JP4068469B2 - ハロゲン化銀カラー写真感光材料およびカラー画像形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハロゲン化銀カラー写真感光材料及びカラー画像形成方法に関するものであり、詳しくは迅速処理に適し、高感度で露光時の温度変動および処理液変動による感度の変化が少ないハロゲン化銀カラー写真感光材料及びカラー画像形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
カラー写真は、色素形成カプラーとハロゲン化銀乳剤を支持体上に有する感光材料を、芳香族第一級アミン系発色現像主薬で現像処理することによって、生成する現像主薬の酸化体と色素形成カプラー(以下カプラーと称す)との反応により色素形成画像を得る方法で、高画質なカラープリントが得られる事はよく知られているところである。
しかし、近年、他のカラープリント方式として、インクジェット方式、昇華型方式、カラーゼログラフィー等も技術がそれぞれ進歩し、写真画質を謳うなど、カラープリント方式として認知されつつある。それゆえ、このハロゲン化銀カラー写真方式としては、最大の特徴である、高画質、高生産性、そして画像の高堅牢性を更に向上させ、より高生産でより高品質の写真をより簡単にしかもより安価に提供することが熱望されている。
現在の高塩化銀乳剤を含有する感光材料は、発色現像時間45秒で処理し、トータル処理時間を約4分とする処理が通常行われている。(例えば富士写真フイルム(株)製カラー処理CP−45X等)。上記に示した他のカラープリント方式の処理時間と比べれば高塩化銀カラープリント材料の処理システムは満足のいく迅速性とは言い難い。処理の迅速化は、生産性向上にもつながり、高塩化銀カラープリント材料のトータル処理時間の更なる迅速化(超迅速処理化)が望まれ、多くの検討がされてきた。
【0003】
一般的にハロゲン化銀粒子サイズを小サイズ化することで現像速度を速められることが知られているが、一方で、感度も低減してしまうことは、当業界では良く知られている。ハロゲン化銀粒子の高感化技術としては、平板状ハロゲン化銀乳剤粒子を写真感光材料に用いた場合、非平板状ハロゲン化銀粒子に比べて、入射光が感光層を素通りしていく割合が減少し、光の補足効率が上昇し、高感度化できることが知られている。例えば、特許文献1〜5には平板粒子形成法やそれに伴う高感化技術が開示されている。また近年、高塩化銀乳剤に沃化物を導入することによって高感化する技術も多数開示され、特許文献6〜10は共通して、ホスト高塩化銀乳剤粒子への沃化物イオンの含有方法に工夫があり、乳剤粒子の亜表面に最大沃化物イオン濃度を有し、沃化物を含む相の上に意図的に沃化物を含まない高塩化物の相を形成させることを特徴とし、高感化できることが開示されている。
しかし、上記のような高感度化された粒子は、粒子サイズが小さいまま、感度を上げることが達成でき、迅速処理性に優れるが、一方で処理要因変動に影響を受けやすい欠点が存在することが分かった。例えば実際のカラー現像処理では、現像液槽、定着・漂白槽、水洗槽から構成され、現像液や定着・漂白液中の処理薬品は、補充液の設定により常に均一な濃度が保たれるように設計されている。しかし実際には、処理する感材量や水分の蒸発によっても薬品濃度は変動してしまうのも事実で、こういった処理薬品濃度の変動に対しても、常にある一定性能の画像が形成されることが信頼性の高いカラー印画紙を提供する上で重要であると考えられる。また実際に、市場においてもこのような処理安定性の向上に対する要求が高く、高塩化銀乳剤において現像処理工程の更なるタフネス性向上が望まれていた。更にレーザー走査露光の様な高照度露光の場合には、階調露光部での処理要因変動に伴う階調変動が起こり易く更に深刻な問題であることが分かった。ここで、一定性能の画像とは、上記のような処理液の変化によって増感、階調が変動しないことによって得られるものを言う。
【0004】
こうした写真処理液変動に起因する写真性能の変動を抑える方法は種々提案されている。特許文献11には限定されたモノメチン色素と含窒素複素環メルカプト化合物を含有することで、該処理液安定性が改良されることが開示されている。しかしながら、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、上記限定されたモノメチン色素と含窒素複素環メルカプト化合物を含有することで、一定の改善は見られたが、迅速処理適性を有した沃化銀含有粒子は処理液変動に対する写真性能の変動は大きく、実用上の問題が認められた。更に、この迅速処理適性を有した沃化銀含有粒子はレーザー走査露光の様な高照度露光でかつ露光後短時間処理する場合に粒子サイズを小サイズ化するほど露光環境の変動(特に温度変動)に対し敏感になることが分かった。つまり迅速処理性を追求するために露光後素早く処理する場合、露光時の環境温度で写真感度が変化し、一定品質の画像が得られないことである。例えば、ミニラボ露光装置においては朝作業開始時に露光条件を設定しても、その後の使用中に環境温度が変わり、一日に数回キャリブレーション補正しなくてならず、生産性が落ちる問題があり、迅速処理のメリットは大きく引き出せないことが明らかとなった。
【0005】
特許文献12の実施例には、粒子形成の93%時点でIバンドを形成した粒子に特定の化合物を含有させることで、相反則不軌、露光時の温度依存性や圧力性に優れた乳剤が得られることが開示されているが、これらの公知技術には短時間潜像での露光時の温度依存性や階調露光部での処理要因変動に伴う濃度変化が起こりやすくなる写真特性の不安定性の改良については論じられていない。
【0006】
また、特許文献13〜15ではハロゲン化銀粒子の表層に鉄化合物をドーピングすることで、また特許文献16〜17ではセレン増感することで、また特許文献18ではテルル増感する事で露光時の温度依存性の改良することが開示されているが、粒子サイズが小さくなったとき露光時の温度依存性や階調露光部での処理要因変動に伴う濃度変化が起こりやすくなる写真特性の不安定性の改良については論じられていない。
【0007】
例えば、高照度でも硬調な階調を得るためにIr錯体をドープする事で高塩化銀乳剤の高照度不軌を改良出来ることは一般に知られていて、特許文献19には臭化銀含有率の高い局在相を設けて、そこにIr錯体をドープすることで、高照度相反則不軌が改良されることが開示されている。しかし、処理要因変動に伴う安定性については論じられていなく、露光時の温度依存性についてもなんら論じられていない。
【0008】
【特許文献1】
米国特許第5,320,938号公報
【特許文献2】
米国特許第5,264,337号公報
【特許文献3】
米国特許第4,400,463号公報
【特許文献4】
米国特許第5,185,239号公報
【特許文献5】
米国特許第5,176,991号公報
【特許文献6】
特開平8−220681号公報
【特許文献7】
特開平8−234340号公報
【特許文献8】
特開平8−220684号公報
【特許文献9】
特開平8−240879号公報
【特許文献10】
特開平8−234345号公報
【特許文献11】
特開昭62−153850号公報
【特許文献12】
欧州特許0,928,988A号公報
【特許文献13】
特開平3−132647号公報
【特許文献14】
欧州特許0,423,765号公報
【特許文献15】
特開平4−104136号公報
【特許文献16】
特開平4−335337号公報
【特許文献17】
特開平4−335347号公報
【特許文献18】
特開平5−134345号公報
【特許文献19】
特公平7−34103号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、迅速処理に適し、レーザー走査露光の様なデジタル露光においても現像進行性が早く、露光温度依存性、処理要因変動に優れたハロゲン化銀感光材料を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の課題は鋭意研究を行なった結果、下記の<1>〜<11>によって達成することができた。すなわち、
<1> 支持体上にイエロー発色青感光性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ発色緑感光性ハロゲン化銀乳剤層、シアン発色赤感光性ハロゲン化銀乳剤層および非感光性の親水性コロイド層の少なくとも一層ずつからなる写真構成層を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、該イエロー発色青感性ハロゲン化銀乳剤層中に、塩化銀含有率が90モル%以上で、かつ0.02〜1モル%の沃化銀を含有し、立方体辺長として0.51μm以下の{100}面を持つ立方体あるいは14面体の結晶粒子から成り、下記一般式(I)で表される少なくとも一種の増感色素によって分光増感されたハロゲン化銀乳剤を含むことを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
一般式(I)
【0011】
【化5】
【0012】
一般式(I)中、X1およびX2は各々独立に酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子、窒素原子、炭素原子を表す。Y1は他の5〜6員の炭素環または複素環と縮合していても置換基を有していてもよいフラン環、ピロール環、チオフェン環、またはベンゼン環を表す。Y2はベンゼン環または5〜6員の不飽和複素環を形成するのに必要な原子群を表し、さらに他の5〜6員の炭素環または複素環と縮合していても置換基を有していてもよい。なお、Y1およびY2が縮環している2つの炭素原子の間の結合は、1重結合であっても2重結合であってもよい。R1およびR2の一方はスルホ基以外の酸基で置換されたアルキル基を表し、他方はスルホ基で置換されたアルキル基を表す。L1、L2およびL3は各々独立にメチン基を表し、n1は0を表す。M1は対イオンを表し、m1は分子中の電荷を中和させるために必要な0以上の数を表す。
ただし、X 1 とX 2 とが同時に硫黄原子であって、かつY 1 とY 2 とが同時にベンゼン環を形成するのに必要な原子群である場合、Y 1 は他の5〜6員の炭素環または複素環と縮合したベンゼン環を形成するのに必要な原子群を表す。
<2> 前記一般式(I)で表される増感色素が下記一般式(II)または(III)で表されることを特徴とする<1>に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
一般式(II)
【0013】
【化6】
【0014】
一般式(II)中、Y11は酸素原子、硫黄原子またはN−R13を表し、R13は水素原子またはアルキル基を表す。V15およびV16は各々独立に水素原子または1価の置換基を表す。X11およびX12は各々独立に酸素原子または硫黄原子を表す。R11およびR12の一方はスルホ基以外の酸基で置換されたアルキル基を表し、他方はスルホ基で置換されたアルキル基を表す。V11、V12、V13およびV14は各々独立に水素原子または1価の置換基を表す。M11は対イオンを表し、m11は分子中の電荷を中和させるために必要な0以上の数を表す。
一般式(III)
【0015】
【化7】
【0016】
一般式(III)中、Y21は酸素原子、硫黄原子またはN−R23を表し、R23は水素原子またはアルキル基を表す。V25およびV26は水素原子または1価の置換基を表す。X21およびX22は各々独立に酸素原子または硫黄原子を表す。R21およびR22の一方はスルホ基以外の酸基で置換されたアルキル基を表し、他方はスルホ基で置換されたアルキル基を表す。V21、V22、V23およびV24は各々独立に水素原子または1価の置換基を表す。M21は対イオンを表し、m21は分子中の電荷を中和させるために必要な0以上の数を表す。
<3> 前記一般式(I)で表される増感色素が下記一般式(IV)で表されることを特徴とする<1>に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
一般式(IV)
【0017】
【化8】
【0018】
一般式(IV)中、X31およびX32は酸素原子または硫黄原子を表す。R31およびR32の一方はスルホ基以外の酸基で置換されたアルキル基を表し、他方はスルホ基で置換されたアルキル基を表す。V31、V32、V33、V34、V35、V36、V37およびV38は各々独立に水素原子または1価の置換基を表し、隣接する2つの置換基が互いに連結して縮合環を形成してもよい。M31は対イオンを表し、m31は分子中の電荷を中和させるために必要な0以上の数を表す。
ただし、X 31 とX 32 とが同時に硫黄原子である場合、V 31 、V 32 、V 33 およびV 34 のうちいずれかの隣接する2つの置換基は互いに連結して縮合環を形成する。
<4> 前記イエロー発色青感性ハロゲン化銀乳剤が立方体辺長として0.47μm以下であることを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
<5> 前記イエロー発色青感性ハロゲン化銀乳剤に含まれる沃化銀含有相が粒子表面から内部方向に減衰するヨード濃度プロファイルであることを特徴とする<1>〜<4>のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
<6> 前記イエロー発色青感性ハロゲン化銀乳剤いおいて0.5〜5モル%の臭化銀を含有することを特徴とする<1>〜<5>のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0019】
<7> 前記写真構成層中の総塗設銀量が0.2g/m2以上0.5g/m2以下であることを特徴とする<1>〜<6>のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
<8> 前記写真構成層中の総塗設ゼラチン量が3g/m2以上6g/m2以下であることを特徴とする<1>〜<6>のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
<9> 前記写真構成層中の総塗設ゼラチン量が3g/m2以上6g/m2以下で、総塗設銀量が0.2g/m2以上0.5g/m2以下であることを特徴とする<1>〜<6>のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
<10> <1>〜<9>のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料を、画像情報に基づいて変調した光ビームにより走査露光した後に現像処理することを特徴とするカラー画像形成方法。
<11> <1>〜<9>のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料を発色現像処理時間20秒以下で処理することを特徴とするカラー画像形成方法。
<12> 発色現像処理時間20秒以下で処理することを特徴とする<10>記載のカラー画像形成方法。
【0020】
【発明の実施の形態】
まず、本発明で使用する基について説明する。
本発明において、特定の部分を「基」と称した場合には、当該部分はそれ自体が置換されていなくても、一種以上の(可能な最多数までの)置換基で置換されていてもよいことを意味する。例えば、「アルキル基」とは置換または無置換のアルキル基を意味する。また、本発明における化合物に使用できる置換基は、置換の有無にかかわらず、どのような置換基でも含まれる。
【0021】
このような置換基をWとすると、Wで示される置換基としては、いかなるものでも良く、特に制限は無いが、例えば、ハロゲン原子、アルキル基{(環状アルキル基を含む)、また、アルケニル基(環状アルケニル基を含む)、アルキニル基、も含むこととする。}、アリール基、複素環基(ヘテロ環基と言ってもよい)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール又はヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスフォ基(またはホスホノ基とも呼ぶ)、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基、ホスファト基、スルファト基、その他の公知の置換基、が例として挙げられる。
【0022】
さらに詳しくは、Wは、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基{[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。それらは、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2−エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ〔1.2.2〕ヘプタン−2−イル、ビシクロ〔2.2.2〕オクタン−3−イル)、さらに環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)はこのような概念のアルキル基を表すが、さらにアルケニル基、アルキニル基も含むこととする。]、
【0023】
アルケニル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。それらは、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ〔2.2.2〕オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。]、アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基)}、
【0024】
アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、複素環基(好ましくは5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族の複素環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、さらに好ましくは、炭素数3〜30の5もしくは6員の芳香族の複素環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル、なお、1−メチル−2−ピリジニオ、1−メチル−2−キノリニオのようなカチオン性の複素環基でもよい。)、
【0025】
シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3〜20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾールー5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、
【0026】
カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)、
【0027】
アンモニオ基(好ましくはアンモニオ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキル、アリール、ヘテロ環が置換したアンモニオ基、例えば、トリメチルアンモニオ、トリエチルアンモニオ、ジフェニルメチルアンモニオ)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)、
【0028】
アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−(n−オクチルオキシ)フェノキシカルボニルアミノ)、
【0029】
スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルカンスルホニルアミノ、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、
