JP4291966B2 - ハロゲン化銀乳剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はハロゲン化銀写真感光材料に関するものである。特に、ドーパント技術を用いた高感度、高階調で相反則不軌のないハロゲン化銀写真感光材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ハロゲン化銀粒子を改質し、ハロゲン化銀写真感光材料全体の性能を期待するように改善する技術の一つとして、銀イオンとハライドイオン以外の物質(ドーパント)を組み込む技術(ドープ技術)がある。特に遷移金属イオンのドープ技術については多くの研究がなされてきた。遷移金属イオンはハロゲン化銀粒子中にドーパントして入り込んだ時はその添加量が極めて僅かであっても写真性能を効果的に変えることが一般に認められている。
【0003】
ハロゲン化銀乳剤の写真特性をさらに効果的に改善するためには、遷移金属イオンばかりではなく、遷移金属錯体をハロゲン化銀粒子中にドープする技術も知られてきた。ドープ技術で得られる効果は、1)高感度化、2)相反則不軌改良、3)硬調化である。高感化乳剤を得る目的では、特開平2−20854号公報、特公平7−113743号公報に開示されている様に、シアン化物イオンを配位子とするVIII族金属錯体がドーパントとして用いられる。中でも鉄、ルテニウムを中心金属としたヘキサシアノ錯体は効果的な高感化ドーパントである。高階調な乳剤を得るためには、特開昭63−184740号、特開平1−285941号、同2−20852号、同2−20855号各公報に開示される様に、ヘキサクロロルテニウム、ヘキサクロロロジウム、ヘキサクロロレニウムを用いる技術や欧州特許033642号、同0606895号、同0610670号に開示されるように遷移金属錯体の配位子としてニトロシルまたはチオニトロシルを用いる技術がある。
【0004】
これらに対して相反則不軌、特に、高照度相反則不軌を改良するためにはイリジウム錯体が用いられる。イリジウム錯体をハロゲン化銀粒子にドープした例は特開平1−285941号、同3−118583号、同4−213449号、同4−278940号、同5−66511号、同5−313277号、同6−82947号、同6−235995号、同7−72569号、同7−72576号、同11−202440号、同11−295841号各公報等に開示されており、イリジウム錯体の配位子としてフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、H2O、シアノ、ニトロシル、チオニトロシルが用いられている。さらに、米国特許5,360,712号には有機化合物を配位子としたドーパント技術が開示されており、チアゾールを配位子とするイリジウム錯体が高照度不軌を効果的に改善することが記載されている。
【0005】
これらの例の様にドーパントとしてイリジウム錯体を用いることにより効果的に高照度相反則不軌が改良されるが、これまでの例では高照度不軌を完全に改良しようとすると何れの場合も低照度側でドープすることによっての減感や軟調化を伴い、低照度側の写真特性を変えないまま高照度でおこる相反則不軌を改良した例はなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明では、ドーパント技術によって、低照度側で減感や軟調化することなく幅広い露光照度にわたり相反則不軌がないハロゲン化銀写真感光材料を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
(1)下記式から選択されるイリジウム錯体の少なくとも1種をハロゲン化銀粒子中に含むことを特徴とするハロゲン化銀乳剤。
【0008】
【化1】
【0009】
【化2】
【0010】
(2) 前記イリジウム錯体の有機配位子が、塩化物イオンCl - の体積に対して220%以上300%以下の体積を持ち、かつ、該配位子における中心金属イリジウムに最も近い原子(すなわち中心金属に配位した原子)から最も遠い距離にある原子までの距離が5.1Å以下の配位子であることを特徴とする上記(1)に記載のハロゲン化銀乳剤。
【0011】
(3) 前記イリジウム錯体の有機配位子が、N−C−S結合を持つ化合物であることを特徴とする上記(1)又は2)に記載のハロゲン化銀乳剤。
【0012】
(4) 前記イリジウム錯体の有機配位子の骨格がチアジアゾールまたはチアトリアゾールであり、その置換基として−CH 3 ,−F,−Clおよび−Brから選ばれる基を有することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のハロゲン化銀乳剤。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
ハロゲン化銀写真乳剤の高照度相反則不軌は、高照度露光時にハロゲン化銀粒子内に多量の光電子が発生し、潜像分散が起こることにより発生する。従って、高照度不軌は、高照度露光により多量に発生した光電子を一時的に伝導帯から待避させ、ある時間滞在した後に再び伝導帯に放出する機能をハロゲン化銀粒子内に持たせることにより改良することが出来る。これは高照度露光時のハロゲン化銀粒子内の状況を低照度露光時と同じ状況に作り替えることに相当する。この光電子を一時的に待避させる機能、即ち、光電子を一時的に捕獲する機能は遷移金属錯体をドープすることで実現することが出来る(この様な機能を有するドーパントを電子徐放ドーパントあるいは照度変換ドーパントと呼ぶ)。
【0015】
高照度相反則不軌を改良する遷移金属錯体としてはこれまでヘキサクロロイリジウムが用いられて来た。ヘキサクロロイリジウムを用いた場合には中心金属であるイリジウムの最低空軌道に露光によって生じた光電子が捕獲され、ある一定時間この軌道に滞在した後再び伝導帯に放出する。ヘキサクロロイリジウムは多量に生じた光電子を一時待避させる優れた機能を持つが、電子捕獲準位での滞在時間が長いために、高照度不軌は改良するものの露光から現像までの時間に依存した感度の増加(潜像増感)が生じ写真性能が不安定になると同時に減感作用も合わせ持つ。これに対して、先に挙げた開示例のIrCl5 (thiazole)は適度な電子捕獲時間を有するために潜像増感を生じず相反則不軌を改良出来るが、低照度露光時に軟調化する作用があり、相反則不軌改良ドーパントとして完全ではない。
【0016】
この減感や軟調化を防ぐためにはドーパント近傍の粒子構造が不安定にならないことが必要であり、これを実現するためにはドープする錯体の配位子として嵩高い配位子を用いる必要がある。錯体中の配位子としては、Cl- イオンが単独で置き換わるばかりではなく、配位子がCl- イオンとこれに隣接するAg+ イオンに置き換わるサイズと形状を合わせ持つ配位子が好ましい。これを満たす配位子としては、塩化物イオンの体積に対して220%以上300%以下の体積を持ち、かつ、中心金属へ配位した原子から最も遠い距離にある原子までの距離が5.1Å以下の配位子であることが好ましい。
【0017】
ドーパントのハロゲン化銀粒子への取り込み効率や格子のひずみによる減感の観点から、より好ましくは錯体中の配位子がCl- の体積に対して220%以上265%以下の体積を持ち、かつ、中心金属への配位原子から最も遠い位置にある原子までの距離が4.7Å以下であることである。分子体積が300%を超える様な大きさの場合、もしくは配位原子から最も遠い原子が5.1Åより大きく離れている場合にはハロゲン化銀粒子への取り込み率が下がり、この点で好ましくない。
【0018】
分子体積および原子間距離は種々の方法で計算出来る。本発明ではHypercube, Inc.社製ソフトウエアHyperChem R6を用い配位子に用いる分子単体の構造を分子力場計算により構造最適化し、その時の分子体積および原子間距離をJ. Am. Chem. Soc., 1983, 105, 5220−5225等に記載の方法により計算した。分子力場計算にはソフトウエア内のパラメータをそのまま使用した。配位子に用いた分子の構造最適化はMOPACやab initio等の量子化学計算でも行うことが出来、PM3やGussian 94で構造最適化した場合には計算方法や使用する基底関数等によって本発明での計算結果と数%のずれが生じるが、本発明における好ましい範囲を乱す結果にはならなかった。
【0019】
上記の条件を満たす配位子として好ましくは、配位子中の炭素数が3以下の有機化合物または無機化合物である。ここで無機化合物とは分子中に炭素−炭素結合、炭素−水素結合、炭素−窒素−水素結合を持たない化合物を指す。本発明における好ましい配位子は球状ではなく、粒子中に与えられた長方形の空間を出来る限り満たすことの出来る配位子であるため、長方形の空間の短軸方向へ広がりがあることは好ましくない。配位子骨格中に炭素−炭素結合が多くなると必然的に炭素−水素結合を導入することになり、長方形の短軸方向の嵩が増加し粒子にさらなる歪みを与えることになり好ましくない。具体的に好ましくは配位子の骨格がチアジアゾール、チアトリアゾール、オキサジアゾール、又はトリアゾールである化合物であり、置換基として好ましくは、−F、−Cl、−Br、−OH、−SH、−CN、−NO2 、−NH2 、−CH3 、−C2 H5 、−CHCH2 、−CF3 、−CH2 OH、−CH2 Cl、−CNHNH2 、−SCN、−SO2 、−SO3 H、−OCH3 、−SCH3 、−SeCH3 、−NHCH3 、−N(CH3 )2 、−N(CN)2 、−NHSO3 H、−COOH、−COCH3 、−CONH2 、−CO2 NH2 、−CSCH3 、−OCOCH3 、−SOCH3 、−SCOCH3 、−SO2 CH3 、−SO2 CF3 、−SO2 NH2 、であり、中でも好ましくは−F、−Cl、−Br、−OH、−SH、−CN、−NO2 、−NH2 、−CH3 、−C2 H5 、−CHCH2 、−CF3 、−CH2 OH、−CH2 Cl、−SCN、−SO2 、−SO3 H、−OCH3 、−SCH3 、−SeCH3 、−NHCH3 、−N(CN)2 、−COOH、−COCH3 、−CONH2 、−CSCH3 、−SOCH3 、−SO2 CF3 、−SO2 NH2 であり、特に好ましくは−CH3 、−CF3 、−F、−Cl、−Br、である。これらの置換基は1つの配位子に内に同一のものを用いてもよく、異なるものを用いてもよい。また下記一般式Iで表される化合物もまた好ましく用いることができる配位子である。
