JP4247730B2 - 内燃機関の空燃比制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、排ガス浄化用の触媒の上流側と下流側にそれぞれ空燃比センサ(リニアA/Fセンサ)又は酸素センサを設置して内燃機関の空燃比をフィードバック制御する内燃機関の空燃比制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
今日の自動車は、排気管に三元触媒を設置して排ガスを浄化するようにしているが、触媒の排ガス浄化率を高めるためには、排ガスの空燃比を触媒の浄化ウインド内(目標空燃比付近)に制御する必要がある。そこで、触媒の上流側と下流側にそれぞれ排ガスセンサ(空燃比センサ又は酸素センサ)を設置し、上流側排ガスセンサで検出される排ガスの空燃比が上流側目標空燃比となるように燃料噴射量をフィードバック制御すると共に、下流側排ガスセンサで検出される排ガスの空燃比が下流側目標空燃比となるように上流側目標空燃比を補正するサブフィードバック制御を実施するようにしたものがある。
【0003】
従来のサブフィードバック制御は、PID制御により行われているが、最近になって、制御精度を高めるために、特開平9−273439号公報に示すようにスライディングモード制御を用いることが提案されている。このスライディングモード制御は、制御対象の複数の状態量を変数とする線形関数により表される超平面を予め構築しておき、状態変数をハイゲイン制御によって超平面上で高速で収束させ、更に、等価制御入力によって、状態変数を超平面上で拘束しつつ、超平面上の所要の平衡点に収束させる、可変構造型のフィードバック制御手法である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、スライディングモード制御では、制御対象の状態変数が超平面に収束してしまえば、外乱等の影響をほとんど受けずに状態変数を超平面上の平衡点に安定的に収束させることができる利点があるが、制御対象のモデルは状態変数が超平面に収束した場合のみしか考慮されていない。このため、上記公報のように、空燃比制御にスライディングモード制御を適用すると、一般に、ハイゲインでは、超平面周辺で外乱や無駄時間によりハンチングが発生し、状態変数が超平面に収束しない状態が発生するので、図7に示すように、初期状態によっては下流側排ガスセンサ出力(触媒下流側の排ガスの空燃比)が目標値(下流側目標空燃比)に収束しない不具合が発生することがある。一方、ローゲインでは、入力がモデル化誤差に対して十分でないため、応答性が悪くなり、図8に示すように、下流側排ガスセンサ出力(触媒下流側の排ガスの空燃比)の収束速度が著しく遅くなるという欠点がある。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、従ってその目的は、下流側排ガスセンサの検出空燃比(触媒下流側の排ガスの空燃比)が目標空燃比に収束するまでの過渡特性を改善することができ、ハンチング防止と応答性向上とを両立させることができる内燃機関の空燃比制御装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1の内燃機関の空燃比制御装置は、下流側排ガスセンサの検出空燃比からなる状態変数に基づいて上流側目標空燃比の補正量をバックステッピング法を用いてバックステッピング制御手段で算出することを第1の特徴とし、更に、バックステッピング法を適用する制御対象のモデルを複数のサブシステムに分割し、各サブシステムに前記状態変数で算出される仮想入力項を持たせることを第2の特徴とするものである。バックステッピング法では、状態変数のほぼ理想的な収束軌跡(目標収束軌跡)を仮想入力項で設定して、状態変数と仮想入力項との偏差を0に収束させつつ、状態変数と目標値との偏差も考慮して制御するので、状態変数と仮想入力項との偏差が0とならない条件下でも、状態変数を安定して収束させることができる。これにより、従来のスライディングモード制御では状態変数が収束しにくいような外乱や無駄時間の影響を受ける条件下でも、状態変数をスムーズに収束させることができ、触媒下流側の排ガスの空燃比を目標空燃比に応答性良く収束させることができる。
