JP4276374B2 - プロテアーゼ活性の測定方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プロテアーゼの測定方法に関するものである。より具体的には、癌細胞の浸潤活性や転移活性などの癌の悪性度、歯周炎などの歯周病の進行度、リウマチ性関節炎などにおける破壊性病変などの正確な診断を可能にするプロテアーゼ測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
癌細胞の浸潤や転移、歯周炎などの歯周病の進行、リウマチ性関節炎などにおける組織破壊の進行、創傷治癒過程、個体発生過程などにおいて、マトリックスメタロプロテアーゼ、プラスミノーゲンアクティベーターなど種々のプロテアーゼが関与することが知られており、それらのプロテアーゼの検出及び定量方法として、抗体を用いたイミュノアッセイ法、イミュノブロッティング法、電気泳動ザイモグラフィー法などが知られている。また、組織中におけるプロテアーゼの活性を測定する方法として、The FASEB Journal, Vol.9, July, pp.974-980, 1995又は国際公開WO97/32035号公報に開示されたいわゆるin situ zymography法が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
国際公開WO97/32035号公報に示されるプロテアーゼ活性の測定方法において、ゼラチン等の薄膜の染色にアミドブラック、クマジーブルーあるいはポンソーなどの色素を用いることができるが、これらの色素により薄膜が染色されるのと同時に、薄膜に貼り付けられた組織切片も染色されるため、消化痕、すなわち組織におけるプロテアーゼ活性の正確な判定が困難な場合がある。従って、本発明の課題はこの問題を解決する手段を提供することにある。より具体的には、本発明の課題は、国際公開WO97/32035号公報に示されるプロテアーゼ活性の測定方法において、プロテアーゼ活性の発現をより詳細に解析できる方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意努力した結果、ゼラチン等のプロテアーゼ基質を含む薄膜をあらかじめ乳化分散された色素及び固体分散された色素からなる群から選ばれる少なくとも一種の色素で着色しておくことにより、薄膜の染色工程が不要となり、薄膜上の組織や細胞におけるプロテアーゼ活性の発現がより詳細に解析できることを見いだした。さらに、細胞核を薄膜とは異なる色の染料で染色することにより、核の形態情報と消化痕とを同時に観察することが可能となり、プロテアーゼ活性の局在の測定が格段に容易になることを見いだした。本発明はこれらの知見を基にして完成されたものである。
【0005】
すなわち、本発明は、プロテアーゼ活性の測定方法であって、
(1)支持体表面に形成され、乳化分散された色素及び固体分散された色素からなる群から選ばれる少なくとも一種の色素及びプロテアーゼ基質を含有する架橋された及び/又は実質的に水に溶けない薄膜に対して、プロテアーゼを含む生体試料を接触させる工程;及び
(2)該薄膜を水性媒体で洗浄してプロテアーゼの作用により該薄膜に形成された消化痕を検出する工程を含む方法を提供するものである。
【0006】
別の観点からは、本発明により、プロテアーゼ活性の測定方法であって、
(1)支持体表面に形成され、乳化分散された色素及び固体分散された色素からなる群から選ばれる少なくとも一種の色素及びプロテアーゼ基質を含有する架橋された及び/又は実質的に水に溶けない薄膜に対して、プロテアーゼを含む生体試料を接触させる工程;
(2)該薄膜を水性媒体で洗浄してプロテアーゼの作用により該薄膜に形成された消化痕を検出する工程;及び
(3)該薄膜上の生体試料、好ましくは組織切片又は細胞の細胞核を染色する工程を含む方法が提供される。
【0007】
さらに別の観点からは、プロテアーゼ活性の測定方法であって、
(1)支持体表面に形成され、乳化分散された色素及び固体分散された色素からなる群から選ばれる少なくとも一種の色素及びプロテアーゼ基質を含有する架橋された及び/又は実質的に水に溶けない薄膜に対して、生体試料の実質的に連続した2以上の切片のうちの一つを接触させる工程;
(2)支持体上に形成され、乳化分散された色素及び固体分散された色素からなる群から選ばれる少なくとも一種の色素、プロテアーゼ基質、及びプロテアーゼ・インヒビターを含有する架橋された及び/又は実質的に水に溶けない薄膜に対して上記切片のうちの他の切片の一つを接触させる工程;
(3)該薄膜を水性媒体で洗浄してプロテアーゼの作用により該薄膜に形成された消化痕を検出する工程;及び
(4)工程(1)で用いた薄膜の消化痕と工程(2)で用いた薄膜の消化痕とを対比する工程を含む方法が本発明により提供される。
【0008】
さらに、本発明により、プロテアーゼ活性の測定方法であって、
(1)支持体表面に形成され、乳化分散された色素及び固体分散された色素からなる群から選ばれる少なくとも一種の色素、プロテアーゼ基質を含有する架橋された及び/又は実質的に水に溶けない薄膜に対して、生体試料の実質的に連続した2以上の切片のうちの一つを接触させる工程;
(2)支持体上に形成され、乳化分散された色素及び固体分散された色素からなる群から選ばれる少なくとも一種の色素、プロテアーゼ基質、及びプロテアーゼ・インヒビターを含有する架橋された及び/又は実質的に水に溶けない薄膜に対して、上記切片のうちの他の切片の一つを接触させる工程;
(3)該薄膜を水性媒体で洗浄してプロテアーゼの作用により該薄膜に形成された消化痕を検出する工程;
(4)該薄膜上の生体試料、好ましくは組織切片又は細胞の細胞核を染色する工程;及び
(5)工程(1)で用いた薄膜の消化痕と工程(2)で用いた薄膜の消化痕とを対比する工程
を含む方法が提供される。
【0009】
