一実施形態について説明する。図1は、本発明による賦型シートの製造方法の一実施形態を含む、化粧板の製造工程を示す流れ図である。最初のステップ1では原稿を作製する(原稿作製工程)。原稿としては、抽象柄、もみ紙柄、貝殻を散りばめた柄その他の凹凸差の大きい柄を有する突板、もみ紙、和紙、布等を基板に貼合したものがあげられる。
【0011】
次のステップS2では、原稿表面に未硬化の硬化型樹脂(シリコーン樹脂等)を塗布して硬化させ、原稿の凹凸模様を転写した樹脂層を有する親型を作製する(親型作製工程)。次に、ステップS3では、この親型から中間型を作製する(中間型作製工程)。この工程では、中間型用の基板(アルミニウム合金板等)に未硬化の硬化型樹脂(ポリエステル樹脂等)を塗布し、その上に親型を被せ、硬化型樹脂の硬化後に親型を剥離し、親型の凹凸模様を転写した樹脂層を有する中間型を作製する。すなわち、この中間型は、原稿の凹凸模様を複製したものとなる。
【0012】
そして、ステップS4では、中間型から賦型シート(生産型)を製造する(賦型シート製造工程)。図2及び図3は、賦型シートの製造工程を順次説明する層構成断面図である。図2(a)において、中間型10は、基板11上に樹脂層12が形成されたものである。そして、この中間型10をそのまま賦型シートの製造に使用すると、凹凸差が大きく、前述したように支障をきたすので、以下のような処理を行う。
【0013】
先ず、図中(a)に示すように、樹脂層12表面にスプレー等でまんべんなく未硬化の硬化型樹脂(第1硬化型樹脂)を適量吹き付ける(第1樹脂塗布工程)。この硬化型樹脂は、流動性の高いものが好ましい。硬化型樹脂の吹きつけ直後は図中、(b)に示すように樹脂層12の表面全体に硬化型樹脂13が塗布されるが、その後は、流動して凹部内の底部(深部)を含む一部に溜まって樹脂層13’を形成し、凸部には硬化型樹脂が存在しないようになる(図中、(c))。
【0014】
これにより、中間型10の樹脂層12の凹凸差が小さくなる。また、樹脂層12の凹部の底部を含む一部にのみ樹脂層13’を形成しているので、凹凸差が少なくなっても凹凸模様の質感が損なわれることはない。いいかえれば、凹凸模様の質感を損なわない程度に硬化型樹脂13を凹部の底部に充填して凹凸差を少なくしている。同等な質感を維持できる場合には、必要以上の凹凸差は不要であり、凹凸差を少なくすることで賦型シートの製造時の樹脂の使用量が少なくなり、歩留り等の点から有利であり、製造も容易だからである。
【0015】
そして、この中間型10’を用いて賦型シートを製造する。図3(a)に示すように、中間型10’の樹脂層12(樹脂層13’を含む)上に賦型シートの型取り層となる未硬化の硬化型樹脂(第2硬化型樹脂)21を塗布する(第2樹脂塗布工程)。そして、この硬化型樹脂21上に、枠体22に張設された紗23を載置する(図中(b)、紗載置工程)。さらに図中(c)に示すように、この紗23上に硬化型樹脂21と同一の硬化型樹脂24を塗布する(第3樹脂塗布工程)。次に、これらの硬化型樹脂21、24の硬化後に中間型10’から分離する(分離工程)。これにより、中間型10’の樹脂層12であって樹脂層13’により凹凸差を少なくした凹凸模様を転写した型取り層21’及び裏打ち層24’を紗23に設けた賦型シート20が製造される(図中、(d))。
【0016】
次に、図1において、ステップ4からステップ5に進み、賦型シート20から化粧板を製造する(化粧板製造工程)。図4は、化粧板の製造工程を順次説明するための層構成断面図である。この工程では、図中(a)に示すように、化粧板の基板31上に未硬化の硬化型樹脂(ポリエステル樹脂等)32を塗布し、この上部に賦型シート20を被せてローラ41にて硬化型樹脂32を圧延脱泡し、硬化型樹脂32を硬化させた後に賦型シート20を剥離する。これにより、賦型シート20の型取り層21’の凹凸模様を転写した凹凸樹脂層32’を有する化粧板30が製造される。
【0017】
さらに、鏡面化粧板を製造する場合には、この凹凸樹脂層32’上にクリアー樹脂を塗布し、凹凸樹脂層32’上にクリアー樹脂層を形成し、表面を鏡面仕上げする。この場合において、従来では凹凸差が大きいために3回程度塗布しないと十分なクリアー樹脂層を形成することができなったが、本発明のようにして化粧板30を製造すれば、1回の塗布のみでクリアー樹脂層を形成することができる。
【0018】
図5は、板目柄を有する中間型10Aを示す層構成断面図である。この場合にも上述と同様に、流動性の高い未硬化の硬化型樹脂を塗布して樹脂層12Aの凹部(導管部)の底部を含む一部に樹脂層13’を形成すれば良い(図中(b))。また、本実施形態のように木目柄である場合には、硬化型樹脂の固形分を低めにし、凹部に埋まりすぎることを避ける必要がある。なお、仮に凸部上に硬化型樹脂が残存した場合には、乾燥後に弱めに研磨する(研磨工程)。
