JP6301175B2 - 成形性と焼付け塗装硬化性とに優れたアルミニウム合金板 - Google Patents

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本発明はAl−Mg−Si系アルミニウム合金板に関するものである。本発明で言うアルミニウム合金板とは、熱間圧延板や冷間圧延板などの圧延板であって、溶体化処理および焼入れ処理などの調質が施された後であって、プレス成形や焼付け塗装硬化処理される前のアルミニウム合金板を言う。また、以下の記載ではアルミニウムをアルミやAlとも言う。
近年、地球環境などへの配慮から、自動車等の車両の軽量化の社会的要求はますます高まってきている。かかる要求に答えるべく、自動車の大型ボディパネル構造体(アウタパネル、インナパネル)の材料として、鋼板等の鉄鋼材料にかえて、成形性や焼付け塗装硬化性に優れた、より軽量なアルミニウム合金材の適用が増加しつつある。
この自動車の大型ボディパネル構造体の内、フード、フェンダー、ドア、ルーフ、トランクリッドなどのアウタパネル(外板) にも、薄肉でかつ高強度アルミニウム合金板として、Al−Mg−Si系のAA乃至JIS 6000系 (以下、単に6000系とも言う) アルミニウム合金板の使用が検討されている。
この6000系アルミニウム合金板は、Si、Mgを必須として含み、特に過剰Si型の6000系アルミニウム合金は、これらSi/Mgが質量比で1以上である組成を有し、優れた時効硬化能を有している。このため、自動車の前記アウタパネルへのプレス成形や曲げ加工時には、低耐力化により成形性を確保する。そして、成形後のパネルの塗装焼付処理などの、比較的低温の人工時効( 硬化) 処理時の加熱により時効硬化して耐力が向上し、パネルとしての必要な強度を確保できる、焼付け塗装硬化性(以下、ベークハード性=BH性、焼付硬化性とも言う) がある。
一方、自動車の前記アウタパネルは、周知の通り、アルミニウム合金板に対し、プレス成形における張出成形時や曲げ成形などの成形加工が複合して行われて製作される。例えば、フードやドアなどの大型のアウタパネルでは、張出などのプレス成形によって、アウタパネルとしての成形品形状となされ、次いで、このアウタパネル周縁部のフラットヘムなどのヘム (ヘミング) 加工によって、インナパネルとの接合が行われ、パネル構造体とされる。
ここで、6000系アルミニウム合金は、優れたBH性を有するという利点がある反面で、室温時効性を有し、溶体化焼入れ処理後の室温保持で時効硬化して強度が増加することにより、パネルへの成形性、特に曲げ加工性が低下する課題があった。例えば、6000系アルミニウム合金板を自動車パネル用途に用いる場合、アルミメーカーで溶体化焼入れ処理された後(製造後)、自動車メーカーでパネルに成形加工されるまでに、1ヶ月間程度室温におかれ(室温放置され)、この間で、かなり時効硬化(室温時効)することとなる。特に、厳しい曲げ加工が入るアウタパネルにおいては、製造直後では、問題無く成形可能であっても、1ヶ月経過後では、ヘム加工時に割れが生じるなどの問題が有った。したがって、自動車パネル用、特にアウタパネル用の6000系アルミニウム合金板では、1ヶ月間程度の比較的長期に亙る室温時効を抑制する必要がある。
更に、このような室温時効が大きい場合には、BH性が低下して、前記した成形後のパネルの塗装焼付処理などの、比較的低温の人工時効(硬化) 処理時の加熱によっては、パネルとしての必要な強度までに、耐力が向上しなくなるという問題も生じる。
従来から、6000系アルミニウム合金板の組織、特に含有元素が形成する化合物(晶出物、析出物)の観点から、成形性やBH性の向上、あるいは室温時効の抑制を図るなどの特性向上について、種々の提案がなされている。最近では、特に、6000系アルミニウム合金板のBH性や室温時効性に影響するクラスタ(原子の集合体)を直接測定して制御する試みも提案されている。
また、本発明におけるSnの添加に関係する先行特許としても、6000系アルミニウム合金板にSnを積極的に添加し、室温時効抑制とBH性を向上させる方法も多数提案されている。例えば、特許文献1ではSnを適量添加し、溶体化処理後に予備時効を施すことで、室温時効抑制とBH性を兼備する方法が提案されている。また、特許文献2ではSnと成形性を向上させるCuを添加して、成形性、BH性、耐食性を向上させる方法が提案されている。
特開平09-249950号公報 特開平10-226894号公報
しかし、従来のSnを積極的に添加したAl−Mg−Si系アルミニウム合金板でも、長時間の室温時効後の良好な成形性と高いBH性とを兼備するのには、未だ改善の余地があった。
自動車の前記各種のアウタパネルは、デザイン性の点で、ひずみのない美しい曲面構成とキャラクターラインを実現させることが必要である。このような要求は、軽量化のために、成形が難しくなる高強度アルミニウム合金板素材の採用に伴って、年々厳しくなっている。このため、近年益々、より成形性に優れたアルミニウム合金板が求められている。しかし、前記した従来のDSCによる組織制御では、このような要求に応えることができなくなっている。
例えば、このようなアウタパネルへの高強度アルミニウム合金板の適用を難しくしている一因として、アウタパネル独特の形状の問題がある。アウタパネルには、把手座やランプ座、ライセンス (ナンバープレート) 座などの、器具や部材を装着したり、ホイールアーチを描くような、所定深さの凹部(張出部、エンボス部)が部分的に設けられる。
このような凹部を、その凹部形状周囲の連続した曲面を含めてプレス成形した場合には、面歪み(面ひずみ)が発生しやすく、前記したひずみのない美しい曲面構成とキャラクターラインを実現させることが難しい。したがって、前記アウタパネルには、素材板の成形時に、この面歪みの発生を抑制することが必須となる。
