JP4253428B2 - ハロゲン化銀写真感光材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は写真用ハロゲン化銀写真感光材料に関するものであり、特に塩化銀含有量の高い塩沃化銀または塩沃臭化銀粒子からなる感光材料の安定性の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現像処理の簡易迅速性を目的として、塩化銀含有量の高い、所謂高塩化銀粒子(塩化銀含有率90%以上の粒子を意味し、以後高塩化銀粒子という)を利用する技術が種々提案されている。高塩化銀粒子を用いることで現像速度が速まり、かつ処理液の再利用性が高まるなどの利点が得られる。このため、カラー印画紙等のプリント用感光材料は高塩化銀粒子を用いるタイプが主流を占めるに至っている。
一方、プリント材料においても、高感度で低かぶりの乳剤が望まれている。高感度を得るためには、少量のヨウ化銀を高塩化銀粒子に導入することが有効であると、特開平8−234345に開示されている。また、浅い電子トラップを提供するとされる、6シアノ錯体をドープすることによる高感化技術が米国特許第5,268,264号に開示されている。浅い電子トラップに起因すると考えられる高感度化は、塩化銀乳剤へ6シアノ錯体をドープした場合でも認められる。しかしながら、ヨウ化銀導入および6シアノ錯体ドーピングともに、かぶりの増大を生じ、これを低減する技術が望まれている。さらに、ヨウ化銀導入および6シアノ錯体ドーピングは圧力かぶりを悪化させる。ここでいう圧力かぶりとは、露光や現像といった処理中に、搬送ローラー等により感光材料が表面に圧力をかけられたり、擦られたりすることにより現像中心を形成し、画像とは関係なく発色する現象をいう。
本特許では処理開始(現像液と抵触)から乾燥終了まで(dry to dry)を処理時間という。カラープリント材料においては現在、180秒のカラー処理時間が主流となっているが、さらに処理時間を短縮することが望まれている。処理時間を短縮すると機器の搬送速度も増加し、感材への圧力も増加する。また迅速処理を可能にするため、現像液は高温、高濃度、即ち高活性現像液とする必要があり、圧力かぶりも発現容易となる。そのため圧力かぶり低減技術が望まれていた。
圧力かぶりを低減する技術として、内部に欠陥を導入する方法が知られているが、このために高濃度のヨウドを使用する必要があり、現像を抑制する問題があった。また、内部欠陥は表面感度を低下させ、ときには圧力減感(圧力により感度が低下する現象)を引き起こすため、制御が困難であった。一方、低濃度のヨウドが増感色素の吸着強化のために粒子表面にしばしば利用されるが、低濃度のヨウドは圧力かぶりを増大させることが知られており、改良が望まれていた。
また、特開平7−140581には特定の色素を用いて圧力かぶりを低下させる方法が開示されている。本発明の増感色素は特登2791499号、特開2000―63690に開示されているが、ヨウド導入を必須とする記述はなく、特に後者では塩化銀が好ましい態様としており、本発明を示唆するものではない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高感度でかぶりの少ない高塩化銀カラー写真感光材料を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は以下の方法により達成された。
1.イエロー発色性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ発色性ハロゲン化銀乳剤層およびシアン発色性ハロゲン化銀乳剤層をそれぞれ少なくとも1層ずつ有するハロゲン化銀カラー写真感光材料であって、該乳剤層に含まれるハロゲン化銀粒子は、塩化銀含有率が90モル%以上であり、沃化銀含有率が0.01モル%以上1.0モル%以下の塩沃化銀もしくは塩沃臭化銀であり、該ハロゲン化銀粒子中に含有する沃化銀が、沃化物イオンの導入がハロゲン化銀粒子体積の50%以上外側で行なわれ、ハロゲン化銀粒子体積の98%より内側で終了することで形成され、さらに、少なくとも1種類の6シアノ錯体を、ハロゲン化銀粒子の外側からみてハロゲン化銀粒子体積の3%以上内側のみに含有し、該6シアノ錯体が該ハロゲン化銀粒子の全銀量に対して少なくとも1×10-7モル%ドープされており、かつ該乳剤層中に下記一般式(I)で表されるメチン色素を含有することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
一般式(I)
【0005】
【化4】
【0006】
式(I)中、Yは複素環を形成するのに必要な原子群、または複素環が縮合したベンゼン環を形成するのに必要な原子群を表し、さらに他の炭素環または複素環と縮合していても置換基を有していてもよい。Z1およびZ2は含窒素複素環を形成するために必要な原子群または単結合を表し、該含窒素複素環はさらに他の炭素環または複素環と縮合していても置換基を有していてもよい。Rはアルキル基、アリール基または複素環基を表す。Dはメチン色素を形成するのに必要な基を表す。L1およびL2はそれぞれメチン基を表す。pは0または1を表す。Mは対イオンを表し、mは分子中の電荷を中和させるために必要な0以上の数を表す。
2.前記一般式(I)において、Yが他の炭素環または複素環と縮合していても置換基を有していてもよい、ピロール環、フラン環もしくはチオフェン環、またはピロール環、フラン環もしくはチオフェン環が縮合したベンゼン環を形成するのに必要な原子群を表すことを特徴とする1に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
3.前記一般式(I)が下記一般式(II)から選ばれることを特徴とする1に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
一般式(II)
【0007】
【化5】
【0008】
式(II)中、Y11はピロール環、フラン環もしくはチオフェン環を形成するのに必要な原子群、またはインドール環、ベンゾフラン環もしくはベンゾチオフェン環を形成するのに必要な原子群を表し、さらに他の炭素環または複素環と縮合していても置換基を有していてもよい。X11は酸素原子、硫黄原子、セレン原子またはNR13を表す。R11、R12およびR13はアルキル基、アリール基または複素環基を表す。Z11は含窒素複素環を形成するために必要な原子群を表し、さらに他の炭素環または複素環と縮合していても置換基を有していてもよい。L11、L12、L13、L14およびL15はそれぞれメチン基を表す。p1は0または1を表す。n1は0,1,2,3または4を表す。M1は対イオンを表し、m1は分子中の電荷を中和させるために必要な0以上の数を表す。
4.前記一般式(I)が下記一般式(III)から選ばれることを特徴とする1に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
一般式(III)
【0009】
【化6】
【0010】
式(III)中、Y21はピロール環、フラン環またはチオフェン環を形成するのに必要な原子群を表し、さらに他の炭素環または複素環と縮合していても置換基を有していてもよい。X21、X22は酸素原子、硫黄原子、セレン原子またはNR23を表す。R21、R22およびR23はアルキル基、アリール基または複素環基を表す。V21、V22、V23およびV24は水素原子または置換基を表し、隣接する2つの置換基が互いに連結して飽和または不飽和の縮合環を形成することはない。L21、L22およびL23はそれぞれメチン基を表す。n2は0、1、2、3または4を表す。M2は対イオンを表し、m2は分子中の電荷を中和させるために必要な0以上の数を表す。
5. 前記一般式(III)において、R21、R22のいずれか一方が2−スルホエチル基、3−スルホプロピル基、3−スルホブチル基または4−スルホブチル基であり、もう一方がカルボキシメチル基またはメタンスルホニルカルバモイルメチル基であることを特徴とする4に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
6.前記X21およびX22が硫黄原子であることを特徴とする4または5に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
7. 少なくとも1種類のIr錯体がドープされたハロゲン化銀粒子を含有することを特徴とする1〜6のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
8.全粒子体積の50%以上占めるハロゲン化銀粒子が、隣接する相とは10モル%以上臭化銀含有量の高い高臭化銀局在相を有し、該高臭化銀局在相にIr錯体を含有することを特徴とする1〜7のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー感光材料。
9. 前記6シアノ錯体が、鉄またはルテニウムの金属錯体であることを特徴とする1〜8のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
10.前記ハロゲン化銀粒子中に含有する沃化銀が、沃化物イオンが、ハロゲン化銀粒子表面で濃度極大を示し、粒子内部に向けて沃化物イオンが減衰していることを特徴とする1〜9のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
11.前記Ir錯体が、 [IrCl5(H2O)]2-、[IrCl5(H2O)]-、[IrCl4(H2O)2] -、[IrCl4(H2O)2]0、[IrCl3(H2O)3]0、[IrCl3(H2O)3] +、 [IrBr5(H2O)]2-、[IrBr5(H2O)]-、[IrBr4(H2O)2] -、[IrBr4(H2O)2]0、[IrBr3(H2O)3]0、または[IrBr3(H2O)3] + であることを特徴とする7〜10のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
12.前記ハロゲン化銀粒子が{100}面をもつ立方体粒子であることを特徴とする1〜11のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
13.前記ハロゲン化銀粒子が、金増感を施されていることを特徴とする1〜12のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
14.前記金増感が、有機配位子を有する金(I)化合物により施されていることを特徴とする13に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
15.1〜14のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料を画像露光後、現像処理する画像形成方法に於いて、該感光材料の全処理時間が75秒以下で処理することを特徴とする画像形成方法。
16.デジタル走査露光されることを特徴とする15に記載の画像形成方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明では特定の分光増感色素を用いる。まず、該色素について説明する。
【0012】
本発明において、特定の部分を「基」と称した場合には、当該部分はそれ自体が置換されていなくても、一種以上の(可能な最多数までの)置換基で置換されていても良いことを意味する。例えば、「アルキル基」とは置換または無置換のアルキル基を意味する。また、本発明における化合物に使用できる置換基は、置換の有無にかかわらず、どのような置換基でも含まれる。
【0013】
置換基をVとすると、Vで示される置換基としては特に制限は無いが、例えばハロゲン原子、アルキル基[(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基を含む)、またアルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基及びトリシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基も含むこととする]、アリール基、複素環基(ヘテロ環基とも言う)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールおよびヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、その他公知の置換基が例として挙げられる。
【0014】
さらに詳しくは、Vはハロゲン原子(例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、アルキル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。それらは、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2−エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えばシクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、例えばビシクロ[1.2.2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イル)、さらに環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)はこのような概念のアルキル基に加え、下記のアルケニル基、シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基、アルキニル基等も含むものとする。]、アルケニル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。それらはアルケニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のアルケニル基、例えばビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、例えば2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、例えばビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2.2.2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。]、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のアルキニル基、例えばエチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、複素環基(好ましくは5〜6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族の複素環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、さらに好ましくは炭素数3〜30の5〜6員の芳香族の複素環基、例えば2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル、なお1−メチル−2−ピリジニオ、1−メチル−2−キノリニオのようなカチオン性複素環基でもよい)、
【0015】
シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えばフェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数3〜20のシリルオキシ基、例えばトリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数2〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、例えば1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えばホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えばN,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えばフェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、