【0030】
アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N’フェニルカルバモイル)スルファモイル)、スルホ基、アルキル又はアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、
【0031】
アルキル又はアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルカンスルホニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4〜30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2−ピリジルカルボニル、2−フリルカルボニル)、
【0032】
アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、アリール又はヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、
【0033】
イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、
【0034】
ホスフォ基、シリル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)、ヒドラジノ基(好ましくは炭素数0〜30の置換もしくは無置換のヒドラジノ基、例えば、トリメチルヒドラジノ)、ウレイド基(好ましくは炭素数0〜30の置換もしくは無置換のウレイド基、例えばN,N−ジメチルウレイド)、を表わす。
【0035】
また、2つのWが共同して環(芳香族、または非芳香族の炭化水素環、または複素環。これらは、さらに組み合わされて多環縮合環を形成することができる。例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、キノリン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、イソキノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、フェナジン環、が挙げられる。)が縮合した構造をとることもできる。
【0036】
上記の置換基Wの中で、水素原子を有するものは、これを取り去りさらに上記の基で置換されていてもよい。そのような置換基の例としては、−CONHSO2−基(スルホニルカルバモイル基、カルボニルスルファモイル基)、−CONHCO−基(カルボニルカルバモイル基)、−SO2NHSO2−基(スルフォニルスルファモイル基)、が挙げられる。
より具体的には、アルキルカルボニルアミノスルホニル基(例えば、アセチルアミノスルホニル)、アリールカルボニルアミノスルホニル基(例えば、ベンゾイルアミノスルホニル基)、アルキルスルホニルアミノカルボニル基(例えば、メチルスルホニルアミノカルボニル)、アリールスルホニルアミノカルボニル基(例えば、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル)が挙げられる。
【0037】
次に、本発明で使用される増感色素について詳細に説明する。
本発明のハロゲン化銀乳剤は、下記一般式(I)で表わされる増感色素で分光増感されている。
一般式(I)
【0038】
【化9】
【0039】
一般式(I)中、X1およびX2は各々独立に酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子、窒素原子または炭素原子を表す。Y1は他の5〜6員の炭素環または複素環と縮合していても置換基を有していてもよいフラン環、ピロール環、チオフェン環、またはベンゼン環を表す。Y2はベンゼン環または5〜6員の不飽和複素環を形成するのに必要な原子群を表し、さらに他の5〜6員の炭素環または複素環と縮合していても置換基を有していてもよい。なお、Y1およびY2が縮環している2つの炭素原子の間の結合は、1重結合であっても2重結合であってもよい。R1およびR2の一方はスルホ基以外の酸基で置換されたアルキル基を表し、他方はスルホ基で置換されたアルキル基を表す。L1、L2およびL3は各々独立にメチン基を表し、n1は0を表す。M1は対イオンを表し、m1は分子中の電荷を中和させるために必要な0以上の数を表す。
ただし、X 1 とX 2 とが同時に硫黄原子であって、かつY 1 とY 2 とが同時にベンゼン環を形成するのに必要な原子群である場合、Y 1 は他の5〜6員の炭素環または複素環と縮合したベンゼン環を形成するのに必要な原子群を表す。
【0040】
以下に本発明の一般式(I)で表される増感色素について詳しく説明する。
X1およびX2は各々独立に酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子、窒素原子、炭素原子を表す。窒素原子は好ましくは−N(Rx)−、炭素原子は好ましくは−C(Ry)(Rz)−で表すことができ、Rx、RyおよびRzは各々独立に水素原子、または1価の置換基(例えば、前述のW)であり、これらは好ましくは前述のWで説明したのと同様なアルキル基、アリール基、または複素環基であり、さらに好ましくはアルキル基である。X1およびX2として、好ましくは酸素原子、硫黄原子、窒素原子であり、さらに好ましくは酸素原子、硫黄原子である。
【0041】
Y1は他の5〜6員の炭素環または複素環と縮合していても置換基を有していてもよいフラン環、ピロール環、チオフェン環、またはベンゼン環を表す。なお、Y1が縮環している2つの炭素原子の間の結合は、1重結合であっても2重結合であってもよいが、好ましくは2重結合である。Y1はさらに他の5〜6員の炭素環または複素環と縮合環(例えばベンゾフラン環、インドール環、ベンゾチオフェン環、ナフタレン環)を形成することもできる。Y1は好ましくはチオフェン環である。Y1の置換基としてはいずれでもよいが、例えば前述のWが挙げられる。好ましくは、アルキル基(例えばメチル)、アリール基(例えばフェニル)、芳香族複素環基(例えば1−ピロリル)、アルコキシ基(例えばメトキシ)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ)、シアノ基、アシル基(例えばアセチル)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル)、ハロゲン原子(例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素)であり、さらに好ましくはメチル基、メトキシ基、シアノ基、ハロゲン原子であり、さらに好ましくはハロゲン原子であり、特に好ましくはフッ素、塩素、臭素原子であり、最も好ましくは塩素原子である。特にY1がチオフェン環の場合は無置換またはハロゲン置換基を有していることが好ましく、置換基は好ましくは塩素または臭素原子であり、最も好ましくは塩素原子である。
【0042】
Y2はベンゼン環または5〜6員の不飽和複素環を形成するのに必要な原子群を表し、さらに他の5〜6員の炭素環または複素環と縮合していても置換基を有していてもよい。なお、Y2が縮環している2つの炭素原子の間の結合は、1重結合であっても2重結合であってもよいが、好ましくは2重結合である。Y2で形成される5員不飽和複素環としてはピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、フラン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チオフェン環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、セレノフェン環、セレナゾール環、イソセレナゾール環、テルロフェン環、テルラゾール環、イソテルラゾール環等を、6員不飽和複素環としてはピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピラン環、チオピラン環等を挙げることができ、さらに他の5〜6員の炭素環または複素環と縮合して、例えばインドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、チエノチオフェン環を形成することもできるが、第3の縮合環は存在しないことが好ましい。
【0043】
Y2は好ましくはベンゼン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環であり、特に好ましくはベンゼン環、フラン環、ピロール環であり、最も好ましくはベンゼン環である。Y2の置換基としてはいずれでもよいが、例えば前述のWが挙げられる。好ましくは、アルキル基(例えばメチル)、アリール基(例えばフェニル)、芳香族複素環基(例えば1−ピロリル)、アルコキシ基(例えばメトキシ)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ)、シアノ基、アシル基(例えばアセチル)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル)、ハロゲン原子(例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素)であり、さらに好ましくはメチル基、メトキシ基、シアノ基、ハロゲン原子であり、さらに好ましくはハロゲン原子であり、特に好ましくはフッ素、塩素、臭素原子であり、最も好ましくは塩素原子である。
【0044】
R1およびR2の一方はスルホ基以外の酸基で置換されたアルキル基を表し、他方はスルホ基で置換されたアルキル基を表す。
【0045】
ここで、酸基について説明する。酸基とは、解離性プロトンを有する基である。
具体的には、例えばスルホ基、カルボキシル基、スルファト基、−CONHSO2−基(スルホニルカルバモイル基、カルボニルスルファモイル基)、−CONHCO−基(カルボニルカルバモイル基)、−SO2NHSO2−基(スルフォニルスルファモイル基)、スルホンアミド基、スルファモイル基、ホスファト基、ホスホノ基、ボロン酸基、フェノール性水酸基などである。これらの基のpKaと周りのpHによっては、さらにプロトンが解離する基が存在するが、上記に具体的に例示した基も含め、例えばpH5〜11の間で90%以上解離することが可能なプロトン解離性酸性基が好ましい。
一般式(I)で表される増感色素において、R1またはR2で表される「酸基で置換されたアルキル基」として好ましいものを、式の形で表すと下記のように表現できる。
【0046】
好ましいアルキル基 = −Qa−T1
【0047】
Qaはアルキル基を形成するのに必要な連結基(好ましくは2価の連結基)を表す。T1は−SO3 −、−CO2H、−CONHSO2Ra、−SO2NHCORb、−CONHCORcまたは−SO2NHSO2Rdを表わす。ここでRa、Rb、RcおよびRdは各々独立にアルキル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ヘテロシクリルオキシ基、アミノ基を表わす。
【0048】
Qaは上記の要件を満たすものであればいかなる連結基でもよいが、好ましくは炭素原子、窒素原子、硫黄原子、酸素原子のうち、少なくとも1種を含む原子または原子団からなる。好ましくはアルキレン基(例えばメチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、メチルトリメチレン)、アルケニレン基(例えば、エテニレン、プロペニレン)、アルキニレン基(例えば、エチニレン、プロピニレン)、アミド基、エステル基、スルホアミド基、スルホン酸エステル基、ウレイド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオエーテル基、エーテル基、カルボニル基、−N(Wa)−(Waは水素原子、または1価の置換基を表わす。1価の置換基としては前述のWが挙げられる。)、を1つまたはそれ以上組み合わせて構成される炭素数0以上10以下、好ましくは炭素数1以上8以下、さらに好ましくは炭素数1以上5以下の連結基を表す。
【0049】
上記の連結基は、さらに前述のWで表わされる置換基を有しても良く、また、環(芳香族、または非芳香族の炭化水素環、または複素環)を含有してもよい。
但し、これらの連結基において、ヘテロ原子を含まない場合がより好ましい。また、前述のWで表わされる置換基で置換されていない場合がより好ましい。
【0050】
さらに好ましくはQaは炭素数1以上5以下のアルキレン基(例えばメチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、メチルトリメチレン)、炭素数2以上5以下のアルケニレン基(例えば、エテニレン、プロペニレン)、炭素数2以上5以下のアルキニレン基(例えば、エチニレン、プロピニレン)を1つまたはそれ以上組み合わせて構成される炭素数1以上5以下の2価の連結基である。特に好ましくは、炭素数1以上5以下のアルキレン基(好ましくはメチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン)である。
【0051】
T1がスルホ基の場合は、Qaとしてさらに好ましくはエチレン、トリメチレン、テトラメチレン、メチルトリメチレンであり、特に好ましくはトリメチレンである。Xaがカルボキシル基の場合は、Qaとしてさらに好ましくはメチレン、エチレン、トリメチレンであり、特に好ましくはメチレンである。
T1が−CONHSO2Ra、SO2NHCORb、CONHCORc、SO2NHSO2Rdの場合は、Qaとしてさらに好ましくはメチレン、エチレン、トリメチレンであり、特に好ましくはメチレンである。
【0052】
Ra、Rb、Rc、Rdはアルキル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ヘテロシクリルオキシ基、またはアミノ基を表わすが、好ましく次のものが挙げられる。
例えば、炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10、さらに好ましくは炭素数1〜5の無置換アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル)、炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10、さらに好ましくは炭素数1〜5の置換アルキル基(ヒドロキシメチル、トリフルオロメチル、ベンジル、カルボキシエチル、エトキシカルボニルメチル、アセチルアミノメチル、また、ここでは好ましくは炭素数2〜18、さらに好ましくは炭素数3〜10、特に好ましくは炭素数3〜5の不飽和炭化水素基(例えばビニル基、エチニル基、1−シクロヘキセニル基、ベンジリジン基、ベンジリデン基)も置換アルキル基に含まれることにする。)、
【0053】
炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜15、さらに好ましくは炭素数6〜10の置換または無置換のアリール基(例えばフェニル、ナフチル、p−カルボキシフェニル、p−ニトロフェニル、3、5−ジクロロフェニル、p−シアノフェニル、m−フルオロフェニル、p−トリル)、炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜10、さらに好ましくは炭素数4〜6の置換されてもよいヘテロ環基(例えばピリジル、5−メチルピリジル、チエニル、フリル、モルホリノ、テトラヒドロフルフリル)、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜8のアルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−ヒドロキシエトキシ、2−フェニルエトキシ)、炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜12、さらに好ましくは炭素数6〜10のアリールオキシ基(例えばフェノキシ、p−メチルフェノキシ、p−クロロフェノキシ、ナフトキシ)、炭素数1〜20、好ましくは炭素数3〜12、さらに好ましくは炭素数3〜10のヘテロシクリルオキシ基(複素環基で置換されたオキシ基を意味する。例えば2−チエニルオキシ、2−モルホリノオキシ)、アミノ基としては炭素0〜20、好ましくは炭素数0〜12、さらに好ましくは炭素数0〜8のアミノ基(例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、ヒドロキシエチルアミノ、ベンジルアミノ、アニリノ、ジフェニルアミノ、環を形成したモルホリノ、ピロリジノ)が挙げられる。さらに、これらに、前述のWが置換していてもよい。
さらに好ましくは、メチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0054】
なお、酸基において、例えばカルボキシル基、解離性の窒素原子などは、解離していない形(COOH,NH)で表記しても、解離した形(COO−,N−)で表記してもどちらでもよい。実際には、色素の置かれたpHなどの環境により解離状態になったり、非解離状態になったりする。
対イオンとして陽イオンが存在する場合、例えば(COO−Na+)、(N−Na+)と表記してもよい。非解離状態では(COOH)、(NH)と表記するが、対イオンのカチオン化合物がプロトンと考えれば、(COO−H+)、(N−H+)と表記することも可能である。
【0055】
一般式(I)で表される増感色素において、R1およびR2の一方はスルホ基以外の酸基で置換されたアルキル基であり、他方はスルホ基で置換されたアルキル基であるが、上記でスルホ基を持つアルキル基として好ましくは、3−スルホプロピル基、4−スルホブチル基、3−スルホブチル基、2−スルホエチル基であり、さらに好ましくは3−スルホプロピル基である。スルホ基以外の酸基が置換したアルキル基として好ましくは、カルボキシル基、−CONHSO2−基、−SO2NHCO−基、−CONHCO−基、−SO2NHSO2−基が置換したアルキル基であり、特に好ましくはカルボキシメチル基、メタンスルホニルカルバモイルメチル基である。
【0056】
R1とR2の組み合わせとして好ましいのは、一方がカルボキシメチル基、またはメタンスルホニルカルバモイルメチル基であり、他方が3−スルホプロピル基、4−スルホブチル基、3−スルホブチル基、2−スルホエチル基である場合であり、さらに好ましくは一方がカルボキシメチル基、またはメタンスルホニルカルバモイルメチル基であり、他方が3−スルホプロピル基である場合である。
【0057】
L1、L2およびL3は各々独立にメチン基を表し、無置換であっても置換基(例えば前述のW)が置換していてもよいが、好ましい置換基としてはアリール基、不飽和炭化水素基、カルボキシ基、スルホ基、スルファト基、シアノ基、ハロゲン原子(例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ヒドロキシ基、メルカプト基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、スルファモイル基、複素環基、アルカンスルホニルカルバモイル基、アシルカルバモイル基、アシルスルファモイル基、アルカンスルホニルスルファモイル基などが挙げられる。
n1は0を表す。L1として好ましくは無置換のメチン基である。
【0058】