【0007】
この場合、請求項のように、制御対象のモデルを複数のサブシステムに分割し、各サブシステムに状態変数で算出される仮想入力項を持たせるようにすると良い。このようにすれば、サブシステムに対して状態変数が目標収束軌跡に追従するように制御できるので、例えば2次のシステムを直接制御する場合と比較して、状態変数の収束軌跡にロバスト性を持たせることができる。
【0008】
また、請求項のように、仮想入力項は、状態変数の積分値に比例した項を持つようにしても良い。このようにすれば、状態変数の定常偏差、ひいては、触媒下流側の排ガスの空燃比の定常偏差を小さくすることができる。
【0009】
或は、請求項のように、仮想入力項は、原点を含む所定領域で傾きが1未満で第1象限と第3象限を通る直線又は曲線で表されると共にそれ以外の領域では傾き1の直線で表される非線形関数を用いて設定するようにしても良い。この場合、状態変数が小さい領域、つまり、下流側排ガスセンサの検出空燃比と下流側目標空燃比との偏差が小さい領域では、ハイゲインのバンバン制御のように触媒下流側の排ガスの空燃比を下流側目標空燃比付近に安定して収束させることができる。一方、状態変数が大きい領域、つまり、下流側排ガスセンサの検出空燃比と下流側目標空燃比との偏差が大きい領域では、応答性が悪くならないように、入力に制限が入る。
【0010】
また、請求項のように、状態変数と、状態変数と仮想入力項の偏差と、該偏差の積分値との線形和によって補正量を算出するようにすると良い。このようにすれば、状態変数と、状態変数と仮想入力項の偏差と、その偏差の積分値の3つの量を同時に0に収束させるような補正量を算出することができ、触媒下流側の排ガスの空燃比の収束安定性を向上することができる。
【0011】
この場合、請求項のように、補正量を算出する際に、制御対象のモデルに基づく最適レギュレータにより線形和の各係数を算出するようにすると良い。このようにすれば、状態変数と、状態変数と仮想入力項の偏差と、その偏差の積分値を0に収束させる際に、それぞれの重要度(重み付け)を容易に設定することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図1乃至図5に基づいて説明する。
まず、図1に基づいてエンジン制御システム全体の概略構成を説明する。内燃機関であるエンジン11の吸気管12の最上流部には、エアクリーナ13が設けられ、このエアクリーナ13の下流側には、吸入空気量を検出するエアフローメータ14が設けられている。このエアフローメータ14の下流側には、スロットルバルブ15が設けられている。
【0013】
更に、スロットルバルブ15の下流側にはサージタンク17が設けられ、このサージタンク17に、エンジン11の各気筒に空気を導入する吸気マニホールド19が設けられている。各気筒の吸気マニホールド19の吸気ポート近傍には、それぞれ燃料を噴射する燃料噴射弁20が取り付けられている。また、エンジン11のシリンダヘッドには、気筒毎に点火プラグ21が取り付けられている。
【0014】
一方、エンジン11の排気管22の途中には、排ガス中の有害成分(CO,HC,NOx等)を浄化する三元触媒等の触媒23が設置されている。この触媒23の上流側と下流側には、それぞれ排ガス空燃比又はリッチ/リーンを検出する排ガスセンサ24,25が設置されている。本実施形態では、上流側排ガスセンサ24は、排ガス空燃比に応じたリニアな空燃比信号を出力する空燃比センサ(リニアA/Fセンサ)が用いられ、下流側排ガスセンサ25は、排ガスの空燃比が理論空燃比に対してリッチかリーンかによって出力電圧が反転する酸素センサが用いられている。従って、下流側排ガスセンサ25は、空燃比がリーンの時には0.1V程度の出力電圧を発生し、空燃比がリッチの時には0.9V程度の出力電圧を発生する。尚、エンジン11のシリンダブロックには、冷却水温を検出する水温センサ26や、エンジン回転速度を検出する回転速度センサ27が取り付けられている。
