JP4246799B2 - 酵素の測定方法 - Google Patents

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Description

技術分野
本発明は、プロテアーゼなどの酵素の測定方法に関するものである。より具体的には、本発明は、例えばプロテアーゼなどの酵素の存在を簡便に証明することができ、プロテアーゼなどの酵素が関与する各種の疾患の診断、例えば、癌細胞の浸潤活性や転移活性などの癌の悪性度、歯周炎などの歯周病の進行度、リウマチ性関節炎などにおける破壊性病態などの診断を可能にする方法に関するものである。
従来の技術
腫瘍の良性、悪性の相違を規定する因子の一つとして、間質結合組織への浸潤の有無を挙げることができる。この病態を明らかにするためには、腫瘍細胞自体の増殖動態の変化を観察すると同時に、腫瘍細胞と間質結合組織との相互作用に影響を及ぼす要因を検索することが必要である。特に、腫瘍細胞の浸潤や転移にはプロテアーゼが関与することが明らかにされており、プロテアーゼを制御することによって悪性腫瘍細胞の浸潤や転移を抑制できる可能性がある。このようなプロテアーゼ(細胞外マトリックス分解酵素)のうち、特にマトリックス・メタロプロテアーゼ(MMP)が癌細胞の増殖、浸潤、血管新生に重要な役割をはたすことが明らかにされている(鶴尾隆編「癌転移の分子機構」、第8章、宮崎香著「マトリックス・プロテアーゼと癌の浸潤・転移」、pp.92-107、メジカルビュー社、1993年発行を参照)。
一方、歯周病では歯肉溝上皮の破壊及びコラーゲンを主体とした結合組織の破壊が初期病変として進行するが、この組織の破壊にもマトリックス・メタロプロテアーゼが関与していることが知られている(歯周組織破壊におけるプロテアーゼの関与、及び病態とプロテアーゼとの相関については、青野正男監修「歯周治療の科学」、白川正治著、第VII章「歯周組織の病理」、pp.99-109、医歯薬出版、並びに、長谷川ら、「歯周病患者における歯肉溝滲出液(GCF)中のゲラチナーゼ活性」、演題A-44、日本歯周病学会第37回秋期学術大会などを参照)。
マトリックス・メタロプロテアーゼはコラーゲン、プロテオグリカン、ラミニン、フィブロネクチン、及びゼラチンなどの細胞外基質を分解する酵素であり、MMP-1,2,3,7,9及び10など8種類の存在が明らかにされている。間質型コラーゲナーゼ(MMP-1)は最も古くから知られているマトリックス・メタロプロテアーゼであり、繊維芽細胞や軟骨などに分布しており、間質型のコラーゲンを1/4及び1/3に切断する。歯周病においては、主としてMMP-2(ゼラチナーゼA)及びMMP-9(ゼラチナーゼB)が歯周組織の構成成分であるIV型コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、及びプロテオグリカンなどを破壊する。なお、マトリックス・メタロプロテアーゼの分泌は、細胞増殖因子であるEGFやTGF-βによって強く促進されており、他方、組織内の内在性インヒビターによって分泌や活性発現が制御されている。もっとも、増殖因子が関与した場合にその発現がどのように抑制されるのかは必ずしも明らかではない。
また、腫瘍細胞の浸潤や転移に関与する他のプロテアーゼとしては、セリンプロテアーゼであるプラスミノーゲン・アクティベーター(PA)を挙げることができる。このプラスミノーゲン・アクティベーターはプラスミノーゲンをプラスミンに変換する酵素であり、プラスミノーゲン・アクティベーターの作用により生成したプラスミンがプロメタロプロテアーゼを活性型メタロプロテアーゼに変換する。従って、マトリックス・メタロプロテアーゼとプラスミノーゲン・アクティベーターとの間で形成されるカスケードによって、癌細胞の浸潤や転移が進行ないしは加速されると考えられる。
プロテアーゼは、上記の癌細胞の浸潤及び転移、並びに歯周病の進行のほか、歯槽膿漏による骨組織や歯根膜の破壊、リウマチ性関節炎による骨膜や骨組織の破壊などの破壊性病変に関与している可能性がある(リウマチにおけるプロテアーゼの関与に関しては、日本臨床、50(3),pp.463-467,1992を参照)。従って、細胞や組織中のプロテアーゼを定量することによって、浸潤活性及び転移活性などからみた癌細胞の悪性度や歯周病の病態、及びリウマチなどの破壊性病変の進行程度を正確に診断することが可能である(癌細胞の浸潤度とプロテアーゼ活性との相関については、例えば、Yamagata,et al.,Cancer Lett.,59,51,1991;Azzam,et al.,J.Natl.,Cancer Inst.,85,1758,1993;Brown,et al.,Clin.Exp.Metastasis,11,183,1993;Davies,et al.,Br.J.Cancer,67,1126,1993などを参照)。
従来、プロテアーゼの測定方法としては、基質の分解の程度から酵素活性を測定するザイモグラフィー法や各々のプロテアーゼに特異的な抗体を用いたイムノブロティング法などが利用されている。例えば、癌細胞や歯周病化細胞を粉砕した後、抽出液をゼラチン含有SDS-ポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動に付し、電気泳動後のゲルをアミドブラックで染色して、染色されずに白く透明なバンドを与える試料をプロテアーゼ陽性と判定する方法が知られている。しかしながら、この方法では測定毎にSDS-ポリアクリルアミドゲルを作成する必要があり、検出までに約30時間を要するという問題がある。
また、SDS-PAGEによる電気泳動後にゲルをメンブレンに密着させ、ブロッティング後の酵素をモノクローナル抗体で検出する方法もあるが、電気泳動を利用する点で上記の方法と同様の欠点を有しており、それに加えて、操作に熟練を要することと高価なモノクローナル抗体を用いることも問題である。さらに、これらの方法は個々の細胞のプロテアーゼを測定したものではなく、組織全体のプロテアーゼ総量を検出するものであり、個々の癌細胞の浸潤・転移活性の情報を得ることはできないという問題がある。
最近、血管組織中のプロテアーゼ活性をザイモグラフィーの原理により測定する方法が提案された(The FASEB Journal,Vol.9,July,pp.974-980,1995)。この方法では、蛍光性化合物が結合したカゼイン又はゼラチンをプロテアーゼの基質として用い、この基質を含むアガロースの薄膜をスライドグラス上に形成させた後、その薄膜の表面に固定化されていない組織切片(6-10μm)をのせて37℃で培養し、基質の消化を蛍光顕微鏡下に観察する工程を含んでいる(第975頁、右欄第6-18行のプロトコールを参照)。この方法は、組織中のプロテアーゼを直接測定できる点では優れているものの、プロテアーゼの基質をスライドグラス上に固定化するためにアガロースを必須成分として用いる必要があり、プロテアーゼによる基質の消化にばらつきが生じてしまい、再現性に乏しいという問題があった。
