JP2003038172A - プロテアーゼを含む凍結ブロック - Google Patents

プロテアーゼを含む凍結ブロック

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JP2003038172A
JP2003038172A JP2001232278A JP2001232278A JP2003038172A JP 2003038172 A JP2003038172 A JP 2003038172A JP 2001232278 A JP2001232278 A JP 2001232278A JP 2001232278 A JP2001232278 A JP 2001232278A JP 2003038172 A JP2003038172 A JP 2003038172A
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protease
thin film
frozen
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protease activity
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JP2001232278A
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Masayoshi Yamamoto
正義 山本
Riyouichi Nemori
良一 根守
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Fujifilm Holdings Corp
Original Assignee
Fuji Photo Film Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 生体試料に含まれるプロテアーゼ活性を簡便
かつ正確に定量するための手段を提供する。 【解決手段】 ポリビニルピロリドンなどの水溶性ポリ
マー及びマトリックス・メタロプロテアーゼ類などのプ
ロテアーゼを含み、例えば凍結切片を調製するための凍
結ブロックであって、その一部又は全部を薄膜(該薄膜
はプロテアーゼ基質を含み支持体上に形成されている)
に接触させて消化痕を形成させるための凍結ブロック。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プロテアーゼ活性
の定量に用いるための凍結ブロック及び該ブロックから
調製された凍結切片に関するものである。より具体的に
は、生体試料に含まれるプロテアーゼ活性を簡便かつ正
確に定量するために用いる凍結ブロック及び該ブロック
から調製された凍結切片に関する。
【0002】
【従来の技術】癌細胞の浸潤や転移、歯周炎などの歯周
病の進行、リウマチ性関節炎などにおける組織破壊の進
行、創傷治癒過程、個体発生過程などにおいて、マトリ
ックスメタロプロテアーゼ、プラスミノーゲンアクティ
ベーターなど種々のプロテアーゼが関与することが知ら
れており、それらのプロテアーゼの検出及び定量方法と
して、抗体を用いたイミュノアッセイ法、イミュノブロ
ッティング法、電気泳動ザイモグラフィー法などが知ら
れている。また、組織中におけるプロテアーゼの活性を
測定する方法として、The FASEB Journal, Vol.9, Jul
y, pp.974-980, 1995又は国際公開WO97/32035号公報に
開示されたいわゆるin situ zymography法が知られてい
る。
【0003】国際公開WO97/32035号公報に開示されたプ
ロテアーゼ活性の測定方法によれば、ゼラチン等の薄膜
の染色にアミドブラック、クマジーブルーあるいはポン
ソーなどの色素を用いてプロテアーゼ活性を測定するこ
とができ、消化痕の大小などの判定によりプロテアーゼ
活性の強弱判定も可能であるが、プロテアーゼ活性の定
量という観点からは未だ満足すべきものではない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、生体
試料に含まれるプロテアーゼ活性を定量する手段を提供
することにある。より具体的には、本発明の課題は、国
際公開WO97/32035号公報に開示されたプロテアーゼ活性
の測定方法において、プロテアーゼ活性をより正確に定
量するための手段を提供することにある。また、本発明
の別の課題は、上記公報に開示されたプロテアーゼ活性
の測定用薄膜の品質評価のための手段を提供することに
ある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記の課題
を解決すべく鋭意努力した結果、活性又は濃度が既知の
プロテアーゼと水溶性ポリマーとを含む凍結ブロックを
調製し、その凍結ブロックから凍結切片を調製して該薄
膜に接触させることにより、プロテアーゼ定量を行うた
めの検量用消化痕を該薄膜に再現性よく形成させること
ができること、及び上記の検量用消化痕と生体試料によ
り形成された消化痕との比較を行うことによって該生体
試料中に含まれるプロテアーゼ活性を正確に定量できる
ことを見いだした。本発明は上記の知見を基にして完成
されたものである。
【0006】すなわち、本発明は、水溶性ポリマー及び
プロテアーゼを含む凍結ブロックであって、その一部又
は全部を、プロテアーゼ基質を含み支持体上に形成され
た薄膜(以下、本明細書において「プロテアーゼ活性測
定用薄膜」と呼ぶ場合がある。)に接触させて消化痕を
形成させるための凍結ブロックを提供するものである。
この凍結ブロックの一部をプロテアーゼ活性測定用薄膜
に接触させる場合には、凍結切片を調製して用いること
が好ましい。上記凍結ブロックに含まれるプロテアーゼ
としては、マトリックス・メタロプロテアーゼ類、コラ
ゲナーゼ類、トリプシン、エラスターゼ、キモトリプシ
ン、プラスミン、カテプシン類、及びそれらの混合物か
らなる群から選ばれるプロテアーゼが好ましく、水溶性
ポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ポバール酢
酸ビニル、ポリNビニルアセトアミド、カラギナン、ポ
リビニルアルコール、ポリビニルアルコールの末端アル
キル変性体、ポリエチレングリコール、デキストリン、
デキストラン、カルボキシメチルセルロース、アルギン
酸、及びそれらの混合物からなる群から選ばれる水溶性
ポリマーが好ましい。
【0007】本発明の好ましい態様によれば、プロテア
ーゼとしてクロストリジューム由来のコラゲナーゼを0.
1〜1000μg/mlの濃度で含有する上記の凍結ブロック、
及びプロテアーゼとしてウシ膵臓由来のトリプシンを0.
