JP4255596B2 - 義歯床用裏装材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は義歯床用裏装材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在歯科治療では、高齢等により歯を喪失した患者に対し、アクリル製、ポリスルホン製、あるいはポリカーボネート製の義歯床を装着することが行われている。一般に、義歯床装着者は顎提の吸収が著しく、クッション性を担う口腔粘膜の菲薄化、及び顎骨吸収等に伴う歯槽骨の陥没のために、精度良く作製された義歯床であっても、時間の経過と共に次第に口腔との適合性が低下することが指摘されている。
【0003】
義歯床と口腔との適合性が低下した場合、一般的には義歯床用裏装材(義歯床用リベース材)を用いて義歯床粘膜面の再形成を行い、口腔との適合性を復元することが行われている。この様な義歯床用裏装材の使用方法は以下の通りである。即ち、適合性の悪くなった義歯床の粘膜面に重合硬化前の裏装材(ペースト状)を築盛し、患者の口腔内に再び戻してかみ合わせて口腔粘膜と接触させ、裏装材が粘膜面の印象を形成した後で重合硬化させる。重合硬化は、口腔粘膜との印象採得時にそのままかみ合わせた状態で引き続き重合硬化させる場合と、印象採得後、口腔外に取り出した状態で重合させる場合がある。
【0004】
しかし、従来の義歯床用裏装材は義歯床本体と比べて、口腔内に装着している間に経時的に、着色しやすい、臭いが着きやすい、吸水しやすい等、非常に汚れやすいという問題点を有している。一般的に高齢になるほど義歯の手入れは不十分となり、従来の裏装材で裏装した義歯の汚れは増大し、高齢者の口腔状態は悪化する。また、従来の裏装材は、重合前の状態で患者の口腔粘膜に接した時の口腔粘膜に対する刺激性が強く、治療の際に患者の受ける苦痛は大きなものであった。
【0005】
このような義歯床用材料の汚れを軽減するものとして、フッ素系材料を用いた歯科材料が提案されており、中でもフッ素原子を分子内に有する(メタ)アクリレートモノマーを成分として用いたものが幾つか開示されている。特開昭62−33110号公報では、α位にフッ素を有するアクリレートを構成成分とする重合体からなる歯科用材料が開示されている。この組成物からは機械的強度に優れる歯科用材料が得られる。しかし、この組成物の耐着色性は十分ではなく、着臭、吸水については改善されていない。また、機械的強度に優れるとはいうものの、靱性は低くて硬化物は硬くて脆い。
【0006】
また、歯科材料・器械,Vol.9,No.2,257−264(1990).においては、義歯床用軟質裏装材に関して、ポリマー成分としてフッ素ゴムであるフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、あるいは、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、モノマー成分として側鎖炭素数が2〜5の含フッ素メタクリレートを用いた組成物が開示されており、従来の軟質裏装材と比較すると重合硬化物の吸水率、モノマー溶出率は低下するが、着色や口臭成分の着臭は未だ改善されていない。
【0007】
歯科材料・器械,Vol.2,No.1,50−57(1983).においては、ポリマー成分としてポリメチルメタクリレート、モノマー成分として2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートを用いた歯科用レジンが開示されており、蛋白質の付着量が若干低下しているものの効果は小さく、着色、吸水及び着臭については依然問題を有する。
【0008】
このように、上記の従来技術では義歯床用裏装材に十分な耐着色性を付与し、かつ、臭い成分や水の吸収、吸着を軽減することは困難であった。また、得られる重合硬化物は、硬さは有するものの、脆いという欠点を有している。さらに、義歯床用裏装材として用いた場合、重合前の組成物を口腔粘膜に接触させて印象を採得する際の、口腔粘膜に対する刺激が大きいという点でも改善されていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
このように従来の義歯床用裏装材は、義歯床本体と比較して非常に汚れやすいという問題点を有している。また、この問題を軽減するために含フッ素(メタ)アクリレートを配合した歯科材料が試みられているが、耐汚染性は十分でなく、その硬化物は脆くなるという欠点があった。したがって、本発明の目的は、耐汚染性に優れ、かつ、硬化物の靱性の低下を伴わない義歯床用裏装材を提供することにある。またさらに、本発明の目的は、印象採得時の口腔粘膜に対する刺激性が低く、患者に苦痛を与えない義歯床用裏装材を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意探索した結果、意外にもモノマー成分として特定の側鎖構造を有する含フッ素(メタ)アクリレートと特定量の多官能性(メタ)アクリレートが配合された義歯床用裏装材が、上記の問題に対して、著しい改善を示すことを見いだし、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、(a)アクリル系樹脂、(b)下記一般式(I)で示される含フッ素(メタ)アクリレート、
CH2=C(R1)COO−R2−Rf (I)
(式中、R1は水素原子またはメチル基を示し、R2はアルキレン基を示し、
Rfはパーフルオロアルキル基を示し、R2+Rfの炭素数は4〜10、かつ、R2+Rfの炭素原子に結合する原子のうちフッ素原子の個数が占める割合は50%以上である。)
(c)多官能性(メタ)アクリレート、及び(d)重合開始剤を含有することを特徴とする義歯床用裏装材である。
【0011】
本発明の義歯床用裏装材において、耐変着色性の向上には前記一般式(I)で示される含フッ素(メタ)アクリレート(b)の配合が寄与する。また、該含フッ素(メタ)アクリレート(b)を配合することで、印象採得時に重合前の組成物の口腔粘膜に対する刺激性を低くすることができることを見いだした。(I)式において、R2はアルキレン基を、Rfはパーフルオロアルキル基を示すが、該アルキレン基及び該パーフルオロアルキル基は直鎖、分岐状若しくは環状でも良い。また、一部の水素原子が水酸基に置換されていても良い。硬化物の耐変着色性と、組成物の口腔粘膜に対する刺激性を低く押さえるには、R2+Rfの炭素数は4以上が必要で、より好ましくは6以上で、かつ、R2+Rfの炭素原子に結合する原子のうちフッ素原子の個数が占める割合は50%以上であることが必要である。R2+Rfは、その炭素原子に結合する原子のうちフッ素原子の個数が占める割合が50%以上であれば、その炭素数の増加とともに耐変着色性を向上させ、刺激性が低くなるが、R2+Rfの炭素数が10を越えると組成物の重合硬化物の靱性が低下する。
【0012】
多官能性(メタ)アクリレート(c)を配合することで靱性はすこし改善されるが十分ではなく、また、該モノマー(c)の配合量が増加すると、逆に耐着色性が低下する。この点から、R2+Rfの炭素数は10以下でなければならず、成分(b)のR2+Rfの炭素数は4〜10であることが必要である。
【0013】
