JP4250123B2 - 多ポット型車両用ディスクブレーキのキャリパボディの製造方法及びキャリパボディ - Google Patents

多ポット型車両用ディスクブレーキのキャリパボディの製造方法及びキャリパボディ Download PDF

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本発明は、四輪自動車や自動二輪車等の車両に搭載される多ポット型車両用ディスクブレーキのキャリパボディの製造方法及びキャリパボディに関し、詳しくは、複数のシリンダ孔を有する多ポット型車両用ディスクブレーキのキャリパボディにおいて、複数のシリンダ孔形成用の下穴の内のいくつかをシリンダ孔として使用しないときの処理に関する。
従来から、ディスクロータの側部に配設される作用部に複数のシリンダ孔を形成し、各シリンダ孔に、摩擦パッドをディスクロータの側面に押圧するピストンを液密かつ移動可能にそれぞれ内挿した多ポット型車両用ディスクブレーキのキャリパボディが用いられている。このような多ポット型のキャリパボディにおいて、例えば自動二輪車の前輪用ディスクブレーキに使用するものとして、作用部にディスクロータ側へ開口する3個以上のシリンダ孔をディスク周方向へ並設するとともに、各シリンダ孔の底部にそれぞれ液圧室を画成し、これら液圧室の少なくともディスク周方向外側に位置する2つを前輪制動用に設けられたブレーキレバーで作動させる第1ブレーキ系統用とし、該第1ブレーキ系統用の液圧室以外の液圧室を前後輪を連動させて制動するブレーキペダルで作動させる第2ブレーキ系統(連動ブレーキ系統)用としたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
また、一般的なキャリパボディは、鉄やアルミニウム(アルミニウム合金を含む)を用いた重力鋳造法によって製造されており、キャリパボディの原型を鋳造する際には、中子等の複数の型を組み合わせてキャビティを形成した鋳型内に溶湯を充填して所定形状のキャリパボディ用鋳物を成形している。このキャリパボディ用鋳物には、例えば、ピンスライド型のキャリパボディの場合には、ディスクロータ側に開口した複数のシリンダ孔形成用の下穴を設けた作用部と、該作用部にディスクロータを挟んで対向する反力爪を有する反作用部と、該反作用部と前記作用部とをディスクロータの外周を跨いで連結するブリッジ部とが一体に形成される。このようにして成形されたキャリパボディ用鋳物は、シリンダ孔内面等の精度が要求される部位等を切削加工して仕上げるとともに、液通孔等を穿設して製品のキャリパボディとする(例えば、特許文献2参照。)。
特開2003−166566号公報 特開2002−333041号公報
一種類の多ポット型キャリパボディを複数の車種に装着したり、同一車種の前後輪あるいは前輪の両側に装着したりする場合、マスタシリンダの容量との兼ね合いから、油圧レシオの調節が困難になることがある。また、連動ブレーキ用として設計したキャリパボディを非連動用として使用する場合は、連動用として使用するはずだったシリンダ孔が不要となることがある。このような場合、従来は、ピストン数(シリンダ孔数)の少ないキャリパボディを別途製作していた。しかし、キャリパボディを、各車種に応じたものや、装着位置に応じたものをそれぞれ別個に製造すると、キャリパボディを鋳造するための鋳型の種類や製品キャリパボディの種類が必要以上に増加し、製造や管理に要するコストが増大するという問題がある。さらに、前輪の両側に異なる外観形状のキャリパボディを装着することは、デザイン上から好ましいものではなく、外観形状が同一のキャリパボディを装着することが望まれている。
また、鋳造時に複数のシリンダ孔形成用の下穴のいくつかを成形せずに、シリンダ孔の数を減らすことも考えられるが、キャビティの形状や溶湯充填口の位置が全ての下穴を成形することを前提として設計されているため、下穴を成形しない部分が厚肉となり、引けや巣等が発生しやすくなって各種鋳造欠陥を招く原因となる。このため、シリンダ孔として使用しない部分にも下穴を成形する必要があるが、下穴をそのままの状態にして製品として使用すると、下穴内に異物が侵入して腐食等の発生原因となるおそれがある。
そこで本発明は、鋳型の種類や製品の種類を必要以上に増加させることなく、部品点数の増加や加工工数の増加も最小に抑えながら、キャリパボディに設けるシリンダ孔の数を変更することができ、異物の侵入による腐食等の発生も確実に防止できる多ポット型車両用ディスクブレーキのキャリパボディの製造方法及びキャリパボディを提供することを目的としている。
