JP4253140B2 - アルミニウム合金パネル材のヘム加工方法およびアルミニウム合金パネル材 - Google Patents

アルミニウム合金パネル材のヘム加工方法およびアルミニウム合金パネル材 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウム合金パネル材のヘム加工方法およびヘム加工用アルミニウム合金パネル材(以下、アルミニウムを単にAlと言う)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、自動車、船舶あるいは車両などの輸送機、家電製品、建築、構造物の部材や部品用として、成形加工性 (以下、単に成形性と言う) に優れたAl-Mg 系のAA乃至JIS 規格に規定された (規格を満足する)5000 系や、成形性や焼付硬化性に優れたAl-Mg-Si系のAA乃至JIS 6000系 (以下、単に5000系乃至6000系と言う) のAl合金材(圧延パネル材、押出形材、鍛造材などの各アルミニウム合金展伸材を総称する)が使用されている。
【0003】
近年、排気ガス等による地球環境問題に対して、自動車などの輸送機の車体の軽量化による燃費の向上が追求されている。このため、特に、自動車の車体に対し、従来から使用されている鋼材に代わって、より軽量なAl合金材の適用が増加しつつある。
【0004】
このAl合金材の中でも、自動車のフード、フェンダー、ドア、ルーフ、トランクリッドなどのパネル構造体の、アウタパネル (外板) やインナパネル( 内板) 等のパネル材には、薄肉でかつ高強度Al合金パネル材として、JIS 乃至AA規格に規定された(JIS乃至AA規格を満足する) 、過剰Si型の6000系のAl合金パネル(板)材の使用が検討されている。
【0005】
この過剰Si型の6000系Al合金は、基本的には、Si、Mgを必須として含み、かつSi/Mg が1 以上である、Al-Mg-Si系アルミニウム合金である。そして、この過剰Si型6000系Al合金は、特に優れた時効硬化能を有しているため、プレス成形や曲げ加工時には低耐力化により成形性を確保するとともに、成形後の焼付塗装処理などの人工時効処理時の加熱により時効硬化して耐力が向上し、必要な強度を確保できる利点がある。
【0006】
また、これら過剰Si型6000系Al合金材は、Mg量などの合金量が多い、他の5000系のAl合金などに比して、合金元素量が比較的少ない。このため、これら6000系Al合金材のスクラップを、Al合金溶解材 (溶解原料) として再利用する際に、元の6000系Al合金鋳塊が得やすく、リサイクル性にも優れている。
【0007】
前記自動車パネル構造体のアウタパネルでは、絞り工程やトリム工程等のプレスなどによる成形加工後に、アウタパネルの縁を折り曲げて (180 度折り返して) 、成形加工後のインナパネルの縁との接合を行う、ヘミング加工 (はぜ折り加工、以下ヘム加工と言う) が行われる。
【0008】
このヘミング加工の概要を図2(a)〜(d) に示す。同図から分かる通り、ヘミング加工は、以下に詳述する、図2(a)のダウンフランジ工程、図2(b)のプリヘム工程を経て、図2(c)のフラットヘム工程か図2(d)のロープヘム工程の選択により基本的に行われる。
【0009】
まず、図2(a)のダウンフランジ工程は、ダイス3aと板押さえ5aにより固定した、成形加工後のアウタパネル1 の縁1aを、ポンチ4aにより、直角(90 °) に近い角度まで折り曲げる。
【0010】
次に、図2(b)のプリヘム工程は、ダウンフランジ工程後のアウタパネル1 を、同じく、ダイス3bと板押さえ5bにより固定し、アウタパネル1 の縁1bを、ポンチ4bにより、更に約135 °まで内側に折り曲げる。
【0011】
更に、図2(c)のフラットヘム工程や図2(d)のロープヘム工程は、絞り工程やトリム工程等の成形加工後のインナパネル2 の縁をプリヘム工程後のアウタパネル1 の折り曲げ部に収容 (挿入) する。そして、アウタパネル1 およびインナパネル2 とを、板押さえ (図示せず) とダイス3c、3dにより固定するとともに、アウタパネル1 の縁1c、1dを、ポンチ4c、4dにより、更に180 °の角度まで内側に折り曲げフラットヘムを形成する。このようにして、インナパネル2 の縁と、アウタパネル1 のフラットヘム部(180 度折り曲げ部) とが接触して、両者が端部同士において接合されるとともに密着される。
【0012】
この内、図2(d)のロープヘム工程は、図2(c)のフラットヘム工程に比較して、ヘム縁曲部(折り曲げ部) の形状が、円弧状に膨らんだ、ロープ状の形状を有しており、シャープ乃至フラットなヘム形状ではなく、外観性も良くない。また、アウタパネルとインナパネルとの接触面積が少なく接合性や密着性に欠ける等の問題もある。
【0013】
このため、特に、外観や美観を重視する自動車部品などにおいては、ヘム加工の最終工程を、厳しい曲げ加工となる、図2(c)のフラットヘム工程により行うことが通常となっている。
