JP4254976B2 - 空調方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は屋内や屋外において居住域空間を、コアンダ(COANDA)効果を利用して効率良く空調する空調方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、屋内や屋外の大空間においてその居住域空間の空調を行なう場合、その居住域空間に臨ませて吹き出し口を設け、この吹き出し口から暖気や冷気を居住域空間に直接吹き付けることがなされている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の方法では、暖気の場合には居住域空間の上方に浮き上がりがちとなり、また、冷気の場合には下方に沈み込んで居住域空間をそのまま通り過ぎてしまう。
そのため、屋内や屋外の居住域空間に暖気や冷気などを閉じ込めることができず、空調を効率良く行なうことができない不具合があった。
一方、気体の性質として、物体の近傍を気体が流動している場合、気体は物体に沿って流れようとする現象が知られており、この現象は所謂コアンダ(COANDA)効果と呼ばれている。
本発明はこのコアンダ効果に着目して案出されたものであって、本発明の目的は、コアンダ効果を利用することで屋内や屋外の居住域空間の空調を効率良く行なえる空調方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため本発明は、床と、床から立ち上る壁との間に位置し屋内や屋外における巨大空間に連通した状態の居住域空間を空調する方法であって、前記居住域空間の上方に位置する前記壁箇所から前記居住域空間の上方で延在するようにガイド板を突設し、前記ガイド板の上方の前記壁箇所に循環流作成用空気吹き出し口を設け、前記循環流作成用空気吹き出し口から空気を吹き出してコアンダ効果によりその空気の流れを床側に曲げ、前記曲げられた空気の流れにより、前記居住域空間に、コアンダ効果により床、壁、ガイド板、前記曲げられた空気の流れに沿って循環する循環流を生じさせ、前記循環流に暖気または冷気を供給し、前記暖気または冷気を前記循環流により前記居住域空間に循環させるようにしたことを特徴とする。
また、本発明は、床と、床から立ち上る壁との間に位置し屋内や屋外における巨大空間に連通した状態の居住域空間を暖房する方法であって、前記居住域空間の上方に位置する前記壁箇所に循環流作成用空気吹き出し口を設け、前記循環流作成用空気吹き出し口から、暖房前の居住域空間の空気の温度とほぼ等しい温度の空気を吹き出してコアンダ効果によりその空気の流れを床側に曲げ、前記曲げられた空気の流れにより、前記居住域空間に、コアンダ効果により床、壁、循環流作成用空気吹き出し口から吹き出される空気の流れ、前記曲げられた空気の流れに沿って循環する循環流を作り、前記循環流が作られた後、前記循環流作成用空気吹き出し口から吹き出す空気の温度を、前記居住域空間を暖房すべき所望の温度まで徐々に上昇させていくようにしたことを特徴とする。
また、本発明は、床と、床から立ち上る壁との間に位置し屋内や屋外における巨大空間に連通した状態の居住域空間を暖房する方法であって、前記居住域空間の上方に位置する前記壁箇所に循環流作成用空気吹き出し口を設け、前記循環流作成用空気吹き出し口から空気を吹き出してコアンダ効果によりその空気の流れを床側に曲げ、前記曲げられた空気の流れにより、前記居住域空間に、コアンダ効果により床、壁、前記循環流作成用空気吹き出し口から吹き出される空気の流れ、前記曲げられた空気の流れに沿って循環する循環流を生じさせ、前記壁または床を暖めて壁または床に近接する空気を暖め、この暖められた暖気を前記循環流に乗せることで前記居住域空間の暖房を行なうようにしたことを特徴とする。
また、本発明は、床と、床から立ち上る壁との間に位置し屋内や屋外における巨大空間に連通した状態の居住域空間を暖房する方法であって、前記居住域空間の上方に位置する前記壁箇所に循環流作成用空気吹き出し口を設け、前記循環流作成用空気吹き出し口の上方の前記壁箇所に上吹き出し口を設け、前記循環流作成用空気吹き出し口から暖気を吹き出すと共に、前記上吹き出し口から、暖房前の前記居住域空間の空気の温度とほぼ等しい温度の空気を吹き出し、前記上吹き出し口からの空気の流れにより前記循環流作成用空気吹き出し口からの暖気の流れの浮き上がりを阻止し、コアンダ効果により前記循環流作成用空気吹き出し口からの暖気の流れを床側に曲げ、前記曲げられた暖気の流れにより、前記居住域空間に、コアンダ効果により床、壁、前記循環流作成用空気吹き出し口から吹き出される暖気の流れ、前記曲げられた暖気の流れに沿って暖気が循環する循環流を生じさせ、これにより前記居住域空間の暖房を行なうようにしたことを特徴とする。
【0005】
本発明では、コアンダ効果により屋外または屋内の居住域空間に循環流を作り、この循環流を利用して居住域空間の暖房や冷房を行なう。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
まず、第1の実施の形態から説明する。
図1(A)、(B)はそれぞれ建物の外壁部分の側面図で第1、第2実施例の空調方法の説明図を示す。
第1、第2実施例では、図1(A)、(B)に示すように、空調すべき居住域空間12は、例えば、建物14の内部の巨大空間をなすアトリウムの一部分であり、壁16の側方部分である。
居住域空間12を空調するに際して、居住域空間12の上部に位置する壁16箇所に循環流作成用空気吹き出し口18を設け、また、循環流作成用空気吹き出し口18の下方の壁16箇所にガイド板20を設ける。
前記循環流作成用空気吹き出し口18は、居住域空間12の直上において、居住域空間12の左右幅(壁16の延在方向における寸法)とほぼ同じ寸法で水平方向に延在して形成されている。
【0007】
図1(A)に示すように第1実施例では、前記ガイド板20は均一な厚みの平坦な板状で、居住域空間12の直上において居住域空間12の左右幅(壁16の延在方向における寸法)とほぼ同じ寸法で水平方向に延在し、かつ、壁16から直角で水平に突出し、その突出長さLは、居住域空間12の奥行き(壁16と直交する方向における寸法)よりも短い寸法で形成されている。
なお、前記循環流作成用空気吹き出し口18とガイド板20は、居住域空間12の左右幅方向の全長にわたり連続状に延在形成されている必要はなく、居住域空間12の左右幅方向に間隔をおいて複数設けられていてもよい。
【0008】