なお、このような面歪みの問題は、前記した凹部(張出部)だけの問題ではなく、ドアアウタパネルのくら型部、フロントフェンダの縦壁部、リアフェンダのウインドコーナー部、トランクリッドやフードアウタのキャラクターラインの消滅部、リアフェンダピラーの付け根部など、面歪みを生じるような凹部 (張出部) を一部に有するような、自動車パネルに共通する課題である。
このような課題に対して、前記面歪みの発生を抑制した成形性向上のためには、プレス成形される際の(製造後に室温時効)板の0.2%耐力を110MPa未満と低くすることが望まれる。しかし、このように成形時の耐力を低下させると、焼付け塗装硬化後(以下、ベークハード後、BH後とも言う)の0.2%耐力を195Mpa以上、焼付け塗装硬化による0.2%耐力増加量で100MPa以上とすることが難しくなる。前記した従来のDSCによる組織制御では、この課題を解決することが難しい。
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、自動車パネル成形時の0.2%耐力を110MPa以下に低くした上で、BH後の0.2%耐力を195Mpa以上とすることが可能な、成形性と焼付け塗装硬化性を兼備したアルミニウム合金板を提供することを目的とする。
この目的を達成するために、本発明の成形性と焼付け塗装硬化性とに優れたアルミニウム合金板の要旨は、質量%で、Mg:0.2〜2.0%、Si:0.3〜2.0%、Sn:0.005〜0.3%を各々含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなるAl−Mg−Si系アルミニウム合金板であって、この板の示差走査熱分析曲線において、Mg−Siクラスタの溶解に相当する吸熱ピークとして、150〜230℃の温度範囲の吸熱ピークのピーク高さが8μW/mg以下(但し、0μW/mgを含む)である一方で、Mg−Siクラスタの生成に相当する発熱ピークとして、240〜255℃の温度範囲の発熱ピークのピーク高さが20μW/mg以上であることとする。
Snは、Al−Mg−Si系アルミニウム合金板の組織において、室温においては、原子空孔を捕獲(捕捉、トラップ)することで、室温でのMgやSiの拡散を抑制し、室温における強度増加を抑制し、板のパネルへの成形時に、ヘム加工性や絞り加工や張出加工などのプレス成形性(以下、このプレス成形性を代表してヘム加工性とも言う)を向上させる効果がある。そして、パネルの塗装焼き付け処理などの人工時効処理時には捕獲していた空孔を放出するため、逆にMgやSiの拡散を促進し、BH性を高くすることができる。
ただ、本発明者らの知見によれば、このようなSnの添加には、Sn特有の特性からくる、新たな問題が発生する。すなわち、Snを添加して常法により板を製造した場合、その製造条件によっては、Snの添加が、却って強度に寄与するMg−Siクラスタを減少させることにつながる。このため、Snの添加によって、焼付け塗装硬化処理後において析出する析出物の量が不足して、前記した、自動車パネルとして必要な強度が得られない場合が生じる。
この理由は、前記したSnの原子空孔の捕獲や放出効果が、Snのマトリックスへの固溶量がごく少ない(常法ではSnの添加量を理論固溶量以下に抑えたとしてもその多くが固溶せずに化合物として晶出あるいは析出してしまう)ことと関係している、と推考されるが、定かでは無い。
いずれにしても、このようなSn添加の副作用とも言える、強度に寄与するMg−Siクラスタの減少や、焼付け塗装硬化処理後において析出する析出物量が不足するなどの問題を解決しない限り、Snを添加する意義自体が無くなりかねない。
このため、本発明では、板の製造方法も敢えて見直した上で、後述する通り、溶体化焼入れ処理後の予備時効処理(再加熱処理)などの製造条件を工夫して、Snを添加しても、強度に寄与するMg−Siクラスタの減少や、焼付け塗装硬化処理後において析出する析出物量が不足しないようにした。
そして、Snを添加しても、強度に寄与するMg−Siクラスタの減少を防止して、焼付け塗装硬化処理後において析出する析出物量を増加あるいは確保する組織の目安として、この板のDSCが適用できることも知見した。すなわち、本発明では、このDSCによって、強度に寄与しない、比較的小さなMg−Siクラスタの溶解に相当する吸熱ピークを規制する一方で、強度に寄与する比較的大きなMg−Siクラスタの生成に相当する発熱ピークを高める。これによって、強度に寄与しないMg−Siクラスタを抑制した上で、強度に寄与するMg−Siクラスタを増加させて、所望のBH性を得る。
この結果、本発明によれば、Snを添加した上で、自動車パネル成形時の0.2%耐力を110MPa以下に低くした上で、BH後の0.2%耐力を195Mpa以上とすることが可能な、成形性と焼付け塗装硬化性を兼備したアルミニウム合金板を提供することができる。
実施例における各例のDSCを示す説明図である。
以下に、本発明の実施の形態につき、要件ごとに具体的に説明する。
(化学成分組成)
先ず、本発明のAl−Mg−Si系(以下、6000系とも言う)アルミニウム合金板の化学成分組成について、以下に説明する。本発明が対象とする6000系アルミニウム合金板は、前記した自動車の外板用の板などとして、優れた成形性やBH性、強度、溶接性、耐食性などの諸特性が要求されるので、組成の面からもこれらの要求を満たすようにする。その上で、本発明では、Snを含有させて、製造後の板の室温時効を抑制して、パネル成形時の0.2%耐力を110MPa以下に低くして、自動車のパネル構造体の、特に面歪が問題となるような自動車パネルなどへの成形性を向上させる。それとともに、焼付け塗装硬化後の0.2%耐力を195Mpa以上とすることを、組成の面から可能とする。
