JP4249384B2 - 制電性複合フィラメント - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、操業性良好で、且つ糸切れ、スカム発生のないハイメッシュ製織安定性に優れた制電性良好な制電性複合フィラメントに関する。
【従来の技術】
【0002】
近年、印刷、ろ過フィルター等の産業資材用途の紗織物においては、精密な織密度に対する要求がますます厳しくなってきており、細繊度、高破断強度のフィラメントをハイメッシュ製織する方向へと進んでいる。産業資材用途の紗織物としては、古くはシルク、ステンレススチールなどを材料としてきたが、近年、合成繊維からなるメッシュ織物は、柔軟性、かつコストパフォーマンスに優れているため、広く使われるようになってきた。中でもポリエステルモノフィラメントは耐水性、寸法安定性に優れており、ハイメッシュ紗織物に好ましく用いられている。
【0003】
ところが、ポリエステル繊維をはじめ、多くの合成繊維は天然繊維に比較してより疎水性であり、電気抵抗も高いので静電気が発生しやすいという欠点がある。特にハイメッシュ製織においては走行フィラメントと小ピッチ配列となっている筬刃の接触頻度及び摩擦力が増大するため、使用する紗織物が静電気を帯びやすくなる。製織工程で静電気が紗に帯電すると、作業員が静電気による感電や痛みなどの不快感を与えられるだけでなく、安全面でも静電気が粉塵爆発などの事故につながることがあり、好ましくない。また、紗が帯電することによって、埃が付着しやすくなり、印刷やプリント基板などのスクリーン紗用途では印刷欠点を生じることがある。そのため、合成繊維に制電性能を付与させるため、古くから数多くの制電剤が研究されている。
【0004】
制電剤に要求される性質は、制電性能はもとより、重合操業性が良好であること、鞘成分との親和性が良好であること、曵糸性が良好であること、紡糸条件に耐えうる耐熱性を有すること、などが挙げられる。中でもポリエチレングリコールを代表とする親水性ポリアルキレンオキシド及びその誘導体、変性体、混合体は最も重要である。このポリアルキレンオキシド系制電剤は多種類のものが市販されているが、溶融粘度が低く曵糸性が乏しいため、芯鞘複合フィラメントのような連続線状混合には適しないことが多い。ゆえに、この制電剤を使用する場合は、曵糸性良好なポリマーと混合して紡糸しなければならず、それによって制電性能は低下するという問題があった。
【0005】
フィラメントに制電性を持たせることを目的にこれまで数多くの改善技術が提案されている。例えば、特開平4−153372号公報、特開平7−189121号公報などにはポリエステル繊維表面にポリマーや金属酸化物等からなる制電剤を被膜する方法が数多く提案されている。しかし、耐摩擦性に弱い制電剤が表層に露出しているので、ハイメッシュ紗織物を製織する際に制電剤が筬歯で削られやすくなり、スカムが発生する。また、特開平6−158534号公報などでポリエステル系繊維に後加工により制電性能を付与する方法が数多く提案されている。しかし、紗の製織後の洗浄工程において制電剤が脱落し性能が低下するだけでなく、流出する排水は環境汚染を引き起こすなど多くの問題点がある。更に、特開平2−289119号公報には、芯鞘型複合モノフィラメントで、芯成分に分子量800〜2000のポリアルキレンエーテルを、モノフィラメント当り0.1〜2.5重量%含有する制電複合モノフィラメントが提案されている。しかし、制電剤が芯成分に混合され、分散しているので、制電性能が充分に発揮できず、ハイメッシュ製織のために充分な制電性能を得ようとすると、多量の制電剤が必要となる。
【0006】
なお、紗織物のハイメッシュ化による原繊の細繊度化が進むにつれて糸の破断強力は低下し、製織時の糸切れが増加する。破断強度が小さいと、紗張り時に充分な張力で張り付けることができないので、製織性の良好な紗織物を得ることができない。
【0007】
一般に、ハイメッシュ紗織物用フィラメントの破断伸度は、品質上20〜30%が好ましい。しかし、高強度を得ようとすると、延伸工程にて高配向化させるためにより高い延伸倍率で延伸しなければならないので低伸度糸となってしまう。その結果、剛直なフィラメントとなってしまい、製織時筬によりフィラメントの表面が削り取られてヒゲ状または粉状のスカムが発生しやすくなる。生じたスカムは、織機の汚れとなり作業性を損なうと同時に、その一部が紗織物の中に織り込まれてしまうと精密印刷時に印刷欠点となる。
