以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。図1には本実施形態に係る印刷システム10が示されている。印刷システム10は、印刷物の製造(印刷)に係る各工程を発注する発注者が所持している印刷サブシステム12Aと、印刷物のデザイン工程及び校正工程を発注者から受注するDTP業者が所持している印刷サブシステム12Bと、面付け工程、色校正工程及び印刷データが確定した以降の各工程を発注者から受注する印刷業者が所持している印刷サブシステム12Cが、ネットワーク13を介して各々接続されて構成されている。
印刷サブシステム12Aには、印刷装置として、入力された印刷データに基づき電子写真プロセスにより可視のカラー画像を所定の記録用紙上に形成するプリンタ14が設けられている。プリンタ14はBEP(BackEnd Processor)16に接続されており、BEP16は、パーソナル・コンピュータ(PC)から成り任意のOS(Operating System)及び任意のアプリケーション・ソフトがインストールされた複数台のクライアント端末18(図1では単一のクライアント端末18のみ示す)、RIP(Raster Image Processor)20、サーバ・コンピュータ22及びスキャナ24と通信回線26(例えば通信速度が1Gbps(Giga bit per second)程度の汎用の通信プロトコルによる高速有線LAN(Local Area Network)等)を介して互いに接続されている。なお、印刷サブシステム12Bはサーバ・コンピュータ22及びスキャナ24が設けられていない以外は印刷サブシステム12Aと同一の構成とされている。
一方、印刷サブシステム12Cには、印刷装置として、印刷機(プレス装置)28で印刷を行うための印刷版を入力された印刷データから直接作成する製版装置(CTP:Computer To Plate)30と、印刷データが表す印刷画像を網点階調で記録用紙に直接印刷する機能を備え製版装置30での印刷に使用する印刷データの色校正に用いられるDDCP(Direct Digital Color Proofer)32が設けられている。製版装置30及びDDCP32はBEP16に接続されており、BEP16は、複数台のクライアント端末18及びRIP20と通信回線26を介して互いに接続されている。また、印刷サブシステム12Cには折り機34、裁断機36及び製本機38も設けられている。なお、印刷サブシステム12A,12Bのプリンタ14、印刷サブシステム12Cの製版装置30及びDDCP32は請求項1に記載の印刷装置に対応している。
なお、製版装置30としては、例えば円筒形の回転ドラムの外周面にシート状の印刷版を巻き付けて固定し、回転ドラムを回転させると共に、入力された特定色成分の印刷データに応じて変調した光ビームを回転ドラムと一体回転する印刷版に照射することで印刷版に印刷画像を記録した後に、印刷画像を記録した印刷版を現像することで、特定の色成分の印刷版(刷版)を製作する構成を採用することができる。この場合、上記工程をC,M,Y,Kの各色成分について繰り返すことで各色成分に対応する印刷版を得ることができる。製版装置30によって製作された各色成分の印刷版は印刷機28に各々セットされて印刷に使用される。
本実施形態に係る各サブシステム12A〜12Cにおける印刷指示は、印刷すべき印刷画像をページ記述言語(PDL:Page Description Language)で記述した印刷データ(以下、PDLで記述された印刷データをPDL印刷データと称する)がクライアント端末18からRIP20へ送信されることによって成される。なお、サーバ・コンピュータ22には、個々の印刷データに対応する印刷制御情報が各々保管されている。本実施形態に係る印刷制御情報は、所定のフォーマット(例えばJDF:Job Definition Format)に準拠した情報であり、印刷を行わせる印刷装置や印刷部数、印刷物のサイズや紙質等の情報に加え、企画・制作から配送迄の印刷物製造に関する情報(例えば印刷物の製造仕様、制作・印刷・後加工等の各工程での処理手順、個々の印刷ジョブや工程の状況や履歴等)を包括的に記述可能とされている。
