JP4081900B2 - 情報再生装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ビタビ復号方式が採用されている情報再生装置として好適なものであり、特にPLLの位相エラーの検出に関する。
【0002】
【従来の技術】
デジタル信号再生装置においては、再生されたデジタル信号と同期するクロックを生成するためにPLLが使用される。従来では、再生信号のエッジを検出し、このエッジの位相情報を利用して位相エラーを検出し、検出された位相エラーによりVCO(電圧制御型発振器)、あるいはVFO(可変周波数発振器)の周波数を制御し、それによって、再生信号と同期したクロック信号をPLLで発生するようにしていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで近年、記録媒体に対する高密度記録を実現するための記録再生方式が各種研究されている。特に光ディスクの分野では、波長とレンズのNAで決まるレーザスポット径よりも小さなピット情報を再生できるMSR(MAGNETICALLY INDUCED SUPER RESOLUTION)方式が開発されており、飛躍的な高密度化が期待されている。
さらにデータ記録再生の際の伝送方式として符号間干渉を積極的に利用したパーシャルレスポンス方式も開発されており、このパーシャルレスポンスとビタビ復号方式を採用した情報再生装置が実用化に向けられている。
【0004】
ところが、上記MSR方式で読み出される再生信号波形は、歪みを持っているものが多いという事情があり、このような系にデジタル型のパーシャルレスポンス方式/ビタビ復号を併用すると、PLLの安定性が悪くなるという問題が生じている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明はこのような問題に鑑みて、デジタル型のパーシャルレスポンス方式/ビタビ復号を採用する情報再生装置において、安定したPLL動作を実現することを目的とする。
【0006】
このため情報再生装置において、クロック信号に従ってサンプリングされる再生信号値に基づいて、前記クロック信号に応じたタイミングで最尤な状態遷移を表す状態データを生成する状態データ生成手段と、前記状態データに基づいて復号データを出力する復号データ出力手段と、前記状態データから、位相エラー信号の第1〜第4の検出タイミングを発生するタイミング発生手段と、前記第1〜第4の検出タイミングでの再生信号値のうちで、前記第1、第2の各検出タイミングにおける各再生信号値に所定の演算を施して位相エラー信号を生成する第1の演算機能と、前記第3、第4の各検出タイミングにおける各再生信号値に所定の演算を施して位相エラー信号を生成する第2の演算機能と、前記第1、第2、第3、第4の各検出タイミングにおける各再生信号値に所定の演算を施して位相エラー信号を生成する第3の演算機能を備え、前記第1の演算機能、第2の演算機能、第3の演算機能によって生成できる各位相エラー信号のうちの1つを選択して、それを前記クロック発生手段に供給する位相エラー信号とする選択機能によって、位相エラー信号を生成する位相エラー生成手段と、前記選択機能による選択状態を切り換えるタイミングを所定単位の再生動作の再生開始タイミングとする切換タイミング制御手段と、前記位相エラー生成手段で生成された位相エラー信号に応じて前記クロック信号を発生させるクロック発生手段とを備えるようにする。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、実施の形態の理解を容易とするために、下記順序のように、まずビタビ復号方法を行う再生系を有する記録再生装置の構成、ビタビ復号方法等について説明し、その後、実施の形態としての記録再生装置の構成及び動作を説明していく。
1.ビタビ復号方法を行う再生系を有する記録再生装置の説明
1−1 装置構成の概要
1−2 記録媒体のセクターフォーマット
1−3 4値4状態ビタビ復号方法
1−4 4値4状態ビタビ復号器
1−5 4値4状態ビタビ復号方法以外のビタビ復号方法
2.実施の形態の記録再生装置
2−1 状態データを使用した4値4状態ビタビ復号方法
2−2 装置構成
2−3 位相エラー検出に基づくPLL動作
【0009】
1.ビタビ復号方法を行う再生系を有する記録再生装置の説明
1−1 装置構成の概要
以下、ビタビ復号方法を行う再生系を有する、典型的な記録/再生装置の一例について説明する。
図1は、ビタビ復号方法を行う再生系を有する光磁気ディスク装置の一例の全体構成を示すブロック図である。
記録時には、コントローラ2がホストコンピュータ1の指令に従って、記録すべきユーザデータを受取リ、情報語としてのユーザデータに基づいてエンコードを行って、符号語としてのRLL(1,7)符号を生成する。この符号語が記録データとしてレーザパワーコントロール部(以下、LPCと表記する)4に供給される。コントローラ2は、このような処理の他に、後述する復号化処理、および記録、再生、消去等の各モードの制御、並びにホストコンピュータ1との交信等の動作を行う。
【0010】
LPC4は、供給された記録データに対応して、光ピックアップ7のレーザパワーを制御して光磁気ディスク6上に磁気極性を有するピット列を形成することにより、記録を行う。この記録の際に、磁気へッド5が光磁気ディスク6にバイアス磁界を付与する。実際には、記録データに基づいて後述するように生成されるプリコード出力に従って、後述するようなマークエッジ記録が行われる。
【0011】
後述するように、記録位置すなわちピットの形成位置の制御は、磁気へッド5および光ピックアップ7等の位置決めを行う図示しない手段によってなされる。このため、記録動作時においても、光ピックアップ7がアドレス部等を通過する際には、後述するような再生時の動作と同様な動作が行われる。
【0012】
上述したようにして形成される各ピットを、記録データに基づいて後述するようにして生成されるプリコード出力中の各ピットに対応させる方法について、図2を参照して説明する。プリコード出力中の、例えば’1’に対してピットを形成し、’0’に対してピットを形成しない記録方法をマーク位置記録方法と称する。
一方、各ピットのエッジによって表現される、プリコード出力中の各ピットの境界における極性の反転を、例えば’1’に対応させる記録方法をマークエッジ記録方法と称する。再生時には、再生信号中の各ピットの境界は、後述するようにして生成されるリードクロックDCKに従って認識される。
【0013】
次に、再生系の構成および動作について説明する。光ピックアップ7は、光磁気ディスク6にレーザ光を照射し、それによって生じる反射光を受光して、再生信号を生成する。再生信号は、和信号R+、差信号R−および図示しないフォーカスエラー信号ならびにトラッキングエラー信号の4種類の信号からなる。
和信号R+は、アンプ8によってゲイン調整等がなされた後に切替えスイッチ10に供給される。また、差信号R−は、アンプ9によってゲイン調整等がなされた後に切替えスイッチ10に供給される。さらに、フォーカスエラー信号は、フォーカスエラーを解消する手段(図示せず)に供給される。一方、トラッキングエラー信号は、図示しないサーボ系等に供給され、それらの動作において用いられる。
【0014】
切替えスイッチ10には、後述するような切替え信号Sが供給される。切替えスイッチ10は、この切替え信号Sに従って、以下のように、和信号R+または差信号R−をフィルタ部11に供給する。
すなわち、後述するような光磁気ディスク6のセクタフォーマットにおいて、エンボス加工によって形成される部分から再生される再生信号が切替えスイッチ10に供給される期間には、和信号R+をフィルタ部11に供給する。また、光磁気的に記録される部分から再生される再生信号が切替えスイッチ10に供給される期間には、差信号R−をフィルタ部11に供給する。
【0015】
切替え信号Sは、例えば次のようにして生成される。すなわち、まず、再生信号から、セクタフォーマットに規定される所定のパターンから再生される信号を検出する。このような所定のパターンとしては、例えば後述するセクタマークSM等が用いられる。そして、かかる検出がなされた時点を基準として、後述するリードクロックを数える等の方法によって認識される所定時点において、切替え信号Sが生成される。
【0016】
フィルタ部11は、ノイズカットを行うローパスフィルタおよび波形等化を行う波形等化器から構成される。後述するように、この際の波形等化処理において用いられる波形等化特性は、ビタビ復号器13が行うビタビ復号方法に適合するものとされる。フィルタ部11の出力が供給されるA/D変換器12は、後述するようにして供給されるリードクロックDCKに従って再生信号値z[k]をサンプリングする。
ビタビ復号器13は、再生信号値z[k]に基づいて、ビタビ復号方法によって復号データを生成する。かかる復号データは、上述したようにして記録される記録データに対する最尤復号系列である。従って、復号エラーが無い場合には、復号データは、記録データと一致する。
【0017】
復号データは、コントローラ2に供給される。上述したように、記録データは、ユーザデータからチャンネル符号化等の符号化によって生成された符号語である。従って、復号エラーレートが充分低ければ、復号データは、符号語としての記録データとみなすことができる。コントロ―ラ2は、復号データに、上述のチャンネル符号化等の符号化に対応する復号化処理を施すことにより、ユーザデータ等を再生する。
【0018】
また、フィルタ部11の出力は、PLL部14にも供給される。PLL部14は、供給された信号に基づいて、リードクロックDCKを生成する。このPLL部14は、従来の構成の場合では、光磁気ディスク6中に記録される一定周波数の信号を利用して位相エラーを検出する構成とされている。リードクロックDCKは、コントローラ2、A/D変換器12、ビタビ復号器13等に供給される。コントローラ2、A/D変換器12、ビタビ復号器13の動作は、リードクロックDCKに従うタイミングでなされる。さらに、リードクロックDCKは、図示しないタイミングジェネレータに供給される。タイミングジェネレータは、例えば、記録/再生動作の切替え等の装置の動作タイミングを制御する信号を生成する。
【0019】
上述したような再生動作において、光磁気ディスク6から再生される再生信号に基いて、より正しい再生データを得るために、再生系の各構成要素の動作を再生信号の品質に応じて適正化することが行われる。このような操作をキャリブレーションと称する。
キャリブレーションは、再生信号の品質等が例えば加工精度等の記録媒体の特性、および例えば記録用レーザ光のパワーの変動、周囲温度等の記録/再生時の条件等によって変化する可能性があることに対応するために再生系のパラメータを適正化するためのものである。
【0020】
キャリブレーションの内容は、例えば光ピックアップ7の読取り用レーザ光パワーの調整、アンプ8、9のゲインの調整、フィルタ部11の波形等化特性の調整、およびビタビ復号器13の動作において用いられる振幅基準値の調整等である。このようなキャリブレーションは、電源投入直後または記録媒体の交換時等に、図1中には図示しない構成によって行われる。
【0021】
1−2 記録媒体のセクターフォーマット
以上のような構成の記録再生装置に対応するディスク6のセクタフォーマットを図3に示す。
光磁気ディスク6には、セクタを記録/再生の単位としてユーザデータが記録される。
図3(a)に示すように、1セクタは、記録/再生の順にしたがって、ヘッダ、ALPC,ギャップ、VFO3、シンク、データフィールド、バッファの各エリアに区分されている。なお図中に付した数字はバイト数を表す。
このような1セクタは、大きく分けてアドレス部(すなわちヘッダ)とデータ部が設けられ、その間にALPCギャップが位置する。
【0022】
なおセクタフォーマットとしては、ユーザデータ量が1024バイトのフォーマットと、512バイトのフォーマットとが用意されている。
ユーザデータ量が512バイトのフォーマットでは、データフィールドのバイト数が670バイトとされる。また、ユーザデータ量が1024バイトのフォーマットでは、データフィールドのバイト数が1278バイトとされる。これら2つのセクタフォーマットにおいて、63バイトのプリフォーマットされたへッダと、ALPCギャップエリアの18バイトは、同一とされている。
【0023】
図3(b)は、アドレス部としての63バイトのへッダを拡大して示している。へッダは、セクタマークSM(8バイト)、VFOフィールドのVFO1(26バイト)、アドレスマークAM(1バイト)、IDフィールドのID1(5バイト)、VFOフィールドのVFO2(16バイト)、アドレスマークAM(1バイト)、IDフィールドのID2(5バイト)、およびポストアンブルPA(1バイト)が順に配列された構成とされている。
【0024】
セクタマークSMは、セクタの開始を識別するためのマークであり、RLL(1,7)符号において生じないエンボス加工によって形成されたパターンを有する。
【0025】
ひとつのセクタにおけるVFOフィールドは、上述のPLL部14中のVFO(Variable Frequency Oscillator)を同期させるためのもので、VFO1、VFO2およびVFO3からなる。つまりこれらはPLL引込領域となる。
そして、アドレス部にはVFO1およびVFO2がエンボス加工によって形成されている。
なお、VFO3は図3(a)に示したようにデータ部に設けられ、そのセクタに対して記録動作が行われる際に光磁気的に書かれる。
【0026】
VFO1、VFO2、VFO3は、それぞれチャネルビットの‘0’と‘1’が交互に現れるパターン(2Tパターン)を有する。したがって、1チャネルビットの時間長に対応する時間をTとすると、VFOフィールドを再生したときに、2T毎にレベルが反転する再生信号が得られる。
