JP4116358B2 - ハロゲン化銀乳剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハロゲン化銀乳剤に関し、詳しくは低被り、高感度、硬調で、高照度での相反則特性に優れ、かつ露光・現像時の条件の違いによる感度変動が小さく、耐湿潤摩耗性に優れるハロゲン化銀乳剤、及びその安定な製造方法及びこれを用いたハロゲン化銀カラー写真感光材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、カラー印画紙においては、高感度化、高画質化、処理時のタフネス等の性能に対する要求が強まっており、低被り、高感度で硬調な乳剤、保存時の感度変動の少ない乳剤、露光時の温度及び湿度条件の違いによる写真性変動の少ない乳剤、耐湿潤磨耗性に優れた乳剤が望まれている。一方で、最近ではレーザー走査露光装置の普及により、短時間かつ高照度露光適性も重要な性能の1つに挙げられる。レーザー走査露光では、露光の高速化及び解像度の向上が図れることが大きな特徴である。しかしながら、これをカラー印画紙に用いれば、今までにない非常に短時間(具体的には10-6秒)かつ高照度での露光適性が要求される。
【0003】
この様な要求に対し、化学増感法の果たす役割は大きいと考えられ、種々の貴金属増感法とカルコゲン増感法が提案されてきた。しかしその多くは、貴金属増感剤とカルコゲン増感剤とを併用するものであった。貴金族増感剤の改良は以下に金増感剤の例を示すように、極最近まで続けられている。
(金増感剤について)
金増感法は、高感度化や高照度露光適性を達成するために有効な手段となる。塩化金酸等のAu(III)化合物を用いることが古くから知られている。塩化金酸は水溶液中で十分に安定である反面、感度、階調、高照度露光適性、保存時の感度変動、耐湿潤磨耗性、露光時の温湿度環境に対するタフネス等の点で不十分な写真性であり、改良が望まれている。
金増感に用いる金化合物としてメソイオン配位子を含む金(I)化合物(以下メソイオン金(I)化合物と記す)が知られており、特開平4−267249号には高感度、硬調な乳剤製造に有用であることが開示されている。しかし、特開平11-218870号に開示されている様にメソイオン金(I)化合物は、溶液中での安定性に問題があることが知られている。溶液中での安定性は、品質の一定な乳剤の安定製造に欠かせない条件であること等から、改善が望まれていた。
この問題に対する解決策の一つとして、特開平11−218870号にはメルカプト化合物の金(I)錯体を利用する方法が提案されている。この金増感剤は溶液安定性の点で改良されているものの、依然として分解が起こる化合物であり、十分な解決策とはなっていない。また、耐湿潤磨耗性、露光時の温湿度環境にあり、十分な解決策となっていない。また、耐湿潤摩耗性、露光時の温湿度環境に対するタフネス等の点で不十分な写真性を与える為、改善が望まれていた。
【0004】
(カルコゲン増感剤について)
また、カルコゲン増感剤についても、硫黄増感に留まらず、セレン増感剤(例えば、特開平5−40324、同4−25832、同4−271341、同4−109240、同5−224332、同6−43576、同6−175258)、テルル増感剤(例えば、特開平4−333043、同5−303157、同4−204640)の開発が続けられている。
【0005】
しかし、これらの多くは、貴金族増感剤、カルコゲン増感剤の改良であり、両者を併用して、貴金属カルコゲン増感(例えば、金硫黄増感、金セレン増感)を達成しようとするものであった。
すなわち、貴金属増感剤を用いて、貴金属原子をハロゲン化銀乳剤に導入し、カルコゲン増感剤を用いて、カルコゲン原子をハロゲン化銀乳剤に導入し、この両者により、貴金族カルコゲン増感を達成するものであった。
従ってこれまで、カルコゲン原子−金属原子結合を持つ化合物を放出する分子により、化学増感を行う方法は知られていなかった。
【0006】
カルコゲン原子と金属原子とを含有する化合物による化学増感法として、様々な例が知られており、硫黄原子が配位した金錯体、金塩が金増感剤として提案されてきている。
しかしこうして提案された金化合物には、金化合物単独で金増感剤としてのみ機能し、実質的に金硫黄増感としては機能しないものが多い。その一例は、メソイオン配位子を含む金(I)化合物(以下メソイオン金(I)化合物と記す)であり、特開平4-267249号に開示されている。単一化合物で金硫黄増感できないものの別の例は、特開平11-218870号に記載のメルカプト化合物の金(I)錯体である。同様に、特開平8−69075号に記載のメルカプト化合物の金塩も後述の実施例に示した結果等から実質的に単一化合物で金硫黄増感できないことが判った。
単一化合物で金―硫黄増感可能な例としては、ジチオ硫酸金(I)3ナトリウム(ハイポ金)が古くから既知である。しかし、特開平4−267249の次の記載、「この金(I)化合物は金と結合している2つのチオ硫酸イオンを含有する。また、写真ハロゲン化銀乳剤中の金に加えて、これらのイオンが増感反応に関与するかもしれない。それゆえ、この金(I)化合物は、金とのモル比が2:1未満の硫黄の量が望ましい化学増感せしめるハロゲン化銀組成物に適さない。」から判る様に、ジチオ硫酸金(I)3ナトリウム(ハイポ金)は問題を有していることは明らかである。実際、このものによる増感法は、Au(I)とAu(I)に対して2倍モルのチオ硫酸塩とによる増感法とほぼ同様の結果を与える。また、カルコゲン−金のペアーの放出に関する記載は全くなされていない。
ジチオ硫酸金(I)3ナトリウムに似た例として、特開2001−75215には、2分子のチオ尿素化合物を配位子にもつAu(I) 錯体が開示されているが、2分子のチオ尿素化合物が硫黄増感剤として機能するため、ジチオ硫酸金(I)3ナトリウムと同様の問題を有している。
単一化合物で金―硫黄増感可能な別の例として、特公昭45-29274に、メルカプトグルコシド金(I)による金増感法が記載されている。これはAuと硫黄原子が1:1であり、上述の問題はない。しかしメルカプトグルコシド金(I)は、4種の異性体の総称であり、該特許は構造式の記載はあるものの立体構造を明確に特定していない為、特定の具体化合物について言及していない。また、カルコゲン−金のペアーの放出に関する記載は全く見られない。
【0007】
従って、これまで、カルコゲン原子−金属原子結合を持つ化合物を放出する分子により、化学増感を行う方法は知られていなかった。
また、上述の種々の写真性を満足し、上述の問題のない、具体的解決策が望まれていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、低被り、高感度、硬調で、かつ露光・現像時の条件の違い(露光湿度、露光温度、露光から現像までの時間間隔)による感度変動が小さく、耐湿潤磨耗性に優れ、高照度での相反則特性に優れるハロゲン化銀乳剤とその製造方法及びこれを用いたハロゲン化銀カラー写真感光材料並びに画像形成方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者が鋭意検討を重ねた結果、上記目的は、下記に記載の手段により効果的に達成された。すなわち、
(1)カルコゲン原子−金属原子結合を持つ化合物を放出する化合物であって、該化合物が、α型を主成分とするチオグルコース金(I)化合物、α型を主成分とするセレノグルコース金(I)化合物、または下記一般式(AUS2)もしくは(AUS3)のいずれかで表される化合物のいずれかを添加し、反応させたことを特徴とするハロゲン化銀乳剤。
【0010】
【化33】
【0011】
式中、ChはS原子、Se原子またはTe原子を表す。一般式(AUS2)において、Mはメチレン基を表し、R2はアルキル基を表し、R2およびR3は各々水素原子または置換基を表す。一般式(AUS3)において、Q1は水素原子または置換基を表し、Q2およびQ3は各々アルキル基を表し、Eはメチレン基を表す。
(2)カルコゲン原子−金属原子結合を持つ化合物を放出する化合物であって、該化合物が、α型を主成分とするチオグルコース金(I)化合物、α型を主成分とするセレノグルコース金(I)化合物、または下記一般式(AUS2)もしくは(AUS3)のいずれかで表される化合物のいずれかにより化学増感されたことを特徴とするハロゲン化銀乳剤。
【化1】
式中、ChはS原子、Se原子またはTe原子を表す。一般式(AUS2)において、Mはメチレン基を表し、R2はアルキル基を表し、R2およびR3は各々水素原子または置換基を表す。一般式(AUS3)において、Q1は水素原子または置換基を表し、Q2およびQ3は各々アルキル基を表し、Eはメチレン基を表す。
(3)前記カルコゲン原子−金属原子結合を持つ化合物を放出する化合物が、α型を主成分とするチオグルコース金(I)化合物またはα型を主成分とするセレノグルコース金(I)化合物であって、α型の比率が60%以上である、チオグルコース金(I)化合物またはセレノグルコース金(I)化合物であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載のハロゲン化銀乳剤。
(4)前記ハロゲン化銀乳剤が、 塩化銀含有率が90モル%以上であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載のハロゲン化銀乳剤。
(5)前記ハロゲン化銀乳剤が、ハロゲン化銀粒子のシェル部分に、全銀モルあたり0.01〜0.50モル%の沃化銀含有相を有することを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のハロゲン化銀乳剤。
(6)前記ハロゲン化銀乳剤が、下記のいずれかから選択されるイリジウム錯体を含有することを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載のハロゲン化銀乳剤。
イリジウム錯体
[IrCl 5 (thiazole)] 2− 、[IrCl 5 (5−CH 3 −thiazole)] 2− 、[IrCl 5 (H 2 O)] 2− 、[IrCl 5 (H 2 O)] − 、[IrCl 4 (H 2 O) 2 ] − 、[IrCl 4 (H 2 O) 2 ] 0 、[IrCl 3 (H 2 O) 3 ] 0 、[IrCl 3 (H 2 O) 3 ] + 、[IrBr 5 (H 2 O)] 2− 、[IrBr 5 (H 2 O)] − 、[IrBr 4 (H 2 O) 2 ] − 、[IrBr 4 (H 2 O) 2 ] 0 、[IrBr 3 (H 2 O) 3 ] 0 、[IrBr 3 (H 2 O) 3 ] +
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明の原理は、特定のカルコケ゛ン―金属原子結合を持つ化合物の放出により、ハロゲン化銀乳剤の化学増感を行うことにある。
本発明においてカルコゲンー金属原子結合を持つ化合物とは、AuCh構造を有する化合物を放出する分子であり、AuCh構造を有する化合物を放出する分子とは、Au(金)で表される金属元素とChで表されるS原子、Se原子およびTe原子から選択されるカルコゲン元素とからなるイオンを放出する、化合物である。ここでChはマイナス2の電荷をもつが、遷移元素は様々な価数をとりうる。したがって、AuがAu(I)、ChがSの場合、AuChは、[AuIS]−のイオンを表す。
【0013】
本発明において、AuCh-構造を有するイオンを放出する化合物とは、該化合物を70℃、2時間、適切な溶媒中で加熱した際に、AuCh-構造を有するイオンを放出する化合物を意味する。以下により具体的に、ある化合物が、AuCh-構造を有するイオンを放出する化合物であるかどうかを判別する方法を述べる。
【0014】