【0014】
ここにおいて、前記アウタパネルとインナパネル用のAl合金パネル材は、パネル材の軽量化のために、1.2mm 以下の板厚に近年益々薄肉化されている。例えば、アウタパネル用のAl合金パネル材は0.8mm 以上の、0.9 〜1.2mm の板厚が主流である。また、インナパネル用のAl合金パネル材は1.0mm 以下の、0.8 〜1.0mm の板厚が主流である。
【0015】
しかし、これら薄肉化されたAl合金パネル材では、特にアウタパネル材の縁曲部に挿入されるインナパネル材の板厚が薄くなるほど、曲げ条件としては厳しくなり、フラットヘム加工が難しくなる。
【0016】
このため、薄肉化されたAl合金パネル材のフラットヘム加工において、形成されるフラットヘムの縁曲部A には、図3 に程度順に示すような、肌荒れX 、微小な割れY 、比較的大きな割れZ 等の不良が生じ易くなり、部品への適用ができなくなることが多い。
【0017】
また、フラットヘム加工においては、図3 に示すように( 図2(C)にも図示) 、アウタパネル材1 の縁曲部A に挿入されるインナパネル材2 の端部2aと、縁曲部A の内面Aaとの間には、必然的に若干隙間t がある状態で加工される。
この隙間t がある乃至この隙間t が大きくなると、アウタパネル材1 の縁曲部A(曲げ部) の厚みが薄くなり、曲げ条件としては厳しくなるため、割れZ 等の不良が生じ易くなる。そして、前記した薄肉化されたAl合金パネル材では、この傾向が顕著となる。
【0018】
これに対し、従来から、フラットヘム加工工程側や、Al合金板の素材側で、前記ヘム部 (縁曲部、折り曲げ部) の不良発生を防止する技術も種々提案されている。
【0019】
例えば、特公昭63-2690 号公報などでは、186MPa程度の高強度なAl合金板のフラットヘム加工において、前記図2(a)のダウンフランジ工程において、アウタパネル材に形成されるフランジコーナー部の曲げ半径Rd (ダイスの肩半径) を大きくし、より具体的には、Al合金板の板厚との関係で、曲げ半径Rdを0.8t〜1.8t (但しt はAl合金板の板厚) として、前記不良の発生を防止することが開示されている。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、同公報では、フラットヘム加工において、アウタパネル材の縁曲部に挿入されるインナパネル材は1.2mm 程度と比較的厚く、曲げ条件としては厳しくなく、フラットヘム加工が比較的容易である。これに対し、0.8 〜1.0mm 程度の比較的薄いインナパネル材を用いてフラットヘム加工した場合、曲げ半径Rdなどを大きくしても、フラットヘムの縁曲部に割れが生じる。これは、前記した通り、アウタパネル材縁曲部に挿入されるインナパネル材端部と縁曲部内面との間の隙間の存在にも起因している。
【0021】
このため、フラットヘム加工工程側における、前記した薄板Al合金パネル材の有効なフラットヘム加工性の実際的な改善技術はあまり無い。このため、材料側において、6000系Al合金パネル材の耐力自体を下げ、フラットヘム加工性を改善していたのが実情である。
【0022】
しかし、6000系Al合金パネル材の耐力を低下させすぎた場合、Al合金パネル材の塗装焼き付け処理(人工時効硬化処理)後の耐力が必然的に低くなる。
【0023】
特に、近年、Al合金パネル材の塗装焼き付け処理の温度は、省エネルギー化の要求と塗料改善とによって、益々低温短時間化される傾向にあり、従来低温短時間化の常識的であった、170 ℃×20分の処理から、150 ℃×20分の低温短時間処理条件などに、益々低温化する傾向にある。
【0024】
このため、このような低温短時間化された塗装焼き付け処理条件では、ヘム加工性の改善のために、6000系Al合金パネル材の耐力を低下させた場合、この種パネル構造体用途に要求される170MPa以上の強度が得られない。
【0025】
このように、薄板化された6000系Al合金パネル材のヘム加工性と低温での人工時効硬化能とは、これまでの高成形性化と高強度化などとの課題と同様に、相矛盾する技術課題であって、両立させることは難しい。このため、従来から種々提案されている6000系Al合金パネル材の晶出物や析出物の制御技術や、Cuなどを多量に添加する技術をもってしても、薄板化された6000系Al合金パネル材のヘム加工性と低温での人工時効硬化能とを同時に達成することはかなり難しい技術課題となる。
【0026】
本発明はこの様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、ヘム加工性と低温での人工時効硬化能とを同時に満足する、Al合金パネル材のヘム加工方法およびヘム加工用Al合金パネル材を提供しようとするものである。
