JP4048576B2 - 情報再生装置および再生方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば光磁気ディスク装置等の情報再生装置および再生方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
情報再生装置において、従来の一般的なPLLでは、再生RF信号のクロック周波数とVCOの発振周波数との差がある程度以内であれば、図22に示すように、両信号の周波数差に対応するビート信号が発生する。このビート信号の正の半周期において、VCOの発振周波数が再生RF信号のクロック周波数に接近し、負の半周期においては、逆に遠ざかる。このため、正の半周期は、負の半周期より緩やかに変化し、全体のDCレベルが正となる。このDC電圧が周波数差を小さくする方向にVCOを制御する。このようにして、周波数引込みが行われる。
【0003】
本願発明出願人は、例えばビタビ復号器内のA/D変換器によってサンプリングされるA/D変換値のMSB(Most Significant Bit) に基づいて位相誤差を検出する方法(MSB判定モード)を提案している。MSB判定モードによって生成される位相誤差信号は、再生RF信号のクロック周波数とVCOの発振周波数との間に差があるにもかかわらず、位相誤差信号の積分信号すなわち時間平均でみた位相誤差信号がゼロとなる場合がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような場合、再生RF信号のクロック周波数とは異なった周波数でPLLがロックしてしまう。かかる状況をフォールスロックと称するが、MSB判定モードは、原理的に、フォールスロックが生じる可能性を内在するモードである。
【0005】
このため、MSB判定モードを使用する際には、別の方法によって周波数引込みを行い、その後、MSB判定モードに移行して位相引込みを行うようにPLLを構成する必要がある。
【0006】
周波数引込みを行う方法として、例えば従来の一般的なPLL回路等、MSB判定モードを行うための構成とは異なる構成を用いるようにすると、装置全体の回路規模を増大させるという問題が生じる。
【0007】
従って、この発明の目的は、MSB判定モードによって生成される位相誤差信号に関連して、周波数引込みを行うことが可能な情報再生装置および再生方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、記録媒体に記録されている情報信号をビタビ復号方法によって復号するようにした情報再生装置であって、
記録媒体から再生される再生信号に基づいてPLLをロックさせることによってクロックを生成し、クロックに従うタイミングで再生系の動作を行うようにした情報再生装置において、
ビタビ復号方法を行うビタビ復号器の前段に設けられるA/D変換器からの所定ビット数の再生信号値中のMSBの反転が生じるタイミングに基づいて、再生信号の立ち上がりまたは立ち下がりエッジと対応する、位相誤差検出タイミングを生成する位相誤差検出タイミング生成手段と、
複数の位相誤差検出タイミングのうち、二箇所のタイミングに対応するサンプリングされたそれぞれの再生信号値を演算することによって第1の位相誤差信号を生成する第1の位相誤差信号生成手段と、
第1の位相誤差信号における、連続する2個の時点間での位相誤差信号の差としての微分信号を生成する微分信号生成手段と、
第1の位相誤差信号と、微分信号とに基づいて第2の位相誤差信号を生成し、第2の位相誤差信号をPLLに制御信号として供給する第2の位相誤差信号生成手段とを有し、
第2の位相誤差信号生成手段は、
第1の位相誤差信号の極性と微分信号の極性とが一致する第1の条件と、微分信号の絶対値が小さい第2の条件とが共に満たされる場合に、第1の位相誤差信号を第2の位相誤差信号として出力し、
第1および第2の条件の一方または両方が満たされない場合に、第1の位相誤差信号をミュートすることを特徴とする情報再生装置である。
【0009】
請求項7の発明は、記録媒体に記録されている情報信号をビタビ復号方法によって復号するようにした情報再生方法であって、
記録媒体から再生される再生信号に基づいてPLLをロックさせることによってクロックを生成し、クロックに従うタイミングで再生系の動作を行うようにした情報再生方法において、
ビタビ復号方法を行うビタビ復号器の前段に設けられるA/D変換器からの所定ビット数の再生信号値中のMSBの反転が生じるタイミングに基づいて、再生信号の立ち上がりまたは立ち下がりエッジと対応する、位相誤差検出タイミングを生成する位相誤差検出タイミングを生成するステップと、
複数の位相誤差検出タイミングのうち、二箇所のタイミングに対応するサンプリングされたそれぞれの再生信号値を演算することによって第1の位相誤差信号を生成する第1の位相誤差信号を生成するステップと、
第1の位相誤差信号における、連続する2個の時点間での位相誤差信号の差としての微分信号を生成するステップと、
第1の位相誤差信号と、微分信号とに基づいて第2の位相誤差信号を生成し、第2の位相誤差信号をPLLに制御信号として供給する第2の位相誤差信号を生成するステップを有し、
第2の位相誤差信号を生成するステップは、
第1の位相誤差信号の極性と微分信号の極性とが一致する第1の条件と、微分信号の絶対値が小さい第2の条件とが共に満たされる場合に、第1の位相誤差信号を第2の位相誤差信号として出力し、
第1および第2の条件の一方または両方が満たされない場合に、第1の位相誤差信号をミュートすることを特徴とする情報再生方法である。
【0010】
以上のような発明によれば、MSB判定モードによって生成される第1の位相誤差信号を利用して、周波数引込みを行うために使用できる第2の位相誤差信号を生成することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明の理解を容易とするために、ビタビ復号方法を行う再生系を有する記録/再生装置の一例について、装置の全体構成、記録媒体のセクタフォーマット、4値4状態ビタビ復号方法の概要、4値4状態ビタビ復号方法を実現するビタビ復号器の構成および動作、および4値4状態ビタビ復号方法以外のビタビ復号方法の順に説明する。
【0012】
〔ディスク記録再生装置の概要〕
以下、ビタビ復号方法を行う再生系を有する記録/再生装置の一例について説明する。図1は、ビタビ復号方法を行う再生系を有する光磁気ディスク装置の一例の全体構成を示すブロック図である。記録時には、コントローラ2がホストコンピュータ1の指令に従って、記録すべきユーザデータを受取り、情報語としてのユーザデータに基づいてエンコードを行って、符号語としてのRLL(1,7)符号を生成する。この符号語が記録データとしてレーザパワーコントロール部(以下、LPCと表記する)4に供給される。コントローラ2は、このような処理の他に、後述する復号化処理、および記録、再生、消去等の各モードの制御、並びにホストコンピュータ1との交信等の動作を行う。
【0013】
LPC4は、供給された記録データに対応して、光ピックアップ7のレーザパワーを制御して光磁気ディスク6上に磁気極性を有するピット列を形成することにより、記録を行う。この記録の際に、磁気ヘッド5が光磁気ディスク6にバイアス磁界を付与する。実際には、記録データに基づいて後述するように生成されるプリコード出力に従って、後述するようなマークエッジ記録が行われる。
【0014】
後述するように、記録位置すなわちピットの形成位置の制御は、磁気ヘッド5および光ピックアップ7等の位置決めを行う、図示しない手段によってなされる。このため、記録動作時においても、光ピックアップ7がアドレス部等を通過する際には、後述するような再生時の動作と同様な動作が行われる。
【0015】
上述したようにして形成される各ピットを、記録データに基づいて後述するようにして生成されるプリコード出力中の各ビットに対応させる方法について、図2を参照して説明する。プリコード出力中の、例えば'1' に対してピットを形成し、'0' に対してピットを形成しない記録方法をマーク位置記録方法と称する。一方、各ピットのエッジによって表現される、プリコード出力中の各ビットの境界における極性の反転を、例えば'1' に対応させる記録方法をマークエッジ記録方法と称する。再生時には、再生信号中の各ビットの境界は、後述するようにして生成されるリードクロックDCKに従って認識される。
【0016】
次に、再生系の構成および動作について説明する。光ピックアップ7は、光磁気ディスク6にレーザ光を照射し、それによって生じる反射光を受光して、再生信号を生成する。再生信号は、和信号、差信号、図示しないフォーカスエラー信号並びにトラッキングエラー信号の4種類の信号からなる。再生信号が得られる領域が物理的に形成されたアドレス部であるか、光磁気的に記録されたデータ部であるかに応じて、和信号または差信号が再生信号供給スイッチ8に供給される。
【0017】
再生信号供給スイッチ8には、コントローラ2から再生を指令するRGATE信号が供給される。再生信号供給スイッチ8は、RGATE信号がアクティブとされる時に、和信号または差信号をアンプ9に供給する。アンプ9は、供給される信号にゲイン調整等を施し、波形等化部11に供給する。
【0018】
一方、フォーカスエラー信号は、フォーカスエラーを解消する手段(図示せず)に供給される。また、トラッキングエラー信号は、図示しないサーボ系等に供給され、その動作において用いられる。
【0019】
波形等化部11は、ノイズカットを行うローパスフィルタおよび波形等化を行う波形等化器から構成される。後述するように、この際の波形等化処理において用いられる波形等化特性は、ビタビ復号器13が行うビタビ復号方法に適合するものとされる。波形等化部11の出力を供給されるA/D変換器12は、後述するようにして供給されるリードクロックDCKに従って再生信号値z〔k〕をサンプリングする。
【0020】
ビタビ復号器13は、再生信号値z〔k〕に基づいて、ビタビ復号方法によって復号データを生成する。かかる復号データは、上述したようにして記録される記録データに対する最尤復号系列である。従って、復号エラーが無い場合には、復号データは、記録データと一致する。
【0021】
復号データは、コントローラ2に供給される。上述したように、記録データは、ユーザデータからチャンネル符号化等の符号化によって生成された符号語である。従って、復号エラーレートが充分低ければ、復号データは、符号語としての記録データとみなすことができる。コントローラ2は、復号データに、上述のチャンネル符号化等の符号化に対応する復号化処理を施すことにより、ユーザデータ等を再生する。
【0022】
また、波形等化部11の出力は、PLL部14にも供給される。PLL部14は、供給された信号に基づいて、リードクロックDCKを生成する。リードクロックDCKは、コントローラ2、A/D変換器12、ビタビ復号器13等に供給される。コントローラ2、A/D変換器12、ビタビ復号器13の動作は、リードクロックDCKに従うタイミングでなされる。さらに、リードクロックDCKは、図示しないタイミングジェネレータに供給される。タイミングジェネレータは、例えば、記録/再生動作の切替え等の装置の動作タイミングを制御する信号を生成する。