上記の含フッ素(メタ)アクリレート(b)の配合は、着色の抑制や口腔粘膜に対する刺激性を低くするには効果的であるが、モノマー成分として、成分(b)の単独配合では重合硬化物が架橋構造とならないため、臭いの成分や水の硬化物への侵入を防ぐことが困難である。そこで、吸水、着臭の抑制には、多官能性(メタ)アクリレートの配合が効果的であった。該モノマーの配合量は0.1〜20重量%、より好ましくは2〜15重量%の範囲が好ましい。0.1重量%未満では吸水、着臭が大きくなる傾向がある。また、20重量%を越えて配合すると重合硬化物の耐着色性が低下することがある。更に該モノマーの中で、2つの(メタ)アクリロイル基の間のアルキレン炭素数が3〜20であるアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(アルキレン基は直鎖、分岐若しくは環状構造でもよい)の1種以上のモノマーを使用すれば、更に吸水、着臭の抑制効果は高く、また、重合硬化物の靱性は向上することを見いだした。
【0014】
本発明の組成物における主要な成分は、アクリル系樹脂からなるポリマー成分と、含フッ素(メタ)アクリレート及び多官能性(メタ)アクリレートを含有するモノマー成分と、重合開始剤である。アクリル系樹脂は義歯床用裏装材のマトリクスとして必要な成分であり、含フッ素(メタ)アクリレート及び多官能性(メタ)アクリレートは、従来の裏装材が有する着色、吸水、着臭が大きいといった問題点を改善するために配合したものである。
【0015】
本発明の義歯床用裏装材に用いられるアクリル系樹脂は、少なくとも一種の(メタ)アクリレート単位と、これらと共重合可能な他の単量体単位とからなる重合体である。例えば、メタクリレートとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等のメタクリレートが挙げられる。また、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート等のアクリレートが挙げられる。これらの(メタ)アクリレートは単独または併用して用いられる。
【0016】
共重合可能な他の単量体として、1,3−ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、イソプレン等のジエン系化合物、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、N−シクロヘキシルマレイミド、N−−クロロフェニルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド等のN−置換マレイミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物が挙げられ、それらは単独または併用して用いられる。
【0017】
また、共重合可能な他の単量体として、架橋性単量体が含まれていてもよく、かかる架橋性単量体としては、例えばメタクリル酸アリル、アクリル酸アリル、シアヌル酸トリアリル、桂皮酸アリル、ソルビン酸アリル、マレイン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、トリメット酸トリアリル、フマル酸ジアリル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の多官能性単量体が挙げられ、これらは単独または併用して用いられる。
【0018】
上述のアクリル系樹脂を構成する成分のうち、重合硬化物の機械的強度、透明性等の点から、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート−ポリエチルメタクリレート共重合体等が好適に使用される。中でもモノマー成分(b)及び(c)との相溶性に優れるポリエチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート−ポリエチルメタクリレート共重合体、あるいはこれらのポリマーと他のポリマーとの混合物を用いることが好ましい。
【0019】
重合硬化物の機械的強度を向上させる目的で、前記のアクリル系樹脂に対してコア・シェル型樹脂と(メタ)アクリル系樹脂とからなる樹脂複合物を添加しても良い。該コア・シェル型樹脂とは、少なくとも1以上の硬質層と少なくとも1以上の軟質層からなり、かつ最外硬質層を有する多層構造型樹脂である。ここで硬質層はTgが40℃以上の樹脂からなり、軟質層はTgが20℃未満の樹脂からなる。また、コア・シェル型樹脂と樹脂複合物を形成する(メタ)アクリル系樹脂は、Tgが40℃以上の樹脂からなる。該コア・シェル型樹脂及びコア・シェル型樹脂と樹脂複合物を形成する(メタ)アクリル系樹脂は、前記のアクリル系樹脂を構成する単量体の中から目的とするTgを有するように調整されたものである。
【0020】
本発明中のアクリル系樹脂は、分子量は1万〜100万であることが好ましく、特に10〜70万であることが好ましい。分子量が1万未満であると重合硬化物の靱性が不足することがあり、100万を越えると該アクリル系樹脂の含フッ素(メタ)アクリレートに対する溶解性が低下することがある。
【0021】
本発明の義歯床用裏装材の商品形態は、アクリル系樹脂粉末からなる粉成分と含フッ素(メタ)アクリレート及び多官能性(メタ)アクリレートを主成分としてなる液成分とから構成される粉液型、アクリル系樹脂と含フッ素(メタ)アクリレート及び多官能性(メタ)アクリレートを主成分とする液成分が予めアクリル系樹脂と混合されて得られたペースト型の2通りがある。
【0022】
本発明中のアクリル系樹脂が粉末状である場合、その平均粒子径は、組成物の商品形態により好ましい範囲が異なる。すなわち、アクリル系樹脂粉末からなる粉成分と、含フッ素(メタ)アクリレート及び多官能(メタ)アクリレートを主成分としてなる液成分とから構成され、使用時に両者を混合して、ペースト状にして口腔内に適用する場合には、粉液混合後は粉成分が液成分により膨潤、溶解するため、この混合物の粘度が経時的に増加する。この混合物の経時的な粘度の変化には該アクリル系樹脂の粒子径が影響するため、該アクリル系樹脂の平均粒子径は1〜150μmであることが好ましく、特に10〜100μmであることが好ましい。
【0023】
平均粒子径が1μm未満では、該アクリル樹脂粉末がモノマーに対して直ぐに溶解し、組成物の粘度が急上昇するため、口腔内での印象性が不良となることがある。また、平均粒子径が150μmを越えると、該アクリル樹脂粉末がモノマーに容易に溶解せず、組成物の粘度が上昇せずペースト状となりにくい。更に作業性の面においても平均粒子径が1μm未満では、アクリル系樹脂粉末が飛散しやすくなる。一方、アクリル系樹脂を含フッ素(メタ)アクリレート及び多官能(メタ)アクリレートを主成分とするモノマー成分によって予め溶解させて、ペースト状の組成物として提供する商品形態を採用する場合には、該アクリル系樹脂粉末の平均粒子径は特に限定されない。
【0024】
本発明中のアクリル系樹脂と含フッ素(メタ)アクリレートとの相溶性は、上述のように操作性に大きく影響を及ぼす。この相溶性については、アクリル系樹脂を含フッ素(メタ)アクリレートに溶解させて得られる溶液の粘度を測定することによって評価できる。組成物の良好な操作性を得るためには、アクリル系樹脂を5重量%濃度で溶解させた溶液の粘度(25℃)が、100cp以上であるのが好ましい。上述の溶液粘度が100cp未満となるアクリル系樹脂を用いた場合には、重合硬化物の靱性が低下することがある。