これらの発明の好ましい態様によれば、生体試料の染色として細胞核染色を行う上記方法;細胞核の染色にヘマトキシリンあるいはメチルグリーンを用いる上記方法;生体試料がヒトを含む哺乳類動物から得られた組織、細胞、又は体液である上記方法が提供される。薄膜は架橋されていてもよく、硬膜剤を含んでいてもよい。また、単層又は重層の構造を有していてもよい。薄膜は2以上の色素を含んでいてもよく、重層構造の薄膜においては、各層ごとに異なる色素を含んでいてもよい。
【0010】
また、上記の発明の好ましい態様によれば、生体試料が、ヒトを含む哺乳類動物、好ましくは患者、疾患が疑われる哺乳動物、実験動物などから分離・採取した生体試料である上記方法が提供される。生体試料として、組織片などの固形試料のほか、組織から吸引により採取した細胞又は組織片を含む試料、血液、リンパ液、唾液などの非固形試料などを用いることができる。例えば、生体試料が癌組織、リンパ節、歯周病組織、歯肉溝滲出液、破壊性病変組織または液(例えばリウマチ性病変の関節液または歯槽膿漏組織抽出液)、胸水、腹水、脳脊髄液、乳腺異常分泌液、卵巣嚢胞液、腎臓嚢胞液、膵液、喀痰、血液あるいは血球である上記方法は本発明の好ましい態様である。連続した切片を用いる方法では生体試料として組織切片を用いることができる。プロテアーゼがマトリックスメタロプロテアーゼ又はセリンプロテアーゼである上記方法は好ましい態様である。
【0011】
また、さらに好ましい態様によれば、薄膜がゼラチン又はカゼインを含む薄膜である上記方法;薄膜の消化痕を薄膜の色素と識別可能な染料で染色する上記方法;消化痕の検出を顕微鏡を用いた目視により判定する上記方法;画像処理装置を用いて消化痕の定量又は数値化を行う上記方法が提供される。プロテアーゼ・インヒビターを用いる方法においては、プロテアーゼ・インヒビターがキレート剤、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、又はセリンプロテアーゼ阻害剤であることが好ましい。
【0012】
さらに別の観点からは、プロテアーゼ活性の測定に用いるための薄膜であって、支持体表面に形成されており、乳化分散された色素及び固体分散された色素からなる群から選ばれる少なくとも一種の色素及びプロテアーゼ基質を含有する架橋された及び/又は実質的に水に溶けない薄膜が本発明により提供される。この薄膜は、好ましくは上記方法に用いることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本明細書において用いられる測定方法という用語は、定性及び定量を含めて最も広義に解釈されるべきである。本発明のプロテアーゼの測定方法は、試料中に含まれるプロテアーゼによってプロテアーゼ基質が消化され、薄膜中に消化痕が形成されることによりプロテアーゼを測定する方法(いわゆるin situ zymography法:例えば国際公開WO97/32035号公報に開示されている)において、少なくとも一種の色素及びプロテアーゼ基質を含有する架橋された及び/又は実質的に水に溶けない薄膜を用いることを特徴としており、薄膜を水性媒体で洗浄することにより消化された部分の基質と色素が洗い流され、消化痕を光学濃度の低い部分として顕微鏡下で検出し、試料中のプロテアーゼ活性の存在を検出することができるという特徴がある。
【0014】
本発明において「架橋された及び/又は実質的に水に溶けない薄膜」とは、支持体表面上に形成された薄膜を30℃の水に30分間浸漬した場合に実質的にプロテアーゼ基質が水中に溶出することがないことを意味している。本発明の薄膜は、一般的には硬膜剤を用いたプロテアーゼ基質の架橋により製造することができるが、必ずしも硬膜剤を必要としない場合もある。例えば、コラーゲン薄膜の焼付けによる架橋は米国特許明細書第4,931,386号に記載されており、またアミノ基転移酵素により蛋白質を架橋することも可能である。薄膜の製造には、一般的には、有機又は無機の硬膜剤を用いることができる。このような硬膜剤は、例えばゼラチンなどの硬化促進のために利用可能な硬膜剤から適宜選択すればよいが、測定の対象となるプロテアーゼの活性に影響を与えないものを選択する必要がある。例えば、活性ハロゲン化合物(2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジン及びそのナトリウム塩など)及び活性ビニル化合物(1,3−ビスビニルスルホニル−2−プロパノール、1,2−ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)エタン、ビス(ビニルスルホニルメチル)エーテル、及びビニルスルホニル基を側鎖に有するビニル系ポリマーなど)を用いることができ、1,2−ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)エタンを用いることが好ましい。
【0015】
本発明の対象となるプロテアーゼとしては、例えば、マトリックス・メタロプロテアーゼ及びセリンプロテアーゼを挙げることができ、これらの酵素については、鶴尾隆編「癌転移の分子機構」、pp.92-107、メジカルビュー社、1993年発行に詳細に説明されている。本発明の方法に特に好適なプロテアーゼとして、例えば、間質型コラーゲナーゼ(MMP-1)、ゼラチナーゼA (MMP-2)、及びゼラチナーゼB (MMP-9)などのマトリックス・メタロプロテアーゼ;及びプラスミノーゲン・アクティベーター(PA)などのセリンプロテアーゼを挙げることができるが、本発明の方法の対象は上記の特定のプロテアーゼに限定されることはない。
【0016】
プロテアーゼ基質は、プロテアーゼの基質として分解される高分子化合物であれば特に限定されない。例えばコラーゲン、ゼラチン、プロテオグリカン、フィブロネクチン、ラミニン、エラスチン、又はカゼインなどを用いることができる。好ましくは、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、又はカゼインを用いることができ、より好ましくはゼラチン又はカゼインを用いることができる。ゼラチンを用いる場合には、ゼラチンの種類は特に限定されず、例えば、牛骨アルカリ処理ゼラチン、豚皮膚アルカリ処理ゼラチン、牛骨酸処理ゼラチン、牛骨フタル化処理ゼラチン、豚皮膚酸処理ゼラチンなどを用いることができる。プロテアーゼ基質は上記の1種を用いても良いが、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