【0015】
エンジン制御回路(以下「ECU」と表記する)28は、ROM29、RAM30、CPU31、バッテリ32でバックアップされたバックアップRAM33、入力ポート34、出力ポート35等からなるマイクロコンピュータを主体として構成されている。入力ポート34には、回転速度センサ27の出力信号が入力されると共に、エアフローメータ14、上流側及び下流側排ガスセンサ24,25、水温センサ26の出力信号が、それぞれA/D変換器36を介して入力される。また、出力ポート35には、それぞれ駆動回路39を介して燃料噴射弁20、点火プラグ21等が接続されている。ECU28は、ROM29に記憶された燃料噴射制御プログラムや点火制御プログラムをCPU31で実行することで、燃料噴射弁20や点火プラグ21の動作を制御すると共に、空燃比制御プログラムを実行することで、排ガスの空燃比が目標空燃比となるように空燃比(燃料噴射量)をフィードバック制御する。
【0016】
以下、本実施形態の空燃比フィードバック制御システムについて図2及び図3に基づいて説明する。ここで、図2はCPU31の演算処理機能で実現する空燃比制御手段40の機能を示すブロック図、図3は空燃比フィードバック制御システム全体の機能を示すブロック図である。
【0017】
空燃比制御手段40は、燃料噴射量フィードバック制御部41と目標空燃比計算部42とから構成され、更に、目標空燃比計算部42は、負荷目標空燃比計算部43とバックステッピング制御部44とから構成されている。
【0018】
燃料噴射量フィードバック制御部41は、上流側排ガスセンサ24の検出空燃比AFが上流側目標空燃比AFref に収束するように、燃料噴射弁20の燃料噴射時間Tinj を算出する。この燃料噴射時間Tinj の算出は、制御対象のモデルの線形方程式に対して構築された最適レギュレータにより行われる。この燃料噴射量フィードバック制御部41が、特許請求の範囲でいう空燃比フィードバック制御手段に相当する役割を果たす。
【0019】
一方、負荷目標空燃比計算部43は、ROM29に記憶された関数式又はマップにより吸入空気量(又は吸気管圧力)とエンジン回転速度に応じた負荷目標空燃比AFbaseを算出する。この負荷目標空燃比AFbaseを算出するための関数式又はマップは、下流側排ガスセンサ25の出力値O2out(検出空燃比)が定常的にほぼ目標値O2targ (下流側目標空燃比)と等しい時に、上流側目標空燃比AFref を負荷目標空燃比AFbaseに維持すれば、下流側排ガスセンサ25の出力値O2outがほぼ目標値O2targ に維持されるように予め試験等によって設定されている。
【0020】
また、バックステッピング制御部44は、下流側排ガスセンサ25の出力値O2outに基づいて、後述するバックステッピング法を用いて上流側目標空燃比AFref の補正量AFcompを算出する。そして、この補正量AFcompを負荷目標空燃比AFbaseに加算することで、上流側目標空燃比AFref を求め、この上流側目標空燃比AFref を燃料噴射量フィードバック制御部41に入力する。
AFref =AFbase+AFcomp
【0021】
この場合、目標空燃比計算部42が、特許請求の範囲でいうサブフィードバック制御手段に相当し、バックステッピング制御部44が、特許請求の範囲でいうバックステッピング制御手段に相当する。
【0022】
次に、バックステッピング制御部44におけるバックステッピング法を用いた補正量AFcompの算出方法を図3に基づいて説明する。
制御対象を燃料噴射量フィードバック制御部41、エンジン11、触媒23、下流側排ガスセンサ25等からなる系とし、下流側排ガスセンサ25の出力値O2outが目標値O2targ 付近に維持されるように、上流側目標空燃比AFref の補正量AFcompを算出する。バックステッピング法を適用するために、次の(1),(2)式に示す2つの状態変数x1 ,x2 を用いる。
x1(i)=O2out(i) −O2targ ……(1)
x2(i)=O2out(i+1) −O2targ ……(2)