【0027】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、本発明アルミニウム合金パネル材のヘム加工方法 (請求項1)の要旨は、自動車パネル構造体の板厚が0.8mm 以上であるアルミニウム合金アウタパネル材を、自動車パネル構造体の板厚が1.0mm 以下のアルミニウム合金インナパネル材に接合するフラットヘム加工方法であって、前記アウタパネル材の縁曲げ部に挿入される前記インナパネル材端部と前記縁曲げ部の内面との間に隙間t がヘム縁曲部の周長 lとの比t/l で0.3 より大きく、かつ0.6 以下ある状態でフラットヘム加工するに際し、前記アウタパネル材を、Si:0.4〜1.3%、Mg:0.4〜1.2%を含み、かつSi/Mg が1 以上であり、Mn:0.15%以下、Cu:0.1% 以下に規制し、耐力を110 〜140MPaの範囲としたSi過剰型のAl-Mg-Si系アルミニウム合金とし、かつ前記フラットヘム加工後のアウタパネル材の2%ストレッチ付与後150 ℃×20分の人工時効処理後の耐力を170MPa以上とすることである。
【0028】
また、本発明ヘム加工用アルミニウム合金パネル材 (請求項4 ) の要旨は、前記請求項1乃至3のいずれかの方法でフラットヘム加工されるアウタパネル材用のAl-Mg-Si系アルミニウム合金パネル材である。
【0029】
なお、本発明で言うAl合金パネル材とは、熱間圧延板材、冷間圧延板材、これらを後述する調質処理 (熱処理) を施した板材で、成形用の板材を含みかつ総称する。
【0030】
本発明者らは、特にインナパネル材が1.0mm 以下に薄板化された6000系Al合金パネル材の、しかも、アウタパネル材の縁曲部に挿入されるインナパネル材端部と縁曲部内面との間の隙間がある状態でのフラットヘム加工について、ヘム加工が優れ、かつ通常の170 ℃×20分の条件では勿論のこと、前記150 ℃×20分の低温短時間の人工時効処理 (塗装焼き付け処理) 条件でも170MPa以上の強度が得られる素材条件について改めて検討した。
【0031】
この結果、フラットヘム加工されるアウタパネル材を、耐力を110 〜140MPaの範囲とし、かつ特定の成分組成範囲としたSi過剰型のAl-Mg-Si系アルミニウム合金とすれば、特にインナパネル材が1.0mm 以下に薄板化された6000系Al合金パネル材であって、しかも、アウタパネル材の縁曲部に挿入されるインナパネル材端部と縁曲部内面との間の隙間がある状態でのフラットヘム加工であっても、ヘム加工性を改善でき、かつ低温での人工時効硬化能とを同時に満足する効果を有することを知見した。
【0032】
この効果は、特に請求項2 に記載のように、前記フラットヘム加工に先立つダウンフランジ加工における前記アルミニウム合金パネル材の90°曲げ半径を0.5 〜2.0mm の範囲とした場合に大きい。
【0033】
また本発明はこのような効果を有するため、請求項3 に記載のように、前記フラットヘム加工の前に6000系Al合金板材が予めプレス成形され、歪みが導入されて、ヘム加工が低下する、特に自動車アウタパネル用などのヘム加工方法に適用されて好適である。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態につき、図面を用いて説明する。
まず、本発明でのフラットヘム加工方法自体は、前記図2(a)〜(c) で説明したフラットヘム工程を含む従来のヘム加工と、工程および各工程の条件も、基本的には同じである。
【0035】
但し、本発明でフラットヘム加工の対象とするのは、前記した通り、Al合金アウタパネル材の板厚が0.8mm 以上で、Al合金インナパネル材の板厚が1.0mm 以下のものとする。Al合金アウタパネル材の板厚がこれより薄く、Al合金インナパネル材の板厚がこれより厚いものでは、本発明を用いずとも、ヘム加工性と低温での人工時効硬化能とを同時に達成することは比較的容易である。
【0036】
なお、本発明でのフラットヘム加工が、Al合金パネル材の4 周囲に対して全て行われるか、選択される辺 (側縁部) のみに対して行われかは、部材の設計に応じて、適宜選択される。
【0037】
(ダウンフランジ工程)
まず、ヘム加工における、図2(a)のダウンフランジ工程は、必要により絞り工程やトリム工程等の成形加工された後のAl合金アウタパネル材1 を、ダイス3aと板押さえ5aにより固定し、アウタパネル材1 の縁1aを、ポンチ4aにより、直角に近い角度まで折り曲げる。
【0038】
この際、アウタパネル材1 の90°曲げ半径が0.5 〜2.0mm の範囲とすることが好ましい。アウタパネル材1 の90°曲げ半径は、図2(a)のダイス3aの肩半径Rdおよびポンチ4aの肩半径Rpを調整して行う。
【0039】
アウタパネル材の90°曲げ半径が0.5mm 未満の場合、特にインナパネル材が1.0mm 以下に薄板化された6000系Al合金パネル材であって、しかも、アウタパネル材の縁曲部に挿入されるインナパネル材端部と縁曲部内面との間の隙間がある状態でのフラットヘム加工では、本発明でのアウタパネル材の耐力規定にも関わらず、フラットヘム加工工程において、前記図3 に示した割れ等の不良が生じやすくなる。