【0025】
本発明の義歯床用裏装材に用いられる一般式(I)で示される含フッ素(メタ)アクリレートとして本発明に好適なものを具体的に例示すると、1H,1H,2H,2H−ノニルフルオロヘキシル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,3H,3H−2−ヒドロキシ−トリデカフルオロノニル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H−ウンデカフルオロ−5−メチルヘキシル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,6H−デカフルオロヘキシル(メタ)アクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H,7H−デカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,4H,7H−デカフルオロヘプチルメタクリレート等である。
【0026】
上記の含フッ素(メタ)アクリレートの中でも特に好適なものは、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチルメタクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート、1H,1H,6H−デカフルオロヘキシルメタクリレート及び1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルメタクリレートの4種で、これら4種の化合物の中でも特に好適なものは1H,1H,6H−デカフルオロヘキシルメタクリレート及び1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルメタクリレートの2種である。これらの化合物の中から選ばれる1種以上の化合物を配合した義歯床用裏装材は、他の含フッ素(メタ)アクリレートを用いた組成物よりも、更に着色、吸水及び着臭の抑制に優れ、さらに口腔粘膜に対する刺激性が特に低い。
【0027】
本発明の義歯床用裏装材に用いられる多官能性(メタ)アクリレート(c)として本発明に好適なものを具体的に例示すると、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7−ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,11−ウンデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート1,13−トリデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,14−テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,15−ペンタデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,16−ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,17−ヘプタンデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,18−オクタデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,19−ノナデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,20−エイコサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2,2‘−ビス{p−(γ−メタクリオキシ−β−ヒドロキシプロポキシ)フェニル}ブロパン、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2’−ジ(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン(一分子中にエトキシ基2〜10)、1,2−ビス(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ブタン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリレート単量体は、一種または二種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0028】
上記の多官能性(メタ)アクリレートの中でも特に好適なものは、2つの(メタ)アクリロイル基の間のアルキレン炭素数が3〜20であるアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートである。ここで、アルキレン基は直鎖、分岐若しくは環状構造でもよい。これらの化合物の1種以上の化合物を配合した場合、他の多官能性(メタ)アクリレートを用いた場合より、重合硬化物の吸水、着臭の抑制効果が特に優れる。また、該モノマーを配合すると硬化物の靱性が向上することが見いだされた。
【0029】
本発明の義歯床用裏装材において、アクリル系樹脂と含フッ素(メタ)アクリレート及び多官能性(メタ)アクリレートとの配合量は、(a)該アクリル系樹脂が25〜85重量%、(b)該含フッ素(メタ)アクリル酸エステルが15〜75重量%、(c)該多官能性(メタ)アクリル酸エステルが0.1〜20重量%であることが好ましい。
【0030】
本発明の好ましい実施態様は、(a)重量平均分子量が1万〜100万のアクリル系樹脂を25〜85重量%、(b)含フッ素(メタ)アクリレートとして、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチルメタクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート、1H,1H,6H−デカフルオロヘキシルメタクリレート及び1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルメタクリレートから選ばれた1種以上の化合物を15〜75重量%、(c)多官能性(メタ)アクリレートとして、2つの(メタ)アクリロイル基の間のアルキレン炭素数が3〜20であるアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(アルキレン基は直鎖、分岐若しくは環状構造でもよい)の1種以上の化合物を0.1〜20重量%配合した組成物であり、該組成物は義歯床用裏装材として優れた耐汚染性及び良好な靱性を有し、また、良好な操作性を有するため特に好ましい。
【0031】
本発明の義歯床用裏装材は、その重合硬化物が優れた耐汚染性を有する点が最大の特徴であるが、特に食用色素による着色、吸水量(義歯の臭いの1つの原因である)及び臭気成分の吸着量を、従来の義歯床用裏装材よりも低減しうるものである。より具体的に示せば、従来の義歯床用裏装材のターメリック(カレー粉)水溶液中における着色度は△E*で40以上、吸水量は15μg/mm3程度であったが、本発明の組成物は、ターメリックによる着色度を△E*で従来の水準以下、吸水量を10μg/mm3以下、メチルメルカプタンの吸着量は従来の市販の裏装材のレベルの約2/3以下にまで押さえることができた。上記の耐汚染性を維持できる範囲であれば、必要に応じて前記一般式(I)で示される含フッ素(メタ)アクリレート及び多官能性(メタ)アクリレートと共重合可能な他の重合性単官能性単量体成分を配合することができる。