上記目的を達成するため、本発明の多ポット型車両用ディスクブレーキのキャリパボディの製造方法は、複数のシリンダ孔形成用の下穴を形成した作用部を含むキャリパボディ用鋳物を鋳造した後、前記複数の下穴の内、シリンダ孔として使用する下穴部分を切削加工してシリンダ孔を形成するとともに、シリンダ孔として使用しない下穴の開口部を、円盤状本体と、該円盤状本体の外周から下穴底部側に向けて突出したリング状圧入部と、該リング状圧入部の下穴底部側先端から下穴内周側に向かって収束する方向に突出し、先端外径を下穴開口部内径より小径としたガイド部とを有している蓋材で閉塞することを特徴としている。
また、前記蓋材で閉塞する下穴の開口部周縁に蓋材圧入部を切削加工しても良
さらに、キャリパボディ用鋳物がアルミニウム又はアルミニウム合金からなる鋳物であり、前記蓋材が表面に電食防止処理を施した鋼板の加工品であることを特徴としている。
また、本発明の多ポット型車両用ディスクブレーキのキャリパボディは、複数のシリンダ孔形成用の下穴を形成した作用部を含む状態で鋳造されたキャリパボディ用鋳物に、前記複数の下穴の少なくとも一つを切削加工してシリンダ孔を形成するとともに、シリンダ孔に切削加工しない他の下穴の開口部を、円盤状本体と、該円盤状本体の外周から下穴底部側に向けて突出したリング状圧入部と、該リング状圧入部の下穴底部側先端から下穴内周側に向かって収束する方向に突出したガイド部とを有している蓋材で閉塞したことを特徴としている。
また、前記蓋材で閉塞する下穴の開口部周縁に蓋材圧入部が切削加工されていても良
さらに、前記キャリパボディ用鋳物がアルミニウム又はアルミニウム合金からなる鋳物であり、前記蓋材が表面に電食防止処理を施した鋼板の加工品であることを特徴としている。
本発明によれば、1種類のキャリパボディに異なる個数のシリンダ孔を設けることができ、複数の車種に同一外観形状のキャリパボディを装着することができる。また、同一車種の前後輪あるいは前輪の両側にも同一外観形状のキャリパボディを装着することができる。特に、前輪の一側に連動用キャリパボディを、他側に非連動用キャリパボディをそれぞれ装着する場合でも、左右両側に同一外観形状のキャリパボディを装着できるので、デザイン性を損なうことがなくなる。また、シリンダ孔として使用しない部分にも下穴を成形することで、鋳型を共通化できると共に、キャリパボディ用鋳物の鋳造時の引けや巣等の各種鋳造欠陥を防止できる。そして、下穴の開口部を蓋材で閉塞することにより、シリンダ孔として加工しない下穴内に異物が侵入することを防止できる。
また、下穴の開口部周縁に蓋材圧入部を切削加工しておくことにより、蓋材を確実に圧入固定することができる。この加工は、開口部周縁のみに行えばよく、必要最低限の加工のみで済むことから、コストや加工性に優れている。
さらに、円盤状本体の外周に設けたリング状圧入部の先端にガイド部を形成した蓋材を用いることにより、該蓋材を下穴に装着する際に、ガイド部先端を開口部内に容易に進入させることができるので、開口部への蓋材の装着、特に圧入を容易に行うことができる。
また、アルミニウム製キャリパボディの場合であっても、表面に電食防止処理を施した蓋材を使用することにより、下穴の開口部周縁に電食が発生することを防止できる。
以下、本発明を連動用に設計したキャリパボディを非連動状態で使用する一形態例に基づいて詳しく説明する。図1は図3のI−I断面図、図2は要部の断面図、図3はキャリパボディの正面図、図4は図5のIV−IV断面図、図5は図1のキャリパボディを用いたディスクブレーキの正面図、図6は鋳造後のキャリパボディ用鋳物の断面図である。なお、図中の矢印Aは、車両前進走行時のディスクロータの回転方向を示し、以下の説明で用いるディスクブレーキ回入側と回出側とは、車両前進走行時の場合とする。
本形態例のディスクブレーキ1は、矢印A方向へ回転するディスクロータ2の一側部で車体に固設されるキャリパブラケット3に、キャリパボディ4が一対の摺動ピン5,5を介してディスク軸方向へスライド可能に支持されており、キャリパボディ4の作用部4aと反作用部4bとの間に、ディスクロータ2を挟んで一対の摩擦パッド6,6が対向配置されている。