1〜1000 units/mlの濃度で含む上記の凍結ブロックが提
供される。
【0008】別の観点からは、本発明により、上記の凍
結ブロックから調製され、プロテアーゼ基質を含み支持
体上に形成された薄膜に接触させて消化痕を形成させる
ための凍結切片が提供される。この凍結切片は、プロテ
アーゼ活性の定量のための検量用消化痕の形成に用いる
ことができ、例えばプロテアーゼの濃度の定量を行うた
めに用いられる。また、上記の凍結切片は、プロテアー
ゼ基質を含み支持体上に形成された薄膜の品質評価のた
めの消化痕の形成に用いることができる。
【0009】さらに別の観点からは、プロテアーゼ活性
の定量方法であって、プロテアーゼ基質を含み支持体表
面に形成された薄膜に対して上記の凍結切片を接触させ
て該薄膜にプロテアーゼ活性の定量のための検量用消化
痕を形成させる工程を含む方法が本発明により提供され
る。この方法は、例えば、下記の工程: (1)プロテアーゼ基質を含み支持体表面に形成された薄
膜に対して、ヒトを含む哺乳類動物から分離・採取した
生体試料を接触させる工程; (2)プロテアーゼの作用により該薄膜に形成された消化
痕を検出する工程; (3)上記の凍結切片を該薄膜に接触させることにより該
薄膜に形成された検量用消化痕と、上記工程(2)で検出
された消化痕とを比較することにより、上記生体試料に
含まれるプロテアーゼ活性を定量する工程を含む。
【0010】さらに、本発明により、プロテアーゼ活性
測定用の薄膜の品質評価方法であって、プロテアーゼ基
質を含み支持体表面に形成された薄膜に対して上記の凍
結切片を接触させて該薄膜に品質評価用の消化痕を形成
させる工程を含む方法が提供される。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明により提供される凍結ブロ
ックは、水溶性ポリマー及びプロテアーゼを含み、その
一部又は全部をプロテアーゼ活性測定用薄膜(該薄膜は
プロテアーゼ基質を含み支持体上に形成された薄膜であ
る)に接触させて消化痕を形成させるために用いられ
る。凍結ブロックの一部を用いる場合には、凍結切片を
調製して用いることが好ましい。
【0012】本発明の凍結ブロックに含まれるプロテア
ーゼとしては、例えば、マトリックス・メタロプロテア
ーゼ類、コラゲナーゼ類、トリプシン、エラスターゼ、
キモトリプシン、プラスミン、及びカテプシン類からな
る群から選ばれるプロテアーゼを挙げることができる。
これらのプロテアーゼには、プロ体とアクティブ体が存
在するがアクティブ体(活性型プロテアーゼ)を用いる
ことが好ましい。プロテアーゼとして2種以上を組み合
わせて用いてもよい。
【0013】好ましいプロテアーゼとして、マトリック
ス・メタロプロテアーゼ及びセリンプロテアーゼを挙げ
ることができる。これらの酵素については、鶴尾隆編
「癌転移の分子機構」、pp.92-107、メジカルビュー
社、1993年発行に詳細に説明されている。本発明の凍結
ブロックの製造のために好適に利用可能なプロテアーゼ
として、例えば、間質型コラゲナーゼ(MMP-1)、ゼラチ
ナーゼA (MMP-2)、及びゼラチナーゼB (MMP-9)などの
マトリックス・メタロプロテアーゼ(MMP);及びプラス
ミノーゲン・アクティベーター(PA)などのセリンプロテ
アーゼを挙げることができ、特に好ましいプロテアーゼ
として、クロストリジューム由来のコラゲナーゼ又はウ
シ膵臓由来のトリプシンを挙げることができる。もっと
も、本発明の凍結ブロック製造のために利用可能なプロ
テアーゼは上記の特定のプロテアーゼに限定されること
はない。
【0014】水溶性ポリマーとしては、例えば、ポリビ
ニルピロリドン、ポバール酢酸ビニル、ポリNビニルア
セトアミド、カラギナン、ポリビニルアルコール、ポリ
ビニルアルコールの末端アルキル変性体、ポリエチレン
グリコール、デキストリン、デキストラン、カルボキシ
メチルセルロース、及びアルギン酸からなる群から選ば
れる水溶性ポリマーを用いることができる。水溶性ポリ
マーを2種以上組み合わせて用いてもよい。特に好まし
い水溶性ポリマーとしてポリビニルピロリドンを用いる
ことができる。
【0015】本発明の凍結ブロックには、プロテアーゼ
及び水溶性ポリマーのほか、緩衝剤、pH調整剤、防腐
剤、酸化防止剤、色素、増粘剤、水溶性有機溶媒など適
宜の成分が含まれていてもよい。ただし、本発明の凍結
ブロックは、細胞又は組織、あるいはそれらの切片など
を含むことはない。
【0016】本発明の凍結ブロックの調製方法は特に限
定されないが、例えば、上記プロテアーゼと上記水溶性
ポリマーを水又は緩衝液などの水性媒体に溶解し、適宜
の鋳型(モールド)に溶液を充填して凍結させればよ
い。好ましくは、プロテアーゼの失活を防止するため
に、液体窒素などを用いた超低温化で該溶液を急速凍結
させる方法を採用することができる。凍結ブロックの形
状及び大きさは特に限定されないが、本発明の凍結ブロ
ックは好ましくは凍結切片調製用に用いられることか
ら、切片を調製しやすい形状及び大きさであることが好
ましく、その目的のために適宜のモールドを選択可能で
ある。例えば、モールドとしてクリオモルド(サクラ精
機製)などを好適に用いることができる。
【0017】該凍結ブロック中に含まれる上記プロテア
ーゼの濃度は使用目的に応じて適宜選択可能であるが、
該凍結ブロックから凍結切片を調製し、プロテアーゼ活
性測定用薄膜に接触させる場合には、所望の大きさの検
量用又は品質検定用の消化痕が適宜形成されるように、
該薄膜の種類などに応じてプロテアーゼ濃度を調整する
ことができる。例えば、プロテアーゼとしてクロストリ
ジューム由来のコラゲナーゼを用いる場合には、0.1〜