【0023】
つまり、状態変数x1 は計算周期 i回目における下流側排ガスセンサ25の出力値O2outと目標値O2targ との偏差であり、状態変数x2 は計算周期 i+1回目における下流側排ガスセンサ25の出力値O2outと目標値O2targ との偏差である。
【0024】
本実施形態では、このように定義された状態変数x1 ,x2 を、状態フィードバックを用いて0にするように制御することで、上流側目標空燃比AFref の補正量AFcompを求める。
この制御を実施するために、まず、制御対象を次の(3)式に示す2次線形状態方程式でモデル化する。
【0025】
【数1】
Figure 0004247730
【0026】
ここで、入力は、計算周期 i回目においてバックステッピング制御部44で算出される補正量AFcompであり、状態変数x1 ,x2 は、a1 ,a2 ,bを係数とする過去の状態変数x1 ,x2 の値と現在の補正量AFcompの値の線形和により決定される。尚、モデル式は、2次式に限定されず、無駄時間等を考慮した3次以上の高次な式を用いても良い。
【0027】
次に、上記モデル式(3)を、次の(4)式と(5)式に示す2つのサブシステムに分割する。
x1(i+1)=x2(i) ……(4)
x2(i+1)=a1 ・x1(i)+a2 ・x2(i)+b・AFcomp(i) ……(5)
そして、以下に述べる2つの手順▲1▼,▲2▼を経てそれぞれのサブシステム[(4)式,(5)式]を制御する。
【0028】
《手順▲1▼》
(4)式に示すサブシステムにおいて、状態変数x1 を目標値0に制御する。この際、(4)式中の状態変数x2 を仮想入力αとし、次の(6)式に示すように、その値を自由に設定できるとすれば、状態変数x1 をほぼ理想的な収束軌跡で目標値0に制御することができる。
α(i) =Kc ・x1(i) ……(6)
ここで、Kc は絶対値が1よりも小さい定数である。
【0029】
《手順▲2▼》
(5)式に示すサブシステムを用いて、状態変数x2 を実際に仮想入力αと等しくするように制御する。この際、まず、(4)式中の状態変数x2 と(6)式で設定した仮想入力αとの偏差σを次の(7)式に示すように設定する。
σ(i) =x2(i)−α(i) ……(7)
これにより、x2(i)を次の(8)式で表すことができる。
x2(i)=α(i) +σ(i) ……(8)
上記(4)と上記(8)式とから次の(9)式が求められる。
x1(i+1)=α(i) +σ(i) ……(9)
上記(5)と上記(8)式とから次の(10)式が求められる。
Figure 0004247730
ここで、α(i) 、α(i+1) は、それぞれ、x1(i)、x1(i+1)の関数であり、 x1(i+1)はα(i) とσ(i) の関数であることから、上記(9)式、(10)式は共にx1(i)、σ(i) の関数である。
【0030】
次に、上記(9)式、(10)式からなるシステム全体について、状態変数x1 と、偏差σと、偏差σの積算値の3つの量を同時に0に収束させるように、次の(11)式を用いて、補正量AFcompを、状態変数x1 と、偏差σと、偏差σの積分値Σσとの線形和で設定する。
【0031】
【数2】
Figure 0004247730
【0032】
ここで、K1 ,K2 ,K3 はフィードバックゲインであり、エンジン運転状態により決定される定数である。このように状態変数x1 (下流側排ガスセンサ25の出力値O2outと目標値O2targ との偏差)の収束も考慮することで、無駄時間や外乱等の影響により偏差σ(状態変数と仮想入力との偏差)が0とならない条件下でも、状態変数x1 の収束安定性を向上することが可能となる。
【0033】
尚、本実施形態のように、仮想入力αをα(i) =Kc ・x1(i)のように設定した場合[(6)式参照]には、上記(9)式、(10)式及び次の(12)式からなるシステム全体を次の(13)式に示す行列式で表して、最適レギュレータによってフィードバックゲインK1 ,K2 ,K3 を決定するようにしても良い。
【0034】
【数3】
Figure 0004247730
