JPH11103890A - 病理検査方法 - Google Patents

病理検査方法

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JPH11103890A
JPH11103890A JP26986097A JP26986097A JPH11103890A JP H11103890 A JPH11103890 A JP H11103890A JP 26986097 A JP26986097 A JP 26986097A JP 26986097 A JP26986097 A JP 26986097A JP H11103890 A JPH11103890 A JP H11103890A
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thin film
protease
metal colloid
sample
enzyme
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JP26986097A
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English (en)
Inventor
Yutaka Tamura
裕 田村
Junji Nishigaki
純爾 西垣
Tsutomu Hamaoka
勤 浜岡
Tetsuhiko Tachikawa
哲彦 立川
Ikuo Hasegawa
郁夫 長谷川
Koji Hasegawa
紘司 長谷川
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Fujifilm Holdings Corp
Original Assignee
Fuji Photo Film Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 例えばプロテアーゼなどの酵素測定を目
的とする病理検査方法であって、(1) 平均粒径0.001 μ
m 〜0.5 μm 程度の金属コロイドを含みかつ硬膜剤を含
まないゼラチンなどの親水性高分子薄膜に対して癌組織
切片や歯肉溝滲出液などの生体試料を接触させる工程;
及び(2) 試料と金属コロイドとの相互作用により生じた
該薄膜上の表面変化を例えば色調の変化として検出する
工程を含む方法。 【効果】 組織中に局在する特定部位や組織中の個々の
細胞に由来するプロテアーゼなどの酵素を正確かつ簡便
に測定でき、高精度な病理検査結果を迅速に得ることが
できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、酵素などの測定に
基づいて病理検査を行なう方法に関するものである。よ
り具体的には、本発明は、例えばプロテアーゼなどの酵
素の存在を簡便に証明することができ、プロテアーゼな
どの酵素が関与する各種の疾患の診断、例えば、癌細胞
の浸潤活性や転移活性などの癌の悪性度、歯周炎などの
歯周病の進行度、リウマチ性関節炎などにおける破壊性
病態などの診断を可能にする方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】腫瘍の良性、悪性の相違を規定する因子
の一つとして、間質結合組織への浸潤の有無を挙げるこ
とができる。この病態を明らかにするためには、腫瘍細
胞自体の増殖動態の変化を観察すると同時に、腫瘍細胞
と間質結合組織との相互作用に影響を及ぼす要因を検索
することが必要である。特に、腫瘍細胞の浸潤や転移に
はプロテアーゼが関与することが明らかにされており、
プロテアーゼを制御することによって悪性腫瘍細胞の浸
潤や転移を抑制できる可能性がある。このようなプロテ
アーゼ(細胞外マトリックス分解酵素)のうち、特にマ
トリックス・メタロプロテアーゼ(MMP) が癌細胞の増
殖、浸潤、血管新生に重要な役割をはたすことが明らか
にされている(鶴尾隆編「癌転移の分子機構」、第8
章、宮崎香著「マトリックス・プロテアーゼと癌の浸潤
・転移」、pp.92-107 、メジカルビュー社、1993年発行
を参照)。
【0003】一方、歯周病では歯肉溝上皮の破壊及びコ
ラーゲンを主体とした結合組織の破壊が初期病変として
進行するが、この組織の破壊にもマトリックス・メタロ
プロテアーゼが関与していることが知られている(歯周
組織破壊におけるプロテアーゼの関与、及び病態とプロ
テアーゼとの相関については、青野正男監修「歯周治療
の科学」、白川正治著、第VII 章「歯周組織の病理」、
pp.99 〜109 、医歯薬出版、並びに、長谷川ら、「歯周
病患者における歯肉溝滲出液(GCF) 中のゲラチナーゼ活
性」、演題A-44、日本歯周病学会第37回秋期学術大会な
どを参照)。
【0004】マトリックス・メタロプロテアーゼはコラ
ーゲン、プロテオグリカン、ラミニン、フィブロネクチ
ン、及びゼラチンなどの細胞外基質を分解する酵素であ
り、MMP-1, 2, 3, 7, 9 及び10など8種類の存在が明ら
かにされている。間質型コラーゲナーゼ(MMP-1) は最も
古くから知られているマトリックス・メタロプロテアー
ゼであり、繊維芽細胞や軟骨などに分布しており、間質
型のコラーゲンを1/4及び1/3 に切断する。歯周病にお
いては、主として MMP-2(ゼラチナーゼ A)及び MMP-9
(ゼラチナーゼ B) が歯周組織の構成成分であるIV型コ
ラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、及びプロテオ
グリカンなどを破壊する。なお、マトリックス・メタロ
プロテアーゼの分泌は、細胞増殖因子であるEGF やTGF-
βによって強く促進されており、他方、組織内の内在性
インヒビターによって分泌や活性発現が制御されてい
る。もっとも、増殖因子が関与した場合にその発現がど
のように抑制されるのかは必ずしも明らかではない。
【0005】また、腫瘍細胞の浸潤や転移に関与する他
のプロテアーゼとしては、セリンプロテアーゼであるプ
ラスミノーゲン・アクティベーター(PA)を挙げることが
できる。このプラスミノーゲン・アクティベーターはプ
ラスミノーゲンをプラスミンに変換する酵素であり、プ
ラスミノーゲン・アクティベーターの作用により生成し
たプラスミンがプロメタロプロテアーゼを活性型メタロ
プロテアーゼに変換する。従って、マトリックス・メタ
ロプロテアーゼとプラスミノーゲン・アクティベーター
との間で形成されるカスケードによって、癌細胞の浸潤
や転移が進行ないしは加速されると考えられる。
【0006】プロテアーゼは、上記の癌細胞の浸潤及び
転移、並びに歯周病の進行のほか、歯槽膿漏による骨組
織や歯根膜の破壊、リウマチ性関節炎による骨膜や骨組
織の破壊などの破壊性病変に関与している可能性がある
(リウマチにおけるプロテアーゼの関与に関しては、日
本臨床、50(3), pp.463-467, 1992 を参照)。従って、
細胞や組織中のプロテアーゼを定量することによって、
浸潤活性及び転移活性などからみた癌細胞の悪性度や歯
周病の病態、及びリウマチなどの破壊性病変の進行程度
を正確に診断することが可能である(癌細胞の浸潤度と
プロテアーゼ活性との相関については、例えば、Yamaga
ta, et al., Cancer Lett., 59, 51, 1991; Azzam, et
al., J. Natl., Cancer Inst., 85, 1758, 1993; Brow
n, et al., Clin. Exp. Metastasis, 11, 183, 1993; D