【0016】
アミノ基(好ましくはアミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチルアニリノ、ジフェニルアミノ)、アンモニオ基(好ましくはアンモニオ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキル、アリール、ヘテロ環が置換したアンモニオ基、例えばトリメチルアンモニオ、トリエチルアンモニオ、ジフェニルメチルアンモニオ)、アシルアミノ基(好ましくはホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えばホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ基、例えばカルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えばメトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルメトキシカルボニルアミノ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えばフェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−(n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、スルファモイルアミノ基(好ましくは炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えばスルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ基、例えばメチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、
【0017】
メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールチオ基、例えばフェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のヘテロ環チオ基、例えば2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えばN−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、スルホ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えばメチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、アルキルおよびアリールスルホニル基(好ましくは炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えばメチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4〜30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えばアセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2−ピリジルカルボニル、2−フリルカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えばフェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイル基、例えばカルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、
【0018】
アリールおよびヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えばフェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、イミド基(好ましくはN−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えばジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えばホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えばジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えばジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、ホスホ基、シリル基(好ましくは炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシリル基、例えばトリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)、ヒドラジノ基(好ましくは炭素数0〜30の置換もしくは無置換のヒドラジノ基、例えばトリメチルヒドラジノ)、ウレイド基(好ましくは炭素数0〜30の置換もしくは無置換のウレイド基、例えばN,N−ジメチルウレイド)を表す。
【0019】
また、2つのVが連結して、環(芳香族または非芳香族の、炭化水素環または複素環。これらはさらに組み合わされて多環縮合環を形成することができる。例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、キノリン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、キノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、フェナジン環、が挙げられる。)が縮合した構造をとることもできる。
【0020】
上記の置換基Vの中で水素原子を有するものは、これを取り去りさらに上記の置換基で置換されていてもよい。そのような複合置換基の例としては、アシルスルファモイル基、アルキルおよびアリールスルホニルカルバモイル基が挙げられる。その例としては、メチルスルホニルカルバモイル、p−メチルフェニルスルホニルカルバモイル、アセチルスルファモイル、ベンゾイルスルファモイル基が挙げられる。
【0021】
以下に本発明の一般式(I)で表されるメチン色素について詳しく説明する。Yが複素環を形成するのに必要な原子群である場合、Yで形成される5員不飽和複素環としてはピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、フラン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チオフェン環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、セレノフェン環、セレナゾール環、イソセレナゾール環、テルロフェン環、テルラゾール環、イソテルラゾール環等を、6員不飽和複素環としてはピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピラン環、チオピラン環等を挙げることができ、さらに他の5〜6員の炭素環または複素環と縮合して、例えばインドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、チエノチオフェン環を形成することもできる。またこれらの複素環中の二重結合の一部が水素化された不飽和複素環(例えばピロリン環、ピラゾリン環、イミダゾリン環、ジヒドロフラン環、オキサゾリン環、ジヒドロチオフェン環、チアゾリン環)、または全部が水素化された飽和複素環(例えばピロリジン環、ピラゾリジン環、イミダゾリジン環、テトラヒドロフラン環、オキサゾリジン環、テトラヒドロチオフェン環、チアゾリジン環)であってもよい。
Yが複素環が縮合したベンゼン環を形成するのに必要な原子群である場合、Yで形成される環としては、例えばインドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環を挙げることができる。
【0022】
好ましくはYで形成される環はピロール環、フラン環、チオフェン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環であり、より好ましくはピロール環、チオフェン環またはフラン環である。
【0023】
Z1およびZ2で形成される含窒素複素環は、好ましくは5〜6員の含窒素複素環であり、オキサゾール環、チアゾール環、セレナゾール環、イミダゾール環、2−ピリジン環、4−ピリジン環、3、3−ジメチル−3H−ピロール環を挙げることができる。さらにYで表される環以外にベンゼン環、シクロヘキセン環、ナフタレン環などの炭素環や、フラン環、チオフェン環などの複素環が縮合していてもよい。
Z1およびZ2で形成される含窒素複素環は、より好ましくはオキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環および2−ピリジン環であり、さらに好ましくはオキサゾール環、チアゾール環である。
【0024】
Yで形成される環とZ1およびZ2で形成される含窒素複素環はそれぞれに置換基を有していてもよく、前記のVで表される置換基が例として挙げられる。
置換基Vとして好ましいものは上述のアルキル基、アリール基、芳香族複素環基、アルコキシ基、アルキルチオ基、シアノ基、ハロゲン原子である。
【0025】
Rで表されるアルキル基は無置換でも置換されていてもよく、炭素数1〜18、好ましくは1〜7、特に好ましくは1〜4の無置換アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、オクタデシル)、または炭素数1〜18、好ましくは1〜7、特に好ましくは1〜4の置換アルキル基{置換基としては、前記Vで表される各置換基(アリール基、不飽和炭化水素基、カルボキシ基、スルホ基、スルファト基、シアノ基、ハロゲン原子(例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ヒドロキシ基、メルカプト基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、スルファモイル基、複素環基、アルキルスルホニルカルバモイル基、アシルカルバモイル基、アシルスルファモイル基、アルキルスルホニルスルファモイル基など、さらに置換されてよい)が挙げられる}である。
【0026】
Rで表されるアリール基は無置換でも置換されていてもよく、炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜15、さらに好ましくは炭素数6〜10の無置換アリール基(例えばフェニル、1−ナフチル)、または炭素数6〜26、好ましくは炭素数6〜21、さらに好ましくは炭素数6〜16の置換アリール基{置換基としては、前記Vで表される各置換基(アルキル基およびアリール基、不飽和炭化水素基、カルボキシ基、スルホ基、スルファト基、シアノ基、ハロゲン原子(例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ヒドロキシ基、メルカプト基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、スルファモイル基、複素環基、アルキルスルホニルカルバモイル基、アシルカルバモイル基、アシルスルファモイル基、アルキルスルホニルスルファモイル基など、さらに置換されてよい)が挙げられる}であり、好ましくはフェニル基である。
【0027】
Rで表される複素環基は無置換でも置換されていてもよく、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜15、さらに好ましくは炭素数1〜10の無置換複素環基(例えばピロール、フラン、チオフェン)、または炭素数1〜26、好ましくは炭素数1〜21、さらに好ましくは炭素数1〜16の置換複素環基{置換基としては、前記Vで表される各置換基が挙げられる}である。
【0028】
Rは好ましくは、酸基または解離性プロトンを有する基{具体的にはカルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基、ボロン酸基、あるいは−CONHSO2−、−SO2NHSO2−、−CONHCO−、−SO2NHCO−等}が置換した基であり、より好ましくは前記の酸基または解離性プロトンを有する基が置換したアルキル基であり、さらに好ましくはカルボキシル基、スルホ基、アルキルスルホニルカルバモイル基(例えばメタンスルホニルカルボニル)、アシルカルバモイル基(例えばアセチルカルバモイル)、アシルスルファモイル基(例えばアセチルスルファモイル)、アルキルスルホニルスルファモイル基(例えばメタンスルホニルスルファモイル)のいずれかを含んでいる置換アルキル基である。最も好ましくは、カルボキシメチル基、2−スルホエチル基、3−スルホプロピル基、3−スルホブチル基、4−スルホブチル基、またはメタンスルホニルカルバモイルメチル基である。
【0029】
L1、L2で表されるメチン基は置換基を有していてもよく、置換基としては、前記Vで表される各置換基が挙げられる。
pは0が好ましい。
【0030】
一般式(I)のMは色素のイオン電荷を中性にするために必要であるとき、陽イオンまたは陰イオンの存在を示すために式の中に含められている。ある色素が陽イオン、陰イオンであるか、あるいは正味のイオン電荷を持つかどうかは、その置換基および溶液中の環境(pHなど)に依存する。典型的な陽イオンとしては水素イオン(H+)、アルカリ金属イオン(例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン)、アルカリ土類金属イオン(例えばカルシウムイオン)などの無機陽イオン、アンモニウムイオン(例えば、アンモニウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、エチルピリジニウムイオン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムイオン)などの有機イオンが挙げられる。陰イオンは無機陰イオンあるいは有機陰イオンのいずれであってもよく、ハロゲン化物陰イオン(例えばフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン)、置換アリ−ルスルホン酸イオン(例えばp−トルエンスルホン酸イオン、p−クロルベンゼンスルホン酸イオン)、アリ−ルジスルホン酸イオン(例えば1,3−ベンゼンスルホン酸イオン、1,5−ナフタレンジスルホン酸イオン、2,6−ナフタレンジスルホン酸イオン)、アルキル硫酸イオン(例えばメチル硫酸イオン)、硫酸イオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ピクリン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオンが挙げられる。さらに、イオン性ポリマーまたは色素と逆電荷を有する他の色素を用いてもよい。
好ましい陽イオンは、ナトリウムイオン、カリウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、エチルピリジニウムイオン、メチルピリジニウムイオンである。好ましい陰イオンは過塩素酸イオン、ヨウ化物イオン、臭化物イオン、置換アリールスルホン酸イオン(例えばp−トルエンスルホン酸イオン)である。