【0040】
一方、アウタパネル材の90°曲げ半径が2.0mm を越える場合、図2(d)に示したロープヘムに近くなり、ヘム縁曲部の外観なり美観なりが損なわれる可能性が大きくなる。また、フラットヘムの縁曲部の本来の設計上の外径線乃至外形線に対し、実際の加工後の外形線が短くなる、或いは逆に長すぎたりして、形状精度や寸法精度が出ない可能性も大きくなる。
【0041】
次に、図2(b)のプリヘム工程は、ダウンフランジ工程後のアウタパネル材1 を、同じく、ダイス3bと板押さえ5bにより固定し、アウタパネル材1 の縁1bを、ポンチ4bにより、更に約135 °の角度まで内側に折り曲げる。
【0042】
更に、図2(c)のフラットヘム工程は、絞り工程やトリム工程等の成形加工後のインナパネル2 の縁を、プリヘム工程後のアウタパネル材1 の縁曲げ部A に挿入する。
【0043】
この際、前記図3に示す、インナパネル材端部2aと縁曲げ部内面Aaとの間に生じる隙間t は、前記した通り、アウタパネル材1 の縁曲部A の厚みを薄くし、曲げ条件を厳しくするため、割れZ 等の不良を生じ易くする。したがって、この隙間t はできるだけ小さい方がフラットヘム加工性の点で好ましい。しかし、この隙間t を完全に無くすことはヘム加工上困難であり、また煩雑でもある。このため、本発明では、縁曲部A の割れZ 等の不良を生じない範囲で、ある程度の隙間t は許容される。
【0044】
この隙間t の本発明での許容限界は、隙間t と前記図3に示すフランジ長さ (ヘム縁曲部A の周長) l との比(t/l) で言うと、加工条件によっても異なるが、概ね0.6 以下である。しかし、従来のヘム加工では、このt/l は概ね0.3 程度が許容限界であった。即ち、本発明では、フラットヘム加工性の改善によって、曲げ条件を厳しくするこの隙間t の許容限界を大きくでき、この点も本発明効果の一つである。
【0045】
そして、アウタパネル材1 およびインナパネル2 とを、板押さえ( 図示せず) とダイス3cにより固定するとともに、アウタパネル1 の縁1cを、ポンチ4cにより、更に180 度の角度まで内側に折り曲げフラットヘム部を形成する。このようにして、インナパネル2 の縁と、アウタパネル1 のフラットヘム部 (縁曲部) とが接触して、両者が端部同士において接合されるとともに互いに密着される。
【0046】
したがって、本発明は、従来のヘム加工工程および条件を大きく変えずに、前記二つの効果の達成が可能であるという利点も有する。
【0047】
(Al合金パネル材)
次に、本発明に係る、Al合金パネル材について詳細に説明する。
【0048】
(耐力)
まず、Al合金アウタパネル材の耐力は110 〜140MPaの範囲とする。図1 に、後述する実施例におけるAA 6016 Al合金 (本発明組成) のAl合金パネル材の耐力 (種々変化させた) とヘム加工性との関係を示す。図1 中、白丸印はインナパネル材厚が1.0mm 、黒丸印はインナパネル材厚が0.8mm の場合である。図1 におけるヘム加工条件は、インナパネル板厚が0.8 〜1.0mm と薄く、インナパネル材端部と縁曲げ部内面との間に生じる隙間t がフランジ長さl との比t/l で0.5 と大きく、ダウンフランジ工程の90°曲げ半径が0.5mm のより厳しいフラットヘム加工とした。
【0049】
図1 から分かる通り、耐力が140MPaを越えた場合、特にインナパネル材が1.0mm 以下に薄板化された6000系Al合金パネル材であって、しかも、前記厳しいフラットヘム加工条件では、インナパネル材厚が薄いほど (インナパネル材厚が1.0mm よりも0.8mm の場合の方が) 、ヘム加工性が低下し、アウタパネル材の縁曲部に割れ等の不良が生じる。したがい、前記厳しいフラットヘム加工条件では、本発明で対象とする過剰Si型6000系Al合金パネル材では、耐力140MPa付近に、フラットヘム加工性の臨界があることが分かる。
【0050】
一方、Al合金アウタパネル材の耐力が110 MPa 未満では、目的とする低温時効硬化能が得られず、2%ストレッチ付与後150 ℃×20分の低温時効処理時の耐力が170MPa以上とならず、パネル構造体としての必要強度を満たせない。
【0051】
(板厚)
本発明では、前記した通り、Al合金パネル材の板厚につき、Al合金アウタパネル材の板厚は0.8mm 以上で、Al合金インナパネル材の板厚は1.0mm 以下のものを対象とする。
Al合金アウタパネル材の板厚がこれより薄く、Al合金インナパネル材の板厚がこれより厚いものでは、板厚の効果によって、ヘム加工性が改善され、本発明の課題 (ヘム加工性と低温での人工時効硬化能とを同時に達成する) は不要とる。
【0052】
また、パネル材乃至パネル構造体の軽量化の点でも、Al合金インナパネル材の板厚は1.0mm 以下であることが好ましい。