avies, et al., Br. J. Cancer, 67, 1126, 1993 など
を参照)。
【0007】従来、プロテアーゼの測定方法としては、
基質の分解の程度から酵素活性を測定するザイモグラフ
ィー法や各々のプロテアーゼに特異的な抗体を用いたイ
ムノブロティング法などが利用されている。例えば、癌
細胞や歯周病化細胞を粉砕した後、抽出液をゼラチン含
有SDS-ポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動に付
し、電気泳動後のゲルをアミドブラックで染色して、染
色されずに白く透明なバンドを与える試料をプロテアー
ゼ陽性と判定する方法が知られている。しかしながら、
この方法では測定毎にSDS-ポリアクリルアミドゲルを作
成する必要があり、検出までに約30時間を要するという
問題がある。
【0008】また、SDS-PAGEによる電気泳動後にゲルを
メンブレンに密着させ、ブロッティング後の酵素をモノ
クローナル抗体で検出する方法もあるが、電気泳動を利
用する点で上記の方法と同様の欠点を有しており、それ
に加えて、操作に熟練を要することと高価なモノクロー
ナル抗体を用いることも問題である。さらに、これらの
方法は個々の細胞のプロテアーゼを測定したものではな
く、組織全体のプロテアーゼ総量を検出するものであ
り、個々の癌細胞の浸潤・転移活性の情報を得ることは
できないという問題がある。
【0009】最近、血管組織中のプロテアーゼ活性をザ
イモグラフィーの原理により測定する方法が提案された
(The FASEB Journal, Vol.9, July, pp.974-980, 199
5) 。この方法では、蛍光性化合物が結合したカゼイン
又はゼラチンをプロテアーゼの基質として用い、この基
質を含むアガロースの薄膜をスライドグラス上に形成さ
せた後、その薄膜の表面に固定化されていない組織切片
(6-10μm)をのせて37℃で培養し、基質の消化を蛍光顕
微鏡下に観察する工程を含んでいる(第975 頁、右欄第
6〜18行のプロトコールを参照)。この方法は、組織中
のプロテアーゼを直接測定できる点では優れているもの
の、プロテアーゼの基質をスライドグラス上に固定化す
るためにアガロースを必須成分として用いる必要があ
り、プロテアーゼによる基質の消化にばらつきが生じて
しまい、再現性に乏しいという問題があった。
【0010】本発明者らはこれらの問題を研究するう
ち、ゼラチンなどのプロテアーゼ基質と硬膜剤とを含む
薄膜の表面に癌組織などの組織切片を密着させるか、あ
るいは歯周病などの病変組織などから採取した滲出液を
該薄膜上に滴下すると、試料中に含まれるプロテアーゼ
が薄膜を消化し薄膜表面に消化痕が形成されることを見
いだした。また、連続した組織切片を用いてそれぞれ組
織標本と上記の薄膜標本を作成して比較・比較すること
により、組織中の個々の細胞内に発現しているプロテア
ーゼを測定することができることを見いだし、これらの
発明について特許出願した(PCT/JP97/0588, 国際公開 W
O97/32035)。これらの方法は、アガロースを含む薄膜を
用いる方法 (The FASEB Journal, Vol.9, July, pp.974
-980, 1995) に比べて非常に再現性に優れており、試料
中のプロテアーゼ活性を正確に測定できるという特徴を
有している。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、プロ
テアーゼなどの酵素に代表される生体物質を簡便かつ正
確に測定することができ、正確な病理検査結果を得るこ
とができる方法を提供することにある。より具体的に
は、例えばプロテアーゼなどの酵素の測定に基づいて、
該酵素が関与する各種の疾患の診断に有用な病理検査結
果を簡便かつ正確に入手することができる方法を提供す
ることが本発明の課題である。本発明の具体的課題は、
例えば、浸潤や転移活性などの癌細胞の悪性度、歯周病
などの病態、及びリウマチなどの破壊性病変の進行度を
正確かつ簡便に短時間で判定でき、癌の予後や破壊性病
変の進行程度などを正確に予測することができる病理検
査方法を提供することにある。さらに本発明の別の課題
は、上記の病理検査方法に用いる薄膜を提供することに
ある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記の課題
を解決すべくさらに研究を行った結果、金属コロイドを
含みかつ硬膜剤を含まない親水性高分子薄膜に対して癌
組織などの組織切片を密着させるか、あるいは例えば歯
周病等の病変組織から採取した滲出液を薄膜上に滴下す
ると、組織切片や滲出液に含まれるプロテアーゼなどの
酵素に代表される生体物質と金属コロイドとの間で相互
作用が生じ、その結果として薄膜上に色調の変化や着色
などの表面変化が生じること、並びに、この表面変化を
例えば分光学的な手段によって検出することにより、試
料中の酵素などの生体物質を簡便かつ正確に測定でき、
正確な病理検査結果を入手できることを見出した。本発
明はこれらの知見を基にして完成されたものである。
【0013】すなわち本発明は、病理検査方法であっ
て、下記の工程: (1) 金属コロイドを含みかつ硬膜剤を含まない親水性高
分子薄膜に対して試料を接触させる工程;及び(2) 試料
と金属コロイドとの相互作用により生じた該薄膜上の表
面変化を検出する工程を含む方法を提供するものであ
る。
【0014】下記の各発明は、上記の本発明に包含され
る好ましい態様の例である。 病理検査方法であって、下記の工程: (1) 生体試料の実質的に連続した二切片のうちの一つ
を、金属コロイドを含みかつ硬膜剤を含まない親水性高
分子薄膜に対して接触させる工程; (2) 生体試料に含まれる試料と金属コロイドとの相互作
用により生じた該薄膜上の表面変化を検出する工程;及
び、 (3) 他の一つの切片から調製した組織標本と上記薄膜上
の表面変化とを対比する工程 を含む方法。
【0015】病理検査方法であって、下記の工程: (1) 生体試料の実質的に連続した二切片のうちの一つ
を、金属コロイドを含みかつ硬膜剤を含まない親水性高
分子薄膜に対して接触させる工程; (2) 金属コロイドと酵素インヒビターとを含みかつ硬膜
剤を含まない親水性高分子薄膜に対して残りの1又は2
以上の切片を接触させる工程; (3) 生体試料と金属コロイドとの相互作用により生じた
該薄膜上の表面変化を検出する工程;及び、 (4) 工程(1) で用いた薄膜上の表面変化と工程(2) で用
いた薄膜上の表面変化とを対比する工程 を含む方法。この方法のさらに好ましい態様では、工程
(2) において、残りの2以上の各切片をそれぞれ異なる
種類の酵素インヒビターを含む薄膜に接触させる工程を
含んでいる。
【0016】病理検査方法であって、下記の工程: (1) 生体試料の実質的に連続した二切片のうちの一つを
金属コロイドを含みかつ硬膜剤を含まない親水性高分子
薄膜に対して接触させる工程; (2) 工程(1) で用いた薄膜に含まれる金属コロイドと同
一の金属コロイドを含みかつ硬膜剤を含まない親水性高
分子薄膜に対して残りの1又は2以上の切片を接触させ
る工程; (3) 生体試料と金属及び/又は金属化合物との相互作用
により生じた該薄膜上の表面変化を検出する工程;及
び、 (4) 工程(1) で用いた薄膜上の表面変化と工程(2) で用
いた薄膜上の表面変化とを対比する工程 を含む方法。
【0017】病理検査方法であって、下記の工程: (1) 生体試料の実質的に連続した二切片のうちの一つを