(A)AuS-構造を有するイオンを放出する化合物かどうかを判定する方法。化合物試料を適切な溶媒に溶解または分散させ、次いで判定したい化合物の大過剰の硝酸銀溶液を加えた後、70℃に加熱し、2時間反応させる。AuCh-構造を有するイオンを放出する化合物の多くは、沈殿を生じる為、生じた沈殿を濾過して取出す。この沈殿を粉末X線回折にて分析し、AgAuSであることを確認する。または、蛍光X線やICPなどの手法を用いて元素分析を行い、AgAuSであることを確認する。
次いで、得られた沈殿の収量、収率を求め、基質内の反応性を有するChをベースに収率50%以上でAgAuSを与えた化合物を、「AuS-構造を有するイオンを放出する化合物」と判定する。
尚、AgAuSが収率50%を超えて沈殿することなく、化合物試料の銀錯体が沈殿する場合もある。この場合も、本発明で用いるAuS-構造を有するイオンを放出する化合物ではない。
AgAuSが収率50%を超えて沈殿し、さらに、別の化合物も沈殿する場合もあるが、この場合は、本発明で用いるAuS-構造を有するイオンを放出する化合物である。
尚、本反応系中に、乳剤中に加えられる一般的なゼラチンを加えてもよい。また、本反応系のpHは12以下であり、10以下が好ましく、8以下が更に好ましく、3〜7が最も好ましい。
【0015】
(B)尚、AuSe-構造を有するイオンを放出する化合物、AuTe-構造を有するイオンを放出する化合物かどうかの判定も、上記(A)と同様に行う。
【0016】
ここで適切な溶媒とは、試料化合物と硝酸銀の両方を溶解させることのできる通常の溶媒であり、具体的には、水、アセトニトリル、メタノール、エタノール、1,4-ジオキサン、及び、これらの混合溶媒である。
【0017】
他のMCh構造を有する化合物を放出する分子についても、上記と同様の方法で、判定することができる。
尚、後述する本発明の化合物AUS1-8からのAuS-イオン放出を、実際に上記方法で処理することで調べた処、95%の収率でAgAuSの黒色粉末が得られ、この化合物がAuS-構造を有するイオンを放出化合物であることが確かめられた。
【0018】
以下に、上記判定方法を用いるに至った、我々の考え方を述べる。
そもそもAuS-イオンは、Au+とS2-とに解離する反応や、もう1分子のS2-イオンやHS-と結合する反応、さらには、Au2Sを形成してコロイド状分散物を形成する反応などを起こし得る、化学種である。その為、AuS-イオンを純粋に取出すことは難しい。しかし、AuS-イオンを安定な別の化学種に変換することで、間接的にAuS-の放出を判定することは可能である。AuS-イオンを銀イオンで捕獲し、安定なAgAuSに変換することで、AuS-構造を有するイオンの放出が起こるか否か、調べることが可能となる。
【0019】
次に本発明に用いるAuICh−イオンを放出する化合物について具体的に説明するために、化合物の一般式を挙げて説明する。但し、AuICh−イオンを放出する化合物は、これらに限定されるものではない。
本発明におけるAuICh−イオンを放出する化合物は、下記一般式(AUS2)または一般式(AUS3)で表される化合物から選ぶことができる。
【0020】
【化2】
【0021】
式中、ChはS原子、Se原子またはTe原子を表す。
一般式(AUS2)において、Mはメチレン基を表し、R2はアルキル基を表し、R2およびR3は各々水素原子または置換基を表す。
一般式(AUS3)において、Q1は水素原子または置換基を表し、Q2およびQ3は各々アルキル基を表し、Eはメチレン基を表す。
【0022】
一般式(AUS2)および(AUS3)において、ChはS原子、Se原子もしくはTe原子を表すが、本発明においてはS原子もしくはSe原子が好ましく、Se原子である場合がより好ましい。
【0024】
一般式(AUS2)において、Mはメチレン基を表し、R2はアルキル基を表し、R1、R3は水素原子または置換基を表す。Mで表されるメチレン基は置換基を有していてよい。
【0025】
一般式(AUS3)において、Q1は水素原子または置換基を表し、Q2、Q3はアルキル基を表し、Eはメチレン基を表し、置換基を有してもよいが、酸素原子、窒素原子、硫黄原子で結合した置換基を有することはない。
【0026】
一般式(AUS2)、(AUS3)の各基の説明において、置換基とは例えばハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基で、ビシクロアルキル基やトリシクロ構造、活性メチン基なども包含する)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基(N原子、O原子、S原子のうち少なくとも一つを含む5〜7員環の、置換もしくは無置換の、飽和もしくは不飽和のヘテロ環であり、単環であっても良いし、更に他のアリール環もしくはヘテロ環と共に縮合環を形成しても良い。例えばピロリル基、ピロリジニル基、ピリジル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、インドリル基、インダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラニル基、クロメニル基、チエニル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、モルホリノ基、モルホリニル基など。置換する位置は問わない)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、N−ヒドロキシカルバモイル基、N−アシルカルバモイル基、N−スルホニルカルバモイル基、N−カルバモイルカルバモイル基、チオカルバモイル基、N−スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、カルボキシ基(及びその塩を含む)、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、ホルミル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、シリルオキシ基、ニトロ基、アミノ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、N−ヒドロキシウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ヒドラジノ基、アンモニオ基、オキサモイルアミノ基、N−(アルキルまたはアリール)スルホニルウレイド基、N−アシルウレイド基、N−アシルスルファモイルアミノ基、ヒドロキシアミノ基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基、イミダゾリオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基)、イソシアノ基、イミノ基、メルカプト基(及びその塩を含む)、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)ジチオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基(及びその塩を含む)、スルファモイル基、N−アシルスルファモイル基、N−スルホニルスルファモイル基(及びその塩を含む)、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基などを意味する。なおここで塩とはアルカリ金属、アルカリ土類金属、重金属などの陽イオンやアンモニウムイオン、ホスホニウムイオンなどの有機の陽イオンとの塩を意味する。
R2、Q2、Q3のアルキル基は前記置換基中の「アルキル基」と同じであり、アルキル基の中でもメチル基、またはエチル基が好ましい。
【0027】
これら置換基は、これら置換基でさらに置換されていてもよい。
【0028】
一般式(AUS2)および(AUS3)において、Au原子は更に他の配位子と結合していてもよいが、リン原子で配位する配位子は好ましくなく、特にトリアルキルホスフィン配位子は好ましくない。(P配位子はAuとの結合が強すぎ、増感核の形成に影響を与えると推定している。)
【0030】
一般式(AUS2)において、好ましくは、Mはメチレン基であり、R2はアルキル基を表し、R1、R3は水素原子またはアルキル基を表す。
【0031】
一般式(AUS3)において、Q1は水素原子またはアルキル基、アリール基、アルコキシ基を表し、Q2、Q3はアルキル基を表し、Eはメチレン基を表す。
【0033】
次に、AuCh-構造を有するイオンを放出する化合物の具体例を以下に示す。ただし本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
【化3】
【0035】
次に本発明に用いるAuCh構造を有する化合物を放出する化合物の合成方法を示す。
AUS1−8: (D)−α−チオグルコース金(I)の合成方法。
以下の文献により、1−thio−α−D−glucoseを合成し、次いで、メルカプト化合物からメルカプト化合物のAu(I)塩を合成する常法に従って、α−チオグルコース金(I)を合成することができる。
Organic Letter,Vol.3,No.3,p.405,2001年刊、
Carbohydrate Reserch,Vol.200,p.497,19900年刊。
また、その他の化合物も、メルカプト化合物のAu(I)塩を合成する常法に従って合成することができる。つまり、Au(I)塩を得るために、まず、対応するメルカプト化合物を合成する。次いで容易に入手可能なAu(III)化合物(例えば、AuBr 3 、NaAuCl 3 等)を2,2’−チオジエタノールなどでAu(I)に還元し、先のメルカプト化合物と反応させることにより合成することができる。メルカプト化合物の代わりにSe化合物、Te化合物を用いることで対応するSe同族体、Te同族体が得られる。ただし、Se、Te化合物の性質としてよく知られていることであるが、セレノール類、テルロール類は酸化されてジセレニド、ジテルリドに変化し易いため、一旦、ジセレニド、ジテルリドを得てから還元し、ただちにAu(I)と反応させる方法も利用できる。
【0036】
我々は、本発明で用いるα-チオグルコース金(I)が、高感度である等の好ましい写真性を与えるという、驚くべき事実を見出した。更にα-チオグルコース金(I)はAuS-放出化合物であることを見出した。すなわち、チオグルコース金(I)を化学増感剤として用いる場合、α型が主成分であることが好ましい(主成分とは、チオグルコース金(I)の異性体全体のうちで最も大きい割合(他の成分よりも大きい割合)を占めることを言う)。さらに好ましくは、α型が60%以上であり、特に好ましくは80%以上である。
なお、α−チオグルコース金(I)は、特公昭45−29274に記載されたメルカプトグルコシド金(I)に包含される化合物の一つである。しかし、特公昭45−29274記載の一般式のメルカプトグルコシド金(I)塩は、4種類の異性体を含む化合物群を指している為、具体的化合物を開示していない。4種類の異性体のうち、D型とL型の違いは、安価なD型が産業利用上有利な点を除けば、化学的性質が同等である点で重要性が低い。一方、アノマー位の立体構造がα型かβ型かによって化学的・物理的性質が異なる可能性が高く、この差異は重要である。
これまでβ型については、Collection Czechoslov. Chem. Commun. Vol.26,2084頁、1961年刊に記載があるものの、その他のメルカプトグルコシド金(I)に関する報告においては前述の報告以外ではα型かβ型か不明確であり、特公昭45−29274のものについても不明確であった。我々はこれを明確にすべく、アノマー位の立体異性体はアノマー位プロトンのNMRを観測することで区別できることを応用し、α型とβ型の分離定量に成功した。これにより、特公昭45−29274記載の合成法によるものは、β型が主成分であることが判明した。
【0037】
本発明において、好ましくは、AuCh-構造を有するイオンを放出する化合物かどうかを判定する際、評価試料の100倍モルの硝酸銀を用いて、50℃に加熱し、30分間加熱して得られたAgAuSの沈殿の収率が50%以上となる化合物である。