【0023】
上述したような再生動作において、光磁気ディスク6から再生される再生信号に基いて、より正しい再生データを得るために、再生系の各構成要素の動作を再生信号の品質に応じて適正化することが行われる。このような操作をキャリブレーションと称する。キャリブレーションは、再生信号の品質等が例えば加工精度等の記録媒体の特性、および例えば記録用レーザ光のパワーの変動、周囲温度等の記録/再生時の条件等によって変化する可能性があることに対応するために再生系のパラメータを適正化するためのものである。
【0024】
キャリブレーションの内容は、例えば光ピックアップ7の読取り用レーザ光パワーの調整、アンプ9のゲインの調整、波形等化部11の波形等化特性の調整、およびビタビ復号器13の動作において用いられる振幅基準値の調整等である。このようなキャリブレーションは、電源投入直後または記録媒体の交換時等に、図1中には図示しない構成によって行われる。
【0025】
〔記録媒体のセクタフォーマットの概要〕
光磁気ディスク6には、セクタを記録/再生の単位としてユーザデータが記録される。図3を参照して、光磁気ディスク6において用いられるセクタフォーマットの一例について説明する。図3Aに示すように、1セクタは、記録/再生の順に従って、ヘッダ、ALPC,ギャップ、VFO3 、シンク、データフィールド、バッファの各エリアに区分されている。図3中に付した数字は、バイト数を表す。光磁気ディスク6上には、ブロック符号化等の符号化がなされたデータが記録される。例えば8ビットが12チャンネルビットに変換されて記録される。
【0026】
このセクタフォーマットの一例においては、ユーザデータ量が1024バイトのフォーマットと、ユーザデータ量が512バイトのフォーマットとが用意されている。ユーザデータ量が1024バイトのフォーマットでは、データフィールドのバイト数が670バイトとされる。また、ユーザデータ量が512バイトのフォーマットでは、データフィールドのバイト数が1278バイトとされる。これら2つのセクタフォーマットにおいて、63バイトのプリフォーマットされたヘッダと、ALPC,ギャップエリアの18バイトは、同一とされている。
【0027】
図3Bは、63バイトのヘッダを拡大して示す。ヘッダは、セクタマークSM(8バイト)、VFOフィールドのVFO1 (26バイト)、アドレスマークAM(1バイト)、IDフィールドのID1 (5バイト)、VFOフィールドのVFO2 (16バイト)、アドレスマークAM(1バイト)、IDフィールドのID2 (5バイト)、およびポストアンブルPA(1バイト)が順に配列された構成とされている。
【0028】
図3Cは、18バイトのALPC,ギャップエリアを拡大して示す。18バイトは、ギャップフィールド(5バイト)、フラグフィールド(5バイト)、ギャップフィールド(2バイト)、ALPC(6バイト)からなる。
【0029】
次に、これらのフィールドについて説明する。セクタマークSMは、セクタの開始を識別するためのマークであり、RLL(1,7)符号において生じないエンボス加工によって形成されたパターンを有する。VFOフィールドは、上述のPLL部18中のVFO(Variable Frequency Oscillator) を同期させるためのもので、VFO1 、VFO2 およびVFO3 からなる。VFO1 およびVFO2 は、エンボス加工によって形成されている。また、VFO3 は、そのセクタに対して記録動作が行われる際に光磁気的に書かれる。VFO1 、VFO2 およびVFO3 は、それぞれチャンネルビットの'0' と'1' が交互に現れるパターン(2Tパターン)を有する。従って、1チャンネルビットの時間長に対応する時間をTとすると、VFOフィールドを再生した時に、2T毎にレベルが反転する再生信号が得られる。
【0030】
アドレスマークAMは、後続のIDフィールドのためのバイト同期を装置に対して与えるために使用され、RLL(1,7)符号において生じないエンボスされたパターンを有する。IDフィールドは、セクタのアドレス、すなわち、トラック番号およびセクタ番号の情報と、これらの情報に対するエラー検出用のCRCバイトを有する。IDフィールドは、5バイトからなる。ID1 およびID2 によって、同一のアドレス情報が二重に記録される。ポストアンブルPAは、チャンネルビットの'0' と'1' とが交互に現れるパターン(2Tパターン)を有する。ID1 、ID2 およびポストアンブルPAも、エンボス加工によって形成されている。このように、ヘッダの領域は、エンボス加工によりピットが形成されたプリフォーマットされた領域である。
【0031】
図3Cは、ALPC,ギャップエリアを拡大して示す。ギャップには、ピットが形成されない。最初のギャップフィールド(5バイト)は、プリフォーマットされたヘッダの後の最初のフィールドであり、これによって、ヘッダの読取りを完了した後の処理に装置が要する時間が確保される。2番目のギャップフィールド(2バイト)は、後のVFO3 の位置のずれを許容するためのものである。
【0032】
ALPC,ギャップエリアには、5バイトのフラグフィールドが記録される。フラグフィールドは、セクタのデータが記録される時に、連続した2Tパターンが記録される。ALPC(Auto Laser Power Control)フィールドは、記録時のレーザパワーをテストするために設けられている。シンクフィールド(4バイト)は、続くデータフィールドのためのバイト同期を装置が得るために設けられており、所定のビットパターンを有する。
【0033】
データフィールドは、ユーザデータを記録するために設けられる。上述した670バイトのデータフィールドには、512バイトのユーザデータと、144バイトのエラー検出、訂正用のパリティ等と、12バイトのセクタ書込みフラグと、2バイト(FF)とからなる。また、1278バイトのデータフィールドの場合には、1024バイトのユーザデータと、242バイトのエラー検出、訂正用のパリティ等と、12バイトのセクタ書込みフラグとからなる。セクタの最後のバッファフィールドは、電気的、あるいは機械的な誤差に対する許容範囲として使用される。
【0034】
上述したセクタフォーマットの例において、ヘッダは、エンボス加工によりピットが形成されたエリアである。また、ALPC,ギャップエリアは、再生時には、使用されないエリアである。さらに、VFO3 、シンクフィールドおよびデータフィールドは、光磁気記録されたデータのエリアである。
【0035】
〔4値4状態ビタビ復号方法の概要〕
以下、ビタビ復号器13によって行われるビタビ復号方法について説明する。上述したように、ユーザデータは、様々な符号化方法によって記録データとしての符号語に変換される。符号化方法は、記録媒体の性質および記録/再生方法等に応じて適切なものが採用される。光磁気ディスク装置においては、ブロック符号化において、Run Lengthすなわち'1' と'1' の間の'0' の数を制限するRLL(Run Length Limited)符号化方法が用いられることが多い。従来から幾つかのRLL符号化方法が用いられている。一般に、'1' と'1' の間の'0' の数を最小でd個、最大でk個とするm/nブロック符号をRLL(d,k;m,n)符号と称する。
【0036】
例えば、2/3ブロック符号において、'1' と'1' の間の'0' の数を最小で1個、最大で7個とするブロック符号化方法は、RLL(1,7;2,3)符号である。一般にRLL(1,7;2,3)符号をRLL(1,7)符号と称することが多いので、以下の説明においても単にRLL(1,7)符号と表記した場合には、RLL(1,7;2,3)符号を指すことにする。
【0037】
このようなRLL符号化方法と、上述したマークエッジ記録方法との組合わせによって記録されたデータから再生される再生信号を復号するために、ビタビ復号方法を用いることができる。
【0038】
このようなRLL符号化方法は、記録密度の向上、および再生動作の安定性の確保という2つの観点から、符号化方法に要求される条件に対応できるものである。まず、上述したように、マークエッジ記録方法は、記録データに基づいて後述するように生成されるプリコード出力における'1' を各ピットのエッジによって表現される極性の反転に対応させるものなので、'1' と'1' の間の'0' の数を多くする程、各ピット1個当たりに記録されるビット数を大きくすることができる。従って、記録密度を大きくすることができる。
【0039】
一方、再生系の動作タイミングを合わせるために必要なリードクロックDCKは、上述したように、再生信号に基づいてPLL部14によって生成される。このため、記録データにおいて'1' と'1' の間の'0' の数を多くすると、再生動作の際にPLL部の動作が不安定となるので、再生動作全体が不安定なものとなる。
【0040】
これら2つの条件を考慮すると、'1' と'1' の間の'0' の数は、多過ぎたり、少な過ぎたりしない、適切な範囲内に設定される必要がある。このような、記録データ中の'0' の数の設定に関して、RLL符号化方法が有効となる。
【0041】
ところで、図4に示すように、上述したRLL(1,7)符号化方法とマークエッジ記録方法の組み合わせにおいては、記録データに基づいて生成されるプリコード出力中の'1' と'1' の間に最低1個の'0' が含まれるので、最小反転幅が2となる。このような、最小反転幅が2となる符号化方法が用いられる場合に、符号間干渉およびノイズ等の影響を受けている再生信号から記録データを復号する方法として、後述するように、4値4状態ビタビ復号方法を適用することができる。
【0042】
上述したように、再生信号には、波形等化部11によって波形等化処理がなされる。ビタビ復号方法の前段としてなされるこのような波形等化処理には、符号間干渉を積極的に利用するパーシャルレスポンス方法が用いられる。この際に用いられる波形等化特性は、一般に(1+D)n で表されるパーシャルレスポンス特性の内から、記録/再生系の線記録密度およびMTF(Modulation Transfer Function)を考慮して決められる。上述したRLL(1,7)符号化方法とマークエッジ記録方法の組み合わせによって記録されたデータに対して、PR(1,2,1)を用いる波形等化処理は、4値4状態ビタビ復号方法の前段となる。
【0043】
一方、マークエッジ記録方法においては、光磁気ディスク媒体等に対する実際の記録に先立って、上述のRLL符号化等によって符号化された記録データに基づくプリコードが行われる。各時点kにおける記録データ列をa〔k〕、これに基づくプリコード出力をb〔k〕とすると、プリコードは、以下のように行われる。
【0044】
b〔k〕=mod2{a〔k〕+b〔k−1〕} (1)
このようなプリコード出力b〔k〕が実際に光磁気ディスク媒体等に記録される。一方、波形等化部11中の波形等化器によってなされる、波形等化特性PR(1,2,1)での波形等化処理について説明する。但し、以下の説明においては、信号の振幅を規格化せずに、波形等化特性をPR(B,2A,B)とする。また、ノイズを考慮しない場合の再生信号の値をc〔k〕と表記する。さらに、ノイズを含む実際の再生信号(すなわち、記録媒体から再生された再生信号)をz〔k〕と表記する。