mは電荷を均衡させるのに必要な0以上の数を表し、分子内塩を形成する場合は0である。好ましくは0以上4以下の数である。
【0031】
Dはメチン色素を形成するのに必要な基であり、Dによりいかなるメチン色素を形成することも可能であるが、好ましくはシアニン色素、メロシアニン色素、ロダシアニン色素、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、アロポーラー色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素などが挙げられる。これらの色素の詳細については、F.M.Hamer著「Heterocyclic Compounds-Cyanine Dyes and Related Compounds」、John Wiley & Sons社−ニューヨーク、ロンドン、1964年刊、D.M.Sturmer著「Heterocyclic Compounds-Special topics in heterocyclic chemistry」、第18章、第14節、第482〜515頁などに記載されている。
好ましい色素の一般式としては、米国特許第5,994,051号第32〜36欄記載の一般式、および同第5,747,236号第30〜34欄記載の一般式が挙げられる。また、シアニン色素、メロシアニン色素、ロダシアニン色素の一般式は、米国特許第5,340,694号第21〜22欄の(XI)、(XII)、(XIII)に示されているもの(ただし、n12,n15,n17,n18の数は限定せず、0以上の整数(好ましくは4以下))が好ましい。好ましくはシアニン、メロシアニン、ロダシアニン色素であり、さらに好ましくはシアニン色素である。
【0032】
また、一般式(I)において、Dによりシアニン色素が形成される場合などは、下記一般式(I')のような共鳴式で表現することも可能である。
一般式(I')
【0033】
【化7】
【0034】
一般式(I)で表される化合物の好ましい形をより具体的に例示する。一般式(I)の化合物は下記の一般式(a)〜(l)から選ばれることがより好ましい。
【0035】
【化8】
【0036】
式中、D、R、M、mは一般式(I)中のものと同義であり、X1は酸素原子、硫黄原子、セレン原子またはNR1(R1はアルキル基、アリール基または複素環基)を表し、X2は酸素原子、硫黄原子またはNR2(R2は水素原子、アルキル基、アリール基または複素環基)を表す。さらに式中のベンゼン環や複素環は前記Vで表される各置換基で置換されてもよく、他の炭素環または複素環と縮合していてもよい。
これらのうち好ましいのは、(a)〜(i)であり、より好ましくは(a)〜(f)であり、さらに好ましくは(a)〜(c)であって、特に好ましくは(a)または(c)である。
【0037】
さらに好ましいのは一般式(I)で表わされるメチン色素が、下記一般式(IA)、(IB)、(IC)、(ID)から選ばれたメチン色素である場合である。
一般式(IA)
【0038】
【化9】
【0039】
式(IA)中、Y、R、Z1、Z2、L1、L2、pは式(I)と同義であり、L31、L32、L33、L34およびL35はメチン基を表す。p3は0または1を表す。n3は0,1,2,3または4を表す。Y31は5〜6員の含窒素複素環を形成するために必要な原子群を表し、さらに他の炭素環または複素環が縮環していても置換基を有していてもよい。M3は対イオンを表し、m3は分子の電荷を中和するのに必要な0以上4以下の数を表す。R31は置換もしくは無置換の、アルキル基、アリール基、または複素環基を表す。
一般式(IB)
【0040】
【化10】
【0041】
式(IB)中、Y、R、Z1、Z2、L1、L2、pは式(I)と同義であり、L41およびL42はメチン基を表す。n4は0,1,2,3または4を表す。Y41は酸性核を形成するために必要な原子群を表し、さらに他の炭素環または複素環と縮合していても置換基を有していてもよい。M4は対イオンを表し、m4は分子の電荷を中和するのに必要な0以上4以下の数を表す。
一般式(IC)
【0042】
【化11】
【0043】
式(IC)中、Y、R、Z1、Z2、L1、L2、pは式(I)と同義であり、L51、L52、L53、L54、L55、L56およびL57はメチン基を表す。p5は0または1を表す。n51およびn52は0,1,2,3または4を表す。Y51およびY52は5〜6員の含窒素複素環を形成するために必要な原子群を表し、置換基を有していてもよい。ただしY52にはさらに他の炭素環または複素環が縮環していてもよい。M5は対イオンを表し、m5は分子の電荷を中和するのに必要な0以上4以下の数を表す。R51およびR52は置換もしくは無置換の、アルキル基、アリール基、または複素環基を表す。
一般式(ID)
【0044】
【化12】
【0045】
式(ID)中、Y、R、Z1、Z2、L1、L2、pは式(I)と同義であり、L61、L62、L63、L64、L65、L66およびL67はメチン基を表す。p6は0または1を表す。n61およびn62は0,1,2,3または4を表す。Y61およびY62は5〜6員の含窒素複素環を形成するために必要な原子群を表し、置換基を有していてもよい。ただしY62にはさらに他の炭素環または複素環が縮環していてもよい。M6は対イオンを表し、m6は分子の電荷を中和するのに必要な0以上4以下の数を表す。R61およびR62は置換もしくは無置換の、アルキル基、アリール基、または複素環基を表す。
【0046】
一般式(IA)、(IB)、(IC)および(ID)中のY31、Y52およびY62で表される5〜6員の含窒素複素環は、さらに他の5〜6員の炭素環または複素環と縮合していてもよい。炭素環としてはベンゼン環、ナフタレン環など、複素環としてはフラン環、チオフェン環、などが挙げられるが、縮合環は炭素環であることが好ましく、より好ましくはベンゼン環である。具体的には、後述の一般式(II)のZ11の例として挙げる5〜6員の含窒素複素環(系)が好ましく、具体例としては、米国特許第5,340,694号第23〜24欄のZ11、Z12、Z13、Z14およびZ16の例として挙げられているものと同様なものが挙げられる。
【0047】
Y41は非環式または環式の酸性核を形成するために必要な原子群を表すが、いかなる一般のメロシアニン色素の酸性核の形をとることもできる。好ましい形においてY41のメチン鎖連結位置の隣がチオカルボニル基またはカルボニル基となっている。
ここでいう酸性核とは、例えばT.H.James編「The Theory of the Photographic Process」第4版、MacMillan Publishing社刊、1977年、198頁により定義される。具体的には、米国特許第3,567,719号、同第3,575,869号、同第3,804,634号、同第3,837,862号、同第4,002,480号、同第4,925,777号、特開平3−167546号などに記載されているものが挙げられる。
酸性核が、炭素、窒素およびカルコゲン(典型的には酸素、硫黄、セレンおよびテルル)原子からなる5〜6員の含窒素複素環を形成するとき好ましく、次の核が挙げられる。
【0048】
2−ピラゾリン−5−オン、ピラゾリジン−3,5−ジオン、イミダゾリン−5−オン、ヒダントイン、2または4−チオヒダントイン、2-イミノオキサゾリジン−4−オン、2−オキサゾリン−5−オン、2−チオオキサゾリン−2,4−ジオン、イソオキサゾリン−5−オン、2−チアゾリン−4−オン、チアゾリジン−4−オン、チアゾリジン−2,4−ジオン、ローダニン、チアゾリジン−2,4−ジチオン、イソローダニン、インダン−1,3−ジオン、チオフェン−3−オン、チオフェン−3−オン−1,1−ジオキシド、インドリン−2−オン、インドリン−3−オン、2−オキソインダゾリニウム、3−オキソインダゾリニウム、5,7−ジオキソ−6,7−ジヒドロチアゾロ[3,2−a]ピリミジン、シクロヘキサン−1,3−ジオン、3,4−ジヒドロイソキノリン−4−オン、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸、クロマン−2,4−ジオン、インダゾリン−2−オン、ピリド[1,2−a]ピリミジン−1,3−ジオン、ピラゾロ[1,5−b]キナゾロン、ピラゾロ[1,5−a]ベンズイミダゾール、ピラゾロピリドン、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−2,4−ジオン、3−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾ[d]チオフェン−1,1−ジオキシド、3−ジシアノメチレン−2,3−ジヒドロベンゾ[d]チオフェン−1,1−ジオキシドの核、およびこれらの核を形成しているカルボニル基もしくはチオカルボニル基をケトメチレンやシアノメチレンなどの構造を有する活性メチレン化合物の活性メチレン位で置換したエキソメチレン構造を有する核。
【0049】
Y41によって形成される酸性核として好ましくはヒダントイン、2または4−チオヒダントイン、2−オキサゾリン−5−オン、2−チオオキサゾリン−2,4−ジオン、チアゾリジン−2,4−ジオン、ローダニン、チアゾリジン−2,4−ジチオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸であり、さらに好ましくは、ヒダントイン、2または4−チオヒダントイン、2−オキサゾリン−5−オン、ローダニン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸である。特に好ましくは2または4−チオヒダントイン、2−オキサゾリン−5−オン、ローダニン、バルビツール酸である。
【0050】
Y51およびY61によって形成される5〜6員の含窒素複素環は、Y41によって表される複素環からオキソ基、またはチオキソ基を除いたものである。好ましくはヒダントイン、2または4−チオヒダントイン、2−オキサゾリン−5−オン、2−チオオキサゾリン−2,4−ジオン、チアゾリジン−2,4−ジオン、ローダニン、チアゾリジン−2,4−ジチオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸からオキソ基、またはチオキソ基を除いたものであり、さらに好ましくは、ヒダントイン、2または4−チオヒダントイン、2−オキサゾリン−5−オン、ローダニン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸からオキソ基、またはチオキソ基を除いたものであり、特に好ましくは2または4−チオヒダントイン、2−オキサゾリン−5−オン、ローダニンからオキソ基、またチオキソ基を除いたものである。
【0051】
R31、R51、R52、R61、R62および酸性核Y41の窒素原子上の置換基(があればそれをR41とする)はそれぞれ置換もしくは無置換の、アルキル基,アリール基、複素環基を表し、一般式(I)のメチン色素におけるRの例として挙げた基が好ましい。
R31、R41、R51、R52、R61、R62はこれらのうち、置換もしくは無置換のアルキル基が好ましく、酸基または解離性プロトンを有する基が置換したアルキル基であることがより好ましい。さらに好ましくはカルボキシル基、スルホ基、あるいは−CONHSO2−、−SO2NHSO2−、−CONHCO−、−SO2NHCO−のいずれかを含んでいる置換アルキル基であり、特に好ましくは、カルボキシメチル基、2−スルホエチル基、3−スルホプロピル基、3−スルホブチル基、4−スルホブチル基、またはメタンスルホニルカルバモイルメチル基である。
【0052】
L31、L32、L33、L34、L35、L41、L42、L51、L52、L53、L54、L55、L56、L57、L61、L62、L63、L64、L65、L66およびL67はそれぞれ独立にメチン基を表す。これらのメチン基は置換基を有していてもよく、置換基としては前記Vで表される各置換基が挙げられる。
また他のメチン基と環を形成してもよく、あるいはY31、Y41、Y51、Y52、Y61、Y62と共に環を形成することもできる。
L1,L2,L34,L35,L56,L57,L66およびL67として好ましくは、無置換メチン基である。
【0053】
n3、n4、n51、n52、n61およびn62は0,1,2,3または4を表し、2以上の時はメチン基が繰り返されるが同一である必要はない。n3、n4、n51およびn62として好ましくは0,1,2,3であり、さらに好ましくは0,1,2であり、特に好ましくは0または1である。n52およびn61として好ましくは0または1であり、さらに好ましくは0である。
【0054】
p3、p5およびp6はそれぞれ独立に0または1を表す。好ましくは0である。
【0055】
M3、M4、M5、M6はそれぞれ対イオンを表し、前述のMと同様のものが好ましい。m3、m4、m5、m6は分子中の電荷を中和させるために必要な0以上の数を表し、分子内塩を形成する場合には0である。好ましくは0以上4以下の数である。
【0056】
一般式(I)で表されるメチン色素として、一般式(IA)、(IB)、(IC)、(ID)のうち、特に好ましくはシアニン色素(IA)の形であり、(IA)はさらに一般式(II)の形で表されることが好ましい。
以下に一般式(II)で表される色素について詳細に説明する。
【0057】
一般式(II)において、Y11はピロール環、フラン環もしくはチオフェン環を形成するのに必要な原子群、またはインドール環、ベンゾフラン環もしくはベンゾチオフェン環を形成するのに必要な原子群を表し、さらに他の炭素環または複素環と縮合していても置換基を有していてもよいが、他の縮合環は存在しないことが好ましい。Y11で形成される環は、特にピロール環、フラン環またはチオフェン環であることが好ましい。
【0058】
X11は酸素原子、硫黄原子、セレン原子またはNR13を表すが、酸素原子、硫黄原子またはNR13であることが好ましく、特に酸素原子または硫黄原子であることが好ましい。
【0059】
Z11で形成される含窒素複素環は、ベンゼン環、シクロヘキセン環、ナフタレン環などの炭素環や、フラン環、チオフェン環などの複素環が縮合していてもよいが、縮合環としては炭素環が好ましく、より好ましくはベンゼン環である。
Z11で形成される含窒素複素環は好ましくは、チアゾリン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、オキサゾリン環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、セレナゾリン環、セレナゾール環、ベンゾセレナゾール環、テルラゾリン環、テルラゾール環、ベンゾテルラゾール環、3,3−ジアルキルインドレニン環(例えば3,3−ジメチルインドレニン)、イミダゾリン環、イミダゾール環、ベンズイミダゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、ピラゾール環、2−ピリジン環、4−ピリジン環、2−キノリン環、4−キノリン環、1−イソキノリン環、3−イソキノリン環、イミダゾ[4、5−b]キノキザリン環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、テトラゾール環、ピリミジン環、および上記の環にベンゼン環が縮合したものを挙げることができる。
より好ましくはベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンズイミダゾール環およびキノリン環であり、さらに好ましくはベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環である。これらに前述のVで表される各置換基が置換していてもよい。具体例としては、米国特許第5,340,694号第23〜24欄のZ11、Z12、Z13、Z14およびZ16の例として挙げられているものと同様なものが挙げられる。
【0060】