なお、フラットヘム加工性の点からは、Al合金インナパネル材の板厚が厚い方が、逆にAl合金アウタパネル材の板厚が薄い方がヘム加工性は向上する。しかし、Al合金インナパネル材の板厚が厚くなると、パネル材乃至パネル構造体の軽量化のための、Al合金パネル材の採用自体の意義が損なわれる。
【0053】
(Al合金組成)
次に、本発明アウタパネル材における、化学成分組成について説明する。
本発明のアウタパネルAl合金材は、過剰Si型6000系Al合金材として、特に、自動車等の輸送機のパネル構造体などとして、耐力を110 〜140MPaの範囲として、前記ヘム加工性や低温時効硬化能に優れ、更に、要求される、プレス成形性、耐食性、溶接性などの諸特性を兼備させる (満足する) 必要がある。したがって、本発明Al合金パネル材における、Si、Mgなど各元素の含有量は、AA乃至JIS の規格に規定乃至含まれるとともに、その範囲内で前記特性発揮の観点から好ましい範囲に規定される。以下に、各元素の好ましい範囲と、意義について説明する。
【0054】
なお、合金元素の内、Si、Mg、Cu、Mn、以外の、Cr、Zr、Ti、B 、Fe、Zn、Ni、V などのその他の合金元素は、基本的には不純物元素である。しかし、前記6000系合金のリサイクルの観点から、溶解材として、高純度Al地金だけではなく、6000系合金や、その他のAl合金スクラップ材、低純度Al地金などを溶解材として使用する場合を含む。このような場合には、これら他の合金元素は必然的に含まれることとなる。したがって、本発明では、目的とする前記諸特性向上効果を阻害しない範囲で、これら他の合金元素が、JIS 乃至AAの規格内で含有されることを許容する。
【0055】
Mg:0.4〜1.2%。
Mgは、固溶強化と、塗装焼き付け処理などの人工時効処理時に、SiとともにMg/Si クラスターなどの化合物相を形成して、時効硬化能を発揮し、パネル材乃至パネル構造体として、170MPa以上の必要強度を得るための必須の元素である。
【0056】
Mgの0.4%未満 (質量% 、以下同じ) の含有では、絶対量が不足するため、人工時効処理時に前記化合物相を形成できず、時効硬化能を発揮できない。このためパネル材乃至パネル構造体として、170MPa以上の必要強度が得られない。
【0057】
一方、Mgが1.2%を越えて含有されると、プレス成形性や曲げ加工性 (ヘム加工性) 等の成形性が著しく阻害される。したがって、Mgの含有量は、0.4 〜1.2%の範囲で、かつSi/Mg が1.0 以上となるような量とするのが好ましい。
【0058】
Si:0.4〜1.3%。
SiはMgとともに、固溶強化と、塗装焼き付け処理などの人工時効処理時に、SiとともにMg/Si クラスターなどの化合物相を形成して、時効硬化能を発揮し、パネル材乃至パネル構造体として、170MPa以上の必要強度を得るための必須の元素である。したがって、本発明過剰Si型6000系Al合金材にあって、更に、各用途に要求される、プレス成形性、ヘム加工性、耐食性、溶接性などの諸特性を兼備させるための最重要元素である。
【0059】
また、2%ストレッチ付与後150 ℃×20分の低温時効処理時の耐力を170MPa以上という、優れた低温時効硬化能を発揮させるためにも、Si/Mg を1.0 以上とし、SiをMgに対し過剰に含有させた過剰Si型6000系Al合金組成とする。
【0060】
Si量が0.4%未満では、前記時効硬化能、更には、各用途に要求される、プレス成形性、ヘム加工性、耐食性、溶接性などの諸特性を兼備することができない。
【0061】
一方、Siが1.3%を越えて含有されると、特にヘム加工性や曲げ加工性が著しく阻害される。更に、溶接性を著しく阻害する。したがって、Siは0.4 〜1.3%の範囲とするのが好ましい。
【0062】
なお、アウタパネル材では、ヘム加工性が特に重視されるため、Si含有量は0.4 〜1.1%と、より低めの範囲であることが好ましい。
【0063】
Cu:0.1% 以下、
Cuは、通常では、塗装焼き付け処理などの人工時効処理時に、Al合金材組織の結晶粒内へのMg/Si クラスターなどの化合物相を促進させる効果や、固溶したCuは成形性を向上させる効果がある。しかし、特にインナパネル材が1.0mm 以下に薄板化された6000系Al合金パネル材であって、しかも、アウタパネル材の縁曲部に挿入されるインナパネル材端部と縁曲部内面との間の隙間がある状態でのフラットヘム加工では、Cuを0.1%を越えて含有すると、ヘム加工性が低下し、アウタパネル材の縁曲部に割れ等の不良が生じる。また、Cuの含有は、耐応力腐食割れ性や、塗装後の耐蝕性の内の耐糸さび性、また溶接性を著しく劣化させる。このため、特に自動車アウタパネル用などのパネル材用途などの場合には、0.1%以下のできるだけ少ない量とする。
【0064】
Mn:0.15%以下、
