JP2002000296A - プロテアーゼ活性の測定方法 - Google Patents

プロテアーゼ活性の測定方法

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JP2002000296A
JP2002000296A JP2000187060A JP2000187060A JP2002000296A JP 2002000296 A JP2002000296 A JP 2002000296A JP 2000187060 A JP2000187060 A JP 2000187060A JP 2000187060 A JP2000187060 A JP 2000187060A JP 2002000296 A JP2002000296 A JP 2002000296A
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protease
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gelatin
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Riyouichi Nemori
良一 根守
Masayoshi Yamamoto
正義 山本
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 プロテアーゼ活性を迅速に測定することがで
きる方法を提供する。 【解決手段】 プロテアーゼ活性の測定方法であって、
支持体表面に形成され、少なくとも一種のプロテアーゼ
基質を含有する架橋された及び/又は実質的に水に溶け
ない薄膜に対して、プロテアーゼを含む生体試料を接触
させる工程;及び該薄膜を染色してプロテアーゼの作用
により該薄膜に形成された消化痕を検出する工程を含む
方法であって、生体試料と該薄膜を接触させた後、該薄
膜を0℃〜10℃に保ち、その後プロテアーゼの反応に
適した温度に保つことを特徴とするプロテアーゼの測定
方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プロテアーゼの測
定方法に関するものである。より具体的には、癌細胞の
浸潤活性や転移活性などの癌の悪性度、歯周炎などの歯
周病の進行度、リウマチ性関節炎などにおける破壊性病
変などの正確な診断を可能にするプロテアーゼ測定方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】癌細胞の浸潤や転移、歯周炎などの歯周
病の進行、リウマチ性関節炎などにおける組織破壊の進
行、創傷治癒過程、個体発生過程などにおいて、マトリ
ックスメタロプロテアーゼ、プラスミノーゲンアクティ
ベーターなど種々のプロテアーゼが関与することが知ら
れており、それらのプロテアーゼの検出及び定量方法と
して、抗体を用いたイミュノアッセイ法、イミュノブロ
ッティング法、電気泳動ザイモグラフィー法などが知ら
れている。また、組織中におけるプロテアーゼの活性を
測定する方法として、The FASEB Journal, Vol.9, Jul
y, pp.974-980, 1995又はWO97/32035に開示されたいわ
ゆるin situ zymography法が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】国際公開WO97/32035号
公報に示されるプロテアーゼ活性の測定方法において
は、生体試料中に含まれるプロテアーゼ活性を測定する
ために、試料と薄膜を接触させた後、37℃で6時間か
ら30時間インキュベートして反応させることが記載さ
れている。しかしながら、この方法は時間がかかるとい
う問題を有しており、手術中の迅速な診断のためのプロ
テアーゼ活性測定や、手術後短時間に行うプロテアーゼ
活性測定には不適当であった。このため、プロテアーゼ
活性の測定を迅速に行うことができる手段の実現が強く
望まれていた。従って、本発明の課題はプロテアーゼ活
性を迅速に測定することができる方法を提供することに
ある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記の課題
を解決すべく鋭意努力した結果、プロテアーゼ基質を含
む薄膜と生体試料を接触させた後、該薄膜を0℃〜10
℃に保ち、その後プロテアーゼの反応に適した温度に保
つことにより、プロテアーゼの反応が促進され、消化痕
の形成が極めて迅速に行われることを見出した。本発明
はこれらの知見を基にして完成されたものである。
【0005】すなわち、本発明は、プロテアーゼ活性の
測定方法であって、支持体表面に形成され、少なくとも
一種のプロテアーゼ基質を含有する架橋された及び/又
は実質的に水に溶けない薄膜に対して、プロテアーゼを
含む生体試料を接触させる工程;及び該薄膜を染色して
プロテアーゼの作用により該薄膜に形成された消化痕を
検出する工程を含む方法であって、生体試料と該薄膜を
接触させた後、該薄膜を0℃〜10℃に保ち、その後プ
ロテアーゼの反応に適した温度に保つことを特徴とする
プロテアーゼの測定方法を提供するものである。
【0006】また、本発明により、プロテアーゼ活性の
測定方法であって、支持体表面に形成され、少なくとも
一種の色素及び少なくとも一種のプロテアーゼ基質を含
有する架橋された及び/又は実質的に水に溶けない薄膜
に対してプロテアーゼを含む生体試料を接触させる工
程;及び該薄膜を水洗してプロテアーゼの作用により該
薄膜に形成された消化痕を検出する工程を含む方法であ
って、生体試料と該薄膜を接触させた後、該薄膜を0℃
〜10℃に保ち、その後プロテアーゼの反応に適した温
度に保つことを特徴とするプロテアーゼの測定方法が提
供される。
【0007】本発明の方法は、上記薄膜と生体試料とを
接触させた後、プロテアーゼの作用により薄膜に消化痕
を形成させるための工程(プロテアーゼの反応に適した
温度に薄膜を保つ工程)に先立って、該薄膜を0℃〜1
0℃に保つことを特徴とする方法である。本発明の好ま
しい態様によれば、該薄膜を0℃〜10℃に1分間〜1
時間保ち、その後プロテアーゼの反応に適した温度に保
つ上記方法;薄膜が0.0001〜1モル/m2のカル
シウムイオンを含有する上記方法が提供される。また、
好ましい方法では、上記の処理のいずれか又は全部を飽
和湿度下にて行うことができ、特に好ましい方法では生
体試料と該薄膜を接触させた後、飽和湿度下で該薄膜を