【0019】
【実施例】
次に、本発明の実施例について説明する。
(1)貝殻を散りばめた柄を複製した中間型10から賦型シート20を製造する場合
中間型10の樹脂層12上に吹き付ける塗料として、以下の構成からなるものを用いた。
主剤:ポリウレックス548P液(和信化学(株)製)
硬化剤:ポリウレックス548D液(和信化学(株)製)
主剤:硬化剤の比率を4:1としたものを100部
希釈剤:ウレタンノンブラ11−85(ユニオンペイント(株)製) 100部
上記塗料をスプレーにて中間型10の樹脂層12上に吹き付けた。遅乾溶剤を用いたので塗料の流動性がなくなるまでやや時間を要するが、凸部にはほとんど塗料が残らず、凹部にのみ充填され、凹部が浅くなった。
【0020】
(2)タモ板目柄を有する中間型10Aから賦型シート20を製造する場合
中間型10Aの樹脂層12A上に塗布する塗料として、以下の構成からなるものを用いた。
主剤:ポリウレックス548P液(和信化学(株)製)
硬化剤:ポリウレックス548D液(和信化学(株)製)
主剤:硬化剤の比率を4:1としたものを100部
希釈剤:ウレタンシンナー16−18(ユニオンペイント(株)製) 50〜100部
上記塗料をゴム製又はスチール製のスキージーを用いて凹部内に入り込むように塗布した。凸部に塗料が残存してしまったときは、塗料の乾燥後に弱めに研磨を行った。
【0021】
以上の各方法にて中間型10、10Aの樹脂層12、12Aの凹部の底部を含む一部に樹脂層13’を設けた中間型10’を形成し、この中間型10’から賦型シートを20を製造し、さらにこの賦型シート20により化粧板30を製造した。これにより、賦型シート20の製造時には、従来より少ない量の樹脂で賦型シート20の型取り層21’を形成することができた。また、中間型10’から型取り層21’を容易に分離することができた。さらに、製造した化粧板30の質感は、従来の方法による化粧板、すなわち中間型10等からそのまま賦型シートを製造し、その賦型シートで製造した化粧板と同等であった。
【0022】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、凹凸差の大きい柄を有する原稿から賦型シートを製造する場合であっても、型(中間型)の凹凸差を質感を損なわない程度に小さくしてから賦型シートを製造するようにしたので、型の型取り時に使用する樹脂の量を少なくすることができ、低コストとすることができる。
また、鏡面化粧板を製造する場合にも、クリアー樹脂層を容易に形成することができる。さらにまた、木目柄の原稿から賦型シートを製造する場合にも極端に深い導管部がなくなり、型から賦型シートを剥がすときに凸部分のちぎれ等を防止して剥離しやすさを高めることができるとともに、抜けを防止することができる。さらに化粧板の製造時に、賦型シートの型取り層と化粧板に用いる樹脂との食いつきが少なくなり、賦型シートの耐久性を高めることができる。
【0023】
また、本発明では、塗布液が流動性を有するので、型の樹脂層の凹部のみに第1硬化型樹脂を充填することができるし、また、研磨工程を行えば、型の樹脂層に第1硬化型樹脂を塗布することで生じる凸部への第1硬化型樹脂の付着を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による賦型シートの製造方法の一実施形態を含む、化粧板の製造工程を示す流れ図である。
【図2】賦型シートの製造工程を順次説明する層構成断面図である。
【図3】賦型シートの製造工程を順次説明する層構成断面図であり、図2に続く図である。
【図4】化粧板の製造工程を順次説明するための層構成断面図である。
【図5】板目柄を有する中間型を示す層構成断面図である。
【符号の説明】
10、10’ 中間型
11 基板
12 樹脂層
13 第1硬化型樹脂
13’ 樹脂層
20 賦型シート
21 第2硬化型樹脂
21’ 型取り層
22 枠体
23 紗
24’ 裏打ち層
30 化粧板
31 基板
32 硬化型樹脂
32’ 凹凸樹脂層
Claims (1)
- 抽象柄、もみ紙柄、その他の凹凸差の大きい柄を有する原稿から化粧板を製造するときに用いる賦型シートの製造方法であって、
前記原稿の凹凸模様を複製した硬化型樹脂による樹脂層を表面に有する型の表面上に、未硬化の第1硬化型樹脂をスプレーで塗布し、前記型の前記樹脂層の凹部の底部に該第1硬化型樹脂を流動させて、前記樹脂層の凹凸差を小さくする第1樹脂塗布工程と、
前記型の表面上に、前記賦形シートの型取り層を形成するための未硬化の第2硬化型樹脂を塗布する第2樹脂塗布工程と、
前記第2樹脂塗布工程により形成された前記賦形シートの前記型取り層を前記型から分離する分離工程と
を含むことを特徴とする賦形シートの製造方法。
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