このような要求を満足するために、アルミニウム合金板の組成は、質量%で、Mg:0.2〜2.0%、Si:0.3〜2.0%、Sn:0.005〜0.3%を各々含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなるものとする。なお、各元素の含有量の%表示は全て質量%の意味である。
本発明では、これらMg、Si、Sn以外のその他の元素は不純物あるいは含まれても良い元素であり、AA乃至JIS規格などに沿った各元素レベルの含有量 (許容量) とする。
すなわち、資源リサイクルの観点から、本発明でも、合金の溶解原料として、高純度Al地金だけではなく、Mg、Si以外のその他の元素を添加元素(合金元素)として多く含む6000系合金やその他のアルミニウム合金スクラップ材、低純度Al地金などを多量に使用した場合には、下記のような他の元素が必然的に実質量混入される。そして、これらの元素を敢えて低減する精錬自体がコストアップとなり、ある程度の含有を許容することが必要となる。また、これらの元素を実質量含有しても、本発明目的や効果を阻害しない有用な含有範囲がある。
したがって、本発明では、このような下記元素を各々以下に規定するAA乃至JIS 規格などに沿った上限量以下の範囲での含有を許容する。
具体的には、前記アルミニウム合金板が、更に、Fe:1.0%以下(但し、0%を含まず)、Mn:1.0%以下(但し、0%を含まず)、Cr:0.3%以下(但し、0%を含まず)、Zr:0.3%以下(但し、0%を含まず)、V:0.3%以下(但し、0%を含まず)、Ti:0.1%以下(但し、0%を含まず)、Cu:1.0%以下(但し、0%を含まず)、Ag:0.2%以下(但し、0%を含まず)、Zn:1.0%以下(但し、0%を含まず)の1種または2種以上を、この範囲で、上記した基本組成に加えて、更に含んでも良い。
なお、これらの元素を含有する場合、Cuは含有量が多いと耐食性を劣化させやすいので、好ましくはCuの含有量を0.7%以下、より好ましくは0.3%以下とする。また、Mn、Fe、Cr、Zr、Vは、含有量が多いと比較的粗大な化合物を生成しやすく、本発明で課題とするヘム加工性(ヘム曲げ性)を劣化させやすい。このため、Mn含有量は、好ましくは0.6%以下、より好ましくは0.3%以下、Cr、Zr、V含有量は、好ましくは0.2%以下、より好ましくは0.1%以下と各々する。
上記6000系アルミニウム合金における、各元素の含有範囲と意義、あるいは許容量について以下に順に説明する。
Si:0.3〜2.0%
Siは、SiはMgとともに、塗装焼き付け処理などの人工時効処理時に、強度向上に寄与する時効析出物を形成して、時効硬化能を発揮し、自動車パネルとして必要な強度(耐力)を得るための必須の元素である。Si添加量が少なすぎると、人工時効後の析出量が少なくなりすぎ、焼付け塗装時の強度増加量が低くなりすぎてしまう。一方Si含有量が多すぎると、不純物のFeなどと粗大な晶出物を形成してしまい、曲げ加工性などの成形性を著しく低下させてしまう。また、Si含有量が多すぎると、板の製造直後の強度だけでなく、製造後の室温時効量も高くなり、成形前の強度が高くなりすぎて、自動車のパネル構造体の、特に面歪が問題となるような自動車パネルなどへの成形性が低下してしまう。したがって、Siの含有量は0.3〜2.0%の範囲とする。
パネルへの成形後の、より低温、短時間での塗装焼き付け処理での優れた時効硬化能を発揮させるためには、Si/ Mgを質量比で1.0以上とし、一般に言われる過剰Si型よりも更にSiをMgに対し過剰に含有させた6000系アルミニウム合金組成とすることが好ましい。
Mg:0.2〜2.0%
Mgも、Siとともに本発明で規定する前記クラスタ形成の重要元素であり、塗装焼き付け処理などの前記人工時効処理時に、Siとともに強度向上に寄与する時効析出物を形成して、時効硬化能を発揮し、パネルとしての必要耐力を得るための必須の元素である。Mg含有量が少なすぎると、人工時効後の析出量が少なくなりすぎ焼付け塗装後の強度が低くなりすぎてしまう。一方、Mg含有量が多くなりすぎると、不純物のFeなどと粗大な晶出物を形成してしまい、曲げ加工性などの成形性を著しく低下させてしまう。また、Mg含有量が高すぎると、板の製造直後の強度だけでなく、製造後の室温時効量も高くなり、成形前の強度が高くなりすぎて、自動車のパネル構造体の、特に面歪が問題となるような自動車パネルなどへの成形性が低下してしまう。したがって、Mgの含有量は0.2〜2.0%の範囲とする。
Sn:0.005〜0.3%
Snは、室温においては、原子空孔を捕獲(捕捉、トラップ)することで、室温でのMgやSiの拡散を抑制し、室温における強度増加を抑制し、板のパネルへの成形時に、ヘム加工性や絞り加工や張出加工などのプレス成形性(以下、このプレス成形性を代表してヘム加工性とも言う)を向上させる効果がある。そして、パネルの塗装焼き付け処理などの人工時効処理時には捕獲していた空孔を放出するため、逆にMgやSiの拡散を促進し、BH性を高くすることができる。Sn含有量が0.005%よりも少ないと、十分に空孔をトラップしきれずにその効果を発揮できない。一方、Sn含有量が0.3%よりも多いと、Snが粒界に偏析し、粒界割れの原因となりやすい。なお、Sn含有量の好ましい下限値は0.01%である。Sn含有量の好ましい上限値は0.2%、さらには0.1%、より好ましくは0.06%である。
(組織)
