JP4250454B2 - 電動モータの歯車伝動装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、両歯車回転軸の軸心を互いに直角に食い違わせるかまたは交差させた歯車伝動装置を備えた電動モータにおいて、この両歯車回転軸を位置決めする構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図5に示す従来の電動モータ1における歯車伝動装置2においては、モータ出力側回転軸4と減速側回転軸7とがギヤケース8に対しころがり軸受5を介して回転可能に支持されているとともに、モータ出力側回転軸4の軸心4aと減速側回転軸7の軸心7aとが互いに直角に食い違っている。このモータ出力側回転軸4に支持されたハイポイドピニオン10と、この減速側回転軸7に支持されたハイポイドギヤ11とが互いに噛み合わされている。このモータ出力側回転軸4の外周に嵌め込まれた止め輪45ところがり軸受5との間の隙間に環状シム47を任意枚数介在させることにより、モータ出力側回転軸4ところがり軸受5との間の位置決めを行っている。このギヤケース8の内周に嵌め込まれた止め輪46ところがり軸受5との間の隙間に環状シム48を任意枚数介在させることにより、ギヤケース8ところがり軸受5との間の位置決めを行っている。
【0003】
【特許文献1】
特許第3269012号公報
【特許文献2】
特開2001−124155号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記環状シム47,48の調整による位置決め作業は面倒であった。また、長時間の使用により、ギヤケース8ところがり軸受5とモータ出力側回転軸4との間で緩みが生じると、騒音の原因になるので、その緩みを解消するために必要な環状シム47,48の再調整作業も面倒であった。なお、上記特許文献1,2も参照されたい。
【0005】
この発明は、電動モータの歯車伝動装置において、上記位置決め作業を簡単にすることを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
後記実施形態の図面(図1,2に示す第1実施形態、図3に示す第2実施形態、図4に示す第3実施形態)の符号を援用して本発明を説明する。
【0007】
請求項1の発明にかかる電動モータの歯車伝動装置は、下記のように構成されている。
この電動モータ(1)の歯車伝動装置(2)においては、第1歯車(10)を支持したモータ出力側の回転軸(4)と第2歯車(11)を支持した減速側の回転軸(7)とを支持部材(3,8)に対し回転可能に支持するとともにモータ出力側の回転軸(4)の軸心(4a)と減速側の回転軸(7)の軸心(7a)とを互いに直角に食い違わせるかまたは交差させて第1歯車(10)と第2歯車(11)とを互いに噛み合わせている。前記モータ出力側の回転軸(4)を支持するころがり軸受(5)の内輪(5a)をモータ出力側の回転軸(4)の軸心(4a)の方向(X)の両側で挟持する一対の内側止め部(21,23)のうち一方には内側楔部材(28)を設けるとともに他方には内側段差部(25)を設けている。前記モータ出力側の回転軸(4)を支持するころがり軸受(5)の外輪(5b)をモータ出力側の回転軸(4)の軸心(4a)の方向(X)の両側で挟持する一対の外側止め部(22,24)のうち一方には外側楔部材(33)を設けるとともに他方には外側段差部(26)を設けている。この内側楔部材(28)と外側楔部材(33)、この内側段差部(25)と外側段差部(26)とを、それぞれ、ころがり軸受(5)の内輪(5a)及び外輪(5b)で互いに対角位置に配設するとともに、この内側楔部材(28)と外側段差部(26)、この外側楔部材(33)と内側段差部(25)とを、それぞれ、モータ出力側の回転軸(4)の軸心(4a)の方向(X)に直交する半径方向(Y)で互いに並設している。この内側楔部材(28)をこの半径方向(Y)へ付勢してモータ出力側の回転軸(4)に設けた内側止め溝(27)にその付勢力により係入し、内側止め溝(27)の当接部(29,38,42)に内側楔部材(28)の当接部(31)を当接するとともに、この外側楔部材(33)をこの半径方向(Y)へ付勢して前記支持部材(8)に設けた外側止め溝(32)にその付勢力により係入し、外側止め溝(32)の当接部(34,40,44)に外側楔部材(33)の当接部(36)を当接することにより、これらの楔部材(28,33)をころがり軸受(5)に向けて移動させるようにモータ出力側の回転軸(4)の軸心(4a)の方向の移動力(F)をこれらの楔部材(28,33)に働かせ、モータ出力側の回転軸(4)を位置決めする。
