以下に、この発明の実施の一形態について説明する。図1は、この発明の実施の一形態の全体構成を示すブロック図である。記録時には、コントローラ2がホストコンピュータ1の指令に従って、記録すべきユーザデータを受取り、情報語としてのユーザデータに基づいてエンコードを行って、符号語としてのRLL(1,7)符号を生成する。この符号語が記録データWDATAとしてレーザパワーコントロール部(以下、LPCと表記する)4に供給される。
WGATEは、記録動作を行う期間でアクティブとなる記録制御信号であり、RGATEは、再生動作を行う期間でアクティブとなる再生制御信号である。これらの制御信号もLPC4に供給される。コントローラ2は、このような処理の他に、後述する復号化処理、および記録、再生、消去等の各モードの制御、並びにホストコンピュータ1との交信等の動作を行う。
LPC4は、供給された記録データに対応して、光ピックアップ7のレーザパワーを制御して光磁気ディスク6上に磁気極性を有するピット列を形成することにより、記録を行う。この記録の際に、磁気ヘッド5が光磁気ディスク6にバイアス磁界を付与する。実際には、記録データに基づいて後述するように生成されるプリコード出力に従って、後述するようなマークエッジ記録が行われる。
上述したようにして形成される各ピットを、記録データに基づいて後述するようにして生成されるプリコード出力中の各ビットに対応させる方法について、図2を参照して説明する。プリコード出力中の、例えば?’1’に対してピットを形成し、’0’に対してピットを形成しない記録方法をマーク位置記録方法と称する。一方、各ピットのエッジによって表現される、プリコード出力中の各ビットの境界における極性の反転を、例えば’1’に対応させる記録方法をマークエッジ記録方法と称する。再生時には、再生信号中の各ビットの境界は、後述するようにして生成されるリードクロックDCKに従って認識される。
次に、再生系の構成および動作について説明する。光ピックアップ7は、光磁気ディスク6にレーザ光を照射し、それによって生じる反射光を受光して、再生信号を生成する。再生信号は、和信号R+、差信号R-および図示しないフォーカスエラー信号ならびにトラッキングエラー信号の4種類の信号からなる。和信号R+は、アンプ8によってゲイン調整等がなされた後に切替えスイッチ10に供給される。また、差信号R-は、アンプ9によってゲイン調整等がなされた後に切替えスイッチ10に供給される。さらに、フォーカスエラー信号は、フォーカスエラーを解消する手段(図示せず)に供給される。一方、トラッキングエラー信号は、図示しないサーボ系等に供給され、それらの動作において用いられる。
切替えスイッチ10には、後述するような切替え信号Sが供給される。切替えスイッチ10は、この切替え信号Sに従って、和信号R+または差信号R-をフィルタ部11に供給する。すなわち、後述するような光磁気ディスク6のセクタフォーマットにおいて、エンボス加工によって形成される第1の信号記録領域(ヘッダエリアと称する)から再生される再生信号が切替えスイッチ10に供給される期間には、和信号R+をフィルタ部11に供給する。また、光磁気的に記録される第2の信号記録領域(データエリアと称する)から再生される再生信号が切替えスイッチ10に供給される期間には、差信号R-をフィルタ部11に供給する。
切替え信号Sは、例えば次のようにして生成される。すなわち、まず、再生信号から、セクタフォーマットに規定される所定のパターンから再生される信号を検出する。このような所定のパターンとしては、例えば後述するセクタマークSM等が用いられる。そして、かかる検出がなされた時点を基準として、後述するリードクロックを数える等の方法によって認識される所定時点において、切替え信号Sが生成される。さらに、この切替え信号Sは、切替えスイッチ10のみならず、ビタビ復号器13に対しても供給され、パスメモリのメモリ長をヘッダエリアとデータエリアとで切り替えるように制御される。
フィルタ部11は、ノイズカットを行うローパスフィルタおよび波形等化を行う波形等化器から構成される。後述するように、この際の波形等化処理において用いられる波形等化特性は、ビタビ復号器13が行うビタビ復号方法に適合するものとされる。フィルタ部11の出力を供給されるA/D変換器12は、後述するようにして供給されるリードクロックDCKに従って再生信号値z〔k〕をサンプリングする。ビタビ復号器13は、再生信号値z〔k〕に基づいて、ビタビ復号方法によって復号データを生成する。かかる復号データは、上述したようにして記録される記録データに対する最尤復号系列である。従って、復号エラーが無い場合には、復号データは、記録データと一致する。
復号データは、コントローラ2に供給される。上述したように、記録データは、ユーザデータからチャンネル符号化等の符号化によって生成された符号語である。従って、復号エラーレートが充分低ければ、復号データは、符号語としての記録データとみなすことができる。コントローラ2は、復号データに、上述のチャンネル符号化等の符号化に対応する復号化処理を施すことにより、ユーザデータ等を再生する。さらに、コントローラ2では、キャリブレーションを制御する。
また、フィルタ部11の出力は、PLL部14にも供給される。PLL部14は、供給された信号に基づいて、リードクロックDCKを生成する。このPLL部14は、一例として、光磁気ディスク6中に記録される一定周波数の信号を利用して位相エラーを検出する構成とされている。リードクロックDCKは、コントローラ2、A/D変換器12、ビタビ復号器13等に供給される。コントローラ2、A/D変換器12、ビタビ復号器13の動作は、リードクロックDCKに従うタイミングでなされる。さらに、リードクロックDCKは、図示しないタイミングジェネレータに供給される。タイミングジェネレータは、例えば、記録/再生動作の切替え等の装置の動作タイミングを制御する信号を生成する。
さらに、コントローラ2と接続されるCPU15が設けられている。CPU15は、LPC4に対してレーザパワー設定用の制御信号を供給し、光ピックアップ7の位置決め等を制御したりする。CPU15に対してレジスタ16が結合されている。レジスタ16には、CPU15から再生システム中のアンプ8,9のゲイン、フィルタ11の等化特性、ビタビ復号器13のパスメモリのメモリ長を設定する制御データが格納される。制御データは、キャリブレーションによってコントローラ2が発生し、CPU15を経由してレジスタ16に格納される。そして、レジスタ16が出力する制御データRegによって、上述したゲイン、メモリ長が最適とされる。
上述したような再生動作において、光磁気ディスク6から再生される再生信号に基いて、より正しい再生データを得るために、再生系のパラメータ(すなわち、アンプ8,9のゲイン、フィルタ部11の特性、ビタビ復号器13のメモリ長)を適正化することが行われる。このような操作がキャリブレーションである。キャリブレーションは、再生信号の品質等が例えば加工精度等の記録媒体の特性、および例えば記録用レーザ光のパワーの変動、周囲温度等の記録/再生時の条件等によって変化する可能性があることに対応するために再生系のパラメータを適正化するためのものである。キャリブレーションは、コントローラ2において、電源投入直後または記録媒体の交換時等になされる。
次に、光磁気6のトラックフォーマットおよびセクタフォーマットの概要について説明する。図3は、トラックフォーマットの一例を示す。ディスクの中心に開口6aが設けられ、最内周側に、反射ゾーン6b、コントロールトラックPEP(Phase Encoded Part)ゾーン6c、遷移ゾーン6d、インナーコントロールトラックSFP(Standard Formatted Part)6e、インナーマニュファクチャゾーン6fが設けられる。また、最外周側にアウターマニュファクチャゾーン6g、アウターSFPゾーン6h、リードアウトゾーン6iが設けられる。これらの内周側のエリアと外周側のエリアとの間がデータの記録/再生に使用可能なユーザーゾーン6jとされる。
PEP6cは、位相情報が提供する。SFP6eおよび6hは、媒体情報(感度、反射率等)およびシステム情報(トラック数等)を提供する。さらに、インナーマニュファクチャゾーン6fおよびアウターマニュファクチャゾーン6gは、テストライトのための領域である。キャリブレーション時では、これらのゾーン6f、6gを使用して、データのテストライトがなされる。
光磁気ディスク6のユーザゾーンには、セクタを記録/再生の単位としてユーザデータが記録される。図4を参照して、光磁気ディスク6において用いられるセクタフォーマットの一例について説明する。図4Aに示すように、1セクタは、記録/再生の順に従って、ヘッダ、ALPC,ギャップ、VFO3、シンク、データフィールド、バッファの各エリアに区分されている。図4中に付した数字は、バイト数を表す。光磁気ディスク6上には、ブロック符号化等の符号化がなされたデータが記録される。例えば8ビットが12チャンネルビットに変換されて記録される。
このセクタフォーマットの一例においては、ユーザデータ量が1024バイトのフォーマットと、ユーザデータ量が512バイトのフォーマットとが用意されている。ユーザデータ量が1024バイトのフォーマットでは、データフィールドのバイト数が670バイトとされる。また、ユーザデータ量が512バイトのフォーマットでは、データフィールドのバイト数が1278バイトとされる。これら2つのセクタフォーマットにおいて、63バイトのプリフォーマットされたヘッダと、ALPC,ギャップエリアの18バイトは、同一とされている。
図4Bは、63バイトのヘッダを拡大して示す。ヘッダは、セクタマークSM(8バイト)、VFOフィールドのVFO1(26バイト)、アドレスマークAM(1バイト)、IDフィールドのID1(5バイト)、VFOフィールドのVFO2(16バイト)、アドレスマークAM(1バイト)、IDフィールドのID2(5バイト)、およびポストアンブルPA(1バイト)が順に配列された構成とされている。
図4Cは18バイトのALPC,ギャップエリアを拡大して示す。18バイトは、ギャップフィールド(5バイト)、フラグフィールド(5バイト)、ギャップフィールド(2バイト)、ALPC(6バイト)からなる。
次に、これらのフィールドについて説明する。セクタマークSMは、セクタの開始を識別するためのマークであり、RLL(1,7)符号において生じないエンボス加工によって形成されたパターンを有する。VFOフィールドは、上述のPLL部14中のVFO(Variable Frequency Oscillator)(またはVCO)を同期させるためのもので、VFO1、VFO2およびVFO3からなる。VFO1およびVFO2は、エンボス加工によって形成されている。また、VFO3は、そのセクタに対して記録動作が行われる際に光磁気的に書かれる。VFO1、VFO2およびVFO3は、それぞれチャンネルビットの’0’と’1’が交互に現れるパターン(2Tパターン)を有する。従って、1チャンネルビットの時間長に対応する時間をTとすると、VFOフィールドを再生した時に、2T毎にレベルが反転する再生信号が得られる。