より好ましくは、評価試料の10000倍モルの硝酸銀を用いて、50℃に加熱し、30分間加熱して得られたAgAuSの沈殿の収率が50%を超える化合物である。
更により好ましくは、評価試料の1000000倍モルの硝酸銀を用いて、50℃に加熱し、30分間加熱して得られたAgAuSの沈殿の収率が50%を超える化合物である。
最も好ましくは、評価試料の100000000倍モルの硝酸銀を用いて、50℃に加熱し、30分間加熱して得られたAgAuSの沈殿の収率が50%を超える化合物である。
また、本発明において、好ましくは、AuS-構造を有するイオンを放出する化合物、及び/または、AuSe-構造を有するイオンを放出する化合物を用いることが好ましい。特に、AuSe-構造を有するイオンを放出する化合物を用いることが好ましい。
【0038】
本発明に使用する金化合物の添加量は場合に応じて広範囲に変わり得るがハロゲン化銀1モルあたり1×10-6〜1×10-3モル、好ましくは5×10-6〜1×10-4モルである。より好ましくは1×10-5〜5×10-5モルである。
【0039】
本発明の金化合物は、粒子形成直後から、化学増感終了直前までのどの段階にも添加することができる。好ましい添加時期は、脱塩後から化学増感工程の間である。
【0040】
本発明の金化合物による増感法を更に他の増感法、例えば硫黄増感、セレン増感、テルル増感、還元増感あるいは、他の金増感法や金化合物以外を用いた貴金属増感等と組み合わせてもよい。
本発明において、好ましくは、本発明の金化合物による増感法単独による増感法、及び、硫黄増感の併用、セレン増感の併用である。
【0041】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤中のハロゲン化銀粒子は、好ましくは実質的に{100}面を持つ立方体または14面体の結晶粒子(これらは粒子頂点が丸みを帯び、さらに高次の面を有していてもよい)または8面体の結晶粒子、または全投影面積の50%以上が{100}面または{111}面からなるアスペクト比2以上の平板状粒子が好ましい。アスペクト比とは、投影面積に相当する円の直径を粒子の厚さで割った値である。本発明では、立方体または{100}面を主平面とする平板状粒子または{111}面を主平面とする平板状粒子が好ましく適用される。
【0042】
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤としては、塩化銀、臭化銀、沃臭化銀、塩(沃)臭化銀乳剤等が用いられるが、迅速処理性の観点からは、塩化銀含有率が90モル%以上の塩化銀、塩臭化銀、塩沃化銀、または塩臭沃化銀乳剤が好ましく、より好ましくは塩化銀含有率が95モル%以上、更に好ましくは98モル%以上の塩化銀、塩臭化銀、塩沃化銀、または塩臭沃化銀乳剤が好ましい。このようなハロゲン化銀乳剤の中でも、本発明においては、ハロゲン化銀粒子のシェル部分に、全銀モルあたり0.01〜0.50モル%、より好ましくは0.05〜0.40モル%の沃化銀含有相(特に好ましくは沃塩化銀相)を有するものが高感度が得られ、高照度露光適性に優れるため好ましい。また、ハロゲン化銀粒子の表面に全銀モルあたり0.2〜5モル%、より好ましくは0.5〜3モル%の臭化銀局在相を有するものが、高感度が得られ、しかも写真性能の安定化が図れることから特に好ましい。
【0043】
本発明の乳剤が沃化銀を含有する場合、沃化物イオンの導入は、沃化物塩の溶液を単独で添加させるか、或いは銀塩溶液と高塩化物塩溶液の添加と併せて沃化物塩溶液を添加しても良い。後者の場合は、沃化物塩溶液と高塩化物塩溶液を別々に、またはヨウ化物塩と高塩化物塩の混合溶液として添加しても良い。沃化物塩は、アルカリもしくはアルカリ土類沃化物塩のような溶解性塩の形で添加する。或いは米国特許第5,389,508号明細書に記載される有機分子から沃化物イオンを開裂させることで沃化物を導入することもできる。また別の沃化物イオン源として、微小沃化銀粒子を用いることもできる。
【0044】
沃化物塩溶液の添加は、粒子形成の一時期に集中して行っても良く、またある一定期間かけて行っても良い。高塩化物乳剤への沃化物イオンの導入位置は、高感度で低被りな乳剤を得る上で制限される。沃化物イオンの導入は、乳剤粒子のより内部に行うほど感度の増加が小さい。故に沃化物塩溶液の添加は、粒子体積の50%より外側が好ましく、より好ましくは70%より外側から、最も好ましくは80%より外側から行うのが良い。また沃化物塩溶液の添加は、好ましくは粒子体積の98%より内側で、最も好ましくは96%より内側で終了するのが良い。沃化物塩溶液の添加は、粒子表面から少し内側で終了することで、より高感度で低被りな乳剤を得ることができる。
【0045】
粒子内の深さ方向への沃化物イオン濃度の分布は、エッチング/TOF−SIMS(Time of Flight ・ Secondary Ion Mass Spectrometry)法により、例えばPhi Evans 社製TRIFTII 型TOF−SIMSを用いて測定できる。TOF−SIMS法については、具体的には日本表面科学会編「表面分析技術選書二次イオン質量分析法」 丸善株式会社(1999 年発行) に記載されている。エッチング/TOF−SIMS法で乳剤粒子を解析すると、沃化物塩溶液の添加を粒子の内側で終了しても、粒子表面に向けて沃化物イオンがしみ出していることが分析できる。本発明の乳剤が沃化銀を含有する場合、エッチング/TOF−SIMS法による分析で、沃化物イオンは粒子表面で濃度極大を有し、内側に向けて沃化物イオン濃度が減衰していることが好ましい。
【0046】
本発明の乳剤が臭化銀局在相を含有する場合、臭化銀含有率が少なくとも10モル%以上の臭化銀局在相を粒子表面にエピタキシャル成長させてつくることが好ましい。臭化銀局在相の臭化銀含有率は、10〜60モル%の範囲が好ましく、20〜50モル%の範囲が最も好ましい。臭化銀局在相は、本発明におけるハロゲン化銀粒子を構成する全銀量の0.1〜5モル%の銀から構成されていることが好ましく、0.3〜4モル%の銀から構成されていることが更に好ましい。臭化銀局在相中には、塩化第1イリジウム(III)、臭化第1イリジウム(III)、塩化第2イリジウム(IV)、ヘキサクロロイリジウム(III)酸ナトリウム、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸カリウム、ヘキサアンミンイリジウム(IV)塩、トリオキザラトイリジウム(III)塩、トリオキザラトイリジウム(IV)塩等の第VIII族金属錯イオンを含有させることが好ましい。これらの化合物の添加量は目的に応じて広範囲にわたるが、ハロゲン化銀1モルに対して10-9〜10-2モルが好ましい。
【0047】
本発明においては、ハロゲン化銀粒子を形成及び/または成長させる過程で遷移金属イオンを添加し、ハロゲン化銀粒子の内部及び/または表面に金属イオンを組み込むことがことができる。用いる金属イオンとしては遷移金属イオンが好ましく、なかでも、鉄、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、鉛、カドミウム、または、亜鉛であることが好ましい。さらにこれらの金属イオンは配位子を伴い6配位八面体型錯体として用いることがより好ましい。無機化合物を配位子として用いる場合には、シアン化物イオン、ハロゲン化物イオン、チオシアン、水酸化物イオン、過酸化物イオン、アジ化物イオン、亜硝酸イオン、水、アンモニア、ニトロシルイオン、または、チオニトロシルイオンを用いることが好ましく、上記の鉄、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、鉛、カドミウム、または、亜鉛のいずれの金属イオンに配位させて用いることも好ましく、複数種の配位子を1つの錯体分子中に用いることも好ましい。また、配位子として有機化合物を用いることも出来、好ましい有機化合物としては主鎖の炭素数が5以下の鎖状化合物および/または5員環あるいは6員環の複素環化合物を挙げることが出来る。さらに好ましい有機化合物は分子内に窒素原子、リン原子、酸素原子、または、硫黄原子を金属への配位原子として有する化合物であり、最も好ましくはフラン、チオフェン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、フラザン、ピラン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジンであり、さらにこれらの化合物を基本骨格としそれらに置換基を導入した化合物もまた好ましい。
【0048】
金属イオンと配位子の組み合わせとして好ましくは、鉄イオン及びルテニウムイオンとシアン化物イオンの組み合わせである。これらの化合物においてシアン化物イオンは中心金属である鉄またはルテニウムへの配位数のうち過半数を占めることが好ましく、残りの配位部位はチオシアン、アンモニア、水、ニトロシルイオン、ジメチルスルホキシド、ピリジン、ピラジン、または、4,4’−ビピリジンで占められることが好ましい。最も好ましくは中心金属の6つの配位部位が全てシアン化物イオンで占められ、ヘキサシアノ鉄錯体またはヘキサシアノルテニウム錯体を形成することである。これらシアン化物イオンを配位子とする錯体は粒子形成中に銀1モル当たり1×10-8モルから1×10-2モル添加することが好ましく、1×10-6モルから5×10-4モル添加することが最も好ましい。中心金属としてイリジウムを用いた場合に配位子として好ましくは、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンであり、中でも塩化物イオンまたは臭化物イオンを用いることが好ましい。イリジウム錯体として具体的に好ましくは、[IrCl6]3-、[IrCl6]2-、[IrCl5(thiazole)]2-、[IrCl5(5-CH3-thiazole)]2-、[IrCl5(H2O)]2-、[IrCl5(H2O)]-、[IrCl4(H2O)2]- 、[IrCl4(H2O)2]0、[IrCl3(H2O)3]0、[IrCl3(H2O)3]+ 、[IrBr6]3-、[IrBr6]2-、[IrBr5(H2O)]2-、[IrBr5(H2O)]- 、[IrBr4(H2O)2]- 、[IrBr4(H2O)2]0、[IrBr3(H2O)3]0、および[IrBr3(H2O)3]+ である。これらのイリジウム錯体は粒子形成中に銀1モル当たり1×10-10モルから1×10-3モル添加することが好ましく、1×10-8モルから1×10-5モル添加することが最も好ましい。ルテニウムおよびオスミウムを中心金属とした場合にはニトロシルイオン、チオニトロシルイオン、または水分子と塩化物イオンを配位子として共に用いることも好ましい。より好ましくはペンタクロロニトロシル錯体、ペンタクロロチオニトロシル錯体、または、ペンタクロロアクア錯体を形成することであり、ヘキサクロロ錯体を形成することも好ましい。これらの錯体は粒子形成中に銀1モル当たり1×10-10モルから1×10-6モル添加することが好ましく、より好ましくは1×10-9モルから1×10-6モル添加することである。
【0049】
本発明において上記の錯体は、ハロゲン化銀粒子形成時に反応溶液中に直接添加するか、ハロゲン化銀粒子を形成するためのハロゲン化物水溶液中、あるいはそれ以外の溶液中に添加し、粒子形成反応溶液に添加することにより、ハロゲン化銀粒子内に組み込むが好ましい。さらにこれらの方法を組み合わせてハロゲン化銀粒子内へ含有させることも好ましい。
【0050】
これらの錯体をハロゲン化銀粒子に組み込む場合、粒子内部に均一に存在させることも好ましいが、特開平4−208936号、特開平2−125245号、特開平3−188437号各公報に開示されている様に、粒子表面層のみに存在させることも好ましく、粒子内部のみに錯体を存在させ粒子表面には錯体を含有しない層を付加することも好ましい。また、米国特許第5,252,451号および5,256,530号明細書に開示されているように、錯体を粒子内に組み込んだ微粒子で物理熟成して粒子表面相を改質することも好ましい。さらに、これらの方法を組み合わせて用いることも出来、複数種の錯体を1つのハロゲン化銀粒子内に組み込んでもよい。上記の錯体を含有させる位置のハロゲン組成には特に制限はなく、塩化銀層、塩臭化銀層、臭化銀層、沃塩化銀層、沃臭化銀層に何れに錯体を含有させることも好ましい。