R11、R12、R13で表されるアルキル基、アリール基、複素環基としては前記一般式(I)のメチン色素におけるRで説明した各基を挙げることができ、R11、R12は好ましくは酸基または解離性プロトンを有する基が置換したアルキル基であり、さらに好ましくはカルボキシル基、スルホ基、あるいは−CONHSO2−、−SO2NHSO2−、−CONHCO−、−SO2NHCO−のいずれかを含んでいる置換アルキル基であり、特に好ましくは、2−スルホエチル基、3−スルホプロピル基、3−スルホブチル基、4−スルホブチル基、カルボキシメチル基またはメタンスルホニルカルバモイルメチル基である。
R13は好ましくは無置換アルキル基であり、メチル基またはエチル基であることが特に好ましい。
【0061】
L11、L12、L13、L14、L15で表されるメチン基は無置換または置換されてもよく、置換基としては前記Vで表される各置換基が挙げられる。
L14、L15は好ましくは両方とも無置換メチン基である。
【0062】
n1は0,1,2,3または4を表し、2以上の時はメチン基が繰り返されるが同一である必要はない。好ましくは0,1,2,3であり、より好ましくは0,1,2であり、さらに好ましくは0または1である。
p1は0または1を表し、好ましくは0である。
【0063】
M1としては前記一般式(I)のメチン色素におけるMで説明した各イオンを挙げることができ、特に陽イオンであることが好ましい。好ましい陽イオンはナトリウム、カリウム、トリエチルアンモニウム、ピリジニウム、N−エチルピリジニウムである。
m1は分子内の電荷を中和させるために必要な0以上の数を表し、分子内塩を形成する場合は0である。好ましくは0,1,2または3である。
【0064】
一般式(II)で表されるメチン色素はさらに一般式(III)の形で表されることが好ましい。
以下に一般式(III)で表される色素について詳細に説明する。
【0065】
一般式(III)において、Y21で形成される環はピロール環、フラン環、チオフェン環から選ばれる。
Y21で形成される環の縮合の向きは任意であるが、チオフェン環の場合を例に取ると、チオフェン環の硫黄原子が縮合炭素−炭素結合に対してX21と同じ側にあるチエノ[3,2−d]アゾール型(前記一般式(c)のタイプ)、またはX21と反対側にあるチエノ[2,3−d]アゾール型(前記一般式(a)のタイプ)、チオフェン環の3,4位で縮合したチエノ[3,4−d]アゾール型(前記一般式(b)のタイプ)のうち、前の二者が好ましい。増感色素として長波な分光吸収を要求される場合には特に前記一般式(a)のタイプが好ましい。
さらにY21で形成される環上には置換基を有することが好ましく、置換基としては前記Vで表される各置換基が挙げられる。置換基はアルキル基(例えばメチル)、アリール基(例えばフェニル)、芳香族複素環基(例えば1−ピロリル)、アルコキシ基(例えばメトキシ)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ)、シアノ基、ハロゲン原子(例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素)であることが好ましく、より好ましくはハロゲン原子であり、特に好ましくは塩素原子または臭素原子である。
【0066】
X21、X22は酸素原子、硫黄原子、セレン原子またはNR23を表すが、酸素原子、硫黄原子またはNR23であることが好ましく、より好ましくは酸素原子または硫黄原子であり、特に硫黄原子であることが好ましい。
【0067】
R21、R22、R23で表されるアルキル基、アリール基、複素環基としては前記一般式(I)のメチン色素におけるRで説明した各基を挙げることができ、R21、R22は好ましくは酸基または解離性プロトンを有する基が置換したアルキル基であり、さらに好ましくはカルボキシル基、スルホ基、あるいは−CONHSO2−、−SO2NHSO2−、−CONHCO−、−SO2NHCO−のいずれかを含んでいる置換アルキル基であり、特に好ましくは、2−スルホエチル基、3−スルホプロピル基、3−スルホブチル基、4−スルホブチル基、カルボキシメチル基またはメタンスルホニルカルバモイルメチル基である。さらに好ましくは、R21、R22のいずれか一方が2−スルホエチル基、3−スルホプロピル基、3−スルホブチル基または4−スルホブチル基であり、もう一方がカルボキシメチル基またはメタンスルホニルカルバモイルメチル基である。
R23は好ましくは無置換アルキル基であり、メチル基またはエチル基であることが特に好ましい。
【0068】
V21、V22、V23、V24で表される置換基としては前記Vで表される各置換基が挙げられるが、隣接する2つの置換基が互いに連結して飽和または不飽和の縮合環を形成することはない。V21、V24は水素原子であることが好ましく、V22、V23は水素原子またはアルキル基(例えばメチル)、アリール基(例えばフェニル)、芳香族複素環基(例えば1−ピロリル)、アルコキシ基(例えばメトキシ)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ)、シアノ基、ハロゲン原子(例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素)であることが好ましい。V23はより好ましくは水素原子であり、V22はより好ましくはハロゲン原子、特に好ましくは塩素原子または臭素原子である。
【0069】
L21、L22、L23で表されるメチン基は無置換でもまたは置換されてもよく、置換基としては前記Vで表される各置換基が挙げられる。
n2は0,1,2,3または4を表し、2以上の時はメチン基が繰り返されるが同一である必要はない。好ましくは0,1,2,3であり、より好ましくは0,1,2であり、さらに好ましくは0または1である。
n2が0の時、L21は無置換メチン基であることが好ましい。n2が1の時、L22は無置換アルキル基で置換されたメチン基、L21、L23は無置換メチン基であることが好ましく、L22は特にメチル置換メチン基またはエチル置換メチン基であることが好ましい。
【0070】
M2としては前記一般式(I)のメチン色素におけるMで説明した各イオンを挙げることができ、特に陽イオンであることが好ましい。好ましい陽イオンはナトリウム、カリウム、トリエチルアンモニウム、ピリジニウム、N−エチルピリジニウムである。
m2は分子内の電荷を中和させるために必要な0以上の数を表し、分子内塩を形成する場合は0である。好ましくは0,1,2または3である。
【0071】
下記に本発明のハロゲン化銀乳剤において好ましい、一般式(I)の化合物をさらに具体的に説明する。
【0072】
赤感性乳剤層で使用する場合は、一般式(I)の化合物は一般式(III)で表され、X21とX22は一方が酸素原子、他方が硫黄原子であり、Y21はハロゲン原子で置換されたピロール環、フラン環またはチオフェン環であり、R21とR22はスルホアルキル基、カルボキシアルキル基またはアルキルスルホニルカルバモイルアルキル基であり、n2は1であり、L21、L23は無置換メチン基、L22はメチル置換メチン基またはエチル置換メチン基であり、V21、V23、V24は水素原子であり、V22はアルキル基(例えばメチル)、アルコキシ基(例えばメトキシ)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ)、シアノ基、ハロゲン原子(例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、より好ましくはハロゲン原子であり、M2は有機または無機の1価の陽イオンであり、m2は0または1であることが好ましい。
【0073】
緑感性乳剤層で使用する場合は、一般式(I)の化合物は一般式(III)で表され、X21とX22はともに酸素原子であり、Y21は塩素原子または臭素原子で置換されたピロール環、フラン環またはチオフェン環であり、R21とR22はスルホアルキル基、カルボキシアルキル基またはアルキルスルホニルカルバモイルアルキル基であり、n2は1であり、L21、L23は無置換メチン基、L22はメチル置換メチン基またはエチル置換メチン基であり、V21、V23、V24は水素原子であり、V22はアルキル基(例えばメチル)、アリール基(例えばフェニル)、芳香族複素環基(例えば2−チエニル)、アルコキシ基(例えばメトキシ)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ)、シアノ基、ハロゲン原子(例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、より好ましくはハロゲン原子であり、M2は有機または無機の1価の陽イオンであり、m2は0または1であることが好ましい。
【0074】
青感性乳剤層で使用する場合は、一般式(I)の化合物は一般式(III)で表され、X21とX22はともに硫黄原子であり、Y21はハロゲン原子で置換されたチオフェン環であり、R21とR22はスルホアルキル基、カルボキシアルキル基またはアルキルスルホニルカルバモイルアルキル基であり、n2は0であり、L21は無置換メチン基であり、V21、V23、V24は水素原子であり、V22はアルキル基(例えばメチル)、アルコキシ基(例えばメトキシ)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ)、シアノ基、ハロゲン原子(例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、より好ましくはハロゲン原子、特に好ましくは塩素原子または臭素原子であり、M2は有機または無機の1価の陽イオンであり、m2は0または1であることが好ましい。
【0075】
以下に本発明の一般式(I)の化合物(下位概念の一般式(II)、一般式(III)の化合物を含む)の具体例を示すが、これにより本発明が制限されるわけではない。
下記のもの以外に特願2000−124612号明細書記載のメチン色素S−1〜S−95の中からも選ぶことができる。
【0076】
【化13】
【0077】
【化14】
【0078】
【化15】
【0079】
【化16】
【0080】
【化17】
【0081】
【化18】
【0082】
【化19】
【0083】
【化20】
【0084】
【化21】
【0085】
【化22】
【0086】
本発明の一般式(I)で表される化合物(下位概念の化合物も含む)は、F.M.Hamer著「Heterocyclic Compounds-Cyanine Dyes and Related Compounds」、John Wiley & Sons社−ニューヨーク、ロンドン、1964年刊、D.M.Sturmer 著「Heterocyclic Compounds-Special topics in heterocyclic chemistry」、第18章、第14節、第482〜515頁、John Wiley & Sons社−ニューヨーク、ロンドン、1977年刊、「Rodd's Chemistry of Carbon Compounds」2nd Ed. vol.IV, part B,1977刊、第15章、第369〜422頁、Elsevier Science Publishing Company Inc.社刊、ニューヨーク、などに記載の方法に基づいて合成することができる。
【0087】
本発明の一般式(I)の化合物は同一乳剤中で2種以上使用されてもよい。
本発明の一般式(I)の化合物は同一乳剤中で本発明以外の他の増感色素と併用してもよい。用いられる色素として、好ましくはシアニン色素、メロシアニン色素、ロダシアニン色素、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、アロポーラー色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素などが挙げられる。さらに好ましくはシアニン色素、メロシアニン色素、ロダシアニン色素であり、特に好ましくはシアニン色素である。これらの色素の詳細については、F.M.Hamer著「Heterocyclic Compounds-Cyanine Dyes and Related Compounds」、John Wiley & Sons社−ニューヨーク、ロンドン、1964年刊、D.M.Sturmer著「Heterocyclic Compounds-Special topics in heterocyclic chemistry」、第18章、第14節、第482〜515頁などに記載されている。
好ましい色素の一般式としては、米国特許第5,994,051号第32〜44頁記載、および同第5,747,236号第30〜39頁記載の一般式、および具体例で示された増感色素が挙げられる。
また、好ましいシアニン色素、メロシアニン色素、ロダシアニン色素の一般式は、米国特許第5,340,694号第21〜22欄の(XI)、(XII)、(XIII)に示されているもの(ただし、n12,n15,n17,n18の数は限定せず、0以上の整数(好ましくは4以下)とする。)が挙げられる。
【0088】
これらの併用できる増感色素は1種用いてもよいが、2種以上用いてもよく、2種以上の場合は、特に強色増感の効果を有するものが好ましく、その代表例は米国特許第2,688,545号、同第2,977,229号、同第3,397,060号、同第3,522,052号、同第3,527,641号、同第3,617,293号、同第3,628,964号、同第3,666,480号、同第3,672,898号、同第3,679,428号、同第3,303,377号、同第3,769,301号、同第3,814,609号、同第3,837,862号、同第4,026,707号、英国特許第1,344,281号、同第1,507,803号、特公昭43−49336号、同53−12375号、特開昭52−110618号、同52−109925号などに記載されている。
【0089】
増感色素とともに、それ自身分光増感作用を持たない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感を示す物質を乳剤中に含んでよい。
【0090】
本発明における分光増感において有用な強色増感剤(例えば、ピリミジルアミノ化合物、トリアジニルアミノ化合物、アゾリウム化合物、アミノスチリル化合物、芳香族有機酸ホルムアルデヒド縮合物、アザインデン化合物、カドミウム塩)、および強色増感剤と増感色素の組み合わせは、例えば米国特許第3,511,664号、同第3,615,613号、同第3,615,632号、同第3,615,641号、同第4,596,767号、同第4,945,038号、同第4,965,182号、同第4,965,182号、同第2,933,390号、同第3,635,721号、同第3,743,510号、同第,617,295号、同第3,635,721号等に記載されており、その使用法に関しても上記の特許に記載されている方法が好ましい。
【0091】
次に本発明のハロゲン化銀写真乳剤およびハロゲン化銀写真感光材料について詳しく説明する。
本発明で用いられる一般式(I)のメチン色素(また、その他の増感色素、強色増感剤についても同様)を本発明のハロゲン化銀乳剤中に添加する時期は、これまで有用である事が認められている乳剤調製のいかなる工程中であってもよい。例えば、米国特許第2,735,766号、同第3,628,960号、同第4,183,756号、同第4,225,666号、特開昭58−184142号、同60−196749号等に開示されているように、ハロゲン化銀の粒子形成工程および/または脱塩前の時期、脱塩工程中および/または脱塩後から化学熟成の開始前までの時期、特開昭58−113920号等に開示されているように、化学熟成の直前または工程中の時期、化学熟成後塗布までの時期の乳剤が塗布される前ならいかなる時期、工程において添加されてもよい。また、米国特許第4,225,666号、特開昭58−7629号等に開示されているように、同一化合物を単独で、または異種構造の化合物と組み合わせて、例えば、粒子形成工程中と化学熟成工程中または化学熟成完了後とに分けたり、化学熟成の前または工程中と完了後とに分けるなどして分割して添加してもよく、分割して添加する化合物および化合物の組み合わせの種類をも変えて添加されてもよい。