【0027】
アドレスマークAMは、後続のIDフィールドのためのバイト同期を装置に対して与えるために使用され、RLL(1,7)符号において生じないエンボスされたパターンを有する。
IDフィールドは、セクタのアドレス、すなわち、トラック番号およびセクタ番号の情報と、これらの情報に対するエラー検出用のCRCバイトを有する。
5バイトの各IDフィールドID1、ID2はセクタのアドレス情報となるが、これらは同一のデータとされている。つまりひとつのセクタ内にはアドレスが2回記録されるものとなっている。
【0028】
ポストアンブルPAは、チャネルビットの‘0’と‘1’とが交互に現れるパターン(2Tパターン)を有する。
以上のようなアドレス部としてのヘッダ領域は、エンボス加工によりピットが形成されたプリフォーマット領域である。
【0029】
図3(c)は18バイトのALPCギャップエリアを拡大して示す。18バイトは、ギャップフィールド(5バイト)、フラグフィールド(5バイト)、ギャップフィールド(2バイト)、ALPC(6バイト)からなる。
【0030】
最初のギャップフィールド(5バイト)は、プリフォーマットされたへッダの後の最初のフィールドであり、これによって、ヘッダの読取りを完了した後の処理に装置が要する時間が確保される。2番目のギャップフィールド(2バイト)は、後のVFO3の位置のずれを許容するためのものである。
【0031】
5バイトのフラグフィールドは、セクタのデータが記録されるときに、連続した2Tパターンが記録される。
ALPC(Auto Laser Power Control)フィールドは、記録時のレーザパワーをテストするために設けられている。
【0032】
また、図3(a)のようにデータ部はVFO3、シンクフィールド、データフィールド、バッファフィールドから構成されるが、シンクフィールド(4バイト)は、続くデータフィールドのためのバイト同期を装置が得るために設けられており、所定のシンクパターンを有する。
【0033】
データフィールドは、ユーザデータを記録するために設けられる。670バイト場合は、512バイトのユーザデータと、144バイトのエラー検出、訂正用のパリティ等と、12バイトのセクタ書込みフラグと、2バイト(FF)とからなる。また、1278バイトの場合には、1024バイトのユーザデータと、242バイトのエラー検出、訂正用のパリティ等と、12バイトのセクタ書込みフラグとからなる。
なお図示していないが、データフィールドには所定の位置に同期のためのリシンクパターンが配されている。
バッファフィールドは、電気的、あるいは機械的な誤差に対する許容範囲として使用される。
【0034】
1−3 4値4状態ビタビ復号方法
以下、ビタビ復号器13によって行われるビタビ復号方法について説明する。上述したように、ユーザデータは、様々な符号化方法によって記録データとしての符号語に変換される。符号化方法は、記録媒体の性質および記録/再生方法等に応じて適切なものが採用される。図1に示した記録再生装置においては、ブロック符号化において、”1”と”1”の間の”0”の数を制限するRLL(Run Length Limited)符号化方法が用いられている。
【0035】
このようなRLL符号化方法と、上述したマークエッジ記録方法との組合わせによって記録されたテータから再生される再生信号を復号するために、ビタビ復号方法を用いることができる。
【0036】
このようなRLL符号化方法は、記録密度の向上、および再生動作の安定性の確保という2つの観点から、符号化方法に要求される条件に対応できるものである。まず、上述したように、マークエッジ記録方法は、記録データに基づいて後述するように生成されるプリコード出力における”1”を各ピットのエッジによって表現される極性の反転に対応させるものなので、”1”と”1”の間の”0”の数を多くする程、各ピットl個当たりに記録されるピット数を多くすることができる。したがって、記録密度を大きくすることができる。
【0037】
一方、再生系の動作タイミングを合わせるために必要な再生クロックDCKは、上述したように、再生信号に基づいてPLL部14によって生成される。このため、記録データにおいて”1”と”1”の間の”0”の数を多くすると、再生動作の際にPLL部14の動作が不安定となるので、再生動作全体が不安定なものとなる。
【0038】
これら2つの条件を考慮すると、”1”と”1”の間の”0”の数は、多過ぎたり、少な過ぎたりしない、適切な範囲内に設定される必要がある。このような、記録データ中の”0”の数の設定に関して、RLL符号化方法が有効となる。
【0039】
ところで、図4に示すように、上述したRLL(1,7)符号化方法とマークエッジ記録方法の組み合わせにおいては、記録データに基づいて生成されるプリコード出力中の”1”と”1”の間に最低1個の”0”が含まれるので、最小反転幅(RLmin)が2となる。このような、最小反転幅が2となる符号化方法が用いられる場合に、符号間干渉およびノイズ等の影響を受けている再生信号から記録データを復号する方法として、後述するように、4値4状態ビタビ復号方法を適用することができる。
【0040】
上述したように、再生信号には、フィルタ部11によって波形等化処理が施される。ビタビ復号方法の前段として行われるこのような波形等化処理には、符号間干渉を積極的に利用するパーシャルレスポンス方法が用いられる。この際に用いられる波形等化特性は、一般に(1+D)nで表されるパーシャルレスポンス特性の内から、記録/再生系の線記録密度およびMTF(Modulation Transfer Function)を考慮して決められる。
上述したRLL(1,7)符号化方法とマークエッジ記録方法の組み合わせによって記録されたデータに対して、PR(1,2,1)を用いる波形等化処理は、4値4状態ビタビ復号方法の前段となる。
【0041】
上述した図4のように、マークエッジ記録方法においては、光磁気ディスク等に対する実際の記録に先立って、上述のRLL符号化等によって符号化された記録データに基づくプリコードが行われる。各時点kにおける記録データ列をa[k]、これに基づくプリコード出方をb[k]とすると、プリコードは、以下のように行われる。
b[k]=mod2{a[k]+b[k−1]}・・・(1)
このようなプリコード出力b[k]が実際に光磁気ディスク6に記録される。
【0042】
このような記録データの再生時にフィルタ部11中の波形等化器によってなされる波形等化特性PR(1,2,1)での波形等化処理について説明する。但し、以下の説明においては、信号の振幅を規格化せずに、波形等化特性をPR(B,2A,B)とする。また、ノイズを考慮しない場合の再生信号の値をc[k]と表記する。さらに、ノイズを含む実際の再生信号(すなわち、記録媒体から再生された再生信号)をz[k]と表記する。
【0043】
PR(B,2A,B)は、ある時点kにおける再生信号の値に対して、時点kにおける振幅の寄与が振幅値の2A倍とされ、さらに前後の時点k−1およびk+1における振幅の寄与が各々の時点での信号の振幅のB倍とされるものである。したがって、再生信号の値の最大値は、時点k−l、k、k+1において何れもパルスが検出される場合である。このような場合には、再生信号の値の最大値は、以下のようになる。
【0044】
B+2A+B=2A+2B
また、再生信号の値の最少値は0となる。但し、実際の取り扱いにおいては、c[k]として、DC成分のA+Bを差し引いた以下のようなものが用いられる。
c[k]=B×b(k−2)+2A×b(k−1)+B×b[k]−A−B・・・(2)
【0045】
したがって、ノイズを考慮しない場合の再生信号c[k]は、A+B,A,−A,−A−Bの内の何れかの値をとることになる。
一般に、再生信号の性質を示す方法のひとつとして、例えば5個の時点を単位として、再生信号を多数重ね合わせたものをアイパターンと称する。この発明を適用することができる記録再生装置において、PR(B,2A,B)の下で波形等化処理された実際の再生信号z[k]についてのアイパターンの一例を図5に示す。図5から各時点における再生信号z[k]の値は、ノイズによるばらつきを有するが、ほぼ、A+B,A,−A,−A−Bの内の何れかになることが確認できる。後述するように、A+B,A,−A,−A−Bの値は、識別点として用いられる。
【0046】
上述したような波形等化処理が施された再生信号を復号するビタビ復号方法の概略は、ステップ1乃至ステップ3に示すようにされる。
ステップ1・・・・符号化方法および記録媒体に対する記録方法に基づいて、生じ得る全ての状態を特定する。
ステップ2・・・ある時点における各状態を起点として、次の時点において生じ得る全ての状態遷移と、各状態遷移が生じるときの記録データa[k]および再生信号の値c[k]を特定する。
なお、ステップ1および2の結果として特定された全ての状態および状態遷移と、各状態遷移が生じるときの{記録データの値a[k]/再生信号の値c[k]}を模式的に示すと後で詳しく説明する図7に示すような状態遷移図となる。そして、この状態遷移図に基づく復号動作を行うように、ビタビ複号器13が構成される。
【0047】
ステップ▲3▼・・・ステップ▲1▼、▲2▼に示す状態遷移を前提として、記録媒体から各時点kにおいて再生される再生信号z[k]に基づく最尤な状態遷移が選択される。但し、上述したように、再生信号z[k]は、ビタビ復号器13に供給される前段において波形等化されたものである。
このような最尤な状態遷移の選択が行われる毎に、選択された状態遷移に対応して、記録データa[k]の値を復号値とすることによって、記録データに対する最尤復号値系列しての復号データa’[k]を得ることができる。但し、各時点kにおける復号データ値から、最尤復号値系列とするための構成は、後述するビタビ復号器13中のPMU23である。
従って、上述したように、復号データ列a’[k]は、復号エラーがない場合には、記録データ列a[k]と一致する。
【0048】
以下、上述のステップ▲1▼〜▲3▼について詳細に説明する。
まずステップ▲1▼について詳しく説明する。ここで用いられる状態として、ある時点kにおける状態を、時点kおよびそれ以前のプリコード出力を用いて次のように定義する。すなわち、n=b[k]、m=b[k−1]、l=b[k−2]のときの状態をSnmlと定義する。
このような定義によって、23=8個の状態があると考えられるが、上述したように、実際に生じ得る状態は、符号化方法等に基づいて制限される。RLL(1,7)符号として符号化された記録データ列a[k]においては、”1”と”1”の間に最低1個の”0”が含まれるので、2個以上の”1”が連続することがない。記録データ列a[k]に課されるこのような条件に基づいてプリコード出力b[k]について一定の条件が課され、その結果として生じ得る状態に制限が加えられる。
【0049】
このような制限について具体的に説明する。上述したようにRLL(1,7)符号化によって生成される記録データ列中に、2個以上の”1”が連続するもの、すなわち以下のパターンはあり得ない。
a[k]=1,a[k−1]=1,a[k−2]=1 ・・・ (3)
a[k]=1,a[k−1]=1,a[k−2]=0 ・・・ (4)
a[k]=0,a[k−1]=1,a[k−2]=1 ・・・ (5)
記録データ列に課されるこのような条件に基づいて、上述の(1)式にしたがってb[k]について課される条件について検討すると、上記Snmlの定義において、S010およびS101の2個の状態は生じ得ないことがわかる。したがって、生じ得る状態は、23−2=6個である。
【0050】
次に、ステップ▲2▼について詳しく説明する。ある時点jにおける状態を起点として、次の時点j+1において生じ得る状態を求めるためには、時点j+1における記録データの値a[j+1]が1となる場合、または0となる場合に分けて調べる必要がある。
【0051】
ここでは、状態S000を例として説明する。上述の(1)式にしたがって、S000すなわちn=b[j]=0,m=b[j−1]=0,l=b[j−2]=0とプリコードされる記録データとしては、以下の2個が考えられる。
a[j]=0、a[j−1]=0、a[j−2]=1・・・(6)
a[j]=0、a[j−1]=0、a[j−2]=0・・・(7)
【0052】
・・・a[j+1]=1のとき
このとき、(1)式にしたがって、b[j+1]は、以下のように計算される。
したがって、再生信号c[j]の値は、上述の(2)式にしたがって、次のように計算される。
【0053】
【0054】
また、次の時点[j+1]での状態Snmlについては、n=b[j+1],m=b[j],l=b[j−1]である。そして、上述したようにb[j+1]=1,b[j]=0,b[j−1]=0となるので、次の時点、j+1における状態は、S100である。したがって、a[j+1]=1の場合には、S000→S100という遷移が生じることが特定できる。
【0055】
・・・ a[j+1]=0のとき
このとき、(1)式にしたがって、b[j+1]は、以下のように計算される。
したがって、再生信号c[j+1]の値は、上述の(2)式にしたがって、次のように計算される。
【0056】
【0057】
また、次の時点j+1における状態Snmlについては、n=b[j+1],m=b[j],l=b[j−1]である。そして、上述したようにb[j+1]=0,b[j]=0,b[j−1]=0となるので、次の時点における状態は、S000である。したがって、a[j+1]=0の場合には、S000→S000という遷移が生じることが特定できる。
【0058】
このようにして、時点jにおけるS000以外の各状態についても、それらを起点として次の時点j+1において生じ得る状態遷移と、そのような各状態遷移が生じるときの記録テータ値a[j+1]および再生信号値c[j+1]との対応を求めることができる。