金属コロイドを含みかつ硬膜剤を含まない親水性高分子
薄膜に対して接触させる工程; (2) 生体試料と金属コロイドとの相互作用により生じた
該薄膜上の表面変化を検出する工程; (3) 酵素により分解される物質を含む薄膜に対して残り
の1又は2以上の切片を接触させる工程; (4) 生体試料に含まれる酵素の作用により生じた工程
(3) の薄膜上の消化痕を検出する工程; (5) 工程(2) で検出した薄膜上の表面変化と工程(4) で
検出した薄膜上の消化痕とを対比する工程 を含む方法。この方法のさらに好ましい態様では、酵素
により分解される物質がプロテアーゼ基質であり、より
具体的には、コラーゲン、ゼラチン、プロテオグリカ
ン、フィブロネクチン、ラミニン、エラスチン、及びカ
ゼインからなる群から選ばれるプロテアーゼ基質であ
り、特に好ましくはゼラチン、フィブロネクチン、又は
カゼインである。
【0018】病理検査方法であって、下記の工程: (1) 少なくとも下記の2層:金属コロイドを含みかつ硬
膜剤を含まない(a) 層と、酵素により分解される物質を
含み(a) 層に積層された親水性高分子からなる(b) 層と
を含む親水性高分子薄膜の(b) 層の表面に対して生体試
料を接触させる工程; (2) 生体試料に含まれる酵素の作用により生じた(b) 層
の消化痕、及び生体試料と金属コロイドとの相互作用に
より生じた(a) 層の表面変化を検出する工程を含む方
法。
【0019】病理検査方法であって、下記の工程: (1) 少なくとも下記の2層:金属コロイドを含みかつ硬
膜剤を含まない(a) 層と、酵素インヒビター及び金属コ
ロイドを含み(a) 層に積層された硬膜剤を含まない(b)
層とを含む親水性高分子薄膜に対して生体試料を接触さ
せる工程; (2) 生体試料と金属コロイドとの相互作用により生じた
(a) 層及び(b) 層の表面変化を検出する工程 (3) (a) 層の表面変化と(b) 層の表面変化とを対比する
工程を含む方法。
【0020】病理検査方法であって、下記の工程: (1) 少なくとも下記の2層:金属コロイドを含みかつ硬
膜剤を含まない(a) 層と、(a) 層に含まれる金属コロイ
ドとは異なる金属コロイドを含み(a) 層に積層された硬
膜剤を含まない(b) 層とを含む親水性高分子薄膜に対し
て生体試料を接触させる工程; (2) 生体試料と金属コロイドとの相互作用により生じた
(a) 層及び(b) 層の表面変化を検出する工程 (3) (a) 層の表面変化と(b) 層の表面変化とを対比する
工程を含む方法。
【0021】本発明のさらに好ましい態様によれば、試
料がヒトを含む哺乳類から分離・採取された生体試料ま
た培養された細胞である上記方法;生体試料が癌組織切
片、歯肉溝滲出液、破壊性病変組織切片、又は破壊性病
変組織抽出液(例えば、リウマチ性病変組織抽出液又は
歯槽膿漏組織抽出液)である上記方法;金属コロイドが
元素周期表の第VIII族、第Ib族、及び第IIb 族からなる
群から選ばれる金属を含む上記方法;金属コロイドの平
均粒径が0.001 μm 〜0.5 μm である上記方法;並び
に、金属コロイドが金、白金、銀、及び銅からなる群か
ら選ばれる金属を含む上記方法;表面変化として薄膜上
の色の変化を検出する上記方法;酵素の測定を含む病理
検査を行うための上記方法;酵素がマトリックス・メタ
ロプロテアーゼである上記方法;並びに、プロテアーゼ
(好ましくはマトリックス・メタロプロテアーゼ)が関
与する疾患の診断に用いる上記方法が提供される。
【0022】別の観点からは、親水性高分子からなり、
金属コロイドを含みかつ硬膜剤を含まない病理検査用の
薄膜であって、試料と金属コロイドとの相互作用により
表面変化を生じることを特徴とする薄膜;及び、上記の
各方法、好ましくは上記ないしの各方法に使用する
ための薄膜が本発明により提供される。これらの薄膜の
好ましい態様では、支持体平面上、例えばスライドグラ
ス又はポリエチレンテレフタレートフイルム上に形成さ
れた上記の各薄膜;及び、薄膜と支持体との間に下塗り
層が設けられた上記の各薄膜が提供される。
【0023】本発明のさらに別の態様によれば、上記の
各方法において定義された工程に従って酵素などの生体
物質、好ましくはプロテアーゼ、さらに好ましくはマト
リックス・メタロプロテアーゼが関与する疾患を診断す
る方法が提供される。この発明の好ましい態様として、
該疾患が癌、リウマチ性疾患、歯周病、及び歯槽膿漏か
らなる群から選ばれる疾患である上記方法が提供され
る。
【0024】
【発明の実施の形態】上記各態様の病理検査方法は、基
本的には、生体外に分離又は排泄された生体試料を金属
コロイドを含み硬膜剤を含まない親水性高分子薄膜に対
して接触させる工程(第一工程)と、試料中に含まれる
プロテアーゼなどの酵素に代表される生体物質と金属コ
ロイドとの相互作用により薄膜表面に形成される表面変
化を検出する工程(第二工程)を含んでいる。本発明の
方法では、金属コロイドを使用することによってプロテ
アーゼなどの酵素を分子レベルで検出するために、通常
の分光学的手段によっても高感度に酵素を測定でき、病
理検査法として極めて検出精度が高いという特徴があ
る。
【0025】また、本発明の方法では一般的には染色工
程を省略できるので、簡便に病理検査を行えるという特
徴もある。さらに、本発明の方法では、硬膜剤を含まな
い親水性高分子薄膜を用いることによって非常に短時間
での検査が可能になっており、例えば、手術中に分離・
採取された生体試料に対して本発明の方法で迅速に病理
検査を行い、その検査結果をフィードバックできるとい
う特徴がある。
【0026】本明細書において用いられる「病理検査」
という用語は、病気の原因を特定ないし推定するために
生体試料を用いて行われるあらゆる検査方法を包含して
いるが、好ましくは、生体外に分離・採取された生体試
料又は生体外に排泄された生体試料(例えば、癌組織切
片、歯肉溝滲出液、破壊性病変組織切片、又は破壊性病
変組織抽出液など)を用いて、生体試料中に含まれる酵
素などの生体物質の測定を行うことを意味している。こ
こで、「測定」という用語は、定性及び定量を含めて、
酵素などの生体物質の存在に関する情報を提供できるも
のをすべて包含するように最も広義に解釈されるべきで
ある。以下、本発明の測定対象となる生体物質として酵
素について具体的に説明するが、本発明の方法の測定対
象は酵素に限定されることはなく、脂質、糖類、核酸な
どの生体物質も測定対象となりうる。
【0027】本発明の方法に従って測定を行うと、試料
中にプロテアーゼなどの酵素が含まれている場合には、
該酵素と親水性高分子薄膜に含まれる金属コロイドとの
間に相互作用が生じ、薄膜上に検出可能な表面変化が惹
起される。本明細書において用いられる「相互作用」と
いう用語は、例えば、酵素全体若しくはその部分構造、
又は酵素に由来する1又は2以上の官能基( 例えば、チ
オール基、チオエーテル基、ジスルフィド基、脂肪族又
は芳香族アミノ基、ヒドロキシル基、又はカルボキシル
基など、好ましくは、チオール基、チオエーテル基、ジ
スルフィド基、脂肪族又は芳香族アミノ基など)と、金
属コロイドとの間で生じる種々の物理化学的及び/又は
生化学的な相互作用を包含しており、例えば、錯体や塩
の形成、酵素の変性、凝集若しくは沈殿、吸着、酵素反
応などを含めて最も広義に解釈する必要がある。また、
上記の相互作用には、酵素作用により生じる物質、例え
ばプロテアーゼの作用により生じる基質分解物と金属コ
ロイドとの間の相互作用も含まれる。
【0028】薄膜上に惹起される表面変化はいかなる種
類のものでもよく、例えば、着色、脱色、色調変化など