以上の構成において循環流作成用空気吹き出し口18から水平に空気を吹き出すと、循環流作成用空気吹き出し口18の下方にガイド板20が位置するため、循環流作成用空気吹き出し口18からの空気の流れN1は所謂コアンダ(COANDA)効果によりガイド板20側に曲げられ、ガイド板20の先方において床22に徐々に近づく空気の流れN2となる。
そして、床22に徐々に近づく空気の流れN2により、空気の流れN2の下方に空気の流れN2に沿って流れる空気の流れN301が生じ、この空気の流れN301はコアンダ(COANDA)効果により床22の上方において床22に沿って壁16に向かう空気の流れN302となり、この空気の流れN302は壁16の前方で壁16に沿って上方に向かう空気の流れN303となり、この空気の流れN303はガイド板20の下方でガイド板20に沿って前方に向かう空気の流れN304となり、この空気の流れN304は前記空気の流れN301となり、このようにして循環流N3が発生する。
すなわち、循環流作成用空気吹き出し口18から空気を連続的に吹き出すと、空気の流れN1はコアンダ効果により曲げられて空気の流れN2となり、さらに、コアンダ効果により、床22と、壁16と、ガイド板20に沿って空気が流れ居住域空間12内を循環する循環流N3が定常的に発生する。
【0009】
そして、循環流N3が発生することから、居住域空間12内の空気は居住域空間空間12内で循環することになり、居住域空間12内の空気が空気流れN2の外側へ漏れることが防止される。
このような循環流N3は、循環流作成用空気吹き出し口18の床22からの高さや、循環流作成用空気吹き出し口18から吹き出させる空気の流量や温度、循環流作成用空気吹き出し口18とガイド板20との間の距離、ガイド板20の長さLや形状等を設定することで、その大きさや位置が変えられる。
【0010】
したがって、循環流N3が発生する居住域空間12が居住域空間12となるように、循環流作成用空気吹き出し口18の床22からの高さや、循環流作成用空気吹き出し口18から吹き出させる空気の流量や温度、循環流作成用空気吹き出し口18とガイド板20との間の距離、ガイド板20の長さLや形状等を設定し、居住域空間12に暖気や冷気を供給してやれば、これらの暖気や冷気は居住域空間12外に逃げることなく居住域空間12内を循環し、居住域空間12の空調が効率良くなされることになる。
例えば、図1(B)の第2実施例で示すように、ガイド板20の形状を、その上面が斜め前方に凸の円筒面20Aになるように形成すると、循環流作成用空気吹き出し口18からの空気の流れN1は所謂コアンダ(COANDA)効果により、ガイド板20の先方において、前記の平坦な板状のガイド板20の場合に比べてより急激に床22に近づく空気の流れN2となり、これにより前記と同様にコアンダ効果により循環流N3が生じる。そして、この循環流N3は、平坦な板状のガイド板20を用いた場合に比べて壁16からの距離が前記の場合に比べて短いところを循環するようになる。
【0011】
したがって、空調すべき居住域空間12も狭くなり、このようにガイド板20の形状を変えることでも空調すべき居住域空間12の大きさを調節できる。
上述のようにコアンダ効果を利用した本発明の空調の方法は、暖気や冷気のみならず、香りや匂いなども所望領域の空間内に閉じ込めることができる。
また、本発明の空調方法は、屋内の空間のみならず、風があれば風の影響を受けるものの屋外にも無論適用され、したがって、本発明において床とは地面をも含む広い概念である。
例えば、屋根を有する店舗の場合、屋根の形状を予め決めておき、店舗の外壁(外面)で屋根が突出する部分の上部に、外方に向けて吹き出し口を設け、吹き出し口から空気を吹き出すことで店舗の外側の外部空間に循環流を生じさせ、これにより食べ物の臭気を閉じ込めておくことができ、隣接する店舗に臭気が流れないようにすることができる。
【0012】
つぎに、第3乃至第5実施例について図2を参照して説明する。
第3乃至第5実施例の三つの例について図1と同様な箇所、部材に同一の符号を付して説明すると、図2(A)乃至(C)はそれぞれ建物の外壁部分の側面図で第3乃至第5実施例の空調方法の説明図を示す。
第3乃至第5実施例では、図1と同様に、空調すべき居住域空間12は、例えば、建物14の内部の巨大空間をなすアトリウムの一部分であり、壁16の側方部分である。
居住域空間12を空調するに際して、居住域空間12の上部に位置する壁16箇所に循環流作成用空気吹き出し口18が設けられ、循環流作成用空気吹き出し口18の下方の壁16箇所にガイド板20が設けられている。
【0013】
前記循環流作成用空気吹き出し口18は、居住域空間12の左右幅とほぼ同じ寸法で水平方向に延在して形成されている。
第3実施例および第4実施例では、図2(A)、(B)に示すように、ガイド板20は均一な厚みの平坦な板状で、居住域空間12の左右幅とほぼ同じ寸法で水平方向に延在し、かつ、壁16から直角で水平に突出している。
図2(C)に示す第5実施例では、ガイド板20の上面が斜め前方に凸の円筒面20Aになるように形成されている。
以上の構成において循環流作成用空気吹き出し口18から水平に空気が吹き出されると、循環流作成用空気吹き出し口18からの空気の流れN1はコアンダ効果によりガイド板20側に曲げられ、ガイド板20の先方において床22に徐々に近づく空気の流れN2となり、この空気の流れN2とコアンダ効果により、循環流N3が定常的に発生し、居住域空間12内の空気が空気流れN2の外側へ漏れることが防止される。
【0014】
図2(A)に示す第3実施例では、ガイド板20よりも下方に位置する外壁16部分に発熱体(不図示)が埋め込まれている。そして、発熱体に通電することで外壁16の内面16Aが暖められ、この外壁16の内面16Aにより空気が暖められて暖気が発生し、暖気が循環流N3により居住域空間12内を循環することになり、居住域空間12の暖房がなされる。なお、居住域空間12を構成する床22を暖め、床22から暖気を発生させ、この暖気を循環流N3に乗せるようにしてもよい。
図2(B)、(C)に示す第4、第5実施例では、ガイド板20に発熱体(不図示)が埋め込まれている。そして、発熱体に通電することで、ガイド板20の上面の空気が暖められて暖気が発生し、この暖気が空気の流れN1、N2にのって循環流N3に混じり、循環流N3により暖気が居住域空間12内を循環することになり、居住域空間12の暖房がなされる。
なお、第3乃至第5実施例において、壁16や床22あるいはガイド板20を冷却すれば、冷気が発生し、居住域空間12の冷房がなされることになる。
【0015】
つぎに、第1の実施の形態の第6、第7実施例について図3を参照して説明する。
図3(A)、(B)はそれぞれ建物の内部の外周部分の側面図で第6、第7実施例の空調方法の説明図を示す。