2種以上の異なるプロテアーゼ基質を組み合わせて用いることにより、生体試料中に含まれるプロテアーゼの種類を正確に特定できる場合がある。例えば、生体試料中の実質的に連続した切片のうちの一つをある種のプロテアーゼ基質を含む薄膜に接触させて消化痕を検出し、他の切片を異なるプロテアーゼ基質を含む薄膜に接触させて薄膜上の消化痕を検出し、それぞれの結果を対比することができる。比較のためにそれぞれ異なるプロテアーゼ基質を含む薄膜を2種以上用いてもよい。プロテアーゼ基質を含む薄膜としては、乾燥後の膜厚が1〜10 μm、好ましくは2〜7 μmのものを用いることが好適である。
【0018】
本発明の薄膜は支持体表面に形成されるが、支持体の材質や形状は特に限定されない。薄膜上の表面変化を顕微鏡下で観察するような場合や、吸光度測定や蛍光測定などの分光学的手段により表面変化を検出する場合には、例えば、薄膜は平面状の透明又は半透明の支持体上に形成されることが好ましい。このような透明又は半透明の高分子支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリメチルメタクリレート、ポリスルフォン、ポリアリレート等からなる透明又は半透明プラスチックフイルムなどを用いることができる。特に好ましいのはポリエチレンテレフタレート、シンジオタクティックポリスチレン、ポリアリレートであるが、ポリエチレンテレフタレートを用いることが最も好ましい。用いる支持体自体に着色が施されていてもよい。
【0019】
支持体の厚さは特に限定されないが、50μm以上、300μm以下が好ましく、より好ましくは100μm以上、200μm以下である。特に好ましくは175μm程度のものを用いることができる。該支持体上の薄膜は単層又は重層で形成することができるが、薄膜はできる限り均一な表面を与えるように調製すべきである。
【0020】
薄膜の調製には、例えば、プロテアーゼ基質の水溶液に、硬膜剤の所定量及び色素溶液又は色素分散物を加えて均一に混合し、得られた溶液又は分散液を支持体表面に塗布して乾燥すればよい。塗布方法としては、例えば、ディップ塗布法、ローラー塗布法、カーテン塗布法、押し出し塗布法などを採用することができる。もっとも、薄膜の調製方法はこれらに限定されることはなく、例えば、写真用フイルムの技術分野などにおいて汎用されている薄膜形成方法などを適宜採用することが可能である。
【0021】
薄膜を支持体上に形成するにあたり、薄膜と支持体との接着を改善するために、薄膜と支持体表面との間に下塗り層を設けてもよい。例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ブタジエン、スチレン、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸等から選ばれるモノマーの1種又は2種以上を重合させて得られる重合体又は共重合体、ポリエチレンイミン、エポキシ樹脂、グラフト化ゼラチン、又はニトロセルロースなどの重合体を下塗り層として形成することができる。また、ポリエステル系支持体を用いる場合には、下塗り層に替えて、支持体表面をコロナ処理、紫外線処理、又はグロー処理することによっても、支持体と薄膜との接着力を改善できる場合がある。コロナ処理、紫外線処理、又はグロー処理を行った後下塗り層を塗布する方法も支持体と薄膜との接着力を改善できる。
【0022】
本明細書において用いられる「支持体表面上に形成された薄膜」という用語またはその同義語については、このような1又は2以上の下塗り層及び/又は支持体表面の処理を排除するものと解釈してはならない。もっとも、薄膜と支持体との接着を改善するための手段は上記のものに限定されることはなく、例えば、写真用フイルムの技術分野などにおいて汎用されている手段を適宜採用することができる。また、薄膜が複数の層を重層してなる場合には、重層される2つの層の間にさらに中間層を設けてもよく、2つの層が直接接触している場合に限定して解釈してはならない。このような中間層を適宜配置する手段は、例えば、写真用フイルムの技術分野などにおいて汎用されている。また、支持体表面上に形成された膜の表面に保護層を設けることも好ましく、写真用フイルムの技術分野などにおいて汎用されている。
【0023】
本発明の薄膜に配合する色素は、可視域に吸収を有するものであれば特に制限はなく、公知の物質を含む種々の化合物を使用することができる。1種類の色素を用いてもよいが、2種以上の色素を組み合わせて用いてもよい。例えば、重層した薄膜を用いる場合には、各層に異なる色の色素を配合することができる。なお、本発明の色素としては蛍光色素以外の色素を用いることが好ましい。薄膜中への色素の添加量は特に限定されないが、薄膜の面積に対する色素合計量として0.001〜10 mmol/m2、好ましくは0.01〜1 mmol/m2である。
【0024】
色素としては、例えば、アゾ色素(アゾレーキ色素、不溶性モノアゾ色素、不溶性ジスアゾ色素、縮合アゾ色素、金属錯塩アゾ色素、キレートアゾ色素)アゾメチン色素、インドアニリン色素、ベンゾキノン色素、ナフトキノン色素、アントラキノン色素、ジフェニルメタン色素、トリフェニルメタン色素、キサンテン色素、アクリジン色素、アジン色素、オキサジン色素、チアジン色素、オキソノール色素、メロシアニン色素、シアニン色素、アリーリデン色素、スチリル色素、ペリノン色素、インジゴ色素、チオインジゴ色素、キノリン色素、ニトロ色素、ニトロソ色素、多環式色素(ペリレン及びペリノン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、ジケトピロロピロール系色素等)、アジン色素等、その他の色素(アリザリンレーキ色素、アルカリブルー、群青、コバルトブルー)などを挙げることができる。