【0051】
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤に含まれるハロゲン化銀粒子の平均粒子サイズ(粒子の投影面積と等価な円の直径を以て粒子サイズとし、その数平均をとったもの)は、0.1μm以上2μm以下が好ましい。
また、それらの粒子サイズ分布は変動係数(粒子サイズ分布の標準偏差を平均粒子サイズで除したもの)20%以下、望ましくは15%以下、更に好ましくは10%以下の所謂単分散なものが好ましい。このとき、広いラチチュードを得る目的で平均粒子サイズの異なる2種以上の上記単分散乳剤を同一層にブレンドして使用することや、重層塗布することも好ましく行われる。
【0052】
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤には、感光材料の製造工程、保存中あるいは写真処理中のかぶりを防止する、あるいは写真性能を安定化させる目的で種々の化合物あるいはそれ等の前駆体を添加することができる。これらの化合物の具体例は前出の特開昭62−215272号公報明細書の第39頁〜第72頁に記載のものが好ましく用いられる。更にEP0447647号に記載された5−アリールアミノ−1,2,3,4−チアトリアゾール化合物(該アリール残基には少なくとも一つの電子吸引性基を持つ)も好ましく用いられる。
【0053】
また、本発明において、ハロゲン化銀乳剤の保存性を高めるため、特開平11−109576号に記載のヒドロキサム酸誘導体、特開平11−327094号に記載のカルボニル基に隣接して、両端がアミノ基もしくはヒドロキシル基が置換した二重結合を有す環状ケトン類(特に一般式(S1)で表されるもので、段落番号0036〜0071は本願の明細書に取り込むことができる。)、特開平11−143011号に記載のスルホ置換のカテコールやハイドロキノン類(例えば、4,5−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸、2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゼンジスルホン酸、3,4−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、2,3−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、2,5−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、3,4,5−トリヒドロキシベンゼンスルホン酸およびこれらの塩など)、米国特許第5,556,741号の一般式(A)で表されるヒドロキシルアミン類(米国特許第5,556,741号の第4欄の第56行〜第11欄の第22行の記載は本願においても好ましく適用され、本願の明細書の一部として取り込まれる)、特開平11−102045号の一般式(I)〜(III)で表される水溶性還元剤は本発明においても好ましく使用される。
【0054】
分光増感は、本発明の感光材料における各層の乳剤に対して所望の光波長域に分光感度を付与する目的で行われる。
本発明の感光材料において、青、緑、赤領域の分光増感に用いられる分光増感色素としては例えば、F.M.Harmer著 Heterocyclic compounds-Cyanine dyes and related compounds (John Wiley & Sons [New York,London] 社刊1964年)に記載されているものを挙げることができる。具体的な化合物の例ならびに分光増感法は、前出の特開昭62−215272号公報の第22頁右上欄〜第38頁に記載のものが好ましく用いられる。また、特に塩化銀含有率の高いハロゲン化銀乳剤粒子の赤感光性分光増感色素としては特開平3−123340号に記載された分光増感色素が安定性、吸着の強さ、露光の温度依存性等の観点から非常に好ましい。
【0055】
これらの分光増感色素の添加量は場合に応じて広範囲にわたり、ハロゲン化銀1モルあたり0.5×10-6モル〜1.0×10-2モルの範囲が好ましい。更に好ましくは、1.0×10-6モル〜5.0×10-3モルの範囲である。
【0056】
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤は、本発明に係わる化合物による処理以外に、通常の化学増感法を施すことまたは併用することができる。化学増感法については、不安定硫黄化合物の添加に代表される硫黄増感、金増感に代表される貴金属増感、あるいは還元増感等を単独もしくは併用して用いることができる。化学増感に用いられる化合物については、特開昭62−215272号の第18頁右下欄から第22頁右上欄に記載のものが好ましく用いられる。
【0057】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、本発明に係わる化合物以外の化合物による金増感を併用することもできる。金増感を施すことにより、乳剤を高感度化でき、レーザー光等によって走査露光したときの写真性能の変動を小さくすることができるからである。本発明で開示している金化合物による増感も金増感法の一つであるが、その他にも、金増感を施すには、種々の無機金化合物や無機配位子を有する金(I)錯体及び有機配位子を有する金(I)化合物を利用することができる。無機金化合物としては、例えば塩化金酸もしくはその塩、無機配位子を有する金(I)錯体としては、例えばジチオシアン酸金(I)カリウム等のジチオシアン酸金化合物やジチオ硫酸金(I)3ナトリウム等のジチオ硫酸金化合物等の化合物を用いることができる。
【0058】
有機配位子を有する金(I)化合物としては、特開平4-267249号に記載のビス金(I)メソイオン複素環類、例えば四フッ化硼酸金(I)ビス(1,4,5-トリメチル-1,2,4-トリアゾリウム-3-チオラート)、特開平11-218870号に記載の有機メルカプト金(I)錯体、例えばカリウム ビス(1-[3-(2-スルホナートベンズアミド)フェニル]-5-メルカプトテトラゾールカリウム塩)オーレート(I)5水和物、特開平4-268550号に記載の窒素化合物アニオンが配位した金(I)化合物、例えば、ビス(1-メチルヒダントイナート)金(I)ナトリウム塩四水和物、を用いることができる。また、米国特許第3、503、749号に記載されている金(I)チオレート化合物、特開平8-69074号、特開平8-69075号、特開平9-269554号に記載の金化合物、米国特許第5620841号、同5912112号、同5620841号、同5939245号、同5912111号に記載の化合物も用いることができる。これらの化合物の添加量は場合に応じて広範囲に変わり得るがハロゲン化銀1モルあたり5×10-7〜5×10-3モル、好ましくは5×10-6〜5×10-4モルである。
【0059】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料には、従来公知の写真用素材や添加剤を使用できる。
例えば写真用支持体としては、透過型支持体や反射型支持体を用いることができる。透過型支持体としては、セルロースナイトレートフィルムやポリエチレンテレフタレートなどの透明フィルム、更には2,6−ナフタレンジカルボン酸(NDCA)とエチレングリコール(EG)とのポリエステルやNDCAとテレフタル酸とEGとのポリエステル等に磁性層などの情報記録層を設けたものが好ましく用いられる。反射型支持体としては特に複数のポリエチレン層やポリエステル層でラミネートされ、このような耐水性樹脂層(ラミネート層)の少なくとも一層に酸化チタン等の白色顔料を含有する反射支持体が好ましい。
【0060】
本発明においてさらに好ましい反射支持体としては、ハロゲン化銀乳剤層を設ける側の紙基体上に微小空孔を有するポリオレフィン層を有しているものが挙げられる。ポリオレフィン層は多層から成っていてもよく、その場合、好ましくはハロゲン化銀乳剤層側のゼラチン層に隣接するポリオレフィン層は微小空孔を有さず(例えばポリプロピレン、ポリエチレン)、紙基体上に近い側に微小空孔を有するポリオレフィン(例えばポリプロピレン、ポリエチレン)から成るものがより好ましい。紙基体および写真構成層の間に位置するこれら多層もしくは一層のポリオレフィン層の密度は0.40〜1.0g/ mlであることが好ましく、0.50〜0.70g/ mlがより好ましい。また、紙基体および写真構成層の間に位置するこれら多層もしくは一層のポリオレフィン層の厚さは10〜100μmが好ましく、15〜70μmがさらに好ましい。また、ポリオレフィン層と紙基体の厚さの比は0.05〜0.2が好ましく、0.1〜0.5がさらに好ましい。
【0061】
また、上記紙基体の写真構成層とは逆側(裏面)にポリオレフィン層を設けることも、反射支持体の剛性を高める点から好ましく、この場合、裏面のポリオレフィン層は表面が艶消しされたポリエチレンまたはポリプロピレンが好ましく、ポリプロピレンがより好ましい。裏面のポリオレフィン層は5〜50μmが好ましく、10〜30μmがより好ましく、さらに密度が0.7〜1.1g/mlであることが好ましい。本発明の反射支持体において、紙基体上に設けるポリオレフィン層に関する好ましい態様については、特開平10−333277号、同10−333278号、同11−52513号、同11−65024号、EP0880065号、およびEP0880066号に記載されている例が挙げられる。
【0062】
更に前記の耐水性樹脂層中には蛍光増白剤を含有するのが好ましい。また、蛍光増白剤は感光材料の親水性コロイド層中に分散してもよい。蛍光増白剤として、好ましくは、ベンゾオキサゾール系、クマリン系、ピラゾリン系が用いることができ、更に好ましくは、ベンゾオキサゾリルナフタレン系及びベンゾオキサゾリルスチルベン系の蛍光増白剤である。使用量は、特に限定されていが、好ましくは1〜100mg/m2である。耐水性樹脂に混合する場合の混合比は、好ましくは樹脂に対して0.0005〜3質量%であり、更に好ましくは0.001〜0.5質量%である。
反射型支持体としては、透過型支持体、または上記のような反射型支持体上に、白色顔料を含有する親水性コロイド層を塗設したものでもよい。
また、反射型支持体は、鏡面反射性または第2種拡散反射性の金属表面をもつ支持体であってもよい。
【0063】
また、本発明に係わる感光材料に用いられる支持体としては、ディスプレイ用に白色ポリエステル系支持体又は白色顔料を含む層がハロゲン化銀乳剤層を有する側の支持体上に設けられた支持体を用いてもよい。更に鮮鋭性を改良するために、アンチハレーション層を支持体のハロゲン化銀乳剤層塗布側又は裏面に塗設するのが好ましい。特に反射光でも透過光でもディスプレイが観賞できるように、支持体の透過濃度を0.35〜0.8の範囲に設定するのが好ましい。
【0064】
本発明に係わる感光材料には、画像のシャープネス等を向上させる目的で親水性コロイド層に、欧州特許EP0,337,490A2号の第27〜76頁に記載の、処理により脱色可能な染料(なかでもオキソノール系染料)を感光材料の680nmに於ける光学反射濃度が0.70以上になるように添加したり、支持体の耐水性樹脂層中に2〜4価のアルコール類(例えばトリメチロールエタン)等で表面処理された酸化チタンを12質量%以上(より好ましくは14質量%以上)含有させるのが好ましい。
【0065】