本発明者らはこれらの問題を研究するうち、ゼラチンなどのプロテアーゼ基質と硬膜剤とを含む薄膜の表面に癌組織などの組織切片を密着させるか、あるいは歯周病などの病変組織などから採取した滲出液を該薄膜上に滴下すると、試料中に含まれるプロテアーゼが薄膜を消化し薄膜表面に消化痕が形成されることを見いだした。また、連続した組織切片を用いてそれぞれ組織標本と上記の薄膜標本を作成して比較・比較することにより、組織中の個々の細胞内に発現しているプロテアーゼを測定することができることを見いだし、これらの発明について特許出願した(PCT/JP97/0588)。これらの方法は、アガロースを含む薄膜を用いる方法(The FASEB Journal,Vol.9,July,pp.974-980,1995)に比べて非常に再現性に優れており、試料中のプロテアーゼ活性を正確に測定できるという特徴を有している。
発明の開示
本発明の課題は、プロテアーゼなどの酵素を簡便かつ正確に測定する方法を提供することにある。より具体的には、特に好適にはプロテアーゼなどの酵素を簡便かつ正確に測定することができる方法であって、プロテアーゼなどの酵素が関与する各種の疾患の診断において、例えば、浸潤や転移活性などの癌細胞の悪性度、歯周病などの病態、及びリウマチなどの破壊性病変の進行度を正確かつ簡便に短時間で判定でき、癌の予後や破壊性病変の進行程度などを正確に予測するために有用な酵素の測定方法を提供することにある。
また、本発明の別の課題は、上記の特徴を有する酵素の測定方法であって、被検組織内に局在する癌細胞などに由来するプロテアーゼなどの酵素を正確に測定する方法を提供することにある。
さらに本発明の別の課題は、上記の酵素の測定方法に用いる薄膜を提供することにある。
本発明者らは上記の課題を解決すべくさらに研究を行った結果、金属及び/又は金属化合物、親水性コロイド、並びに硬膜剤を含む薄膜に癌組織などの組織切片を密着させるか、あるいは例えば歯周病等の病変組織から採取した滲出液を薄膜上に滴下すると、組織切片や滲出液に含まれるプロテアーゼなどの酵素と金属及び/又は金属化合物との間の相互作用が生じて薄膜上に色調の変化や着色などの表面変化が生じること、並びに、この表面変化を例えば分光学的な手段によって検出することにより、試料中のプロテアーゼなどの酵素を簡便かつ正確に測定できることを見出した。本発明はこれらの知見を基にして完成されたものである。
すなわち本発明は、酵素の測定方法であって、下記の工程:
(1)金属及び/又は金属化合物、親水性コロイド、並びに硬膜剤を含む薄膜に酵素を含む試料を接触させる工程;及び
(2)酵素と金属及び/又は金属化合物との相互作用により生じた該薄膜上の表面変化を検出する工程
を含む方法を提供するものである。
下記の発明は、上記の発明に包含される本発明の好ましい態様の例である。
▲1▼酵素の測定方法であって、下記の工程:
(1)生体試料の実質的に連続した二切片のうちの一つを金属及び/又は金属化合物、親水性コロイド、並びに硬膜剤を含む薄膜に接触させる工程;
(2)生体試料に含まれる酵素と金属及び/又は金属化合物との相互作用により生じた該薄膜上の表面変化を検出する工程;及び、
(3)他の一つの切片から調製した組織標本と上記薄膜上の表面変化とを対比する工程
を含む方法。
▲2▼酵素の測定方法であって、下記の工程:
(1)生体試料の実質的に連続した二切片のうちの一つを金属及び/又は金属化合物、親水性コロイド、並びに硬膜剤を含む薄膜に接触させる工程;
(2)金属及び/又は金属化合物、親水性コロイド、硬膜剤、及び酵素インヒビターを含む薄膜に対して残りの1又は2以上の切片を接触させる工程;
(3)生体試料に含まれる酵素と金属及び/又は金属化合物との相互作用により生じた該薄膜上の表面変化を検出する工程;及び、
(4)工程(1)で用いた薄膜上の表面変化と工程(2)で用いた薄膜上の表面変化とを対比する工程
を含む方法。
この方法のさらに好ましい態様では、工程(2)において、残りの2以上の各切片をそれぞれ異なる種類の酵素インヒビターを含む薄膜に接触させる工程を含んでいる。
▲3▼酵素の測定方法であって、下記の工程:
(1)生体試料の実質的に連続した二切片のうちの一つを金属及び/又は金属化合物、親水性コロイド、並びに硬膜剤を含む薄膜に接触させる工程;
(2)工程(1)で用いた薄膜に含まれる金属及び/又は金属化合物とは異なる金属及び/又は金属化合物、親水性コロイド、並びに硬膜剤を含む薄膜に対して残りの1又は2以上の切片を接触させる工程;
(3)生体試料に含まれる酵素と金属及び/又は金属化合物との相互作用により生じた該薄膜上の表面変化を検出する工程;及び、
(4)工程(1)で用いた薄膜上の表面変化と工程(2)で用いた薄膜上の表面変化とを対比する工程
を含む方法。
▲4▼酵素の測定方法であって、下記の工程:
(1)生体試料の実質的に連続した二切片のうちの一つを金属及び/又は金属化合物、親水性コロイド、並びに硬膜剤を含む薄膜に接触させる工程;
(2)生体試料に含まれる酵素と金属及び/又は金属化合物との相互作用により生じた該薄膜上の表面変化を検出する工程;
(3)酵素により分解される物質を含む薄膜に対して残りの1又は2以上の切片を接触させる工程;
(4)生体試料に含まれる酵素の作用により生じた工程(3)の薄膜上の消化痕を検出する工程;
(5)工程(2)で検出した薄膜上の表面変化と工程(4)で検出した薄膜上の消化痕とを対比する工程
を含む方法。
この方法のさらに好ましい態様では、酵素により分解される物質がプロテアーゼ基質であり、より具体的にはコラーゲン、ゼラチン、プロテオグリカン、フィブロネクチン、ラミニン、エラスチン、及びカゼインからなる群から選ばれるプロテアーゼ基質であり、特に好ましくはゼラチン、フィブロネクチン、又はカゼインである。
▲5▼酵素の測定方法であって、下記の工程:
(1)少なくとも下記の2層:金属及び/又は金属化合物、親水性コロイド、並びに硬膜剤を含む(a)層と、酵素により分解される物質を含み(a)層に積層された(b)層とを含む薄膜の(b)層の表面に対して生体試料を接触させる工程;
(2)生体試料に含まれる酵素の作用により生じた(b)層の消化痕、及び生体試料に含まれる酵素と金属及び/又は金属化合物との相互作用により生じた(a)層の表面変化を検出する工程
を含む方法。
▲6▼酵素の測定方法であって、下記の工程:
(1)少なくとも下記の2層:金属及び/又は金属化合物、親水性コロイド、並びに硬膜剤を含む(a)層と、酵素インヒビター、金属及び/又は金属化合物、親水性コロイド、並びに硬膜剤を含み(a)層に積層された(b)層とを含む薄膜に対して生体試料を接触させる工程;
(2)生体試料に含まれる酵素と金属及び/又は金属化合物との相互作用により生じた(a)層及び(b)層の表面変化を検出する工程
(3)(a)層の表面変化と(b)層の表面変化とを対比する工程
を含む方法。
▲7▼酵素の測定方法であって、下記の工程:
(1)少なくとも下記の2層:金属及び/又は金属化合物、親水性コロイド、並びに硬膜剤を含む(a)層と、(a)層に含まれる金属及び/又は金属化合物とは異なる金属及び/又は金属化合物、親水性コロイド、並びに硬膜剤を含み(a)層に積層された(b)層とを含む薄膜に対して生体試料を接触させる工程;
(2)生体試料に含まれる酵素と金属及び/又は金属化合物との相互作用により生じた(a)層及び(b)層の表面変化を検出する工程
(3)(a)層の表面変化と(b)層の表面変化とを対比する工程
を含む方法。