Mnには、均質化熱処理時に分散粒子 (分散相) を生成し、これらの分散粒子には再結晶後の粒界移動を妨げ、Al合金組織の結晶粒を微細化させる効果がある。しかし、0.15% を越える含有では特にインナパネル材が1.0mm 以下に薄板化された6000系Al合金パネル材であって、しかも、アウタパネル材の縁曲部に挿入されるインナパネル材端部と縁曲部内面との間の隙間がある状態でのフラットヘム加工では、ヘム加工性が低下し、アウタパネル材の縁曲部に割れ等の不良が生じる。したがって、Mnの含有量は0.15% 以下に規制する。
【0065】
Cr 、Zr。
これらCr、Zrの遷移元素には、Mnと同様、均質化熱処理時に分散粒子 (分散相) を生成し、微細な結晶粒を得ることができる効果がある。しかし、Cr、Zrも、0.15% を越える含有では特にインナパネル材が1.0mm 以下に薄板化された6000系Al合金パネル材であって、しかも、アウタパネル材の縁曲部に挿入されるインナパネル材端部と縁曲部内面との間の隙間がある状態でのフラットヘム加工では、ヘム加工性が低下し、アウタパネル材の縁曲部に割れ等の不良が生じる。したがって、Cr、Zrの含有量も0.15% 以下に規制することが好ましい。
【0066】
Ti 、B 。
Ti、B は、Ti:0.1% 、B:300ppmを各々越えて含有すると、粗大な晶出物を形成し、成形性を低下させる。但し、Ti、B には微量の含有で、鋳塊の結晶粒を微細化し、プレス成形性を向上させる効果もある。したがって、Ti:0.1% 以下、B:300ppm以下までの含有は許容する。
【0067】
Fe。
溶解材から混入して、不純物として含まれるFeは、Al7Cu2Fe、Al12(Fe,Mn)3Cu2 、(Fe,Mn)Al6などの晶出物を生成する。これらの晶出物は、破壊靱性および疲労特性更にはヘム加工性などの成形性を著しく劣化させる。特に、Feの含有量が0.50% を越えると顕著にこれらの特性が劣化するため、好ましくは、Feの含有量 (許容量) を0.50% 以下のできるだけ少ない量とすることが好ましい。
【0068】
Zn。
Znは0.1%を越えて含有されると、耐蝕性が顕著に低下する。したがって、Znの含有量は好ましくは0.1%以下のできるだけ少ない量とすることが好ましい。
【0069】
また、本発明のインナパネル材の材質は上記アウタパネル材と同じ材質でも良く、また異なっても良い。アウタパネル材とインナパネル材とを同じ材質のAl合金材として調達やリサイクルの利便性を図るユニアロイ化の観点からは前記アウタパネル材と同じ過剰Si型の6000系Al合金材が好ましい。
ただ、自動車等の輸送機のパネル構造体などとしてのインナパネル材には、プレス成形性以外には、上記アウタパネル材のような厳しい要求諸特性を兼備させる必要はない。このため、前記アウタパネル材と同じでなくとも、AA乃至JIS の 3000 系、Al-Mg 系5000系、 6000 系などのプレス成形性に優れたAl合金材が適宜使用できる。
【0070】
(製造方法)
以上の組成からなる、本発明における過剰Si型6000系Al合金アウタパネル材およびインナパネル材は、常法により製造が可能である。但し、アウタパネル材には、前記した通り、要求諸特性を兼備させる必要から、常法による各工程においても、各々好ましい製造条件があり、この点を含め以下に説明する。
【0071】
溶解、鋳造工程では、本発明成分規格範囲内に溶解調整された、過剰Al合金溶湯を、連続鋳造圧延法、半連続鋳造法(DC鋳造法)等の通常の溶解鋳造法を適宜選択して鋳造する。
【0072】
次いで、このAl合金鋳塊に均質化熱処理を施した後、熱間圧延- 冷間圧延 (必要により、熱延- 冷延の間、冷延の間にバッチ式あるいは連続式の中間焼鈍なども施しながら) を行い、コイル状、板状などのパネル材の形状に加工する。
【0073】
加工後のAl合金材は、調質処理として、先ず、必須に溶体化および焼入れ処理(T4 処理) される。溶体化および焼入れ処理は、後の塗装焼き付け硬化処理などの人工時効処理によりMg/Si クラスターやβ" 相などの化合物相を十分粒内に析出させるために重要な工程である。この効果を出すための溶体化処理条件は、500 〜550 ℃の温度範囲で行うのが好ましい。
【0074】
但し、ヘム加工性が特に重視されるパネル材の場合には、溶体化処理条件は、500 〜530 ℃のより低温側の方が好ましい。
【0075】
溶体化処理後の焼入れの際、冷却速度は300 ℃/ 分以上の急冷とすることが好ましい。冷却速度が300 ℃/ 分未満の遅い場合には、焼入れ後の強度が低くなり、時効硬化能が不足し、後の塗装焼き付け硬化処理などの人工時効処理により、170MPa以上の高耐力を確保できない。
【0076】
また、溶体化後の焼き入れ時に粒界上にSi、MgSiなどが析出しやすくなり、プレス成形やヘム加工時の割れの起点となり易く、これら成形性が低下する。この冷却速度を確保するために、焼入れ処理は、ファンなどの空冷でもよいが、ミスト、スプレー、浸漬等の水冷手段から選択して行うことが好ましい。