M1は対イオンを表し、色素のイオン電荷を中性にするために必要であるとき、陽イオンまたは陰イオンの存在を示すために式の中に含められている。ある色素が陽イオン、陰イオンであるか、あるいは正味のイオン電荷を持つかどうかは、その置換基および溶液中の環境(pHなど)に依存する。典型的な陽イオンとしては水素イオン(H+)、アルカリ金属イオン(例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン)、アルカリ土類金属イオン(例えばカルシウムイオン)などの無機陽イオン、アンモニウムイオン(例えば、アンモニウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、エチルピリジニウムイオン、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−7−ウンデセニウムイオン)などの有機イオンが挙げられる。陰イオンは無機陰イオンあるいは有機陰イオンのいずれであってもよく、ハロゲン化物陰イオン(例えばフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン)、置換アリールスルホン酸イオン(例えばp−トルエンスルホン酸イオン、p−クロルベンゼンスルホン酸イオン)、アリ−ルジスルホン酸イオン(例えば1,3−ベンゼンスルホン酸イオン、1,5−ナフタレンジスルホン酸イオン、2,6−ナフタレンジスルホン酸イオン)、アルキル硫酸イオン(例えばメチル硫酸イオン)、硫酸イオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ピクリン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオンが挙げられる。さらに、イオン性ポリマーまたは色素と逆電荷を有する他の色素を用いてもよい。
好ましい陽イオンは、ナトリウムイオン、カリウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、エチルピリジニウムイオン、メチルピリジニウムイオンである。好ましい陰イオンは過塩素酸イオン、ヨウ化物イオン、臭化物イオン、置換アリールスルホン酸イオン(例えばp−トルエンスルホン酸イオン)である。
m1は電荷を均衡させるのに必要な0以上の数を表し、分子内塩を形成する場合は0である。好ましくは0以上4以下の数である。
【0059】
上記の一般式(I)で表される増感色素は、より好ましくは一般式(II)又は(III)で表わされるか、又は、一般式(IV)で表される。
一般式(II)
【0060】
【化10】
【0061】
式(II)中、Y11は酸素原子、硫黄原子またはN−R13を表し、R13は水素原子またはアルキル基を表す。V15およびV16は各々独立に水素原子または1価の置換基を表す。X11およびX12は各々独立に酸素原子または硫黄原子を表す。R11およびR12の一方はスルホ基以外の酸基で置換されたアルキル基を表し、他方はスルホ基で置換されたアルキル基を表す。V11、V12、V13およびV14は各々独立に水素原子または1価の置換基を表す。M11は対イオンを表し、m11は分子中の電荷を中和させるために必要な0以上の数を表す。
一般式(III)
【0062】
【化11】
【0063】
一般式(III)中、Y21は酸素原子、硫黄原子またはN−R23を表し、R23は水素原子またはアルキル基を表す。V25およびV26は各々独立に水素原子または1価の置換基を表す。X21およびX22は各々独立に酸素原子または硫黄原子を表す。R21およびR22の一方はスルホ基以外の酸基で置換されたアルキル基を表し、他方はスルホ基で置換されたアルキル基を表す。V21、V22、V23およびV24は各々独立に水素原子または1価の置換基を表す。M21は対イオンを表し、m21は分子中の電荷を中和させるために必要な0以上の数を表す。
一般式(IV)
【0064】
【化12】
【0065】
一般式(IV)中、X31およびX32は各々独立に酸素原子または硫黄原子を表す。R31およびR32の一方はスルホ基以外の酸基で置換されたアルキル基を表し、他方はスルホ基で置換されたアルキル基を表す。V31、V32、V33、V34、V35、V36、V37およびV38は各々独立に水素原子または1価の置換基を表し、隣接する2つの置換基が互いに連結して縮合環を形成してもよい。M31は対イオンを表し、m31は分子中の電荷を中和させるために必要な0以上の数を表す。
ただし、X 31 とX 32 とが同時に硫黄原子である場合、V 31 、V 32 、V 33 およびV 34 のうちいずれかの隣接する2つの置換基は互いに連結して縮合環を形成する。
【0066】
以下に、これらの好ましい化合物を説明する。
一般式(II)中、Y11は酸素原子、硫黄原子またはN−R13を表し、R13は水素原子、無置換のアルキル基、または置換アルキル基(例えば前述のWが置換したアルキル基)である。置換アルキル基の置換基として好ましくは、ヨウ素原子よりも親水性の高い置換基であり、さらに好ましくは塩素原子と同じか、さらに親水性の高い置換基であり、特に好ましくはフッ素原子と同じか、さらに親水性の高い置換基で置換されたアルキル基である。R13として、さらに好ましくは、水素原子、または無置換アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、またはメチル基である。Y11は特に硫黄原子であることが好ましい。
X11およびX12は各々独立に酸素原子または硫黄原子を表し、少なくとも一方が硫黄原子であることが好ましく、両方が硫黄原子であることが好ましい。
【0067】
V11、V12、V13、V14、V15およびV16は各々独立に水素原子または1価の置換基を表し、V11、V12、V13およびV14のうち隣接する2つの置換基またはV15とV16が互いに連結して飽和または不飽和の縮合環を形成してもよいが、縮合環を形成しない方が好ましい。1価の置換基としては前述のWが挙げられるが、好ましくはアルキル基(例えばメチル)、アリール基(例えばフェニル)、芳香族複素環基(例えば1−ピロリル)、アルコキシ基(例えばメトキシ)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ)、シアノ基、アシル基(例えばアセチル)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル)、ハロゲン原子(例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素)であり、さらに好ましくはメチル基、メトキシ基、シアノ基、ハロゲン原子であり、さらに好ましくはハロゲン原子であり、特に好ましくはフッ素、塩素、臭素原子であり、最も好ましくは塩素原子である。V11、V12とV14は水素原子が好ましい。
Y11が硫黄原子の場合はV15とV16の両方が水素原子または一方がハロゲン原子(例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素)であることが好ましく、さらに好ましくはV16が水素原子、V15は水素原子または塩素原子である。
【0068】
R11およびR12の一方はスルホ基以外(好ましくはカルボキシル基またはアルカンスルホニルカルバモイル基)で置換されたアルキル基であり、他方はスルホ基で置換されたアルキル基である。また、これらの酸基で置換されたアルキル基の具体例や好ましい組み合わせは前述のR1で説明したものと同様である。さらに好ましくは、R11およびR12の一方がカルボキシメチル基またはメタンスルホニルカルバモイルメチル基である場合であり、特に好ましくは、R11がカルボキシメチル基またはメタンスルホニルカルバモイルメチル基である場合であり、R12が3−スルホプロピル基である場合である。
M11は対イオンを表し、m11は分子中の電荷を中和させるために必要な0以上の数を表すが、前述のM1、m1と同様なものが挙げられる。M11としては、特に陽イオンであることが好ましく、好ましい陽イオンはナトリウム、カリウム、トリエチルアンモニウム、ピリジニウム、N−エチルピリジニウムである。
【0069】
一般式(III)中、Y21は酸素原子、硫黄原子またはN−R23を表し、R23は水素原子、無置換のアルキル基、または置換アルキル基(例えば前述のWが置換したアルキル基)である。置換アルキル基の置換基として好ましくは、ヨウ素原子よりも親水性の高い置換基であり、さらに好ましくは塩素原子と同じか、さらに親水性の高い置換基であり、特に好ましくはフッ素原子と同じか、さらに親水性の高い置換基で置換されたアルキル基である。R23として、さらに好ましくは、水素原子、または無置換アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、またはメチル基である。Y21は特に硫黄原子であることが好ましい。
X21およびX22は各々独立に酸素原子または硫黄原子を表し、少なくとも一方が硫黄原子であることが好ましく、両方が硫黄原子であることが好ましい。
【0070】
V21、V22、V23、V24、V25およびV26は各々独立に水素原子または1価の置換基を表し、V21、V22、V23およびV24のうち隣接する2つの置換基またはV25とV26が互いに連結して飽和または不飽和の縮合環を形成してもよいが、縮合環は形成しない方が好ましい。1価の置換基としては前述のWが挙げられるが、好ましくはアルキル基(例えばメチル)、アリール基(例えばフェニル)、芳香族複素環基(例えば1−ピロリル)、アルコキシ基(例えばメトキシ)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ)、シアノ基、アシル基(例えばアセチル)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル)、ハロゲン原子(例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素)であり、さらに好ましくはメチル基、メトキシ基、シアノ基、ハロゲン原子であり、さらに好ましくはハロゲン原子であり、特に好ましくはフッ素、塩素、臭素原子であり、最も好ましくは塩素原子である。V21、V22とV24は水素原子が好ましい。
Y21が硫黄原子の場合はV25とV26の両方が水素原子または一方がハロゲン原子(例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素)であることが好ましく、さらに好ましくはV26が水素原子、V25が水素原子または塩素原子である。
【0071】
R21およびR22の一方はスルホ基以外(好ましくはカルボキシル基またはアルカンスルホニルカルバモイル基)で置換されたアルキル基であり、他方はスルホ基で置換されたアルキル基である。また、これらの酸基で置換されたアルキル基の具体例や好ましい組み合わせは前述のR1で説明したものと同様である。さらに好ましくは、R21およびR22の一方がカルボキシメチル基またはメタンスルホニルカルバモイルメチル基である場合であり、特に好ましくは、R21がカルボキシメチル基またはメタンスルホニルカルバモイルメチル基である場合であり、R22が3−スルホプロピル基である場合である。
M21は対イオンを表し、m21は分子中の電荷を中和させるために必要な0以上の数を表すが、前述のM1、m1と同様なものが挙げられる。M21としては、特に陽イオンであることが好ましく、好ましい陽イオンはナトリウム、カリウム、トリエチルアンモニウム、ピリジニウム、N−エチルピリジニウムである。
【0072】
一般式(IV)中、X31およびX32は各々独立に酸素原子または硫黄原子を表し、少なくとも一方が硫黄原子であることが好ましく、両方が硫黄原子であることが好ましい。
R31およびR32の一方はスルホ基以外(好ましくはカルボキシル基またはアルカンスルホニルカルバモイル基)で置換されたアルキル基であり、他方はスルホ基で置換されたアルキル基である。また、これらの酸基で置換されたアルキル基の具体例や好ましい組み合わせは前述のR1で説明したものと同様である。さらに好ましくは、R31およびR32の一方がカルボキシメチル基またはメタンスルホニルカルバモイルメチル基である場合であり、特に好ましくは、R31がカルボキシメチル基またはメタンスルホニルカルバモイルメチル基である場合であり、R32が3−スルホプロピル基である場合である。
【0073】
V31、V32、V33、V34、V35、V36、V37およびV38は各々独立に水素原子または1価の置換基を表し、隣接する2つの置換基が互いに連結して縮合環を形成してもよい。隣接する2つの置換基が互いに連結して飽和または不飽和の縮合環を形成してもよく、縮合環としてはV33とV34とが連結して形成するナフタレン環が挙げられる。ただし、本発明においては、X 31 とX 32 とが同時に硫黄原子である場合、V 31 、V 32 、V 33 およびV 34 のうちいずれかの隣接する2つの置換基は互いに連結して縮合環を形成する。1価の置換基としては前述のWが挙げられるが、好ましくはアルキル基(例えばメチル)、アリール基(例えばフェニル)、芳香族複素環基(例えば1−ピロリル)、アルコキシ基(例えばメトキシ)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ)、シアノ基、アシル基(例えばアセチル)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル)、ハロゲン原子(例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素)であり、さらに好ましくはメチル基、メトキシ基、シアノ基、ハロゲン原子であり、さらに好ましくはハロゲン原子であり、特に好ましくはフッ素、塩素、臭素原子であり、最も好ましくは塩素原子である。V31、V32、V34、V35、V36、およびV38は水素原子が好ましい。
【0074】
M31は対イオンを表し、m31は分子中の電荷を中和させるために必要な0以上の数を表すが、前述のM1、m1と同様なものが挙げられる。M31としては、特に陽イオンであることが好ましく、好ましい陽イオンはナトリウム、カリウム、トリエチルアンモニウム、ピリジニウム、N−エチルピリジニウムである。
【0075】
本発明においては一般式(I)で表わされる増感色素を青感性乳剤層で使用するものであるが、好ましくは一般式(II)、(III)または(IV)より選ばれ、一般式(II)または(III)で表わされる増感色素がより好ましく、特に一般式(II)で表わされる増感色素が好ましい。
X11、X12とY11(X21、X22とY21)(X31、X32)はともに硫黄原子であり、V15(V25)は水素原子または塩素原子、V16(V26)は水素原子であることが好ましい。V11、V12、V14(V21、V22、V24)(V31、V32、V34、V35、V36、V38)は水素原子であり、V13(V23)(V33、V37)はアルキル基(例えばメチル)、アルコキシ基(例えばメトキシ)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ)、シアノ基、アシル基(例えばアセチル)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル)、ハロゲン原子(例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素)であることが好ましく、より好ましくはメチル基、メトキシ基、シアノ基、アセチル基、メトキシカルボニル基、ハロゲン原子であり、特に好ましくはハロゲン原子であり、最も好ましくはフッ素原子、塩素原子である。
R11とR12(R21とR22)(R31とR32)の一方がカルボキシメチル基またはメタンスルホニルカルバモイルメチル基であり、もう一方が3−スルホプロピル基であることが好ましく、特に好ましいのはR11(R21)(R31)がカルボキシメチル基またはメタンスルホニルカルバモイルメチル基、R12(R22)(R32)が3−スルホプロピル基である場合である。
M11(M21)(M31)は有機または無機の1価の陽イオンであり、m11(m21)(m31)は0または1であることが好ましい。
【0076】
以下に本発明の一般式(I)、(II)、(III)、(IV)で表される増感色素の具体例を示すが、これにより
本発明が制限されるものではない。
【0077】
【化13】
【0078】
【化14】
【0079】
【化15】
【0080】
【化16】
【0081】
【化17】
【0082】
【化18】
【0083】
【化19】
【0084】
【化20】
【0085】
【化21】
【0086】
本発明に用いられる一般式(I)、(II)、(III)、(IV)で表わされる増感色素は、以下の文献に記載の方法に基づいて合成することができる。
a)F.M.Hamer著「Heterocyclic Compounds-Cyanine dyes and related compounds」(John Wiley & Sons社−ニューヨーク、ロンドン、1964年刊)、
b)D.M.Sturmer著「Heterocyclic Compounds-Special topics in heterocyclic chemistry 」、第8章、第4節、482〜515頁(John Wiley & Sons社−ニューヨーク、ロンドン、1977年刊)、
c)「Rodd's Chemistry of Carbon Compounds」、第2版、第4巻、パートB、第15章、369〜422頁(Elsevier Science Publishing Company Inc.社−ニューヨーク、1977年刊)
【0087】
また本発明の一般式(I)、(II)、(III)、(IV)で表される増感色素の原料となるヘテロ環の合成については例えばBulletin de la Societe Chimique de France、II−150頁(1980年)やJournal of Heterocyclic Chemistry、16巻1563頁(1979年)などの文献の記載を参考にすることができる。
【0088】
本発明の一般式(I)、(II)、(III)、(IV)で表されるメチン色素を本発明のハロゲン化銀乳剤中に含有せしめるには、それらを直接乳剤中に分散してもよいし、あるいは水、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、メチルセルソルブ、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、3−メトキシ−1−プロパノール、3−メトキシ−1−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、N,N−ジメチルホルムアミド等の溶媒の単独もしくは混合溶媒に溶解して乳剤に添加してもよい。
【0089】
また、米国特許第3,469,987号明細書等に記載のように、色素を揮発性の有機溶剤に溶解し、該溶液を水または親水性コロイド中に分散し、この分散物を乳剤中へ添加する方法、特公昭46−24185号等に記載のように、水不溶性色素を溶解することなしに水溶性溶剤中に分散させ、この分散物を乳剤中へ添加する方法、特公昭44−23389号、同44−27555号、同57−22091号等に記載されているように、色素を酸に溶解し、該溶液を乳剤中へ添加したり、酸または塩基を共存させて水溶液とし乳剤中へ添加する方法、米国特許第3,822,135号、同第4,006,026号明細書等に記載のように、界面活性剤を共存させて水溶液あるいはコロイド分散物としたものを乳剤中へ添加する方法、特開昭53−102733号、同58−105141号に記載のように、親水性コロイド中に色素を直接分散させ、その分散物を乳剤中へ添加する方法、特開昭51−74624号に記載のように、レッドシフトさせる化合物を用いて色素を溶解し、該溶液を乳剤中へ添加する方法等を用いることもできる。また、溶解に超音波を使用することもできる。
【0090】