本発明に係わる感光材料には、イラジエーションやハレーションを防止したり、セーフライト安全性等を向上させる目的で親水性コロイド層に、欧州特許EP0337490A2号明細書の第27〜76頁に記載の、処理により脱色可能な染料(中でもオキソノール染料、シアニン染料)を添加することが好ましい。さらに、欧州特許EP0819977号明細書に記載の染料も本発明に好ましく添加される。
これらの水溶性染料の中には使用量を増やすと色分離やセーフライト安全性を悪化するものもある。色分離を悪化させないで使用できる染料としては、特開平5−127324号、同5−127325号、同5−216185号に記載された水溶性染料が好ましい。
【0066】
本発明においては、水溶性染料の代わり、あるいは水溶性染料と併用しての処理で脱色可能な着色層が用いられる。用いられる処理で脱色可能な着色層は、乳剤層に直かに接してもよく、ゼラチンやハイドロキノンなどの処理混色防止剤を含む中間層を介して接するように配置されていても良い。この着色層は、着色された色と同種の原色に発色する乳剤層の下層(支持体側)に設置されることが好ましい。各原色毎に対応する着色層を全て個々に設置することも、このうちに一部のみを任意に選んで設置することも可能である。また複数の原色域に対応する着色を行った着色層を設置することも可能である。着色層の光学反射濃度は、露光に使用する波長域(通常のプリンター露光においては400nm〜700nmの可視光領域、走査露光の場合には使用する走査露光光源の波長)において最も光学濃度の高い波長における光学濃度値が0.2以上3.0以下であることが好ましい。さらに好ましくは0.5以上2.5以下、特に0.8以上2.0以下が好ましい。
【0067】
着色層を形成するためには、従来公知の方法が適用できる。例えば、特開平2−282244号3頁右上欄から8頁に記載された染料や、特開平3−7931号3頁右上欄から11頁左下欄に記載された染料のように固体微粒子分散体の状態で親水性コロイド層に含有させる方法、アニオン性色素をカチオンポリマーに媒染する方法、色素をハロゲン化銀等の微粒子に吸着させて層中に固定する方法、特開平1−239544号に記載されているようなコロイド銀を使用する方法などである。色素の微粉末を固体状で分散する方法としては、たとえば、少なくともpH6以下では実質的に水不溶性であるが、少なくともpH8以上では実質的に水溶性である微粉末染料を含有させる方法が特開平2−308244号の第4〜13頁に記載されている。また、例えば、アニオン性色素をカチオンポリマーに媒染する方法としては、特開平2−84637号の第18〜26頁に記載されている。光吸収剤としてのコロイド銀の調製法については米国特許第2,688,601号、同3,459,563号に示されている。これらの方法のなかで微粉末染料を含有させる方法、コロイド銀を使用する方法などが好ましい。
【0068】
ハロゲン化銀写真感光材料は、カラーネガフィルム、カラーポジフィルム、カラー反転フィルム、カラー反転印画紙、カラー印画紙等に用いられるが、中でもカラー印画紙として用いるのが好ましい。
カラー印画紙は、イエロー発色性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ発色性ハロゲン化銀乳剤層およびシアン発色性ハロゲン化銀乳剤層をそれぞれ少なくとも1層ずつ有してなることが好ましく、一般には、これらのハロゲン化銀乳剤層は支持体から近い順にイエロー発色性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ発色性ハロゲン化銀乳剤層、シアン発色性ハロゲン化銀乳剤層である。
【0069】
しかしながら、これとは異なった層構成を取っても構わない。
イエロ−カプラーを含有するハロゲン化銀乳剤層は支持体上のいずれの位置に配置されてもかまわないが、該イエローカプラー含有層にハロゲン化銀平板粒子を含有する場合は、マゼンタカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層またはシアンカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも一層よりも支持体から離れた位置に塗設されていることが好ましい。また、発色現像促進、脱銀促進、増感色素による残色の低減の観点からは、イエロ−カプラー含有ハロゲン化銀乳剤層は他のハロゲン化銀乳剤層より、支持体から最も離れた位置に塗設されていることが好ましい。更に、Blix退色の低減の観点からはシアンカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層は他のハロゲン化銀乳剤層の中央の層が好ましく、光退色の低減の観点からはシアンカプラー含有ハロゲン化銀乳剤層は最下層が好ましい。また、イエロー、マゼンタおよびシアンのそれぞれの発色性層は2層または3層からなってもよい。例えば、特開平4−75055号、同9−114035号、同10−246940号、米国特許第5,576,159号等に記載のように、ハロゲン化銀乳剤を含有しないカプラー層をハロゲン化銀乳剤層に隣接して設け、発色層とすることも好ましい。
【0070】
本発明において適用されるハロゲン化銀乳剤やその他の素材(添加剤など)および写真構成層(層配置など)、並びにこの感光材料を処理するために適用される処理法や処理用添加剤としては、特開昭62−215272号、特開平2−33144号、欧州特許EP0,355,660A2号に記載されているもの、特に欧州特許EP0,355,660A2号に記載されているものが好ましく用いられる。更には、特開平5−34889号、同4−359249号、同4−313753号、同4−270344号、同5−66527号、同4−34548号、同4−145433号、同2−854号、同1−158431号、同2−90145号、同3−194539号、同2−93641号、欧州特許公開第0520457A2号等に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料やその処理方法も好ましい。
【0071】
特に、本発明においては、前記の反射型支持体やハロゲン化銀乳剤、更にはハロゲン化銀粒子中にドープされる異種金属イオン種、ハロゲン化銀乳剤の保存安定剤またはカブリ防止剤、化学増感法(増感剤)、分光増感法(分光増感剤)、シアン、マゼンタ、イエローカプラーおよびその乳化分散法、色像保存性改良剤(ステイン防止剤や褪色防止剤)、染料(着色層)、ゼラチン種、感光材料の層構成や感光材料の被膜pHなどについては、下記表1に示す特許の各箇所に記載のものが特に好ましく適用できる。
【0072】
【表1】
【0073】
シアン、マゼンタおよびイエローカプラーとしては、その他、特開昭62−215272号の第91頁右上欄4行目〜121頁左上欄6行目、特開平2−33144号の第3頁右上欄14行目〜18頁左上欄末行目と第30頁右上欄6行目〜35頁右下欄11行目やEP0355,660A2号の第4頁15行目〜27行目、5頁30行目〜28頁末行目、45頁29行目〜31行目、47頁23行目〜63頁50行目に記載のカプラーも有用である。 また、本発明はWO−98/33760の一般式(II)および(III)、特開平10−221825号の一般式(D)で表される化合物を添加しても良く、好ましい。
【0074】
以下に更に具体的に説明する。
使用しうるシアンカプラーとしては、ピロロトリアゾール系カプラーが好ましく用いられ、特開平5−313324号の一般式(I)又は(II)で表されるカプラーおよび特開平6−347960号の一般式(I)で表されるカプラー並びにこれらの特許に記載されている例示カプラーが特に好ましい。
また、フェノール系、ナフトール系のシアンカプラーも好ましく、例えば、特開平10−333297号に記載の一般式(ADF)で表されるシアンカプラーが好ましい。
上記以外のシアンカプラーとしては、欧州特許EP0488248号明細書及びEP0491197A1号明細書に記載のピロロアゾール型シアンカプラー、米国特許第5,888,716号に記載の2,5−ジアシルアミノフェノールカプラー、米国特許第4,873,183号、同第4,916,051号に記載の6位に電子吸引性基、水素結合基を有するピラゾロアゾール型シアンカプラー、特に、特開平8−171185号、同8−311360号、同8−339060号に記載の6位にカルバモイル基を有するピラゾロアゾール型シアンカプラーも好ましい。
【0075】
また、特開平2−33144号公報に記載のジフェニルイミダゾール系シアンカプラーの他に、欧州特許EP0333185A2号明細書に記載の3−ヒドロキシピリジン系シアンカプラー(なかでも具体例として列挙されたカプラー(42)の4当量カプラーに塩素離脱基をもたせて2当量化したものや、カプラー(6)や(9)が特に好ましい)や特開昭64−32260号公報に記載された環状活性メチレン系シアンカプラー(なかでも具体例として列挙されたカプラー例3、8、34が特に好ましい)、欧州特許EP0456226A1号明細書に記載のピロロピラゾール型シアンカプラー、欧州特許EP0484909号に記載のピロロイミダゾール型シアンカプラーを使用することもできる。
【0076】
なお、これらのシアンカプラーのうち、特開平11−282138号に記載の一般式(I)で表されるピロロアゾール系シアンカプラーが特に好ましく、該特許の段落番号0012〜0059の記載は例示シアンカプラー(1)〜(47)を含め、本願にそのまま適用され、本願の明細書の一部として好ましく取り込まれる。
【0077】
用いられるマゼンタカプラーとしては、前記の表の公知文献に記載されたような5−ピラゾロン系マゼンタカプラーやピラゾロアゾール系マゼンタカプラーが用いられるが、中でも色相や画像安定性、発色性等の点で特開昭61−65245号に記載されたような2級又は3級アルキル基がピラゾロトリアゾール環の2、3又は6位に直結したピラゾロトリアゾールカプラー、特開昭61−65246号に記載されたような分子内にスルホンアミド基を含んだピラゾロアゾールカプラー、特開昭61−147254号に記載されたようなアルコキシフェニルスルホンアミドバラスト基を持つピラゾロアゾールカプラーや欧州特許第226,849A号や同第294,785A号に記載されたような6位にアルコキシ基やアリールオキシ基をもつピラゾロアゾールカプラーの使用が好ましい。特に、マゼンタカプラーとしては特開平8−122984号に記載の一般式(M−I)で表されるピラゾロアゾールカプラーが好ましく、該特許の段落番号0009〜0026はそのまま本願に適用され、本願の明細書の一部として取り込まれる。
これに加えて、欧州特許第854384号、同第884640号に記載の3位と6位の両方に立体障害基を有するピラゾロアゾールカプラーも好ましく用いられる。
【0078】
また、イエローカプラーとしては、前記表中に記載の化合物の他に、欧州特許EP0447969A1号明細書に記載のアシル基に3〜5員の環状構造を有するアシルアセトアミド型イエローカプラー、欧州特許EP0482552A1号明細書に記載の環状構造を有するマロンジアニリド型イエローカプラー、欧州公開特許第953870A1号、同第953871A1号、同第953872A1号、同第953873A1号、同第953874A1号、同第953875A1号等に記載のピロール−2または3−イルもしくはインドール−2または3−イルカルボニル酢酸アニリド系カプラー、米国特許第5,118,599号明細書に記載されたジオキサン構造を有するアシルアセトアミド型イエローカプラーが好ましく用いられる。その中でも、アシル基が1−アルキルシクロプロパン−1−カルボニル基であるアシルアセトアミド型イエローカプラー、アニリドの一方がインドリン環を構成するマロンジアニリド型イエローカプラーの使用が特に好ましい。これらのカプラーは、単独あるいは併用することができる。
【0079】
カプラーは、前出表中記載の高沸点有機溶媒の存在下で(または不存在下で)ローダブルラテックスポリマー(例えば米国特許第4,203,716号)に含浸させて、または水不溶性かつ有機溶媒可溶性のポリマーとともに溶かして親水性コロイド水溶液に乳化分散させることが好ましい。