【0010】
請求項1の発明では、内側止め部(21)で内側楔部材(28)を内側止め溝(27)に係入するとともに外側止め部(22)で外側楔部材(33)を外側止め溝(32)に係入するだけの簡単な位置決め作業により、支持部材(8)ところがり軸受(5)とモータ出力側の回転軸(4)とを確実に位置決めしてモータ出力側の回転軸(4)を位置決めすることができる。
【0012】
また、請求項1の発明では、長時間の使用により、支持部材(8)ところがり軸受(5)とモータ出力側の回転軸(4)との間で緩みが生じようとしても、その緩みに応じて内側楔部材(28)が半径方向(Y)への付勢力により内側止め溝(27)に対し自動的に係入されるとともに外側楔部材(33)が半径方向(Y)への付勢力により外側止め溝(32)に対し自動的に係入されるので、その緩みが楔作用により自動的に解消され、それらを確実に位置決めすることができる。従って、再調整作業が簡単になるとともに、騒音を防止することができる。
さらに、請求項1の発明では、支持部材(8)ところがり軸受(5)とモータ出力側の回転軸(4)とを確実に位置決めした状態で、支持部材(8)に対するモータ出力側の回転軸(4)の回転をころがり軸受(5)により円滑に行うことができる。
【0013】
請求項2の発明は請求項1の発明を前提として下記のように構成されている。
前記内側止め溝(27)及び外側止め溝(32)には前記モータ出力側の回転軸(4)の軸心(4a)の方向(X)の溝幅寸法(楔部材28,33が係入される部分の溝幅寸法)を調節し得る間隔調節体(37,39,41,43)を挿入している。請求項2の発明では、この間隔調節体(37,39,41,43)により溝幅寸法を変更することができるので、止め溝(27,32)に対する楔部材(28,33)の係入時にそれらの位置関係を最適な状態に設定することができる。
【0015】
請求項3の発明は請求項1または請求項2の発明を前提として下記のように構成されている。
前記内側楔部材(28)及び外側楔部材(33)の当接部(31,36)には前記モータ出力側の回転軸(4)の軸心(4a)の方向(X)に直交する半径方向(Y)に対し傾斜する傾斜面(31b,36c)を形成し、前記内側止め溝(27)及び外側止め溝(32)の当接部(29,34,38,40,42,44)にはこの内側楔部材(28)及び外側楔部材(33)の当接部(31,36)の傾斜面(31b,36c)が当接するようにこの半径方向(Y)に対し傾斜する傾斜面(29b,34c,38b,40c,42c,44b)を形成している。請求項3の発明では、楔部材(28,33)と止め溝(27,32)との間で楔作用を確実に発揮させることができる。請求項2の発明の場合には、止め溝(27,32)の傾斜面(29b,34c,38b,40c,42c,44b)の一部または全部を間隔調節体(37,39,41,43)に形成する。例えば、互いに当接する前記内側楔部材(28)及び外側楔部材(33)の当接部(31,36)の傾斜面(31b,36c)と止め溝(27,32)の傾斜面(29b,34c,38b,40c,42c,44b)とを、前記モータ出力側の回転軸(4)の軸心(4a)の方向(X)の両側に形成すれば、楔力が大きくなり、支持部材(8)ところがり軸受(5)とモータ出力側の回転軸(4)とをより一層確実に位置決めすることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
〔第1実施形態〕
まず、本発明の第1実施形態にかかる歯車伝動装置を備えた電動モータについて図1,2を参照して説明する。
【0019】
この電動モータ1においては減速歯車伝動装置2がモータケース3の前側に取り付けられている。この減速歯車伝動装置2においては、モータ出力側回転軸4(第1回転軸)がモータケース3及びギヤケース8(支持部材)に対し前後両ころがり軸受5,6を介して回転可能に支持されているとともに、減速側回転軸7(第2回転軸)がギヤケース8に対し上下両ころがり軸受9を介して回転可能に支持されている。このモータ出力側回転軸4の軸心4aと減速側回転軸7の軸心7aとは互いに直角に食い違っている。このモータ出力側回転軸4の前端部側にはハイポイドピニオン10(第1歯車)が支持され、この減速側回転軸7の下端部側にはハイポイドギヤ11(第2歯車)が支持され、このハイポイドピニオン10とこのハイポイドギヤ11とが互いに噛み合わされている。前記ギヤケース8には減速側回転軸7の軸心7aと平行な軸心12aを有する出力筒12が上下両ころがり軸受13を介して回転可能に支持され、この減速側回転軸7に支持されたギヤ14と、この出力筒12に支持されたギヤ15とが互いに噛み合わされている。モータ出力側回転軸4の回転は、ハイポイドピニオン10とハイポイドギヤ11と減速側回転軸7とギヤ14とギヤ15とにより減速されて出力筒12に伝えられる。