【0059】
上述したようにして、各状態について、それらを起点として生じ得る状態遷移と、各状態遷移が生じるときの記録データの値および再生信号の値との対応を求め、模式図として示したのが図6である。上述の時点jおよびj+1は、特別の時点ではない。したがって、上述したようにして求まる、生じ得る状態遷移とそれらに伴う記録データの値および再生信号の値との対応は、任意の時点において適用することができる。このため、図6においては、任意の時点kにおいて生じる状態遷移に伴う記録データの値をa[k]と表記し、再生信号の値をc[k]と表記する。
【0060】
図6において、状態遷移は矢印によって表される。また、各矢印に付した符号が{記録データ値a[k]/再生信号値c[k]}を示している。状態S000,S001,S111およびS110を起点とする状態遷移は、2通りあるのに対して、状態S011およびS100を起点として生じ得る遷移は1通りのみである。
【0061】
さらに、図6においてS000とS001は、何れもa[k]=1に対しては、c[k]=−Aという値を取り、S100に遷移している。一方、a[k]=0に対しては、c[k]=−A−Bという値を取りS000に遷移している。
また、S111とS110も同様に、同じa[k+l]の値について同じc[k+1]の値を取り、且つ、同じ状態に遷移している。したがって、S000とS001をまとめてS0と表現し、S111とS110をまとめてS2と表現することができる。さらに、S011をS3とし、S100をS1と表現することにして、整理したものが図7である。
【0062】
図7が4値4状態ビタビ復号方法に用いられる状態遷移図である。
図7には、4値4状態ビタビ復号方法に用いられる状態遷移として、S0〜S3の4個の状態、および再生信号c[k+1]の値としての−A−B,−A,A,A+Bの4個の値が示されている。状態S0およびS2を起点とする状態遷移は、2通りあるのに対して、状態S1およびS3を起点とする状態遷移は1通りのみである。
【0063】
図7に対応して、状態遷移を時間に沿って表現する形式として、図8に示すようなトレリス線図が用いられる。図8では、2個の時点間の遷移を示しているが、さらに多数の時点間の遷移を示すこともできる。時間経過に伴い、順次右の時点に遷移していく様子が表現される。したがって、水平な矢印は、例えばS0→S0等の同じ状態への遷移を表し、斜めの矢印は、例えばS1→S2等の異なる状態への遷移を表すことになる。
【0064】
上述したビタビ復号方法のステップ▲3▼、すなわち図7に示した状態遷移図を前提として、ノイズを含む実際の再生信号z[k]から最尤な状態遷移を選択する方法について以下に説明する。
【0065】
最尤な状態遷移を選択するためには、まず、ある時点kにおける状態について、その状態に至る過程において経由してきた複数時点間の状態遷移の尤度の和を計算し、さらに、計算された尤度の和を比較して、最尤の復号系列を選択することが必要である。このような尤度の和をパスメトリックと称する。
【0066】
パスメトリックを計算するためには、まず、隣接する時点間の状態遷移の尤度を計算することが必要となる。このような尤度の計算は、上述の状態遷移図を参照して、再生信号z[k]の値に基づいて以下のようになされる。まず、一般的な説明として、時点k−1において、状態Saである場合について考える。この時、ビタビ復号器31に再生信号z[k]が入力された場合に、状態Sbへの状態遷移が生じる尤度が次式に従って計算される。但し、状態Saおよび状態Sbは、図7の状態遷移図に記載されている4個の状態の何れかとする。
【0067】
(z[k]−c(Sa,Sb))2 ・・・(12)
上式において、c(Sa,Sb)は、状態Saから状態Sbへの状態遷移について、図7の状態遷移図に記載されている再生信号の値である。すなわち、上述の図7において、例えば状態遷移S0→S1について、−Aと算出されている値である。従って、式(12)は、ノイズを含む実際の再生信号z[k]の値と、ノイズを考慮せずに計算された再生信号c(Sa,Sb)の値の間のユークリッド距離となる。ある時点におけるパスメトリックは、その時点に至るまでのこのような隣接時点間の状態遷移の尤度の総和として定義される。
【0068】
ところで、時点kにおいて状態Saである場合を考える。この場合に、時点k−1において状態Saに遷移し得る状態をSpとすれば、パスメトリックL(Sa,k)は、時点k−1におけるパスメトリックを用いて次式のように計算される。
【0069】
L(Sa,k)
=L(Sp,k−1)+(z[k]−c(Sp,Sa))2 ・・・(13)
すなわち、時点k−1において状態Spに至った場合のパスメトリックL(Sp,k−1)と、時点k−1と時点kの間で生じるSp→Saなる状態遷移の尤度(z[k]−c(Sp,Sa))2とを加算することによって、パスメトリックL(Sa,k)が計算される。この(z[k]−c(Sp,Sa))2のような、最新の状態遷移の尤度は、ブランチメトリックと称される。但し、ここでのブランチメトリックは、後述するビタビ復号器13中のブランチメトリック計算回路(BMC)20によって計算されるブランチメトリック、すなわち、規格化メトリックに対応するブランチメトリックとは、別のものであることに注意が必要である。
【0070】
また、時点kにおいて状態Saとなる場合に、時点k−1における状態(状態Saに遷移し得る状態)が複数個存在することがある。図7においては、状態S0およびS2がこのような場合である。すなわち時点kにおいて状態S0となる場合は、時点k−1としてあり得る状態は、S0とS3の2個である。また、時点kにおいて状態S2となる場合に、時点k−1においてあり得る状態は、S1とS2の2個である。一般的な説明として、時点kにおいて状態Saであり、且つ、時点k−1において状態Saに遷移し得る状態がSpおよびSqの2個である場合に、パスメトリックL(Sa,k)は、次式のように計算される。
【0071】
すなわち、時点k−1において状態Spであり、Sp→Saなる状態遷移によって状態Saに至った場合と、時点k−1において状態Sqであり、Sq→Saなる状態遷移によって状態Saに至った場合の各々について、尤度の和を計算する。そして、各々の計算値を比較し、より小さい値を時点kにおける状態Saに関するパスメトリックL(Sa,k)とする。
【0072】
このようなパスメトリックの計算を、図7を用いて上述した4値4状態について具体的に適用すると、時点kにおける各状態S0,S1,S2およびS3についてのパスメトリックL(0,k),L(1,k),L(2,k)およびL(3,k)は、時点k−1における各状態S0〜S3についてのパスメトリックL(0,k−1)〜L(3,k−1)を用いて以下のように計算できる。
【0073】
【0074】
上述したように、このようにして計算されるパスメトリックの値を比較して、最尤な状態遷移が選択されれば良い。ところで、最尤な状態遷移を選択するためには、パスメトリックの値そのものを計算しなくても、パスメトリックの値の比較ができれば良い。そこで、実際の4値4状態ビタビ復号方法においては、パスメトリックの代わりに以下に定義するような規格化パスメトリックを用いることにより、各時点kにおけるz[k]に基づく計算を容易なものとするようになされる。
【0075】
m(i,k)
=[L(i,k)−z[k]2−(A+B)2]/2/(A+B)・・・(19)
式(19)をS0〜S3の各状態に適用すると、具体的な規格化パスメトリックは、以下のように2乗計算を含まないものとなる。このため、後述する、加算、比較、選択回路(ACS)21における計算を容易なものとすることができる。
【0076】
但し、式(20)〜(23)中のαおよびβは、以下のようなものである。
【0077】
α=A/(A+B) ・・・(24)
β=B×(B+2×A)/2/(A+B) ・・・(25)
このような規格化パスメトリックに基づく4値4状態ビタビ復号方法における状態遷移の条件について図9に示す。上述の4個の規格化パスメトリックの内に、2個から1個を選択する式が2つあるので、2×2=4通りの条件がある。
【0078】
1−4 4値4状態ビタビ復号器
上述した4値4状態ビタビ復号方法を実現するビタビ復号器13について以下に説明する。
図10にビタビ復号器13の全体構成を示す。ビタビ復号器13は、ブランチメトリック計算回路(以下、BMCと表記する)20、加算、比較および選択回路(以下、ACSと表記する)21、圧縮およびラッチ回路22およびパスメモリユニット(以下、PMUと表記する)23から構成される。これらの各構成要素に対して上述のリードクロックDCK(以下の説明においては、単にクロックと表記する)が供給されることにより、ビタビ復号器13全体の動作タイミングが合わされる。以下、各構成要素について説明する。
【0079】
BMC20は、入力される再生信号z[k]に基づいて、規格化パスメトリックに対応するブランチメトリックの値BM0,BM1,BM2およびBM3を計算する。BM0〜BM3は、上述の式(20)〜(23)の規格化パスメトリックを計算するために必要とされる、以下のようなものである。
【0080】
BM0=z [k] ・・・(26)
BM1=α×z[k]−β ・・・(27)
BM2=−z [k] ・・・(28)
BM3=−α×z [k] −β ・・・(29)
この計算に必要なαおよびβは、上述の式(24)および(25)に従ってBMC20によって計算される基準値である。かかる計算は、例えば再生信号z[k]に基づくエンベロープ検出等の方法で検出され、BMC20に供給される識別点−A−B,−A,AおよびA+Bの値に基づいてなされる。
【0081】
BM0〜BM3の値は、ACS21に供給される。一方、ACS21は、後述するような圧縮およびラッチ回路22から、1クロック前の規格化パスメトリックの値(但し、後述するように圧縮のなされたもの)M0,M1,M2およびM3が供給される。そして、M0〜M3と、BM0〜BM3とを加算して、後述するようにして、最新の規格化パスメトリックの値L0,L1,L2およびL3を計算する。M0〜M3が圧縮のなされたものであるため、L0〜L3を計算する際のオーバーフローを避けることができる。
【0082】
さらに、ACS21は、最新の規格化パスメトリックの値L0〜L3に基づいて、後述するように、最尤な状態遷移を選択し、また、選択結果に対応して、パスメモリ23に供給される選択信号SEL0およびSEL2を「High」または「Low」とする。
【0083】
また、ACS21は、L0〜L3を圧縮およびラッチ回路22に供給する。圧縮およびラッチ回路22は、供給されるL0〜L3を圧縮した後にラッチする。その後、1クロック前の規格化パスメトリックM0〜M3としてACS21に供給する。
【0084】
この際の圧縮の方法としては、例えば以下に示すように、最新の規格化パスメトリックL0〜L3から、そのうちの1個、例えばL0を一律に差し引く等の方法が用いられる。
【0085】
M0=L0−L0 ・・・(30)
M1=L1−L0 ・・・(31)
M2=L2−L0 ・・・(32)
M3=L3−L0 ・・・(33)
この結果として、M0が常に0の値をとることになるが、以下の説明においては、一般性を損なわないために、このままM0と表記する。式(30)〜(33)によって計算されるM0〜M3の値の差は、L0〜L3の値の差と等しいものとなる。上述したように、最尤な状態遷移の選択においては、規格化パスメトリック間の値の差のみが問題となる。従って、このような圧縮方法は、最尤な状態遷移の選択結果に影響せずに規格化パスメトリックの値を圧縮し、オーバーフローを防止する方法として有効である。このように、ACS21と圧縮およびラッチ回路22は、規格化パスメトリックの計算に関するループを構成する。
【0086】
上述のACS21について、図11を参照してより詳細に説明する。ACS21は、6個の加算器51、52、53、54、56、58および2個の比較器55、57から構成される。一方、上述したようにACS21には、1クロック前の圧縮された規格化パスメトリックの値M0〜M3および規格化パスメトリックに対応するブランチメトリックの値BM0〜BM3が供給される。
【0087】
加算器51には、M0およびBM0が供給される。加算器51は、これらを加算して以下のようなL00を算出する。
【0088】
L00=M0+BM0 ・・・(34)
上述したように、M0は、時点k−1において状態S0に至った場合に、経由してきた状態遷移の総和に対応する圧縮された規格化パスメトリックである。また、BM0は、時点kにおいて入力される再生信号z[k]に基づいて上述の(26)式に従って計算されるもの、すなわちz[k]の値そのものである。従って、式(34)の値は、上述したような圧縮の作用の下に、上述の式(20)中のm(0,k−1)+z[k]の値を計算したものとなる。すなわち、時点k−1において状態S0であり、時点kにおける状態遷移S0→S0によって最終的に状態遷移S0に至った場合に対応する計算値である。
【0089】
一方、加算器52には、M3およびBM1が供給される。加算器51は、これらを加算して以下のようなL30を算出する。
【0090】
L30=M3+BM1 ・・・(35)
上述したように、M3は、時点k−1において状態S3に至った場合に、経由してきた状態遷移の総和に対応する、圧縮された規格化パスメトリックである。また、BM1は、時点kにおいて入力される再生信号z[k]に基づいて上述の(27)式に従って計算されるもの、すなわちα×z[k]−βである。従って、式(35)の値は、上述したような圧縮の作用の下に、上述の式(20)中のm(3,k−1)+α×z[k]−βの値を計算したものとなる。すなわち、時点k−1において状態S3であり、時点kにおける状態遷移S3→S0によって最終的に状態遷移S0に至った場合に対応する計算値である。
【0091】