【0045】
PR(B,2A,B)は、ある時点kにおける再生信号の値に対して、時点kにおける振幅の寄与が振幅値の2A倍とされ、さらに前後の時点k−1およびk+1における振幅の寄与が各々の時点での信号の振幅のB倍とされるものである。従って、再生信号の値の最大値は、時点k−1、k、k+1において何れもパルスが検出される場合である。このような場合には、再生信号の値の最大値は、以下のようになる。
【0046】
B+2A+B=2A+2B
また、再生信号の値の最小値は0となる。但し、実際の取り扱いにおいては、c〔k〕として、DC成分のA+Bを差し引いた以下のようなものが用いられる。
【0047】
従って、ノイズを考慮しない場合の再生信号c〔k〕は、A+B,A,−A,−A−Bの内の何れかの値をとることになる。一般に、再生信号の性質を示す方法の1つとして、例えば5個の時点を単位として、再生信号を多数重ね合わせたものをアイパターンと称する。この発明を適用することができる光磁気ディスク装置において、PR(B,2A,B)の下で波形等化処理された実際の再生信号z〔k〕についてのアイパターンの一例を図5に示す。図5から各時点における再生信号z〔k〕の値は、ノイズによるばらつきを有するが、ほぼ、A+B,A,−A,−A−Bの内の何れかになることが確認できる。後述するように、A+B,A,−A,−A−Bの値は、識別点として用いられる。
【0048】
上述したような波形等化処理がなされた再生信号を復号する、ビタビ復号方法の概略は、次のようなものである。ステップ▲1▼符号化方法および記録媒体に対する記録方法に基づいて、生じ得る全ての状態を特定する。ステップ▲2▼ある時点における各状態を起点として、次の時点において生じ得る全ての状態遷移と、各状態遷移が生じる時の記録データa〔k〕および再生信号の値c〔k〕を特定する。
【0049】
ステップ▲1▼および▲2▼の結果として特定された全ての状態および状態遷移と、各状態遷移が生じる時の〔記録データの値a〔k〕/再生信号の値c〔k〕〕を図の形式で表現したものを状態遷移図と称する。後述するように、4値4状態ビタビ復号方法における状態遷移図は、図7に示すようなものである。そして、この状態遷移図に基づく復号動作を行うように、ビタビ復号器13が構成される。
【0050】
さらに、ステップ▲3▼上述したように、状態遷移図を前提として、記録媒体から各時点kにおいて再生される再生信号z〔k〕に基づく最尤な状態遷移が選択される。但し、上述したように、z〔k〕は、ビタビ復号器13に供給される前段において波形等化されたものである。このような最尤な状態遷移の選択がなされる毎に、選択された状態遷移に対応して、状態遷移図に記載された記録データa〔k〕の値を復号値とすることによって、記録データに対する最尤復号値系列としての復号データa' 〔k〕を得ることができる。
【0051】
但し、各時点kにおける復号データ値から、最尤復号値系列とするための構成は、後述するビタビ復号器13中のPMU23である。従って、上述したように、復号データ列a' 〔k〕は、復号エラーが無い場合には、記録データ列a〔k〕と一致する。上述のステップ▲1▼〜ステップ▲3▼について、以下に詳細に説明する。
【0052】
上述のステップ▲1▼について説明する。まず、ここで用いられる状態として、ある時点kにおける状態を、時点kおよびそれ以前のプリコード出力を用いて次のように定義する。すなわち、n=b〔k〕、m=b〔k−1〕、l=b〔k−2〕の時の状態をSnml と定義する。このような定義によって、23 =8個の状態があると考えられるが、上述したように、実際に生じ得る状態は、符号化方法等に基づいて制限される。
【0053】
RLL(1,7)符号として符号化された記録データ列a〔k〕においては、'1' と'1' の間に最低1個の'0' が含まれるので、2個以上の'1' が連続することが無い。記録データ列a〔k〕に課されるこのような条件に基づいてプリコード出力b〔k〕について一定の条件が課され、その結果として生じ得る状態に制限が加えられる。
【0054】
このような制限について具体的に説明する。上述したようにRLL(1,7)符号化によって生成される記録データ列中に、2個以上の'1' が連続するもの、すなわち以下のものはあり得ない。
【0055】
a〔k〕=1,a〔k−1〕=1,a〔k−2〕=1 (3)
a〔k〕=1,a〔k−1〕=1,a〔k−2〕=0 (4)
a〔k〕=0,a〔k−1〕=1,a〔k−2〕=1 (5)
記録データ列に課されるこのような条件に基づいて、上述の(1)式に従ってb〔k〕について課される条件について検討すると、S010およびS101の2個の状態は生じ得ないことがわかる。従って、生じ得る状態は、23 −2=6個である。
【0056】
次に、ステップ▲2▼について説明する。ある時点jにおける状態を起点として、次の時点j+1において生じ得る状態を求めるためには、時点j+1における記録データの値a〔j+1〕が1となる場合、および0となる場合に分けて調べる必要がある。
【0057】
ここでは、時点jにおける状態がS000である場合を例として説明する。上述の(1)式に従って、S000すなわちn=b〔j〕=0,l=b〔j−1〕=0,m=b〔j−2〕=0とプリコードされる記録データは、以下の(7)である。
【0058】
a〔j〕=0、a〔j−1〕=0、a〔j−2〕=0 (7)
〔a〔j+1〕='1' の時〕
この時、b〔j+1〕が(1)式に従って以下のように計算される。
【0059】
次の時点j+1での状態Snlm については、n=b〔j+1〕,l=b〔j〕,m=b〔j−1〕である。そして、(8)からb〔j+1〕=1であり、また、b〔j〕=0,b〔j−1〕=0なので、次の時点j+1における状態は、S100である。従って、a〔j+1〕='1' の場合には、S000→S100という遷移が生じることが特定できる。
【0060】
また、再生信号c〔j+1〕の値は、上述の(2)式に従って、次のように計算される。
【0061】
以上のことから、時点jで状態S000である場合において、新たな再生信号値c〔j+1〕の値が誤差の範囲内で−Aである時には、状態遷移S000→S100が生じ、復号データ値として、a〔j+1〕の値'1' が得られることがわかる。
【0062】
〔a〔j+1〕='0' の時〕
この時、(1)式に従って、b〔j+1〕が以下のように計算される。
【0063】
次の時点j+1での状態Snlm については、n=b〔j+1〕,l=b〔j〕,m=b〔j−1〕である。そして、(10)からb〔j+1〕=0であり、また、b〔j〕=0,b〔j−1〕=0なので、次の時点j+1における状態は、S000である。従って、a〔j+1〕='0' の場合には、S000→S100という遷移が生じることが特定できる。
【0064】
また、再生信号c〔j+1〕の値は、上述の(2)式に従って、次のように計算される。
【0065】
以上のことから、時点jで状態S000である場合において、新たな再生信号値c〔j+1〕の値が誤差の範囲内で−A−Bである時には、状態遷移S000→S000が生じ、復号データ値として、a〔j+1〕の値'0' が得られることがわかる。
【0066】
このようにして、時点jにおけるS000以外の各状態についても、それらを起点として次の時点j+1において生じ得る状態遷移と、そのような各状態遷移が生じる時の記録データ値a〔j+1〕および再生信号値c〔j+1〕との対応を求めることができる。
【0067】
上述したようにして、各状態について、それらを起点として生じ得る状態遷移と、各状態遷移が生じる時の記録データの値および再生信号の値との対応を求め、図の形式に表したものが図6である。上述の時点jおよびj+1は、特別の時点ではない。従って、上述したようにして求まる、生じ得る状態遷移とそれらに伴う記録データの値および再生信号の値との対応は、任意の時点において適用することができる。このため、図6においては、任意の時点kにおいて生じる状態遷移に伴う記録データの値をa〔k〕と表記し、再生信号の値をc〔k〕と表記する。
【0068】
図6において、状態遷移は、矢印によって表される。また、各矢印に付した符号が〔記録データ値a〔k〕/再生信号値c〔k〕〕を示している。状態S000,S001,S111およびS110を起点とする状態遷移は、2通り有るのに対して、状態S011およびS100を起点として生じ得る遷移は1通りのみである。
【0069】
さらに、図6においてS000とS001は、何れもa〔k〕=1に対しては、c〔k〕=−Aという値を取り、S100に遷移している。一方、a〔k〕=0に対しては、c〔k〕=−A−Bという値を取り、S000に遷移している。また、S111とS110も同様に、同じa〔k+1〕の値について同じc〔k+1〕の値を取り、且つ、同じ状態に遷移している。従って、S000とS001をまとめてS0と表現し、S111とS110をまとめてS2と表現することができる。さらに、S011をS3とし、S100をS1と表現することにして、整理したものが図7である。
【0070】
上述したように、図7が4値4状態ビタビ復号方法に用いられる状態遷移図である。図7中には、S0〜S3の4個の状態、および再生信号c〔k+1〕の値としての−A−B,−A,A,A+Bの4個の値が示されている。状態S0およびS2を起点とする状態遷移は、2通り有るのに対して、状態S1およびS3を起点とする状態遷移は、1通りのみである。
【0071】
一方、状態遷移を時間に沿って表現する形式として、図8に示すようなトレリス線図が用いられる。図8では、2個の時点間の遷移を示しているが、さらに多数の時点間の遷移を示すこともできる。時間経過に伴い、順次右の時点に遷移していく様子が表現される。従って、水平な矢印は、例えばS0→S0等の同じ状態への遷移を表し、斜めの矢印は、例えばS1→S2等の異なる状態への遷移を表すことになる。
【0072】
上述したビタビ復号方法のステップ▲3▼、すなわち図7に示した状態遷移図を前提として、ノイズを含む実際の再生信号z〔k〕から最尤な状態遷移を選択する方法について以下に説明する。
【0073】
最尤な状態遷移を選択するためには、まず、ある時点kにおける状態について、その状態に至る過程において経由してきた複数時点間の状態遷移の尤度の和を計算し、さらに、計算された尤度の和を比較して、最尤の復号系列を選択することが必要である。このような尤度の和をパスメトリックと称する。
【0074】
パスメトリックを計算するためには、まず、隣接する時点間の状態遷移の尤度を計算することが必要となる。このような尤度の計算は、上述の状態遷移図を参照して、再生信号z〔k〕の値に基づいて以下のようになされる。まず、一般的な説明として、時点k−1において、状態Saである場合について考える。この時、ビタビ復号器31に再生信号z〔k〕が入力された場合に、状態Sbへの状態遷移が生じる尤度が次式に従って計算される。但し、状態Saおよび状態Sbは、図7の状態遷移図に記載されている4個の状態の何れかとする。
【0075】
(z〔k〕−c(Sa,Sb))2 (12)