【0025】
具体的な化合物については「新版染料便覧」(有機合成化学協会編;丸善,1970)、「カラーインデックス」(The Society of Dyers and colourists)、「色材工学ハンドブック」(色材協会編;朝倉書店、1989)、「印刷インキ技術」CMC出版(1984年刊)、W. Herbst, K. Hunger共著による Industrial Organic Pigments(VCH Verlagsgesellschaft、1993年刊)などに記載されている。これらのうち、油溶性の色素は酵素反応に対して悪影響を及ぼさない点で好適である。
【0026】
以下に本発明の薄膜に配合可能な好ましい色素の具体例を示すが、本発明の薄膜は下記の色素を用いたものに限定されることはない。
【0027】
【化1】
Figure 0004276374
【0028】
【化2】
Figure 0004276374
【0029】
【化3】
Figure 0004276374
【0030】
【化4】
Figure 0004276374
【0031】
【化5】
Figure 0004276374
【0032】
【化6】
Figure 0004276374
【0033】
【化7】
Figure 0004276374
【0034】
【化8】
Figure 0004276374
【0035】
【化9】
Figure 0004276374
【0036】
【化10】
Figure 0004276374
【0037】
本発明の薄膜の製造には、上述の色素それ自体を用いてもよいが、表面処理を施された固体分散色素を用いてもよい。表面処理の方法には、例えば、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤やエポキシ化合物、ポリイソシアネートなど)を固体分散色素表面に結合させる方法などを挙げることができ、その具体的手段は「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986)などに記載されている。
【0038】
薄膜の製造にあたり、一般的には、色素をプロテアーゼ基質中に分散させることが望ましく、その目的のために分散剤を用いることができる。分散剤の種類は特に限定されず、用いるプロテアーゼ基質と色素との組み合わせに応じて種々のもの、例えば界面活性剤型の低分子分散剤や高分子型分散剤などを用いることができる。疎水性のプロテアーゼ基質中で用いる場合には、分散安定性の観点から高分子型分散剤を用いることが好ましい。分散剤の例としては、特開平3−69949号公報、欧州特許公開549486号公報等に記載のものを挙げることができる。
【0039】
本発明の薄膜の製造に使用される分散色素の粒径は、例えば、分散後に0.01〜10μmの範囲であることが好ましく、0.05〜1μmであることがさらに好ましい。色素をプロテアーゼ基質中に固体分散する方法としては、インク製造やトナー製造時に用いられる公知の分散技術を利用できる。分散機としては、例えば、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーサー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等を挙げることができ、その手法の詳細は「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986)に記載されている。
【0040】
本発明の薄膜には、色素を固体微粒子分散物として添加することができる。色素の固体微粒子分散物は、所望により適当な溶媒(水、アルコールなど)を用い、ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、サンドミル、コロイドミル、ジェットミル、ローラーミル等の分散機を用いて調製することができるが、縦型あるいは横型の媒体分散機を用いることが好ましい。また、色素を適当な溶媒中に溶解させたのち貧溶媒に添加して微結晶を析出させる方法や、pHをコントロールさせることによってまず色素を溶解させ、その後pHを変化させて微結晶を析出させる方法などを利用しても得ることができる。いずれの場合も分散剤を用いることが好ましい。
【0041】
色素の固体微粒子分散物を含有する薄膜は、上記のようにして得た色素の固体微粒子を適当なプロテアーゼ基質中に分散させることによってほぼ均一な固体微粒子分散物を調製した後、これを所望の支持体上に塗設することによって形成することができる。また、解離状態の色素を塩の形で水溶液として塗布した後、酸性のゼラチンを上塗りすることにより、析出分散を塗布時に得る方法を採用してもよい。分散剤としては、例えば、公知のアニオン性、カチオン性、ノニオン性、又は両性の低分子又は高分子分散剤を用いることができる。例えば、特開昭52−92716号公報、国際公開WO88/04794号、特開平10−20496号公報に記載の分散剤を挙げることができる。特にアニオン性及び/又はノニオン性の高分子分散剤の使用が好ましい。
【0042】
本発明の薄膜に含まれる色素は、特開昭62−215272号公報(125頁右上欄2行目〜127頁左下欄末行)、特開平2−33144号公報(37頁右下欄14行目〜38頁左上欄11行目)、欧州特許公開EP0.355.600A2号(85頁22行目〜31行目)に記載の紫外線吸収剤、特開平07−104448号公報(第70欄10行目〜第71欄2行目)記載の退色防止剤と併用することもできる。
【0043】