上述のL00およびL30は、比較器55に供給される。比較器55は、L00およびL30の値を比較し、小さい方を最新の規格化パスメトリックL0とすると共に、選択結果に応じて、上述したように選択信号SEL0の極性を切替える。このような構成は、式(20)において、最小値が選択されることに対応するものである。すなわち、L00<L30の場合(この時は、S0→S0が選択される)に、L00をL0として出力し、且つ、SEL0を例えば、「Low」とする。また、L30<L00の場合(この時は、S3→S0が選択される)には、L30をL0として出力し、且つ、SEL0を例えば「High」とする。SEL0は、後述するように、状態S0に対応するA型パスメモリ24に供給される。
【0092】
このように、加算器51、52および比較器55は、上述の式(20)に対応して、S0→S0とS3→S0の内から、時点kにおける状態遷移として最尤なものを選択する動作を行う。そして、選択結果に応じて、最新の規格化パスメトリックL0および選択信号SEL0を出力する。
【0093】
また、加算器56には、M0およびBM1が供給される。加算器51は、これらを加算して以下のようなL1を算出する。
【0094】
L1=M0+BM1 ・・・(36)
上述したように、M0は、時点k−1において状態S0に至った場合に、経由してきた状態遷移の総和に対応する圧縮された規格化パスメトリックである。また、BM1は、時点kにおいて入力される再生信号z[k]に基づいて上述の(27)式に従って計算されるもの、すなわちα×z[k]−βである。従って、式(36)の値は、上述したような圧縮の作用の下に、上述の式(21)の右辺m(0,k−1)+α×z[k]−βの値を計算したものとなる。すなわち、時点k−1において状態S0であり、時点kにおける状態遷移S0→S1によって最終的に状態遷移S1に至った場合に対応する計算値である。式(21)が値の選択を行わないことに対応して、加算器56の出力がそのまま最新の規格化パスメトリックL1とされる。
【0095】
加算器53には、M2およびBM2が供給される。加算器53は、これらを加算して以下のようなL22を算出する。
【0096】
L22=M2+BM2 ・・・(37)
上述したように、M2は、時点k−1において状態S2に至った場合に、経由してきた状態遷移の総和に対応する圧縮された規格化パスメトリックである。また、BM0は、時点kにおいて入力される再生信号z[k]に基づいて上述の(28)式に従って計算されるもの、すなわち−z[k]である。従って、式(37)の値は、上述したような圧縮の作用の下に、上述の式(22)中のm(2,k−1)−z[k]の値を計算したものとなる。すなわち、時点k−1において状態S2であり、時点kにおける状態遷移S2→S2によって最終的に状態遷移S2に至った場合に対応する計算値である。
【0097】
一方、加算器54には、M1およびBM3が供給される。加算器53は、これらを加算して以下のようなL12を算出する。
【0098】
L12=M1+BM3 ・・・(38)
上述したように、M1は、時点k−1において状態S1に至った場合に、経由してきた状態遷移の総和に対応する圧縮された規格化パスメトリックである。また、BM3は、時点kにおいて入力される再生信号z[k]に基づいて上述の(29)式に従って計算されるもの、すなわち−α×z[k]−βである。従って、式(38)の値は、上述したような圧縮の作用の下に、上述の式(22)中のm(1,k−1)−α×z[k]−βの値を計算したものとなる。すなわち、時点k−1において状態S1であり、時点kにおける状態遷移S1→S2によって最終的に状態遷移S2に至った場合に対応する計算値である。
【0099】
上述のL22およびL12は、比較器57に供給される。比較器57は、L22およびL12の値を比較し、小さい方を最新の規格化パスメトリックL2とすると共に、選択結果に応じて、上述したように選択信号SEL2の極性を切替える。このような構成は、式(22)において、最小値が選択されることに対応するものである。すなわち、L22<L12の場合(この時は、S2→S2が選択される)に、L22をL2として出力し、且つ、SEL2を例えば、「Low」とする。また、L12<L22の場合(この時は、S1→S2が選択される)には、L12をL2として出力し、且つ、SEL2を例えば「High」とする。SEL2は、後述するように、状態S2に対応するA型パスメモリ26に供給される。
【0100】
このように、加算器53、54および比較器57は、上述の式(22)に対応して、S1→S2とS2→S2の内から、時点kにおける状態遷移として最尤なものを選択する。そして、選択結果に応じて、最新の規格化パスメトリックL2および選択信号SEL2を出力する。
【0101】
また、加算器58には、M2およびBM3が供給される。加算器58は、これらを加算して以下のようなL3を算出する。
【0102】
L3=M2+BM3 ・・・(39)
上述したように、M2は、時点k−1において状態S2に至った場合に、経由してきた状態遷移の総和に対応する圧縮された規格化パスメトリックである。また、BM3は、時点kにおいて入力される再生信号z[k]に基づいて上述の(29)式に従って計算されるもの、すなわち−α×z[k]−βである。従って、式(39)の値は、上述したような圧縮の作用の下に、上述の式(23)の右辺m(2,k−1)−α×z[k]−βの値を計算したものとなる。すなわち、時点k−1において状態S0であり、時点kにおける状態遷移S2→S3によって最終的に状態遷移S3に至った場合に対応する計算値である。式(23)が値の選択を行わないことに対応して、加算器58の出力がそのまま最新の規格化パスメトリックL3とされる。
【0103】
上述したようにして、ACS21が出力するSEL0およびSEL2に従って、パスメモリユニット(以下、PMUと表記する)23が動作することによって、記録データa[k]に対する最尤復号系列としての復号データa’[k]が生成される。PMU23は、図7に示した4個の状態間の状態遷移に対応するために、2個のA型パスメモリおよび2個のB型パスメモリから構成される。
【0104】
A型パスメモリは、その状態に至る遷移として2つの遷移(すなわち、自分自身からの遷移と、他の1個の状態からの遷移)を有し、且つ、その状態を起点とする2つの遷移(すなわち、自分自身に至る遷移と他の1個の状態に至る遷移)を有する状態に対応するための構成とされる。従って、A型パスメモリは、図7に示した4個の状態の内、S0およびS2に対応するものである。
【0105】
一方、B型パスメモリは、その状態に至る遷移が1つのみであり、且つ、その状態を起点とする遷移が1つのみである状態に対応するための構成とされる。従って、B型パスメモリは、図7に示した4個の状態の内、S1およびS3に対応するものである。
【0106】
これら2個のA型パスメモリおよび2個のB型パスメモリが図7に示した状態遷移図に従う動作を行うために、PMU23において、図10に示すような復号データの受渡しがなされるように構成される。すなわち、A型パスメモリ24がS0に対応し、A型パスメモリ26がS2に対応する。また、B型パスメモリ25がS1に対応し、また、B型パスメモリ27がS3に対応する。このように構成すれは、S0を起点として生じ得る状態遷移がS0→S0およびS0→S1であり、S2を起点として生じ得る状態遷移がS2→S2およびS2→S3であることに合致する。また、S1を起点として生じ得る状態遷移がS1→S2のみであり、S3を起点として生じ得る状態遷移がS3→S0のみであることにも合致する。
【0107】
A型パスメモリ24について、その詳細な構成を図12に示す。A型パスメモリ24は、パスメモリ長に対応する個数のフリップフロップとセレクタを、交互に接続したものである。図12には、14ビットのデコードデータ長に対応する構成を示した。すなわち、14個のセレクタ31-1〜31-14および15個のフリップフロップ30-0〜30-14を有するものである。セレクタ31-1〜31-14は、何れも2個のデータを受取リ、その内の1個を選択的に後段に供給するものである。また、フリップフロップ30-0〜30-14にクロックが供給されることにより、A型パスメモリ24全体の動作タイミングが合わされる。
【0108】
図7を用いて上述したように、状態S0に至る遷移は、S0→S0すなわち自分自身から継承する遷移、およびS3→S0である。このような状況に対応する構成として、各セレクタは、前段のフリップフロップから供給されるデータすなわちS0→S0に対応する復号データと、状態S3に対応するB型パスメモリ27から供給されるデータすなわちS3→S0に対応する復号データPM3とを受取る。さらに、各セレクタは、ACS21からSEL0を供給される。そして、SEL0の極牲に応じて、供給される2個の復号データの内の一方を後段のフリップフロップに供給する。また、このようにして後段のフリップフロップに供給される復号データは、状態S1に対応するB型パスメモリ25にもPM0として供給される。
【0109】
すなわち、例えばセレクタ31-14は、前段のフリップフロップ30-13から供給されるデータと、B型パスメモリ27から供給される14ビットからなるPM3の14番目のビット位置のデータとを受取る。そして、これら2個のデータの内から以下のようにして選択したデータを、後段のフリップフロップ30-14に供給する。上述したようにSEL0は、選択結果に応じて、「Low」または「High」とされる。SEL0が例えば「Low」の時は、前段のフリップフロップ30-13からのデータが選択されるようになされる。また、SEL0が例えば「High」の時は、PM3の14番目のビット位置のデータが選択されるようになされる。選択されたデータは、後段のフリップフロップ30-14に供給され、また、PM0の14番目のビット位置のデータとして、状態S1に対応するB型パスメモリ25に供給される。
【0110】
A型パスメモリ24中の他のセレクタ31-1〜31-13においても、SEL0の極性に応じて、同様な動作が行われる。従って、A型パスメモリ24全体としては、SEL0が例えば「Low」の時は、A型パスメモリ24中で、各々のフリップフロップがその前段に位置するフリップフロップのデータを継承するシリアルシフトを行う。また、SEL0が例えば「High」の時は、B型パスメモリ27から供給される14ビットからなる復号データPM3を継承するパラレルロードを行う。何れの場合にも、継承される復号データは、B型パスメモリ25に14ビットの復号データPM0として供給される。
【0111】
また、最初の処理段となるフリップフロップ300には、クロックに同期して常に’0’が入力される。かかる動作は、S0に至る状態遷移S0→S0とS2→S0の何れにおいても、図7に示すように、復号データが’0’なので、最新の復号データは、常に’0’となることに対応している。
【0112】
上述したように、S2に対応するA型パスメモリ26についても、構成自体は、A型パスメモリ24と全く同様である。但し、ACS21から入力される選択信号は、SEL2である。また、図6に示すように状態S2に至る遷移としては、S2→S2すなわち自分自身から継承する遷移と、S1→S2とがある。このため、状態S1に対応するB型パスメモリ25からPM1を供給される。さらに、状態S2を起点として生じ得る状態がS2すなわち自分自身と、S3であることに対応して、状態S3に対応するB型パスメモリ27にPM2を供給する。
【0113】
また、S2に対応するA型パスメモリ26においても、最初の処理段となるフリップフロップには、クロックに同期して常に’0’が入力される。かかる動作は、S2に至る状態遷移S2→S2とS1→S0の何れにおいても、図7に示すように、復号データが’0’なので、最新の復号データは、常に’0’となることに対応している。
【0114】
他方、B型パスメモリ25について、その詳細な構成を図13に示す。B型パスメモリ25は、パスメモリ長に対応する個数のフリップフロップを接続したものである。図13には、14ビットのデコードデータ長に対応する構成を示した。すなわち、15個のフリップフロップ32-0〜32-14を有するものである。フリップフロップ32-0〜32-14にクロックが供給されることにより、B型パスメモリ25全体の動作タイミングが合わされる。
【0115】
各フリップフロップ32-1〜32-14には、状態S0に対応するA型パスメモリ24から、14ビットの復号データがPM0として供給される。例えば、フリップフロップ32-1には、PM0の1ビット目が供給される。各フリップフロップ32-1〜32-14は、供給された値を1クロックの間保持する。そして、状態S2に対応するA型パスメモリ26に、14ビットの復号データPMLとして出力する。例えば、フリップフロップ32-1は、PMLの2ビット目を出力する。
【0116】
B型パスメモリ25中の他のセレクタ32-1〜32-13においても、同様な動作が行われる。従って、B型パスメモリ25全体としては、A型パスメモリ24から供給される14ビットからなる復号データPM0を受取リ、またA型パスメモリ26に14ビットからなる復号データPM1を供給する。
【0117】
また、フリップフロップ32-0には、クロックに同期して常に’1’が入力される。かかる動作は、図7に示したように、最新の状態遷移がS0→S1である場合に復号データが’1’であることに対応している。
【0118】
また、上述のように、状態S3に対応するB型パスメモリ27についても、B型パスメモリ25と全く同様な構成とされる。但し、図7に示すように状態S3に至る遷移は、S2→S3なので、状態S2に対応するA型パスメモリ26からPM2を供給される。さらに、状態S3を起点として生じ得る状態がS0であることに対応して、状態S0に対応するA型パスメモリ24にPM3を供給するようになされる。B型パスメモリ27においても、最初の処理段となるフリップフロップには、クロックに同期して常に’1’が入力される。かかる動作は、図7に示したように、最新の状態遷移がS2→S3である場合に復号データが’1’であることに対応している。