好ましく用いることのできる水不溶性かつ有機溶媒可溶性のポリマーは、米国特許第4,857,449号明細書の第7欄〜15欄及び国際公開WO88/00723号明細書の第12頁〜30頁に記載の単独重合体または共重合体が挙げられる。より好ましくはメタクリレート系あるいはアクリルアミド系ポリマー、特にアクリルアミド系ポリマーの使用が色像安定性等の上で好ましい。
【0080】
本発明においては公知の混色防止剤を用いることができるが、その中でも以下に挙げる特許に記載のものが好ましい。
例えば、特開平5−333501号に記載の高分子量のレドックス化合物、WO98/33760号、米国特許第4,923,787号等に記載のフェニドンやヒドラジン系化合物、特開平5−249637号、特開平10−282615号および独国特許第19629142A1号等に記載のホワイトカプラーを用いることができる。また、特に現像液のpHを上げ、現像の迅速化を行う場合には独国特許第19618786A1号、欧州特許第839623A1号、欧州特許第842975A1号、独国特許19806846A1号および仏国特許第2760460A1号等に記載のレドックス化合物を用いることも好ましい。
【0081】
本発明においては紫外線吸収剤としてモル吸光係数の高いトリアジン骨核を有する化合物を用いることが好ましく、例えば、以下の特許に記載の化合物を用いることができる。これらは、感光性層または/および非感光性に好ましく添加される。
特開昭46−3335号、同55−152776号、特開平5−197074号、同5−232630号、同5−307232号、同6−211813号、同8−53427号、同8−234364号、同8−239368号、同9−31067号、同10−115898号、同10−147577号、同10−182621号、独国特許第19739797A号、欧州特許第711804A号および特表平8−501291号等に記載されている化合物である。
【0082】
本発明に係わる感光材料に用いることのできる結合剤又は保護コロイドとしては、ゼラチンを用いることが有利であるが、それ以外の親水性コロイドを単独であるいはゼラチンとともに用いることができる。好ましいゼラチンとしては、鉄、銅、亜鉛、マンガン等の不純物として含有される重金属は、好ましくは5ppm以下、更に好ましくは3ppm以下である。
また、感光材料中に含まれるカルシウム量は、好ましくは20mg/m2 以下、更に好ましくは10mg/m2 以下、最も好ましくは5mg/m2 以下である。
本発明においては、親水性コロイド層中に繁殖して画像を劣化させる各種の黴や細菌を防ぐために、特開昭63−271247号公報に記載のような防菌・防黴剤を添加するのが好ましい。
さらに、感光材料の被膜pHは4.0〜7.0が好ましく、より好ましくは4.0〜6.5である。
【0083】
本発明においては、感光材料の塗布安定性向上、静電気発生防止、帯電量調節等の点から界面活性剤を感光材料に添加することができる。界面活性剤としてはアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ベタイン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤があり、例えば特開平5−333492号に記載のものが挙げられる。本発明に用いる界面活性剤としてはフッ素原子含有の界面活性剤が好ましい。特に、フッ素原子含有界面活性剤を好ましく用いることができる。
【0084】
これらの界面活性剤の感光材料への添加量は特に限定されるものではないが、一般的には1×10-5〜1g/m2、好ましくは1×10-4〜1×10-1g/m2、更に好ましくは1×10-3〜1×10-2g/m2である。
これらのフッ素原子含有界面活性剤は単独で用いても、従来公知の他の界面活性剤と併用してもかまわないが、好ましくは従来公知の他の界面活性剤との併用である。
【0085】
感光材料は、通常のネガプリンターを用いたプリントシステムに使用される以外に、陰極線(CRT)を用いた走査露光方式にも適している。陰極線管露光装置は、レーザーを用いた装置に比べて、簡便でかつコンパクトであり、低コストになる。また、光軸や色の調整も容易である。
画像露光に用いる陰極線管には、必要に応じてスペクトル領域に発光を示す各種発光体が用いられる。例えば赤色発光体、緑色発光体、青色発光体のいずれか1種、あるいは2種以上が混合されて用いられる。スペクトル領域は、上記の赤、緑、青に限定されず、黄色、橙色、紫色或いは赤外領域に発光する蛍光体も用いられる。特に、これらの発光体を混合して白色に発光する陰極線管がしばしば用いられる。
【0086】
感光材料が異なる分光感度分布を有する複数の感光性層を持ち、陰極性管も複数のスペクトル領域の発光を示す蛍光体を有する場合には、複数の色を一度に露光、即ち陰極線管に複数の色の画像信号を入力して管面から発光させてもよい。各色ごとの画像信号を順次入力して各色の発光を順次行わせ、その色以外の色をカットするフィルムを通して露光する方法(面順次露光)を採っても良く、一般には、面順次露光の方が、高解像度の陰極線管を用いることができるため、高画質化のためには好ましい。
【0087】
感光材料は、ガスレーザー、発光ダイオード、半導体レーザー、半導体レーザーあるいは半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーと非線形光学結晶を組合わせた第二高調波発光光源(SHG)等の単色高密度光を用いたデジタル走査露光方式が好ましく使用される。システムをコンパクトで、安価なものにするために半導体レーザー、半導体レーザーあるいは固体レーザーと非線形光学結晶を組合わせた第二高調波発生光源(SHG)を使用することが好ましい。特にコンパクトで、安価、更に寿命が長く安定性が高い装置を設計するためには半導体レーザーの使用が好ましく、露光光源の少なくとも一つは半導体レーザーを使用することが好ましい。
【0088】
また、レーザー光源として具体的には、波長430〜450nmの青色半導体レーザー(2001年3月 第48回応用物理学関係連合講演会で日亜化学発表)、半導体レーザー(発振波長 約940nm)を導波路状の反転ドメイン構造を有するLiNbO3のSHG結晶により波長変換して取り出した約470nmの青色レーザー、半導体レーザー(発振波長 約1060nm)を導波路状の反転ドメイン構造を有するLiNbO3のSHG結晶により波長変換して取り出した約530nmの緑色レーザー、波長約685nmの赤色半導体レーザー(日立タイプNo.HL6738MG)、波長約650nmの赤色半導体レーザー(日立タイプNo.HL6501MG)などが好ましく用いられる。
このような走査露光光源を使用する場合、感光材料の分光感度極大波長は、使用する走査露光用光源の波長により任意に設定することができる。半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーあるいは半導体レーザーと非線形光学結晶を組合わせて得られるSHG光源では、レーザーの発振波長を半分にできるので、青色光、緑色光が得られる。従って、感光材料の分光感度極大は通常の青、緑、赤の3つの波長領域に持たせることが可能である。
このような走査露光における露光時間は、画素密度を400dpiとした場合の画素サイズを露光する時間として定義すると、好ましい露光時間としては10-4秒以下、更に好ましくは10-6秒以下である。
【0089】
本発明に適用できる好ましい走査露光方式については、前記の表に掲示した特許に詳しく記載されている。
また本発明の感光材料を処理するには、特開平2−207250号の第26頁右下欄1行目〜34頁右上欄9行目、及び特開平4−97355号の第5頁左上欄17行目〜18頁右下欄20行目に記載の処理素材や処理方法が好ましく適用できる。また、この現像液に使用する保恒剤としては、前記の表に掲示した特許に記載の化合物が好ましく用いられる。
【0090】
本発明は迅速処理適性を有する感光材料にも好ましく適用される。
発色現像時間とは、感光材料が発色現像液中に入ってから次の処理工程の漂白定着液に入るまでの時間をいう。例えば、自動現像機などで処理される場合には、感光材料が発色現像液中に浸漬されている時間(いわゆる液中時間)と、感光材料が発色現像液を離れ次の処理工程の漂白定着浴に向けて空気中を搬送されている時間(いわゆる空中時間)との両者の合計を発色現像時間という。同様に、漂白定着時間とは、感光材料が漂白定着液中に入ってから次の水洗又は安定浴に入るまでの時間をいう。また、水洗又は安定化時間とは、感光材料が水洗又は安定化液中に入ってから乾燥工程に向けて液中にある時間(いわゆる液中時間)をいう。
【0091】
本発明において迅速処理を行う場合には、発色現像時間は好ましくは60秒以下、更に好ましくは50秒以下6秒以上、より好ましくは30秒以下6秒以上である。同様に、漂白定着時間は好ましくは60秒以下、更に好ましくは50秒以下6秒以上、より好ましくは30秒以下6秒以上である。また、水洗又は安定化時間は、好ましくは150秒以下、更に好ましくは130秒以下6秒以上である。
【0092】
感光材料を露光後、現像する方法としては、従来のアルカリ剤と現像主薬を含む現像液で現像する方法、現像主薬を感光材料に内蔵し、現像主薬を含まないアルカリ液などのアクチベーター液で現像する方法などの湿式方式のほか、処理液を用いない熱現像方式などを用いることができる。特に、アクチベーター方法は、現像主薬を処理液に含まないため、処理液の管理や取扱いが容易であり、また廃液処理時の負荷が少なく環境保全上の点からも好ましい方法である。 アクチベーター方法において、感光材料中に内蔵される現像主薬またはその前駆体としては、例えば、特開平8−234388号、同9−152686号、同9−152693号、同9−211814号、同9−160193号に記載されたヒドラジン型化合物が好ましい。
【0093】
また、感光材料の塗布銀量を低減し、過酸化水素を用いた画像増幅処理(補力処理)する現像方法も好ましく用いられる。特に、この方法をアクチベーター方法に用いることは好ましい。具体的には、特開平8−297354号、同9−152695号に記載された過酸化水素を含むアクチベーター液を用いた画像形成方法が好ましく用いられる。
アクチベーター方法において、アクチベーター液で処理後、通常脱銀処理されるが、低銀量の感光材料を用いた画像増幅処理方法では、脱銀処理を省略し、水洗または安定化処理といった簡易な方法を行うことができる。また、感光材料から画像情報をスキャナー等で読み取る方式では、撮影用感光材料などの様に高銀量の感光材料を用いた場合でも、脱銀処理を不要とする処理形態を採用することができる。
【0094】
本発明で用いられるアクチベーター液、脱銀液(漂白/定着液)、水洗および安定化液の処理素材や処理方法は公知のものを用いることができる。好ましくは、リサーチ・ディスクロージャーItem 36544(1994年9月)第536頁〜第541頁、特開平8−234388号に記載されたものを用いることができる。
【0095】
感光材料をプリンター露光する際、米国特許第4,880,726号に記載のバンドストップフィルターを用いることが好ましい。これによって光混色が取り除かれ、色再現性が著しく向上する。
本発明においては、欧州特許EP0789270A1や同EP0789480A1号に記載のように、画像情報を付与する前に、予め、黄色のマイクロドットパターンを前露光し、複写規制を施しても構わない。
【0096】
感光材料は、以下の公知資料に記載の露光、現像システムと組み合わせることで好ましく用いることができる。
・特開平10−333253に記載の自動プリント並びに現像システム
・特開2000−10206に記載の感光材料搬送装置
・特開平11−215312に記載の画像読取装置を含む記録システム
・特開平11−88619並びに特開平10−202950に記載のカラー画像記録方式からなる露光システム
・特開平10−210206に記載の遠隔診断方式を含むデジタルフォトプリントシステム。
【0097】
【実施例】