【0032】
該重合性単官能性単量体成分としては、一般には、単官能性(メタ)アクリレートが好適である。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0033】
本発明の義歯床用裏装材中に配合される重合開始剤は、公知のものであれば制限無く用いることができ、重合開始剤としては光重合開始剤および/または加熱重合開始剤および/または化学重合開始剤が挙げられる。光重合開始剤としては、例えば、α−ジケトン/還元剤、ケタール/還元剤、チオキサントン/還元剤等があげられる。α−ジケトンの例としては、カンファーキノン、ベンジル、2,3−ペンタンジオンなどが挙げられる。ケタールの例としては、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール等が挙げられる。チオキサントンの例としては、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等が挙げられる。
【0034】
還元剤の例としては、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N,N−ビス〔(メタ)アクリロイルオキシエチル〕−N−メチルアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸ブチル、4−ジメチルアミノ安息香酸ブトキシエチル、N−メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノベンゾフェノン、 N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、ジメチルアミノフェナントール等の第3級アミン、ジメチルアミノベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒド等のアルデヒド類、2−メルカプトベンゾオキサゾール、デカンチオール、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、チオ安息香酸等のチオール基を有する化合物等を挙げることが出来る。
【0035】
また、紫外線照射による光重合を行う場合は、ベンゾインアルキルエーテル、ベンジルジメチルケタール等が好適である。さらに、アシルホスフィンオキサイド系の光重合開始剤も好適に用いられる。かかるアシルホスフィンオキサイドとしては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイルジ−(2,6−ジメチルフェニル)ホスホネート、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。これらアシルホスフィンオキサイド系の光重合開始剤は、単独もしくは各種アミン類、アルデヒド類またはメルカプタン類、スルフィン酸塩等の還元剤と併用して用いることもできる。これらの光重合開始剤は1種または数種組み合わせて用いられる。また、これらの光重合開始剤の配合量は、義歯床用裏装材全体(100重量%)に対し、通常0.001〜15重量%の範囲、好ましくは0.1〜10重量%の範囲で使用される。
【0036】
義歯床用裏装材の商品形態には粉液型とペースト型があるが、本発明の義歯床用裏装材の重合開始剤として光重合開始剤を用いる場合は、粉液型の場合、粉成分と液成分とを使用時に混合して得られたペースト状の組成物を、口腔内に適用して、その後重合する手法がとられる。光重合開始剤は粉/液成分のどちらか一方だけに配合するか、2成分に分けて配合することができる。また、ペースト型の場合、光重合開始剤が配合された1ペースト型となる。
【0037】
また、加熱重合開始剤としては、例えば、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシエステル類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ケトンパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類などの有機過酸化物も配合することが可能であり、具体的には、ジアシルパーオキサイド類としてはベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド等が挙げられる。
【0038】
パーオキシエステル類としては、例えば、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス−t−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等が挙げられる。ジアルキルパーオキサイド類としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等が挙げられる。
パーオキシケタール類としては、例えば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。
ケトンパーオキサイド類としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド等が挙げられる。
【0039】
ハイドロパーオキサイド類としては、例えば、t−ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。これらの加熱重合開始剤は1種または数種組み合わせて用いられる。また、これらの酸化剤の配合量は、義歯床用裏装材全体(100重量%)に対して、通常0.01〜15重量%の範囲、好ましくは0.1〜10重量%の範囲で使用される。
【0040】
本発明の義歯床用裏装材の重合開始剤として加熱重合開始剤を用いる場合は、粉液型の場合、粉成分と液成分とを使用時に混合して得られたペースト状の組成物を、口腔内に適用して、その後重合する手法がとられる。加熱重合開始剤は粉/液成分のどちらか一方だけに配合するか、2成分に分けて配合することができる。また、ペースト型の場合、加熱重合開始剤が配合された1ペースト型となる。
【0041】
また、化学重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物/アミン系、有機過酸化物/アミン/スルフィン酸(またはその塩)系等のレドックス系の重合開始剤が好適に用いられる。レドックス系の重合開始剤を使用する場合、本発明の義歯床用裏装材は酸化剤と還元剤が別々に包装された包装形態をとる必要がある。
【0042】
酸化剤としては、上記の加熱重合開始剤と同様のものが挙げられる。これらの酸化剤は、1種または数種組み合わせて用いられる。また、これらの酸化剤の配合量は、義歯床用裏装材全体(100重量%)に対して、通常0.01〜15重量%の範囲、好ましくは0.1〜10重量%の範囲で使用される
【0043】