アドレスマークAMは、後続のIDフィールドのためのバイト同期を装置に対して与えるために使用され、RLL(1,7)符号において生じないエンボスされたパターンを有する。IDフィールドは、セクタのアドレス、すなわち、トラック番号およびセクタ番号の情報と、これらの情報に対するエラー検出用のCRCバイトを有する。IDフィールドは、5バイトからなる。ID1およびID2によって、同一のアドレス情報が二重に記録される。ポストアンブルPAは、チャンネルビットの’0’と’1’とが交互に現れるパターン(2Tパターン)を有する。ID1、ID2およびポストアンブルPAも、エンボス加工によって形成されている。このように、ヘッダの領域は、エンボス加工によりピットが形成されたプリフォーマットされた領域である。
図4Cは、ALPC,ギャップエリアを拡大して示す。ギャップには、ピットが形成されない。最初のギャップフィールド(5バイト)は、プリフォーマットされたヘッダの後の最初のフィールドであり、これによって、ヘッダの読取りを完了した後の処理に装置が要する時間が確保される。2番目のギャップフィールド(2バイト)は、後のVFO3の位置のずれを許容するためのものである。
ALPC,ギャップエリアには、5バイトのフラグフィールドが記録される。フラグフィールドは、セクタのデータが記録される時に、連続した2Tパターンが記録される。ALPC(Auto Laser Power Control)フィールドは、記録時のレーザパワーをテストするために設けられている。シンクフィールド(4バイト)は、続くデータフィールドのためのバイト同期を装置が得るために設けられており、所定のビットパターンを有する。
データフィールドは、ユーザデータを記録するために設けられる。上述した670バイトのデータフィールドには、512バイトのユーザデータと、144バイトのエラー検出、訂正用のパリティ等と、12バイトのセクタ書込みフラグと、2バイト(FF)とからなる。また、1278バイトのデータフィールドの場合には、1024バイトのユーザデータと、242バイトのエラー検出、訂正用のパリティ等と、12バイトのセクタ書込みフラグとからなる。セクタの最後のバッファフィールドは、電気的、あるいは機械的な誤差に対する許容範囲として使用される。
上述したセクタフォーマットの例において、ヘッダエリアは、エンボス加工によりピットが形成されたエリアである。また、ALPC,ギャップエリアは、再生時には、使用されないエリアである。さらに、VFO3、シンクフィールドおよびデータフィールドは、光磁気記録されたデータエリアである。
図5は、キャリブレーションの処理の概略的に示すフローチャートである。但し、図5においては、再生系のパラメータ中でこの発明に関係するメモリ長のキャリブレーションについてのみ示す。アンプ8,9のゲイン、フィルタ部11の特性等は、既に知られている方法により可能である。図5において、例えば電源オンとされると(ステップS2)、パスメモリのメモリ長を初期値とし(ステップS3)、処理が開始される。光磁気ディスク6上に規定されているテスト領域(例えば上述したインナーマニュファクチャゾーン6f)に対して所定のレーザパワーでもって、所定のデータを記録する(ステップS3)。
テスト領域に記録されたデータを再生し、初期値のメモリ長(一般的には最短のメモリ長)によってビタビ復号を行う。そして、コントローラ2において再生されたデータのエラーレートを測定する(ステップS4)。キャリブレーション時になされるエラーレートの測定方法としては、期待値(記録データ)が分かっているので、照合法を利用できる。勿論、これ以外の方法によってエラーレートを測定しても良い。エラーレートとしては、ビット単位またはバイト単位のものである。エラーレートをしきい値と比較することにより、その時のメモリ長によって正確な復号が行われているかどうかが決定される(ステップS5)。正確な復号が行われていると判断されると、キャリブレーションが完了する(ステップS6)。
若し、エラーレートからメモリ長が適切でないとステップS5において決定されると、ステップS7においてメモリ長が変更される(一般的には、より長くされる)。メモリ長は、当然有限であるので、メモリ長が最大を越えたかどうかがステップS8において決定される。メモリ長が最大を越えても、エラーレートがしきい値より大きい場合では、光磁気ディスク6の異常等の可能性があるので、ディスクエラー等のメッセージを表示する等のアラームを発生する(ステップS8)。このようにして、電源オン、ディスク交換等の時に、ビタビ復号器13のメモリ長を適切に設定することができる。
なお、上述したキャリブレーションは、ディスク上のデータエリアに関してメモリ長を適切に設定する処理である。ディスク上には、データエリアの他にエンボス加工により形成されたヘッダエリアも存在する。ヘッダエリアの場合では、データエリアと比較して再生信号の品質が良いので、データエリアと比較してメモリ長をより短くすることができる。従って、この発明の実施の一形態および他の形態では、メモリ長をデータエリアとヘッダエリアとで切り替えるようにしている。さらに、同一の光磁気ディスクの場合でも、ディスクの径方向において、再生信号の品質が異なることがある。その場合では、ディスクの記録領域を複数の領域(ゾーン)に分け、各ゾーンで最適なメモリ長を測定し、メモリ長をゾーンによって切り替えるようにしても良い。
以下、ビタビ復号器13によって行われるビタビ復号方法について説明する。ここでは、最初に4値4状態ビタビ復号方法について説明する。上述したように、ユーザデータは、様々な符号化方法によって記録データとしての符号語に変換される。符号化方法は、記録媒体の性質および記録/再生方法等に応じて適切なものが採用される。光磁気ディスク装置においては、ブロック符号化において、Run Lengthすなわち’1’と’1’の間の’0’の数を制限するRLL(Run Length Limited)符号化方法が用いられることが多い。従来から幾つかのRLL符号化方法が用いられている。一般に、’1’と’1’の間の’0’の数を最小でd個、最大でk個とするm/nブロック符号をRLL(d,k;m,n)符号と称する。
例えば、2/3ブロック符号において、’1’と’1’の間の’0’の数を最小で1個、最大で7個とするブロック符号化方法は、RLL(1,7;2,3)符号である。一般にRLL(1,7;2,3)符号をRLL(1,7)符号と称することが多いので、以下の説明においても単にRLL(1,7)符号と表記した場合には、RLL(1,7;2,3)符号を指すことにする。
このようなRLL符号化方法と、上述したマークエッジ記録方法との組合わせによって記録されたデータから再生される再生信号を復号するために、ビタビ復号方法を用いることができる。
このようなRLL符号化方法は、記録密度の向上、および再生動作の安定性の確保という2つの観点から、符号化方法に要求される条件に対応できるものである。まず、上述したように、マークエッジ記録方法は、記録データに基づいて後述するように生成されるプリコード出力における’1’を各ピットのエッジによって表現される極性の反転に対応させるものなので、’1’と’1’の間の’0’の数を多くする程、各ピット1個当たりに記録されるビット数を大きくすることができる。従って、記録密度を大きくすることができる。
一方、再生系の動作タイミングを合わせるために必要なリードクロックDCKは、上述したように、再生信号に基づいてPLL部14によって生成される。このため、記録データにおいて’1’と’1’の間の’0’の数を多くすると、再生動作の際にPLL部の動作が不安定となるので、再生動作全体が不安定なものとなる。
これら2つの条件を考慮すると、’1’と’1’の間の’0’の数は、多過ぎたり、少な過ぎたりしない、適切な範囲内に設定される必要がある。このような、記録データ中の’0’の数の設定に関して、RLL符号化方法が有効となる。
ところで、図6に示すように、上述したRLL(1,7)符号化方法とマークエッジ記録方法の組み合わせにおいては、記録データに基づいて生成されるプリコード出力中の’1’と’1’の間に最低1個の’0’が含まれるので、最小反転幅が2となる。このような、最小反転幅が2となる符号化方法が用いられる場合に、符号間干渉およびノイズ等の影響を受けている再生信号から記録データを復号する方法として、後述するように、4値4状態ビタビ復号方法を適用することができる。
上述したように、再生信号には、フィルタ部11によって波形等化処理がなされる。ビタビ復号方法の前段としてなされるこのような波形等化処理には、符号間干渉を積極的に利用するパーシャルレスポンス方法が用いられる。この際に用いられる波形等化特性は、一般に(1+D)nで表されるパーシャルレスポンス特性の内から、記録/再生系の線記録密度およびMTF(Modulation Transfer Function)を考慮して決められる。上述したRLL(1,7)符号化方法とマークエッジ記録方法の組み合わせによって記録されたデータに対して、PR(1,2,1)を用いる波形等化処理は、4値4状態ビタビ復号方法の前段となる。
一方、マークエッジ記録方法においては、光磁気ディスク媒体等に対する実際の記録に先立って、上述のRLL符号化等によって符号化された記録データに基づくプリコードが行われる。各時点kにおける記録データ列をa〔k〕、これに基づくプリコード出力をb〔k〕とすると、プリコードは、以下のように行われる。
b〔k〕=mod2{a〔k〕+b〔k−1〕} (1)
このようなプリコード出力b〔k〕が実際に光磁気ディスク媒体等に記録される。一方、フィルタ部11中の波形等化器によってなされる、波形等化特性PR(1,2,1)での波形等化処理について説明する。但し、以下の説明においては、信号の振幅を規格化せずに、波形等化特性をPR(B,2A,B)とする。また、ノイズを考慮しない場合の再生信号の値をc〔k〕と表記する。さらに、ノイズを含む実際の再生信号(すなわち、記録媒体から再生された再生信号)をz〔k〕と表記する。
PR(B,2A,B)は、ある時点kにおける再生信号の値に対して、時点kにおける振幅の寄与が振幅値の2A倍とされ、さらに前後の時点k−1およびk+1における振幅の寄与が各々の時点での信号の振幅のB倍とされるものである。従って、再生信号の値の最大値は、時点k−1、k、k+1において何れもパルスが検出される場合である。このような場合には、再生信号の値の最大値は、以下のようになる。