【0092】
本発明で用いられるメチン色素(また、その他の増感色素、強色増感剤についても同様)の添加量としては、ハロゲン化銀粒子の形状、サイズにより異なるが、ハロゲン化銀1モル当たり、1×10-6〜8×10-3モルで用いることができる。例えば、ハロゲン化銀粒子サイズが0.2〜1.3μmの場合には、ハロゲン化銀1モル当たり、2×10-6〜3.5×10-3モルの添加量が好ましく、7.5×10-6〜1.5×10-3モルの添加量がより好ましい。
【0093】
本発明で用いられるメチン色素(また、その他の増感色素、強色増感剤についても同様)は、直接乳剤中へ分散することができる。また、これらはまず適当な溶媒、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、メチルセロソルブ、アセトン、水、ピリジンあるいはこれらの混合溶媒などの中に溶解され、溶液の形で乳剤中へ添加することもできる。この際、塩基や酸、界面活性剤などの添加物を共存させることもできる。また、溶解に超音波を使用することもできる。また、この化合物の添加方法としては米国特許第3,469,987号などに記載のごとき、該化合物を揮発性の有機溶媒に溶解し、該溶液を親水性コロイド中に分散し、この分散物を乳剤中へ添加する方法、特公昭46−24185号などに記載のごとき、水溶性溶剤中に分散させ、この分散物を乳剤中へ添加する方法、米国特許第3,822,135号に記載のごとき、界面活性剤に化合物を溶解し、該溶液を乳剤中へ添加する方法、特開昭51−74624号に記載のごとき、レッドシフトさせる化合物を用いて溶解し、該溶液を乳剤中へ添加する方法、特開昭50−80826号に記載のごとき、化合物を実質的に水を含まない酸に溶解し、該溶液を乳剤中へ添加する方法などが用いられる。その他、乳剤中への添加には米国特許第2,912,343号、同3,342,605号、同2,996,287号、同3,429,835号などに記載の方法も用いられる。
【0094】
本発明で用いられるメチン色素を溶解する有機溶媒としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、ベンジルアルコール、フッ素アルコール、メチルセロソルブ、アセトン、ピリジンあるいはこれらの混合溶媒などが挙げられる。
【0095】
水、上記の有機溶媒、またはこれらの混合溶媒に本発明のメチン色素を溶解させる際には、塩基を添加することも好ましい。塩基としては有機塩基、無機塩基いずれでもよく、例えばアミン誘導体(例えばトリエチルアミン、トリエタノールアミン)、ピリジン誘導体、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムが挙げられる。好ましい溶解方法としては、水とメタノールの混合溶媒に色素を添加し、さらに色素と等モルのトリエチルアミンを添加する方法を挙げることができる。
【0096】
次に本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤について説明する。ハロゲン化銀粒子は、好ましくは実質的に{100}面を持つ立方体または14面体の結晶粒子(これらは粒子頂点が丸みを帯び、さらに高次の面を有していてもよい)または8面体の結晶粒子、または全投影面積の50%以上が{100}面または{111}面からなるアスペクト比2以上の平板状粒子が好ましい。アスペクト比とは、投影面積に相当する円の直径を粒子の厚さで割った値である。
【0097】
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤としては塩沃化銀、塩沃臭化銀乳剤が用いられるが、迅速処理性の観点からは、塩化銀含有率が95モル%以上の塩沃化銀または塩沃臭化銀乳剤が好ましく、更に塩化銀含有率が98モル%以上の塩沃化銀または塩臭沃化銀乳剤が好ましい。
【0098】
本発明の粒子はコア部とコア部よりも多くのヨウ化物を含有するシェル部(最外層)とからなることが好ましい。コア部は90%以上が塩化銀であることが好ましい。コア部はハロゲン組成の異なる二つ以上の部分からなっていてもよい。コア部の沃化銀含有量は全銀モルあたり0.5モル%以下であることが好ましく、特に0.1モル%以下であることが好ましい。シェル部は全粒子体積の50%以下であることが好ましく、20%以下であることが特に好ましい。
シェル部は、全銀モルあたり0.1〜1.0モル%、より好ましくは0.2〜0.60モル%の沃塩化銀相を有するものが高感度が得られ、高照度露光適性に優れるため好ましい。ただし、沃化物イオンの導入位置は、高感度で低被りな乳剤を得る上で制限される。沃化物イオンの導入は、乳剤粒子のより内部に行うほど感度の増加が小さい。故に沃化物塩溶液の添加は、粒子体積の50%より外側が好ましく、より好ましくは70%より外側から、最も好ましくは80%より外側から行うのが良い。また沃化物塩溶液の添加は、好ましくは粒子体積の98%より内側で、最も好ましくは96%より内側で終了するのが良い。沃化物塩溶液の添加は、粒子表面から少し内側で終了することで、より高感度で低被りな乳剤を得ることができる。
本発明においては沃化物イオンの導入がハロゲン化銀粒子体積の50%以上外側で行なわれ、ハロゲン化銀粒子体積の98%より内側で終了することで形成されされる。
【0099】
沃化物イオンの導入は、沃化物塩の溶液を単独で添加させるか、或いは銀塩溶液と高塩化物塩溶液の添加と併せて沃化物塩溶液を添加しても良い。後者の場合は、沃化物塩溶液と高塩化物塩溶液を別々に、またはヨウ化物塩と高塩化物塩の混合溶液として添加しても良い。沃化物塩は、アルカリもしくはアルカリ土類沃化物塩のような溶解性塩の形で添加する。或いは米国特許第5,389,508号明細書に記載される有機分子から沃化物イオンを開裂させることで沃化物を導入することもできる。また別の沃化物イオン源として、微小沃化銀粒子を用いることもできる。
沃化物塩溶液の添加は、粒子形成の一時期に集中して行っても良く、またある一定期間かけて行っても良い。
【0100】
粒子内の深さ方向への沃化物イオン濃度の分布は、エッチング/TOF−SIMS(Time of Flight ・ Secondary Ion Mass Spectrometry)法により、例えばPhi Evans社製 TRIFTII型TOF−SIMSを用いて測定できる。TOF−SIMS法については、具体的には日本表面科学会編「表面分析技術選書二次イオン質量分析法」丸善株式会社(1999年発行)に記載されている。エッチング/TOF−SIMS法で乳剤粒子を解析すると、沃化物塩溶液の添加を粒子の内側で終了しても、粒子表面に向けて沃化物イオンがしみ出していることが分析できる。本発明の乳剤が沃化銀を含有する場合、エッチング/TOF−SIMS法による分析で、沃化物イオンは粒子表面で濃度極大を有し、内側に向けて沃化物イオン濃度が減衰していることが好ましい。
【0101】
本発明のハロゲン化銀粒子には6シアノ錯体をドープする。シアンイオンと錯体を形成する中心金属としては、米国特許第5,518,871に記載の金属を用いることができるが、鉄およびルテニウムが好ましい。6シアノ錯体は粒子形成中のどの段階でもドープすることが可能であるが、ドープ率の低下および金増感疎外を生じる危険を回避するために、本発明においては、ハロゲン化銀粒子の外側からみてハロゲン化銀粒子体積の3%以上内側のみに内側にドープする。6シアノ錯体は粒子形成中に銀1モル当たり1×10-7モル以上添加するが、1×10-7モルから1×10-2モル添加することが好ましく、1×10-6モルから5×10-4モル添加することが最も好ましい。
【0102】
本発明ではイリジウム錯体をドープすることが好ましい。配位子として好ましくは、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンであり、中でも塩化物イオンまたは臭化物イオンを用いることが好ましい。また、米国特許第5,360,712号、同5,457,021号、同5,462,849号に記載のいわゆる有機化合物を配位子とすることもできる。また、H2Oを配位子とすることも好ましい。イリジウム錯体として具体的に好ましくは、[IrCl6]3- 、[IrCl6]2- 、[IrCl5(H2O)]2-、[IrCl5(H2O)]-、[IrCl4(H2O)2] -、[IrCl4(H2O)2]0、[IrCl3(H2O)3]0、[IrCl3(H2O)3] +、[IrBr6]3- 、[IrBr6]2- 、[IrBr5(H2O)]2-、[IrBr5(H2O)]-、[IrBr4(H2O)2] -、[IrBr4(H2O)2]0、[IrBr3(H2O)3]0、および[IrBr3(H2O)3] + である。これらのイリジウム錯体は粒子形成中に銀1モル当たり1×10-10モルから1×10-3モル添加することが好ましく、1×10-8モルから1×10-5モル添加することが最も好ましい。
【0103】
本発明の乳剤が臭化銀局在相を含有する場合、臭化銀含有率が近傍とは少なくとも10モル%以上異なる臭化銀局在相を粒子表面に形成することが好ましい。臭化銀局在相の臭化銀含有率は、10〜60モル%の範囲が好ましく、20〜50モル%の範囲が最も好ましい。臭化銀局在相は、本発明におけるハロゲン化銀粒子を構成する全銀量の0.1〜5モル%の銀から構成されていることが好ましく、0.3〜4モル%の銀から構成されていることが更に好ましい。臭化銀局在相中には、塩化第1イリジウム(III)、臭化第1イリジウム(III)、塩化第2イリジウム(IV)、ヘキサクロロイリジウム(III)酸ナトリウム、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸カリウム、ヘキサアンミンイリジウム(IV)塩、トリオキザラトイリジウム(III)塩、トリオキザラトイリジウム(IV)塩等のIr錯イオンを含有させることが好ましい。これらの化合物の添加量は目的に応じて広範囲にわたるが、ハロゲン化銀1モルに対して10-9〜10-2モルが好ましい。
【0104】
本発明のハロゲン化銀粒子にはさらに、周期律表VIII族金属、即ちオスミウム、ロジウム、白金、ルテニウム、パラジウム、コバルト、ニッケル、から選ばれた金属のイオンまたはその錯イオンを単独または組み合わせて用いることができる。更にこれらの金属は複数種用いてもよい。
【0105】
上記金属イオン提供化合物は、ハロゲン化銀粒子形成時に分散媒になるゼラチン水溶液中、ハロゲン化物水溶液中、銀塩水溶液中、またはその他の水溶液中に添加するか、あるいは予め、金属イオンを含有せしめたハロゲン化銀微粒子の形でハロゲン化銀乳剤に添加し、この乳剤を溶解させる等の手段によって本発明のハロゲン化銀粒子に含有せしめることができる。また、金属イオンを該粒子中に含有せしめるには、粒子形成前、粒子形成、粒子形成直後のいずれかで行うことができるが、この添加時期は、金属イオンを粒子のどの位置にどれだけの量含有させるかによって変えることができる。
【0106】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、第VIII族金属以外に、その乳剤粒子形成もしくは物理熟成の過程において種々の多価金属イオン不純物を導入することができる。これらの化合物の添加量は目的に応じて広範囲にわたるが、ハロゲン化銀1モルに対して、10-9〜10-2モルが好ましい。
【0107】
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤に含まれるハロゲン化銀粒子の平均粒子サイズ(粒子の投影面積と等価な円の直径を粒子サイズとし、その数平均をとったもの)は、0.1μm〜2μmが好ましい。
また、それらの粒子サイズ分布は変動係数(粒子サイズ分布の標準偏差を平均粒子サイズで除したもの)20%以下、望ましくは15%以下、更に好ましくは10%以下の所謂単分散なものが好ましい。このとき、広いラチチュードを得る目的で上記の単分散乳剤を同一層にブレンドして使用することや、重層塗布することも好ましく行われる。
【0108】
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤には、感光材料の製造工程、保存中あるいは写真処理中のかぶりを防止する、あるいは写真性能を安定化させる目的で種々の化合物あるいはそれ等の前駆体を添加することができる。これらの化合物の具体例は前出の特開昭62−215272号公報明細書の第39頁〜第72頁に記載のものが好ましく用いられる。更にEP0447647号に記載された5−アリールアミノ−1,2,3,4−チアトリアゾール化合物(該アリール残基には少なくとも一つの電子吸引性基を持つ)も好ましく用いられる。
【0109】
また、本発明において、ハロゲン化銀乳剤の保存性を高めるため、特開平11−109576号に記載のヒドロキサム酸誘導体、特開平11−327094号に記載のカルボニル基に隣接して、両端がアミノ基もしくはヒドロキシル基が置換した二重結合を有す環状ケトン類(特に一般式(S1)で表されるもので、段落番号0036〜0071は本願の明細書に取り込むことができる。)、特開平11−143011号に記載のスルホ置換のカテコールやハイドロキノン類(例えば、4,5−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸、2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゼンジスルホン酸、3,4−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、2,3−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、2,5−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、3,4,5−トリヒドロキシベンゼンスルホン酸およびこれらの塩など)、特開平11−102045号の一般式(I)〜(III)で表される水溶性還元剤は本発明においても好ましく使用される。
【0110】
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤は、通常化学増感を施される。化学増感法については、不安定硫黄化合物の添加に代表される硫黄増感、金増感に代表される貴金属増感、あるいは還元増感等を単独もしくは併用して用いることができる。化学増感に用いられる化合物については、特開昭62−215272号の第18頁右下欄から第22頁右上欄に記載のものが好ましく用いられる。このうち、特に、金増感を施したものであることが好ましい。金増感を施すことにより、レーザー光等によって走査露光したときの写真性能の変動を更に小さくすることができるからである。
【0111】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤に金増感を施すには、種々の無機金化合物や無機配位子を有する金(I)錯体及び有機配位子を有する金(I)化合物を利用することができる。無機金化合物としては、例えば塩化金酸もしくはその塩、無機配位子を有する金(I)錯体としては、例えばジチオシアン酸金(I)カリウム等のジチオシアン酸金化合物やジチオ硫酸金(I)3ナトリウム等のジチオ硫酸金化合物等の化合物を用いることができる。
【0112】
有機配位子を有する金(I)化合物としては、特開平4-267249号に記載のビス金(I)メソイオン複素環類、例えば四フッ化硼酸金(I)ビス(1,4,5-トリメチル-1,2,4-トリアゾリウム-3-チオラート)、特開平11-218870号に記載の有機メルカプト金(I)錯体、例えばカリウム ビス(1-[3-(2-スルホナートベンズアミド)フェニル]-5-メルカプトテトラゾールカリウム塩)オーレート(I)5水和物、特開平4-268550号に記載の窒素化合物アニオンが配位した金(I)化合物、例えば、ビス(1-メチルヒダントイナート)金(I)ナトリウム塩四水和物、を用いることができる。また、米国特許第3,503,749号に記載されている金(I)チオレート化合物、特開平8-69074号、特開平8-69075号、特開平9-269554号に記載の金化合物、米国特許第5620841号、同5912112号、同5620841号、同5939245号、同5912111号に記載の化合物も用いることができる。 これらの化合物の添加量は場合に応じて広範囲に変わり得るがハロゲン化銀1モルあたり5×10-7〜5×10-3モル、好ましくは5×10-6〜5×10-4モルである。