【0020】
前記前後両ころがり軸受5,6のうちハイポイドピニオン10に対し遠い位置にある後側のころがり軸受6においては、一つの内側止め部16と一つの外側止め部17とがころがり軸受6の玉を挟む対角位置で設けられている。この内側止め部16においては、ころがり軸受6の前側でモータ出力側回転軸4の外周に環状に形成された内側段差部18に対しころがり軸受6の内輪6aが支持されている。この外側止め部17においては、ころがり軸受6の後側でモータケース3の内周に環状に形成された外側段差部19に対しころがり軸受6の外輪6bがワッシャ20(軸心4aの方向Xの弾性を有する断面波形状の環状体)を介して支持されている。このモータ出力側回転軸4の内側段差部18がころがり軸受6の内輪6aを圧接すると、ころがり軸受6の外輪6bがワッシャ20を圧接し、その圧接力をモータケース3の外側段差部19が受ける。
【0021】
前記前後両ころがり軸受5,6のうちハイポイドピニオン10に対し近い位置にある前側のころがり軸受5においては、前側の内側止め部21と後側の外側止め部22、後側の内側止め部23と前側の外側止め部24とが、それぞれ、ころがり軸受6の玉を挟む対角位置で設けられている。すなわち、前側の内側止め部21と前側の外側止め部24、後側の外側止め部22と後側の内側止め部23とは、それぞれ、モータ出力側回転軸4の軸心4aの方向Xに直交する半径方向Yで互いに並設されている。
【0022】
後側の内側止め部23においては、ころがり軸受5の後側でモータ出力側回転軸4の外周に環状に形成された内側段差部25に対しころがり軸受5の内輪5aが支持されている。前側の外側止め部24においては、ころがり軸受5の前側でギヤケース8の内周に環状に形成された外側段差部26に対しころがり軸受5の外輪5bが支持されている。
【0023】
前側の内側止め部21(特定止め部)においては、モータ出力側回転軸4(特定回転軸)の外周に内側止め溝27が環状に形成され、この内側止め溝27に内側止め体28(軸用C形止め輪)が係入されている。この内側止め溝27において半径方向Yに沿って切断した断面部分で内面29(当接部)は、底面29aと、この底面29aの前後両側から半径方向Yへ延びて相対向する前後両側面29b,29cと、この前後両側面29b,29c間で底面29aに面する開口29dとを備えている。この内側止め体28において半径方向Yに沿って切断した断面部分で楔部30が形成されている。この楔部30の外面31(当接部)は、内周面31aと、この内周面31aの前後両側から半径方向Yへ延びて互いに対辺になる前後両端面31b,31cと、この前後両端面31b,31c間で内周面31aに対し対辺になる外周面31dとを備えている。前記後側面29cと後端面31cとは、それぞれ、半径方向Yに沿う。前記前側面29b(傾斜面)と前端面31b(傾斜面)とは、それぞれ、モータ出力側回転軸4の軸心4aに接近するに従い前記後側面29cと後端面31cとに対し接近するように半径方向Yに対し傾斜している。
【0024】
ころがり軸受5をモータ出力側回転軸4の外周に嵌合して内輪5aの後側を後側の内側止め部23の内側段差部25に支持した状態で、内側止め体28(縮径する向きの弾性力を有する軸用C形止め輪)の楔部30を内側止め溝27に係入すると、その弾性力により前端面31bが前側面29bに圧接される。この圧接により、内側止め体28にはモータ出力側回転軸4の軸心4aの方向Xに移動力Fが生じる。その移動力Fにより楔部30の後端面31cが内輪5aの前側に圧接され、その移動力Fを内側段差部25が受ける。従って、ころがり軸受5の内輪5aは前側の内側止め部21と後側の内側止め部23との間で挟持される。
【0025】