【0020】
【化1】
【0021】
式中、Xは酸素、硫黄、セレン、またはテルルを表し、これらの原子には−CH3、−CF3、−OH、−SH、−CN、−NO2、−NH2等の置換基1つが結合してもよい。Yは炭素、窒素、硫黄またはリンを表す。Rは−F、−Cl、−Br、−OH、−SH、−CN、−NO2、−NH2、−CH3、−C2H5、−CF3、−CH2OH、−CH2Cl、−SCN、−SO2、−SO3H、−OCH3、−SCH3、−SeCH3、−NHCH3、−COOHであることが好ましく、中でもより好ましくは−F、−Cl、−Br、−OH、−SH、−CN、−NO2、−NH2、−CH3、−CF3を表し、すべて同じ置換基であっても異なる複数の置換基を用いてもよい。nは2または3を表す。イリジウム錯体を好ましく用いる。1つの錯体分子中に上記の配位子は1つから6つ用いることが出来るが、好ましくは1つまたは2つである。上記の配位子以外の配位子はハロゲン化銀粒子に対してアンカーの役割を果たすものが好ましく、具体的にはF-、Cl-、Br-、CN-、NO2 -、OCN-、SCN-、N3 -、OH-、H2O、NH3、CO、が好ましく、最も好ましくはCl-、Br-、CN-、SCN-である。
以下に本発明におけるイリジウム錯体を示す。
【0022】
【化2】
【0023】
【化3】
【0024】
本発明において、イリジウム錯体はハロゲン化銀粒子を形成及び/または成長させる過程でハロゲン化銀粒子の内部及び/または表面に好ましく組み込むことがことができる。これらの錯体をハロゲン化銀粒子に組み込む場合、粒子内部に均一に存在させることも好ましいが、特開平4−208936号、特開平2−125245号、特開平3−188437号各公報に開示されている様に、粒子表面層のみに存在させることも好ましく、粒子内部のみに錯体を存在させ粒子表面には錯体を含有しない層を付加することも好ましい。最も好ましくは粒子体積で粒子の中心部から50%より外側に組み込み粒子表面に錯体を露出させないように98%で組み込みを止めることであるが、特に好ましくは粒子体積の80%から98%の間の層に組み込むことである。また、米国特許第5,252,451号および5,256,530号明細書に開示されているように、錯体を粒子内に組み込んだ微粒子で物理熟成して粒子表面相を改質することも好ましい。さらに、これらの方法を組み合わせて用いることも出来、複数種の錯体を1つのハロゲン化銀粒子内に組み込んでもよい。上記の錯体を含有させる位置のハロゲン組成には特に制限はなく、塩化銀層、塩臭化銀層、臭化銀層、沃塩化銀層、沃臭化銀層に何れに錯体を含有させることも好ましい。
【0025】
本発明において上記の錯体は銀1モルあたり1×10-10モルから1×10-4モルの添加量を好ましく用いることが出来、より好ましくは銀1モルあたり1×10-9モルから1×10-5モルである。これらの錯体はハロゲン化銀粒子形成時に反応溶液中に直接添加するか、ハロゲン化銀粒子を形成するためのハロゲン化物水溶液中、あるいはそれ以外の溶液中に添加し、粒子形成反応溶液に添加することにより、ハロゲン化銀粒子内に組み込むが好ましい。さらにこれらの方法を組み合わせてハロゲン化銀粒子内へ含有させることも好ましい。また、中心金属であるイリジウムイオンにはIII価のものを用いてもIV価のものを用いてもよいが、好ましくはIII価のものである。臭化物イオンを配位子とするイリジウムIII価錯体は酸化を受けやすく、乳剤への添加溶液中には酸化剤を添加しておくことが好ましい。 添加する酸化剤として好ましくはレダクトン類、ヒドラジン類、ヒドロキシルアミン類、ヒドロキシセミカルバジド類、ヒドロキシウレタン類、ヒドロキシウレア類、ヒドロキサム酸類、ビタミンE類似骨格を有する化合物、フェニレンジアミン類、フェニドン類、ヒドラジド類、またはフェノール類である。最も好ましくはレダクトン類である。
【0026】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤中のハロゲン化銀粒子は、好ましくは実質的に{100}面を持つ立方体または14面体の結晶粒子(これらは粒子頂点が丸みを帯び、さらに高次の面を有していてもよい)または8面体の結晶粒子、または全投影面積の50%以上が{100}面または{111}面からなるアスペクト比2以上の平板状粒子が好ましい。アスペクト比とは、投影面積に相当する円の直径を粒子の厚さで割った値である。本発明では、立方体または{100}面を主平面とする平板状粒子または{111}面を主平面とする平板状粒子が好ましく適用される。
【0027】
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤としては、塩化銀、臭化銀、沃臭化銀、塩(沃)臭化銀乳剤等が用いられるが、迅速処理性の観点からは、塩化銀含有率が95モル%以上の塩化銀、塩臭化銀、塩沃化銀、または塩臭沃化銀乳剤が好ましく、更に塩化銀含有率が98モル%以上の塩化銀、塩臭化銀、塩沃化銀、または塩臭沃化銀乳剤が好ましい。このようなハロゲン化銀乳剤の中でも、ハロゲン化銀粒子のシェル部分に、全銀モルあたり0.01〜0.50モル%、より好ましくは0.05〜0.40モル%の沃塩化銀相を有するものも高感度が得られ、高照度露光適性に優れるため好ましい。また、ハロゲン化銀粒子の表面に全銀モルあたり0.2〜5モル%、より好ましくは0.5〜3モル%の臭化銀局在相を有するものが、高感度が得られ、しかも写真性能の安定化が図れることから特に好ましい。
【0028】
本発明の乳剤が沃化銀を含有する場合、沃化物イオンの導入は、沃化物塩の溶液を単独で添加させるか、或いは銀塩溶液と高塩化物塩溶液の添加と併せて沃化物塩溶液を添加しても良い。後者の場合は、沃化物塩溶液と高塩化物塩溶液を別々に、またはヨウ化物塩と高塩化物塩の混合溶液として添加しても良い。沃化物塩は、アルカリもしくはアルカリ土類沃化物塩のような溶解性塩の形で添加する。或いは米国特許第5,389,508号明細書に記載される有機分子から沃化物イオンを開裂させることで沃化物を導入することもできる。また別の沃化物イオン源として、微小沃化銀粒子を用いることもできる。
【0029】
沃化物塩溶液の添加は、粒子形成の一時期に集中して行っても良く、またある一定期間かけて行っても良い。高塩化物乳剤への沃化物イオンの導入位置は、高感度で低被りな乳剤を得る上で制限される。沃化物イオンの導入は、乳剤粒子のより内部に行うほど感度の増加が小さい。故に沃化物塩溶液の添加は、粒子体積の50%より外側が好ましく、より好ましくは70%より外側から、最も好ましくは80%より外側から行うのが良い。また沃化物塩溶液の添加は、好ましくは粒子体積の98%より内側で、最も好ましくは96%より内側で終了するのが良い。沃化物塩溶液の添加は、粒子表面から少し内側で終了することで、より高感度で低被りな乳剤を得ることができる。
【0030】
粒子内の深さ方向への沃化物イオン濃度の分布は、エッチング/TOF−SIMS(Time of Flight − Secondary Ion Mass Spectrometry)法により、例えばPhi Evans社製型TOF−SIMSを用いて測定できる。TOF−SIMS法については、具体的には日本表面科学会編「表面分析技術選書 二次イオン質量分析法」丸善株式会社(1999年発行)に記載されている。エッチング/TOF−SIMS法で乳剤粒子を解析すると、沃化物塩溶液の添加を粒子の内側で終了しても、粒子表面に向けて沃化物イオンがしみ出していることが分析できる。本発明の乳剤が沃化銀を含有する場合、エッチング/TOF−SIMS法による分析で、沃化物イオンは粒子表面で濃度極大を有し、内側に向けて沃化物イオン濃度が減衰していることが好ましい。
【0031】
本発明の乳剤が臭化銀局在相を含有する場合、臭化銀含有率が少なくとも10モル%以上の臭化銀局在相を粒子表面にエピタキシャル成長させてつくることが好ましい。臭化銀局在相の臭化銀含有率は、10〜60モル%の範囲が好ましく、20〜50モル%の範囲が最も好ましい。臭化銀局在相は、本発明におけるハロゲン化銀粒子を構成する全銀量の0.1〜5モル%の銀から構成されていることが好ましく、0.3〜4モル%の銀から構成されていることが更に好ましい。臭化銀局在相中には、塩化第1イリジウム(III)、臭化第1イリジウム(III)、塩化第2イリジウム(IV)、ヘキサクロロイリジウム(III)酸ナトリウム、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸カリウム、ヘキサアンミンイリジウム(IV)塩、トリオキザラトイリジウム(III)塩、トリオキザラトイリジウム(IV)塩等の第VIII族金属錯イオンを含有させることも好ましい。これらの化合物の添加量は目的に応じて広範囲にわたるが、ハロゲン化銀1モルに対して10-9〜10-2モルが好ましい。
【0032】
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤に含まれるハロゲン化銀粒子の平均粒子サイズ(粒子の投影面積と等価な円の直径を以て粒子サイズとし、その数平均をとったもの)は、0.1μm〜2μmが好ましい。また、それらの粒子サイズ分布は変動係数(粒子サイズ分布の標準偏差を平均粒子サイズで除したもの)20%以下、望ましくは15%以下、更に好ましくは10%以下の所謂単分散なものが好ましい。このとき、広いラチチュードを得る目的で上記の単分散乳剤を同一層にブレンドして使用することや、重層塗布することも好ましく行われる。
【0033】
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤には、感光材料の製造工程、保存中あるいは写真処理中のかぶりを防止する、あるいは写真性能を安定化させる目的で種々の化合物あるいはそれ等の前駆体を添加することができる。これらの化合物の具体例は前出の特開昭62−215272号公報明細書の第39頁〜第72頁に記載のものが好ましく用いられる。更にEP0447647号に記載された5−アリールアミノ−1,2,3,4−チアトリアゾール化合物(該アリール残基には少なくとも一つの電子吸引性基を持つ)も好ましく用いられる。