のほか、表面の性状または形状の変化、電気伝導度の変
化、磁力の変化などを挙げることができるが、これらに
限定されることはない。このような表面変化は1種又は
2種以上の組み合わせであってもよい。例えば、紫外
光、可視光、蛍光の反射又は透過濃度測定、吸光度測
定、電気伝導度の測定、磁力の測定、音波の測定、表面
粗さの測定、顕微鏡下または肉眼での測定など、当業者
に利用可能な種々の測定方法のいずれか、またはこれら
の測定方法の2種以上の組み合わせによって検出可能な
表面変化であればよい。例えば、濃度測定及び/又は吸
光度測定などの手段により検出可能な表面変化であるこ
とが好ましい。
【0029】本発明の病理検査方法では、好ましくは酵
素を測定対象とすることができる。測定の対象となる酵
素は特に限定されないが、例えば、プロテアーゼは本発
明の方法の好適な測定対象である。プロテアーゼとして
は、例えば、マトリックス・メタロプロテアーゼ (MMP)
及びマトリックス・セリンプロテアーゼ (MSP)を挙げる
ことができ、これらの酵素については、鶴尾隆編「癌転
移の分子機構」、pp.92-107 、メジカルビュー社、1993
年発行に詳細に説明されている。測定対象として特に好
適なプロテアーゼとしては、例えば、間質型コラーゲナ
ーゼ(MMP-1) 、ゼラチナーゼ A (MMP-2)、及びゼラチナ
ーゼ B (MMP-9)などのマトリックス・メタロプロテアー
ゼ;及びプラスミノーゲン・アクティベーター(PA)など
のマトリックスセリンプロテアーゼを挙げることができ
る。もっとも、本発明の病理検査方法の対象は酵素(例
えばプロテアーゼ又は上記の特定のプロテアーゼなど)
に限定されることはない。
【0030】本発明の方法で用いられる金属コロイドは
特に限定されず、いかなるものを用いてもよい。金属コ
ロイドは、第VIII族、第Ib族、及び第IIb 族からなる群
から選ばれる金属を含むことが好ましい。これらのう
ち、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、水銀、
カドミウム、又は亜鉛がより好ましい。その中でも金、
銀、銅が最も好ましく、とりわけ銀が好ましい。金属コ
ロイドを2種以上組み合わせて用いてもよく、合金とし
て用いることも可能である。より具体的には、コロイド
亜鉛、コロイド銀(平均粒径 0.01 μm 、 0.03 μm 、
0.05 μm)、コロイド金、コロイド水銀、コロイド銅、
コロイド白金、コロイドニッケル、コロイドパラジウ
ム、コロイドカドミニウムからなる群から選ばれる1種
又は2種以上の金属コロイドを挙げることができる。
【0031】金属コロイドは薄膜中に存在していればよ
く、存在状態は特に限定されないが、溶液として添加さ
れた状態や親水性高分子中に分散した状態であることが
好ましい。分散状態の場合には、例えば実質的に球形の
微粒子状態で分散されていることが好ましい。微粒子の
粒径は特に限定されないが、例えば、平均粒径0.001μm
以上、0.5 μm 以下、より好ましくは平均粒径0.05μm
以下、特に好ましくは0.03μm 以下である。
【0032】本発明の方法において用いられる薄膜を形
成する親水性高分子としては、水に溶解し、又は水を吸
収して膨潤する性質を有するものであればいかなるもの
を用いてもよい。天然の親水性高分子としては、例え
ば、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン、フィブロネクチ
ン、ラミニン、エラスチンなどのタンパク質及びタンパ
ク質由来の物質;セルロース、デンプン、アガロース、
カラギーナン、デキストラン、デキストリン、キチン、
キトサン、ペクチン、マンナンなどの多糖類及び多糖類
由来の物質を用いることができ、合成の親水性高分子と
しては、例えば、ポリビニルアルコール(ポバール)、
ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ポリビニルピロリ
ドン、ポリエチレングリコール、ポリスチレンスルホン
酸、ポリアリルアミンなどを用いることができる。ま
た、これらの物質に由来するゲルなどを用いることがで
きるが、これらに限定されることはない。
【0033】また、酵素インヒビター、例えば、プロテ
アーゼ・インヒビターを用いることにより、インヒビタ
ーに関連する酵素の同定や、プロテアーゼなどの酵素の
特性の判定が容易になり、病理検査の精度を高めること
ができる場合がある。例えば、本発明の病理検査方法に
おいてプロテアーゼを測定対象とする場合には、プロテ
アーゼ・インヒビターとして、例えば、ティッシュ・イ
ンヒビター・オブ・メタプロテアーゼ1 (TIMP1)、ティ
ッシュ・インヒビター・オブ・メタプロテアーゼ2 (TI
MP2)、ラージ・インヒビター・オブ・メタロプロテアー
ゼ (LIMP) 、チッキン・インヒビター・オブ・メタロプ
ロテアーゼ (ChIMP)、オポスタチン、血小板第IV因子
(PF-4) 、α2 マクログロブリン、EDTA、1,10- フェナ
ントロリン、BB94、ミノサイクリン、マトリスタチン、
SC-44463、又は、ジチオスレイトール (DTT)などを用い
ることができる。
【0034】例えば、生体試料中の実質的に連続した2
以上の切片のうちの一つを酵素インヒビターを含有しな
い親水性高分子薄膜に接触させ、残りの切片を酵素イン
ヒビターを含む親水性高分子薄膜に接触させた後、それ
ぞれの薄膜の表面に形成された表面変化を対比する方法
を採用することができる。また、例えば、酵素インヒビ
ターを含有しない第一の層と、酵素インヒビターを含有
する第二の層を含む単一の親水性高分子薄膜を製造し、
プロテアーゼを含む試料を接触させた後に、それぞれの
層に形成された表面変化を対比する方法を採用してもよ
い。2種以上の酵素インヒビターを適宜組み合わせて1
の親水性高分子薄膜に配合して用いてもよく、または2
種以上の酵素インヒビターをそれぞれ含有する層を含む
親水性高分子薄膜を用いてもよい。
【0035】測定の対象となる酵素により分解される物
質(酵素基質)を含有する薄膜を製造して、生体試料中
の実質的に連続した2以上の切片のうちの一つを酵素基
質を含む薄膜に接触させ、残りの切片を金属コロイドを
含み硬膜剤を含まない本発明の親水性高分子薄膜に接触
させてもよい。酵素基質を含む薄膜には酵素の作用によ
る消化痕が生じ、一方、本発明の親水性高分子薄膜には
表面変化が惹起されるので、それぞれの結果を対比する
ことによって酵素の存在を確実に証明することできる。
このような酵素基質を用いる方法を酵素インヒビターを
用いる上記の方法と適宜組み合わせてもよい。また、酵
素基質を含む層と、金属コロイドを含み硬膜剤を含まな
い親水性高分子層とを積層した薄膜を用いて測定を行っ
てもよい。酵素基質を含む薄膜又は層を形成する高分子
物質としては、例えば上記に例示した親水性高分子を用
いることができる。
【0036】酵素としてプロテアーゼを測定対象とする
場合には、酵素基質としてプロテアーゼにより分解され
る高分子化合物(プロテアーゼ基質)を用いることがで
きる。プロテアーゼ基質は特に限定されないが、例え
ば、コラーゲン、ゼラチン、プロテオグリカン、フィブ
ロネクチン、ラミニン、エラスチン、又はカゼインなど
を用いることができる。好ましくは、コラーゲン、ゼラ
チン、フィブロネクチン、エラスチン、又はカゼインを
用いることができ、より好ましくはゼラチン、フィブロ
ネクチン、又はカゼインを用いることができる。ゼラチ
ンを用いる場合には、ゼラチンの種類は特に限定され