【0077】
溶体化焼入れ処理後、室温時効抑制の原因となるSi- 空孔、Si/ 空孔クラスター自体の生成を抑制するために、予備時効処理をすることが好ましい。即ち、50〜100 ℃の温度範囲に、1 〜24時間の必要時間保持することが好ましい。また、予備時効処理後の冷却速度は、1 ℃/hr 以下であることが好ましい。
【0078】
この予備時効処理として、溶体化処理後の焼入れ終了温度を50〜100 ℃と高くした後に、直ちに再加熱乃至そのまま保持して行う。あるいは、溶体化処理後常温までの焼入れ処理の後に、直ちに50〜100 ℃に再加熱して行う。
【0079】
また、連続溶体化焼入れ処理の場合には、前記予備時効の温度範囲で焼入れ処理を終了し、そのままの高温でコイルに巻き取るなどして行う。なお、コイルに巻き取る前に再加熱しても、巻き取り後に保温しても良い。また、常温までの焼入れ処理の後に、前記温度範囲に再加熱して高温で巻き取るなどしてもよい。
【0080】
【実施例】
次に、本発明の実施例を説明する。
(実施例1)
まず、アウタパネル材用の過剰Si型6000系Al合金として、AA 6016 Al合金規格組成のAl合金板を、溶体化処理条件を変え、また、前記予備時効処理を選択的に行い、耐力を110 〜140MPaの本発明範囲内のもの、この範囲から外れたものと種々変えて作成した。このAA 6016 Al合金組成を表1 のNo.1、2 に示す。比較のために、本発明範囲を外れた合金組成の過剰Si型乃至過剰Mg型6000系Al合金板も準備した。これらの Al 合金組成も表1 のNo.3、4 、5 に示す。また、発明例、比較例のAl合金板の板厚と調質処理後の耐力を表2 に示す。
【0081】
Al合金板の作成は以下の条件とした。Al合金の50mm鋳塊を、DC鋳造法により溶製後、550 ℃×4 時間の均質化熱処理を施し、480 ℃以下の温度で厚さ5mm まで熱間圧延した。この熱間圧延板を、昇温速度40℃/hr で500 ℃×30秒の条件で焼鈍処理を行い、その後、厚さ0.8 、1.0mm まで冷間圧延した。この冷延板を、更に熱処理炉において、500 〜550 ℃の範囲で溶体化処理条件を変えて、処理を行った後、直ちに水冷乃至空冷による焼入れを行うT4調質処理を行った。
【0082】
前記焼入れの際の冷却速度は50〜600 ℃/ 分の範囲で調整し、焼入れ終了温度 (焼入れ温度) は共通して80℃とし、焼入れ後にこの温度で2 時間保持する予備時効 (保持後の冷却速度1 ℃/hr 以下) を行った。
【0083】
これらのAl合金板からヘム加工試験用の短冊状供試板 (ブランク) を複数枚切り出し、このブランクに対し、ヘム加工に先立ち、まず、自動車ドアのアウタパネルの絞りとトリム工程等の成形加工を模擬して、5%の歪みを予め与えた。
そして、ブランクのフラットヘム加工代 (ヘム加工後のアウタパネルブランクの、内側に折り曲げられた端部から折り曲げ部の端部までの距離) を12mmとして、以下のヘム加工を行った。
【0084】
まず、前記図2(a)に示したダウンフランジ工程によって、歪みを予め与えたブランク (アウタパネル) の縁を、90度の角度となるまで折り曲げた。この際、Al合金パネル材の90°曲げ半径を0.5 〜1.0mm と変えた。90°曲げ半径の調整は、ダイス3aの肩半径Rdにて行った。これらAl合金パネル材の90°曲げ半径を表2 に示す。
【0085】
次に、図2(b)に示したプリヘム工程によって、ブランクの縁を更に135 °の角度まで内側に折り曲げた。
【0086】
その後、同じく前記Al合金板から切り出し、インナパネルとしてのブランク (アウタパネル材であるAA 6016 Al合金と同じパネル材、板厚0.8 〜1.0mm)の縁を、前記ブランク (アウタパネル) の折り曲げ部に挿入して、インナパネル材端部と縁曲げ部内面との間に生じる隙間t を設け、更に図2(c)に示したフラットヘム工程によってフラットヘムを設けた。これらインナパネルの板厚と前記隙間t を表2 に示す。但し、隙間t はフランジ長さl との比t/l で示す。
【0087】
そして、フラットヘムの縁曲部の、肌荒れ、微小な割れ、大きな割れの発生などの表面状態を目視観察した。評価は、1;肌荒れや微小な割れも無く良好、2;肌荒れが発生しているものの、微小なものを含めた割れはない、3;微小な割れが発生、4;大きな割れが発生、5;大きな割れが複数乃至多数発生、の5 段階の評価をした。この評価として、ヘム加工性が良好 (使用可) と判断されるのは1 〜2 段階までで、3 段階以上はヘム加工性が劣る (使用不可) と判断される。
【0088】
更に、製造後の前記Al合金板を、2%ストレッチ付与後150 ℃×20分の低温短時間で人工時効硬化処理した後の耐力(BH 耐力、ベークハード耐力) を測定し、低温時効処理能を調査した。これらの結果を前記フラットヘム加工性と併せて表2 に示す。
【0089】
