JP2002065244A - プロテアーゼ活性の測定用薄膜 - Google Patents

プロテアーゼ活性の測定用薄膜

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JP2002065244A
JP2002065244A JP2000261313A JP2000261313A JP2002065244A JP 2002065244 A JP2002065244 A JP 2002065244A JP 2000261313 A JP2000261313 A JP 2000261313A JP 2000261313 A JP2000261313 A JP 2000261313A JP 2002065244 A JP2002065244 A JP 2002065244A
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JP
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thin film
protease
dye
substrate
pigment
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JP2000261313A
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English (en)
Inventor
Hiroshi Arakatsu
浩 荒勝
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Fujifilm Holdings Corp
Original Assignee
Fuji Photo Film Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 プロテアーゼ活性の弱い組織においてもプロ
テアーゼ活性の発現位置をより詳細に確認できる測定用
薄膜を提供する。 【解決手段】 支持体表面に少なくとも一種のプロテア
ーゼ基質及び少なくとも一種の硬膜剤を含有する架橋さ
れた及び/又は実質的に水に溶けない薄膜を有するプロ
テアーゼ活性用薄膜において、硬膜剤の塗布量(mmo
l/m2)に対するプロテアーゼ基質の塗布量(g/
2)の比が20以上であることを特徴とするプロテア
ーゼ活性測定用薄膜。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プロテアーゼの測
定方法に関するものである。より具体的には、癌細胞の
浸潤活性や転移活性などの癌の悪性度、歯周炎などの歯
周病の進行度、リウマチ性関節炎などにおける破壊性病
変などの正確な診断を可能にするプロテアーゼ活性の測
定用薄膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術】癌細胞の浸潤や転移、歯周炎などの歯周
病の進行、リウマチ性関節炎などにおける組織破壊の進
行、創傷治癒過程、個体発生過程などにおいて、マトリ
ックスメタロプロテアーゼ、プラスミノーゲンアクティ
ベーターなど種々のプロテアーゼが関与することが知ら
れており、それらのプロテアーゼの検出及び定量方法と
して、抗体を用いたイミュノアッセイ法、イミュノブロ
ッティング法、電気泳動ザイモグラフィー法などが知ら
れている。また、組織中におけるプロテアーゼの活性を
測定する方法として、The FASEB Journal, Vol.9, Jul
y, pp.974-980, 1995又はWO97/32035に開示されてい
る、いわゆるin situ zymography法が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】in situ zymography法
は組織中のプロテアーゼ活性の存在位置を調べるため
に、被検査組織の薄切切片を薄膜に貼り付け、該薄膜中
のプロテアーゼ基質を被検査組織のプロテアーゼによっ
て分解、除去させることで存在位置を確認するものであ
る。しかしながら、被検査組織のプロテアーゼは存在量
が僅かであることが多いため、このような組織では基質
の分解が不十分でその存在位置を確認するのに多大な時
間を要したり、いくら時間をかけても検出できないこと
があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記の課題
を解決すべく鋭意努力した結果、in situ zymography法
において用いられる薄膜においてプロテアーゼ基質を架
橋する度合いを調節することにより、プロテアーゼ活性
の弱い組織においても、その活性の発現位置をより詳細
に確認できることを見いだした。本発明はこれらの知見
を基にして完成されたものである。
【0005】すなわち、本発明は、支持体表面に少なく
とも一種のプロテアーゼ基質及び少なくとも一種の硬膜
剤を含有する架橋された及び/又は実質的に水に溶けな
い薄膜を有するプロテアーゼ活性用薄膜において、硬膜
剤の塗布量(mmol/m2)に対するプロテアーゼ基
質の塗布量(g/m2)の比が20以上であることを特
徴とするプロテアーゼ活性測定用薄膜を提供するもので
ある。
【0006】この発明の好ましい態様によれば、硬膜剤
の塗布量(mmol/m2)に対するプロテアーゼ基質
の塗布量(g/m2)の比が30〜80である上記の薄
膜;プロテアーゼ基質の塗布量が2g/m2〜7g/m2
以下である上記の薄膜;プロテアーゼ基質としてブルー
ム値200以下のゼラチンを含有する上記の薄膜;プロ
テアーゼ基質として5質量%の水溶液が15℃において
実質的にゲル化しない基質を含有する上記の薄膜が提供
される。プロテアーゼ基質を含有する薄膜はさらにプロ
テアーゼインヒビターを含有してもよいが、その場合、
プロテアーゼ・インヒビターはキレート剤、マトリック
スメタロプロテアーゼ阻害剤、又はセリンプロテアーゼ
阻害剤であることが好ましい。