これらの各発明の好ましい態様として、生体試料に含まれる酵素がプロテアーゼ、より好ましくはマトリックス・メタロプロテアーゼである上記の各方法;及び、生体試料がヒトを含む哺乳類から分離・採取された試料、より好ましくは、癌組織切片、歯肉溝滲出液、破壊性病変組織切片、又は破壊性病変組織抽出液(例えば、リウマチ性病変組織抽出液又は歯槽膿漏組織抽出液)である上記の各方法が提供される。また、金属及び/又は金属化合物が元素周期表の第3周期、第4周期、第5周期、第6周期、及び第7周期からなる群から選ばれる金属を含む上記の各方法;金属及び/又は金属化合物が元素周期表の第IIIb族、第IVb族、第Vb族、第VIb族、第VIIb族、第VIII族、第Ib族、第IIb族、第IIIa族、第IVa族、第Va族、第VIa族、及び第VIIa族からなる群から選ばれる金属を含む上記の各方法;並びに、表面変化として薄膜上の着色痕を検出する上記の各方法が提供される。
本発明の別の態様によれば、酵素測定用の薄膜であって、金属及び/又は金属化合物、親水性コロイド、並びに硬膜剤を含み、酵素と金属及び/又は金属化合物との相互作用により表面変化を生じることを特徴とする薄膜が提供され、その態様として、上記の▲1▼ないし▲7▼の各方法において定義された酵素測定用の薄膜が提供される。これらの薄膜の好ましい態様によれば、支持体平面上、例えばスライドグラス又はポリエチレンテレフタレートフイルム上に形成された上記の各薄膜;及び、薄膜と支持体との間に下塗り層が設けられた上記の各薄膜が提供される。
本発明のさらに別の態様によれば、上記の各方法において定義された工程に従って酵素、好ましくはプロテアーゼ、さらに好ましくはマトリックス・メタロプロテアーゼが関与する疾患を診断する方法が提供される。この発明の好ましい態様として、該疾患が癌、リウマチ性疾患、歯周病、及び歯槽膿漏からなる群から選ばれる疾患である上記方法が提供される。
発明の実施するための最良の形態
上記各態様の酵素の測定方法は、基本的には、測定の対象となる酵素、例えばプロテアーゼを含む試料を金属及び/又は金属化合物、親水性コロイド、並びに硬膜剤を含む薄膜と接触させる工程(第一工程)と、酵素と金属及び/又は金属化合物との相互作用により薄膜表面に形成される表面変化を検出する工程(第二工程)を含んでいる。本発明の方法では、プロテアーゼなどの酵素を分子レベルで検出するために極めて検出精度が高く、通常の分光学的手段によっても高感度に酵素を測定できるという特徴がある。また、一般的には染色工程を省略できるので簡便に測定を行えるという特徴もある。
本明細書において用いられる「測定」という用語は、定性及び定量を含めて、酵素の存在に関する情報を提供できるものをすべて包含するように最も広義に解釈されるべきである。本発明の方法に従って測定を行うと、試料中にプロテアーゼなどの酵素が含まれている場合には、該酵素と薄膜に含まれる金属及び/又は金属化合物との間に相互作用が生じ、薄膜上に検出可能な表面変化が惹起される。本明細書において用いられる「相互作用」という用語は、例えば、酵素全体若しくはその部分構造、又は酵素に由来する1又は2以上の官能基(例えば、チオール基、チオエーテル基、ジスルフィド基、脂肪族又は芳香族アミノ基、ヒドロキシル基、又はカルボキシル基など、好ましくは、チオール基、チオエーテル基、ジスルフィド基、脂肪族又は芳香族アミノ基など)と、金属及び/又は金属化合物との間で生じる種々の物理化学的及び/又は生化学的な相互作用を包含しており、例えば、錯体や塩の形成、酵素の変性、凝集若しくは沈殿、吸着、酵素反応などを含めて最も広義に解釈する必要がある。また、上記の相互作用には、酵素作用により生じる物質、例えばプロテアーゼの作用により生じる基質分解物と金属及び/又は金属化合物との間の相互作用も含まれる。
薄膜上に惹起される表面変化はいかなる種類のものでもよく、例えば、着色、脱色、色調変化などのほか、表面の性状または形状の変化、電気伝導度の変化、磁力の変化などを挙げることができるが、これらに限定されることはない。このような表面変化は1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。例えば、紫外光、可視光、蛍光の反射又は透過濃度測定、吸光度測定、電気伝導度の測定、磁力の測定、音波の測定、表面粗さの測定、顕微鏡下または肉眼での測定など、当業者に利用可能な種々の測定方法のいずれか、またはこれらの測定方法の2種以上の組み合わせによって検出可能な表面変化であればよい。例えば、濃度測定及び/又は吸光度測定などの手段により検出可能な表面変化であることが好ましい。
また、測定により得られた情報を、例えば画像処理などに付して二次的に編集することも好ましい。画像処理の例としては、コントラスト強調、濃度補正、色調変換、階調補正、階調反転、複数の画像合成、複数の画像差表示などを挙げることができる。画像処理機器の例としては、例えば、FUJIX HC-2500システム(富士写真フイルム株式会社製)などを挙げることができる。
本発明の方法の測定対象となる酵素は特に限定されないが、例えば、プロテアーゼは本発明の方法の好適な測定対象である。プロテアーゼとしては、例えば、マトリックス・メタロプロテアーゼ(MMP)及びマトリックス・セリンプロテアーゼ(MSP)を挙げることができ、これらの酵素については、鶴尾隆編「癌転移の分子機構」、pp.92-107、メジカルビュー社、1993年発行に詳細に説明されている。本発明の方法に特に好適なプロテアーゼとして、例えば、間質型コラーゲナーゼ(MMP-1)、ゼラチナーゼA(MMP-2)、及びゼラチナーゼB(MMP-9)などのマトリックス・メタロプロテアーゼ;及びプラスミノーゲン・アクティベーター(PA)などのマトリックスセリンプロテアーゼを挙げることができるが、本発明の方法の対象はプロテアーゼ、又は上記の特定のプロテアーゼに限定されることはない。
本発明の方法で用いられる金属及び/又は金属化合物は特に限定されず、いかなるものを用いてもよい。金属化合物としては、無機金属化合物又は有機金属化合物のいずれを用いてもよく、例えば、酸化物、塩化物,臭化物、有機化合物を配位子とする錯体などを挙げることができるが、これらに限定されることはない。例えば、金属及び/又は金属化合物が、元素周期表の第3周期、第4周期、第5周期、第6周期、及び第7周期からなる群から選ばれる金属を含むことが好ましく、元素周期表の第IIIb族、第IVb族、第Vb族、第VIb族、第VIIb族、第VIII族、第Ib族、第IIb族、第IIIa族、第IVa族、第Va族、第VIa族、及び第VIIa族からなる群から選ばれる金属を含むことがより好ましい。これらのうち、第4周期、第5周期、又は第6周期の金属であって、第VIII族、第Ib族、または第IIb族のものがさらに好ましく、金、銀、銅、白金、パラジウム、水銀、カドミウムが最も好ましい。その中でも金、銀、銅が好ましく、とりわけ銀が好ましい。さらに銀でもコロイド銀が最も好ましい。金属及び/又は金属化合物を2種以上組み合わせて用いてもよく、合金として用いることも可能である。