後側の外側止め部22(特定止め部)においては、ギヤケース8の内周に外側止め溝32が環状に形成され、この外側止め溝32に外側止め体33(穴用C形止め輪)が係入されている。この外側止め溝32において半径方向Yに沿って切断した断面部分で内面34(当接部)は、底面34aと、この底面34aの前後両側から半径方向Yへ延びて相対向する前後両側面34b,34cと、この前後両側面34b,34c間で底面34aに面する開口34dとを備えている。この外側止め体33において半径方向Yに沿って切断した断面部分で楔部35が形成されている。この楔部35の外面36(当接部)は、外周面36aと、この外周面36aの前後両側から半径方向Yへ延びて互いに対辺になる前後両端面36b,36cと、この前後両端面36b,36c間で外周面36aに対し対辺になる内周面36dとを備えている。前記前側面34bと前端面36bとは、それぞれ、半径方向Yに沿う。前記後側面34c(傾斜面)と後端面36c(傾斜面)とは、それぞれ、モータ出力側回転軸4の軸心4aに接近するに従い前記前側面34bと前端面36bとに対し離間するように半径方向Yに対し傾斜している。
【0026】
ころがり軸受5をギヤケース8の内周に嵌合して外輪5bの前側を前側の外側止め部24の外側段差部26に支持した状態で、外側止め体33(拡径する向きの弾性力を有する穴用C形止め輪)の楔部35を外側止め溝32に係入すると、その弾性力により後端面36cが後側面34cに圧接される。この圧接により、外側止め体33にはモータ出力側回転軸4の軸心4aの方向Xに移動力Fが生じる。その移動力Fにより楔部35の前端面36bが外輪5bの後側に圧接され、その移動力Fを外側段差部26が受ける。従って、ころがり軸受5の外輪5bは後側の外側止め部22と前側の外側止め部24との間で挟持される。
【0027】
例えば、後側の内側止め部23の内側段差部25が摩耗してその内側段差部25と内側止め体28との間の間隔が大きくなってモータ出力側回転軸4の軸心4aの方向Xでモータ出力側回転軸4に対するころがり軸受5の緩みが生じた場合、内側止め体28の楔部30が自動的に縮径して内側止め溝27にくい込む。そのため、前述した移動力Fにより楔部30の後端面31cが内輪5aの前側に圧接され、ころがり軸受5の内輪5aが前側の内側止め部21と後側の内側止め部23との間で挟持されてこの緩みが解消される。
【0028】
例えば、前側の外側止め部24の外側段差部26が摩耗してその外側段差部26と外側止め体33との間の間隔が大きくなってモータ出力側回転軸4の軸心4aの方向Xでギヤケース8に対するころがり軸受5の緩みが生じた場合、外側止め体33の楔部35が自動的に拡径して外側止め溝32にくい込んむ。そのため、前述した移動力Fにより楔部35の前端面36bが外輪5bの後側に圧接され、ころがり軸受5の外輪5bが後側の外側止め部22と前側の外側止め部24との間で挟持されてこの緩みが解消される。
【0029】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態にかかる歯車伝動装置を備えた電動モータについて第1実施形態との相違点を中心に図3を参照して説明する。
【0030】
第2実施形態で前側の内側止め部21(特定止め部)においては、内側止め体28の楔部30の後端面31cところがり軸受5の内輪5aの前側との間で内側止め溝27に環状の間隔調節体37が係入されている。この間隔調節体37において半径方向Yに沿って切断した断面部分で外面38(当接部)は、内周面38aと、この内周面38aの前後両側から半径方向Yへ延びて互いに対辺になる前後両端面38b,38cと、この前後両端面38b,38c間で内周面38aに対し対辺になる外周面38dとを備えている。この後端面38cは半径方向Yに沿う。この前端面38b(傾斜面)はモータ出力側回転軸4の軸心4aに接近するに従い前記後端面38cに対し離間するように半径方向Yに対し傾斜している。この内側止め体28の楔部30において前後両端面31b,31c(傾斜面)は、共に、モータ出力側回転軸4の軸心4aに接近するに従い互いに接近するように半径方向Yに対し傾斜している。この楔部30の後端面31cがこの間隔調節体37の前端面38bに当接し、この間隔調節体37の後端面38cがころがり軸受5の内輪5aの前側に当接する。この間隔調節体37により、内側止め溝27において前側面29bと前端面38bとの間の溝幅寸法を設定することができる。
【0031】