還元剤としては、通常第3級アミンが用いられ、例えば、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−4−エチルアニリン、N,N−ジメチル−4−i−プロピルアニリン、N,N−ジメチル−4−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチル−3,5−ジt−ブチルアニリン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−4−エチルアニリン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−4−i−プロピルアニリン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−4−t−ブチルアニリン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジi−プロピルアニリン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジt−ブチルアニリン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸n−ブトキシエチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(2−メタクリロイルオキシ)エチル、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−ラウリルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、(2−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N−メチルジエタノールアミンジメタクリレート、N−エチルジエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミンモノメタクリレート、トリエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミントリメタクリレート等が挙げられる。
【0044】
これらの還元剤は、1種または数種組み合わせて用いられる。また、これらの還元剤の配合量は、義歯床用裏装材全体(100重量%)に対して、通常0.01〜15重量%の範囲、好ましくは0.1〜10重量%の範囲で使用される。
本発明の義歯床用裏装材の重合開始剤として化学重合開始剤を用いる場合は、粉液型の場合、有機過酸化物等の酸化剤と、3級アミン等の還元剤が、粉/液成分に、それぞれ分けて配合される必要がある。また、酸化剤と還元剤とが別々に配合されたペーストを使用時に混合して重合する手法がとられる。
【0045】
本発明の義歯床用裏装材中には、必要に応じてフィラーを配合することができる。フィラーは有機物でも無機物でもかまわないが、無機フィラーとしては、例えば、シリカあるいはカオリン、クレー、雲母、マイカなどのシリカを基材とする鉱物、シリカを基材とし、Al2O3、B2O3、TiO2、ZrO2、BaO、La2O3、SrO2、CaO、P2O5等を含有するセラミックスやガラスの類、特にランタンガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、ソーダガラス、リチウムボロシリケートガラス、亜鉛ガラス、フルオロアルミナムボロシリケートガラス、ホウ珪酸ガラス、バイオガラス等が挙げられる。さらには結晶石英、ヒドロキシアパタイト、アルミナ、酸化チタン、酸化イットリウム、ジルコニア、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム等も好適に用いられる。
【0046】
また、重合後の硬度や耐摩耗性等を向上させるために、有機樹脂中に無機フィラーが分散したり、無機フィラーを有機樹脂でコーティングした無機/有機複合フィラー、繊維状補強剤等を加えることも出来る。さらに重合禁止剤(例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ブチルヒドロキシルトルエン等)、酸化安定剤、紫外線吸収剤(例えばベンゾフェノン)、顔料、染料、擬態血管のための繊維を添加することもできる。
【0047】
本発明の義歯床用裏装材におけるより好ましい商品形態として、重合開始剤として過酸化物と還元剤の組合せからなる化学重合開始剤を用い、アクリル樹脂粉末とモノマー液の二包装からなる粉液型がある。このような粉液化学重合型の裏装材は操作性に優れ、臨床上有用である。特に、過酸化物がアクリル系樹脂粉末に添加された粉剤と、第三級アミンが含フッ素(メタ)アクリレートと多官能性(メタ)アクリレートに配合された液剤とからなり、両者を混合して重合硬化させる形態が特に好ましい。
【0048】
かかる粉−液化学重合型の義歯床用軟質裏装材において、より好ましい重合開始剤は有機過酸化物と第三級アミンの組合せであって、有機過酸化物としては、たとえば過酸化ベンゾイル、第三級アミンとしては芳香族第三級アミンが好ましく、たとえば、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アニリン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン等が特に好ましい。
【0049】
アクリル系樹脂の粉末として、粒子が球形状で、粒径が10〜100ミクロンの範囲のアクリル樹脂粉末を用いると、粉体の操作性や、液剤と混合した際のペーストの性状を口腔内で印象を採得するのに適したものにしやすい。
かかるアクリル系樹脂粉末としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートの重合体が特に好ましい。粒子が球形状のこれらのアクリル系樹脂粉末は、懸濁重合等の方法で得られる。
【0050】
このようなアクリル樹脂粉末と過酸化物からなる粉剤の成分として、さらに、粒径範囲0.001〜0.1ミクロン、比表面積が20〜500m2/gの微細な無機酸化物粉末を添加すると、粉剤の流動性が著しく改善され、臨床操作の点でメリットが大きい。即ち、歯科医が粉剤を計量する際には、計量カップやスプーン等で粉体を計りとるが、この時、粉体の流動性が悪かったり粉体が容器の壁に付着したりすると操作性が悪くなる。アクリル樹脂粉末だけであると粉体の流動性があまり良くない場合があったが、上記の微細な無機酸化物を少量添加すると、アクリル樹脂粉末の流動性が著しく改善されることを見いだした。かかる微細な無機酸化物としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、ジルコニアなどがあげられるが、中でも、「アエロジル」の商品名で代表されるような高分散性のシリカが特に好ましい。これらの微細な無機酸化物粉末の添加量は、アクリル系樹脂粉末に対して、通常、0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜1重量%の範囲である。
【0051】