以上のような組成とした上で、本発明では、6000系アルミニウム合金板の組織について、自動車パネルなどとしての高強度を保証するために、焼付け塗装硬化処理後において析出する析出物の量を保証する目安として、この板のDSCにおいて、焼付け塗装前の強度および焼付け塗装時の強度増加に特に関わる、特定の温度範囲における吸熱ピークおよび発熱ピークを制御する。言い換えると、Snを添加しても、強度に寄与するMg−Siクラスタの減少や、焼付け塗装硬化処理後において析出する析出物量が不足しないように、この板のDSCを用いて、焼付け塗装前の強度および焼付け塗装時の強度増加に特に関わる、特定の温度範囲における吸熱ピークおよび発熱ピークを制御する。
より具体的に、本発明では、このDSCによって、強度に寄与しない、比較的小さなMg−Siクラスタの溶解に相当する吸熱ピークを規制する一方で、強度に寄与する比較的大きなMg−Siクラスタの生成に相当する発熱ピークを高める。これによって、強度に寄与しないMg−Siクラスタを抑制した上で、強度に寄与するMg−Siクラスタを増加させて、所望のBH性を得る。
ここで、示差走査熱分析曲線(DSC)とは、前記調質処理後のアルミニウム合金板の融解過程における熱的変化を、後述する条件による示差熱分析により測定して得られた固相からの加熱曲線である。
本発明では、先ず、強度に寄与しないMg−Siクラスタと認識している、サイズが比較的小さく、DSCの昇温過程で溶解しやすいMg−Siクラスタの数(数密度)を抑制する。BHにおいて、このようなDSCの昇温過程で溶解しやすいMg−Siクラスタの数が増加すると、逆に、強度に寄与すると認識している、サイズが比較的大きく、DSCの昇温過程で溶解しにくいMg−Siクラスタの数(数密度)が、人工時効硬化処理しても減少して、BH後の強度が高くならない。具体的には、BH条件にもよるが、100MPa以上の0.2%耐力増加量で、195Mpa以上のBH後強度(0.2%耐力)を得ることができない。
このために、本発明では、強度に寄与しない、DSCの昇温過程で溶解しやすいMg−Siクラスタの溶解に相当する吸熱ピークとして、150〜230℃の温度範囲の吸熱ピークAのピーク高さを8μW/mg以下(但し、0μW/mgを含む)に抑制する(低く、小さくする)。したがって、この150〜230℃の温度範囲の吸熱ピークのピーク高さが8μW/mgとは、強度に寄与しないサイズが比較的小さなMg−Siクラスタの強度への悪影響に対して、許容できる限界の数密度を示している。板の製造の限界からして、このような強度に寄与しないサイズが比較的小さなMg−Siクラスタが存在しない場合(その数密度が0の場合)は製造しにくいものの、本発明は含んでいる。このため、前記吸熱ピークAのピーク高さが8μW/mg以下の規定では、このような強度に寄与しないサイズが比較的小さなMg−Siクラスタが存在しない、0μW/mgの場合を含んでいる。
この一方で、本発明では、強度に寄与する、サイズが比較的大きく、DSCの昇温過程で溶解しにくいMg−Siクラスタを多く生成させてBH性を向上させる。このために、強度に寄与するMg−Siクラスタの生成に相当する240〜255℃の温度範囲の発熱ピークBのピーク高さを20μW/mg以上と高く(大きく)する。したがって、この240〜255℃の温度範囲の発熱ピークのピーク高さを20μW/mgとは、BH条件にもよるが、本発明で狙いとするBH性向上(100MPa以上の0.2%耐力増加量で、200MPa以上のBH後の0.2%耐力)を得るために、強度に寄与するサイズが比較的大きなMg−Siクラスタの、最低限必要な数密度を示している。したがって、この数密度は多いほどよく、この240〜255℃の温度範囲の発熱ピークのピーク高さも大きい(高い)ほど良いが、板の製造の限界からすると、その上限は80μW/mg程度である。
図1に、後述する実施例の、表2における発明例8、比較例9、表3における比較例25の3種類のアルミニウム合金板のDSCとして、発明例8を太い実線、比較例9を点線、比較例25を一点鎖線で各々示す。
この図1において、比較例9のDSCは、後述する表2の通り、150〜230℃の温度範囲の吸熱ピークAのピーク高さが8μW/mgを超えて高く(大きく)、強度に寄与しないサイズが比較的小さなMg−Siクラスタの数密度が多すぎる。その一方で、240〜255℃の温度範囲の発熱ピークBのピーク高さも20μW/mg以上と高く(大きく)、強度に寄与するサイズが比較的大きなMg−Siクラスタの数密度も多い。しかし、前記強度に寄与しないサイズが比較的小さなMg−Siクラスタの数密度が多すぎるために、この悪影響の方が強すぎて、目的とするBH性(100MPa以上の0.2%耐力増加量で、195Mpa以上のBH後の0.2%耐力)が得られていない。
また、図1における比較例25のDSCは、後述する表2の通り、150〜230℃の温度範囲の吸熱ピークAのピーク高さは8μW/mg以下と低く(小さく)、強度に寄与しないサイズが比較的小さなMg−Siクラスタの数密度は低い。しかし、その一方で、240〜255℃の温度範囲の発熱ピークBのピーク高さも20μW/mg未満と低く(小さく)、強度に寄与するサイズが比較的大きなMg−Siクラスタの数密度も少なすぎる。このため、やはり目的とするBH性(100MPa以上の0.2%耐力増加量で、195Mpa以上のBH後の0.2%耐力)が得られていない。
これに対して、図1における発明例8のDSCは、後述する表2の通り、150〜230℃の温度範囲の吸熱ピークAのピーク高さは8μW/mg以下と低く(小さく)、強度に寄与しないサイズが比較的小さなMg−Siクラスタの数密度は低い。そして、その一方で、240〜255℃の温度範囲の発熱ピークBのピーク高さも20μW/mg以上と高く(大きく)、強度に寄与するサイズが比較的大きなMg−Siクラスタの数密度が多い。このため、目的とするBH性(100MPa以上の0.2%耐力増加量で、195Mpa以上のBH後の0.2%耐力)が得られている。