本発明の一般式(I)、(II)、(III)、(IV)で表される増感色素を本発明のハロゲン化銀乳剤中に添加する時期は、これまで有用であることが認められている乳剤調製のいかなる工程中であってもよい。例えば、米国特許第2,735,766号、同第3,628,960号、同第4,183,756号、同第4,225,666号、特開昭58−184142号、同60−196749号等の明細書に開示されているように、ハロゲン化銀の粒子形成工程および/または脱塩前の時期、脱塩工程中および/または脱塩後から化学熟成の開始前までの時期、特開昭58−113920号等の明細書に開示されているように、化学熟成の直前または工程中の時期、化学熟成後塗布までの時期の乳剤が塗布される前ならいかなる時期、工程において添加されてもよい。また、米国特許第4,225,666号、特開昭58−7629号等の明細書に開示されているように、同一化合物を単独で、または異種構造の化合物と組み合わせて、例えば、粒子形成工程中と化学熟成工程中または化学熟成完了後とに分けたり、化学熟成の前または工程中と完了後とに分けるなどして分割して添加しても良く、分割して添加する化合物及び化合物の組み合わせの種類を変えて添加されてもよい。
【0091】
本発明の一般式(I)、(II)、(III)、(IV)で表される増感色素の使用量は、ハロゲン化銀粒子の形状、サイズにより異なるが、ハロゲン化銀1モルあたり0.1ないし4ミリモルが好ましく、より好ましくは0.2ないし2.5ミリモルであり、さらに他の増感色素と併用してもよい。
【0092】
本発明において、一般式(I)、(II)、(III)、(IV)で表される増感色素以外にも他の増感色素を用いてもよい。増感色素の組み合わせは特に強色増感の目的でしばしば用いられる。その代表例は米国特許第2,688,545号、同第2,977,229号、同第3,397,060号、同第3,522,052号、同第3,527,641号、同第3,617,293号、同第3,628,964号、同第3,666,480号、同第3,672,898号、同第3,679,428号、同第3,703,377号、同第3,769,301号、同第3,814,609号、同第3,837,862号、同第4,026,707号、英国特許第1,344,281号、同第1,507,803号、特公昭43−4936号、同53−12375号、特開昭52−110618号、同52−109925号に記載されている。
【0093】
以下、ハロゲン化銀乳剤について詳細い説明する。
本発明において、イエロー発色青感性ハロゲン化銀乳剤層中のハロゲン化銀乳剤は、本発明の特定のハロゲン化銀乳剤(または本発明の特定のハロゲン化銀粒子)を含む。本発明のハロゲン化銀粒子の形状は、実質的に{100}面を持つ立方体、あるいは14面体の結晶粒子(これらは粒子頂点が丸みを帯び、さらに高次の面を有していてもよい)が必要である。実質的に{100}面を持つ立方体粒子とは6つの{100}結晶面に境界が定められているもので、粒子のコーナーとエッジは、熟成のために多少の丸みを示しても良く、6つの{100}結晶面以外には確認できる結晶面を示さない物を指す。また14面体の結晶粒子とは、立方体粒子の相対方向及び間隔を満足し{100}結晶面により少なくとも部分的に境界が定められている粒子をさし、熟成の為に粒子のコーナーとエッジは多少の丸みを示しても良く、例えば3対の等間隔な平行{100}結晶面と8つの{111}結晶面を有するものを指す。粒子サイズは立方体換算辺長で0.51μm以下(好ましくは0.1μm以上0.51μm以下)であることが必要で、0.47μm以下(好ましくは0.2μm以上0.47μm以下)であることが更に好ましく、0.3μm以下(好ましくは0.2μm以上0.3μm以下)であることが最も好ましい。
【0094】
マゼンタ色素形成カプラー含有ハロゲン化銀乳剤層およびシアン色素形成カプラー含有ハロゲン化銀乳剤層のハロゲン化銀乳剤は粒子形状については特に制限はないが、実質的に{100}面を持つ立方体、あるいは14面体の結晶粒子(これらは粒子頂点が丸みを帯び、さらに高次の面を有していてもよい)、8面体の結晶格子、主平面が{100}面または{111}面からなるアスペクト比2以上の平板粒子からなる事が好ましい。アスペクト比とは、投影面積に相当する円の直径を粒子の厚さで割った値である。主表面が{100}面または{111}面からなる平板粒子については、特開2000−352794号の段落番号0033〜0040を参考にすることができ、本発明の明細書に好ましく組み込まれる。粒子サイズは立方体換算辺長で0.4μm以下(好ましくは0.1μm以上0.4μm以下)であることが好ましく、0.3μm以下(好ましくは0.1μm以上0.3μm以下)であることが更に好ましい。
【0095】
本明細書において立方体辺長とは、個々の粒子の体積と等しい体積を立方体に換算したときの一辺の長さで表し、本明細書では立方体換算辺長も同じ意味を指す。本発明の乳剤は粒子サイズ分布が単分散な粒子からなることが好ましい。本発明の全粒子の立方体換算辺長の変動係数は20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましい。立方体換算辺長の変動係数とは、個々の粒子の立方体換算辺長の一辺の長さの標準偏差を、辺長の平均に対する百分率で表される。このとき、広いラチチュードを得る目的で上記の単分散乳剤を同一層にブレンドして使用することや、重層塗布することも好ましく行われる。
【0096】
本発明のハロゲン化銀乳剤には、本発明で定義されるハロゲン化銀乳剤に含まれるハロゲン化銀粒子(即ち、特定のハロゲン化銀粒子)以外のハロゲン化銀粒子を含んでよい。しかしながら、本発明で定義されるハロゲン化銀乳剤は、全粒子の全投影面積の50%以上が本発明で定義されるハロゲン化銀粒子であることが必要で、80%以上であることが好ましく、90%以上であることが更に好ましい。
【0097】
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤としては、特定のハロゲン化銀含有率を有するハロゲン化銀粒子を含む乳剤が用いられ、特に、イエロー色素形成カプラー含有ハロゲン化銀乳剤層の場合、塩化銀含有率は90モル%以上である必要があり、迅速処理性の観点からは、塩化銀含有率は93モル%以上が好ましく、95モル%以上が更に好ましい。臭化銀含有率は硬調で潜像安定性に優れることから0.1〜7モル%であることが好ましく、0.5〜5モル%であることが更に好ましい。本発明においては、沃化銀含有率は0.02モル%〜1モル%である必要があり、高照度露光で高感度かつ硬調であることをも考慮すると、0.05〜0.50モル%が更に好ましく、0.07〜0.40モル%が最も好ましい。本発明の特定のハロゲン化銀粒子は、沃臭塩化銀粒子が好ましく、上記のハロゲン組成の沃臭塩化銀粒子が更に好ましい。
一方、マゼンタ色素形成カプラー含有ハロゲン化銀乳剤層およびシアン色素形成カプラー含有ハロゲン化銀乳剤層の場合でも同様のハロゲン化銀含有率を有することが好適である。
【0098】
本発明のハロゲン化銀乳剤における特定のハロゲン化銀粒子は、臭化銀含有相および/または沃化銀含有相を有することが好ましい。ここで、臭化銀あるいは沃化銀含有相とは周囲よりも臭化銀あるいは沃化銀の濃度が高い部位を意味する。臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相とその周囲とのハロゲン組成は連続的に変化してもよく、また急峻に変化してもよい。このような臭化銀あるいは沃化銀含有相は、粒子内のある部分で濃度がほぼ一定の幅をもった層を形成してもよく、広がりをもたない極大点であってもよい。臭化銀含有相の局所的臭化銀含有率は、5モル%以上であることが好ましく、10〜80モル%であることが更に好ましく、15〜50モル%であることが最も好ましい。沃化銀含有相の局所的沃化銀含有率は、0.3モル%以上であることが好ましく、0.5〜8モル%であることが更に好ましく、1〜5モル%であることが最も好ましい。また、このような臭化銀あるいは沃化銀含有相は、それぞれ粒子内に層状に複数個あってもよく、それぞれの臭化銀あるいは沃化銀含有率が異なってよいが、それぞれ最低1個の含有相を有することが好ましい。
【0099】
本発明のハロゲン化銀乳剤の臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相は、それぞれ粒子を取り囲むように層状にあることが好ましく、かつ重要である。粒子を取り囲むように層状に形成された臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相は、それぞれの相の中で粒子の周回方向に均一な濃度分布を有することがひとつの好ましい態様である。しかし、粒子を取り囲むように層状にある臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相の中は、臭化銀あるいは沃化銀濃度の極大点または極小点が粒子の周回方向に存在し、濃度分布を有していてもよい。例えば、粒子表面近傍に粒子を取り囲むように層状に臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相を有する場合、粒子コーナーまたはエッジの臭化銀あるいは沃化銀濃度は、主表面と異なる濃度になる場合がある。また、粒子を取り囲むように層状にある臭化銀含有相と沃化銀含有相とは別に、粒子の表面の特定部に完全に孤立して存在し、粒子を取り囲んでいない臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相があってもよい。
【0100】
本発明のハロゲン化銀乳剤が臭化銀含有相を含有する場合、その臭化銀含有相は粒子の内部に臭化銀濃度極大を有するように層状に形成されていることが好ましい。また、本発明のハロゲン化銀乳剤が沃化銀含有相を含有する場合、その沃化銀含有相は粒子の表面に沃化銀濃度極大を有するように層状に形成されていることが好ましい。このような臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相は、より少ない臭化銀あるいは沃化銀含有量で局所濃度を上げる意味から、粒子体積の3%以上30%以下の銀量で構成されていることが好ましく、3%以上15%以下の銀量で構成されていることが更に好ましい。
【0101】
本発明のハロゲン化銀乳剤は、臭化銀含有相および沃化銀含有相を両方含むことが好ましい。その場合、臭化銀含有相と沃化銀含有相は粒子の同一個所にあっても、異なる場所にあってもよいが、異なる場所にあるほうが粒子形成の制御を容易にする点で好ましい。また、臭化銀含有相に沃化銀を含有していてもよく、逆に沃化銀含有相に臭化銀を含有していてもよい。一般に、高塩化銀粒子形成中に添加する沃化物は臭化物よりも粒子表面にしみだしやすいために沃化銀含有相は粒子表面の近傍に形成されやすい。従って、臭化銀含有相と沃化銀含有相が粒子内の異なる場所にある場合、臭化銀含有相は沃化銀含有相より内側に形成することが好ましい。このような場合、粒子表面近傍の沃化銀含有相よりも更に外側に、別の臭化銀含有相を設けてもよい。
【0102】
高感度化や硬調化などの本発明の効果を発現させるために必要な臭化銀含有量あるいは沃化銀含有量は、臭化銀含有相あるいは沃化銀含有相を粒子内部に形成するほど増加してしまい、必要以上に塩化銀含有量を落として迅速処理性を損なってしまう恐れがある。従って、写真作用を制御するこれらの機能を粒子内の表面近くに集約するために、臭化銀含有相と沃化銀含有相は隣接していることが好ましい。これらの点から、臭化銀含有相は内側から測って粒子体積の50%〜100%の位置のいずれかに形成し、沃化銀含有相は粒子体積の85%〜100%の位置のいずれかに形成することが好ましい。また、臭化銀含有相は粒子体積の70%〜95%の位置のいずれかに形成し、沃化銀含有相は粒子体積の90%〜100%の位置のいずれかに形成することが更に好ましい。
【0103】
本発明のハロゲン化銀乳剤に臭化銀あるいは沃化銀を含有させるための臭化物あるいは沃化物イオンの導入は、臭化物塩あるいは沃化物塩の溶液を単独で添加させるか、或いは銀塩溶液と高塩化物塩溶液の添加と併せて臭化物塩あるいは沃化物塩溶液を添加してもよい。後者の場合は、臭化物塩あるいは沃化物塩溶液と高塩化物塩溶液を別々に、または臭化物塩あるいは沃化物塩と高塩化物塩の混合溶液として添加してもよい。臭化物塩あるいは沃化物塩は、アルカリもしくはアルカリ土類臭化物塩あるいは沃化物塩のような溶解性塩の形で添加する。或いは米国特許第5,389,508号明細書に記載される有機分子から臭化物イオンあるいは沃化物イオンを開裂させることで導入することもできる。また別の臭化物あるいは沃化物イオン源として、微小臭化銀粒子あるいは微小沃化銀粒子を用いることもできる。
【0104】
臭化物塩あるいは沃化物塩溶液の添加は、粒子形成の一時期に集中して行ってもよく、またある一定期間かけて行ってもよい。高塩化物乳剤への沃化物イオンの導入位置は、高感度で低被りな乳剤を得る上で制限される。沃化物イオンの導入は、乳剤粒子のより内部に行うほど感度の増加が小さい。故に沃化物塩溶液の添加は、粒子体積の50%より外側が好ましく、より好ましくは70%より外側から、最も好ましくは85%より外側から行うのがよい。また沃化物塩溶液の添加は、好ましくは粒子体積の98%より内側で、最も好ましくは96%より内側で終了するのがよい。沃化物塩溶液の添加は、粒子表面から少し内側で終了することで、より高感度で低被りな乳剤を得ることができる。
一方、臭化物塩溶液の添加は、粒子体積の50%より外側が好ましく、より好ましくは70%より外側から行うのがよい。
【0105】
粒子内の深さ方向への臭化物あるいは沃化物イオン濃度の分布は、エッチング/TOF−SIMS(Time of Flight − Secondary Ion Mass Spectrometry)法により、例えばPhi Evans社製TRIFTII型TOF−SIMSを用いて測定できる。TOF−SIMS法については、具体的には日本表面科学会編「表面分析技術選書二次イオン質量分析法」丸善株式会社(1999年発行)に記載されている。エッチング/TOF−SIMS法で乳剤粒子を解析すると、沃化物塩溶液の添加を粒子の内側で終了しても、粒子表面に向けて沃化物イオンがしみ出していることが分析できる。本発明の乳剤は、エッチング/TOF−SIMS法による分析で、沃化物イオンは粒子表面で濃度極大を有し、内側に向けて沃化物イオン濃度が減衰していることが好ましく、臭化物イオンは粒子内部で濃度極大を有することが好ましい。臭化銀の局所濃度は、臭化銀含有量がある程度高ければX線回折法でも測定することができる。
【0106】
本発明のハロゲン化銀乳剤は、イリジウムを含有することが好ましい。イリジウム化合物としては、6個のリガンドを有しイリジウムを中心金属とする6配位錯体が、ハロゲン化銀結晶中に均一に取り込ませるために好ましい。本発明で用いられるイリジウムの一つの好ましい態様として、Cl、BrまたはIをリガンドとして有するIrを中心金属とする6配位錯体が好ましく、6個全てのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体が更に好ましい。この場合、6配位錯体中にCl、BrまたはIが混在していてもよい。Cl、BrまたはIをリガンドとして有するIrを中心金属とする6配位錯体は、臭化銀含有相に含まれることが、高照度露光で硬調な階調を得るために特に好ましい。
【0107】
以下に、6個全てのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体の具体例を挙げるが、本発明におけるイリジウムはこれらに限定されない。
[IrCl6]2-
[IrCl6]3-
[IrBr6]2-
[IrBr6]3-
[IrI6]3-
【0108】
本発明で用いられるイリジウムの異なる好ましい態様として、ハロゲンまたはシアン以外のリガンドを少なくとも1個有するIrを中心金属とする6配位錯体が好ましく、H2O、OH、O、OCN、チアゾールまたは置換チアゾールをリガンドとして有するIrを中心金属とする6配位錯体が好ましく、少なくとも1個のH2O、OH、O、OCN、チアゾールまたは置換チアゾールをリガンドとして有し残りのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体が更に好ましい。更に、1個もしくは2個の5−メチルチアゾールをリガンドとして有し残りのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体が最も好ましい。
【0109】
以下に、少なくとも1個のH2O、OH、O、OCN、チアゾールまたは置換チアゾールをリガンドとして有し残りのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体の具体例を挙げるが、本発明におけるイリジウムはこれらに限定されない。
【0110】
[IrCl5(H2O)]2-
[IrCl4(H2O)2]-
[IrCl5(H2O)] -
[IrCl4(H2O)2]0
[IrCl5(OH)]3-
[IrCl4(OH)2]2-
[IrCl5(OH)] 2-
[IrCl4(OH)2]2-
[IrCl5(O)]4-
[IrCl4(O)2]5-
[IrCl5(O)]3-
[IrCl4(O)2]4-
[IrBr5(H2O)]2-
[IrBr4(H2O)2]-
[IrBr5(H2O)] -
[IrBr4(H2O)2]0
[IrBr5(OH)]3-
[IrBr4(OH)2]2-
[IrBr5(OH)] 2-
[IrBr4(OH)2]2-
[IrBr5(O)]4-
[IrBr4(O)2]5-
[IrBr5(O)]3-
[IrBr4(O)2]4-
[IrCl5(OCN)]3-
[IrBr5(OCN)]3-
[IrCl5(チアゾール)]2-
[IrCl4(チアゾール)2]-
[IrCl3(チアゾール)3]0
[IrBr5(チアゾール)]2-
[IrBr4(チアゾール)2]-
[IrBr3(チアゾール)3]0
[IrCl5(5-メチルチアゾール)]2-
[IrCl4(5-メチルチアゾール)2]-
[IrBr5(5-メチルチアゾール)]2-
[IrBr4(5-メチルチアゾール)2]-
[IrCl5(5-クロロチアジアゾール)]2-
[IrCl4(5-クロロチアジアゾール)2]-
[IrBr5(5-クロロチアジアゾール)]2-
[IrBr4(5-クロロチアジアゾール)2]-
【0111】
以上に挙げた金属錯体は陰イオンであり、陽イオンと塩を形成した時にはその対陽イオンとして水に溶解しやすいものが好ましい。具体的には、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオンおよびリチウムイオン等のアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオンが好ましい。これらの金属錯体は、水のほかに水と混合し得る適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類等)との混合溶媒に溶かして使うことができる。これらのイリジウム錯体は、粒子形成中に銀1モル当たり1×10−10モル〜1×10−3モル添加することが好ましく、1×10−8モル〜1×10−5モル添加することが最も好ましい。
【0112】
本発明において上記のイリジウム錯体は、ハロゲン化銀粒子形成時に反応溶液中に直接添加するか、ハロゲン化銀粒子を形成するためのハロゲン化物水溶液中、あるいはそれ以外の溶液中に添加し、粒子形成反応溶液に添加することにより、ハロゲン化銀粒子内に組み込むのが好ましい。また、あらかじめイリジウム錯体を粒子内に組み込んだ微粒子で物理熟成してハロゲン化銀粒子に組み込むことも好ましい。さらにこれらの方法を組み合わせてハロゲン化銀粒子内へ含有させることもできる。
【0113】
これらの錯体をハロゲン化銀粒子に組み込む場合、粒子内部に均一に存在させることも行われるが、特開平4−208936号、特開平2−125245号、特開平3−188437号各公報に開示されている様に、粒子表面層のみに存在させることも好ましく、粒子内部のみに錯体を存在させ粒子表面には錯体を含有しない層を付加することも好ましい。また、米国特許第5,252,451号および同第5,256,530号明細書に開示されているように、錯体を粒子内に組み込んだ微粒子で物理熟成して粒子表面相を改質することも好ましい。さらに、これらの方法を組み合わせて用いることもでき、複数種の錯体を1つのハロゲン化銀粒子内に組み込んでもよい。上記の錯体を含有させる位置のハロゲン組成には特に制限はないが、6個全てのリガンドがCl、BrまたはIからなるIrを中心金属とする6配位錯体は、臭化銀濃度極大部に含有させることが好ましい。