【0113】
また、コロイド状硫化金を用いることも可能であり、その製造方法はリサーチ・ディスクロージャー(Reserch Disclosure,37154)、ソリッド ステート イオニクス(Solid State Ionics )第79巻、60〜66頁、1995年刊、Compt.Rend.Hebt.Seances Acad.Sci.Sect.B第263巻、1328頁、1966年刊等に記載されている。コロイド状硫化金としてさまざまなサイズのものを利用でき、粒径50nm以下のものも用いることができる。添加量は場合に応じて広範囲に変わり得るがハロゲン化銀1モルあたり金原子として5×10-7〜5×10-3モル、好ましくは5×10-6〜5×10-4モルである。
本発明においては、金増感を更に他の増感法、例えば硫黄増感、セレン増感、テルル増感、還元増感あるいは金化合物以外を用いた貴金属増感等と組み合わせてもよい。
【0114】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料には、従来公知の写真用素材や添加剤を使用できる。
例えば写真用支持体としては、透過型支持体や反射型支持体を用いることができる。透過型支持体としては、セルロースナイトレートフィルムやポリエチレンテレフタレートなどの透明フィルム、更には2,6−ナフタレンジカルボン酸(NDCA)とエチレングリコール(EG)とのポリエステルやNDCAとテレフタル酸とEGとのポリエステル等に磁性層などの情報記録層を設けたものが好ましく用いられる。反射型支持体としては特に複数のポリエチレン層やポリエステル層でラミネートされ、このような耐水性樹脂層(ラミネート層)の少なくとも一層に酸化チタン等の白色顔料を含有する反射支持体が好ましい。
【0115】
本発明においてさらに好ましい反射支持体としては、ハロゲン化銀乳剤層を設ける側の紙基体上に微小空孔を有するポリオレフィン層を有しているものが挙げられる。ポリオレフィン層は多層から成っていてもよく、その場合、好ましくはハロゲン化銀乳剤層側のゼラチン層に隣接するポリオレフィン層は微小空孔を有さず(例えばポリプロピレン、ポリエチレン)、紙基体上に近い側に微小空孔を有するポリオレフィン(例えばポリプロピレン、ポリエチレン)から成るものがより好ましい。紙基体および写真構成層の間に位置するこれら多層もしくは一層のポリオレフィン層の密度は0.40〜1.0g/mlであることが好ましく、0.50〜0.70g/mlがより好ましい。また、紙基体および写真構成層の間に位置するこれら多層もしくは一層のポリオレフィン層の厚さは10〜100μmが好ましく、15〜70μmがさらに好ましい。また、ポリオレフィン層と紙基体の厚さの比は0.05〜0.5が好ましく、0.1〜0.2がさらに好ましい。
【0116】
また、上記紙基体の写真構成層とは逆側(裏面)にポリオレフィン層を設けることも、反射支持体の剛性を高める点から好ましく、この場合、裏面のポリオレフィン層は表面が艶消しされたポリエチレンまたはポリプロピレンが好ましく、ポリプロピレンがより好ましい。裏面のポリオレフィン層は5〜50μmが好ましく、10〜30μmがより好ましく、さらに密度が0.7〜1.1g/mlであることが好ましい。本発明の反射支持体において、紙基体上に設けるポリオレフィン層に関する好ましい態様については、特開平10−333277号、同10−333278号、同11−52513号、同11−65024号、EP0880065号、およびEP0880066号に記載されている例が挙げられる。
【0117】
更に前記の耐水性樹脂層中には蛍光増白剤を含有するのが好ましい。また、蛍光増白剤は感光材料の親水性コロイド層中に分散してもよい。蛍光増白剤として、好ましくは、ベンゾオキサゾール系、クマリン系、ピラゾリン系が用いることができ、更に好ましくは、ベンゾオキサゾリルナフタレン系及びベンゾオキサゾリルスチルベン系の蛍光増白剤である。使用量は、特に限定されていが、好ましくは1〜100mg/m2である。耐水性樹脂に混合する場合の混合比は、好ましくは樹脂に対して0.0005〜3質量%であり、更に好ましくは0.001〜0.5質量%である。
反射型支持体としては、透過型支持体、または上記のような反射型支持体上に、白色顔料を含有する親水性コロイド層を塗設したものでもよい。
また、反射型支持体は、鏡面反射性または第2種拡散反射性の金属表面をもつ支持体であってもよい。
【0118】
また、本発明に係わる感光材料に用いられる支持体としては、ディスプレイ用に白色ポリエステル系支持体又は白色顔料を含む層がハロゲン化銀乳剤層を有する側の支持体上に設けられた支持体を用いてもよい。更に鮮鋭性を改良するために、アンチハレーション層を支持体のハロゲン化銀乳剤層塗布側又は裏面に塗設するのが好ましい。特に反射光でも透過光でもディスプレイが観賞できるように、支持体の透過濃度を0.35〜0.8の範囲に設定するのが好ましい。
【0119】
本発明に係わる感光材料には、画像のシャープネス等を向上させる目的で親水性コロイド層に、欧州特許EP0,337,490A2号の第27〜76頁に記載の、処理により脱色可能な染料(なかでもオキソノール系染料)を感光材料の680nmに於ける光学反射濃度が0.70以上になるように添加したり、支持体の耐水性樹脂層中に2〜4価のアルコール類(例えばトリメチロールエタン)等で表面処理された酸化チタンを12質量%以上(より好ましくは14質量%以上)含有させるのが好ましい。
【0120】
本発明に係わる感光材料には、イラジエーションやハレーションを防止したり、セーフライト安全性等を向上させる目的で親水性コロイド層に、欧州特許EP0337490A2号明細書の第27〜76頁に記載の、処理により脱色可能な染料(中でもオキソノール染料、シアニン染料)を添加することが好ましい。さらに、欧州特許EP0819977号明細書に記載の染料も本発明に好ましく添加される。
これらの水溶性染料の中には使用量を増やすと色分離やセーフライト安全性を悪化するものもある。色分離を悪化させないで使用できる染料としては、特開平5−127324号、同5−127325号、同5−216185号に記載された水溶性染料が好ましい。
【0121】
本発明においては、水溶性染料の代わり、あるいは水溶性染料と併用しての処理で脱色可能な着色層が用いられる。用いられる処理で脱色可能な着色層は、乳剤層に直かに接してもよく、ゼラチンやハイドロキノンなどの処理混色防止剤を含む中間層を介して接するように配置されていても良い。この着色層は、着色された色と同種の原色に発色する乳剤層の下層(支持体側)に設置されることが好ましい。各原色毎に対応する着色層を全て個々に設置することも、このうちに一部のみを任意に選んで設置することも可能である。また複数の原色域に対応する着色を行った着色層を設置することも可能である。着色層の光学反射濃度は、露光に使用する波長域(通常のプリンター露光においては400nm〜700nmの可視光領域、走査露光の場合には使用する走査露光光源の波長)において最も光学濃度の高い波長における光学濃度値が0.2以上3.0以下であることが好ましい。さらに好ましくは0.5以上2.5以下、特に0.8以上2.0以下が好ましい。
【0122】
着色層を形成するためには、従来公知の方法が適用できる。例えば、特開平2−282244号3頁右上欄から8頁に記載された染料や、特開平3−7931号3頁右上欄から11頁左下欄に記載された染料のように固体微粒子分散体の状態で親水性コロイド層に含有させる方法、アニオン性色素をカチオンポリマーに媒染する方法、色素をハロゲン化銀等の微粒子に吸着させて層中に固定する方法、特開平1−239544号に記載されているようなコロイド銀を使用する方法などである。色素の微粉末を固体状で分散する方法としては、たとえば、少なくともpH6以下では実質的に水不溶性であるが、少なくともpH8以上では実質的に水溶性である微粉末染料を含有させる方法が特開平2−308244号の第4〜13頁に記載されている。また、例えば、アニオン性色素をカチオンポリマーに媒染する方法としては、特開平2−84637号の第18〜26頁に記載されている。光吸収剤としてのコロイド銀の調製法については米国特許第2,688,601号、同3,459,563号に示されている。これらの方法のなかで微粉末染料を含有させる方法、コロイド銀を使用する方法などが好ましい。
【0123】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料は、カラーネガフィルム、カラーポジフィルム、カラー反転フィルム、カラー反転印画紙、カラー印画紙等に用いられるが、中でもカラー印画紙として用いるのが好ましい。
カラー印画紙は、イエロー発色性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ発色性ハロゲン化銀乳剤層およびシアン発色性ハロゲン化銀乳剤層をそれぞれ少なくとも1層ずつ有してなることが好ましく、一般には、これらのハロゲン化銀乳剤層は支持体から近い順にイエロー発色性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ発色性ハロゲン化銀乳剤層、シアン発色性ハロゲン化銀乳剤層である。
【0124】
しかしながら、これとは異なった層構成を取っても構わない。
イエロ−カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層は支持体上のいずれの位置に配置されてもかまわないが、該イエローカプラー含有層にハロゲン化銀平板粒子を含有する場合は、マゼンタカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層またはシアンカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも一層よりも支持体から離れた位置に塗設されていることが好ましい。また、発色現像促進、脱銀促進、増感色素による残色の低減の観点からは、イエロ−カプラー含有ハロゲン化銀乳剤層は他のハロゲン化銀乳剤層より、支持体から最も離れた位置に塗設されていることが好ましい。更に、Blix退色の低減の観点からはシアンカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層は他のハロゲン化銀乳剤層の中央の層が好ましく、光退色の低減の観点からはシアンカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層は最下層が好ましい。また、イエロー、マゼンタおよびシアンのそれぞれの発色性層は2層または3層からなってもよい。例えば、特開平4−75055号、同9−114035号、同10−246940号、米国特許第5,576,159号等に記載のように、ハロゲン化銀乳剤を含有しないカプラー層をハロゲン化銀乳剤層に隣接して設け、発色層とすることも好ましい。
【0125】
本発明において適用されるハロゲン化銀乳剤やその他の素材(添加剤など)および写真構成層(層配置など)、並びにこの感光材料を処理するために適用される処理法や処理用添加剤としては、特開昭62−215272号、特開平2−33144号、欧州特許EP0,355,660A2号に記載されているもの、特に欧州特許EP0,355,660A2号に記載されているものが好ましく用いられる。更には、特開平5−34889号、同4−359249号、同4−313753号、同4−270344号、同5−66527号、同4−34548号、同4−145433号、同2−854号、同1−158431号、同2−90145号、同3−194539号、同2−93641号、欧州特許公開第0520457A2号等に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料やその処理方法も好ましい。
【0126】
特に、本発明においては、前記の反射型支持体やハロゲン化銀乳剤、更にはハロゲン化銀粒子中にドープされる異種金属イオン種、ハロゲン化銀乳剤の保存安定剤またはカブリ防止剤、化学増感法(増感剤)、分光増感法(分光増感剤)、シアン、マゼンタ、イエローカプラーおよびその乳化分散法、色像保存性改良剤(ステイン防止剤や褪色防止剤)、染料(着色層)、ゼラチン種、感光材料の層構成や感光材料の被膜pHなどについて、表1〜2の特許に記載のものが特に好ましく適用できる。
【0127】
【表1】
【0128】
【表2】
【0129】
本発明において用いられるシアン、マゼンタおよびイエローカプラーとしては、その他、特開昭62−215272号の第91頁右上欄4行目〜121頁左上欄6行目、特開平2−33144号の第3頁右上欄14行目〜18頁左上欄末行目と第30頁右上欄6行目〜35頁右下欄11行目やEP0355,660A2号の第4頁15行目〜27行目、5頁30行目〜28頁末行目、45頁29行目〜31行目、47頁23行目〜63頁50行目に記載のカプラーも有用である。また、本発明はWO−98/33760の一般式(II)および(III)、特開平10−221825号の一般式(D)で表される化合物を添加しても良く、好ましい。
【0130】
以下に更に具体的に説明する。
本発明に使用しうるシアンカプラーとしては、ピロロトリアゾール系カプラーが好ましく用いられ、特開平5−313324号の一般式(I)又は(II)で表されるカプラーおよび特開平6−347960号の一般式(I)で表されるカプラー並びにこれらの特許に記載されている例示カプラーが特に好ましい。
また、フェノール系、ナフトール系のシアンカプラーも好ましく、例えば、特開平10−333297号に記載の一般式(ADF)で表されるシアンカプラーが好ましい。
上記以外のシアンカプラーとしては、欧州特許EP0488248号明細書及びEP0491197A1号明細書に記載のピロロアゾール型シアンカプラー、米国特許第5,888,716号に記載の2,5−ジアシルアミノフェノールカプラー、米国特許第4,873,183号、同第4,916,051号に記載の6位に電子吸引性基、水素結合基を有するピラゾロアゾール型シアンカプラー、特に、特開平8−171185号、同8−311360号、同8−339060号に記載の6位にカルバモイル基を有するピラゾロアゾール型シアンカプラーも好ましい。
【0131】
また、特開平2−33144号公報に記載のジフェニルイミダゾール系シアンカプラーの他に、欧州特許EP0333185A2号明細書に記載の3−ヒドロキシピリジン系シアンカプラー(なかでも具体例として列挙されたカプラー(42)の4当量カプラーに塩素離脱基をもたせて2当量化したものや、カプラー(6)や(9)が特に好ましい)や特開昭64−32260号公報に記載された環状活性メチレン系シアンカプラー(なかでも具体例として列挙されたカプラー例3、8、34が特に好ましい)、欧州特許EP0456226A1号明細書に記載のピロロピラゾール型シアンカプラー、欧州特許EP0484909号に記載のピロロイミダゾール型シアンカプラーを使用することもできる。
【0132】
本発明に用いられるマゼンタカプラーとしては、前記の表の公知文献に記載されたような5−ピラゾロン系マゼンタカプラーやピラゾロアゾール系マゼンタカプラーが用いられるが、中でも色相や画像安定性、発色性等の点で特開昭61−65245号に記載されたような2級又は3級アルキル基がピラゾロトリアゾール環の2、3又は6位に直結したピラゾロトリアゾールカプラー、特開昭61−65246号に記載されたような分子内にスルホンアミド基を含んだピラゾロアゾールカプラー、特開昭61−147254号に記載されたようなアルコキシフェニルスルホンアミドバラスト基を持つピラゾロアゾールカプラーや欧州特許第226,849A号や同第294,785A号に記載されたような6位にアルコキシ基やアリールオキシ基をもつピラゾロアゾールカプラーの使用が好ましい。特に、マゼンタカプラーとしては特開平8−122984号に記載の一般式(M−I)で表されるピラゾロアゾールカプラーが好ましく、該特許の段落番号0009〜0026はそのまま本願に適用され、本願の明細書の一部として取り込まれる。