0℃〜10℃に保ち、その後飽和湿度下でプロテアーゼ
の反応に適した温度に保つことができる。薄膜は架橋さ
れていてもよく、硬膜剤を含んでいてもよい。また、薄
膜は単層又は重層の構造を有していてもよい。薄膜が色
素を含む場合には、2種以上の色素を含んでいてもよ
く、重層構造の薄膜においては、各層ごとに異なる色素
を含んでいてもよい。
【0008】上記の発明の好ましい態様によれば、生体
試料が、ヒトを含む哺乳類動物、好ましくは患者、疾患
が疑われる哺乳動物、実験動物などから分離・採取した
生体試料である上記方法が提供される。生体試料とし
て、組織片などの固形試料のほか、組織から吸引により
採取した細胞又は組織片を含む試料、血液、リンパ液、
唾液などの非固形試料などを用いることができる。例え
ば、生体試料が癌組織、リンパ節、歯周病組織、歯肉溝
滲出液、破壊性病変組織または液(例えばリウマチ性病
変の関節液または歯槽膿漏組織抽出液)、胸水、腹水、
脳脊髄液、乳腺異常分泌液、卵巣嚢胞液、腎臓嚢胞液、
膵液、喀痰、血液あるいは血球である上記方法は本発明
の好ましい態様である。連続した切片を用いる方法では
生体試料として組織切片を用いることができる。プロテ
アーゼがマトリックスメタロプロテアーゼ又はセリンプ
ロテアーゼである上記方法は好ましい態様である。
【0009】また、さらに好ましい態様によれば、薄膜
がゼラチン又はカゼインを含む薄膜である上記方法;薄
膜の消化痕を薄膜の色素と識別可能な染料で染色する上
記方法;消化痕の検出を顕微鏡を用いた目視により判定
する上記方法;画像処理装置を用いて消化痕の定量又は
数値化を行う上記方法が提供される。プロテアーゼ基質
を含有する薄膜はさらにプロテアーゼインヒビターを含
有してもよいが、その場合、プロテアーゼ・インヒビタ
ーはキレート剤、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害
剤、又はセリンプロテアーゼ阻害剤であることが好まし
い。
【0010】
【発明の実施の形態】本明細書において用いられる測定
方法という用語は、定性及び定量を含めて最も広義に解
釈されるべきである。また、本明細書において「〜」で
示される数値範囲は下限及び上限の数値を含む範囲であ
る。
【0011】本発明において「架橋された及び/又は実
質的に水に溶けない薄膜」とは、支持体表面上に形成さ
れた薄膜を30℃の水に30分間浸漬した場合に実質的
にプロテアーゼ基質が水中に溶出することがないことを
意味している。薄膜は、一般的には硬膜剤を用いたプロ
テアーゼ基質の架橋により製造することができるが、必
ずしも硬膜剤を必要としない場合もある。例えば、コラ
ーゲン薄膜の焼付けによる架橋は米国特許第4,931,386
号明細書に記載されており、またアミノ基転移酵素によ
り蛋白質を架橋することも可能である。
【0012】薄膜の製造には、一般的には、有機又は無
機の硬膜剤を用いることができる。このような硬膜剤
は、例えばゼラチンなどの硬化促進のために利用可能な
硬膜剤から適宜選択すればよいが、測定の対象となるプ
ロテアーゼの活性に影響を与えないものを選択する必要
がある。例えば、活性ハロゲン化合物(2,4−ジクロ
ロ−6−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジン及びその
ナトリウム塩など)及び活性ビニル化合物(1,3−ビ
スビニルスルホニル−2−プロパノール、1,2−ビス
(ビニルスルホニルアセトアミド)エタン、ビス(ビニ
ルスルホニルメチル)エーテル、及びビニルスルホニル
基を側鎖に有するビニル系ポリマーなど)を用いること
ができ、1,2−ビス(ビニルスルホニルアセトアミ
ド)エタンを用いることが好ましい。
【0013】本発明の対象となるプロテアーゼとして
は、例えば、マトリックス・メタロプロテアーゼ及びセ
リンプロテアーゼを挙げることができ、これらの酵素に
ついては、鶴尾隆編「癌転移の分子機構」、pp.92-10
7、メジカルビュー社、1993年発行に詳細に説明されて
いる。本発明の方法に特に好適なプロテアーゼとして、
例えば、間質型コラーゲナーゼ(MMP-1)、ゼラチナーゼ
A (MMP-2)、及びゼラチナーゼB (MMP-9)などのマトリ
ックス・メタロプロテアーゼ;及びプラスミノーゲン・
アクティベーター(PA)などのセリンプロテアーゼを挙げ
ることができるが、本発明の方法の対象は上記の特定の
プロテアーゼに限定されることはない。
【0014】プロテアーゼ基質は、プロテアーゼの基質
として分解される高分子化合物であれば特に限定されな
い。例えばコラーゲン、ゼラチン、プロテオグリカン、
フィブロネクチン、ラミニン、エラスチン、カゼイン、
カルボキシメチルトランスフェリン等のトランスフェリ
ン誘導体、またはカルボキシメチル血清アルブミン等の
アルブミン誘導体などを用いることができる。好ましく
は、コラーゲン、ゼラチン、カゼイントランスフェリン
誘導体または血清アルブミン誘導体を用いることがで
き、より好ましくはゼラチン又は血清アルブミン誘導体
を用いることができる。ゼラチンを用いる場合には、ゼ
ラチンの種類は特に限定されず、例えば、牛骨アルカリ
処理ゼラチン、豚皮膚アルカリ処理ゼラチン、牛骨酸処
理ゼラチン、牛骨フタル化処理ゼラチン、豚皮膚酸処理
ゼラチンなどを用いることができる。血清アルブミン誘
導体を用いる場合にはカルボキシメチル化牛血清アルブ
ミン、カルボキシメチル化ヒト血清アルブミンなどを用
いることができる。プロテアーゼ基質は上記の1種を用
いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】2種以上の異なるプロテアーゼ基質を組み
合わせて用いることにより、生体試料中に含まれるプロ
テアーゼの種類を正確に特定できる場合がある。例え
ば、生体試料中の実質的に連続した切片のうちの一つを
ある種のプロテアーゼ基質を含む薄膜に接触させて消化
痕を検出し、他の切片を異なるプロテアーゼ基質を含む
薄膜に接触させて薄膜上の消化痕を検出し、それぞれの
結果を対比することができる。比較のためにそれぞれ異
なるプロテアーゼ基質を含む薄膜を2種以上用いてもよ
い。プロテアーゼ基質を含む薄膜としては、乾燥後の膜
厚が1〜10μm、好ましくは3〜7μmのものを用いる
ことが好適である。
【0016】薄膜は支持体表面に形成されるが、支持体
の材質や形状は特に限定されない。薄膜上の表面変化を
顕微鏡下で観察するような場合や、吸光度測定や蛍光測
定などの分光学的手段により表面変化を検出する場合に