また、薄膜への色素の乳化分散による導入は、例えば、特開平07−104448号公報(第71欄3行目〜第72欄11行目)などに記載の種々の公知分散方法により行うことができるが、高沸点有機溶媒(必要に応じて低沸点有機溶媒を併用してもよい)に溶解し、ゼラチンなどのプロテアーゼ基質水溶液に乳化分散する水中油滴分散法を採用してもよい。水中油滴分散法に用いられる高沸点溶媒の例は米国特許第2,322,027号明細書などに記載されている。また、ポリマー分散法の1つとしてのラテックス分散法及びラテックスの具体例は、米国特許第4,199,363号明細書、西独特許出願第(OLS)2,541,274号明細書、同2,541,230号明細書、特公昭53−41091号公報、及び欧州特許公開第029104号公報等に記載されており、これらを本発明の薄膜製造に利用してもよい。また、有機溶媒可溶性ポリマーによる分散法について国際公開WO88/00723号公報に記載されている。
【0044】
水中油滴分散法に用いることのできる高沸点有機溶媒としては、例えば、フタール酸エステル類(例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロへキシルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、デシルフタレート、ビス(2,4−ジ−tert−アミルフェニル)イソフタレート、ビス(1,1−ジエチルプロピル)フタレート)、リン酸又はホスホンのエステル類(例えば、ジフェニルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、ジオクチルブチルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリ−2−エチルヘキシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルフェニルホスフェート)、安息香酸エステル酸(例えば、2−エチルヘキシルベンゾエート、2,4−ジクロロベンゾエート、ドデシルベンゾエート、2−エチルヘキシル−p−ヒドロキシベンゾエート)、アミド類(例えば、N,N−ジエチルドデカンアミド、N,N−ジエチルラウリルアミド)、アルコール類またはフェノール類(イソステアリルアルコール、2,4−ジ−tert−アミルフェノールなど)、脂肪族エステル類(例えば、コハク酸ジブトキシエチル、コハク酸ジ−2−エチルヘキシル、テトラデカン酸2−ヘキシルデシル、クエン酸トリブチル、ジエチルアゼレート、イソステアリルラクテート、トリオクチルシトレート)、アニリン誘導体(N,N−ジブチル−2−ブトキシ−5−tert−オクチルアニリンなど)、塩素化パラフィン類(塩素含有量10%〜80%のパラフィン類)、トリメシン酸エステル類(例えば、トリメシン酸トリブチル)、ドデシルベンゼン、ジイソプロピルナフタレン、フェノール類(例えば、2,4−ジ−tert−アミルフェノール、4−ドデシルオキシフェノール、4−ドデシルオキシカルボニルフェノール、4−(4−ドデシルオキシフェニルスルホニル)フェノール)、カルボン酸類(例えば、2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ酪酸、2−エトキシオクタンデカン酸)、アルキルリン酸類(例えば、ジ−2(エチルヘキシル)リン酸、ジフェニルリン酸)などが挙げられる。また、補助溶媒として沸点が30℃以上約160℃以下の有機溶剤(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−エトキシエチルアセテート、ジメチルホルムアミド)を併用してもよい。
【0045】
高沸点有機溶媒の量は用いられる色素1gに対して10g以下、好ましくは5g以下、より好ましくは1g〜0.1gである。また、プロテアーゼ基質1gに対して1ml以下、好ましくは0.5ml以下、さらに好ましくは0.3ml以下が適当である。疎水性の色素を親水性コロイドに分散する際には、種々の界面活性剤を用いることができる。例えば、特開昭59−157636号公報の第(37)〜(38)頁、リサーチ・ディスクロージャー(以下、RDと略す)17643に界面活性剤として挙げられたものを使うことができる。
【0046】
薄膜中にはプロテアーゼ基質、色素、及び必要に応じて硬膜剤のほか、各種の添加物を加えてもよい。添加物としては、例えば薄膜の塗布を容易にするための界面活性剤、色素を分散するためのオイル又は乳化剤、防腐剤、防かび剤、pHを調節するための酸または塩基、酵素活性を調節するためのCa++等の無機イオンがあげられるが、これらに限定されることはない。また、本発明の薄膜には帯電防止の手段が施されていてもよい。例えば、プロテアーゼ基質層側又はその反対側の表面電気抵抗が1012Ω以下であるものを好ましく用いることができる。膜の表面電気抵抗を低下させるための手段としては、例えば、写真用フイルムに利用されている技術を採用することができる。
【0047】
例えば、本発明の薄膜の製造には、以下に示すような添加剤を必要に応じて使用することができる。硬膜剤(RD17643:26頁;RD18716:651頁左欄;RD307105:874〜875頁)、バインダー(RD17643:26頁;RD18716:651頁左欄;RD307105:873〜874頁)、可塑剤又は潤滑剤(RD17643:27頁;RD18716:650頁右欄;RD307105:876頁)、塗布助剤又は界面活性剤(RD17643:26〜27頁;RD18716:650頁右欄;RD307105:875〜876頁)、帯電防止剤(RD17643:27頁;RD18716:650頁右欄;RD307105:876〜877頁)、マット剤(RD307105:878〜879頁)。これらの添加剤はいずれも写真用フイルムの技術分野において汎用されており、本発明の薄膜の製造に同様に利用できる。
【0048】