ず、例えば、牛骨アルカリ処理ゼラチン、豚皮膚アルカ
リ処理ゼラチン、牛骨酸処理ゼラチン、牛骨フタル化処
理ゼラチン、豚皮膚酸処理ゼラチンなどを用いることが
できる。なお、プロテアーゼ基質は上記の物質の1種を
用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いてもよ
い。
【0037】2種以上の異なるプロテアーゼ基質を組み
合わせて用いることにより、生体試料中に含まれるプロ
テアーゼの種類を正確に特定できる場合がある。例え
ば、生体試料中の実質的に連続した切片のうちの一つを
本発明の親水性高分子薄膜に接触させて表面変化を検出
し、他の2以上の切片をそれぞれ異なるプロテアーゼ基
質を含む2以上の親水性高分子薄膜に接触させて薄膜上
の消化痕を検出し、それぞれの結果を対比することがで
きる。
【0038】本発明の方法に用いる試料は特に限定され
ないが、例えば、ヒトを含む哺乳類動物から分離・採取
した生体試料、又はヒトを含む哺乳類動物から排泄され
た生体試料などを用いることができる。例えば、組織又
は組織滲出液などを用いることができる。より具体的に
は、肺癌、胃癌、食道癌、乳癌、脳腫瘍などの固形癌組
織から手術や組織検査などにより分離・採取した癌組
織、リウマチ性関節炎の滑膜や骨組織、及び歯槽膿漏の
歯根膜や骨組織などの破壊性病変組織や滲出液、並びに
歯周病の歯肉溝滲出液などを用いることができる。ま
た、培養した細胞や組織などを用いてもよい。
【0039】試料が組織の場合には、例えば、液体窒素
で急速凍結した試料から凍結切片作成装置を用いて厚さ
1〜10μm 、好ましくは 5μm 程度の切片を調製し、こ
の切片を薄膜に貼付することによって試料と薄膜とを接
触させることができる。また、リウマチ性関節炎の患者
から採取した滑膜液を試料として用いる場合には、滑膜
液約 5〜50μl 、好ましくは20μl 程度を薄膜上に滴下
すればよい。歯周病の歯肉溝滲出液を試料として用いる
場合には、歯肉溝内に濾紙を挿入して約 5〜10μl 程度
の歯肉溝滲出液を採取し、該濾紙を薄膜に貼付する方法
を採用することができる。歯肉溝滲出液の採取後、必要
に応じて蒸留水や適宜の緩衝液(例えば、50 mM Tris-H
Cl, pH 7.5, 10 mM CaCl2, 0.2 M NaCl など) を用いて
濾紙から歯肉溝滲出液を抽出し、抽出液を薄膜上に滴下
してもよい。
【0040】本発明の薄膜は支持体平面状に形成される
ことが好ましい。支持体の材質や形状は特に限定されな
いが、薄膜上の表面変化を顕微鏡下で観察するような場
合や、吸光度測定や蛍光測定などの分光学的手段により
表面変化を検出する場合には、例えば、薄膜は透明又は
半透明の支持体上に形成されることが好ましい。このよ
うな透明又は半透明の支持体としては、例えば、ガラ
ス、又はポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネー
ト、ポリイミド、ナイロン、セルロース、若しくはトリ
アセテート等からなる透明又は半透明プラスチックフイ
ルムなどを用いることができる。ガラスとしては顕微鏡
用のスライドグラスを用いることが好ましく、プラスチ
ックフイルムとしてはポリエチレンテレフタレートフイ
ルムを用いることが好ましい。
【0041】また、上記の支持体に加えて、不透明な支
持体を用いることも可能である。例えば、紙、合成紙、
合成樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポ
リスチレン、ポリエチレンナフタレート等)をラミネー
トした紙、金属板(例えば、アルミニウム、アルミニウ
ム合金、亜鉛、鉄、銅などの板)、上記の金属がラミネ
ート又は蒸着された紙やプラスチックフイルムなどを用
いることができる。このような態様においては支持体に
着色が施されていてもよい。もっとも、支持体は上記に
例示したものに限定されることはなく、均一な薄膜を製
造することができるものであればいかなるものを用いて
もよい。なお、支持体の内部構造については多孔質のも
のであっても差し支えない。例えば、セラミックプレー
ト、ポリウレタンフォーム、ミクロボイドを有するポリ
スルフォン、微細孔を施したポリカーボネートなどであ
る。
【0042】支持体の厚さは特に限定されないが、ガラ
スの場合にはスライドグラス程度の厚さのもの(例えば
2〜3 mm程度)が好ましく、ポリエチレンテレフタレー
トフイルムの場合には約 100〜250 μm 、より好ましく
は約 150〜200 μm 、特に好ましくは 175μm 程度のも
のを用いることができる。該支持体上の薄膜は単層又は
重層で形成することができるが、薄膜はできる限り均一
な表面を与えるように調製すべきである。例えば、乾燥
後の膜厚が 1〜10μm 、好ましくは 4〜6 μm程度にな
るように調製することが好ましい。
【0043】薄膜の調製には、例えば、水、又はメチレ
ンクロライド、アセトン、メタノール、エタノール、若
しくはそれらの混合溶媒などの有機溶媒に金属コトイド
及び親水性高分子の所定量を加えて均一に分散させ、得
られた分散液を支持体表面に塗布して乾燥すればよい。
塗布方法としては、例えば、ディップ塗布法、ローラー
塗布法、カーテン塗布法、押し出し塗布法などを採用す
ることができる。もっとも、薄膜の調製方法はこれらに
限定されることはなく、例えば、写真用フイルムの技術
分野などにおいて汎用されている薄膜形成方法などを適
宜採用することが可能である。
【0044】金属コロイドとしてコロイド銀を用いる場
合について説明すると、例えば、ハロゲン化銀カラー写
真感光材料の分野において、コロイド銀は通常イエロー
フィルター用としての黄色コロイド銀とアンチハレーシ
ョン用の黒色コロイド銀が一般的に用いられているの
で、本発明にはこれらのコロイド銀を用いることができ
る。また、これらに加えて、橙褐色や褐灰色のコロイド
銀であってもよい。これらのうち、最大吸収波長が400n
m から500nm の黄色のコロイド銀を用いることが特に好
ましい。
【0045】その調製方法としては、従来から知られて
いる方法、例えば、米国特許第2,688,601 号明細書に開
示されたゼラチン溶液中で可溶性銀塩をハイドロキノン
によって還元する方法、ドイツ特許第1,096,193 号明細
書に記載されている難溶性銀塩をヒドラジンによって還
元する方法、米国特許第2,921,914 号明細書に記載され
ているようにタンニン酸により銀に還元する方法、特開
平5-134358号公報に記載されているように無電解メッキ
によって銀粒子を形成する方法などを用いることができ
る。また、Wiley & Sons, New York, 1933年発行、Weis
er著の Colloidal Elements に記載されたCarey Leのデ
キストリン還元法による黄色コロイド銀の調製方法を用
いてもよい。
【0046】薄膜を支持体上に形成するにあたり、薄膜
と支持体との接着を改善するために、薄膜と支持体表面
との間に下塗り層を設けてもよい。例えば、塩化ビニ
ル、塩化ビニリデン、ブタジエン、メタクリル酸、アク
リル酸、イタコン酸、無水マレイン酸等から選ばれるモ
ノマーの1種又は2種以上を重合させて得られる重合体
又は共重合体、ポリエチレンイミン、エポキシ樹脂、グ
ラフト化ゼラチン、又はニトロセルロースなどの重合体
を下塗り層として形成することができる。また、ポリエ
ステル系支持体を用いる場合には、下塗り層に替えて、
支持体表面をコロナ放電処理、紫外線処理、又はグロー
放電処理することによっても、支持体と薄膜との接着力