【0007】また、別の観点からは、本発明により、上
記の薄膜を用いて生体試料に含まれるプロテアーゼ活性
を測定する方法が提供される。生体試料としては、ヒト
を含む哺乳類動物、好ましくは患者、疾患が疑われる哺
乳動物、実験動物などから分離・採取した生体試料を用
いることができ、例えば、組織片などの固形試料のほ
か、組織から吸引により採取した細胞又は組織片を含む
試料、血液、リンパ液、唾液などの非固形試料などを用
いることができる。より具体的には、生体試料が癌組
織、リンパ節、歯周病組織、歯肉溝滲出液、破壊性病変
組織または液(例えばリウマチ性病変の関節液または歯
槽膿漏組織抽出液)、胸水、腹水、脳脊髄液、乳腺異常
分泌液、卵巣嚢胞液、腎臓嚢胞液、膵液、喀痰、血液あ
るいは血球である上記方法は本発明の好ましい態様であ
る。連続した切片を用いる方法では生体試料として組織
切片を用いることができる。プロテアーゼがマトリック
スメタロプロテアーゼ又はセリンプロテアーゼである上
記方法は好ましい態様である。本発明の薄膜は、色素を
含む薄膜の消化痕を該色素と識別可能な染料で染色する
上記方法;消化痕の検出を顕微鏡を用いた目視により判
定する上記方法;画像処理装置を用いて消化痕の定量又
は数値化を行う上記方法に用いられる。
【0008】
【発明の実施の形態】本明細書において用いられる測定
方法という用語は、定性及び定量を含めて最も広義に解
釈されるべきである。また、本明細書において「〜」で
示される数値範囲は下限及び上限の数値を含む範囲であ
る。
【0009】本発明において用いられる「実質的にゲル
化しない」という用語は、プロテアーゼ基質の5質量%
水溶液を15℃の温度で12時間以上放置した場合に、
そのB型粘度計粘度が1Pa・S(1000cp)以下
の状態にあることを意味している。本発明で例示される
化合物は、ゼラチンを除きほとんどの化合物が「実質的
にゲル化しない」基質に属する。またゼラチンも低分子
量化に伴い「実質的にゲル化しない」基質に属するよう
になる。もっとも、これらの化合物は「実質的にゲル化
しない」基質の説明のために言及したものであり、いか
なる意味においても「実質的にゲル化しない」基質の範
囲を制限するものとして解釈してはならない。
【0010】本明細書において用いられる「架橋された
及び/又は実質的に水に溶けない薄膜」とは、支持体表
面上に形成された薄膜を37℃の水に3時間浸漬した場
合に実質的にプロテアーゼ基質が水中に溶出することが
ないことを意味している。具体的には、例えば、薄膜を
37℃の温水に3時間浸漬した後に一旦乾燥させた薄膜
と、未浸漬の薄膜を同じ条件で染色した場合に、両者の
濃度比が0.7以上になる薄膜を意味している。本発明
の薄膜は、試料中に含まれるプロテアーゼによってプロ
テアーゼ基質が消化され、薄膜中に消化痕が形成される
ことによりプロテアーゼを測定する方法(いわゆるin s
itu zymography法:例えばPCT/JP97/0588号明細書に開
示されている)、好ましくはfilm in situ zymography
法(細胞培養工学, vol.25(9), pp29-32, 1999)に用い
ることができる。
【0011】本発明の薄膜は、一般的には架橋剤を用い
たプロテアーゼ基質の架橋により製造することができる
が、必ずしも架橋されている必要はない。すなわち、本
発明で用いる硬膜剤は、一般的な架橋剤だけでなく、基
質の脱水縮合、-SH同士の連結による重合、反応により
プロテアーゼ基質を非水溶化できる物質などを含めて最
も広義に解釈すべきである。架橋剤以外の硬膜剤として
は、反応により基質を疎水化し、水に不溶性にする物質
(すなわち変成剤)などを挙げることができる。硬膜剤
の塗布量(mmol/m2)に対するプロテアーゼ基質
の塗布量(g/m2)の比は20以上であり、30〜8
0の範囲であることが好ましい。また、プロテアーゼ基
質の塗布量は1g/m2〜10g/m2の範囲であること
が好ましく、2g/m2〜7g/m2の範囲であることが
さらに好ましい。
【0012】薄膜の製造には、一般的には、有機又は無
機の硬膜剤を用いることができる。このような硬膜剤
は、写真分野でゼラチンの硬化に利用可能な硬膜剤から
適宜選択してもよいが、測定の対象となるプロテアーゼ
の活性に影響を与えないものを選択する必要がある。例
えば、活性ハロゲン化合物(2,4−ジクロロ−6−ヒ
ドロキシ−1,3,5−トリアジン及びそのナトリウム
塩など)及び活性ビニル化合物(1,3−ビスビニルス
ルホニル−2−プロパノール、1,2−ビス(ビニルス
ルホニルアセトアミド)エタン、ビス(ビニルスルホニ
ルメチル)エーテル、及びビニルスルホニル基を側鎖に
有するビニル系ポリマーなど)を用いることができ、
1,2−ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)エタン
を用いることが好ましい。
【0013】本発明ではこれらの硬膜剤とプロテアーゼ
基質とを各種組み合わせて用いることができるが、各種
の硬膜剤とプロテアーゼ基質とを適宜組み合わせ、及び
それらの配合量比を変えた複数の層を重積した薄膜を用
いることができ、これにより感度及び適用範囲を広げる
ことができる。層の重積のためには、用いる硬膜剤の分
子量は大きい方が好ましく、ポリマーやオリゴマータイ
プの硬膜剤が広く用いられる。また水に難溶性の硬膜剤
を乳化などの手法により分散したものを使用する方法も
知られており、その方法を適用してもよい。
【0014】本明細書において、「ブルーム値」とはゼ
ラチンゲルの強度を表す数値を意味しており、British
Standards Specification, 757, 1959に記載の方法に従
い、6.66質量%の基質溶液を10℃で17時間熟成させた後
に市販の装置により測定できる。 ブルーム値は、一般
的にゼラチンの分子量に比例して上昇し、また石灰処理
ゼラチンよりも酸処理ゼラチンの方が高い値を与えるこ
とが知られている。写真分野で広く用いられているゼラ
チンの多くは、ブルーム値が200〜300に分布して