は、例えば、薄膜は平面状の透明又は半透明の支持体上
に形成されることが好ましい。このような透明又は半透
明の高分子支持体としては、例えば、ポリエチレンテレ
フタレート、ポリエチレンナフタレート、アタクティッ
クポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、
ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリメチ
ルメタクリレート、ポリスルフォン、ポリアリレート等
からなる透明又は半透明プラスチックフイルムなどを用
いることができる。特に好ましいのはポリエチレンテレ
フタレート、シンジオタクティックポリスチレン、ポリ
アリレートであるが、ポリエチレンテレフタレートを用
いることが最も好ましい。用いる支持体自体に着色が施
されていてもよい。
【0017】支持体の厚さは特に限定されないが、50
〜300μmが好ましく、より好ましくは100〜20
0μmである。特に好ましくは175μm程度のものを
用いることができる。該支持体上の薄膜は単層又は重層
で形成することができるが、薄膜はできる限り均一な表
面を与えるように調製すべきである。例えば、乾燥後の
膜厚が1〜10μm 、好ましくは3〜7μm程度にな
るように調製することが好ましい。
【0018】薄膜の調製には、例えば、プロテアーゼ基
質の水溶液に、必要に応じて硬膜剤の所定量、及び必要
に応じて色素溶液、色素分散物、水溶性ポリマーなどを
加えて均一に混合し、得られた溶液又は分散液を支持体
表面に塗布して乾燥すればよい。塗布方法としては、例
えば、ディップ塗布法、ローラー塗布法、カーテン塗布
法、押し出し塗布法などを採用することができる。もっ
とも、薄膜の調製方法はこれらに限定されることはな
く、例えば、写真用フイルムの技術分野などにおいて汎
用されている薄膜形成方法などを適宜採用することが可
能である。
【0019】薄膜を支持体上に形成するにあたり、薄膜
と支持体との接着を改善するために、薄膜と支持体表面
との間に下塗り層を設けてもよい。例えば、塩化ビニ
ル、塩化ビニリデン、ブタジエン、スチレン、メタクリ
ル酸、アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸等から
選ばれるモノマーの1種又は2種以上を重合させて得ら
れる重合体又は共重合体、ポリエチレンイミン、エポキ
シ樹脂、グラフト化ゼラチン、又はニトロセルロースな
どの重合体を下塗り層として形成することができる。ま
た、ポリエステル系支持体を用いる場合には、下塗り層
に替えて、支持体表面をコロナ処理、紫外線処理、又は
グロー処理することによっても、支持体と薄膜との接着
力を改善できる場合がある。コロナ処理、紫外線処理、
又はグロー処理を行った後下塗り層を塗布する方法も支
持体と薄膜との接着力を改善できる。
【0020】本明細書において用いられる「支持体表面
上に形成された薄膜」という用語またはその同義語につ
いては、このような1又は2以上の下塗り層及び/又は
支持体表面の処理を排除するものと解釈してはならな
い。もっとも、薄膜と支持体との接着を改善するための
手段は上記のものに限定されることはなく、例えば、写
真用フイルムの技術分野などにおいて汎用されている手
段を適宜採用することができる。また、薄膜が複数の層
を重層してなる場合には、重層される2つの層の間にさ
らに中間層を設けてもよく、2つの層が直接接触してい
る場合に限定して解釈してはならない。このような中間
層を適宜配置する手段は、例えば、写真用フイルムの技
術分野などにおいて汎用されている。また、支持体表面
上に形成された膜の表面に保護層を設けることも好まし
く、その技術も写真用フイルムの技術分野などにおいて
汎用されている。
【0021】本発明の方法で使用する薄膜には色素を配
合することができる。色素を配合した場合には、薄膜を
水洗することによりプロテアーゼの作用により薄膜に形
成された消化痕を検出することが可能になる。色素とし
ては可視域に吸収を有するものであれば特に制限はな
く、公知の物質を含む種々の色素を使用することができ
る。色素として、蛍光色素又は蛍光色素以外の色素のい
ずれを用いてもよいが、高分子支持体を用いる場合には
蛍光色素以外の色素を用いることが好ましい。1種類の
色素を用いてもよいが、2種以上の色素を組み合わせて
用いてもよい。色素としては染料又は顔料のいずれを用
いてもよく、両者を組み合わせて用いてもよい。例え
ば、重層した薄膜を用いる場合には、各層に異なる色の
色素を配合することができる。薄膜中への色素の添加量
は特に限定されないが、薄膜の面積に対する色素合計量
として0.001〜10 mmol/m2、好ましくは0.01〜1 mmol/m2
である。
【0022】染料としては、例えば、アゾ染料、アゾメ
チン染料、インドアニリン染料、ベンゾキノン染料、ナ
フトキノン染料、アントラキノン染料、ジフェニルメタ
ン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、ア
クリジン染料、アジン染料、オキサジン染料、チアジン
染料、オキソノール染料、メロシアニン染料、シアニン
染料、アリーリデン染料、スチリル染料、フタロシアニ
ン染料、ペリノン染料、インジゴ染料、チオインジゴ染
料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料などを挙
げることができる。具体的な化合物については「新版染
料便覧」(有機合成化学協会編;丸善,1970)、
「カラーインデックス」(The Society of Dyers and c
olourists)、「色材工学ハンドブック」(色材協会
編;朝倉書店、1989)などに記載されている。薄膜
の製造には水溶性の染料を用いることもできるが、油溶
性の染料は酵素反応に対して悪影響を及ぼさない点で好
適である。薄膜に配合可能な好ましい染料の具体例は特
願平11−365074号明細書に記載されているが、
それらの色素に限定されることはない。
【0023】本発明に用いられる顔料の種類は特に限定
されず、有機又は無機のいずれの顔料を用いてもよい。
また、顔料としては、市販のものの他、各種文献に記載
されている公知のものや新規化合物を利用できる。具体
的には、有機顔料としては、例えば、アゾ顔料(アゾレ
ーキ顔料、不溶性モノアゾ顔料、不溶性ジスアゾ顔料、
縮合アゾ顔料、金属錯塩アゾ顔料、キレートアゾ顔
料)、多環式顔料(フタロシアニン系顔料、アントラキ
ノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、インジゴ系
顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオ
キサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロ
ン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等)、染付けレ
ーキ顔料(酸性または塩基性染料のレーキ顔料)、アジ
ン顔料等、その他の顔料(ニトロソ顔料、アリザリンレ
ーキ顔料、アルカリブルー)などを挙げることができ、
無機顔料としては群青、コバルトブルーなどを挙げるこ
とができる。
【0024】これらのうち、油溶性の顔料は酵素反応に
対して悪影響を及ぼさない点で好適である。また、好ま
しい青味の色調を得るためには、フタロシアニン顔料、
アントラキノン系のインダントロン顔料、染め付けレー
キ顔料系のトリアリールカルボニウム顔料、インジゴ、
無機顔料の群青、コバルトブルーなどが好ましい。さら
に色調を調整するために、赤ないし紫色の顔料、例え
ば、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、ジケト
ピロロピロール系顔料を上記青色顔料と併用してもよ
い。顔料に関しては、カラーインデックス(The Societ
y of Dyers and Colourists編)、「改訂新版顔料便
覧」日本顔料技術協会編(1989年刊)、「最新顔料
応用技術」CMC出版(1986年刊)、「印刷インキ
技術」CMC出版(1984年刊)、W. Herbst, K. Hu
nger共著による Industrial Organic Pigments(VCH Ve
rlagsgesellschaft、1993年刊)等がある。
【0025】青色顔料の例としては、好ましくは、フタ
ロシアニン系のC.I.Pigment Blue 15、同15:1、同15:
2、同15:3、同15:4、同15:6(銅フタロシアニン)、モ
ノクロロないし低塩素化銅フタロシアニン、C.I.Pigmen
t Blue 16(無金属フタロシアニン)、中心金属がZ
n、Al、Tiであるフタロシアニン、バット染料とし
ても知られるインダントロン系のC.I.Pigment blue 60
やそれらのハロゲン置換体、例えばC.I.PigmentBlue 6
4、同21、アゾ系のC.I.Pigment Blue 25、インジゴ系の
C.I.Pigment Blue66及びレーキ顔料であるC.I.Pigment
Blue 63、トリアリールカルボニウム型酸性染料あるい
は塩基性染料のレーキ顔料であるC.I.PigmentBlue 1、
同2、同3、同9、同10、同14、同18、同19、同24:1、同2
4:x、同56、同61、同62などが挙げられる。
【0026】赤ないし紫顔料としては、好ましくは、ジ
オキサジン系のC.I.Pigment Violet23、同37、アゾ系の
C.I.Pigment Violet 同13、同25、同32、同44、同50、
C.I.Pigment Red 23、同52:1、同57:1、同63:2、同14
6、同150、同151、同175、同176、同185、同187、同24
5、キナクリドン系の C.I.Pigment Violet 19、同42、
C.I.Pigment Red 122、同192、同202、同207、同209、
トリアリールカルボニウム系のレーキ顔料であるC.I.Pi
gment Violet 1、同2、同3、同27、同39、C.I.Pigment
Red 81:1、 ペリレン系のC.I.Pigment Violet 29、アン
トラキノン系のC.I.Pigment Violet 5:1、同31、同33、
チオインジゴ系のC.I.Pigment Red 38、同88などが挙げ
られる。
【0027】薄膜の製造には、上述の顔料それ自体を用
いてもよいが、表面処理を施された顔料を用いてもよ
い。表面処理の方法には、例えば、樹脂やワックスを表
面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応
性物質(例えば、シランカップリング剤やエポキシ化合
物、ポリイソシアネートなど)を顔料表面に結合させる
方法などを挙げることができ、その具体的手段は「金属
石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」
(CMC出版、1984)、「最新顔料応用技術」(C
MC出版、1986)などに記載されている。
【0028】薄膜の製造にあたり、一般的には、顔料を
プロテアーゼ基質中に分散させることが望ましく、その
目的のために分散剤を用いることができる。分散剤の種
類は特に限定されず、用いるプロテアーゼ基質と顔料と
の組み合わせに応じて種々のもの、例えば界面活性剤型
の低分子分散剤や高分子型分散剤などを用いることがで
きる。疎水性のプロテアーゼ基質中で用いる場合には、
分散安定性の観点から高分子型分散剤を用いることが好
ましい。分散剤の例としては、特開平3−69949号
公報、欧州特許公開549486号公報等に記載のもの
を挙げることができる。
【0029】薄膜の製造に使用される顔料の粒径は、例
えば、分散後に0.01〜10μmの範囲であることが
好ましく、0.05〜1μmであることがさらに好まし
い。顔料をプロテアーゼ基質中に分散する方法として
は、インク製造やトナー製造時に用いられる公知の分散
技術を利用できる。分散機としては、例えば、サンドミ
ル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボール
ミル、インペラー、デスパーサー、KDミル、コロイド
ミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等
を挙げることができ、その手法の詳細は「最新顔料応用
技術」(CMC出版、1986)に記載されている。
【0030】薄膜には、染料を固体微粒子分散物として
添加することができる。染料の固体微粒子分散物は、所
望により適当な溶媒(水、アルコールなど)を用い、ボ
ールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、サンドミ
ル、コロイドミル、ジェットミル、ローラーミル等の分
散機を用いて調製することができるが、縦型あるいは横
型の媒体分散機を用いることが好ましい。また、染料を