表2 から明らかな通り、110 〜140MPaの本発明耐力範囲内で、かつ本発明過剰Si型6000系Al合金組成範囲内のアウタパネル材 (表1 のNo.1、2 のAl合金) を用いた発明例No.1〜6 は、インナパネル板厚が0.8mm と薄く、インナパネル材端部と縁曲げ部内面との間に生じる隙間t が大きく、かつダウンフランジ工程の90°曲げ半径が0.5mm の厳しいヘム加工であっても、へム加工性が優れ、かつ150 ℃×20分の低温短時間で人工時効硬化処理した後のBH耐力が170MPa以上あることが分かる。
【0090】
しかし、本発明過剰Si型6000系Al合金組成範囲内のアウタパネル材 (表1 のNo.1、2 のAl合金) であっても、耐力が140MPaの本発明上限を越えて高い比較例7 は、インナパネル板厚が0.8mm と薄く、インナパネル材端部と縁曲げ部内面との間に生じる隙間t が大きく、ダウンフランジ工程の90°曲げ半径が0.5mm の厳しいヘム加工では割れが生じている。また、特に耐力が152MPaとより高い比較例8 はインナパネル板厚を1.0mm と厚く、インナパネル材端部と縁曲げ部内面との間に生じる隙間t を小さく、かつダウンフランジ工程の90°曲げ半径を1.0mm と大きくして、ヘム加工条件を緩和しても割れが生じている。
【0091】
更に、本発明過剰Si型6000系Al合金組成範囲内のアウタパネル材 (表1 のNo.1、2 のAl合金) であっても、耐力が110MPaの本発明下限より低い比較例9 、10は、ヘム加工では割れが生じていないものの、150 ℃×20分の低温短時間で人工時効硬化処理した後のBH耐力は170MPaを満たさない。
【0092】
また、耐力が本発明範囲内であっても、本発明過剰Si型6000系Al合金組成範囲から外れる( 表1 のNo.3、4 、5 のAl合金) アウタパネル材を用いた比較例11、12、13は、インナパネル板厚を1.0mm と厚く、インナパネル材端部と縁曲げ部内面との間に生じる隙間t を小さく、かつダウンフランジ工程の90°曲げ半径を1.0mm と大きくして、ヘム加工条件を緩和しても割れが生じている。
【0093】
以上の結果から、本発明における、本発明過剰Si型6000系Al合金組成と耐力のフラットヘム加工性と低温時効処理能からの臨界的な意義が分かる。
【0094】
【表1】
Figure 0004253140
【0095】
【表2】
Figure 0004253140
【0096】
【発明の効果】
本発明によれば、ヘム加工性と低温での人工時効硬化能とを同時に満足する、Al合金パネル材のヘム加工方法およびヘム加工用Al合金パネル材を提供することができる。したがって、Al合金材の自動車などの輸送機などへの用途の拡大を図ることができる点で、多大な工業的な価値を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明に係るAl合金パネル材のダウンフランジ加工におけるヘム加工性と耐力
との関係を示す説明図である。
【図2】
ヘミング加工の概要を示し、(a) はダウンフランジ工程、(b) はプリヘム工程
、(c) はフラットヘム工程、(d) はロープヘム工程を示す説明図である。
【図3】
フラットヘム加工におけるアウタパネル材の縁曲部を示す斜視図である。

Claims (4)

  1. 自動車パネル構造体の板厚が0.8mm 以上であるアルミニウム合金アウタパネル材を、自動車パネル構造体の板厚が1.0mm 以下のアルミニウム合金インナパネル材に接合するフラットヘム加工方法であって、前記アウタパネル材の縁曲げ部に挿入される前記インナパネル材端部と前記縁曲げ部の内面との間に隙間t がヘム縁曲部の周長 lとの比t/l で0.3 より大きく、かつ0.6 以下ある状態でフラットヘム加工するに際し、前記アウタパネル材を、Si:0.4〜1.3%、Mg:0.4〜1.2%を含み、かつSi/Mg が1 以上であり、Mn:0.15%以下、Cu:0.1% 以下に規制し、耐力を110 〜140MPaの範囲としたSi過剰型のAl-Mg-Si系アルミニウム合金とし、かつ前記フラットヘム加工後のアウタパネル材の2%ストレッチ付与後150 ℃×20分の人工時効処理後の耐力を170MPa以上とすることを特徴とするアルミニウム合金パネル材のヘム加工方法。
  2. 前記フラットヘム加工に先立つダウンフランジ加工における前記アルミニウム合金パネル材の90°曲げ半径を0.5 〜2.0mm の範囲とする請求項1に記載のアルミニウム合金パネル材のヘム加工方法。
  3. 前記フラットヘム加工の前にアルミニウム合金パネル材が予めプレス成形される請求項1または2に記載のアルミニウム合金パネル材のヘム加工方法。
  4. 前記請求項1乃至3のいずれかの方法でフラットヘム加工されるアウタパネル材用のSi過剰型Al-Mg-Si系アルミニウム合金パネル材。
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