以下、実施例に従って本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
(青感性乳剤層に用いる、乳剤Aの調製)
立方体の、平均粒子サイズ0.70μmの大サイズ乳剤A1と0.50μmの小サイズ乳剤A2との1:1混合物(銀mol比)を調整し、乳剤Aとした。
乳剤A1及びA2の粒子サイズ分布の変動係数はそれぞれ0.09と0.11であった。各サイズ乳剤とも臭化銀0.5mol%を、塩化銀を基体とする粒子表面の一部に局在含有させた。この粒子の最表層からの体積で10%に相当する部位には、全ハロゲンに対して0.1モル%の沃素イオンを存在させ、ハロゲン化銀1モルに対して1×10-6mol のK4Ru(CN)6 、ハロゲン化銀1モルに対して1×10-7mol の黄血塩、ハロゲン化銀1モルに対して1×10-8モルのK2IrCl5(H2O)を存在させた。
この乳剤には下記の青感性増感色素A及びBを銀1モル当たり乳剤A1に対しそれぞれ3.2 ×10-4モル、乳剤A2に対しそれぞれ4.4 ×10-4モル添加し分光増感を施した。
【0098】
【化4】
【0099】
(緑感性乳剤層に用いる、乳剤Bの調整)
立方体の、平均粒子サイズ0.40μmである乳剤Bを調整した。粒子サイズ分布の変動係数はそれぞれ0.09。臭化銀0.4モル%を粒子表面に局在含有させた。沃化銀0.1モル%を粒子表面近傍に含有させた。また乳剤Aと同様に乳剤粒子中に、K4Ru(CN)6 、黄血塩、K2IrCl5(H2O)を存在させた。以上の様にして乳剤Bを調整した。
増感色素Dをハロゲン化銀1モル当り、3.3 ×10-4モル、また、増感色素Eをハロゲン化銀1モル当り、5×10-5モル、また、増感色素Fをハロゲン化銀1モル当り、2.3 ×10-4モル添加した。
【0100】
【化5】
【0101】
(赤感性乳剤層に用いる、乳剤Cの調整)
立方体、平均粒子サイズ0.40μmの大サイズ乳剤C1と0.30μmの小サイズ乳剤C2との1:1混合物(銀モル比)を調整した。粒子サイズ分布の変動係数はそれぞれ0.09と0.11。各サイズ乳剤とも各サイズ乳剤とも沃化銀0.1モル%を粒子表面近傍に含有し、臭化銀0.8モル%を粒子表面に局在含有させた。また乳剤Aと同様に乳剤粒子中に、K4Ru(CN)6 、黄血塩、K2IrCl5(H2O)を存在させた。
増感色素GおよびHをそれぞれ、ハロゲン化銀1モル当り、大サイズ乳剤に対しては8.0×10-5モル、小サイズ乳剤に対しては10.7×10-5モル添加した。さらに、以下の化合物Iを赤感性乳剤層にハロゲン化銀1モル当たり3.0×10-3モル添加した。
【0102】
【化6】
【0103】
【化7】
【0104】
(カラー写真感光材料、塗布サンプルの調整)
紙の両面をポリエチレン樹脂で被覆してなる支持体の表面に、コロナ放電処理を施した後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含むゼラチン下塗層を設け、さらに第一層〜第七層の写真構成層を順次塗設して、以下に示す層構成のハロゲン化銀カラー写真感光材料の試料(101)を作製した。各写真構成層用の塗布液は、以下のようにして調製した。
【0105】
第一層塗布液調製
イエローカプラー(ExY)57g、色像安定剤(Cpd−1)7g、色像安定剤(Cpd−2)4g、色像安定剤(Cpd−3)7g、色像安定剤(Cpd−8)2gを溶媒(Solv−1)21g及び酢酸エチル80mlに溶解し、この液を4gのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含む23.5質量%ゼラチン水溶液220g中に高速攪拌乳化機(ディゾルバー)で乳化分散し、水を加えて900gの乳化分散物Aを調製した。
一方、前記乳化分散物Aと乳剤Aとを混合溶解し、後記組成となるように第一層塗布液を調製した。乳剤塗布量は、銀量換算塗布量を示す。
【0106】
第二層〜第七層用の塗布液も第一層塗布液と同様の方法で調製した。各層のゼラチン硬化剤としては、ソジウム(2,4−ジクロロ−6−オキシド−1,3,5−トリアジン)(H−1)、(H−2)、(H−3)を用いた。また、各層にAb−1、Ab−2、Ab−3、及びAb−4をそれぞれ全量が15.0mg/m2、60.0mg/m2、5.0mg/m2及び10.0mg/m2となるように添加した。
【0107】
【化8】
【0108】
【化9】
【0109】
次に、化学増感工程を説明する。前記の乳剤を40℃に加熱し塩化金酸及び、最適量のチオ硫酸ナトリウム五水和物を加え、次に60℃で40分加熱した後、次に60℃以上に加熱した後、前期の増感色素を加え、40℃に冷却後、1−(3−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールを、それぞれハロゲン化銀1モル当り3.3×10-4モル、1.0×10-3モルおよび5.9×10-4モル添加した。本発明の乳剤は、後に表2に示した様に、塩化金酸及び、チオ硫酸ナトリウム五水和物を本発明の化合物に変更して化学増感を行うことにより調整した。
【0110】
また、1−(3−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールを、第二層、第四層、第六層および第七層にも、それぞれ0.2mg/m2 、0.2mg/m2 、0.6mg/m2 、0.1mg/m2 となるように添加した。
【0111】
また、青感性乳剤層および緑感性乳剤層に対し、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデンを、それぞれハロゲン化銀1モル当たり、1×10-4モル、2×10-4モル添加した。
また、赤感性乳剤層にメタクリル酸とアクリル酸ブチルの共重合体ラテックス(質量比1:1、平均分子量200000〜400000)を0.05g/m2 を添加した。
また第二層、第四層および第六層にカテコール−3,5−ジスルホン酸二ナトリウムをそれぞれ6mg/m2 、6mg/m2 、18mg/m2 となるように添加した。
また、イラジエーション防止のために、以下の染料(カッコ内は塗布量を表す)を添加した。
【0112】
【化10】
【0113】
(層構成)
以下に、各層の構成を示す。数字は塗布量(g/m2 )を表す。ハロゲン化銀乳剤は、銀換算塗布量を表す。
支持体 ポリエチレン樹脂ラミネート紙
[第一層側のポリエチレン樹脂に白色顔料(TiO2;含有率16質量%、ZnO;含有率4質量%)と蛍光増白剤(4,4'−ビス(5−メチルベンゾオキサゾリル)スチルベン。含有率0.03質量%)、青味染料(群青)を含む]
第一層(青感性乳剤層)
乳剤A 0.24
ゼラチン 1.25
イエローカプラー(ExY) 0.57
色像安定剤(Cpd−1) 0.07
色像安定剤(Cpd−2) 0.04
色像安定剤(Cpd−3) 0.07
色像安定剤(Cpd−8) 0.02
溶媒(Solv−1) 0.21
【0114】
第二層(混色防止層)
ゼラチン 0.99
混色防止剤(Cpd−4) 0.09
色像安定剤(Cpd−5) 0.018
色像安定剤(Cpd−6) 0.13
色像安定剤(Cpd−7) 0.01
溶媒(Solv−1) 0.06
溶媒(Solv−2) 0.22
【0115】
第三層(緑感性乳剤層)
乳剤B 0.14
ゼラチン 1.36
マゼンタカプラー(ExM) 0.15
紫外線吸収剤(UV−A) 0.14
色像安定剤(Cpd−2) 0.02
色像安定剤(Cpd−4) 0.002
色像安定剤(Cpd−6) 0.09
色像安定剤(Cpd−8) 0.02
色像安定剤(Cpd−9) 0.03
色像安定剤(Cpd−10) 0.01
色像安定剤(Cpd−11) 0.0001
溶媒(Solv−3) 0.11
溶媒(Solv−4) 0.22
溶媒(Solv−5) 0.20
【0116】
第四層(混色防止層)
ゼラチン 0.71
混色防止層(Cpd−4) 0.06
色像安定剤(Cpd−5) 0.013
色像安定剤(Cpd−6) 0.10
色像安定剤(Cpd−7) 0.007
溶媒(Solv−1) 0.04
溶媒(Solv−2) 0.16
【0117】
第五層(赤感性乳剤層)
乳剤C 0.12
ゼラチン 1.11
シアンカプラー(ExC−2) 0.13
シアンカプラー(ExC−3) 0.03
色像安定剤(Cpd−1) 0.05
色像安定剤(Cpd−6) 0.06
色像安定剤(Cpd−7) 0.02
色像安定剤(Cpd−9) 0.04
色像安定剤(Cpd−10) 0.01
色像安定剤(Cpd−14) 0.01
色像安定剤(Cpd−15) 0.12
色像安定剤(Cpd−16) 0.03
色像安定剤(Cpd−17) 0.09
色像安定剤(Cpd−18) 0.07
溶媒(Solv−5) 0.15
溶媒(Solv−8) 0.05
【0118】
第六層(紫外線吸収層)
ゼラチン 0.46
紫外線吸収剤(UV−B) 0.45
化合物(S1−4) 0.0015
溶媒(Solv−7) 0.25
第七層(保護層)
ゼラチン 1.00
ポリビニルアルコールのアクリル変性共重合体
(変性度17%) 0.04
流動パラフィン 0.02
界面活性剤(Cpd−13) 0.01
【0119】
【化11】
【0120】
【化12】
【0121】
【化13】
【0122】
【化14】
【0123】
【化15】
【0124】
【化16】
【0125】
【化17】
【0126】
【化18】
【0127】
【化19】
【0128】
【化20】
【0129】
化学増感工程での化学増感剤の代わりに後述の表2に示す化学増感剤を用いて、試料(101)の乳剤Bと同様に残りの乳剤を調整し、試料(101)と同様にして残りの試料を作製した。
【0130】
これらの試料の写真特性を調べるために以下のような実験を行った。
実験1 センシトメトリー(低照度および高照度)
各塗布試料に対して感光計(富士写真フイルム(株)製FWH型)を用いて、センシトメトリー用の階調露光を与えた。SP−2フィルターを装着し、露光量200lx・sec(ルックス・秒)で、低照度10秒間露光した。
また、高照度露光用感光計(山下電装(株)製HIE型)を用いて、センシトメトリー用の階調露光を与えた。SP−2フィルターを装着し、高照度10-4秒間露光した。
露光後は、後述する発色現像処理Aを行った。
【0131】
処理後の各試料のマゼンタ発色濃度を測定し、10秒露光低照度感度、10-4秒露光高照度感度をそれぞれ求めた。感度は、最低発色濃度より1.5高い発色濃度を与える露光量の逆数をもって規定し、試料(101)の現像処理した感度を100とした相対値を相対感度とした。また、該感度点と濃度1.5での感度点との直線の傾きから階調を求めた。
【0132】
実験2 感度の露光湿度依存性
各試料に露光を与える際の相対湿度を55%及び80%に設定した。前記1/10秒間露光後に処理Aを行い、各試料のマゼンタ発色濃度を測定した。感度は、最低発色濃度より0.5高い発色濃度を与える露光量の逆数をもって規定し、試料(101)の感度を100としたときの相対値を相対感度とした。湿度55%で露光した場合の相対感度から湿度80%で露光した場合の相対感度を差し引いた差(以後dS(湿度)と示す)を求めた。
【0133】
実験1及び実験2の結果をまとめて、表2に示した。
【0134】
【表2】
【0135】
表2及び本実施例から、以下のことが判る。
本発明の AuS-構造を有するイオンを放出する化合物を用いた乳剤は、従来の塩化金酸を用いた金硫黄増感乳剤(試料101)や、メソイオン金を用いた金硫黄増感乳剤(試料102)よりも高感度である。10-4秒露光(高照度露光)時に特に高感度であり、相反則特性に優れる。かつまた、従来の金硫黄増感乳剤は、露光時の湿度変動によって感度変化し易い問題があったのに対し、本発明の乳剤は、感度変動が極めて小さい利点を有することが判った。