上式において、c(Sa,Sb)は、状態Saから状態Sbへの状態遷移について、図7の状態遷移図に記載されている再生信号の値である。すなわち、上述の図7において、例えば状態遷移S0→S1について、−Aと算出されている値である。従って、式(12)は、ノイズを含む実際の再生信号z〔k〕の値と、ノイズを考慮せずに計算された再生信号c(Sa,Sb)の値の間のユークリッド距離となる。ある時点におけるパスメトリックは、その時点に至るまでのこのような隣接時点間の状態遷移の尤度の総和として定義される。
【0076】
ところで、時点kにおいて状態Saである場合を考える。この場合に、時点k−1において状態Saに遷移し得る状態をSpとすれば、パスメトリックL(Sa,k)は、時点k−1におけるパスメトリックを用いて次式のように計算される。
【0077】
L(Sa,k)
=L(Sp,k−1)+(z〔k〕−c(Sp,Sa))2 (13)
すなわち、時点k−1において状態Spに至った場合のパスメトリックL(Sp,k−1)と、時点k−1と時点kの間で生じるSp→Saなる状態遷移の尤度(z〔k〕−c(Sp,Sa))2 とを加算することによって、パスメトリックL(Sa,k)が計算される。この(z〔k〕−c(Sp,Sa))2 のような、最新の状態遷移の尤度は、ブランチメトリックと称される。但し、ここでのブランチメトリックは、後述するビタビ復号器13中のブランチメトリック計算回路(BMC)20によって計算されるブランチメトリック、すなわち、規格化メトリックに対応するブランチメトリックとは、別のものであることに注意が必要である。
【0078】
また、時点kにおいて状態Saである場合に、時点k−1において状態Saに遷移し得る状態が複数個存在することがある。図7においては、状態S0およびS2がこのような場合である。すなわち時点kにおいて状態S0である場合に、時点k−1において状態S0に遷移し得る状態は、S0とS3の2個である。また、時点kにおいて状態S2である場合に、時点k−1において状態S2に遷移し得る状態は、S1とS2の2個である。一般的な説明として、時点kにおいて状態Saであり、且つ、時点k−1において状態Saに遷移し得る状態がSpおよびSqの2個である場合に、パスメトリックL(Sa,k)は、次式のように計算される。
【0079】
すなわち、時点k−1において状態Spであり、Sp→Saなる状態遷移によって状態Saに至った場合と、時点k−1において状態Sqであり、Sq→Saなる状態遷移によって状態Saに至った場合の各々について、尤度の和を計算する。そして、各々の計算値を比較し、より小さい値を時点kにおける状態Saに関するパスメトリックL(Sa,k)とする。
【0080】
このようなパスメトリックの計算を、図7を用いて上述した4値4状態について具体的に適用すると、時点kにおける各状態S0,S1,S2およびS3についてのパスメトリックL(0,k),L(1,k),L(2,k)およびL(3,k)は、時点k−1における各状態S0〜S3についてのパスメトリックL(0,k−1)〜L(3,k−1)を用いて以下のように計算できる。
【0081】
上述したように、このようにして計算されるパスメトリックの値を比較して、最尤な状態遷移が選択されれば良い。ところで、最尤な状態遷移を選択するためには、パスメトリックの値そのものを計算しなくても、パスメトリックの値の比較ができれば良い。そこで、実際の4値4状態ビタビ復号方法においては、パスメトリックの代わりに以下に定義するような規格化パスメトリックを用いることにより、各時点kにおけるz〔k〕に基づく計算を容易なものとするようになされる。
【0082】
m(i,k)
=〔L(i,k)−z〔k〕2 −(A+B)2 〕/2/(A+B)(19)
式(19)をS0〜S3の各状態に適用すると、具体的な規格化パスメトリックは、以下のように2乗計算を含まないものとなる。このため、後述する、加算、比較、選択回路(ACS)21における計算を容易なものとすることができる。
【0083】
但し、式(20)〜(23)中のαおよびβは、以下のようなものである。
【0084】
α=A/(A+B) (24)
β=B×(B+2×A)/2/(A+B) (25)
このような規格化パスメトリックに基づく4値4状態ビタビ復号方法における状態遷移の条件について図9に示す。上述の4個の規格化パスメトリックの内に、2個から1個を選択する式が2つあるので、2×2=4通りの条件がある。
【0085】
〔4値4状態ビタビ復号器の概要〕
上述した4値4状態ビタビ復号方法を実現するビタビ復号器13について以下に説明する。図10にビタビ復号器13の全体構成を示す。ビタビ復号器13は、ブランチメトリック計算回路(以下、BMCと表記する)20、加算、比較および選択回路(以下、ACSと表記する)21、圧縮およびラッチ回路22およびパスメモリユニット(以下、PMUと表記する)23から構成される。これらの各構成要素に対して上述のリードクロックDCK(以下の説明においては、単にクロックと表記する)が供給されることにより、ビタビ復号器13全体の動作タイミングが合わされる。以下、各構成要素について説明する。
【0086】
BMC20は、入力される再生信号z〔k〕に基づいて、規格化パスメトリックに対応するブランチメトリックの値BM0,BM1,BM2およびBM3を計算する。BM0〜BM3は、上述の式(20)〜(23)の規格化パスメトリックを計算するために必要とされる、以下のようなものである。
【0087】
BM0=z(k) (26)
BM1=α×z〔k〕−β (27)
BM2=−z(k) (28)
BM3=−α×z〔k〕−β (29)
この計算に必要なαおよびβは、上述の式(24)および(25)に従ってBMC20によって計算される基準値である。かかる計算は、例えば再生信号z〔k〕に基づくエンベロープ検出等の方法で検出され、BMC20に供給される識別点−A−B,−A,AおよびA+Bの値に基づいてなされる。
【0088】
BM0〜BM3の値は、ACS21に供給される。一方、ACS21は、後述するような圧縮およびラッチ回路22から、1クロック前の規格化パスメトリックの値(但し、後述するように圧縮のなされたもの)M0,M1,M2およびM3を供給される。そして、M0〜M3と、BM0〜BM3とを加算して、後述するようにして、最新の規格化パスメトリックの値L0,L1,L2およびL3を計算する。M0〜M3が圧縮のなされたものであるため、L0〜L3を計算する際のオーバーフローを避けることができる。
【0089】
さらに、ACS21は、最新の規格化パスメトリックの値L0〜L3に基づいて、後述するように、最尤な状態遷移を選択し、また、選択結果に対応して、パスメモリ23に供給される選択信号SEL0およびSEL2を'High'または'Low' とする。
【0090】
また、ACS21は、L0〜L3を圧縮およびラッチ回路22に供給する。圧縮およびラッチ回路22は、供給されるL0〜L3を圧縮した後にラッチする。その後、1クロック前の規格化パスメトリックM0〜M3としてACS21に供給する。
【0091】
この際の圧縮の方法としては、例えば以下に示すように、最新の規格化パスメトリックL0〜L3から、そのうちの1個、例えばL0を一律に差し引く等の方法が用いられる。
【0092】
M0=L0−L0 (30)
M1=L1−L0 (31)
M2=L2−L0 (32)
M3=L3−L0 (33)
この結果として、M0が常に0の値をとることになるが、以下の説明においては、一般性を損なわないために、このままM0と表記する。式(30)〜(33)によって計算されるM0〜M3の値の差は、L0〜L3の値の差と等しいものとなる。上述したように、最尤な状態遷移の選択においては、規格化パスメトリック間の値の差のみが問題となる。従って、このような圧縮方法は、最尤な状態遷移の選択結果に影響せずに規格化パスメトリックの値を圧縮し、オーバーフローを防止する方法として有効である。このように、ACS21と圧縮およびラッチ回路22は、規格化パスメトリックの計算に関するループを構成する。
【0093】
上述のACS21について、図11を参照してより詳細に説明する。ACS21は、6個の加算器51、52、53、54、56、58および2個の比較器55、57から構成される。一方、上述したようにACS21には、1クロック前の圧縮された規格化パスメトリックの値M0〜M3および規格化パスメトリックに対応するブランチメトリックの値BM0〜BM3が供給される。
【0094】
加算器51には、M0およびBM0が供給される。加算器51は、これらを加算して以下のようなL00を算出する。
【0095】
L00=M0+BM0 (34)
上述したように、M0は、時点k−1において状態S0に至った場合に、経由してきた状態遷移の総和に対応する圧縮された規格化パスメトリックである。また、BM0は、時点kにおいて入力される再生信号z〔k〕に基づいて上述の(26)式に従って計算されるもの、すなわちz〔k〕の値そのものである。従って、式(34)の値は、上述したような圧縮の作用の下に、上述の式(20)中のm(0,k−1)+z〔k〕の値を計算したものとなる。すなわち、時点k−1において状態S0であり、時点kにおける状態遷移S0→S0によって最終的に状態遷移S0に至った場合に対応する計算値である。
【0096】
一方、加算器52には、M3およびBM1が供給される。加算器51は、これらを加算して以下のようなL30を算出する。
【0097】
L30=M3+BM1 (35)
上述したように、M3は、時点k−1において状態S3に至った場合に、経由してきた状態遷移の総和に対応する、圧縮された規格化パスメトリックである。また、BM1は、時点kにおいて入力される再生信号z〔k〕に基づいて上述の(27)式に従って計算されるもの、すなわちα×z〔k〕−βである。従って、式(35)の値は、上述したような圧縮の作用の下に、上述の式(20)中のm(3,k−1)+α×z〔k〕−βの値を計算したものとなる。すなわち、時点k−1において状態S3であり、時点kにおける状態遷移S3→S0によって最終的に状態遷移S0に至った場合に対応する計算値である。
【0098】
上述のL00およびL30は、比較器55に供給される。比較器55は、L00およびL30の値を比較し、小さい方を最新の規格化パスメトリックL0とすると供に、選択結果に応じて、上述したように選択信号SEL0の極性を切替える。このような構成は、式(20)において、最小値が選択されることに対応するものである。すなわち、L00<L30の場合(この時は、S0→S0が選択される)に、L00をL0として出力し、且つ、SEL0を例えば、'Low' とする。また、L30<L00の場合(この時は、S3→S0が選択される)には、L30をL0として出力し、且つ、SEL0を例えば'High'とする。SEL0は、後述するように、状態S0に対応するA型パスメモリ24に供給される。
【0099】
このように、加算器51、52および比較器55は、上述の式(20)に対応して、S0→S0とS3→S0の内から、時点kにおける状態遷移として最尤なものを選択する動作を行う。そして、選択結果に応じて、最新の規格化パスメトリックL0および選択信号SEL0を出力する。
【0100】
また、加算器56には、M0およびBM1が供給される。加算器51は、これらを加算して以下のようなL1を算出する。
【0101】