【0034】
また、本発明において、ハロゲン化銀乳剤の保存性を高めるため、特開平11−109576号に記載のヒドロキサム酸誘導体、特開平11−327094号に記載のカルボニル基に隣接して、両端がアミノ基もしくはヒドロキシル基が置換した二重結合を有す環状ケトン類(特に一般式(S1)で表されるもので、段落番号0036〜0071は本願の明細書に取り込むことができる。)、特開平11−143011号に記載のスルホ置換のカテコールやハイドロキノン類(例えば、4,5−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸、2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゼンジスルホン酸、3,4−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、2,3−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、2,5−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、3,4,5−トリヒドロキシベンゼンスルホン酸およびこれらの塩など)、特開平11−102045号の一般式(I)〜(III)で表される水溶性還元剤は本発明においても好ましく使用される。
【0035】
分光増感は、本発明の感光材料における各層の乳剤に対して所望の光波長域に分光感度を付与する目的で行われる。
【0036】
本発明の感光材料において、青、緑、赤領域の分光増感に用いられる分光増感色素としては例えば、F.M.Harmer著 Heterocyclic compounds−Cyanine dyes and related compounds (John Wiley & Sons [New York,London] 社刊1964年)に記載されているものを挙げることができる。具体的な化合物の例ならびに分光増感法は、前出の特開昭62−215272号公報の第22頁右上欄〜第38頁に記載のものが好ましく用いられる。また、特に塩化銀含有率の高いハロゲン化銀乳剤粒子の赤感光性分光増感色素としては特開平3−123340号に記載された分光増感色素が安定性、吸着の強さ、露光の温度依存性等の観点から非常に好ましい。
【0037】
これらの分光増感色素の添加量は場合に応じて広範囲にわたり、ハロゲン化銀1モルあたり0.5×10-6モル〜1.0×10-2モルの範囲が好ましい。更に好ましくは、1.0×10-6モル〜5.0×10-3モルの範囲である。
【0038】
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤は、通常化学増感を施される。化学増感法については、不安定硫黄化合物の添加に代表される硫黄増感、金増感に代表される貴金属増感、あるいは還元増感等を単独もしくは併用して用いることができる。化学増感に用いられる化合物については、特開昭62−215272号の第18頁右下欄から第22頁右上欄に記載のものが好ましく用いられる。このうち、特に、金増感を施したものであることが好ましい。これは金増感を施すことにより、レーザー光等によって走査露光したときの写真性能の変動を更に小さくすることができることによる。
【0039】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤に金増感を施すには、種々の無機金化合物や無機配位子を有する金(I)錯体及び有機配位子を有する金(I)化合物を利用することが好ましい。無機金化合物としては、例えば塩化金酸もしくはその塩、無機配位子を有する金(I)錯体としては、例えばジチオシアン酸金(I)カリウム等のジチオシアン酸金化合物やジチオ硫酸金(I)3ナトリウム等のジチオ硫酸金化合物等の化合物を用いることが好ましい。
【0040】
有機配位子を有する金(I)化合物としては、特開平4−267249号に記載のビス金(I)メソイオン複素環類、例えば四フッ化硼酸金(I)ビス(1,4,5−トリメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオラート)、特開平11−218870号に記載の有機メルカプト金(I)錯体、例えばカリウム ビス(1−[3−(2−スルホナートベンズアミド)フェニル]−5−メルカプトテトラゾールカリウム塩)オーレート(I)5水和物、特開平4−268550号に記載の窒素化合物アニオンが配位した金(I)化合物、例えば、ビス(1−メチルヒダントイナート)金(I)ナトリウム塩四水和物、を用いることが好ましい。また、米国特許第3、503、749号に記載されている金(I)チオレート化合物、特開平8−69074号、特開平8−69075号、特開平9−269554号に記載の金化合物、米国特許第5620841号、同5912112号、同5620841号、同5939245号、同5912111号に記載の化合物も好ましく用いることができる。
【0041】
これらの化合物の好ましい添加量は場合に応じて広範囲に変わり得るがハロゲン化銀1モルあたり5×10-7〜5×10-3モル、好ましくは5×10-6〜5×10-4モルである。
【0042】
また、コロイド状硫化金を用いることも好ましく、その製造方法はリサーチ・ディスクロージャー(Reserch Disclosure,37154)、ソリッド ステート イオニクス(Solid State Ionics )第79巻、60〜66頁、1995年刊、Compt.Rend.Hebt.Seances Acad.Sci.Sect.B第263巻、1328頁、1966年刊等に記載されている。コロイド状硫化金としてさまざまなサイズのものを利用でき、粒径50nm以下のものを用いることが好ましい。添加量は場合に応じて広範囲に変わり得るがハロゲン化銀1モルあたり金原子として5×10-7〜5×10-3モルが好ましく、より好ましくは5×10-6〜5×10-4モルである。
【0043】
本発明においては、金増感を更に他の増感法、例えば硫黄増感、セレン増感、テルル増感、還元増感あるいは金化合物以外を用いた貴金属増感等と組み合わせてもよい。
【0044】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料には、従来公知の写真用素材や添加剤を使用できる。例えば写真用支持体としては、透過型支持体や反射型支持体を用いることができる。透過型支持体としては、セルロースナイトレートフィルムやポリエチレンテレフタレートなどの透明フィルム、更には2,6−ナフタレンジカルボン酸(NDCA)とエチレングリコール(EG)とのポリエステルやNDCAとテレフタル酸とEGとのポリエステル等に磁性層などの情報記録層を設けたものが好ましく用いられる。反射型支持体としては特に複数のポリエチレン層やポリエステル層でラミネートされ、このような耐水性樹脂層(ラミネート層)の少なくとも一層に酸化チタン等の白色顔料を含有する反射支持体が好ましい。
【0045】
本発明においてさらに好ましい反射支持体としては、ハロゲン化銀乳剤層を設ける側の紙基体上に微小空孔を有するポリオレフィン層を有しているものが挙げられる。ポリオレフィン層は多層から成っていてもよく、その場合、好ましくはハロゲン化銀乳剤層側のゼラチン層に隣接するポリオレフィン層は微小空孔を有さず(例えばポリプロピレン、ポリエチレン)、紙基体上に近い側に微小空孔を有するポリオレフィン(例えばポリプロピレン、ポリエチレン)から成るものがより好ましい。紙基体および写真構成層の間に位置するこれら多層もしくは一層のポリオレフィン層の密度は0.40〜1.0g/mlであることが好ましく、0.50〜0.70g/mlがより好ましい。また、紙基体および写真構成層の間に位置するこれら多層もしくは一層のポリオレフィン層の厚さは10〜100μmが好ましく、15〜70μmがさらに好ましい。また、ポリオレフィン層と紙基体の厚さの比は0.05〜0.2が好ましく、0.1〜0.5がさらに好ましい。
【0046】
また、上記紙基体の写真構成層とは逆側(裏面)にポリオレフィン層を設けることも、反射支持体の剛性を高める点から好ましく、この場合、裏面のポリオレフィン層は表面が艶消しされたポリエチレンまたはポリプロピレンが好ましく、ポリプロピレンがより好ましい。裏面のポリオレフィン層は5〜50μmが好ましく、10〜30μmがより好ましく、さらに密度が0.7〜1.1g/mlであることが好ましい。本発明の反射支持体において、紙基体上に設けるポリオレフィン層に関する好ましい態様については、特開平10−333277号、同10−333278号、同11−52513号、同11−65024号、EP0880065号、およびEP0880066号に記載されている例が挙げられる。
【0047】
更に前記の耐水性樹脂層中には蛍光増白剤を含有するのが好ましい。また、蛍光増白剤は感光材料の親水性コロイド層中に分散してもよい。蛍光増白剤として、好ましくは、ベンゾオキサゾール系、クマリン系、ピラゾリン系が用いることができ、更に好ましくは、ベンゾオキサゾリルナフタレン系及びベンゾオキサゾリルスチルベン系の蛍光増白剤である。使用量は、特に限定されていが、好ましくは1〜100mg/m2 である。耐水性樹脂に混合する場合の混合比は、好ましくは樹脂に対して0.0005〜3質量%であり、更に好ましくは0.001〜0.5質量%である。
【0048】
反射型支持体としては、透過型支持体、または上記のような反射型支持体上に、白色顔料を含有する親水性コロイド層を塗設したものでもよい。また、反射型支持体は、鏡面反射性または第2種拡散反射性の金属表面をもつ支持体であってもよい。
【0049】
また、本発明に係わる感光材料に用いられる支持体としては、ディスプレイ用に白色ポリエステル系支持体又は白色顔料を含む層がハロゲン化銀乳剤層を有する側の支持体上に設けられた支持体を用いてもよい。更に鮮鋭性を改良するために、アンチハレーション層を支持体のハロゲン化銀乳剤層塗布側又は裏面に塗設するのが好ましい。特に反射光でも透過光でもディスプレイが観賞できるように、支持体の透過濃度を0.35〜0.8の範囲に設定するのが好ましい。