B+2A+B=2A+2B
また、再生信号の値の最小値は0となる。但し、実際の取り扱いにおいては、c〔k〕として、DC成分のA+Bを差し引いた以下のようなものが用いられる。
c〔k〕=B×b〔k−2〕+2A×b〔k−1〕+B×b〔k〕
−A−B (2)
従って、ノイズを考慮しない場合の再生信号c〔k〕は、A+B,A,−A,−A−Bの内の何れかの値をとることになる。一般に、再生信号の性質を示す方法の1つとして、例えば5個の時点を単位として、再生信号を多数重ね合わせたものをアイパターンと称する。この発明を適用することができる光磁気ディスク装置において、PR(B,2A,B)の下で波形等化処理された実際の再生信号z〔k〕についてのアイパターンの一例を図7に示す。図7から各時点における再生信号z〔k〕の値は、A+B,A,−A,−A−Bの内の何れかになることが確認できる。後述するように、A+B,A,−A,−A−Bの値は、識別点として用いられる。
上述したような波形等化処理がなされた再生信号を復号する、ビタビ復号方法の概略は、次のようなものである。ステップ(1)符号化方法および記録媒体に対する記録方法に基づいて、生じ得る全ての状態を特定する。ステップ(2)ある時点における各状態を起点として、次の時点において生じ得る全ての状態遷移と、各状態遷移が生じる時の記録データa〔k〕および再生信号の値c〔k〕を特定する。ステップ(1)および(2)の結果として特定された全ての状態および状態遷移と、各状態遷移が生じる時の〔記録データの値a〔k〕/再生信号の値c〔k〕〕を図の形式で表現したものを状態遷移図と称する。後述するように、4値4状態ビタビ復号方法における状態遷移図は、図9に示すようなものである。そして、この状態遷移図に基づく復号動作を行うように、ビタビ復号器13が構成される。
さらに、ステップ(3)上述したように、状態遷移図を前提として、記録媒体から各時点kにおいて再生される再生信号z〔k〕に基づく最尤な状態遷移が選択される。但し、上述したように、z〔k〕は、ビタビ復号器13に供給される前段において波形等化されたものである。このような最尤な状態遷移の選択がなされる毎に、選択された状態遷移に対応して、状態遷移図に記載された記録データa〔k〕の値を復号値とすることによって、記録データに対する最尤復号値系列としての復号データa'〔k〕を得ることができる。但し、各時点kにおける復号データ値から、最尤復号値系列とするための構成は、後述するビタビ復号器13中のPMU23である。従って、上述したように、復号データ列a'〔k〕は、復号エラーが無い場合には、記録データ列a〔k〕と一致する。上述のステップ(1)〜ステップ(3)について、以下に詳細に説明する。
上述のステップ(1)について説明する。まず、ここで用いられる状態として、ある時点kにおける状態を、時点kおよびそれ以前のプリコード出力を用いて次のように定義する。すなわち、n=b〔k〕、m=b〔k−1〕、l=b〔k−2〕の時の状態をSnmlと定義する。このような定義によって、23=8個の状態があると考えられるが、上述したように、実際に生じ得る状態は、符号化方法等に基づいて制限される。RLL(1,7)符号として符号化された記録データ列a〔k〕においては、’1’と’1’の間に最低1個の’0’が含まれるので、2個以上の’1’が連続することが無い。記録データ列a〔k〕に課されるこのような条件に基づいてプリコード出力b〔k〕について一定の条件が課され、その結果として生じ得る状態に制限が加えられる。
このような制限について具体的に説明する。上述したようにRLL(1,7)符号化によって生成される記録データ列中に、2個以上の’1’が連続するもの、すなわち以下のものはあり得ない。
a〔k〕=1,a〔k−1〕=1,a〔k−2〕=1 (3)
a〔k〕=1,a〔k−1〕=1,a〔k−2〕=0 (4)
a〔k〕=0,a〔k−1〕=1,a〔k−2〕=1 (5)
記録データ列に課されるこのような条件に基づいて、上述の(1)式に従ってb〔k〕について課される条件について検討すると、S010およびS101の2個の状態は生じ得ないことがわかる。従って、生じ得る状態は、23−2=6個である。
次に、ステップ(2)について説明する。ある時点jにおける状態を起点として、次の時点j+1において生じ得る状態を求めるためには、時点j+1における記録データの値a〔j+1〕が1となる場合、および0となる場合に分けて調べる必要がある。
ここでは、状態S000を例として説明する。上述の(1)式に従って、S000すなわちn=b〔j〕=0,l=b〔j−1〕=0,m=b〔j−2〕=0とプリコードされる記録データとしては、以下の2個が考えられる。
a〔j〕=0、a〔j−1〕=0、a〔j−2〕=1 (6)
a〔j〕=0、a〔j−1〕=0、a〔j−2〕=0 (7)
〔a〔j+1〕=1の時〕
この時、(1)式に従って、b〔j+1〕は、以下のように計算される。
b〔j+1〕=mod2{a〔j+1〕+b〔j〕}
=mod2{ 1 + 0 }
=1 (8)
従って、再生信号c〔j〕の値は、上述の(2)式に従って、次のように計算される。
c〔j+1〕={B×b〔j+1〕+2A×b〔j〕+B×b〔j−1〕}
−A−B
={B×1+2A×0+B×0}−A−B
=−A (9)
また、次の時点j+1での状態Snlmについては、n=b〔j+1〕,l=b〔j〕,m=b〔j−1〕である。そして、上述したようにb〔j+1〕=1,b〔j〕=0,b〔j−1〕=0となるので、次の時点j+1における状態は、S100である。従って、a〔j+1〕=1の場合には、S000→S100という遷移が生じることが特定できる。
〔a〔j+1〕=0の時〕
この時、(1)式に従って、b〔j+1〕は、以下のように計算される。
b〔j+1〕=mod2{a〔j+1〕+b〔j〕}
=mod2{ 0 + 0}
=0 (10)
従って、再生信号c〔j+1〕の値は、上述の(2)式に従って、次のように計算される。
c〔j+1〕={B×b〔j+1〕+2A×b〔j〕+B×b〔j−1〕}
−A−B
={B×0+2A×0+B×0}−A−B
=−A−B (11)
また、次の時点j+1における状態Snlmについては、n=b〔j+1〕,l=b〔j〕,m=b〔j−1〕である。そして、上述したようにb〔j+1〕=0,b〔j〕=0,b〔j−1〕=0となるので、次の時点における状態は、S000である。従って、a〔j+1〕=0の場合には、S000→S000という遷移が生じることが特定できる。
このようにして、時点jにおけるS000以外の各状態についても、それらを起点として次の時点j+1において生じ得る状態遷移と、そのような各状態遷移が生じる時の記録データ値a〔j+1〕および再生信号値c〔j+1〕との対応を求めることができる。
各状態について、それらを起点として生じ得る状態遷移と、各状態遷移が生じる時の記録データの値および再生信号の値との対応を求め、図の形式に表したものが図8である。上述の時点jおよびj+1は、特別の時点ではない。従って、上述したようにして求まる、生じ得る状態遷移とそれらに伴う記録データの値および再生信号の値との対応は、任意の時点において適用することができる。このため、図8においては、任意の時点kにおいて生じる状態遷移に伴う記録データの値をa〔k〕と表記し、再生信号の値をc〔k〕と表記する。
図8において、状態遷移は、矢印によって表される。また、各矢印に付した符号が〔記録データ値a〔k〕/再生信号値c〔k〕〕を示している。状態S000,S001,S111およびS110を起点とする状態遷移は、2通り有るのに対して、状態S011およびS100を起点として生じ得る遷移は1通りのみである。
さらに、図8においてS000とS001は、何れもa〔k〕=1に対しては、c〔k〕=−Aという値を取り、S100に遷移している。一方、a〔k〕=0に対しては、c〔k〕=−A−Bという値を取り、S000に遷移している。また、S111とS110も同様に、同じa〔k+1〕の値について同じc〔k+1〕の値を取り、且つ、同じ状態に遷移している。従って、S000とS001をまとめてS0と表現し、S111とS110をまとめてS2と表現することができる。さらに、S011をS3とし、S100をS1と表現することにして、整理したものが図9である。
上述したように、図9が4値4状態ビタビ復号方法に用いられる状態遷移図である。図9中には、S0〜S3の4個の状態、および再生信号c〔k+1〕の値としての−A−B,−A,A,A+Bの4個の値が示されている。状態S0およびS2を起点とする状態遷移は、2通り有るのに対して、状態S1およびS3を起点とする状態遷移は、1通りのみである。
一方、状態遷移を時間に沿って表現する形式として、図10に示すようなトレリス線図が用いられる。図10では、2個の時点間の遷移を示しているが、さらに多数の時点間の遷移を示すこともできる。時間経過に伴い、順次右の時点に遷移していく様子が表現される。従って、水平な矢印は、例えばS0→S0等の同じ状態への遷移を表し、斜めの矢印は、例えばS1→S2等の異なる状態への遷移を表すことになる。
上述したビタビ復号方法のステップ(3)、すなわち図9に示した状態遷移図を前提として、ノイズを含む実際の再生信号z〔k〕から最尤な状態遷移を選択する方法について以下に説明する。
最尤な状態遷移を選択するためには、まず、ある時点kにおける状態について、その状態に至る過程において経由してきた複数時点間の状態遷移の尤度の和を計算し、さらに、計算された尤度の和を比較して、最尤の復号系列を選択することが必要である。このような尤度の和をパスメトリックと称する。
パスメトリックを計算するためには、まず、隣接する時点間の状態遷移の尤度を計算することが必要となる。このような尤度の計算は、上述の状態遷移図を参照して、再生信号z〔k〕の値に基づいて以下のようになされる。まず、一般的な説明として、時点k−1において、状態Saである場合について考える。この時、ビタビ復号器31に再生信号z〔k〕が入力された場合に、状態Sbへの状態遷移が生じる尤度が次式に従って計算される。但し、状態Saおよび状態Sbは、図9の状態遷移図に記載されている4個の状態の何れかとする。
(z〔k〕−c(Sa,Sb))2 (12)
上式において、c(Sa,Sb)は、状態Saから状態Sbへの状態遷移について、図9の状態遷移図に記載されている再生信号の値である。すなわち、上述の図9において、例えば状態遷移S0→S1について、−Aと算出されている値である。従って、式(12)は、ノイズを含む実際の再生信号z〔k〕の値と、ノイズを考慮せずに計算された再生信号c(Sa,Sb)の値の間のユークリッド距離となる。ある時点におけるパスメトリックは、その時点に至るまでのこのような隣接時点間の状態遷移の尤度の総和として定義される。
