JP2013130276A - テーパスナップリング及びその固定構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】軸方向に大きな荷重が負荷された場合でも、脱落を防止することができるテーパスナップリングおよびその固定構造を提供する。
【解決手段】外径側に向かうに従って板厚tが次第に小さくなるように傾斜する傾斜面66を有し、組込み前における外径Dが43.6mm以上、且つ板厚t/外径D≧0.0397であるテーパスナップリング10は、ハウジング32に設けられた環状係止溝45に係止されて被固定部材である外輪42を固定する。環状係止溝45は、テーパスナップリング10の傾斜面66と接触し、溝底側の溝幅が次第に狭くなるように傾斜する傾斜溝側面47を備え、傾斜面66の傾斜角αは、傾斜溝側面47の傾斜角βより大きい。
【選択図】図4

Description

本発明は、テーパスナップリング及びその固定構造に関し、例えば、ラックアンドピニオン式ステアリング装置におけるピニオン軸を回転自在に支持する軸受をハウジングに固定するのに好適なテーパスナップリング及びその固定構造に関する。
従来、スナップリングは、軸やハウジングに対して軸受等の被固定部材を軸方向に固定する固定具として多用されており、ラックアンドピニオン式ステアリング装置のピニオン軸を支持する軸受の固定にも使用されている。しかしながら、スナップリングを固定した際、各部材寸法の製造上のバラツキにより軸方向に隙間が生じることがあり、ラックアンドピニオン式ステアリング装置では、この隙間が異音発生の原因となる。
このような軸方向の隙間を防止するスナップリングとして、軸またはハウジングとの接触面を傾斜させたテーパスナップリングが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のテーパスナップリングでは、側面の一部を円錐面にして軸断面をくさび形とし、また、断面の傾斜角を、止め輪と溝側の側面とが接触する摩擦角より十分小さい角の余角としている。
また、他のスナップリングとしては、ロック部材を用いて、スナップリング挿嵌後の緩みや抜け出しを防止するようにしたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
特開平7−217624号公報 実開平6−14523号公報
ところで、特許文献1のようなテーパスナップリングでは、軸方向に大きな荷重が負荷されると、傾斜面によって径方向の分力が生じ、この分力の影響によりスナップリングが脱落する可能性があった。これを防ぐため、傾斜面の角度を小さくすると、軸方向の隙間を防止するための位置調整機能が低下するという問題が生じる。また、被固定部材の面取りが大きい場合には、テーパスナップリングを傾斜させる方向のモーメント荷重が作用してテーパスナップリングの傾きが増加し、脱落が促進されることがある。このため、従来では、被固定部材とテーパスナップリングとの間に、面取りが小さい板を挿入するという解決方法もあるが、部品点数が増加するため、コストアップとなる。
また、特許文献2においても、スナップリングと別部材であるロック部材が必要であり、部品点数の増大と共に、ロック部材の組付けコストが嵩むという問題点があった。
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、軸方向に大きな荷重が負荷された場合でも、脱落を防止することができるテーパスナップリング及びその固定構造を提供することにある。
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 一側面に軸線に直角な平面を有し、他側面に外径側に向かうに従って板厚が次第に小さくなるように傾斜する傾斜面を有するテーパスナップリングであって、
前記テーパスナップリングは、組込み前における外径が43.6mm以上であり、
該外径をD、板厚をtとすると、t/D≧0.0397であることを特徴とするテーパスナップリング。
(2) (1)に記載のテーパスナップリングと、前記テーパスナップリングを係止する環状係止溝が設けられたハウジングと、を備え、前記環状係止溝に係止される前記テーパスナップリングにより被固定部材を前記ハウジングに固定するテーパスナップリングの固定構造であって、
前記環状係止溝は、前記テーパスナップリングの前記傾斜面と接触し、溝底側の溝幅が次第に狭くなるように傾斜する傾斜溝側面を備え、
前記傾斜溝側面の内周縁は、前記傾斜面の内側縁よりも外径側に位置し、
前記傾斜面の傾斜角は、前記傾斜溝側面の傾斜角より大きいことを特徴とするテーパスナップリングの固定構造。