【0050】
本発明に係わる感光材料には、画像のシャープネス等を向上させる目的で親水性コロイド層に、欧州特許EP0,337,490A2号の第27〜76頁に記載の、処理により脱色可能な染料(なかでもオキソノール系染料)を感光材料の680nmに於ける光学反射濃度が0.70以上になるように添加したり、支持体の耐水性樹脂層中に2〜4価のアルコール類(例えばトリメチロールエタン)等で表面処理された酸化チタンを12質量%以上(より好ましくは14質量%以上)含有させるのが好ましい。
【0051】
本発明に係わる感光材料には、イラジエーションやハレーションを防止したり、セーフライト安全性等を向上させる目的で親水性コロイド層に、欧州特許EP0337490A2号明細書の第27〜76頁に記載の、処理により脱色可能な染料(中でもオキソノール染料、シアニン染料)を添加することが好ましい。さらに、欧州特許EP0819977号明細書に記載の染料も本発明に好ましく添加される。
【0052】
これらの水溶性染料の中には使用量を増やすと色分離やセーフライト安全性を悪化するものもある。色分離を悪化させないで使用できる染料としては、特開平5−127324号、同5−127325号、同5−216185号に記載された水溶性染料が好ましい。
【0053】
本発明においては、水溶性染料の代わり、あるいは水溶性染料と併用しての処理で脱色可能な着色層が用いられる。用いられる処理で脱色可能な着色層は、乳剤層に直かに接してもよく、ゼラチンやハイドロキノンなどの処理混色防止剤を含む中間層を介して接するように配置されていても良い。この着色層は、着色された色と同種の原色に発色する乳剤層の下層(支持体側)に設置されることが好ましい。各原色毎に対応する着色層を全て個々に設置することも、このうちに一部のみを任意に選んで設置することも可能である。また複数の原色域に対応する着色を行った着色層を設置することも可能である。着色層の光学反射濃度は、露光に使用する波長域(通常のプリンター露光においては400nm〜700nmの可視光領域、走査露光の場合には使用する走査露光光源の波長)において最も光学濃度の高い波長における光学濃度値が0.2以上3.0以下であることが好ましい。さらに好ましくは0.5以上2.5以下、特に0.8以上2.0以下が好ましい。
【0054】
着色層を形成するためには、従来公知の方法が適用できる。例えば、特開平2−282244号3頁右上欄から8頁に記載された染料や、特開平3−7931号3頁右上欄から11頁左下欄に記載された染料のように固体微粒子分散体の状態で親水性コロイド層に含有させる方法、アニオン性色素をカチオンポリマーに媒染する方法、色素をハロゲン化銀等の微粒子に吸着させて層中に固定する方法、特開平1−239544号に記載されているようなコロイド銀を使用する方法などである。色素の微粉末を固体状で分散する方法としては、たとえば、少なくともpH6以下では実質的に水不溶性であるが、少なくともpH8以上では実質的に水溶性である微粉末染料を含有させる方法が特開平2−308244号の第4〜13頁に記載されている。また、例えば、アニオン性色素をカチオンポリマーに媒染する方法としては、特開平2−84637号の第18〜26頁に記載されている。光吸収剤としてのコロイド銀の調製法については米国特許第2,688,601号、同3,459,563号に示されている。これらの方法のなかで微粉末染料を含有させる方法、コロイド銀を使用する方法などが好ましい。
【0055】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、カラーネガフィルム、カラーポジフィルム、カラー反転フィルム、カラー反転印画紙、カラー印画紙等に用いられるが、中でもカラー印画紙として用いるのが好ましい。
カラー印画紙は、イエロー発色性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ発色性ハロゲン化銀乳剤層およびシアン発色性ハロゲン化銀乳剤層をそれぞれ少なくとも1層ずつ有してなることが好ましく、一般には、これらのハロゲン化銀乳剤層は支持体から近い順にイエロー発色性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ発色性ハロゲン化銀乳剤層、シアン発色性ハロゲン化銀乳剤層である。
【0056】
しかしながら、これとは異なった層構成を取っても構わない。イエロ−カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層は支持体上のいずれの位置に配置されてもかまわないが、該イエローカプラー含有層にハロゲン化銀平板粒子を含有する場合は、マゼンタカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層またはシアンカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも一層よりも支持体から離れた位置に塗設されていることが好ましい。また、発色現像促進、脱銀促進、増感色素による残色の低減の観点からは、イエロ−カプラー含有ハロゲン化銀乳剤層は他のハロゲン化銀乳剤層より、支持体から最も離れた位置に塗設されていることが好ましい。更に、Blix退色の低減の観点からはシアンカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層は他のハロゲン化銀乳剤層の中央の層が好ましく、光退色の低減の観点からはシアンカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層は最下層が好ましい。また、イエロー、マゼンタおよびシアンのそれぞれの発色性層は2層または3層からなってもよい。例えば、特開平4−75055号、同9−114035号、同10−246940号、米国特許第5,576,159号等に記載のように、ハロゲン化銀乳剤を含有しないカプラー層をハロゲン化銀乳剤層に隣接して設け、発色層とすることも好ましい。
【0057】
本発明において適用されるハロゲン化銀乳剤やその他の素材(添加剤など)および写真構成層(層配置など)、並びにこの感光材料を処理するために適用される処理法や処理用添加剤としては、特開昭62−215272号、特開平2−33144号、欧州特許EP0,355,660A2号に記載されているもの、特に欧州特許EP0,355,660A2号に記載されているものが好ましく用いられる。更には、特開平5−34889号、同4−359249号、同4−313753号、同4−270344号、同5−66527号、同4−34548号、同4−145433号、同2−854号、同1−158431号、同2−90145号、同3−194539号、同2−93641号、欧州特許公開第0520457A2号等に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料やその処理方法も好ましい。
【0058】
特に、本発明においては、前記の反射型支持体やハロゲン化銀乳剤、更にはハロゲン化銀粒子中にドープされる異種金属イオン種、ハロゲン化銀乳剤の保存安定剤またはカブリ防止剤、化学増感法(増感剤)、分光増感法(分光増感剤)、シアン、マゼンタ、イエローカプラーおよびその乳化分散法、色像保存性改良剤(ステイン防止剤や褪色防止剤)、染料(着色層)、ゼラチン種、感光材料の層構成や感光材料の被膜pHなどについて、表1〜2の特許に記載のものが特に好ましく適用できる。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
本発明において用いられるシアン、マゼンタおよびイエローカプラーとしては、その他、特開昭62−215272号の第91頁右上欄4行目〜121頁左上欄6行目、特開平2−33144号の第3頁右上欄14行目〜18頁左上欄末行目と第30頁右上欄6行目〜35頁右下欄11行目やEP0355,660A2号の第4頁15行目〜27行目、5頁30行目〜28頁末行目、45頁29行目〜31行目、47頁23行目〜63頁50行目に記載のカプラーも有用である。
【0062】
また、本発明はWO−98/33760の一般式(II)および(III)、特開平10−221825号の一般式(D)で表される化合物を添加しても良く、好ましい。
【0063】
以下に更に具体的に説明する。本発明に使用しうるシアンカプラーとしては、ピロロトリアゾール系カプラーが好ましく用いられ、特開平5−313324号の一般式(I)又は(II)で表されるカプラーおよび特開平6−347960号の一般式(I)で表されるカプラー並びにこれらの特許に記載されている例示カプラーが特に好ましい。また、フェノール系、ナフトール系のシアンカプラーも好ましく、例えば、特開平10−333297号に記載の一般式(ADF)で表されるシアンカプラーが好ましい。
【0064】
上記以外のシアンカプラーとしては、欧州特許EP0488248号明細書及びEP0491197A1号明細書に記載のピロロアゾール型シアンカプラー、米国特許第5,888,716号に記載の2,5−ジアシルアミノフェノールカプラー、米国特許第4,873,183号、同第4,916,051号に記載の6位に電子吸引性基、水素結合基を有するピラゾロアゾール型シアンカプラー、特に、特開平8−171185号、同8−311360号、同8−339060号に記載の6位にカルバモイル基を有するピラゾロアゾール型シアンカプラーも好ましい。
【0065】
また、特開平2−33144号公報に記載のジフェニルイミダゾール系シアンカプラーの他に、欧州特許EP0333185A2号明細書に記載の3−ヒドロキシピリジン系シアンカプラー(なかでも具体例として列挙されたカプラー(42)の4当量カプラーに塩素離脱基をもたせて2当量化したものや、カプラー(6)や(9)が特に好ましい)や特開昭64−32260号公報に記載された環状活性メチレン系シアンカプラー(なかでも具体例として列挙されたカプラー例3、8、34が特に好ましい)、欧州特許EP0456226A1号明細書に記載のピロロピラゾール型シアンカプラー、欧州特許EP0484909号に記載のピロロイミダゾール型シアンカプラーを使用することもできる。
【0066】