適当な溶媒中に溶解させたのち貧溶媒に添加して微結晶
を析出させる方法や、pHをコントロールすることによ
ってまず染料を溶解させ、その後pHを変化させて微結
晶を析出させる方法などを利用しても分散物を得ること
ができる。いずれの場合も分散剤を用いることが好まし
い。
【0031】染料の固体微粒子分散物を含有する薄膜
は、上記のようにして得た染料の固体微粒子を適当なプ
ロテアーゼ基質中に分散させることによってほぼ均一な
固体微粒子分散物を調製した後、これを所望の支持体上
に塗設することによって形成することができる。また、
解離状態の染料を塩の形で水溶液として塗布した後、酸
性のゼラチンを上塗りすることにより、析出分散を塗布
時に得る方法を採用してもよい。分散剤としては、例え
ば、公知のアニオン性、カチオン性、ノニオン性、又は
両性の低分子又は高分子分散剤を用いることができる。
例えば、特開昭52−92716号公報、国際公開WO
88/04794号、特開平10−20496号公報に
記載の分散剤を挙げることができる。特にアニオン性及
び/又はノニオン性の高分子分散剤の使用が好ましい。
【0032】薄膜に含まれる色素は、特開昭62−21
5272号公報(125頁右上欄2行目〜127頁左下
欄末行)、特開平2−33144号公報(37頁右下欄
14行目〜38頁左上欄11行目)、欧州特許公開EP
0.355.600A2号(85頁22行目〜31行
目)に記載の紫外線吸収剤、特開平07−104448
号公報(第70欄10行目〜第71欄2行目)記載の退
色防止剤と併用することもできる。
【0033】また、薄膜への色素の導入は、例えば、特
開平07−104448号公報(第71欄3行目〜第7
2欄11行目)などに記載の種々の公知分散方法により
行うことができるが、高沸点有機溶媒(必要に応じて低
沸点有機溶媒を併用してもよい)に溶解し、ゼラチンな
どのプロテアーゼ基質水溶液に乳化分散する水中油滴分
散法を採用してもよい。水中油滴分散法に用いられる高
沸点溶媒の例は米国特許第2,322,027号明細書
などに記載されている。また、ポリマー分散法の1つと
してのラテックス分散法及びラテックスの具体例は、米
国特許第4,199,363号明細書、西独特許出願第
(OLS)2,541,274号明細書、同2,54
1,230号明細書、特公昭53−41091号公報、
及び欧州特許公開第029104号公報等に記載されて
おり、これらを薄膜製造に利用してもよい。また、有機
溶媒可溶性ポリマーによる分散法について国際公開WO
88/00723号公報に記載されている。
【0034】水中油滴分散法に用いることのできる高沸
点有機溶媒としては、例えば、フタール酸エステル類
(例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレー
ト、ジシクロへキシルフタレート、ジ−2−エチルヘキ
シルフタレート、デシルフタレート、ビス(2,4−ジ
−tert−アミルフェニル)イソフタレート、ビス
(1,1−ジエチルプロピル)フタレート)、リン酸又
はホスホンのエステル類(例えば、ジフェニルホスフェ
ート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフ
ェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、
ジオクチルブチルホスフェート、トリシクロヘキシルホ
スフェート、トリ−2−エチルヘキシルホスフェート、
トリドデシルホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルフ
ェニルホスフェート)、安息香酸エステル酸(例えば、
2−エチルヘキシルベンゾエート、2,4−ジクロロベ
ンゾエート、ドデシルベンゾエート、2−エチルヘキシ
ル−p−ヒドロキシベンゾエート)、アミド類(例え
ば、N,N−ジエチルドデカンアミド、N,N−ジエチ
ルラウリルアミド)、アルコール類またはフェノール類
(イソステアリルアルコール、2,4−ジ−tert−
アミルフェノールなど)、脂肪族エステル類(例えば、
コハク酸ジブトキシエチル、コハク酸ジ−2−エチルヘ
キシル、テトラデカン酸2−ヘキシルデシル、クエン酸
トリブチル、ジエチルアゼレート、イソステアリルラク
テート、トリオクチルシトレート)、アニリン誘導体
(N,N−ジブチル−2−ブトキシ−5−tert−オ
クチルアニリンなど)、塩素化パラフィン類(塩素含有
量10%〜80%のパラフィン類)、トリメシン酸エス
テル類(例えば、トリメシン酸トリブチル)、ドデシル
ベンゼン、ジイソプロピルナフタレン、フェノール類
(例えば、2,4−ジ−tert−アミルフェノール、
4−ドデシルオキシフェノール、4−ドデシルオキシカ
ルボニルフェノール、4−(4−ドデシルオキシフェニ
ルスルホニル)フェノール)、カルボン酸類(例えば、
2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ酪酸、
2−エトキシオクタンデカン酸)、アルキルリン酸類
(例えば、ジ−2(エチルヘキシル)リン酸、ジフェニ
ルリン酸)などが挙げられる。また、補助溶媒として沸
点が30℃以上約160℃以下の有機溶剤(例えば、酢
酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、メチルエ
チルケトン、シクロヘキサノン、2−エトキシエチルア
セテート、ジメチルホルムアミド)を併用してもよい。
【0035】高沸点有機溶媒の量は用いられる色素1g
に対して10g以下、好ましくは5g以下、より好まし
くは1g〜0.1gである。また、プロテアーゼ基質1
gに対して1ml以下、好ましくは0.5ml以下、さ
らに好ましくは0.3ml以下が適当である。疎水性の
色素を親水性コロイドに分散する際には、種々の界面活
性剤を用いることができる。例えば、特開昭59−15
7636号公報の第37〜38頁、リサーチ・ディスクロー
ジャー(以下、RDと略す)17643に界面活性剤とし
て挙げられたものを使うことができる。
【0036】薄膜中には少なくとも一種のプロテアーゼ
基質のほか、必要に応じて少なくとも一種の色素を配合
でき、さらに必要に応じて硬膜剤のほか、各種の添加物
を加えてもよい。添加物としては、例えば薄膜の塗布を
容易にするための界面活性剤、色素を分散するためのオ
イル又は乳化剤、防腐剤、防かび剤、pHを調節するた
めの酸または塩基、酵素活性を調節するためのCa++等の
無機イオンがあげられるが、これらに限定されることは