【0119】
上述したようにして、PMU23中の4個のパスメモリは、各々復号データを生成する。このようにして生成される4個の復号データは、常に正確なビタビ復号動作がなされる場合には、互いに一致することになる。ところで、実際のビタビ復号動作においては、4個の復号データに不一致が生じることも起こり得る。このような不一致は、再生信号に含まれるノイズの影響等により、上述の識別点AおよびBを検出する際に誤差が生じる等の要因により、ビタビ復号動作が不正確なものとなることによって生じる。
【0120】
一般に、このような不一致が生じる確率は、再生信号の品質に対応してパスメモリの処理段数(メモリ長)を充分に大きく設定することによって減少させることができる。すなわち、再生信号のC/N等の品質が良い場合には、パスメモリの処理段数が比較的小さくても復号データ間の不一致が生じる確率は小さい。これに対して、再生信号の品質が良くない場合には、上述の不一致が生じる確率を小さくするためには、パスメモリの処理段数を大きくする必要がある。再生信号の品質に対してパスメモリの処理段数が比較的小さくて、復号データ間の不一致が生じる確率を充分に低くすることができない場合には、4個の復号データから、例えは多数決等の方法によって、より的確なものを選択するような、図示しない構成がPMU23中の4個のパスメモリの後段に設けられる。
【0121】
1−5 4値4状態ビタビ復号方法以外のビタビ復号方法
上述した4値4状態ビタビ復号方法は、フィルタ部11において用いられる波形等化特性がPR(1,2,1)であり、且つ、記録データとしてRLL(1,7)符号が採用される場合に用いられる。例えば、記録線密度0.40μm,レーザ波長685nm,NA=0.55の場合には、波形等化特性をPR(1,2,1)とし、4値4状態ビタビ復号方法を用いることが最適となる。他方、波形等化特性または記録データを生成するための符号化方法に応じて、他の種類のビタビ復号方法が用いられることもある。
【0122】
例えば、波形等化特性がPR(1,1)であり、且つ、記録データとしてRLL(1,7)符号が用いられる場合には、3値4状態ビタビ復号方法が用いられる。また、波形等化特性がPR(1,3,3,1)であり、且つ、記録データとしてRLL(1,7)符号が用いられる場合には、7値6状態ビタビ復号方法が用いられる。このようなビタビ復号方法の内、何れを用いるかを選択するための要素の1つとなる波形等化特性は、再生信号上の符号間干渉に適合する程度が良いものが採用される。従って、上述したように、線記録密度およびMTFを考慮して最適なものとされる。
【0123】
2.実施の形態の記録再生装置
2−1 状態データを使用した4値4状態ビタビ復号方法
上述した光磁気ディスク装置の一例中のビタビ復号器13は、再生信号値に基づいて選択した最尤な状態遷移に対応して復号データ値の系列としての復号データを生成するものである。これに対して、復号データ値の代わりに状態そのものを表現する状態データ値を用いることによって、選択される状態遷移そのものを表現する状態データを生成することも可能である。このような場合には、上述の光磁気ディスク装置の一例におけるパスメモリユニットPMUの代わりに、後述するようにして状態データ値の系列を生成するステータスメモリユニット(以下、SMUと表記する)が用いられる。後述するように、この発明の実施の一形態では、PLLの位相エラーの抽出タイミングをこのような状態データで表される状態遷移に基づいて生成する。
【0124】
例えば4値4状態ビタビ復号方法においては、4個の状態を2ビットで表現できるので、このような2ビットのデータを状態データ値として用いることができる。そこで、図7中のS0,S1,S2,S3を、それぞれ2ビットの状態データ値、00,01,11,10を用いて表現することができる。そこで、以下の実施の形態としての記録再生装置の説明においては、図7中のS0,S1,S2,S3をそれぞれS00,S01,S11,S10と表記することにし、4値4状態ビタビ復号方法の状態遷移図として、図7の代わりに図14を用いる。
なお、図14では、Cpqrとして6個の識別点の値(PLL(1,7),PR(B,2A,B)の場合)を示している。p,q,rはそれぞれb[j−1],b[j],b[j+1]を表現している。
【0125】
また、以下の説明においては、波形等化特性として、上述のPR(B,2A,B)の代わりに、規格化されたものすなわちPR(1,2,1)を前提とする。このため、識別点の値すなわちノイズを考慮しない計算によって求まる再生信号値c[k]は、図7中の−A−B,−A,A,A+Bの代わりにそれぞれ0、1、3、4と表現される。この場合、C000が「0」、C100及びC001が「1」、C011及びC110が「3」、C111が「4」に相当する。
【0126】
さらに、規格化パスメトリックを計算する式(20)〜(24)中で、最新の状態遷移に対応する全部で6個の加算部分(例えば、式(20)においては、S0→S0に対応するz[k]およびS3→S0に対応するα×z[k]−β)についても、図14における状態の表記方法に従って以下のように表記することにする。かかる加算部分は、式(13)によって定義されるブランチメトリックとは異なるものであるが、以下の説明においては、表記を簡潔にするために、かかる加算部分をブランチメトリックと表記する。
【0127】
まず、遷移前の状態と遷移後の状態を表記するそれぞれ2ビットの状態データ値を書き並べて4個の数字の列とする。次に、中央寄りの2個の(すなわち2番目と3番目の)数字を1個の数字とすることによって、3個の数字の列として、1リードクロックの間に生じ得るブランチメトリックを表記する。例えば状態遷移S11→S10に伴うブランチメトリックは、「bm110」と表記される。このようにして、図14中の6種類の状態遷移に対応するブランチメトリックを、図15に示すように表記できる。
【0128】
2−2 装置構成
図16は、この発明の一実施形態例の全体構成を示すブロック図である。この例は、光磁気デイスク記録再生装置に対して本発明を適用したものである。
なお、図1等を参照して上述した光磁気ディスク装置の一例と同様の構成要素には、同一の符号を付した。記録系および図示しないサーボ系等については、上述した光磁気ディスク装置の一例と同様である。また光ピックアップ7からA/D変換器12までの再生系の構成および動作は、上述の光磁気ディスク装置の一例と同様である。
【0129】
ビタビ復号器130は、A/D変換器12から供給される再生信号値z[k]に基づいて、後述するようにして復号データおよび不一致検出信号NMを生成し、コントローラ2に供給する。コントローラ2は、上述した光磁気ディスク装置の一例と同様に、供給される復号データに基づく復号化処理を行い、ユーザデータおよびアドレスデータ等を再生する。また、コントローラ2内には計数手段が設けられ、不一致検出信号NMに基づいて状態データ間の不一致の数を計数する。
【0130】
ビタビ復号器130は、BMC132,ACS133、SMU134およびマージブロック135から構成される。そして、これらの各構成要素には、PLL部14からリードクロックDCK(以下、クロックと表記する)が供給され、動作タイミングが合わされる。
【0131】
BMC132は、再生信号値z[k]に基づいてブランチメトリックを計算し、計算したブランチメトリックをACS133に供給する。
【0132】
ACS133について、図19を参照して説明する。ACS133は、上述の光磁気ディスク装置の一例におけるACS21中の構成要素と、圧縮およびラッチ回路22中の構成要素とを含む構成とされる。このような構成が各状態に対応して設けられるので、4個のブロックから構成されることになる。そして、各サブブロックが出力する規格化パスメトリックの値が図14に示す状態遷移図に従って受け渡されるように接続されている。
【0133】
この内、自身を継承し得る状態S00およびS11には、後述するA型サブブロックが対応する。図19においては、A型サブブロック145、147がそれぞれ状態S00、S11に対応するよう図示した。また、自身を継承し得ない状態S01およびS10には、後述するB型サブブロックが対応する。図19においては、B型サブブロック146、148がそれぞれ状態S01、S10に対応するよう図示した。
【0134】
A型サブブロック145は、上述の光磁気ディスク装置の一例中のACS21(図11参照)中の、選択信号の生成を行う部分の構成要素を有している。すなわち、2個の規格化パスメトリックの値を更新するための2個の加算器と、1個の比較器を有している。さらに、A型サブブロック145は、圧縮およびラッチ回路22と同様の動作を行う、更新されるパスメトリックの値を保持する手段を有している。
【0135】
このようなA型サブブロック145には、BMC132からS00→S00に対応するブランチメトリックbm000、およびS10→S00に対応するブランチメトリックbm100がクロックに従って供給される。また、S10に対応するB型サブブロック148から1クロック前に更新された規格化パスメトリックM10の値を供給される。A型サブブロック145は、かかる1クロック前に更新された規格化パスメトリックM10の値にbm000の値を加算することによって、最新の遷移がS10→S00である場合の尤度の総和を計算する。
【0136】
さらに、A型サブブロック145は、自身でラッチしている1クロック前の規格化パスメトリックM00の値にbm000の値を加算することによって、最新の遷移がS00→S00である場合の尤度の総和を計算する。
【0137】
そして、A型サブブロック145は、このようにして計算される2個の尤度の総和を比較して、最尤な状態遷移を選択する。選択された状態遷移に対応する尤度の総和が更新された規格化パスメトリックM00の値としてラッチされ、且つ、選択結果に対応する選択信号SEL00が出力される。更新された規格化パスメトリックM00の値は、A型サブブロック145自身がラッチすると共に、S01に対応するB型サブブロック146に供給される。
【0138】
状態S11に対応するA型サブブロック147は、A型サブブロック145と同様に構成される。但し、供給されるブランチメトリックは、図14中の状態遷移S11→S11およびS01→S11に対応するbm111およびbm011である。また、更新される規格化パスメトリックM11は、A型サブブロック147自身によってラッチされると共に、状態S10に対応するB型サブブロック148に供給される。
【0139】
B型サブブロック146は、上述の光磁気ディスク装置の一例中のACS21(図11参照)で、選択信号の生成を行わない部分の構成要素を有している。すなわち、1個のパスメトリックの値を更新するための1個の加算器を有している。さらに、B型サブブロック146は、圧縮およびラッチ回路22と同様の機能を有する、更新されるパスメトリックの値を保持する手段を有している。
【0140】
このようなB型サブブロック146には、BMC132からS00→S01に対応するブランチメトリックbm001がクロックに従って供給される。また、S00に対応するA型サブブロック145から1クロック前に更新された規格化パスメトリックM00の値を供給される。B型サブブロック146は、かかる1クロック前に更新された規格化パスメトリックM00の値にbm001の値を加算することによって、最新の遷移がS00→S01である場合の尤度の総和を計算し、計算結果を更新された規格化パスメトリックM01としてラッチする。規格化パスメトリックM01の値は、クロックに従うタイミングで、S11に対応するA型サブブロック147に供給される。
【0141】
状態S10に対応するB型サブブロック148は、B型サブブロック146と同様に構成される。但し、供給されるブランチメトリックは、状態遷移S11→S10に対応するbm110である。また、更新される規格化パスメトリックM10は、自身でラッチすると共に、状態S00に対応するA型サブブロック145に供給される。
【0142】
また、各サブブロックは、クロックに従う各時点毎に更新される規格化パスメトリックの値を、規格化パスメトリック比較回路149に供給する。すなわち、A型サブブロック145,B型サブブロック146,A型サブブロック147およびB型サブブロック148は、それぞれ規格化パスメトリックM00,M01,M11およびM10の値を規格化パスメトリック比較回路149に供給する。規格化パスメトリック比較回路149は、これら4個の規格化パスメトリックの内で最小の値をとるものに対応する2ビットの信号MSを出力し、後述するマージブロック135に供給する。
【0143】
次に、SMU134について図20を参照して説明する。上述した光磁気ディスク装置の一例中のPMU23が1ビットの復号データ値を単位とする処理を行うものであるのに対し、SMU134は、2ビットの状態データ値を単位とする処理を行うものである。
【0144】
図20に示すように、SMU134は、2個のA型ステータスメモリ150および151、並びに2個のB型ステータスメモリ152および153を有している。さらにセレクト信号SEL00およびSEL11、クロック、並びに他のステータスメモリとの状態データの受渡し等のための信号線を接続されて構成される。A型ステータスメモリ150と151は、それぞれ、状態S00とS11に対応する。また、B型ステータスメモリ152と153は、それぞれ状態S01とS10に対応する。これら4個のステータスメモリ相互の接続は、図14の状態遷移図に従うものとされる。
【0145】