各サブシステム12A〜12CのRIP20は同一構成であるので、以下、各サブシステム12A〜12CのRIP20を区別することなく、その構成を説明すると、RIP20はパーソナル・コンピュータ(PC)等のコンピュータで構成されており、図3に示すように、データ格納部40、RIP処理部42、圧縮処理部44及びインタフェース(I/F)部46を備えている。データ格納部40には、RIP20がクライアント端末18から受信したPDL印刷データ(詳しくはPDLで記述されR,G,Bで色が表現された印刷データ)が順次格納される。RIP処理部42にはPDL解釈部及びイメージャとして機能するデコンポーザ、所謂RIPエンジンが組み込まれている。RIP処理部42はデータ格納部40からPDL印刷データを取り出して解釈し、R,G,B→C,M,Y,Kの色変換及びラスタイメージデータ(ビットマップ形式のデータ)への展開をページ単位で行って、印刷装置での印刷に使用可能な印刷データを生成するRIP(Raster Image Process)処理を行う。
なお、プリンタ14での印刷に用いられる印刷データと、製版装置30(及びDDCP32)での印刷(刷版の作成)に用いられる印刷データはフォーマットが相違しており(例えばプリンタ14での印刷に用いられる印刷データは解像度が600dpiで1ドット当りC,M,Y,K各8ビットで階調を表現するデータであるのに対し、製版装置30での印刷に用いられる印刷データは解像度が2400dpi又は4800dpiで1ドット当りC,M,Y,K各1ビットのデータ(階調表現を複数ドット単位で行うデータ)である等)、RIP処理部42は、BEP16に接続されている印刷装置の種類に適合したフォーマットの印刷データを生成する。
またRIP処理部42は、データ格納部40から取り出したPDL印刷データに対応する印刷制御情報に設定されているパラメータを参照することで、取り出したPDL印刷データに対応する印刷ジョブの処理条件に従って印刷時に実行すべき処理を判断し、判断した処理のうちRIP処理と関わりのある処理を同時に行う。なお、RIP処理と関わりのある処理としては、例えば指定された印刷装置がプリンタ14であれば、例えば回転(Rotation)、1枚の用紙内へのページ割付(N-UP)、リピート処理、用紙サイズ合わせ、デバイス差を補正するCMS(Color Management System:カラー管理システム)処理、解像度変換、コントラスト調整、圧縮率指定(低/中/高)等が挙げられ、指定された印刷装置が製版装置30又はDDCPであればスクリーン処理等が挙げられる。
なお、RIP処理部42で上述した各種処理が行われることで得られた印刷データは、同一の印刷データを用いた再印刷(例えばプリンタ14による印刷において、コレーション(Collation:丁合)設定により複数部を印刷する場合や、一旦印刷した後でもう1枚欲しいときの印刷等)に備え、一定期間又は印刷ジョブ毎に指定された期間、データ格納部40に保存される。
圧縮処理部44は、RIP処理部42で生成された印刷データを所定の圧縮方式で圧縮することで圧縮画像ファイルを生成する。なお、圧縮対象の印刷データを、該印刷データが表す印刷画像の線画部分に相当するデータと前記印刷画像の背景部分に相当するデータとに分離し、分離した線画部分のデータと背景部分のデータを異なる圧縮方式で圧縮する(例えば線画部分のデータに対しては可逆圧縮(無損失圧縮)を適用し、背景部分のデータに対しては非可逆圧縮を適用する等)ように圧縮処理部44を構成してもよい。またI/F部46では、圧縮処理部44から出力された圧縮画像ファイルを所定フォーマット(例えばTIFF(Tagged Image File Format)フォーマット)の印刷ファイルデータとして通信回線26を介してBEP16へ送信する(例えばFTO(Fast Transfer Protocol)等によるファイル転送)。
また、各サブシステム12A〜12CのBEP16も同一構成であるので、各サブシステム12A〜12CのBEP16を区別することなく、その構成を説明すると、BEP16もPC等のコンピュータで構成され、本発明に係る印刷制御装置として機能する。図3に示すように、BEP16はデータ受信部50、画像記憶部52、伸張処理部54、画像処理部56、I/F部58,60及び印刷制御部62を備えている。データ受信部50はRIP20から送信された印刷ファイルデータを受信し、画像記憶部52はデータ受信部50で受信された印刷ファイルデータを順次記憶し、伸張処理部54は所定の順序(例えば画像記憶部52への記憶順)で画像記憶部52から印刷ファイルデータを読み出し、読み出した印刷ファイルデータから圧縮画像ファイルを取り出して伸張処理を行う。一方、印刷制御部62は伸張処理部54が画像記憶部52から特定の印刷ファイルデータを読み出す際に、前記特定の印刷ファイルデータに対応する印刷制御情報(サーバ・コンピュータ22に保管されている印刷制御情報)を参照し、該印刷制御情報に設定されているパラメータによって規定されている印刷ジョブの処理条件に応じて、BEP16の各部の動作を制御する。