ない。薄膜が0.0001〜1モル/m2のカルシウム
イオンを含むことが好ましい。また、薄膜には帯電防止
の手段が施されていてもよい。例えば、プロテアーゼ基
質層側又はその反対側の表面電気抵抗が1012Ω以下で
あるものを好ましく用いることができる。膜の表面電気
抵抗を低下させるための手段としては、例えば、写真用
フイルムに利用されている技術を採用することができ
る。
【0037】例えば、薄膜の製造には、以下に示すよう
な添加剤を必要に応じて使用することができる。硬膜剤
(RD17643:26頁;RD18716:651頁左欄;RD307105:874
〜875頁)、バインダー(RD17643:26頁;RD18716:651
頁左欄;RD307105:873〜874頁)、可塑剤又は潤滑剤
(RD17643:27頁;RD18716:650頁右欄;RD307105:876
頁)、塗布助剤又は界面活性剤(RD17643:26〜27頁;R
D18716:650頁右欄;RD307105:875〜876頁)、帯電防
止剤(RD17643:27頁;RD18716:650頁右欄;RD30710
5:876〜877頁)、マット剤(RD307105:878〜879
頁)。これらの添加剤はいずれも写真用フイルムの技術
分野において汎用されており、薄膜の製造に同様に利用
できる。
【0038】本発明の方法に用いる生体試料としては、
ヒトを含む哺乳類動物から分離・採取された生体試料を
用いることができる。例えば、罹患した哺乳類動物、疾
患の存在が疑われる哺乳動物、又は実験動物などから分
離・採取した生体試料を用いることができる。生体試料
の形態は特に限定されないが、組織切片などの固形試料
や体液などの非固形試料を用いることができる。非固形
試料としては、例えば、組織から吸引により採取した細
胞又は組織片を含む試料、血液、リンパ液、唾液などの
体液を用いることができる。例えば、肺癌、胃癌、食道
癌、大腸癌、乳癌、子宮癌、卵巣癌、甲状腺癌、肝臓
癌、口腔癌、前立腺癌、腎臓癌、膀胱癌などの癌組織か
ら手術や組織検査などにより分離・採取した癌組織、リ
ンパ節、歯周病組織、リウマチ性関節炎の滑膜や骨組織
などの組織から手術や組織検査などにより分離・採取し
た組織、歯肉溝滲出液、破壊性病変組織に含まれる液
(例えばリウマチ性病変の関節液又は歯槽膿漏組織抽出
液)、胸水、腹水、脳脊髄液、乳腺異常分泌液、卵巣嚢
胞液、腎臓嚢胞液、喀痰、血液あるいは血球などを用い
ることができる。
【0039】試料が組織の場合には、例えば、液体窒素
で急速凍結した試料から凍結切片作成装置を用いて厚さ
1〜10μm、好ましくは4〜6μmの切片を調製し、こ
の切片を薄膜に貼付することによって試料と薄膜とを接
触させることができる。穿刺吸引により採取した細胞又
は組織片を含む非固形試料についても、コンパウンドな
どの成形材料と混合して液体窒素で急速凍結し、同様に
切片を作製して用いることができる。また、組織から穿
刺吸引により採取した細胞又は組織片を含む非固形試料
をそのまま用いる場合には、吸引した試料を薄膜上に吐
出させ、細胞を分散状態で薄膜に接着させればよい。さ
らに、生体試料が生の組織片の場合は、採取した組織の
水分を軽く拭った後、プロテアーゼ基質を含む薄膜の上
にスタンプすることによって試料と薄膜とを接触させる
ことができる。
【0040】また、リウマチ性関節炎の患者から採取し
た滑膜液の様な非固形試料を用いる場合には、試料を適
当な濃度に希釈し、及び/又は必要な前処理を行った後
に、約1〜50 μL、好ましくは1〜20 μL程度を薄膜上に
滴下すればよい。歯周病の歯肉溝滲出液を試料として用
いる場合には、歯肉溝内に濾紙を挿入して約5〜10μL程
度の歯肉溝滲出液を採取し、該濾紙を薄膜に貼付する方
法を採用することができる。歯肉溝滲出液の採取後、必
要に応じて蒸留水や適宜の緩衝液(例えば、50 mM Tris
-HCl, pH 7.5, 10 mM CaCl2, 0.2 M NaClなど)を用い
て濾紙から歯肉溝滲出液を抽出し、抽出液を薄膜上に滴
下してもよい。より多量に採取できる体液試料(胸水、
腹水、嚢胞液など)の場合には、試料を入れた容器の中
に薄膜の一部を浸漬する方法により再現性のよい結果が
得られる。
【0041】本発明の方法では、プロテアーゼを含む組
織切片を薄膜に貼付するか、あるいは液体試料を滴下す
るなどの手段によって薄膜とプロテアーゼを含む生体試
料を接触させた後、該薄膜を0℃〜10℃の温度に保
ち、その後、薄膜をプロテアーゼの反応に適した温度に
保つことを特徴としている。プロテアーゼの反応に適し
た温度は、例えば30℃〜50℃の範囲の温度である。
プロテアーゼを含む生体試料を接触させた薄膜を0℃〜
10℃の温度に保つ時間は特に限定されないが、好まし
くは1分間〜1時間程度であるが、0℃〜10℃の温度
で1〜24時間程度保ってもさしつかえない。その後、
例えば37℃の飽和湿度条件下でプロテアーゼ基質の消
化に必要な時間薄膜をインキュベートすればよい。生体
試料と接触させた薄膜を0℃〜10℃の温度で適当な時
間保つことにより、プロテアーゼに適した温度でのプロ
テアーゼによる基質の消化が促進される。該薄膜を0℃
〜10℃の温度に保ち、その後、薄膜をプロテアーゼの
反応に適した温度に保つ工程の一部又は全部、好ましく
は全部を飽和湿度下で行うことができる。
【0042】基質の消化に必要な時間は試料や薄膜の種
類によって異なるが、好ましくは37〜42℃で5分間
〜10時間、さらに好ましくは37〜42℃で10分間
〜1時間インキュベートすることにより、生体試料中の
プロテアーゼによって薄膜中に消化痕を形成させること
ができる。その後、色素を含まない薄膜については薄膜
を染色し、色素を含む薄膜については水洗により消化さ
れた基質及び消化痕に残留した色素などを除去した後、
光学顕微鏡あるいは目視で消化痕を観察することができ
る。
【0043】生体試料中の実質的に連続した2以上の切
片のうちの一つをプロテアーゼ・インヒビターを含まな
い薄膜に貼付し、他の切片の1つをプロテアーゼ・イン
ヒビターを含む薄膜に貼付して、両者の薄膜の消化痕を
比較することにより、プロテアーゼの種類を特定するこ
とが可能になる。プロテアーゼ・インヒビターの種類は
特に限定されないが、例えば、キレート剤、マトリック
スメタロプロテアーゼ阻害剤、又はセリンプロテアーゼ
阻害剤などを好適に用いることができる。
【0044】また、プロテアーゼ基質、色素、及び必要
に応じて硬膜剤を含む単層の薄膜を用いる場合には、試