このような義歯床用裏装材の実際の使用方法の例を以下に述べる。即ち、過酸化物が添加された粉剤と第三級アミンを含む液剤を、硬化時間が適切になるように、それぞれ適量取って混ぜ合わせる。アクリル樹脂粉末が液剤にある程度溶解して柔らかい餅状のペーストになったら、リベースを行う義歯床の粘膜面の上に該ペーストを築盛する。患者の口腔内にセットし、かみ合わせて印象採得を行い、数分〜十数分間そのままかみ合わせた状態で重合硬化させる。なお、リベースを行う義歯床の粘膜面と本発明の裏装材との接着性を向上させるために、接着プライマーを義歯床の表面に予め塗布しておくこともある。硬化後、口腔内の義歯床を取り外し、粘膜面からはみ出した裏装材を削除し、必要に応じて研磨すると、本発明の義歯床用裏装材によりリベースがなされた義歯床が完成する。
【0052】
【実施例】
次に実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。尚実施例、比較例に示した略称・略号については以下の通りである。
6FMA:1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチルメタクリレート
5F/4H−BMA:1H,1H,2H,2H−ペンタフルオロブチルメタクリレート
8FMA:1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート
10FMA:1H,1H,6H−デカフルオロヘキシルメタクリレート
12FMA:1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルメタクリレート
16FMA:1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニルメタクリレート
5FMA:2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート
19FMA:1H,1H,2H,2H−ノナデカフルオロウンデシルメタクリレート
7F/12H−NMA:7、7,8,8,8−ペンタフルオロノニルメタクリレート
α−FMA:α−フルオロ−メチルアクリレート
BMA:ブチルメタクリレート
NMA:ノニルメタクリレート
EHMA:2−エチルヘキシルメタクリレート
【0053】
PMMA:ポリメチルメタクリレート
PEMA:ポリエチルメタクリレート
PBMA:ポリブチルメタクリレート
1,6−HD:1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート
1,10−DD:1,10−デカンジオールジメタクリレート
3G:トリエチレングリコールジメタクリレート
TMDPO:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド
BPO:ベンゾイルパーオキサイト
DMPT:N,N−ジメチル−p−トルイジン
DEPT:N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン
【0054】
本実施例において各種試験は以下の方法で行った。
(1)重合硬化物の対食用色素着色試験
文献〔鷹股、「日本補綴歯科学会誌」第35巻、第3号、第542−555頁(1991年)に記載の方法に準じて測定を行った。すなわち、ペースト状の組成物を厚さ1mm、直径2cmの円盤状モールドに充填し、ペーストを硬化させた。得られた硬化物を試験片として、37℃のターメリックの0.05重量%水溶液中に7日間浸漬し、浸漬前後の色調の変化を色差計(日本電色製)を用いて測定し、ΔE*で表した。ΔE*の測定は以下の手順によった。すなわち、硬化物試験片の色度をターメリック水溶液に浸漬前後でそれぞれ測定し、これをJIS−Z−8729に定めたL***表色系による色空間座標上の点として座標化し、この2点間の距離をΔE*とした。すなわち、変色の程度ΔE*は次式で定義される。
ΔE*={(L1 *― L2 *2+(a1 *― a2 *2+ (b1 *― b2 *21/2ここで、(L1 *,a1 *,b1 *)は浸漬前に測定した色座標値で、(L2 *,a2 *,b2 *)は浸漬後に測定した色座標値である。測定に際しては、硬化物試験片の背後に標準白板をおいて測定した。ΔE*が大きいほど、変色の程度が大きいことを意味する。
【0055】
(2)重合硬化物の着臭試験
ペースト状の組成物を厚さ1mm、直径2cmの円盤状モールドに充填し、ペーストを硬化させた。得られた硬化物を試験片として、試験片を0.5重量%のメチルメルカプタン水溶液(10ml)中に、37℃にて24時間浸漬し、水洗乾燥後に、25℃において各試験片が最初の1時間当たりに放出するメチルメルカプタン量を測定した。メチルメルカプタン量の測定方法は、各試験片をガラス製サンプル管(100ml)内に入れて、25℃、1時間後のサンプル管内のメチルメルカプタン濃度を、メチルメルカプタン用のガス検知管を用いて(吸引100ml)、検知管の変色部の長さから求めた。
【0056】
(3)重合硬化物の吸水・溶解試験
ISO 1567に記載の方法に準拠して行った。すなわち、ペースト状の組成物を厚さ1mm、直径2cmの円盤状モールドに充填し、ペーストを重合硬化させた。得られた硬化物を試験片として、乾燥させたシリカゲルの入ったデシケーターに試験片を入れて、37±1℃で23時間、続いて、25±1℃にて1時間乾燥後、秤量する。恒量となるまで前記作業を繰り返す(質量W1)。恒量となったところで、37±1℃の水中に7日間浸漬させた後、秤量する(質量W2)。その後は、37±1℃で23時間、続いて25±1℃にて1時間乾燥後、秤量する。恒量となるまで前記工程を繰り返す(質量W3)。
吸水量(μg/mm3)=(W2−W3)/V V;サンプルの体積(mm3
溶解量(μg/mm3)=(W1−W3)/V
【0057】
(4)重合硬化物の破壊靱性試験
文献〔松本、「歯科材料・器械」第7巻、第5号、756−768頁(1988年)〕に記載の方法に準じて測定を行った。すなわち、ペースト状組成物を2.5×5×30mmの角柱状であり、かつ、中心部に剃刀による2.5mmの切り欠き部を有するモールドに充填し、ガラス板でペーストを覆い重合硬化させた。得られた硬化物を試験片として、破壊靱性値を測定した。測定は#1500の耐水研磨紙で試験片を研磨後、37℃水中に24時間保存の後に、試験片をインストロン万能試験器に設置して、常温下クロスヘッドスピード1mm/分、支点間距離20mmで行い、試験片が破断した点を以て破壊靱性値とした。
【0058】
(組成物の硬化条件)
組成物はその触媒組成により幾つかの重合形態を取りうる。以下に重合形態別に重合条件を示す。
化学重合型;37℃水中10分
光重合型;技工用光照射器「α−ライト」((株)モリタ社製)5分照射
加熱重合型;100℃水中1時間
【0059】
実施例1(粉液−化学重合型)
PMMA(分子量20万、平均粒子径20μm、溶液粘度305cp)を60g、BPOを2g、微細シリカ(比表面積130m2/g、粒径0.016ミクロン、日本アエロジル株式会社製商品名:アエロジル130)を0.03g含有する粉成分と、6FMAを30g、1,10−DDを10g、DMPTを2g含有する液成分とを混合後、化学重合により重合硬化物を得た。硬化物の変色試験、着臭試験、吸水・溶解試験及び破壊靱性試験の結果を表1に示す。ここで示すポリマーの溶液粘度とは、ポリマー成分を本組成物に使用するフッ素モノマーに5重量%濃度で溶解させた溶液の25℃における粘度である。従って、以下の実施例において、ポリマー成分が同じであっても溶解させるフッ素モノマーが異なれば、溶液粘度は異なる値を示す。