1000μg/mlの濃度で該凍結ブロックに含有させることが
でき、ウシ膵臓由来のトリプシンを用いる場合には0.1
〜1000 units/mlの濃度で含有させることができる。水
溶性ポリマーの濃度は特に限定されないが、水溶性ポリ
マーの濃度は凍結ブロックから凍結切片の調製し易さな
どに影響を与える場合があり、例えば凍結ブロックの全
質量に対して1〜50質量%程度、好ましくは10〜40質量
%程度で使用するのがよい。
【0018】本発明の凍結ブロックは、その一部又は全
部をプロテアーゼ活性測定用薄膜に接触させるために用
いられるが、使用までの間、完全な凍結状態で保存する
ことが望ましい。例えば、凍結ブロックは−20℃以下
で長期間保存可能であり、使用直前には例えば凍結切片
を作成する時の温度である−20℃前後に保つことが望
ましい。
【0019】本発明の凍結ブロックは、その全体をプロ
テアーゼ活性測定用薄膜に接触させてもよいが、その一
部を該薄膜に接触させてもよい。その一部を用いる場合
には、凍結切片を調製して用いることが望ましい。凍結
切片の調製方法は特に限定されないが、例えば、通常の
凍結切片作成装置を用いて数μm〜数十μm程度、好まし
くは10μm程度の切片を調製することが好ましい。
【0020】調製された凍結切片をプロテアーゼ活性測
定用薄膜に接触させ、適宜の時間にわたり適宜の温度で
インキュベートすることにより、該切片に含まれるプロ
テアーゼの作用によって該薄膜に消化痕が形成される。
インキュベートの条件を一定にした場合には、この消化
痕の消化の程度は上記凍結ブロックに含まれるプロテア
ーゼの活性及び濃度に応じて増加する。従って、活性が
既知のプロテアーゼを所定の濃度で含む凍結ブロックを
調製し、その凍結ブロックから凍結切片を調製してプロ
テアーゼ活性測定用薄膜に接触させ、所定のインキュベ
ート条件で消化痕を形成させることにより、この消化痕
をプロテアーゼ活性定量のための検量用消化痕として用
いることが可能になる。また、活性が既知のプロテアー
ゼを異なる濃度で含む凍結ブロックを複数調製し、それ
らの凍結ブロックからそれぞれ凍結切片を調製してプロ
テアーゼ活性測定用薄膜に接触させ、所定のインキュベ
ート条件で複数の消化痕を形成させる場合には、プロテ
アーゼ濃度の増加に対応して消化の程度が高まる複数の
消化痕が得られるが、この複数の消化痕からなる系列は
プロテアーゼ活性定量のための検量用消化痕系列として
利用できる。
【0021】例えば、上記検量用消化痕を形成させてお
き、他方、生体試料から上記検量用消化痕の調製と同様
の操作で凍結切片を調製してプロテアーゼ活性測定用薄
膜に接触させ、同一のインキュベート条件で消化痕を形
成させた後、両者の消化痕の消化の程度を比較すること
ができる。生体試料由来の消化痕の消化の程度が上記の
検量用消化痕の消化の程度と一致するか、あるいは近似
しているときには、該生体試料中に含まれるプロテアー
ゼ活性は、該検量用消化痕を与えた凍結ブロック中に含
まれるプロテアーゼ活性と同一又は近似していると判定
できる。生体試料由来の消化痕の消化の程度が上記の検
量用消化痕の消化の程度よりも低い場合あるいは高い場
合には、該生体試料中に含まれるプロテアーゼ活性は該
検量用消化痕を与えた凍結ブロック中に含まれるプロテ
アーゼ活性よりもそれぞれ高い活性あるいは低い活性で
あると判定できる。
【0022】また、上記の検量用消化痕の系列を作成し
ておき、他方、生体試料から上記検量用消化痕の調製と
同一の操作で凍結切片を調製してプロテアーゼ活性測定
用薄膜に接触させ、同一のインキュベート条件で消化痕
を形成させ、系列中のいずれか1つ以上の消化痕の消化
の程度に一致するか、あるいは近似しているかを判定す
ることができる。該当する検量用消化痕が見出された場
合には、該生体試料に含まれるプロテアーゼ活性は、該
当する検量用消化痕を与えた凍結ブロックに含まれるプ
ロテアーゼ活性と同一又は近似すると判定することがで
きる。また、生体試料由来の消化痕の消化の程度が、該
系列中の2つの連続する検量用消化痕の消化の程度の間
であると判定される場合には、生体試料に含まれるプロ
テアーゼ活性は、連続した上記の2つの検量用消化痕を
与えた凍結ブロックにそれぞれ含まれるプロテアーゼ活
性を上限及び下限とした活性の範囲内にあるものと判定
できる。
【0023】さらに、生体試料中に含まれるプロテアー
ゼが同定されており、その種類が凍結ブロックに含まれ
るプロテアーゼと同一である場合には、上記と同様の操
作及び判定を行うことにより、該生体試料に含まれるプ
ロテアーゼ濃度が、該当する検量用消化痕を与えた凍結
切片に含まれるプロテアーゼ濃度と同一又は近似すると
判定でき、あるいは2つの検量用消化痕を与えた凍結ブ
ロックにそれぞれ含まれるプロテアーゼ濃度を上限及び
下限とした濃度の範囲内にあると判定できる。
【0024】本発明の凍結ブロック又は凍結切片を用い
て、プロテアーゼ活性測定用薄膜の品質評価を行うこと
ができる。品質評価のための消化痕形成は上記の検量用
消化痕の形成と同様にして行うことができ、製造された
プロテアーゼ活性測定用薄膜がプロテアーゼに対して所
期の消化痕を与えるかどうか、あるいは製品ロット間で
のばらつきがないかなどを容易に評価することができ
る。
【0025】プロテアーゼ活性測定用薄膜としては、い
わゆるin situ zymography法:例えば国際公開WO97/320
35号公報に開示されている薄膜を用いることができる
が、プロテアーゼ基質の種類は特に限定されず、プロテ
アーゼの基質として分解される高分子化合物であればい
ずれを用いてもよい。例えば、コラーゲン、ゼラチン、
トランスフェリン誘導体、アルブミン誘導体、プロテオ
グリカン、フィブロネクチン、ラミニン、エラスチン、