すなわち、BEP16にプリンタ14を接続する場合、プリンタ14はI/F部58及び画像処理部56を介して伸張処理部54に接続される。また、BEP16に製版装置30又はDDCP32を接続する場合、製版装置30又はDDCP32はI/F部60を介して伸張処理部54に接続される。印刷制御部62は、指定された印刷装置がプリンタ14か製版装置30又はDDCP32かに基づいて、伸張処理部54による伸張処理を経て得られた印刷画像データを画像処理部56又はI/F部60へ入力させる。BEP16に接続されている印刷装置が製版装置30又はDDCP32である場合、伸張処理部54から出力された印刷画像データはI/F部60に入力される。BEP16と製版装置30又はDDCP32との間は汎用的な通信プロトコルによって通信が行われる比較的「疎」な関係にあり、I/F部60に入力された印刷画像データは、製版装置30で印刷版を作成するか又はDDCP32で印刷を行うための印刷データとして、汎用的な通信プロトコルにより製版装置30又はDDCP32へ順次転送され、製版装置30での印刷(印刷版の作成)又はDDCP32での印刷に用いられる。
一方、BEP16に接続されている印刷装置がプリンタ14であった場合、伸張処理部54から出力された印刷画像データは画像処理部56に入力される。画像処理部56は、入力された印刷画像データに対して回転や用紙上の印刷画像の印刷位置の調整、拡大又は縮小等の各種処理を行う機能を備えており、印刷制御部62は、印刷制御情報に設定されているパラメータで規定されている排出条件及び印刷を行わせるプリンタ14の構造や特性に応じて、昇順/降順のページの並べ替え、両面印刷時の処理ページ順決定、多次元ルックアップテーブル(DLUT)を用いた色変換・グレーバランス補正・色ずれ補正等のキャリブレーション処理、スクリーン指定処理、プリンタ14のフィニッシャモジュールで実行されるフィニッシング処理に対応したページ再配置(ステープラやパンチ穴の場所確保)、コレーション(丁合)、排出面(上下)合わせ等のように、プリンタ14の構造や特性に応じて処理内容が相違する各種処理を画像処理部56で行わせる。
BEP16とプリンタ14との間は専用の通信プロトコル(プリンタ14のプリントエンジンに依存した通信プロトコル)によって通信が行われる比較的「密」な関係にあり、画像処理部56で各種の処理が行われた印刷画像データはI/F部58を介してプリンタ14へ転送される。また、この印刷画像データの転送時に、印刷制御部62はプリンタ14の処理速度に同期したタイミングで各種の制御コマンドを送出することでプリンタ14の各部の動作を制御し、プリンタ14で印刷処理を実行させる。また、印刷制御部62はプリンタ14の構造や特性に応じて処理内容が相違する紙詰まり時のリカバリ処理も自動的に行う。このように、印刷制御部62はプリンタ14の作動を制御するプリンタコントローラとしても機能する。
次に本実施形態の作用として、印刷物制作の流れについて説明する。印刷物の制作にあたり、発注者は、まずクライアント端末18やスキャナ24を操作することで、制作する印刷物に掲載する原稿(例えばテキストデータから成る文字原稿や、画像データから成る画像原稿、ベクトルデータ等から成る線画(図形)原稿等)を作成する(図3のステップ100も参照)。なお、文字原稿は、例えばクライアント端末18にインストールされているワープロソフト等を利用して作成することができ、写真原稿は、例えば写真フィルムや印画紙に記録されている画像をスキャナ24によって読み取ることで作成することができ、線画(図形)原稿は、例えばクライアント端末18にインストールされているCADソフトやドロー系ソフトを利用して作成することができる。
原稿の作成が完了すると、続いて発注者は、作成した個々の原稿に機密情報が含まれているか否かを各々判断し、機密情報が含まれていると判断した原稿のデータの属性情報として、印刷物を最終的に印刷する迄の各工程における前記原稿の印刷を制限するための印刷制限情報を設定・付加する(図3のステップ102も参照)。具体的には、例えば制作対象の印刷物が決算報告書である等の場合、情報の漏洩が株価等に影響を与える可能性のある決算の数値が機密情報と判断され、当該数値が含まれる文字原稿のテキストデータに対して印刷制限情報が属性情報として設定・付加される。なお、このステップ102は請求項4に記載の「制限領域情報を付加」するステップに対応している。