(3) 前記被固定部材は、ラックアンドピニオン式ステアリング装置のピニオン軸を回動自在に支持する軸受であることを特徴とする(2)に記載のテーパスナップリングの固定構造。
本発明のテーパスナップリングによれば、前記テーパスナップリングは、組込み前における外径が43.6mm以上であり、外径をD、板厚をtとすると、t/D≧0.0397であるので、テーパスナップリングの剛性を高めることができ、大きな軸方向力が作用してもテーパスナップリングの傾きが抑制されてハウジングの環状係止溝から脱落することを防止することができる。
また、テーパスナップリングの傾斜面と接触する環状係止溝の溝側面には、溝底側の溝幅が次第に狭くなるように傾斜する傾斜溝側面が形成され、傾斜溝側面の内周縁は、傾斜面の内側縁よりも外径側に位置し、傾斜面の傾斜角は、傾斜溝側面の傾斜角より大きいので、テーパスナップリングの傾斜面と環状係止溝とは、常に環状係止溝の内周縁である角部(支点)で接触する。これにより、被固定部材に軸方向力が作用したとき、テーパスナップリングが被固定部材から受ける軸方向力の作用点と、支点との距離が小さくなり、テーパスナップリングに作用するモーメント荷重を小さくすることができ、テーパスナップリングの傾きが抑制されて環状係止溝からの脱落を防止することができる。
更に、本発明のテーパスナップリングは、ラックアンドピニオン式ステアリング装置のピニオン軸を回動自在に支持する軸受をハウジングに固定しているので、ステアリング操作により両方向のスラスト力が作用するピニオン軸をガタつきなく、確実に支持することができる。
本発明に係るテーパスナップリングの固定構造が適用されたラックアンドピニオン式ステアリング装置の全体斜視図である。 ラックアンドピニオン式ステアリング装置のピニオン軸をハウジングに固定するテーパスナップリングの固定構造の断面図である。 (a)はテーパスナップリングの平面図、(b)はA‐A線断面図である。 図2の円Bで囲む部分の拡大図である。 テーパスナップリングの板厚/外径と剛性との関係を一般的なテーパスナップリングとの剛性比で示すグラフである。 テーパスナップリングの傾斜角度αが傾斜溝側面の傾斜角βより小さい場合のモーメント荷重を説明するための図である。
以下、本発明に係るテーパスナップリングの固定構造の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係るテーパスナップリングの固定構造がピニオン軸の固定に適用されたコラムアシスト型ラックアンドピニオン式ステアリング装置の全体斜視図、図2はピニオン軸をハウジングに固定するテーパスナップリングの固定構造の断面図である。
図1に示すように、本実施形態のコラムアシスト型ラックアンドピニオン式パワーステアリング装置20は、ステアリングホイール21の操作力を軽減するために、ステアリングコラム22の中間部に取り付けたモータ23の操舵補助力をステアリングシャフトに付与している。そして、ステアリングシャフトの回転を中間シャフト24に伝達し、ピニオン軸25を介してラックアンドピニオン式のステアリングギヤ26のラック軸30(図2参照)を往復移動させ、タイロッド27を介して舵輪を操舵している。
図2に示すように、ラックアンドピニオン式ステアリング装置20は、ステアリング操作により回転する不図示のステアリングシャフトに連結されたピニオン軸25と、ピニオン軸25のピニオンギヤ28にラック歯31が噛合するラック軸30とを備え、ハウジング32内に収納されている。ピニオン軸25は、ピニオンギヤ28より上部の上軸部33が、ボール軸受34によりハウジング32に回転自在に軸支され、ピニオンギヤ28より下部の下軸部35が、ニードル軸受36によってハウジング32に回転自在に支持されている。
ボール軸受34の内輪40は、ピニオン軸25の上軸部33に外嵌し、ピニオン軸25の溝37にカシメられたカシメリング38により、ピニオン軸25の段部41との間に押圧固定されている。また、ボール軸受34の外輪42(被固定部材)は、ハウジング32に形成された段付き軸受孔43に内嵌する。外輪42は、下面42bが段付き軸受孔43の段部44に当接し、上平面42aが段付き軸受孔43に設けられた環状係止溝45に装着されたテーパスナップリング10に当接して固定されている。
ラック軸30は、その軸方向がピニオン軸25の軸方向と交差する方向(図中紙面に直交する方向)に配置され、軸方向の一側面(ピニオン軸25側)に形成されたラック歯31がピニオンギヤ28に噛合して、軸方向に往復直線運動可能にハウジング32に支持されている。ラック軸30の両端には、タイロッド27に連結された不図示のボールジョイントソケットが接続されている。