【0008】
そのため、適正な伸度を保ったまま高強度を得ることを目的にこれまで数多くの改善技術が提案されている。例えば、特開平5−25709号公報では、中層に制電性化合物を含有した3層複合モノフィラメントで、破断強度が5.5g/d(4.9cN/dT)以上の印刷スクリーン紗用3層複合モノフィラメントが提案されている。これにより高強度のモノフィラメントを得ることができるが、薄皮の3層複合モノフィラメントとすると製造工程が複雑となり、コストパフォーマンス、製造安定性の面で不利となるうえ、前述の例と同様に制電剤が混合されているので、充分な制電性能が得られない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、後加工しなくても少量の制電剤で制電性能が良好で、スカム発生も無く製織性が良好なハイメッシュ紗織物に好適な制電性複合フィラメントを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記本発明の目的は、繊維形成性ポリマーを鞘成分、平均分子量6000以上であるポリアルキレングリコール(A成分)と有機ジカルボン酸またはそのエステル体(B成分)からなり、A成分の含有量が70〜95重量%の平均分子量10000〜70000の重合体に、さらに有機スルホン酸金属塩を該重合体に対し10〜30重量%となるように混合した樹脂組成物を芯成分とし、該芯成分を鞘成分に対して0.3〜5重量%配してなる芯鞘複合フィラメントであり、且つ該複合フィラメントにおける芯成分が表層に露出しないことを特徴とする制電性複合フィラメントによって達成することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
精密印刷に適したハイメッシュスクリーン(250〜400メッシュ)を得るためには、繊度10〜44dTの細繊度フィラメントが用いられ、ポリエステルモノフィラメントは特に好ましく用いられる。このハイメッシュ紗織物用フィラメントに要求されるのは、高張力での紗張りに耐えることができる高破断強度を有していること、及び製織中に織機の筬歯によりヒゲ状、または粉状のスカムが発生しない良好な製織性を保持していることである。
【0012】
制電性とは紗の表面に摩擦等で発生した静電気を速やかに漏洩させて、帯電圧を実用上障害にならない範囲に保持することである。合成繊維は疎水性で電気抵抗が高いうえ、ハイメッシュ紗織物の製織時において走行フィラメントと筬歯との接触頻度及び摩擦力が増大するため、製織した紗織物が静電気を帯びやすくなり、作業性、製織性が著しく低下する。本発明の特徴は、芯成分に制電性化合物を少量で、かつフィラメント表層に露出しない形で配合するために、スカム抑制能を保持したまま、良好な制電性能が維持できる破断強度の高いハイメッシュ紗織物用フィラメントを得られることである。
【0013】
本発明の制電性複合フィラメントを構成する制電ポリマーは、ポリアルキレングリコールを主成分とする樹脂組成物(以下、ASAと記す)である。すなわち、平均分子量6000以上であるポリアルキレングリコール(A成分)と有機ジカルボン酸またはそのエステル体(B成分)を、A成分の含有量が70〜95重量%で平均分子量10000〜70000の重合体に、さらに有機スルホン酸金属塩を共重合ポリマー重量に対し10〜30重量%となるように混合した樹脂組成物である。ASAは、少量でも高い制電性能を有し、重合、紡糸とも容易で、コストパフォーマンスにも優れているので、実用性が高い。
【0014】
ASAを構成する重合体の平均分子量は10000〜70000の高分子量であることが必要であり、この範囲であると曵糸性に優れているため、制電剤が途中で途切れることなく、繊維軸方向に連続した筋状形態として紡糸することができる。10000未満であると、溶融粘度が低下するために芯鞘構造が形成できなくなる。また、70000を越えると、溶融紡糸時にゲル化しやすくなるために、紡糸押出しが困難になるので、好ましくない。
【0015】