本発明の方法に用いる生体試料としては、ヒトを含む哺乳類動物から分離・採取された生体試料を用いることができる。例えば、罹患した哺乳類動物、疾患の存在が疑われる哺乳動物、又は実験動物などから分離・採取した生体試料を用いることができる。生体試料の形態は特に限定されないが、組織切片などの固形試料や体液などの非固形試料を用いることができる。非固形試料としては、例えば、組織から吸引により採取した細胞又は組織片を含む試料、血液、リンパ液、唾液などの体液を用いることができる。例えば、肺癌、胃癌、食道癌、大腸癌、乳癌、子宮癌、卵巣癌、甲状腺癌、肝臓癌、口腔癌、前立腺癌、腎臓癌、膀胱癌などの癌組織から手術や組織検査などにより分離・採取した癌組織、リンパ節、歯周病組織、リウマチ性関節炎の滑膜や骨組織などの組織から手術や組織検査などにより分離・採取した組織、歯肉溝滲出液、破壊性病変組織に含まれる液(例えばリウマチ性病変の関節液又は歯槽膿漏組織抽出液)、胸水、腹水、脳脊髄液、乳腺異常分泌液、卵巣嚢胞液、腎臓嚢胞液、喀痰、血液あるいは血球などを用いることができる。
【0049】
試料が組織の場合には、例えば、液体窒素で急速凍結した試料から凍結切片作成装置を用いて厚さ1〜10 μm、好ましくは2〜6 μmの切片を調製し、この切片を薄膜に貼付することによって試料と薄膜とを接触させることができる。穿刺吸引により採取した細胞又は組織片を含む非固形試料についても、コンパウンドなどの成形材料と混合して液体窒素で急速凍結し、同様に切片を作製して用いることができる。また、組織から穿刺吸引により採取した細胞又は組織片を含む非固形試料をそのまま用いる場合には、吸引した試料を薄膜上に吐出させ、細胞を分散状態で薄膜に接着させればよい。さらに、生体試料が組織片の場合は、採取した組織の水分を軽く拭った後、プロテアーゼ基質を含む薄膜の上に1分間から30分間程度静置することで試料と薄膜とを接触させることができる。
【0050】
また、リウマチ性関節炎の患者から採取した滑膜液の様な非固形試料を用いる場合には、試料を適当な濃度に希釈し、及び/又は必要な前処理を行った後に、約1〜50 μL、好ましくは1〜20 μL程度を薄膜上に滴下すればよい。歯周病の歯肉溝滲出液を試料として用いる場合には、歯肉溝内に濾紙を挿入して約5〜10μL程度の歯肉溝滲出液を採取し、該濾紙を薄膜に貼付する方法を採用することができる。歯肉溝滲出液の採取後、必要に応じて蒸留水や適宜の緩衝液(例えば、50 mM Tris-HCl, pH 7.5, 10 mM CaCl2, 0.2 M NaClなど)を用いて濾紙から歯肉溝滲出液を抽出し、抽出液を薄膜上に滴下してもよい。より多量に採取できる体液試料(嚢胞液など)の場合には、試料を入れた容器の中に薄膜の一部を浸漬する方法により再現性のよい結果が得られる。
【0051】
プロテアーゼを含む組織切片を薄膜に貼付するか、あるいは液体試料を滴下するなどの手段によって薄膜とプロテアーゼを含む試料を接触させた後、プロテアーゼ活性の発現に適した温度、例えば37℃の飽和湿度条件下で基質の消化に必要な時間薄膜をインキュベートする。必要な時間は試料や薄膜の種類によって異なるが、好ましくは、組織切片又は吸引により得た細胞若しくは組織片を含む非固形試料については37℃で1〜48時間、さらに好ましくは6〜30時間、滲出液などの液状の試料については0.5〜24時間、好ましくは1〜6時間インキュベートし、試料中のプロテアーゼによって薄膜中に消化痕を形成させる。その後、薄膜を水性媒体で洗浄し、消化された基質及びそこに含まれる色素を除去する。水性溶媒としては水の他、水と混和可能な有機溶媒(たとえば、メタノール、エタノール、アセトン)との混合物を用いることができる。光学顕微鏡で消化痕を観察することができる。
【0052】
生体試料中の実質的に連続した2以上の切片のうちの一つをプロテアーゼ・インヒビターを含まない薄膜に貼付し、他の切片の1つをプロテアーゼ・インヒビターを含む薄膜に貼付して、両者の薄膜の消化痕を比較することにより、プロテアーゼの種類を特定することが可能になる。プロテアーゼ・インヒビターの種類は特に限定されないが、例えば、キレート剤、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、又はセリンプロテアーゼ阻害剤などを好適に用いることができる。
【0053】
また、プロテアーゼ基質、色素、及び必要に応じて硬膜剤を含む単層の薄膜を用いる場合には、試料中のプロテアーゼにより薄膜が消化されるに従って薄膜の光学濃度が減少するが、プロテアーゼ基質を含む薄膜が重層塗布されており、各層に異なる色の色素が添加されている場合には、試料中のプロテアーゼにより薄膜が消化されるに従って、光学濃度とともに薄膜の色相が変化する。このような薄膜を用いると、消化の強さを視覚的に判定することが容易である。
【0054】
本発明の方法で生体試料に含まれるプロテアーゼ活性を測定し、試料が由来した生体の状況、例えば癌の転移やリウマチの進行度などとの対応を調べることができる。消化痕における消化の強さの判定には、光学顕微鏡下で目視で判定する方法、分光器により消化痕の光学濃度を測定する方法、光学顕微鏡で得られる画像をコンピューターに取り込み、画像解析の方法により消化痕における各種の数値化を行う方法などのいずれを採用してもよい。画像解析を行う場合には種々のデータ処理法を用いることができ、その種類は特に限定されないが、消化痕の面積、あるいは消化痕部分の濃度と面積の積分を用いて消化の程度を数値化することが好ましい。
【0055】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されることはない。
例1:赤色の色素乳化物を含むゼラチン薄膜の製造
(支持体の作成)
175μmのPETクリアーフイルムの表面をコロナ放電処理したのち、以下のような組成の下塗りを施した支持体を作成した。なお、裏面の電気抵抗を測定したところ、1×108Ωであった。
1.おもて面
ゼラチン 0.3g/m2
硬膜剤(1) 0.001g/m2
2.裏面
ゼラチン 0.05g/m2
酸化アンチモンをドープした
二酸化スズの水分散物 0.04g/m2
メチルセルロース 0.01g/m2
マット剤
(平均粒径3μのPMMAポリマー粒子)0.005g/m2
硬膜剤(2) 0.002g/m2
【0056】
【化11】
Figure 0004276374
【0057】
(色素塗布液の調製)