ところで、時点kにおいて状態Saである場合を考える。この場合に、時点k−1において状態Saに遷移し得る状態をSpとすれば、パスメトリックL(Sa,k)は、時点k−1におけるパスメトリックを用いて次式のように計算される。
L(Sa,k)
=L(Sp,k−1)+(z〔k〕−c(Sp,Sa))2 (13)
すなわち、時点k−1において状態Spに至った場合のパスメトリックL(Sp,k−1)と、時点k−1と時点kの間で生じるSp→Saなる状態遷移の尤度(z〔k〕−c(Sp,Sa))2とを加算することによって、パスメトリックL(Sa,k)が計算される。この(z〔k〕−c(Sp,Sa))2のような、最新の状態遷移の尤度は、ブランチメトリックと称される。但し、ここでのブランチメトリックは、後述するビタビ復号器13中のブランチメトリック計算回路(BMC)20によって計算されるブランチメトリック、すなわち、規格化メトリックに対応するブランチメトリックとは、別のものであることに注意が必要である。
また、時点kにおいて状態Saである場合に、時点k−1において状態Saに遷移し得る状態が複数個存在することがある。図9においては、状態S0およびS2がこのような場合である。すなわち時点kにおいて状態S0である場合に、時点k−1において状態S0に遷移し得る状態は、S0とS3の2個である。また、時点kにおいて状態S2である場合に、時点k−1において状態S2に遷移し得る状態は、S1とS2の2個である。一般的な説明として、時点kにおいて状態Saであり、且つ、時点k−1において状態Saに遷移し得る状態がSpおよびSqの2個である場合に、パスメトリックL(Sa,k)は、次式のように計算される。
L(Sa,k)
=min{L(Sp,k−1)+(z〔k〕−c(Sp,Sa))2,
L(Sq,k−1)+(z〔k〕−c(Sq,Sa))2} (14)
すなわち、時点k−1において状態Spであり、Sp→Saなる状態遷移によって状態Saに至った場合と、時点k−1において状態Sqであり、Sq→Saなる状態遷移によって状態Saに至った場合の各々について、尤度の和を計算する。そして、各々の計算値を比較し、より小さい値を時点kにおける状態Saに関するパスメトリックL(Sa,k)とする。
このようなパスメトリックの計算を、図9を用いて上述した4値4状態について具体的に適用すると、時点kにおける各状態S0,S1,S2およびS3についてのパスメトリックL(0,k),L(1,k),L(2,k)およびL(3,k)は、時点k−1における各状態S0〜S3についてのパスメトリックL(0,k−1)〜L(3,k−1)を用いて以下のように計算できる。
L(0,k)=min{L(0,k−1)+(z〔k〕+A+B)2,
L(3,k−1)+(z〔k〕+A)2} (15)
L(1,k)=L(0,k−1)+(z〔k〕+A)2 (16)
L(2,k)=min{L(2,k−1)+(z〔k〕−A−B)2
L(1,k−1)+(z〔k〕−A)2} (17)
L(3,k)=L(2,k−1)+(z〔k〕−A)2 (18)
上述したように、このようにして計算されるパスメトリックの値を比較して、最尤な状態遷移が選択されれば良い。ところで、最尤な状態遷移を選択するためには、パスメトリックの値そのものを計算しなくても、パスメトリックの値の比較ができれば良い。そこで、実際の4値4状態ビタビ復号方法においては、パスメトリックの代わりに以下に定義するような規格化パスメトリックを用いることにより、各時点kにおけるz〔k〕に基づく計算を容易なものとするようになされる。
m(i,k)
=〔L(i,k)−z〔k〕2−(A+B)2〕/2/(A+B) (19)
式(19)をS0〜S3の各状態に適用すると、具体的な規格化パスメトリックは、以下のように2乗計算を含まないものとなる。このため、後述する、加算、比較、選択回路(ACS)21における計算を容易なものとすることができる。
m(0,k)=min{m(0,k−1)+z〔k〕,
m(3,k−1)+α×z〔k〕−β} (20)
m(1,k)=m(0,k−1)+α×z〔k〕−β (21)
m(2,k)=min{m(2,k−1)−z〔k〕,
m(1,k−1)−α×z〔k〕−β} (22)
m(3,k)=m(2,k−1)+α×z〔k〕−β (23)
但し、式(20)〜(23)中のαおよびβは、以下のようなものである。
α=A/(A+B) (24)
β=B×(B+2×A)/2/(A+B) (25)
このような規格化パスメトリックに基づく4値4状態ビタビ復号方法における状態遷移の条件について図11に示す。上述の4個の規格化パスメトリックの内に、2個から1個を選択する式が2つあるので、2×2=4通りの条件がある。
〔4値4状態ビタビ復号器の概要〕
上述した4値4状態ビタビ復号方法を実現するビタビ復号器13について以下に説明する。図12にビタビ復号器13の全体構成を示す。ビタビ復号器13は、ブランチメトリック計算回路(以下、BMCと表記する)20、加算、比較および選択回路(以下、ACSと表記する)21、圧縮およびラッチ回路22およびパスメモリユニット(以下、PMUと表記する)23から構成される。これらの各構成要素に対して上述のリードクロックDCK(以下の説明においては、単にクロックと表記する)が供給されることにより、ビタビ復号器13全体の動作タイミングが合わされる。さらに、PMU23の各パスメモリ24〜27に対しては、データエリアのメモリ長を最適に設定するための制御データRegと、パスメモリのメモリ長をヘッダエリアとデータエリアとで切り替えるための切替え信号Sが供給される。以下、各構成要素について説明する。
BMC20は、入力される再生信号z〔k〕に基づいて、規格化パスメトリックに対応するブランチメトリックの値BM0,BM1,BM2およびBM3を計算する。BM0〜BM3は、上述の式(20)〜(23)の規格化パスメトリックを計算するために必要とされる、以下のようなものである。
BM0=z(k) (26)
BM1=α×z〔k〕−β (27)
BM2=−z(k) (28)
BM3=−α×z〔k〕−β (29)
この計算に必要なαおよびβは、上述の式(24)および(25)に従ってBMC20によって計算される基準値である。かかる計算は、例えば再生信号z〔k〕に基づくエンベロープ検出等の方法で検出され、BMC20に供給される識別点−A−B,−A,AおよびA+Bの値に基づいてなされる。
BM0〜BM3の値は、ACS21に供給される。一方、ACS21は、後述するような圧縮およびラッチ回路22から、1クロック前の規格化パスメトリックの値(但し、後述するように圧縮のなされたもの)M0,M1,M2およびM3を供給される。そして、M0〜M3と、BM0〜BM3とを加算して、後述するようにして、最新の規格化パスメトリックの値L0,L1,L2およびL3を計算する。M0〜M3が圧縮のなされたものであるため、L0〜L3を計算する際のオーバーフローを避けることができる。
さらに、ACS21は、最新の規格化パスメトリックの値L0〜L3に基づいて、後述するように、最尤な状態遷移を選択し、また、選択結果に対応して、パスメモリ23に供給される選択信号SEL0およびSEL2を'High'または'Low'とする。
また、ACS21は、L0〜L3を圧縮およびラッチ回路22に供給する。圧縮およびラッチ回路22は、供給されるL0〜L3を圧縮した後にラッチする。その後、1クロック前の規格化パスメトリックM0〜M3としてACS21に供給する。
この際の圧縮の方法としては、例えば以下に示すように、最新の規格化パスメトリックL0〜L3から、そのうちの1個、例えばL0を一律に差し引く等の方法が用いられる。
M0=L0−L0 (30)
M1=L1−L0 (31)
M2=L2−L0 (32)
M3=L3−L0 (33)
この結果として、M0が常に0の値をとることになるが、以下の説明においては、一般性を損なわないために、このままM0と表記する。式(30)〜(33)によって計算されるM0〜M3の値の差は、L0〜L3の値の差と等しいものとなる。上述したように、最尤な状態遷移の選択においては、規格化パスメトリック間の値の差のみが問題となる。従って、このような圧縮方法は、最尤な状態遷移の選択結果に影響せずに規格化パスメトリックの値を圧縮し、オーバーフローを防止する方法として有効である。このように、ACS21と圧縮およびラッチ回路22は、規格化パスメトリックの計算に関するループを構成する。
上述のACS21について、図13を参照してより詳細に説明する。ACS21は、6個の加算器51、52、53、54、56、58および2個の比較器55、57から構成される。一方、上述したようにACS21には、1クロック前の圧縮された規格化パスメトリックの値M0〜M3および規格化パスメトリックに対応するブランチメトリックの値BM0〜BM3が供給される。
加算器51には、M0およびBM0が供給される。加算器51は、これらを加算して以下のようなL00を算出する。
L00=M0+BM0 (34)
上述したように、M0は、時点k−1において状態S0に至った場合に、経由してきた状態遷移の総和に対応する圧縮された規格化パスメトリックである。また、BM0は、時点kにおいて入力される再生信号z〔k〕に基づいて上述の(26)式に従って計算されるもの、すなわちz〔k〕の値そのものである。従って、式(34)の値は、上述したような圧縮の作用の下に、上述の式(20)中のm(0,k−1)+z〔k〕の値を計算したものとなる。すなわち、時点k−1において状態S0であり、時点kにおける状態遷移S0→S0によって最終的に状態遷移S0に至った場合に対応する計算値である。
一方、加算器52には、M3およびBM1が供給される。加算器51は、これらを加算して以下のようなL30を算出する。
L30=M3+BM1 (35)
上述したように、M3は、時点k−1において状態S3に至った場合に、経由してきた状態遷移の総和に対応する、圧縮された規格化パスメトリックである。また、BM1は、時点kにおいて入力される再生信号z〔k〕に基づいて上述の(27)式に従って計算されるもの、すなわちα×z〔k〕−βである。従って、式(35)の値は、上述したような圧縮の作用の下に、上述の式(20)中のm(3,k−1)+α×z〔k〕−βの値を計算したものとなる。すなわち、時点k−1において状態S3であり、時点kにおける状態遷移S3→S0によって最終的に状態遷移S0に至った場合に対応する計算値である。