L1=M0+BM1 (36)
上述したように、M0は、時点k−1において状態S0に至った場合に、経由してきた状態遷移の総和に対応する圧縮された規格化パスメトリックである。また、BM1は、時点kにおいて入力される再生信号z〔k〕に基づいて上述の(27)式に従って計算されるもの、すなわちα×z〔k〕−βである。従って、式(36)の値は、上述したような圧縮の作用の下に、上述の式(21)の右辺m(0,k−1)+α×z〔k〕−βの値を計算したものとなる。
【0102】
すなわち、時点k−1において状態S0であり、時点kにおける状態遷移S0→S1によって最終的に状態遷移S1に至った場合に対応する計算値である。式(21)が値の選択を行わないことに対応して、加算器56の出力がそのまま最新の規格化パスメトリックL1とされる。
【0103】
加算器53には、M2およびBM2が供給される。加算器53は、これらを加算して以下のようなL22を算出する。
【0104】
L22=M2+BM2 (37)
上述したように、M2は、時点k−1において状態S2に至った場合に、経由してきた状態遷移の総和に対応する圧縮された規格化パスメトリックである。また、BM0は、時点kにおいて入力される再生信号z〔k〕に基づいて上述の(28)式に従って計算されるもの、すなわち−z〔k〕である。従って、式(37)の値は、上述したような圧縮の作用の下に、上述の式(22)中のm(2,k−1)−z〔k〕の値を計算したものとなる。すなわち、時点k−1において状態S2であり、時点kにおける状態遷移S2→S2によって最終的に状態遷移S2に至った場合に対応する計算値である。
【0105】
一方、加算器54には、M1およびBM3が供給される。加算器53は、これらを加算して以下のようなL12を算出する。
【0106】
L12=M1+BM3 (38)
上述したように、M1は、時点k−1において状態S1に至った場合に、経由してきた状態遷移の総和に対応する圧縮された規格化パスメトリックである。また、BM3は、時点kにおいて入力される再生信号z〔k〕に基づいて上述の(29)式に従って計算されるもの、すなわち−α×z〔k〕−β である。従って、式(38)の値は、上述したような圧縮の作用の下に、上述の式(22)中のm(1,k−1)−α×z〔k〕−βの値を計算したものとなる。すなわち、時点k−1において状態S1であり、時点kにおける状態遷移S1→S2によって最終的に状態遷移S2に至った場合に対応する計算値である。
【0107】
上述のL22およびL12は、比較器57に供給される。比較器57は、L22およびL12の値を比較し、小さい方を最新の規格化パスメトリックL2とすると共に、選択結果に応じて、上述したように選択信号SEL2の極性を切替える。このような構成は、式(22)において、最小値が選択されることに対応するものである。
【0108】
すなわち、L22<L12の場合(この時は、S2→S2が選択される)に、L22をL2として出力し、且つ、SEL2を例えば、'Low' とする。また、L12<L22の場合(この時は、S1→S2が選択される)には、L12をL2として出力し、且つ、SEL2を例えば'High'とする。SEL2は、後述するように、状態S2に対応するA型パスメモリ26に供給される。
【0109】
このように、加算器53、54および比較器57は、上述の式(22)に対応して、S1→S2とS2→S2の内から、時点kにおける状態遷移として最尤なものを選択する。そして、選択結果に応じて、最新の規格化パスメトリックL2および選択信号SEL2を出力する。
【0110】
また、加算器58には、M2およびBM3が供給される。加算器58は、これらを加算して以下のようなL3を算出する。
【0111】
L3=M2+BM3 (39)
上述したように、M2は、時点k−1において状態S2に至った場合に、経由してきた状態遷移の総和に対応する圧縮された規格化パスメトリックである。また、BM3は、時点kにおいて入力される再生信号z〔k〕に基づいて上述の(29)式に従って計算されるもの、すなわち−α×z〔k〕−βである。従って、式(39)の値は、上述したような圧縮の作用の下に、上述の式(23)の右辺m(2,k−1)+α×z〔k〕−βの値を計算したものとなる。
【0112】
すなわち、時点k−1において状態S0であり、時点kにおける状態遷移S2→S3によって最終的に状態遷移S3に至った場合に対応する計算値である。式(23)が値の選択を行わないことに対応して、加算器58の出力がそのまま最新の規格化パスメトリックL3とされる。
【0113】
上述したようにして, ACS21が出力するSEL0およびSEL2に従って、パスメモリユニット(以下、PMUと表記する)23が動作することによって、記録データa〔k〕に対する最尤復号系列としての復号データa’〔k〕が生成される。PMU23は、図7に示した4個の状態間の状態遷移に対応するために、2個のA型パスメモリおよび2個のB型パスメモリから構成される。
【0114】
A型パスメモリは、その状態に至る遷移として2つの遷移(すなわち、自分自身からの遷移と、他の1個の状態からの遷移)を有し、且つ、その状態を起点とする2つの遷移(すなわち、自分自身に至る遷移と他の1個の状態に至る遷移)を有する状態に対応するための構成とされる。従って、A型パスメモリは、図7に示した4個の状態の内、S0およびS2に対応するものである。
【0115】
一方、B型パスメモリは、その状態に至る遷移が1つのみであり、且つ、その状態を起点とする遷移が1つのみである状態に対応するための構成とされる。従って、B型パスメモリは、図7に示した4個の状態の内、S1およびS3に対応するものである。
【0116】
これら2個のA型パスメモリおよび2個のB型パスメモリが図7に示した状態遷移図に従う動作を行うために、PMU23において、図10に示すような復号データの受渡しがなされるように構成される。すなわち、A型パスメモリ24がS0に対応し、A型パスメモリ26がS2に対応する。また、B型パスメモリ25がS1に対応し、また、B型パスメモリ27がS3に対応する。
【0117】
このように構成すれば、S0を起点として生じ得る状態遷移がS0→S0およびS0→S1であり、S2を起点として生じ得る状態遷移がS2→S2およびS2→S3であることに合致する。また、S1を起点として生じ得る状態遷移がS1→S2のみであり、S3を起点として生じ得る状態遷移がS3→S0のみであることにも合致する。
【0118】
A型パスメモリ24について、その詳細な構成を図12に示す。A型パスメモリ24は、パスメモリ長に対応する個数のフリップフロップとセレクタを、交互に接続したものである。図10には、14ビットのデコードデータ長に対応する構成を示した。すなわち、14個のセレクタ311 〜3114および15個のフリップフロップ300 〜3014を有するものである。セレクタ311 〜3114は、何れも2個のデータを受取り、その内の1個を選択的に後段に供給するものである。また、フリップフロップ300 〜3014にクロックが供給されることにより、A型パスメモリ24全体の動作タイミングが合わされる。
【0119】
図7を用いて上述したように、状態S0に至る遷移は、S0→S0すなわち自分自身から継承する遷移、およびS3→S0である。このような状況に対応する構成として、各セレクタは、前段のフリップフロップから供給されるデータすなわちS0→S0に対応する復号データと、状態S3に対応するB型パスメモリ27から供給されるデータすなわちS3→S0に対応する復号データPM3とを受取る。
【0120】
さらに、各セレクタは、ACS21からSEL0を供給される。そして、SEL0の極性に応じて、供給される2個の復号データの内の一方を後段のフリップフロップに供給する。また、このようにして後段のフリップフロップに供給される復号データは、状態S1に対応するB型パスメモリ25にもPM0として供給される。
【0121】
すなわち、例えばセレクタ3114は、前段のフリップフロップ3013から供給されるデータと、B型パスメモリ27から供給される14ビットからなるPM3の14番目のビット位置のデータとを受取る。そして、これら2個のデータの内から以下のようにして選択したデータを、後段のフリップフロップ3014に供給する。上述したようにSEL0は、選択結果に応じて、'Low' または'High'とされる。
【0122】
SEL0が例えば'Low' の時は、前段のフリップフロップ3013からのデータが選択されるようになされる。また、SEL0が例えば'High'の時は、PM3の14番目のビット位置のデータが選択されるようになされる。選択されたデータは、後段のフリップフロップ3014に供給され、また、PM0の14番目のビット位置のデータとして、状態S1に対応するB型パスメモリ25に供給される。
【0123】
A型パスメモリ24中の他のセレクタ311 〜3113においても、SEL0の極性に応じて、同様な動作が行われる。従って、A型パスメモリ24全体としては、SEL0が例えば'Low' の時は、A型パスメモリ24中で、各々のフリップフロップがその前段に位置するフリップフロップのデータを継承するシリアルシフトを行う。また、SEL0が例えば'High'の時は、B型パスメモリ27から供給される14ビットからなる復号データPM3を継承するパラレルロードを行う。何れの場合にも、継承される復号データは、B型パスメモリ25に14ビットの復号データPM0として供給される。
【0124】
また、最初の処理段となるフリップフロップ300 には、クロックに同期して常に'0' が入力される。かかる動作は、S0に至る状態遷移S0→S0とS2→S0の何れにおいても、図7に示すように、復号データが'0' なので、最新の復号データは、常に'0' となることに対応している。
【0125】
上述したように、S2に対応するA型パスメモリ26についても、構成自体は、A型パスメモリ24と全く同様である。但し、ACS21から入力される選択信号は、SEL2である。また、図6に示すように状態S2に至る遷移としては、S2→S2すなわち自分自身から継承する遷移と、S1→S2とがある。このため、状態S1に対応するB型パスメモリ25からPM1を供給される。さらに、状態S2を起点として生じ得る状態がS2すなわち自分自身と、S3であることに対応して、状態S3に対応するB型パスメモリ27にPM2を供給する。
【0126】
また、S2に対応するA型パスメモリ26においても、最初の処理段となるフリップフロップには、クロックに同期して常に'0' が入力される。かかる動作は、S2に至る状態遷移S2→S2とS1→S0の何れにおいても、図7に示すように、復号データが'0' なので、最新の復号データは、常に'0' となることに対応している。
【0127】
他方、B型パスメモリ25について、その詳細な構成を図13に示す。B型パスメモリ25は、パスメモリ長に対応する個数のフリップフロップを接続したものである。図13には、14ビットのデコードデータ長に対応する構成を示した。すなわち、15個のフリップフロップ320 〜3214を有するものである。フリップフロップ320 〜3214にクロックが供給されることにより、B型パスメモリ25全体の動作タイミングが合わされる。
【0128】