おり、本発明でより好ましい態様として用いられるブル
ーム値200以下の豚皮膚酸処理ゼラチンは写真分野に
おいては一般的なゼラチンではない。
【0015】測定対象となるプロテアーゼとしては、例
えば、マトリックス・メタロプロテアーゼ及びセリンプ
ロテアーゼを挙げることができ、これらの酵素について
は、鶴尾隆編「癌転移の分子機構」、pp.92-107、メジ
カルビュー社、1993年発行に詳細に説明されている。本
発明の方法に特に好適なプロテアーゼとして、例えば、
間質型コラーゲナーゼ(MMP-1)、ゼラチナーゼA (MMP-
2)、及びゼラチナーゼB(MMP-9)などのマトリックス・
メタロプロテアーゼ;及びプラスミノーゲン・アクティ
ベーター(PA)などのセリンプロテアーゼを挙げることが
できるが、本発明の薄膜を用いた測定対象は上記の特定
のプロテアーゼに限定されることはない。最近ではMMP-
7が癌の転移性と相関があることが報告されており、こ
のMMP-7も本発明の薄膜を用いて測定することができ
る。
【0016】プロテアーゼ基質の種類は、プロテアーゼ
の基質として分解される高分子化合物であれば特に限定
されない。例えばコラーゲン、ゼラチン、プロテオグリ
カン、フィブロネクチン、ラミニン、エラスチン、トラ
ンスフェリン、アルブミン、又はカゼイン、あるいはこ
れらの誘導体を用いることができる。好ましくは、ゼラ
チン、トランスフェリン誘導体、アルブミン誘導体、フ
ィブロネクチンを用いることができ、より好ましくはゼ
ラチン又はカルボキシメチルトランスフェリン、カルボ
キシメチルアルブミンを用いることができる。
【0017】ゼラチンを用いる場合には、ゼラチンの種
類は特に限定されない。例えば、牛骨アルカリ処理ゼラ
チン、豚皮膚アルカリ処理ゼラチン、牛骨酸処理ゼラチ
ン、牛骨フタル化処理ゼラチン、豚皮膚酸処理ゼラチン
などを用いることができる。ブルーム値200以下のゼ
ラチンが好ましく、ブルーム値200以下の豚皮膚酸処
理ゼラチンがさらに好ましい。
【0018】プロテアーゼ基質としては1種を用いても
よいが、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以
上の異なるプロテアーゼ基質を組み合わせて用いること
により、生体試料中に含まれるプロテアーゼの種類を正
確に特定できる場合がある。例えば、生体試料中の実質
的に連続した切片のうちの一つをある種のプロテアーゼ
基質を含む薄膜に接触させて消化痕を検出し、他の切片
を異なるプロテアーゼ基質を含む薄膜に接触させて薄膜
上の消化痕を検出し、それぞれの結果を対比することが
できる。比較のためにそれぞれ異なるプロテアーゼ基質
を含む薄膜を2種以上用いてもよい。プロテアーゼ基質
を含む薄膜の厚さは、乾燥後の膜厚が1〜10μm、好まし
くは2〜7μmのものを用いることが好適である。
【0019】本発明の薄膜は支持体表面に形成してもよ
い。この場合に使用できる支持体の材質や形状は特に限
定されない。薄膜上の表面変化を顕微鏡下で観察するよ
うな場合や、吸光度測定や蛍光測定などの分光学的手段
により表面変化を検出する場合には、例えば、薄膜は平
面状の透明又は半透明の支持体上に形成されることが好
ましい。このような透明又は半透明の高分子支持体とし
ては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチ
レンナフタレート、アタクティックポリスチレン、シン
ジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ト
リアセチルセルロース、ポリメチルメタクリレート、ポ
リスルフォン、ポリアリレート等からなる透明又は半透
明プラスチックフイルムなどを用いることができる。特
に好ましいのはポリエチレンテレフタレート、シンジオ
タクティックポリスチレン、ポリアリレートであるが、
ポリエチレンテレフタレートを用いることが最も好まし
い。用いる支持体自体に着色が施されていてもよい。ま
た支持体に帯電防止能が付加されたものが好ましい。
【0020】支持体の厚さは特に限定されないが、50
μm〜500μmが好ましく、より好ましくは100μm
〜300μmである。特に好ましくは175μm程度のも
のを用いることができる。該支持体上の薄膜は単層又は
重層で形成することができるが、薄膜はできる限り均一
な表面を与えるように調製すべきである。例えば、乾燥
後の膜厚が1〜10μm 、好ましくは2〜7μm程度に
なるように調製することが好ましい。
【0021】薄膜の調製には、例えば、プロテアーゼ基
質の水溶液に硬膜剤の所定量を加えて均一に混合し、得
られた溶液を支持体表面に塗布して乾燥すればよい。塗
布方法としては、例えば、ディップ塗布法、ローラー塗
布法、カーテン塗布法、押し出し塗布法などを採用する
ことができる。もっとも、薄膜の調製方法はこれらに限
定されることはなく、例えば、写真用フイルムの技術分
野などにおいて汎用されている薄膜形成方法などを適宜
採用することが可能である。
【0022】薄膜を支持体上に形成するにあたり、薄膜
と支持体との接着を改善するために、薄膜と支持体表面
との間に下塗り層を設けてもよい。例えば、塩化ビニ
ル、塩化ビニリデン、ブタジエン、スチレン、メタクリ
ル酸、アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸等から
選ばれるモノマーの1種又は2種以上を重合させて得ら
れる重合体又は共重合体、ポリエチレンイミン、エポキ
シ樹脂、グラフト化ゼラチン、又はニトロセルロースな
どの重合体を下塗り層として形成することができる。ま
た、ポリエステル系支持体を用いる場合には、下塗り層
に替えて、支持体表面をコロナ処理、紫外線処理、又は
グロー処理することによっても、支持体と薄膜との接着
力を改善できる場合がある。コロナ処理、紫外線処理、
又はグロー処理を行った後下塗り層を塗布する方法も支
持体と薄膜との接着力を改善できる。
【0023】本明細書において用いられる「支持体表面