上述のL00およびL30は、比較器55に供給される。比較器55は、L00およびL30の値を比較し、小さい方を最新の規格化パスメトリックL0とすると共に、選択結果に応じて、上述したように選択信号SEL0の極性を切替える。このような構成は、式(20)において、最小値が選択されることに対応するものである。すなわち、L00<L30の場合(この時は、S0→S0が選択される)に、L00をL0として出力し、且つ、SEL0を例えば、'Low'とする。また、L30<L00の場合(この時は、S3→S0が選択される)には、L30をL0として出力し、且つ、SEL0を例えば'High'とする。SEL0は、後述するように、状態S0に対応するA型パスメモリ24に供給される。
このように、加算器51、52および比較器55は、上述の式(20)に対応して、S0→S0とS3→S0の内から、時点kにおける状態遷移として最尤なものを選択する動作を行う。そして、選択結果に応じて、最新の規格化パスメトリックL0および選択信号SEL0を出力する。
また、加算器56には、M0およびBM1が供給される。加算器51は、これらを加算して以下のようなL1を算出する。
L1=M0+BM1 (36)
上述したように、M0は、時点k−1において状態S0に至った場合に、経由してきた状態遷移の総和に対応する圧縮された規格化パスメトリックである。また、BM1は、時点kにおいて入力される再生信号z〔k〕に基づいて上述の(27)式に従って計算されるもの、すなわちα×z〔k〕−βである。従って、式(36)の値は、上述したような圧縮の作用の下に、上述の式(21)の右辺m(0,k−1)+α×z〔k〕−βの値を計算したものとなる。すなわち、時点k−1において状態S0であり、時点kにおける状態遷移S0→S1によって最終的に状態遷移S1に至った場合に対応する計算値である。式(21)が値の選択を行わないことに対応して、加算器56の出力がそのまま最新の規格化パスメトリックL1とされる。
加算器53には、M2およびBM2が供給される。加算器53は、これらを加算して以下のようなL22を算出する。
L22=M2+BM2 (37)
上述したように、M2は、時点k−1において状態S2に至った場合に、経由してきた状態遷移の総和に対応する圧縮された規格化パスメトリックである。また、BM0は、時点kにおいて入力される再生信号z〔k〕に基づいて上述の(28)式に従って計算されるもの、すなわち−z〔k〕である。従って、式(37)の値は、上述したような圧縮の作用の下に、上述の式(22)中のm(2,k−1)−z〔k〕の値を計算したものとなる。すなわち、時点k−1において状態S2であり、時点kにおける状態遷移S2→S2によって最終的に状態遷移S2に至った場合に対応する計算値である。
一方、加算器54には、M1およびBM3が供給される。加算器53は、これらを加算して以下のようなL12を算出する。
L12=M1+BM3 (38)
上述したように、M1は、時点k−1において状態S1に至った場合に、経由してきた状態遷移の総和に対応する圧縮された規格化パスメトリックである。また、BM3は、時点kにおいて入力される再生信号z〔k〕に基づいて上述の(29)式に従って計算されるもの、すなわち−α×z〔k〕−βである。従って、式(38)の値は、上述したような圧縮の作用の下に、上述の式(22)中のm(1,k−1)−α×z〔k〕−βの値を計算したものとなる。すなわち、時点k−1において状態S1であり、時点kにおける状態遷移S1→S2によって最終的に状態遷移S2に至った場合に対応する計算値である。
上述のL22およびL12は、比較器57に供給される。比較器57は、L22およびL12の値を比較し、小さい方を最新の規格化パスメトリックL2とすると共に、選択結果に応じて、上述したように選択信号SEL2の極性を切替える。このような構成は、式(22)において、最小値が選択されることに対応するものである。すなわち、L22<L12の場合(この時は、S2→S2が選択される)に、L22をL2として出力し、且つ、SEL2を例えば、'Low'とする。また、L12<L22の場合(この時は、S1→S2が選択される)には、L12をL2として出力し、且つ、SEL2を例えば'High'とする。SEL2は、後述するように、状態S2に対応するA型パスメモリ26に供給される。
このように、加算器53、54および比較器57は、上述の式(22)に対応して、S1→S2とS2→S2の内から、時点kにおける状態遷移として最尤なものを選択する。そして、選択結果に応じて、最新の規格化パスメトリックL2および選択信号SEL2を出力する。
また、加算器58には、M2およびBM3が供給される。加算器58は、これらを加算して以下のようなL3を算出する。
L3=M2+BM3 (39)
上述したように、M2は、時点k−1において状態S2に至った場合に、経由してきた状態遷移の総和に対応する圧縮された規格化パスメトリックである。また、BM3は、時点kにおいて入力される再生信号z〔k〕に基づいて上述の(29)式に従って計算されるもの、すなわち−α×z〔k〕−βである。従って、式(39)の値は、上述したような圧縮の作用の下に、上述の式(23)の右辺m(2,k−1)+α×z〔k〕−βの値を計算したものとなる。すなわち、時点k−1において状態S0であり、時点kにおける状態遷移S2→S3によって最終的に状態遷移S3に至った場合に対応する計算値である。式(23)が値の選択を行わないことに対応して、加算器58の出力がそのまま最新の規格化パスメトリックL3とされる。
上述したようにして, ACS21が出力するSEL0およびSEL2に従って、パスメモリユニット(以下、PMUと表記する)23が動作することによって、記録データa〔k〕に対する最尤復号系列としての復号データa’〔k〕が生成される。PMU23は、図9に示した4個の状態間の状態遷移に対応するために、2個のA型パスメモリおよび2個のB型パスメモリから構成される。
A型パスメモリは、その状態に至る遷移として2つの遷移(すなわち、自分自身からの遷移と、他の1個の状態からの遷移)を有し、且つ、その状態を起点とする2つの遷移(すなわち、自分自身に至る遷移と他の1個の状態に至る遷移)を有する状態に対応するための構成とされる。従って、A型パスメモリは、図9に示した4個の状態の内、S0およびS2に対応するものである。
一方、B型パスメモリは、その状態に至る遷移が1つのみであり、且つ、その状態を起点とする遷移が1つのみである状態に対応するための構成とされる。従って、B型パスメモリは、図9に示した4個の状態の内、S1およびS3に対応するものである。
これら2個のA型パスメモリおよび2個のB型パスメモリが図9に示した状態遷移図に従う動作を行うために、PMU23において、図12に示すような復号データの受渡しがなされるように構成される。すなわち、A型パスメモリ24がS0に対応し、A型パスメモリ26がS2に対応する。また、B型パスメモリ25がS1に対応し、また、B型パスメモリ27がS3に対応する。このように構成すれば、S0を起点として生じ得る状態遷移がS0→S0およびS0→S1であり、S2を起点として生じ得る状態遷移がS2→S2およびS2→S3であることに合致する。また、S1を起点として生じ得る状態遷移がS1→S2のみであり、S3を起点として生じ得る状態遷移がS3→S0のみであることにも合致する。
A型パスメモリ24について、その詳細な構成を図14に示す。A型パスメモリ24は、パスメモリ長に対応する個数のフリップフロップとセレクタを、交互に接続したものである。すなわち、(n−1)個のセレクタ311〜31n-1およびn個のフリップフロップ300〜30n-1を有するものである。セレクタ311〜31n-1は、何れも2個のデータを受取り、その内の1個を選択的に後段に供給するものである。また、フリップフロップ300〜30n-1にクロックが供給されることにより、A型パスメモリ24全体の動作タイミングが合わされる。
図9を用いて上述したように、状態S0に至る遷移は、S0→S0すなわち自分自身から継承する遷移、およびS3→S0である。このような状況に対応する構成として、各セレクタは、前段のフリップフロップから供給されるデータすなわちS0→S0に対応する復号データと、状態S3に対応するB型パスメモリ27から供給されるデータすなわちS3→S0に対応する復号データPM3とを受取る。さらに、各セレクタは、ACS21からSEL0を供給される。そして、SEL0の極性に応じて、供給される2個の復号データの内の一方を後段のフリップフロップに供給する。また、このようにして後段のフリップフロップに供給される復号データは、状態S1に対応するB型パスメモリ25にもPM0として供給される。
例えばセレクタ31n-1は、前段のフリップフロップ30n-2から供給されるデータと、B型パスメモリ27から供給されるnビットからなるPM3の14番目のビット位置のデータとを受取る。そして、これら2個のデータの内から以下のようにして選択したデータを、後段のフリップフロップ30n-1に供給する。上述したようにSEL0は、選択結果に応じて、'Low'または'High'とされる。SEL0が例えば'Low'の時は、前段のフリップフロップ30n-2からのデータが選択されるようになされる。また、SEL0が例えば'High'の時は、PM3の14番目のビット位置のデータが選択されるようになされる。選択されたデータは、後段のフリップフロップ30n-1に供給され、また、PM0の14番目のビット位置のデータとして、状態S1に対応するB型パスメモリ25に供給される。
A型パスメモリ24中の他のセレクタ311〜31n-2においても、SEL0の極性に応じて、同様な動作が行われる。従って、A型パスメモリ24全体としては、SEL0が例えば'Low'の時は、A型パスメモリ24中で、各々のフリップフロップがその前段に位置するフリップフロップのデータを継承するシリアルシフトを行う。また、SEL0が例えば'High'の時は、B型パスメモリ27から供給されるnビットからなる復号データPM3を継承するパラレルロードを行う。何れの場合にも、継承される復号データは、B型パスメモリ25にnビットの復号データPM0として供給される。
また、最初の処理段となるフリップフロップ300には、クロックに同期して常に'0'が入力される。かかる動作は、S0に至る状態遷移S0→S0とS2→S0の何れにおいても、図9に示すように、復号データが'0'なので、最新の復号データは、常に'0'となることに対応している。
さらに、復号出力を取り出す場合、出力セレクタ33が設けられている。出力セレクタ33には、最初のフリップフロップ300の出力から最終のフリップフロップ30n-1の出力までのn個の出力が供給される。出力セレクタ33は、セレクト信号によりn個の入力の一つを復号出力として選択する。出力セレクタ33を制御するためのセレクト信号がセレクト信号生成回路34により生成される。セレクト信号生成回路34に対しては、レジスタ16からの制御データRegおよび切替え信号Sが供給される。