各フリップフロップ321 〜3214には、状態S0に対応するA型パスメモリ24から、14ビットの復号データがPM0として供給される。例えば、フリップフロップ321 には、PM0の1ビット目が供給される。各フリップフロップ321 〜3214は、供給された値を1クロックの間保持する。そして、状態S2に対応するA型パスメモリ26に、14ビットの復号データPM1として出力する。例えば、フリップフロップ321 は、PM1の2ビット目を出力する。
【0129】
B型パスメモリ25中の他のセレクタ321 〜3213においても、同様な動作が行われる。従って、B型パスメモリ25全体としては、A型パスメモリ24から供給される14ビットからなる復号データPM0を受取り、またA型パスメモリ26に14ビットからなる復号データPM1を供給する。
【0130】
また、フリップフロップ320 には、クロックに同期して常に'1' が入力される。かかる動作は、図7に示したように、最新の状態遷移がS0→S1である場合に復号データが'1' であることに対応している。
【0131】
また、上述のように、状態S3に対応するB型パスメモリ27についても、B型パスメモリ25と全く同様な構成とされる。但し、図7に示すように状態S3に至る遷移は、S2→S3なので、状態S2に対応するA型パスメモリ26からPM2を供給される。さらに、状態S3を起点として生じ得る状態がS0であることに対応して、状態S0に対応するA型パスメモリ24にPM3を供給するようになされる。B型パスメモリ27においても、最初の処理段となるフリップフロップには、クロックに同期して常に'1' が入力される。かかる動作は、図7に示したように、最新の状態遷移がS2→S3である場合に復号データが'1' であることに対応している。
【0132】
上述したようにして、PMU23中の4個のパスメモリは、各々復号データを生成する。このようにして生成される4個の復号データは、常に正確なビタビ復号動作がなされる場合には、互いに一致することになる。ところで、実際のビタビ復号動作においては、4個の復号データに不一致が生じることも起こり得る。このような不一致は、再生信号に含まれるノイズの影響等により、上述の識別点AおよびBを検出する際に誤差が生じる等の要因により、ビタビ復号動作が不正確なものとなることによって生じる。
【0133】
一般に、このような不一致が生じる確率は、再生信号の品質に対応してパスメモリの処理段数を充分に大きく設定することによって減少させることができる。すなわち、再生信号のC/N等の品質が良い場合には、パスメモリの処理段数が比較的小さくても復号データ間の不一致が生じる確率は小さい。これに対して、再生信号の品質が良くない場合には、上述の不一致が生じる確率を小さくするためには、パスメモリの処理段数を大きくする必要がある。
【0134】
再生信号の品質に対してパスメモリの処理段数が比較的小さくて、復号データ間の不一致が生じる確率を充分に低くすることができない場合には、4個の復号データから、例えば多数決等の方法によって、より的確なものを選択するような、図示しない構成がPMU23中の4個のパスメモリの後段に設けられる。
【0135】
〔4値4状態ビタビ復号方法以外のビタビ復号方法〕
上述した4値4状態ビタビ復号方法は、波形等化部11において用いられる波形等化特性がPR(1,2,1)であり、且つ、記録データとしてRLL(1,7)符号が採用される場合に用いられる。例えば、ISOで標準化が進められている記録線密度0.40μm,レーザ波長685nm,NA=0.55の場合には、波形等化特性をPR(1,2,1)とし、4値4状態ビタビ復号方法を用いることが最適となる。他方、波形等化特性または記録データを生成するための符号化方法に応じて、他の種類のビタビ復号方法が用いられることもある。
【0136】
例えば、波形等化特性がPR(1,1)であり、且つ、記録データとしてRLL(1,7)符号が用いられる場合には、3値4状態ビタビ復号方法が用いられる。また、波形等化特性がPR(1,3,3,1)であり、且つ、記録データとしてRLL(1,7)符号が用いられる場合には、7値6状態ビタビ復号方法が用いられる。このようなビタビ復号方法の内、何れを用いるかを選択するための要素の1つとなる波形等化特性は、再生信号上の符号間干渉に適合する程度が良いものが採用される。従って、上述したように、線記録密度およびMTFを考慮して最適なものとされる。
【0137】
また、波形等化特性の理論値からのずれ、および再生信号の振幅変動、非対称歪等によって、識別点の値が理論と異なる場合もある。このような場合を考慮して、ビタビ復号方法を修正して用いることも行われる。例えば4値4状態ビタビ復号方法において、波形等化特性を正確にPR(1,2,1)とすることは困難である点を考慮して、後述するように6個の識別点を前提とした6値4状態ビタビ復号方法が用いられることもある。
【0138】
上述した光磁気ディスク装置の一例においては、セクタフォーマット上のVFOフィールドに記録されている2Tパターンから再生される2T信号に基づいて、アナログ的に周波数引込みを行うことによってPLLにロックを掛ける方法が用いられている。
【0139】
これに対して、この発明は、A/D変換器によってサンプリングされる再生信号値のMSB(Most Significant Bit) に基づいて位相誤差を検出するMSB判定モードによって生成される位相誤差検出信号と、かかる位相誤差信号間の微分信号(すなわち各時点での位相誤差信号と1時点前の位相誤差信号との差として得られる信号)とに基づいて、PLLの周波数引込みを行うようにしたものである。
【0140】
この発明の理解を容易とするために、まず、MSB判定モードについて説明する。図14は、MSB判定モードを用いる光磁気ディスク装置の再生系の構成の一例を示したブロック図である。光磁気ディスク6を再生するための光ピックアップ7からA/D変換器12までの構成は、図1等を用いて上述した光磁気ディスク装置の一例と同様である。
【0141】
A/D変換器12がサンプリングする再生信号値z〔k〕に基づいて、ビタビ復号器130が復号データを生成し、コントローラ2に供給する。ビタビ復号器130は、図1中のビタビ復号器13と同様なものでも良いし、状態遷移そのものを表現する状態データ(例えば4値4状態ビタビ復号方法においては、2ビットからなる状態データ値の系列)を生成し、状態データに基づいて、復号データの生成等の処理を行うものであっても良い。
【0142】
A/D変換器12の例えば6〜8ビット等のダイナミックレンジでの出力z〔k〕の内、MSBがタイミングジェネレータ101に供給される。MSBは、再生信号値z〔k〕の値がダイナミックレンジの半分以上/以下に応じて'1' /'0' となる。
【0143】
タイミングジェネレータ101は、供給されるMSBに基づいて、位相誤差検出タイミングを指令する所定の時間幅のサンプリングパルスGP ,GQ ,GR およびGS を生成し、位相誤差信号計算回路(以下、PECと表記する)106に供給する。PEC106は、サンプリングパルスGP 〜GS に従ってシフトレジスタ107の出力,すなわち所定時間遅延させられた再生信号値から位相誤差信号の生成に必要なサンプリングを行い、サンプリング値に基づいてMSB判定モードによる位相誤差信号PEMSB を生成する。このPEMSB がD/A変換器108によってD/A変換され、さらにフィルタ109によってノイズ除去等の処理が行われてから、VCO110に供給される。
【0144】
以下、MSB判定モードによる位相誤差検出タイミングについて説明する。そのために、まず、状態遷移図の表記法について説明する。
【0145】
例えば4値4状態ビタビ復号方法においては、4個の状態を2ビットで表現できるので、このような2ビットのデータを状態データ値として用いることができる。そこで、図7中のS0,S1,S2,S3を、それぞれ2ビットの状態データ値、00,01,11,10を用いて表現することができる。そこで、以下の説明においては、図7中のS0,S1,S2,S3をそれぞれS00,S01,S11,S10と表記することにし、4値4状態ビタビ復号方法の状態遷移図として、図7の代わりに図15を用いる。
【0146】
また、以下の説明においては、波形等化特性として、上述のPR(B,2A,B)の代わりに、規格化されたものすなわちPR(1,2,1)を前提とする。このため、識別点の値すなわちノイズを考慮しない計算によって求まる再生信号値c〔k〕は、図7中の−A−B,−A,A,A+Bの代わりにそれぞれ0、1、3、4と表現される。図15中のP,Q,RおよびSは、位相誤差検出タイミングを示しているが、これについては後述する。
【0147】
実際の再生信号値は、誤差を含むので、0、1、3、4付近の値をとる。0および1は、ダイナミックレンジの半分以下の大きさなので、再生信号値が0または1付近の値をとる時には、MSBが'0' となる。また、3および4は、ダイナミックレンジの半分以上の大きさなので、再生信号値が3または4付近の値をとる時にはMSBが'1' となる。
【0148】
従って、再生信号値が1付近の値から3付近の値に変化する時、また、その反対に再生信号値が3付近の値から1付近の値に変化する時には、MSBのビット反転が生じる。MSBのビット反転を検出することによって再生RF信号の立ち上がり時点および立ち下がり時点を認識することができる。
【0149】
図16を参照して具体的に説明する。図16Aは、再生RF信号の一例を示す。特に、サンプリング点には、黒丸を付した。図16A中には、ダイナミックレンジの半分を示す水平線、および再生RF信号から選択される状態遷移を、説明の参考のために付記した。
【0150】
図15の状態遷移図から、時点jにおいて状態S00から状態S11への遷移が生じた場合には、次の時点j+1において必ず状態S11に遷移することがわかる。このような遷移に伴い、再生信号値は、P=z〔j〕が1付近の値をとり、Q=z〔j+1〕が3付近の値をとる。従って、時点j+1においてMSBの反転が検出される。このため、MSBが反転した時点の1つ前の時点として、立ち上がり時点jを認識することができる。
【0151】
図16は、再生RF信号と、位相誤差検出タイミングの一例を示すものである。図16Aにおいて、Pが立ち上がり時の再生信号値である。このPの値は、MSBの反転が検出された時点の1つ前の時点のサンプリング値として、すなわち、図16Cに示すサンプリングパルスGP に従って、取込むことが可能である。
【0152】
さらに、Qが立ち上がり時の次の時点での再生信号値である。Qの値は、Pの値を取込んだ時点の次の時点での再生信号値として、すなわち、図16Dに示すサンプリングパルスGQ に従って取込むことが可能である。
【0153】
一方、図15の状態遷移図において、時点j’において状態S11から状態S10への遷移が生じた場合には、次の時点j’+1において必ず状態S00に遷移することがわかる。このような遷移に伴い、再生信号値は、R=z〔j’〕が3付近の値をとり、S=z〔j’+1〕が1付近の値をとる。従って、時点j’+1においてMSBの反転が検出される。このため、MSBが反転した時点の1つ前の時点として、立ち下がり時点j’を認識することができる。
【0154】