第2実施形態で後側の外側止め部22(特定止め部)においては、外側止め体33の楔部35の前端面36bところがり軸受5の外輪5bの後側との間で外側止め溝32に環状の間隔調節体39が係入されている。この間隔調節体39において半径方向Yに沿って切断した断面部分で外面40(当接部)は、外周面40aと、この外周面40aの前後両側から半径方向Yへ延びて互いに対辺になる前後両端面40b,40cと、この前後両端面40b,40c間で外周面40aに対し対辺になる内周面40dとを備えている。この前端面40bは半径方向Yに沿う。この後端面40c(傾斜面)はモータ出力側回転軸4の軸心4aに接近するに従い前記前端面40bに対し接近するように半径方向Yに対し傾斜している。この外側止め体33の楔部35において前後両端面36b,36c(傾斜面)は、共に、モータ出力側回転軸4の軸心4aに接近するに従い互いに離間するように半径方向Yに対し傾斜している。この楔部35の前端面36bがこの間隔調節体39の後端面40cに当接し、この間隔調節体39の前端面40bがころがり軸受5の外輪5bの後側に当接する。この間隔調節体39により、外側止め溝32において後側面34cと後端面40cとの間の溝幅寸法を設定することができる。
【0032】
例えば、内側止め体28で前述した場合と同様にころがり軸受5の緩みが生じた場合、楔部30が自動的に縮径して内側止め溝27にくい込む。そのため、前述した移動力Fにより楔部30の後端面31cが間隔調節体37の前端面38bに圧接され、さらに間隔調節体37の後端面38cが内輪5aの前側に圧接され、ころがり軸受5の内輪5aが前側の内側止め部21と後側の内側止め部23との間で挟持されてこの緩みが解消される。ちなみに、楔部30では前端面31bばかりではなく後端面31cも傾斜させているので、第2実施形態の楔力は第1実施形態の場合の倍になる。
【0033】
例えば、外側止め体33で前述した場合と同様にころがり軸受5の緩みが生じた場合、楔部35が自動的に拡径して外側止め溝32にくい込む。そのため、前述した移動力Fにより楔部35の前端面36bが間隔調節体39の後端面40cに圧接され、さらに間隔調節体39の前端面40bが外輪5bの後側に圧接され、ころがり軸受5の外輪5bが後側の外側止め部22と前側の外側止め部24との間で挟持されてこの緩みが解消される。ちなみに、楔部35では後端面36cばかりではなく前端面36bも傾斜させているので、第2実施形態の楔力は第1実施形態の場合の倍になる。
【0034】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態にかかる歯車伝動装置を備えた電動モータについて第2実施形態との相違点を中心に図4を参照して説明する。
【0035】
第3実施形態で前側の内側止め部21(特定止め部)においては、内側止め溝27の前側面29bと内側止め体28の前端面31bとの間で内側止め溝27に環状の間隔調節体41が係入されている。内側止め溝27の前側面29bは半径方向Yに沿う。この間隔調節体41において半径方向Yに沿って切断した断面部分で外面42(当接部)は、内周面42aと、この内周面42aの前後両側から半径方向Yへ延びて互いに対辺になる前後両端面42b,42cと、この前後両端面42b,42c間で内周面42aに対し対辺になる外周面42dとを備えている。この前端面42bは半径方向Yに沿い、内側止め溝27の前側面29bに当接している。この後端面42c(傾斜面)は、モータ出力側回転軸4の軸心4aに接近するに従い前記前端面42bに対し離間するように半径方向Yに対し傾斜し、前記内側止め体28の楔部30の前端面31b(傾斜面)に当接している。この間隔調節体41により、内側止め溝27において前端面38bと後端面42cとの間の溝幅寸法を設定することができる。
【0036】
第3実施形態で後側の外側止め部22においては、外側止め溝32の後側面34cと外側止め体33の後端面36cとの間で外側止め溝32に環状の間隔調節体43が係入されている。外側止め溝32の後側面34cは半径方向Yに沿う。この間隔調節体43において半径方向Yに沿って切断した断面部分で外面44(当接部)は、外周面44aと、この外周面44aの前後両側から半径方向Yへ延びて互いに対辺になる前後両端面44b,44cと、この前後両端面44b,44c間で外周面44aに対し対辺になる内周面44dとを備えている。この後端面44cは、半径方向Yに沿い、外側止め溝32の後側面34cに当接している。この前端面44b(傾斜面)は、モータ出力側回転軸4の軸心4aに接近するに従い前記後端面44cに対し接近するように半径方向Yに対し傾斜し、前記外側止め体33の楔部35の後端面36c(傾斜面)に当接している。この間隔調節体43により、外側止め溝32において後端面40cと前端面44bとの間の溝幅寸法を設定することができる。