【0035】
この場合、フィードバックゲインK1 ,K2 ,K3 は、次のように表すことができる。
【0036】
【数4】
Figure 0004247730
【0037】
ここで、Wx1は、状態変数x1 (目標収束値までの偏差)に対する重み係数であり、Wsigma は、偏差σ(目標収束軌跡までの偏差)に対する重み係数であり、Wint は、偏差σの積算値xint (目標収束軌跡までの偏差の積算値)に対する重み係数である。
【0038】
上記(14)式、(15)式より、重み係数Wx1,Wsigma ,Wint の組み合わせからフィードバックゲインK1 ,K2 ,K3 が決定される。これにより、状態変数x1 と、偏差σと、偏差σの積算値xint とを0に収束させる際に、それぞれの重要度(重み付け)を重み係数Wx1,Wsigma ,Wint によって容易に設定することができる。
【0039】
以上説明したバックステッピング制御部44による補正量AFcompの算出は、図4の補正量算出プログラムに従って行われる。本プログラムは、所定時間又は所定クランク角毎に実行される。本プログラムが起動されると、まず、ステップ101で、下流側排ガスセンサ25の出力値O2outを読み込み、次のステップ102で、状態変数x1 を前回の状態変数x2 で更新した後、ステップ103で、今回の状態変数x2 (=O2out−O2targ )を算出する。
【0040】
その後、ステップ104で、仮想入力α=Kc ・x1 を算出し、次のステップ105で、状態変数x2 と仮想入力αとの偏差σ(=x2 −α)を算出した後、ステップ106で、前回までの偏差σの積算値xint に今回の偏差σを加算して、偏差σの積算値xint (=xint +σ)を更新する。その後、ステップ107で、上流側目標空燃比の補正量AFcomp(=K1 ・x1 +K2 ・σ+K3 ・xint )を算出して、本プログラムを終了する。
【0041】
CPU31は、この補正量AFcompを負荷目標空燃比AFbaseに加算することで上流側目標空燃比AFref を求め、上流側排ガスセンサ24の検出空燃比AFが上流側目標空燃比AFref に収束するように燃料噴射時間Tinj を算出する。
【0042】
以上説明した本実施形態によれば、上流側目標空燃比の補正量AFcompをバックステッピング法を用いて算出するようにしたので、状態変数(下流側排ガスセンサ25の出力値O2outと目標値O2targ との偏差)をほぼ理想的な収束軌跡に追従させるようにして0に収束させることができる。このため、図5に破線で示すように、従来のスライディングモード制御では、下流側排ガスセンサ25の出力値O2out(触媒下流側の排ガスの空燃比)が目標値O2targ に収束しにくいような外乱や無駄時間の影響を受ける条件下でも、図5に実線で示すように、下流側排ガスセンサ25の出力値O2out(触媒下流側の排ガスの空燃比)を目標値O2targ に応答性良く収束させることができる。
【0043】
尚、本実施形態では、仮想入力α(i) =Kc ・x1(i)[(6)式参照]としたが、次式に示すように、状態変数x1(i)の積分値Σx1 に定数ゲインKI を乗算した項を仮想入力α(i) に持たせるようにしても良い。
【0044】
【数5】
Figure 0004247730
【0045】
このようにすれば、状態変数x1 の定常偏差、ひいては、下流側排ガスセンサ25の出力値O2out(触媒下流側の排ガスの空燃比)の定常偏差を小さくすることができる。
【0046】
また、仮想入力α(i) を、図6に示す非線形関数F1(x)を用いて次式に示すように設定しても良い。
α(i) =F1(x(i) )
ここで、非線形関数F1(x)は、図6に示すように、原点を含む所定領域で傾きが1未満で第1象限と第3象限を通る直線又は曲線で表されると共にそれ以外の領域では傾き1の直線で表される非線形関数に設定されている。
【0047】