また、発注者はクライアント端末18を介し、作成した原稿のデータを用いる制作対象の印刷物についての印刷制御情報をサーバ・コンピュータ22へ登録する操作を行うが、このとき発注者は、制作対象の印刷物の印刷制御情報に含まれる工程情報(制作対象の印刷物の現在の工程を表す情報)として、現在の工程がデザイン・校正工程であることを意味する情報を設定する(図3のステップ104も参照)。そして発注者は、制作対象の印刷物についてのデザイン工程及び校正工程の実施をDTP業者へ依頼(発注)し、制作対象の印刷物に用いる原稿のデータをDTP業者へ渡す(図3のステップ106も参照)。なお、原稿のデータは例えばネットワーク13経由でDTP業者へ転送することでDTP業者へ渡すことができるが、これに代えて原稿のデータを書き込んだ記録媒体(例えばFDやCD−R/RW、MO、DVD−R/RW/RAM等)をDTP業者へ渡すようにしてもよい。
DTP業者は、デザイン・校正工程の実施を発注者から受注すると(図3のステップ108も参照)、まず制作対象の印刷物について判型、段組、文字サイズ、字詰め、行間等のレイアウトを決定し、発注者から渡された原稿のデータを台紙データに貼り付けると共に、決定したレイアウトに従って原稿の位置・サイズを調整したり編集等の作業を行うことで、制作対象の印刷物の各頁をPDLで記述したPDL印刷データを生成するデザイン工程を実施する(図3のステップ110も参照)。なお、台紙データに貼り付ける原稿データの中に印刷制限情報が設定・付加されている原稿データが含まれている場合、PDL印刷データ上でも上記の原稿データに印刷制限情報が設定・付加されている状態で保存される。
例えば、図4(A)に示すように、制作対象の印刷物に用いる原稿データとしてテキスト(文字原稿)A,B及び画像(画像原稿)A,Bのデータが発注者によって各々作成され、このうちテキストA及び画像Aのデータに印刷制限情報が設定・付加され、これらの原稿データを用い、DTP業者により図4(B)に示すようなレイアウトの頁を表すPDL印刷データが生成された場合、生成されたPDL印刷データに含まれるテキストAに相当するデータ及び画像Aに相当するデータには、印刷物を最終的に印刷する迄の各工程での印刷を制限する印刷制限情報が属性情報として付加されることになる。
またDTP業者は、デザイン工程が完了すると、所持している印刷サブシステム12Bのプリンタ14により、生成した制作対象の印刷物のPDL印刷データを用いて印刷を行い、印刷結果を参照し必要に応じてPDL印刷データを修正する校正工程を行う(図3のステップ112も参照)。なお、前述のデザイン工程においても、必要に応じて、印刷サブシステム12Bのプリンタ14により印刷を行い、印刷結果を参照してPDL印刷データの内容を確認する作業が行われる。
校正工程(及びデザイン工程)での印刷は、印刷サブシステム12Bのクライアント端末18から印刷サブシステム12BのRIP20へPDL印刷データを転送して印刷を指示することによって開始される。PDL印刷データが転送されると、RIP20のRIP処理部42ではRIP処理を行うが、本実施形態では、RIP処理対象のPDL印刷データに、印刷制限がかかっている(印刷制限情報が付加されている)原稿データが含まれているか否かを判断し、印刷制限がかかっている原稿データが含まれていた場合には、PDL印刷データを展開することで得られるページ単位の印刷データ(ラスタイメージデータ)に対し、該ラスタイメージデータの全ドットのうち印刷制限がかかっている原稿データに対応するドットとそれ以外のドットを識別する印刷制限領域定義情報(例えば印刷制限がかかっている文字原稿に対応する領域内のドット=2、印刷制限がかかっている画像原稿に対応する領域内のドット=1、印刷制限がかかっていないドット=0とされた情報)を設定した印刷制限領域定義レイヤを生成して付加する。なお、この印刷制限領域定義レイヤは請求項1に記載の制限領域情報に対応している。