上に形成された薄膜」という用語またはその同義語につ
いては、このような1又は2以上の下塗り層及び/又は
支持体表面の処理を排除するものと解釈してはならな
い。もっとも、薄膜と支持体との接着を改善するための
手段は上記のものに限定されることはなく、例えば、写
真用フイルムの技術分野などにおいて汎用されている手
段を適宜採用することができる。また、薄膜が複数の層
を重層してなる場合には、重層される2つの層の間にさ
らに中間層を設けてもよく、2つの層が直接接触してい
る場合に限定して解釈してはならない。このような中間
層を適宜配置する手段は、例えば、写真用フイルムの技
術分野などにおいて汎用されている。また、支持体表面
上に形成された膜の表面に保護層を設けることも好まし
く、写真用フイルムの技術分野などにおいて汎用されて
いる。
【0024】薄膜中にはプロテアーゼ基質及び硬膜剤の
ほか、各種の添加物を加えてもよい。添加物としては、
例えば薄膜の塗布を容易にするための界面活性剤、色素
を分散するためのオイル又は乳化剤、防腐剤、防かび
剤、pHを調節するための酸または塩基、酵素活性を調
節するためのCa++等の無機イオンがあげられるが、これ
らに限定されることはない。また、本発明の薄膜には帯
電防止の手段が施されていてもよい。例えば、プロテア
ーゼ基質層側又はその反対側の表面電気抵抗が10 12Ω
以下であるものを好ましく用いることができる。膜の表
面電気抵抗を低下させるための手段としては、例えば、
写真用フイルムに利用されている以下の技術を採用する
ことができる。
【0025】例えば、本発明の薄膜の製造には、以下に
示すような添加剤を必要に応じて使用することができ
る。硬膜剤(RD17643:26頁;RD18716:651頁左欄;RD3
07105:874〜875頁)、バインダー(RD17643:26頁;RD
18716:651頁左欄;RD307105:873〜874頁)、可塑剤又
は潤滑剤(RD17643:27頁;RD18716:650頁右欄;RD307
105:876頁)、塗布助剤又は界面活性剤(RD17643:26
〜27頁;RD18716:650頁右欄;RD307105:875〜876
頁)、帯電防止剤(RD17643:27頁;RD18716:650頁右
欄;RD307105:876〜877頁)、マット剤(RD307105:87
8〜879頁)。これらの添加剤はいずれも写真用フイルム
の技術分野において汎用されており、本発明の薄膜の製
造に同様に利用できる。
【0026】本発明の薄膜には色素を添加することがで
きる。添加される色素は紫外、可視、赤外のいずれの領
域に吸収をもっていても使用することができるが、可視
域に吸収を有するものが好ましく、公知の物質を含む種
々の化合物を使用することができる。1種類の色素を用
いてもよいが、2種以上の色素を組み合わせて用いても
よい。色素としては染料又は顔料のいずれを用いてもよ
く、両者を組み合わせて用いてもよい。例えば、重層し
た薄膜を用いる場合には、各層に異なる色の色素を配合
することができる。色素としては蛍光色素以外の色素を
用いることが好ましい。薄膜中への色素の添加量は特に
限定されないが、薄膜の面積に対する色素合計量として
0.001〜10 mmol/m2、好ましくは0.01〜1 mmol/m2であ
る。
【0027】染料としては、例えば、アゾ染料、アゾメ
チン染料、インドアニリン染料、ベンゾキノン染料、ナ
フトキノン染料、アントラキノン染料、ジフェニルメタ
ン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、ア
クリジン染料、アジン染料、オキサジン染料、チアジン
染料、オキソノール染料、メロシアニン染料、シアニン
染料、アリーリデン染料、スチリル染料、フタロシアニ
ン染料、ペリノン染料、インジゴ染料、チオインジゴ染
料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料などを挙
げることができる。具体的な化合物については「新版染
料便覧」(有機合成化学協会編;丸善,1970)、
「カラーインデックス」(The Society of Dyers and c
olourists)、「色材工学ハンドブック」(色材協会
編;朝倉書店、1989)などに記載されている。本発
明の薄膜の製造には水溶性の染料を用いることもできる
が、油溶性の染料は酵素反応に対して悪影響を及ぼさな
い点で好適である。
【0028】以下に本発明の薄膜に配合可能な好ましい
染料の具体例を示すが、本発明の薄膜は下記の染料を用
いたものに限定されることはない。
【0029】
【化1】
【0030】
【化2】
【0031】
【化3】
【0032】
【化4】
【0033】
【化5】
【0034】
【化6】
【0035】
【化7】
【0036】
【化8】
【0037】
【化9】
【0038】
【化10】
【0039】
【化11】
【0040】
【化12】
【0041】本発明に用いてもよい顔料の種類は特に限
定されず、有機又は無機のいずれの顔料を用いてもよ
い。また、顔料としては、市販のものの他、各種文献に
記載されている公知のものや新規化合物を利用できる。
具体的には、有機顔料としては、例えば、アゾ顔料(ア
ゾレーキ顔料、不溶性モノアゾ顔料、不溶性ジスアゾ顔
料、縮合アゾ顔料、金属錯塩アゾ顔料、キレートアゾ顔
料)、多環式顔料(フタロシアニン系顔料、アントラキ
ノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、インジゴ系
顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオ
キサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロ
ン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等)、染付けレ
ーキ顔料(酸性または塩基性染料のレーキ顔料)、アジ