【0114】
本発明においては、イリジウム以外に他の金属イオンをハロゲン化銀粒子の内部及び/または表面にドープするがことができる。用いる金属イオンとしては遷移金属イオンが好ましく、なかでも、鉄、ルテニウム、オスミウム、鉛、カドミウム、または、亜鉛であることが好ましい。さらにこれらの金属イオンは配位子を伴い6配位八面体型錯体として用いることがより好ましい。無機化合物を配位子として用いる場合には、シアン化物イオン、ハロゲン化物イオン、チオシアン、水酸化物イオン、過酸化物イオン、アジ化物イオン、亜硝酸イオン、水、アンモニア、ニトロシルイオン、または、チオニトロシルイオンを用いることが好ましく、上記の鉄、ルテニウム、オスミウム、鉛、カドミウム、または、亜鉛のいずれの金属イオンに配位させて用いることも好ましく、複数種の配位子を1つの錯体分子中に用いることも好ましい。
【0115】
また、配位子として有機化合物を用いることも出来、好ましい有機化合物としては主鎖の炭素数が5以下の鎖状化合物および/または5員環あるいは6員環の複素環化合物を挙げることが出来る。さらに好ましい有機化合物は分子内に窒素原子、リン原子、酸素原子、または、硫黄原子を金属への配位原子として有する化合物であり、特に好ましくはフラン、チオフェン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、フラザン、ピラン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジンであり、さらにこれらの化合物を基本骨格としそれらに置換基を導入した化合物もまた好ましい。
【0116】
金属イオンと配位子の組み合わせとして好ましくは、鉄イオン及びルテニウムイオンとシアン化物イオンの組み合わせである。本発明においては、イリジウムとこれらの化合物を併用することが好ましい。これらの化合物においてシアン化物イオンは、中心金属である鉄またはルテニウムへの配位数のうち過半数を占めることが好ましく、残りの配位部位はチオシアン、アンモニア、水、ニトロシルイオン、ジメチルスルホキシド、ピリジン、ピラジン、または、4,4’−ビピリジンで占められることが好ましい。最も好ましくは中心金属の6つの配位部位が全てシアン化物イオンで占められ、ヘキサシアノ鉄錯体またはヘキサシアノルテニウム錯体を形成することである。これらシアン化物イオンを配位子とする錯体は、粒子形成中に銀1モル当たり1×10−8モル〜1×10−2モル添加することが好ましく、1×10−6モル〜5×10−4モル添加することが最も好ましい。
【0117】
ルテニウムおよびオスミウムを中心金属とした場合にはニトロシルイオン、チオニトロシルイオン、または水分子と塩化物イオンとを配位子として共に用いることも好ましい。より好ましくはペンタクロロニトロシル錯体、ペンタクロロチオニトロシル錯体、または、ペンタクロロアクア錯体を形成することであり、ヘキサクロロ錯体を形成することも好ましい。これらの錯体は、粒子形成中に銀1モル当たり1×10−10モル〜1×10−6モル添加することが好ましく、より好ましくは1×10−9モル〜1×10−6モル添加することである。
【0118】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、当業界に知られる金増感を施したものであることが好ましい。金増感を施すことにより、乳剤を高感度化でき、レーザー光等によって走査露光したときの写真性能の変動を小さくすることができるからである。金増感を施すには、種々の無機金化合物や無機配位子を有する金(I)錯体及び有機配位子を有する金(I)化合物を利用することができる。無機金化合物としては、例えば塩化金酸もしくはその塩、無機配位子を有する金(I)錯体としては、例えばジチオシアン酸金(I)カリウム等のジチオシアン酸金化合物やジチオ硫酸金(I)3ナトリウム等のジチオ硫酸金化合物等の化合物を用いることができる。
【0119】
有機配位子(有機化合物)を有する金(I)化合物としては、特開平4-267249号に記載のビス金(I)メソイオン複素環類、例えばビス(1,4,5−トリメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオラート)オーレート(I)テトラフルオロボレート、特開平11-218870号に記載の有機メルカプト金(I)錯体、例えばカリウム ビス(1−[ 3−(2−スルホナートベンズアミド)フェニル]−5−メルカプトテトラゾールカリウム塩)オーレート(I)5水和物、特開平4-268550号に記載の窒素化合物アニオンが配位した金(I)化合物、例えば、ビス(1−メチルヒダントイナート)金(I)ナトリウム塩四水和物、を用いることができる。これらの有機配位子を有する金(I)化合物は、あらかじめ合成して単離したものを使用する他に、有機配位子とAu化合物(例えば塩化金酸やその塩)とを混合することにより、発生させて単離することなく、乳剤に添加することができる。更には、乳剤に有機配位子とAu化合物(例えば塩化金酸やその塩)とを別々に添加し、乳剤中で有機配位子を有する金(I)化合物を発生させてもよい。
【0120】
また、米国特許第3、503、749号に記載されている金(I)チオレート化合物、特開平8-69074号、特開平8-69075号、特開平9-269554号に記載の金化合物、米国特許第5,620,841号、同第5,912,112号、同第5,620,841号、同第5,939,245号、同第5,912,111号に記載の化合物も用いることができる。
これらの化合物の添加量は場合に応じて広範囲に変わり得るがハロゲン化銀1モルあたり5×10−7〜5×10−3モル、好ましくは5×10−6〜5×10−4モルである。
【0121】
また、コロイド状硫化金を用いることも可能であり、その製造方法はリサーチ・ディスクロージャー(Reserch Disclosure,37154)、ソリッド ステート イオニクス(Solid State Ionics )第79巻、60〜66頁、1995年刊、Compt.Rend.Hebt.Seances Acad.Sci.Sect.B第263巻、1328頁、1966年刊等に記載されている。上記Reserch Disclosureには、コロイド状硫化金の製造の際、チオシアナートイオンを用いる方法が記載されているが、代わりにメチオニンやチオジエタノールなどのチオエーテル化合物を用いることができる。
【0122】
コロイド状硫化金としてさまざまなサイズのものを利用でき、平均粒径50nm以下のものを用いることが好ましく、平均粒径10nm以下がより好ましく、平均粒径3nm以下が更に好ましい。この粒径はTEM写真から測定できる。また、コロイド状硫化金の組成は、Au2S1でもよく、Au2S1〜Au2S2の様な硫黄過剰な組成のものであってもよく、硫黄過剰な組成が好ましい。Au2S1.1〜Au2S1.8が更に好ましい。
このコロイド状硫化金の組成分析は、例えば、硫化金粒子を取り出して金の含有量と硫黄の含有量をそれぞれICPやヨードメトリーなどの分析法を利用して求めることができる。液相に溶解している金イオン、イオウイオン(硫化水素やその塩を含む)が硫化金コロイド中に存在すると硫化金コロイド粒子の組成分析に影響する為、限外ろ過などにより硫化金粒子を分離した上で分析は行われる。硫化金コロイドの添加量は場合に応じて広範囲に変わり得るがハロゲン化銀1モルあたり金原子として5×10−7〜5×10−3モル、好ましくは5×10−6〜5×10−4モルである。
【0123】
金増感と併せてカルコゲン増感も同一の分子で行うことが可能であり、AuCh−を放出可能な分子を用いることができる。ここでAuはAu(I)を表し、Chは、硫黄原子、セレン原子、テルル原子を表す。AuCh−放出可能な分子とは、例えば、AuCh−Lで表される金化合物が挙げられる。ここで、LはAuChと結合して分子を構成する原子団を表す。また、Auに対して、Ch−Lとともに更にもう一つ以上の配位子が配位してもよい。また、AuCh−Lで表される金化合物は銀イオン共存下、溶媒中で反応させるとChがSの場合AgAuSを、ChがSeの場合AgAuSeを、ChがTeの場合AgAuTe生成させやすい特徴を有しているものである。このような化合物として、Lがアシル基であるものが挙げられるが、その他に、下記に示す、式(AuCh1)、式(AuCh2)、式(AuCh3)で表される化合物が挙げられる。
【0124】
式(AuCh1)
R1−X−M−ChAu
ここで、AuはAu(I)を表し、Chは硫黄原子、セレン原子またはテルル原子を表し、Mは置換または無置換のメチレン基を表し、Xは酸素原子、硫黄原子、セレン原子、NR2を表し、R1は、Xと結合して分子を構成する原子団(例えば、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基などの有機基)を表し、R2は、水素原子または置換基(例えば、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基などの有機基)を表す。R1とMは互いに結合して環を形成してもよい。
式(AuCh1)で表される化合物において、Chが硫黄原子またはセレン原子であるものが好ましく、Xは酸素原子または硫黄原子が好ましく、R1はアルキル基またはアリール基が好ましい。より具体的な化合物の例としては、チオ糖のAu(I)塩(α金チオグルコース等の金チオグルコース、金パーアセチルチオグルコース、金チオマンノース、金チオガラクトース、金チオアラビノース等)、セレノ糖のAu(I)塩(金パーアセチルセレノグルコース、金パーアセチルセレノマンノース等)、テルロ糖のAu(I)塩、等である。ここでチオ糖、セレノ糖、テルロ糖とは、糖のアノマー位の水酸基がそれぞれSH基、SeH基、TeH基に置き換わった化合物を表す。
【0125】
式(AuCh2)
W1(W2)C=C(R3)ChAu
ここで、AuはAu(I)を表し、Chは硫黄原子、セレン原子またはテルル原子を表し、R3及びW2は、各々独立に水素原子または置換基(例えば、ハロゲン原子、または、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基などの有機基)を表し、W1はハメットの置換基定数σp値が正の値である電子吸引性基を表す。R3とW1、R3とW2 、W1とW2は互いに結合して環を形成してもよい。
式(Auch2)で表される化合物において、Chが硫黄原子またはセレン原子であるものが好ましく、R3は、水素原子またはアルキル基が好ましく、W1及びW2は各々独立にハメットの置換基定数σp値が0.2以上である電子吸引性基が好ましい。より具体的な化合物の例としては、(NC)2C=CHSAu、(CH3OCO)2C=CHSAu、CH3CO(CH3OCO)C=CHSAuなどが挙げられる。
【0126】
式(AuCh3)
W3−E−ChAu
ここで、AuはAu(I)を表し、Chは硫黄原子、セレン原子またはテルル原子を表し、Eは置換もしくは無置換のエチレン基を表し、W3はハメットの置換基定数σp値が正の値である電子吸引性基を表す。
式(AuCh3)で表される化合物において、Chが硫黄原子またはセレン原子であるものが好ましく、Eはハメットの置換基定数σp値が正の値である電子吸引性基を有するエチレン基であることが好ましく、W3はハメットの置換基定数σp値が0.2以上である電子吸引性基が好ましい。
【0127】
これらの化合物の添加量は場合に応じて広範囲に変わり得るがハロゲン化銀1モルあたり5×10−7〜5×10−3モル、好ましくは3×10−6〜3×10−4モルである。
【0128】
本発明においては、上記の金増感を更に他の増感法、例えば硫黄増感、セレン増感、テルル増感、還元増感あるいは金化合物以外を用いた貴金属増感等と組み合わせてもよい。特に、硫黄増感、セレン増感と組み合わせることが好ましい。
【0129】
本発明のハロゲン化銀乳剤には、感光材料の製造工程、保存中あるいは写真処理中のかぶりを防止する、あるいは写真性能を安定化させる目的で種々の化合物あるいはそれ等の前駆体を添加することができる。これらの化合物の具体例は、特開昭62−215272号公報の第39頁〜第72頁に記載のものが好ましく用いられる。更にEP0447647号に記載された5−アリールアミノ−1,2,3,4−チアトリアゾール化合物(該アリール残基には少なくとも一つの電子吸引性基を持つ)も好ましく用いられる。
【0130】
また、本発明において、ハロゲン化銀乳剤の保存性を高めるため、特開平11−109576号公報に記載のヒドロキサム酸誘導体、特開平11−327094号公報に記載のカルボニル基に隣接して、両端がアミノ基若しくはヒドロキシル基が置換した二重結合を有す環状ケトン類(特に一般式(S1)で表されるもので、段落番号0036〜0071は本願の明細書に取り込むことができる。)、特開平11−143011号公報に記載のスルホ置換のカテコールやハイドロキノン類(例えば、4,5−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸、2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゼンジスルホン酸、3,4−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、2,3−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、2,5−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、3,4,5−トリヒドロキシベンゼンスルホン酸及びこれらの塩など)、米国特許第5,556,741号明細書の一般式(A)で表されるヒドロキシルアミン類(米国特許第5,556,741号明細書の第4欄の第56行〜第11欄の第22行の記載は本願においても好ましく適用され、本願の明細書の一部として取り込まれる)、特開平11−102045号公報の一般式(I)〜(III)で表される水溶性還元剤は、本発明においても好ましく使用される。
【0131】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料(以下、単に「感光材料」という場合がある)は、支持体上に、イエロー色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層と、マゼンタ色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層と、シアン色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層とをそれぞれ少なくとも一層有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、前記ハロゲン化銀乳剤層のうち少なくとも一層が、本発明のハロゲン化銀乳剤を含有することを特徴とする。本発明において、前記イエロー色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層はイエロー発色層として、前記マゼンタ色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層はマゼンタ発色層として、及び前記シアン色素形成カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層はシアン発色層として機能する。前記イエロー発色層、マゼンタ発色層及びシアン発色層に各々含有されるハロゲン化銀乳剤は、相互に異なる波長領域の光(例えば、青色領域、緑色領域及び赤色領域の光)に対して、感光性を有しているのが好ましい。
【0132】
本発明の感光材料は、前記イエロー発色層、マゼンタ発色層及びシアン発色層以外にも、所望により後述する親水性コロイド層、アンチハレーション層、中間層及び着色層を有していてもよい。
【0133】
本発明の感光材料には、従来公知の写真用素材や添加剤を使用できる。
例えば、写真用支持体としては、透過型支持体や反射型支持体を用いることができる。透過型支持体としては、セルロースナイトレートフィルムやポリエチレンテレフタレートなどの透明フィルム、更には、2,6−ナフタレンジカルボン酸(NDCA)とエチレングリコール(EG)とのポリエステルやNDCAとテレフタル酸とEGとのポリエステル等に磁性層などの情報記録層を設けたものが好ましく用いられる。反射型支持体としては、特に複数のポリエチレン層やポリエステル層でラミネートされ、このような耐水性樹脂層(ラミネート層)の少なくとも一層に酸化チタン等の白色顔料を含有する反射支持体が好ましい。
【0134】
本発明においてさらに好ましい反射支持体としては、ハロゲン化銀乳剤層を設ける側の紙基体上に微小空孔を有するポリオレフィン層を有しているものが挙げられる。ポリオレフィン層は多層から成っていてもよく、その場合、好ましくはハロゲン化銀乳剤層側のゼラチン層に隣接するポリオレフィン層は微小空孔を有さず(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、紙基体上に近い側に微小空孔を有するポリオレフィン(例えばポリプロピレン、ポリエチレン)から成るものがより好ましい。紙基体及び写真構成層の間に位置するこれら多層若しくは一層のポリオレフィン層の密度は0.40〜1.0g/mlであることが好ましく、0.50〜0.70g/mlがより好ましい。また、紙基体及び写真構成層の間に位置するこれら多層若しくは一層のポリオレフィン層の厚さは10〜100μmが好ましく、15〜70μmがさらに好ましい。また、ポリオレフィン層と紙基体の厚さの比は0.05〜0.2が好ましく、0.1〜0.15がさらに好ましい。
【0135】
また、上記紙基体の写真構成層とは逆側(裏面)にポリオレフィン層を設けることも、反射支持体の剛性を高める点から好ましく、この場合、裏面のポリオレフィン層は表面が艶消しされたポリエチレン又はポリプロピレンが好ましく、ポリプロピレンがより好ましい。裏面のポリオレフィン層は5〜50μmが好ましく、10〜30μmがより好ましく、さらに密度が0.7〜1.1g/mlであることが好ましい。本発明における反射支持体において、紙基体上に設けるポリオレフィン層に関する好ましい態様については、特開平10−333277号公報、同10−333278号公報、同11−52513号公報、同11−65024号公報、EP0880065号明細書、及びEP0880066号明細書に記載されている例が挙げられる。
【0136】
更に前記の耐水性樹脂層中には蛍光増白剤を含有するのが好ましい。また、前記蛍光増白剤を分散含有する親水性コロイド層を、別途形成してもよい。前記蛍光増白剤として、好ましくは、ベンゾオキサゾール系、クマリン系、ピラゾリン系を用いることができ、更に好ましくは、ベンゾオキサゾリルナフタレン系及びベンゾオキサゾリルスチルベン系の蛍光増白剤である。使用量は、特に限定されていないが、好ましくは1〜100mg/m2である。耐水性樹脂に混合する場合の混合比は、好ましくは樹脂に対して0.0005〜3質量%であり、更に好ましくは0.001〜0.5質量%である。
【0137】
反射型支持体としては、透過型支持体、又は上記のような反射型支持体上に、白色顔料を含有する親水性コロイド層を塗設したものでもよい。また、反射型支持体は、鏡面反射性又は第2種拡散反射性の金属表面をもつ支持体であってもよい。
【0138】
また、本発明の感光材料に用いられる支持体としては、ディスプレイ用に白色ポリエステル系支持体又は白色顔料を含む層がハロゲン化銀乳剤層を有する側の支持体上に設けられた支持体を用いてもよい。更に鮮鋭性を改良するために、アンチハレーション層を支持体のハロゲン化銀乳剤層塗布側又は裏面に塗設するのが好ましい。特に反射光でも透過光でもディスプレイが観賞できるように、支持体の透過濃度を0.35〜0.8の範囲に設定するのが好ましい。