例えばRIP処理対象のPDL印刷データが、テキストA,B及び画像A,Bが図4(B)に示すように配置され、このうちテキストA及び画像Aに印刷制限がかかっているデータである場合、例として図4(C)に示すように、RIP処理によって得られるラスタイメージデータ(印刷データレイヤのデータ)のうち、テキストAが展開された領域及び画像Aが貼り付けられた領域(の各ドット)を印刷制限領域として定義する印刷制限領域情報が生成され、該情報が印刷制限領域定義レイヤとしてラスタイメージデータのレイヤ(印刷データレイヤ)に付加されることになる。
RIP20でのRIP処理を経て得られた印刷データは圧縮処理部44によって一旦圧縮され、印刷ファイルデータとして印刷サブシステム12BのBEP16へ転送され、BEP16の画像記憶部52に一時記憶される。本実施形態に係るBEP16では、画像記憶部52から読み出した印刷ファイルデータに対し、伸張処理部54が圧縮画像ファイルを取り出して伸張処理を行った後に、伸張処理後の印刷データに対して印刷制御部62により機密情報印刷制御処理が行われる。以下、この機密情報印刷制御処理について、図5のフローチャートを参照して説明する。
ステップ160では伸張処理部54によって伸張処理が行われた印刷データ(処理対象の印刷データ)を参照し、次のステップ162では、処理対象の印刷データに印刷制限領域定義レイヤが付加されているか否か判定する。なお、ステップ160,162は請求項1に記載の判断手段に対応している。上記判定が否定された場合には、処理対象の印刷データが表す印刷画像には機密情報に相当する情報は含まれていないと判断できるので、何ら処理を行うことなく機密情報印刷制御処理を終了する。一方、ステップ162の判定が否定された場合はステップ164へ移行し、処理対象の印刷データに対応する印刷制御情報(サーバ・コンピュータ22に保管されている印刷制御情報)をネットワーク13を介して参照する。
ステップ166では、参照した印刷制御情報に含まれる工程情報に基づき、処理対象の印刷データに対応する印刷物(制作対象の印刷物)の現在の工程を認識する。詳細は後述するが、印刷制御情報に含まれる工程情報は、制作対象の印刷物の工程の進行に伴い発注者によって順次書き換えられる。ステップ168では、ステップ166で認識した制作対象の印刷物の現在の工程が最終印刷工程か否か判定する。このとき、工程情報に設定されている工程は「デザイン・校正工程」であるので、判定が否定されてステップ170へ移行し、制作対象の印刷物の現在の工程がデザイン・校正工程か否か判定する。
この場合、判定が肯定されてステップ172へ移行し、処理対象の印刷データに付加されている印刷制限領域定義レイヤの情報に基づき、制作対象の印刷物のうち印刷制限がかかっている画像原稿に対応する領域が該領域の外枠のみ印刷されるように、処理対象の印刷データの書き換えを行う。また、次のステップ174では、制作対象の印刷物のうち印刷制限がかかっている文字原稿に対応する領域が、該文字領域内に存在する個々の文字の位置を表す矩形状の枠のみ印刷されるように、処理対象の印刷データの書き換えを行った後に機密情報印刷制御処理を終了する。そして、上記処理が行われた印刷データがBEP16からプリンタ14へ転送されることで印刷が行われる。
なお、上述したステップ164〜ステップ174は請求項1(詳しくは請求項2〜請求項4)に記載の制御手段に対応しており、特にステップ164,166,170は請求項4に記載の制御手段に対応している。
例えば処理対象の印刷データが、テキストA,B及び画像A,Bが図4(C)に示すように配置され、テキストAが展開された領域及び画像Aが貼り付けられた領域(の各ドット)を印刷制限領域として定義する印刷制限領域定義レイヤが付加された印刷データであった場合、校正工程(及びデザイン工程)での印刷では、上記の機密情報印刷制御処理を経た印刷データに基づいてプリンタ14での印刷が行われることで、図4(D)に示すように、画像Aが貼り付けられた領域については外枠のみが印刷され、テキストAが展開された領域については個々の文字の位置のみを示す矩形状の枠が印刷されることになり、校正工程(及びデザイン工程)での印刷によって機密情報が漏洩することを防止することができる。
また、上記のように機密情報が含まれている画像については外枠のみ印刷し、機密情報が含まれているテキストについては個々の文字の位置を示す矩形状の枠のみ印刷することで、機密情報が含まれている画像やテキストについても、印刷物上での配置等は確認することができるので、機密情報が含まれている画像や文字の印刷を制限することで、校正工程(及びデザイン工程)の作業に支障をきたすことを防止することができる。