(製造方法)
次ぎに、本発明アルミニウム合金板の製造方法について以下に説明する。本発明アルミニウム合金板は、製造工程自体は常法あるいは公知の方法であり、上記6000系成分組成のアルミニウム合金鋳塊を鋳造後に均質化熱処理し、熱間圧延、冷間圧延が施されて所定の板厚とされ、更に溶体化焼入れなどの調質処理が施されて製造される。
但し、これらの製造工程中で、本発明のDSCで規定する組織を得るためには、後述する通り、溶体化後の焼入れ処理の平均冷却速度の制御に加えて、焼入れ処理後の予備時効処理条件を、好ましい範囲とする。なお、他の工程においても、本発明のDSCで規定する組織を得るための好ましい条件もある。このような好ましい条件としなければ、本発明のDSCで規定する組織を得ることが難しくなる。
(溶解、鋳造冷却速度)
先ず、溶解、鋳造工程では、上記6000系成分組成範囲内に溶解調整されたアルミニウム合金溶湯を、連続鋳造法、半連続鋳造法(DC鋳造法)等の通常の溶解鋳造法を適宜選択して鋳造する。ここで、本発明で規定する、円相当直径が0.3μm以上の化合物の数密度とし、Snを含む化合物の個数(平均個数)の割合とするためには、鋳造時の平均冷却速度について、液相線温度から固相線温度までを30℃/分以上と、できるだけ大きく(速く)することが好ましい。
このような、鋳造時の高温領域での温度(冷却速度)制御を行わない場合、この高温領域での冷却速度は必然的に遅くなる。このように高温領域での平均冷却速度が遅くなった場合、この高温領域での温度範囲で粗大に生成する晶出物の量が多くなって、鋳塊の板幅方向,厚さ方向での晶出物のサイズや量のばらつきも大きくなる。この結果、本発明の規定範囲に、円相当直径が0.3μm以上の化合物の数密度や、Snを含む化合物の個数(平均個数)の割合を制御することができなくなる可能性が高くなる。
(均質化熱処理)
次いで、前記鋳造されたアルミニウム合金鋳塊に、熱間圧延に先立って、均質化熱処理を施す。この均質化熱処理(均熱処理)は、組織の均質化、すなわち、鋳塊組織中の結晶粒内の偏析をなくすことを目的とする。この目的を達成する条件であれば、特に限定されるものではなく、通常の1回または1段の処理でも良い。
均質化熱処理温度は、500℃以上で融点未満、均質化時間は4時間以上の範囲から適宜選択される。この均質化温度が低いと結晶粒内の偏析を十分に無くすことができず、これが破壊の起点として作用するために、伸びフランジ性や曲げ加工性が低下する。この後、直ちに熱間圧延を開始又は、適当な温度まで冷却保持した後に熱間圧延を開始しても良い。
この均質化熱処理を行った後、300℃〜500℃の間を20〜100℃/hrの平均冷却速度で室温まで冷却し、次いで20〜100℃/hrの平均加熱速度で350℃〜450℃まで再加熱し、この温度域で熱間圧延を開始することもできる。
この均質化熱処理後の平均冷却速度および、その後の再加熱速度の条件を外れると、粗大なMg−Si化合物が形成される可能性が高くなり、Snの効果発揮以前に、前提として必要な、6000系アルミニウム合金板の、強度や伸びなどの基本的な機械的性質が低下する。
(熱間圧延)
熱間圧延は、圧延する板厚に応じて、鋳塊 (スラブ) の粗圧延工程と、仕上げ圧延工程とから構成される。これら粗圧延工程や仕上げ圧延工程では、リバース式あるいはタンデム式などの圧延機が適宜用いられる。
この際、熱延(粗圧延)開始温度が固相線温度を超える条件では、バーニングが起こるため熱延自体が困難となる。また、熱延開始温度が350℃未満では熱延時の荷重が高くなりすぎ、熱延自体が困難となる。したがって、熱延開始温度は350℃〜固相線温度、更に好ましくは400℃〜固相線温度の範囲とする。
(熱延板の焼鈍)
この熱延板の冷間圧延前の焼鈍 (荒鈍) は必ずしも必要ではないが、結晶粒の微細化や集合組織の適正化によって、成形性などの特性を更に向上させる為に実施しても良い。
(冷間圧延)
冷間圧延では、上記熱延板を圧延して、所望の最終板厚の冷延板 (コイルも含む) に製作する。但し、結晶粒をより微細化させるためには、パス数に関わらず、合計の冷間圧延率は60%以上であることが望ましい。
(溶体化および焼入れ処理)
冷間圧延後、溶体化処理と、これに続く、室温までの焼入れ処理を行う。この溶体化焼入れ処理については、通常の連続熱処理ラインによる加熱,冷却でよく、特に限定はされない。ただ、各元素の十分な固溶量を得ること、および前記した通り、結晶粒はより微細であることが望ましいことから、520℃以上、溶融温度以下の溶体化処理温度に、加熱速度5℃/秒以上で加熱して、0.1〜10秒保持する条件で行うことが望ましい。
また、成形性やヘム加工性を低下させる粗大な粒界化合物形成を抑制する観点から、溶体化処理温度から、室温の焼入れ停止温度までの平均冷却速度を3℃/s以上とすることが望ましい。溶体化処理後の室温までの焼入れ処理の冷却速度が小さいと、冷却中に粗大なMg−Siおよび単体Siが生成してしまい、成形性が劣化してしまう。また溶体化後の固溶量が低下し、BH性が低下してしまう。この冷却速度を確保するために、室温までの焼入れ処理は、ファンなどの空冷、ミスト、スプレー、浸漬等の水冷手段や条件を各々選択して用いる。
(予備時効処理:再加熱処理)
このような溶体化処理後に焼入れ処理して室温まで冷却した後、1時間以内に冷延板を予備時効処理(再加熱処理)する。室温までの焼入れ処理終了後、予備時効処理開始(加熱開始)までの室温保持時間が長すぎると、室温時効により溶解しやすいクラスタとして、前記した強度に寄与しない小さなMg−Siクラスタが多く生成してしまい、150〜230℃の温度範囲の吸熱ピークのピーク高さを8μW/mg以下に抑制することが難しくなる。したがって、この室温保持時間は短いほど良く、溶体化および焼入れ処理と再加熱処理とが、時間差が殆ど無いように連続していても良く、下限の時間は特に設定しない。