ラック軸30を挟んでピニオンギヤ28と反対側には、ローラ収容空間50が凹設された略円筒形のラックガイド51が、ハウジング32に設けられたラックガイド収容室52に摺動自在に嵌合している。ラックガイド51は、ラックガイド収容室52に案内されてラック軸30に接近および離間する方向に移動可能である。
ラックガイド51のローラ収容空間50には、ラック軸30の背面30aを転動しながら支持するローラ53、およびニードル軸受54を介してローラ53を回動自在に支持する支持軸55が収容されている。支持軸55の軸方向は、ラック軸30の直線運動方向、即ち、ラック軸30の軸方向と直交して配置されている。ローラ53には、ラック軸30の凸円筒状の背面30aの曲率と略同じ曲率を有する凹円弧状面56が形成され、不図示のばねによってラック軸30の背面30aに押圧されている。これにより、ピニオンギヤ28とラック歯31との噛合い部のバックラッシュを吸収して、ラック軸30が円滑に移動するようにしている。
図3は、ボール軸受34の外輪42をハウジング32に固定するテーパスナップリング10の平面図及び断面図であり、略C字型に形成され、環状係止溝45に装着されたとき拡径方向にばね力が作用するリング部61と、リング部61の両端に形成されたフック部62とからなる。リング部61の一方の側面は平面63であり、他方の側面には、平面63と略平行に内径側に設けられた内側平面65と、該内側平面65の外径側に設けられ、外径側に向かうに従って板厚が次第に小さくなるように傾斜する傾斜面66とが形成されている。
傾斜面66の傾斜角度αは、後述する環状係止溝45の傾斜溝側面47との関係で設定されればよいが、本実施形態では、一般に市販されているテーパスナップリングの標準的な傾斜角度と同じ、15°とされている。傾斜角度αが大きいと、軸方向の位置調整機能が高まる一方、環状係止溝45から脱落し易くなり、傾斜角度αが小さいと、脱落し難くなる一方、軸方向の位置調整機能が低下する。フック部62には、テーパスナップリング10を環状係止溝45に装着する際、リング部61の外径を縮径するための工具(図示せず)が挿入される一対の作業孔67が設けられている。
ハウジング32に形成された環状係止溝45は、軸方向においてボール軸受34寄りで、外輪42の上平面42aに対して平行な平行溝側面46と、この平行溝側面46と軸方向において対向し、平行溝側面46に対して溝底側の溝幅が狭くなるように傾斜する傾斜溝側面47と、を有する。
そして、テーパスナップリング10は、傾斜面66が傾斜溝側面47と対向するようにして、リング部61の外径を縮径させながら、環状係止溝45内に組み込む。これにより、図4に示すように、ハウジング32の段付き軸受孔43に内嵌する外輪42は、テーパスナップリング10の平面63が外輪42の上平面42aに、傾斜面66が傾斜溝側面47にそれぞれ当接することによって固定される。
また、環状係止溝45は、平行溝側面46が外輪42の上平面42aよりも僅かに(例えば、0.1mm程度)低くなるように加工されている。従って、テーパスナップリング10を環状係止溝45に装着したとき、テーパスナップリング10の平面63と、環状係止溝45の平行溝側面46との間には、隙間Cが形成される。これにより、テーパスナップリング10及び環状係止溝45の製造上の精度誤差が吸収されて、テーパスナップリング10のばね力が有効に作用した状態で外輪42を固定することができ、外輪42のガタツキを防止して異音の発生を抑制する。
このように外輪42を固定するテーパスナップリング10に対して大きな軸方向力Pが作用すると、反力の作用点である傾斜溝側面47の内周縁48の位置が径方向にずれているため生じるモーメント荷重によりテーパスナップリング10が図中反時計方向に傾き、この傾き角は軸方向力Pの増加に伴って大きくなる。このため、本実施形態では、テーパスナップリング10の傾きを抑制するために、テーパスナップリング10の剛性を大きくする。ここで、剛性とは、ボール軸受34に負荷される軸方向力Pと、外輪42の軸方向変位との比である。
剛性は、テーパスナップリング10の板厚を厚くすることで効果的に大きくすることができる。ここで、板厚tは、テーパスナップリング10の板厚が最大の部分の板厚であり、外径Dは、組込み前における外径である。なお、本実施形態では、組込み前における外径Dが43.6mm以上のものが使用されており、これは、本実施形態のボール軸受34の外輪42を固定するのに適用されるテーパスナップリング10の通常サイズであり、呼び径40の外径の寸法公差を考慮した値(組込み前における外径44.25mm+0.9、−0.65)である。なお、外径Dの上限は、ピニオン軸25を支持するボール軸受34を固定するのに使用可能な範囲としている。