セレクト信号は、ヘッダエリアの再生信号を復号する場合には、所定のフリップフロップの出力を選択し、また、データエリアにおいては、制御データRegにより指示されるメモリ長となるように、所定のフリップフロップの出力を選択するように、出力セレクタ33を制御する。これによって、ヘッダエリアとデータエリアとで独立してメモリ長を設定でき、また、データエリアの再生時のメモリ長をキャリブレーションにより設定されるものとすることができる。
上述したように、S2に対応するA型パスメモリ26についても、構成自体は、A型パスメモリ24と全く同様である。但し、ACS21から入力される選択信号は、SEL2である。また、図9に示すように状態S2に至る遷移としては、S2→S2すなわち自分自身から継承する遷移と、S1→S2とがある。このため、状態S1に対応するB型パスメモリ25からPM1を供給される。さらに、状態S2を起点として生じ得る状態がS2すなわち自分自身と、S3であることに対応して、状態S3に対応するB型パスメモリ27にPM2を供給する。
また、S2に対応するA型パスメモリ26においても、最初の処理段となるフリップフロップには、クロックに同期して常に'0'が入力される。かかる動作は、S2に至る状態遷移S2→S2とS1→S0の何れにおいても、図9に示すように、復号データが'0'なので、最新の復号データは、常に'0'となることに対応している。
他方、B型パスメモリ25について、その詳細な構成を図15に示す。B型パスメモリ25は、データエリアのパスメモリ長に対応するn個のフリップフロップを接続したものである。図15に示す例では、B型パスメモリ25は、n個のフリップフロップ320〜32n-1を有する。フリップフロップ320〜32n-1にクロックが供給されることにより、B型パスメモリ25全体の動作タイミングが合わされる。
各フリップフロップ321〜32n-1には、状態S0に対応するA型パスメモリ24から、nビットの復号データがPM0として供給される。例えば、フリップフロップ321には、PM0の1ビット目が供給される。各フリップフロップ321〜32n-1は、供給された値を1クロックの間保持する。そして、状態S2に対応するA型パスメモリ26に、nビットの復号データPM1として出力する。例えば、フリップフロップ321は、PM1の2ビット目を出力する。
B型パスメモリ25中の他のセレクタ321〜32n-2においても、同様な動作が行われる。従って、B型パスメモリ25全体としては、A型パスメモリ24から供給されるnビットからなる復号データPM0を受取り、またA型パスメモリ26にnビットからなる復号データPM1を供給する。
また、フリップフロップ320には、クロックに同期して常に'1'が入力される。かかる動作は、図9に示したように、最新の状態遷移がS0→S1である場合に復号データが'1'であることに対応している。
さらに、復号出力を取り出す場合、出力セレクタ35が設けられている。出力セレクタ35には、最初のフリップフロップ320の出力から最終のフリップフロップ32n-1の出力までのn個の出力が供給される。出力セレクタ35は、セレクト信号によりn個の入力の一つを復号出力として選択する。出力セレクタ35を制御するためのセレクト信号がセレクト信号生成回路36により生成される。セレクト信号生成回路36に対しては、レジスタ16からの制御データRegおよび切替え信号Sが供給される。出力セレクタ35は、セレクト信号により一つの入力を復号出力として選択する。すなわち、上述したA型パスメモリ24と同様に、ヘッダエリアの再生信号を復号する場合では、所定のフリップフロップの出力を選択し、データエリアの再生信号を復号する場合では、制御データRegにより指示されるフリップフロップの出力を選択する。出力セレクタ35によって、B型パスメモリ25のメモリ長を切り替えることができる。
また、上述のように、状態S3に対応するB型パスメモリ27についても、B型パスメモリ25と全く同様な構成とされる。但し、図9に示すように状態S3に至る遷移は、S2→S3なので、状態S2に対応するA型パスメモリ26からPM2を供給される。さらに、状態S3を起点として生じ得る状態がS0であることに対応して、状態S0に対応するA型パスメモリ24にPM3を供給するようになされる。B型パスメモリ27においても、最初の処理段となるフリップフロップには、クロックに同期して常に'1'が入力される。かかる動作は、図9に示したように、最新の状態遷移がS2→S3である場合に復号データが'1'であることに対応している。
上述したようにして、PMU23中の4個のパスメモリは、各々復号データを生成する。このようにして生成される4個の復号データは、常に正確なビタビ復号動作がなされる場合には、互いに一致することになる。ところで、実際のビタビ復号動作においては、4個の復号データに不一致が生じることも起こり得る。このような不一致は、再生信号に含まれるノイズの影響等により、上述の識別点AおよびBを検出する際に誤差が生じる等の要因により、ビタビ復号動作が不正確なものとなることによって生じる。従って、復号データ間の不一致が生じるおそれがある場合には、4個の復号データから、例えば多数決等の方法によって、より的確なものを選択するような、図示しない構成がPMU23中の4個のパスメモリの後段に設けられる。
〔4値4状態ビタビ復号方法以外のビタビ復号方法〕
上述した4値4状態ビタビ復号方法は、フィルタ部11において用いられる波形等化特性がPR(1,2,1)であり、且つ、記録データとしてRLL(1,7)符号が採用される場合に用いられる。例えば、記録線密度0.40μm,レーザ波長685nm,NA=0.55の場合には、波形等化特性をPR(1,2,1)とし、4値4状態ビタビ復号方法を用いることが最適となる。他方、波形等化特性または記録データを生成するための符号化方法に応じて、他の種類のビタビ復号方法が用いられることもある。
例えば、波形等化特性がPR(1,1)であり、且つ、記録データとしてRLL(1,7)符号が用いられる場合には、3値4状態ビタビ復号方法が用いられる。また、波形等化特性がPR(1,3,3,1)であり、且つ、記録データとしてRLL(1,7)符号が用いられる場合には、7値6状態ビタビ復号方法が用いられる。このようなビタビ復号方法の内、何れを用いるかを選択するための要素の1つとなる波形等化特性は、再生信号上の符号間干渉に適合する程度が良いものが採用される。従って、上述したように、線記録密度およびMTFを考慮して最適なものとされる。
〔状態データ値を使用する4値4状態ビタビ復号方法〕
上述した光磁気ディスク装置の一例中のビタビ復号器13は、再生信号値に基づいて選択した最尤な状態遷移に対応して復号データ値の系列としての復号データを生成するものである。これに対して、復号データ値の代わりに状態そのものを表現する状態データ値を用いることによって、選択される状態遷移そのものを表現する状態データを生成することも可能である。このような場合には、上述の光磁気ディスク装置の一例におけるパスメモリユニットPMUの代わりに、後述するようにして状態データ値の系列を生成するステータスメモリユニット(以下、SMUと表記する)が用いられる。後述するように、この発明の実施の他の形態は、状態データを使用するビタビ復号にこの発明を適用したものである。
例えば4値4状態ビタビ復号方法においては、4個の状態を2ビットで表現できるので、このような2ビットのデータを状態データ値として用いることができる。そこで、図9中のS0,S1,S2,S3を、それぞれ2ビットの状態データ値、00,01,11,10を用いて表現することができる。そこで、以下の説明においては、図7中のS0,S1,S2,S3をそれぞれS00,S01,S11,S10と表記することにし、4値4状態ビタビ復号方法の状態遷移図として、図9の代わりに図16を用いる。
また、以下の説明においては、波形等化特性として、上述のPR(B,2A,B)の代わりに、規格化されたものすなわちPR(1,2,1)を前提とする。このため、識別点の値すなわちノイズを考慮しない計算によって求まる再生信号値c〔k〕は、図9中の−A−B,−A,A,A+Bの代わりにそれぞれ0、1、3、4と表現される。
さらに、規格化パスメトリックを計算する式(20)〜(24)中で、最新の状態遷移に対応する全部で6個の加算部分(例えば、式(20)においては、S0→S0に対応するz〔k〕およびS3→S0に対応するα×z〔k〕−β)についても、図16における状態の表記方法に従って以下のように表記することにする。かかる加算部分は、式(13)によって定義されるブランチメトリックとは異なるものであるが、以下の説明においては、表記を簡潔にするために、かかる加算部分をブランチメトリックと表記する。
まず、遷移前の状態と遷移後の状態を表記するそれぞれ2ビットの状態データ値を書き並べて4個の数字の列とする。次に、中央寄りの2個の(すなわち2番目と3番目の)数字を1個の数字とすることによって、3個の数字の列として、1リードクロックの間に生じ得るブランチメトリックを表記する。例えば状態遷移S11→S10に伴うブランチメトリックは、bm110と表記される。このようにして、図16中の6種類の状態遷移に対応するブランチメトリックを、図17に示すように表記できる。
図18は、この発明の実施の他の形態の全体構成を示すブロック図である。この発明の実施の他の形態は、光磁気ディスク装置に対してこの発明を適用したものである。図1等を参照して上述した光磁気ディスク装置の一例と同様の構成要素には、同一の符号を付した。記録系および図示しないサーボ系等については、図1に示す実施の一形態と同様である。光ピックアップ7からA/D変換器12までの再生系の構成および動作は、図1に示す実施の一形態と同様である。
ビタビ復号器130は、A/D変換器12から供給される再生信号値z〔k〕に基づいて、後述するようにして生成される、復号データおよび不一致検出信号NMを生成し、コントローラ2に供給する。コントローラ2は、上述した光磁気ディスク装置の一例と同様に、供給される復号データに基づく復号化処理を行い、ユーザデータおよびアドレスデータ等を再生し、さらに、キャリブレーションを制御する。また、コントローラ2内には計数手段が設けられ、不一致検出信号NMに基づいて状態データ間の不一致の数を計数する。