を改善できる場合がある。
【0047】本明細書において用いられる「支持体表面
上に形成された薄膜」という用語またはその同義語につ
いては、このような1又は2以上の下塗り層及び/又は
支持体表面の処理を排除するものと解釈してはならな
い。もっとも、薄膜と支持体との接着を改善するための
手段は上記のものに限定されることはなく、例えば、写
真用フイルムの技術分野などにおいて汎用されている手
段を適宜採用することができる。また、上記のように薄
膜が複数の層を積層してなる場合には、積層される2つ
の層の間にさらに中間層を設けてもよく、本明細書にお
いて用いられる「積層」という用語は、2つの層が直接
接触している場合に限定して解釈してはならない。この
ような中間層を適宜配置する手段は、例えば、写真用フ
イルムの技術分野などにおいて汎用されている。
【0048】薄膜を製造する際に、上記の成分に加え
て、染料、顔料、防腐剤、安定化剤などの成分を適宜配
合してもよい。このような成分は、例えば測定対象とな
る酵素と金属コロイドとの相互作用に実質的に影響を与
えないものであれば特に限定されず、適宜のものを選択
して用いることが可能である。染料としては、例えば、
特開平6-102624号公報に記載された染料(第9頁 I-1よ
り第47頁63までの化学構造式により具体的に示された染
料)を用いることができ、染料の添加方法は、例えば、
特開平5-313307号公報に記載された方法(第11頁段落番
号[0037]から第12頁段落番号[0044]までに具体的に説明
された方法)を採用することができる。
【0049】本発明の方法の実施の形態は特に限定され
ないが、例えば、組織切片を薄膜に貼付するか、あるい
は液体試料を薄膜上に滴下することによって薄膜とプロ
テアーゼなどの酵素を含む試料とを接触させた後、好ま
しくは37℃の湿潤箱内で、組織切片については例えば 1
〜24時間、好ましくは 2〜12時間、さらに好ましくは3
〜6 時間程度、液状試料については 0.5〜12時間、好ま
しくは 1〜6 時間、さらに好ましくは 1〜3 時間程度イ
ンキュベートすればよい。
【0050】試料中にプロテアーゼなどの酵素が含まれ
る場合には、薄膜内の金属コロイドと酵素との間で相互
作用が生じ、着色、脱色、色調変化、表面の性状または
形状の変化、電気伝導度の変化、磁力の変化などの表面
変化が惹起される。また、親水性高分子として酵素基質
となる高分子化合物を用いて薄膜を形成している場合
(例えば、プロテアーゼの測定において親水性高分子と
してゼラチンなどのプロテアーゼ基質を用いて薄膜を形
成した場合)には、酵素作用による消化痕が同時に検出
される場合もある。必要に応じて薄膜を染色した後、肉
眼や顕微鏡下で表面変化を観察するか、吸光度測定、蛍
光測定などの分光学的測定、音波測定、磁力測定など適
宜の手段により表面変化を検出することができる。ま
た、分光光度計による光分解を利用して評価を行っても
よい。
【0051】本発明の方法の別の態様に従えば、癌組織
などから連続凍結切片を作成し、実質的に連続した二切
片のうちの一方の切片を、例えば、ヘマトキシリン・エ
オシン染色切片などの通常の組織標本として調製し、他
の切片を本発明の方法に従って処理し、両者の観察結果
を比較・対比することによって組織中の個々の細胞に由
来する酵素、例えばプロテアーゼの存在を正確に把握す
ることが可能である。本発明の方法をプロテアーゼの測
定に用いた場合、組織中に存在する個々の癌細胞の悪性
度(浸潤活性及び転移活性など)を正確に判定すること
が可能であり、癌疾患の予後についての的確な判定が可
能になる。また、リウマチ性関節炎の関節液や歯肉溝滲
出液などの試料中のプロテアーゼを定量することによ
り、これらの疾患の病態や進行程度を正確に判定するこ
とができるが、試料中のプロテアーゼ定量のためには、
予め作成した標準溶液を用いて検量線を作成することが
好ましい。
【0052】
【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに具体的に
説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定され
ることはない。 例1:病理検査用薄膜の製造 (a) コロイド銀乳剤の作成 pHを11.0に調整したデキストリンを18 g含む水溶液 700
ml に硝酸銀 17 g を含む水溶液を添加し、ゼラチンを
添加して30℃で公知のフローキュレーション法により水
洗し、さらにゼラチンを加えて60℃に加熱することによ
り作成した。得られたコロイド銀乳剤は溶液状態で黄色
であった。乳剤は冷蔵保存した。 (b) 単層薄膜:試料101 の製造 豚皮酸処理ゼラチン 13.1 g とコロイド銀乳剤 29 g を
純水 97 g に溶解した。この溶液をスライドグラス上に
乾燥膜厚が約 7μm になるように均一にワイヤーバーコ
ーターを使って塗布し、乾燥して薄膜とした。薄膜は使
用時まで室温で保存した。なお、塗布の際には必要に応
じて塗布助剤を使用した。
【0053】(c) 単層薄膜:試料 102〜130 の製造 金属コロイド、親水性高分子、添加剤、支持体を表1の
ように変更および追加して、試料101 と同様にして試料
102 〜130 を作成した。
【0054】
【表1】
【0055】(c) 単層薄膜:試料 131〜134 の製造 塗布の際にワイヤーバーコーターの代わりにスライドコ
ーターを使用した他は試料 127〜130 と同様にして試料
131〜134 を作成した。なお、乾燥条件は、必要に応じ
て10℃にいったん冷却した後、常温常湿で乾燥する方法
を採用した。
【0056】例2:薄膜を用いたプロテアーゼ活性測定 (a) 溶液試料の測定(測定方法A) プロテアーゼ液体試料として、マトリックス・メタロプ
ロテアーゼ (MMP)-1、MMP-2 及び MMP-9(ヤガイ社製)
をそれぞれ 2 pg/mlから 200 ng/mlの濃度で含む溶液を
用いた。また、生体試料としては、歯周病患者から採取
した歯肉、歯肉溝滲出液(GCF: Gingival Crevicular Fl
uid)、及び歯周病原菌 (P. gingivalis#381株; A. acti
nomycetemcomitans Y4 株;及び P. intermedia ATCC 2
5611 株)を培養した上清を用いた。例1で得たそれぞ
れの薄膜上に液体試料約10μl を滴下した。薄膜を湿潤
箱内に入れて37℃で 10 〜60分インキュベートした後、
それぞれの試料に対して目視による判定、ミクロデ
ンシトメトリーによる微小部分各々の最大吸収波長に応
じた濃度測定による判定を行い、プロテアーゼの活性を
評価した。結果を表2に示す。
【0057】
【表2】 いずれのサンプルについても視認性のある着色部分が現
れた。この部分の光学濃度は周辺部に比べて表3に示す
ように増加していた。特に、コロイド銀含有薄膜は、液
体試料及び組織切片に対して強い赤色の着色を与えた。
MMP-1 、MMP-2及びMMP-9 について、10分後に 200 ng/m
l、30分後に20 ng/ml、60分後に 20-200 pg/ml の濃度
範囲でプロテアーゼ活性が認められた。歯肉溝滲出液の
多くはプロテアーゼ活性を認めるまでに約30〜60分を要
し、プロテアーゼの量が 2 pg/mlから20 ng/mlの範囲で
あることが示唆された。また、スライドコーターによっ
て作成した試料 131〜134 はバーコーターによって作成
した試料と同様のMMP 活性判定性能を示した。
【0058】(b) 検量線を用いた溶液資料の測定(測定