より具体的には、亜鉛、酸化亜鉛、塩化亜鉛;アルミニウム、酸化アルミニウム、塩化アルミニウム;アンチモン、酸化アンチモン、塩化アンチモン;イッテルビウム、酸化イッテルビウム、塩化イッテルビウム;イットリウム、酸化イットリウム、塩化イットリリウム;イリジウム、酸化イリジウム、塩化イリジウム;インジウム、酸化インジウム、塩化インジウム;エルビウム、酸化エルビウム、塩化エルビウム;オスミウム、酸化オスミウム;カドミウム、酸化カドミウム、塩化カドミウム;ガドリニウム、酸化ガドリニウム、塩化ガドリニウム;ガリウム、酸化ガリウム、塩化ガリウム;カルシウム、酸化カルシウム、塩化カルシウム;銀、コロイド銀(平均粒径0.01μm、0.03μm、0.05μm)、酸化銀、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、酢酸銀、アルギン酸銀、ベヘン酸銀;金、コロイド金、塩化金;クロム、酸化クロム、塩化クロム;ゲルマニウム、酸化ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム;コバルト、酸化コバルト、塩化コバルト;サマリウム、酸化サマリウム、塩化サマリウム;ジスプロシウム、酸化ジスプロシウム、塩化ジスプロシウム;ジルコニウム、酸化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム;水銀、酸化水銀、塩化水銀;スカンジウム、酸化スカンジウム;錫、酸化錫、塩化錫;ストロンチウム、塩化ストロンチウム;セリウム、酸化セリウム、塩化セリウム;タリウム、酸化タリウム、塩化タリウム;タングステン、酸化タングステン、塩化タングステン;タンタル、酸化タンタル、塩化タンタル;チタン、酸化チタン、塩化チタン;ツリウム、酸化ツリウム;鉄、酸化鉄、塩化鉄;テルビウム、酸化テルビウム、塩化テルビウム;テルル、塩化テルル;銅、酸化銅、塩化銅;トリウム、酸化トリウム;鉛、酸化鉛、塩化鉛;ニオブ、酸化ニオブ;ニッケル、酸化ニッケル、塩化ニッケル;ネオジム、酸化ネオジム、塩化ネオジム;白金、コロイド白金、酸化白金、塩化白金;バナジウム、酸化バナジウム、塩化バナジウム;ハフニウム、酸化ハフニウム、塩化ハフニウム;パラジウム、酸化パラジウム、塩化パラジウム;バリウム、酸化バリウム、塩化バリウム;ビスマス、酸化ビスマス、塩化ビスマス;プラセオジム、酸化プラセオジム;ホルミウム、酸化ホルミウム、塩化ホルミウム;マグネシウム、酸化マグネシウム、塩化マグネシウム;マンガン、酸化マンガン、塩化マンガン;モリブデン、酸化モリブデン、塩化モリブデン;ユウロピウム、酸化ユウロピウム、塩化ユウロピウム;ランタン、酸化ランタン、塩化ランタン;ルテニウム、酸化ルテニウム、塩化ルテニウム;及び、ロジウム、酸化ロジウム、塩化ロジウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上の金属及び/又は金属化合物を挙げることができる。
金属及び/又は金属化合物は薄膜中に存在していればよく、存在状態は特に限定されないが、溶液として添加された状態や親水性物質中に分散した状態であることが好ましい。分散状態の場合には、例えば実質的に球形の微粒子状態で分散されていることが好ましい。微粒子の粒径は特に限定されないが、例えば、平均粒径0.001μm以上、0.1μm以下、より好ましくは平均粒径0.05μm以下、特に好ましくは0.03μm以下である。
本発明の方法で用いられる親水性コロイドとしては、水に溶解し、又は水を吸収して膨潤する性質を有するものであればいかなるものを用いてもよい。例えば、天然高分子として、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン、フィブロネクチン、ラミニン、エラスチンなどのタンパク質及びタンパク質由来の物質;セルロース、デンプン、アガロース、カラギーナン、デキストラン、デキストリン、キチン、キトサン、ペクチン、マンナンなどの多糖類及び多糖類由来の物質;ポバール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルアミンなどの合成高分子、またはこれらに由来するゲルなどを用いることができるが、これらに限定されることはない。
本発明の方法で用いられる硬膜剤は、例えば、薄膜の製造において薄膜の硬化を促進し、及び/又は形成後の薄膜の膨潤を防止する作用を有しているものから選択すればよい。硬膜剤の種類は、上記の作用を有し、かつ酵素と金属及び/又は金属化合物との相互作用に実質的に影響を及ぼさない限り特に限定されず、無機又は有機の硬膜剤のいずれを用いてもよい。例えば、クロム塩(クロム明ばん、酢酸クロムなど);アルデヒド類(ホルムアルデヒド、グリオキサール、グリタールアルデヒドなど);N-メチロール化合物(ジメチロール尿素、メチロールジメチルヒダントインなど);ジオキサン誘導体(2,3-ジヒドロキシジオキサンなど)、カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物類(カルベニウム、2-ナフタレンスルホナート、1,1-ビスピロリジノ-1-クロロ-ピリジニウム、1-モルホリノカルボニル-3-(スルホナトアミノメチル)-など);活性ビニル化合物(1,3-ビスビニルスルホニル-2-プロパノール、1,2-ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)エタン、ビス(ビニルスルホニルメチル)エーテル、ビニルスルホニル基を側鎖に有するビニル系ポリマー、1,3,5-トリアクリロイル-ヘキサヒドロ-s-トリアジン、ビス(ビニルスルホニル)メタンなど);活性ハロゲン化合物(2,4-ジクロル-6-ヒドロキシ-s-トリアジン及びそのナトリウム塩など);ムコハロゲン酸類(ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸など);イソオキサゾール類;ジアルデヒド澱粉;又は、2-クロル-6-ヒドロキシトリアジニル化ゼラチンなどの硬膜剤を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、ビニルスルホン酸型硬膜剤が好ましい。硬膜剤の使用量は特に限定されないが、例えば、親水性コロイド100gに対して0.1〜20mmol、さらに好ましくは0.3〜10mmol程度を配合するのがよい。
また、酵素インヒビター、例えば、プロテアーゼ・インヒビターを用いることにより、インヒビターに関連する酵素の同定や、プロテアーゼなどの酵素の特性の判定が容易になる場合もある。例えば酵素としてプロテアーゼを測定対象とする場合には、プロテアーゼ・インヒビターとして、例えば、ティッシュ・インヒビター・オブ・メタプロテアーゼ1(TIMP1)、ティッシュ・インヒビター・オブ・メタプロテアーゼ2(TIMP2)、ラージ・インヒビター・オブ・メタロプロテアーゼ(LIMP)、チッキン・インヒビター・オブ・メタロプロテアーゼ(ChIMP)、オポスタチン、血小板第IV因子(PF-4)、α2マクログロブリン、EDTA、1,10-フェナントロリン、BB94、ミノサイタリン、マトリスタチン、SC-44463、又はジチオスレイトール(DTT)などを用いることができる。
例えば、生体試料中の実質的に連続した2以上の切片のうちの一つを酵素インヒビターを含有しない薄膜に接触させ、残りの切片を酵素インヒビターを含む薄膜に接触させた後、それぞれの薄膜の表面に形成された表面変化を対比する方法を採用することができる。また、例えば、酵素インヒビターを含有しない第一の層と、酵素インヒビターを含有する第二の層を含む単一の薄膜を製造し、プロテアーゼを含む試料を接触させた後に、それぞれの層に形成された表面変化を対比する方法を採用してもよい。2種以上の酵素インヒビターを適宜組み合わせて1の薄膜に配合して用いてもよく、または2種以上の酵素インヒビターをそれぞれ含有する層を含む薄膜を用いてもよい。