図21を参照して、状態S00に対応するA型ステータスメモリ150についてより詳細に説明する。A型ステータスメモリ150は、n個の処理段を有する。すなわち、n個のセレクタ201-0・・・201-(n-1)と、n個のレジスタ202-0・・・202-(n-1)とが交互に接続されている。各セレクタ201-0〜201-(n-1)には、セレクト信号SEL00が供給される。さらに、各セレクタには、上述したように、S10に対応するB型ステータスメモリ153から継承する状態データがnビットからなるSMinとして供給される。また、各レジスタには、上述したように、S01に対応するB型ステータスメモリ152に継承される状態データがn−1個の状態データ値からなるSMoutとして出力される。また、各レジスタ202-0〜202-(n-1)には、クロックが供給される。
【0146】
各セレクタの動作について説明する。図14に示すように、S00にて遷移し得る1クロック前の状態は、S00およびS10の何れかである。1クロック前の状態がS00である時は、自身を継承する遷移がなされることになる。このため、1段目のセレクタ201-0には、シリアルシフトによって生成される状態データ中の最新の状態データ値として、’00’が入力される。セレクタ201-0には、パラレルロ―ドとして、B型ステータスメモリ153から供給される状態データ中の最新の状態データ値SMin[1]が供給される。セレクタ201-0は、上述の選択信号SEL00に従って、これら2個の状態データ値の内の1個を後段のレジスタ202-0に供給する。
【0147】
また、2段目以降の各セレクタ201-1〜201-(n-1)は、2個のデータすなわち、パラレルロードとしてS10に対応するB型ステータスメモリ153から供給される1個の状態データ値と、シリアルシフトとして前段のレジスタから供給される1個の状態データ値とを受取る。そして、これら2個の状態データの内から、選択信号SEL00に従って、最尤なものと判断された状態データ値を後段のレジスタに供給する。セレクタ201-0〜201-(n-1)が全て同一の選択信号SEL00に従うので、ACS133が選択する最尤な状態データ値の系列としての状態データが継承される。
【0148】
さらに、各レジスタ202-0〜202-(n-1)は、上述したように供給される状態データ値をクロックに従って取込むことによって、保持している状態データ値を更新する。また、上述したように、各レジスタの出力は、1クロック後に遷移し得る状態に対応するステータスメモリに供給される。すなわち、S00自身に遷移し得るので、シリアルシフトとして後段のセレクタに供給される。また、パラレルロードとして、S01に対応するB型ステータスメモリ152に対して供給される。最終段のレジスタ202-(n-1)から、状態データ値VM00が出力される。
【0149】
状態S11に対応するA型ステータスメモリ151は、A型ステータスメモリ150と同様に構成される。但し、図14中の状態遷移S01→S11に対応するパラレルロードとして、S01に対応するB型ステータスメモリ152から状態データを供給される。また、図14中の状態遷移S11→S10に対応するパラレルロードとして、S10に対応するB型ステータスメモリ153に状態データを供給する。
【0150】
次に図22を参照して、状態S01に対応するB型ステータスメモリ152についてより詳細に説明する。B型ステータスメモリは、図14において自身を継承せず、且つ、1クロック後に遷移し得る状態が1個だけである状態に対応するものである。このため、シリアルシフトを行わず、且つ、セレクタが設けられていない。従って、n個のレジスタ212-0,212-1,・・・212-(n-1)が設けられ、各レジスタにクロックが供給されて動作タイミングが合わされる。
【0151】
各レジスタ212-0,212-1,・・・212-(n-1)には、S00に対応するA型ステータスメモリ150から継承する状態データがn−1個の状態データ値からなるSMinとして供給される。但し、最初の処理段となるレジスタ2120には、クロックに同期して常に’00’が入力される。かかる動作は、図14に示されるように、S01に遷移し得る最新の状態遷移が常にS00であることに対応している。各レジスタ212-0〜212-(n-1)は、供給される状態データ値をクロックに従って取込むことによって、保持している状態データ値を更新する。また、クロックに従ってなされる各レジスタの出力は、n-1個の状態データ値からなる状態データSMoutとして、1クロック後に遷移し得る状態S11に対応するA型ステータスメモリ151に供給される。最終段のレジスタ212-(n-1)から、状態データ値VM01が出力される。
【0152】
状態S10に対応するB型ステータスメモリ153は、B型ステータスメモリ152と同様に構成される。但し、図14中の状態遷移S11→S10に対応するパラレルロードとして、S11に対応するA型ステータスメモリ151から状態データを供給される。また、図14中の状態遷移S10→S00に対応するパラレルロードとして、S00に対応するA型ステータスメモリ150に状態データを供給する。また、最初の処理段となるレジスタには、クロックに同期して、常に’11’が入力される。かかる動作は、図14に示すように、S10に遷移し得る1クロック前の状態がS11であることに対応するものである。
【0153】
ところで、ビタビ復号方法においては、各ステータスメモリが生成する状態データ値は、本来、一致する。従って、SMU134中の4個のステータスメモリが生成する4個の状態データ値VM00,VM11,VM01およびVM10が一致するはずである。ところが、データの記録条件が良くない、または、記録媒体に物理的な欠陥が生じる等の原因によって再生RF信号の信号品質が低下する場合には、4個の状態データ値VM00,VM11,VM01およびVM10が互いに不一致となることがある。このような不一致が生じる確率は、再生系内の各構成要素の性能および動作パラメータ等にも影響される。
【0154】
一方、再生RF信号の信号品質および再生系の条件が同程度の場合には、ステータスメモリのメモリ長(すなわち処理段数)を大きくする程、状態データ値間の不一致が生じる確率を小さくすることができる。但し、ステータスメモリのメモリ長が大きい程、SMUの回路規模およびSMUの動作によって生じる遅延時間が増大する等の観点から、ステータスメモリのメモリ長をあまり大きく設定することは現実的でない。このため、一般には、状態データ値間の不一致がある程度の確率で生じることを前提とし、不一致が生じた時に最も的確な状態データ値を選択する構成が設けられることが多い。後述するマージブロック135は、このような構成を含むものである。
【0155】
また、ステータスメモリのメモリ長が一定の場合に、状態データ値間の不一致の数を計数できれば、計数値は、状態データおよびそれに基づいて生成される復号データの品質の評価に用いることができる。また、かかる計数値は、再生信号の信号品質、および再生系内の各構成要素の動作パラメータ等の再生信号に対する適応の程度を評価するためにも用いることができる。後述するマージブロック135には、このような計数を行う構成が含まれている。
【0156】
図23を参照してマージブロック135について説明する。マージブロック135は、SMU134からクロックに従うタイミングで供給される状態データ値VM00,VM11,VM01およびVM10から的確なものを選択する状態選択回路250、状態選択回路250の出力を1クロック遅延させるレジスタ251、復号マトリクス部252、および状態データ値VM00,VM11,VM01およびVM10の不一致を検出する不一致検出回路253を有している。
【0157】
状態選択回路250は、ACS133から上述したようにして供給される2ビットの信号MSを参照して、VM00,VM11,VM01およびVM10の内から最も的確なものを選択し、選択される状態データ値をVMとして出力する。かかる状態選択回路250は、図24に示すように、VMを選択する。このようにして、最も正しい状態データ値が選択される確率を高くすることができる。
【0158】
上述したようにして選択されるVMは、レジスタ251および復号マトリクス部252に供給される。レジスタ251は、供給されるVMを1クロック遅延させて復号マトリクス部252に供給する。以下の説明においては、レジスタ251の出力をVMDと表記する。従って、復号マトリクス部252には、状態データ値VMおよびその1クロック前の状態データ値VMDが供給される。復号マトリクス部252は、図25に示す復号マトリクス(復号テーブル)に従って、VMおよびVMDに基づいて復号データ値を出力する,復号マトリクスは、ROMテーブルとして持っても良く、またはハードウエアの構成でも良い。このような動作がクロックに従うタイミングで行われることにより、復号データが生成される。
【0159】
図25の復号マトリクスについて説明する。図14の状態遷移図から、復号データ値は、連続する2個の状態データ値に対応していることがわかる。例えば、時点tにおける状態データ値VMが’01’で、1クロック前の時点、t−1における状態データ値VMDが’00’である場合には、復号データ値として’1’が対応する。このような対応をまとめたものが図25である。
【0160】
一方、不一致検出回路253は、例えは排他的論理和回路を用いて構成することができる。不一致検出回路253には、VM00,VM11,VM01およびVM10が供給され、これら4個の状態データ値の間の不一致が検出される。検出結果が不一致検出信号NMとして出力される。不一致検出信号NMは、4個の状態データ値が全て一致する場合以外は、イネーブルまたはアクティブとされる。本例においては、不一致検出回路253をマージブロック135内に設けたが、SMU134から出力される全ての状態データを供給されることが可能な位置であれば、他の位置に設けても良い。
【0161】
不一致検出信号NMは、4個の状態データ値が供給される毎に、すなわちクロックに従うタイミングで出力され、コントローラ2内に設けられる所定の計数手段に供給される。このような構成によって、4個の状態データ値の間に生じる不一致の数が所定期間、例えば1セクタ毎に計数される。この発明の一実施例においては、計数手段をコントローラ2内に設けたが、不一致検出信号NMを供給されることが可能な位置であれば、他の位置に設けても良い。不一致検出回路253を設けているのは、計数結果によって復号データの信頼性、再生信号の品質等を評価するためである。
【0162】
2−3 位相エラー検出に基づくPLL動作
図16に戻ってビタビ判定モードを行うための構成について説明する。ビタビ判定モードは、後述するように、SMU134の出力から再生RF信号の立ち上がりまたは立ち下がりのタイミングを得ることによって位相エラー検出(または抽出)のタイミングを得る方法である。
【0163】
本例において、ビタビ判定モードによる位相エラー検出を行って、その位相エラー信号からクロックDCKを発生させるPLL部14の構成を図16の一点鎖線内に示した。
図示するようにPLL部14としては、シフトレジスタ136、位相エラー演算器(以下、PECと表記する)137、タイミング生成器138、D/A変換器139、ループフィルタ140、VCO141が設けられる。
【0164】
A/D変換器12から供給される再生信号値z[k]は、シフトレジスタ136に供給される。シフトレジスタ136は、z[k]を遅延させて、位相エラー演算器(PEC)137に供給する。この遅延の時間は、SMU134の出力までに要する遅延時間を参照して決められる。
【0165】
また、PEC137には、タイミング生成器138から位相エラーを抽出するタイミング信号が供給される。タイミング生成器138には、SMU134の出力である状態データが供給される。タイミング生成器138は、状態データを参照して位相エラーを抽出すべきタイミングを示す4個のタイミング信号(後述する図17に示すGP、GS、GQ、GR)を発生する。PEC137は、この4個のタイミング信号でそれぞれ示されるタイミングの再生信号値を演算することによって、位相エラー信号PEを生成する。
【0166】
PEC137で生成された位相エラー信号PEは、D/A変換器139によってD/A変換された後に、ループフィルタ140を通過してVCO141に供給される。VCO141は、位相エラー信号PEが制御信号として供給され、位相エラー信号PEに応じた位相のリードクロックDCKを生成する。リードクロックDCKがA/D変換器12、ビタビ復号器130の各ユニット、シフトレジスタ136、PEC137、タイミング生成器138、D/A変換器139等に供給される。
【0167】
上述した構成によりなされる、ビタビ判定モードによる位相エラー検出についてより詳細に説明する。
タイミング生成器138においては、状態データに基づいて、以下のようにして再生RF信号の立ち上がりおよび立ち下がりのタイミングを得ることができる。
【0168】
図26は、A/D変換器12に供給される再生RF信号の一例について、リードクロックDCKに従うサンプリング点に黒丸を付して示すものである。再生RF信号の下方に、各時点において選択される状態を示す。
図26(a)は、位相エラーが無い場合について示している。また、図26(b)がリードクロックDCKの位相が進んでいる場合について示しており、図26(c)がリードクロックDCKの位相が遅れている場合について示している。
【0169】
図26(a)〜図26(c)において、Pが上述したような立ち上がり時の再生信号値とされるサンプリング値である。すなわち、S00の1リードクロック後の再生信号値Pがノイズによる誤差の範囲内で1なので、状態S01への遷移が生じている。さらに、かかる状態S01の1リードクロック後の再生信号値とされるサンプリング値Qがノイズによる誤差の範囲内で3なので、状態S11への遷移が生じている。従って、PおよびQがサンプリングされる期間において再生RF信号が立ち上がっていることが確認できる。