本発明に用いられるマゼンタカプラーとしては、前記の表の公知文献に記載されたような5−ピラゾロン系マゼンタカプラーやピラゾロアゾール系マゼンタカプラーが用いられるが、中でも色相や画像安定性、発色性等の点で特開昭61−65245号に記載されたような2級又は3級アルキル基がピラゾロトリアゾール環の2、3又は6位に直結したピラゾロトリアゾールカプラー、特開昭61−65246号に記載されたような分子内にスルホンアミド基を含んだピラゾロアゾールカプラー、特開昭61−147254号に記載されたようなアルコキシフェニルスルホンアミドバラスト基を持つピラゾロアゾールカプラーや欧州特許第226,849A号や同第294,785A号に記載されたような6位にアルコキシ基やアリールオキシ基をもつピラゾロアゾールカプラーの使用が好ましい。特に、マゼンタカプラーとしては特開平8−122984号に記載の一般式(M−I)で表されるピラゾロアゾールカプラーが好ましく、該特許の段落番号0009〜0026はそのまま本願に適用され、本願の明細書の一部として取り込まれる。これに加えて、欧州特許第854384号、同第884640号に記載の3位と6位の両方に立体障害基を有するピラゾロアゾールカプラーも好ましく用いられる。
【0067】
また、イエローカプラーとしては、前記表中に記載の化合物の他に、欧州特許EP0447969A1号明細書に記載のアシル基に3〜5員の環状構造を有するアシルアセトアミド型イエローカプラー、欧州特許EP0482552A1号明細書に記載の環状構造を有するマロンジアニリド型イエローカプラー、米国特許第5,118,599号明細書に記載されたジオキサン構造を有するアシルアセトアミド型イエローカプラーが好ましく用いられる。その中でも、アシル基が1−アルキルシクロプロパン−1−カルボニル基であるアシルアセトアミド型イエローカプラー、アニリドの一方がインドリン環を構成するマロンジアニリド型イエローカプラーの使用が特に好ましい。これらのカプラーは、単独あるいは併用することができる。
【0068】
本発明に使用するカプラーは、前出表中記載の高沸点有機溶媒の存在下で(または不存在下で)ローダブルラテックスポリマー(例えば米国特許第4,203,716号)に含浸させて、または水不溶性かつ有機溶媒可溶性のポリマーとともに溶かして親水性コロイド水溶液に乳化分散させることが好ましい。好ましく用いることのできる水不溶性かつ有機溶媒可溶性のポリマーは、米国特許第4,857,449号明細書の第7欄〜15欄及び国際公開WO88/00723号明細書の第12頁〜30頁に記載の単独重合体または共重合体が挙げられる。より好ましくはメタクリレート系あるいはアクリルアミド系ポリマー、特にアクリルアミド系ポリマーの使用が色像安定性等の上で好ましい。
【0069】
本発明においては公知の混色防止剤を用いることができるが、その中でも以下に挙げる特許に記載のものが好ましい。例えば、特開平5−333501号に記載の高分子量のレドックス化合物、WO98/33760号、米国特許第4,923,787号等に記載のフェニドンやヒドラジン系化合物、特開平5−249637号、特開平10−282615号および独国特許第19629142A1号等に記載のホワイトカプラーを用いることができる。また、特に現像液のpHを上げ、現像の迅速化を行う場合には独国特許第19618786A1号、欧州特許第839623A1号、欧州特許第842975A1号、独国特許19806846A1号および仏国特許第2760460A1号等に記載のレドックス化合物を用いることも好ましい。
【0070】
本発明においては紫外線吸収剤としてモル吸光係数の高いトリアジン骨核を有する化合物を用いることが好ましく、例えば、以下の特許に記載の化合物を用いることができる。特開昭46−3335号、同55−152776号、特開平5−197074号、同5−232630号、同5−307232号、同6−211813号、同8−53427号、同8−234364号、同8−239368号、同9−31067号、同10−115898号、同10−147577号、同10−182621号、独国特許第19739797A号、欧州特許第711804A号および特表平8−501291号等に記載されている化合物である。
【0071】
本発明に係わる感光材料に用いることのできる結合剤又は保護コロイドとしては、ゼラチンを用いることが有利であるが、それ以外の親水性コロイドを単独であるいはゼラチンとともに用いることができる。好ましいゼラチンとしては、鉄、銅、亜鉛、マンガン等の不純物として含有される重金属は、好ましくは5ppm以下、更に好ましくは3ppm以下である。 また、感光材料中に含まれるカルシウム量は、好ましくは20mg/m2 以下、更に好ましくは10mg/m2 以下、最も好ましくは5mg/m2 以下である。
【0072】
本発明においては、親水性コロイド層中に繁殖して画像を劣化させる各種の黴や細菌を防ぐために、特開昭63−271247号公報に記載のような防菌・防黴剤を添加するのが好ましい。
【0073】
さらに、感光材料の被膜pHは4.0〜7.0が好ましく、より好ましくは4.0〜6.5である。
【0074】
本発明においては、感光材料の塗布安定性向上、静電気発生防止、帯電量調節等の点から界面活性剤を感光材料に添加することができる。界面活性剤としてはアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ベタイン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤があり、例えば特開平5−333492号に記載のものが挙げられる。本発明に用いる界面活性剤としてはフッ素原子含有の界面活性剤が好ましい。特に、フッ素原子含有界面活性剤を好ましく用いることができる。
【0075】
これらの界面活性剤の感光材料への添加量は特に限定されるものではないが、一般的には1×10-5〜1g/m2 、好ましくは1×10-4〜1×10-1g/m2 、更に好ましくは1×10-3〜1×10-2g/m2 である。
これらのフッ素原子含有界面活性剤は単独で用いても、従来公知の他の界面活性剤と併用してもかまわないが、好ましくは従来公知の他の界面活性剤との併用である。
【0076】
本発明の感光材料は、通常のネガプリンターを用いたプリントシステムに使用される以外に、陰極線(CRT)を用いた走査露光方式にも適している。陰極線管露光装置は、レーザーを用いた装置に比べて、簡便でかつコンパクトであり、低コストになる。また、光軸や色の調整も容易である。
【0077】
画像露光に用いる陰極線管には、必要に応じてスペクトル領域に発光を示す各種発光体が用いられる。例えば赤色発光体、緑色発光体、青色発光体のいずれか1種、あるいは2種以上が混合されて用いられる。スペクトル領域は、上記の赤、緑、青に限定されず、黄色、橙色、紫色或いは赤外領域に発光する蛍光体も用いられる。特に、これらの発光体を混合して白色に発光する陰極線管がしばしば用いられる。
【0078】
感光材料が異なる分光感度分布を有する複数の感光性層を持ち、陰極性管も複数のスペクトル領域の発光を示す蛍光体を有する場合には、複数の色を一度に露光、即ち陰極線管に複数の色の画像信号を入力して管面から発光させてもよい。各色ごとの画像信号を順次入力して各色の発光を順次行わせ、その色以外の色をカットするフィルムを通して露光する方法(面順次露光)を採っても良く、一般には、面順次露光の方が、高解像度の陰極線管を用いることができるため、高画質化のためには好ましい。
【0079】
本発明の感光材料は、ガスレーザー、発光ダイオード、半導体レーザー、半導体レーザーあるいは半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーと非線形光学結晶を組合わせた第二高調波発光光源(SHG)等の単色高密度光を用いたデジタル走査露光方式が好ましく使用される。システムをコンパクトで、安価なものにするために半導体レーザー、半導体レーザーあるいは固体レーザーと非線形光学結晶を組合わせた第二高調波発生光源(SHG)を使用することが好ましい。特にコンパクトで、安価、更に寿命が長く安定性が高い装置を設計するためには半導体レーザーの使用が好ましく、露光光源の少なくとも一つは半導体レーザーを使用することが好ましい。
【0080】
このような走査露光光源を使用する場合、本発明の感光材料の分光感度極大波長は、使用する走査露光用光源の波長により任意に設定することができる。半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーあるいは半導体レーザーと非線形光学結晶を組合わせて得られるSHG光源では、レーザーの発振波長を半分にできるので、青色光、緑色光が得られる。従って、感光材料の分光感度極大は通常の青、緑、赤の3つの波長領域に持たせることが可能である。このような走査露光における露光時間は、画素密度を400dpiとした場合の画素サイズを露光する時間として定義すると、好ましい露光時間としては10-4秒以下、更に好ましくは10-6秒以下である。
【0081】
本発明に適用できる好ましい走査露光方式については、前記の表に掲示した特許に詳しく記載されている。
また本発明の感光材料を処理するには、特開平2−207250号の第26頁右下欄1行目〜34頁右上欄9行目、及び特開平4−97355号の第5頁左上欄17行目〜18頁右下欄20行目に記載の処理素材や処理方法が好ましく適用できる。また、この現像液に使用する保恒剤としては、前記の表に掲示した特許に記載の化合物が好ましく用いられる。
【0082】
本発明は迅速処理適性を有する感光材料にも好ましく適用される。発色現像時間とは、感光材料が発色現像液中に入ってから次の処理工程の漂白定着液に入るまでの時間をいう。例えば、自動現像機などで処理される場合には、感光材料が発色現像液中に浸漬されている時間(いわゆる液中時間)と、感光材料が発色現像液を離れ次の処理工程の漂白定着浴に向けて空気中を搬送されている時間(いわゆる空中時間)との両者の合計を発色現像時間という。同様に、漂白定着時間とは、感光材料が漂白定着液中に入ってから次の水洗又は安定浴に入るまでの時間をいう。また、水洗又は安定化時間とは、感光材料が水洗又は安定化液中に入ってから乾燥工程に向けて液中にある時間(いわゆる液中時間)をいう。
【0083】