ASAに使用するポリアルキレングリコール(A成分)としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、及びそれらのランダムポリエーテル、ブロックポリエーテルなどがあり、特に限定されるものではないが、中でもポリエチレングリコール及びそれらのランダム又はブロックポリエーテルがポリマーの安定性の面で特に好ましく用いられる。
【0016】
ポリアルキレングリコールの平均分子量は6000以上が必要であり、特に好ましいのは平均分子量8000以上である。6000以上であると、高分子量のASAを得るための工程通過性が良好となり、製造にかかるコストパフォーマンスの面で有利になるだけでなく、紡糸安定性が良好で高い制電効果が得られる。6000未満であると、制電性能が不良となるだけでなく、得られるASAの溶融粘度が低くなり、実用性が低くなるので好ましくない。
【0017】
またポリアルキレングリコールの重合比率は、70〜95重量%が必要であり、特に好ましいのは91〜95重量%である。この範囲であると、最適な制電性能を保持することができ、さらに溶融時の流動開始温度が低く、重合及び紡糸工程で比較的低温域で取り扱えるので劣化が少ないという利点がある。70重量%未満の場合は制電性能が充分発揮できず、更には変性度が低いために取り扱いが高温域となるので、劣化が起こりやすくなる。95重量%を越えると、変性度が高すぎるために熱安定性が悪くなり、紡糸安定性が低下するので好ましくない。
【0018】
ASAに使用する有機ジカルボン酸類(B成分)としては、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、及びそのメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、エチレングリコールエステル、或いは低分子量のポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリプロピレンイソフタレート、及びその共重合体、混合物などがあげられ、特に限定するものではない。中でも、芳香族ジカルボン酸、及びそのエステルは、コストパフォーマンス、重合安定性の面から特に好ましく用いられる。
【0019】
ASAに使用する有機スルホン酸金属塩の種類としては、炭素数3〜40のアルキルスルホン酸のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩であり、トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸(以下、DBSと記す)のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、等が好ましく用いられる。有機スルホン酸金属塩の混合比率としては、全ポリマーに対し10〜30重量%が必要であり、特に好ましいのは20〜30重量%である。この範囲であると、安定した操業性でより高い制電性能を発揮できる。混合量が10%未満であると、充分な制電性能を得ることが出来ない。また30%を越えると、繊維の物性低下を引き起こし、さらには溶融紡糸時に異物捕捉のためのろ過フィルター寿命(閉塞時間)が短くなったり、ポリマーの流動性低下のため曵糸性も低下するので好ましくない。
【0020】
本発明の鞘成分に用いられる繊維形成性ポリマーの種類としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリウレタン樹脂などがあげられ、芯鞘複合紡糸が可能なポリマーならば特に限定されず使用することができる。中でもポリエステルは、ASAとの親和性が良好であるため、特に好ましく用いられる。またポリエステルの種類としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)のような芳香族ポリエステル、または、ポリエチレンサクシネート、ポリカプロラクトンのような脂肪族ポリエステルがあげられる。中でも、PETは溶融紡糸を行う際の操業性、コストパフォーマンスなどの観点より特に好ましく用いられる。繊維形成性ポリマーの分子量、分子量分布、極限粘度についても、芯鞘複合紡糸が可能であれば特に限定されない。
【0021】