ン顔料等、その他の顔料(ニトロソ顔料、アリザリンレ
ーキ顔料、アルカリブルー)などを挙げることができ、
無機顔料としては群青、コバルトブルーなどを挙げるこ
とができる。
【0042】これらのうち、油溶性の顔料は酵素反応に
対して悪影響を及ぼさない点で好適である。また、好ま
しい青味の色調を得るためには、フタロシアニン顔料、
アントラキノン系のインダントロン顔料、染め付けレー
キ顔料系のトリアリールカルボニウム顔料、インジゴ、
無機顔料の群青、コバルトブルーなどが好ましい。さら
に色調を調整するために、赤ないし紫色の顔料、例え
ば、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、ジケト
ピロロピロール系顔料を上記青色顔料と併用してもよ
い。顔料に関しては、カラーインデックス(The Societ
y of Dyers and Colourists編)、「改訂新版顔料便
覧」日本顔料技術協会編(1989年刊)、「最新顔料
応用技術」CMC出版(1986年刊)、「印刷インキ
技術」CMC出版(1984年刊)、W. Herbst, K. Hu
nger共著による Industrial Organic Pigments(VCH Ve
rlagsgesellschaft、1993年刊)等がある。
【0043】青色顔料の例としては、好ましくは、フタ
ロシアニン系のC.I.Pigment Blue 15、同15:1、同15:
2、同15:3、同15:4、同15:6(銅フタロシアニン)、モ
ノクロロないし低塩素化銅フタロシアニン、C.I.Pigmen
t Blue 16(無金属フタロシアニン)、中心金属がZ
n、Al、Tiであるフタロシアニン、バット染料とし
ても知られるインダントロン系のC.I.Pigment blue 60
やそれらのハロゲン置換体、例えばC.I.PigmentBlue 6
4、同21、アゾ系のC.I.Pigment Blue 25、インジゴ系の
C.I.Pigment Blue66及びレーキ顔料であるC.I.Pigment
Blue 63、トリアリールカルボニウム型酸性染料あるい
は塩基性染料のレーキ顔料であるC.I.PigmentBlue 1、
同2、同3、同9、同10、同14、同18、同19、同24:1、同2
4:x、同56、同61、同62などが挙げられる。
【0044】赤ないし紫顔料としては、好ましくは、ジ
オキサジン系のC.I.Pigment Violet23、同37、アゾ系の
C.I.Pigment Violet 同13、同25、同32、同44、同50、
C.I.Pigment Red 23、同52:1、同57:1、同63:2、同14
6、同150、同151、同175、同176、同185、同187、同24
5、キナクリドン系の C.I.Pigment Violet 19、同42、
C.I.Pigment Red 122、同192、同202、同207、同209、
トリアリールカルボニウム系のレーキ顔料であるC.I.Pi
gment Violet 1、同2、同3、同27、同39、C.I.Pigment
Red 81:1、 ペリレン系のC.I.Pigment Violet 29、アン
トラキノン系のC.I.Pigment Violet 5:1、同31、同33、
チオインジゴ系のC.I.Pigment Red 38、同88などが挙げ
られる。
【0045】薄膜に顔料を添加する場合には、上述の顔
料それ自体を用いてもよいが、表面処理を施された顔料
を用いてもよい。表面処理の方法には、例えば、樹脂や
ワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させ
る方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤や
エポキシ化合物、ポリイソシアネートなど)を顔料表面
に結合させる方法などを挙げることができ、その具体的
手段は「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷イ
ンキ技術」(CMC出版、1984)、「最新顔料応用
技術」(CMC出版、1986)などに記載されてい
る。
【0046】薄膜の製造にあたり、一般的には、顔料を
プロテアーゼ基質中に分散させることが望ましく、その
目的のために分散剤を用いることができる。分散剤の種
類は特に限定されず、用いるプロテアーゼ基質と顔料と
の組み合わせに応じて種々のもの、例えば界面活性剤型
の低分子分散剤や高分子型分散剤などを用いることがで
きる。疎水性のプロテアーゼ基質中で用いる場合には、
分散安定性の観点から高分子型分散剤を用いることが好
ましい。分散剤の例としては、特開平3−69949号
公報、欧州特許公開549486号公報等に記載のもの
を挙げることができる。
【0047】本発明の薄膜の製造に使用される顔料の粒
径は、例えば、分散後に0.01〜10μmの範囲であ
ることが好ましく、0.05〜1μmであることがさら
に好ましい。顔料をプロテアーゼ基質中に分散する方法
としては、インク製造やトナー製造時に用いられる公知
の分散技術を利用できる。分散機としては、例えば、サ
ンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、
ボールミル、インペラー、デスパーサー、KDミル、コ
ロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニー
ダー等を挙げることができ、その手法の詳細は「最新顔
料応用技術」(CMC出版、1986)に記載されてい
る。
【0048】本発明の薄膜には、染料を固体微粒子分散
物として添加することができる。染料の固体微粒子分散
物は、所望により適当な溶媒(水、アルコールなど)を
用い、ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、
サンドミル、コロイドミル、ジェットミル、ローラーミ
ル等の分散機を用いて調製することができるが、縦型あ