本発明において迅速処理を行う場合には、発色現像時間は好ましくは60秒以下、更に好ましくは50秒以下6秒以上、より好ましくは30秒以下6秒以上である。同様に、漂白定着時間は好ましくは60秒以下、更に好ましくは50秒以下6秒以上、より好ましくは30秒以下6秒以上である。また、水洗又は安定化時間は、好ましくは150秒以下、更に好ましくは130秒以下6秒以上である。
【0084】
本発明の感光材料を露光後、現像する方法としては、従来のアルカリ剤と現像主薬を含む現像液で現像する方法、現像主薬を感光材料に内蔵し、現像主薬を含まないアルカリ液などのアクチベーター液で現像する方法などの湿式方式のほか、処理液を用いない熱現像方式などを用いることができる。特に、アクチベーター方法は、現像主薬を処理液に含まないため、処理液の管理や取扱いが容易であり、また廃液処理時の負荷が少なく環境保全上の点からも好ましい方法である。アクチベーター方法において、感光材料中に内蔵される現像主薬またはその前駆体としては、例えば、特開平8−234388号、同9−152686号、同9−152693号、同9−211814号、同9−160193号に記載されたヒドラジン型化合物が好ましい。
【0085】
また、感光材料の塗布銀量を低減し、過酸化水素を用いた画像増幅処理(補力処理)する現像方法も好ましく用いられる。特に、この方法をアクチベーター方法に用いることは好ましい。具体的には、特開平8−297354号、同9−152695号に記載された過酸化水素を含むアクチベーター液を用いた画像形成方法が好ましく用いられる。アクチベーター方法において、アクチベーター液で処理後、通常脱銀処理されるが、低銀量の感光材料を用いた画像増幅処理方法では、脱銀処理を省略し、水洗または安定化処理といった簡易な方法を行うことができる。また、感光材料から画像情報をスキャナー等で読み取る方式では、撮影用感光材料などの様に高銀量の感光材料を用いた場合でも、脱銀処理を不要とする処理形態を採用することができる。
【0086】
本発明で用いられるアクチベーター液、脱銀液(漂白/定着液)、水洗および安定化液の処理素材や処理方法は公知のものを用いることができる。好ましくは、リサーチ・ディスクロージャーItem 36544(1994年9月)第536頁〜第541頁、特開平8−234388号に記載されたものを用いることができる。
【0087】
本発明の感光材料をプリンター露光する際、米国特許第4,880,726号に記載のバンドストップフィルターを用いることが好ましい。これによって光混色が取り除かれ、色再現性が著しく向上する。
本発明においては、欧州特許EP0789270A1や同EP0789480A1号に記載のように、画像情報を付与する前に、予め、黄色のマイクロドットパターンを前露光し、複写規制を施しても構わない。
【0088】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の範囲はそれらに限定されるものではない。
実施例1
「乳剤1−1;塩化銀立方体試料の調製(1)」(比較例)
石灰処理ゼラチンの5%水溶液に塩化ナトリウム5.6gを加え、1Nの硫酸42.8mLとN,N’−ジメチルイミダゾリジン−2−チオン(1%水溶液)を1.1mL添加した。この水溶液に硝酸銀0.21モル含む水溶液と塩化ナトリウムを0.21モル含む水溶液とを撹拌しながら61℃で添加混合した。続いて61℃を維持したまま、硝酸銀1.69モルを含む水溶液と塩化ナトリウムを1.69モルを撹拌しながら添加混合した。更に61℃のまま硝酸銀0.02モル含む水溶液と塩化ナトリウムを0.02モル含む水溶液撹拌しつつ、0.006モルのヨウ化カリウム水溶液を添加混合した。続いて硝酸銀0.19モルを含む水溶液と塩化ナトリウムを0.19モルとを撹拌しながら61℃で添加混合した。その後40℃にて沈降水洗を行い脱塩を施した。さらに石灰処理ゼラチン168.0gを加え、乳剤のpHとpAgをそれぞれ5.6と7.3に調整した。電子顕微鏡写真から、粒子の形状は立方体であり、平均粒子サイズは0.62μm、変動係数は10%であった。この乳剤に金増感剤(四フッ化硼酸金(I)ビス(1,4,5−トリメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオラート))1.5×10-5モル/モルAg、硫黄増感剤(チオ硫酸ナトリウム)6×10-7モル/モルAg、青感性分光増感色素(A及びB)2.3×10-4モル/モルAg及び1.5×10-4モル/モルAgを添加し、60℃にて最適に化学増感及び分光増感し、さらに1−(5−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール4.4×10-4モル/モルAgを添加することで乳剤1−1を得た。
【0089】
「乳剤1−2;[IrCl6 ]3-をドープした塩化銀立方体試料の調製」(比較例)
乳剤1−1の乳剤にヘキサクロロイリジウムを粒子体積で粒子中心部分から92〜97%層に乳剤に添加した銀量に対して2×10-8モルを添加したことを除いて乳剤1−1と同様に乳剤1−2を調製した。
【0090】
「乳剤1−3;[IrCl5 (thiazole)]2-をドープした塩化銀立方体試料の調製」(比較例)
乳剤1−1の乳剤に、ペンタクロロ(チアゾール)イリジウムを92〜97%層に乳剤に添加した銀量に対して3×10-7モルを添加したことを除き乳剤1−1と同様に乳剤1−3を調製した。
【0091】
「乳剤1−4;[IrCl5 (thiourea)]2-をドープした塩化銀立方体試料の調製」(比較例)
乳剤1−1の乳剤に、ペンタクロロ(チアゾール)イリジウムを92〜97%層に乳剤に添加した銀量に対して6×10-7モルを添加したことを除き乳剤1−1と同様に乳剤1−4を調製した。
【0092】
「乳剤1−5;[IrCl5 (S−Me−thiourea)]2-をドープした塩化銀立方体試料の調製」(本発明)
乳剤1−1の乳剤に、ペンタクロロ(チオ尿素)イリジウムまたはペンタクロロ(S−メチルチオ尿素)イリジウムをそれぞれ粒子体積で粒子中心部分から92〜97%の層に乳剤に添加した銀量に対して6×10-7モル添加したことを除いて乳剤1−1と同様に乳剤1−5を調製した。
【0093】
「乳剤1−6、1−7;[IrCl5 (S=P(NH2 )2 (OH))]2-、[IrCl5 (2,5−(CH3 )2 −thiadiazole)]2-をドープした塩化銀立方体試料の調製」(本発明)
乳剤1−1の乳剤に、ペンタクロロ(ジアミノヒドロキシチオホスホン酸)イリジウムまたはペンタクロロ(2,5−ジメチル−1,3,4−チアジアゾール)イリジウムを粒子体積で粒子中心部分から92〜97%層に乳剤に添加した銀量に対して1×10-6モルをそれぞれ添加したことを除き乳剤1−1と同様に乳剤1−6および1−7を調製した。
【0094】
「乳剤1−8、乳剤1−9;[IrCl5 (5−Cl−thiatriazole)]2-、[IrCl5 (2−CH3−5−Cl−thiadiazole)]2-をドープした塩化銀立方体試料の調製」(本発明)
乳剤1−1の乳剤に、ペンタクロロ(5−クロロ−1,2,3,4−チアトリアゾール)イリジウムまたはペンタクロロ(2−メチル−5−クロロ−1,3,4−チアジアゾール)イリジウムを粒子体積で粒子中心部分から92〜97%層に乳剤に添加した銀量に対して3×10-7モルをそれぞれ添加したことを除き乳剤1−1と同様に乳剤1−8および1−9を調製した。
【0095】
「乳剤1−10」
[IrCl5 (2−F−5−Cl−thiadiazole)]2-をドープした塩化銀立方体試料の調製」(本発明)
乳剤1−1の乳剤にペンタクロロ(2−フルオロ−5−クロロ−1,3,4−チアジアゾール)イリジウムを粒子体積で粒子中心部分から92〜97%層に乳剤に添加した銀量に対して6×10-6モルを添加したことを除き乳剤1−1と同様に乳剤1−10を調製した。
【0096】
これらの乳剤を紙の両面をポリエチレン樹脂で被覆してなる支持体の表面に、コロナ放電処理を施した後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含むゼラチン下塗層を設け、さらに第一層〜第七層の写真構成層を順次塗設して、以下に示す層構成のハロゲン化銀カラー写真感光材料の試料(101)〜(110)を作製した。各写真構成層用の塗布液は、以下のようにして調製した。
【0097】
第一層塗布液調製
イエローカプラー(ExY)57g、色像安定剤(Cpd−1)7g、色像安定剤(Cpd−2)4g、色像安定剤(Cpd−3)7g、色像安定剤(Cpd−8)2gを溶媒(Solv−1)21g及び酢酸エチル80mlに溶解し、この液を4gのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含む23.5質量%ゼラチン水溶液220g中に高速攪拌乳化機(ディゾルバー)で乳化分散し、水を加えて900gの乳化分散物Aを調製した。
一方、前記乳化分散物Aと乳剤1−1とを混合溶解し、後記組成となるように第一層塗布液を調製した。乳剤塗布量は、銀量換算塗布量を示す。
【0098】
第二層〜第七層用の塗布液も第一層塗布液と同様の方法で調製した。各層のゼラチン硬化剤としては、1−オキシ−3,5−ジクロロ−s−トリアジンナトリウム塩(H−1)、(H−2)、(H−3)を用いた。また、各層にAb−1、Ab−2、Ab−3、及びAb−4をそれぞれ全量が15.0mg/m2 、60.0mg/m2 、5.0mg/m2 及び10.0mg/m2 となるように添加した。
【0099】
【化4】
【0100】
緑及び赤感性乳剤層の塩臭化銀乳剤には、以下の分光増感色素をそれぞれ用いた。
緑感性乳剤層
【0101】
【化5】
【0102】
(増感色素Dをハロゲン化銀1モル当り、大サイズ乳剤に対しては3.0×10-4モル、小サイズ乳剤に対しては3.6×10-4モル、また、増感色素Eをハロゲン化銀1モル当り、大サイズ乳剤に対しては4.0×10-5モル、小サイズ乳剤に対しては7.0×10-5モル、また、増感色素Fをハロゲン化銀1モル当り、大サイズ乳剤に対しては2.0×10-4モル、小サイズ乳剤に対しては2.8×10-4モル添加した。)
赤感性乳剤層
【0103】
【化6】
【0104】