又はカゼインなどをプロテアーゼ基質として用いること
ができる。好ましくは、コラーゲン、ゼラチン、トラン
スフェリン誘導体、アルブミン誘導体、又はカゼインを
用いることができる。ゼラチンを用いる場合には、ゼラ
チンの種類は特に限定されず、例えば、牛骨アルカリ処
理ゼラチン、豚皮膚アルカリ処理ゼラチン、牛骨酸処理
ゼラチン、牛骨フタル化処理ゼラチン、豚皮膚酸処理ゼ
ラチンなどを用いることができる。プロテアーゼ基質は
上記の1種を用いてもよいが、2種以上を組み合わせて
用いてもよい。プロテアーゼ活性測定用薄膜としては、
乾燥後の膜厚が1〜10 μm、好ましくは2〜7 μmのもの
を用いることが好適である。
【0026】プロテアーゼ活性測定用薄膜は、平面支持
体上に形成されるか、あるいは96穴プレートの様な容
器の底面を支持体として形成されることが好ましい。支
持体の材質や形状は特に限定されないが、薄膜上の表面
変化を顕微鏡下で観察するような場合や、吸光度測定や
蛍光測定などの分光学的手段により表面変化を検出する
場合には、例えば、薄膜は透明又は半透明の支持体上に
形成されることが好ましい。このような透明又は半透明
の高分子支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフ
タレート、ポリエチレンナフタレート、アタクティック
ポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、ポ
リカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリメチル
メタクリレート、ポリスルフォン、ポリアリレート、ポ
リエチレン等からなる透明又は半透明プラスチックフイ
ルムなどを用いることができる。また、このようなプラ
スチックをラミネートした紙を用いることもできる。特
に好ましいのはポリエチレンテレフタレート、シンジオ
タクティックポリスチレン、ポリアリレートであり、ポ
リエチレンテレフタレートが最も好ましい。また、用い
る支持体に着色が施されていてもよい。
【0027】支持体の厚さは特に限定されないが、フィ
ルム状の平面支持体を用いる場合、50μm以上、30
0μm以下が好ましく、より好ましくは100μm以
上、200μm以下である。特に好ましくは175μm
程度のものを用いることができる。該支持体上の薄膜は
単層又は重層で形成することができるが、薄膜はできる
限り均一な表面を与えるように調製すべきである。例え
ば、乾燥後の膜厚が0.5〜10μm、好ましくは0.5
〜7μm程度になるように調製することが好ましい。
【0028】薄膜の調製には、上記プロテアーゼ基質の
水溶液に、必要に応じて硬膜剤、及び必要に応じてプロ
テアーゼ・インヒビターの所定量を加えて均一に混合
し、得られた溶液を支持体表面に塗布して乾燥すればよ
い。塗布方法としては、例えば、ディップ塗布法、ロー
ラー塗布法、カーテン塗布法、押し出し塗布法などを採
用することができる。もっとも、薄膜の調製方法はこれ
らに限定されることはなく、例えば、写真用フイルムの
技術分野などにおいて汎用されている薄膜形成方法など
を適宜採用することが可能である。
【0029】薄膜を支持体上に形成するにあたり、薄膜
と支持体との接着を改善するために、薄膜と支持体表面
との間に下塗り層を設けてもよい。例えば、塩化ビニ
ル、塩化ビニリデン、ブタジエン、スチレン、メタクリ
ル酸、アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸等から
選ばれるモノマーの1種又は2種以上を重合させて得ら
れる重合体又は共重合体、ポリエチレンイミン、エポキ
シ樹脂、グラフト化ゼラチン、又はニトロセルロースな
どの重合体を下塗り層として形成することができる。ま
た、ポリエステル系支持体を用いる場合には、下塗り層
に替えて、支持体表面をコロナ処理、紫外線処理、又は
グロー処理することによっても、支持体と薄膜との接着
力を改善できる場合がある。コロナ処理、紫外線処理、
又はグロー処理を行った後下塗り層を塗布する方法も支
持体と薄膜との接着力を改善できる。
【0030】本明細書において用いられる「支持体表面
上に形成した薄膜」という用語又はその同義語について
は、1又は2以上の下塗り層及び/又は支持体表面の処
理を排除するものと解釈してはならない。もっとも、薄
膜と支持体との接着を改善するための手段は上記のもの
に限定されることはなく、例えば、写真用フイルムの技
術分野などにおいて汎用されている手段を適宜採用する
ことができる。また、薄膜が複数の層を重層してなる場
合には、重層される2つの層の間にさらに中間層を設け
てもよく、本明細書において用いられる「重層」という用
語は、2つの層が直接接触している場合に限定して解釈
してはならない。このような中間層を適宜配置する手段
は、例えば、写真用フイルムの技術分野などにおいて汎
用されている。また、支持体表面上に形成された膜の表
面に保護層を設けることも好ましく、その技術は写真用
フイルムの技術分野などにおいて汎用されている。
【0031】薄膜中には上記プロテアーゼ基質、必要に
応じて硬膜剤及び/又はプロテアーゼ・インヒビターを
配合できるが、その他の各種の添加物を加えてもよい。
添加物としては、例えば薄膜の塗布を容易にするための
界面活性剤、膜質を改良するためのグリセリン、エチレ
ングリコール等の可塑剤、防腐剤、防かび剤、pHを調
節するための酸又は塩基、酵素活性を調節するためのCa
++等の無機イオンがあげられるが、これらに限定される
ことはない。また、薄膜には帯電防止の手段が施されて
いてもよい。例えば、上記プロテアーゼ基質含む層の側
又はその反対側の層の表面電気抵抗が1012Ω以下であ