るいは横型の媒体分散機を用いることが好ましい。ま
た、染料を適当な溶媒中に溶解させたのち貧溶媒に添加
して微結晶を析出させる方法や、pHをコントロールさ
せることによってまず染料を溶解させ、その後pHを変
化させて微結晶を析出させる方法などを利用しても得る
ことができる。いずれの場合も分散剤を用いることが好
ましい。
【0049】染料の固体微粒子分散物を含有する薄膜
は、上記のようにして得た染料の固体微粒子を適当なプ
ロテアーゼ基質中に分散させることによってほぼ均一な
固体微粒子分散物を調製した後、これを所望の支持体上
に塗設することによって形成することができる。また、
解離状態の染料を塩の形で水溶液として塗布した後、酸
性のゼラチンを上塗りすることにより、析出分散を塗布
時に得る方法を採用してもよい。分散剤としては、例え
ば、公知のアニオン性、カチオン性、ノニオン性、又は
両性の低分子又は高分子分散剤を用いることができる。
例えば、特開昭52−92716号公報、国際公開WO
88/04794号、特開平10−20496号公報に
記載の分散剤を挙げることができる。特にアニオン性及
び/又はノニオン性の高分子分散剤の使用が好ましい。
【0050】本発明の薄膜に色素を添加する場合には、
特開昭62−215272号公報(125頁右上欄2行
目〜127頁左下欄末行)、特開平2−33144号公
報(37頁右下欄14行目〜38頁左上欄11行目)、
欧州特許公開EP0.355.600A2号(85頁2
2行目〜31行目)に記載の紫外線吸収剤、特開平07
−104448号公報(第70欄10行目〜第71欄2
行目)記載の退色防止剤を併用することもできる。
【0051】また、薄膜への色素、紫外線吸収剤、退色
防止剤等の導入には、例えば、特開平07−10444
8号公報(第71欄3行目〜第72欄11行目)などに
記載の種々の公知分散方法を用いることができ、高沸点
有機溶媒(必要に応じて低沸点有機溶媒を併用してもよ
い)に溶解し、ゼラチンなどのプロテアーゼ基質水溶液
に乳化分散する水中油滴分散法を採用してもよい。分散
には色素、紫外線吸収剤、退色防止剤をそれぞれ単独か
つ単一種で行うこともできるが、数種の素材を併用する
こともできる。これにより溶解性、耐析出性の向上や、
退色防止剤と色素を混合して分散する場合には退色性能
の向上を期待することができる。
【0052】水中油滴分散法に用いられる高沸点溶媒の
例は米国特許第2,322,027号明細書などに記載
されている。また、ポリマー分散法の1つとしてのラテ
ックス分散法及びラテックスの具体例は、米国特許第
4,199,363号明細書、西独特許出願第(OL
S)2,541,274号明細書、同2,541,23
0号明細書、特公昭53−41091号公報、及び欧州
特許公開第029104号公報等に記載されており、こ
れらを本発明の薄膜製造に利用してもよい。また、有機
溶媒可溶性ポリマーによる分散法について国際公開WO
88/00723号公報に記載されている。
【0053】水中油滴分散法に用いることのできる高沸
点有機溶媒としては、例えば、フタール酸エステル類
(例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレー
ト、ジシクロへキシルフタレート、ジ−2−エチルヘキ
シルフタレート、デシルフタレート、ビス(2,4−ジ
−tert−アミルフェニル)イソフタレート、ビス
(1,1−ジエチルプロピル)フタレート)、リン酸又
はホスホンのエステル類(例えば、ジフェニルホスフェ
ート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフ
ェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、
ジオクチルブチルホスフェート、トリシクロヘキシルホ
スフェート、トリ−2−エチルヘキシルホスフェート、
トリドデシルホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルフ
ェニルホスフェート)、安息香酸エステル酸(例えば、
2−エチルヘキシルベンゾエート、2,4−ジクロロベ
ンゾエート、ドデシルベンゾエート、2−エチルヘキシ
ル−p−ヒドロキシベンゾエート)、アミド類(例え
ば、N,N−ジエチルドデカンアミド、N,N−ジエチ
ルラウリルアミド)、アルコール類またはフェノール類
(イソステアリルアルコール、2,4−ジ−tert−
アミルフェノールなど)、脂肪族エステル類(例えば、
コハク酸ジブトキシエチル、コハク酸ジ−2−エチルヘ
キシル、テトラデカン酸2−ヘキシルデシル、クエン酸
トリブチル、ジエチルアゼレート、イソステアリルラク
テート、トリオクチルシトレート)、アニリン誘導体
(N,N−ジブチル−2−ブトキシ−5−tert−オ
クチルアニリンなど)、塩素化パラフィン類(塩素含有
量10%〜80%のパラフィン類)、トリメシン酸エス
テル類(例えば、トリメシン酸トリブチル)、ドデシル
ベンゼン、ジイソプロピルナフタレン、フェノール類
(例えば、2,4−ジ−tert−アミルフェノール、
4−ドデシルオキシフェノール、4−ドデシルオキシカ
ルボニルフェノール、4−(4−ドデシルオキシフェニ
ルスルホニル)フェノール)、カルボン酸類(例えば、
2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ酪酸、
2−エトキシオクタンデカン酸)、アルキルリン酸類
(例えば、ジ−2(エチルヘキシル)リン酸、ジフェニ
ルリン酸)などが挙げられる。また、補助溶媒として沸
点が30℃以上約160℃以下の有機溶剤(例えば、酢
酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、メチルエ
チルケトン、シクロヘキサノン、2−エトキシエチルア
セテート、ジメチルホルムアミド)を併用してもよい。
【0054】高沸点有機溶媒の量は用いられる色素、紫
外線吸収剤、退色防止剤1gに対して10g以下、好ま