(増感色素GおよびHをそれぞれ、ハロゲン化銀1モル当り、大サイズ乳剤に対しては8.0×10-5モル、小サイズ乳剤に対しては10.7×10-5モル添加した。)
さらに、以下の化合物Iを赤感性乳剤層にハロゲン化銀1モル当たり3.0×10-3モル添加した。)
【0105】
【化7】
【0106】
また、緑感性乳剤層および赤感性乳剤層に対し、1−(3−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールを、それぞれハロゲン化銀1モル当り3.3×10-4モル、1.0×10-3モルおよび5.9×10-4モル添加した。さらに、第二層、第四層、第六層および第七層にも、それぞれ0.2mg/m2 、0.2mg/m2 、0.6mg/m2 、0.1mg/m2 となるように添加した。
【0107】
また、青感性乳剤層および緑感性乳剤層に対し、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデンを、それぞれハロゲン化銀1モル当たり、1×10-4モル、2×10-4モル添加した。
【0108】
また、赤感性乳剤層にメタクリル酸とアクリル酸ブチルの共重合体ラテックス(質量比1:1、平均分子量200,000〜400,000)を0.05g/m2 を添加した。
【0109】
また第二層、第四層および第六層にカテコール−3,5−ジスルホン酸二ナトリウムをそれぞれ6mg/m2 、6mg/m2 、18mg/m2 となるように添加した。
【0110】
また、イラジエーション防止のために、以下の染料(カッコ内は塗布量を表す)を添加した。
【0111】
【化8】
【0112】
(層構成)
以下に、各層の構成を示す。数字は塗布量(g/m2 )を表す。ハロゲン化銀乳剤は、銀換算塗布量を表す。
支持体
ポリエチレン樹脂ラミネート紙
[第一層側のポリエチレン樹脂に白色顔料(TiO2 ;含有率16質量%、ZnO;含有率4質量%)と蛍光増白剤(4,4’−ビス(5−メチルベンゾオキサゾリル)スチルベン。含有率0.03質量%)、青味染料(群青)を含む]
第一層(青感性乳剤層)
乳剤 1−1 0.24
ゼラチン 1.25
イエローカプラー(ExY) 0.57
色像安定剤(Cpd−1) 0.07
色像安定剤(Cpd−2) 0.04
色像安定剤(Cpd−3) 0.07
色像安定剤(Cpd−8) 0.02
溶媒(Solv−1) 0.21
【0113】
第二層(混色防止層)
ゼラチン 0.99
混色防止剤(Cpd−4) 0.09
色像安定剤(Cpd−5) 0.018
色像安定剤(Cpd−6) 0.13
色像安定剤(Cpd−7) 0.01
溶媒(Solv−1) 0.06
溶媒(Solv−2) 0.22
【0114】
第三層(緑感性乳剤層)
塩臭化銀乳剤Em−1(金硫黄増感された立方体、平均粒子サイズ0.45μmの大サイズ乳剤と0.35μmの小サイズ乳剤との1:3混合物(銀モル比)。粒子サイズ分布の変動係数はそれぞれ0.10と0.08。各サイズ乳剤とも沃化銀0.15モル%を粒子表面近傍に含有し、臭化銀0.4モル%を粒子表面に局在含有させた)0.14
ゼラチン 1.36
マゼンタカプラー(ExM) 0.15
紫外線吸収剤(UV−A) 0.14
色像安定剤(Cpd−2) 0.02
色像安定剤(Cpd−4) 0.002
色像安定剤(Cpd−6) 0.09
色像安定剤(Cpd−8) 0.02
色像安定剤(Cpd−9) 0.03
色像安定剤(Cpd−10) 0.01
色像安定剤(Cpd−11) 0.0001
溶媒(Solv−3) 0.11
溶媒(Solv−4) 0.22
溶媒(Solv−5) 0.20
【0115】
第四層(混色防止層)
ゼラチン 0.71
混色防止層(Cpd−4) 0.06
色像安定剤(Cpd−5) 0.013
色像安定剤(Cpd−6) 0.10
色像安定剤(Cpd−7) 0.007
溶媒(Solv−1) 0.04
溶媒(Solv−2) 0.16
【0116】
第五層(赤感性乳剤層)
塩臭化銀乳剤Em−2(金硫黄増感された立方体、平均粒子サイズ0.40μmの大サイズ乳剤と0.30μmの小サイズ乳剤との5:5混合物(銀モル比)。粒子サイズ分布の変動係数はそれぞれ0.09と0.11。各サイズ乳剤とも各サイズ乳剤とも沃化銀0.1モル%を粒子表面近傍に含有し、臭化銀0.8モル%を粒子表面に局在含有させた)0.12
ゼラチン 1.11
シアンカプラー(ExC−2) 0.13
シアンカプラー(ExC−3) 0.03
色像安定剤(Cpd−1) 0.05
色像安定剤(Cpd−6) 0.06
色像安定剤(Cpd−7) 0.02
色像安定剤(Cpd−9) 0.04
色像安定剤(Cpd−10) 0.01
色像安定剤(Cpd−14) 0.01
色像安定剤(Cpd−15) 0.12
色像安定剤(Cpd−16) 0.03
色像安定剤(Cpd−17) 0.09
色像安定剤(Cpd−18) 0.07
溶媒(Solv−5) 0.15
溶媒(Solv−8) 0.05
【0117】
第六層(紫外線吸収層)
ゼラチン 0.46
紫外線吸収剤(UV−B) 0.45
化合物(S1−4) 0.0015
溶媒(Solv−7) 0.25
第七層(保護層)
ゼラチン 1.00
ポリビニルアルコールのアクリル変性共重合体
(変性度17%) 0.04
流動パラフィン 0.02
界面活性剤(Cpd−13) 0.01
【0118】
【化9】
【0119】
【化10】
【0120】
【化11】
【0121】
【化12】
【0122】
【化13】
【0123】
【化14】
【0124】
【化15】
【0125】
【化16】
【0126】
【化17】
【0127】
【化18】
【0128】
同様にして試料(101)の乳剤1−1を乳剤1−2〜1−10に変更し試料(102)〜(110)を作製した。
【0129】
これらの試料の写真特性を調べるために以下のような実験を行った。
実験1:センシトメトリー
各塗布試料に対して感光計(富士写真フイルム(株)製FWH型)を用いて、センシトメトリー用の階調露光を与えた。SP−1フィルターを装着し低照度10秒間露光した。
【0130】
また、高照度露光用感光計(山下電装(株)製HIE型)を用いて、センシトメトリー用の階調露光を与えた。SP−1フィルターを装着し、高照度10−4秒間露光した。
露光後は、以下に示す発色現像処理Aを行った。
【0131】
以下に処理工程を示す。
[処理A]
上記感光材料101を127mm巾のロール状に加工し、富士写真フイルム(株)製ミニラボプリンタープロセッサー PP1258ARを用いて像様露光後、下記処理工程にてカラー現像タンク容量の2倍補充するまで、連続処理(ランニングテスト)を行った。このランニング液を用いた処理を処理Aとした。
【0132】
処理工程 温 度 時 間 補充量*
カラー現像 38.5 ℃ 45秒 45 mL
漂白定着 38.0 ℃ 45秒 35 mL
リンス(1) 38.0 ℃ 20秒 −
リンス(2) 38.0 ℃ 20秒 −
リンス(3) **38.0 ℃ 20秒 −
リンス(4) **38.0 ℃ 30秒 121 mL
*感光材料1m2 当たりの補充量
**富士写真フイルム社製 リンスクリーニングシステムRC50Dをリンス(3)に装置し、リンス(3)からリンス液を取り出し、ポンプにより逆浸透膜モジュール(RC50D)へ送る。同槽で得られた透過水はリンス(4)に供給し、濃縮水はリンス(3)に戻す。逆浸透モジュールへの透過水量は50〜300ミリリットル/分を維持するようにポンプ圧を調整し、1日10時間温調循環させた。(リンスは(1)から(4)へのタンク向流方式とした。)
【0133】
各処理液の組成は以下の通りである。
【0134】
【0135】
【0136】
以上の処理を行った試料(101)〜(110)についてイエロー発色濃度を測定した。カブリは試料の最低発色濃度で求め、感度はカブリ+1.0の発色濃度を得るのに必要な露光量の逆数をもって規定し、試料(101)の現像処理した感度を100としたときの相対値で表わした。各試料の相対感度を表3に示す。なお、Cl- に対する体積比率および配位子中の配位原子と中心金属から最も遠い原子との原子間距離は、前述のソフトウエアHyperChem R6を用いて求めた。
【0137】
【表3】
【0138】
表3から本発明のドーパントを使用した乳剤は既知のドーパントを使用した乳剤より10秒露光時の減感が少なく、高照度相反則特性に優れた乳剤となることがわかる。
【0139】
実施例2
「乳剤2−1;塩化銀立方体試料の調製(2)」(比較例)
実施例1に記載の乳剤1−1の調製法において、N,N’−ジメチルイミダゾリジン−2−チオン(1%水溶液)を添加せずかつ反応液の温度を55℃としたことを除いて乳剤1−1の調製方法と全く同様に粒子形成を行うことで、平均粒子サイズ0.38μm (変動係数は8%)の塩化銀立方体乳剤を得た。さらにこの乳剤に金増感剤(四フッ化硼酸金(I)ビス(1,4,5−トリメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオラート))2.4×10-5モル/モルAg、硫黄増感剤(チオ硫酸ナトリウム)1×10-7モル/モルAg、緑感性分光増感色素(D、E及びF) 3.6×10-4モル/モルAg、7.0×10-5 モル/モルAg及び2.8×10-4モル/モルAgを添加し、60℃にて最適に化学増感及び分光増感し、さらに1−(5−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール 4.4×10-4 モル/モルAgを添加することで乳剤2−1を得た。
【0140】
「乳剤2−2;[IrCl6 ]3-をドープした塩化銀立方体試料の調製」(比較例)
乳剤2−1の乳剤にヘキサクロロイリジウムを粒子体積で粒子中心部分から92〜97%層に乳剤に添加した銀量に対して4×10-8モルを添加したことを除いて乳剤2−1と同様に乳剤2−2を調製した。
【0141】
「乳剤2−3;[IrCl5 (H2 O)]2-をドープした塩化銀立方体試料の調製」(比較例)
乳剤2−1の乳剤に、ペンタクロロアクオイリジウムを92〜97%層に乳剤に添加した銀量に対して2×10-6モル添加したことを除き乳剤2−1と同様に乳剤2−3を調製した。
【0142】
「乳剤2−4;[IrCl5 (thia)]2-をドープした塩化銀立方体試料の調製」(比較例)