るものを好ましく用いることができる。膜の表面電気抵
抗を低下させるための手段としては、例えば特願2000-2
4011号明細書に記載されている方法を用いることがで
き、あるいは写真用フイルムに利用されている技術を採
用することができる。
【0032】例えば、プロテアーゼ活性測定用薄膜の製
造には、以下に示すような添加剤を必要に応じて使用す
ることができる。硬膜剤(リサーチ・ディスクロージャ
ー(RD)17643:26頁;RD18716:651頁左欄;RD30710
5:874〜875頁)、バインダー(RD17643:26頁;RD1871
6:651頁左欄;RD307105:873〜874頁)、可塑剤又は潤
滑剤(RD17643:27頁;RD18716:650頁右欄;RD30710
5:876頁)、塗布助剤又は界面活性剤(RD17643:26〜2
7頁;RD18716:650頁右欄;RD307105:875〜876頁)、
帯電防止剤(RD17643:27頁;RD18716:650頁右欄;RD3
07105:876〜877頁)、マット剤(RD307105:878〜879
頁)。これらの添加剤はいずれも写真用フイルムの技術
分野において汎用されており、薄膜の製造に同様に利用
できる。
【0033】硬膜剤を用いる場合には、有機又は無機の
硬膜剤を用いることができる。このような硬膜剤は、例
えばゼラチンなどの硬化促進のために利用可能な硬膜剤
から適宜選択すればよいが、測定の対象となるプロテア
ーゼの活性に影響を与えないものを選択する必要があ
る。例えば、活性ハロゲン化合物(2,4−ジクロロ−
6−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジン及びそのナト
リウム塩など)及び活性ビニル化合物(1,3−ビスビ
ニルスルホニル−2−プロパノール、1,2−ビス(ビ
ニルスルホニルアセトアミド)エタン、ビス(ビニルス
ルホニルメチル)エーテル、及びビニルスルホニル基を
側鎖に有するビニル系ポリマーなど)を用いることがで
き、1,2−ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)エ
タンを用いることが好ましい。
【0034】プロテアーゼ・インヒビターを薄膜に含有
させる場合には、プロテアーゼ・インヒビターとして、
マトリックスメタロプロテアーゼを阻害することが知ら
れている各種のキレート剤、特にEDTAあるいはo−フェ
ナントロリンを用いることができる。またマトリックス
プロテアーゼ特異的な阻害剤としてティッシューインヒ
ビターオブメタロプロテアーゼ(TIMP)類や、Batimast
at, Marimastat, CGS27023A等の阻害剤を用いることが
でき、これらについては、例えば細胞工学1998年、第17
巻、p.561に記載されている。また、セリンプロテアー
ゼ阻害剤としてはフェニルメタンスルホニルフルオリ
ド、プラスミノーゲンアクティベーターインヒビター
1、アプロチニン、ロイペプチン、エラスタチナール、
キモスタチン、メシル酸ガベキサート等の阻害剤を用い
ることができ、これらの一部については例えばプロテア
ーゼと生体機能(現代化学増刊22)P.224, 1993に記
載されている。もっとも、プロテアーゼ・インヒビター
はこれらの化合物に限定されることはない。
【0035】本発明の方法に用いる生体試料としては、
ヒトを含む哺乳類動物から分離・採取された生体試料を
用いることができ、例えば、罹患した哺乳類動物、疾患
の存在が疑われる哺乳動物、又は実験動物などから分離
・採取した生体試料を用いることができる。生体試料の
形態は特に限定されないが、組織切片などの固形試料や
体液などの非固形試料を用いることができる。非固形試
料としては、例えば、組織から吸引により採取した細胞
又は組織片を含む試料、血液、リンパ液、唾液などの体
液を用いることができる。例えば、肺癌、胃癌、食道
癌、大腸癌、乳癌、子宮癌、卵巣癌、甲状腺癌、肝臓
癌、口腔癌、前立腺癌、腎臓癌、膀胱癌などの癌組織か
ら手術や組織検査などにより分離・採取した癌組織、リ
ンパ節、歯周病組織、リウマチ性関節炎の滑膜や骨組織
などの組織から手術や組織検査などにより分離・採取し
た組織、歯肉溝滲出液、破壊性病変組織に含まれる液
(例えばリウマチ性病変の関節液又は歯槽膿漏組織抽出
液)、胸水、腹水、脳脊髄液、乳腺異常分泌液、卵巣嚢
胞液、腎臓嚢胞液、喀痰、血液あるいは血球などを用い
ることができる。
【0036】試料が組織の場合には、例えば、液体窒素
で急速凍結した試料から凍結切片作成装置を用いて厚さ
1〜10μm 、好ましくは4〜8μmの切片を調製し、こ
の切片を薄膜に貼付することによって試料と薄膜とを接
触させることができる。穿刺吸引により採取した細胞又
は組織片を含む非固形試料についても、コンパウンドな
どの成形材料と混合して液体窒素で急速凍結し、同様に
切片を作製して用いることができる。また、組織から穿
刺吸引により採取した細胞又は組織片を含む非固形試料
をそのまま用いる場合には、吸引した試料を薄膜上に吐
出させ、細胞を分散状態で薄膜に接着させればよい。組
織から穿刺吸引により採取した細胞をサイトスピン装置
を用いて薄膜に接着させることもできる。さらに、生体
試料が組織片の場合は、採取した組織の水分を軽く拭っ
た後、本発明の薄膜の上に1分間から30分間程度静置す
ることで試料と薄膜とを接触させることができる。
【0037】また、リウマチ性関節炎の患者から採取し
た滑膜液の様な非固形試料を用いる場合には、試料を適
当な濃度に希釈し、及び/又は必要な前処理を行った後
に、約1〜50 μL、好ましくは1〜20 μL程度を薄膜上に
滴下すればよい。歯周病の歯肉溝滲出液を試料として用