DTP業者は、校正工程が完了するとデザイン工程及び校正工程を経て得られたPDL印刷データを発注者へ納品する(図3のステップ114も参照)。なお、この納品は、例えばネットワーク13経由で印刷サブシステム12AへPDL印刷データを転送するか、或いはPDL印刷データを書き込んだ記録媒体を発注者へ渡すことで行うことができる。DTP業者からPDL印刷データが納品されると、発注者は、納品されたPDL印刷データの内容を参照し、レイアウト等が適切か否か等を確認する検定作業を行う(図3のステップ116も参照)。そして、レイアウト等が不適切と判断した場合(図3のステップ118の判定が否定された場合)には、DTP業者に対してPDL印刷データの修正を指示する(図3の「修正指示」も参照)。この場合、DTP業者によってデザイン工程(図3のステップ110)や校正工程(図3のステップ112)の作業が再度行われることになる。
また発注者は、検定作業によりPDL印刷データの内容(レイアウト等)が適切であると判断すると(図3のステップ118の判定が肯定された場合)、制作対象の印刷物の印刷制御情報に含まれる工程情報として、現在の工程が面付け・色校正工程であることを意味する情報をクライアント端末18を介して設定する(図3のステップ120も参照)。そして発注者は、制作対象の印刷物についての面付け工程及び色校正工程の実施を印刷業者へ依頼(発注)し、前述の検定作業を経たPDL印刷データを印刷業者へ渡す(図3のステップ122も参照)。
印刷業者は、面付け・色校正工程の実施を発注者から受注すると(図3のステップ124も参照)、印刷サブシステム12Cのクライアント端末18を操作し、発注者から受け取ったPDL印刷データを、製版装置30で作成する印刷版(印刷機28の印刷単位)と同サイズの台紙データ上に、制作対象の印刷物の複数頁分のPDL印刷データを単位として、印刷の後工程(例えば裁断工程や製本工程)の作業を考慮したレイアウトで割り付けることで、製版装置30での印刷版の作成に用いるPDL大判印刷データを生成する面付け工程を実施する(図3のステップ126も参照)。なお、PDL大判印刷データの生成においても、同一の台紙データに貼り付ける印刷物の複数頁分のPDL印刷データの中に、印刷制限がかかっている原稿データが含まれているPDL印刷データが存在している場合、PDL大判印刷データ上でも上記の原稿データは印刷制限がかかっている(印刷制限情報が付加されている)状態で保存される。
また印刷業者は、面付け工程が完了すると、所持している印刷サブシステム12CのDDCP32により、生成したPDL大判印刷データを用いて印刷を行い、印刷結果(サンプル)を参照して制作対象の印刷物中のカラー画像の色味等を確認し、必要に応じて色味等を修正する(この色味の修正は、例えば印刷時に用いる色補正パラメータの値を調整したり、或いはPDL大判印刷データ上で色味を修正する等によって実現できる)色校正工程を行う(図3のステップ128も参照)。
色校正工程での印刷は、印刷サブシステム12Cのクライアント端末18からRIP20へPDL大判印刷データを転送し、DDCP32での印刷を指示することによって開始される。PDL大判印刷データが転送されると、RIP20のRIP処理部42ではRIP処理を行うが、印刷サブシステム12CのRIP20においても、RIP処理対象のPDL大判印刷データの中に印刷制限がかかっている原稿データが含まれている場合、先に説明した印刷サブシステム12BのRIP20と同様に、PDL大判印刷データを展開することで得られるページ単位の大判印刷データ(ラスタイメージデータ)に対し、該ラスタイメージデータの全ドットのうち印刷制限がかかっている原稿データに対応するドットとそれ以外のドットを識別する印刷制限領域定義情報を設定した印刷制限領域定義レイヤが生成されて付加される。
また、印刷サブシステム12Cにおいても、RIP20でのRIP処理を経て得られた大判印刷データが圧縮処理部44によって一旦圧縮された後に、印刷ファイルデータとしてBEP16へ転送され、BEP16の画像記憶部52に一時記憶されると、画像記憶部52から読み出した印刷ファイルデータに対し、伸張処理部54によって圧縮画像ファイルが取り出されて伸張処理が行われた後に、印刷制御部62により、伸張処理後の印刷データ(大判印刷データ)に対して先に説明した機密情報印刷制御処理(図5)が実行される。