測定の対象となる酵素により分解される物質(酵素基質)を含有する薄膜を製造して、生体試料中の実質的に連続した2以上の切片のうちの一つを酵素基質を含む薄膜に接触させ、残りの切片を金属及び/又は金属化合物、親水性コロイド、並びに硬膜剤を含む本発明の薄膜に接触させてもよい。酵素基質を含む薄膜には酵素の作用による消化痕が生じ、一方、本発明の薄膜には表面変化が惹起されるので、それぞれの結果を対比することによって酵素の存在を確実に証明することできる。このような酵素基質を用いる方法を酵素インヒビターを用いる上記の方法を組み合わせてもよい。また、酵素基質を含む層と、金属及び/又は金属化合物、親水性コロイド、並びに硬膜剤を含む層とを積層した薄膜を用いて測定を行ってもよい。
酵素としてプロテアーゼを測定対象とする場合には、酵素基質としてプロテアーゼにより分解される高分子化合物(プロテアーゼ基質)を用いることができる。プロテアーゼ基質は特に限定されないが、例えば、コラーゲン、ゼラチン、プロテオグリカン、フィブロネクチン、ラミニン、エラスチン、又はカゼインなどを用いることができる。好ましくは、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、エラスチン、又はカゼインを用いることができ、より好ましくはゼラチン、フィブロネクチン、又はカゼインを用いることができる。ゼラチンを用いる場合には、ゼラチンの種類は特に限定されず、例えば、牛骨アルカリ処理ゼラチン、豚皮膚アルカリ処理ゼラチン、牛骨酸処理ゼラチン、牛骨フタル化処理ゼラチン、豚皮膚酸処理ゼラチンなどを用いることができる。なお、プロテアーゼ基質は上記の物質の1種を用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
2種以上の異なるプロテアーゼ基質を組み合わせて用いることにより、生体試料中に含まれるプロテアーゼの種類を正確に特定できる場合がある。例えば、生体試料中の実質的に連続した切片のうちの一つを本発明の薄膜に接触させて表面変化を検出し、他の2以上の切片をそれぞれ異なるプロテアーゼ基質を含む2以上の薄膜に接触させて薄膜上の消化痕を検出し、それぞれの結果を対比することができる。
本発明の方法に用いる試料は特に限定されないが、例えば、ヒトを含む哺乳類動物から分離・採取した生体試料を用いることができる。生体試料としては、例えば、組織又は組織滲出液などを用いることができる。より具体的には、肺癌、胃癌、食道癌、乳癌、脳腫瘍などの固形癌組織から手術や組織検査などにより分離・採取した癌組織、リウマチ性関節炎の滑膜や骨組織、及び歯槽膿漏の歯根膜や骨組織などの破壊性病変組織や滲出液、並びに歯周病の歯肉溝滲出液などを用いることができる。
試料が組織の場合には、例えば、液体窒素で急速凍結した試料から凍結切片作成装置を用いて厚さ1〜10μm、好ましくは5μm程度の切片を調製し、この切片を薄膜に貼付することによって試料と薄膜とを接触させることができる。また、リウマチ性関節炎の患者から採取した滑膜液を試料として用いる場合には、滑膜液約5〜50μl、好ましくは20μl程度を薄膜上に滴下すればよい。歯周病の歯肉溝滲出液を試料として用いる場合には、歯肉溝内に濾紙を挿入して約5〜10μl程度の歯肉溝滲出液を採取し、該濾紙を薄膜に貼付する方法を採用することができる。歯肉溝滲出液の採取後、必要に応じて蒸留水や適宜の緩衝液(例えば、50mM Tris-HCl,pH7.5,10mM CaCl2,0.2M NaClなど)を用いて濾紙から歯肉溝滲出液を抽出し、抽出液を薄膜上に滴下してもよい。
本発明の薄膜は支持体平面状に形成されることが好ましい。支持体の材質や形状は特に限定されないが、薄膜上の表面変化を顕微鏡下で観察するような場合や、吸光度測定や蛍光測定などの分光学的手段により表面変化を検出する場合には、例えば、薄膜は透明又は半透明の支持体上に形成されることが好ましい。このような透明又は半透明の支持体としては、例えば、ガラス、又はポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ナイロン、セルロース、若しくはトリアセテート等からなる透明又は半透明プラスチックフイルムなどを用いることができる。ガラスとしては顕微鏡用のスライドグラスを用いることが好ましく、プラスチックフイルムとしてはポリエチレンテレフタレートフイルムを用いることが好ましい。
また、上記の支持体に加えて、不透明な支持体を用いることも可能である。例えば、紙、合成紙、合成樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンナフタレート等)をラミネートした紙、金属板(例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、亜鉛、鉄、銅などの板)、上記の金属がラミネート又は蒸着された紙やプラスチックフイルムなどを用いることができる。このような態様においては支持体に着色が施されていてもよい。もっとも、支持体は上記に例示したものに限定されることはなく、均一な薄膜を製造することができるものであればいかなるものを用いてもよい。
支持体の厚さは特に限定されないが、ガラスの場合にはスライドグラス程度の厚さのもの(例えば2〜3mm程度)が好ましく、ポリエチレンテレフタレートフイルムの場合には約100〜250μm、より好ましくは約150〜200μm、特に好ましくは175μm程度のものを用いることができる。該支持体上の薄膜は単層又は重層で形成することができるが、薄膜はできる限り均一な表面を与えるように調製すべきである。例えば、乾燥後の膜厚が0.01〜20μm、好ましくは0.1〜10μm、さらに好ましくは0.5〜7μm程度になるように調製することが好ましい。
薄膜の調製には、例えば、水、又はメチレンクロライド、アセトン、メタノール、エタノール、若しくはそれらの混合溶媒などの有機溶媒に金属及び/又は金属化合物、親水性コロイド、及び硬膜剤の所定量を加えて均一に分散させ、得られた分散液を支持体表面に塗布して乾燥すればよい。塗布方法としては、例えば、ディップ塗布法、ローラー塗布法、カーテン塗布法、押し出し塗布法などを採用することができる。もっとも、薄膜の調製方法はこれらに限定されることはなく、例えば、写真用フイルムの技術分野などにおいて汎用されている薄膜形成方法などを適宜採用することが可能である。
金属及び/又は金属化合物としてコロイド銀を用いる場合について説明すると、例えば、ハロゲン化銀カラー写真感光材料の分野において、コロイド銀は通常イエローフィルター用としての黄色コロイド銀とアンチハレーション用の黒色コロイド銀が一般的に用いられているので、本発明にはこれらのコロイド銀を用いることができる。また、これらに加えて、橙褐色や褐灰色のコロイド銀であってもよい。これらのうち、最大吸収波長が400nmから500nmの黄色のコロイド銀を用いることが特に好ましい。
その調製方法としては、従来から知られている方法、例えば、米国特許第2,688,601号明細書に開示されたゼラチン溶液中で可溶性銀塩をハイドロキノンによって還元する方法、ドイツ特許第1,096,193号明細書に記載されている難溶性銀塩をヒドラジンによって還元する方法、米国特許第2,921,914号明細書に記載されているようにタンニン酸により銀に還元する方法、特開平5-134358号公報に記載されているように無電解メッキによって銀粒子を形成する方法などを用いることができる。また、Wiley & Sons,New York,1933年発行、Weiser著のColloidal Elementsに記載されたCarey Leのデキストリン還元法による黄色コロイド銀の調製方法を用いてもよい。