また、芯成分のASA及び鞘成分の繊維形成性ポリマーには公知の酸化防止剤、光安定剤、ポリマー重合時に用いられる各種金属化合物触媒、及び各種不活性粒子類、例えば酸化チタン、酸化ケイ素、炭酸カルシウム等を配合してもよい。
【0022】
芯成分の量は、鞘成分に対して0.3〜5重量%が必要であり、特に1〜3重量%が最も好ましい。0.3〜5重量%の範囲内であると、高い破断強度を維持したまま、良好な制電性能を有したモノフィラメントが得られる。0.3重量%未満であると、充分な制電性能が発揮されなくなる。また、5重量%を越えると制電性能は高くなるが、破断強度が低下し、充分な張力で紗張りができないために製織性が低下し、好ましくない。
【0023】
該複合モノフィラメントの横断面形状は特に限定されるものではないが、円形が好ましい。芯成分の数は特に限定されるものではなく、芯の断面形状も放射形、多芯形、海島形等があり、限定されるものではないが、いずれにしても芯成分がフィラメントの表層に露出しないことが必要である。芯成分がフィラメント表面に露出することなく鞘成分に包括されることで、鞘成分がスカム発生に対する表面の保護効果の役割を果たし、耐摩擦性が低いASAが織機の筬に削られることなく製織することができる。
【0024】
また、鞘層の最小厚みは1〜20μmが好ましい。この範囲内であると、制電剤使用量を少なく抑えながらも、芯からフィラメント表層までの距離が小さいために、静電気を逃がしやすくなる。
【0025】
得られるフィラメントの適性破断伸度は、工程通過性及び紗織物の品質上20〜30%が好ましく、特に22〜25%が最も好ましい。この範囲であると、高い破断強度を維持したまま曲げ、剪断に強いフィラメントとなるので、紗張り性良好な紗織物を得ることができる。また、この時の適正破断強度は、5.0cN/dT以上が好ましい。5.0cN/dT以上であると、充分な張力で紗枠に張り付けることができるために、糸切れが低減し、製織性良好な紗織物を得ることができる。
【0026】
【実施例】
以下に実施例をあげて本発明を更に詳細に説明する。実施例は、スクリーン印刷、濾過フィルター等の産業資材用ハイメッシュ紗織物用に好適であるポリエステルモノフィラメントで行った。なお、実施例中の評価は以下の方法に従った。
【0027】
A.摩擦帯電圧測定(制電性能評価):
摩擦帯電圧は、延伸糸を筒編あるいは織物として精練を行ない、JIS−L−1094法に準じ、カネボウエンジニアリング(株)製のEST−7型摩擦帯電圧測定装置を用いて摩擦帯電圧を測定した。摩擦布は羊毛とし、測定室内温度を20℃、湿度40%とした。評価は、摩擦60秒後の帯電圧が500V以下を優良(◎)、1000V以下を良好(○)、1000Vを越えるものを不良(×)とした。
【0028】
B.破断強伸度:
JIS−L−1013に準じ、島津製作所(株)製のAGS−1KNGオートグラフ引張試験機を用い、試料糸長20cm、定速引張速度20cm/分の条件で、試料が伸長破断したときの強度及び伸度を求めた。
【0029】
C.製織性評価(糸切れ評価):
スルーザー型織機により、回転数300rpmで350メッシュのハイメッシュスクリーン織物を製織し、経糸または緯糸切れから製織性を評価した。糸切れ評価としては、製織長が500m以上のものを良好(○)、500m未満のものを不良(×)とした。
【0030】
D.スカム評価:
「C.製織性評価」と同様に製織し、スカム発生による筬の汚れのため、停台せざるを得なくなった時の製織長から評価した。製織長が500m以上のものを良好(○)、500m未満のものを不良(×)とした。
【0031】
E.操業性評価
操業性評価とは、溶融紡糸時のポリマー押出しの安定性、紡糸中の糸切れ、繊度ムラより判断した。操業性が安定して良好であった場合は良好(○)、不良であった場合は不良(×)とした。
【0032】
F.平均分子量の測定
ポリマーサンプルをクロロホルム溶媒に約50mg/lとなるように溶解させ、0.45μmメンブランフィルターで濾過して試料を作成した。この試料をWaters社製のLC Module 1plusを用い、カラム温度35℃、溶離液クロロホルムとして重量平均分子量を測定した。
【0033】
G.断面形状、鞘層の最小厚み測定
得られた延伸フィラメントを繊維軸と垂直方向に切断し、顕微鏡により断面形状を確認した。鞘層の最小厚みは、400倍で顕微鏡写真を撮影し、芯から表層まで最も近い部分の長さを測定した。