第6、第7実施例では、空調すべき居住域空間12は、例えば、ドーム型の陸上競技場や野球場、サッカー場をなす建物14の内部の巨大空間の一部分である(無論、屋外空間の一部分や建物の内部で上部が大気に開放されている空間であってもよい)。
建物14の内部の外周部は、高さの異なる複数の床22と、建物の内部に向いた複数の壁16により建物14の外側に向かうにつれて高くなる階段型に形成されており、各床22上で壁16の側方部分がそれぞれ居住域空間12となっている。
各居住域空間12を空調するに際して、居住域空間12の上部に位置する壁16箇所に循環流作成用空気吹き出し口18が設けられ、循環流作成用空気吹き出し口18の下方の壁16箇所にガイド板20が設けられている。
ガイド板20は、第6実施例では、図3(A)に示すように、ガイド板20の上面が斜め前方に凸の円筒面20Aになるように形成され、第7実施例では、図4(B)に示すように、ガイド板20は均一な厚みの平坦な板状に形成されている。
【0016】
各循環流作成用空気吹き出し口18から水平に空気が吹き出されると、循環流作成用空気吹き出し口18からの空気の流れN1はコアンダ効果によりガイド板20側に曲げられ、ガイド板20の先方において床22に徐々に近づく空気の流れN2となり、この空気の流れN2とコアンダ効果により、循環流N3が定常的に発生し、各居住域空間12内の空気が空気流れN2の外側へ漏れることが防止される。なお、図3において符号26Aは建物14の内部で天井28に沿った空気の流れを示しており、符号26Bは建物14の内部の外周部上の空気の流れを示している。
したがって、前記の図2(A)乃至(C)に示す方法によりあるいは他の方法により各居住域空間12へ暖気を供給すれば、各居住域空間12の暖房がなされ、また、冷気を供給すれば、各居住域空間12の冷房がなされることになる。
【0017】
次に、図4(A)、(B)を参照して第8、第9実施例について説明する。
図4(A)、(B)はそれぞれ建物の内部の外周部分の側面図で第8、第9実施例の空調方法の説明図を示す。
第1の実施の形態と同様な箇所、部材に同一の符号を付して説明すると、第8、第9実施例では、ガイド板20の下方に、居住域空間12に暖気や冷気を吹き出させる点が前記第3乃至第5実施例と異なっている。
図4(A)、(B)に示す第8、第9実施例では、暖気や冷気を吹き出させる空調用空気吹き出し口32は、ガイド板20の下方の壁16箇所に居住域空間12に臨ませて設けられている。
前記空調用空気吹き出し口32は、居住域空間12の直上において、居住域空間12の左右幅(壁16の延在方向における寸法)とほぼ同じ寸法で水平方向に延在して形成されている。なお、空調用空気吹き出し口32は循環流作成用空気吹き出し口18の如く居住域空間12の左右幅に対応させて連続状に形成する必要はなく、空調用空気吹き出し口32を循環流作成用空気吹き出し口18の延在方向に間隔をおいて複数設けるようにしてもよい。
なお、図4(A)、(B)に示す例では、ガイド板20の上面が共に斜め前方に凸の円筒面20Aになるように形成され、ガイド板20の壁16からの突出長さは、図4(A)の例が図4(B)の例よりも短く、したがって、図4(A)の例では図4(B)に比べて狭い居住域空間12が形成されている。
【0018】
第8、第9実施例では、循環流作成用空気吹き出し口18から空気が吹き出されると、前記第1の実施の形態と同様に、循環流作成用空気吹き出し口18からの空気の流れN1はコアンダ効果によりガイド板20側に曲げられた空気の流れN2となり、この空気の流れN2とコアンダ効果により、循環流N3が発生する。
すなわち、循環流作成用空気吹き出し口18から空気を吹き出させると、循環流作成用空気吹き出し口18からの空気流れN1はコアンダ効果により床22に近づくように下方に曲げられた空気流れN2となる。そして、床22に近づく空気の流れN2により、空気の流れN2の下方に空気の流れN2に沿って流れる空気の流れN301が生じ、この空気の流れN301はコアンダ効果により床22の上方において床22に沿って壁16に向かう空気の流れN302となり、この空気の流れN302は壁16の前方で壁16に沿って上方に向かう空気の流れN303となり、この空気の流れN303は空気流れN1、N2に沿って前方に向かう空気の流れN304、前記空気流れN301となり、このようにして循環流N3が発生する。
【0019】
このように、ガイド板20と床22と壁16で囲まれた空間内に循環流N3が定常的に発生し、居住域空間12内の空気が空気流れN2の外側へ漏れることが防止される。
そして、空調用空気吹き出し口32から暖気または冷気が吹き出されることで、これら暖気や冷気は循環流N3に乗って居住域空間12内を循環することになり、居住域空間12の空調(暖房または冷房)がなされる。
なお、ガイド板20の下面に、パネル状の放熱体または吸熱体を取り付け、空調用空気吹き出し口32から吹き出される空気とこれら放熱体または吸熱体との間で熱交換を行なわせ、空調用空気吹き出し口32から吹き出される吹き出し空気の温度調節を行なうことも可能である。
また、循環流作成用空気吹き出し口18から吹き出される空気の流量と、空調用空気吹き出し口32から吹き出される空気の流量を調節することで、居住域空間12の大きさの調節も行なえるようになる。すなわち、循環流作成用空気吹き出し口18から吹き出される空気の風量を小さくし、空調用空気吹き出し口32から吹き出される空気の風量を大きくすることで、居住域空間12を循環流作成用空気吹き出し口18(または、空調用空気吹き出し口32)から吹き出される空気の噴流方向に大きくでき、逆に、循環流作成用空気吹き出し口18から吹き出される空気の風量を大きくし、空調用空気吹き出し口32から吹き出される空気の風量を小さくすることで、居住域空間12を循環流作成用空気吹き出し口18(または、空調用空気吹き出し口32)から吹き出される空気の噴流方向に小さくできる。
【0020】
次に、図5(A)、(B)を参照して第10、第11実施例について説明する。
図5(A)、(B)はそれぞれ建物の内部の外周部分の側面図で第10、第11実施例の空調方法の説明図を示す。
第10、第11実施例では、空調すべき居住域空間12は、例えば、ドーム型の陸上競技場や野球場、サッカー場をなす建物14の内部の巨大空間の一部分である(無論、屋外空間の一部分や建物の内部で上部が大気に開放されている空間であってもよい)。
建物14の内部の外周部は、高さの異なる複数の床22と、建物の内部に向いた複数の壁16により建物14の外側に向かうにつれて高くなる階段型に形成されており、各床22上で壁16の側方部分がそれぞれ居住域空間12となっている。