図16Aにおいて、Rが立ち下がり時の再生信号値である。このRの値は、MSBの反転が検出された時点の1つ前の時点のサンプリング値として、すなわち、図16Eに示すサンプリングパルスGR に従って取込むことが可能である。
【0155】
さらに、Sが立ち下がり時の次の時点の再生信号値である。このSの値は、Rの値を取込んだ時点の次の時点での再生信号値として、すなわち、図16Fに示すサンプリングパルスGS に従って取込むことが可能である。
【0156】
以上のようにして取込まれるP、Q,RおよびSは、位相誤差が無い時には、以下のような値をとる。
【0157】
P:1付近
Q:3付近
R:3付近
S:1付近
PおよびSは、何れも1付近の値をとるので、位相誤差が無ければ、P=Sとなるはずである。同様に、何れも3付近の値をとるQおよびRについても、位相誤差が無ければ、Q=Rとなるはずである。
【0158】
従って、PとSの差およびQとRの差を用いて位相誤差の大きさを表すことができる。そこで、MSB判定モードにおける位相誤差信号PEMSB としては、以下のようなものを用いることができる。
【0159】
PEMSB =(P−S)+(Q−R) (40)
このようなPEMSB の値は、位相誤差が無い場合にはゼロとなる。MSB判定モードにおいては、PEMSB の値が常に計算されている。すなわち、サンプリングパルスが供給される毎にPEの値が更新される。P,Q,RおよびSの値をサンプリングし、サンプリング値に基づいてPEMSB の値を計算する構成が上述したタイミングジェネレータ101、PEC106,シフトレジスタ107等である。
【0160】
ところで、以上のようなMSB判定モードにおいて、位相誤差信号には、周波数に関する情報が含まれない。このため、VCO110の発振周波数が再生RF信号のクロックと異なる場合にも、位相誤差信号の積分信号、すなわち時間的な平均でみた位相誤差信号がゼロとなる場合がある。このような場合には、VCO110の発振周波数が再生RF信号のクロックと異なった状況で、PLLがロックしてしまう。
【0161】
このような状況について、図17を参照して説明する。図17は、再生RF信号として2Tパターンを用いた場合に、MSB判定モードにおいて位相誤差信号を検出する際に、クロックの周波数が異なる2つの場合を例示したものである。図17Aに示す波形と、図17Bに示す波形とでは周波数が異なる。ところが、何れの波形についてもA−DおよびB−Cは等しくなり、その結果PEMSB の値も等しくなる。
【0162】
このような場合に、PEMSB の値が充分小さく、PLLがロックしたと見なされる時には、VCO110が図17Aの波形を発振する場合もあるし、図17Bの波形を発振する場合もあることになる。従って、間違った周波数、すなわち再生RF信号のクロック周波数と異なる周波数でPLLがロックしてしまうおそれがある。
【0163】
PLLが間違った周波数でロックすることは、フォールスロック(False Lock)と称される。MSB判定モードは、原理的にフォールスロックを生じる可能性を内在するモードである。このため、MSB判定モードは、PLLの周波数引込みに用いることができない。
【0164】
フォールスロックを避けるためには、位相誤差信号の積分信号、すなわち時間平均で見た位相誤差信号が0にならないようにすれば良い。そこで、この発明の実施の一形態では、所定の条件を満たす場合に式(40)によって計算されるPEMSB を位相誤差信号として後段に出力し、それ以外の場合には位相誤差信号を0とする方法を用いる。
【0165】
このような方法について具体的に説明する。まず、時点tにおけるPEMSB をPEMSB (t)と表記する。さらに、各時点での微分信号をdiff(t)と表記する。この時、diff(t)は、次式に従って計算される。
【0166】
diff(t)=PEMSB (t)−PEMSB (t−1) (41)
VCO110の発振周波数が再生RF信号のクロック周波数と近くて、かつ、PLLが未だロックしていない時には、PEMSB (t)が図18Aのようになり、また、diff(t)が図18Bのようになる。
【0167】
フォールスロックを避ける一つの方法として、まず、diff(t)とPEMSB (t)の符号が一致した時のみ、PEMSB (t)を位相誤差信号として出力する方法がある。このように位相誤差信号の出力を制御することを、以下、ミュートする、と表記する。この場合の位相誤差信号をPEMute1 (t)と表記する。PEMute1 (t)は、次式のように計算される。
【0168】
このようなPEMute1 (t)を、図18Dに示す。
【0169】
ところで、このような場合に、PEMSB (t)の傾きの絶対値、すなわちdiff(t)の絶対値は、大きいものと小さいものの2種類が生じる。傾きの絶対値が小さい期間には、VCO110の発振周波数と、再生RF信号のクロック周波数とが近づきつつある。また、傾きの絶対値が大きい期間には、VCO110の発振周波数と、再生RF信号のクロック周波数とが離れつつある。
【0170】
離れつつある期間、すなわちdiff(t)の絶対値が大きい期間に位相誤差信号をミュートすれば、VCO110の発振周波数が再生RF信号のクロック周波数から離れる方向に行かないようにすることができる。
【0171】
そこで、diff(t)の絶対値が所定値以上となる時には、さらに、PE
Mute1 (t)をミュートすることにする。このようにして生成される位相誤差信号をPEMute2 (t)と表記する。PEMute2 (t)は、次式に従って生成される。
【0172】
ここで、Thは、スレッショルドとして予め規定した値である。Thを適切に設定することにより、PEMute2 (t)に基づいて周波数引込みを行うことができる。
【0173】
PEMute1 (t)は、PEMute2 (t)において、スレッショルドThの値が極めて大きい場合と考えることができるので、一般に、PEMute2 (t)を周波数引込みのための位相誤差信号と呼ぶことができる。PEMute2 (t)を改めてPEMute(t)と表記すると、式(42)および(43)から、以下のようになることがわかる。
【0174】
PEMute(t)を位相誤差信号としてPLLを構成するモードを、以下、MuteモードのPLLと表記する。Muteモードは、MSB判定モードによる位相誤差信号PEMSB (t)の一部だけを位相誤差信号PEMute(t)としたものなので、MSB判定モードの方がより正確に位相誤差情報を反映したものである。
【0175】
従って、PLLを安定してロックさせる方法として、PLLの周波数引込みを行うアクイジション時にのみMuteモードを用い、周波数引込み後のトラッキング時には、MSB判定モードに切替える制御を行うことが適切である。
【0176】
このような制御を実現する構成の一例について、図19を参照して説明する。図19において、図14中の構成要素と同様なものには、同一の符号を付した。PEC196は、図14中のPEC106と同様にMSB判定モードによる位相誤差信号PEMSB (t)を生成し、それと共に、式(41)に従って微分信号diff(t)を生成する。
【0177】
PEMSB (t)およびdiff(t)がPLLモードブロック197に供給される。PLLモードブロック197は、PEMSB (t)およびdiff(t)に基づいて、式(44)に従ってPEMute(t)を計算する。
【0178】
さらに、PLLモードブロック197には、コントローラ2からPLLGate信号が供給される。PLLモードブロック197は、PLLGate信号の指令に従って、位相誤差信号として、PEMSB (t)をそのまま出力するか、PEMute(t)を出力するかを切替える。
【0179】
PLLモードブロック197が出力する位相誤差信号は、図14を参照して上述した構成例と同様に、D/A変換器108およびフィルタ109によって処理されて、VCO110に供給される。
【0180】
PEC196について、図20を用いてより詳細に説明する。PEC196は、4個のレジスタ301、302、303および304を有する。これら4個のレジスタ301〜304の後段には、演算部305が設けられる。また、演算部305の出力は、PLLモードブロック197に供給されると共に、微分信号生成部306に供給される。
【0181】
レジスタ301、302、303、304には、それぞれサンプリングパルスGP , GQ , GR , GS が供給される。このようなサンプリングパルスGP , GQ , GR , GS に従って、各レジスタ301、302、303、304は、それぞれP,Q,R,Sの値を適切に取込み、且つ、取込んだP,Q,R,Sの値を演算部305に出力する。また、演算部305にはクロックが供給される。
【0182】
シフトレジスタ107から供給される遅延時間を補償された再生信号値、並びにサンプリングパルスの組GP ,GQ ,GR およびGS は、何れもクロックに従うタイミングで供給されるので、本来、演算部305にクロックを供給する必要はないが、何らかの原因でタイミングがずれる場合に備えて演算部305にクロックを供給するようになされている。従って、演算部305の動作タイミングがずれる可能性が充分小さいときは、このようなクロックの供給を行わない構成としてもよい。
【0183】
演算部305は、レジスタ301〜304の出力として供給されるP〜Sの値に基づいて、式(40)に従ってPEMSB (t)の値を計算する。
【0184】
微分信号生成部306は、演算部305から供給されるPEMSB の値に基づいて、式(41)に従って微分信号diff(t)の値を計算し、PLLモードブロック197に供給する。微分信号生成部306は、例えば、レジスタと減算器とを有する構成とされれば良い。
【0185】
一方、PLLモードブロック197によってなされる位相誤差信号の切替えについて図21を参照して説明する。図21Aに示すRGATE信号は、データリード時にのみアクティブとなる信号である。すなわち、RGATE信号がアクティブの時にのみ再生RF信号が再生系に入力する。また、図3等を参照して上述したように、図21Cに示すVFOフィールドには、2Tパターンが記録されている。この2TパターンがPLLにロックを掛けるための信号パターンとして使用される。
【0186】
RGATE信号がアクティブとされると、VCO110が自走周波数で発振を始め、それによってPECブロック196がPEMSB (t)およびdiff(t)の計算を開始する。RGATE信号がアクティブとされてから所定の期間内においては、図21Bに示すようにPLLGateがアクティブとされ、図21Dに示すようにMuteモードとされる。PLLモードブロック197は、かかる期間には、PEMute(t)を位相誤差信号として出力する。
【0187】
この出力に基づくVCO110の動作によってPLLの周波数引込みが開始され、その後、PLLがロックする。上述の所定期間は、PLLがロックするために充分な期間となるように設定される。
【0188】
PLLがロックした後には、PLLGateがアクティブでない状態とされて、MSB判定モードに切替えられることにより、VCO110の発振周波数と再生RF信号との位相差に応じた位相誤差信号が生成されるようになされる。このようにして、PLLロックを安定なものとすることができる。