また、コントローラ2と接続されるCPU15は、上述した実施の一形態と同様に、LPC4に対してレーザパワー設定用の制御信号を供給し、光ピックアップ7の位置決め等を制御する。CPU15と接続されたレジスタ16には、再生系のパラメータとしてのアンプ8,9のゲイン、フィルタ11の等化特性、ビタビ復号器13のパスメモリのメモリ長を設定する制御データが格納される。制御データは、図5を参照して説明したようなキャリブレーションによってコントローラ2が発生し、CPU15を経由してレジスタ16に格納される。なお、メモリ長の設定は、キャリブレーションの結果に基づくものに限られない。例えば後述するマージブロックにおける状態データの不一致のカウントに基づいてメモリ長を設定しても良い。また、一つの光磁気ディスクを径方向に複数のゾーンに分割し、各ゾーンにおいて適切なメモリ長を設定するようにしても良い。
ビタビ復号器130は、BMC132,ACS133、SMU134およびマージブロック135から構成される。そして、これらの各構成要素には、PLL14からリードクロックDCK(以下、クロックと表記する)が供給され、動作タイミングが合わされる。SMU134に対してメモリ長を切り替えるために、切替え信号Sおよびレジスタ16からの制御データRegが供給される。
BMC132は、再生信号値z〔k〕に基づいてブランチメトリックを計算し、計算したブランチメトリックをACS133に供給する。
ACS133について、図19を参照して説明する。ACS133は、上述のACS21中の構成要素と、圧縮およびラッチ回路22中の構成要素とを含む構成とされる。このような構成が各状態に対応して設けられるので、4個のブロックから構成されることになる。そして、各サブブロックが出力する規格化パスメトリックの値が図16に示す状態遷移図に従って受け渡されるように接続されている。
この内、自身を継承し得る状態S00およびS11には、後述するA型サブブロックが対応する。図19においては、A型サブブロック140および142がそれぞれ状態S00およびS11に対応するよう図示した。また、自身を継承し得ない状態S01およびS10には、後述するB型サブブロックが対応する。図19においては、B型サブブロック141および143がそれぞれ状態S01およびS10に対応するよう図示した。
A型サブブロック142は、上述のACS21(図13参照)中の、選択信号の生成を行う部分の構成要素を有している。すなわち、2個の規格化パスメトリックの値を更新するための2個の加算器と、1個の比較器を有している。さらに、A型サブブロック140は、圧縮およびラッチ回路22と同様の動作を行う、更新されるパスメトリックの値を保持する手段を有している。
このようなA型サブブロック140には、BMC132からS00→S00に対応するブランチメトリックbm000、およびS10→S00に対応するブランチメトリックbm100がクロックに従って供給される。また、S10に対応するB型サブブロック143から1クロック前に更新された規格化パスメトリックM10の値を供給される。A型サブブロック140は、かかる1クロック前に更新された規格化パスメトリックM10の値にbm000の値を加算することによって、最新の遷移がS10→S00である場合の尤度の総和を計算する。
さらに、A型サブブロック140は、自身でラッチしている1クロック前の規格化パスメトリックM00の値にbm000の値を加算することによって、最新の遷移がS00→S00である場合の尤度の総和を計算する。
そして、A型サブブロック140は、このようにして計算される2個の尤度の総和を比較して、最尤な状態遷移を選択する。選択された状態遷移に対応する尤度の総和が更新された規格化パスメトリックM00の値としてラッチされ、且つ、選択結果に対応する選択信号SEL00が出力される。更新された規格化パスメトリックM00の値は、A型サブブロック140自身がラッチすると共に、S01に対応するB型サブブロック141に供給される。
状態S11に対応するA型サブブロック142は、A型サブブロック140と同様に構成される。但し、供給されるブランチメトリックは、図16中の状態遷移S11→S11およびS01→S11に対応するbm111およびbm011である。また、更新される規格化パスメトリックM11は、A型サブブロック142自身によってラッチされると共に、状態S10に対応するB型サブブロック143に供給される。
B型サブブロック141は、上述のACS21(図13参照)で、選択信号の生成を行わない部分の構成要素を有している。すなわち、1個のパスメトリックの値を更新するための1個の加算器を有している。さらに、B型サブブロック141は、圧縮およびラッチ回路22と同様の機能を有する、更新されるパスメトリックの値を保持する手段を有している。
このようなB型サブブロック141には、BMC132からS00→S01に対応するブランチメトリックbm001がクロックに従って供給される。また、S00に対応するA型サブブロック140から1クロック前に更新された規格化パスメトリックM00の値を供給される。B型サブブロック141は、かかる1クロック前に更新された規格化パスメトリックM00の値にbm001の値を加算することによって、最新の遷移がS00→S01である場合の尤度の総和を計算し、計算結果を更新された規格化パスメトリックM01としてラッチする。規格化パスメトリックM01の値は、クロックに従うタイミングで、S11に対応するA型サブブロック142に供給される。
状態S10に対応するB型サブブロック143は、B型サブブロック141と同様に構成される。但し、供給されるブランチメトリックは、状態遷移S11→S10に対応するbm110である。また、更新される規格化パスメトリックM10は、自身でラッチすると共に、状態S00に対応するA型サブブロック140に供給される。
また、各サブブロックは、クロックに従う各時点毎に更新される規格化パスメトリックの値を、規格化パスメトリック比較回路144に供給する。すなわち、A型サブブロック140,B型サブブロック141,A型サブブロック142およびB型サブブロック143は、それぞれ規格化パスメトリックM00,M01,M11およびM10の値を規格化パスメトリック比較回路144に供給する。規格化パスメトリック比較回路144は、これら4個の規格化パスメトリックの内で最小の値をとるものに対応する2ビットの信号MSを出力し、後述するマージブロック135に供給する。
次に、SMU134について図20を参照して説明する。上述した光磁気ディスク装置の一例中のPMU23が1ビットの復号データ値を単位とする処理を行うものであるのに対し、SMU134は、2ビットの状態データ値を単位とする処理を行うものである。
図20に示すように、SMU134は、2個のA型ステータスメモリ150および151、並びに2個のB型ステータスメモリ152および153を有している。さらにセレクト信号SEL00およびSEL11、クロック、並びに他のステータスメモリとの状態データの受渡し等のための信号線を接続されて構成される。A型ステータスメモリ150と151は、それぞれ、状態S00とS11に対応する。また、B型ステータスメモリ152と153は、それぞれ状態S01とS10に対応する。これら4個のステータスメモリ相互の接続は、図16の状態遷移図に従うものとされる。さらに、これらのステータスメモリ150〜153のメモリ長をヘッダエリアとデータエリアで切り替えるための切替え信号Sと、ヘッダエリア内でメモリ長を最適に設定するための制御データRegとが各ステータスメモリに供給される。
図21を参照して、状態S00に対応するA型ステータスメモリ150についてより詳細に説明する。A型ステータスメモリ150は、n個の処理段を有する。すなわち、n個のセレクタ2010・・・201n-1と、n個のレジスタ2020・・・202n-1とが交互に接続されている。各セレクタ2010〜201n-1には、セレクト信号SEL00が供給される。さらに、各セレクタには、上述したように、S10に対応するB型ステータスメモリ153から継承する状態データがnビットからなるSMinとして供給される。また、各レジスタには、上述したように、S01に対応するB型ステータスメモリ152に継承される状態データがn−1個の状態データ値からなるSMoutとして出力される。また、各レジスタ2020〜202n-1には、クロックが供給される。
一方、各セレクタの動作について説明する。図16に示すように、S00に遷移し得る1クロック前の状態は、S00およびS10の何れかである。1クロック前の状態がS00である時は、自身を継承する遷移がなされることになる。このため、1段目のセレクタ2010には、シリアルシフトによって生成される状態データ中の最新の状態データ値として、'00'が入力される。セレクタ2010には、パラレルロードとして、B型ステータスメモリ153から供給される状態データ中の最新の状態データ値SMin〔1〕が供給される。セレクタ2010は、上述の選択信号SEL00に従って、これら2個の状態データ値の内の1個を後段のレジスタ2020に供給する。
また、2段目以降の各セレクタ2011〜201n-1は、2個のデータすなわち、パラレルロードとしてS10に対応するB型ステータスメモリ153から供給される1個の状態データ値と、シリアルシフトとして前段のレジスタから供給される1個の状態データ値とを受取る。そして、これら2個の状態データの内から、選択信号SEL00に従って、最尤なものと判断された状態データ値を後段のレジスタに供給する。セレクタ2010〜201n-1が全て同一の選択信号SEL00に従うので、ACS133が選択する最尤な状態データ値の系列としての状態データが継承される。
さらに、各レジスタ2020〜202n-1は、上述したように供給される状態データ値をクロックに従って取込むことによって、保持している状態データ値を更新する。また、上述したように、各レジスタの出力は、1クロック後に遷移し得る状態に対応するステータスメモリに供給される。すなわち、S00自身に遷移し得るので、シリアルシフトとして後段のセレクタに供給される。また、パラレルロードとして、S01に対応するB型ステータスメモリ152に対して供給される。最終段のレジスタ202n-1から、n番目の状態データ値が出力される。
さらに、A型ステータスメモリ150から状態データ値VM00を取り出す場合、出力セレクタ203が設けられている。出力セレクタ203には、最初のレジスタ2020の出力から最終のレジスタ202n-1の出力までのn個の出力が供給される。出力セレクタ203を制御するためのセレクト信号がセレクト信号生成回路204により生成される。セレクト信号生成回路204に対しては、レジスタ16からの制御データRegおよび切替え信号Sが供給される。出力セレクタ203は、セレクト信号により一つの入力をVM00として選択する。