キャリパボディ4は、ディスクロータ2の一側に配設される作用部4aと、ディスクロータ2の他側に配設される反作用部4bと、該反作用部4bと前記作用部4aとをディスクロータ2の外周を跨いで連結するブリッジ部4cとを一体に鋳造成形しており、作用部4aには、2つのシリンダ孔7,8と、シリンダ孔として使用しない1つの下穴9とがディスク周方向に並設されている。また、作用部4aには、取り付け腕4d,4dがディスク半径方向内側とディスクロータ回出側へ向けて突設され、キャリパブラケット3に設けられた、ディスク軸方向へ突出する摺動ピン5,5を、前記取り付け腕4d,4dに挿通することによって、キャリパボディ4がキャリパブラケット3にディスク軸方向へ移動可能に支持される。
作用部4aのディスク回出側とディスク回入側とに位置するシリンダ孔7,8は、ディスクロータ2側を開口した有底円筒状に形成されており、各シリンダ孔7,8の周壁には、ピストンシール10を装着するシール溝7a,8aと、ダストシール11を装着するシール溝7b,8bとがそれぞれ形成されている。シリンダ孔7,8の内部にはピストン12,13が、前記ピストンシール10及びダストシール11を介してそれぞれ液密且つ移動可能に内挿され、シリンダ孔7,8の底部には液圧室14,15がそれぞれ画成されるとともに、両液圧室14,15を連通させる液通孔16やブリューダ孔17が形成されている。
また、前記下穴9の開口部周縁には、蓋材18を圧入するための蓋材圧入部9aが切削加工されるとともに、該蓋材圧入部9aに蓋材18を圧入することによって下穴9を閉塞した状態としている。蓋材18は、鋼製の薄板を加工したものであって、円盤状本体18aと、該円盤状本体18aの外周から下穴9の底部側に向けて突出したリング状圧入部18bと、該リング状圧入部18bの下穴底部側先端から下穴内周側に向かって収束する方向に突出し、先端外径を下穴開口部に形成した蓋材圧入部9aの内径より小径としたガイド部18cとを有している。この蓋材18は、キャリパボディ4がアルミニウム又はアルミニウム合金の鋳物からなる場合は、蓋材18の表面に電食防止処理を施すことにより、下穴9の開口部周縁に電食が発生することを防止できる。
作用部4aの外側には、前記液通孔16に連通するブリューダ孔17を形成するためのブリューダボス4eと、シリンダ孔7に連通するユニオン孔を形成するためのユニオンボス4fとが設けられるとともに、前記下穴9をシリンダ孔として使用する際のユニオン孔を形成するための第2ユニオンボス4gと、ブリューダ孔を形成するための第2ブリューダボス4hとが設けられている。
反作用部4bには、ブリッジ部4cからディスク中心側に向かって4つの反力爪4iが設けられ、ディスク回入側のシリンダ孔8の外周相当位置に一対の反力爪4iが、ディスク回出側のシリンダ孔7の外周相当位置に一対の反力爪4iがそれぞれ配設されている。また、作用部4aと反作用部4bとの間に配設される一対の摩擦パッド6,6は、ディスクロータ2の側面と摺接するライニング6aが、金属製の裏板6bに接合されて構成され、裏板6bにはハンガーピンが挿通され、ディスク軸方向へ移動可能に吊持されている。
運転者が制動操作を行うと、別途の液圧マスタシリンダで昇圧した作動液が、前記ユニオンボス4fに形成されたユニオン孔から液圧室14に供給され、さらに液通孔16を介して液圧室15に供給される。これにより、ピストン12,13がシリンダ孔7,8のディスクロータ方向に押動され、作用部4a側の摩擦パッド6をディスクロータ2の一側面へ押圧する。次に、この反作用によって、キャリパボディ4が摺動ピン5,5に案内されながら作用部4a方向へ移動し、反作用部4bの4つの反力爪4iが、他方の摩擦パッド6をディスクロータ2の他側面へ押圧して制動作用が行われる。
図6に示すように、前記キャリパボディ4の原型となるキャリパボディ用鋳物20は、前記シリンダ孔7,8を形成するための下穴21,22と前記下穴9とが作用部4aに形成された状態で鋳造される。この、キャリパボディ用鋳物20を設計通りの連動用に使用するときには、両側の下穴21,22を切削加工して前記シリンダ孔7,8を形成し、前記液通孔16やブリューダ孔17、ユニオン孔を穿設するとともに、中央の下穴9も切削加工して連動用シリンダ孔を形成するとともに、該連動用シリンダ孔に連通するユニオン孔を前記第2ユニオンボス4gに、ブリューダ孔を前記第2ブリューダボス4hにそれぞれ穿設する。そして、シリンダ孔7,8を第1ブレーキ系統とし、下穴9部分に形成したシリンダ孔を第2ブレーキ系統として使用する。一方、このキャリパボディ用鋳物20を非連動用として使用するときには、下穴9の開口部周縁に蓋材圧入部9aを切削加工して前記蓋材18を圧入する。