この予備時効処理では、予備時効温度までの昇温速度と予備時効温度範囲での保持時間を制御する。このうち、昇温速度は、前記した強度に寄与しない小さなMg−Siクラスタの生成を抑制するために、1℃/s以上、好ましくは5℃/s以上のできるだけ大きな(速い)昇温速度とすることが好ましい。昇温速度が1℃/sよりも小さいと、強度に寄与しない、DSCの昇温過程で溶解しやすいMg−Siクラスタが多く生成してしまい、150〜230℃の温度範囲の吸熱ピークのピーク高さを8μW/mg以下に抑制することが難しくなる。
また、予備時効処理の温度と保持時間は、60〜120℃の温度範囲で、10hr以上、40hr以下保持するものとする。この時、この60〜120℃での温度保持を、この温度範囲で、一定の温度あるいは昇温、除冷により温度を順次変えた熱処理としても良い。要は、徐冷や昇温などで連続的に温度が変化しても、60〜120℃の温度域に、前記10hr以上、40hr以下保持されていれば良い。
予備時効温度が60℃未満、または保持時間が10hr未満であると、析出核の生成が不十分であり、DSCにおいて、240〜255℃の温度範囲の発熱ピークBの範囲における発熱ピークのピーク温度が255℃よりも高温になりやすい。これは、強度に寄与する、サイズが比較的大きいMg−Siクラスタが減少することを意味し、240〜255℃の温度範囲の発熱ピークBのピーク高さを20μW/mg以上と高く(大きく)できなくなる。この結果、BH性が低下する。
一方、予備時効温度が120℃を超えるか、または、保持時間が40hrを超えると、この予備時効処理での析出核の生成量を多くしすぎることになる。このため、却って、強度に寄与する、サイズが比較的大きいMg−Siクラスタが減少して、DSCにおける、240〜255℃の温度範囲の発熱ピークBのピーク高さを20μW/mg以上と高く(大きく)できなくなるので、やはりBH性が低下する。そして、成形時の強度も高くなりすぎる。
すなわち、予備時効処理を、これらの好ましい条件範囲内としないと、自動車パネル成形時の0.2%耐力を110MPa以下に低くした上で、BH後の0.2%耐力を195Mpa以上とすることが難しくなる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に含まれる。
次に本発明の実施例を説明する。本発明でDSCで規定の組織が異なる6000系アルミニウム合金板を、溶体化および焼入れ処理後の予備時効処理の条件を変えて作り分けて製造した。そして、板製造後室温に30日間保持後の、BH性(塗装焼付け硬化性)、プレス成形性の指標としてのAs耐力や、曲げ加工性としてのヘム加工性を各々測定、評価した。
前記DSCで規定の組織の作り分けは、表1に示す組成の6000系アルミニウム合金板を、表2、3に示すように、溶体化処理後の焼入れ処理の平均冷却速度や、その後の予備時効処理の温度や保持時間などの条件を種々変えて行った。ここで、表1中の各元素の含有量の表示において、各元素における数値をブランクとしている表示は、その含有量が検出限界以下であることを示す。
アルミニウム合金板の具体的な製造条件は以下の通りとした。表1に示す各組成のアルミニウム合金鋳塊を、DC鋳造法により共通して溶製した。この際、各例とも共通して、鋳造時の平均冷却速度について、液相線温度から固相線温度までを50℃/分とした。続いて、鋳塊を、各例とも共通して、540℃×6時間の1段のみの均熱処理をした後、その温度で熱間粗圧延を開始した。そして、各例とも共通して、続く仕上げ圧延にて、厚さ3.5mmまで熱延し、熱間圧延板とした。熱間圧延後のアルミニウム合金板を、各例とも共通して、500℃×1分の荒焼鈍を施した後、冷延パス途中の中間焼鈍無しで加工率70%の冷間圧延を行い、厚さ1.0mmの冷延板とした。
更に、この各冷延板を、各例とも共通して、連続式の熱処理設備で巻き戻し、巻き取りながら、連続的に調質処理(T4)した。具体的には、溶体化処理を、500℃までの平均加熱速度を10℃/秒として、560℃の目標温度に到達後10秒保持して行い、その後、表2、3に示す各平均冷却速度となるように水冷あるいは空冷を行うことで室温まで冷却した。この冷却後、室温にて表2に示す所要時間後に、大気炉およびオイルバスを用い、表2、3に示す、昇温速度、到達温度、平均冷却速度、保持時間にて予備時効処理を行った。なお、この予備時効処理後の冷却は、平均冷却速度を変えるために、水冷あるいは徐冷(放冷)を行った。
これら調質処理後30日間室温放置した後の各最終製品板から供試板 (ブランク) を切り出し、各供試板の前記DSCや特性を測定、評価した。これらの結果を表3に示す。
(DSC)
前記供試板の板厚中央部の10箇所における組織の前記DSCを測定し、これら10箇所の平均値にて、この板のDSC(示差走査熱分析曲線)において、強度に寄与しないMg−Siクラスタの溶解に相当する吸熱ピークとして、150〜230℃の温度範囲の吸熱ピークのピーク高さ(W/mg)、強度に寄与するMg−Siクラスタの生成に相当する発熱ピークとして、240〜255℃の温度範囲の発熱ピークのピーク高さ(μW/mg)を各々求めた。
但し、前記供試板の各測定箇所における示差熱分析においては、試験装置:セイコ−インスツルメンツ製DSC220G、標準物質:アルミ、試料容器:アルミ、昇温条件:15℃/min、雰囲気:アルゴン(50ml/min)、試料重量:24.5〜26.5mgの同一条件で各々行い、得られた示差熱分析のプロファイル(μW)を試料重量で割って規格化した(μW/mg)後に、前記示差熱分析プロファイルでの0〜100℃の区間において、示差熱分析のプロファイルが水平になる領域を0の基準レベルとし、この基準レベルからの発熱ピーク高さを測定した。これらの結果を表2、3に示す。