【0170】
他方、図14において、リードクロックDCKによって表示するある時点jにおいて状態S11から状態S10への遷移が生じた場合には、次の時点j+1において必ず状態S00に遷移することがわかる。この場合の再生信号の値は、ノイズによる誤差の範囲内でz[j]=3,z[j+1]=1となる。従って、状態データに基づいて、このような時点jを再生RF信号の立ち下がり時点と認識することができる。
【0171】
図26(a)〜図26(c)において、Rが上述したような立ち下がり時の再生信号値とされるサンプリング値である。すなわち、状態S11の1リードクロック後の再生信号値Rがノイズによる誤差の範囲内で3なので、状態S10への遷移が生じている。さらに、かかる状態S10の1リードクロック後の再生信号値とされるサンプリング値Sがノイズによる誤差の範囲内で1なので、状態S00への遷移が生じている。従って、RおよびSがサンプリングされる期間において再生RF信号が立ち下がっていることが確認できる。以上のようなP,Q,R,Sと状態遷移の関係は、以下のようになる。
【0172】
P:立ち上がり時点(状態S00→S01)の再生信号値
Q:立ち上がり時点の1リードクロック後(状態S01→S11)の再生信号値
R:立ち下がり時点(状態S11→S10)の再生信号値
S:立ち下がり時点の1リードクロック後(状態S10→S00)の再生信号値
【0173】
タイミング生成器138は、SMU134から出力される状態データを受け取リ、上述したP,Q,R,Sの再生信号値を得るべきタイミングをPEC137に教える。PEC137は、このタイミングにおいてシフトレジスタ136を介された再生RF信号をサンプリングし、再生信号値P,Q,R,Sを発生する。
【0174】
図26(a)に示すように、リードクロックDCKの位相が再生信号の位相に正確に合っている場合には、図14から、PとSが何れもノイズによる誤差の範囲内で識別点の値1に等しい。また、Qの値とRの値は、何れも図7から、ノイズによる誤差の範囲内で識別点の値3に等しい。従って、P=S且つQ=Rとなる。
【0175】
一方、図26(b)に示すように、リードクロックDCKの位相が再生信号の位相よりも進んでいる場合には、図26(a)の場合よりもサンプリングのタイミングが早くなる。このため、PおよびQについては、図26(a)の場合よりも小さい値がサンプリングされ、RおよびSについては、図26(a)の場合よりも大きい値がサンプリングされる。従って、P<S且つQ<Rとなるので、P−S<0、且つ、Q−R<0となる。
【0176】
他方、図26(c)に示すように、リードクロックDCKの位相が再生信号の位相よりも遅れている場合には、図26(a)の場合よりもサンプリングのタイミングが遅くなる。このため、PおよびQについては、図26(a)の場合よりも大きい値がサンプリングされ、RおよびSについては、図26(a)の場合よりも小さい値がサンプリングされる。従って、P>S且つQ>Rとなるので、P−S>0、且つ、Q−R>0となる。
【0177】
従って、[(P−S)+(Q−R)]の値を位相エラーとして用いることができる。すなわち、PFC137で生成する上述の位相エラー信号PE(PE1)の値は、次のようなものである。
PE1=(P−S)+(Q−R) ・・・(40)
なお、後述するように本例ではPFC137で生成する位相エラー信号PEとして、この式(40)による定義以外にも複数定義されて、選択的に用いられるようにすることから、この式(40)の位相エラー信号を「PE1」と表すことにしている(他のPE2,PE3については後述する)。またPE1〜PE3の中から選択される位相エラー信号を「PEs」、さらに実際にVCO141側に供給される位相エラー信号を「PE」と表記して区別することとする。
【0178】
このような位相エラー信号PE1により、リードクロックDCKの位相が再生信号の位相よりも進んでいる時(図26(b))には、PE1<0となる。また、リードクロックDCKの位相が再生信号の位相よりも遅れている時(図26(c))には、PE1>0となる。基本的には、このようなPE1の値が位相エラー信号としてVCO141に供給され、VCO141の発生する周波数の制御に使用される。
【0179】
但し、以上は理想的な状態(PR(1,2,1)で、かつ波形にオフセットがない状態)を前提としており、現実的には波形にオフセットが含まれるので、上記式(40)によって得られる位相エラー信号PE1からオフセット分を差し引くことが必要になる。このオフセット(以下、フェイズオフセットと呼ぶ)POは次のように算出される。なおフェイズオフセットPOについても後述するように複数定義されて選択的に用いられるため、次の式(41)によるフェイズオフセットを説明上「PO1」とし、選択されるフェイズオフセットを「POs」ということとする。
PO1=(P+S)+(Q+R) ・・・(41)
【0180】
従って実際は、(位相エラー信号PE1(=PEsのとき))−(フェイズオフセットPO1(=POsのとき))の値が、最終的な位相エラー信号PEとされて、VCO141に供給されることになる。
【0181】
ところが、上記式(40)(41)によって得られる位相エラー信号PEは、RF信号に波形歪みが多い場合(例えばRAD(REAR APERTURE DETECTION)タイプのMSR方式が採用された系の場合など)では、正確な位相エラーを表す情報とはならないことが多い。
図27(a)は、波形歪みの少ない場合のRF波形を、また図27(b)には、波形歪みが大きい場合のRF波形を、それぞれ示している。
これらの図において黒丸で示すポイントは、上記図26(a)で述べた理想的なタイミングとしてのサンプルポイントであり、×で示すポイントは、図26(c)のようにクロックDCKの位相が遅れている場合のサンプルポイントとなる。
【0182】
図27(a)の場合は、上記図26(a)〜(c)で説明した方式で、正しく位相エラー信号PEを得ることができるが、図27(b)のような場合は、上記式(40)におけるP、Q、R、Sの値の一部が不正確な値となることから(この図の例では、Q、Rが不適切な値となる)、正しい位相エラー信号PEが得られないことになる。
【0183】
そこで本例では、このような場合にも正しい位相エラー信号PEを得ることができるように、上記式(40)で表される位相エラー信号PE1以外に、次のような、さらに2つの位相エラー信号PE2、PE3も定義する。即ち、
PE2=(P−S)×2 ・・・(42)
PE3=(Q−R)×2 ・・・(43)
【0184】
また、フェイズオフセットPOについても、上記式(41)のフェイズオフセットPO1に加えて次の4つを定義する。
PO2=(P+Q)×2 ・・・(44)
PO3=(P+R)×2 ・・・(45)
PO4=(S+R)×2 ・・・(46)
PO5=(S+Q)×2 ・・・(47)
【0185】
本例ではこれらを定義することで、位相エラー信号PEとしては、上記式(40)、式(42)、式(43)の3種類の位相エラー信号PE1、PE2、PE3を選択的に使用できるようにし、またフェイズオフセットPOとしては、上記式(41)、式(44)、式(45)、式(46)、式(47)の5種類の位相エラー信号PO1〜PO5を選択的に使用できるようにするものである。
【0186】
このように位相エラー信号(PE1〜PE3)、及びフェイズオフセット(PO1〜PO5)を選択して使用し、VCO141に対する位相エラー信号PEを生成するようにしたPEC137の構成を図17に示す。
【0187】
図示するように、PEC137は、4個のレジスタ301、302、303、304、減算器305,306、加算器307、乗算器308、セレクタ309,310、減算器311、フェイズオフセット算出部312、レジスタ313から構成される。
レジスタ301〜304のデータ入力としては、図16に示したシフトレジスタ136の出力、すなわち遅延させられた再生RF信号が供給される。
またレジスタ301〜304のクロック入力としてタイミング生成器138からタイミング信号GP,GQ,GR,GSが供給され、レジスタ301〜304に再生信号値を取リ込むタイミングが指示される。それによって、各レジスタ301、302、303、304には、それぞれ上述したP,Q,R,Sの値が適切にラッチされることになる。
【0188】
このように各レジスタ301、302、303、304でラッチされたP,Q,R,Sの値に基づいて、上述の各位相エラー信号PE1〜PE3、及びフェイズオフセットPO1〜PO5が算出される。
まず減算器305には、レジスタ301、302のラッチ出力P、Sが供給され、(P−S)の演算が行われる。そして減算器305からの出力(P−S)が加算器307と、セレクタ309のt2端子に供給される。
また減算器306には、レジスタ303、304のラッチ出力Q、Rが供給され、(Q−R)の演算が行われる。そして減算器306からの出力(Q−R)が加算器307と、セレクタ309のt3端子に供給される。
【0189】
加算器307では、(P−S)+(Q−R)の演算が行われる。即ち位相エラー信号PE1が算出されて、セレクタ310のt1端子に供給される。
【0190】
セレクタ309,310は、それぞれレジスタ313に設定された制御値SS1、SS2により接続端子が選択される。
セレクタ309がt2端子に接続されている場合は、減算器305からの出力(P−S)が乗算器308に供給され、乗算器308から(P−S)×2という出力が得られる。即ち位相エラー信号PE2であり、これがセレクタ310のt23端子に供給される。
またセレクタ309がt3端子に接続されている場合は、減算器306からの出力(Q−R)が乗算器308に供給され、乗算器308から(Q−R)×2という出力が得られる。即ち位相エラー信号PE3であり、これがセレクタ310のt23端子に供給される。
【0191】
従って、セレクタ309,310が次の各選択状態にあるときに、選択される位相エラー信号PEsは、次のようになる。
セレクタ310がt1・・・・・・・・・・・・・・・・PEs=PE1
セレクタ309がt2かつセレクタ310がt23・・・PEs=PE2
セレクタ309がt3かつセレクタ310がt23・・・PEs=PE3
このようにして選択される位相エラー信号PEsは、減算器311に供給される。
【0192】
一方、レジスタ301、302、303、304でラッチされたP,Q,R,Sの値は、フェイズオフセット算出部312に供給され、フェイズオフセットPO1〜PO5が算出される。
フェイズオフセット算出部312の構成を図18に示す。
図示するようにフェイズオフセット算出部312は、加算器401,402,403,404,405、セレクタ407,408、乗算器406から構成される。
【0193】
加算器401では(P+Q)の演算が行われ、この出力(P+Q)は加算器405及びセレクタ407のtc端子に供給される。
加算器402では(P+R)の演算が行われ、この出力(P+R)はセレクタ407のtd端子に供給される。
加算器403では(S+R)の演算が行われ、この出力(S+R)は加算器405及びセレクタ407のte端子に供給される。
加算器404では(S+Q)の演算が行われ、この出力(S+Q)はセレクタ407のtf端子に供給される。
【0194】
また加算器405では(P+Q)+(S+R)の演算が行われ、この出力(P+Q)+(S+R)、即ちフェイズオフセットPO1は、セレクタ408のta端子に供給される。
【0195】
セレクタ407,408も、それぞれ上記レジスタ313に設定された制御値SS3、SS4により接続端子が選択される。
セレクタ407がtc端子に接続されている場合は、加算器401からの出力(P+Q)が乗算器406に供給され、その(P+Q)×2という出力、即ちフェイズオフセットPO2がセレクタ408のtb端子に供給される。
セレクタ407がtd端子に接続されている場合は、加算器402からの出力(P+R)が乗算器406に供給され、その(P+R)×2という出力、即ちフェイズオフセットPO3がセレクタ408のtb端子に供給される。
セレクタ407がte端子に接続されている場合は、加算器403からの出力(S+R)が乗算器406に供給され、その(S+R)×2という出力、即ちフェイズオフセットPO4がセレクタ408のtb端子に供給される。
セレクタ407がtf端子に接続されている場合は、加算器404からの出力(S+Q)が乗算器406に供給され、その(S+Q)×2という出力、即ちフェイズオフセットPO5がセレクタ408のtb端子に供給される。
【0196】
従って、セレクタ407,408が次の各選択状態にあるときに、選択されるフェイズオフセットPOsは、次のようになる。
セレクタ408がta・・・・・・・・・・・・・・・POs=PO1
セレクタ407がtcかつセレクタ408がtb・・・POs=PO2
セレクタ407がtdかつセレクタ408がtb・・・POs=PO3
セレクタ407がteかつセレクタ408がtb・・・POs=PO4
セレクタ407がtfかつセレクタ408がtb・・・POs=PO5
このようにして選択されるフェイズオフセットPOsは、図17の減算器311に供給される
【0197】
図17の減算器311では、選択された位相エラー信号PEsから選択されたフェイズオフセットPOsを減算する処理を行い、位相エラー信号PEとして出力する。この位相エラー信号PEが、図16のD/A変換器139およびループフィルタ140を介して、VCO141に供給され、VCO141の発振周波数の制御に用いられることになる。
【0198】
PEC137が以上のように構成されることで、本例では、状況に応じて位相エラー信号PE1〜PE3及びフェイズオフセットPO1〜PO5を選択的に用いて、位相エラー信号PEを得ることができる。