このように、鋳造時には、シリンダ孔として使用しない下穴9も一緒に鋳造することにより、下穴21,22間が厚肉になって引けや巣等が発生することがなくなり、また、連動用、非連動用で同じ鋳型を用いることができるので、鋳型の種類が増加することもない。また、製品として使用する際に下穴9の開口部を蓋材18で閉塞することにより、下穴9内に異物が侵入して腐食等が発生することを確実に防止できる。特に、下穴9の開口部周縁に、蓋材18に対応した蓋材圧入部9aを切削加工して蓋材18を圧入することにより、より確実な閉塞状態が得られるとともに、蓋材18の脱落をより確実に防止できる。いずれの場合も、他形状のキャリパボディを別途製造する場合に比べて製造コストや管理コストを大幅に削減することができる。さらに、蓋材18に下穴開口部よりも小径のガイド部18cを設けておくことにより、下穴開口部への蓋材18の圧入嵌合を容易にかつ確実に行うことができる。
また、鋳造時に形成した複数の下穴の内、シリンダ孔として使用する数は任意であり、例えば、前記キャリパボディ用鋳物20の場合は、3個の下穴9,21,22の内、中央の下穴9の1個のみをシリンダ孔として使用することも可能であり、回入側に隣接する2個の下穴22,9あるいは回出側に隣接する2個の下穴9,21をシリンダ孔として使用することも可能である。また、下穴を4個以上形成したキャリパボディ用鋳物についても同様である。さらに、ピンスライド型のディスクブレーキに限らず、対向型のディスクブレーキにも適用可能である。
図1は図3のI−I断面図である。 キャリパボディの要部の断面図である。 キャリパボディの正面図である。 図5のIV−IV断面図である。 図1のキャリパボディを用いたディスクブレーキの正面図である。 鋳造後のキャリパボディ用鋳物の断面図である。
符号の説明
1…ディスクブレーキ、2…ディスクロータ、3…キャリパブラケット、4…キャリパボディ、4a…作用部、4b…反作用部、4c…ブリッジ部、4e…ブリューダボス、4f…ユニオンボス、4g…第2ユニオンボス、4h…第2ブリューダボス、4i…反力爪、5…摺動ピン、6…摩擦パッド、6a…ライニング、6b…裏板、7,8…シリンダ孔、7a,7b,8a,8b…シール溝、9…下穴、9a…蓋材圧入部、10…ピストンシール、11…ダストシール、12,13…ピストン、14,15…液圧室、16…液通孔、17…ブリューダ孔、18…蓋材、18a…円盤状本体、18b…リング状圧入部、18c…ガイド部、20…キャリパボディ用鋳物、21,22…下穴

Claims (6)

  1. 複数のシリンダ孔形成用の下穴を形成した作用部を含むキャリパボディ用鋳物を鋳造した後、前記複数の下穴の内、シリンダ孔として使用する下穴部分を切削加工してシリンダ孔を形成するとともに、シリンダ孔として使用しない下穴の開口部を、円盤状本体と、該円盤状本体の外周から下穴底部側に向けて突出したリング状圧入部と、該リング状圧入部の下穴底部側先端から下穴内周側に向かって収束する方向に突出し、先端外径を下穴開口部内径より小径としたガイド部とを有している蓋材で閉塞することを特徴とする多ポット型車両用ディスクブレーキのキャリパボディの製造方法。
  2. 前記蓋材で閉塞する下穴の開口部周縁に蓋材圧入部を切削加工することを特徴とする請求項1記載の多ポット型車両用ディスクブレーキのキャリパボディの製造方法。
  3. 前記キャリパボディ用鋳物がアルミニウム又はアルミニウム合金からなる鋳物であり、前記蓋材が表面に電食防止処理を施した鋼板の加工品であることを特徴とする請求項1又は2記載の多ポット型車両用ディスクブレーキのキャリパボディの製造方法。
  4. 複数のシリンダ孔形成用の下穴を形成した作用部を含む状態で鋳造されたキャリパボディ用鋳物に、前記複数の下穴の少なくとも一つを切削加工してシリンダ孔を形成するとともに、シリンダ孔に切削加工しない他の下穴の開口部を、円盤状本体と、該円盤状本体の外周から下穴底部側に向けて突出したリング状圧入部と、該リング状圧入部の下穴底部側先端から下穴内周側に向かって収束する方向に突出したガイド部とを有している蓋材で閉塞したことを特徴とする多ポット型車両用ディスクブレーキのキャリパボディ。
  5. 前記蓋材で閉塞する下穴の開口部周縁に蓋材圧入部が切削加工されていることを特徴とする請求項記載の多ポット型車両用ディスクブレーキのキャリパボディ。
  6. 前記キャリパボディ用鋳物がアルミニウム又はアルミニウム合金からなる鋳物であり、前記蓋材が表面に電食防止処理を施した鋼板の加工品であることを特徴とする請求項4又は5項記載の多ポット型車両用ディスクブレーキのキャリパボディ。
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