薄膜を支持体上に形成するにあたり、薄膜と支持体との接着を改善するために、薄膜と支持体表面との間に下塗り層を設けてもよい。例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ブタジエン、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸等から選ばれるモノマーの1種又は2種以上を重合させて得られる重合体又は共重合体、ポリエチレンイミン、エポキシ樹脂、グラフト化ゼラチン、又はニトロセルロースなどの重合体を下塗り層として形成することができる。また、ポリエステル系支持体を用いる場合には、下塗り層に替えて、支持体表面をコロナ放電処理、紫外線処理、又はグロー放電処理することによっても、支持体と薄膜との接着力を改善できる場合がある。
本明細書において用いられる「支持体表面上に形成された薄膜」という用語またはその同義語については、このような1又は2以上の下塗り層及び/又は支持体表面の処理を排除するものと解釈してはならない。もっとも、薄膜と支持体との接着を改善するための手段は上記のものに限定されることはなく、例えば、写真用フイルムの技術分野などにおいて汎用されている手段を適宜採用することができる。また、上記のように薄膜が複数の層を積層してなる場合には、積層される2つの層の間にさらに中間層を設けてもよく、本明細書において用いられる「積層」という用語は、2つの層が直接接触している場合に限定して解釈してはならない。このような中間層を適宜配置する手段は、例えば、写真用フイルムの技術分野などにおいて汎用されている。
薄膜を製造する際に、上記の成分に加えて、染料、顔料、防腐剤、安定化剤などの成分を適宜配合してもよい。このような成分は、酵素と金属及び/又は金属化合物との相互作用に実質的に影響を与えないものであれば特に限定されず、適宜のものを選択して用いることが可能である。染料としては、例えば、特開平6-102624号公報に記載された染料(第9頁I-1より第47頁63までの化学構造式により具体的に示された染料)を用いることができ、染料の添加方法は、例えば、特開平5-313307号公報に記載された方法(第11頁段落番号[0037]から第12頁段落番号[0044]までに具体的に説明された方法)を採用することができる。
本発明の方法の実施の形態は特に限定されないが、例えば、組織切片を薄膜に貼付するか、あるいは液体試料を薄膜上に滴下することによって薄膜とプロテアーゼなどの酵素を含む試料とを接触させた後、好ましくは37℃の湿潤箱内で、組織切片については例えば1〜24時間、好ましくは2〜12時間、さらに好ましくは3〜6時間程度、液状試料については0.5〜12時間、好ましくは1〜6時間、さらに好ましくは1〜3時間程度インキュベートすればよい。
試料中にプロテアーゼなどの酵素が含まれる場合には、薄膜内の金属及び/又は金属化合物と酵素との間で相互作用が生じ、着色、脱色、色調変化、表面の性状または形状の変化、電気伝導度の変化、磁力の変化などの表面変化が惹起される。また、親水性コロイドとして酵素基質となる高分子化合物を用いている場合、例えば、プロテアーゼの測定において親水性コロイドとしてゼラチンなどのプロテアーゼ基質を用いている場合には、酵素作用による消化痕が同時に検出される場合もある。必要に応じて薄膜を染色した後、肉眼や顕微鏡下で表面変化を観察するか、吸光度測定、蛍光測定などの分光学的測定、音波測定、磁力測定など適宜の手段により表面変化を検出することができる。また、分光光度計による光分解を利用して評価を行ってもよい。
本発明の方法の別の態様に従えば、癌組織などから連続凍結切片を作成し、実質的に連続した二切片のうちの一方の切片を、例えば、ヘマトキシリン・エオシン染色切片などの通常の組織標本として調製し、他の切片を本発明の測定方法に従って処理し、両者の観察結果を比較・対比することによって組織中の個々の細胞に由来する酵素、例えばプロテアーゼの存在を正確に把握することが可能である。本発明の方法をプロテアーゼの測定方法に用いた場合、組織中に存在する個々の癌細胞の悪性度(浸潤活性及び転移活性など)を正確に判定することが可能であり、癌疾患の予後についての的確な判定が可能になる。また、リウマチ性関節炎の関節液や歯肉溝滲出液などの試料中のプロテアーゼを定量することにより、これらの疾患の病態や進行程度を正確に判定することができるが、試料中のプロテアーゼ定量のためには、予め作成した標準溶液を用いて検量線を作成することが好ましい。
実施例
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されることはない。
例1:プロテアーゼ測定用薄膜の製造
(a)単層薄膜:試料101の製造
豚皮酸処理ゼラチン15gを純水122gに溶解し、塩化コバルト(5%)を1.2ml添加した後、硬膜剤として1,2-ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)エタン(4%)を0.6ml添加した。この溶液をスライドグラス上に乾燥膜厚が約7μmになるように均一にワイヤーバーコーターを使って塗布し、乾燥して薄膜とした。薄膜は使用時まで室温で保存した。
(b)単層薄膜:試料102〜160の製造
金属及び/又は金属化合物、親水性コロイド、硬膜剤、添加剤、支持体を表1及び表2のように変更および追加して、試料101と同様にして試料102〜160を作成した。黄色のコロイド銀は、pHを11.0に調整したデキストリンを18g含む水溶液700mlに硝酸銀17gを含む水溶液を添加し、ゼラチンを添加して30℃で公知のフローキュレーション法により水洗し、さらにゼラチンを加えて60℃に加熱することにより製造した。なお、塗布の際には必要に応じて塗布助剤を使用した。
Figure 0004246799
Figure 0004246799
(c)単層薄膜:試料161〜164の製造
塗布の際にワイヤーバーコーターの代わりにスライドコーターを使用した他は試料157〜160と同様にして試料161〜164を作成した。なお、乾燥条件は、必要に応じて10℃にいったん冷却した後、常温常湿で乾燥する方法を採用した。
例2:薄膜を用いたプロテアーゼ活性測定
(a)溶液試料の測定(測定方法A)
プロテアーゼ液体試料として、マトリックス・メタロプロテアーゼ(MMP)-1、MMP-2及びMMP-9(ヤガイ社製)をそれぞれ2pg/mlから200ng/mlの濃度で含む溶液を用いた。また、生体試料としては、歯周病患者から採取した歯肉、歯肉溝滲出液(GCF:Gingival Crevicular Fluid)、及び歯周病原菌(P.gingivalis #381株;A.actinomycetemcomitans Y4株;及びP.intermedia ATCC 25611株)を培養した上清を用いた。例1で得たそれぞれの薄膜上に液体試料約10μlを滴下した。薄膜を湿潤箱内に入れて37℃で4〜16時間インキュベートした後、それぞれの試料に対して▲1▼目視による判定、▲2▼ミクロデンシトメトリーによる微小部分各々の最大吸収波長に応じた濃度測定による判定を行い、プロテアーゼの活性を評価した。結果を表3に示す。