図5は、FEM解析による板厚t/外径Dと剛性比との関係を示している。剛性比とは、ピニオン軸25を支持するボール軸受34を固定するために用いられる一般的なテーパスナップリング(市販されているテーパスナップリング)の剛性を1.0とした場合の比である。また、本出願人が市販テーパスナップリングを調査したところ、一般的なテーパスナップリングの板厚t/外径Dは0.0343であった。
図5に示すように、板厚t/外径Dを、一般的なテーパスナップリングの値の約2倍(t/D=0.0686)にすると、剛性を約5倍に大きくできることが分かる。従って、本実施形態のテーパスナップリング10では、外径DをD≧43.6mmとし、また板厚t/外径Dを、一般的なテーパスナップリングの値に対して約15%以上大きい値、t/D≧0.0397とした。これにより、テーパスナップリング10の剛性は約50%増加し、軸方向力Pが作用したときのテーパスナップリング10の傾きが抑制されて、環状係止溝45からの脱落を効果的に防止することができる。また、このような形状のテーパスナップリング10は、プレス加工により容易に製作することができ、製造コストの上昇を抑制することができる。
また、板厚tは、製造工程能力等の要因により制限され、ある程度の上限が設定されることから、上限の板厚tを用いてt/Dを大きな値とすることが望ましい。さらに、外径Dと板厚tの寸法公差を考慮し、板厚tに、製造工程能力の制約がなくなった場合には、板厚tを大きくして、t/Dを大きな値とすることが望ましい。
また、寸法公差を考慮した組込み前の外径Dが46.2mm以上である、呼び径42mmのテーパスナップリング10を使用する場合には、t/D≧0.0406とすることが望ましい。ただし、外径Dが46.2mm以上のテーパスナップリング10においては、一般的な製造工程能力では、板厚tの上限は2mm程度である。
また、図4に示すように、本実施形態では、環状係止溝45の傾斜溝側面47の内周縁48の直径は、テーパスナップリング10の傾斜面66の内側縁64(傾斜面66と内側平面65との稜線)の直径よりも大きくなっている。即ち、テーパスナップリング10が環状係止溝45に装着されたとき、傾斜溝側面47の内周縁48は、テーパスナップリング10の傾斜面66の内側縁64よりも外径側に位置する。
また、テーパスナップリング10の傾斜面66の傾斜角度αと、環状係止溝45の傾斜溝側面47の傾斜角βとは、傾斜角度αが傾斜角βより大きくなるように設定されている。これにより、テーパスナップリング10の傾斜面66と、環状係止溝45の傾斜溝側面47との接触点(支点)Xは、常に傾斜溝側面47の内周縁48となる。
なお、接触する2つの面が平滑であれば、傾斜角度αは、傾斜角βに対してわずかでも大きくすれば効果があるが、例えば、0.1°以上大きくなるように設定されることが好ましい。ただし、あまり差が大きくなると、径方向の分力が大きくなるので、大きくなる量は5°以下が好ましい。
つまり、図4に示すように、テーパスナップリング10の傾斜面66は、傾斜溝側面47の内周縁48(支点X)で環状係止溝45と接触する一方、上平面42aの角部に面取りが施されている外輪42からテーパスナップリング10に作用する軸方向力Pの作用点Yは、上平面42aの稜線が接触する接触部68となる。従って、軸方向力Pが作用すると、テーパスナップリング10には、支点X(内周縁48)と作用点Y(接触部68)間の距離L1と、軸方向力Pとの積の大きさのモーメント荷重(P×L1)が作用する。このモーメント荷重は、テーパスナップリング10を傾ける方向の力として働く。
例えば、図6に示すように、上記したテーパスナップリング10と環状係止溝45との関係とは逆に、傾斜面66の傾斜角度αが傾斜溝側面47の傾斜角βより小さくなるように設定された場合には、傾斜面66と傾斜溝側面47とが接触する支点Zは、傾斜面66の最外径部となり、支点Zと作用点Y間の距離L2が距離L1より大きくなり、モーメント荷重(P×L2)も大きくなる。
従って、本実施形態のように、テーパスナップリング10の傾斜面66と環状係止溝45の傾斜溝側面47を設計することで、テーパスナップリングに作用する軸方向力Pの大きさが同じ場合、本実施形態のテーパスナップリング10に作用するモーメント荷重は、一般的なテーパスナップリングに作用するモーメント荷重より小さくなる。これにより、テーパスナップリング10の傾きが抑制されて脱落が防止されると共に、ボール軸受34の軸方向移動が抑制され、ピニオンギヤ28とラック歯31との噛み合い位置が適正位置に維持され、異音の発生や操舵力の変動を阻止することができる。