いる場合には、歯肉溝内に濾紙を挿入して約5〜10μL程
度の歯肉溝滲出液を採取し、該濾紙を薄膜に貼付する方
法を採用することができる。歯肉溝滲出液の採取後、必
要に応じて蒸留水や適宜の緩衝液(例えば、50 mM Tris
-HCl, pH 7.5, 10 mM CaCl2, 0.2 M NaClなど)を用い
て濾紙から歯肉溝滲出液を抽出し、抽出液を薄膜上に滴
下してもよい。より多量に採取できる体液試料(嚢胞液
など)の場合には、試料を入れた容器の中に薄膜の一部
を浸漬する方法により再現性のよい結果が得られる。
【0038】プロテアーゼを含む組織切片を薄膜に貼付
するか、あるいは液体試料を滴下するなどの手段によっ
て薄膜とプロテアーゼを含む生体試料を接触させた後、
プロテアーゼ活性の発現に適した温度、例えば室温から
50℃の間の温度、さらに好ましくは37〜47℃の飽和湿度
条件下でプロテアーゼ基質の消化に必要な時間、例えば
10分から30時間程度薄膜をインキュベートする。必要な
時間は試料や薄膜の種類によって異なるが、好ましく
は、組織切片又は吸引により得た細胞若しくは組織片を
含む非固形試料については37℃で10分間〜48時間、さら
に好ましくは10分間〜24時間、滲出液などの液状の試料
については10分間〜24時間、好ましくは10分間〜6時間
インキュベートし、試料中のプロテアーゼによって薄膜
中に消化痕を形成させる。一方、本発明の凍結ブロック
からは、凍結切片作製装置を用いて厚さ1〜20μm、好ま
しくは4〜15μm程度の切片を調製して薄膜と接触させ、
同様の条件でインキュベートを行って検量用消化痕を形
成させることが好ましい。
【0039】該薄膜上に形成された消化痕における消化
の程度の判定としては、光学顕微鏡下で目視で判定する
方法、分光器により消化痕の光学濃度を測定する方法、
光学顕微鏡で得られる画像をコンピューターに取り込
み、画像解析の方法により消化痕における各種の数値化
を行う方法などのいずれを採用してもよい。画像解析を
行う場合には種々のデータ処理法を用いることができ、
その種類は特に限定されないが、消化痕の面積、あるい
は消化痕部分の濃度と面積の積分を用いて消化の程度を
数値化することが好ましい。
【0040】消化痕の判定に際して、色素を含む薄膜の
場合には水で洗浄することができ、あるいはヘマトキシ
リンやメチルグリーンにより薄膜上の生体試料に含まれ
る細胞核を染色する工程を追加すると、消化痕の部位を
詳細に特定することができる。また、生体試料中の実質
的に連続した2以上の切片のうちの一つをプロテアーゼ
・インヒビターを含まない薄膜に貼付し、他の切片の1
つをプロテアーゼ・インヒビターを含む薄膜に貼付し
て、両者の薄膜の消化痕を比較することにより、プロテ
アーゼの種類を特定することが可能になる。プロテアー
ゼ・インヒビターの種類は特に限定されないが、例え
ば、キレート剤、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害
剤、又はセリンプロテアーゼ阻害剤、システインプロテ
アーゼ阻害剤、及びそれらの混合物などを好適に用いる
ことができる。このようにしてプロテアーゼの種類を特
定することにより、本発明の方法に従って生体試料中に
含まれるプロテアーゼの濃度定量が可能になる。
【0041】本発明の方法で生体試料に含まれるプロテ
アーゼ活性を定量することにより、試料が由来した生体
の状況、例えば癌の転移やリウマチの進行度などを調べ
ることができる。なお、プロテアーゼ基質を含む薄膜を
用いたプロテアーゼ活性の測定方法に関する技術は、例
えば、特開平9-832035号公報、特願平11-174826号明細
書、特願平11-192130号明細書、特願平11-365074号明細
書、及び特願2000-24011号明細書などに記載されている
ので、必要に応じてこれらの明細書を参照することによ
り、本発明を容易に実施できる場合がある。これらの明
細書の開示を参照として本明細書の開示に含める。
【0042】
【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに具体的に
説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定され
ることはない。
【0043】例1:コラゲナーゼ凍結ブロックの作製 コラゲナーゼ(SIGMA C-0255 Type III)1 mgを50 mMト
リスと5 mM塩化カルシウムを含むバッファー(pH7.5)1
mLに溶解した。コラゲナーゼ溶液を20%ポリビニルピ
ロリドン水溶液に加えて以下の濃度系列の試料を作製
し、クリオモルド(サクラ精機製)に流し込み液体窒素
中で急速凍結を行い、各濃度の凍結ブロックを作製し
た。 コラゲナーゼ濃度:0.125, 0.25, 0.5, 1.0, 1.5, 2.0,
2.5, 3.0, 4.0, 4.5, 5.0μg/ml
【0044】例2: トリプシン凍結ブロックの作製 トリプシン(SIGMA T-8003,Type I)を50 mMトリスと5
mM塩化カルシウムを含むバッファー(pH7.5)に溶解し
て1000 u/mlの水溶液を作製した。このトリプシン溶液
を20%ポリビニルピロリドンに加えて以下の濃度系列の
試料を作製し、クリオモルド(サクラ精機製)に流し込
み液体窒素中で急速凍結を行い、各濃度の凍結ブロック
を作製した。 トリプシン活性:5.0, 10, 15, 20, 25, 30, 50, 100 u
nits/ml
【0045】例3:MMP-7凍結ブロックの作製 MMP-7(CALBIOCHEM 444270,)150μlと20%ポリビニル
ピロリドン水溶液1,350 mgを混合し、クリオモルド(サ