Figure 0004246799
いずれのサンプルについても視認性のある着色部分が現れた。この部分の光学濃度は周辺部に比べて表3に示すように増加していた。特に、コロイド銀含有薄膜は、液体試料及び組織切片に対して強い赤色の着色を与えた。MMP-1、MMP-2及びMMP-9について、4時間後に200ng/ml、8時間後に20ng/ml、16時間後に20-200pg/mlの濃度範囲でプロテアーゼ活性が認められた。歯肉溝滲出液の多くはプロテアーゼ活性を認めるまでに約8〜16時間を要し、プロテアーゼの量が2pg/mlから20ng/mlの範囲であることが示唆された。また、スライドコーターによって作成した試料161〜164はバーコーターによって作成した試料と同様のMMP活性判定性能を示した。
(b)検量線を用いた溶液資料の測定(測定方法B)
プロテアーゼ液体試料として、マトリックス・メタロプロテアーゼ(MMP)-1をそれぞれ2pg/mlから200ng/mlの濃度で含む溶液を用いて、試料103に対して上記方法Aと同様にして測定を行って検量線を作成した。生体試料としては、上記の測定方法Aで用いたものと同じ試料(歯周病患者から採取した歯肉、歯肉溝滲出液、及び歯周病原菌を培養した上清)を用いた。結果を表4に示す。検量線より、生体試料に含まれるMMP-1の量は40pg/mlであることが推察された。
Figure 0004246799
(c)生体の凍結切片試料の測定(測定方法C)
生体試料として、歯周病患者から採取した歯肉、歯肉溝滲出液、及び歯周病の組織試料を約5μmの凍結切片として試料101〜160の薄膜表面に貼付した。薄膜を湿潤箱内に入れて37℃で4〜16時間インキュベートし、その後、透明な試料はアミドブラック溶液で染色した。活性の評価方法としては、それぞれの試料に対してはっきりと活性が認められる箇所について、▲1▼目視による判定、▲2▼ミクロデンシトメトリーによる微小部分の濃度測定による判定を行った。結果を表5に示す。生体試料の凍結切片を直接設置する方法においても、各薄膜にはプロテアーゼによる着色部位が認められ、この部分の光学濃度と膜厚は周辺部部に比べて表5に示すように増加していた。
Figure 0004246799
(d)癌組織のプロテアーゼ活性測定
被検組織試料として舌扁平上皮癌、肺癌、及び食道癌の手術標本を厚さ約0.5cm×幅2cmの大きさに切り出し、液体窒素で急速凍結して-80℃で保存した。この標本から凍結切片作成装置を用いて厚さ5μmの連続切片を作成し、一枚をスライドグラスに張り付けて乾燥させた後、10%ホルマリンで5分間固定し、その後、常法に従ってヘマトキシリン・エオシン染色を行った。他の連続切片を例2及び例3で製造した各ゼラチン薄膜上に貼付し、湿潤箱に入れて37℃で3〜6時間インキュベートした。
インキュベート終了後に薄膜はプロテアーゼによる着色痕を与えており、一方、他の部分は元の色もままであった。いずれの癌組織にも癌胞巣を形成する個々の癌細胞にゼラチン消化痕が認められたが、特に癌胞巣辺縁に位置する細胞にプロテアーゼによる強い着色痕が認められた。正常扁平細胞ではプロテアーゼによる着色痕が弱いながらも認められたが、この上皮が異型増殖するに従ってプロテアーゼによる着色が強く認められた。なお、ヘマトキシリン、エオシン染色で癌細胞と診断される部分については本発明の薄膜でまったく同じ位置にプロテアーゼの着色痕が認められ、しかも、新しく活性が出始めた部位や、すでに角化した部位もはっきり認識することができた。
(e)口腔上顎歯肉癌のプロテアーゼ活性測定
標本中の癌細胞は胞巣構造を形成する低分化型扁平上皮癌で、骨組織を破壊して強い浸潤を示していた。癌胞巣中の癌細胞に対応する位置にプロテアーゼによる着色痕が認められたが、特に癌胞巣の辺縁に位置する細胞に対応する部位にプロテアーゼによる強い着色痕が認められた。標本中の巣状の炎症性細胞浸潤部位に対応する部分には、強い顆粒状のプロテアーゼによる着色痕が生じていた。癌胞巣を拡大して観察すると、癌胞巣辺縁に位置する増殖域の細胞にプロテアーゼによる強い着色痕が認められ、癌胞巣に隣接する間質の繊維芽細胞にも顆粒状にプロテアーゼによる着色痕が認められた。
(f)舌癌のプロテアーゼ活性測定
標本中の癌細胞は未分化型扁平上皮癌で大小の癌胞巣が存在していた。癌胞巣の辺縁部の癌細胞に対応する部位にいずれにもプロテアーゼによる強い着色痕が認めら、癌の増殖域の細胞に相当する部位ではプロテアーゼによる着色痕が顕著であった。巣状の炎症性細胞浸潤巣に対応する部分にもプロテアーゼによる顆粒状の着色痕が認められた。
(g)口腔粘膜の高度上皮異形成症のプロテアーゼ活性測定
ヘマトキシリン・エオシン染色標本では、上皮に高度上皮異形成症が認められ、棘細胞層の肥厚と基底細胞の重層化が生じていた。特に基底細胞には多形成や異型性の細胞増殖が認められた。薄膜上では、肥厚した棘細胞層及び顆粒細胞層に対応する部分にプロテアーゼによる強い着色痕を認めたが、基底細胞層では点状にプロテアーゼによる消化痕を認めたのみであった。この結果は、上皮細胞のターンオーバーが盛んに行われており、一方、基底細胞では上皮化結合織への浸潤が生じていることを示している。
棘細胞の肥厚と重層化した基底細胞を拡大して観察すると、いずれの細胞層に対応する部分にもプロテアーゼによる着色痕が認められたが、特に、棘細胞と重層化基底細胞に対応する部分ではプロテアーゼによる顕著な着色が認められた。一方、単層又は2層の基底細胞ではゼラチンの消化が重層化基底細胞より弱かった。また、重層化した基底細胞は紡錘形となり、細胞の多形成や異型性が認められたが、異型性を示す増殖傾向の細胞に対応する部分は薄膜上にプロテアーゼによる強い着色痕が形成されていた。
(h)リウマチ患者の滑膜液のプロテアーゼ活性測定
リウマチ患者の滑膜液約20μlを薄膜上に滴下し、37℃の湿潤箱内で1〜3時間インキュベートしたところ、薄膜上に形成された円形の塗布跡の円周にプロテアーゼによる強い着色痕が認められた。特に、コロイド銀含有薄膜を用いた場合にはプロテアーゼによる顕著な着色痕が観察できた。
(g)歯周病におけるプロテアーゼ活性測定
歯面の唾液及びプラークを可及的に綿球で除去して簡易防湿した後、ペリオペーパーを歯肉溝に挿入して90秒間静置し、歯肉溝滲出液(約5〜10μl程度)をペリオペーパーに吸い取らせた。このペリオペーパーを150μlの緩衝液(50mM Tris-HCl,pH7.5,10mM CaCl2,0.2M NaCl)で抽出して試料溶液とし、測定方法Aと同様の方法に従ってプロテアーゼの測定を行った。この結果、歯肉溝滲出液の滴下により薄膜上に形成された円形の塗布跡の円周に沿ってプロテアーゼによる強い着色痕が認められた。
例3:プロテアーゼ測定用薄膜の製造
(a)多層薄膜:試料301の製造
豚皮酸処理ゼラチン15gを純水122gに溶解し塩化コバルト(5%)を1.2ml添加した後、硬膜剤として1,2-ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)エタン(4%水溶液)0.6mlを添加した。この溶液をスライドグラス上に乾燥膜厚が約7μmになるように均一ワイヤーバーコーターを使って塗布し、乾燥して薄膜とした。豚皮酸処理ゼラチン15gを純水123gに溶解し、硬膜剤として1,2-ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)エタン(4%水溶液)0.6mlとポリメチルメタクリレート粒子(平均粒径2μm)を添加した(添加量を表6に示す)。この混合物を上記の乾燥薄膜上に乾燥膜厚が約7μmになるように均一ワイヤーバーコーターを使って塗布し、乾燥して多層の薄膜を製造した。薄膜は使用時まで室温で保存した。