(塗装焼付硬化性)
前記調質処理後30日間室温放置した後の各供試板の機械的特性として、0.2%耐力(As耐力)を引張試験により求めた。また、これらの各供試板を各々共通して、30日間の室温時効させた後に、170℃×20分の人工時効硬化処理した後(BH後)の、供試板の0.2%耐力(BH後耐力)を引張試験により求めた。そして、これら0.2%耐力同士の差(耐力の増加量)から各供試板のBH性を評価した。
前記引張試験は、前記各供試板から、各々JISZ2201の5号試験片(25mm×50mmGL×板厚)を採取し、室温にて引張り試験を行った。このときの試験片の引張り方向を圧延方向の直角方向とした。引張り速度は、0.2%耐力までは5mm/分、耐力以降は20mm/分とした。機械的特性測定のN数は5とし、各々平均値で算出した。なお、前記BH後の耐力測定用の試験片には、この試験片に、板のプレス成形を模擬した2%の予歪をこの引張試験機により与えた後に、前記BH処理を行った。
(ヘム加工性)
ヘム加工性は、前記調質処理後30日間室温放置後の各供試板についてのみ行った。試験は、30mm幅の短冊状試験片を用い、ダウンフランジによる内曲げR1.0mmの90°曲げ加工後、1.0mm厚のインナを挟み、折り曲げ部を更に内側に、順に約130度に折り曲げるプリヘム加工、180度折り曲げて端部をインナに密着させるフラットヘム加工を行った。
このフラットヘムの曲げ部(縁曲部)の、肌荒れ、微小な割れ、大きな割れの発生などの表面状態を目視観察し、以下の基準にて目視評価した。下記の基準で、0〜2までが合格ライン、3以上が不合格である。
0;割れ、肌荒れ無し、1;軽度の肌荒れ、2;深い肌荒れ、3;微小表面割れ、4;線状に連続した表面割れ
表1の合金番号0〜12を用いた、表2の番号0、1、8、13、表3の16〜24の各発明例は、本発明成分組成範囲内で、かつ好ましい条件範囲で製造されるとともに、溶体化焼き入れ処理や予備時効処理を含めた調質処理も好ましい条件で行なわれている。このため、これら各発明例は、表2、3に示す通り、本発明で規定するDSC条件を満たしている。すなわち、この板のDSCにおいて、強度に寄与しないMg−Siクラスタの溶解に相当する吸熱ピークとして、150〜230℃の温度範囲の吸熱ピークのピーク高さが8μW/mg以下である一方で、強度に寄与するMg−Siクラスタの生成に相当する発熱ピークとして、240〜255℃の温度範囲の発熱ピークのピーク高さが20μW/mg以上である。
この結果、各発明例は、前記調質処理後の室温時効後であって、かつ低温短時間での塗装焼付け硬化であっても、BH性に優れている。また、表3に示す通り、前記調質処理後の室温時効後であっても、As耐力が比較的低いために自動車パネルなどへのプレス成形性に優れ、ヘム加工性にも優れている。すなわち、本発明例によれば、室温時効した後に車体塗装焼付け処理された場合であっても、0.2%耐力差が100MPa以上で、BH後の0.2%耐力が170MPa以上の高いBH性や、As0.2%耐力で110MPa以下のプレス成形性や良好な曲げ加工性が発揮できている。
これに対して、表2の比較例2〜7、9〜13、14、15は、表1の発明例と同じ合金例1、2、3を用いている。しかし、これら各比較例は、表2に示す通り、予備時効処理条件が好ましい条件を外れている。この結果、DSCが本発明で規定する範囲から外れ、同じ合金組成である発明例に比して、室温時効が大きく、特に30日間室温保持後のAs耐力が比較的高いために自動車パネルなどへのプレス成形性やヘム加工性に劣り、かつBH性も劣っている。
比較例2は、溶体化処理後の室温までの焼き入れ処理における平均冷却速度が小さすぎる。このため、150〜230℃の温度範囲の吸熱ピークAのピーク高さは8μW/mg以下であるものの、240〜255℃の温度範囲の発熱ピークBのピーク高さが20μW/mg未満と低く(小さく)、強度に寄与するサイズが比較的大きなMg−Siクラスタの数密度が少ない。これは、室温までの焼入れ処理の冷却速度が小さく、冷却中に粗大なMg2Siおよび単体Siが生成してしまったためであり、目的とするAs0.2%耐力で110MPa以下のプレス成形性や良好な曲げ加工性が得られていない。また、BH性も低い。
比較例3、9は、溶体化後の室温までの焼き入れ処理後から、予備時効処理(加熱開始)までの時間がかかりすぎている。このため、強度に寄与しない、DSCの昇温過程で溶解しやすいMg−Siクラスタが多く生成してしまい、前記図1の通り、150〜230℃の温度範囲の吸熱ピークAのピーク高さが8μW/mgを超えて高く(大きく)なる。その一方で、240〜255℃の温度範囲の発熱ピークBのピーク高さも20μW/mg以上と高く(大きく)、強度に寄与するサイズが比較的大きなMg−Siクラスタの数密度も多い。しかし、前記強度に寄与しないサイズが比較的小さなMg−Siクラスタの数密度が多すぎるために、この悪影響の方が強すぎて、目的とするAs0.2%耐力で110MPa以下のプレス成形性や良好な曲げ加工性が得られていない。また、BH性も低い。
比較例4、10は、予備時効処理の昇温速度が遅すぎる。このため、強度に寄与しない、DSCの昇温過程で溶解しやすいMg−Siクラスタが多く生成してしまい、前記図1の通り、150〜230℃の温度範囲の吸熱ピークAのピーク高さが8μW/mgを超えて高く(大きく)なる。その一方で、240〜255℃の温度範囲の発熱ピークBのピーク高さも20μW/mg以上と高く(大きく)、強度に寄与するサイズが比較的大きなMg−Siクラスタの数密度も多い。しかし、前記強度に寄与しないサイズが比較的小さなMg−Siクラスタの数密度が多すぎるために、この悪影響の方が強すぎて、目的とするAs0.2%耐力で110MPa以下のプレス成形性や良好な曲げ加工性が得られていない。また、BH性も低い。