各居住域空間12を空調するに際して、居住域空間12の上部に位置する壁16箇所に循環流作成用空気吹き出し口18が設けられ、循環流作成用空気吹き出し口18の下方の壁16箇所にガイド板20が設けられ、ガイド板20の下方の壁16箇所に空調用空気吹き出し口32が設けられてている。
ガイド板20は、第10実施例では、図5(A)に示すように、ガイド板20の上面が斜め前方に凸の円筒面20Aになるように形成され、第11実施例では、図5(B)に示すように、ガイド板20は均一な厚みの平坦な板状に形成されている。
【0021】
各循環流作成用空気吹き出し口18から水平に空気が吹き出されると、循環流作成用空気吹き出し口18からの空気の流れN1はコアンダ効果によりガイド板20側に曲げられ、ガイド板20の先方において床22に徐々に近づく空気の流れN2となり、この空気の流れN2とコアンダ効果により、各居住域空間12に循環流N3が定常的に発生し、各居住域空間12内の空気が空気流れN2の外側へ漏れることが防止される。
そして、空調用空気吹き出し口32から暖気または冷気が吹き出されることで、これら暖気や冷気は循環流N3に乗って居住域空間12内を循環することになり、各居住域空間12の空調(暖房または冷房)がなされる。
【0022】
次に、図6(A)、(B)を参照して第12,第13実施例について説明する。
図6(A)、(B)はそれぞれ建物の内部の外周部分の側面図で第12、第13実施例の空調方法の説明図を示す。
第1の実施の形態と同様な箇所、部材に同一の符号を付して説明すると、第12、第13実施例では、ガイド板20の下方から、居住域空間12内の空気を居住域空間12外へ排出し、居住域空間12の換気を行なうようにした点が前記第1乃至第11実施例と異なっている。
図6(A)、(B)に示す第12、第13実施例では、居住域空間12内の空気を居住域空間12外へ排出する排気口34が、ガイド板20の直下の壁16箇所に居住域空間12に臨ませて設けられている。
前記排気口34は、居住域空間12の直上において、居住域空間12の左右幅(壁16の延在方向における寸法)とほぼ同じ寸法で水平方向に延在して形成されている。なお、排気口34は循環流作成用空気吹き出し口18と同様に、居住域空間12の左右幅に対応させて連続状に形成する必要はなく、壁16の左右幅方向に間隔をおいて複数設けるようにしてもよい。
なお、図6(A)に示す第12実施例では、ガイド板20の上面および下面が前方に凸の円筒面20Aになるように形成され、図6(B)に示す第13実施例では、ガイド板20の上面が、後部が高く前部が低い階段状に形成されている。
【0023】
第12、第13実施例では、循環流作成用空気吹き出し口18から空気が吹き出されると、前記第1乃至第11実施例と同様に、循環流作成用空気吹き出し口18からの空気の流れN1はコアンダ効果によりガイド板20側に曲げられた空気の流れN2となり、この空気の流れN2とコアンダ効果により、ガイド板20と床22と壁16で囲まれた空間内に循環流N3が定常的に発生し、居住域空間12内の空気が空気流れN2の外側へ漏れることが防止される。
従って、例えば、前記3乃至第5実施例と同様に、居住域空間12に暖気や冷気を供給することで居住域空間12の空調がなされる。
そして、排気口34から居住域空間12内の空気を吸い込んで居住域空間12外へ排出させることで、循環流N3を乱すことなく居住域空間12内の換気を行なうことも可能となる。
【0024】
次に、図7(A)、(B)を参照して第14、第15実施例について説明する。
図7(A)、(B)はそれぞれ建物の内部の外周部分の側面図で第14、第15実施例の空調方法の説明図を示す。
第14、第15実施例では、空調すべき居住域空間12は、例えば、ドーム型の陸上競技場や野球場、サッカー場をなす建物14の内部の巨大空間の一部分である(無論、屋外空間の一部分や建物の内部で上部が大気に開放されている空間であってもよい)。
建物14の内部の外周部は、高さの異なる複数の床22と、建物の内部に向いた複数の壁16により建物14の外側に向かうにつれて高くなる階段型に形成されており、各床22上で壁16の側方部分がそれぞれ居住域空間12となっている。
各居住域空間12を空調するに際して、居住域空間12の上部に位置する壁16箇所に循環流作成用空気吹き出し口18が設けられ、循環流作成用空気吹き出し口18の下方の壁16箇所にガイド板20が設けられ、ガイド板20の下方の壁16箇所に排気口34が設けられてている。
ガイド板20は、第14実施例では、図7(A)に示すように、ガイド板20の上面が斜め前方に凸の円筒面20Aになるように形成され、第15実施例では、図7(B)に示すように、ガイド板20は均一な厚みの平坦な板状に形成されている。
【0025】
各循環流作成用空気吹き出し口18から水平に空気が吹き出されると、循環流作成用空気吹き出し口18からの空気の流れN1はコアンダ効果によりガイド板20側に曲げられ、ガイド板20の先方において床22に徐々に近づく空気の流れN2となり、この空気の流れN2とコアンダ効果により、各居住域空間12に循環流N3が定常的に発生し、各居住域空間12内の空気が空気流れN2の外側へ漏れることが防止され、暖気または冷気を各居住域空間12へ供給することで各居住域空間12の空調(暖房または冷房)がなされる。
そして、排気口34から各居住域空間12内の空気を各居住域空間12外へ排出することで、各居住域空間12の換気がなされる。
なお、上述の第1乃至第15実施例において、ガイド板20を伸縮可能に構成し、ガイド板20を伸縮させることで循環流N3が発生する位置や大きさを変えるようにしてもよい。また、ガイド板20を壁16から離間接近する方向に移動可能に配置しておき、あるいは、ガイド板20を揺動可能に配置し水平面に対するガイド板20の傾きを変えられるように構成しておき、ガイド板20を移動させることであるいはガイド板20を揺動させることで循環流N3が発生する位置や大きさを変えるようにしてもよい。
【0026】
次に、図8を参照して第16実施例について説明する。
図8(A)は建物の内部の外周部分の側面図で第16実施例の空調方法の説明図を示し、図8(B)はガイド板の斜視図、図8(C)は上方から見たガイド板の配置図、図8(D)は図8(A)のD矢視図を示す。
前記実施例と同様な箇所、部材に同一の符号を付して説明すると、第16実施例では、循環流作成用空気吹き出し口18の下方に壁部16とは別体のガイド板20が設けられ、循環流作成用空気吹き出し口18の上方の壁部16箇所からひさし状に上壁部36が突出しており、ガイド板20の上方に上壁部36の下面36Aが臨んでいる点が前記第1乃至第15実施例と異なっている。