この機密情報印刷制御処理では、処理対象の印刷データに印刷制限領域定義レイヤが付加されている場合、ステップ162の判定が肯定され、ステップ164,166で処理対象の印刷データに対応する制作対象の印刷物の現在の工程が認識されるが、印刷制御情報に含まれる工程情報は、このときには発注者によって「面付け・色校正工程」へ書き換えられているので、ステップ168,170の判定が各々否定されてステップ174へ移行し、制作対象の印刷物のうち印刷制限がかかっている文字原稿に対応する領域が、該文字領域内に存在する個々の文字の位置を表す矩形状の枠のみ印刷されるように、処理対象の印刷データの書き換えを行って処理を終了する。そして、上記処理が行われた大判印刷データがBEP16からDDCP32へ転送されることで印刷が行われる。
この場合、例えば処理対象の大判印刷データに含まれる複数頁分の印刷画像のうちの特定頁の印刷画像が、テキストA,B及び画像A,Bが図4(C)に示すように配置された印刷画像であり、特定頁の印刷画像のうちテキストAが展開された領域及び画像Aが貼り付けられた領域(の各ドット)を印刷制限領域として定義する印刷制限領域定義レイヤが前記大判印刷データに付加されていた場合、色校正工程での印刷では、上記の機密情報印刷制御処理を経た印刷データに基づいてDDCP32での印刷が行われることで、図4(E)に示すように、テキストAが展開された領域については個々の文字の位置のみを示す矩形状の枠が印刷されることになり、色校正工程での印刷により少なくともテキストAに含まれる機密情報が漏洩することを防止することができる。
また、機密情報印刷制御処理では、現在の工程が色校正工程である場合、ステップ172の処理(印刷制限がかかっている画像原稿に対応する領域を外枠のみ印刷させる処理)を実行しないので、機密情報が含まれている画像の色味も確認することができ、色校正工程の作業に支障をきたすことも防止することができる。なお、色工程での印刷において、機密情報が含まれている画像原稿の印刷制限を上記のように解除することに伴い、画像原稿に含まれている機密情報が漏洩する可能性を低減するために、例えば発注者が印刷業者に渡すPDL印刷データに、パスワードを入力しないと印刷を実行できない印刷制限を設定し、印刷を実行するためのパスワードを、印刷業者のうち制作対象の印刷物の面付け工程及び色校正工程を行う担当者にのみ教示するようにしてもよい。
印刷業者は、色校正工程が完了すると色校正工程での印刷で得られたサンプルを発注者へ納品する(図3のステップ130も参照)。印刷業者からサンプルが納品されると、発注者は納品されたサンプルを参照し、サンプル中の画像の色味等が適切か否か等を確認する検定作業を行う(図3のステップ132も参照)。そして、色味等が不適切と判断した場合(図3のステップ134の判定が否定された場合)には、印刷業者に対して画像の色味等の修正を指示する(図3の「修正指示」も参照)。この場合、印刷業者によって面付け工程(図3のステップ126)や色校正工程(図3のステップ128)の作業が再度行われることになる。
また発注者は、検定作業によりサンプル中の画像の色味等が適切であると判断すると(図3のステップ134の判定が肯定された場合)、制作対象の印刷物の印刷制御情報に含まれる工程情報として、現在の工程が最終印刷工程(本刷り)であることを意味する情報をクライアント端末18を介して設定する(図3のステップ136も参照)。なお、ステップ136は請求項4に記載の「印刷制限領域についての印刷の制限を解除する」ステップに対応している。そして発注者は、制作対象の印刷物についての最終印刷の実施を印刷業者へ依頼(発注)する(図3のステップ138も参照)。発注者から最終印刷の実施が指示されると、印刷業者は面付け工程及び色校正工程を経て最終的に確定したPDL大判印刷データを、印刷サブシステム12Cのクライアント端末18からRIP20へ転送し、製版装置30による印刷版の作成を指示する。
これにより、前述のようにRIP20では、RIP処理対象のPDL大判印刷データの中に印刷制限がかかっている原稿データが含まれている場合には、RIP処理によって得られる大判印刷データに印刷制限領域定義レイヤを生成して付加し、BEP16では機密情報印刷制御処理を行うが、このときには印刷制御情報に含まれる工程情報が発注者によって「最終印刷工程」へ書き換えられているので、処理対象の大判印刷データに印刷制限領域定義レイヤが付加されている場合にもステップ168の判定が肯定され、ステップ172,174の処理(印刷制限がかかっている画像原稿や文字原稿に相当する領域のデータを書き換える処理)が行われることはない。