セレクト信号は、ヘッダエリアの再生信号を復号する場合には、所定のレジスタの出力を選択し、また、データエリアにおいては、制御データRegにより指示されるメモリ長となるように、所定のレジスタの出力を選択するように、出力セレクタ203を制御する。これによって、ヘッダエリアとデータエリアとで独立してメモリ長を設定でき、また、データエリアの再生時のメモリ長をキャリブレーションにより設定されるものとすることができる。
状態S11に対応するA型ステータスメモリ151は、A型ステータスメモリ150と同様に構成される。但し、図14中の状態遷移S01→S11に対応するパラレルロードとして、S01に対応するB型ステータスメモリ152から状態データが供給される。また、図14中の状態遷移S11→S10に対応するパラレルロードとして、S10に対応するB型ステータスメモリ153に状態データを供給する。
一方、図22を参照して、状態S01に対応するB型ステータスメモリ152についてより詳細に説明する。B型ステータスメモリは、図16において自身を継承せず、且つ、1クロック後に遷移し得る状態が1個だけである状態に対応するものである。このため、シリアルシフトを行わず、且つ、セレクタが設けられていない。従って、n個のレジスタ2120,2121,・・・212n-1が設けられ、各レジスタにクロックが供給されて動作タイミングが合わされる。
各レジスタ2120,2121,・・・212n-1には、S00に対応するA型ステータスメモリ150から継承する状態データがn−1個の状態データ値からなるSMinとして供給される。但し、最初の処理段となるレジスタ2120には、クロックに同期して常に'00'が入力される。かかる動作は、図16に示されるように、S01に遷移し得る最新の状態遷移が常にS00であることに対応している。各レジスタ2120〜212n-1は、供給される状態データ値をクロックに従って取込むことによって、保持している状態データ値を更新する。また、クロックに従ってなされる各レジスタの出力は、n−1個の状態データ値からなる状態データSMoutとして,1クロック後に遷移し得る状態S11に対応するA型ステータスメモリ151に供給される。最終段のレジスタ212n-1から、n番目の状態データが出力される。
さらに、状態データVM01を取り出す場合、出力セレクタ213が設けられている。出力セレクタ213には、最初のレジスタ2120の出力から最終のレジスタ212n-1の出力までのn個の出力が供給される。出力セレクタ213を制御するためのセレクト信号がセレクト信号生成回路214により生成される。セレクト信号生成回路214に対しては、レジスタ16からの制御データRegおよび切替え信号Sが供給される。出力セレクタ213は、セレクト信号により一つの入力をVM01として選択する。
セレクト信号は、ヘッダエリアの再生信号を復号する場合には、所定のレジスタの出力を選択し、また、データエリアにおいては、制御データRegにより指示されるメモリ長となるように、所定のレジスタの出力を選択するように、出力セレクタ213を制御する。これによって、ヘッダエリアとデータエリアとで独立してメモリ長を設定でき、また、データエリアの再生時のメモリ長をキャリブレーションにより設定されるものとすることができる。
状態S10に対応するB型ステータスメモリ153は、B型ステータスメモリ152と同様に構成される。但し、図16中の状態遷移S11→S10に対応するパラレルロードとして、S11に対応するA型ステータスメモリ151から状態データを供給される。また、図16中の状態遷移S10→S00に対応するパラレルロードとして、S00に対応するA型ステータスメモリ150に状態データを供給する。また、最初の処理段となるレジスタには、クロックに同期して、常に'11'が入力される。かかる動作は、図16に示すように、S10に遷移し得る1クロック前の状態がS11であることに対応するものである。
ところで、ビタビ復号方法においては、各ステータスメモリが生成する状態データ値は、本来、一致する。従って、SMU134中の4個のステータスメモリが生成する4個の状態データ値VM00,VM11,VM01およびVM10が一致するはずである。ところが、データの記録条件が良くない、または、記録媒体に物理的な欠陥が生じる等の原因によって再生RF信号の信号品質が低下する場合には、4個の状態データ値VM00,VM11,VM01およびVM10が互いに不一致となることがある。このような状態データ値間の不一致がある程度の確率で生じることを前提とし、不一致が生じた時に最も的確な状態データ値を選択する構成が設けられることが多い。後述するマージブロック135は、このような構成を含むものである。
また、ステータスメモリのメモリ長が一定の場合に、状態データ値間の不一致の数を計数できれば、計数値は、状態データおよびそれに基づいて生成される復号データの品質の評価に用いることができる。また、かかる計数値は、再生信号の信号品質、および再生系内の各構成要素の動作パラメータ等の再生信号に対する適応の程度を評価するためにも用いることができる。この発明の実施の形態では、この評価の結果に基づいて、パスメモリあるいは状態メモリのメモリ長を切り替えるようにしても良い。後述するマージブロック135には、このような計数を行う構成が含まれている。
図23を参照してマージブロック135について説明する。マージブロック135は、SMU134からクロックに従うタイミングで供給される状態データ値VM00,VM11,VM01およびVM10から的確なものを選択する状態選択回路250、状態選択回路250の出力を1クロック遅延させるレジスタ251、復号マトリクス部252、および状態データ値VM00,VM11,VM01およびVM10の不一致を検出する不一致検出回路253を有している。
状態選択回路250は、ACS133から上述したようにして供給される2ビットの信号MSを参照して、VM00,VM11,VM01およびVM10の内から最も的確なものを選択し、選択される状態データ値をVMとして出力する。かかる状態選択回路250は、図22に示すように、VMを選択する。このようにして、最も正しい状態データ値が選択される確率を高くすることができる。
上述したようにして選択されるVMは、レジスタ251および復号マトリクス部252に供給される。レジスタ251は、供給されるVMを1クロック遅延させて復号マトリクス部252に供給する。以下の説明においては、レジスタ251の出力をVMDと表記する。従って、復号マトリクス部252には、状態データ値VMおよびその1クロック前の状態データ値VMDが供給される。復号マトリクス部252は、図25に示す復号マトリクス(復号テーブル)に従って、VMおよびVMDに基づいて復号データ値を出力する。復号マトリクスは、ROMテーブルとして持っても良く、またはハードウエアの構成でも良い。このような動作がクロックに従うタイミングで行われることにより、復号データが生成される。
図25の復号マトリクスについて説明する。図16の状態遷移図から、復号データ値は、連続する2個の状態データ値に対応していることがわかる。例えば、時点tにおける状態データ値VMが'01'で、1クロック前の時点t−1における状態データ値VMDが'00'である場合には、復号データ値として'1'が対応する。このような対応をまとめたものが図25である。
一方、不一致検出回路253は、例えば排他的論理和回路を用いて構成することができる。不一致検出回路253には、VM00,VM11,VM01およびVM10が供給され、これら4個の状態データ値の間の不一致が検出される。検出結果が不一致検出信号NMとして出力される。不一致検出信号NMは、4個の状態データ値が全て一致する場合以外は、イネーブルまたはアクティブとされる。この発明の一実施例においては、不一致検出回路253をマージブロック135内に設けたが、SMU134から出力される全ての状態データを供給されることが可能な位置であれば、他の位置に設けても良い。
不一致検出信号NMは、4個の状態データ値が供給される毎に、すなわちクロックに従うタイミングで出力され、コントローラ2内に設けられる所定の計数手段に供給される。このような構成によって、4個の状態データ値の間に生じる不一致の数が所定期間、例えば1セクタ毎に計数される。不一致検出回路253を設けているのは、計数結果によって復号データの信頼性、再生信号の品質等を評価するためである。
上述したこの発明の実施の形態は、4値4状態ビタビ復号方法を行う光磁気ディスク装置にこの発明を適用したものである。これに対し、上述したような3値4状態ビタビ復号方法および7値6状態ビタビ復号方法等の他の種類のビタビ復号方法を行う光磁気ディスク装置にも、この発明を適用することができる。このような場合には、SMUが状態数と等しい数のステータスメモリを有するものとされる。
また、この発明は、記録媒体に記録されたデータから再生される再生信号から、リードデータを復号するためにビタビ復号方法を用いることができる情報再生装置に適用することができる。すなわち、光磁気ディスク(MO)以外にも、例えば相変化型ディスクPD、CD−E(CD−Erasable)等の書き換え可能ディスク、CD−R等の追記型ディスク、CD−ROM等の読み出し専用ディスク等の光ディスク装置に適用することが可能である。例えば相変化型ディスクPDの場合でも、アドレス等は、エンボス加工によって記録され、データは、相変化によりデータエリアに記録される。
また、この発明は、この実施例に限定されることなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の応用および変形が考えられる。
2・・・コントローラ、4・・・レーザパワーコントロール部(LPC)、6・・・光磁気ディスク、7・・・光ピックアップ、10・・・切替えスイッチ、11・・・フィルタ部、12・・・A/D変換器、13・・・ビタビ復号器、14・・・PLL部、20・・・ブランチメトリック計算回路(BMC)、21・・・加算、比較および選択回路(ACS)、22・・・圧縮およびラッチ回路、23・・・パスメモリユニット(PMU)、24・・・A型パスメモリ、25・・・B型パスメモリ、26・・・A型パスメモリ、27・・・B型パスメモリ、33・・・出力セレクタ、34・・・セレクト信号発生回路、35・・・出力セレクタ、36・・・セレクト信号発生回路、130・・・ビタビ復号器、132・・・ブランチメトリック計算回路(BMC)、133・・・加算、比較および選択回路(ACS)、134・・・ステ−タスメモリユニット(SMU)、135・・・マ−ジブロック、150・・・A型ステータスメモリ、151・・・A型ステータスメモリ、152・・・B型ステータスメモリ、153・・・B型ステータスメモリ、203・・・出力セレクタ、204・・・セレクト信号生成回路、213・・・出力セレクタ、214・・・セレクト信号生成回路