比較例5、11、14は、予備時効処理における60〜120℃の範囲での保持時間が1時間と短かすぎる。このため、強度に寄与しない、DSCの昇温過程で溶解しやすいMg−Siクラスタが多く生成してしまい、前記図1の通り、150〜230℃の温度範囲の吸熱ピークAのピーク高さが8μW/mgを超えて高く(大きく)なる。その一方で、240〜255℃の温度範囲の発熱ピークBのピーク高さも20μW/mg以上と高く(大きく)、強度に寄与するサイズが比較的大きなMg-Siクラスタの数密度も多い。しかし、前記強度に寄与しないサイズが比較的小さなMg-Siクラスタの数密度が多すぎるために、この悪影響の方が強すぎて、目的とするAs0.2%耐力で110MPa以下のプレス成形性や良好な曲げ加工性が得られていない。また、BH性も低い。
比較例6、12、15は、予備時効処理における60〜120℃の範囲での保持時間が48時間と長すぎる。このため、240〜255℃の温度範囲の発熱ピークBのピーク高さは20μW/mg未満と低く(小さく)、強度に寄与するサイズが比較的大きなMg−Siクラスタの数密度が少ない。この結果、目的とするAs0.2%耐力で110MPa以下のプレス成形性や良好な曲げ加工性が得られていない。また、BH性も低い。
比較例7は、予備時効処理における到達温度が130℃と、上限の120℃を超えて高すぎる。このため、強度に寄与する、サイズが比較的大きいMg−Siクラスタが減少して、240〜255℃の温度範囲の発熱ピークBのピーク高さが20μW/mg未満と低く(小さく)、強度に寄与するサイズが比較的大きなMg−Siクラスタの数密度が少ない。この結果、BH性が低くなっている一方で、As0.2%耐力は110MPaを超えて高くなり過ぎており、プレス成形性や良好な曲げ加工性も得られていない。
また、表3の比較例25〜34は、前記予備時効処理条件を含めて好ましい範囲で製造しているものの、表1の合金番号13〜22を用いており、必須元素のMg、Siの含有量が各々本発明範囲を外れているか、あるいは不純物元素量が多すぎる。このため、これら比較例24〜33は、表3に示す通り、各発明例に比して、特に30日間室温保持後のAs耐力が比較的高すぎて自動車パネルなどへのプレス成形性やヘム加工性に劣るか、BH性が劣っている。
比較例25は表1の合金13であり、Siが少なすぎる。
比較例26は表1の合金14であり、Siが多すぎる。
比較例276は表1の合金15であり、Snが少なすぎる。
比較例28は表1の合金16であり、Snが多すぎ、熱延時に割れが生じて板の製造ができなかった。
比較例29は表1の合金17であり、Feが多すぎる。
比較例30は表1の合金18であり、Mnが多すぎる。
比較例31は表1の合金19であり、CrおよびTiが多すぎる。
比較例32は表1の合金20であり、Cuが多すぎる。
比較例33は表1の合金21であり、Znが多すぎる。
比較例34は表1の合金22であり、ZrおよびVが多すぎる。
以上の実施例の結果から、室温時効後の成形性とBH性向上に対して、前記本発明で規定する組成やDSCの各条件を全て満たす必要性があることが裏付けられる。
本発明によれば、室温時効後のBH性や成形性をも兼備する6000系アルミニウム合金板を提供できる。この結果、自動車のパネル、特に、美しい曲面構成やキャラクターラインなどの意匠性が問題となるアウタパネルに、6000系アルミニウム合金板の適用を拡大できる。

Claims (2)

  1. 質量%で、Mg:0.2〜2.0%、Si:0.3〜2.0%、Sn:0.005〜0.3%を各々含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなるAl−Mg−Si系アルミニウム合金板であって、この板の示差走査熱分析曲線において、Mg−Siクラスタの溶解に相当する吸熱ピークとして、150〜230℃の温度範囲の吸熱ピークのピーク高さが8μW/mg以下(但し、0μW/mgを含む)である一方で、Mg−Siクラスタの生成に相当する発熱ピークとして、240〜255℃の温度範囲の発熱ピークのピーク高さが20μW/mg以上であることを特徴とする成形性と焼付け塗装硬化性とに優れたアルミニウム合金板。
    但し、前記板の各測定箇所における示差熱分析においては、試験装置:セイコ−インスツルメンツ製DSC220G、標準物質:アルミ、試料容器:アルミ、昇温条件:15℃/min、雰囲気:アルゴン(50ml/min)、試料重量:24.5〜26.5mgの同一条件で各々行い、得られた示差熱分析のプロファイル(μW)を試料重量で割って規格化した(μW/mg)後に、前記示差熱分析プロファイルでの0〜100℃の区間において、示差熱分析のプロファイルが水平になる領域を0の基準レベルとし、この基準レベルからの発熱ピーク高さを測定する。
  2. 前記アルミニウム合金板が、更に、Fe:1.0%以下(但し、0%を含まず)、Mn:1.0%以下(但し、0%を含まず)、Cr:0.3%以下(但し、0%を含まず)、Zr:0.3%以下(但し、0%を含まず)、V:0.3%以下(但し、0%を含まず)、Ti:0.1%以下(但し、0%を含まず)、Cu:1.0%以下(但し、0%を含まず)、Ag:0.2%以下(但し、0%を含まず)、Zn:1.0%以下(但し、0%を含まず)の1種または2種以上を含む請求項1に記載の成形性と焼付け塗装硬化性とに優れたアルミニウム合金板。
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