料中のプロテアーゼにより薄膜が消化されるに従って薄
膜の光学濃度が減少するが、プロテアーゼ基質を含む薄
膜が重層塗布されており、各層に異なる色の色素が添加
されている場合には、試料中のプロテアーゼにより薄膜
が消化されるに従って、光学濃度とともに薄膜の色相が
変化する。このような薄膜を用いると、消化の強さを視
覚的に判定することが容易である。
【0045】本発明の方法で生体試料に含まれるプロテ
アーゼ活性を測定し、試料が由来した生体の状況、例え
ば癌の転移やリウマチの進行度などとの対応を調べるこ
とができる。消化痕における消化の強さの判定には、光
学顕微鏡下で目視で判定する方法、分光器により消化痕
の光学濃度を測定する方法、光学顕微鏡で得られる画像
をデジタルカメラまたはスキャナーを用いてコンピュー
ターに取り込み、画像解析の方法により消化痕における
各種の数値化を行う方法などのいずれを採用してもよ
い。画像解析を行う場合には種々のデータ処理法を用い
ることができ、その種類は特に限定されないが、消化痕
の面積、あるいは消化痕部分の濃度と面積の積分を用い
て消化の程度を数値化することが好ましい。
【0046】
【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに具体的に
説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定され
ることはない。 例1:ゼラチン薄膜の製造 豚皮酸処理ゼラチン10 gを純水127 gに溶解し、硬膜剤
として1,2-ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)エタ
ン(2%溶液)0.8 mLを添加した。この溶液を特願平11-
365074号明細書の実施例1に示すポリエチレンテレフタ
レート支持体に、乾燥膜厚が3μmになるように塗布
し、乾燥してゼラチン薄膜とした。この膜を50 mmol/L
の塩化カルシウム水溶液に10分間浸漬し、その後自然乾
燥した。
【0047】例2:赤色の色素を含むゼラチン薄膜の製
造 特願平11-365074号明細書の実施例1に示す方法により
赤色の色素乳化物を含むゼラチン薄膜を製造した。この
膜を100 mmol/Lの塩化カルシウム水溶液に10分間浸漬
し、その後自然乾燥した。
【0048】例3:各層に異なる色の色素を含む多層構
成のゼラチン膜の製造 特願平11-365074号明細書の実施例3に示す方法により
各層に異なる色の色素乳化物を含む多層構成のゼラチン
膜を作製した。この膜を100 mmol/Lの塩化カルシウム水
溶液に10分間浸漬し、その後自然乾燥した。
【0049】例4:カルボキシメチルトランスフェリン
の作製 牛血清トランスフェリン 10 gを7 M塩酸グアニジンと10
mM EDTA 2ナトリウムを含む0.5 Mトリス-塩酸バッファ
ー(pH8.5)3リットルに溶解した。容器内を窒素ガスで
置換した後、ジチオスレイトール(Dithiothreitol) 10
gを加えた。室温で2時間撹拌した後、直射光の当たら
ないところで秤量したヨード酢酸25 gを加え、遮光下で
室温30分間反応させた。反応終了後、カットオフ分子量
7,000の透析膜を用いて透析し脱塩した。得られた反応
物をSDSポリアクリルアミド電気泳動により調べたとこ
ろ、反応原料のトランスフェリンが分子量約82,000のバ
ンドを示したのに対し、反応物は分子量が約88,000と増
加した位置にバンドを示した。
【0050】例5:カルボキシメチルトランスフェリン
の薄膜の作製 (塗布液の調製および塗布)例4の操作により得られた
カルボキシメチルトランスフェリン3 gを100 mLの純水
に溶解し、塩酸によりpHを7.0に調整した。硬膜剤とし
て1,2-ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)エタンを
45 mg添加した。この溶液を特願平11-365074号明細書の
実施例1に示すポリエチレンテレフタレート支持体にカ
ルボキシメチルトランスフェリンを、乾燥膜厚が3μmに
なるよう塗布した。
【0051】例6:ゼラチン薄膜を用いたプロテアーゼ
活性の測定 外科手術により摘出し迅速凍結した乳癌検体を、凍結切
片作製装置を用いて-25℃で厚さ4μmに薄切し、その連
続切片を例1に従って製造した2枚のゼラチン薄膜に貼
り付けた。この膜の内1枚をすぐに湿箱に入れ4℃で5分
間静置し、その後37℃で4時間インキュベートした。残
りの1枚はすぐに湿箱に入れ37℃で4時間インキュベー
トした。インキュベーションが終わったそれぞれの薄膜
を、0.3%Biebrich Scarletの6%トリクロロ酢酸水溶液
とエタノールの等量混合液に2分間浸漬して染色し、軽
く水洗後続いてマイヤーのヘマトキシリン液に1分間浸
漬して核染色を行い、3分間水洗後10秒間エタノールに
浸漬して乾燥させた。乾燥後、組織切片を覆うようにカ
バーエイドフィルム(サクラ精機製)をキシレンを用い
て貼り付け乳癌切片を封入した。このフィルムをプラス
チック製のマウントに保持し、光学顕微鏡を用いて観察
した。4℃で5分間静置後37℃でインキュベートしたした
フィルムでは、乳癌組織切片中、核の形態より癌細胞が
存在すると考えられる部位にゼラチン消化が認められ、
プロテアーゼ活性が検出された。4℃に置かずに37℃で
インキュベートしたフィルムではゼラチン消化が検出さ
れなかった。
【0052】例7:赤色の色素を含むゼラチン薄膜を用
いたプロテアーゼ活性の測定 外科手術により摘出し迅速凍結した子宮癌検体を、凍結
切片作製装置を用いて-25℃で厚さ4μmに薄切し、例2
に従って製造した2枚の赤色の色素を含むゼラチン薄膜
に貼り付けた。この膜の内1枚をすぐに湿箱に入れ4℃
で5分間静置し、その後47℃で30分間インキュベートし
た。残りの1枚はすぐに湿箱に入れ47℃で30分間インキ
ュベートした。インキュベーションが終わったそれぞれ
の薄膜を5分間水洗した。マイヤーのヘマトキシリン液
に2分間浸漬して核染色を行い、5分間水洗後10秒間エ
タノールに浸漬して自然乾燥させた。乾燥後、組織切片
を覆うようにカバーエイドフィルム(サクラ精機製)を
キシレンを用いて貼り付け子宮癌切片を封入した。この
フィルムをプラスチック製のマウントに保持し、光学顕
微鏡を用いて観察した。4℃で5分間静置後47℃でインキ
ュベートしたしたフィルムでは、子宮癌組織切片中、核
の形態より癌細胞が存在すると考えられる部位にゼラチ
ン消化が認められ、プロテアーゼ活性が検出された。4