【0139】
本発明の感光材料には、画像のシャープネス等を向上させる目的で親水性コロイド層に、欧州特許EP0,337,490A2号明細書の第27〜76頁に記載の、処理により脱色可能な染料(中でもオキソノール系染料)を感光材料の680nmに於ける光学反射濃度が0.70以上になるように添加したり、支持体の耐水性樹脂層中に2〜4価のアルコール類(例えばトリメチロールエタン)等で表面処理された酸化チタンを12質量%以上(より好ましくは14質量%以上)含有させるのが好ましい。
【0140】
本発明の感光材料には、イラジエーションやハレーションを防止したり、セーフライト安全性等を向上させる目的で親水性コロイド層に、欧州特許EP0337490A2号明細書の第27〜76頁に記載の、処理により脱色可能な染料(中でもオキソノール染料、シアニン染料)を添加することが好ましい。さらに、欧州特許EP0819977号明細書に記載の染料も本発明に好ましく添加される。これらの水溶性染料の中には使用量を増やすと色分離やセーフライト安全性を悪化するものもある。色分離を悪化させないで使用できる染料としては、特開平5−127324号公報、同5−127325号公報、同5−216185号公報に記載された水溶性染料が好ましい。
【0141】
本発明においては、水溶性染料の代わり、あるいは水溶性染料と併用しての処理で脱色可能な着色層が用いられる。用いられる処理で脱色可能な着色層は、乳剤層に直かに接してもよく、ゼラチンやハイドロキノンなどの処理混色防止剤を含む中間層を介して接するように配置されていてもよい。この着色層は、着色された色と同種の原色に発色する乳剤層の下層(支持体側)に設置されることが好ましい。各原色毎に対応する着色層を全て個々に設置することも、このうちに一部のみを任意に選んで設置することも可能である。また複数の原色域に対応する着色を行った着色層を設置することも可能である。着色層の光学反射濃度は、露光に使用する波長域(通常のプリンター露光においては400nm〜700nmの可視光領域、走査露光の場合には使用する走査露光光源の波長)において最も光学濃度の高い波長における光学濃度値が0.2以上3.0以下であることが好ましい。さらに好ましくは0.5以上2.5以下、特に0.8以上2.0以下が好ましい。
【0142】
着色層を形成するためには、従来公知の方法が適用できる。例えば、特開平2−282244号公報の3頁右上欄〜8頁に記載された染料や、特開平3−7931号公報の3頁右上欄〜11頁左下欄に記載された染料のように固体微粒子分散体の状態で親水性コロイド層に含有させる方法、アニオン性色素をカチオンポリマーに媒染する方法、色素をハロゲン化銀等の微粒子に吸着させて層中に固定する方法、特開平1−239544号公報に記載されているようなコロイド銀を使用する方法などである。色素の微粉末を固体状で分散する方法としては、例えば、少なくともpH6以下では実質的に水不溶性であるが、少なくともpH8以上では実質的に水溶性である微粉末染料を含有させる方法が特開平2−308244号公報の第4〜13頁に記載されている。また、例えば、アニオン性色素をカチオンポリマーに媒染する方法としては、特開平2−84637号公報の第18〜26頁に記載されている。光吸収剤としてのコロイド銀の調製法については米国特許第2,688,601号明細書、同3,459,563号明細書に示されている。これらの方法のなかで微粉末染料を含有させる方法、コロイド銀を使用する方法などが好ましい。
【0143】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、カラーネガフィルム、カラーポジフィルム、カラー反転フィルム、カラー反転印画紙、カラー印画紙等に用いられるが、中でもカラー印画紙として用いるのが好ましい。カラー印画紙は、イエロー発色性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ発色性ハロゲン化銀乳剤層及びシアン発色性ハロゲン化銀乳剤層をそれぞれ少なくとも1層ずつ有してなることが好ましく、一般には、これらのハロゲン化銀乳剤層は支持体から近い順にイエロー発色性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ発色性ハロゲン化銀乳剤層、シアン発色性ハロゲン化銀乳剤層である。
【0144】
しかしながら、これとは異なった層構成を取っても構わない。
イエローカプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層は支持体上のいずれの位置に配置されても構わないが、該イエローカプラー含有層にハロゲン化銀平板粒子を含有する場合は、マゼンタカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層又はシアンカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも一層よりも支持体から離れた位置に塗設されていることが好ましい。また、発色現像促進、脱銀促進、増感色素による残色の低減の観点からは、イエローカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層は他のハロゲン化銀乳剤層より、支持体から最も離れた位置に塗設されていることが好ましい。更に、Blix退色の低減の観点からは、シアンカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層は他のハロゲン化銀乳剤層の中央の層が好ましく、光退色の低減の観点からはシアンカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層は最下層が好ましい。また、イエロー、マゼンタ及びシアンのそれぞれの発色性層は2層又は3層からなってもよい。例えば、特開平4−75055号公報、同9−114035号公報、同10−246940号公報、米国特許第5,576,159号明細書等に記載のように、ハロゲン化銀乳剤を含有しないカプラー層をハロゲン化銀乳剤層に隣接して設け、発色層とすることも好ましい。
【0145】
本発明において適用されるハロゲン化銀乳剤やその他の素材(添加剤など)及び写真構成層(層配置など)、並びにこの感光材料を処理するために適用される処理法や処理用添加剤としては、特開昭62−215272号公報、特開平2−33144号公報、欧州特許EP0,355,660A2号明細書に記載されているもの、特に欧州特許EP0,355,660A2号明細書に記載されているものが好ましく用いられる。更には、特開平5−34889号公報、同4−359249号公報、同4−313753号公報、同4−270344号公報、同5−66527号公報、同4−34548号公報、同4−145433号公報、同2−854号公報、同1−158431号公報、同2−90145号公報、同3−194539号公報、同2−93641号公報、欧州特許公開第0520457A2号明細書等に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料やその処理方法も好ましい。
【0146】
特に、本発明においては、前記の反射型支持体やハロゲン化銀乳剤、更にはハロゲン化銀粒子中にドープされる異種金属イオン種、ハロゲン化銀乳剤の保存安定剤又はカブリ防止剤、化学増感法(増感剤)、分光増感法(分光増感剤)、シアン、マゼンタ、イエローカプラー及びその乳化分散法、色像保存性改良剤(ステイン防止剤や褪色防止剤)、染料(着色層)、ゼラチン種、感光材料の層構成や感光材料の被膜pHなどについては、下記表1に示す特許の各箇所に記載のものが特に好ましく適用できる。
【0147】
【表1】
【0148】
本発明において用いられるシアン、マゼンタ及びイエローカプラーとしては、その他、特開昭62−215272号公報の第91頁右上欄4行目〜121頁左上欄6行目、特開平2−33144号公報の第3頁右上欄14行目〜18頁左上欄末行目と第30頁右上欄6行目〜35頁右下欄11行目やEP0355,660A2号明細書の第4頁15行目〜27行目、5頁30行目〜28頁末行目、45頁29行目〜31行目、47頁23行目〜63頁50行目に記載のカプラーも有用である。
また、本発明はWO98/33760号の一般式(II)及び(III)、特開平10−221825号公報の一般式(D)で表される化合物を添加してもよく、好ましい。
【0149】
本発明に使用可能なシアン色素形成カプラー(単に、「シアンカプラー」という場合がある)としては、ピロロトリアゾール系カプラーが好ましく用いられ、特開平5−313324号公報の一般式(I)又は(II)で表されるカプラー及び特開平6−347960号公報の一般式(I)で表されるカプラー並びにこれらの特許に記載されている例示カプラーが特に好ましい。また、フェノール系、ナフトール系のシアンカプラーも好ましく、例えば、特開平10−333297号公報に記載の一般式(ADF)で表されるシアンカプラーが好ましい。上記以外のシアンカプラーとしては、欧州特許EP0488248号明細書及びEP0491197A1号明細書に記載のピロロアゾール型シアンカプラー、米国特許第5,888,716号に記載の2,5−ジアシルアミノフェノールカプラー、米国特許第4,873,183号明細書、同第4,916,051号明細書に記載の6位に電子吸引性基、水素結合基を有するピラゾロアゾール型シアンカプラー、特に、特開平8−171185号公報、同8−311360号公報、同8−339060号公報に記載の6位にカルバモイル基を有するピラゾロアゾール型シアンカプラーも好ましい。
【0150】
また、特開平2−33144号公報に記載のジフェニルイミダゾール系シアンカプラーの他に、欧州特許EP0333185A2号明細書に記載の3−ヒドロキシピリジン系シアンカプラー(中でも具体例として列挙されたカプラー(42)の4当量カプラーに塩素離脱基をもたせて2当量化したものや、カプラー(6)や(9)が特に好ましい)や特開昭64−32260号公報に記載された環状活性メチレン系シアンカプラー(中でも具体例として列挙されたカプラー例3、8、34が特に好ましい)、欧州特許EP0456226A1号明細書に記載のピロロピラゾール型シアンカプラー、欧州特許EP0484909号明細書に記載のピロロイミダゾール型シアンカプラーを使用することもできる。
【0151】
なお、これらのシアンカプラーのうち、特開平11−282138号公報に記載の一般式(I)で表されるピロロアゾール系シアンカプラーが特に好ましく、該特許の段落番号0012〜0059の記載は例示シアンカプラー(1)〜(47)を含め、本願にそのまま適用され、本願の明細書の一部として好ましく取り込まれる。
【0152】
本発明に用いられるマゼンタ色素形成カプラー(単に、「マゼンタカプラー」という場合がある)としては、前記の表の公知文献に記載されたような5−ピラゾロン系マゼンタカプラーやピラゾロアゾール系マゼンタカプラーが用いられるが、中でも色相や画像安定性、発色性等の点で特開昭61−65245号公報に記載されたような2級又は3級アルキル基がピラゾロトリアゾール環の2、3又は6位に直結したピラゾロトリアゾールカプラー、特開昭61−65246号公報に記載されたような分子内にスルホンアミド基を含んだピラゾロアゾールカプラー、特開昭61−147254号公報に記載されたようなアルコキシフェニルスルホンアミドバラスト基を持つピラゾロアゾールカプラーや欧州特許第226,849A号明細書や同第294,785A号明細書に記載されたような6位にアルコキシ基やアリールオキシ基をもつピラゾロアゾールカプラーの使用が好ましい。特に、マゼンタカプラーとしては特開平8−122984号公報に記載の一般式(M−I)で表されるピラゾロアゾールカプラーが好ましく、該特許の段落番号0009〜0026はそのまま本願に適用され、本願の明細書の一部として取り込まれる。これに加えて、欧州特許第854384号明細書、同第884640号明細書に記載の3位と6位の両方に立体障害基を有するピラゾロアゾールカプラーも好ましく用いられる。
【0153】
また、イエロー色素形成カプラー(単に、「イエローカプラー」という場合がある)としては、前記表中に記載の化合物の他に、欧州特許EP0447969A1号明細書に記載のアシル基に3〜5員の環状構造を有するアシルアセトアミド型イエローカプラー、欧州特許EP0482552A1号明細書に記載の環状構造を有するマロンジアニリド型イエローカプラー、欧州公開特許第953870A1号明細書、同第953871A1号明細書、同第953872A1号明細書、同第953873A1号明細書、同第953874A1号明細書、同第953875A1号明細書等に記載のピロール−2又は3−イル若しくはインドール−2又は3−イルカルボニル酢酸アニリド系カプラー、米国特許第5,118,599号明細書に記載されたジオキサン構造を有するアシルアセトアミド型イエローカプラーが好ましく用いられる。その中でも、アシル基が1−アルキルシクロプロパン−1−カルボニル基であるアシルアセトアミド型イエローカプラー、アニリドの一方がインドリン環を構成するマロンジアニリド型イエローカプラーの使用が特に好ましい。これらのカプラーは、単独あるいは併用することができる。
【0154】
本発明に使用するカプラーは、前出表中記載の高沸点有機溶媒の存在下で(又は不存在下で)ローダブルラテックスポリマー(例えば米国特許第4,203,716号明細書)に含浸させて、又は水不溶性かつ有機溶媒可溶性のポリマーとともに溶かして親水性コロイド水溶液に乳化分散させることが好ましい。好ましく用いることのできる水不溶性かつ有機溶媒可溶性のポリマーは、米国特許第4,857,449号明細書の第7欄〜15欄及び国際公開WO88/00723号明細書の第12頁〜30頁に記載の単独重合体又は共重合体が挙げられる。より好ましくはメタクリレート系あるいはアクリルアミド系ポリマー、特にアクリルアミド系ポリマーの使用が色像安定性等の上で好ましい。
【0155】
本発明においては公知の混色防止剤を用いることができるが、その中でも以下に挙げる特許に記載のものが好ましい。
例えば、特開平5−333501号公報に記載の高分子量のレドックス化合物、WO98/33760号明細書、米国特許第4,923,787号明細書等に記載のフェニドンやヒドラジン系化合物、特開平5−249637号公報、特開平10−282615号公報及び独国特許第19629142A1号明細書等に記載のホワイトカプラーを用いることができる。また、特に現像液のpHを上げ、現像の迅速化を行う場合には独国特許第19618786A1号明細書、欧州特許第839623A1号明細書、欧州特許第842975A1号明細書、独国特許19806846A1号明細書及び仏国特許第2760460A1号明細書等に記載のレドックス化合物を用いることも好ましい。
【0156】
本発明においては、紫外線吸収剤としてモル吸光係数の高いトリアジン骨核を有する化合物を用いることが好ましく、例えば、以下の特許に記載の化合物を用いることができる。これらは、感光性層又は/及び非感光性に好ましく添加される。例えば、特開昭46−3335号公報、同55−152776号公報、特開平5−197074号公報、同5−232630号公報、同5−307232号公報、同6−211813号公報、同8−53427号公報、同8−234364号公報、同8−239368号公報、同9−31067号公報、同10−115898号公報、同10−147577号公報、同10−182621号公報、独国特許第19739797A号明細書、欧州特許第711804A号明細書及び特表平8−501291号公報等に記載されている化合物を使用できる。
【0157】
本発明の感光材料に用いることのできる結合剤又は保護コロイドとしては、ゼラチンを用いることが有利であるが、それ以外の親水性コロイドを単独であるいはゼラチンとともに用いることができる。好ましいゼラチンとしては、鉄、銅、亜鉛、マンガン等の不純物として含有される重金属は、好ましくは5ppm以下、更に好ましくは3ppm以下である。また、感光材料中に含まれるカルシウム量は、好ましくは20mg/m2以下、更に好ましくは10mg/m2以下、最も好ましくは5mg/m2以下である。
【0158】
本発明においては、親水性コロイド層中に繁殖して画像を劣化させる各種の黴や細菌を防ぐために、特開昭63−271247号公報に記載のような防菌・防黴剤を添加するのが好ましい。さらに、感光材料の被膜pHは4.0〜7.0が好ましく、より好ましくは4.0〜6.5である。
【0159】
本発明における写真構成層構成層中の総塗設ゼラチン量は3g/m2以上6g/m2以下であることが好ましく、3g/m2以上5g/m2以下であることが更に好ましい。また、超迅速処理した場合でも、現像進行性、及び定着漂白性、残色を満足するために、写真構成層全体の膜厚が3μm〜7.5μmであることが好ましく、更に3μm〜6.5μmであることが好ましい。乾燥膜厚の評価方法は、乾燥膜剥離前後の膜厚の変化、あるいは断面の光学顕微鏡や電子顕微鏡での観察により測定することができる。本発明において、現像進行性と乾燥速度を上げることを両立するために、膨潤膜厚が8μm〜19μmであることが好ましく、更に9μm〜18μmであることが好ましい。膨潤膜厚の測定としては、35℃の水溶液中に乾燥した感光材料を浸し、膨潤して十分平衡に達した状態で打点方法にて測定することができる。本発明における塗布銀量は、0.2g/m2〜0.5g/m2であることが好ましく、0.2g/m2〜0.45g/m2であることが更に好ましく、0.2g/m2〜0.40g/m2であることが最も好ましい。
【0160】
本発明においては、感光材料の塗布安定性向上、静電気発生防止、帯電量調節等の点から界面活性剤を感光材料に添加することができる。界面活性剤としてはアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ベタイン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤があり、例えば特開平5−333492号公報に記載のものが挙げられる。本発明に用いる界面活性剤としては、フッ素原子含有の界面活性剤が好ましい。特に、フッ素原子含有界面活性剤を好ましく用いることができる。これらのフッ素原子含有界面活性剤は単独で用いても、従来公知の他の界面活性剤と併用しても構わないが、好ましくは従来公知の他の界面活性剤との併用である。これらの界面活性剤の感光材料への添加量は特に限定されるものではないが、一般的には、1×10-5〜1g/m2、好ましくは1×10-4〜1×10-1g/m2、更に好ましくは1×10-3〜1×10-2g/m2である。
【0161】
本発明の感光材料は、画像情報に応じて光を照射される露光工程と、前記光照射された感光材料を現像する現像工程とにより、画像を形成することができる。本発明の感光材料は、通常のネガプリンターを用いたプリントシステムに使用される以外に、陰極線(CRT)を用いた走査露光方式にも適している。陰極線管露光装置は、レーザーを用いた装置に比べて、簡便でかつコンパクトであり、低コストになる。また、光軸や色の調整も容易である。画像露光に用いる陰極線管には、必要に応じてスペクトル領域に発光を示す各種発光体が用いられる。例えば赤色発光体、緑色発光体、青色発光体のいずれか1種、あるいは2種以上が混合されて用いられる。スペクトル領域は、上記の赤、緑、青に限定されず、黄色、橙色、紫色或いは赤外領域に発光する蛍光体も用いられる。特に、これらの発光体を混合して白色に発光する陰極線管がしばしば用いられる。
【0162】
感光材料が異なる分光感度分布を有する複数の感光性層を持ち、陰極性管も複数のスペクトル領域の発光を示す蛍光体を有する場合には、複数の色を一度に露光、即ち陰極線管に複数の色の画像信号を入力して管面から発光させてもよい。各色ごとの画像信号を順次入力して各色の発光を順次行わせ、その色以外の色をカットするフィルムを通して露光する方法(面順次露光)を採ってもよく、一般には、面順次露光の方が、高解像度の陰極線管を用いることができるため、高画質化のためには好ましい。