【0034】
H.PETの重合工程
今回用いたPETは従来公知のDMT法に従った。すなわち、DMTとエチレングリコールを用い、エステル交換触媒として酢酸カルシウム一水和物を0.09(重量%/エステル)、酢酸マンガン四水和物を0.03(重量%/エステル)加え、235℃でエステル交換反応を行なった。反応完了後の重縮合反応は、重合触媒として三酸化アンチモン0.04(重量%/ポリマー)、熱安定剤としてリン酸トリメチル0.043(重量%)添加し、重合温度280℃、133Pa以下の高真空条件下で行ない、PETチップを得た。得られたチップの極限粘度〔η〕は0.65、融点は263℃であった。
【0035】
I.ASAの重合工程
制電剤のASAの重合法は、芳香族ジカルボン酸エステルであるビス−ヒドロキシエチルテレフタレートの所定量中に、ポリエチレングリコール(以下、PEGと記す)所定量、重合触媒として三酸化アンチモン0.04(重量%/エステル)、安定剤としてリン酸トリメチル0.043(重量%/エステル)、更に重合中のポリマー劣化防止のためヒンダードフェノール系安定剤であるイルガノックス1010(チバガイギー社製)0.1(重量%/エステル)を添加し、窒素気流下230℃で約2時間原料の撹拌混合、脱水を行なった。なお、同時にDBSのナトリウム塩を所定量混合した。次に温度を245℃に徐々に昇温しつつ真空度130Paへ約1時間で到達させ、更に27〜67Paで重合を行なった。重合反応終了後、窒素注入により真空を常圧に戻してから、ポリマーの酸化防止のため、さらにイルガノックス1010を2%添加し、10分間撹拌混合し、ASAを得た。
【0036】
J.モノフィラメント紡糸
紡糸は、(H.)記載のPETを鞘成分、(I.)記載の重合方法によって得られたASAを芯成分とし、紡糸方法は、例えば特開平3−113010号公報、特開平3−104912号公報などに記されているような従来公知の複合紡糸法に従った。すなわち、芯鞘成分を別々の濾過部を通過させ口金内に流し、吐出孔直前で会合させ、フィラメントとして吐出形成することによって、芯部と鞘部とからなる構造にすることができる。この時、紡糸温度295℃、ASA圧入温度200℃、紡速1500m/分で行なった。これを巻上げてから約1日後に、速度800m/分、85℃ローラーヒーター及び150℃プレートヒーター通しで延伸して、制電性複合モノフィラメントを得た。
【0037】
<PEG平均分子量の違いによる操業性、制電性能評価>
(I.)記載のASA重合方法に従って、PEGを91(重量%/エステル)共重合、DBSのナトリウム塩を20(重量%/ポリマー)混合した平均分子量40000であるASAを得た。その際、表1に示すようにPEGの平均分子量を種々変化させた。このASAを用いて、芯配合量を鞘成分に対して2(重量%)として、(J.)記載の紡糸方法に従って、33dTの6葉形の芯鞘複合モノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントを繊維軸方向に切断して顕微鏡観察すると、芯成分が連続した筋状形態であった。このモノフィラメントの操業性、制電性能評価を表1に示す。
【0038】
【表1】
Figure 0004249384
【0039】
比較例1は、PEGの平均分子量が低すぎるので、制電性能は不良であった。一方、本発明に準じた実施例1、2、3は、重合、紡糸操業性、制電性能とも良好であった。特に、PEGの平均分子量が8000以上では、制電性能が優良であった。
【0040】
<PEG/PET共重合体の平均分子量の違いによる操業性、制電性能テスト>(I.)記載の重合方法にしたがって、平均分子量8000の平均分子量のPEGを91(重量%/エステル)共重合、DBSのナトリウム塩を20(重量%/ポリマー)混合したASAを製造する際、表2に示すようにPEG/PET共重合体の平均分子量を種々変化させた。こうして重合したASAを用いて、芯配合量を鞘成分に対して2(重量%)として、(J.)記載の紡糸方法にしたがって33dTの6葉形の芯鞘複合モノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントを繊維軸方向に切断して顕微鏡観察した。このモノフィラメントの操業性、制電性能テストを表2に示す。