循環流作成用空気吹き出し口18は、居住域空間12の直上において、壁16の水平方向に一直線上に位置するように所定の長さ延在しかつ等間隔をおいて複数設けられ、複数の循環流作成用空気吹き出し口18は全体として居住域空間12の左右幅(壁16の延在方向における寸法)に対応した長さとなっている。
本実施の形態では、居住域空間12の直上に位置する壁部16箇所から前方に膨出壁部38が突出形成され、この膨出壁部38の下面38Aは水平に延在して居住域空間12の上方に臨み、また、膨出壁部38の前面38Bは鉛直に延在して前方に臨んでおり、循環流作成用空気吹き出し口18は前記膨出壁部38の前面38Bに開口されている。
【0027】
前記ガイド板20は、図8(A)、(B)で示すように、上面が上方に凸の湾曲面20Aで形成され、下面が平坦面20Bで形成されている。そして、前後方向(循環流作成用空気吹き出し口18から空気が吹き出される方向、または、壁部16に対して直交する方向)の中間部に支軸2002が設けられている。
前記支軸2002の両端は、図8(C)に示すように、循環流作成用空気吹き出し口32の間の中間壁部40、中間壁部40に設けられた回動調節機構42により回動調節可能に支持され、従って、支軸2002を中心に傾動調節可能に配設されている。また、前記支軸2002の両端は、中間壁部40、中間壁部40に設けられた前後移動調節機構44により、前後方向(循環流作成用空気吹き出し口32から空気が吹き出される方向、または、壁部16に対して直交する方向)に移動調節可能に配設されている。なお、回動調節機構42や前後移動調節機構44として従来公知の様々な機構を用いることができ、それらの構成は任意である。
【0028】
なお、前記ガイド板20の後端と、膨出壁部38の前面38Bとは間隔をおいて配置され、ガイド板20の後端と膨出壁部38の前面38Bとの間には、居住域空間12とガイド板20の上方の空間とを連通する連通部46が設けられている。
前記上壁部36の下面36Aはほぼ水平に延在し、循環流作成用空気吹き出し口32の両側の中間壁部40の間で、ガイド板20の円筒面20Aと上壁部36の下面36Aとの間に、循環流作成用空気吹き出し口32から吹き出される空気の流路48が形成されている。
【0029】
以上の構成において循環流作成用空気吹き出し口18から空気を吹き出すと、循環流作成用空気吹き出し口18からの空気の流れN1は流路48を通り、流路48の前端開口から吹き出され、流路48の下面をなすガイド板20の円筒面20Aおよびコアンダ(COANDA)効果によりガイド板20側に曲げられ、ガイド板20の先方において床22に徐々に近づく空気の流れN2となる。
そして、床22に徐々に近づく空気の流れN2により、空気の流れN2の下方に空気の流れN2に沿って流れる空気の流れN301が生じ、この空気の流れN301はコアンダ(COANDA)効果により床22の上方において床22に沿って壁16に向かう空気の流れN302となり、この空気の流れN302は壁16の前方で壁16に沿って上方に向かう空気の流れN303となる。
そして、この空気の流れN303の一部はガイド板20の下方でガイド板20に沿って前方に向かう空気の流れN304となり、空気の流れN304は前記空気の流れN301となり、このようにして循環流N3が定常的に発生する。
また、壁16に沿って上方に向かう空気の流れN303の残りの一部は連通部46から流路48に吸い込まれて前記空気流れN2となり、このように壁16に沿って上方に向かう空気の流れN303の一部が連通部46から流路48に吸い込まれることで循環流N3がより効果的に作られることになる。
【0030】
そして、循環流N3が発生することから、居住域空間12内の空気は居住域空間12内で循環することになり、居住域空間12内の空気が空気流れN2の外側へ漏れることが防止される。
したがって、居住域空間12に、例えば、図2(A)、(B)、(C)の第3乃至第5実施例の方法で暖気や冷気を供給してやれば、これらの暖気や冷気は居住域空間12外に逃げることなく居住域空間12内を循環し、居住域空間12の空調が効率良くなされることになる。
そして、本実施例では回動調節機構42によりガイド板20の傾きを変えることで、あるいは、前後移動調節機構44によりガイド板20を前後方向に移動させることで、循環流N3の位置や大きさをかえることができ、これに居住域空間12の位置や大きさを調節できる。
なお、本第16実施例も、図3、図5、図7に示すドーム型の陸上競技場や野球場、サッカー場をなす建物14の内部の巨大空間の一部分で、建物14の内部の外周部(無論、屋外空間の一部分や建物の内部で上部が大気に開放されている空間であってもよい)に階段型に設けられた各床22上で壁16の側方部分の各居住域空間12にも無論適用される。
【0031】
次に、図9、図10を参照して第2の実施の形態について説明する。
図9は建物の外壁部分の側面図で第2の実施の形態の空調方法の説明図を示し、図10(A)乃至(D)はそれぞれ第2の実施の形態の空調方法の説明図を示している。
第2の実施の形態は、屋内または屋外の大空間を、ガイド板20を用いずにコアンダ効果を利用して効果的に暖房するようにしたものである。
前記第1の実施の形態と同様な箇所、部材に同一の符号を付して説明すると、暖房すべき居住域空間12は、例えば、建物14の内部の巨大空間をなすアトリウムの一部分であり、壁16の側方部分である。
居住域空間12を暖房するに際して、居住域空間12の上部に位置する壁16箇所に循環流作成用空気吹き出し口18を設ける。
【0032】
前記循環流作成用空気吹き出し口18は、居住域空間12の直上において、居住域空間12の左右幅(壁16の延在方向における寸法)とほぼ同じ寸法で水平方向に延在して形成されている。
なお、前記循環流作成用空気吹き出し口18は、居住域空間12の左右幅方向の全長にわたり連続状に延在形成されている必要はなく、居住域空間12の左右幅方向に間隔をおいて複数設けられていてもよい。
また、建物14の内部空間の空気と同じ温度の空気を循環流作成用空気吹き出し口18から吹き出させると、循環流作成用空気吹き出し口18から吹き出される空気流れN1、N2の下方で、床22と、壁16で囲まれる空間、すなわち居住域空間12に循環流N3が発生するように気流設計がなされている。
前記循環流作成用空気吹き出し口18にはファンFやヒータHなどからなる暖房設備50が連結され、暖房設備50は制御手段52により循環流作成用空気吹き出し口18から吹き出す空気の温度や風量が調節可能に構成されている。
【0033】
冬期に暖房しようとする場合、図10(A)に示すように、当初から循環流作成用空気吹き出し口18から暖気を吹き出すと、建物14の内部空間の空気との温度差が大きいため、この暖気の流れは浮力により上方に大きく曲げられ、したがって、居住域空間12に循環流N3が形成されず暖房は困難となる。