【0189】
また、MSB判定モードに切替えた後に、さらに位相マージンが大きいビタビ判定モードに切替えるようにしてもよい。あるいは、MSB判定モードの代わりにビタビ判定モードを用いる、すなわち、Muteモードによって周波数引込みが完了した後、直ちにビタビ判定モードに移行するようにしてもよい。
【0190】
但し、これらの場合には、ビタビ判定モードを行うための以下のような構成が必要とされる。まず、ビタビ復号器は、状態遷移そのものを表現する状態データを生成する機能を有するものである必要がある。また、状態データに基づいて、ビタビ判定モードにおける位相誤差検出タイミングを示すサンプリングパルスを生成し、PEC196に供給する構成を設ける必要がある。
【0191】
上述したこの発明の実施の一形態は、4値4状態ビタビ復号方法を行う光磁気ディスク装置にこの発明を適用したものである。これに対し、上述したような3値4状態ビタビ復号方法、および7値6状態ビタビ復号方法等の他の種類のビタビ復号方法を行う光磁気ディスク装置にも、この発明を適用することができる。
【0192】
また、この発明は、記録媒体に記録されたデータから再生される再生RF信号から、リードデータを復号するためにビタビ復号方法を用いることができる情報再生装置に適用することができる。すなわち、光磁気ディスク(MO)以外にも、例えば相変化型ディスクPD、CD−E(CD-Erasable )等の書き換え可能ディスク、CD−R等の追記型ディスク、CD−ROM等の読み出し専用ディスク等の光ディスク装置に適用することが可能である。
【0193】
また、この発明は、上述した実施の形態に限定されることなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の応用および変形が考えられる。
【0194】
【発明の効果】
上述したように、この発明は、MSB判定モードによって生成される位相誤差信号PEMSB (t)を、PEMSB (t)と微分信号diff(t)が異符号となる期間、または、かかる期間においてさらに微分信号diff(t)の絶対値が所定値以上となる時にミュートすることによって、位相誤差信号PEMute(t)を生成するMuteモードを行うようにしたものである。
【0195】
PEMute(t)に基づいてVCOを発振させるようにすれば、フォールスロックを避けることができる。このため、MuteモードによってPLLの周波数引込みを行うようにすることができる。
【0196】
また、位相誤差計算回路(PEC)は、Muteモード、MSB判定モードおよびビタビ判定モードにおいて共通の構成のものを用いることができる。このため、PLLの周波数引込みを行うアクイジションモード時にMuteモードを使用し、PLLの周波数引込み完了後のトラッキングモードとして、MSB判定モードまたはビタビ判定モードを使用するようなモード切替えを行うようにすることによって、安定且つ確実なPLLを構成することができる。
【0197】
さらに、アクイジションモードを行うために、MSB判定モードを行うための構成と全く別個の構成、例えば従来の一般的なPLL等の構成を設ける必要が無いので、装置の回路規模を小さくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】4値4状態ビタビ復号方法を行う光磁気ディスク装置の一例の全体構成を示すブロック図である。
【図2】マーク位置記録方法およびマークエッジ記録方法について説明するための略線図である。
【図3】光磁気ディスクのセクタフォーマットの一例について説明するための略線図である。
【図4】RLL(1,7)符号化方法において、最小磁化反転幅が2であることを示す略線図である。
【図5】RLL(1,7)符号とマークエッジ記録方法の組合わせによって記録されたデータから再生される再生信号を、パーシャルレスポンス特性PR(1,2,1)の下で波形等化した時のアイ・パターンについて説明するための略線図である。
【図6】4値4状態ビタビ復号方法の状態遷移図を作成する過程について説明するための略線図である。
【図7】4値4状態ビタビ復号方法の状態遷移図の一例を示す略線図である。
【図8】4値4状態ビタビ復号方法におけるトレリス線図の一例を示す略線図である。
【図9】4値4状態ビタビ復号方法において、規格化メトリックに基づく状態遷移の条件を示す略線図である。
【図10】4値4状態ビタビ復号を行うビタビ復号器の全体構成を示すブロック図である。
【図11】図10に示したビタビ復号器の一部分の構成を詳細に示すブロック図である。
【図12】図10に示したビタビ復号器の他の一部分の構成を詳細に示すブロック図である。
【図13】図10に示したビタビ復号器のさらに他の一部分の構成を詳細に示すブロック図である。
【図14】MSB判定モードを行う光磁気ディスク装置の一例の再生系の構成について説明するためのブロック図である。
【図15】図7とは異なる表記方法による、4値4状態ビタビ復号方法の状態遷移図の一例を示す略線図である。
【図16】MSB判定モードにおける位相誤差の検出方法について説明するための略線図である。
【図17】フォールスロックについて説明するための略線図である。
【図18】この発明の実施の一形態において生成される位相誤差信号について説明するためのブロック図である。
【図19】この発明の実施の一形態の再生系の構成について説明するためのブロック図である。
【図20】この発明の実施の一形態の再生系の一部の構成について詳細に説明するためのブロック図である。
【図21】モードの切替えタイミングの一例について説明するための略線図である。
【図22】一般的なPLLにおいて、同期過程と位相誤差信号とについて説明するための略線図である。
【符号の説明】
2・・・コントローラ、12・・・A/D変換器、130・・・ビタビ復号器、101・・・タイミングジェネレータ、107・・・シフトレジスタ、108・・・D/A変換器、109・・・フィルタ、196・・・位相誤差演算部(PEC)、306・・・微分信号生成部、197・・・PLLモードブロック、110・・・VCO
Claims (7)
- 記録媒体に記録されている情報信号をビタビ復号方法によって復号するようにした情報再生装置であって、
上記記録媒体から再生される再生信号に基づいてPLLをロックさせることによってクロックを生成し、上記クロックに従うタイミングで再生系の動作を行うようにした情報再生装置において、
ビタビ復号方法を行うビタビ復号器の前段に設けられるA/D変換器からの所定ビット数の再生信号値中のMSBの反転が生じるタイミングに基づいて、再生信号の立ち上がりまたは立ち下がりエッジと対応する、位相誤差検出タイミングを生成する位相誤差検出タイミング生成手段と、
複数の上記位相誤差検出タイミングのうち、二箇所のタイミングに対応する上記サンプリングされたそれぞれの再生信号値を演算することによって第1の位相誤差信号を生成する第1の位相誤差信号生成手段と、
上記第1の位相誤差信号における、連続する2個の時点間での位相誤差信号の差としての微分信号を生成する微分信号生成手段と、
上記第1の位相誤差信号と、上記微分信号とに基づいて第2の位相誤差信号を生成し、上記第2の位相誤差信号を上記PLLに制御信号として供給する第2の位相誤差信号生成手段とを有し、
上記第2の位相誤差信号生成手段は、
上記第1の位相誤差信号の極性と上記微分信号の極性とが一致する第1の条件と、上記微分信号の絶対値が小さい第2の条件とが共に満たされる場合に、上記第1の位相誤差信号を上記第2の位相誤差信号として出力し、
上記第1および第2の条件の一方または両方が満たされない場合に、上記第1の位相誤差信号をミュートすることを特徴とする情報再生装置。 - 請求項1において、
上記第2の条件として、上記第1の位相誤差信号の傾きの絶対値が所定の範囲内であることを使用することを特徴とする情報再生装置。 - 請求項1において、
PLLをロックさせる際に、周波数引込みを行うために上記第2の位相誤差信号を使用することを特徴とする情報再生装置。 - 請求項3において、
上記第2の位相誤差信号を使用して周波数引込みを行い、その後、上記第1の位相誤差信号を使用してPLLをロックさせることを特徴とする情報再生装置。 - 請求項3において
上記第2の位相誤差信号を使用して周波数引込みを行い、その後、上記第1の位相誤差信号を使用してPLLをロックさせ,さらにその後、ビタビ判定モードに移行するようになし、
上記ビタビ判定モードは、
上記ビタビ復号器によって選択される状態遷移を表現する状態データに基づいて位相誤差検出タイミングを生成し、かかる位相誤差検出タイミングに従って生成される位相誤差信号に基づいてPLLをロックさせるものであることを特徴とする情報再生装置。 - 請求項3において、
上記ビタビ復号器によって選択される状態遷移を表現する状態データに基づいて位相誤差検出タイミングを生成し、かかる位相誤差検出タイミングに従って生成される位相誤差信号に基づいてPLLをロックさせるビタビ判定モードを行う機能をさらに有する情報再生装置において、
上記第2の位相誤差信号を使用して周波数引込みを行い、その後、ビタビ判定モードに移行するようになし、
上記ビタビ判定モードは、
上記ビタビ復号器によって選択される状態遷移を表現する状態データに基づいて位相誤差検出タイミングを生成し、かかる位相誤差検出タイミングに従って生成される位相誤差信号に基づいてPLLをロックさせるものであることを特徴とする情報再生装置。 - 記録媒体に記録されている情報信号をビタビ復号方法によって復号するようにした情報再生方法であって、
記録媒体から再生される再生信号に基づいてPLLをロックさせることによってクロックを生成し、上記クロックに従うタイミングで再生系の動作を行うようにした情報再生方法において、
ビタビ復号方法を行うビタビ復号器の前段に設けられるA/D変換器からの所定ビット数の再生信号値中のMSBの反転が生じるタイミングに基づいて、再生信号の立ち上がりまたは立ち下がりエッジと対応する、位相誤差検出タイミングを生成する位相誤差検出タイミングを生成するステップと、
複数の上記位相誤差検出タイミングのうち、二箇所のタイミングに対応する上記サンプリングされたそれぞれの再生信号値を演算することによって第1の位相誤差信号を生成する第1の位相誤差信号を生成するステップと、
上記第1の位相誤差信号における、連続する2個の時点間での位相誤差信号の差としての微分信号を生成するステップと、
上記第1の位相誤差信号と、上記微分信号とに基づいて第2の位相誤差信号を生成し、上記第2の位相誤差信号を上記PLLに制御信号として供給する第2の位相誤差信号を生成するステップを有し、
上記第2の位相誤差信号を生成するステップは、
上記第1の位相誤差信号の極性と上記微分信号の極性とが一致する第1の条件と、上記微分信号の絶対値が小さい第2の条件とが共に満たされる場合に、上記第1の位相誤差信号を上記第2の位相誤差信号として出力し、
上記第1および第2の条件の一方または両方が満たされない場合に、上記第1の位相誤差信号をミュートすることを特徴とする情報再生方法。
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