これに加えて、欧州特許第854384号、同第884640号に記載の3位と6位の両方に立体障害基を有するピラゾロアゾールカプラーも好ましく用いられる。
【0133】
また、イエローカプラーとしては、前記表中に記載の化合物の他に、欧州特許EP0447969A1号明細書に記載のアシル基に3〜5員の環状構造を有するアシルアセトアミド型イエローカプラー、欧州特許EP0482552A1号明細書に記載の環状構造を有するマロンジアニリド型イエローカプラー、米国特許第5,118,599号明細書に記載されたジオキサン構造を有するアシルアセトアミド型イエローカプラーが好ましく用いられる。その中でも、アシル基が1−アルキルシクロプロパン−1−カルボニル基であるアシルアセトアミド型イエローカプラー、アニリドの一方がインドリン環を構成するマロンジアニリド型イエローカプラーの使用が特に好ましい。これらのカプラーは、単独あるいは併用することができる。
【0134】
本発明に使用するカプラーは、前出表中記載の高沸点有機溶媒の存在下で(または不存在下で)ローダブルラテックスポリマー(例えば米国特許第4,203,716号)に含浸させて、または水不溶性かつ有機溶媒可溶性のポリマーとともに溶かして親水性コロイド水溶液に乳化分散させることが好ましい。
好ましく用いることのできる水不溶性かつ有機溶媒可溶性のポリマーは、米国特許第4,857,449号明細書の第7欄〜15欄及び国際公開WO88/00723号明細書の第12頁〜30頁に記載の単独重合体または共重合体が挙げられる。より好ましくはメタクリレート系あるいはアクリルアミド系ポリマー、特にアクリルアミド系ポリマーの使用が色像安定性等の上で好ましい。
【0135】
本発明においては公知の混色防止剤を用いることができるが、その中でも以下に挙げる特許に記載のものが好ましい。
例えば、特開平5−333501号に記載の高分子量のレドックス化合物、WO98/33760号、米国特許第4,923,787号等に記載のフェニドンやヒドラジン系化合物、特開平5−249637号、特開平10−282615号および独国特許第19629142A1号等に記載のホワイトカプラーを用いることができる。また、特に現像液のpHを上げ、現像の迅速化を行う場合には独国特許第19618786A1号、欧州特許第839623A1号、欧州特許第842975A1号、独国特許19806846A1号および仏国特許第2760460A1号等に記載のレドックス化合物を用いることも好ましい。
【0136】
本発明においては紫外線吸収剤としてモル吸光係数の高いトリアジン骨核を有する化合物を用いることが好ましく、例えば、以下の特許に記載の化合物を用いることができる。
特開昭46−3335号、同55−152776号、特開平5−197074号、同5−232630号、同5−307232号、同6−211813号、同8−53427号、同8−234364号、同8−239368号、同9−31067号、同10−115898号、同10−147577号、同10−182621号、独国特許第19739797A号、欧州特許第711804A号および特表平8−501291号等に記載されている化合物である。
【0137】
本発明に係わる感光材料に用いることのできる結合剤又は保護コロイドとしては、ゼラチンを用いることが有利であるが、それ以外の親水性コロイドを単独であるいはゼラチンとともに用いることができる。好ましいゼラチンとしては、鉄、銅、亜鉛、マンガン等の不純物として含有される重金属は、好ましくは5ppm以下、更に好ましくは3ppm以下である。
また、感光材料中に含まれるカルシウム量は、好ましくは20mg/m2以下、更に好ましくは10mg/m2以下、最も好ましくは5mg/m2以下である。
本発明においては、親水性コロイド層中に繁殖して画像を劣化させる各種の黴や細菌を防ぐために、特開昭63−271247号公報に記載のような防菌・防黴剤を添加するのが好ましい。
さらに、感光材料の被膜pHは4.0〜7.0が好ましく、より好ましくは4.0〜6.5である。
【0138】
本発明においては、感光材料の塗布安定性向上、静電気発生防止、帯電量調節等の点から界面活性剤を感光材料に添加することができる。界面活性剤としてはアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ベタイン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤があり、例えば特開平5−333492号に記載のものが挙げられる。本発明に用いる界面活性剤としてはフッ素原子含有の界面活性剤が好ましい。特に、フッ素原子含有界面活性剤を好ましく用いることができる。
【0139】
これらの界面活性剤の感光材料への添加量は特に限定されるものではないが、一般的には1×10-5〜1g/m2、好ましくは1×10-4〜1×10-1g/m2、更に好ましくは1×10-3〜1×10-2g/m2である。
これらのフッ素原子含有界面活性剤は単独で用いても、従来公知の他の界面活性剤と併用してもかまわないが、好ましくは従来公知の他の界面活性剤との併用である。
【0140】
本発明の感光材料は、通常のネガプリンターを用いたプリントシステムに使用される以外に、陰極線(CRT)を用いた走査露光方式にも適している。陰極線管露光装置は、レーザーを用いた装置に比べて、簡便でかつコンパクトであり、低コストになる。また、光軸や色の調整も容易である。
画像露光に用いる陰極線管には、必要に応じてスペクトル領域に発光を示す各種発光体が用いられる。例えば赤色発光体、緑色発光体、青色発光体のいずれか1種、あるいは2種以上が混合されて用いられる。スペクトル領域は、上記の赤、緑、青に限定されず、黄色、橙色、紫色或いは赤外領域に発光する蛍光体も用いられる。特に、これらの発光体を混合して白色に発光する陰極線管がしばしば用いられる。
【0141】
感光材料が異なる分光感度分布を有する複数の感光性層を持ち、陰極性管も複数のスペクトル領域の発光を示す蛍光体を有する場合には、複数の色を一度に露光、即ち陰極線管に複数の色の画像信号を入力して管面から発光させてもよい。各色ごとの画像信号を順次入力して各色の発光を順次行わせ、その色以外の色をカットするフィルムを通して露光する方法(面順次露光)を採っても良く、一般には、面順次露光の方が、高解像度の陰極線管を用いることができるため、高画質化のためには好ましい。
【0142】
本発明の感光材料は、ガスレーザー、発光ダイオード、半導体レーザー、半導体レーザーあるいは半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーと非線形光学結晶を組合わせた第二高調波発光光源(SHG)等の単色高密度光を用いたデジタル走査露光方式が好ましく使用される。システムをコンパクトで、安価なものにするために半導体レーザー、半導体レーザーあるいは固体レーザーと非線形光学結晶を組合わせた第二高調波発生光源(SHG)を使用することが好ましい。特にコンパクトで、安価、更に寿命が長く安定性が高い装置を設計するためには半導体レーザーの使用が好ましく、露光光源の少なくとも一つは半導体レーザーを使用することが好ましい。
【0143】
このような走査露光光源を使用する場合、本発明の感光材料の分光感度極大波長は、使用する走査露光用光源の波長により任意に設定することができる。半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーあるいは半導体レーザーと非線形光学結晶を組合わせて得られるSHG光源では、レーザーの発振波長を半分にできるので、青色光、緑色光が得られる。従って、感光材料の分光感度極大は通常の青、緑、赤の3つの波長領域に持たせることが可能である。
このような走査露光における露光時間は、画素密度を400dpiとした場合の画素サイズを露光する時間として定義すると、好ましい露光時間としては10-4秒以下、更に好ましくは10-6秒以下である。
【0144】
本発明に適用できる好ましい走査露光方式については、前記の表に掲示した特許に詳しく記載されている。
また本発明の感光材料を処理するには、特開平2−207250号の第26頁右下欄1行目〜34頁右上欄9行目、及び特開平4−97355号の第5頁左上欄17行目〜18頁右下欄20行目に記載の処理素材や処理方法が好ましく適用できる。また、この現像液に使用する保恒剤としては、前記の表に掲示した特許に記載の化合物が好ましく用いられる。
【0145】
本発明は迅速処理適性を有する感光材料にも好ましく適用される。
発色現像時間とは、感光材料が発色現像液中に入ってから次の処理工程の漂白定着液に入るまでの時間をいう。例えば、自動現像機などで処理される場合には、感光材料が発色現像液中に浸漬されている時間(いわゆる液中時間)と、感光材料が発色現像液を離れ次の処理工程の漂白定着浴に向けて空気中を搬送されている時間(いわゆる空中時間)との両者の合計を発色現像時間という。同様に、漂白定着時間とは、感光材料が漂白定着液中に入ってから次の水洗又は安定浴に入るまでの時間をいう。また、水洗又は安定化時間とは、感光材料が水洗又は安定化液中に入ってから乾燥工程に向けて液中にある時間(いわゆる液中時間)をいう。
【0146】
本発明において迅速処理を行う場合には、発色現像時間は好ましくは15秒以下、更に好ましくは12秒以下6秒以上である。同様に、漂白定着時間は好ましくは15秒以下、更に好ましくは12秒以下6秒以上である。また、水洗又は安定化時間は、好ましくは50秒以下、更に好ましくは25秒以下6秒以上である。
【0147】
本発明の感光材料を露光後、現像する方法としては、従来のアルカリ剤と現像主薬を含む現像液で現像する方法、現像主薬を感光材料に内蔵し、現像主薬を含まないアルカリ液などのアクチベーター液で現像する方法などの湿式方式のほか、処理液を用いない熱現像方式などを用いることができる。特に、アクチベーター方法は、現像主薬を処理液に含まないため、処理液の管理や取扱いが容易であり、また廃液処理時の負荷が少なく環境保全上の点からも好ましい方法である。アクチベーター方法において、感光材料中に内蔵される現像主薬またはその前駆体としては、例えば、特開平8−234388号、同9−152686号、同9−152693号、同9−211814号、同9−160193号に記載されたヒドラジン型化合物が好ましい。
【0148】
また、感光材料の塗布銀量を低減し、過酸化水素を用いた画像増幅処理(補力処理)する現像方法も好ましく用いられる。特に、この方法をアクチベーター方法に用いることは好ましい。具体的には、特開平8−297354号、同9−152695号に記載された過酸化水素を含むアクチベーター液を用いた画像形成方法が好ましく用いられる。
アクチベーター方法において、アクチベーター液で処理後、通常脱銀処理されるが、低銀量の感光材料を用いた画像増幅処理方法では、脱銀処理を省略し、水洗または安定化処理といった簡易な方法を行うことができる。また、感光材料から画像情報をスキャナー等で読み取る方式では、撮影用感光材料などの様に高銀量の感光材料を用いた場合でも、脱銀処理を不要とする処理形態を採用することができる。
【0149】
本発明で用いられるアクチベーター液、脱銀液(漂白/定着液)、水洗および安定化液の処理素材や処理方法は公知のものを用いることができる。好ましくは、リサーチ・ディスクロージャーItem 36544(1994年9月)第536頁〜第541頁、特開平8−234388号に記載されたものを用いることができる。
【0150】
本発明の感光材料をプリンター露光する際、米国特許第4,880,726号に記載のバンドストップフィルターを用いることが好ましい。これによって光混色が取り除かれ、色再現性が著しく向上する。
本発明においては、欧州特許EP0789270A1や同EP0789480A1号に記載のように、画像情報を付与する前に、予め、黄色のマイクロドットパターンを前露光し、複写規制を施しても構わない。
【0151】
【実施例】
以下に実施例をあげ、本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1
(立方体乳剤Aの調製)
石灰処理ゼラチンの5%水溶液に塩化ナトリウム5.6gを加え、1Nの硫酸42.8mlとN,N’−ジメチルイミダゾリジン−2−チオン(1%水溶液)を1.1ml添加した。この水溶液に硝酸銀0.21モル含む水溶液と塩化ナトリウムを0.21モル含む水溶液とを撹拌しながら61℃で添加混合した(第一添加)。続いて61℃を維持したまま、硝酸銀1.27モルを含む水溶液と塩化ナトリウムを1.27モル含む水溶液とを撹拌しながら添加混合し(第二添加)、更に硝酸銀0.21モル含む水溶液と塩化ナトリウムを0.21モル含む水溶液とを撹拌しながら添加混合し(第三添加)、続いて硝酸銀0.21モルを含む水溶液と塩化ナトリウムを0.21モル含む水溶液とを撹拌しながら添加混合した(第四添加)。更に61℃のまま硝酸銀0.02モル含む水溶液と塩化ナトリウムを0.02モル含む水溶液を激しく撹拌しながら添加混合した(第五添加)。続いて硝酸銀0.11モルを含む水溶液と塩化ナトリウムを0.11モル含む水溶液とを撹拌しながら添加混合し(第六添加)、続いて硝酸銀0.04モルを含む水溶液と塩化ナトリウムを0.04モル含む水溶液とを撹拌しながら添加混合し(第七添加)、最後に硝酸銀0.04モル含む水溶液と塩化ナトリウムを0.04モル含む水溶液とを撹拌しながら61℃で添加混合した(第八添加)。
その後40℃にて沈降水洗を行い脱塩を施した。さらに石灰処理ゼラチン168.0gを加え、乳剤のpHとpAgをそれぞれ7.3と5.6に調整した。電子顕微鏡写真から、粒子の形状は立方体であり、粒子サイズは0.62μm、変動係数は10%であった。
【0152】
(沃度および6シアノ錯体を含む立方体乳剤Bの調製)
以下の点が異なる以外は乳剤Aと同様にして調製した。
・第二添加のハロゲン溶液が、塩化ナトリウム1.27モルとK2[Ru(NO)Cl5]の遷移金属錯体を、粒子形成終了時において、1×10-8モル/モルAgとなる量含む。
・第四添加のハロゲン溶液が、塩化ナトリウム0.21モルとK4[Ru(CN) 6 ]の遷移金属錯体を粒子形成終了時において、2×10-5モル/モルAgとなる量含む。
・第五添加のハロゲン溶液が塩化ナトリウム0.02モルと沃化カリウム0.005モルを含む。
・第六添加のハロゲン溶液が、塩化ナトリウムを0.11モルとK2[Ir(H2O)Cl5]の遷移金属錯体を、粒子形成終了時において2×10-8モル/モルAgとなる量含む。
・第七添加のハロゲン溶液が、塩化ナトリウムを0.04モルとK2[IrCl6]の遷移金属錯体を、粒子形成終了時において4×10-8モル/モルAgとなる量含む。
電子顕微鏡写真から、得られた粒子の形状は立方体であり、粒子サイズは0.62μm、変動係数は10%であった。
【0153】
(化学増感および分光増感)
乳剤AおよびBに金増感剤(四フッ化硼酸金(I)ビス(1,4,5-トリメチル-1,2,4-トリアゾリウム-3-チオラート))、硫黄増感剤(チオ硫酸ナトリウム)および表3に記載の分光増感色素を3.8×10-4モル/モルAgを添加し、60℃にて最適に化学増感及び分光増感し、さらに1−(5−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール4.4×10-4モル/モルAgを添加した。
【0154】
【化23】
【0155】
(塗布試料の調製)
紙の両面をポリエチレン樹脂で被覆してなる支持体の表面に、コロナ放電処理を施した後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含むゼラチン下塗り層を設け、さらに第一層〜第七層の写真構成を順次塗設して、以下に示す層構成のハロゲン化銀カラー写真感光材料の試料(T101)〜(T112)までを作成した。各写真構成層の塗布液は、以下のようにして調製した。