クラ精機製)に流し込み液体窒素中で急速凍結を行い、
凍結ブロックを作製した。
【0046】例4:ゼラチン薄膜の製造 豚皮酸処理ゼラチン10 gを純水127 gに溶解し、硬膜剤
として1,2-ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)エタ
ン(2%溶液)0.8 mLを添加した。この溶液を特願平11-
365074号公報の実施例1に示すポリエチレンテレフタレ
ート支持体に、乾燥膜厚が6μmになるように塗布し、乾
燥してゼラチン薄膜とした。
【0047】例5:ゼラチン薄膜を用いたプロテアーゼ
活性の測定-1 例1に従って作製した各濃度の凍結ブロックから凍結切
片作製装置を用いて-25℃で厚さ10μmの凍結切片を調製
し、その連続切片を例4に従って製造した2枚のゼラチ
ン薄膜に貼り付けた。この薄膜を37℃で16時間インキュ
ベートした。インキュベーションが終わったそれぞれの
薄膜を、0.3% Biebrich Scarletの6 %トリクロロ酢酸
水溶液とエタノールの等量混合液に4分間浸漬して染色
し、10分間水洗後乾燥させた。乾燥後、酵素切片を覆う
ようにカバーエイドフィルム(サクラ精機製)をキシレ
ンを用いて貼り付け酵素切片を封入した。このフィルム
をプラスチック製のマウントに保持し、光学顕微鏡を用
いて得られる画像をコンピューターに取り込み、形成さ
れた各検量用消化痕における消化の程度を画像解析の方
法により数値化した。
【0048】消化痕周辺の画像をCCDカメラで撮影しコ
ンピューターに取り込み、その画像を画像処理ソフト
(アドビ社製:フォトショップ)でグレースケールとし
た後、階調の反転を行ないピクトファイルに変換した。
次に画像解析ソフト(富士フイルム製:イメージゲー
ジ)を用いて画像を読み込み定量モードを用いて消化し
てない部分の任意範囲を測定した。同様に消化した部分
の任意範囲を測定した。「Windows(登録商
標)」メニューの<Quant Result>を選択すると計測結
果がQuant Resultウインドウに表示される。表示された
値は、消化した部位の濃度から消化してない部分の濃度
を引いた値で表わされる。37℃で16時間インキュベート
したフィルムでは、コラゲナーゼ濃度が1.5〜3.5μg/ml
の範囲における検量用消化痕の消化の強さが定量可能な
直線性を示していた(図1)。
【0049】例6:ゼラチンとプロテアーゼ阻害剤とを
含む薄膜を用いたプロテアーゼ活性の測定-2 例2に従って作製した各活性の凍結ブロックから凍結切
片作製装置を用いて-25℃で厚さ10μmの凍結切片を調製
し、その連続切片をゼラチンとプロテアーゼ阻害剤とを
含む2枚の薄膜に貼り付けた。この薄膜を37℃で16時間
インキュベートした。インキュベーションが終わったそ
れぞれの薄膜を、0.3% Biebrich Scarletの6%トリク
ロロ酢酸水溶液とエタノールの等量混合液に4分間浸漬
して染色し、10分間水洗後乾燥させた。乾燥後、酵素
切片を覆うようにカバーエイドフィルム(サクラ精機
製)をキシレンを用いて貼り付け酵素切片を封入した。
このフィルムをプラスチック製のマウントに保持し、光
学顕微鏡を用いて得られる画像をコンピューターに取り
込み、形成された各検量用消化痕における消化の程度を
例5と同様の方法により数値化した。37℃で16時間イン
キュベートしたしたフィルムでは、トリプシン活性が25
〜40 units/mlの範囲における消化痕の消化の強さが定
量可能な直線性を示していた(図2)。
【0050】例7:カルボキシメチルトランスフェリン
を含む薄膜の製造工程の管理 例3に従って作製した濃度の凍結ブロックから凍結切片
作製装置を用いて-25℃で厚さ14μmの凍結切片を調製
し、プロテアーゼ基質としてカルボキシメチルトランス
フェリン薄膜にその連続切片を貼り付けた。この薄膜を
37℃で24時間インキュベートした。インキュベーション
が終わったそれぞれの薄膜を、0.3% Biebrich Scarlet
の6%トリクロロ酢酸水溶液とエタノールの等量混合液
に4分間浸漬して染色し、10分間水洗後乾燥させた。乾
燥後、酵素切片を覆うようにカバーエイドフィルム(サ
クラ精機製)をキシレンを用いて貼り付け酵素切片を封
入した。このフィルムをプラスチック製のマウントに保
持し、光学顕微鏡を用いて得られる画像をコンピュータ
ーに取り込み、例5と同様にして品質評価用消化痕の数
値化を行ない、製造した薄膜における消化痕の形成性に
はロット間で有意差がないことが認められた。
【0051】例8:ゼラチン膜を用いたプロテアーゼ活
性の測定-3 外科手術により摘出し凍結した乳癌検体を、凍結切片作
製装置を用いて-25℃で厚さ4μmに薄切し、例4で得た
ゼラチン膜に接着させた。例1で作製した凍結ブロック
から同様に凍結切片作製装置を用いて-25℃で厚さ10μm
の凍結切片を調製してゼラチン膜に接着させた。この膜
を37℃、相対湿度100%で16時間インキュベートし、自
然乾燥させた。これらの薄膜を、0.3% Biebrich Scarl
etの6%トリクロロ酢酸水溶液とエタノールの等量混合
液に4分間浸漬して染色し、10分間水洗した。マイヤー
のヘマトキシリン液に2分間浸漬して核染色を行い、10
分間水洗後、自然乾燥させた。
【0052】乾燥後、組織切片を覆うようにカバーエイ
ドフィルム(サクラ精機製)をキシレンを用いて貼り付
け、乳癌切片と酵素切片を封入した。このフィルムをプ
ラスチック製のマウントに保持し、光学顕微鏡を用いて
観察すると、乳癌組織切片中、核の形態より癌細胞が存
在すると考えられる部位にゼラチン消化が認められ、プ
ロテアーゼ活性があることが明らかとなった。乳癌検体