AuS-構造を有するイオンを放出しない比較化合物B や、同じく AuS-構造を有するイオンを放出しないメソイオン金(比較化合物A )では、以上のような効果は得られなかった。また、比較化合物Aや比較化合物B、比較化合物Cを、硫黄増感剤の併用なしに用いた場合、著しく低感度であった。従ってこれらの金増感剤を用いた方法では、硫黄増感剤の併用なしには十分な感度を得ることができない。比較化合物A 、B 、C は、金増感剤としてのみ機能し、実質的に金硫黄増感剤として機能しないと考えられる。
一方、Na3Au(S2O3)2や比較化合物Dを用いると、硫黄増感剤の併用なしに、試料101などの金硫黄増感乳剤を超える高感度(10秒露光)が得られたものの、10-4秒露光時の感度が低い問題点を有していた。
また、特公昭45−29274記載のメルカプトグルコシド金(I) ( 金(I) チオグルコース)を特公昭45−29274に従って合成し金増感剤として用いて同様の実験を行った。従来の金増感法と同等レベル以上のやや好ましい結果が得られた。 尚、特公昭45−29274記載のメルカプトグルコシド金(I)は、α型とβ型について区別していない。今回我々は、より詳細に立体構造と増感機能について検討した。即ち、β型のみのメルカプトグルコシド金(I)を用いると低感度となり、α型が主成分のα―チオグルコース金(I)が特に優れることが判った。
加えて、本発明の金(I)チオマンノース等を用いた場合に、更に優れた好ましい結果が得られた。特に、高照度露光時の感度・露光時の湿度変動に対する耐性の点で、著しい効果を示した。
【0136】
以下に処理工程を示す。
[処理A]
上記感光材料101を127mm巾のロール状に加工し、富士写真フイルム(株)製ミニラボプリンタープロセッサー PP1258ARを用いて像様露光後、下記処理工程にてカラー現像タンク容量の2倍補充するまで、連続処理(ランニングテスト)を行った。このランニング液を用いた処理を処理Aとした。
処理工程 温 度 時 間 補充量*
カラー現像 38.5℃ 45秒 45ミリリットル
漂白定着 38.0℃ 45秒 35ミリリットル
リンス(1) 38.0℃ 20秒 −
リンス(2) 38.0℃ 20秒 −
リンス(3)** 38.0℃ 20秒 −
リンス(4)** 38.0℃ 30秒 121ミリリットル
*感光材料1m2当たりの補充量
**富士写真フイルム社製 リンスクリーニングシステムRC50Dをリンス(3)に装置し、リンス(3)からリンス液を取り出し、ポンプにより逆浸透膜モジュール(RC50D)へ送る。同槽で得られた透過水はリンス(4)に供給し、濃縮水はリンス(3)に戻す。逆浸透モジュールへの透過水量は50〜300ミリリットル/分を維持するようにポンプ圧を調整し、1日10時間温調循環させた。
(リンスは(1)から(4)へのタンク向流方式とした。)
【0137】
各処理液の組成は以下の通りである。
【0138】
【0139】
【0140】
実施例2
実施例1で作成した乳剤を用い、層構成を(101)から下記のように変えて薄層化した試料を調製した。また、第三層の乳剤Bを実施例1で作成した乳剤に変更した試料を作成した。これらの試料に対し実施例1の実験1及び2を行った。
層構成は試料(201)で示す。
結果は実施例1の結果と同様であり、薄層化した試料の超迅速処理でも本発明の効果が確かめられた。
【0141】
試料201の作製
第一層(青感性乳剤層)
乳剤A 0.24
ゼラチン 1.25
イエローカプラー(ExY) 0.57
色像安定剤(Cpd−1) 0.07
色像安定剤(Cpd−2) 0.04
色像安定剤(Cpd−3) 0.07
色像安定剤(Cpd−8) 0.02
溶媒(Solv−1) 0.21
【0142】
第二層(混色防止層)
ゼラチン 0.60
混色防止剤(Cpd−19) 0.09
色像安定剤(Cpd−5) 0.007
色像安定剤(Cpd−7) 0.007
紫外線吸収剤(UV−C) 0.05
溶媒(Solv−5) 0.11
【0143】
第三層(緑感性乳剤層)
乳剤B 0.14
ゼラチン 0.73
マゼンタカプラー(ExM) 0.15
紫外線吸収剤(UV−A) 0.05
色像安定剤(Cpd−2) 0.02
色像安定剤(Cpd−7) 0.008
色像安定剤(Cpd−8) 0.07
色像安定剤(Cpd−9) 0.03
色像安定剤(Cpd−10) 0.009
色像安定剤(Cpd−11) 0.0001
溶媒(Solv−3) 0.06
溶媒(Solv−4) 0.11
溶媒(Solv−5) 0.06
【0144】
第四層(混色防止層)
ゼラチン 0.48
混色防止層(Cpd−4) 0.07
色像安定剤(Cpd−5) 0.006
色像安定剤(Cpd−7) 0.006
紫外線吸収剤(UV−C) 0.04
溶媒(Solv−5) 0.09
【0145】
第五層(赤感性乳剤層)
乳剤C 0.12
ゼラチン 0.59
シアンカプラー(ExC−2) 0.13
シアンカプラー(ExC−3) 0.03
色像安定剤(Cpd−7) 0.01
色像安定剤(Cpd−9) 0.04
色像安定剤(Cpd−15) 0.19
色像安定剤(Cpd−18) 0.04
紫外線吸収剤(UV−7) 0.02
溶媒(Solv−5) 0.09
【0146】
第六層(紫外線吸収層)
ゼラチン 0.32
紫外線吸収剤(UV−C) 0.42
溶媒(Solv−7) 0.08
第七層(保護層)
ゼラチン 0.70
ポリビニルアルコールのアクリル変性共重合体
(変性度17%) 0.04
流動パラフィン 0.01
界面活性剤(Cpd−13) 0.01
ポリジメチルシロキサン 0.01
二酸化珪素 0.003
【0147】
作製された各試料は、実施例1の実験1及び2と同様に露光し、発色現像処理は、以下に示す現像処理Bに従い、超迅速処理を行った。
【0148】
[処理B]
上記の感光材料を127mm幅のロール状に加工し、処理時間、処理温度を変えられるように富士写真フイルム(株)製ミニラボプリンタープロセッサー PP350を改造した実験処理装置用いて感光材料試料に平均濃度のネガティブフイルムから像様露光を行い、下記処理工程にて使用した発色現像補充液の容量が発色現像タンク容量の0.5倍となるまで連続処理(ランニングテスト)を行った。
【0149】
処理工程 温度 時間 補充量*
発色現像 45.0℃ 15秒 45mL
漂白定着 40.0℃ 15秒 35mL
リンス1 40.0℃ 8秒 −
リンス2 40.0℃ 8秒 −
リンス3** 40.0℃ 8秒 −
リンス4** 38.0℃ 8秒 121mL
乾燥 80℃ 15秒
(注)
* 感光材料1m2あたりの補充量
**富士写真フイルム(株)製リンスクリーニングシステムRC50Dをリンス(3)に装着し、リンス(3)からリンス液を取り出してポンプにより逆浸透モジュール(RC50D)へ送る。同槽で送られた透過水はリンス(4)に供給し、濃縮液はリンス(3)に戻す。逆浸透モジュールへの透過水量は50〜300mL/分を維持するようにポンプ圧を調整し、1日10時間温調循環させた。リンスは(1)から(4)への4タンク向流方式とした。
【0150】
各処理液の組成は以下の通りである。
【0151】
【0152】
[リンス液] [タンク液] [補充液]
塩素化イソシアヌール酸ナトリウム 0.02g 0.02g
脱イオン水(電導度5μS/cm以下) 1000mL 1000mL
pH(25℃) 6.5 6.5
【0153】
【化21】
【0154】
実施例3
実施例2で作成した試料を用いて、レーザー走査露光によって画像形成を行った。
レーザー光源としては、半導体レーザーGaAlAs(発振波長 808.5nm)を励起光源としたYAG固体レーザー(発振波長 946nm)を反転ドメイン構造を有するLiNbO3 のSHG結晶により波長変換して取り出した473nmと、半導体レーザーGaAlAs(発振波長 808.7nm)を励起光源としたYVO4 固体レーザー(発振波長 1064nm)を反転ドメイン構造を有するLiNbO3のSHG結晶により波長変換して取り出した532nmと、AlGaInP(発振波長 約680nm:松下電産製タイプNo.LN9R20)とを用いた。3色のそれぞれのレーザー光はポリゴンミラーにより走査方向に対して垂直方向に移動し、試料上に、順次走査露光できるようにした。半導体レーザーの温度による光量変動は、ペルチェ素子を利用して温度が一定に保たれることで抑えられている。実効的なビーム径は、80μm、走査ピッチは42.3μm(600dpi)であり、1画素あたりの平均露光時間は、1.7×10-7秒であった。
露光後、発色現像処理Bにより処理を行ったところ、実施例1、2での高照度露光の結果と同様の結果が得られ、レーザー走査露光を用いた画像形成にも適していることが分かった。
また、レーザー光源として上記のものの代わりに、波長約440nmの青色半導体レーザー(2001年3月 第48回応用物理学関係連合講演会で日亜化学発表)、半導体レーザー(発振波長 約1060nm)を導波路状の反転ドメイン構造を有するLiNbO3のSHG結晶により波長変換して取り出した約530nmの緑色レーザーおよび波長約650nmの赤色半導体レーザー(日立タイプNo.HL6501MG)を用い、同様の実験を行い、上記と同様の結果を得た。
【0155】
【発明の効果】
本発明の乳剤は、高感度、硬調で、かつ露光時の湿度条件の違いによる感度変動が小さく、高照度での相反則特性に優れるハロゲン化銀乳剤であり、また安定製造に適する。
Claims (6)
- カルコゲン原子−金属原子結合を持つ化合物を放出する化合物であって、該化合物が、α型を主成分とするチオグルコース金(I)化合物、α型を主成分とするセレノグルコース金(I)化合物、または下記一般式(AUS2)もしくは(AUS3)のいずれかで表される化合物のいずれかを添加し、反応させたことを特徴とするハロゲン化銀乳剤。
- カルコゲン原子−金属原子結合を持つ化合物を放出する化合物であって、該化合物が、α型を主成分とするチオグルコース金(I)化合物、α型を主成分とするセレノグルコース金(I)化合物、または下記一般式(AUS2)もしくは(AUS3)のいずれかで表される化合物のいずれかにより化学増感されたことを特徴とするハロゲン化銀乳剤。
- 前記カルコゲン原子−金属原子結合を持つ化合物を放出する化合物が、α型を主成分とするチオグルコース金(I)化合物またはα型を主成分とするセレノグルコース金(I)化合物であって、α型の比率が60%以上である、チオグルコース金(I)化合物またはセレノグルコース金(I)化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載のハロゲン化銀乳剤。
- 前記ハロゲン化銀乳剤が、 塩化銀含有率が90モル%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のハロゲン化銀乳剤。
- 前記ハロゲン化銀乳剤が、ハロゲン化銀粒子のシェル部分に、全銀モルあたり0.01〜0.50モル%の沃化銀含有相を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のハロゲン化銀乳剤。
- 前記ハロゲン化銀乳剤が、下記のいずれかから選択されるイリジウム錯体を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のハロゲン化銀乳剤。
イリジウム錯体
[IrCl 5 (thiazole)] 2− 、[IrCl 5 (5−CH 3 −thiazole)] 2− 、[IrCl 5 (H 2 O)] 2− 、[IrCl 5 (H 2 O)] − 、[IrCl 4 (H 2 O) 2 ] − 、[IrCl 4 (H 2 O) 2 ] 0 、[IrCl 3 (H 2 O) 3 ] 0 、[IrCl 3 (H 2 O) 3 ] + 、[IrBr 5 (H 2 O)] 2− 、[IrBr 5 (H 2 O)] − 、[IrBr 4 (H 2 O) 2 ] − 、[IrBr 4 (H 2 O) 2 ] 0 、[IrBr 3 (H 2 O) 3 ] 0 、[IrBr 3 (H 2 O) 3 ] +
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