【0060】
実施例2〜6
実施例1において、6FMAのかわりに、8FMA(溶液粘度315cp)、10FMA(溶液粘度326cp)、12FMA(溶液粘度370cp)、16FMA(溶液粘度410cp)、5F/4H−BMA(溶液粘度300cp)をそれぞれ用いて、同様な試験を行った。結果を表1にあわせて示した。
【0061】
比較例1〜6
実施例1において、6FMAのかわりに、5FMA、19FMA、BMA、7F/12H−NMA、NMA、α−FMAを用いてそれぞれ同様に試験し、結果を表1に示した。ここで、5FMAは、フッ素を含んだモノマーであるが、側鎖のR2+Rfの炭素数が3である。19FMAは、同様な含フッ素メタクリレートモノマーであるが、側鎖のR2+Rfの炭素数が11である。7F/12H−NMAは、側鎖のR2+Rfの炭素数は9個であるが、炭素原子に結合する原子のうち、フッ素原子の占める個数の割合が低い。BMA、NMAはフッ素原子を含まないメタクリレートモノマーである。α−FMAは分子中に1個のフッ素原子を有するが、側鎖に相当する部分がメチル基で、本発明で示した含フッ素(メタ)アクリレートとは異なる。
【0062】
実施例7
PMMA(分子量20万、平均粒子径20μm)を60g、BPOを2g含有する粉成分と、16FMAを30g、3Gを10g、DMPTを2g含有する液成分とを混合後、化学重合により重合硬化物を得た。(溶液粘度390cp)
【0063】
比較例7
PMMA(分子量20万、平均粒子径20μm、溶液粘度290cp)を60g、BPOを2g含有する粉成分と、5FMAを30g、3Gを10g、DMPTを2g含有する液成分とを混合後、化学重合により重合硬化物を得た。この組成物は、液成分の含フッ素(メタ)アクリレートとして、側鎖のR2+Rfの炭素数が3である5FMAを用いている。
【0064】
比較例8
PMMA(分子量20万、平均粒子径20μm、溶液粘度420cp)を60g、BPOを2g含有する粉成分と、19FMAを30g、3Gを10g、DMPTを2g含有する液成分とを混合後、化学重合により重合硬化物を得た。この組成物は、液成分の含フッ素(メタ)アクリレートとして、側鎖のR2+Rfの炭素数が11である19FMAを用いている。
【0065】
比較例9
PMMA(分子量20万、平均粒子径20μm、溶液粘度350cp)を60g、BPOを2g含有する粉成分と、EHMAを30g、3Gを10g、DMPTを2g含有する液成分とを混合後、化学重合により重合硬化物を得た。この組成物は、液成分として含フッ素(メタ)アクリレートを用いていない。
【0066】
【表1】
Figure 0004255596
【0067】
比較例10
PMMA(分子量20万、平均粒子径20μm、溶液粘度390cp)を60g、BPOを2gからなる粉成分と、16FMAを40g、DMPTを2g含有する液成分とを混合後、化学重合により重合硬化物を得た。同様の評価を行い、結果を表2に示した。
この組成物は、液成分として含フッ素(メタ)アクリレートを単独で使用しており、多官能(メタ)アクリレートを用いていない。
【0068】
実施例8〜14、比較例11〜12
比較例10と同じ粉成分を用い、液剤のモノマー成分として、多官能性メタクリレートとして1,10−DDを、含フッ素メタクリレートとして6FMAを、それぞれ表2に示した配合量で調製した液剤を用い、同様に硬化物を作製して評価を行った。結果を表2に示した。
【0069】
【表2】
Figure 0004255596
【0070】
実施例15(粉液−化学重合型)
PEMA(分子量25万、平均粒子径60μm、溶液粘度617cp)を60g、BPOを2g含有する粉成分と、6FMAを30g、3Gを10g、DMPTを2g含有する液成分とを混合後、化学重合により重合硬化物を得た。同様な評価を行い、結果を表3にまとめた。
【0071】
実施例16(粉液−化学重合型)
PEMA(分子量25万、平均粒子径60μm、溶液粘度617cp)を60g、BPOを2g含有する粉成分と、8FMAを30g、3Gを10g、DEPTを2g含有する液成分とを混合後、化学重合により重合硬化物を得た。
【0072】
実施例17(粉液−化学重合型)
PMMA/PEMA共重合体(分子量70万、平均粒子径60μm、共重合組成50/50、溶液粘度284cp)を65g、BPOを2g含有する粉成分と、6FMAを25g、1,10−DDを10g、DMPTを2g含有する液成分とを混合後、化学重合により重合硬化物を得た。
【0073】
実施例18(粉液−化学重合型)
PMMA/PEMA共重合体(分子量70万、平均粒子径60μm、共重合組成50/50、溶液粘度284cp)を60g、BPOを2g含有する粉成分と、6FMAを25g、1,10−DDを10g、EHMAを5g、DEPTを2g含有する液成分とを混合後、化学重合により重合硬化物を得た。
【0074】
実施例19(粉液−加熱重合型)
PMMA/PEMA共重合体(分子量70万、平均粒子径60μm、共重合組成50/50、溶液粘度284cp)を65g、BPOを2g含有する粉成分と、6FMAを25g、1,6−HDを10g含有する液成分とを混合後、加熱重合により重合硬化物を得た。
【0075】
実施例20(2ペースト−化学重合型)
PMMA/PEMA共重合体(分子量70万、平均粒子径60μm、共重合組成50/50、溶液粘度284cp)を65g、6FMAを25g、1,6−HDを10g、BPOを2g含有するAペーストと、PMMA/PEMA共重合体(分子量70万、平均粒子径60μm、共重合組成50/50、溶液粘度284cp)を65g、6FMAを25g、1,6−HDを10g、DMPTを2g含有するBペーストとを混合後、化学重合により重合硬化物を得た。
【0076】
実施例21(2ペースト−光兼化学重合型)
PMMA/PEMA共重合体(分子量70万、平均粒子径60μm、共重合組成50/50、溶液粘度284cp)を65g、6FMAを25g、1,6−HDを10g、BPOを2g、TMDPOを1g含有するAペーストと、PMMA/PEMA共重合体(分子量70万、平均粒子径60μm、共重合組成50/50、溶液粘度284cp)を65g、6FMAを25g、1,6−HDを10g、DMPTを2g含有するBペーストとを混合後、光重合により重合硬化物を得た。
【0077】
実施例22(1ペースト−光重合型)
PMMA/PBMA共重合体(分子量40万、平均粒子径30μm、共重合組成75/25、溶液粘度195cp)を65g、6FMAを30g、1,6−HDを5g、TMDPOを1g含有するペーストを、光重合することにより重合硬化物を得た。
【0078】
比較例13(粉液−化学重合型)
市販の義歯床用裏装材であるトクソーリベース(トクヤマ製)の粉成分を65g、液成分を35gを混合後、化学重合により重合硬化物を得た。同様の評価を行い、結果を表3に示した。
【0079】
比較例14(粉液−化学重合型)
市販の義歯床用裏装材であるマイルドリベロン(ジーシー製)の粉成分を65g、液成分を35gを混合後、化学重合により重合硬化物を得た。
【0080】
【表3】
Figure 0004255596
【0081】
実施例23