方法B) プロテアーゼ液体試料として、マトリックス・メタロプ
ロテアーゼ(MMP)-1をそれぞれ 2 pg/mlから200 ng/ml
の濃度で含む溶液を用いて、試料 103に対して上記方法
Aと同様にして測定を行って検量線を作成した。生体試
料としては、上記の測定方法Aで用いたものと同じ試料
(歯周病患者から採取した歯肉、歯肉溝滲出液、及び歯
周病原菌を培養した上清)を用いた。結果を表3に示
す。検量線より、生体試料に含まれるMMP-1 の量は40 p
g/mlであることが推察された。
【0059】
【表3】 ──────────────── MMP 添加量 着色跡 光学濃度 ──────────────── 10-7 (g/ml) あり 3.30 10-8 あり 3.30 10-9 あり 3.30 10-10 あり 2.80 10-11 あり 1.70 10-12 微かにあり 0.90 無添加 なし 0.30 ────────────────
【0060】(c) 生体の凍結切片試料の測定(測定方法
C) 生体試料として、歯周病患者から採取した歯肉、歯肉溝
滲出液、及び歯周病の組織試料を約5μm の凍結切片と
して試料 101〜130 の薄膜表面に貼付した。薄膜を湿潤
箱内に入れて37℃で 10 〜60分インキュベートし、その
後、透明な試料はアミドブラック溶液で染色した。活性
の評価方法としては、それぞれの試料に対してはっきり
と活性が認められる箇所について、目視による判定、
ミクロデンシトメトリーによる微小部分の濃度測定に
よる判定を行った。結果を表5に示す。生体試料の凍結
切片を直接設置する方法においても、各薄膜にはプロテ
アーゼによる着色部位が認められ、この部分の光学濃度
と膜厚は周辺部部に比べて表4に示すように増加してい
た。
【0061】
【表4】
【0062】(d) 癌組織のプロテアーゼ活性測定 被検組織試料として舌扁平上皮癌、肺癌、及び食道癌の
手術標本を厚さ約 0.5cm ×幅 2 cm の大きさに切り出
し、液体窒素で急速凍結して-80 ℃で保存した。この標
本から凍結切片作成装置を用いて厚さ 5μm の連続切片
を作成し、一枚をスライドグラスに張り付けて乾燥させ
た後、10% ホルマリンで5分間固定し、その後、常法に
従ってヘマトキシリン・エオシン染色を行った。他の連
続切片を例2及び例3で製造した各ゼラチン薄膜上に貼
付し、湿潤箱に入れて 37 ℃で 10 〜60分インキュベー
トした。
【0063】インキュベート終了後に薄膜はプロテアー
ゼによる着色痕を与えており、一方、他の部分は元の色
もままであった。いずれの癌組織にも癌胞巣を形成する
個々の癌細胞に着色部位が認められたが、特に癌胞巣辺
縁に位置する細胞にプロテアーゼによる強い着色部位が
認められた。正常扁平細胞ではプロテアーゼによる着色
部位が弱いながらも認められたが、この上皮が異型増殖
するに従ってプロテアーゼによる着色が強く認められ
た。なお、ヘマトキシリン、エオシン染色で癌細胞と診
断される部分については本発明の薄膜でまったく同じ位
置にプロテアーゼの着色部位が認められ、しかも、新し
く活性が出始めた部位や、すでに角化した部位もはっき
り認識することができた。
【0064】(e) 口腔上顎歯肉癌のプロテアーゼ活性測
定 標本中の癌細胞は胞巣構造を形成する低分化型扁平上皮
癌で、骨組織を破壊して強い浸潤を示していた。癌胞巣
中の癌細胞に対応する位置にプロテアーゼによる着色部
位が認められたが、特に癌胞巣の辺縁に位置する細胞に
対応する部位にプロテアーゼによる強い着色痕が認めら
れた。標本中の巣状の炎症性細胞浸潤部位に対応する部
分には、強い顆粒状のプロテアーゼによる着色部位が生
じていた。癌胞巣を拡大して観察すると、癌胞巣辺縁に
位置する増殖域の細胞にプロテアーゼによる強い着色部
位が認められ、癌胞巣に隣接する間質の繊維芽細胞にも
顆粒状にプロテアーゼによる着色部位が認められた。
【0065】(f) 舌癌のプロテアーゼ活性測定 標本中の癌細胞は未分化型扁平上皮癌で大小の癌胞巣が
存在していた。癌胞巣の辺縁部の癌細胞に対応する部位
にいずれにもプロテアーゼによる強い着色部位が認め
ら、癌の増殖域の細胞に相当する部位ではプロテアーゼ
による着色痕が顕著であった。巣状の炎症性細胞浸潤巣
に対応する部分にもプロテアーゼによる顆粒状の着色部
位が認められた。
【0066】(g) 口腔粘膜の高度上皮異形成症のプロテ
アーゼ活性測定 ヘマトキシリン・エオシン染色標本では、上皮に高度上
皮異形成症が認められ、棘細胞層の肥厚と基底細胞の重
層化が生じていた。特に基底細胞には多形成や異型性の
細胞増殖が認められた。薄膜上では、肥厚した棘細胞層
及び顆粒細胞層に対応する部分にプロテアーゼによる強
い着色部位を認めたが、基底細胞層では点状にプロテア
ーゼによる消化痕を認めたのみであった。この結果は、
上皮細胞のターンオーバーが盛んに行われており、一
方、基底細胞では上皮化結合織への浸潤が生じているこ
とを示している。
【0067】棘細胞の肥厚と重層化した基底細胞を拡大
して観察すると、いずれの細胞層に対応する部分にもプ
ロテアーゼによる着色部位が認められたが、特に、棘細
胞と重層化基底細胞に対応する部分ではプロテアーゼに
よる顕著な着色が認められた。一方、単層又は2層の基
底細胞ではゼラチンの消化が重層化基底細胞より弱かっ
た。また、重層化した基底細胞は紡錘形となり、細胞の
多形成や異型性が認められたが、異型性を示す増殖傾向
の細胞に対応する部分は薄膜上にプロテアーゼによる強
い着色部位が形成されていた。
【0068】(h) リウマチ患者の滑膜液のプロテアーゼ
活性測定 リウマチ患者の滑膜液約20μl を薄膜上に滴下し、37℃
の湿潤箱内で 10 〜60分インキュベートしたところ、薄
膜上に形成された円形の塗布跡の円周にプロテアーゼに
よる強い着色が認められた。特に、コロイド銀含有薄膜
を用いた場合にはプロテアーゼによる顕著な着色が観察
できた。
【0069】(g) 歯周病におけるプロテアーゼ活性測定 歯面の唾液及びプラークを可及的に綿球で除去して簡易
防湿した後、ペリオペーパーを歯肉溝に挿入して90秒間
静置し、歯肉溝滲出液 (約 5〜10μl 程度)をペリオペ
ーパーに吸い取らせた。このペリオペーパーを 150μl
の緩衝液 (50 mM Tris-HCl, pH 7.5, 10 mM CaCl2, 0.2
M NaCl)で抽出して試料溶液とし、測定方法Aと同様の
方法に従ってプロテアーゼの測定を行った。この結果、
歯肉溝滲出液の滴下により薄膜上に形成された円形の塗
布跡の円周に沿ってプロテアーゼによる強い着色が認め
られた。
【0070】例3:プロテアーゼ測定用薄膜の製造 (a) 多層薄膜:試料 301の製造 豚皮酸処理ゼラチン 13.1 g 及びコロイド銀乳剤(平均
粒径0.5 μm) 29 gを純水 97 g に溶解した。この溶
液をスライドグラス上に乾燥膜厚が約 7μm になるよう
に均一ワイヤーバーコーターを使って塗布し、乾燥して
薄膜とした。さらに、豚皮酸処理ゼラチン 13.1 g コロ
イド銀乳剤(平均粒径0.1 μm)を純水97 g に溶解
し、ポリメチルメタクリレート粒子(平均粒径2μm)を
添加した(添加量を表5に示す)。この混合物を上記の
乾燥薄膜上に乾燥膜厚が約 7μm になるように均一ワイ
ヤーバーコーターを使って塗布し、乾燥して多層の薄膜
を製造した。薄膜は使用時まで室温で保存した。 (b) 多層薄膜:試料 302〜330 の製造 上記(a) と同様にして、金属コロイド、親水性高分子、
添加剤、支持体を表5ないし7に示すように変更及び追