【0163】
本発明の感光材料は、ガスレーザー、発光ダイオード、半導体レーザー、半導体レーザーあるいは半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーと非線形光学結晶を組合わせた第二高調波発光光源(SHG)等の単色高密度光を用いたデジタル走査露光方式が好ましく使用される。システムをコンパクトで、安価なものにするために半導体レーザー、半導体レーザーあるいは固体レーザーと非線形光学結晶を組合わせた第二高調波発生光源(SHG)を使用することが好ましい。特にコンパクトで、安価、更に寿命が長く安定性が高い装置を設計するためには半導体レーザーの使用が好ましく、露光光源の少なくとも一つは半導体レーザーを使用することが好ましい。
【0164】
このような走査露光光源を使用する場合、本発明の感光材料の分光感度極大波長は、使用する走査露光用光源の波長により任意に設定することができる。半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーあるいは半導体レーザーと非線形光学結晶を組合わせて得られるSHG光源では、レーザーの発振波長を半分にできるので、青色光、緑色光が得られる。従って、感光材料の分光感度極大は通常の青、緑、赤の3つの波長領域に持たせることが可能である。このような走査露光における露光時間は、画素密度を400dpiとした場合の画素サイズを露光する時間として定義すると、好ましい露光時間としては1×10-4秒以下、更に好ましくは1×10-6秒以下である。
【0165】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料は、発光波長420nm〜460nmの青色レーザーのコヒーレント光により像様露光することが好ましい。青色レーザーの中でも、青色半導体レーザーを用いることが特に好ましい。
レーザー光源として具体的には、波長430〜450nmの青色半導体レーザー(2001年3月 第48回応用物理学関係連合講演会で日亜化学発表)、半導体レーザー(発振波長 約940nm)を導波路状の反転ドメイン構造を有するLiNbO3のSHG結晶により波長変換して取り出した約470nmの青色レーザー、半導体レーザー(発振波長 約1060nm)を導波路状の反転ドメイン構造を有するLiNbO3のSHG結晶により波長変換して取り出した約530nmの緑色レーザー、波長約685nmの赤色半導体レーザー(日立タイプNo.HL6738MG)、波長約650nmの赤色半導体レーザー(日立タイプNo.HL6501MG)などが好ましく用いられる。
【0166】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料は、以下の公知資料に記載の露光、現像システムと組み合わせることで好ましく用いることができる。前記現像システムとしては、特開平10−333253号公報に記載の自動プリント並びに現像システム、特開2000−10206号公報に記載の感光材料搬送装置、特開平11−215312号公報に記載の画像読取装置を含む記録システム、特開平11−88619号公報並びに特開平10−202950号公報に記載のカラー画像記録方式からなる露光システム、特開平10−210206号公報に記載の遠隔診断方式を含むデジタルフォトプリントシステム、及び特願平10−159187号公報に記載の画像記録装置を含むフォトプリントシステムが挙げられる。
【0167】
本発明に適用できる好ましい走査露光方式については、前記の表に掲示した特許に詳しく記載されている。
【0168】
本発明の感光材料をプリンター露光する際、米国特許第4,880,726号明細書に記載のバンドストップフィルターを用いることが好ましい。これによって光混色が取り除かれ、色再現性が著しく向上する。
本発明においては、欧州特許EP0789270A1明細書や同EP0789480A1号明細書に記載のように、画像情報を付与する前に、予め、黄色のマイクロドットパターンを前露光し、複写規制を施しても構わない。
【0169】
本発明の感光材料の処理には、特開平2−207250号公報の第26頁右下欄1行目〜34頁右上欄9行目、及び特開平4−97355号公報の第5頁左上欄17行目〜18頁右下欄20行目に記載の処理素材や処理方法が好ましく適用できる。また、この現像液に使用する保恒剤としては、前記の表に掲示した特許に記載の化合物が好ましく用いられる。
【0170】
本発明は迅速処理適性を有する感光材料として適用される。発色現像時間は28秒以下、好ましくは25秒以下6秒以上、より好ましくは20秒以下6秒以上である。同様に、漂白定着時間は好ましくは30秒以下、更に好ましくは25秒以下6秒以上、より好ましくは20秒以下6秒以上である。また、水洗又は安定化時間は、好ましくは60秒以下、更に好ましくは40秒以下6秒以上である。
なお、発色現像時間とは、感光材料が発色現像液中に入ってから次の処理工程の漂白定着液に入るまでの時間をいう。例えば、自動現像機などで処理される場合には、感光材料が発色現像液中に浸漬されている時間(いわゆる液中時間)と、感光材料が発色現像液を離れ次の処理工程の漂白定着浴に向けて空気中を搬送されている時間(いわゆる空中時間)との両者の合計を発色現像時間という。同様に、漂白定着時間とは、感光材料が漂白定着液中に入ってから次の水洗又は安定浴に入るまでの時間をいう。また、水洗又は安定化時間とは、感光材料が水洗又は安定化液中に入ってから乾燥工程に向けて液中にある時間(いわゆる液中時間)をいう。
【0171】
本発明の感光材料を露光後、現像する方法としては、従来のアルカリ剤と現像主薬を含む現像液で現像する方法、現像主薬を感光材料に内蔵し、現像主薬を含まないアルカリ液などのアクチベーター液で現像する方法などの湿式方式のほか、処理液を用いない熱現像方式などを用いることができる。特に、アクチベーター方法は、現像主薬を処理液に含まないため、処理液の管理や取扱いが容易であり、また廃液処理時の負荷が少なく環境保全上の点からも好ましい方法である。
アクチベーター方法において、感光材料中に内蔵される現像主薬又はその前駆体としては、例えば、特開平8−234388号公報、同9−152686号公報、同9−152693号公報、同9−211814号公報、同9−160193号公報に記載されたヒドラジン型化合物が好ましい。
【0172】
また、感光材料の塗布銀量を低減し、過酸化水素を用いた画像増幅処理(補力処理)する現像方法も好ましく用いられる。特に、この方法をアクチベーター方法に用いることは好ましい。具体的には、特開平8−297354号公報、同9−152695号公報に記載された過酸化水素を含むアクチベーター液を用いた画像形成方法が好ましく用いられる。前記アクチベーター方法において、アクチベーター液で処理後、通常脱銀処理されるが、低銀量の感光材料を用いた画像増幅処理方法では、脱銀処理を省略し、水洗又は安定化処理といった簡易な方法を行うことができる。また、感光材料から画像情報をスキャナー等で読み取る方式では、撮影用感光材料などの様に高銀量の感光材料を用いた場合でも、脱銀処理を不要とする処理形態を採用することができる。
【0173】
本発明で用いられるアクチベーター液、脱銀液(漂白/定着液)、水洗及び安定化液の処理素材や処理方法は公知のものを用いることができる。好ましくは、リサーチ・ディスクロージャーItem 36544(1994年9月)第536頁〜第541頁、特開平8−234388号公報に記載されたものを用いることができる。
【0174】
【実施例】
以下に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0175】
実施例1
乳剤(B−11〜14の調製)比較例:塩化銀立方体 辺長0.46μm
撹拌したゼラチン水溶液に、硝酸銀と塩化ナトリウムを同時添加して混合する定法で、高塩化銀立方体粒子を調製した。ただし、硝酸銀の添加が80%の時点から90%の時点にかけて、臭化カリウムを出来上がりのハロゲン化銀1モル当たり2モル%になる量を添加し、硝酸銀の添加が80%の時点から90%の時点にかけて、K4[Ru(CN)6]を添加した。また硝酸銀の添加が83%の時点から88%の時点にかけてK2[IrCl6]を添加し、硝酸銀の添加が90%の時点から95%の時点にかけてK2[Ir(5−メチルチアゾール)Cl5]を添加した。得られた乳剤に脱塩処理を施した後、ゼラチンを加え再分散した。得られた粒子は、6つの平行な{100}面で囲まれた立方体辺長0.46μm、変動係数9.5%の立方体乳剤であった。
【0176】
この乳剤を40℃で溶解し、増感色素Dye−1およびチオスルフォン酸ナトリウムをハロゲンを添加し、硫黄増感剤としてチオ硫酸ナトリウム5水和物と金増感剤としてビス(1,4,5−トリメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオラート)オーレート(I)テトラフルオロボレートを用い最適になるように熟成した。更に、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールと1−(5−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールを添加し更に、臭化カリウムを添加した。このようにして得られた乳剤を乳剤B−11とした。
【0177】
【化22】
【0178】
更に乳剤B−11とは、後熟時に添加した増感色素Dye−1を増感色素S−12、S−26あるいはS−32に変更したことのみ異なる乳剤をそれぞれ乳剤B−12、乳剤B−13、乳剤B−14とした。
【0179】
(乳剤B−21〜24の調製)比較例:塩臭化銀 辺長0.61μm
撹拌したゼラチン水溶液に、硝酸銀と塩化ナトリウムを同時添加して混合する定法で、6つの平行な{100}面に囲まれた立方体辺長0.61μm、変動係数8.9%の高塩化銀立方体乳剤を調製した。ただし、硝酸銀の添加が80%の時点から90%の時点にかけて、臭化カリウムを出来上がりのハロゲン化銀1モル当たり2モル%になる量を添加し、硝酸銀の添加が80%の時点から90%の時点にかけて、K4[Ru(CN)6]を添加した。また硝酸銀の添加が83%の時点から88%の時点にかけてK2[IrCl6]を添加し、硝酸銀の添加が90%の時点から95%の時点にかけてK2[Ir(5−メチルチアゾール)Cl5]を添加した。得られた乳剤に脱塩処理を施した後、ゼラチンを加え再分散した。
【0180】
この乳剤を40℃で溶解し、増感色素Dye−1およびチオスルフォン酸ナトリウムをハロゲンを添加し、硫黄増感剤としてチオ硫酸ナトリウム5水和物と金増感剤としてビス(1,4,5−トリメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオラート)オーレート(I)テトラフルオロボレートを用い最適になるように熟成した。更に、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールと1−(5−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールを添加し更に、臭化カリウムを添加した。このようにして得られた乳剤を乳剤B−21とした。
【0181】
更に乳剤B−21とは、後熟時に添加した増感色素Dye−1を増感色素S−12、S−26あるいはS−32に変更したことのみ異なる乳剤をそれぞれ乳剤B−22、乳剤B−23、乳剤B−24とした。
【0182】
(乳剤B−31〜34の調製)本発明:塩ヨウ臭化銀 辺長0.46μm
乳剤B−11とは、硝酸銀の添加が90%終了した時点で沃化カリウム水溶液を、出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりI量が0.24モル%になる量を激しく混合しながら添加したこと以外は乳剤B−11と同様に乳剤を調製した。得られた粒子は、6つの平行な{100}面で囲まれた立方体辺長0.46μm、変動係数9.5%の立方体塩ヨウ臭化銀乳剤で、このようにして得られた乳剤を乳剤B−31とした。また深さ方向への沃化物イオン濃度の分布は、エッチング/TOF−SIMS法によると、沃化物イオンは粒子表面に向けてしみ出し、最表面に緩やか濃度極大を有し、内側に向けて濃度が減衰していた。
【0183】
更に乳剤B−31とは、後熟時に添加した増感色素Dye−1を増感色素S−12、S−26あるいはS−32に変更したことのみ異なる乳剤をそれぞれ乳剤B−32、乳剤B−33、乳剤B−34とした。
【0184】
(乳剤B−41〜44の調製)比較例:塩ヨウ臭化銀 辺長0.61μm
乳剤B−21とは、硝酸銀の添加が90%終了した時点で沃化カリウム水溶液を、出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりI量が0.24モル%になる量を激しく混合しながら添加したこと以外は乳剤B−21と同様に乳剤を調製した。得られた粒子は、6つの平行な{100}面に囲まれた立方体辺長0.61μm、変動係数8.7%の立方体塩ヨウ臭化銀乳剤で、このようにして得られた乳剤を乳剤B−41とした。
【0185】
更に乳剤B−41とは、後熟時に添加した増感色素Dye−1を増感色素S−12、S−26あるいはS−32に変更したことのみ異なる乳剤をそれぞれ乳剤B−42、乳剤B−43、乳剤B−44とした。
【0186】
(乳剤B−51〜54の調製)比較例:{100}塩ヨウ臭化銀平板 辺長0.46μm
27℃に恒温し、撹拌したゼラチン水溶液中に硝酸銀と塩化ナトリウムを激しく撹拌しながら同時添加し、更に、臭化カリウムを出来上がりのハロゲン化銀1モルあたり0.46モル%になる量を激しく混合しながら添加した。更に硝酸銀と塩化ナトリウムを同時添加した。75℃に昇温、最適に熟成し、更に成長工程として硝酸銀と塩化ナトリウムを添加し、所望の粒子サイズ成長させた。このとき硝酸銀の添加が90%終了した時点で、沃化カリウム水溶液を出来上がりのハロゲン化銀1モルあたりI量が0.24モル%になる量を、激しく混合しながら添加し、硝酸銀の添加が80%の時点から90%の時点にかけて、臭化カリウムを出来上がりのハロゲン化銀1モルあたり2モル%になる量を激しく混合しながら添加した。
また硝酸銀の添加が80%の時点から90%の時点にかけて、K4[Ru(CN)6]を添加し、硝酸銀の添加が83%の時点から88%の時点にかけてK2[IrCl6]を添加した。さらに硝酸銀の添加が90%の時点から95%の時点にかけてK2[Ir(5−メチルチアゾール)Cl5]を添加した。
その後、得られた乳剤に脱塩処理を施した後、ゼラチンを加え再分散した。
【0187】
そして乳剤の一部を採取し、粒子のレプリカの電子顕微鏡写真像(TEM像)を観察した。それによると、全ハロゲン化銀粒子の投影面積計の95.1%が主平面が{100}面の平板状粒子であり、その平均粒径0.90μm、平均粒子厚0.150μm、平均アスペクト比6.1、平均隣接辺比率1.12、立方体換算辺長0.46μmの粒子であった。
【0188】
この乳剤を40℃で溶解し、増感色素Dye−1およびチオスルフォン酸ナトリウムをハロゲンを添加し、硫黄増感剤としてチオ硫酸ナトリウム5水和物と金増感剤としてビス(1,4,5−トリメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオラート)オーレート(I)テトラフルオロボレートを用い最適になるように熟成した。更に、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールと1−(5−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールを添加し更に、臭化カリウムを添加した。このようにして得られた乳剤を乳剤B−51とした。
【0189】
更に乳剤B−51とは、後熟時に添加した増感色素Dye−1を増感色素S−12、S−26あるいはS−32に変更したことのみ異なる乳剤をそれぞれ乳剤B−52、乳剤B−53、乳剤B−54とした。
【0190】
(乳剤G−1の調製)
攪拌したゼラチン水溶液中に、硝酸銀と塩化ナトリウムを同時添加して混合する定法で、球相当径0.35μm、変動係数10%の立方体高塩化銀乳剤を調製した。但し、硝酸銀の添加が80%の時点から90%の時点にかけて、K4[Ru(CN)6]を添加した。硝酸銀の添加が80%の時点から100%の時点にかけて、臭化カリウム(出来上がりのハロゲン化銀1モルあたり4モル%)を添加した。硝酸銀の添加が90%終了した時点で沃化カリウム(出来上がりのハロゲン化銀1モルあたり0.2モル%)を添加した。硝酸銀の添加が92%の時点から95%の時点にかけて、K2[Ir(5−メチルチアゾール)Cl5]を添加した。更に硝酸銀の添加が92%の時点から98%の時点にかけて、K2[Ir(H2O)Cl5]を添加した。得られた乳剤に脱塩処理を施した後、ゼラチンを加え再分散した。この乳剤にベンゼンチオスルフォン酸ナトリウムを添加し、硫黄増感剤としてチオ硫酸ナトリウム5水和物と金増感剤としてビス(1,4,5−トリメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオラート)オーレート(I)テトラフルオロボレートを用い最適になるように熟成した。更に増感色素Dye−2、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール、1−(5−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールおよび臭化カリウムを添加した。このようにして得られた乳剤を、乳剤G−1とした。
【0191】
【化23】
【0192】
(乳剤R−1の調製)
攪拌したゼラチン水溶液中に、硝酸銀と塩化ナトリウムを同時添加して混合する定法で、球相当径0.35μm、変動係数10%の立方体高塩化銀乳剤を調製した。但し、硝酸銀の添加が80%の時点から90%の時点にかけて、K4[Ru(CN)6]を添加した。硝酸銀の添加が80%の時点から100%の時点にかけて、臭化カリウム(出来上がりのハロゲン化銀1モルあたり4.3モル%)を添加した。硝酸銀の添加が90%終了した時点で沃化カリウム(出来上がりのハロゲン化銀1モルあたり0.15モル%)を添加した。硝酸銀の添加が92%の時点から95%の時点にかけて、K2[Ir(5−メチルチアゾール)Cl5]を添加した。更に硝酸銀の添加が92%の時点から98%の時点にかけて、K2[Ir(H2O)Cl5]を添加した。得られた乳剤に脱塩処理を施した後、ゼラチンを加え再分散した。この乳剤にベンゼンチオスルフォン酸ナトリウムを添加し、硫黄増感剤としてチオ硫酸ナトリウム5水和物と金増感剤としてビス(1,4,5−トリメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオラート)オーレート(I)テトラフルオロボレートを用い最適になるように熟成した。更に増感色素Dye−3、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール、1−(5−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール、化合物Iおよび臭化カリウムを添加した。このようにして得られた乳剤を、乳剤R−1とした。
【0193】
【化24】
【0194】
紙の両面をポリエチレン樹脂で被覆してなる支持体の表面に、コロナ放電処理を施した後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含むゼラチン下塗層を設け、さらに第一層〜第七層の写真構成層を順次塗設して、以下に示す層構成のハロゲン化銀カラー写真感光材料の試料を作製した。各写真構成層用の塗布液は、以下のようにして調製した。
【0195】
第一層塗布液調製