℃に置かずに47℃でインキュベートしたフィルムではゼ
ラチン消化が検出されなかった。
【0053】例8:各層に異なる色の色素を含む多層構
成のゼラチン膜を用いたプロテアーゼ活性の測定 外科手術により摘出し迅速凍結した肺癌検体を、凍結切
片作製装置を用いて-25℃で厚さ10μmに薄切し、例3で
製造した各層に異なる色の色素乳化物を含む多層構成の
ゼラチン膜2枚に接着させた。この膜の内1枚をすぐに
湿箱に入れ4℃で5分間静置し、その後42℃で60分間イン
キュベートした。残りの1枚はすぐに湿箱に入れ42℃で
60分間インキュベートした。インキュベーションが終わ
ったそれぞれの薄膜を5分間水洗した。乾燥後、組織切
片を覆うようにカバーエイドフィルム(サクラ精機製)
をキシレンを用いて貼り付け、肺癌切片を封入した。こ
のフィルムをプラスチック製のマウントに保持し、光学
顕微鏡を用いて観察した。4℃で5分間静置後45℃でイン
キュベートしたしたフィルムでは、肺癌組織切片中、核
の形態より癌細胞が存在すると考えられる部位にゼラチ
ン消化が認められ、プロテアーゼ活性が検出された。4
℃に置かずに45℃でインキュベートしたフィルムではゼ
ラチン消化が検出されなかった。
【0054】例9:カルボキシメチルトランスフェリン
薄膜を用いたプロテアーゼ活性の測定 外科手術により摘出し迅速凍結した甲状腺癌検体を、凍
結切片作製装置を用いて-25℃で厚さ4μmに薄切し、例
4および5で製造した2枚のカルボキシメチルトランス
フェリン薄膜に接着させた。この膜の内1枚をすぐに湿
箱に入れ4℃で5分間静置し、その後40℃で4時間インキ
ュベートした。残りの1枚はすぐに湿箱に入れ40℃で4
時間インキュベートした。インキュベーションが終わっ
たそれぞれの薄膜を0.3% Biebrich Scarletの6%トリ
クロロ酢酸水溶液とエタノールの等量混合液に2分間浸
漬して染色し、軽く水洗後続いてマイヤーのヘマトキシ
リン液に1分間浸漬して核染色を行い、3分間水洗後10
秒間エタノールに浸漬して乾燥させた。乾燥後、組織切
片を覆うようにカバーエイドフィルム(サクラ精機製)
をキシレンを用いて貼り付け甲状腺癌切片を封入した。
このフィルムをプラスチック製のマウントに保持し、光
学顕微鏡を用いて観察した。4℃で5分間静置後40℃でイ
ンキュベートしたしたフィルムでは、甲状腺癌組織切片
中、核の形態より癌細胞が存在すると考えられる部位に
ゼラチン消化が認められ、プロテアーゼ活性が検出され
た。4℃に置かずに40℃でインキュベートしたフィルム
ではゼラチン消化が検出されなかった。
【0055】例10:ゼラチン薄膜を用いたプロテアー
ゼ活性の測定 外科手術により摘出し迅速凍結した乳癌検体を、凍結切
片作製装置を用いて-25℃で厚さ4μmに薄切し、その連
続切片を例1に従って製造した2枚のゼラチン薄膜に貼
り付けた。ただし、このゼラチン薄膜の作製において
は、塩化カルシウム溶液への浸漬および乾燥の工程を行
わなかった。この膜の内1枚をすぐに湿箱に入れ0℃で
30分間静置し、その後37℃で6時間インキュベートし
た。残りの1枚はすぐに湿箱に入れ37℃で6時間インキ
ュベートした。インキュベーションが終わったそれぞれ
の薄膜を、0.3%Biebrich Scarletの6%トリクロロ酢
酸水溶液とエタノールの等量混合液に2分間浸漬して染
色し、軽く水洗後続いてマイヤーのヘマトキシリン液に
1分間浸漬して核染色を行い、3分間水洗後10秒間エタ
ノールに浸漬して乾燥させた。乾燥後、組織切片を覆う
ようにカバーエイドフィルム(サクラ精機製)をキシレ
ンを用いて貼り付け乳癌切片を封入した。このフィルム
をプラスチック製のマウントに保持し、光学顕微鏡を用
いて観察した。0℃で30分間静置後37℃でインキュベー
トしたしたフィルムでは、乳癌組織切片中、核の形態よ
り癌細胞が存在すると考えられる部位にゼラチン消化が
認められ、プロテアーゼ活性が検出された。4℃に置か
ずに37℃でインキュベートしたフィルムではゼラチン消
化が検出されなかった。
【0056】
【発明の効果】本発明の方法によれば、プロテアーゼ活
性を短時間に正確に測定できるとともに、薄膜上の組織
や細胞の形態観察を容易に行うことができる。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 プロテアーゼ活性の測定方法であって、
    支持体表面に形成され、少なくとも一種のプロテアーゼ
    基質を含有する架橋された及び/又は実質的に水に溶け
    ない薄膜に対して、プロテアーゼを含む生体試料を接触
    させる工程;及び該薄膜を染色してプロテアーゼの作用
    により該薄膜に形成された消化痕を検出する工程を含む
    方法であって、生体試料と該薄膜を接触させた後、該薄
    膜を0℃〜10℃に保ち、その後プロテアーゼの反応に
    適した温度に保つことを特徴とするプロテアーゼの測定
    方法。
  2. 【請求項2】 プロテアーゼ活性の測定方法であって、
    支持体表面に形成され、少なくとも一種の色素及び少な
    くとも一種のプロテアーゼ基質を含有する架橋された及
    び/又は実質的に水に溶けない薄膜に対してプロテアー
    ゼを含む生体試料を接触させる工程;及び該薄膜を水洗
    してプロテアーゼの作用により該薄膜に形成された消化
    痕を検出する工程を含む方法であって、生体試料と該薄
    膜を接触させた後、該薄膜を0℃〜10℃に保ち、その
    後プロテアーゼの反応に適した温度に保つことを特徴と
    するプロテアーゼの測定方法。
  3. 【請求項3】 0℃〜10℃に1分間〜1時間保ち、そ
    の後プロテアーゼの反応に適した温度に保つ請求項1又
    は2に記載の方法。
  4. 【請求項4】 薄膜が0.0001〜1モル/m2のカ
    ルシウムイオンを含む請求項1ないし3のいずれか1項
    に記載の方法。
  5. 【請求項5】 プロテアーゼの反応に適した温度が30
    ℃〜50℃の範囲の温度である請求項1ないし4のいず
    れか1項に記載の方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2008529545A (ja) * 2005-02-16 2008-08-07 シリアン アクチェンゲゼルシャフト 微生物のプロテアーゼ分泌欠損突然変異体を特定するスクリーニング方法

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