加することにより、2層又は3層の試料 302〜330 を製
造した。なお、塗布の際には必要に応じて塗布助剤を使
用した。
【0071】
【表5】
【0072】
【表6】
【0073】
【表7】
【0074】表中の緑色染料1としては下記の色素を用
いた。
【化1】
【0075】(c) 多層薄膜:試料 331〜340 の製造 塗布の際にワイヤーバーコーターの代わりにスライドコ
ーターを使用した他は試料 321〜330 と同様にして試料
331〜340 を作成した。なお、乾燥条件は、必要に応じ
て10℃にいったん冷却した後、常温常湿で乾燥する方法
を採用した。
【0076】例4:薄膜を用いたプロテアーゼ活性測定 例2の測定方法Cと同様にしてプロテアーゼの活性測定
を行った。結果を表8に示す。これらの結果から、多層
構造の薄膜においてもプロテアーゼの活性の状態が非常
に明確に判定できることが明らかになった。また、プロ
テアーゼインヒビターを含有する層と含有していない層
の結果を比較することにより、MMP の種類を判定できる
ことが示された。さらに、異なる金属及び/又は金属化
合物を含む層の結果を対比することによって、活性なMM
P の種類を判定できることが示された。なお、スライド
コーターによって作成した試料 331〜340 もバーコータ
ーで製造した試料と同様のMMP 活性判定性能を有してい
た。
【0077】
【表8】
【0078】例5:プロテアーゼ測定用薄膜の製造とプ
ロテアーゼ活性測定(比較例) 牛骨アルカリ処理ゼラチン 15 g を純水 123 gに溶解
し、硬膜剤として1,2-ビス(ビニルスルホニルアセトア
ミド)エタン(4%) 0.6 ml を添加した。この溶液をバッ
ク層にスライドコーターを使って塗布し、乾燥して薄膜
とした他は試料 331〜340 と同様にして試料 501〜510
を作成してプロテアーゼ活性測定を行った。また、試料
501〜510 のバック層の上にポリマーラテックス層を塗
布して乾燥した試料 511〜520 を製造してプロテアーゼ
活性測定を行った。これらの試料は試料 331〜340 と同
様なプロテアーゼ活性測定結果を示し、カールなどが起
きず薄膜の取扱い性においても良好であったが、硬膜剤
を含まない本発明の薄膜に比べて評価時間が4倍以上で
あり、発色濃度においても10% 以上劣っていた。
【0079】例6:ラジオグラフィ用乳剤を用いたプロ
テアーゼの測定および測定結果(比較例) 生体試料として、歯周病患者から採取した歯肉、歯肉溝
滲出液、及び歯周病の組織試料を約 5μm の凍結切片と
してスライドグラス上に設置した。その上に水で希釈し
たラジオグラフィ用乳剤(コニカ株式会社製)を塗布
し、乾燥して薄膜を形成した。薄膜を湿潤箱内に入れて
37℃で16時間〜14日間インキュベートし、その後、アミ
ドブラックで染色するか、または黒白現像処理をした。
その結果、プロテアーゼの活性はほとんど検出できなか
った。14日間インキュベートした後に黒白現像処理した
試料においてわずかに活性らしいものを示したが、活性
部の表示が非常に曖昧であり、本発明の薄膜に比べてプ
ロテアーゼの検出能は著しく劣っていた。
【0080】
【発明の効果】本発明の方法では、組織中に局在する特
定部位や組織中の個々の細胞に由来するプロテアーゼな
どの酵素を測定対象とすることにより、正確かつ簡便に
病理検査結果を得ることができ、従来の方法に比べて短
時間に判定できるという特徴がある。例えば、本発明の
方法をプロテアーゼの測定に用いると、浸潤や転移活性
などの癌細胞の悪性度、歯周炎などの歯周病の進行度、
リウマチや歯槽膿漏などの破壊性病態などを正確に把握
できるので、疾患の診断が容易になる。また、本発明の
方法に従えば、極めて微量の試料からプロテアーゼなど
の酵素活性を測定することが可能であり、判定後の薄膜
を固定標本として永久保存することもできる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 立川 哲彦 東京都品川区荏原2−17−9−105 (72)発明者 長谷川 郁夫 東京都新宿区舟町2 (72)発明者 長谷川 紘司 東京都新宿区舟町2

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 病理検査方法であって、下記の工程: (1) 金属コロイドを含みかつ硬膜剤を含まない親水性高
    分子薄膜に対して試料を接触させる工程;及び(2) 試料
    と金属コロイドとの相互作用により生じた該薄膜上の表
    面変化を検出する工程を含む方法。
  2. 【請求項2】 試料がヒトを含む哺乳類から分離・採取
    された生体試料また培養された細胞である請求項1に記
    載の方法。
  3. 【請求項3】 生体試料が癌組織切片、歯肉溝滲出液、
    破壊性病変組織切片、又は破壊性病変組織抽出液である
    請求項2に記載の方法。
  4. 【請求項4】 金属コロイドが元素周期表の第VIII族、
    第Ib族、及び第IIb 族からなる群から選ばれる金属を含
    む請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 【請求項5】 金属コロイドの平均粒径が0.001 μm 〜
    0.5 μm である請求項4に記載の方法。
  6. 【請求項6】 金属コロイドが金、白金、銀、及び銅か
    らなる群から選ばれる金属を含む請求項5に記載の方
    法。
  7. 【請求項7】 表面変化として薄膜上の色の変化を検出
    する請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 【請求項8】 酵素の測定を含む病理検査を行うための
    請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 【請求項9】 酵素がマトリックス・メタロプロテアー
    ゼである請求項8に記載の方法。
  10. 【請求項10】 プロテアーゼが関与する疾患の診断に
    用いる請求項1ないし9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 【請求項11】 金属コロイドを含みかつ硬膜剤を含ま
    ない病理検査用の親水性高分子薄膜であって、試料と金
    属コロイドとの相互作用により表面変化を生じることを
    特徴とする薄膜。
  12. 【請求項12】 請求項1ないし10のいずれか1項に記
    載の方法に使用するための薄膜。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2002075319A1 (fr) * 2001-03-15 2002-09-26 Shiseido Company, Ltd. Compositions pour detecter un facteur de vieillissement de la peau et methode de detection

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2002075319A1 (fr) * 2001-03-15 2002-09-26 Shiseido Company, Ltd. Compositions pour detecter un facteur de vieillissement de la peau et methode de detection

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