(b)多層薄膜:試料302〜330の製造
上記(a)と同様にして、金属及び/又は金属化合物、親水性コロイド、硬膜剤、添加剤、支持体を表6に示すように変更及び追加することにより、2層又は3層の試料302〜330を製造した。なお、塗布の際には必要に応じて塗布助剤を使用した。
Figure 0004246799
Figure 0004246799
Figure 0004246799
表中の緑色色素としては下記の色素を用いた。
Figure 0004246799
(c)多層薄膜:試料331〜340の製造
塗布の際にワイヤーバーコーターの代わりにスライドコーターを使用した他は試料321〜330と同様にして試料331〜340を作成した。なお、乾燥条件は、必要に応じて10℃にいったん冷却した後、常温常湿で乾燥する方法を採用した。
例4:薄膜を用いたプロテアーゼ活性測定
例2の測定方法Cと同様にしてプロテアーゼの活性測定を行った。結果を表7に示す。これらの結果から、多層構造の薄膜においてもプロテアーゼの活性の状態が非常に明確に判定できることが明らかになった。また、プロテアーゼインヒビターを含有する層と含有していない層の結果を比較することにより、MMPの種類を判定できることが示された。さらに、異なる金属及び/又は金属化合物を含む層の結果を対比することによって、活性なMMPの種類を判定できることが示された。なお、スライドコーターによって作成した試料331〜340もバーコーターで製造した試料と同様のMMP活性判定性能を有していた。
Figure 0004246799
例5:プロテアーゼ測定用薄膜の製造とプロテアーゼ活性測定
牛骨アルカリ処理ゼラチン15gを純水123gに溶解し、硬膜剤として1,2-ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)エタン(4%)0.6mlを添加した。この溶液をバック層にスライドコーターを使って塗布し、乾燥して薄膜とした他は試料331〜340と同様にして試料501〜510を作成してプロテアーゼ活性測定を行った。また、試料501〜510のバック層の上にポリマーラテックス層を塗布して乾燥した試料511〜52を製造してプロテアーゼ活性測定を行った。これらの試料は試料331〜340と同様なプロテアーゼ活性測定結果を示し、カールなどが起きず薄膜の取扱い性において非常に良好であった。
例6:ラジオグラフィ用乳剤を用いたプロテアーゼの測定および測定結果(比較例)
生体試料として、歯周病患者から採取した歯肉、歯肉溝滲出液、及び歯周病の組織試料を約5μmの凍結切片としてスライドグラス上に設置した。その上に水で希釈したラジオグラフィ用乳剤(コニカ株式会社製)を塗布し、乾燥して薄膜を形成した。薄膜を湿潤箱内に入れて37℃で16時間〜14日間インキュベートし、その後、アミドブラックで染色するか、または黒白現像処理をした。その結果、プロテアーゼの活性はほとんど検出できなかった。14日間インキュベートした後に黒白現像処理した試料においてわずかに活性らしいものを示したが、活性部の表示が非常に曖昧であり、本発明の薄膜に比べてプロテアーゼの検出能は著しく劣っていた。
例7:短時間測定用のプロテアーゼ測定用薄膜の製造とプロテアーゼ活性測定
(a)短時間測定用薄膜:試料701〜710の製造
親水性コロイドの膜厚を以下の表8のように変更したほかは試料157と同様にして試料701〜710を製造し、プロテアーゼ活性測定を行った。結果を表8に示す。
Figure 0004246799
表8から明らかなように、親水性コロイドの膜厚が薄くなるほどインキュベーションの時間が短時間でも発色するようになり、活性測定の時間を短縮することができた。
産業上の利用可能性
本発明の方法は、組織中に局在する特定部位や組織中の個々の細胞に由来するプロテアーゼなどの酵素を正確かつ簡便に測定することができ、しかも短時間に判定できるという特徴がある。例えば、本発明の方法をプロテアーゼの測定に用いると、浸潤や転移活性などの癌細胞の悪性度、歯周炎などの歯周病の進行度、リウマチや歯槽膿漏などの破壊性病態などを正確に把握できるので、疾患の診断が容易になる。また、本発明の方法に従えば、極めて微量の試料からプロテアーゼなどの酵素活性を測定することが可能であり、判定後の薄膜を固定標本として永久保存することもできる。

Claims (9)

  1. マトリックス・メタロプロテアーゼの測定方法であって、下記の工程:
    (1)金属及び/又は金属化合物、親水性コロイド、並びに硬膜剤を含む薄膜にマトリックス・メタロプロテアーゼを含む試料を接触させる工程;及び
    (2)マトリックス・メタロプロテアーゼと金属及び/又は金属化合物との相互作用により生じた該薄膜上の着色又は色調変化を検出する工程を含む方法。
  2. マトリックス・メタロプロテアーゼを含む試料がヒトを含む哺乳類から分離・採取された生体試料である請求項1に記載の方法。
  3. 生体試料が癌組織切片、歯肉溝滲出液、破壊性病変組織切片、又は破壊性病変組織抽出液である請求項2に記載の方法。
  4. 金属及び/又は金属化合物が元素周期表の第3周期、第4周期、第5周期、第6周期、及び第7周期からなる群から選ばれる金属を含む請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 金属及び/又は金属化合物が元素周期表の第IIIb族、第IVb族、第Vb族、第VIb族、第VIIb族、第VIII族、第Ib族、第IIb族、第IIIa族、第IVa族、第Va族、第VIa族、及び第VIIa族からなる群から選ばれる金属を含む請求項4に記載の方法。
  6. 金属及び/又は金属化合物がコロイド銀である請求項4に記載の方法。
  7. 着色又は色調変化として、薄膜上の着色痕を検出する請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 薄膜にマトリックス・メタロプロテアーゼを含む試料を接触させてから1〜3時間インキュベートする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法。
  9. マトリックス・メタロプロテアーゼの測定方法であって、下記の工程:
    (1)生体試料の実質的に連続した二切片のうちの一つを金属及び/又は金属化合物、親水性コロイド、並びに硬膜剤を含む薄膜に接触させる工程;
    (2)生体試料に含まれるマトリックス・メタロプロテアーゼと金属及び/又は金属化合物との相互作用により生じた該薄膜上の着色又は色調変化を検出する工程;
    (3)マトリックス・メタロプロテアーゼにより分解される物質を含む薄膜に対して残りの1又は2以上の切片を接触させる工程;
    (4)生体試料に含まれるマトリックス・メタロプロテアーゼの作用により生じた工程(3)の薄膜上の消化痕を検出する工程;
    (5)工程(2)で検出した薄膜上の着色又は色調変化と工程(4)で検出した薄膜上の消化痕とを対比する工程を含む方法。
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