色素化合物(MD−06)11.8g及び(MD−1)3.9g、溶媒(Solv−1)15.7g及び酢酸エチル50ccを加えて溶解し、この溶液をドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(界面活性剤(1))8ccを含む10質量%ゼラチン(シグマ社製:ブルーム値175)水溶液270ccに添加した後、超音波ホモジナイザーにて乳化分散した。得られた分散液に、10質量%ゼラチン(シグマ社製#2625)2740gを添加溶解して第1層塗布液を調製した。第1層以外の層の塗布液もこれと同様の方法で調製し、前記支持体上に表1に示した構成にて塗布を行い薄膜を作成した。
【0058】
【表1】
Figure 0004276374
【0059】
【化12】
Figure 0004276374
【0060】
例2:赤色の色素乳化物とキレート剤を含むゼラチン薄膜の製造
例1の第1層(着色層)にo−フェナントロリン(和光純薬(株)製)0.78 g/m2、界面活性剤(3)を0.06 g/m2となるように添加した以外は例1と同様に薄膜を製造した。
【0061】
例3:各層に異なる色の色素乳化物を含む多層構成のゼラチン膜の製造
例1と同様の方法で、イエロー及びシアン色素分散液を作成し、表2に示した構成の薄膜を作成した。
【0062】
【表2】
Figure 0004276374
【0063】
例4:各層に異なる色の色素乳化物とキレート剤を含む多層構成のゼラチン膜の製造
例3の第1層、第2層、及び第3層(それぞれ着色層)に、o−フェナントロリン(和光純薬(株)製)を0.31 g/m2、界面活性剤(3)を0.02 g/m2となるよう添加する以外は例3と同様にして薄膜を製造した。
【0064】
例5:水溶性赤色素を含む薄膜の製造
(色素溶解液の調整)
色素化合物(MD−36)2.0gを水100mlに溶解した色素溶液を、10質量%ゼラチン(シグマ社製#2625)溶液500mlに40℃にて溶解し、色素溶液を作成した。これを用いて、表3に示す薄膜を製造した。
【0065】
【表3】
Figure 0004276374
【0066】
例6:赤色の色素乳化物を含むゼラチン薄膜を用いたプロテアーゼ活性の測定
外科手術により摘出し凍結した乳癌検体を、凍結切片作製装置を用いて−25℃で厚さ4μmに薄切し、例1に従って製造した赤色の色素乳化物を含むゼラチン薄膜に接着させた。この膜を37℃、相対湿度100%で16時間インキュベートし、自然乾燥させたのち、10分間水洗した。マイヤーのヘマトキシリン液に2分間浸漬して核染色を行い、10分間水洗後20秒間エタノールに浸漬して自然乾燥させた。乾燥後、組織切片を覆うようにカバーエイドフィルム(サクラ精機製)をキシレンを用いて貼り付け乳癌切片を封入した。このフィルムをプラスチック製のマウントに保持し、光学顕微鏡を用いて観察すると乳癌組織切片中、核の形態より癌細胞が存在すると考えられる部位にゼラチン消化が認められ、プロテアーゼ活性があることが明らかとなった。組織切片中の細胞核はヘマトキシリンにより染色されているが、ゼラチン消化部分の観察には影響がなく、比較例の場合に比べて鮮明であった。薄膜の染色のためにポンソー染色液の調製及び染色操作が不要であるため、操作も簡便であった。
【0067】
例7:赤色の色素乳化物とキレート剤を含むゼラチン薄膜を用いたプロテアーゼ活性の測定
外科手術により摘出し凍結した乳癌検体を、凍結切片作製装置を用いて−25℃で厚さ4μmに薄切し、例2に従って製造した赤色の色素乳化物を含むゼラチン薄膜に接着させた。この膜を例6と同様にしてインキュベート、水洗、ヘマトキシリン染色、水洗処理に付した。このフィルムをプラスチック製のマウントに保持し、光学顕微鏡を用いて観察すると、例6で観察されたゼラチン分解がほぼ完全に阻害されていた。この結果から、例6で観察されたゼラチン分解はMMPによるものと判断できた。
【0068】
例8:各層に異なる色の色素乳化物を含む多層構成のゼラチン膜を用いたプロテアーゼ活性の測定
外科手術により摘出し凍結した子宮頸癌検体を、凍結切片作製装置を用いて−25℃で厚さ4μmに薄切し、例3で製造した各層に異なる色の色素乳化物を含む多層構成のゼラチン膜に接着させた。この膜を37℃、相対湿度100%で16時間インキュベートし、自然乾燥させたのち、10分間水洗した。マイヤーのヘマトキシリン液に2分間浸漬して核染色を行い、10分間水洗後20秒間エタノールに浸漬して自然乾燥させた。乾燥後、組織切片を覆うようにカバーエイドフィルム(サクラ精機製)をキシレンを用いて貼り付け、子宮頸癌切片を封入した。このフィルムをプラスチック製のマウントに保持し、光学顕微鏡を用いて観察すると子宮頸癌組織切片中、核の形態より癌細胞が存在すると考えられる部位にゼラチン消化が認められ、プロテアーゼ活性があることが明らかとなった。この場合、フィルム全体がグレー色であるのに対し、ゼラチン消化の起こった部分は色が変色して見えた。このことから、各層に異なる色の色素乳化物を含む多層構成のゼラチン膜を用いると、プロテアーゼ活性を色相の変化として検知できることがわかった。
【0069】
例9:各層に異なる色の色素乳化物とキレート剤を含む3層構成のゼラチン膜を用いたプロテアーゼ活性の測定
外科手術により摘出し凍結した子宮頸癌検体を、凍結切片作製装置を用いて−25℃で厚さ4μmに薄切し、例4に従って作製した赤色の色素乳化物を含むゼラチン薄膜に接着させた。この膜を例8と同様にしてインキュベート、水洗、ヘマトキシリン染色、水洗処理に付した。このフィルムをプラスチック製のマウントに保持し、光学顕微鏡を用いて観察すると、例8で観察されたゼラチン分解がほぼ完全に阻害されていた。この結果から、例8で観察されたゼラチン分解はMMPによるものと判断できた。
【0070】
例10:色素塗布液調製