【0041】
【表2】
Figure 0004249384
【0042】
比較例2は、PEG/PET共重合体の平均分子量が小さすぎるために、紡糸温度におけるASAの溶融粘度が低くなり、PETとの粘度差が大きくなり紡出困難となった。また、曵糸性に乏しくなるために芯成分を連続の筋状形態に配することができず、制電性能も不良であった。比較例3は、ポリマーが超高分子量域となるために、溶融紡糸時にゲル化しやすくなり操業性不良となり、また劣化しやすいために制電性能も不良となった。一方、本発明に準じた実施例2、4、5は、PEG/PET共重合体の平均分子量が最適であるため、曵糸性良好となり、容易に芯成分を連続の筋状形態に配すことができ、熱劣化がなく良好な制電性能を保持したモノフィラメントを得ることができた。
【0043】
<ASA原料組成の違いによる製織性、制電性能評価>
(I.)記載の重合方法に従って平均分子量8000のPEGを用い、表3に示すようにPEG、及びDBSのナトリウム塩の配合量を種々変化させ、平均分子量40000のASAを得た。これらのASAを用いて、芯配合量を鞘成分に対して2(重量%)として、(J.)記載の紡糸方法にしたがって、破断伸度が24±1%となるように延伸し、33dTの6葉形の芯鞘複合モノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントを繊維軸方向に切断して顕微鏡観察し、芯成分が連続的な筋状形態で表面に露出していないことを確認した。このモノフィラメントの操業性、製織性、及び制電性能評価結果を表3に示す。
【0044】
【表3】
Figure 0004249384
【0045】
比較例4は、PEGの添加量が少ないために制電性能は低く、さらには粘度ムラのため、紡糸操業性が不良となった。比較例5は、制電性能は良好だが、強度が低いためにスクリーン製織時に充分な張力で紗張りすることができず、糸切れにより製織性が不良となった。またPEG共重合量が多すぎるために、熱安定性が悪くなり、紡糸操業性も低下した。比較例6、7は、DBSのナトリウム塩の混合量が少なすぎるために充分な制電性能を得ることができなかった。比較例8は、制電性能は優良であったが、紡糸時にろ過フィルターの閉塞時間が短くなり、糸質も安定しないために低強度糸となり、紡糸操業性、製織性とも不良であった。一方、本発明に準じた実施例2、6、7、8、9、10は、PEG共重合量、DBSのナトリウム塩混合量とも最適であるため、重合操業性良好なASAを得ることができた。さらにはASAを低温域で紡糸できるので、熱劣化の少ない紡糸操業性良好で制電性能良好な高強伸度モノフィラメントを得ることができた。
【0046】
<芯鞘比率の違いによる製織性、制電性能評価>
(I.)記載の重合方法にしたがって、平均分子量8000のPEGを91(重量%/エステル)共重合、DBSのナトリウム塩を20(重量%/ポリマー)混合した平均分子量40000であるASAを重合した。このASAを用いて、表4に示すように芯鞘比率を種々変化させて、(J.)記載の紡糸方法にしたがって、破断伸度が24±1%となるように延伸し、33dTの6葉形の芯鞘複合モノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントを繊維軸方向に切断して顕微鏡観察し、芯成分が連続的な筋状形態で表面に露出していないことを確認した。このモノフィラメントの製織性、制電性能評価を表4に示す。
【0047】
【表4】
Figure 0004249384
【0048】
比較例9は、制電剤が少なすぎるために制電性能は不充分であった。比較例10は、制電剤添加量が多いので制電性能は優良だが、強度不足であるので充分な張力で紗張りすることができず、糸切れが多発し製織性不良であった。一方、本発明に準じた実施例2、11、12、13は、充分な張力で紗張りできるので製織性良好であり、制電性能も良好であった。
【0049】
<断面形状の違いによる制電性能評価>