乳剤2−1の乳剤に、ペンタクロロ(チアゾール)イリジウムを92〜97%層に乳剤に添加した銀量に対して6×10-7モルを添加したことを除き乳剤2−1と同様に乳剤2−4を調製した。
【0143】
「乳剤2−5、2−6;[IrCl5 (thiourea)]2-、[IrCl5 (S−Me−thiourea)]2-をドープした塩化銀立方体試料の調製」(本発明)
乳剤2−1の乳剤に、ペンタクロロ(チオ尿素)イリジウムまたはペンタクロロ(S−メチルチオ尿素)イリジウムをそれぞれ粒子体積で粒子中心部分から92〜97%の層に乳剤に添加した銀量に対して1×10-6モル添加したことを除いて乳剤2−1と同様に乳剤2−5および2−6を調製した。
【0144】
「乳剤2−7、2−8;[IrCl5 (S=P(NH2 )2( OH))]2-、[IrCl5 (2,5−(CH3 )2 −thiadiazole)]2-をドープした塩化銀立方体試料の調製」(本発明)
乳剤2−1の乳剤に、ペンタクロロ(ジアミノヒドロキシチオホスホン酸)イリジウムまたはペンタクロロ(2,5−ジメチル−1,3,4−チアジアゾール)イリジウムを粒子体積で粒子中心部分から92〜97%層に乳剤に添加した銀量に対して2×10-6モルをそれぞれ添加したことを除き乳剤2−1と同様に乳剤2−7および2−8を調製した。
【0145】
「乳剤2−9、2−10」
[IrCl5 (5−Cl−thiatriazole)]2-、[IrCl5 (2−CH3 −5−Cl−thiadiazole)]2-をドープした塩化銀立方体試料の調製」(本発明)
乳剤2−1の乳剤に、ペンタクロロ(5−クロロ−1,2,3,4−チアトリアゾール)イリジウムまたはペンタクロロ(2−メチル−5−クロロ−1,3,4−チアジアゾール)イリジウムを粒子体積で粒子中心部分から92〜97%層に乳剤に添加した銀量に対して6×10-7モルをそれぞれ添加したことを除き乳剤2−1と同様に乳剤2−9および2−10を調製した。
【0146】
「乳剤2−11」
[IrCl5 (2−F−5−Cl−thiadiazole)]2-をドープした塩化銀立方体試料の調製(本発明)
乳剤2−1の乳剤にペンタクロロ(2−フルオロ−5−クロロ−1,3,4−チアジアゾール)イリジウムを粒子体積で粒子中心部分から92〜97%層に乳剤に添加した銀量に対して1×10-6モルを添加したことを除き乳剤2−1と同様に乳剤2−11を調製した。
【0147】
実施例1と全く同じ層構成で、第一層目の乳剤を乳剤2−1〜2−11に置き換えて、試料(201)〜(211)を作製した。この試料に対し実施例1及び下記の実験2を行った
【0148】
実験2 露光後の潜像安定性
各試料に対して、1/10秒露光後から処理Aまでの時間を変えて、センシトメトリーを測定し、7秒後に処理を施した時の感度と30分後に処理を施した時の感度差を求めた。
【0149】
これら2つの実験の結果を表4に示した。
【0150】
【表4】
【0151】
本発明の乳剤は10秒露光から10-4秒露光の間で高照度不軌が起こらず、かつ露光から処理までの時間が異なっても安定に同じ感度を与える(潜像安定性に優れている)ことがわかる。
【0152】
実施例3
実施例2の各試料の層構成を下記のように変えて薄層化した試料を調製し、試料(301)〜(311)を得た。この試料に実施例1の実験1及び実施例2の実験2を行ったところ、 実施例2の結果と同様、薄層化した試料の超迅速処理でも本発明の効果が認められ、良好な結果を得た。なお、層構成は試料(301)で示すが、試料(302)〜(311)は試料(301)の乳剤2−1を乳剤2−2〜2−11にそれぞれ変更したものである。
【0153】
試料301の作製
第一層(青感性乳剤層)
乳剤1−1 0.24
ゼラチン 1.25
イエローカプラー(ExY) 0.57
色像安定剤(Cpd−1) 0.07
色像安定剤(Cpd−2) 0.04
色像安定剤(Cpd−3) 0.07
色像安定剤(Cpd−8) 0.02
溶媒(Solv−1) 0.21
【0154】
第二層(混色防止層)
ゼラチン 0.60
混色防止剤(Cpd−19) 0.09
色像安定剤(Cpd−5) 0.007
色像安定剤(Cpd−7) 0.007
紫外線吸収剤(UV−C) 0.05
溶媒(Solv−5) 0.11
【0155】
第三層(緑感性乳剤層)
乳剤2−1 0.14
ゼラチン 0.73
マゼンタカプラー(ExM) 0.15
紫外線吸収剤(UV−A) 0.05
色像安定剤(Cpd−2) 0.02
色像安定剤(Cpd−7) 0.008
色像安定剤(Cpd−8) 0.07
色像安定剤(Cpd−9) 0.03
色像安定剤(Cpd−10) 0.009
色像安定剤(Cpd−11) 0.0001
溶媒(Solv−3) 0.06
溶媒(Solv−4) 0.11
溶媒(Solv−5) 0.06
【0156】
第四層(混色防止層)
ゼラチン 0.48
混色防止層(Cpd−4) 0.07
色像安定剤(Cpd−5) 0.006
色像安定剤(Cpd−7) 0.006
紫外線吸収剤(UV−C) 0.04
溶媒(Solv−5) 0.09
【0157】
第五層(赤感性乳剤層)
乳剤2−1 0.12
ゼラチン 0.59
シアンカプラー(ExC−2) 0.13
シアンカプラー(ExC−3) 0.03
色像安定剤(Cpd−7) 0.01
色像安定剤(Cpd−9) 0.04
色像安定剤(Cpd−15) 0.19
色像安定剤(Cpd−18) 0.04
紫外線吸収剤(UV−7) 0.02
溶媒(Solv−5) 0.09
【0158】
第六層(紫外線吸収層)
ゼラチン 0.32
紫外線吸収剤(UV−C) 0.42
溶媒(Solv−7) 0.08
第七層(保護層)
ゼラチン 0.70
ポリビニルアルコールのアクリル変性共重合体
(変性度17%) 0.04
流動パラフィン 0.01
界面活性剤(Cpd−13) 0.01
ポリジメチルシロキサン 0.01
二酸化珪素 0.003
【0159】
作製された各試料は、実施例1の実験1と同様に露光し、発色現像処理は、以下に示す現像処理Bに従い、超迅速処理を行った。
【0160】
[処理B]
上記の感光材料を127mm幅のロール状に加工し、処理時間、処理温度を変えられるように 富士写真フイルム(株)製ミニラボプリンタープロセッサーPP350を改造した実験処理装置用いて感光材料試料に平均濃度のネガティブフイルムから像様露光を行い、下記処理工程にて使用した発色現像補充液の容量が発色現像タンク容量の0.5倍となるまで連続処理(ランニングテスト)を行った。
【0161】
処理工程 温度 時間 補充量*
発色現像 45.0℃ 15秒 45mL
漂白定着 40.0℃ 15秒 35mL
リンス1 40.0℃ 8秒 −
リンス2 40.0℃ 8秒 −
リンス3** 40.0℃ 8秒 −
リンス4** 38.0℃ 8秒 121mL
乾燥 80℃ 15秒
(注)
* 感光材料1m2 あたりの補充量
**富士写真フイルム(株)製リンスクリーニングシステムRC50Dををリンス(3)に装着し、リンス(3)からリンス液を取り出してポンプにより逆浸透モジュール(RC50D)へ送る。同槽で送られた透過水はリンス(4)に供給し、濃縮液はリンス(3)に戻す。逆浸透モジュールへの透過水量は50〜300mL/分を維持するようにポンプ圧を調整し、1日10時間温調循環させた。リンスは(1)から(4)への4タンク向流方式とした。
【0162】
各処理液の組成は以下の通りである。
【0163】
【0164】
【0165】
【化19】
【0166】
実施例4
試料(301)〜(311)を用いて、レーザー走査露光によって画像形成を行った。レーザー光源としては、半導体レーザーGaAlAs(発振波長 808.5nm)を励起光源としたYAG固体レーザー(発振波長 946nm)を反転ドメイン構造を有するLiNbO3 のSHG結晶により波長変換して取り出した473nmと、半導体レーザーGaAlAs(発振波長 808.7nm)を励起光源としたYVO4 固体レーザー(発振波長 1064nm)を反転ドメイン構造を有するLiNbO3 のSHG結晶により波長変換して取り出した532nmと、AlGaInP(発振波長 約680nm:松下電産製タイプNo.LN9R20)とを用いた。3色のそれぞれのレーザー光はポリゴンミラーにより走査方向に対して垂直方向に移動し、試料上に、順次走査露光できるようにした。半導体レーザーの温度による光量変動は、ペルチェ素子を利用して温度が一定に保たれることで抑えられている。実効的なビーム径は、80μmで、走査ピッチは42.3μm(600dpi)であり、1画素あたりの平均露光時間は、1.7×10-7秒であった。
【0167】
露光後、発色現像処理Bにより処理を行ったところ、実施例2での高照度露光の結果と同様、本発明の試料(304)は高い感度を示し、レーザー走査露光を用いた画像形成にも適していることが分かった。
【0168】
【発明の効果】
本発明により、イリジウム錯体の配位子に錯体の軸位方向に嵩高い配位子を用いて、減感や軟調化を起こさず幅広い露光照度に渡って相反則不軌を改良し、潜像保存性を悪化させない乳剤を得ることが出来た。
Claims (4)
- 前記イリジウム錯体の有機配位子が、塩化物イオンCl - の体積に対して220%以上300%以下の体積を持ち、かつ、該配位子における中心金属イリジウムに最も近い原子(すなわち中心金属に配位した原子)から最も遠い距離にある原子までの距離が5.1Å以下の配位子であることを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀乳剤。
- 前記イリジウム錯体の有機配位子が、N−C−S結合を持つ化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のハロゲン化銀乳剤。
- 前記イリジウム錯体の有機配位子の骨格がチアジアゾールまたはチアトリアゾールであり、その置換基として−CH 3 ,−F,−Clおよび−Brから選ばれる基を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のハロゲン化銀乳剤。
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