このようにすれば、状態変数x(i) が小さい領域、つまり、下流側排ガスセンサ25の出力値O2outと目標値O2targ との偏差が小さい領域では、ハイゲインのバンバン制御のように下流側排ガスセンサ25の出力値O2outを目標値O2targ 付近に制御することができる。一方、状態変数x(i) が大きい領域、つまり、下流側排ガスセンサ25の出力値O2outと目標値O2targ との偏差が大きい領域では、応答性が悪くならないように、入力に制限が入る。
【0048】
尚、下流側排ガスセンサ25は、酸素センサに代えて、空燃比センサ(リニアA/Fセンサ)を用いても良く、また、上流側排ガスセンサ24は、空燃比センサ(リニアA/Fセンサ)に代えて、酸素センサを用いても良い。
その他、本発明は、制御対象のモデル式を適宜変更しても良い等、種々変更して実施できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示すエンジン制御システム全体の概略構成図
【図2】ECUのCPUの演算処理機能で実現する空燃比制御手段の機能を示すブロック図
【図3】空燃比フィードバック制御システム全体の機能を示す機能ブロック図
【図4】補正量算出プログラムの処理の流れを示すフローチャート
【図5】下流側排ガスセンサ出力の収束特性を示すタイムチャート
【図6】他の実施形態に用いる非線形関数F1(x)を説明するための図
【図7】従来の空燃比制御における下流側排ガスセンサ出力の収束特性を示すタイムチャート(その1)
【図8】従来の空燃比制御における下流側排ガスセンサ出力の収束特性を示すタイムチャート(その2)
【符号の説明】
11…エンジン(内燃機関)、20…燃料噴射弁、22…排気管、23…触媒、24…上流側排ガスセンサ、25…下流側排ガスセンサ、28…ECU(空燃比フィードバック制御手段,サブフィードバック制御手段,バックステッピング制御手段)、31…CPU、40…空燃比制御手段、41…燃料噴射量フィードバック制御部、42…目標空燃比計算部、43…負荷目標空燃比計算部、44…バックステッピング制御部。

Claims (5)

  1. 内燃機関の排ガスを浄化する触媒と、
    前記触媒の上流側と下流側でそれぞれ排ガスの空燃比又はリッチ/リーンを検出する上流側排ガスセンサ及び下流側排ガスセンサと、
    前記上流側排ガスセンサの検出空燃比が上流側目標空燃比となるように燃料噴射量をフィードバック制御する空燃比フィードバック制御手段と、
    前記下流側排ガスセンサの検出空燃比が下流側目標空燃比となるように前記上流側目標空燃比を補正するサブフィードバック制御手段と
    を備えた内燃機関の空燃比制御装置において、
    前記サブフィードバック制御手段は、前記下流側排ガスセンサの検出空燃比からなる状態変数に基づいて前記上流側目標空燃比の補正量をバックステッピング法を用いて算出するバックステッピング制御手段を備え
    前記バックステッピング制御手段は、制御対象のモデルを複数のサブシステムに分割し、各サブシステムに前記状態変数で算出される仮想入力項を持たせることを特徴とする内燃機関の空燃比制御装置。
  2. 前記仮想入力項は、前記状態変数の積分値に比例した項を持つことを特徴とする請求項に記載の内燃機関の空燃比制御装置。
  3. 前記仮想入力項は、原点を含む所定領域で傾きが1未満で第1象限と第3象限を通る直線又は曲線で表されると共にそれ以外の領域では傾き1の直線で表される非線形関数を用いて設定されていることを特徴とする請求項に記載の内燃機関の空燃比制御装置。
  4. 前記バックステッピング制御手段は、前記状態変数と、該状態変数と前記仮想入力項の偏差と、該偏差の積分値との線形和によって前記補正量を算出することを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の内燃機関の空燃比制御装置。
  5. 前記バックステッピング制御手段は、前記補正量を算出する際に、制御対象のモデルに基づく最適レギュレータにより前記線形和の各係数を算出することを特徴とする請求項に記載の内燃機関の空燃比制御装置。
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