しくは5g以下、より好ましくは1g〜0.1gであ
る。また、プロテアーゼ基質1gに対して1ml以下、
好ましくは0.5ml以下、さらに好ましくは0.3m
l以下が適当である。疎水性の色素を親水性コロイドに
分散する際には、種々の界面活性剤を用いることができ
る。例えば、特開昭59−157636号公報の第(37)
〜(38)頁、リサーチ・ディスクロージャー(以下、RDと
略す)17643に界面活性剤として挙げられたものを
使うことができる。
【0055】本発明の薄膜を用いたプロテアーゼ活性の
測定には生体試料を用いることができる。生体試料とし
ては、ヒトを含む哺乳類動物から分離・採取された生体
試料を用いることができ、より具体的には、例えば、罹
患した哺乳類動物、疾患の存在が疑われる哺乳動物、又
は実験動物などから分離・採取した生体試料を用いるこ
とができる。生体試料の形態は特に限定されないが、組
織切片などの固形試料や体液などの非固形試料を用いる
ことができる。非固形試料としては、例えば、組織から
吸引により採取した細胞又は組織片を含む試料、血液、
リンパ液、唾液などの体液を用いることができる。例え
ば、肺癌、胃癌、食道癌、大腸癌、乳癌、子宮癌、卵巣
癌、甲状腺癌、肝臓癌、口腔癌、前立腺癌、腎臓癌、膀
胱癌などの癌組織から手術や組織検査などにより分離・
採取した癌組織、リンパ節、歯周病組織、リウマチ性関
節炎の滑膜や骨組織などの組織から手術や組織検査など
により分離・採取した組織、歯肉溝滲出液、破壊性病変
組織に含まれる液(例えばリウマチ性病変の関節液又は
歯槽膿漏組織抽出液)、胸水、腹水、脳脊髄液、乳腺異
常分泌液、卵巣嚢胞液、腎臓嚢胞液、喀痰、血液あるい
は血球などを用いることができる。また試料として河
川、井戸、湖沼、海の水や排水を用い、これらに本発明
の薄膜を浸漬、静置することでプロテアーゼ活性を指標
として試料中の雑菌数などを検査することができる。
【0056】試料が組織の場合には、例えば、液体窒素
で急速凍結した試料から凍結切片作成装置を用いて厚さ
1〜10μm、好ましくは4〜6μmの切片を調製し、この切
片を薄膜に貼付することによって試料と薄膜とを接触さ
せることができる。穿刺吸引により採取した細胞又は組
織片を含む非固形試料についても、コンパウンドなどの
成形材料と混合して液体窒素で急速凍結し、同様に切片
を作製して用いることができる。また、組織から穿刺吸
引により採取した細胞又は組織片を含む非固形試料をそ
のまま用いる場合には、吸引した試料を薄膜上に吐出さ
せ、細胞を分散状態で薄膜に接着させればよい。さら
に、生体試料が組織片の場合は、採取した組織の水分を
軽く拭った後、プロテアーゼ基質を含む薄膜の上に1分
間から30分間程度静置することで試料と薄膜とを接触さ
せることができる。
【0057】また、リウマチ性関節炎の患者から採取し
た滑膜液の様な非固形試料を用いる場合には、試料を適
当な濃度に希釈し、及び/又は必要な前処理を行った後
に、約1〜50 μL、好ましくは1〜20μL程度を薄膜上に
滴下すればよい。歯周病の歯肉溝滲出液を試料として用
いる場合には、歯肉溝内に濾紙を挿入して約5〜10μL程
度の歯肉溝滲出液を採取し、該濾紙を薄膜に貼付する方
法を採用することができる。歯肉溝滲出液の採取後、必
要に応じて蒸留水や適宜の緩衝液(例えば、50 mM Tris
-HCl, pH 7.5, 10 mM CaCl2, 0.2 M NaClなど)を用い
て濾紙から歯肉溝滲出液を抽出し、抽出液を薄膜上に滴
下してもよい。より多量に採取できる体液試料(嚢胞液
など)の場合には、試料を入れた容器の中に薄膜の一部
を浸漬する方法により再現性のよい結果が得られる。
【0058】プロテアーゼ基質を含む組織切片を薄膜に
貼付するか、あるいは液体試料を滴下するなどの手段に
よって薄膜とプロテアーゼを含む試料を接触させた後、
プロテアーゼ活性の発現に適した温度、例えば37℃の飽
和湿度条件下で基質の消化に必要な時間薄膜をインキュ
ベートする。必要な時間は試料や薄膜の種類によって異
なるが、好ましくは、組織切片又は吸引により得た細胞
若しくは組織片を含む非固形試料については37℃で1〜4
8時間、さらに好ましくは6〜30時間、滲出液などの液状
の試料については0.5〜24時間、好ましくは1〜6時間イ
ンキュベートし、試料中のプロテアーゼによって薄膜中
に消化痕を形成させる。その後、薄膜を水洗し、消化さ
れた基質及びそこに含まれる色素を除去する。光学顕微
鏡で消化痕を観察することができる。
【0059】生体試料中の実質的に連続した2以上の切
片のうちの一つをプロテアーゼ・インヒビターを含まな
い薄膜に貼付し、他の切片の1つをプロテアーゼ・イン
ヒビターを含む薄膜に貼付して、両者の薄膜の消化痕を
比較することにより、プロテアーゼの種類を特定するこ
とが可能になる。プロテアーゼ・インヒビターの種類は
特に限定されないが、例えば、キレート剤、マトリック
スメタロプロテアーゼ阻害剤、又はセリンプロテアーゼ
阻害剤などを好適に用いることができる。
【0060】また、プロテアーゼ基質、色素、及び硬膜
剤を含む単層の薄膜を用いる場合には、試料中のプロテ
アーゼにより薄膜が消化されるに従って薄膜の光学濃度
が減少するが、プロテアーゼ基質を含む薄膜が重層塗布
されており、各層に異なる色の色素が添加されている場
合には、試料中のプロテアーゼにより薄膜が消化される
に従って、光学濃度とともに薄膜の色相が変化する。こ
のような薄膜を用いると、消化の強さを視覚的に判定す
ることが容易である。
【0061】本発明の薄膜を用いて生体試料に含まれる
プロテアーゼ活性を測定し、試料が由来した生体の状
況、例えば癌の転移やリウマチの進行度などとの対応を
調べることができる。消化痕における消化の強さの判定
には、光学顕微鏡等で拡大された消化痕を目視判定する
方法、消化痕の光学濃度を測定する方法、光学顕微鏡で
得られる画像をコンピューターに取り込み、画像解析の
方法により消化痕における各種の数値化を行う方法など
のいずれを採用してもよい。画像解析を行う場合には種