【0156】
塗布液調製
カプラー、色像安定剤、紫外線吸収剤を溶媒および酢酸エチルに溶解し、この液を界面活性剤を含む10重量%ゼラチン水溶液中に高速撹拌乳化機(ディゾルバー)で乳化分散し、水を加えて乳化分散物を調製した。
前記乳化分散物と高塩化銀乳剤とを混合溶解し、後記組成となるように塗布液を調製した。
【0157】
各層のゼラチン硬化剤として、1−オキシ−3,5−ジクロロ−s−トリアジンナトリウム塩を用いた。また、各層にAb−1、Ab−2およびAb−3をそれぞれ全量が15.0mg/m2、60.0mg/m2および5.0mg/m2 となるように添加した。
【0158】
【化24】
【0159】
各感光性乳剤層に用いたの高塩化銀乳剤は以下である。
青感光性乳剤層
表3に記載の乳剤を用いた。
緑感光性乳剤層
塩臭化銀乳剤(立方体、平均粒子サイズ0.45μmの大サイズ乳剤と0.35μmの小サイズ乳剤との1:3混合物(銀モル比)。粒子サイズの変動係数は10%および8%。各サイズの乳剤とも臭化銀0.4モル%を塩化銀を基体とする粒子表面の一部に局在含有させた)に増感色素Cを、ハロゲン化銀1モルあたり、大サイズ乳剤に対してはそれぞれ3.0×10-4モル、小サイズ乳剤に対してはそれぞれ3.6×10-4モル添加した。また、増感色素Dを、ハロゲン化銀1モルあたり、大サイズ乳剤に対してはそれぞれ4.0×10-5モル、小サイズ乳剤に対してはそれぞれ2.8×10-4モル添加した。
【0160】
【化25】
【0161】
赤感光性乳剤層
塩臭化銀乳剤(立方体、平均粒子サイズ0.50μmの大サイズ乳剤Aと0.41μmの小サイズ乳剤Bとの1:4混合物(銀モル比)。粒子サイズの変動係数は0.09と0.11。各サイズの乳剤とも臭化銀0.8モル%を塩化銀を基体とする粒子表面の一部に局在含有させた)。増感色素EおよびFを、ハロゲン化銀1モルあたり、大サイズ乳剤に対してはそれぞれ6.0×10-5モル、小サイズ乳剤に対してはそれぞれ9.0×10-5モル添加した。
【0162】
【化26】
【0163】
さらに、以下の化合物Iをハロゲン化銀1モルあたり2.6×10-3モル添加した。
【0164】
【化27】
【0165】
また、青感性、緑感性および赤感性乳剤層に対し、1−(3−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールを、それぞれハロゲン化銀1モルあたり、3.3×10-4モル、1.0×10-3モルおよび5.9×10-4モル添加した。
さらに、第二層、第四層、第六層および第七層にも、それぞれ0.2mg/m2、0.2mg/m2、0.6mg/m2および0.1mg/m2となるように添加した。
また、赤感性乳剤層にメタクリル酸とアクリル酸ブチルの共重合体(重量比1:1、平均分子量200000〜400000)を0.05g/m2添加した。
また、第二層、第四層および第六層にカテコール−3,5−ジスルホン酸二ナトリウムをそれぞれ6mg/m2、6mg/m2および18mg/m2となるように添加した。
また、イラジエーション防止のために、乳剤層に以下の染料(カッコ内は塗布量を表す)を添加した。
【0166】
【化28】
【0167】
(層構成)
以下に層構成を示す。数字は塗布量(g/m2)を表す。ハロゲン化銀乳剤は銀換算塗布量を表す。
支持体;ポリエチレン樹脂ラミネート紙 [第一層側のポリエチレン樹脂に白色顔料(TiO2;含有率16重量%、ZnO;含有量4重量%)と蛍光増白剤(4,4’−ビス(5−メチルベンゾオキサゾリル)スチル弁を13mg/m2)、青味染料(群青)を96mg/m2含む]
【0168】
第一層(青感性乳剤層)
乳剤 0.24
ゼラチン 1.25
イエローカプラー(ExY) 0.57
色像安定剤(Cpd−1) 0.07
色像安定剤(Cpd−2) 0.04
色像安定剤(Cpd−3) 0.07
色像安定剤(Cpd―4) 0.02
溶媒(Solv−1) 0.21
【0169】
第二層(混色防止層)
ゼラチン 0.60
混色防止剤(Mid−1) 0.10
混色防止剤(Mid−2) 0.18
混色防止剤(Mid−3) 0.02
紫外線吸収剤(UV−C) 0.05
溶媒(Solv−5) 0.11
【0170】
第三層(緑感性乳剤層)
乳剤 0.14
ゼラチン 0.73
マゼンタカプラー(ExM) 0.15
紫外線吸収剤(UV−A) 0.05
色像安定剤(Cpd−2) 0.02
混色防止剤(Cpd−7) 0.008
色像安定剤(Cpd−4) 0.08
色像安定剤(Cpd−5) 0.02
色像安定剤(Cpd−6) 0.009
色像安定剤(Cpd−7) 0.0001
溶媒(Solv−3) 0.06
溶媒(Solv−4) 0.11
溶媒(Solv−5) 0.06
【0171】
第四層(混色防止層)
ゼラチン 0.48
混色防止剤(Mid−4) 0.07
混色防止剤(Mid−2) 0.006
混色防止剤(Mid−3) 0.006
紫外線吸収剤(UV−C) 0.04
溶媒(Solv−5) 0.09
【0172】
第五層(赤感性乳剤層)
乳剤 0.12
ゼラチン 0.59
シアンカプラー(ExC−1) 0.13
シアンカプラー(ExC−2) 0.03
混色防止剤(Mid−3) 0.01
色像安定剤(Cpd−5) 0.04
色像安定剤(Cpd−8) 0.19
色像安定剤(Cpd−9) 0.04
溶媒(Solv−5) 0.09
【0173】
第六層(紫外線吸収層)
ゼラチン 0.32
紫外線吸収剤(UV−C) 0.42
溶媒(Solv−7) 0.08
【0174】
第七層(保護層)
ゼラチン 0.70
ポリビニルアルコールのアクリル変成重合体(変成度17%) 0.04
流動パラフィン 0.01
界面活性剤(Cpd−13) 0.01
ポリジメチルシロキサン 0.01
二酸化珪素 0.003
【0175】
【化29】
【0176】
【化30】
【0177】
【化31】
【0178】
【化32】
【0179】
【化33】
【0180】
【化34】
【0181】
【化35】
【0182】
【化36】
【0183】
以上のようにして、塗布試料T101からT112を調製した。
【0184】
(圧力かぶり試験)
上記試料にたいして、直径0.1mmの針に10gの加重を印加し600mm/分の速度で移動させた(圧力処理)。露光をすることなく現像した試料について、圧力処理有無の部分の濃度差(圧力かぶりという)を10μmのアパーチャー径を有するミクロ濃度計を用いて測定した。
【0185】
(露光)
下記露光装置を用い、B、G、R、3色のレーザー光で3色分解の階調を露光を与えた。その際、各試料に対して、最適な改良が得られるようにレーザー出力を補正した。
【0186】
(露光装置)
光源は、半導体レーザーGaAlAs(発振波長;808.5nm)を励起光源としたYAG固体レーザー(発振波長;946nm)を反転ドメイン構造を有するLiNbO3のSHG結晶により波長変換して取り出した473nmと、半導体レーザーGaAlAs(発振波長;808.5nm)を励起光源としたYVO4固体レーザー(発振波長;1064nm)を反転ドメイン構造を有するLiNbO3のSHG結晶により波長変換して取り出した532nmと、AlGaInP(発振波長;680nm:松下電産製タイプNo.LN9R20)とを用いた。3色それぞれのレーザー光はAOMにて強度変調されポリゴンミラーにより走査方向に対して垂直方向に移動し、カラー印画紙上に、順次走査露光できるようにした。半導体レーザーの温度による光量変動は、ペルチェ素子を利用して温度が一定に保たれることで抑えられている。この走査露光は、600dpiであり、光ビーム径測定装置[1180GP/ビームスキャン社製(米国)]を用いた光ビーム径測定では、B、G、Rとも65mであった(主走査方向径/副走査方向径の差が1%以内の円形ビームであった)。
【0187】
(現像処理;dry to dry 70秒)
上記の試料に下記処理工程および処理液によって発色現像処理を施した。ただし、露光は行わなかった。
【0188】
上記の処理では、リンス▲3▼の水は逆浸透膜に圧送し、透過水はリンス▲3▼に供給し、逆浸透膜を通過しなかった濃縮水はリンス▲2▼に戻して使用した。なお、各リンス間はクロスオーバー時間を短縮するため、槽間にブレードを設置し、その間に感材を通過させた。また、各工程には特開平8-314088記載の吹き付け装置を用い吹き付け量を1タンクあたり4〜6リットル/minに設定して循環処理液を吹き付けた。
【0189】
各処理液の組成は以下の通りである。
【0190】
漂白定着液は2成分の補充液を下記のように混合して調製した。
漂白定着液 タンク液 補充量(下記量で1m2あたり合計38ml)
第1補充液 260ml 18ml
第2補充液 290ml 20ml
水を加えて 1000ml
pH(25C) 5.0
【0191】
第1および第2補充液の組成は下記の通りである。
第1補充液
水 150ml
エチレンビスグアニジン硝酸塩 30g
亜硫酸アンモニウム・1水塩 226g
エチレンジアミン四酢酸 7.5g
トリアジニルアミノスチルベン系蛍光増白剤 1.0g
(昭和化学製ハッコールFWA−SF)
臭化アンモニウム 30g
チオ硫酸アンモニウム(700g/リットル) 340ml
水を加えて 1000ml
pH(25C) 5.82
【0192】
第2補充液
水 140ml
エチレンジアミン四酢酸 11.0g
エチレンジアミン四酢酸鉄(III)アンモニウム 384g
酢酸(50%) 230ml
水を加えて 1000ml
pH(25C) 3.35
【0193】
リンス液
イオン交換水(Ca、Mg各々3ppm以下)
【0194】
処理の終了した発色試料を富士写真フイルム社製TCD型濃度測定装置を用いて反射濃度を測定した。感度はカブリ濃度よりも1.0高い発色濃度を与えるのに必要な露光量より求めた。青感度は180秒処理した試料T101の感度を100とした相対値であらわした。測定結果を、圧力かぶりの結果と併せて表3に示す。
【0195】
【表3】
【0196】
表3の結果より、本発明に係る乳剤は、ヨウドおよび6シアノ錯体を導入して高感度を達成しながらかぶりが低い。特に迅速処理した場合に生じるかぶり濃度の増加がわずかであり、低いかぶり濃度を与えた。さらに、本発明の乳剤は圧力かぶりについても同様の傾向を示した。すなわち、ヨウドおよび6シアノ錯体を導入して高感度を達成しながら圧力かぶりが低い。特に迅速処理した場合に生じる圧力かぶり濃度の増加がわずかであった。
【0201】
感度は試料T201の感度を100とした相対値で表した。表4に示されるように、{100}平板粒子を用いた場合でも本発明の色素を用いた場合に高感度でかぶりおよび圧力かぶりが低いことがわかった。
【0202】
【発明の効果】
本発明の請求項1の構成により、高感度でかつカブリの小さい(圧力カブリも相対的に小さい)感光材料を得ることができる。
Claims (16)
- イエロー発色性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ発色性ハロゲン化銀乳剤層およびシアン発色性ハロゲン化銀乳剤層をそれぞれ少なくとも1層ずつ有するハロゲン化銀カラー写真感光材料であって、該乳剤層に含まれるハロゲン化銀粒子は、塩化銀含有率が90モル%以上であり、沃化銀含有率が0.01モル%以上1.0モル%以下の塩沃化銀もしくは塩沃臭化銀であり、該ハロゲン化銀粒子中に含有する沃化銀が、沃化物イオンの導入がハロゲン化銀粒子体積の50%以上外側で行なわれ、ハロゲン化銀粒子体積の98%より内側で終了することで形成され、さらに、少なくとも1種類の6シアノ錯体を、ハロゲン化銀粒子の外側からみてハロゲン化銀粒子体積の3%以上内側のみに含有し、該6シアノ錯体が該ハロゲン化銀粒子の全銀量に対して少なくとも1×10-7モル%ドープされており、かつ該乳剤層中に下記一般式(I)で表されるメチン色素を含有することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
一般式(I)
- 前記一般式(I)において、Yが他の炭素環または複素環と縮合していても置換基を有していてもよい、ピロール環、フラン環、チオフェン環、またはピロール環、フラン環、チオフェン環が縮合したベンゼン環を形成するのに必要な原子群を表すことを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
- 前記一般式(I)が下記一般式(II)から選ばれることを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
一般式(II)
- 前記一般式(I)が下記一般式(III)から選ばれることを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
一般式(III)
- 前記一般式(III)において、R21、R22のいずれか一方が2−スルホエチル基、3−スルホプロピル基、3−スルホブチル基または4−スルホブチル基であり、もう一方がカルボキシメチル基またはメタンスルホニルカルバモイルメチル基であることを特徴とする請求項4に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
- 前記X21およびX22が硫黄原子であることを特徴とする請求項4または5に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
- 少なくとも1種類のIr錯体がドープされたハロゲン化銀粒子を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
- 全粒子体積の50%以上占めるハロゲン化銀粒子が、隣接する相とは10モル%以上臭化銀含有量の高い高臭化銀局在相を有し、該高臭化銀局在相にIr錯体を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー感光材料。
- 前記6シアノ錯体が、鉄またはルテニウムの金属錯体であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
- 前記ハロゲン化銀粒子中に含有する沃化銀が、沃化物イオンが、ハロゲン化銀粒子表面で濃度極大を示し、粒子内部に向けて沃化物イオンが減衰していることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
- 前記Ir錯体が、 [IrCl5(H2O)]2-、[IrCl5(H2O)]-、[IrCl4(H2O)2] -、[IrCl4(H2O)2]0、[IrCl3(H2O)3]0、[IrCl3(H2O)3] +、 [IrBr5(H2O)]2-、[IrBr5(H2O)]-、[IrBr4(H2O)2] -、[IrBr4(H2O)2]0、[IrBr3(H2O)3]0、または[IrBr3(H2O)3] + であることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
- 前記ハロゲン化銀粒子が{100}面をもつ立方体粒子であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
- 前記ハロゲン化銀粒子が、金増感を施されていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
- 前記金増感が、有機配位子を有する金(I)化合物により施されていることを特徴とする請求項13に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
- 請求項1〜14のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料を画像露光後、現像処理する画像形成方法に於いて、該感光材料の全処理時間が75秒以下で処理することを特徴とする画像形成方法。
- デジタル走査露光されることを特徴とする請求項15に記載の画像形成方法。
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