イエローカプラー(ExY−1)57g、色像安定剤(Cpd−1)7g、色像安定剤(Cpd−2)4g、色像安定剤(Cpd−3)7g、色像安定剤(Cpd−8)2gを溶媒(Solv−1)21g及び酢酸エチル80mlに溶解し、この液を4gのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含む23.5質量%ゼラチン水溶液220g中に高速攪拌乳化機(ディゾルバー)で乳化分散し、水を加えて900gの乳化分散物Aを調製した。
一方、前記乳化分散物Aと乳剤B−1を混合溶解し、後記組成となるように第一層塗布液を調製した。乳剤塗布量は、銀量換算塗布量を示す。
【0196】
第二層〜第七層用の塗布液も第一層塗布液と同様の方法で調製した。各層のゼラチン硬化剤としては、1−オキシ−3,5−ジクロロ−s−トリアジンナトリウム塩(H−1)、(H−2)、(H−3)を用いた。また、各層にAb−1、Ab−2、Ab−3、及びAb−4をそれぞれ全量が15.0mg/m2、60.0mg/m2、5.0mg/m2及び10.0mg/m2となるように添加した。
【0197】
【化25】
【0198】
【化26】
【0199】
また、緑感性乳剤層および赤感性乳剤層に対し、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールを、それぞれハロゲン化銀1モル当り1.0×10-3モルおよび5.9×10-4モル添加した。さらに、第二層、第四層および第六層にも1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールを、それぞれ0.2mg/m2、0.2mg/m2および0.6mg/m2となるように添加した。
赤感性乳剤層にメタクリル酸とアクリル酸ブチルの共重合体ラテックス(質量比1:1、平均分子量200000〜400000)を0.05g/m2添加した。また、第二層、第四層および第六層にカテコール−3,5−ジスルホン酸二ナトリウムをそれぞれ6mg/m2、6mg/m2、18mg/m2となるように添加した。また、イラジエーション防止のために、以下の染料(カッコ内は塗布量を表す)を添加した。
【0200】
【化27】
【0201】
(層構成)
以下に、各層の構成を示す。数字は塗布量(g/m2)を表す。ハロゲン化銀乳剤は、銀換算塗布量を表す。
支持体
ポリエチレン樹脂ラミネート紙
[第一層側のポリエチレン樹脂に白色顔料(TiO2;含有率16質量%、ZnO;含有率4質量%)と蛍光増白剤(4,4’−ビス(5−メチルベンゾオキサゾリル)スチルベン。含有率0.03質量%)、青味染料(群青)を含む]
第一層(青感性乳剤層)
乳剤B−11 0.19
ゼラチン 1.00
イエローカプラー(ExY−1) 0.46
色像安定剤(Cpd−1) 0.06
色像安定剤(Cpd−2) 0.03
色像安定剤(Cpd−3) 0.06
色像安定剤(Cpd−8) 0.02
溶媒(Solv−1) 0.17
【0202】
第二層(混色防止層)
ゼラチン 0.50
混色防止剤(Cpd−4) 0.05
色像安定剤(Cpd−5) 0.01
色像安定剤(Cpd−6) 0.06
色像安定剤(Cpd−7) 0.01
溶媒(Solv−1) 0.03
溶媒(Solv−2) 0.11
【0203】
第三層(緑感性乳剤層)
乳剤G−1 0.12
ゼラチン 1.36
マゼンタカプラー(ExM) 0.15
紫外線吸収剤(UV−A) 0.14
色像安定剤(Cpd−2) 0.02
色像安定剤(Cpd−4) 0.002
色像安定剤(Cpd−6) 0.09
色像安定剤(Cpd−8) 0.02
色像安定剤(Cpd−9) 0.03
色像安定剤(Cpd−10) 0.01
色像安定剤(Cpd−11) 0.0001
溶媒(Solv−3) 0.11
溶媒(Solv−4) 0.22
溶媒(Solv−5) 0.20
【0204】
第四層(混色防止層)
ゼラチン 0.36
混色防止層(Cpd−4) 0.03
色像安定剤(Cpd−5) 0.006
色像安定剤(Cpd−6) 0.05
色像安定剤(Cpd−7) 0.004
溶媒(Solv−1) 0.02
溶媒(Solv−2) 0.08
【0205】
第五層(赤感性乳剤層)
乳剤R−1 0.10
ゼラチン 1.11
シアンカプラー(ExC−2) 0.13
シアンカプラー(ExC−3) 0.03
色像安定剤(Cpd−1) 0.05
色像安定剤(Cpd−6) 0.06
色像安定剤(Cpd−7) 0.02
色像安定剤(Cpd−9) 0.04
色像安定剤(Cpd−10) 0.01
色像安定剤(Cpd−14) 0.01
色像安定剤(Cpd−15) 0.12
色像安定剤(Cpd−16) 0.03
色像安定剤(Cpd−17) 0.09
色像安定剤(Cpd−18) 0.07
溶媒(Solv−5) 0.15
溶媒(Solv−8) 0.05
【0206】
第六層(紫外線吸収層)
ゼラチン 0.46
紫外線吸収剤(UV−B) 0.45
化合物(S1−4) 0.0015
溶媒(Solv−7) 0.25
第七層(保護層)
ゼラチン 1.00
ポリビニルアルコールのアクリル変性共重合体
(変性度17%) 0.04
流動パラフィン 0.02
界面活性剤(Cpd−13) 0.01
【0207】
【化28】
【0208】
【化29】
【0209】
【化30】
【0210】
【化31】
【0211】
【化32】
【0212】
【化33】
【0213】
【化34】
【0214】
【化35】
【0215】
【化36】
【0216】
【化37】
【0217】
以上のようにして得られた試料を、試料B(111)とした。試料B(111)とは青感性乳剤層の乳剤をそれぞれ表2のように替えた試料も同様に作製し試料B(112)〜試料B(144)とした。
【0218】
【表2】
【0219】
(評価1:露光環境温度依存性)
これらの試料の写真特性を調べるために以下のような実験を行った。
各塗布試料を10℃30%RHの雰囲気下に十分放置して、その環境のまま、高照度露光用感光計(山下電装(株)製HIE型)を用いて、グレー発色のセンシトメトリー用の10−6秒高照度階調露光を与えた。露光した試料は、露光してから5秒後に以下に示す発色現像処理aを行った。
【0220】
以下に処理工程を示す。
[発色現像処理a]
上記感光材料の試料B(132)を127mm幅のロール状に加工し、発色現像液のタンク容量1Lの実験処理装置を用いて感光材料試料に平均濃度のネガティブフイルムから像様露光を行い、下記処理工程にて使用した発色現像補充液の容量が発色現像タンク容量の0.5倍となるまで連続処理(ランニングテスト)を行った。このランニング液を用いた処理を発色現像処理aとした。
【0221】
処理工程 温度 時間 補充量*
発色現像 45.0℃ 16秒 45mL
漂白定着 40.0℃ 16秒 35mL
リンス1 40.0℃ 8秒 −
リンス2 40.0℃ 8秒 −
リンス3 ** 40.0℃ 8秒 −
リンス4 38.0℃ 8秒 121mL
乾燥 80.0℃ 16秒
(注)*感光材料1m2あたりの補充量
**富士写真フイルム(株)製リンスクリーニングシステムRC50Dをリンス3に装着し、リンス3からリンス液を取り出してポンプにより逆浸透モジュール(RC50D)へ送る。同槽で送られた透過水はリンスに供給し、濃縮液はリンス3に戻す。逆浸透モジュールへの透過水量は50〜300mL/分を維持するようにポンプ圧を調整し、1日10時間温調循環させた。リンスは1から4への4タンク向流方式とした。
【0222】
各処理液の組成は以下の通りである。
[発色現像液] [タンク液] [補充液]
水 800mL 600mL
蛍光増白剤(FL−1) 5.0g 8.5g
トリイソプロパノールアミン 8.8g 8.8g
p−トルエンスルホン酸ナトリウム 20.0g 20.0g
エチレンジアミン4酢酸 4.0g 4.0g
亜硫酸ナトリウム 0.10g 0.50g
塩化カリウム 10.0g −
4,5−ジヒドロキシベンゼン−
1,3−ジスルホン酸ナトリウム 0.50g 0.50g
ジナトリウム−N,N−ビス(スルホナート
エチル)ヒドロキシルアミン 8.5g 14.5g
4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−
(β−メタンスルホンアミドエチル)アニリン
・3/2硫酸塩・モノハイドレード 10.0g 22.0g
炭酸カリウム 26.3g 26.3g
水を加えて全量 1000mL 1000mL
pH(25℃、硫酸とKOHで調整)10.35 12.6
【0223】
【0224】
[リンス液] [タンク液] [補充液]
塩素化イソシアヌール酸ナトリウム 0.02g 0.02g
脱イオン水(電導度5μS/cm以下)1000mL 1000mL
pH(25℃) 6.5 6.5
【0225】
【化38】
【0226】
同様に、各塗布試料を35℃30%RHの雰囲気下に十分放置して、その環境のまま、高照度露光用感光計(山下電装(株)製HIE型)を用いて、グレー発色のセンシトメトリー用の10−6秒高照度階調露光を与えた。露光した試料は、露光してから5秒後に発色現像処理aを行った。処理後の各試料のイエロー発色濃度を測定し、10−6秒高照度露光の特性曲線を得た。感度は、最低発色濃度より1.0高い発色濃度を与える露光量の逆数をもって定義した。
【0227】
試料B(111)を10℃30%RH雰囲気下で露光し、発色現像処理aで処理した場合の感度を100とし、それぞれの相対感度=S10℃30%RHを表3に示した。さらに各試料に対して、10℃30%RH雰囲気下で露光し、発色現像処理aで処理した場合と35℃30%RH雰囲気下で露光し、発色現像処理aで処理した時の感度差 ΔS(35℃ - 10℃)を最低発色濃度より1.0高い発色濃度を与える露光量の逆数の差を対数で表し、表3に示した。ΔS(35 ℃ - 10℃)の値が小さいほど露光環境変動(露光温度)における写真性への影響が少ない事を示す。
【0228】
【表3】
【0229】
(評価2:処理液変動安定性)
更に、処理液変動の安定性を調べるために、25℃30%RH雰囲気下に十分放置した試料をその環境のまま、高照度露光用感光計(山下電装(株)製HIE型)を用いて、グレー発色のセンシトメトリー用の10−6秒高照度階調露光を与えた。次に露光した試料は下記に示す発色現像処理bおよびcを行った。
【0230】
以下に処理工程を示す。
[発色現像処理b]
[発色現像処理b]とは、発色現像処理aのランニング液調製において、感光材料1m2あたりの補充量を15%アップしたことのみ異なる設定で連続処理(ランニングテスト)を行い、この時得られたランニング液を用いた処理を発色現像処理bとした。
処理処方で、以下に処理処方を示す。
処理工程 温度 時間 補充量*
発色現像 45.0℃ 16秒 51.8mL
漂白定着 40.0℃ 16秒 35mL
リンス1 40.0℃ 8秒 −
リンス2 40.0℃ 8秒 −
リンス3 ** 40.0℃ 8秒 −
リンス4 38.0℃ 8秒 121mL
乾燥 80.0℃ 16秒
【0231】
[発色現像処理c]
同様に[発色現像処理c]とは、発色現像処理aのランニング液調製において、感光材料1m2あたりの補充量を15%低下したことのみ異なる設定で連続処理(ランニングテスト)を行い、この時得られたランニング液を用いた処理を発色現像処理cとした。
処理処方で、以下に処理処方を示す。
処理工程 温度 時間 補充量*
発色現像 45.0℃ 16秒 38.3mL
漂白定着 40.0℃ 16秒 35mL
リンス1 40.0℃ 8秒 −
リンス2 40.0℃ 8秒 −
リンス3 ** 40.0℃ 8秒 −
リンス4 38.0℃ 8秒 121mL
乾燥 80.0℃ 16秒
【0232】
各処理後の各試料のイエロー発色濃度を測定して、特性曲線を得た。ここで階調(γ)を最低発色濃度+1.4の発色濃度を与える点と最低発色濃度+2.0の発色濃度を与える点の露光量の逆数の差を対数で表したのもと定義した。発色現像処理bで処理した場合の階調(γ)と、発色現像処理cで処理した場合の階調(γ)との階調変動率Δγ=(γ(b)/γ(c))を表3に示す。Δγの値が1.0に近いほど処理変動における影響が少ないことを示す。
【0233】
表3の結果から明らかなように、本発明の試料B(132)、B(133)およびB(134)は、高感で露光環境温度の変化に対して安定で、しかも処理変動においても階調の変動が少なく、安定なプリント濃度が得られる。
【0234】
実施例2
試料B(111)とは、写真構成層を下記のように変えて薄層化した試料を作製した。
第一層(青感性乳剤層)
乳剤B−11 0.14
ゼラチン 0.75
イエローカプラー(ExY−2) 0.34
色像安定剤(Cpd−1) 0.04
色像安定剤(Cpd−2) 0.02
色像安定剤(Cpd−3) 0.04
色像安定剤(Cpd−8) 0.01
溶媒(Solv−1) 0.13
【0235】
第二層(混色防止層)
ゼラチン 0.60
混色防止剤(Cpd−19) 0.09
色像安定剤(Cpd−5) 0.007
色像安定剤(Cpd−7) 0.007
紫外線吸収剤(UV−C) 0.05
溶媒(Solv−5) 0.11
【0236】
第三層(緑感性乳剤層)
乳剤G−1 0.12
ゼラチン 0.73
マゼンタカプラー(ExM) 0.15
紫外線吸収剤(UV−A) 0.05
色像安定剤(Cpd−2) 0.02
色像安定剤(Cpd−7) 0.008
色像安定剤(Cpd−8) 0.07
色像安定剤(Cpd−9) 0.03
色像安定剤(Cpd−10) 0.009
色像安定剤(Cpd−11) 0.0001
溶媒(Solv−3) 0.06
溶媒(Solv−4) 0.11
溶媒(Solv−5) 0.06
【0237】
第四層(混色防止層)
ゼラチン 0.48
混色防止層(Cpd−4) 0.07
色像安定剤(Cpd−5) 0.006
色像安定剤(Cpd−7) 0.006
紫外線吸収剤(UV−C) 0.04
溶媒(Solv−5) 0.09
【0238】
第五層(赤感性乳剤層)
乳剤R−1 0.10
ゼラチン 0.59
シアンカプラー(ExC−2) 0.13
シアンカプラー(ExC−3) 0.03
色像安定剤(Cpd−7) 0.01
色像安定剤(Cpd−9) 0.04
色像安定剤(Cpd−15) 0.19
色像安定剤(Cpd−18) 0.04
紫外線吸収剤(UV−7) 0.02
溶媒(Solv−5) 0.09
【0239】
第六層(紫外線吸収層)
ゼラチン 0.32
紫外線吸収剤(UV−C) 0.42
溶媒(Solv−7) 0.08
第七層(保護層)
ゼラチン 0.70
ポリビニルアルコールのアクリル変性共重合体
(変性度17%) 0.04
流動パラフィン 0.01
界面活性剤(Cpd−13) 0.01
ポリジメチルシロキサン 0.01
二酸化珪素 0.003
【0240】
【化39】
【0241】
以上のようにして得られた試料を、試料B(211)とした。試料211とは青感性乳剤層の乳剤をそれぞれ表4のように替えた試料も同様に作製し試料B(212)〜B(254)とした。
【0242】
【表4】
【0243】
実施例1と同様に評価1及び2を行い、試料B(211)のB感度を100としたときの相対感度=S10℃30%RHと、ΔS(35℃-10℃)と階調変動率Δγ=(γ(b)/γ(c))を求め、表5に示した。
【0244】
【表5】
【0245】
表5の結果から明らかなように、本発明の試料B(232)、B(233)およびB(234)は、高感で露光環境温度の変化に対して安定で、しかも処理変動においても階調の変動が少なく、安定なプリント濃度が得られる。
【0246】
実施例3
試料B(111)〜B(154)、B(211)〜B(254)を用いて、レーザー走査露光によって画像形成を行った。
レーザー光源としては、半導体レーザーGaAlAs(発振波長 808.5nm)を励起光源としたYAG固体レーザー(発振波長 946nm)を反転ドメイン構造を有するLiNbO3のSHG結晶により波長変換して取り出した473nmと、半導体レーザーGaAlAs(発振波長 808.7nm)を励起光源としたYVO4固体レーザー(発振波長 1064nm)を反転ドメイン構造を有するLiNbO3のSHG結晶により波長変換して取り出した532nmと、AlGaInP(発振波長 約680nm:松下電産製タイプNo.LN9R20)とを用いた。3色のそれぞれのレーザー光はポリゴンミラーにより走査方向に対して垂直方向に移動し、試料上に、順次走査露光できるようにした。半導体レーザーの温度による光量変動は、ペルチェ素子を利用して温度が一定に保たれることで抑えられている。実効的なビーム径は、80μmで、走査ピッチは42.3μm(600dpi)であり、1画素あたりの平均露光時間は、1.7×10-7秒であった。
塗布試料B(111)〜B(154)は、感光計を上記レーザー走査露光に置き換え実施例1と同様な評価を、塗布試料B(211)〜B(243)も同様に感光計を上記レーザー走査露光に置き換え実施例2と同様な評価を行ったところ、実施例1、2の結果と同様、本発明の試料は高感度な乳剤であり露光時の温度変動や処理液の変動に対して依存性が少なく、レーザー走査露光を用いた画像形成にも適していることが分かった。
【0247】
【発明の効果】
本発明によれば、超迅速処理を行なった場合にも常に安定した写真性能が得られる、特にカラープリントに適したハロゲン化銀カラー写真感光材料が得られる。
Claims (7)
- 支持体上にイエロー発色青感光性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ発色緑感光性ハロゲン化銀乳剤層、シアン発色赤感光性ハロゲン化銀乳剤層および非感光性の親水性コロイド層の少なくとも一層ずつからなる写真構成層を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、該イエロー発色青感性ハロゲン化銀乳剤層中に、塩化銀含有率が90モル%以上で、かつ0.02〜1モル%の沃化銀を含有し、立方体辺長として0.51μm以下の{100}面を持つ立方体あるいは14面体の結晶粒子から成り、下記一般式(I)で表される少なくとも一種の増感色素によって分光増感されたハロゲン化銀乳剤を含むことを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
一般式(I)
ただし、X 1 とX 2 とが同時に硫黄原子であって、かつY 1 とY 2 とが同時にベンゼン環を形成するのに必要な原子群である場合、Y 1 は他の5〜6員の炭素環または複素環と縮合したベンゼン環を形成するのに必要な原子群を表す。 - 前記一般式(I)で表される増感色素が下記一般式(II)または(III)で表されることを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
一般式(II)
一般式(III)
- 前記一般式(I)で表される増感色素が下記一般式(IV)で表されることを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
一般式(IV)
ただし、X 31 とX 32 とが同時に硫黄原子である場合、V 31 、V 32 、V 33 およびV 34 のうちいずれかの隣接する2つの置換基は互いに連結して縮合環を形成する。 - 前記写真構成層中の総塗設銀量が0.2g/m2以上0.5g/m2以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
- 前記写真構成層中の総塗設ゼラチン量が3g/m2以上6g/m2以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料を、画像情報に基づいて変調した光ビームにより走査露光した後に現像処理することを特徴とするカラー画像形成方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料を、発色現像処理時間20秒以下で処理することを特徴とするカラー画像形成方法。
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