(I.)記載の重合方法にしたがって、平均分子量8000のPEGを91(重量%/エステル)共重合、DBSのナトリウム塩を20(重量%/ポリマー)混合した平均分子量40000であるASAを得た。このASAの芯配合量を2(重量%)として、断面形状が図1〜図3のごとき、6葉形、円形、3層並列形となるように、(J.)記載の紡糸方法にしたがって種々紡糸し、33dTのモノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントを繊維軸方向に切断して顕微鏡観察し、芯成分が連続的な筋状形態で表面に露出していないことを確認した。。ASA分散形のモノフィラメントは、2軸混練機にてASA混合量2(重量%)と(H.)記載のPETを混合量98(重量%)で混練したチップを用いて単独糸として紡糸し、(J.)記載の紡糸方法と同じ条件にて図4の断面形状のごとき制電モノフィラメントを得た。この得られたモノフィラメントを繊維軸方向に切断して顕微鏡観察したところ、芯成分(制電成分)が不連続な筋状形態になっていた。このモノフィラメントのスカム評価、制電性能評価を表5に示す。
【0050】
【表5】
Figure 0004249384
【0051】
比較例11は、芯の制電剤が表層に露出しているので、制電性は優良だったが、製織の際に制電剤が筬に削られて多量のスカムが発生した。比較例12は芯の制電剤が連続筋状で配されていないために、静電気を系外に逃がしにくくなり、制電性能は不良となった。更に多量のスカムも発生し、製織性も不良だった。一方、本発明の実施例2、14とも、芯成分は表層に露出していないためスカム評価、制電性能評価とも良好だった。
【0052】
<鞘層の最小厚み変化によるスカム、制電性能評価>
(I.)記載の重合方法にしたがって、平均分子量8000のPEGを91(重量%/エステル)共重合、DBSのナトリウム塩を20(重量%/ポリマー)混合した平均分子量40000であるASAを得た。このASAの芯配合量を2(重量%)として、芯層からフィラメント表層までの最小厚みを表6に示すように種々変化させて、33dTの図1のような6葉型芯鞘複合モノフィラメントを得た。鞘層の厚み変化は、(J.)記載の紡糸方法において、吐出孔直前における芯の会合孔の位置を移動させることで偏心とし、厚みを変化させた。このモノフィラメントのスカム評価、制電性能評価結果を表6に示す。
【0053】
【表6】
Figure 0004249384
【0054】
実施例17、18は、芯成分からフィラメント表層までの距離が大きいために、制電性能評価は良好にとどまった。実施例2、15、16は、鞘層の最小厚みがより最適な範囲であるので、制電性能は優良であった。
【0055】
【発明の効果】
本発明記載のASAは、ポリマー安定性、曵糸性に優れ、少量でも高い制電性能を発揮するので、コストパフォーマンスにも優れた制電剤を供給することができた。更には、該制電剤がフィラメントの表層に露出しない芯鞘構造とすることで、ハイメッシュ製織時にスカム発生のない製織性良好な制電性複合フィラメントの供給を可能にした。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の複合繊維の断面形状である。
【図2】本発明の複合繊維の断面形状である。
【図3】本発明の範囲外の複合繊維の断面形状である。
【図4】本発明の範囲外の複合繊維の断面形状である。
【符号の説明】
1 繊維形成層(鞘成分)
2 制電層(芯成分)

Claims (3)

  1. 繊維形成性ポリマーを鞘成分、平均分子量6000以上であるポリアルキレングリコール(A成分)と有機ジカルボン酸またはそのエステル体(B成分)からなり、A成分の含有量が70〜95重量%で平均分子量10000〜70000の重合体に、有機スルホン酸金属塩を該重合体に対し10〜30重量%となるように混合した樹脂組成物を芯成分とし、該芯成分を鞘成分に対して0.3〜5重量%配してなる芯鞘複合フィラメントであり、且つ該複合フィラメントにおける芯成分が、表層に露出しないことを特徴とする制電性複合フィラメント。
  2. 該繊維における鞘層の最小厚みが1〜20μmである請求項1記載の制電性複合フィラメント。
  3. 該繊維の破断伸度が20〜30%で、破断強度が5.0cN/dT(センチニュートン/デシテックス)以上である請求項1または2記載の制電性複合モノフィラメント。
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