々のデータ処理法を用いることができ、その種類は特に
限定されないが、消化痕の面積、あるいは消化痕部分の
濃度と面積の積分を用いて消化の程度を数値化すること
が好ましい。
【0062】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明す
るが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されること
はない。 (支持体の作成)175μmのPETクリアーフイルム
の表面をコロナ放電処理したのち、以下のような組成の
下塗りを施した支持体を作成した。なお、裏面の電気抵
抗を測定したところ、1×108Ωであった。 1.おもて面 ゼラチン 0.3g/m2 硬膜剤(1) 0.001g/m2 2.裏面 ゼラチン 0.05g/m2 酸化アンチモンをドープした二酸化スズの水分散物 0.04g/m2 メチルセルロース 0.01g/m2 マット剤(平均粒径3・フPMMAポリマー粒子) 0.005g/m2 硬膜剤(2) 0.002g/m2
【0063】
【化13】
【0064】(塗布液の調製)下表1に示す様に、プロ
テアーゼ基質と硬膜剤を選択し、表1の塗布量となるよ
うに、前記支持体上に塗布を行い、薄膜を作成した。こ
れらのプロテアーゼ基質と硬膜剤は水溶液で混合し、支
持体上に単層で塗布を行った。
【0065】
【表1】
【0066】ゼラチン(A) シグマアルドリッチ製 ゼラ
チン豚皮膚酸処理ゼラチン175bloom、品番G2625 ゼラチン(B) シグマアルドリッチ製 ゼラチン豚皮膚酸
処理ゼラチン75bloom、品番G6144 ゼラチン(C) シグマアルドリッチ製 ゼラチン牛皮膚石
灰処理ゼラチン75bloom、品番G6650 トランスフェリン 和光純薬工業製 牛、トランスフェ
リン-Holo、品番209-10341、S=S結合を切断し-CH2COOH
で末端を修飾 アルブミン シグマアルドリッチ製 conアルブミン タイ
プ II、品番C0880、S=S結合を切断し-CH2COOHで末端を
修飾 カゼイン 和光純薬工業製 カゼイン、乳製、品番030-01
505 硬膜剤(3) H2C=CH-SO2-CH2-SO2-CH=CH2 硬膜剤(4) ナガセ化成工業製 デナコールEX-810
【0067】(癌検体のプロテアーゼ活性の測定)外科
手術により摘出された乳癌検体をコンパウンドに浸漬し
た状態で液体窒素に浸漬し、急速冷凍した。このサンプ
ルを凍結切片作製装置を用いて−25℃で厚さ4μmに
薄切し、表1に示すサンプルに接着した。この膜を37
℃、相対湿度100%で16時間インキュベートして基
質を消化した。インキュベート後、ポンソー3R染色液に
5分間浸漬して染色した。その後、水が絶えず更新され
ている水槽中に10分間浸漬して水洗し、自然乾燥させ
た。マイヤーのヘマトキシリン液に2分間浸漬して核染
色を行い、10分間水洗後20秒間エタノールに浸漬し
て自然乾燥させた。乾燥後、組織切片を覆うようにカバ
ーエイドフィルム(サクラ精機製)を貼り付けて乳癌切
片を封入した。このフィルムをプラスチック製のマウン
トに保持し、光学顕微鏡を用いて観察すると乳癌組織切
片中、核の形態より癌細胞が存在すると考えられる部位
のゼラチン消化の程度を目視評価した。結果を表2に示
す。表では消化が適切に行われたものを±、消化か進み
すぎているものを+2、全く消化されていないものを−
2、その中間のものをそれぞれ+1、−1とした。表2
より本発明のサンプルは、比較例のサンプルに比べて膜
の消化が速いことが判る。また基質塗布量の少ないもの
は染色濃度が低いことが判った。なお、試料105及び
107の+2については、インキュベート時間を12時
間としたところ結果が±となり、適切な評価となった。
【0068】
【表2】
【0069】
【発明の効果】本発明の薄膜を用いるとプロテアーゼ活
性を極めて高感度で測定でき、プロテアーゼ活性の弱い
組織においてもその活性の発現位置を詳細に確認でき
る。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 支持体表面に少なくとも一種のプロテア
    ーゼ基質及び少なくとも一種の硬膜剤を含有する架橋さ
    れた及び/又は実質的に水に溶けない薄膜を有するプロ
    テアーゼ活性用薄膜において、硬膜剤の塗布量(mmo
    l/m2)に対するプロテアーゼ基質の塗布量(g/
    2)の比が20以上であることを特徴とするプロテア
    ーゼ活性測定用薄膜。
  2. 【請求項2】 硬膜剤の塗布量(mmol/m2)に対
    するプロテアーゼ基質の塗布量(g/m2)の比が30
    〜80である請求項1に記載の薄膜。
  3. 【請求項3】 プロテアーゼ基質の塗布量が2g/m2
    〜7g/m2以下である請求項1又は2に記載の薄膜。
  4. 【請求項4】 プロテアーゼ基質としてブルーム値20
    0以下のゼラチンを含有する請求項1ないし3のいずれ
    か1項に記載の薄膜。
  5. 【請求項5】 プロテアーゼ基質として5質量%の水溶
    液が15℃において実質的にゲル化しない基質を含有す
    る請求項1ないし4のいずれか1項に記載の薄膜。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20200397869A1 (en) * 2013-03-15 2020-12-24 Kci Licensing, Inc. Wound healing compositions

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US20200397869A1 (en) * 2013-03-15 2020-12-24 Kci Licensing, Inc. Wound healing compositions

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