PMMA(分子量20万、平均粒子径20μm)を60g、BPOを0.6g、コロイドシリカ粉末(日本アエロジル株式会社製商品名:アエロジル380)を0.02g含有する粉成分と、6FMAを35g、1,10−DDを5g、DEPTを0.15g含有する液成分とを混合し、得られたペースト状の組成物を口腔粘膜刺激試験に供した。
【0082】
即ち、歯科材料の口腔粘膜刺激試験の国際規格であるISO10993−10に記載の方法に準じ、ハムスターを用いて試験を行った。陰性対照として、生理食塩水0.4mlを含んだ1cm四方の綿をハムスターの片側の頬袋に挿入し、ペースト状の本発明の組成物の0.4mlを含んだ1cm四方の綿を同じハムスターのもう片側の頬袋に挿入し、10分間接触させた。1時間毎に、新しい試料に交換して、上記操作を計4回行い、試料適用部位を肉眼で観察し、赤斑が生じているか否かで、陰性、陽性の評価を行った。1種の試料に対してハムスターを5匹使用した。刺激性のある場合は赤斑が生じ、陽性と判断した。結果を表4に示した。
【0083】
実施例24〜28、比較例15〜17
実施例23において、6FMAのかわりに、表4に示したメタクリレートモノマーを用いて液剤を調製し、同じ粉剤と組み合わせて同様にして得られたペースト状の組成物を口腔粘膜刺激試験に供した。
【0084】
比較例18
実施例23において、6FMAのかわりに、α−フルオロ−メチルアクリレート(α−FMA)を用いて液剤を調製し、同じ粉剤と組み合わせて同様にして得られたペースト状の組成物を口腔粘膜刺激試験に供した。結果を表4に示した。この組成物の液成分の中に含まれる含フッ素モノマーは、本発明で用いる含フッ素モノマーとは異なる化合物である。
【0085】
【表4】
Figure 0004255596
【0086】
実施例29
PEMA粉末(根上工業製、分子量25万、平均粒子径60μm、溶液粘度680cp)を100g、BPOを1g、微細シリカ粉末(比表面積130m2/g、粒径0.016μm、商品名:アエロジル130)0.05gをボールミルを用いて均一に混合して粉剤を製造した。該粉剤の流動性は優れ、ポリエチレン製の容器に移して振騰しても、粉剤が容器の壁に付着することはなかった。一方、10FMAを86g、1,10−DDを14g、DEPTを0.24gをそれぞれはかりとって均一に溶解して液剤を調製し、粉−液化学重合型の裏装材を作製した。
【0087】
一方、口腔との適合性が悪くなったPMMA製の義歯床の、リベースを行う部分をカーボランダムポイントで一層研削し、接着プライマーを塗布した。接着プライマーは、市販の義歯床用裏装材である「トクソーリベース」(トクヤマ製)付属の接着プライマー(ジクロロメタンを主剤とする)を用いた。上述の手順で作製した粉剤を2.4g、および、液剤を2.0mlをそれぞれ測りとって混和し、柔らかいペースト状になった時点で、接着プライマーを塗布した義歯床の面に該ペーストを築盛し、患者の口腔内にセットして咬み合わせを行って印象採得した。
【0088】
かみ合わせた状態で5分間経過して重合硬化した後、患者の口腔内から義歯床を取り出し、はみ出した裏装材をトリミングした。硬化した裏装材の表面の未重合層を低減するため、亜硫酸ナトリウムが溶解した温水(約50℃)中に5分間浸漬した。トリミングした部分の細かい形態修正と表面の研磨を行い、本発明の裏装材で適合よくリベースされた義歯床を作製した。
【0089】
この義歯床を患者の口腔内で3週間使用した後、裏装材を目視で観察すると、変着色は殆ど見られなかった。また、表面の一部にプラークが少し付着していたが、超音波水洗により容易に除去できた。裏装材の臭いはほとんどなかった。
【0090】
比較例19
実施例において、10FMAのかわりに、EHMAを用いた以外は全く同じ組成の粉液型の義歯床用裏装材を調製し、同様に義歯床にリベースを行った。患者の口腔内で3週間使用した後、裏装材を観察すると、黄色〜褐色の変色が著しかった。また、裏装材のにおいも認められた。
【0091】
【発明の効果】
本発明の義歯床用裏装材は、特定の側鎖構造を有する含フッ素(メタ)アクリル酸エステル及び特定量の多官能性(メタ)アクリル酸エステルを配合することにより、従来の義歯床用裏装材では大きな問題であった着色、着臭、吸水等に対する耐汚染性を、硬化物の靱性を損なうことなく向上させることが出来る。またさらに、組成物の口腔粘膜に対する刺激性が低い。

Claims (8)

  1. (a)アクリル系樹脂、(b)下記一般式(I)で示される含フッ素(メタ)アクリレート、
    CH2=C(R1)COO−R2−Rf (I)
    (式中、R1は水素原子またはメチル基を示し、R2はアルキレン基を示し、
    Rfはパーフルオロアルキル基を示し、R2+Rfの炭素数は4〜10、かつ、R2+Rfの炭素原子に結合する原子のうちフッ素原子の個数が占める割合は50%以上である。)
    (c)多官能性(メタ)アクリレート、及び(d)重合開始剤を含有することを特徴とする義歯床用裏装材。
  2. 請求項1記載の義歯床用裏装材において、一般式(I)で示される含フッ素(メタ)アクリレートにおけるR2+Rfの炭素数が6〜10である義歯床用裏装材。
  3. 請求項1又は2記載の義歯床用裏装材において、(a)アクリル系樹脂が25〜85重量%、(b)含フッ素(メタ)アクリレートが15〜75重量%、(c)多官能性(メタ)アクリレートが0.1〜20重量%、及び(d)重合開始剤が0.1〜10重量%である義歯床用裏装材。
  4. 請求項1〜3いずれかに記載の義歯床用裏装材において、(b)含フッ素(メタ)アクリレートが、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチルメタクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート、1H,1H,6H−デカフルオロヘキシルメタクリレート及び1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルメタクリレートからなる群から選ばれる1種以上の化合物である義歯床用裏装材。
  5. 請求項1〜4いずれかに記載の義歯床用裏装材において、(c)該多官能性(メタ)アクリレートは、2つの(メタ)アクリロイル基の間のアルキレン炭素数が3〜20であるアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(アルキレン基は直鎖、分岐若しくは環状構造でもよい)の1種以上の化合物である義歯床用裏装材。
  6. 請求項1〜5いずれかに記載の義歯床用裏装材において、重合開始剤(d)が過酸化物と第三級アミンの組合せであって、粉末成分が、過酸化物が添加されたアクリル系樹脂の粉末で、液成分が、第三級アミンと含フッ素(メタ)アクリレート(b)と多官能性メタアクリレート(c)からなり、粉末成分と液成分を混和することで重合させる、粉液化学重合型の義歯床用裏装材。
  7. 請求項6の義歯床用裏装材において、アクリル樹脂の粉末として、粒子が球形状で、粒径が10〜100ミクロンの範囲のアクリル樹脂粉末である義歯床用裏装材
  8. 粉末成分としてさらに、粒径範囲が0.001〜0.1ミクロン、比表面積が20〜500m2/gの微細な無機酸化物粉末が添加されてなる請求項6の義歯床用裏装材
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