そこで、第2の実施の形態では、暖房運転の当初、建物14の内部空間の空気とほぼ同じ温度の空気を循環流作成用空気吹き出し口18から吹き出させ、図10(B)に示すように、まず、居住域空間12に循環流を作る。
すなわち、循環流作成用空気吹き出し口18から空気を吹き出させると、循環流作成用空気吹き出し口18からの空気流れN1はコアンダ効果により床22に近づくように下方に曲げられた空気流れN2となる。そして、床22に近づく空気の流れN2により、空気の流れN2の下方に空気の流れN2に沿って流れる空気の流れN301が生じ、この空気の流れN301はコアンダ効果により床22の上方において床22に沿って壁16に向かう空気の流れN302となり、この空気の流れN302は壁16の前方で壁16に沿って上方に向かう空気の流れN303となり、この空気の流れN303は空気流れN1、N2に沿って前方に向かう空気の流れN304、前記空気流れN301となり、このようにして循環流N3が発生する。
【0034】
一方、循環流N3が一旦形成されると、循環流N3は安定して存在することが知られている。
したがって、居住域空間12に循環流N3が作られた時点で、循環流作成用空気吹き出し口18から吹き出す空気の温度を徐々に上げてき、循環流作成用空気吹き出し口18から吹き出す空気を、居住域空間12を暖房すべき所望の温度の暖気にしてやれば、循環流作成用空気吹き出し口18から吹き出される暖気は、循環流N3の外側に逃げることなく循環流N3となって居住域空間12を循環することになり、この状態を図10(C)に示す。
【0035】
循環流N3が形成されたか否かは、例えば、居住域空間12の床22上に風速センサ54を配置し、風速センサ54が所定値以上の風速を感知した時に循環流N3が形成されたと判断される。
また、居住域空間12が所望の温度で暖房されているか否かは、例えば、居住域空間12の壁16に配置された温度センサ56により検出される。
そして、制御手段52は、風速センサ54により循環流N3が作成されたと判断されたならば、例えば、当初からの風速を一定に維持しつつ循環流作成用空気吹き出し口18から吹き出す空気の温度を、温度センサ56により検出される温度が所望の温度になるまで時間の経過と共に徐々に上昇させるように構成されている。
さらに、風速センサ54で感知される風速が所定値以下に下がったと判断されたならば、循環流N3が床22から離れているため、循環流作成用空気吹き出し口18から吹き出す空気の温度の上昇(加熱)を一旦取りやめ、上記の循環流N3の作成からやり直すように構成されている。
このように第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態のようなガイド板20を用いることなくコアンダ効果を利用することで屋内の空間または屋外の空間を効果的に暖房することができる。
【0036】
次に、図11を参照して第3の実施の形態について説明する。
図11は建物の外壁部分の側面図で第3の実施の形態の空調方法の説明図を示している。
第3の実施の形態は、第2の実施の形態と同様に屋内または屋外の大空間を、ガイド板20を用いずにコアンダ効果を利用して効果的に暖房するようにしたものである。
前記第1、第2の実施の形態と同様な箇所、部材に同一の符号を付して説明すると、暖房すべき居住域空間12は、例えば、建物14の内部の巨大空間をなすアトリウムの一部分であり、壁16の側方部分である。
【0037】
居住域空間12を暖房するに際して、居住域空間12の上部に位置する壁16箇所に循環流作成用空気吹き出し口18を設ける。
前記循環流作成用空気吹き出し口18は、居住域空間12の直上において、居住域空間12の左右幅(壁16の延在方向における寸法)とほぼ同じ寸法で水平方向に延在して形成されている。なお、建物14の内部空間の空気と同じ温度の空気を循環流作成用空気吹き出し口18から吹き出させると、循環流作成用空気吹き出し口18から吹き出される空気流れN1、N2の下方で、床22と、壁16で囲まれる空間、すなわち居住域空間12に循環流が発生するように気流設計がなされている。
前記循環流作成用空気吹き出し口18からは、暖房前の建物14の内部空間の温度とほぼ等しい温度の空気あるいは建物14の外部の冷気が吹き出されるように構成されている。
前記循環流作成用空気吹き出し口18よりも下方に位置する外壁16部分には発熱体(不図示)が埋め込まれ、発熱体に通電することで外壁16の内面16Aが暖められるように構成されている。
【0038】
冬期に暖房しようとする場合、循環流作成用空気吹き出し口18から空気を吹き出させ、また、発熱体に通電して外壁16の内面16Aを暖める。
循環流作成用空気吹き出し口18から空気の吹き出しにより、コアンダ効果により居住域空間12に循環流N3が作られる。
すなわち、循環流作成用空気吹き出し口18から空気を吹き出させると、循環流作成用空気吹き出し口18からの空気流れN1はコアンダ効果により床22に近づくように下方に曲げられた空気流れN2となる。そして、床22に近づく空気の流れN2により、空気の流れN2の下方に空気の流れN2に沿って流れる空気の流れN301が生じ、この空気の流れN301はコアンダ効果により床22の上方において床22に沿って壁16に向かう空気の流れN302となり、この空気の流れN302は壁16の前方で壁16に沿って上方に向かう空気の流れN303となり、この空気の流れN303は空気流れN1、N2に沿って前方に向かう空気の流れN304、前記空気流れN301となり、このようにして循環流N3が発生する。
【0039】
そして、外壁16の内面16Aにより空気が暖められて暖気が発生し、この暖気が循環流N3により居住域空間12内を循環することになり、居住域空間12の暖房がなされる。
上述のように循環流N3が一旦形成されると、循環流N3は安定して存在するので、外壁16の内面16Aにより空気が暖められて暖気は、居住域空間12の外側に逃げることなく循環流N3に乗って居住域空間12を循環することになり、居住域空間12の暖房がなされる。
なお、外壁16の発熱体への通電は、循環流N3が作られる前に行なうか後に行なうかは問わず、任意であり、また、居住域空間12を構成する床22を暖め、床22から暖気を発生させ循環流N3に乗せるようにしてもよい。
このように第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態のようなガイド板20を用いることなくコアンダ効果を利用することで屋内の空間または屋外の空間を効果的に暖房することができる。
【0040】
次に、図12を参照して第4の実施の形態について説明する。
図12は建物の外壁部分の側面図で第4の実施の形態の空調方法の説明図を示している。