による消化痕の各部位における光学濃度と、プロテアー
ゼ溶液の凍結切片における消化痕の光学濃度を顕微鏡下
で比較することにより癌検体各部位におけるプロテアー
ゼ濃度(コラゲナーゼ換算)を求めることができた。
【0053】
【発明の効果】本発明の凍結ブロック又は凍結切片を用
いることにより、生体試料中のプロテアーゼ活性の定量
を簡便かつ正確に行うことができ、プロテアーゼ活性測
定用薄膜の品質管理を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 数種の濃度のコラゲナーゼを含む凍結ブロッ
クから調製された各凍結切片をゼラチンを含むプロテア
ーゼ活性測定用薄膜に接触させ、検量用消化痕を形成さ
せた結果(例5)を示した図である。縦軸は消化の程度
(消化した部位の光学濃度から消化してない部分の光学
濃度を引いた値)を示し、横軸はコラゲナーゼ濃度(μ
g/ml)を示す。
【図2】 数種の濃度のトリプシンを含む凍結ブロック
から調製された各凍結切片をゼラチンを含むプロテアー
ゼ活性測定用薄膜に接触させ、検量用消化痕を形成させ
た結果(例6)を示した図である。縦軸は消化の程度
(消化した部位の光学濃度から消化してない部分の光学
濃度を引いた値)を示し、横軸はトリプシン活性(unit
s/ml)を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4B033 NA01 NA26 NA30 NB35 NB45 NB47 NB48 ND05 ND12 NF04 4B063 QA01 QQ36 QR48 QS02 QX01

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水溶性ポリマー及びプロテアーゼを含む
    凍結ブロックであって、その一部又は全部を薄膜(該薄
    膜はプロテアーゼ基質を含み支持体上に形成されてい
    る)に接触させて消化痕を形成させるための凍結ブロッ
    ク。
  2. 【請求項2】 凍結切片を調製するための請求項1に記
    載の凍結ブロック。
  3. 【請求項3】 プロテアーゼがマトリックス・メタロプ
    ロテアーゼ類、コラゲナーゼ類、トリプシン、エラスタ
    ーゼ、キモトリプシン、プラスミン、カテプシン類、及
    びそれらの混合物からなる群から選ばれる請求項1又は
    2に記載の凍結ブロック。
  4. 【請求項4】 水溶性ポリマーがポリビニルピロリド
    ン、ポバール酢酸ビニル、ポリNビニルアセトアミド、
    カラギナン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコ
    ールの末端アルキル変性体、ポリエチレングリコール、
    デキストリン、デキストラン、カルボキシメチルセルロ
    ース、アルギン酸、及びそれらの混合物からなる群から
    選ばれる請求項1ないし3のいずれか1項に記載の凍結
    ブロック。
  5. 【請求項5】 プロテアーゼとしてクロストリジューム
    由来のコラゲナーゼを0.1〜1000μg/mlの濃度で含有す
    る請求項1ないし4のいずれか1項に記載の凍結ブロッ
    ク。
  6. 【請求項6】 プロテアーゼとしてウシ膵臓由来のトリ
    プシンを0.1〜1000 units/mlの濃度で含む請求項1ない
    し4のいずれか1項に記載の凍結ブロック。
  7. 【請求項7】 請求項1ないし6のいずれか1項に記載
    の凍結ブロックから調製され、プロテアーゼ基質を含み
    支持体上に形成された薄膜に接触させて消化痕を形成さ
    せるための凍結切片。
  8. 【請求項8】 プロテアーゼ活性の定量のための検量用
    消化痕の形成に用いる請求項7に記載の凍結切片。
  9. 【請求項9】 プロテアーゼの濃度の定量のための請求
    項7に記載の凍結切片。
  10. 【請求項10】 薄膜の品質評価のための消化痕の形成
    に用いる請求項7に記載の凍結切片。
  11. 【請求項11】 プロテアーゼ活性の定量方法であっ
    て、プロテアーゼ基質を含み支持体表面に形成された薄
    膜に対して請求項7ないし9のいずれか1項に記載の凍
    結切片を接触させて該薄膜に検量用消化痕を形成させる
    工程を含む方法。
  12. 【請求項12】 プロテアーゼ活性の定量方法であっ
    て、下記の工程: (1)プロテアーゼ基質を含み支持体表面に形成された薄
    膜に対して、ヒトを含む哺乳類動物から分離・採取した
    生体試料を接触させる工程; (2)プロテアーゼの作用により該薄膜に形成された消化
    痕を検出する工程; (3)請求項7ないし9のいずれか1項に記載の凍結切片
    を該薄膜に接触させることにより該薄膜に形成された検
    量用消化痕と、上記工程(2)で検出された消化痕とを比
    較することにより、上記生体試料に含まれるプロテアー
    ゼ活性を定量する工程 を含む方法。
  13. 【請求項13】 プロテアーゼ活性測定用の薄膜の品質
    評価方法であって、プロテアーゼ基質を含み支持体表面
    に形成された薄膜に対して請求項7又は10に記載の凍結
    切片を接触させて該薄膜に品質評価用の消化痕を形成さ
    せる工程を含む方法。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN106018050A (zh) * 2016-05-20 2016-10-12 北京九州柏林生物科技有限公司 冷冻切片包埋剂

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