【0037】
第3実施形態では、楔力が第2実施形態と同様に第1実施形態の場合の倍になるばかりではなく、傾斜面を容易に形成することができる。
〔別例〕
図示しないが、前記ハイポイドピニオン10及びハイポイドギヤ11をそれぞれベベルギヤに変更するとともに、前記モータ出力側回転軸4の軸心4aと減速側回転軸7の軸心7aとを互いに直角に交差させる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)は第1実施形態にかかる歯車伝動装置を備えた電動モータを示す断面図であり、(b)は軸用C形止め輪を示す正面図であり、(c)は穴用C形止め輪を示す正面図である。
【図2】 (a)は図1の部分拡大図であり、(b)(c)はそれぞれ(a)の部分拡大図である。
【図3】 (a)は第2実施形態を示す部分拡大断面図であり、(b)(c)はそれぞれ(a)の部分拡大図である。
【図4】 (a)は第3実施形態を示す部分拡大断面図であり、(b)(c)はそれぞれ(a)の部分拡大図である。
【図5】 (a)は従来の歯車伝動装置を備えた電動モータを示す断面図であり、(b)は(a)の部分拡大図である。
【符号の説明】
1…電動モータ、2…減速歯車伝動装置、4…モータ出力側回転軸(第1回転軸、特定回転軸)、4a…軸心、5、6,9…ころがり軸受、7…減速側回転軸(第2回転軸)、7a…軸心、8…ギヤケ−ス(支持部材)、10…ハイポイドピニオン(第1歯車)、11…ハイポイドギヤ(第2歯車)、21…内側止め部(特定止め部)、22…外側止め部(特定止め部)、23…内側止め部、24…外側止め部、27…内側止め溝、28…内側止め体、29…内面(当接部)、30…楔部、31…外面(当接部)、32…外側止め溝、33…外側止め体、34…内面(当接部)、35…楔部、36…外面(当接部)、37,39,41,43…間隔調節体、38,40,42,44…外面(当接部)、X…軸心方向、Y…半径方向、F…移動力。

Claims (3)

  1. 第1歯車を支持したモータ出力側の回転軸と第2歯車を支持した減速側の回転軸とを支持部材に対し回転可能に支持するとともにモータ出力側の回転軸の軸心と減速側の回転軸の軸心とを互いに直角に食い違わせるかまたは交差させて第1歯車と第2歯車とを互いに噛み合わせた電動モータの歯車伝動装置において、
    前記モータ出力側の回転軸を支持するころがり軸受の内輪をモータ出力側の回転軸の軸心方向の両側で挟持する一対の内側止め部のうち一方には内側楔部材を設けるとともに他方には内側段差部を設け、前記モータ出力側の回転軸を支持するころがり軸受の外輪をモータ出力側の回転軸の軸心方向の両側で挟持する一対の外側止め部のうち一方には外側楔部材を設けるとともに他方には外側段差部を設け、この内側楔部材と外側楔部材、この内側段差部と外側段差部とを、それぞれ、ころがり軸受の内輪及び外輪で互いに対角位置に配設するとともに、この内側楔部材と外側段差部、この外側楔部材と内側段差部とを、それぞれ、モータ出力側の回転軸の軸心方向に直交する半径方向で互いに並設し、
    この内側楔部材をこの半径方向へ付勢してモータ出力側の回転軸に設けた内側止め溝にその付勢力により係入し、内側止め溝の当接部に内側楔部材の当接部を当接するとともに、この外側楔部材をこの半径方向へ付勢して前記支持部材に設けた外側止め溝にその付勢力により係入し、外側止め溝の当接部に外側楔部材の当接部を当接することにより、これらの楔部材をころがり軸受に向けて移動させるようにモータ出力側の回転軸の軸心方向の移動力をこれらの楔部材に働かせ、モータ出力側の回転軸を位置決めする
    ことを特徴とする電動モータの歯車伝動装置。
  2. 前記内側止め溝及び外側止め溝には前記モータ出力側の回転軸の軸心方向の溝幅寸法を調節し得る間隔調節体を挿入したことを特徴とする請求項1に記載の電動モータの歯車伝動装置。
  3. 前記内側楔部材及び外側楔部材の当接部にはモータ出力側の回転軸の軸心方向に直交する半径方向に対し傾斜する傾斜面を形成し、前記内側止め溝及び外側止め溝の当接部にはこの内側楔部材及び外側楔部材の当接部の傾斜面が当接するようにこの半径方向に対し傾斜する傾斜面を形成していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電動モータの歯車伝動装置。
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