第4の実施の形態は、第2、第3の実施の形態と同様に屋内または屋外の大空間を、ガイド板20を用いずにコアンダ効果を利用して効果的に暖房するようにしたものである。
前記第1乃至第3の実施の形態と同様な箇所、部材に同一の符号を付して説明すると、暖房すべき居住域空間12は、例えば、建物14の内部の巨大空間をなすアトリウムの一部分であり、壁16の側方部分である。
【0041】
居住域空間12を暖房するに際して、居住域空間12の上部に位置する壁16箇所に循環流作成用空気吹き出し口18を設け、更に、循環流作成用空気吹き出し口18の上方に上吹き出し口60を設ける。
前記循環流作成用空気吹き出し口18は、居住域空間12の直上において、居住域空間12の左右幅(壁16の延在方向における寸法)とほぼ同じ寸法で水平方向に延在して形成されている。なお、空気を循環流作成用空気吹き出し口18から吹き出させると、循環流作成用空気吹き出し口18から吹き出される空気流れN1、N2の下方で、床22と、壁16で囲まれる空間、すなわち居住域空間12に循環流が発生するように気流設計がなされている。
前記循環流作成用空気吹き出し口18からは、居住域空間12が暖房すべき所望の温度となるように、暖気が吹き出されるように構成されている。
前記上吹き出し口60は、循環流作成用空気吹き出し口18の上方に位置する壁16箇所に設けられ、居住域空間12の左右幅(壁16の延在方向における寸法)とほぼ同じ寸法で、すなわち、循環流作成用空気吹き出し口18と同じ幅で水平方向に延在して形成されている。
前記上吹き出し口60からは、暖房前の建物14の内部空間とほぼ等しい温度の空気あるいは建物14の外部の冷気が吹き出されるように構成されている。
【0042】
冬期に暖房しようとする場合、循環流作成用空気吹き出し口18から暖気を吹き出させ、また、上吹き出し口60から暖房前の建物14の内部空間とほぼ等しい温度の空気あるいは建物14の外部の冷気を吹き出させる。
循環流作成用空気吹き出し口18から暖気の吹き出しにより、コアンダ効果により居住域空間12に循環流N3が作られる。
すなわち、循環流作成用空気吹き出し口18から暖気を吹き出させると、循環流作成用空気吹き出し口18からの空気流れN1はコアンダ効果により床22に近づくように下方に曲げられた空気流れN2となる。そして、床22に近づく空気の流れN2により、空気の流れN2の下方に空気の流れN2に沿って流れる空気の流れN301が生じ、この空気の流れN301はコアンダ効果により床22の上方において床22に沿って壁16に向かう空気の流れN302となり、この空気の流れN302は壁16の前方で壁16に沿って上方に向かう空気の流れN303となり、この空気の流れN303は空気流れN1、N2に沿って前方に向かう空気の流れN304、前記空気流れN301となり、このようにして暖気からなる循環流N3が発生する。
【0043】
この場合、循環流作成用空気吹き出し口18からの暖気は、建物14の内部空間の空気との温度差が大きいため、この暖気の流れN1、N2は浮力により上方に大きく曲げられようとするが、暖気の流れN1、N2の上方には、上吹き出し口60から暖房前の建物14の内部空間とほぼ等しい温度の空気あるいは建物14の外部の冷たい温度の空気の流れN10が存在し、この空気流れN10もコアンダ効果により床22に徐々に近づく流れとなるため、この空気流れN10により、暖気の流れN1、N2が浮力により上方に大きく曲げられようとすることが阻止され、循環流作成用空気吹き出し口18から吹き出す暖気により循環流N3が定常的に発生する。
これにより循環流作成用空気吹き出し口18からの暖気が循環流N3により居住域空間12内を循環することになり、暖気が循環流N3の外側に逃げることなく居住域空間12の暖房が効果的に行われる。
このように第4の実施の形態によれば、第1の実施の形態のようなガイド板20を用いることなくコアンダ効果を利用することで屋内の空間または屋外の空間を効果的に暖房することができる。
【0044】
なお、第2乃至第4の実施の形態の暖房方法は、暖気と共に、香りや匂いなども所望領域の空間内に閉じ込めることができ、したがって、屋内や屋外の飲食店舗に適用することで、隣接する店舗に食べ物の臭気を流れないようにすることができる。
また、第2乃至第4の実施の形態の暖房方法は、図3、図5、図7に示すドーム型の陸上競技場や野球場、サッカー場をなす建物14の内部の巨大空間の一部分(無論、屋外空間の一部分や建物の内部で上部が大気に開放されている空間を含む)で、建物14の外周部に階段型に設けられた各床22上で壁16の側方部分の各居住域空間12にも適用される。
【0045】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、気体が物体に沿って流れるというコアンダ効果を利用することで、屋内空間は無論のこと、上部が開放された建物の内側の空間や、屋外の空間における居住域空間の空調を効率良く行なうことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)、(B)はそれぞれ建物の外壁部分の側面図で第1の実施の形態の第1、第2実施例の空調方法の説明図である。
【図2】(A)、(B)、(C)はそれぞれ建物の外壁部分の側面図で第1の実施の形態の第3、第4、第5実施例の空調方法の説明図である。
【図3】(A)、(B)はそれぞれ建物の外周部の側面図で第1の実施の形態の第6、第7実施例の空調方法の説明図である。
【図4】(A)、(B)はそれぞれ建物の外壁部分の側面図で第1の実施の形態の第8、第9実施例の空調方法の説明図である。
【図5】(A)、(B)はそれぞれ建物の外周部の側面図で第1の実施の形態の第10、第11実施例の空調方法の説明図である。
【図6】(A)、(B)はそれぞれ建物の外壁部分の側面図で第1の実施の形態の第12、第13実施例の空調方法の説明図である。
【図7】(A)、(B)はそれぞれ建物の外周部の側面図で第1の実施の形態の第14、第15実施例の空調方法の説明図である。
【図8】(A)は建物の外壁部分の側面図で第1の実施の形態の第16実施例の空調方法の説明図、(B)はガイド板の斜視図、(C)はガイド板の配置を示す平面図、(D)は(A)のD矢視図である。
【図9】建物の外壁部分の側面図で第2の実施の形態の空調方法の説明図である。
【図10】(A)、(B)、(C)はそれぞれ建物の外壁部分の側面図で第2の実施の形態の空調方法の説明図である。
【図11】建物の外壁部分の側面図で第3の実施の形態の空調方法の説明図である。
【図12】建物の外壁部分の側面図で第4の実施の形態の空調方法の説明図である。
【符号の説明】
12 居住域空間