従って、例えば図27(a)のようにRF信号波形に歪みが少ない場合は、位相エラー信号PE1、フェイズオフセットPO1を用いて位相エラー信号PEを得るようにし、一方、図27(b)のような場合は、位相エラー信号PE2、フェイズオフセットPO5を用いて位相エラー信号PEを得るようにすることなどが可能となる。
そしてこのように位相エラー信号PEの生成方式が切り換えられることにより、再生RF信号の品質等によらず、常に最適な位相エラー信号PEを得ることができ、もってクロックDCKの適正化、復号データの信頼性向上を実現できる。
【0199】
実際の選択は、ユーザーが再生状況に応じて切換操作を行うことで、選択状態が切り換えられるようにしたり、或いはコントローラ2が再生データの品質が最も良好となる選択状態を検出して自動的にその選択状態に設定するなどが考えられる。例えば上述のようにコントローラ2は不一致検出信号NMをカウントすることで復号データの信頼性や再生信号品質を評価できるが、その評価結果に応じて選択状態を切り換えるようにしても良い。
【0200】
そして上述のように選択状態の制御は、レジスタ313に設定される制御値SS1〜SS4によりセレクタ309,310,407,408が制御されることによってなされるわけであるが、このためにコントローラ2は、ユーザーの操作もしくは自動的な選択設定処理により、レジスタ313に制御値SS1〜SS4をロードさせるコマンドセットを行うことになる。
【0201】
また、レジスタ313にセットされた制御値SS1〜SS4は、リードゲート信号をトリガとして各セレクタ309,310,407,408に供給され、切換が行われることになるが、このリードゲート信号は、1単位の再生動作の再生開始時点でアクティブとなるパルスである。つまり本例では、再生動作の途中では各セレクタ309,310,407,408が切り換えられることはないようにしており、これにより再生動作の途中で切り換えられて位相エラー信号PEが乱れることを防止している。
なお、選択状態の切換はあくまでもリードゲート信号タイミングとなるため、レジスタ313へのコマンドセット(制御値の設定)は非同期に行われればよい。
【0202】
位相エラー信号PE1〜PE3及びフェイズオフセットPO1〜PO5についての選択は、RF信号品質や歪みの傾向に応じて好適なものが選ばれるべきものであるため、具体的にどのような状況のときにどのような選択がなされるかは、固定されるものではない。
但し、基本的には、位相エラー信号については、通常は位相エラー信号PE1が選択され、一方RF信号の歪みが大きい場合には位相エラー信号PE2又はPE3のうちで良好な方が選択されるようにすればよい。
またフェイズオフセットについては、基本的にはフェイズオフセットPO1を用いるようにするが、RF信号の歪みが大きい場合にはフェイズオフセトPO5又はPO3を選択することが考えられ、さらに場合によってはフェイズオフセトPO2又はPO4を選択するようにすることが考えられる。
【0203】
また、ディスク6のセクターフォーマットにおけるVFO領域(図3参照)でのPLL引込時には必ず位相エラー信号PE1及びフェイズオフセットPO1が選択されている状態とし、データ部の再生時には位相エラー信号PE1〜PE3及びフェイズオフセットPO1〜PO5が任意に選択できるようにすることが好適である。
【0204】
なお位相エラー信号PE2、PE3については、乗算器308で2倍値とされて得られるようにしたことは、位相エラー信号PE1と数値的な整合をとるためである。
またフェイズオフセットPO2〜PO5について、乗算器406で2倍値とされて得られるようにしたことは、フェイズオフセットPO1と数値的な整合をとるためである。
つまり、各位相エラー信号PE1〜PE3のレベル、及びフェイズオフセットPO1〜PO5のレベルが、同等となるようにゲイン調整が行われることで、選択状態の切換によって出力される位相エラー信号PEの値が大きく変動してしまうことを防止し、これによって後段のD/A変換器139〜VCO141の動作に悪影響を与えないようにしている。
【0205】
以上、4値4状態ビタビ復号方法を行う光磁気ディスク装置に本発明を適用した実施の形態を説明してきたが、本発明は3値4状態ビタビ復号方法や、7値6状態ビタビ復号方法等の他の種類のビタビ復号方法を採用した光磁気デイスク装置にも適用することができる。
【0206】
また、上記例は位相エラー信号の検出にビタビ判定モードを用いる例で説明しているが、他に、A/D変換器12の出力の符号が変化したときに、上記P、Q、R、Sを対応させるMSBモードと呼ばれる方法があり、そのMSBモードにより位相エラー信号を検出する構成の場合でも本発明は適用できる。なお、その場合は上記P、Q、R、Sに対する位相エラー信号の算出のための演算方式は多少異なるものとなるが、いずれにしても位相エラー信号の定義を複数用意し、それを切り換えることができるようにすればよい。
【0207】
また、この発明は、記録媒体に記録されたデータから再生される再生信号から、リードデータを復号するためにビタビ復号方法を用いることができる各種の情報再生装置に適用することができる。すなわち、光磁気デイスク(MO)以外にも、例えばDVD等の相変化型ディスク、CD−RW(CD-Rewritable)等の書き換え可能ディスク、CD−R(CD-wo)等の追記型ディスク、CD−ROM等の読み出し専用ディスク等の光ディスク装置に適用することが可能である。
【0208】
また、この発明は、この実施例に限定されることなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の応用および変形が考えられる。
【0209】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明は、状態データから発生される第1〜第4の検出タイミングでの各再生信号値のうちで、選択された全部又は一部の各再生信号値を用いた所定の演算で位相エラー信号を生成するようにしている。即ち、基本的には第1〜第4の検出タイミングでの各再生信号値を用いて位相エラー信号を生成するところ、場合によっては、第1〜第4の検出タイミングでの各再生信号値のうちの一部を用いて位相エラー信号を生成できるようにする。そしてその位相エラー信号を用いてクロック信号を生成するようにしている。
従って、再生される信号波形の歪みなどに応じて、位相エラー生成のために用いる信号を選択できることになり、これは、歪みが大きく適正な位相エラーの算出に障害となる再生信号値を排除できることを意味する。即ち例えばMSR方式のように再生信号の波形歪みが比較的大きくなるような再生系であっても、適切に位相エラーを算出できることになり、PLLの誤動作やそれによるクロックの乱れを防止し、再生性能を向上させることができるという効果が得られる。
【0210】
またより具体的には、位相エラー生成手段には、例えば上記P、Sのデータに対応する第1、第2の各検出タイミングにおける各再生信号値に所定の演算を施して位相エラー信号を生成する第1の演算機能(P−S)と、例えば上記Q、Rのデータに対応する第3、第4の各検出タイミングにおける各再生信号値に所定の演算を施して位相エラー信号を生成する第2の演算機能(Q−R)と、第1〜第4の各検出タイミングにおける各再生信号値に所定の演算を施して位相エラー信号を生成する第3の演算機能((P−S)+(Q−R))とを備え、さらに、これら第1〜第3の演算機能によって生成できる各位相エラー信号のうちの1つを選択して、それをクロック発生手段に供給する位相エラー信号とする選択機能とを備えるようにすることで、最も適切な位相エラー信号を得ることができる。
【0211】
また、上記第1の演算機能、第2の演算機能、第3の演算機能によって生成される各位相エラー信号のレベルが同等となるようにゲイン調整を行うゲイン調整機能(例えば図17の乗算器308)が備えられていることで、位相エラー信号がどれに選択されても、後段のクロック発生手段(例えば図17のD/A変換器139〜VCO141)に影響を与えないで常に適正な動作を実現させることができる。
【0212】
また選択機能による位相エラー信号の選択状態を切り換えるタイミングを制御する切換タイミング制御手段(例えば図17のレジスタ313)が備えられていることで、切り換えタイミングを良好に保つことができ、換言すれば、読出途中で切り換えられるなどを防止することができ、これにより上記本発明の機能が逆に悪影響を与えてしまうといったようなことを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用できる記録再生装置のブロック図である。
【図2】マーク位置記録方法およびマークエッジ記録方法の概要の説明図である。
【図3】実施の形態の記録再生装置に装填される光磁気ディスクのセクタフォーマットの説明図である。
【図4】RLL(1,7)符号化方法における最小磁化反転幅の説明図である。
【図5】RLL(1,7)符号とマークエッジ記録方法によって記録されたデータの再生信号をPR(1,2,1)で波形等化したときのアイパターンの説明図である。
【図6】4値4状態ビタビ復号方法の状態遷移の過程の説明図である。
【図7】4値4状態ビタビ復号方法の状態遷移の説明図である。
【図8】4値4状態ビタビ復号方法の状態遷移のトレリス線図の説明図である。
【図9】規格化パスメトリックに基づく4値4状態ビタビ復号方法における状態遷移の条件の説明図である。
【図10】4値4状態ビタビ復号を行うビタビ復号器のブロック図である。
【図11】4値4状態ビタビ復号を行うビタビ復号器のACSのブロック図である。
【図12】4値4状態ビタビ復号を行うビタビ復号器のA型パスメモリのブロック図である。
【図13】4値4状態ビタビ復号を行うビタビ復号器のB型パスメモリのブロック図である。
【図14】図7とは異なる表記方法での4値4状態ビタビ復号方法の状態遷移の説明図である。
【図15】ブランチメトリックの表記方法の説明図である。
【図16】実施の形態のディスク記録再生装置のブロック図である。
【図17】実施の形態のディスク記録再生装置のPECのブロック図である。
【図18】実施の形態のディスク記録再生装置のPEC内のフェイズオフセット算出部のブロック図である。
【図19】実施の形態のディスク記録再生装置のACSのブロック図である。
【図20】実施の形態のディスク記録再生装置のSMUのブロック図である。
【図21】実施の形態のディスク記録再生装置のSMUのA型ステータスメモリのブロック図である。
【図22】実施の形態のディスク記録再生装置のSMUのB型ステータスメモリのブロック図である。
【図23】実施の形態のディスク記録再生装置のマージブロックのブロック図である。
【図24】実施の形態のマージブロックにおける状態データ値の選択動作の説明図である。
【図25】実施の形態のマージブロックで復号データが生成される際に参照されるテーブルの説明図である。
【図26】実施の形態の位相エラー信号検出方式の説明図である。
【図27】実施の形態の信号波形歪みに対応する位相エラー信号検出方式の説明図である。
【符号の説明】
1 ホストコンピュータ、2 ドライブコントローラ、3 CPU、4 レーザパワーコントロール部、5 磁気ヘッド、6 ディスク、7 光ピックアップ、8 アンプ、9 スピンドルモータ、10 切替えスイッチ、11 フィルタ部、12 A/D変換器、13,130 ビタビ復号器、14 PLL部、136 シフトレジスタ、137 PEC、138 タイミング発生器、139 D/A変換器、140 ループフィルタ、141 VCO、301,302,303,304 レジスタ、305,306 減算器、307,401,402,403,404,405 加算器、308,406 乗算器、309,310,407,408 セレクタ、311 減算器、312 フェイズオフセット算出部、313 レジスタ
Claims (2)
- 記録媒体から再生される再生信号をビタビ復号方法によって復号するようにした情報再生装置において、
クロック信号に従ってサンプリングされる再生信号値に基づいて、前記クロック信号に応じたタイミングで最尤な状態遷移を表す状態データを生成する状態データ生成手段と、
前記状態データに基づいて復号データを出力する復号データ出力手段と、
前記状態データから、位相エラー信号の第1〜第4の検出タイミングを発生するタイミング発生手段と、
前記第1〜第4の検出タイミングでの再生信号値のうちで、前記第1、第2の各検出タイミングにおける各再生信号値に所定の演算を施して位相エラー信号を生成する第1の演算機能と、前記第3、第4の各検出タイミングにおける各再生信号値に所定の演算を施して位相エラー信号を生成する第2の演算機能と、前記第1、第2、第3、第4の各検出タイミングにおける各再生信号値に所定の演算を施して位相エラー信号を生成する第3の演算機能を備え、前記第1の演算機能、第2の演算機能、第3の演算機能によって生成できる各位相エラー信号のうちの1つを選択して、それを前記クロック発生手段に供給する位相エラー信号とする選択機能によって、位相エラー信号を生成する位相エラー生成手段と、
前記選択機能による選択状態を切り換えるタイミングを所定単位の再生動作の再生開始タイミングとする切換タイミング制御手段と、
前記位相エラー生成手段で生成された位相エラー信号に応じて前記クロック信号を発生させるクロック発生手段と、
を備えたことを特徴とする情報再生装置。 - 前記位相エラー生成手段には、
前記第1の演算機能、第2の演算機能、第3の演算機能によって生成される各位相エラー信号のレベルが同等となるようにゲイン調整を行うゲイン調整機能が備えられていることを特徴とする請求項1に記載の情報再生装置。
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