色素化合物(MD−9)12.0gを乳鉢で30分間すりつぶした後、150mlのベッセルに0.5mφのガラスビーズ100cc、界面活性剤(A)3.3g及び水90gを添加し、ダイノミル分散機KBL(シンマルエンタープライズ社製)にて、2時間分散を行った。得られた分散液に10質量%ゼラチン(シグマ社製#2625)2740gを添加溶解して第一層塗布液を調製した。これを用い、実施例1と同様の方法で塗布を行い薄膜を作成した。これを用いて実施例6の方法で評価を行ったところ、同様の効果がえられる事が分かった。
【0071】
【化13】
Figure 0004276374
【0072】
比較例:ゼラチンと硬膜剤からなる薄膜を用いたプロテアーゼ活性の測定
外科手術により摘出し凍結した胃癌検体を、凍結切片作製装置を用いて−25℃で厚さ4μmに薄切し、国際公開WO97/32035号公報に開示された架橋ゼラチン薄膜に接着させた。ゼラチンの膜厚は7μmで1,2−ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)エタンにより架橋され、厚さ175μmのPETフィルムに塗布されたものを用いた。凍結切片を貼り付けたゼラチン膜を37℃、相対湿度100%で16時間インキュベートし、自然乾燥させた。染色液としては5%の酢酸水溶液に濃度0.8%になるようにポンソー3Rを溶解させた液とエタノールとの3:7混合液を用い、室温で4分間浸漬して染色した。
【0073】
10分間水洗した後、マイヤーのヘマトキシリン液に2分間浸漬して核染色を行い、10分間水洗後20秒間エタノールに浸漬して自然乾燥させた。乾燥後、組織切片を覆うようにカバーエイドフィルム(サクラ精機製)をキシレンを用いて貼り付け胃癌切片を封入した。このフィルムをプラスチック製のマウントに保持し、光学顕微鏡を用いて観察すると、胃癌組織切片中、核の形態より癌細胞が存在すると考えられる部位にゼラチン消化が認められ、プロテアーゼ活性があることが明らかとなった。しかし、ゼラチン膜上に存在する胃癌切片もポンソーにより染色されているため、消化痕の一部が切片により覆われて消化の範囲及び程度が不明確であった。
【0074】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、プロテアーゼ活性を正確に測定できるとともに、薄膜上の組織や細胞の形態観察を容易に行うことができる。特に、薄膜の染色工程が不要となるために測定のための操作が簡便であり、薄膜上の組織や細胞が染色されることがなくなり、プロテアーゼ活性の発現がより詳細に解析できる。

Claims (7)

  1. プロテアーゼ活性の測定方法であって、
    (1)支持体表面に形成され、乳化分散された色素及び固体分散された色素からなる群から選ばれる少なくとも一種の色素及びプロテアーゼ基質を含有する層を複数含み、前記の複数の層における各層に含まれる色素は互いに異なる色の色素である、架橋された薄膜に対して、プロテアーゼを含む生体試料を接触させる工程;及び
    (2)該薄膜を水性媒体で洗浄してプロテアーゼの作用により該薄膜に形成された消化痕を検出する工程を含む方法。
  2. プロテアーゼ活性の測定方法であって、
    (1)支持体表面に形成され、乳化分散された色素及び固体分散された色素からなる群から選ばれる少なくとも一種の色素及びプロテアーゼ基質を含有する層を複数含み、前記の複数の層における各層に含まれる色素は互いに異なる色の色素である、架橋された薄膜に対して、プロテアーゼを含む生体試料を接触させる工程;
    (2)該薄膜を水性媒体で洗浄してプロテアーゼの作用により該薄膜に形成された消化痕を検出する工程;及び
    (3)該薄膜上の生体試料を染色する工程を含む方法。
  3. プロテアーゼ活性の測定方法であって、
    (1)支持体表面に形成され、乳化分散された色素及び固体分散された色素からなる群から選ばれる少なくとも一種の色素及びプロテアーゼ基質を含有する層を複数含み、前記の複数の層における各層に含まれる色素は互いに異なる色の色素である、架橋された薄膜に対して、生体試料の実質的に連続した2以上の切片のうちの一つを接触させる工程;
    (2)支持体上に形成され、乳化分散された色素及び固体分散された色素からなる群から選ばれる少なくとも一種の色素、プロテアーゼ基質、及びプロテアーゼ・インヒビターを含有する架橋された及び/又は実質的に水に溶けない薄膜に対して上記切片のうちの他の切片の一つを接触させる工程;
    (3)該薄膜を水性媒体で洗浄してプロテアーゼの作用により該薄膜に形成された消化痕を検出する工程;及び
    (4)工程(1)で用いた薄膜の消化痕と工程(2)で用いた薄膜の消化痕とを対比する工程を含む方法。
  4. プロテアーゼ活性の測定方法であって、
    (1)支持体表面に形成され、乳化分散された色素及び固体分散された色素からなる群から選ばれる少なくとも一種の色素及びプロテアーゼ基質を含有する層を複数含み、前記の複数の層における各層に含まれる色素は互いに異なる色の色素である、架橋された薄膜に対して、生体試料の実質的に連続した2以上の切片のうちの一つをさせる工程;
    (2)支持体上に形成され、乳化分散された色素及び固体分散された色素からなる群から選ばれる少なくとも一種の色素、プロテアーゼ基質、及びプロテアーゼ・インヒビターを含有する架橋された及び/又は実質的に水に溶けない薄膜に対して、上記切片のうちの他の切片の一つを接触させる工程;
    (3)該薄膜を水性媒体で洗浄してプロテアーゼの作用により該薄膜に形成された消化痕を検出する工程;
    (4)該薄膜上の生体試料を染色する工程;及び
    (5)工程(1)で用いた薄膜の消化痕と工程(2)で用いた薄膜の消化痕とを対比する工程を含む方法。
  5. 生体試料の染色が細胞核の染色である請求項2又は4に記載の方法。
  6. 染色にヘマトキシリンあるいはメチルグリーンを用いる請求項5に記載の方法。
  7. 生体試料がヒトを含む哺乳類動物から得られた組織、細胞、又は体液である請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
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