上記処理を経た大判印刷データがBEP16から製版装置30へ転送され、製版装置30で印刷版の作成が行われる(図3のステップ140も参照)が、例えば印刷版作成対象の大判印刷データに含まれる複数頁分の印刷画像のうちの特定頁の印刷画像が、テキストA,B及び画像A,Bが図4(C)に示すように配置された印刷画像であり、特定頁の印刷画像のうちテキストAが展開された領域及び画像Aが貼り付けられた領域(の各ドット)を印刷制限領域として定義する印刷制限領域定義レイヤが前記大判印刷データに付加されていたとしても、最終印刷工程での印刷では、図4(F)に示すように全ての文字及び画像が制限なく印刷されることになる。
印刷業者は、製版装置30による印刷版の作成が完了すると、作成した印刷版を印刷機28にセットして印刷(本刷り)を行い(図3のステップ142も参照)、折り機34を用いて折り工程を行い(図3のステップ144も参照)、裁断機36を用いて裁断工程を行い(図3のステップ146も参照)、製本機38を用いて製本工程を行う(図3のステップ148も参照)。そして印刷業者は、最終的に得られた印刷物を発注者へ納品する(図3のステップ150も参照)。印刷業者から納品された印刷物を発注者が受け取る(図3のステップ152も参照)ことで、印刷物の制作が完了する。
なお、上記では印刷制限がかかっている画像原稿に相当する領域については、デザイン・校正工程での印刷時にのみ、前記領域の外枠のみを印刷させる制御を行い、印刷制限がかかっている文字原稿に相当する領域については、デザイン・校正工程での印刷時及び面付け・色校正工程での印刷時に、個々の文字の位置を表す矩形状の枠のみ印刷させる制御を行う例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。印刷制限がかかっている画像原稿に相当する領域に対し、印刷物上での機密情報の内容判別を困難とする制御としては、上記のように外枠のみを印刷制御以外に、例えば枠も含めて全く印刷させない制御や、単色(例えばC,M,Y,Kの何れか1色)で印刷させる制御が考えられ、印刷制限がかかっている文字原稿に相当する領域に対し、印刷物上での機密情報の内容判別を困難とする制御としては、上記のように個々の文字の位置を表す矩形状の枠のみ印刷させる制御以外に、枠も含めて全く印刷させない制御が考えられるが、これらの制御の中から工程毎に最適な制御を選択するようにしてもよい。上記のように、工程毎に制御を切り替えることも請求項1記載の発明に対応している。
また、上記では或る工程での印刷時に、印刷制限がかかっている画像原稿や文字原稿に相当する領域に対し、印刷物上での機密情報の内容判別を困難とする制御として一定の制御を行う例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば予め設定されたパスワードが入力された場合は、印刷制限がかかっている画像原稿や文字原稿に相当する領域をそのまま印刷させるようにしてもよい。
また、上記では印刷制限領域定義レイヤに規定されている印刷制限がかかっている領域に対し、機密情報の内容判別を困難とする制御を適用するか否かを、現在の工程及び当該領域に展開又は貼り付けられている原稿の種類(画像原稿か文字原稿か)に応じて選択する例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、印刷制限がかかっている領域に対し、機密情報の内容判別を困難とする制御として、現在の工程や原稿の種類に拘わらず一定の制御を適用するようにしてもよい。本発明は上記態様も権利範囲に含むものである。
更に、上記では本発明に係る制限領域情報として、印刷制限がかかっている領域とそれ以外の領域をドット単位で識別する印刷制限領域定義情報(レイヤ)を用いた例を説明したが、これに限定されるものではなく、印刷制限がかかっている領域の各頂部の座標を指定する情報、或いは印刷制限がかかっている領域の中心位置(重心位置)の座標と部分領域の形状及びサイズを指定する情報を用いてもよい。
また、上記では印刷データが確定する迄の印刷の各工程のうち、デザイン工程及び校正工程を発注者がDTP業者に行わせ、面付け工程及び色校正工程を発注者が印刷業者に行わせる態様を例に説明したが、これに限定されるものではない。本発明によれば、印刷データが確定する迄の印刷の各工程が単一の作業者(例えば上記態様における発注者に相当する印刷物の制作主)が行う態様であっても、各工程に支障をきたすことなく機密情報の漏洩を防止することができる。