また、傾斜面66の傾斜角度αを、傾斜溝側面47の傾斜角βより大きく加工することは容易であり、製造コストの上昇が抑制される。更に、外輪42の面取りの大きさを小さくすれば、軸方向力Pの作用点Yが外周側に寄り、支点Xと作用点Y間の距離L1をより小さくすることができ、モーメント荷重も小さくなるので好ましい。なお、外輪42において、面取りの代わりに丸み加工された場合でも、同様の効果を奏する。
以上説明したように、本実施形態のテーパスナップリング及びその固定構造によれば、テーパスナップリング10は、組込み前における外径Dが43.6mm以上であり、外径をD、板厚をtとすると、t/D≧0.0397であるので、テーパスナップリング10の剛性を高めることができ、大きな軸方向力Pが作用してもテーパスナップリング10の傾きが抑制されてハウジング32の環状係止溝45から脱落することを防止することができる。
また、テーパスナップリング10の傾斜面66と接触する環状係止溝45の溝側面には、溝底側の溝幅が次第に狭くなるように傾斜する傾斜溝側面47が形成され、傾斜溝側面47の内周縁48は、傾斜面66の内側縁64よりも外径側に位置し、傾斜面66の傾斜角αは、傾斜溝側面47の傾斜角βより大きいので、テーパスナップリング10の傾斜面66と環状係止溝45とは、常に環状係止溝45の内周縁48である角部(支点X)で接触する。これにより、ボール軸受34の外輪42に軸方向力Pが作用したとき、テーパスナップリング10が外輪42から受ける軸方向力Pの作用点Yと、支点Xとの距離L1が小さくなり、テーパスナップリング10に作用するモーメント荷重を小さくすることができ、テーパスナップリング10の傾きが抑制されて環状係止溝45からの脱落を防止することができる。
更に、本発明のテーパスナップリング10は、ラックアンドピニオン式ステアリング装置20のピニオン軸25を回動自在に支持するボール軸受34をハウジング32に固定しているので、ステアリング操作により両方向のスラスト力が作用するピニオン軸25をガタつきなく、確実に支持することができる。
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
例えば、上記の実施形態では、ハウジングの内周面に被固定部材としてのボール軸受の外輪を固定するテーパスナップリングについて説明したが、軸の外周面にボール軸受の内輪などの被固定部材を固定するテーパスナップリングに適用することもできる。この場合、傾斜面はテーパスナップリングの内径側に形成し、傾斜溝側面を有する環状係止溝は軸に形成される。
また、コラムアシスト型ラックアンドピニオン式パワーステアリング装置に適用した例について説明したが、ピニオンアシスト型ラックアンドピニオン式パワーステアリング装置やマニュアル型ラックアンドピニオン式ステアリング装置に適用してもよい。
10 テーパスナップリング
20 コラムアシスト型ラックアンドピニオン式パワーステアリング装置
25 ピニオン軸
32 ハウジング
34 ボール軸受(軸受)
42 外輪(被固定部材)
45 環状係止溝
47 傾斜溝側面
48 傾斜溝側面の内周縁
63 平面
64 傾斜面の内側縁
66 傾斜面
D 外径
t 板厚
α 傾斜面の傾斜角
β 傾斜溝側面の傾斜角

Claims (3)

  1. 一側面に軸線に直角な平面を有し、他側面に外径側に向かうに従って板厚が次第に小さくなるように傾斜する傾斜面を有するテーパスナップリングであって、
    前記テーパスナップリングは、組込み前における外径が43.6mm以上であり、
    該外径をD、板厚をtとすると、t/D≧0.0397であることを特徴とするテーパスナップリング。
  2. 請求項1に記載のテーパスナップリングと、前記テーパスナップリングを係止する環状係止溝が設けられたハウジングと、を備え、前記環状係止溝に係止される前記テーパスナップリングにより被固定部材を前記ハウジングに固定するテーパスナップリングの固定構造であって、
    前記環状係止溝は、前記テーパスナップリングの前記傾斜面と接触し、溝底側の溝幅が次第に狭くなるように傾斜する傾斜溝側面を備え、
    前記傾斜溝側面の内周縁は、前記傾斜面の内側縁よりも外径側に位置し、
    前記傾斜面の傾斜角は、前記傾斜溝側面の傾斜角より大きいことを特徴とするテーパスナップリングの固定構造。
  3. 前記被固定部材は、ラックアンドピニオン式ステアリング装置のピニオン軸を回動自在に支持する軸受であることを特徴とする請求項2に記載のテーパスナップリングの固定構造。
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