14 建物
16 壁
18 循環流作成用空気吹き出し口
20 ガイド板
22 床
32 空調用空気吹き出し口
34 排気口
60 上吹き出し口
N3 循環流

Claims (15)

  1. 床と、床から立ち上る壁との間に位置し屋内や屋外における巨大空間に連通した状態の居住域空間を空調する方法であって、
    前記居住域空間の上方に位置する前記壁箇所から前記居住域空間の上方で延在するようにガイド板を突設し、
    前記ガイド板の上方の前記壁箇所に循環流作成用空気吹き出し口を設け、
    前記循環流作成用空気吹き出し口から空気を吹き出してコアンダ効果によりその空気の流れを床側に曲げ、
    前記曲げられた空気の流れにより、前記居住域空間に、コアンダ効果により床、壁、ガイド板、前記曲げられた空気の流れに沿って循環する循環流を生じさせ、
    前記循環流に暖気または冷気を供給し、
    前記暖気または冷気を前記循環流により前記居住域空間に循環させるようにした、
    ことを特徴とする空調方法。
  2. 前記居住域空間への暖気の供給は、前記壁または床またはガイド板を暖め、壁または床またはガイド板に近接する空気を暖めることで行われ、前記居住域空間への冷気の供給は、前記壁または床またはガイド板を冷やし、壁または床またはガイド板に近接する空気を冷やすことで行われることを特徴とする請求項1記載の空調方法。
  3. 前記居住域空間への暖気または冷気の供給は、前記ガイド板の下方の前記壁箇所に空調用空気吹き出し口を設け、この空調用空気吹き出し口から暖気または冷気を吹き出させることで行われることを特徴とする請求項1記載の空調方法。
  4. 前記ガイド板の下方の前記壁箇所に排気口を設け、この排気口から前記居住域空間の空気を吸い込んで居住域空間外へ排出するようにしたことを特徴とする請求項1記載の空調方法。
  5. 前記ガイド板を前記壁から離間接近する方向に動かし、これにより前記循環流の大きさや位置を変えるようにしたことを特徴とする請求項1記載の空調方法。
  6. 前記ガイド板の水平面に対する傾きを変え、これにより前記循環流の大きさや位置を変えるようにしたことを特徴とする請求項1記載の空調方法。
  7. 前記ガイド板を前記壁から切り離して配置し、前記ガイド板の上方に上壁を臨ませ、前記ガイド板と上壁との間に、前記循環流作成用空気吹き出し口から吹き出される空気の流路を区画し、前記循環流に乗って流れる空気の一部を、前記切り離された前記ガイド板と前記壁との間から前記流路へ吸い込ませるようにしたことを特徴とする請求項1記載の空調方法。
  8. 床と、床から立ち上る壁との間に位置し屋内や屋外における巨大空間に連通した状態の居住域空間を暖房する方法であって、
    前記居住域空間の上方に位置する前記壁箇所に循環流作成用空気吹き出し口を設け、
    前記循環流作成用空気吹き出し口から、暖房前の居住域空間の空気の温度とほぼ等しい温度の空気を吹き出してコアンダ効果によりその空気の流れを床側に曲げ、
    前記曲げられた空気の流れにより、前記居住域空間に、コアンダ効果により床、壁、循環流作成用空気吹き出し口から吹き出される空気の流れ、前記曲げられた空気の流れに沿って循環する循環流を作り、
    前記循環流が作られた後、前記循環流作成用空気吹き出し口から吹き出す空気の温度を、前記居住域空間を暖房すべき所望の温度まで徐々に上昇させていくようにした、
    ことを特徴とする暖房方法。
  9. 前記循環流作成用空気吹き出し口から吹き出す空気の温度を、前記居住域空間を暖房すべき所望の温度に上昇させた暖房運転時、前記居住域空間の温度が所定値以下に下がった場合に、前記循環流作成用空気吹き出し口から吹き出す空気の温度を暖房前の居住域空間の当初の空気の温度に戻し、循環流を作り直すようにしたことを特徴とする請求項8記載の暖房方法。
  10. 床と、床から立ち上る壁との間に位置し屋内や屋外における巨大空間に連通した状態の居住域空間を暖房する方法であって、
    前記居住域空間の上方に位置する前記壁箇所に循環流作成用空気吹き出し口を設け、
    前記循環流作成用空気吹き出し口から空気を吹き出してコアンダ効果によりその空気の流れを床側に曲げ、
    前記曲げられた空気の流れにより、前記居住域空間に、コアンダ効果により床、壁、前記循環流作成用空気吹き出し口から吹き出される空気の流れ、前記曲げられた空気の流れに沿って循環する循環流を生じさせ、
    前記壁または床を暖めて壁または床に近接する空気を暖め、
    この暖められた暖気を前記循環流に乗せることで前記居住域空間の暖房を行なうようにした、
    ことを特徴とする暖房方法。
  11. 床と、床から立ち上る壁との間に位置し屋内や屋外における巨大空間に連通した状態の居住域空間を暖房する方法であって、
    前記居住域空間の上方に位置する前記壁箇所に循環流作成用空気吹き出し口を設け、
    前記循環流作成用空気吹き出し口の上方の前記壁箇所に上吹き出し口を設け、
    前記循環流作成用空気吹き出し口から暖気を吹き出すと共に、前記上吹き出し口から、暖房前の前記居住域空間の空気の温度とほぼ等しい温度の空気を吹き出し、
    前記上吹き出し口からの空気の流れにより前記循環流作成用空気吹き出し口からの暖気の流れの浮き上がりを阻止し、
    コアンダ効果により前記循環流作成用空気吹き出し口からの暖気の流れを床側に曲げ、
    前記曲げられた暖気の流れにより、前記居住域空間に、コアンダ効果により床、壁、前記循環流作成用空気吹き出し口から吹き出される暖気の流れ、前記曲げられた暖気の流れに沿って暖気が循環する循環流を生じさせ、これにより前記居住域空間の暖房を行なうようにした、
    ことを特徴とする暖房方法。
  12. 前記循環流作成用空気吹き出し口は、壁に沿った居住域空間の幅方向の全長にわたって設けられていることを特徴とする請求項1乃至7に何れか1項記載の空調方法または請求項8乃至11に何れか1項記載の暖房方法。
  13. 前記ガイド板は、壁に沿った居住域空間の幅方向の全長にわたって設けられていることを特徴とする請求項1乃至7に何れか1項記載の空調方法。
  14. 前記上吹き出し口は、壁に沿った居住域空間の幅方向の全長にわたって設けられていることを特徴とする請求項11記載の暖房方法。
  15. 前記循環流作成用空気吹き出し口から吹き出される空気の流量を変えることで前記循環流の大きさや位置を変えるようにしたことを特徴とする請求項1乃至7に何れか1項記載の空調方法または請求項8乃至11に何れか1項記載の暖房方法。
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